JP2019011288A - 疾患治療用の細胞医薬組成物、疾患治療用キット、細胞医薬組成物の調製方法 - Google Patents

疾患治療用の細胞医薬組成物、疾患治療用キット、細胞医薬組成物の調製方法 Download PDF

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Abstract

【課題】本発明は、間葉系幹細胞等の細胞を含む医薬品においては、細胞の生存率を長時間に渡って高く維持し、液性因子の分泌を高めた細胞医薬組成物を提供することを課題とする。【解決手段】本発明は、(A)アルギン酸及び/又はその塩を含有する溶液、(B)2価以上の金属イオンを含有する溶液、及び(C)細胞を混合して得られる、疾患治療用の細胞医薬組成物である。(C)細胞は、間葉系幹細胞であることが好ましい。また、上記間葉系幹細胞は、脂肪由来、臍帯由来又は骨髄由来であることがより好ましい。【選択図】なし

Description

本発明は、疾患治療用の細胞医薬組成物、疾患治療用キット、細胞医薬組成物の調製方法に関する。
細胞を含む医薬品を疾患治療に用いるための技術は年々進歩している。特にiPS細胞、造血幹細胞、間葉系幹細胞等の幹細胞、皮膚細胞、心筋細胞等については、基礎的な研究段階から開発段階へと移行して、現在では、実際に臨床の場で用いられているものも存在する。細胞による疾患の治療においては、細胞自体が有する機能を直接的又は間接的に疾患治療のために用いること、ダメージを受けた患者の細胞や組織の機能を、幹細胞から新たに分化させた細胞や臓器により補うこと等が期待されている。
例えば、間葉系幹細胞は、Friedensteinによって初めて骨髄から単離された多分化能を有する前駆細胞である(非特許文献1)。この間葉系幹細胞は、骨髄、臍帯、脂肪等の様々な組織に存在することが明らかにされており、間葉系幹細胞移植は、様々な難治性疾患に対する新しい治療方法として、期待されている(特許文献1〜4)。最近では、脂肪組織、胎盤、臍帯、卵膜等の胎児付属物の間質細胞に同等の機能を有する細胞が存在することが知られている。従って、間葉系幹細胞を間質細胞(Mesenchymal Stromal Cell)と称することもある。
また、間葉系幹細胞が種々の疾患に効果発揮するメカニズムとしては、投与した細胞から産生される液性因子等の分泌因子が大きく寄与していることが知られている(非特許文献2)。従って、間葉系幹細胞による疾患への効果を高めるために間葉系幹細胞が多くの液性因子を分泌することが重要となってくる。
特表2002−506831号公報 特表2000−508911号公報 特開2012−157263号公報 特表2012−508733号公報
Pittenger F.M.et al.,Science,1999,284,pp.143−147 石井強,日本再生医療学会雑誌,2017,16Suppl,p.199
本発明は上述のような事情に基づいてなされたものであり、間葉系幹細胞等の細胞を含む医薬品において、細胞の生存率を長時間に渡って高く維持し、液性因子の分泌を高めた細胞医薬組成物を提供することを課題とする。
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、(C)細胞を、(A)アルギン酸及び/又はその塩を含有する溶液と(B)2価以上の金属イオンを含有する溶液とを混合して得られるゲル中に含有させることにより、細胞の生存率を上昇させられること、細胞からの液性因子の分泌を高められることを見出した。本発明の細胞医薬組成物はゲル状となるため、疾患部位を被覆でき、ゲル内の細胞が十分に疾患部位に作用し、また、分泌が高められた液性因子が高い治療効果を発揮することができる。本発明はこれらの知見に基づいて完成されたものである。
すなわち本発明の要旨は、以下の通りである。
[1](A)アルギン酸及び/又はその塩を含有する溶液、(B)2価以上の金属イオンを含有する溶液、及び(C)細胞を混合して得られる、疾患治療用の細胞医薬組成物。
[2](C)細胞が、間葉系幹細胞又は線維芽細胞である、[1]に記載の細胞医薬組成物。
[3]上記間葉系幹細胞が、脂肪由来、臍帯由来又は骨髄由来である、[2]に記載の細胞医薬組成物。
[4](C)細胞が、被験体に対して同種異系である、[1]から[3]のいずれかに記載の細胞医薬組成物。
[5]上記混合において、あらかじめ(C)細胞を(A)溶液に懸濁して細胞懸濁液(A’)を調製した後に細胞懸濁液(A’)と(B)溶液を混合するか、又はあらかじめ(C)細胞を(B)溶液に懸濁して細胞懸濁液(B’)を調製した後に細胞懸濁液(B’)と(A)溶液とを混合して得られる、[1]から[4]のいずれかに記載の細胞医薬組成物。
[6]使用時に、上記細胞懸濁液(A’)と(B)溶液とを、又は上記細胞懸濁液(B’)と(A)溶液とを、実質的に同時に疾患部位に直接噴霧する、[5]に記載の細胞医薬組成物。
[7]ゲル状である、[1]から[6]のいずれかに記載の細胞医薬組成物。
[8](C)細胞が、凍結された細胞である、[1]から[7]のいずれかに記載の細胞医薬組成物。
[9]上記疾患が、内臓疾患である、[1]から[8]のいずれかに記載の細胞医薬組成物。
[10](C)細胞が、細胞医薬組成物中に1×10〜1×10細胞/mL含有される、[1]から[9]のいずれかに記載の細胞医薬組成物。
[11](A)アルギン酸及び/又はその塩を含有する溶液、(B)2価以上の金属イオンを含有する溶液、及び(C)細胞を別々の形態で含む、疾患治療用キット。
[12](C)細胞を(A)アルギン酸及び/又はその塩を含有する溶液、又は(B)2価以上の金属イオンを含有する溶液に懸濁し、得られた細胞懸濁液と、上記懸濁に用いなかった(A)溶液又は(B)溶液とを、実質的に同時に疾患部位に直接噴霧して混合する、ゲル状の細胞医薬組成物の調製方法。
本発明の細胞医薬組成物は、細胞の状態を良好に保ち、その生存率を長時間に渡って高い状態で維持することができる。また、本発明の細胞医薬組成物中では細胞からの液性因子の分泌が高められるため、様々な疾患に対して優れた治療効果が期待できる。
図1は、アルギン酸ゲル中、コラーゲンゲル中での培養3日目の生細胞数をCell Counting Kit−8を用いて比較した結果を示す図である。 図2は、アルギン酸ゲル中、コラーゲンゲル中での培養4日目の生細胞数をCell Counting Kit−8を用いて比較した結果を示す図である。 図3は、アルギン酸ゲル中、コラーゲンゲル中での培養5日目の生細胞数をCell Counting Kit−8を用いて比較した結果を示す図である。 図4は、アルギン酸ゲル中、コラーゲンゲル中での培養4日目の生細胞数をCell Counting Kit−8を用いて比較した結果を示す図である。 図5は、アルギン酸ゲル中、コラーゲンゲル中での、細胞からのHGF分泌量を比較した結果を示す図である。
本発明の疾患治療用の細胞医薬組成物、疾患治療用キット、細胞医薬組成物の調製方法について詳細に説明する。
<細胞医薬組成物>
本発明の疾患治療用の細胞医薬組成物は、(A)アルギン酸及び/又はその塩を含有する溶液(以下、「(A)溶液」ともいう)、(B)2価以上の金属イオンを含有する溶液(以下、「(B)溶液」ともいう)及び(C)細胞を混合することによって得られる。上記混合においては、あらかじめ(C)細胞を(A)溶液に懸濁して細胞懸濁液(A’)を調製した後に細胞懸濁液(A’)と(B)溶液を混合するか、又はあらかじめ(C)細胞を(B)溶液に懸濁して細胞懸濁液(B’)を調製した後に細胞懸濁液(B’)と(A)溶液とを混合することによって調製されることが好ましい。また、本発明の細胞医薬組成物は、使用時に、上記細胞懸濁液(A’)と(B)溶液とを、又は上記細胞懸濁液(B’)と(A)溶液とを、実質的に同時に疾患部位に直接噴霧されることがより好ましい。このように、本発明の細胞医薬組成物は、(A)溶液と(B)溶液を混合して得られるため、アルギン酸塩の水溶液と金属イオンを含む水溶液を接触させることで、イオン架橋反応が起こり、ゲル状の形態となる。さらに、本発明の細胞医薬組成物は、使用前に、上記細胞懸濁液(A’)と(B)溶液とを、又は上記細胞懸濁液(B’)と(A)溶液とを混合して、生体外でゲル化させ、シート状にして疾患治療剤として用いることもできる。このゲル状となった細胞医薬組成物は、疾患部位を被覆して中に含まれる細胞の作用により各種疾患に対して優れた治療効果を奏する。以下、本発明を構成する各要件について具体的に記載する。
[(A)アルギン酸及び/又はその塩を含有する溶液]
アルギン酸とは、海藻の藻体に含まれる細胞間多糖類であり、マンヌロン酸(以下、単に「M」と表示することもある)とグルロン酸(以下、単に「G」と表示することもある)から構成される多糖類であり、マンヌロン酸のホモポリマー画分(MM画分)、グルロン酸のホモポリマー画分(GG画分)、及びマンヌロン酸とグルロン酸がランダムに配列した画分(MG画分)が任意に結合したブロック共重合体である。
