JP2019010796A - 摩擦体及び熱変色性筆記具 - Google Patents

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Abstract

【課題】熱変色性インクにより形成された筆跡を、擦過して変色又は消色させる摩擦体及びこの摩擦体を備えた熱変色性筆記具に関し、擦過して変色又は消色させる際の抵抗感が少なく、また、軽い力でも十分な摩擦熱が得られ、更に、細かい部分の消去等も容易となる摩擦体及びこの摩擦体を備えた熱変色性筆記具を提供する。【解決手段】熱変色性筆記具に使用される摩擦体であって、該摩擦体を構成する材料のうち、ポリプロピレン系樹脂が50質量%以上であり、摩擦体の引張弾性率(JIS K 7161:2014-1)が70MPa以上であることを特徴とする摩擦体。本発明の熱変色性筆記具1は、少なくとも熱変色性のインクを使用した熱変色性筆記具であって、該熱変色性筆記具には、上記構成の摩擦体40を備えたことを特徴とする。【選択図】図1

Description

本発明は、熱変色性インクにより形成された筆跡を、擦過して変色又は消色させる摩擦体及びこの摩擦体を備えた熱変色性筆記具に関する。
従来より、熱変色性インクにより形成された筆跡を擦過して変色又は消色させる摩擦体及びこの摩擦体を備えた熱変色性筆記具は数多くのものが知られている。
従来の熱変色性筆記具において、用いられる摩擦体としては、例えば、1)可逆熱変色性インクを用いて形成された像を、摩擦熱により第1状態から第2状態に変色させる摩擦体であって、前記摩擦体がスチレン−ブタジエン−スチレン(SBS)共重合体又はスチレン−エチレン・ブチレン−スチレン共重合体(SEBS)からなることを特徴とする摩擦体(例えば、特許文献1参照)、2)可逆熱変色性インクを用いて形成された像を、摩擦熱により第1状態から第2状態に変色させる弾性を有する摩擦体において、該摩擦体がシリコーンゴムからなることを特徴とする摩擦体(例えば、特許文献2参照)などが知られている。
しかしながら、上記特許文献1及び2等に記載される従来のスチレン系エラストマーやシリコーン系エラストマーの各摩擦体は、熱変色性インクにより形成された筆跡を、擦過して変色又は消色させる際の抵抗感が大きく、また、変形を伴うため細かい部分の消去が難しいなどの課題があるのが現状であった。
特開2006−123324号公報(特許請求の範囲、実施例1、2、図1) 特開2004−148744号公報(特許請求の範囲、実施例1、図1〜図4)
本発明は、上記した従来技術の課題及び現状等に鑑み、これらを解消しようとするものであり、熱変色性筆記具に用いる摩擦体として、特定構造、特定物性の摩擦体を用いることにより、熱変色性インクにより形成された筆跡を、擦過して変色又は消色させる際の抵抗感が少なく、また、軽い力でも十分な摩擦熱が得られ、更に、細かい部分の消去等も容易となる摩擦体及びこの摩擦体を備えた熱変色性筆記具を提供することを目的とする。
本発明者は、上記従来の課題等に鑑み、鋭意検討した結果、摩擦体を構成する材料のうち、ポリプロピレン系樹脂を特定量以上配合すると共に、摩擦体の引張弾性率を特定値以上とすることにより、上記目的の摩擦体及びこの摩擦体を備えた熱変色性筆記具が得られることを見出し、本発明を完成するに至ったのである。
すなわち、本発明の摩擦体は、熱変色性筆記具に使用される摩擦体であって、該摩擦体を構成する材料のうち、ポリプロピレン系樹脂が50質量%以上であり、摩擦体の引張弾性率(JIS K 7161:2014-1)が70MPa以上であることを特徴とする。
前記摩擦体の永久伸びは50%以上であることが好ましく、また、摩擦係数は0.3〜0.5であることが好ましい。
前記摩擦体には、ロジン系樹脂、テルペン系樹脂、石油系樹脂、フェノール系樹脂、石炭系樹脂、キシレン系樹脂から選ばれる少なくとも1種の熱可塑性樹脂が含有されていることが好ましい。
本発明の熱変色性筆記具は、少なくとも熱変色性インクを用いた熱変色性筆記具であって、該熱変色性筆記具には、上記構成の摩擦体を備えたことを特徴とする。
本発明によれば、熱変色性インクにより形成された筆跡を、擦過して変色又は消色させる際の抵抗感が少なく、また、軽い力でも十分な摩擦熱が得られ、更に、細かい部分の消去等も容易となる摩擦体及びこの摩擦体を備えた熱変色性筆記具が提供される。
本発明の摩擦体を備えたノック式の熱変色性筆記具の一例を示すものであり、非筆記状態で且つ前端が下向きの縦断面図である。 (a)及び(b)は、図1のノック式の熱変色性筆記具の正面図、側面図である。 図1のノック式の熱変色性筆記具の摩擦体と取付部材との取り付け状態の要部を示す拡大斜視図である。 図1のノック式の熱変色性筆記具の摩擦体部分の要部を示す拡大斜視図である。 図1のノック式の熱変色性筆記具の筆記状態で且つ前端が下向きの縦断面図である。 (a)〜(c)は、図5のノック式の熱変色性筆記具であって、摩擦体をカバーするカバー部材を取り外した状態を示す正面図、側面図、縦断面図である。 本発明の摩擦体を備えた熱変色性筆記具の他例を示すものであり、(a)〜(c)は、正面図、側面図、縦断面図である。 図7の熱変色性筆記具のキャップを示すものであって、このキャップに摩擦体を備えたものであり、(a)は斜視図、(b)は平面図、(c)正面図、(d)は(b)のA−A線断面図、(e)左側面図、(f)は(c)のB−B線断面図、(g)は(c)のC−C線断面図、(h)は右側面図である。 図8のキャップを示すものであって、摩擦体を備える前のものであり、(a)は斜視図、(b)は平面図、(c)正面図、(d)は(b)のD−D線断面図、(e)左側面図、(f)は(c)のE−E線断面図、(g)は(c)のF−F線断面図、(h)は右側面図である。 図7の熱変色性筆記具の後軸を示すものであって、この後軸に摩擦体を備えたものであり、(a)は斜視図、(b)は左側面図、(c)は正面図、(d)は右側面図、(e)は(b)のA−A線断面図、(f)は(c)のB−B線断面図である。 図10の後軸を示すものであって、摩擦体を備える前のものであり、(a)は斜視図、(b)は左側面図、(c)は正面図、(d)は右側面図、(e)は(b)のC−C線断面図、(f)は(c)のD−D線断面図である。
以下に、本発明の実施形態を詳しく説明する。
本発明の摩擦体は、熱変色性筆記具に使用される摩擦体であって、該摩擦体を構成する材料のうち、ポリプロピレン系樹脂が50質量%以上であり、摩擦体の引張弾性率(JIS K 7161:2014-1)が70MPa以上であることを特徴とするものである。
本発明において、摩擦体を構成する材料として、ポリプロピレン系樹脂を50質量%以上使用するものであり、摩擦体の引張弾性率(JIS K 7161:2014-1)が70MPa以上であることが必要である。
