JP2019017291A - マクロファージの増殖方法、並びに、細胞集団の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】様々な器官や組織に由来する組織在住マクロファージを簡便に培養する技術を提供する。【解決手段】哺乳動物の器官又は組織から単離された組織在住マクロファージを増殖させるマクロファージの増殖方法であって、哺乳動物の器官又は組織の細胞分散処理物から、マクロファージとマクロファージ以外の接着性細胞とを含む間質細胞画分を取得する工程と、前記間質細胞画分を用いて初代培養を行い、前記間質細胞画分に含まれる接着性細胞とマクロファージを共に増殖させる工程と、を包含する方法によって得られた、接着性細胞とマクロファージとを含む第1の細胞集団、又は当該第1の細胞集団を継代培養して得られた第2の細胞集団を用いるものであり、前記第1の細胞集団又は第2の細胞集団を少なくとも1回継代培養することによりマクロファージを増殖させる継代培養工程を包含するマクロファージの増殖方法が提供される。【選択図】図1

Description

本発明はマクロファージの増殖方法、並びに、細胞集団の製造方法に関する。本発明は、様々な器官に由来するマクロファージを簡便に分離・増殖できるものである。
哺乳動物のほぼ全ての器官や組織にマクロファージが存在している。組織在住マクロファージは由来する器官や組織によって性状が異なり、例えば、肝臓、脳、肺、脾臓に由来する各マクロファージは互いに性状が異なる。組織在住マクロファージは、免疫のみならず、組織形成や組織修復などの在住する組織の環境および環境変化(炎症、腫瘍など)に対応して多様な働きを示すこと、腸・皮下組織の在住マクロファージを除き、増殖によって器官や組織におけるポピュレーションが維持されていること、等が明らかとなっている。
一般に、マクロファージを培養して増殖させることは難しいとされている。例えば、肝臓に存在するマクロファージであるクッパー細胞は増殖能力が低く、大量培養は困難である。
特許文献1には、クッパー細胞の効率的増殖方法に関する発明が記載されている。この発明では、肝臓を酵素処理して細胞を分散させ、遠心分離によって肝実質細胞からなる画分(肝実質細胞画分)を得ている。そして肝実質細胞画分について初代培養を行い、肝実質細胞が実質的に存在しなくなるまで培養を継続し、肝実質細胞画分に僅かに含まれていたクッパー細胞を増殖させている。また、培養器を振とうすることによりクッパー細胞を培養液中に浮遊させ、回収している。しかし、この方法ではクッパー細胞の含有比率が低い肝実質細胞画分を用いるため、増殖効率の点で不利と考えられる。またこの方法は、初代培養を継続して行うものであり、継代培養を行うものではない。また特許文献1には、マクロファージを凍結保存することについての記載はない。さらに、この方法はクッパー細胞に特化したものであり、他の器官由来のマクロファージの増殖に適用できるかは不明である。
特許文献2には、脳に存在するマクロファージであるミクログリア細胞の培養方法に関する発明が記載されている。この発明では、マウス、ラットなどの動物の胎児あるいは新生児の脳を材料としている。しかし特許文献2では、血液脳関門が形成された2週齢以降あるいは成体の動物の脳を用いておらず、成体のミクログリア細胞を増殖させたものではない。さらに特許文献2には、ミクログリア細胞の継代培養や凍結保存についての記載はない。
特開2011−97934号公報 特開2005−237204号公報
このように、組織在住マクロファージを培養して増殖させる技術については改善の余地が多く残されている。そこで本発明は、様々な器官のマクロファージに対応可能で、かつマクロファージを簡便に増殖・分離できる一連の技術を提供することを目的とする。
本発明者は様々な器官に由来するマクロファージを用いて、マクロファージの継代培養と凍結保存を可能にする技術について研究を行った。その結果、器官等の細胞分散処理物から調製した、マクロファージとマクロファージ以外の接着性細胞とを含む間質細胞画分を用い、これらの細胞を共に増殖させる(共培養する)ことにより、マクロファージの継代培養が可能となることを見出した。そして、マクロファージの継代培養を繰り返すことにより、マクロファージを大量に取得できることを見出した。さらに、上記間質細胞画分を共培養(初代培養)した細胞集団や、さらに継代培養した細胞集団を凍結することにより、高い生存率をもってマクロファージの凍結保存が可能であることを見出した。
本発明の1つの様相は、哺乳動物の器官又は組織から単離された組織在住マクロファージを増殖させるマクロファージの増殖方法であって、哺乳動物の器官又は組織の細胞分散処理物から、マクロファージとマクロファージ以外の接着性細胞とを含む間質細胞画分を取得する工程と、前記間質細胞画分を用いて初代培養を行い、前記間質細胞画分に含まれる接着性細胞とマクロファージを共に増殖させる工程と、を包含する方法によって得られた、接着性細胞とマクロファージとを含む第1の細胞集団、又は当該第1の細胞集団を継代培養して得られた第2の細胞集団を用いるものであり、前記第1の細胞集団又は第2の細胞集団を少なくとも1回継代培養することによりマクロファージを増殖させる継代培養工程を包含することを特徴とするマクロファージの増殖方法である。
本様相は、哺乳動物の器官又は組織から単離された組織在住マクロファージを増殖させるマクロファージの増殖方法に係るものである。本様相では、哺乳動物の器官又は組織の細胞分散処理物から調製した、マクロファージとマクロファージ以外の接着性細胞とを含む間質細胞画分を用いる。そして、当該間質細胞画分を初代培養して得られた第1の細胞、又はさらに継代培養して得られた第2の細胞集団を用い、当該細胞集団を少なくとも1回継代培養することによりマクロファージを増殖させる(継代培養工程)。本様相では、継代培養によってマクロファージを増殖させるので、大量のマクロファージを簡便に得ることができる。
好ましくは、前記第1の細胞集団又は第2の細胞集団の凍結物を、前記継代培養工程に供する。
本様相によれば、細胞集団の凍結物から継代培養工程を行うので、操作がより簡便である。本様相は、マクロファージの凍結細胞ストックからマクロファージの継代培養を開始する態様に相当する。
好ましくは、前記間質細胞画分は、マクロファージ以外の接着性細胞で形成された微小細胞塊を含む。
かかる構成により、マクロファージの初代培養がより効率的に行われる。
好ましくは、前記継代培養工程終了時におけるマクロファージの細胞密度が、1平方センチメートルあたり0.8×104個以上である。
好ましくは、前記継代培養工程によって得られた、接着性細胞とマクロファージとを含む第3の細胞集団を、基材に対する接着性の相違によってマクロファージと他の接着性細胞とを選別可能な選別用基材に供し、第3の細胞集団に含まれるマクロファージを当該選別用基材に接着させて選抜する選抜工程、をさらに包含する。
かかる構成により、継代培養工程で増殖させたマクロファージを効率的に選抜することができる。
好ましくは、前記選抜工程で選抜されたマクロファージの純度が85%以上である。
好ましくは、前記選別用基材に接着せずに浮遊した、接着性細胞とマクロファージを含む未接着細胞を回収し、前記未接着細胞からなる第4の細胞集団を得る細胞回収工程と、前記第4の細胞集団を少なくとも1回継代培養することによりマクロファージを増殖させる第2継代培養工程と、をさらに包含する。
本様相では、選別用基材に接着せずに浮遊した接着性細胞とマクロファージを含む未接着細胞を用いて、さらに継代培養を行う(第2継代培養工程)。かかる構成により、さらに効率的に大量のマクロファージを得ることができる。
好ましくは、前記第2継代培養工程終了時におけるマクロファージの細胞密度が、1平方センチメートルあたり0.8×104個以上である。
好ましくは、前記選別用基材は、表面が親水処理されていないプラスチック製である。
好ましくは、前記器官又は組織は、肝臓、脳、肺、又は脾臓である。
本発明の他の様相は、上記のマクロファージの増殖方法によってマクロファージを増殖させ、複数のマクロファージからなる細胞集団を製造することを特徴とする細胞集団の製造方法である。