本発明に使用されるアルギン酸において、そのグルロン酸に対するマンヌロン酸の構成比率(M/G比;モル比)は、特に制限されず、例えばM/G比が0.4〜4.0の範囲に含まれるものが広く使用される。M/G比が小さい程、細胞医薬組成物のゲル化を開始し易い傾向があり、細胞医薬組成物の適用部位における滞留性を向上させるという観点からは、M/G比が2.5以下、好ましくは2.0以下、より好ましくは1.6以下である。なお、本発明において、M/G比は、アルギン酸をブロック単位で分解したものを分画し、それぞれを定量することにより算出される値である。具体的には、A. Haug et al., Carbohyd. Res. 32(1974),p.217−225に記載の方法に従って測定される。また、本発明に使用されるアルギン酸において、MM画分、GG画分及びMG画分の比率についても、特に制限されず、本発明の細胞医薬組成物の用途や形状に応じて適宜選択することができる。
本発明で使用されるアルギン酸及びその塩は、低分子量のものから高分子量のものまで適宜使用することができ、特に限定されないが、通常、重量平均分子量で0.1万〜150万、好ましくは0.5万〜100万、より好ましくは0.7万〜50万程度のものを使用できる。
本発明で使用されるアルギン酸及びその塩の粘度は、特に限定されないが、通常、1%水溶液にした場合の20℃における粘度が1〜10,000mPa・s、好ましくは10〜1,000mPa・s、より好ましくは20〜600mPa・s程度のものを使用できる。
アルギン酸の塩としては、薬理学的に又は生理学的に許容されることを限度として、特に制限されるものではない。本発明においてアルギン酸及びその塩として、例えばアルギン酸、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸カリウム、アルギン酸アンモニウム、アルギン酸エステル、アルギン酸プロピレングリコールエステル等が挙げられるが、これらのうち、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸カリウム、アルギン酸アンモニウムが好ましい。
アルギン酸として、薬添規アルギン酸、食添規アルギン酸;アルギン酸ナトリウムとして、薬添規アルギン酸ナトリウム、食添規アルギン酸ナトリウム;アルギン酸カリウムとして、食添規アルギン酸カリウム;アルギン酸アンモニウムとして、食添規アルギン酸アンモニウム;アルギン酸プロピレングリコールエステルとして、薬添規アルギン酸プロピレングリコールエステル、食添規アルギン酸プロピレングリコールエステル、粧原規アルギン酸プロピレングリコールエステルが挙げられる。
これらのアルギン酸及びその塩は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を任意に組み合わせて使用してもよい。
アルギン酸を含有する溶液としては、アルギン酸(食品添加物、三栄源エフ・エフ・アイ)、キミカアシッド(食品添加物、キミカ)、ダックアシッド(食品添加物、キッコーマンバイオケミファ)等の市販品を、輸液、培地等に溶解又は懸濁したものを用いてよい。
アルギン酸ナトリウムを含有する溶液としては、アルギン酸ナトリウム(食品添加物、三栄源エフ・エフ・アイ)、アルギン酸ナトリウム(食品添加物、純正化学)、キミカアルギン(食品添加物、キミカ)、ダックアルギン(食品添加物、キッコーマンバイオケミファ)、アルロイドG顆粒溶解用67%(カイゲンファーマ)、アルト原末(カイゲンファーマ)等の市販品を、輸液、培地等に溶解又は懸濁したものを用いてもよい。また、アルクレイン内用液5%(鶴原製薬)、アルロイドG内用液5%(カイゲンファーマ)、サンメール(登録商標)内用液5%(東亜薬品)等の市販品を用いてもよい。
アルギン酸カリウムを含有する溶液としては、キミカアルギンCAW(食品添加物、キミカ)等の市販品を、輸液、培地等に溶解又は懸濁したものを用いてよい。
アルギン酸アンモニウムを含有する溶液としては、キミカアルギンNH(食品添加物、キミカ)等の市販品を、輸液、培地等に溶解又は懸濁したものを用いてよい。
アルギン酸エステルを含有する溶液としては、キミカアルギンMV(食品添加物、キミカ)等の市販品を、輸液、培地等に溶解又は懸濁したものを用いてよい。
アルギン酸プロピレングリコールエステルを含有する溶液としては、ダックロイド(食品添加物、粧原規、キッコーマンバイオケミファ)等の市販品を、輸液、培地等に溶解又は懸濁したものを用いてよい。
本発明の(A)アルギン酸及び/又はその塩を含有する溶液におけるアルギン酸及び/又はその塩の配合割合は、アルギン酸及びその塩の種類、本発明の細胞医薬組成物の用途や製剤形態等に応じて適宜設定されるが、(A)アルギン酸及び/又はその塩を含有する溶液の総量に対して、アルギン酸及びその塩の総量で、通常0.001〜10w/v%、好ましくは0.005〜8w/v%、より好ましくは0.01〜5w/v%である。
[(B)2価以上の金属イオンを含有する溶液]
本発明の細胞医薬組成物において、2価以上の金属イオンは、アルギン酸分子中のカルボキシ基とイオン架橋反応を起こし、ゲル化する。金属イオンとしては、カルシウムイオン、マグネシウムイオン、水銀イオン、ストロンチウムイオン、バリウムイオン、ラジウムイオン等が挙げられるが、これらのうちカルシウムイオン、マグネシウムイオンが好ましく、カルシウムイオンがより好ましい。
カルシウムイオンを含む塩として、乳酸カルシウム、塩化カルシウム、水酸化カルシウム、硫酸カルシウム、ステアリン酸カルシウム、炭酸カルシウム、アスパラギン酸カルシウム、グルコン酸カルシウム、沈降炭酸カルシウム、リン酸水素カルシウム、クエン酸カルシウム、酸化カルシウム等が挙げられる。乳酸カルシウムとしては、日本薬局方乳酸カルシウム、日本薬局方乳酸カルシウム水和物、食添乳酸カルシウム;塩化カルシウムとしては、塩化カルシウム水和物、塩化カルシウム(日局)、食添塩化カルシウム;水酸化カルシウムとしては、日本薬局方水酸化カルシウム、食添水酸化カルシウム;硫酸カルシウムとしては、薬添規硫酸カルシウム、食添硫酸カルシウム;ステアリン酸カルシウムとしては、日本薬局方ステアリン酸カルシウム、外原規ステアリン酸カルシウム;炭酸カルシウムとしては、薬添規炭酸カルシウム、食添炭酸カルシウム、外原規炭酸カルシウム;アスパラギン酸カルシウムとしては、L−アスパラギン酸カルシウム水和物;グルコン酸カルシウムとしては、日本薬局方グルコン酸カルシウム水和物、食添グルコン酸カルシウム;沈降炭酸カルシウムとしては、日本薬局方沈降炭酸カルシウム、食添沈降炭酸カルシウム;リン酸水素カルシウムとしては、日本薬局方リン酸水素カルシウム水和物、食添リン酸水素カルシウム;クエン酸カルシウムとしては、薬添規クエン酸カルシウム、食添クエン酸カルシウム;酸化カルシウムとしては、日本薬局方酸化カルシウム、生石灰(日局)が挙げられる。
これらの2価以上の金属イオンを含む塩は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を任意に組み合わせて使用してもよい。
乳酸カルシウムを含有する溶液としては、日本薬局方乳酸カルシウム水和物、(太平化学産業)、乳酸カルシウム水和物(食添規、三栄源エフ・エフ・アイ)、乳酸カルシウム「エビス」(日興製薬)、乳酸カルシウム「ケンエー」(健栄)、「乳酸カルシウムコザカイ・M」(小堺)、乳酸カルシウム<ハチ>(東洋製化)、乳酸カルシウム「ホエイ」(マイラン)、乳酸カルシウム(山善)、乳酸カルシウム「NikP」(日医工)、乳酸カルシウム水和物「シオエ」原末(シオエ)、乳酸カルシウム水和物「ヨシダ」等の市販品を、輸液、培地等に溶解又は懸濁したものを用いてよい。
塩化カルシウムを含有する溶液としては、塩化カルシウム(大塚化学)、塩化カルシウム(富田製薬)、Calcium chloride dehydrate(メルク)、塩化カルシウム水和物(水和物)等の市販品を、輸液、培地等に溶解又は懸濁したものを用いてもよく、塩化カルシウム注2%「NP」(ニプロ)、塩化Ca補正液1mEq/mL(大塚工場)、大塚塩カル注2%(大塚工場)等の市販品を用いてもよい。
水酸化カルシウムを含有する溶液としては、水酸化カルシウム(富田製薬)、Calcium hydroxide(メルク)等の市販品を、輸液、培地等に溶解又は懸濁したものを用いてもよく、石灰水(司生堂)等の市販品を用いてもよい。
硫酸カルシウムを含有する溶液としては、硫酸カルシウムの市販品を、輸液、培地等に溶解又は懸濁したものを用いてよい。
ステアリン酸カルシウムを含有する溶液としては、ステアリン酸カルシウム(三栄源エフ・エフ・アイ)、日本薬局方 ステアリン酸カルシウム 植物性(太平化学)、日本薬局方 ステアリン酸カルシウム(日油)、partech(登録商標)LUB CST(Calcium stearate vegetable grade)(メルク)等の市販品を、輸液、培地等に溶解又は懸濁したものを用いてよい。
炭酸カルシウムを含有する溶液としては、ママカルソ(チンタン)(日東粉化工業)等の市販品を、輸液、培地等に溶解又は懸濁したものを用いてよい。
グルコン酸カルシウムを含有する溶液としては、グルコン酸カルシウム(富田製薬)、グルコン酸カルシウム水和物(山善)、カルチコール末(日医工)等の市販品を、輸液、培地等に溶解又は懸濁したものを用いてもよく、カルチコール注射液8.5%(日医工)等の市販品を用いてもよい。
沈降炭酸カルシウムを含有する溶液としては、沈降炭酸カルシウム(備北粉化工業)、Calcium carbonate, precipitated(<0.0001 % Al)(メルク)、Calcium carbonate, precipitated(<0.002 % Fe)(メルク)、沈降炭酸カルシウム(金田直)、沈降炭酸カルシウム恵美須(恵美須)、沈降炭酸カルシウム「ケンエー」(健栄)、沈降炭酸カルシウム「コザカイ・M」(小堺)、沈降炭酸カルシウム(山善)、沈降炭酸カルシウム「ヨシダ」(吉田製薬)、カルタン細粒83%(マイラン)等の市販品を、輸液、培地等に溶解又は懸濁したものを用いてよい。