この特性の摩擦体を用いることにより、熱変色性インクにより形成された筆跡を、擦過して変色又は消色させる際の抵抗感が少なく、また、軽い力でも十分な摩擦熱が得られ、更に、細かい部分の消去等も容易となるものである。
用いることができるポリプロピレン系樹脂は、摩擦体の基材となるものであり、例えば、プロピレン単独重合体;プロピレンと他の少量のα−オレフィン(例えば、エチレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテン、及び4−メチル−1−ペンテン等)との共重合体(ブロック共重合体、及びランダム共重合体を含む。);などを挙げることができる。上記ポリプロピレン系樹脂としては、これらの1種又は2種以上の混合物を用いることができる。
上記ポリプロピレン系樹脂を摩擦体全量中、50質量%以上使用することにより、本発明の効果を発揮できるものであり、該ポリプロピレン系樹脂が50質量%未満であると、本発明の効果を発揮できない。
上記ポリプロピレン系樹脂以外に用いることができる樹脂としては、例えば、ポリエチレン、アイオノマーなどが挙げられる。これらの樹脂は、本発明の効果を更に発揮せしめる点から、摩擦体全量中、0.5〜30質量%とすることが望ましい。
更に、摩擦体を構成する材料には、好ましくは、粘着性を調整し、軽い力でも十分な摩擦熱を発揮せしめる点から、ロジン系樹脂、テルペン系樹脂、石油系樹脂、フェノール系樹脂、石炭系樹脂、キシレン系樹脂から選ばれる少なくとも1種の樹脂を含有させることができる。
これらの樹脂の中で、分子量が数百から数千のものが選ばれ、摩擦体の主成分となるポリプロピレン系樹脂の配合系に配合することによって摩擦体に粘着性を付与せしめ、」本発明の効果を更に発揮せしめることができる。具体的には、ロジン系樹脂、テルペン系樹脂などの天然樹脂、石油系樹脂、フェノール系樹脂、石炭系樹脂、キシレン系樹脂などの分子量が好ましくは、500〜5000、より好ましくは700〜4000の上記各種樹脂が使用できる。
ロジン系樹脂としては、ガムロジン、トール油ロジン、ウッドロジン、水素添加ロジン、不均化ロジン、重合ロジン、変性ロジンのグリセリン、ペンタエリスリトールエステル等が挙げられ、テルペン系樹脂としては、α−ピネン系、β−ピネン系、ジペンテン系等のテルペン樹脂、芳香族変性テルペン樹脂、テルペンフェノール樹脂、水素添加テルペン樹脂等が挙げられる。
これらの樹脂の中でも、更なる安定性の観点から、重合ロジン、テルペン樹脂、水添テルペン樹脂、芳香族変性水添テルペン樹脂、テルペンフェノール樹脂が好ましい。
石油系樹脂は、例えば、石油化学工業のナフサの熱分解により、エチレン、プロピレンなどの石油化学基礎原料とともに副生するオレフィンやジオレフィン等の不飽和炭化水素を含む分解油留分を混合物のままフリーデルクラフツ型触媒により重合して得られる。
該石油系樹脂としては、ナフサの熱分解によって得られるC留分を(共)重合して得られる脂肪族系石油樹脂、ナフサの熱分解によって得られるC留分を(共)重合して得られる芳香族系石油樹脂、前記C留分とC留分を共重合して得られる共重合系石油樹脂、水素添加系,ジシクロペンタジエン系等の脂環式化合物系石油樹脂、スチレン,置換スチレン,スチレンと他のモノマーとの共重合体等のスチレン系樹脂等の石油系樹脂が挙げられる。
ナフサの熱分解によって得られるC留分には、通常1−ペンテン、2−ペンテン、2−メチル−1−ブテン、2−メチル−2−ブテン、3−メチル−1−ブテン等のオレフィン系炭化水素、2−メチル−1,3−ブタジエン、1,2−ペンタジエン、1,3−ペンタジエン、3−メチル−1,2−ブタジエンなどのジオレフィン系炭化水素等が含まれる。
また、C留分を(共)重合して得られる芳香族系石油樹脂とは、ビニルトルエン、インデンを主要なモノマーとする炭素数9の芳香族を重合した樹脂であり、ナフサの熱分解によって得られるC留分の具体例としては、α−メチルスチレン、β−メチルスチレン、γ−メチルスチレン等のスチレン同族体やインデン、クマロン等のインデン同族体等が挙げられる。
商品名としては、三井化学製ペトロジン、ミクニ化学製ペトライト、JX日鉱日石エネルギー製ネオポリマー、東ソー製ペトコール、ペトロタック等がある。
さらに、前記C留分からなる石油樹脂を変性した変性石油樹脂が、粘着性、粘着持続性を高度に両立する樹脂として、本発明では、好適に使用される。
変性石油樹脂としては、不飽和脂環式化合物で変性したC系石油樹脂、水酸基を有する化合物で変性したC系石油樹脂、不飽和カルボン酸化合物で変性したC系石油樹脂等が挙げられる。
好ましい不飽和脂環式化合物としては、シクロペンタジエン、メチルシクロペンタジエンなど、また、アルキルシクロペンタジエンのディールスアルダー反応生成物として、ジシクロペンタジエン、シクロペンタジエン/メチルシクロペンタジエン共二量化物、トリシクロペンタジエン等が挙げられ、ジシクロペンタジエンが特に好ましい。
ジシクロペンタジエン変性C系石油樹脂は、ジシクロペンタジエンおよびC留分両者の存在下、熱重合等で得ることができる。
ジシクロペンタジエン変性C系石油樹脂としては、例えばJX日鉱日石エネルギー製ネオポリマー130Sが挙げられる。
また、水酸基を有する化合物としては、アルコール化合物やフェノール化合物が挙げられる。
アルコール化合物の具体例としては、例えば、アリルアルコール、2−ブテン−1,4ジオール等の二重結合を有するアルコール化合物が挙げられる。
フェノール化合物としては、フェノール、クレゾール、キシレノール、p−t−ブチルフェノール、p−オクチルフェノール、p−ノニルフェノール等のアルキルフェノール類を使用できる。
これらの水酸基含有化合物は、単独で用いてもよく、2種以上を併用して使用してもよい。
水酸基含有C系石油樹脂は、石油留分とともに(メタ)アクリル酸アルキルエステル等を熱重合して石油樹脂中にエステル基を導入した後、該エステル基を還元する方法、石油樹脂中に二重結合を残存又は導入した後、当該二重結合を水和する方法、等によっても製造できる。
また、水酸基含有C系石油樹脂として、前記のように各種の方法により得られるものを使用できるが、性能面、製造面から見て、フェノール変性石油樹脂等を使用するのが好ましく、フェノール変性石油樹脂は、C留分をフェノールの存在下でカチオン重合して得られ、変性が容易であり、低価格である。
フェノール変性C系石油樹脂としては、例えば、JX日鉱日石エネルギー製ネオポリマー−E−130が挙げられる。
さらに、不飽和カルボン酸化合物で変性したC系石油樹脂としては、C系石油樹脂をエチレン性不飽和カルボン酸で変性したものを使用することができる。
かかるエチレン性不飽和カルボン酸の代表的なものとして、(無水)マレイン酸、フマール酸、イタコン酸、テトラヒドロ(無水)フタール酸、(メタ)アクリル酸またはシトラコン酸などが挙げられる。
不飽和カルボン酸変性C系石油樹脂は、C系石油樹脂及びエチレン系不飽和カルボン酸を熱重合することで得ることができる。本発明においては、マレイン酸変性C系石油樹脂が好ましい。