本様相は細胞集団の製造方法に係るものである。本様相では、上記したマクロファージの増殖方法によってマクロファージを増殖させ、複数のマクロファージからなる細胞集団を製造する。本様相によれば、マクロファージの細胞集団を簡便に得ることができる。
本発明の他の様相は、マクロファージを含有する凍結された細胞集団の製造方法であって、上記した第1の細胞集団又は第2の細胞集団を凍結するものであり、凍結された細胞集団の融解後において、前記第1の細胞集団又は第2の細胞集団に含まれる接着性細胞とマクロファージが共に増殖可能であることを特徴とする細胞集団の製造方法である。
本様相は凍結された細胞集団の製造方法に係るものである。本様相では、上記した第1の細胞集団又は第2の細胞集団を凍結し、マクロファージを含む凍結された細胞集団を製造する。そして、製造される細胞集団は、融解後において、第1の細胞集団又は第2の細胞集団に含まれる接着性細胞とマクロファージが共に増殖可能なものである。本様相の方法で製造された細胞集団を用時に融解することで、マクロファージの培養を簡便に行うことができる。その結果、大量のマクロファージを簡便に得ることができる。
好ましくは、凍結された細胞集団におけるマクロファージの生存率が75%以上である。
本発明によれば、様々な器官や組織に由来する組織在住マクロファージを簡便に培養することができ、マクロファージの大量培養が可能となる。
本発明の一実施形態に係るマクロファージの増殖方法の概要を示す説明図である。 実施例1で行った初代培養終了時における細胞の位相差顕微鏡写真である。 実施例1で行った継代培養工程終了時における細胞の位相差顕微鏡写真である。 実施例1で行った選抜工程で分離したマクロファージの位相差像を表す写真である。 実施例1で行ったマクロファージの評価試験における蛍光像と位相差像の重ね合わせ像を表す写真である。 実施例1で行った第2継代培養工程終了時における細胞の位相差顕微鏡写真である。 実施例1で行った、第2継代培養工程後の選抜工程で分離したマクロファージの位相差像を表す写真である。 実施例1で行った、第2継代培養工程後の選抜工程で分離したマクロファージの評価試験における蛍光像と位相差像の重ね合わせ像を表す写真である。 実施例1で行った、第2継代培養工程後の選抜工程で分離したマクロファージの評価試験におけるフローサトメトリーの結果を示すグラフである。 実施例2で行った、灌流法を採用した場合の初代培養終了時における細胞の位相差顕微鏡写真である。 実施例2で行った、細切法を採用した場合の初代培養終了時における細胞の位相差顕微鏡写真である。 実施例2で行った継代培養工程終了時における細胞の位相差顕微鏡写真である。 実施例2で行った選抜工程で分離したマクロファージの位相差像を表す写真である。 実施例2で行った第2継代培養工程終了時における細胞の位相差顕微鏡写真である。 実施例2で行った、第2継代培養工程後の選抜工程で分離したマクロファージの位相差像を表す写真である。 実施例2で行った、第2継代培養工程後の選抜工程で分離したマクロファージの評価試験における蛍光像と位相差像の重ね合わせ像を表す写真である。 実施例2で行った、第2継代培養工程後の選抜工程で分離したマクロファージの評価試験におけるフローサトメトリーの結果を示すグラフである。 実施例3で行った初代培養終了時における細胞の位相差顕微鏡写真である。 実施例3で行った継代培養工程終了時における細胞の位相差顕微鏡写真である。 実施例3で行った選抜工程で分離したマクロファージの位相差像を表す写真である。 実施例3で行った第2継代培養工程終了時における細胞の位相差顕微鏡写真である。 実施例3で行った、第2継代培養工程後の選抜工程で分離したマクロファージの位相差像を表す写真である。 実施例3で行った、第2継代培養工程後の選抜工程で分離したマクロファージの評価試験における蛍光像と位相差像の重ね合わせ像を表す写真である。 実施例3で行った、第2継代培養工程後の選抜工程で分離したマクロファージの評価試験におけるフローサトメトリーの結果を示すグラフである。 実施例4で行った初代培養終了時における細胞の位相差顕微鏡写真である。 実施例4で行った継代培養工程終了時における細胞の位相差顕微鏡写真である。 実施例4で行った選抜工程で分離したマクロファージの位相差像を表す写真である。 実施例4で行った、第2継代培養工程後の選抜工程で分離したマクロファージの位相差像を表す写真である。 実施例4で行った、第2継代培養工程後の選抜工程で分離したマクロファージの位相差像を表す写真である。 実施例4で行った、第2継代培養工程後の選抜工程で分離したマクロファージの評価試験における蛍光像と位相差像の重ね合わせ像を表す写真である。 実施例4で行った、第2継代培養工程後の選抜工程で分離したマクロファージの評価試験におけるフローサトメトリーの結果を示すグラフである。
本発明のマクロファージの増殖方法は、哺乳動物の器官又は組織から単離された組織在住マクロファージを増殖させるものである。用いる器官又は組織としては特に限定はないが、例えば、肝臓、脳、肺、又は脾臓が好適に用いられる。
本発明のマクロファージを増殖方法の一実施形態について、図1を参照しながら説明する。
<間質細胞画分の調製>
まず本実施形態では、哺乳動物の器官又は組織の細胞分散処理物から取得した、マクロファージとマクロファージ以外の接着性細胞とを含む間質細胞画分を用いる(図1のA1)。
「細胞分散処理」とは、器官又は組織を構成している細胞を分散させる処理を指す。具体例としては、器官等をタンパク質分解酵素で処理する酵素処理が挙げられる。タンパク質分解酵素の例としては、コラゲナーゼ、ディスパーゼ(登録商標)、等が挙げられる。具体的処理としては、器官等に上記酵素液を灌流させたり、器官等を細切して上記酵素液に浸漬することが挙げられる。
酵素処理の条件としては、用いる器官や組織の種類や性状によって適宜選択すればよいが、例えば、器官が肺、脾臓、肝臓の場合にはコラゲナーゼが好適に用いられる。器官が脳の場合には、例えばディスパーゼが好適に用いられるが、いずれも限定されるものではない。
酵素処理以外の細胞分散処理としては、化学的処理(キレート剤等)、物理的処理(ピペッティング、ストレーナー等)などが挙げられる。
「細胞分散処理物」とは、細胞分散処理を施された器官又は組織を指す。例えば、上記した器官等の酵素処理物が、細胞分散処理物に該当する。
「間質細胞画分」とは、間質細胞(非実質細胞)に富む画分であり、実質細胞を実質的に含まないか、実質細胞をごく少量しか含まない画分をいう。
細胞分散処理物から当該間質細胞画分を取得する方法としては、例えば、間質細胞と実質細胞との比重差を利用した分離手段を用いることができる。例えば、器官等の酵素処理物をチューブ内で静置し、実質細胞塊を沈降させ、その上清から上記間質細胞画分を得ることができる。
また、器官等の酵素処理物を比較的穏やかな条件で遠心分離して、実質細胞塊を沈降させ、その上清から上記間質細胞画分を得ることができる。遠心分離の条件としては、例えば、50g〜100g(gは重力加速度)で1〜3分間、を挙げることができる。この方法は、器官の酵素処理物として酵素液を灌流させた肝臓を用いる場合に、特に有用である。
好ましい実施形態では、上記間質細胞画分が、マクロファージ以外の接着性細胞で形成された微小細胞塊を含む。
「細胞塊」とは、複数の細胞からなる細胞集団であって1つの塊を形成しているものをいう。すなわち、細胞塊には単一の細胞(シングルセル)は含まれない。
「微小細胞塊」とは、浮遊状態における直径(長径)が概ね400μm以下の微小な細胞塊を指す。微小細胞塊の直径(長径)は、好ましくは200μm以下である。微小細胞塊は、例えば、器官等を細切して酵素液に浸漬することによって得ることができる。
<初代培養>
本実施形態では、上記間質細胞画分を用いて初代培養(図1のA2)を行って、間質細胞画分に含まれる接着性細胞とマクロファージを共培養し、得られた細胞集団(第1の細胞集団)を用いる。
間質細胞画分の初代培養では、間質細胞画分に含まれる接着性細胞とマクロファージが共培養される。マクロファージは、共存する接着性細胞が産生する細胞成長因子等を利用して増殖すると考えられる。