リン酸水素カルシウムを含有する溶液としては、本薬局方リン酸水素カルシウム水和物(太平化学産業)、リン酸水素カルシウム水和物(吉田製薬)、「山善」第二リン灰(山善)、リン酸水素カルシウム「エビス」リン酸水素カルシウム「三恵」(三恵)等の市販品を、輸液、培地等に溶解又は懸濁したものを用いてよい。クエン酸カルシウム水溶液としては、クエン酸カルシウム(富田製薬)等の市販品を、輸液もしくは培地に溶解もしくは懸濁して用いてよい。酸化カルシウム水溶液としては、酸化カルシウム水溶液の市販品を、輸液もしくは培地に溶解もしくは懸濁して用いてよい。
マグネシウムイオンを含む塩としては、酸化マグネシウム、塩化マグネシウム、水酸化マグネシウム、硫酸マグネシウム、ステアリン酸マグネシウム、炭酸マグネシウム、アスパラギン酸マグネシウム、グルコン酸マグネシウム、クエン酸マグネシウム、酸化マグネシウム等が挙げられる。塩化マグネシウムとしては、局外規塩化マグネシウム、食添塩化マグネシウム;水酸化マグネシウムとしては、局外規水酸化マグネシウム;硫酸マグネシウムとしては、日本薬局方硫酸マグネシウム水和物、硫酸マグネシウム(日局)、食添硫酸マグネシウム;ステアリン酸マグネシウムとしては、日本薬局方ステアリン酸マグネシウム;炭酸マグネシウムとしては、日本薬局方炭酸マグネシウム、食添炭酸マグネシウム;アスパラギン酸マグネシウムとしては、局外規アスパラギン酸マグネシウム;グルコン酸マグネシウムとしては、薬添規グルコン酸マグネシウム;酸化マグネシウムとしては、日本薬局方酸化マグネシウム、食添酸化マグネシウムが挙げられる。
塩化マグネシウムを含有する溶液としては、塩化マグネシウム(大塚化学)、塩化マグネシウム(富田製薬)、Magnesium chloride hexahydrate, cryst.(メルク)等の市販品を、輸液、培地等に溶解又は懸濁したものを用いてよい。
水酸化マグネシウムを含有する溶液としては、水酸化マグネシウム(富田製薬)等の市販品を、輸液、培地等に溶解又は懸濁したものを用いてよく、ミルマグ内用懸濁液7.2%(エムジー)等の市販品を用いてもよい。
硫酸マグネシウムを含有する溶液としては、硫酸マグネシウム(富田製薬)、Magnesium sulfate heptahydrate(メルク)、硫酸マグネシウム「カナダ」(金田直)、硫酸マグネシウム「東海」(東海製薬)、硫酸マグネシウム「トミタ」(富田)、硫酸マグネシウム(山善)、硫酸マグネシウム「NikP」(日医工)等の市販品を、輸液、培地等に溶解又は懸濁したものを用いてよく、硫酸Mg補正液1mEq/mL(大塚工場)等の市販品を用いてもよい。
ステアリン酸マグネシウムを含有する溶液としては、ステアリン酸マグネシウム(コヴィディエンジャパン)、ステアリン酸マグネシウム(三栄源エフ・エフ・アイ)、日本薬局方 ステアリン酸マグネシウム 植物性(太平化学)、日本薬局方 ステアリン酸マグネシウム(日油)、partech(登録商標)LUB MST(Magnesium stearate vegetable grade)(メルク)等の市販品を、輸液、培地等に溶解又は懸濁したものを用いてよい。
炭酸マグネシウムを含有する溶液としては、炭酸マグネシウム(富田製薬)、炭酸マグネシウム「ケンエー」(健栄)、重質炭酸マグネシウム「日医工」(日医工)、炭酸マグネシウム「ニッコー」(日興製薬)、炭酸マグネシウム(山善)等の市販品を、輸液、培地等に溶解又は懸濁したものを用いてよい。
アスパラギン酸マグネシウムを含有する溶液としては、L−アスパラギン酸マグネシウム(協和発酵バイオ)等の市販品を、輸液、培地等に溶解又は懸濁したものを用いてよい。
グルコン酸マグネシウムを含有する溶液としては、グルコン酸マグネシウム(富田製薬)等の市販品を、輸液、培地等に溶解又は懸濁したものを用いてよい。
クエン酸マグネシウムを含有する溶液としては、マクロゴールP(堀井)、マクロゴール(堀井)等の市販品を、輸液、培地等に溶解又は懸濁したものを用いてよい。
酸化マグネシウムを含有する溶液としては、酸化マグネシウム(三栄源エフ・エフ・アイ)、酸化マグネシウム(富田製薬)、重質酸化マグネシウム「ケンエー」(健栄)、酸化マグネシウム「コザカイ・M」(小堺)、重質酸化マグネシウム「三恵」(三恵)、重質酸化マグネシウム シオエ(シオエ)、重質酸化マグネシウム「東海」(東海製薬)、重質酸化マグネシウム「ニッコー」(日興製薬)、重質酸化マグネシウム<ハチ>(東洋製化)、重質酸化マグネシウム「ホエイ」(マイラン)、酸化マグネシウム(山善)、酸化マグネシウム「JC」(日本ジェネリック)、重質酸化マグネシウム「NikP」(日医工)、酸化マグネシウム「NP」原末(ニプロ)、酸化マグネシウム原末「マルイシ」、重カマ「ヨシダ」(吉田製薬)、酸化マグネシウム細粒83%「ケンエー」(健栄)、酸化マグネシウム細粒83%<ハチ>(東洋製化)、酸化マグネシウム細粒83%「ヨシダ」(吉田製薬)、マグミット細粒83%(協和化学)等の市販品を、輸液、培地等に溶解又は懸濁したものを用いてよい。
水銀イオンを含む塩として、塩化水銀、酸化水銀、シアン化水銀、臭化水銀、硝酸水銀、チオシアン酸水銀、テルル化水銀、ヨウ化水銀、硫酸水銀等が挙げられる。
ストロンチウムイオンを含む塩として、酸化ストロンチウム、水酸化ストロンチウム、チタン酸ストロンチウム、クロム酸ストロンチウム、炭酸ストロンチウム、硫酸ストロンチウム、硝酸ストロンチウム、塩化ストロンチウム、リン酸水素ストロンチウム等が挙げられる。
バリウムイオンを含む塩として、硫酸バリウム、炭酸バリウム、過酸化バリウム、チタン酸バリウム、フッ化バリウム、クロム酸バリウム、硝酸バリウム等が挙げられる。
本発明の(B)2価以上の金属イオンを含有する溶液における2価以上の金属イオンの濃度は、金属イオンの種類、本発明の細胞医薬組成物の用途や製剤形態等に応じて適宜設定されるが、金属塩の濃度として、通常0.001〜10w/v%、好ましくは0.005〜8w/v%、より好ましくは0.01〜5w/v%である。
本発明において(A)アルギン酸及び/又はその塩を含有する溶液は、少なくともアルギン酸及び/又はその塩を適当な溶媒に溶解させたものをいい、本発明の効果を損なわない範囲で、輸液、培地、緩衝液、その他の成分を含んでいてもよい。また、本発明において(B)2価以上の金属イオンを含有する溶液は、少なくとも2価以上の金属イオンを、適当な溶媒に溶解させたものをいい、本発明の効果を損なわない範囲で、輸液、培地、緩衝液、その他の成分を含んでいてもよい。
[(C)細胞]
本発明において(C)細胞とは、疾患の治療に対する効果を奏する細胞であれば特に限定されないが、例えば間葉系幹細胞、末梢血単核球(好中球、好酸球、好塩基球、リンパ球、単球等を含む)、赤血球、T細胞、NK細胞、NKT細胞、NKM細胞、LAK細胞、樹状細胞、繊維芽細胞、造血幹細胞、iPS細胞、ES細胞、骨髄細胞、心筋細胞、肝細胞、神経細胞、皮膚細胞、脂肪細胞、その他各組織を構成する細胞が挙げられる。これらのうち、本発明の細胞医薬組成物において、生存率維持効果に優れ、液性因子を多く分泌するという観点から、間葉系幹細胞、末梢血単核球、骨髄細胞、繊維芽細胞が好ましい。
(間葉系幹細胞)
本発明において間葉系幹細胞とは、間葉系に属する一種以上の細胞(骨細胞、心筋細胞、軟骨細胞、腱細胞、脂肪細胞など)への分化能を有し、当該能力を維持したまま増殖できる細胞を意味する。本発明において用いる間葉系幹細胞なる用語は、間質細胞と同じ細胞を意味し、両者を特に区別するものではない。また、単に間葉系細胞と表記される場合もある。間葉系幹細胞を含む組織としては、例えば、脂肪組織、臍帯、骨髄、臍帯血、子宮内膜、胎盤、羊膜、絨毛膜、脱落膜、真皮、骨格筋、骨膜、歯小嚢、歯根膜、歯髄、歯胚等が挙げられる。例えば脂肪組織由来間葉系幹細胞とは、脂肪組織に含有される間葉系幹細胞を意味し、脂肪由来間葉系幹細胞と称してもよい。これらのうち、各種疾患の治療に対する有効性の観点、入手容易性の観点等から、脂肪由来間葉系幹細胞、臍帯由来間葉系幹細胞、骨髄由来間葉系幹細胞、胎盤由来間葉系幹細胞、歯髄由来間葉系幹細胞が好ましく、脂肪由来間葉系幹細胞、臍帯由来間葉系幹細胞、骨髄由来間葉系幹細胞がより好ましい。
本発明における間葉系幹細胞は、処置される対象(被検体)と同種由来であってもよいし、異種由来であってもよい。本発明における間葉系幹細胞の種として、ヒト、ウマ、ウシ、ヒツジ、ブタ、イヌ、ネコ、ラビット、マウス、ラットが挙げられ、好ましくは処置される対象(被検体)と同種由来細胞である。本発明における間葉系幹細胞は、処置される対象(被検体)に由来、すなわち自家細胞であってもよいし、同種の別の対象に由来、すなわち他家細胞(同種異系)であってもよい。好ましくは他家細胞(同種異系)である。
間葉系幹細胞は同種異系の被験体に対しても拒絶反応を起こしにくいため、あらかじめ調製されたドナーの細胞を拡大培養して凍結保存したものを、本発明の細胞医薬組成物における細胞としての間葉系幹細胞として使用することができる。そのため、自己の間葉系幹細胞を調製して用いる場合と比較して、商品化も容易であり、かつ安定して一定の効果を得られ易いという観点から、本発明における間葉系幹細胞は、同種異系であることがより好ましい。