不飽和カルボン酸変性C系石油樹脂としては、例えば、JX日鉱日石エネルギー製ネオポリマー160が挙げられる。
また、ナフサの熱分解によって得られるC留分とC留分の共重合樹脂を好適に使用することができる。
ここでC留分としては、特に制限はないが、ナフサの熱分解によって得られたC留分であることが好ましい。
具体的には、SCHILL&SEILACHER社製StruktolシリーズのTS30、TS30−DL、TS35、TS35−DL等が挙げられる。
前記フェノール系樹脂としては、アルキルフェノールホルムアルデヒド系樹脂及びそのロジン変性体、アルキルフェノールアセチレン系樹脂、変性アルキルフェノール樹脂、テルペンフェノール樹脂等が挙げられ、具体的にはノボラック型アルキルフェノール樹脂である商品名ヒタノール1502(日立化成工業社製)、p−t−ブチルフェノールアセチレン樹脂である商品名コレシン(BASF社製)等が挙げられる。
また、石炭系樹脂としては、クマロンインデン樹脂等が挙げられ、キシレン系樹脂としては、キシレンホルムアルデヒド樹脂等が挙げられる。
その他ポリブテンも粘着付与性を有する樹脂として使用することができる。
これらの樹脂の中で、粘着性、粘着持続性の観点から、C留分とC留分の共重合樹脂、C留分を(共)重合して得られる芳香族系石油樹脂、フェノール系樹脂及びクマロンインデン樹脂が好ましい。
これらの樹脂は、軟化点が200℃(測定法:ASTM E28−58−T)以下であることが好ましく、さらには80〜150℃の範囲であることが好ましい。
軟化点が200℃を超えると、加工性を悪化させる場合があり、また、80℃未満では粘着性能が劣る場合がある。これらの観点から軟化点は90〜120℃の範囲がより好ましい。上記樹脂は、単独で使用してもよいし、2種以上を混合して使用してもよい。
これらの粘着性を調整する目的で用いる上記ロジン系樹脂、テルペン系樹脂、石油系樹脂、フェノール系樹脂、石炭系樹脂、キシレン系樹脂から選ばれる少なくとも1種の樹脂の配合量は、本発明の効果を更に発揮せしめる点から、摩擦体全量中、好ましくは、0.05〜20質量%、更に好ましくは、0.05〜10質量%とすることが望ましい。
本発明の摩擦体には、上記ポリプロピレン系樹脂などの他、粘着性を調整する目的で用いる上記樹脂以外に、本発明の効果を損なわない範囲で、所望により、熱安定剤、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、結晶核剤、ブロッキング防止剤、シール性改良剤、離型剤(例えば、ステアリン酸、及びシリコンオイルなど)、ポリエチレンワックス等の滑剤、着色剤、顔料、無機充填剤(例えば、アルミナ、タルク、炭酸カルシウム、マイカ、ウァラステナイト、及びクレーなど)、発泡剤(有機系、無機系)、及び難燃剤(例えば、水和金属化合物、赤燐、ポリ燐酸アンモニウム、アンチモン化合物、及びシリコンなど)などの任意成分を適宜量含ませることができる。
また、摩擦体の材料に対して、更に、アルキルスルフォン酸フェニルエステル、シクロヘキサンジカルボン酸エステルを含有させもよい。摩擦体に、アルキルスルフォン酸フェニルエステル、シクロヘキサンジカルボン酸エステルを含むことによって、更に、紙面を傷めず且つ印刷文字等を掠れさせることなく、筆跡の消去等が可能となる。
本発明の摩擦体を製造は、上記ポリプロピレン系樹脂などを用いて、例えば、押出成形、射出成形などの方法により製造することができる。
本発明の摩擦体は、耐久性を付与して、本発明の効果を発揮せしめる点から、引張弾性率(JIS K 7161:2014-1)が70MPa以上とすることが必要であり、好ましくは、80〜5000MPaとすることが望ましい。この引張弾性率が70MPa未満であると、本発明の効果を発揮できなくなり、好ましくない。
この摩擦体の引張弾性率が70MPa以上とするには、用いるポリプロピレン系樹脂の種類、配合量、その他の樹脂種、その含有量等を好適に組み合わせることにより調整することができる。
更に好ましくは、本発明の効果を更に発揮せしめ、抵抗感を小さくする点から、摩擦体の永久伸び(JIS K 6273:2006)を50%以上、特に好ましくは、50〜100%とすることが望ましい。
本発明で規定する「永久伸び」とは、試験片を2倍に伸長した状態で23℃、6時間保持した後、応力を取り除く。伸びた長さを伸長前の長さで除した値(%)をいう。
また、本発明では、過度に滑らず適度な抵抗感を付与する点から、摩擦体の摩擦係数を0.3〜0.5とすることが望ましい。
本発明で規定する「摩擦係数」とは、市販の表面性測定器(HEIDON−14D、新東科学株式会社)を使用し、摩擦体を上質紙に対して、加重4.9N、角度90°、筆記速度100mm/minにて摩擦することによって計測された摩擦係数をいう。
上記摩擦体の永久伸び、摩擦係数を好適な範囲とするには、用いるポリプロピレン系樹脂の配合量、その他の樹脂種、その含有量等を好適に組み合わせることにより調整することができる。
なお、摩擦体は、タッチペン、スタイラスペンとしても適用可能であり、導電性を付与してもよい。
このように構成される本発明の摩擦体は、熱変色性筆記具に使用されるものであって、その形状、大きさ等は特に限定されず、摩擦体単体や、熱変色性筆記具の好適な箇所、例えば、キャップ部材、筆記具本体となる軸筒の隅部などに固着して使用に供することができる。
本発明の摩擦体によれば、従来のスチレン系エラストマーなどのエラストマーや、プラスチック発泡体などに較べ、ポリプロピレン系樹脂を50質量%以上で、摩擦体の引張弾性率を70MPa以上としているので、熱変色性インクにより形成された筆跡を、擦過して変色又は消色させる際の抵抗感が少なく、また、軽い力でも十分な摩擦熱が得られ、更に、細かい部分の消去等も容易となる今までにない優れた機能を発揮できるものとなる。
さらに、摩擦体の摩擦体の永久伸びを50%以上、及び/又は、摩擦係数0.3〜0.5とすることにより、上記機能を更に効果的に発揮せしめることができるものとなる。
本発明の熱変色性筆記具は、少なくとも熱変色性インクを用いた熱変色性筆記具であって、該熱変色性筆記具には、上記構成の摩擦体を備えたことを特徴とするものである。
本発明の熱変色性筆記具の構造等としては、少なくとも熱変色性のインクを用いたものであり、該熱変色性筆記具により形成された熱変色性インクによる筆跡を、該熱変色性筆記具に備えた上述の摩擦体で擦過して変色又は消色できるものであれば、熱変色性筆記具の種類(鉛筆、ボールペン、サインペン、マーキングペン、筆ペン等)、機構(熱変色性インクの収容機構が直液式、中綿式、リフィール式、バルブ式;ペン先が繊維芯、焼結芯、ボールペンチップ、プラスチック芯等;ノック式、キャッププ式)等は、特に限定されず、これらの方式の熱変色性筆記具の好適な箇所に、例えば、軸筒(筆記具本体)の隅部やキャップ等に、上記構成の摩擦体を備えたものであればよいものである。