間質細胞画分の初代培養は、例えば、接着性細胞を培養可能な基材を用いて行うことができる。例えば、表面が親水処理されたプラスチック製の培養基材を用いることができる。具体的には、市販のポリスチレン製の組織培養用ディッシュやフラスコを用いることができる。培養に用いる培地としては、用いる器官や組織の種類や性状によって適宜選択すればよく、例えば、ダルベッコ改変イーグル培地(DME)、RPMI1640培地、ダルベッコ改変イーグル培地/ハムF-12混合培地(DME/F12)、等を用いることができる。
通常、初代培養を1〜4週間程度かけて行い、85〜100%コンフルエント又はオーバーコンフルエントの状態まで培養する。
第1の細胞集団は、例えば、基材上で増殖した増殖した接着性細胞及びマクロファージに細胞剥離剤を接触させて基材から剥離し、回収することができる。
細胞剥離剤としては、例えば、トリプシン等のタンパク質分解酵素を含むものが挙げられる。このときの酵素反応の条件としては、接着性細胞が塊の状態で保持される(分散しない)条件であることが好ましい。例えば1mMのEDTAを含む0.05〜0.1%程度のトリプシン溶液を用い、37℃で10〜15分程度作用させればよい。酵素反応を進めすぎると、接着性細胞自体やマクロファージに損傷を与えるおそれがあり、好ましくない。
第1の細胞集団は、例えば、適宜の緩衝液あるいは平衡塩類溶液で懸濁した細胞懸濁液の形態で得ることができる。緩衝液・平衡塩類溶液としては、PBS、HBSS、Hepesを加えたHBSS、等を用いることができる。
<4つのルート>
本実施形態において、第1の細胞集団を取得してから後述する継代培養工程(図1のB1)に至るまでのルートは、少なくとも4つある。
第1のルート(図1のR1)は、第1の細胞集団をそのまま継代培養工程(B1)に供することである。
第2のルート(図1のR2)は、第1の細胞集団をいったん凍結保存して凍結細胞ストックを作製し、この凍結細胞ストックを継代培養工程(B1)に供することである。凍結細胞ストックを少なくとも1回継代培養してから、継代培養工程(B1)に供してもよい。
第3のルート(図1のR3)は、第1の細胞集団を拡大用の継代培養(図1のA3)に供し、第2の細胞集団を得る。そして、第2の細胞集団又は第2の細胞集団を少なくとも1回継代培養した細胞集団を、継代培養工程(B1)に供することである。
第4のルート(図1のR4)は、第1の細胞集団を拡大用の継代培養(A3)に供し、第2の細胞集団を得る。そして、第2の細胞集団又は第2の細胞集団を少なくとも1回継代培養して得られた細胞集団をいったん凍結保存し、凍結細胞ストックを作製する。そして、この凍結細胞ストックを継代培養工程(B1)に供することである。凍結細胞ストックを少なくとも1回継代培養してから継代培養工程(B1)に供してもよい。
まず、第1のルート又は第2のルートを選択する場合について一通り説明する。
<第1の細胞集団の凍結保存>
前述のとおり、第1の細胞集団は、そのまま継代培養工程に供してもよいが(第1のルート)、この段階で凍結保存することができる(第2のルート)。例えば、第1の細胞集団を含む細胞懸濁液を調製し、これを凍結保存用チューブに小分けして凍結させ、凍結された細胞集団(凍結細胞懸濁液、凍結細胞ストック)を作製することができる。この際に凍結細胞懸濁液に含める細胞保護剤としては、ジメチルスルホキシド(DMSO)や、市販のセルバンカー(登録商標)、バンバンカー(登録商標)等を用いることができる。
凍結保存された第1の細胞集団を用いて後述する継代培養工程(B1)を行えば、動物の器官や組織から出発することなく、凍結細胞ストックからマクロファージを増殖させることができ、極めて簡便である。
<継代培養工程>
第1の細胞集団又は凍結保存された第1の細胞集団を少なくとも1回継代培養し、マクロファージを増殖させる(継代培養工程、B4)。継代培養工程では、第1の細胞集団に含まれる接着性細胞とマクロファージが共培養され、接着性細胞とマクロファージが基材上で共に増殖する。マクロファージは、共存する接着性細胞が産生する細胞成長因子等を利用して増殖すると考えられる。
本工程における継代培養は1回のみ行ってもよいし、2回以上行ってもよい。2回以上行うことにより、より大量のマクロファージを得ることが可能となる。
継代培養で用いる基材は、初代培養で用いる基材と同様に、接着性細胞を培養可能なものであればよい。例えば、表面が親水処理されたプラスチック製の培養基材を用いることができる。具体的には、市販のポリスチレン製の組織培養用ディッシュやフラスコを用いることができる。培養に用いる培地としては、器官や組織の種類や性状によって適宜選択すればよく、例えば、上記したDME、RPMI1640、DME/F12、等を用いることができる。
通常、本工程にて継代培養を1〜4週間程度かけて行い、85〜100%コンフルエント又はオーバーコンフルエントの状態まで培養する。継代培養終了時の細胞数は、継代培養開始時の細胞数の2倍以上であることが好ましく、例えば2〜4倍であることが好ましい。また継代培養終了時のマクロファージの細胞密度は、好ましくは1平方センチメートルあたり0.8×104個以上であり、より好ましくは1.0×104個以上、さらに好ましくは1.2×104個以上である。
継代培養工程により、接着性細胞とマクロファージとを含む第3の細胞集団が得られる。第3の細胞集団は、例えば、基材上で増殖した増殖した接着性細胞及びマクロファージに細胞剥離剤を接触させて基材から剥離し、回収することができる。
細胞剥離剤としては、初代培養後と同様のものを用いることができる。使用条件についても同様である。
第3の細胞集団は、例えば、剥離した接着性細胞とマクロファージを適宜の緩衝液あるいは平衡塩類溶液で懸濁した細胞懸濁液の形態で得ることができる。緩衝液・平衡塩類溶液としては、PBS、HBSS、Hepesを加えたHBSS、等を用いることができる。
<マクロファージの選抜>
第3の細胞集団を、基材に対する接着性の相違によってマクロファージと他の接着性細胞とを選別可能な選別用基材に供し、第3の細胞集団に含まれるマクロファージを当該選別用基材に接着させて選抜する(選抜工程、図1のB2)。
本工程では、第3の細胞集団に含まれるマクロファージと他の細胞とを分離し、マクロファージを選抜する。
本工程で用いる選別用基材は、基材に対する接着性の相違によってマクロファージと他の接着性細胞とを選別可能なものである。例えば、表面が親水処理されていないプラスチック製の培養基材を、選別用基材として用いることができる。具体的には、市販のポリスチレン製の微生物培養用ディッシュを用いることができる。マクロファージは基材に対する接着能力が高いので、表面が親水処理されていない基材であっても基本的に接着する。一方、マクロファージ以外の接着性細胞は、表面が親水処理されていない基材には基本的に接着しない。
選別用基材と第3の細胞集団とは、例えば、ダルベッコ改変イーグル培地(DME)やRPMI1640培地中で接触させることができる。なお本工程は、第3の細胞集団からマクロファージを選抜することと、未接着細胞(他の接着性細胞と未選抜マクロファージからなる)を回収することを目的としており、マクロファージを増殖させることは必須ではない。しかし、本工程においてもマクロファージは他の接着性細胞と共存しているので、マクロファージをある程度増殖させることは可能である。
第3の細胞集団を選別用基材に接触させることにより、マクロファージは選別用基材に接着し、マクロファージ以外の接着性細胞は選別用基材に接着せずに浮遊する(未接着細胞)。ただし、第3の細胞集団に含まれる全てのマクロファージが基材に接着するわけではなく、一部のマクロファージは基材に接着せずに浮遊する。すなわち未接着細胞には、マクロファージが依然として含まれている。
選別用基材に接着したマクロファージは、例えば、EDTA等のキレート剤を用いて剥離し、回収することができる。好ましくは、回収した(選抜した)マクロファージの純度が85%以上であり、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上である。
<未接着細胞の継代培養>
選別用基材に接着せずに浮遊した接着性細胞とマクロファージを含む未接着細胞を回収し、前記未接着細胞からなる第4の細胞集団を得る(回収工程、図1のB3)。さらに、当該第4の細胞集団を継代培養することにより、マクロファージを増殖させる(第2継代培養工程、図1のB4)。