本発明において間葉系幹細胞とは、間葉系幹細胞を含む任意の細胞集団を意味する。当該細胞集団は、少なくとも20%以上、好ましくは、30%、40%、50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、93%、96%、97%、98%又は99%が間葉系幹細胞である。
本発明において脂肪組織とは、脂肪細胞、及び微小血管細胞等を含む間質細胞を含有する組織を意味し、例えば、哺乳動物の皮下脂肪を外科的切除又は吸引して得られる組織である。脂肪組織は、皮下脂肪より入手され得る。後述する脂肪由来間葉系幹細胞の投与対象と同種動物から入手されることが好ましく、ヒトへ投与することを考慮すると、より好ましくは、ヒトの皮下脂肪である。皮下脂肪の供給個体は、生存していても死亡していてもよいが、本発明において用いる脂肪組織は、好ましくは、生存個体から採取された組織である。個体から採取する場合、脂肪吸引は、例えば、PAL(パワーアシスト)脂肪吸引、エルコーニアレーザー脂肪吸引、又は、ボディジェット脂肪吸引などが例示され、細胞の状態を維持するという観点から、超音波を用いないことが好ましい。
本発明において臍帯とは、胎児と胎盤を結ぶ白い管状の組織であり、臍帯静脈、臍帯動脈、膠様組織(ウォートンジェリー;Wharton’s Jelly)、臍帯基質自体等から構成され、間葉系幹細胞を多く含む。臍帯は、本発明の細胞医薬組成物を使用する被験体(投与対象)と同種動物から入手されることが好ましく、本発明の細胞医薬組成物をヒトへ投与することを考慮すると、より好ましくは、ヒトの臍帯である。
本発明において骨髄とは、骨の内腔を満たしている柔組織のことをいい、造血器官である。骨髄中には骨髄液が存在し、その中に存在する細胞を骨髄細胞と呼ぶ。骨髄細胞には、赤血球、顆粒球、巨核球、リンパ球、脂肪細胞等の他、間葉系幹細胞、造血幹細胞、血管内皮前駆細胞等が含まれている。骨髄細胞は、例えば、ヒト腸骨、長管骨、又はその他の骨から採取することができる。
本発明において、脂肪由来間葉系幹細胞、臍帯由来間葉系幹細胞、骨髄由来間葉系幹細胞といった各組織由来間葉系幹細胞とは、それぞれ脂肪由来間葉系幹細胞、臍帯由来間葉系幹細胞、骨髄由来間葉系幹細胞といった各組織由来間葉系幹細胞を含む任意の細胞集団を意味する。当該細胞集団は、少なくとも20%以上、好ましくは、30%、40%、50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、93%、96%、97%、98%又は99%が、脂肪由来間葉系幹細胞、臍帯由来間葉系幹細胞、骨髄由来間葉系幹細胞といった各組織由来間葉系幹細胞である。
本発明における間葉系幹細胞は、成長特徴(例えば、継代から老化までの集団倍加能力、倍加時間)、核型分析(例えば、正常な核型、母体系統又は新生児系統)、フローサイトメトリー(例えば、FACS分析)による表面マーカー発現、免疫組織化学及び/又は免疫細胞化学(例えば、エピトープ検出)、遺伝子発現プロファイリング(例えば、遺伝子チップアレイ;逆転写PCR、リアルタイムPCR、従来型PCR等のポリメラーゼ連鎖反応)、miRNA発現プロファイリング、タンパク質アレイ、サイトカイン等のタンパク質分泌(例えば、血漿凝固解析、ELISA、サイトカインアレイ)、代謝産物(メタボローム解析)、本分野で知られている他の方法等によって、特徴付けられてもよい。
(間葉系幹細胞の調製方法)
間葉系幹細胞は、当業者に周知の方法により調製することができる。以下に、一つの例として、脂肪由来間葉系幹細胞の調製方法を説明する。脂肪由来間葉系幹細胞は、例えば米国特許第6,777,231号に記載の製造方法によって得られて良く、例えば、以下の工程(i)〜(iii)を含む方法で製造することができる:
(i) 脂肪組織を酵素による消化により細胞懸濁物を得る工程;
(ii) 細胞を沈降させ、細胞を適切な培地に再懸濁する工程;ならびに
(iii) 細胞を固体表面で培養し、固体表面への結合を示さない細胞を除去する工程。
工程(i)において用いる脂肪組織は、洗浄されたものを用いることが好ましい。洗浄は、生理学的に適合する生理食塩水溶液(例えばリン酸緩衝食塩水(PBS))を用いて、激しく攪拌して沈降させることによって行い得る。これは、脂肪組織に含まれる夾雑物 (デブリとも言い、例えば損傷組織、血液、赤血球など)を組織から除去するためである。したがって、洗浄及び沈降は一般に、上清からデブリが総体的に除去されるまで繰り返される。残存する細胞は、さまざまなサイズの塊として存在するので、細胞そのものの損傷を最小限に抑えながら解離させるため、洗浄後の細胞塊を、細胞間結合を弱めるか、又は破壊する酵素(例えば、コラゲナーゼ、ディスパーゼ又はトリプシンなど)で処理することが好ましい。このような酵素の量及び処理期間は、使用される条件に依存して変わるが、当技術分野で既知である。このような酵素処理に代えて、又は併用して、細胞塊を、機械的な攪拌、超音波エネルギー、熱エネルギーなどの他の処理法で分解することができるが、細胞の損傷を最小限に抑えるため、酵素処理のみで行うことが好ましい。酵素を用いた場合、細胞に対する有害な作用を最小限に抑えるために、適切な期間をおいた後に培地等を用いて酵素を失活させることが望ましい。
工程(i)により得られる細胞懸濁物は、凝集状の細胞のスラリー又は懸濁物、ならびに各種夾雑細胞、例えば赤血球、平滑筋細胞、内皮細胞、及び線維芽細胞を含む。従って、続いて凝集状態の細胞とこれらの夾雑細胞を分離、除去してもよいが、後述する工程(iii)での接着及び洗浄により、除去可能であることから、当該分離、除去は割愛してもよい。夾雑細胞を分離、除去する場合、細胞を上清と沈殿に強制的に分ける遠心分離によって達成しえる。得られた夾雑細胞を含む沈殿は、生理学的に適合する溶媒に懸濁させる。懸濁状の細胞には、赤血球を含む恐れがあるが、後述する個体表面への接着による選択により、赤血球は除外されるため、溶解する工程は必ずしも必要ではない。赤血球を選択的に溶解する方法として、例えば、塩化アンモニウムによる溶解による高張培地又は低張培地中でのインキュベーションなど、当技術分野で周知の方法を使用することができる。溶解後、例えば濾過、遠心沈降、又は密度分画によって溶解物を所望の細胞から分離してもよい。
工程(ii)において、懸濁状の細胞において、間葉系幹細胞の純度を高めるために、1回もしくは連続して複数回洗浄し、遠心分離し、培地に再懸濁してもよい。この他にも、細胞を、細胞表面マーカープロファイルを基に、又は細胞のサイズ及び顆粒性を基に分離してもよい。
再懸濁において用いる培地は、間葉系幹細胞を培養できる培地であれば、特に限定されないが、このような培地は、基礎培地に、血清を添加する、及び/又は、アルブミン、トランスフェリン、脂肪酸、インスリン、亜セレン酸ナトリウム、コレステロール、コラーゲン前駆体、微量元素、2−メルカプトエタノール、3’−チオールグリセロール等の1つ以上の血清代替物を添加して作製してもよい。これらの培地には、必要に応じて、さらに脂質、アミノ酸、タンパク質、多糖、ビタミン、増殖因子、低分子化合物、抗生物質、抗酸化剤、ピルビン酸、緩衝剤、無機塩類等の物質を添加してもよい。
上記基礎培地としては、例えば、IMDM培地、Medium 199培地、Eagle’s Minimum Essential Medium(EMEM)培地、αMEM培地、Dulbecco’s modified Eagle’s Medium(DMEM)培地、Ham’s F12培地、RPMI 1640培地、Fischer’s培地、MCDB201培地及びこれらの混合培地等が挙げられる。
上記血清としては、例えば、ヒト血清、ウシ胎児血清(FBS)、ウシ血清、仔ウシ血清、ヤギ血清、ウマ血清、ブタ血清、ヒツジ血清、ウサギ血清、ラット血清等が挙げられるがこれらに限定されない。血清を用いる場合、基礎培地に対して、5v/v%から15v/v%、好ましくは、10v/v%を添加してもよい。
上記脂肪酸としては、リノール酸、オレイン酸、リノレイン酸、アラキドン酸、ミリスチン酸、パルミトイル酸、パルミチン酸、及びステアリン酸等が例示されるが、これらに限定されない。脂質は、フォスファチジルセリン、フォスファチジルエタノールアミン、フォスファチジルコリン等が例示されるが、これらに限定されない。アミノ酸は、例えば、L−アラニン、L−アルギニン、L−アスパラギン酸、L−アスパラギン、L−システイン、L−シスチン、L−グルタミン酸、L−グルタミン、L−グリシンなどを含むがこれらに限定されない。タンパク質は、例えば、エコチン、還元型グルタチオン、フィブロネクチン及びβ2−ミクログロブリン等が例示されるが、これらに限定されない。多糖は、グリコサミノグリカンが例示され、グリコサミノグリカンのうち特に、ヒアルロン酸、ヘパラン硫酸等が例示されるが、これらに限定されない。増殖因子は、例えば、血小板由来増殖因子(PDGF)、塩基性線維芽細胞成長因子(bFGF)、トランスフォーミング増殖因子ベータ(TGF−β)、肝細胞増殖因子(HGF)、上皮成長因子(EGF)、結合組織増殖因子(CTGF)、血管内皮細胞増殖因子(VEGF)等が例示されるが、これらに限定されない。本発明において得られる脂肪由来間葉系幹細胞を細胞移植に用いるという観点から、血清等の異種由来成分を含まない(ゼノフリー)培地を用いることが好ましい。このような培地は、例えば、PromoCell社、Lonza社、Biological Industries社、Veritas社、R&D Systems社、Corning社及びRohto社などから間葉系幹細胞(間質細胞)用として予め調製された培地として提供されている。