また、熱変色性筆記具には、熱変色性インクを用いて固形芯(鉛筆型芯、シャープペンシル型芯、ホルダー芯)とした場合、該固形芯を木軸等で保持した鉛筆、シャープペンシル、ホルダー等であって、上記構成の摩擦体を備えた鉛筆、シャープペンシル、ホルダー等であってもよい。
以下に、本発明の熱変色性筆記具の好適な実施形態を図面を参照しながら、具体的に説明する。
図1〜図6は、本発明の摩擦体をノック式の熱変色性筆記具に用いた実施形態の一例を示す各図面である。
このノック式の熱変色性筆記具1は、図1及び図2に示すように、筒状に形成された軸筒2と、軸筒2内に配置され且つ一端に筆記部5aを備えた筆記体であるリフィル5と、リフィル5を後方へ付勢する弾性部材であるスプリング6と、軸筒2の後端部に取り付けられ且つ物品を把持するクリップを備えた内筒10と、内筒10内に配置された中空の操作部20と、を有する。軸筒2は、前軸3及び後軸4を有している。内筒10、前軸3及び後軸4を総じて軸筒とも称する。
図1〜図6中では、ノック式の熱変色性筆記具1の軸線方向において、筆記部5a側を「前」側と規定し、筆記部5aとは反対側を「後」側と規定する。特に言及のない限り、中心軸線とはノック式の熱変色性筆記具1の中心軸線をいう。ノック式の熱変色性筆記具1では、弾性部材であるスプリング6の付勢力に抗して操作部15を前方に押圧するノック操作によって、リフィル5が軸筒2内を前後方向に移動する。このとき、筆記部5aが軸筒2内に没入した状態を非筆記状態(図1及び図2)と称し、筆記部5aが軸筒2から突出した状態を筆記状態(図5及び図6)と称する。
このノック式の熱変色性筆記具1は、操作部15内に配置された係合部材である主回転子20と、操作部15内において主回転子20の前方に配置された減速回転子25と、操作部15の前方に配置され且つ筒状に形成されたノックロック部材30と、ノックロック部材30と係止する係止部35と、操作部15の後端部に取り付けられた本発明の一例となる摩擦体40と、該摩擦体40を操作部15に取り付けるための取付部材45、該摩擦体40を覆うカバー部材50とを有している。
主回転子20は、内筒10に設けられる外カム(図示せず)及び操作部15と協働し、減速回転子25は、内筒10の外カム及び主回転子20と協働する。また、操作部15と、ノックロック部材30とが協働してノックロック部材30を中心軸線回りに回転させ、ノックロック部材30と係止部35とを係止状態にさせている。
このノック式の熱変色性筆記具1では、軸筒2と、該軸筒2内に配置された筆記部5a、該筆記体5aを後方に付勢する弾性部材6と、ノック操作の際に前記弾性部材6の付勢力に抗して前方へ押圧される操作部15とを具備し、ノック操作を行うことによって、筆記状態と非筆記状態とが切り替え可能となるものである。
図3は、図1のノック式の熱変色性筆記具の摩擦体40と取付部材45との取り付け状態を示す拡大斜視図であり、図4は、図1の熱変色性筆記具1の摩擦体40部分を示すものであり、カバー部材50を取り外した状態を示す拡大斜視図である。
摩擦体40は、取付部材45の後端部に設けられ、取付部材45を介して操作部15の後端部に取り付けられている。この摩擦体40は、上述の特性、すなわち、ポリプロピレン系樹脂を50質量%以上で、摩擦体の引張弾性率を70MPa以上とした摩擦体から構成されており、取付部材45に対して嵌合等による固着又は二色成形等によって設けることができる。
この摩擦体40は、先端が半球状に形成された先細りの円柱状に形成されている。先端が半球状に形成されていることによって、擦過動作をする際のノック式の熱変色性筆記具1の把持の仕方(角度等)に依らず、略等しい面積を擦過することができる。なお、摩擦体70の先端形状は、三角柱や四角柱等、その他の形状であってもよい。
取付部材45は、取付部本体46を有している。取付部本体46の前部は、前方に開口する筒状に形成されている。筒状の部分の外周面には、複数の矩形の開口47が形成されている。また、開口47より前方の外周面には、フランジ部48が形成されている。さらに、開口47より後方の外周面には、環状に形成され且つカバー部材50と嵌合する環状突起49が形成されている。保持部本体46の後部は、摩擦体40と同様に先細りの円柱状に形成されている。取付部材45は、操作部20に対して嵌合によって固着されている。
カバー部材50は、外側部品であるスリーブ51と内側部品であるカバー本体52とを有し、全体として円錐台形状の外形を有している。このカバー部材50は、取付部材45と着脱可能に嵌合している。取付部材45に設けられた摩擦体40は、使用時以外は、カバー部材50によって覆われていることから、摩擦体40の汚れを防止することができる構造となっている。
上述したリフィール5内には、熱変色性色材を含有する熱変色性インクが収容されている。この場合、ノック式熱変色性筆記具1は、ノック式熱変色性筆記具であり、消去部材としての上記特性の摩擦体40によって擦過した際に生じる摩擦熱によって、ノック式熱変色性筆記具1の筆跡を熱変色可能とするものである。
ここで、熱変色性インクとは、例えば、常温(例えば25℃)で所定の色彩(第1色)を維持し、所定温度(例えば60℃)まで昇温させると別の色彩(第2色)へと変化し、その後、所定温度(例えば−5℃)まで冷却させると、再び元の色彩(第1色)へと復帰する性質を有するインクをいう。用いることができる熱変色性インクとしては、例えば、少なくとも、熱変色性マイクロカプセル顔料、溶媒等を含有するものであればよい。
この熱変色性インクを用いたノック式の熱変色性筆記具1では、上記第2色を無色とし、第1色(例えば赤)で筆記した描線を昇温させて無色とすることを、ここでは「消去する」ということとする。したがって、描線が筆記された筆記面等に対して上記特性の摩擦体40によって擦過して摩擦熱を生じさせ、それによって描線を無色に変化、すなわち消去させる。なお、当然のことながら上記第2色は、無色以外の有色でもよい。
用いることができる熱変色性インクにおいて、その色材となる熱変色性マイクロカプセル顔料としては、摩擦熱等の熱により変色するもの、例えば、有色から無色、有色から有色、無色から有色などとなる機能を有するものであれば、特に限定されず、種々のものを用いることができ、少なくともロイコ色素、顕色剤、変色温度調整剤を含む熱変色性組成物を、マイクロカプセル化したものが挙げられる。
用いることができるロイコ色素としては、電子供与性染料で、発色剤としての機能するものであれば、特に限定されものではない。具体的には、発色特性に優れるインクを得る点から、トリフェニルメタン系、スピロピラン系、フルオラン系、ジフェニルメタン系、ローダミンラクタム系、インドリルフタリド系、ロイコオーラミン系等従来公知のものが、単独(1種)で又は2種以上を混合して(以下、単に「少なくとも1種」という。)用いることができる。