本工程は、選別用基材に接着しなかった未接着細胞(接着性細胞とマクロファージ含む)を回収し、継代培養を再度行う工程である。当該未接着細胞を用いることにより、接着性細胞とマクロファージとを、再度、継代培養することができる(B1)。そして、再度、第4の細胞集団を得ることができる。さらに、選抜用基材を利用して、再度、マクロファージを選抜することができる(B2)。さらに、未接着細胞からなる第5の細胞集団を回収し、再度、継代培養に供することができる(B3、B4)。なお、この場合も、第3の細胞集団に含まれる全てのマクロファージが基材に接着するわけではなく、一部のマクロファージは基材に接着せずに浮遊する。すなわち未接着細胞にはマクロファージが依然として含まれているので、継代培養を繰り返すことが可能である。
上記した継代培養の繰り返し、すなわち、未接着細胞の回収(B3)/未接着細胞(第4の細胞集団)の継代培養(B1)/第3の細胞集団の取得/マクロファージの選抜(B2)/未接着細胞の回収(B3)、からなるサイクルは、1回のみ行ってもよいし、2回以上行ってもよい。2回以上行うことにより、より大量のマクロファージを得ることが可能となる。
第2継代培養工程(B4)以降に行うマクロファージの選抜工程(B2)においても、選別用基材に接着したマクロファージを、例えば、EDTA等のキレート剤を用いて剥離し、回収することができる。このときに回収した(選抜した)マクロファージの純度は、好ましくは、80%以上であり、より好ましくは85%以上、さらに好ましくは90%以上である。
第2継代培養工程(B4)における継代培養終了時のマクロファージの細胞密度は、好ましくは1平方センチメートルあたり0.5×104個以上であり、より好ましくは0.7×104個以上、さらに好ましくは0.9×104個以上である。
以上、初代培養(A2)後に第1のルート(R1)又は第2のルート(R2)を選択する場合について説明した。
続いて、初代培養後に第3のルート(R3)又は第4のルート(R4)を選択する場合について説明する。
<拡大用の継代培養>
第3のルート及び第4のルートでは、第1の細胞集団を継代培養して第2の細胞集団を得る(拡大用の継代培養、A3)。この継代培養は、接着性細胞及びマクロファージの拡大を目的とするものであり、いわゆる前培養や拡大培養に相当するものといえる。これに対し、B1の継代培養工程は、いわゆる本培養や生産培養に相当するものといえる。
拡大用の継代培養は、上記した継代培養工程(B1)と同様にして行うことができる。例えば、培養に用いる基材や培地の選択、培養期間、細胞密度、細胞剥離の方法、等については上記した継代培養工程と同様に行うことができる。
拡大用の継代培養は1回のみ行ってもよいし、2回以上行ってもよい。2回以上行うことにより、例えば、凍結された細胞集団(後述)を多数作製することができる。
<第2の細胞集団の凍結保存>
前述のとおり、第2の細胞集団は、そのまま継代培養工程(B1)に供してもよいが(第3のルート)、この段階で凍結保存することができる(第4のルート)。例えば、第2の細胞集団を含む細胞懸濁液を調製し、これを凍結保存用チューブに小分けして凍結させ、凍結された細胞集団(凍結細胞懸濁液、凍結細胞ストック)を作製することができる。この際に凍結細胞懸濁液に含める細胞保護剤としては、ジメチルスルホキシド(DMSO)や、市販のセルバンカー(登録商標)、バンバンカー(登録商標)等を用いることができる。
凍結保存された第2の細胞集団を用いて後述の継代培養工程(B1)を行えば、動物の器官や組織から出発することなく、凍結細胞ストックからマクロファージを増殖させることができ、極めて簡便である。
<継代培養工程>
第2の細胞集団又は凍結保存された第2の細胞集団を少なくとも1回継代培養し、マクロファージを増殖させる(継代培養工程、B4)。
以降の工程は第1のルート又は第2のルートを選択した場合と同じなので、説明を省略する。
第3のルートと第4のルートは、継代培養工程(B1)に供するための細胞集団(第2の細胞集団又はその凍結物)を、より大量に得られる利点がある。すなわち、拡大用の継代培養(A3)を行うので、第1のルート又は第2のルートを選択した場合に1匹の動物から得られる細胞集団又は凍結細胞ストックよりも多くの細胞集団又は凍結細胞ストックを作製することができる。
第3のルート又は第4のルートによれば、動物の器官や組織から出発することなく、凍結細胞ストックからマクロファージを増殖させることができ、極めて簡便であるとともに、動物1匹当たりのマクロファージの収量を格段に増やすことができる。
なお、上記した実施形態において、継代培養工程に供する第2の細胞集団について、マクロファージに対して他の接着性細胞の比率が低い場合には、回収した未接着細胞を第2の細胞集団に播種して細胞集団の性状を変えることができる。
本発明は、上記したマクロファージの増殖方法によってマクロファージを増殖させ、複数のマクロファージからなる細胞集団を製造することを特徴とする細胞集団の製造方法を包含する。
例えば、上記した第1の細胞集団又は第2の細胞集団を用いて継代培養工程(B1)を行った後、マクロファージの選抜を行うことにより、マクロファージの細胞集団を得ることができる。さらに、上記した未接着細胞を用いて第2継代培養工程(B4)を行った後、マクロファージの選抜を行うことにより、マクロファージの細胞集団を得ることができる。
本発明は、第1の細胞集団又は第2の細胞集団を凍結する、マクロファージを含有する凍結された細胞集団の製造方法を包含する。例えば、第1の細胞集団又は第2の細胞集団を含む細胞懸濁液を調製し、これを凍結保存用チューブに小分けして凍結させ、凍結された細胞集団(凍結細胞懸濁液)を作製することができる。この際に凍結細胞懸濁液に含める細胞保護剤としては、ジメチルスルホキシド(DMSO)や、市販のセルバンカー(登録商標)、バンバンカー(登録商標)等を用いることができる。
この凍結された細胞集団は、融解後において、第1の細胞集団又は第2の細胞集団に含まれる接着性細胞とマクロファージとが共に増殖可能なものである。好ましくは、細胞集団におけるマクロファージの生存率が75%以上であり、好ましくは85%以上である。この凍結された細胞集団を用いることにより、動物の器官や組織から出発することなく、凍結細胞ストックからマクロファージを増殖させることができ、極めて簡便である。
以下、実施例をもって本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
本実施例では、マウスの脾臓から単離したマクロファージを大量培養した。
(1)間質細胞画分の調製
8週齢のICRマウスに麻酔薬を腹腔内投与した。右心耳を切って放血させ、ヘパリン添加ハンクス液を左心室から灌流した後、脾臓を採取した。カミソリを用いて脾臓を約1mm角に細切し、断片化した。断片化した脾臓を15mL容チューブに入れ、コラゲナーゼとディスパーゼを含む細胞分散液A(0.5mg/mL Collagenase Type IA + 0.5mg/mL Dispase in HBSS, 20mM Hepes (pH 7.2〜7.4), 1mM CaCl2)を7.5〜12mL添加し、37℃で30〜60分インキュベートした。Collagenase Type IAは、Sigma-Aldrich社製のカタログ番号C9891を用いた。Dispaseは、GIBCO社製のカタログ番号17105-041を用いた。
チューブを静置して上清と沈降物(組織塊)に分離し、上清を除去した。10mLのHBSSを添加して組織塊を2〜3回洗浄し、細胞分散液Aを除去した。洗浄した組織塊に4mL程度のHBSSを添加した。1mL容量の青色チップ(吐出口径:約0.8mm)を装着したマイクロピペットを用い、チップの先(吐出口)をチューブの底面近くまで入れ、液の吸引と排出を繰り返し(ピペッティング)、組織塊を分散及び細分化した。これにより、微小細胞塊が形成された。
チューブを静置して上清と沈降物に分離し、上清を回収した。これにより、微小細胞塊とマクロファージとを含む間質細胞画分が得られた。回収した上清を遠心分離し、沈降物(主にマクロファージを含む単一細胞と微小細胞塊の細胞集団からなる)を集めた。上清を除去し、10mLのHBSSを用いて同様のピペッティング操作で沈降物を数回洗浄した。
(2)初代培養