続いて、工程(iii)では、工程(ii)で得られた細胞懸濁液中の細胞を分化させずに固体表面上で、上述の適切な細胞培地を使用して、適切な細胞密度及び培養条件で培養する。本発明において、「固体表面」とは、本発明における脂肪由来間葉系幹細胞の結合・接着を可能とする任意の材料を意味する。特定の態様では、このような材料は、その表面への哺乳類細胞の結合・接着を促すように処理されたプラスチック材料である。固体表面を有する培養容器の形状は特に限定されないが、シャーレやフラスコなどが好適に用いられる。非結合状態の細胞及び細胞の破片を除去するために、インキュベーション後に細胞を洗浄する。
本発明では、最終的に固体表面に結合・接着した状態で留まる細胞を、脂肪由来間葉系幹細胞の細胞集団として選択することができる。
選択された細胞について、本発明における脂肪由来間葉系幹細胞であることを確認するために、表面抗原についてフローサイトメトリー等を用いて従来の方法で解析してもよい。さらに、各細胞系列に分化する能力について検査してもよく、このような分化は、従来の方法で行うことができる。
本発明における間葉系幹細胞は、上述の通り調製することができるが、次の特性を持つ細胞として定義してもよい;
(1)標準培地での培養条件で、プラスチックに接着性を示す、
(2)表面抗原CD44、CD73、CD90が陽性であり、CD31、CD45が陰性であり、及び
(3)培養条件にて骨細胞、脂肪細胞、軟骨細胞に分化可能。
(末梢血単核球)
本発明において末梢血単核球細胞とは、ヒト又は動物の末梢血から取得される、リンパ球、好中球、好酸球、好塩基球、単球を含む分画をいう。末梢血単核球は、末梢血からFicoll−hypaque(登録商標)等を用いた密度勾配遠心法により分離することができる。本発明における(A)細胞としての末梢血単核球は、末梢血から分離した状態の細胞でもよいし、それらを必要に応じて、各種因子、低分子化合物、抗体等と共に培養等することで、増殖・活性化させたものであってもよい。
(線維芽細胞)
本発明において線維芽細胞とは、繊維芽細胞とも言われる結合織形成細胞である。動物個体内のほとんどすべての組織内に分散して存在する中胚葉由来の細胞で、体外培養した場合に紡錘形をなす。線維芽細胞としては、正常ヒト皮膚線維芽細胞(小児、Normal Human Dermal Fibroblasts(NHDF), juvenile foreskin)、正常ヒト新生児皮膚線維芽細胞(Dermal Fibroblasts, Normal, Human, Neonatal)、正常ヒト皮膚線維芽細胞(成人、Normal Human Dermal Fibroblasts(NHDF), adult donor)、正常ヒト皮膚繊維芽細胞(Human Dermal Fibroblast, Fibrocell、ファイブロセル、凍結NHDF(NB) 新生児由来)、正常ヒト皮膚繊維芽細胞(Human Dermal Fibroblast, Fibrocell、ファイブロセル、凍結NHDF(AD) 成人由来)、ヒト肺線維芽細胞(Human Pulmonary Fibroblasts (HPF))、ヒト肺線維芽細胞(adult、HLF)、ヒト肺線維芽細胞(fetal、HLF)、ヒト心臓線維芽細胞(Human Cardiac Fibroblasts (HCF))、ヒト大動脈外膜線維芽細胞(Human Aortic Adventitial Fibroblasts (HAoAF))、ヒト子宮線維芽細胞(Human Uterine Fibroblasts (HUF)) 、マウス胚性線維芽細胞(MEF)等が挙げられる。線維芽細胞は、動物組織から公知の方法によって得ることもできるが、ロンザ、タカラバイオ、住商ファーマインターナショナル、東洋紡ライフサイエンス事業部、倉敷紡績等のメーカーから購入することもできる
((C)細胞の凍結保存)
本発明における細胞は、各種疾患に対する治療効果を備えていれば、適宜、凍結保存及び融解を繰り返した細胞であってもよい。本発明において、凍結保存は、当業者に周知の凍結保存液で細胞を懸濁し、冷却することによって行い得る。懸濁は、細胞を、必要に応じてトリプシンなどの剥離剤によって剥離し、凍結保存容器に移し、適宜処理した後、凍結保存液を加えることによって行い得る。
凍結保存液は、凍害防御剤として、DMSO(Dimethyl sulfoxide)を含有していてもよいが、DMSOは、細胞毒性を有することから、DMSO含有量を減らすことが好ましい。なお、DMSOは間葉系幹細胞に対しては、分化誘導する特性を有することも知られている。DMSOの代替物として、グリセロール、プロピレングリコール又は多糖類が例示される。DMSOを用いる場合、5%〜20%の濃度、好ましくは5%〜10%の濃度、より好ましくは10%の濃度を含有する。この他にも、WO2007/058308に記載の添加剤を含んでもよい。このような凍結保存液として、例えば、バイオベルデ、日本ジェネティクス、リプロセル、ゼノアック、コスモ・バイオ、コージンバイオ、サーモフィッシャーサイエンティフィック等から提供されている凍結保存液を用いてもよい。
上述の懸濁した細胞を凍結保存する場合、−80℃〜−100℃の間の温度(例えば、−80℃)で保管することで良く、当該温度に達成しえる任意のフリーザーを用いて行い得る。特に限定されないが、急激な温度変化を回避するため、プログラムフリーザーを用いて、冷却速度を適宜制御してもよい。冷却速度は、凍結保存液の成分によって適宜選択しても良く、凍結保存液の製造者指示に従って行われ得る。
保存期間は、上記条件で凍結保存した細胞が融解した後、凍結前と同等の性質を保持している限り、特に上限は限定されないが、例えば、1週間以上、2週間以上、3週間以上、4週間以上、2か月以上、3か月以上、4か月以上、5か月以上、6か月以上、1年以上、又はそれ以上が挙げられる。より低い温度で保存することで細胞障害を抑制することができるため、液体窒素上の気相(約−150℃以下から−180℃以下)へ移して保存してもよい。液体窒素上の気相で保存する場合、当業者に周知の保存容器を用いて行うことができる。特に限定されないが、例えば、2週間以上保存する場合、液体窒素上の気相で保存することが好ましい。
融解した細胞は、次の凍結保存までに適宜培養してもよい。例えば、間葉系幹細胞の培養は、上述した間葉系幹細胞を培養できる培地を用いて行われ、特に限定されないが、約30〜40℃、好ましくは約37℃の培養温度で、CO含有空気の雰囲気下で行われてもよい。CO濃度は、約2〜5%、好ましくは約5%である。培養において、培養容器に対して適切なコンフルエンシー(例えば、培養容器に対して、50%から80%を細胞が占有することが挙げられる)に達した後に、細胞をトリプシンなどの剥離剤によって剥離し、別途用意した培養容器に適切な細胞密度で播種して培養を継続してもよい。細胞を播種する際において、典型的な細胞密度として、100細胞/cm〜100,000細胞/cm、500細胞/cm〜50,000細胞/cm、1,000〜10,000細胞/cm、2,000〜10,000細胞/cmなどが例示される。特定の態様では、細胞密度は2,000〜10,000細胞/cmである。適切なコンフルエンシーに達するまでの期間が、3日間から7日間となるように調整することが好ましい。培養中、必要に応じて、適宜、培地を交換してもよい。
凍結保存した細胞の融解は、当業者に周知の方法によって行い得る。例えば、37℃の恒温槽内又は湯浴中にて静置又は振とうすることによって行う方法が例示される。
((C)細胞の形態)
本発明の細胞医薬組成物が含有する細胞は、いずれの状態の細胞であってもよく、例えば培養中の細胞を剥離して回収された細胞でもよいし、凍結保存液中に凍結された状態の細胞でもよい。拡大培養して得られる同ロットの細胞を小分けして凍結保存したものを使用すると、安定して同様の作用効果が得られる点、取扱い性に優れる点等において好ましい。
凍結保存状態の細胞は、使用直前に融解し、凍結保存液に懸濁したままアルギン酸及び/又はその塩を含有する溶液、2価以上の金属イオンを含有する溶液のいずれかに直接混合してもよい。また、遠心分離等の方法により凍結保存液を除去してからアルギン酸及び/又はその塩を含有する溶液、2価以上の金属イオンを含有する溶液のいずれかに懸濁してもよい。
本発明の細胞医薬組成物中の細胞の用量(投与量)は、患者の状態(体重、年齢、症状、体調等)、及び剤形等によって異なりうるが、十分な治療効果を奏する観点からは、その量は多い方が好ましい傾向にあり、一方、副作用の発現を抑制する観点からはその量は少ない方が好ましい傾向にある。通常、成人に疾患治療の目的で投与する場合には、細胞数として、1×10〜1×1012細胞/回、好ましくは1×10〜1×1011細胞/回、より好ましくは1×10〜1×1010細胞/回、更に好ましくは5×10〜1×10細胞/回となるように細胞医薬組成物中の細胞濃度を調整することができる。なお、本用量を1回量として、複数回投与してもよく、本用量を複数回に分けて投与しても良い。
本発明の細胞医薬組成物中の細胞の用量(投与量)は、患者の状態(体重、年齢、症状、体調等)、及び本発明の組成物の剤形等によって異なりうるが、通常、成人に疾患治療の目的で投与する場合には、細胞数として、1×10〜5×1010細胞/kg、好ましくは1×10〜5×10細胞/kg、より好ましくは1×10〜5×10細胞/kg、更に好ましくは1×10〜5×10細胞/kgとなるように細胞医薬組成物中の細胞濃度を調整することができる。なお、本用量を1回量として、複数回投与してもよく、本用量を複数回に分けて投与しても良い。