具体的には、6−(ジメチルアミノ)−3,3−ビス[4−(ジメチルアミノ)フェニル]−1(3H)−イソベンゾフラノン、3,3−ビス(p−ジメチルアミノフェニル)−6−ジメチルアミノフタリド、3−(4−ジエチルアミノフェニル)−3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)フタリド、3−(4−ジエチルアミノ−2−エトキシフェニル)−3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−4−アザフタリド、1,3−ジメチル−6−ジエチルアミノフルオラン、2−クロロ−3−メチル−6−ジメチルアミノフルオラン、3−ジブチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−キシリジノフルオラン、2−(2−クロロアニリノ)−6−ジブチルアミノフルオラン、3,6−ジメトキシフルオラン、3,6−ジ−n−ブトキシフルオラン、1,2−ベンツ−6−ジエチルアミノフルオラン、1,2−ベンツ−6−ジブチルアミノフルオラン、1,2−ベンツ−6−エチルイソアミルアミノフルオラン、2−メチル−6−(N−p−トリル−N−エチルアミノ)フルオラン、2−(N−フェニル−N-−メチルアミノ)−6−(N−p−トリル−N−エチルアミノ)フルオラン、2−(3’−トリフルオロメチルアニリノ)−6−ジエチルアミノフルオラン、3−クロロ−6−シクロヘキシルアミノフルオラン、2−メチル−6−シクロヘキシルアミノフルオラン、3−ジ(n−ブチル)アミノ−6−メトキシ−7−アニリノフルオラン、3,6−ビス(ジフェニルアミノ)フルオラン、メチル−3’,6’−ビスジフェニルアミノフルオラン、クロロ−3’,6’−ビスジフェニルアミノフルオラン、3−メトキシ−4−ドデコキシスチリノキノリン、などが挙げられる。
これらのロイコ染料は、ラクトン骨格、ピリジン骨格、キナゾリン骨格、ビスキナゾリン骨格等を有するものであり、これらの骨格(環)が開環することで発色を発現するものである。
用いることができる顕色剤は、上記ロイコ色素を発色させる能力を有する成分となるものであり、例えば、フェノール樹脂系化合物、サリチル酸系金属塩化物、サリチル酸樹脂系金属塩化合物、固体酸系化合物等が挙げられる。
具体的には、o−クレゾール、ターシャリーブチルカテコール、ノニルフェノール、n−オクチルフェノール、n−ドデシルフェノール、n−ステアリルフェノール、p−クロロフェノール、p−ブロモフェノール、o−フェニルフェノール、ヘキサフルオロビスフェノール、p−ヒドロキシ安息香酸n−ブチル、p−ヒドロキシ安息香酸n−オクチル、レゾルシン、没食子酸ドデシル、2,2−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)プロパン、4,4−ジヒドロキシジフェニルスルホン、1,1−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4’−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、1−フェニル−1,1−ビス( 4’−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)−3−メチルブタン、1,1−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)−2−メチルプロパン、1,1−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)n−ヘキサン、1,1−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)n−ヘプタン、1,1−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)n−オクタン、1,1−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)n−ノナン、1,1−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)n−デカン、1,1−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)n−ドデカン、2,2−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)エチルプロピオネート、2,2−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)−4−メチルペンタン、2,2−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)n−ヘプタン、2,2−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)n−ノナンなどの少なくとも1種が挙げられる。
用いる顕色剤の使用量は、所望される色彩濃度に応じて任意に選択すればよく、特に限定されるものではないが、通常、上述したロイコ色素1質量部に対して、0.1〜100質量部程度の範囲内で選択するのが好適である。
用いることができる変色温度調整剤は、上記ロイコ色素と顕色剤の呈色において変色温度をコントロールする物質である。用いることができる変色温度調整剤は、従来公知のものが使用可能である。具体的には、アルコール類、エステル類、ケトン類、エーテル類、酸アミド類、アゾメチン類、脂肪酸類、炭化水素類などが挙げられる。
より具体的には、ビス(4−ヒドロキシフェニル)フェニルメタンジカプリレート(C715)、ビス(4−ヒドロキシフェニル)フェニルメタンジラウレート(C1123)、ビス(4−ヒドロキシフェニル)フェニルメタンジミリステート(C1327)、ビス(4−ヒドロキシフェニル)フェニルエタンジミリステート(C1327)、ビス(4−ヒドロキシフェニル)フェニルメタンジパルミテート(C1530)、ビス(4−ヒドロキシフェニル)フェニルメタンジベヘネート(C2143)、ビス(4−ヒドロキシフェニル)フェニルエチルヘキシリデンジミリステート(C1327)等の少なくとも1種が挙げられる。
この変色温度調整剤の使用量は、所望されるヒステリシス幅及び発色時の色彩濃度等に応じて適宜選択すればよく、特に限定されるものではないが、通常、ロイコ色素1質量部に対して、1〜100質量部程度の範囲内で使用するのが好ましい。