直径10mmの組織培養用ディッシュ(培養面積56cm2、IWAKI、品番3020−100)に、10%ウシ胎児血清を含むダルベッコ改変イーグル培地(DME+10%FBS)を12mL入れ、上記(1)で得た沈降物(主にマクロファージを含む単一細胞と微小細胞塊の細胞集団からなる)を播いた。85〜100%コンフルエントになるまで、37℃で培養した(1〜4週間程度)。これにより、微小細胞塊を構成する接着性細胞とマクロファージとが共培養され、接着性細胞とマクロファージがディッシュ上で共に増殖した。
図2に、初代培養終了時における細胞の位相差顕微鏡写真を示す。すなわち、線維芽様細胞とマクロファージ(小型の細胞)によって占められており、マクロファージの多くは明るい細胞として存在していた。
ディッシュから培地を取り除き、ディッシュ上で増殖した細胞をHBSSで2回程度洗浄した。トリプシンとEDTAを含む細胞剥離液A(0.1% Trypsine, 1mM EDTA in HBSS)を1mL添加し、37℃で10〜15分インキュベートし、細胞を剥離した。HBSSとDME+10%FBSの混液(3:1)で細胞を回収し、遠心分離して細胞(第1の細胞集団)を集め、適量のDME+10%FBSに懸濁した。これにより、第1の細胞集団を含む細胞懸濁液が調製された。この細胞懸濁液には、接着性細胞及びマクロファージが含まれている。
この段階で細胞を凍結保存する場合は、剥離した細胞(第1の細胞集団)を遠心分離して集めた後、バンバンカー(日本ジェネチクス、品番BB01)にて懸濁した。希釈倍率を1:3として、直径10mmの組織培養用ディッシュから得られた細胞懸濁液を3本の凍結保存用チューブに小分けし、マイナス80℃のディープフリーザー内で凍結保存した(凍結された細胞集団)。
(3)拡大用の継代培養と凍結保存
直径10cmの組織培養用ディッシュ(培養面積56cm2、IWAKI、品番3020−100)に、10%ウシ胎児血清を含むダルベッコ改変イーグル培地(DME+10%FBS)を12mL入れた。上記(2)で調製した細胞懸濁液を遠心分離して細胞集団を集め、ディッシュに播いた。85〜100%コンフルエントになるまで、37℃で培養した(1〜3週間程度)。これにより、第1の細胞集団に含まれる接着性細胞とマクロファージとが共培養され、接着性細胞とマクロファージがディッシュ上で共に増殖した。
ディッシュから培地を取り除き、ディッシュ上で増殖した細胞をHBSSで2回程度洗浄した。細胞剥離液Aを添加し、37℃で10〜15分インキュベートし、細胞を剥離した。遠心分離して細胞(第2の細胞集団)を集めた。集めた細胞をバンバンカー(日本ジェネチクス、品番BB01)にて懸濁した。希釈倍率を1:3として、直径10mmの組織培養用ディッシュから得られた細胞懸濁液を3本の凍結保存用チューブに小分けし、マイナス80℃のディープフリーザー内で凍結保存した。
凍結保存した細胞集団を用いて、同様の継代培養を再開した。100%コンフルエントになるまで、37℃で培養した(1〜3週間程度)。細胞を剥離後、バンバンカーに懸濁し、同様にして3本の凍結保存用チューブに小分けし、マイナス80℃のディープフリーザー内で凍結保存した。
同様の継代培養と凍結保存を計6回繰り返した。
継代6代目の凍結保存した細胞集団を用いて、同様の継代培養を行った。100%コンフルエントになるまで、37℃で培養した(1〜3週間程度)。細胞を剥離後、適量のDME-FBSで細胞を懸濁した(継代7代目)。
(4)継代培養工程
継代7代目の細胞集団を用いて、同様の継代培養を行った(継代8代目)。100%コンフルエントになるまで、37℃で培養した(1〜3週間程度)。図3に、継代培養終了時における8代目の細胞の位相差顕微鏡写真を示す。すなわち、線維芽細様細胞とマクロファージ(小型の細胞)によって占められており、両細胞は混在して存在していた。細胞を剥離後、適量のDME-FBSで細胞を懸濁した。
(5)マクロファージの選抜と未接着細胞の回収
直径10mmの微生物培養用ディッシュ(選別用基材;培養面積56cm2、アズワン、品番1−7484−01)に、10%ウシ胎児血清を含むRPMI1640培地(RPMI1640+10%FBS)を12mL入れた。上記(4)で調製した細胞懸濁液(継代8代目)を遠心分離して細胞集団(第3の細胞集団)を集め、微生物培養用ディッシュに播いた。37℃で2〜7日間インキュベートした。翌日迄には、ほとんどのマクロファージはディッシュに接着した。また、線維芽様細胞の一部は一時的にディッシュに接着するものの、接着した線維芽様細胞のほとんどは数日間の培養でディッシュ面から外れて浮遊細胞塊を形成した。これにより、ディッシュ上にマクロファージが接着し、ディッシュに接着しない未接着細胞と分離された。
図4に、微生物培養用ディッシュで分離したマクロファージの位相差像を示す。すなわち、線維芽様細胞は微生物培養用ディッシュには接着せずに多様な大きさの細胞塊を形成し、また、マクロファージは微生物培養用ディッシュに接着して存在していた。
ディッシュから上清を回収した。この上清には、マクロファージ以外の接着性細胞とディッシュに接着しなかったマクロファージが含まれている(未接着細胞)。
一方、ディッシュに接着した細胞(マクロファージ)をHBSSで2回程度洗浄した。EDTAを含む細胞剥離液B(5mM EDTA in HBSS, 20mM Hepes (pH7.3-7.4))を添加し、37℃で5分間インキュベートし、細胞を剥離した。遠心分離して細胞を集め、HBSSで数回洗浄後、適量のHBSSで細胞を懸濁した。これにより、選抜されたマクロファージの細胞懸濁液が得られた。
(6)選抜されたマクロファージの評価(ビーズ貪食能)
選抜されたマクロファージについて、ビーズを用いて貪食能を調べた。また、ビーズを貪食した細胞の割合を計測して選抜されたマクロファージの純度の純度を調べた。
選抜されたマクロファージの細胞懸濁液をHBSSで1回洗浄後、メッシュの大きさ35μmのセルストレナー(BD Falcon、品番352235)を通して、細胞懸濁液に混入している細胞塊を除去した後、4.0×105個/1mL(2%ウシ胎児血清を含むRPMI1640培地)の割合になるように細胞懸濁液を作製し、5mLのチューブに入れた。そこに蛍光標識ビーズ(Fluorescent yellow-green(FYG)標識 Latex beads、蛍光波長:505 nm、ビーズの平均直径:1μm、Sigma-Aldrich、品番L4655)を細胞懸濁液1mLあたり1μL添加し、37℃で2〜3時間インキュベートした。HBSSで2回洗浄後、10%ウシ胎児血清を含むRPMI1640培地に細胞を懸濁し、直径35mmのガラスベースディッシュ(IWAKI、品番3020−100)に播種した。37℃で2〜3時間インキュベート後、PBS緩衝10%ホルマリンで一晩固定した。倒立型蛍光顕微鏡により同一部位の蛍光像と位相差像を撮影し、両像を重ね合わせた像を用いて、ビーズを貪食している細胞をマクロファージとみなし、533個の細胞をカウントして全細胞に対するマクロファージ割合を計測し、純度を調べた。
図5に蛍光像と位相差像の重ね合わせ像を示す。ほとんどすべての細胞は数個から数十個のビーズを貪食しており、選抜されたマクロファージはビーズに対する貪食能を有していた。また、選抜されたマクロファージの純度は97.9%であった。
(7)未接着細胞の継代培養(第2継代培養工程)
上記(5)で回収した上清を遠心分離し、未接着細胞(第4の細胞集団)を得た。得られた未接着細胞を適量のDME+10%FBSで懸濁した。この細胞懸濁液を用い、上記(4)と同様の培養を行った。図6に、培養終了時における細胞の位相差顕微鏡写真を示す。すなわち、線維芽細様細胞が全面に広がっており、線維芽細様細胞の間、および線維芽細様細胞の上にマクロファージが存在していた。細胞を剥離後、適量のDME-FBSで細胞を懸濁した。
(8)マクロファージの選抜(2回目)
上記(7)で得られた細胞懸濁液を用いて、上記(5)と同様にして、マクロファージの選抜と未接着細胞の回収を行った。
図7に、微生物培養用ディッシュで分離したマクロファージの位相差像を示す。なお図7では培養液で洗浄し、浮遊細胞塊を除いている。すなわち、マクロファージは円形、紡錘形の小型の細胞として分散し微生物培養用ディッシュに接着していた。