[他の薬剤]
本発明の細胞医薬組成物は、1又は2以上の、疾患に対する治療効果を有する他の薬剤を含有してもよい。他の薬剤としては、肝臓の治療薬、心臓疾患の治療薬、炎症性腸疾患治療薬、呼吸器用薬、神経系用薬、循環器用薬、脳循環改善薬、免疫抑制薬として用いることができる任意の薬剤が挙げられる。
心臓疾患の治療薬としては、例えば、ACE阻害薬、アンギオテンシンII受容体拮抗薬、β遮断薬、抗血小板薬、ワーファリン、カルシウム拮抗薬、硝酸薬、利尿剤、HMG−CoA還元酵素阻害薬、アンカロン等が挙げられる。
肝臓の治療薬としては、例えば、B型肝炎治療薬(ラミブジン、アデホビル、エンテカビル、テノホビル等)、インターフェロン製剤(インターフェロンα、インターフェロンα−2b、インターフェロンβ、ペグインターフェロンα−2a、ペグインターフェロンα−2b等)、C型肝炎治療薬(リバビリン、テラピレビル、シメプレビル、バニプレビル、ダクラタスビル、アスナプレビル、ソホスブビル等)、副腎皮質ステロイド(プレドニゾロン、メチルプレドニゾロンコハク酸エステルナトリウム等)、抗凝固剤(乾燥濃縮人アンチトロンビンIII、ガベキサートメシル酸塩、トロンボモデュリンα等)、解毒剤(エデト酸カルシウム二ナトリウム水和物、グルタチオン、ジメチカプロール、チオ硫酸ナトリウム水和物、スガマデスクナトリウム等)、人血清アルブミン、肝臓抽出エキス、ウルソデオキシコール酸、グリチルリチン酸、アザチオプリン、ベザフィーブラート、アミノ酸(グリシン、L−システイン、L−イソロイシン、L−ロイシン、L−バリン、L−トレオニン、L−セリン、L−アラニン、L−メチオニン、L−フェニルアラニン、L−トリプトファン、L−リシン、L−ヒスチジン、L−アルギニン及びこれらの塩等)、ビタミン(トコフェロール、フラビンアデニンジヌクレオチド、リン酸チアミンジスルフィド、ピリドキシン、シアノコバラミン及びこれらの塩等)、抗生物質(スルバクタムナトリウム、セフォペラゾンナトリウム、メロペネム水和物、塩酸バンコマイシン等)等が挙げられる。
炎症性腸疾患治療薬としては、例えば、サラゾスルファピリジン、メサラジン等が挙げられる。
呼吸器用薬としては、例えば、ジモルホラミン、ドキサプラム塩酸塩水和物、シベレスタットナトリウム水和物、ピルフェニドン、肺サーファクタント、ドルナーゼ アルファ等が挙げられる。
神経系用薬としては、例えば、エダラボン、インターフェロンベータ−1a、インターフェロンベータ−1b、フィンゴリモド塩酸塩、リルゾール、タルチレリン水和物等が挙げられる。
循環器用薬としては、例えば、ヘプロニカート、ミドドリン塩酸塩、アメジニウムメチルメチル硫酸塩、エチレフリン塩酸塩、フェニレフリン塩酸塩、ピオグリタゾン塩酸塩等が挙げられる。
脳循環改善薬としては、例えば、イフェンプロジル酒石酸塩、ニセルゴリン、イプジラスト、ジヒドロエルゴトキシンメシル酸塩、ニゾフェノンフマル酸塩、ファスジル塩酸塩水和物等が挙げられる。
免疫抑制薬としては、例えば、シクロスポリン、アザチオプリン、ミゾリビン、バシリキシマブ、タクロリムス水和物、グスペリムス塩酸塩、ミコフェノール酸モフェチル、エベロリムス等が挙げられる。
上記他の薬剤を本発明の細胞医薬組成物が含有する場合、使用直前に配合されてもよいし、(A)溶液、(B)溶液のいずれかに配合され、その後調製されてもよい。疾患の種類、治療方法、患者の状態等により、他の薬剤と、本発明の細胞医薬組成物とを同時に投与してもよいし、一定の間隔をあけて投与してもよい。
本発明の細胞医薬組成物は、本発明の効果を損なわない範囲であれば、上記(A)アルギン酸及び/又はその塩を含有する溶液、(B)2価以上の金属イオンを含有する溶液及び(C)細胞以外に、その用途や形態に応じて、常法に従い、薬学的に許容される担体や添加物等のその他の成分を含有させてもよい。このような担体や添加物は、(A)アルギン酸及び/又はその塩を含有する溶液、(B)2価以上の金属イオンを含有する溶液のいずれかに含有させてもよいし、(A)アルギン酸及び/又はその塩を含有する溶液、(B)2価以上の金属イオンを含有する溶液とは別に含有させて、本発明の細胞医薬組成物を得ることもできる。
このような担体や添加物としては、例えば、等張化剤、増粘剤、糖類、糖アルコール類、防腐剤(保存剤)、殺菌剤又は抗菌剤、pH調節剤、安定化剤、キレート剤、油性基剤、ゲル基剤、界面活性剤、懸濁化剤、結合剤、賦形剤、滑沢剤、崩壊剤、発泡剤、流動化剤、分散剤、乳化剤、緩衝剤、溶解補助剤、抗酸化剤、甘味剤、酸味剤、着色剤、呈味剤、香料又は清涼化剤等が挙げられるが、これらに限定されない。
(本発明の細胞医薬組成物の調製方法)
本発明の細胞医薬組成物は、(A)アルギン酸及び/又はその塩を含有する溶液、(B)2価以上の金属イオンを含有する溶液、及び(C)細胞を混合して得られる。
本発明の細胞医薬組成物は、疾患部位表面に安定に固定化させて治療効果を十分に発揮させるために、(A)アルギン酸及び/又はその塩を含有する溶液と(B)2価以上の金属イオンを含有する溶液とを所定の濃度範囲内で接触させる必要がある。それぞれの濃度が低過ぎると疾患部位表面等での固定化(ゲル化)に長時間かかり好ましくない。混合(噴霧)後、速やかにゲル化できるように、例えば、アルギン酸及び/又はその塩を含有する溶液と2価以上の金属イオンを含有する溶液とを等量で噴霧する場合、アルギン酸の濃度としては、0.001〜10%w/vであり、0.005〜8%w/vであることが好ましく、0.1〜5%w/vであることがより好ましい。2価以上の金属イオン溶液の濃度としては、0.001〜10%w/vであり、0.05〜8%w/vであることが好ましく、0.1〜5%w/vであることがより好ましい。
本発明の細胞医薬組成物を調製する際のアルギン酸及び/又はその塩と、2価以上の金属イオンの比率は特に限定されないが、例えば、アルギン酸及び/又はその塩100重量部に対して、2価以上の金属イオン0.1〜100,000重量部、好ましくは1〜10,000重量部、より好ましくは10〜1,000重量部である。
上記混合においては、上述したゲル化が十分に起こり、(C)細胞の状態が良好に保つことができれば特に限定されないが、具体的には以下のような方法を好ましい方法として挙げることができる。すなわち、あらかじめ(C)細胞を(A)溶液に懸濁して細胞懸濁液(A’)を調製した後に細胞懸濁液(A’)と(B)溶液を混合するか、又はあらかじめ(C)細胞を(B)溶液に懸濁して細胞懸濁液(B’)を調製した後に細胞懸濁液(B’)と(A)溶液とを混合して得ることが好ましい。(C)細胞をあらかじめ懸濁する溶液は、(A)溶液、(B)溶液のいずれでもよい。
本発明の細胞医薬組成物は、使用時に、上記細胞懸濁液(A’)と(B)溶液とを、又は上記細胞懸濁液(B’)と(A)溶液とを、実質的に同時に疾患部位に直接噴霧されることがより好ましい。さらに、本発明の細胞医薬組成物は、使用前に、上記細胞懸濁液(A’)と(B)溶液とを、又は上記細胞懸濁液(B’)と(A)溶液とを混合して、生体外でゲル化させ、シート状又は立体構造体にして疾患治療剤として患部に適用することも好ましい。
本発明の細胞医薬組成物の調製方法は、以下のように表現してもよい。すなわち、本発明の細胞医薬組成物の調製方法は、(C)細胞を(A)アルギン酸及び/又はその塩を含有する溶液、又は(B)2価以上の金属イオンを含有する溶液に懸濁し、得られた細胞懸濁液と、上記懸濁に用いなかった(A)溶液又は(B)溶液とを、実質的に同時に疾患部位に直接噴霧して得られる、ゲル状の細胞医薬組成物の調製方法を含む。
本発明の細胞医薬組成物は、目的に応じて種々の形態、例えば、注射剤(輸液剤、埋め込み注射剤、持続性注射、用時調製型の注射剤を含む)、透析用剤、貼付剤、パップ剤等の形態で利用できる。本発明の細胞医薬組成物は噴霧により、患部に適用することもでき、本発明の細胞医薬組成物は噴霧した後に患部でゲル化もしくはシート化される形態でも利用できる。本発明の細胞医薬組成物は上記(C)細胞をシート状または立体構造体とした後に、患部に適用することもできる。
本発明の細胞医薬組成物は、(A)アルギン酸及び/又はその塩を含有する溶液、(B)2価以上の金属イオンを含有する溶液及び(C)細胞、他の薬剤、その他の成分が別々の容器に封入されて保管され、使用時にこれらを混合して用いてもよい。すなわち、このような構成のものも本発明の細胞医薬組成物に含めることができる。なお、保管の際、上記(A)アルギン酸及び/又はその塩を含有する溶液、(B)2価以上の金属イオンを含有する溶液及び(C)細胞、他の薬剤、その他の成分はそれぞれに適した条件で保管されていればよく、例えば凍結条件、冷蔵条件、室温条件等いずれであってもよい。
本発明の細胞医薬組成物のpHは、医薬上、薬理学的に(製薬上)又は生理学的に許容される範囲内であれば特に限定されるものではないが、一例として、2.0〜9.0、好ましくは2.5〜8.5、より好ましくは4.0〜8.0となる範囲が挙げられる。