熱変色性マイクロカプセル顔料は、少なくとも上記ロイコ色素、顕色剤、変色温度調整剤を含む熱変色性組成物を、平均粒子径が0.2〜5μmとなるように、マイクロカプセル化することにより製造することができる。マイクロカプセル化法としては、例えば、界面重合法、界面重縮合法、insitu重合法、液中硬化被覆法、水溶液からの相分離法、有機溶媒からの相分離法、融解分散冷却法、気中懸濁被覆法、スプレードライニング法などを挙げることができ、用途に応じて適宜選択することができる。
例えば、水溶液からの相分離法では、ロイコ色素、顕色剤、変色温度調整剤を加熱溶融後、乳化剤溶液に投入し、加熱攪拌して油滴状に分散させ、次いで、カプセル膜剤として、樹脂原料などを使用、例えば、アミノ樹脂溶液、イソシアネート系樹脂溶液などを徐々に投入し、引き続き反応させて調製後、この分散液を濾過することにより目的の熱変色性のマイクロカプセル顔料を製造することができる。
これらのロイコ色素、顕色剤、変色温度調整剤の含有量は、用いるロイコ色素、顕色剤、変色温度調整剤の種類、マイクロカプセル化法などにより変動するが、当該色素1に対して、質量比で顕色剤0.1〜100、変色温度調整剤1〜100である。また、カプセル膜剤は、カプセル内容物に対して、質量比で0.1〜1である。
熱変色性マイクロカプセル顔料は、上記ロイコ色素、顕色剤及び変色温度調整剤の種類、量などを好適に組み合わせることにより、各色の発色温度(例えば、0℃以上で発色)、消色温度(例えば、50℃以上で消色)を好適な温度に設定することができ、摩擦熱等の熱により有色から無色となることが好ましい。
熱変色性マイクロカプセル顔料では、描線濃度、保存安定性、筆記性の更なる向上の点から、壁膜がウレタン樹脂、ウレア/ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、あるいはアミノ樹脂で形成されることが好ましい。ウレタン樹脂としては、例えば、イソシアネートとポリオールとの化合物が挙げられる。エポキシ樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂とアミンの化合物が挙げられる。アミノ樹脂としては、メラミン樹脂、ウレア樹脂、ベンゾグアナミン樹脂などが挙げられる。マイクロカプセル色材の壁膜の厚さは、必要とする壁膜の強度や描線濃度に応じて適宜決められる。
熱変色性マイクロカプセル顔料の平均粒子径は、着色性、発色性、易消色性、安定性、インク中での流動性の点、並びに、筆記性への悪影響を抑制、後述する光変色性マイクロカプセル顔料との相用性などの点から、好ましくは、0.2〜5μm、さらに好ましくは、0.3〜3μmである。なお、ここで規定する「平均粒子径」は、粒度分析計〔マイクロトラックHRA9320−X100(日機装社製)〕にて、体積基準の平均粒子径(50%径)を測定(屈折率1.8)した値である。
この平均粒子径が0.2μm未満であると、十分な描線濃度が得られず、一方、5μmを越えると、筆記性の劣化、熱変色性マイクロカプセル顔料の分散安定性の低下、振動によるインクバックが発生しやすくなり好ましくない。さらには90%径が8μm以下、好ましくは6μm以下である。径が大きい粒子が一定割合以上存在すると、上述した影響がより顕著になる傾向がみられる。なお、上述した平均粒子径の範囲(0.2〜5μm)となるマイクロカプセル顔料は、マイクロカプセル化法により変動するが、水溶液からの相分離法などでは、マイクロカプセル顔料を製造する際の攪拌条件を好適に組み合わせることにより調製することができる。
熱変色性マイクロカプセル顔料の比重は、0.9〜1.3、好ましくは1.0〜1.2の範囲である。比重がこの範囲外であると、マイクロカプセル顔料の分散安定性が低下しやすい。また、比重が1.3を超えるマイクロカプセル顔料は、振動によってインクバックが発生しやすい。
用いる熱変色性インクにおいて、上記熱変色性マイクロカプセル顔料の他、残部として溶媒である水(水道水、精製水、蒸留水、イオン交換水、純水等)の他、各筆記具用(ボールペン用、マーキングペン用等)の用途に応じて、その効果を損なわない範囲で、水溶性有機溶剤、増粘剤、潤滑剤、防錆剤、防腐剤もしくは防菌剤などを適宜含有することができる。
用いることができる水溶性有機溶剤としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、3−ブチレングリコール、チオジエチレングリコール、グリセリン等のグリコール類や、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、単独或いは混合して使用することができる。
これらのうち、インクバックによる筆記部でのインク固化を抑制する目的として、グリセリンを用いることが好ましく、その添加量はインク全量に対して1〜10質量%であることが好ましい。グリセリンによる作用のメカニズムは不明だが、乾燥状態における顔料及びインク成分との凝集力を低下させる効果があるものと推察される。
用いることができる増粘剤としては、例えば、合成高分子、セルロースおよび多糖類からなる群から選ばれた少なくとも一種が好ましい。具体的には、アラビアガム、トラガカントガム、グアーガム、ローカストビーンガム、アルギン酸、カラギーナン、ゼラチン、キサンタンガム、ウェランガム、サクシノグリカン、ダイユータンガム、デキストラン、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、デンプングリコール酸及びその塩、アルギン酸プロピレングリコールエステル、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルメチルエーテル、ポリアクリル酸及びその塩、カルボキシビニルポリマー、ポリエチレシオキサイド、酢酸ビニルとポリビニルピロリドンの共重合体、架橋型アクリル酸重合体及びその塩、非架橋型アクリル酸重合体及びその塩、スチレンアクリル酸共重合体及びその塩などが挙げられる。
これらのうち、多糖類を使用することが好ましい。多糖類はそのレオロジー特性から、振動による流動性への影響を受けにくい傾向があり、インクバックに起因する筆記不良等の不具合が生じにくい。特にキサンタンガムは、筆記具インクに要求されるその他の特性とのバランスに優れており好ましい。
潤滑剤としては、顔料の表面処理剤にも用いられる多価アルコールの脂肪酸エステル、糖の高級脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレン高級脂肪酸エステル、アルキル燐酸エステル、高級脂肪酸アミドのアルキルスルホン酸塩、アルキルアリルスルホン酸塩、ポリアルキレングリコールの誘導体やフッ素系界面活性剤、ポリエーテル変性シリコーンなどが挙げられる。また、防錆剤としては、ベンゾトリアゾール、トリルトリアゾール、ジシクロへキシルアンモニウムナイトライト、サポニン類などが挙げられる。防腐剤もしくは防菌剤としては、フェノール、ナトリウムオマジン、安息香酸ナトリウム、ベンズイミダゾール系化合物などが挙げられる。