(9)選抜されたマクロファージの評価(ビーズ貪食能)
上記(8)で選抜されたマクロファージについて、上記(6)と同様の方法で評価した。
図8に蛍光像と位相差像の重ね合わせ像を示す。ほとんどすべての細胞は数個から数十個のビーズを貪食しており、選抜されたマクロファージはビーズに対する貪食能を有していた。また、ビーズを貪食している細胞をマクロファージとみなし、941個の細胞をカウントして全細胞に対するマクロファージ割合を計測し、純度を調べた。その結果、純度は99.4%であった。
このように、未接着細胞を継代培養した後に選抜されたマクロファージは、ビーズに対する貪食能を有していた。
(10)選抜されたマクロファージの評価(フローサイトメトリー)
上記(8)で選抜されたマクロファージについて、フローサイトメトリーによりマクロファージのマーカー蛋白の発現性状を調べ、選抜された細胞がマクロファージであることを確認した。
上記(8)で選抜された細胞懸濁液をHBSSで1回、2mMのEDTAを含むPBS(EDTA−PBS)で洗浄後、メッシュの大きさ35μmのセルストレナー(BD Falcon、品番352235)を通して細胞懸濁液に混入している細胞塊を除去した。遠心分離により上清を除去後、5.0×105個/50μL(1%ウシ血清アルブミンを含むEDTA−PBS(BSA-EDTA−PBS)に細胞を分散)になるように細胞懸濁液を作製し、5mLのチューブに50μLを分注した。そこに、Fc受容体を介した抗体の結合を防ぐため、anti-mouse CD16/CD32b抗体(1.0μg、Tonbo、品番70−0161)を添加し、4℃で5〜10分間インキュベートした。その後、抗体の蛍光標識されたマクロファージのマーカー蛋白に対する抗体(0.5μg、FITC標識anti-human/mouse CD11b抗体、Tonbo、品番20−0112;0.5μg、APC標識anti-mouse F4/80抗体、Tonbo、品番20−4801)を添加し、室温で20分間インキュベートした。EDTA−PBSで1〜2回洗浄後、0.4〜0.5mLのBSA-EDTA−PBS10に細胞を懸濁した。フローサイトメーターを用いて選抜されたマクロファージにおけるCD11bとF4/80の発現性状を調べた。
図9にフローサイトメトリーの結果を示す。すなわち、選抜されたマクロファージはCD11b強陽性、F4/80陽性の性状を示した。
以上より、少なくとも8回の継代培養と1回の選抜の繰り返しが可能であり、マクロファージを繰り返し増殖させることが可能であった。
本実施例により、継代を8回繰り返すことによって第2の細胞集団の細胞量を増やし、得られた第3の細胞集団から1回選抜した場合、計算上ではマウス1匹の脾臓から少なくとも約2.2×109個のマクロファージを得られると見積もることができる。加えて、第3の細胞集団から第4の細胞集団を得て、第4の細胞集団から3回の選抜を行った場合は上記の0.75倍程度のマクロファージを得られると見積もることができる。
本実施例では、マウスの肝臓から単離したマクロファージを大量培養した。
(1−1)間質細胞画分の調製(灌流法)
8週齢のICRマウスに麻酔薬を腹腔内投与した。ヘパリン添加ハンクス液を腹腔内投与した後、門脈から肝臓にコラゲナーゼ液(0.5mg/mL Collagenase Type IV in HBSS, 20mM Hepes (pH 7.2〜7.4), 1mM CaCl2)を37℃で灌流させた。Collagenase Type IVは、Sigma-Aldrich社製のカタログ番号C5138を用いた。コラゲナーゼ処理された肝臓を切り離し、HBSS内で分散させた。分散液を孔径100μm(BD Falcon、品番352360)のメッシュで濾過した。濾液を50gで1分間遠心分離し、上清を回収した。これにより、肝実質細胞が沈殿して取り除かれた。同様の遠心分離操作を1〜2回繰り返し、上清を回収した。回収した上清を、140gで4分間遠心分離した。これにより、間質細胞(非実質細胞)に富む細胞集団が沈殿した。この沈降物(主にマクロファージと微小細胞塊を含む細胞集団からなる)を、10mLのHBSSを用いて数回洗浄した。
(1−2)間質細胞画分の調製(細切法)
別法として、以下のように実施例1と同様の方法でも間質細胞画分を調製した。
8週齢のICRマウスに麻酔薬を腹腔内投与した。ヘパリン添加ハンクス液を左心室から灌流した後、肝臓を採取した。カミソリを用いて肝臓を約1mm角に細切し、断片化した。断片化した肝臓を15mL容チューブに入れ、コラゲナーゼ液(0.5mg/mL Collagenase Type IV in HBSS, 20mM Hepes (pH 7.2〜7.4), 1mM CaCl2)を7.5〜12mL添加し、37℃で30〜60分インキュベートした。チューブを静置して上清と沈降物(組織塊)に分離し、上清を除去した。10mLのHBSSを添加して組織塊を2〜3回洗浄し、細胞分散液Aを除去した。洗浄した組織塊に4mL程度のHBSSを添加した。1mL容量の青色チップ(吐出口径:約0.8mm)を装着したマイクロピペットを用い、チップの先(吐出口)をチューブの底面近くまで入れ、液の吸引と排出を繰り返し(ピペッティング)、組織塊を分散及び細分化した。これにより、微小細胞塊が形成された。チューブを静置して上清と沈降物に分離し、上清を回収した。これにより、微小細胞塊とマクロファージとを含む間質細胞画分が得られた。回収した上清を遠心分離し、沈降物(主にマクロファージを含む単一細胞と微小細胞塊の細胞集団からなる)を集めた。上清を除去し、10mLのHBSSを用いて同様のピペッティング操作で沈降物を数回洗浄した。
(2)初代培養
上記(1−1)と(1−2)で調製した間質細胞画分を用いて、実施例1の(2)と同様の操作を行った。
図10と図11に、初代培養終了時における細胞の位相差顕微鏡写真を示す。図10は(1−1)の灌流法、図11は(1−2)の細切法によるものである。いずれも,線維芽様細胞とマクロファージ(小型の細胞)によって占められており、マクロファージの多くは明るい細胞として線維芽様細胞層の上に存在していた。
以降の操作では、灌流法で得られた間質細胞画分を用いた。
(3)拡大用の継代培養と凍結保存
実施例1の(3)と同様の操作を行い、細胞懸濁液を凍結保存した。凍結保存した細胞集団を用いて、1:3の希釈率で同様の継代培養を再開した。継代を3回繰り返した。
(4)継代培養工程
継代3代目の細胞集団を用いて、同様の継代培養を行った(継代4代目)。図12に、継代培養終了時における細胞の位相差顕微鏡写真を示す。すなわち、線維芽細様細胞が層状に広がっており、その上にマクロファージが存在していた。
(5)マクロファージの選抜と未接着細胞の回収
実施例1の(5)と同様の操作を行い、マクロファージの選抜と未接着細胞の回収を行った。図13に、微生物培養用ディッシュで分離したマクロファージの位相差像を示す。なお図13では培養液で洗浄し、浮遊細胞塊を除いている。すなわち、マクロファージは円形、紡錘形あるいは楕円形・円形の小型の細胞として分散し、微生物培養用ディッシュに接着していた。
(6)未接着細胞の継代培養(第2継代培養工程)
実施例1の(7)と同様の操作を行い、未接着細胞を継代培養した。図14に、継代培養終了時における細胞の位相差顕微鏡写真を示す。すなわち、線維芽細様細胞が層状に広がっており、その上に小型の細胞、すなわちマクロファージが存在していた。細胞を剥離後、適量のDME-FBSで細胞を懸濁した。
(7)マクロファージの選抜(2回目)
実施例1の(8)と同様の操作を行い、マクロファージの選抜と未接着細胞の回収を行った。
図15に、微生物培養用ディッシュで分離したマクロファージの位相差像を示す。なお図15では培養液で洗浄し、浮遊細胞塊を除いている。すなわち、マクロファージは円形、紡錘形あるいは楕円形・円形の小型の細胞として微生物培養用ディッシュに接着していた。
(8)選抜されたマクロファージの評価(ビーズ貪食能)
上記(7)で選抜されたマクロファージについて、実施例1の(9)と同様にして評価を行った。図16に蛍光像と位相差像の重ね合わせ像を示す。ほとんどすべての細胞は数個から数十個のビーズを貪食しており、選抜されたマクロファージはビーズに対する貪食能を有していた。また、ビーズを貪食している細胞をマクロファージとみなし、869個の細胞をカウントして全細胞に対するマクロファージ割合を計測し、純度を調べた。その結果、純度は99.0%であった。このように、選抜されたマクロファージはビーズに対する貪食能を有していた。