本発明の細胞医薬組成物の浸透圧については、生体に許容される範囲内であれば、特に制限されない。本発明の細胞医薬組成物の浸透圧比の一例として、好ましくは0.6〜1.5、より好ましくは0.7〜1.2、さらに好ましくは0.8〜1.0となる範囲が挙げられる。浸透圧の調整は上述した電解質等を用いて、当該技術分野で既知の方法で行うことができる。浸透圧比は、第十五改正日本薬局方に基づき286mOsm(0.9w/v%塩化ナトリウム水溶液)の浸透圧に対する試料の浸透圧の比とし、浸透圧は日本薬局方記載の浸透圧測定法(氷点降下法)を参考にして測定する。なお、浸透圧比測定用標準液(0.9w/v%塩化ナトリウム水溶液)は、塩化ナトリウム(日本薬局方標準試薬)を500〜650℃で40〜50分間乾燥した後、デシケーター(シリカゲル)中で放冷し、その0.900gを正確に量り、精製水に溶かし正確に100mLとして調製するか、市販の浸透圧比測定用標準液(0.9w/v%塩化ナトリウム水溶液)を用いる。
本発明の細胞医薬組成物における(C)細胞の濃度、即ち(C)細胞を(A)アルギン酸及び/又はその塩を含有する溶液、(B)2価以上の金属イオンを含有する溶液のいずれかに懸濁して細胞医薬組成物を調製し、投与に用いる際の濃度は、細胞の種類によって異なりうるが、通常、1.0×10〜1.0×1010細胞/mL、好ましく1.0×10〜1.0×10細胞/mL、より好ましくは1.0×10〜1.0×10細胞/mLである。
本発明の細胞医薬組成物の好ましい一形態としては、細胞を1.0×10〜1.0×10細胞/mLの密度で含んでなり、生理食塩水に対する浸透圧比が0.8〜1.0であり、pHが4.0〜8.0のものである。
本発明の細胞医薬組成物の対象への投与経路は、皮下投与、筋肉内投与、静脈内投与、動脈内投与、髄腔内投与、腹腔内投与、経直腸投与、経腟投与、経皮投与、インプラント、臓器への直接投与、患部以外でシート化後、貼付等が挙げられるが、本発明の細胞医薬組成物の有効性の観点から、好ましくはインプラント、動脈内投与、静脈内投与、臓器への直接投与、患部以外でシート化後貼付、より好ましくは臓器への直接投与、患部以外でシート化後貼付である。
本発明の細胞医薬組成物の対象への投与温度は、患者の状態(体重、年齢、症状、体調等)、及び本発明の細胞医薬組成物の投与経路等によって異なりうるが、通常、4℃〜45℃であり、15℃〜37℃であることが好ましく、室温〜37℃であることがより好ましい。
本発明の細胞医薬組成物は、種々の疾患の治療に好適に用いることができる。例えば、内臓疾患、具体的には、心疾患、胃・十二指腸疾患、小腸・大腸疾患、肝疾患、胆道疾患、膵疾患、腎疾患、肺疾患、縦隔膜疾患、横隔膜疾患、胸膜疾患、腹膜疾患、神経疾患、中枢神経系(CNS)障害、末梢動脈疾患、末梢静脈疾患に対して用いることが好ましい。
具体的疾患としては、例えば、自己免疫性肝炎、劇症肝炎、慢性肝炎、ウイルス性肝炎、アルコール性肝炎、非アルコール性脂肪性肝疾患(nonalcoholic fatty liver disease(NAFLD))、非アルコール性脂肪肝炎(nonalcoholic steatohepatitis(NASH))、非アルコール性脂肪肝(nonalcoholic fatty liver (NAFL))、肝線維症、肝硬変、肝癌、脂肪肝、薬剤アレルギー性肝障害、ヘモクロマトーシス、ヘモジデローシス、ウィルソン病、原発性胆汁性肝硬変(PBC)、原発性硬化性胆管炎(PSC)、胆道閉鎖、肝膿瘍、慢性活動性肝炎、慢性持続性肝炎等の肝疾患;心筋梗塞、心不全、不整脈、動悸、心筋症、虚血性心筋症、狭心症、先天性心疾患、心臓弁膜症、心筋炎、家族性肥大型心筋症、拡張型心筋症、急性冠症候群、アテローム血栓症、再狭窄等の心疾患;急性胃炎、慢性胃炎、胃・十二指腸潰瘍、胃癌、十二指腸癌等の胃・十二指腸疾患;虚血性腸炎、炎症性腸疾患、潰瘍性大腸炎、Crohn病、単純性潰瘍、腸管ベーチェット病、小腸癌、大腸癌等の小腸・大腸疾患;急性胆嚢炎、急性胆管炎、慢性胆嚢炎、胆管癌、胆嚢癌等の胆道疾患;急性膵炎、慢性膵炎、膵癌等の膵疾患;急性腎炎、慢性腎炎、急性腎不全、慢性腎不全等の腎疾患;肺炎、肺気腫、肺線維症、間質性肺炎、特発性間質性肺炎、剥離性間質性肺炎、急性間質性肺炎、非特異的間質性肺炎、薬物誘発性肺疾患、好酸球性肺疾患、肺高血圧症、肺結核、肺結核後遺症、急性呼吸窮迫症候群、嚢胞性線維症、慢性閉塞性肺疾患、肺塞栓症、肺膿症、塵肺、嚥下性肺炎肺線維症、急性上気道感染症、慢性下気道感染症、気胸、肺胞上皮に傷害が見られる疾患、リンパ管平滑筋種、リンパ性間質性肺炎、肺胞蛋白症、肺ランゲルハンス細胞肉芽腫症等の肺疾患;縦隔腫瘍、縦隔の嚢胞性疾患、縦隔炎等の縦隔膜疾患;横隔膜ヘルニア等の横隔膜疾患;胸膜炎、膿胸、胸膜腫瘍、がん性胸膜炎、胸膜中皮腫等の胸膜疾患;腹膜炎、腹膜腫瘍等の腹膜疾患;小児脳性麻痺を含む脳性麻痺症候群、無菌性髄膜炎、ギランーバレー症候群、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、重症筋無力症、モノニューロパシー、多発ニューロパシー、脊髄性筋萎縮症、脊椎障害、急性横断性脊髄炎、脊髄梗塞(虚血性脊髄障害)、頭蓋内腫瘍、脊椎腫瘍等の神経疾患;Alzheimer病、認知障害、脳卒中、多発性硬化症、Parkinson病等のCNS障害;線維筋性異形成、末梢動脈疾患(PAD)、閉塞性血栓血管炎(ビュルガー病)、川崎病(KD)等の末梢動脈疾患;深部静脈血栓症、慢性静脈不全、静脈炎後症候群、表在性静脈血栓症等の末梢静脈疾患;移植片対宿主病(GVHD)、続発性免疫不全症、原発性免疫不全疾患、B細胞の欠損、T細胞不全、BおよびT細胞複合欠損、食細胞欠損、古典経路における補体欠損、MBL経路における補体欠損、代替経路における補体欠損、補体調節蛋白欠損、補体レセプター欠損等の免疫不全疾患が挙げられる。
これらのうち、間葉系幹細胞による治療効果が十分に得られることが確認されている肝疾患、心疾患、肺疾患、神経疾患、末梢動脈疾患、免疫不全疾患が好ましく、中でも、肝線維症、肝硬変、心筋梗塞、心不全、肺線維症、間質性肺炎、小児脳性麻痺、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、末梢動脈疾患(PAD)、移植片対宿主病(GVHD)の治療により好適に用いることができ、肝線維症、肝硬変、心筋梗塞、心不全、肺線維症、間質性肺炎にさらに好適に用いることができる。また、末梢血単核球による治療効果が十分に得られることが確認されている各組織の癌に好適に用いることができる。
<疾患治療用キット>
本発明の疾患治療用キットは、(A)アルギン酸及び/又はその塩を含有する溶液、(B)2価以上の金属イオンを含有する溶液、及び(C)細胞を別々の形態で含む。本発明の疾患治療用キットを用いると、上述した本発明の細胞医薬組成物を調製し、疾患治療に用いることができる。すなわち、本発明の疾患治療用キットが含む(C)細胞を(A)溶液又は(B)溶液に懸濁し、得られた細胞懸濁液と、上記懸濁に用いなかった(A)溶液又は(B)溶液とを、実質的に同時に疾患部位に直接噴霧してゲル化させ、細胞医薬組成物(疾患治療剤)として疾患治療に用いることができる。本発明の疾患治療用キットは、上述した本発明の細胞医薬組成物を調製するためのキットであり、(A)溶液、(B)溶液及び(C)細胞、その他本発明の細胞医薬組成物が含有し得る成分、細胞医薬組成物の調製方法(使用方法)については細胞医薬組成物の項における説明を適用できる。本発明の疾患治療用キットによれば、細胞の状態を良好に保ち、生存率を長時間に渡って高く維持することができ、液性因子の分泌を高めた細胞医薬組成物を提供することができるため、様々な疾患に対して優れた治療効果を奏することができる。
また、本発明の疾患治療用キットは、本発明の細胞医薬組成物、容器及びラベルを含むものであると表現することもできる。本発明の疾患治療用キットが含む適切な容器としては、特に限定されないが、例えば、細胞凍結用のクライオチューブ、細胞懸濁用溶液用のボトル、バイアル、試験管、透析バック等が挙げられる。これらの容器は、ガラス、金属、プラスチック又はこれらの組み合わせ等の多様な材料から形成されていてもよい。これらの容器上のラベルには、内容物である細胞、各溶液等を説明する内容が記載されている。
本発明の疾患治療用キットは、その他の添加剤、その他の薬剤、希釈剤、フィルター、針、シリンジ、使用法を記載した添付文書を含めた、商業的、及び利用者の観点から望ましい他の材料を包含することができる。
<疾患の治療方法>
本発明は、(C)細胞を(A)アルギン酸及び/又はその塩を含有する溶液、又は(B)2価以上の金属イオンを含有する溶液に懸濁し、得られた細胞懸濁液と、上記懸濁に用いなかった(A)アルギン酸及び/又はその塩を含有する溶液、又は(B)2価以上の金属イオンを含有する溶液とを、実質的に同時に疾患部位に噴霧して投与することを特徴とする治療方法も含む。本発明の治療方法によると、細胞の生存率を長時間に渡って高く維持することができ、液性因子の分泌を高められるため、様々な疾患に対して優れた治療効果を奏することができる。本発明の疾患の治療方法は、上述した本発明の細胞医薬組成物、疾患治療用キットを用いた治療方法であり、(A)アルギン酸及び/又はその塩を含有する溶液、(B)2価以上の金属イオンを含有する溶液、(C)細胞、その他本発明の細胞医薬組成物が含有し得る成分、細胞医薬組成物の調製方法等については細胞医薬組成物の項における説明を適用できる。
以下に、実施例及び試験例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例等によって限定されるものではない。
[1]脂肪組織由来間葉系幹細胞の調製