この熱変色性インクを製造するには、従来から知られている方法が採用可能であり、例えば、上記熱変色性マイクロカプセル顔料の他、上記水性における各成分を所定量配合し、ホモミキサー、もしくはディスパー等の攪拌機により攪拌混合することによって得られる。さらに必要に応じて、ろ過や遠心分離によってインク組成物中の粗大粒子を除去してもよい。
この熱変色性インクの粘度値は、25℃、剪断速度3.83/sにおいて、500〜2000mPa・s、剪断速度383/sにおいて20〜100mPa・sであることが好ましい。上記粘度範囲に設定することによって、筆記性と経時安定性に優れたインクとすることができる。さらに、S=αDn(但し、1>n>0)(Sは剪断応力(dyn/cm2)、Dは剪断速度(s-1)、αは非ニュートン粘性係数)で示される粘性式で求められる非ニュートン粘性指数nが、0.2〜0.6であることが好ましい。上記粘度範囲に加えて非ニュートン粘性指数nを上記範囲とすることで、振動に対するインクの流動性を適切に設定することが可能となり、インクバックの発生を防止することが可能となる。
また、熱変色性インクの表面張力は、25〜45mN/m、さらには30〜40mN/mであることが好ましい。この範囲内であれば、ペン先内部とインクの濡れ性のバランスが適切となり、インクバックの発生を防止することが可能となる。
上記リフィール5内においては、インクのすぐ後方にインク追従体7を配置してもよい。追従体7を構成する材料としては、少なくとも、不揮発性若しくは難揮発性有機溶剤と、増粘剤とにより構成することができる。インク追従体に使用する不揮発性若しくは難揮発性有機溶剤は、インク追従体の基油として用いるものであり、例えば、流動パラフィンが用いられる。流動パラフィンには、鉱物油、化学合成油が用いられ、化学合成油としては、ポリブテン、ポリα−オレフィン、エチレンα−オレフィンオリゴマーなどを用いることができる。
用いることができる具体的な鉱物油としては、例えば、市販品のダイアナプロセスオイルNS−100、PW−32、PW−90、NR−68、AH−58(出光興産社製)などが挙げられる。
用いることができる具体的なポリブテンとしては、例えば、市販品のニッサンポリブテン200N、ポリブテン30N、ポリブテン10N、ポリブテン5N、ポリブテン3N、ポリブテン015N、ポリブテン06N、ポリブテン0N(以上、日本油脂社製)、ポリブテンHV−15(日本石油化学社製)、35R(出光興産社製)などが挙げられる。
用いることができる具体的なポリα−オレフィンとしては、例えば、市販品のバーレルプロセス油P−26、P−46,P−56、P−150,P−350,P−1500、P−2200、(P−10000、P−37500)(松村石油社製)などが挙げられる。
用いることができる具体的なエチレンα−オレフィンオリゴマーとしては、例えば、市販品のルーカント HC−10、HC−20、HC−100、HC−150、(HC−600、HC−2000) (以上、三井化学社製)などが挙げられる。
これらの不揮発性若しくは難揮発性有機溶剤は、1種または2種以上を合わせて使用することができる。
インク追従体に使用する増粘剤としては、例えば、リン酸エステルのカルシウム塩、微粒子シリカ、ポリスチレン−ポリエチレン/ブチレンゴム−ポリスチレンのブロックコポリマー、ポリスチレン−ポリエチレン/プロピレンゴム−ポリスチレンのブロックコポリマー、水添スチレン−ブタジエンラバー、スチレン−エチレンブチレン−オレフィン結晶のブロックコポリマー、オレフィン結晶−エチレンブチレン−オレフィン結晶のブロックコポリマー及びアセトアルコキシアルミニウムジアルキレートなどが挙げられ、これらは1種もしくは2種以上用いることができる。
用いることができるリン酸エステルのカルシウム塩の好ましい市販品としては、CrodaxDP−301LA(クローダジャパン社製)等が挙げられる。用いることができる微粒子シリカは、親水性微粒子シリカと疎水性微粒子シリカがあり、親水性シリカの好ましい市販品としては、AEROSIL−300、AEROSIL−380(日本アエロジル社製)等が挙げられ、また、疎水性シリカの好ましい市販品としては、AEROSIL−974D、AEROSIL−972(日本アエロジル社製)等が挙げられる。
また、ポリスチレン−ポリエチレン/ブチレンゴム−ポリスチレンのブロックコポリマーの好ましい市販品としては、クレイトンGFG−1901X、クレイトンGG−1650(以上、シェルジャパン社製)、セプトン8007、セプトン8004(以上、クラレ社製)などが挙げられる。さらに、ポリスチレン−ポリエチレン/プロピレンゴム−ポリスチレンのブロックコポリマーの好ましい市販品としては、クレイトンGG−1730(シェルジャパン社製)、セプトン2006、セプトン2063(以上、クラレ社製)などが挙げられる。
水添スチレン−ブタジエンラバーの好ましい市販品としては、DYNARON1320P、DYNARON1321P(以上、JSR社製)、タフテックHl041、タフテックHl141(以上、旭化成工業社製)などが挙げられる。
スチレン−エチレンブチレン−オレフィン結晶のブロックコポリマーの好ましい市販品としては、DYNARON4600P(JSR社製)等が挙げられ、オレフィン結晶−エチレンブチレン−オレフィン結晶のブロックコポリマーの好ましい市販品としては、DYNARON6200P、DYNARON6201B(JSR社製)等が挙げられる。
アセトアルコキシアルミニウムジアルキレートの好ましい市販品としては、プレンアクトAL−M(味の素ファインテクノ社製)などが挙げられる。
これらの増粘剤の中で、本発明の効果をさらに発揮させる点から、スチレン−エチレンブチレン−オレフィン結晶のブロックコポリマー、オレフィン結晶−エチレンブチレン−オレフィン結晶のブロックコポリマーなどの熱可塑性オレフィン系エラストマーの使用が好ましい。
さらに、インクバックの発生を防止するインク追従体を得る点から、周波数領域1〜63rad/sで指数関数的に増加させながら周波数毎に測定したtanδ値の平均値が1.0以上とすることが好ましく、1.7〜3.4とすることがさらに好ましい。
ここで、tanδは、損失弾性率/貯蔵弾性率を意味する値であり、従来では、周波数領域「1〜63rad/s」で指数関数的に増加させながら周波数毎に測定したtanδ値の平均値が1.0以下のものが好ましいことが知られていた。本発明では、上記1〜63rad/sで各周波数毎に測定したtanδ値の平均値が1.0以上とすることにより、振動を吸収してインクバックの発生を防止することが可能となる。
このように構成される図1〜図6に示すノック式の熱変色性筆記具1では、ノック操作を行うことによって、筆記状態(図1、図2)と非筆記状態(図5、図6)とが切り替え可能となるものであり、該筆記具の熱変色性インクにより形成された筆跡を、摩擦体40で、擦過して変色又は消色させる際にも従来のスチレン系エラストマーなどのエラストマーや、プラスチック発泡体などから構成される摩擦体に較べ、擦過する際の抵抗感も少なく、また、軽い力でも十分な摩擦熱が得られ、更に、細かい部分の消去等も容易となる今までにない優れた機能を発揮する熱変色性筆記具であることが確認された。