(9)選抜されたマクロファージの評価(フローサイトメトリー)
上記(7)で選抜されたマクロファージについて、実施例1の(10)と同様にして評価を行った。マーカー蛋白として一部のマクロファージに発現するCXCR4(ケモカイン受容体の1つ)とマクロファージに広く発現するF4/80を選択した。FITC標識anti-mouseCXCR4抗体(Miltenyi Biotec、品番130−102−911;0.15μg)とAPC標識anti-mouse F4/80抗体(Tonbo、品番20−4801;0.5μg)を使用した。
図17に、フローサイトメトリーの結果を示す。すなわち、選抜されたマクロファージはCXCR4陰性、F4/80陽性の性状を示した。
以上より、少なくとも4回の継代培養と1回の選抜の繰り返しが可能であり、マクロファージを繰り返し増殖させることが可能であった。
本実施例により、継代を4回繰り返すことによって第2の細胞集団の細胞量を増やし、得られた第3の細胞集団から1回選抜した場合、計算上ではマウス1匹の肝臓から少なくとも約2.7×107個のマクロファージを得ると見積もることができる。加えて、第3の細胞集団から第4の細胞集団を得て、第4の細胞集団から1回の選抜を行った場合は上記の約0.75倍のマクロファージが得られると見積もることができる。
本実施例では、マウスの肺から単離したマクロファージを大量培養した。
(1)間質細胞画分の調製
5週齢のICRマウスに麻酔薬を腹腔内投与した。右心耳を切って放血させ、ヘパリン添加ハンクス液を左心室から灌流した後、肺を気管(喉頭との境界)とともに採取した。ハンクス液を気管から気道に入れて、肺胞を数回洗浄した後、カミソリを用いて肺を約1mm角に細切し、断片化した。細胞分散液Aに代えて、コラゲナーゼを含む細胞分散液B(0.5mg/mL Collagenase Type IA in HBSS, 20mM Hepes (pH 7.2〜7.4), 1mM CaCl2)を用いる以外は実施例1の(1)と同様の操作を行い、遠心分離後の沈降物(主にマクロファージと微小細胞塊を含む細胞集団からなる)を得た。上清を除去し、10mLのHBSSを用いて沈降物を数回洗浄した。
(2)初代培養
実施例1の(2)と同様の操作を行った。これにより、微小細胞塊を構成する接着性細胞とマクロファージとが共培養され、接着性細胞塊とマクロファージがディッシュ上で共に増殖した。図18に、初代培養終了時における細胞の位相差顕微鏡写真を示す。すなわち、線維芽細胞様の細胞が層状に広がっており、その上にマクロファージが凝集あるいは分散して存在していた。
(3)拡大用の継代培養
実施例1の(3)と同様の操作を行い、細胞懸濁液を凍結保存した。凍結保存した細胞集団を用いて、1:3の希釈率で同様の継代培養を再開した。継代を4回繰り返した。
(4)継代培養工程
継代4代目の細胞集団を用いて、同様の継代培養を行った(継代5代目)。図19に、継代培養終了時における細胞の位相差顕微鏡写真を示す。すなわち、すなわち、線維芽細様細胞が層状に広がっており、その上にマクロファージが凝集あるいは分散して存在していた。
(5)マクロファージの選抜と未接着細胞の回収
実施例1の(5)と同様の操作を行い、マクロファージの選抜と未接着細胞の回収を行った。図20に、微生物培養用ディッシュで分離したマクロファージの位相差像を示す。すなわち、線維芽様細胞は微生物培養用ディッシュには接着せずに多様な大きさの細胞塊を形成し、また、マクロファージは接着して存在していた。
(6)選抜されたマクロファージの評価(ビーズ貪食能)
実施例1の(6)と同様にして、選抜されたマクロファージの評価を行った。ビーズを貪食している細胞をマクロファージとみなし、1034個の細胞をカウントして全細胞に対するマクロファージ割合を計測し、純度を調べた。その結果、選抜されたマクロファージの純度は98.8%であった。
(7)未接着細胞の継代培養(第2継代培養工程)
実施例1の(7)と同様の操作を行い、未接着細胞を継代培養した。図21に、継代培養終了時における細胞の位相差顕微鏡写真を示す。すなわち、線維芽細様細胞が層状に広がっており、その上に小型の細胞、すなわちマクロファージが存在していた。細胞を剥離後、適量のDME-FBSで細胞を懸濁した。
(8)マクロファージの選抜(2回目)
実施例1の(8)と同様の操作を行い、マクロファージの選抜と未接着細胞の回収を行った。図22に、微生物培養用ディッシュで分離したマクロファージの位相差像を示す。なお図22では培養液で洗浄し、浮遊細胞塊を除いている。すなわち、マクロファージは円形、紡錘形あるいは楕円形・円形の小型の細胞として微生物培養用ディッシュに接着していた。
(9)選抜されたマクロファージの評価(ビーズ貪食能)
上記(8)で選抜されたマクロファージについて、実施例1の(9)と同様にして評価を行った。図23に蛍光像と位相差像の重ね合わせ像を示す。ほとんどすべての細胞は数個から数十個のビーズを貪食しており、選抜されたマクロファージはビーズに対する貪食能を有していた。また、ビーズを貪食している細胞をマクロファージとみなし、1222個の細胞をカウントして全細胞に対するマクロファージ割合を計測し、純度を調べた。その結果、純度は96.2%であった。このように、選抜されたマクロファージはビーズに対する貪食能を有していた。
(10)選抜されたマクロファージの評価(フローサイトメトリー)
上記(8)で選抜されたマクロファージについて、実施例1の(10)と同様にして評価を行った。実施例1と同様に、マーカー蛋白としてCD11b(マクロファージに発現するインテグリンMac1のα鎖)とマクロファージに広く発現するF4/80を選択し、FITC標識anti-human/mouse CD11b抗体(Tonbo、品番20−0112;0.5μg)とAPC標識anti-mouse F4/80抗体(Tonbo、品番20−4801;0.5μg)を使用した。
図24に、フローサイトメトリーの結果を示す。すなわち、選抜されたマクロファージはCD11b強陽性、F4/80陽性の性状を示した。
以上より、少なくとも5回の継代培養と1回の選抜の繰り返しが可能であり、マクロファージを繰り返し増殖させることが可能であった。
本実施例により、継代を5回繰り返すことによって第2の細胞集団の細胞量を増やし、得られた第3の細胞集団から1回選抜した場合、計算上ではマウス1匹の肺から少なくとも約8.1×107個のマクロファージを得ると見積もることができる。加えて、第3の細胞集団から第4の細胞集団を得て、第4の細胞集団から1回の選抜を行った場合は上記の0.75倍のマクロファージが得られると見積もることができる。
本実施例では、若齢マウスの脳から単離したマクロファージを大量培養した。
(1)間質細胞画分の調製
3.5週齢のICRマウスに麻酔薬を腹腔内投与した。右心耳を切って放血させ、ヘパリン添加ハンクス液を左心室から灌流した後、脳を採取した。カミソリを用いて脳を約1mm角に細切し、断片化した。
細胞分散液Aに代えて、ディスパーゼを含む細胞分散液C(1.0 mg/mL Dispase in HBSS, 20mM Hepes (pH 7.2〜7.4), 1mM CaCl2)を用いる以外は実施例1の(1)と同様の操作を行い、遠心分離後の沈降物(主にマクロファージと微小細胞塊を含む細胞集団からなる)を得た。上清を除去し、10mLのHBSSを用いて沈降物を数回洗浄した。
(2)初代培養
培地として10%ウシ胎児血清を含むダルベッコ改変イーグル培地/栄養混合物F−12ハム(DME/F12+FBS)を用いる以外は、実施例1の(2)と同様の操作を行った。これにより、微小細胞塊を構成する接着性細胞とマクロファージとが共培養され、接着性細胞塊とマクロファージがディッシュ上で共に増殖した。図25に、初代培養終了時における細胞の位相差顕微鏡写真を示す。すなわち、繊維芽細胞様の細胞が層状に広がっており、その上にマクロファージが凝集あるいは分散して存在していた。
実施例1の(2)と同様の操作を行って、第1の細胞集団を含む細胞懸濁液を調製した。この細胞懸濁液には、接着性細胞及びマクロファージが含まれている。