脂肪組織由来間葉系幹細胞(Lonza、品番:PT−5006)を湯浴(37±1℃)で急速融解後、培地(Lonza、品番:00190632)中で培養をし、80%コンフレントに達した時点で継代を行うことを3回繰り返し、3継代行った。トリプシンを用いて剥離し、遠沈管に移し、400gで5分間、遠心分離し細胞の沈殿を得た。上清を除去した後、細胞凍結保存液(STEM−CELLBANKER(ゼノアック))を適量加え懸濁した。当該細胞懸濁溶液を、クライオチューブに分注した後、フリーザー内で−80度にて保存後、液体窒素上の気相に移し、保存を継続した。
[2]アルギン酸ナトリウム溶液中での細胞生存率の確認
アルギン酸ナトリウム(和光純薬工業、和光一級、品番:194−13321)250mgを、HBSS(Thermo Fisher Scientific、Lot:1776567)50mLに溶解して、0.5%アルギン酸ナトリウム/HBSS溶液を得た。2.0mL マイクロチューブ(QSP,品番:508−GRD−Q)に、HBSS(Thermo Fisher Scientific、Lot:1776567)、0.5%アルギン酸ナトリウム/HBSS溶液をそれぞれ990μLずつ分注した後に、3継代培養を行い凍結保存された脂肪組織由来間葉系幹細胞(Lonza、品番:PT−5006)を湯浴(37±1℃)で急速融解後、脂肪組織由来間葉系幹細胞の細胞懸濁液を10μLずつ加えた。転倒混和により懸濁した後、細胞懸濁液10μLに対して、トリパンブルー(Trypan Blue Stain(0.4%);Life technologies、15250−061)10μLを加えて、生細胞及び死細胞を区別して位相差顕微鏡(OLYMPUS、品番:CKX41SF)にて計測を行った。なお、細胞のカウントにはディスポーザブル細胞計算盤(WAKEN、品番:WC2−100)を用いた。
HBSS溶液中での生存率に比べ、0.5%アルギン酸ナトリウム/HBSS溶液中での生存率は6.7%高いものであった。
[実施例1]ゲル状の細胞医薬組成物の調製及び細胞生存率の確認1
アルギン酸ナトリウム(和光純薬工業、和光一級、品番:194−13321)250mg、500mgを、それぞれHBSS(Thermo Fisher Scientific、Lot:1776567)50mLに溶解して、0.5%アルギン酸ナトリウム/HBSS溶液及び1%アルギン酸ナトリウム/HBSS溶液を得た。また、塩化カルシウム(和光純薬工業、品番:038−24985)250mg、500mgを、それぞれHBSS(Thermo Fisher Scientific、Lot:1776567)50mLに溶解して、0.5%塩化カルシウム/HBSS溶液及び1%塩化カルシウム/HBSS溶液を得た。さらに、TypeIコラーゲン溶液(新田ゼラチン)400μLと、10×MEMハンクス培養液(新田ゼラチン)50μL、再構成用緩衝液(新田ゼラチン社製)50μLを混合し、コラーゲン混合溶液得た。
下記表1に記載のアルギン酸ナトリウム/HBSS溶液100μLにそれぞれ1×10cellsの脂肪組織由来間葉系幹細胞(Lonza、品番:PT−5006)を懸濁した後に、下記表1に記載の塩化カルシウム/HBSS溶液100μLを加えて、ゲル状の細胞医薬組成物(アルギン酸ゲル)を調製した。また、コラーゲン混合溶液100μLに1×10細胞の脂肪組織由来間葉系幹細胞を懸濁して、ゲル状の細胞医薬組成物(コラーゲンゲル)を調製した。
それぞれのゲルを、培地(Lonza、品番:00190632)中で培養して、3日後に上清を除き、Cell Counting Kit−8(同仁化学研究所)試薬を10%含有する培地(Lonza、品番:00190632)に交換した。37℃で2時間培養後、450nmの吸光度を測定し、生細胞に反応して呈色した量を求めた。図1に示すように、コラーゲンゲルに比べて、いずれのアルギン酸ゲルにおいても、吸光度が高く、アルギン酸ゲルでは、生細胞数がコラーゲンゲルよりも多いことが明らかとなった。同様に、4及び6日後においてもコラーゲンゲルに比べて、いずれのアルギン酸ゲルにおいても、450nmの吸光度が高いことが明らかとなった(図2及び3)。
Figure 2019011288
[2]ゲル状の細胞医薬組成物の調製及び細胞生存率の確認2
実施例1と同様に、ゲル状の細胞医薬組成物を調製して、培地(Lonza、品番:00190632)中で培養し、5日後における培養上清中のVEGF含有量をELISA法により測定した。
表2に示すように、コラーゲンゲルに比べ、アルギン酸ゲルにおいては、培養上清中もVEGF含有量が高く、アルギン酸ゲル中に細胞を含有させることにより、液性因子の分泌が上昇することが明らかとなった。
Figure 2019011288
[実施例3]ゲル状の細胞医薬組成物の調製及び細胞生存率の確認3
実施例2と同様に、ゲル状の細胞医薬組成物を調製して、培地(Lonza、品番:00190632)中で培養し、5日後における培養上清中のHGF含有量をELISA法により、測定した。
表3に示すように、コラーゲンゲルに比べ、アルギン酸ゲルにおいては、培養上清中もHGF含有量が高く、アルギン酸ゲル中に細胞を含有させることにより、液性因子の分泌が上昇することが明らかとなった。
Figure 2019011288
[実施例4]
実施例1と同様に、0.5%アルギン酸ナトリウム/HBSS溶液及び1%アルギン酸ナトリウム/HBSS溶液、0.5%塩化カルシウム/HBSS溶液、1%塩化カルシウム/HBSS溶液及びコラーゲン混合溶液を調整し、アルギン酸ナトリウム/HBSS溶液 100 μLにそれぞれ1×10細胞の正常ヒト皮膚線維芽細胞(新生児、男性、Asian/Caucasian、1次培養凍結、凍結NHDF(NB)、倉敷紡績)を懸濁した後に、塩化カルシウム/HBSS溶液100μLを加えて、アルギン酸ゲルを調製した。また、コラーゲン混合溶液100μLに1×10細胞の正常ヒト皮膚線維芽細胞を懸濁して、コラーゲンゲルを調製した。
それぞれのゲルを、培地(Lonza、品番:00190632)中で培養して、4日後に上清を除き、Cell Counting Kit−8(同仁化学研究所)試薬を10%含有する培地(Lonza、品番:00190632)に交換した。37℃で2時間培養後、450nmの吸光度を測定し、生細胞に反応して呈色した量を求めた。図4に示すように、コラーゲンゲルに比べて、いずれのアルギン酸ゲルにおいても、吸光度が高く、アルギン酸ゲルでは、生細胞数がコラーゲンゲルよりも多いことが明らかとなった。
[実施例5]
実施例4と同様に、細胞を含有する1%アルギン酸ナトリウム、0.5%塩化カルシウムゲル(アルギン酸ゲル)及びコラーゲンゲルを調整して、培地(Lonza、品番:00190632)中で培養し、4日後における培養上清中のHGF含有量をELISA法により測定した。
図5に示すように、コラーゲンゲルに比べ、アルギン酸ゲルにおいては、培養上清中のHGF含有量が高く、アルギン酸ゲル中に細胞を含有させることにより、液性因子の分泌が上昇することが明らかとなった。
本発明の細胞医薬組成物は、細胞の状態を良好に保ち、その生存率を長時間に渡って高い状態で維持することができ、さらに液性因子の分泌が高められるため様々な疾患に対して優れた治療効果が期待できる。

Claims (12)

  1. (A)アルギン酸及び/又はその塩を含有する溶液、
    (B)2価以上の金属イオンを含有する溶液、及び
    (C)細胞
    を混合して得られる、疾患治療用の細胞医薬組成物。
  2. (C)細胞が、間葉系幹細胞又は線維芽細胞である、請求項1に記載の細胞医薬組成物。
  3. 上記間葉系幹細胞が、脂肪由来、臍帯由来又は骨髄由来である、請求項2に記載の細胞医薬組成物。
  4. (C)細胞が、被験体に対して同種異系である、請求項1から3のいずれか1項に記載の細胞医薬組成物。
  5. 上記混合において、あらかじめ(C)細胞を(A)溶液に懸濁して細胞懸濁液(A’)を調製した後に細胞懸濁液(A’)と(B)溶液を混合するか、又はあらかじめ(C)細胞を(B)溶液に懸濁して細胞懸濁液(B’)を調製した後に細胞懸濁液(B’)と(A)溶液とを混合して得られる、請求項1から4のいずれか1項に記載の細胞医薬組成物。
  6. 使用時に、上記細胞懸濁液(A’)と(B)溶液とを、又は上記細胞懸濁液(B’)と(A)溶液とを、実質的に同時に疾患部位に直接噴霧する、請求項5に記載の細胞医薬組成物。
  7. ゲル状である、請求項1から6のいずれか1項に記載の細胞医薬組成物。
  8. (C)細胞が、凍結された細胞である、請求項1から7のいずれか1項に記載の細胞医薬組成物。
  9. 上記疾患が、内臓疾患である、請求項1から8のいずれか1項に記載の細胞医薬組成物。
  10. (C)細胞が、細胞医薬組成物中に1×10〜1×10細胞/mL含有される、請求項1から9のいずれか1項に記載の細胞医薬組成物。
  11. (A)アルギン酸及び/又はその塩を含有する溶液、
    (B)2価以上の金属イオンを含有する溶液、及び
    (C)細胞
    を別々の形態で含む、疾患治療用キット。
  12. (C)細胞を(A)アルギン酸及び/又はその塩を含有する溶液、又は(B)2価以上の金属イオンを含有する溶液に懸濁し、得られた細胞懸濁液と、上記懸濁に用いなかった(A)溶液又は(B)溶液とを、実質的に同時に疾患部位に直接噴霧して混合する、ゲル状の細胞医薬組成物の調製方法。
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