(3)拡大用の継代培養
培地として10%ウシ胎児血清を含むダルベッコ改変イーグル培地/栄養混合物F−12ハム(DME/F12+FBS)を用いる以外は、実施例1の(3)と同様の操作を行い、第1の細胞集団に含まれる接着性細胞とマクロファージをディッシュ上で共に増殖させた。
(4)継代培養工程
1:2の希釈倍率で上記(3)と同様の操作を繰り返し、継代培養を再度行った(継代2回)。図26に、継代培養終了時における細胞の位相差顕微鏡写真を示す。すなわち、線維芽細様細胞が層状に広がっており、その上にマクロファージが凝集あるいは分散して存在していた。
(5)マクロファージの選抜と未接着細胞の回収
実施例1の(5)と同様の操作を行い、マクロファージの選抜と未接着細胞の回収を行った。図27に、微生物培養用ディッシュで分離したマクロファージの位相差像を示す。すなわち、線維芽様細胞は微生物培養用ディッシュには接着せずに多様な大きさの細胞塊を形成し、また、マクロファージは接着して存在していた。
(6)選抜されたマクロファージの評価(ビーズ貪食能)
実施例1の(6)と同様にして、選抜されたマクロファージの評価を行った。ビーズを貪食している細胞をマクロファージとみなし、977個の細胞をカウントして全細胞に対するマクロファージ割合を計測し、純度を調べた。その結果、選抜されたマクロファージの純度は98.3%であった。
(7)未接着細胞の継代培養(第2継代培養工程)
実施例1の(7)と同様の操作を行い、未接着細胞を継代培養した。図28に、継代培養終了時における細胞の位相差顕微鏡写真を示す。すなわち、線維芽細様細胞が層状に広がっており、その上に小型の細胞、すなわちマクロファージが存在していた。
(8)マクロファージの選抜(2回目)
実施例1の(8)と同様の操作を行い、マクロファージの選抜と未接着細胞の回収を行った。図29に、微生物培養用ディッシュで分離したマクロファージの位相差像を示す。なお図29では培養液で洗浄し、浮遊細胞塊を除いている。すなわち、マクロファージは円形、紡錘形あるいは楕円形・円形の小型の細胞として微生物培養用ディッシュに接着していた。
(9)選抜されたマクロファージの評価(ビーズ貪食能)
上記(8)で選抜されたマクロファージについて、実施例1の(9)と同様にして評価を行った。図30に蛍光像と位相差像の重ね合わせ像を示す。ほとんどすべての細胞は数個から数十個のビーズを貪食しており、選抜されたマクロファージはビーズに対する貪食能を有していた。また、ビーズを貪食している細胞をマクロファージとみなし、677個の細胞をカウントして全細胞に対するマクロファージ割合を計測し、純度を調べた。その結果、純度は97.6%であった。このように、選抜されたマクロファージはビーズに対する貪食能を有していた。
(10)選抜されたマクロファージの評価(フローサイトメトリー)
上記(8)で選抜されたマクロファージについて、実施例1の(10)と同様にして評価を行った。マーカー蛋白としてマクロファージの増殖因子の受容体であるCD115(macrophage colony-stimulating factor(M-CSF)の受容体)とマクロファージに広く発現するF4/80を選択した。FITC標識anti-mouseCD115抗体(Tonbo、品番35−1152;0.5μg)とAPC標識anti-mouse F4/80抗体(Tonbo、品番20−4801;0.5μg)を使用した。
図31にフローサイトメトリーの結果を示す。すなわち、選抜されたマクロファージはCD115陽性、F4/80陽性の性状を示した。
以上より、少なくとも2回の継代培養と1回の選抜の繰り返しが可能であり、マクロファージを繰り返し増殖させることが可能であった。
本実施例により、継代を2回繰り返すことによって第2の細胞集団の細胞量を増やし、得られた第3の細胞集団から1回選抜した場合、計算上ではマウス1匹の脳から少なくとも1.3×106個のマクロファージを得ると見積もることができる。加えて、第3の細胞集団から第4の細胞集団を得て、第4の細胞集団から1回の選抜を行った場合は上記の0.75倍のマクロファージが得られると見積もることができる。

Claims (13)

  1. 哺乳動物の器官又は組織から単離された組織在住マクロファージを増殖させるマクロファージの増殖方法であって、
    哺乳動物の器官又は組織の細胞分散処理物から、マクロファージとマクロファージ以外の接着性細胞とを含む間質細胞画分を取得する工程と、
    前記間質細胞画分を用いて初代培養を行い、前記間質細胞画分に含まれる接着性細胞とマクロファージを共に増殖させる工程と、
    を包含する方法によって得られた、接着性細胞とマクロファージとを含む第1の細胞集団、又は当該第1の細胞集団を継代培養して得られた第2の細胞集団を用いるものであり、
    前記第1の細胞集団又は第2の細胞集団を少なくとも1回継代培養することによりマクロファージを増殖させる継代培養工程を包含することを特徴とするマクロファージの増殖方法。
  2. 前記第1の細胞集団又は第2の細胞集団の凍結物を、前記継代培養工程に供することを特徴とする請求項1に記載のマクロファージの増殖方法。
  3. 前記間質細胞画分は、マクロファージ以外の接着性細胞で形成された微小細胞塊を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載のマクロファージの増殖方法。
  4. 前記継代培養工程終了時におけるマクロファージの細胞密度が、1平方センチメートルあたり0.8×104個以上であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のマクロファージの増殖方法。
  5. 前記継代培養工程によって得られた、接着性細胞とマクロファージとを含む第3の細胞集団を、基材に対する接着性の相違によってマクロファージと他の接着性細胞とを選別可能な選別用基材に供し、第3の細胞集団に含まれるマクロファージを当該選別用基材に接着させて選抜する選抜工程、
    をさらに包含することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のマクロファージの増殖方法。
  6. 前記選抜工程で選抜されたマクロファージの純度が85%以上であることを特徴とする請求項5に記載のマクロファージの増殖方法。
  7. 前記選別用基材に接着せずに浮遊した、接着性細胞とマクロファージを含む未接着細胞を回収し、前記未接着細胞からなる第4の細胞集団を得る細胞回収工程と、
    前記第4の細胞集団を少なくとも1回継代培養することによりマクロファージを増殖させる第2継代培養工程と、
    をさらに包含することを特徴とする請求項5又は6に記載のマクロファージの増殖方法。
  8. 前記第2継代培養工程終了時におけるマクロファージの細胞密度が、1平方センチメートルあたり0.8×104個以上であることを特徴とする請求項7に記載のマクロファージの増殖方法。
  9. 前記選別用基材は、表面が親水処理されていないプラスチック製であることを特徴とする請求項5〜8のいずれかに記載のマクロファージの増殖方法。
  10. 前記器官又は組織は、肝臓、脳、肺、又は脾臓であることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載のマクロファージの増殖方法。
  11. 請求項1〜10のいずれかに記載のマクロファージの増殖方法によってマクロファージを増殖させ、複数のマクロファージからなる細胞集団を製造することを特徴とする細胞集団の製造方法。
  12. マクロファージを含有する凍結された細胞集団の製造方法であって、
    請求項1で定義された第1の細胞集団又は第2の細胞集団を凍結するものであり、
    凍結された細胞集団の融解後において、前記第1の細胞集団又は第2の細胞集団に含まれる接着性細胞とマクロファージが共に増殖可能であることを特徴とする細胞集団の製造方法。
  13. 凍結された細胞集団におけるマクロファージの生存率が75%以上であることを特徴とする請求項12に記載の細胞集団の製造方法。
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