図7〜図11は、本発明の摩擦体を、キャップ式の熱変色性筆記具に用いた実施形態の一例を示す各図面である。
図7(a)〜(c)は、本発明の実施形態による、2つの摩擦体、第1の摩擦体70及び第2の摩擦体75を備える熱変色性筆記具60の正面図、側面図、縦断面図である。
この熱変色性筆記具60は、ボールペンタイプの筆記具であり、リフィール65及び筒状に延びる軸筒61を備える筆記具本体62と、リフィール65の先端部に設けられた筆記部を保護するキャップ80と、キャップ80の前方の端部に固定された第1の摩擦体70と、筆記具本体62の後方の端部に固定された第2の摩擦体75とを具備する。
軸筒61は、筒状の先軸63と、先軸63の後端部にその前端部が螺合する後軸64とを有する。先軸63及び後軸64は樹脂材料から形成される。先軸63の前端には、リフィール65の筆記先端部66を突出させるための孔が形成されている。
リフィール65は、熱変色性インクが収容された筒状のリフィール本体67と、先端にボールを包持する筆記部を有する筆記先端部66と、リフィール本体66と筆記先端部66とを接続する継手部材68と、リフィール本体66の後端部を塞ぐリフィール栓69とを有する。リフィール本体66内に収容された熱変色性インクは、本実施形態では、図1等の熱変色性筆記具1で詳述した熱変色性インクである。リフィール65は軸筒61内に収容され、筆記先端部66の一部は、軸筒61内に収容された状態で上述の先軸63の孔を介して露出される。
次に、図8及び図9を参照して、キャップ80についてより詳しく説明する。図8及び図9は、熱変色性筆記具60のキャップであり、ここでは図8は第1の摩擦体70をキャップ80に固定した各図面であり、図9は第1の摩擦体70をキャップ80に固定していない各図面である。
キャップ80は、図9に示すように、筒状に形成されたキャップ本体部81と、その側面からほぼ長手方向に延びるクリップ部82と、第1の摩擦体70が固定される端部83とを有し、またそれらは一体的に形成されている。キャップ本体部81は、筆記具本体62の軸筒61の先軸63に冠着するように形成されており、また、その内部の端部側には、シール部材84(図7参照)を保持する等の目的で、本実施形態では6つの縦方向リブ85が形成されている。なお、シール部材84は、キャップ80の先軸63への装着時に筆記先端部66を保護するために設けられる。クリップ部82は、キャップ本体部81との間に書類や衣類等の物品を挟持することができるような弾性を有するように構成されている。従って、キャップ80を形成する材料として、ポリカーボネート、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン等の合成樹脂が挙げられる。
キャップ80の端部83は、図9に示すように、キャップ本体部81の外径よりもやや小さい外径を有し、本実施形態では長手方向に対して全体的に傾けられて形成されている。端部83は、熱変色性筆記具60の長手方向に延びてキャップ本体部81の内側の空間に連通する1つの縦穴86と、長手方向に対してほぼ垂直に延びて端部83を貫通する第1〜第3の横穴87a,87b,87cとを有する。
また、キャップ80の端部83は、その外周表面から凹んで環状に延びる凹部88を、キャップ本体部81と隣接する部分に有している。環状の凹部88は、本実施形態では、長手方向に対して約30°傾斜した仮想平面に形成されている。本実施形態では、前記平面は、必ずしも長手方向に垂直である必要はなく、図示されるように長手方向を横切る方向に延びていればよい。また、図示されるような連続的な環状の凹部88に替えて、不連続な環状の凹部の実施形態も可能である。
キャップ80に第1の摩擦体70がどのように固定されるかについて、図8及び図9を参照して説明する。図8は、キャップ70に第1の摩擦体70が固定された状態を示す各図面である。
第1の摩擦体70は、キャップ80の端部83の表面を、その縦穴86の部分を除いて覆うように形作られて、端部83に固定される。この第1の摩擦体70が、このように、熱変色性筆記具60の長手方向を横切る方向でキャップ80の端部83に形成された第1〜第3の横穴87a,87b,87c及び凹部88を埋めるので、第1の摩擦体70の使用中にそれを端部から引き抜くように作用する力は、第1の摩擦体70の第1〜第3の軸部89a,89b,89c及び凸部89dを介して端部83の第1〜第3横穴87a,87b,87c及び凹部88によって支持される。したがって、端部83の表面と第1の摩擦体70の内面との間に接着力又は接合力がたとえ全く期待できない場合であっても、第1の摩擦体70はキャップ80の端部83に強固に固定されることが可能である。この第1の摩擦体70は、図7(c)、図8(c)に示すように、複数の傾斜面を有するので、端部83との接触面積が外面の露出面積よりも大きくなっている。
第1の摩擦体70及び後述する第2の摩擦体75を形成する材料は、上述の本発明の摩擦体、すなわち、摩擦体を構成する材料のうち、ポリプロピレン系樹脂が50質量%以上であり、摩擦体の引張弾性率が70MPa以上となるものである。
第1の摩擦体70とキャップ80は、いわゆる二色成形法を用いて成形されて互いに結合されている。二色成形法を用いた場合、最初にキャップ80が射出成形され、次に、成形されたキャップ80を残置する金型のコアに、第1の摩擦体70を成形するための金型のキャビティーが組み合わされて、キャップ80とは異なる、例えば、上述した特性のポリプロピレン系樹脂等の材料が射出されて第1の摩擦体70がキャップ80に付加的に成形される。二色成形法により、キャップ80と第1の摩擦体70の表面は、上記特性の材料により、比較的高い強度で接合されるので、キャップ80に対する第1の摩擦体の固定がより強固になる。
次に、図10、図11を参照して、本実施形態の筆記具本体62の軸筒61を先軸63とともに構成する後軸64についてより詳しく説明する。図10、図11は、後軸64の各斜視図であり、図10は第2の摩擦体75を固定したものであり、図11はまだ第2の摩擦体75を固定していない各図面である。
後軸64は、図11に示すように、リフィール65の過半を収容する筒状の後軸本体部64aとそれに一体に形成された後方の端部64bとを有する。端部64bは、後軸本体部64aの外径よりも小さい外径を有する略円錐台状に形成されている。端部64bの外周面には、半径方向外側に突出する環状の第1凸部64cとそれに平行な環状の第2凸部64dが形成されており、その結果、後軸本体部64aとの間に環状の第1凹部64eが形成され、第1凸部64cと第2凸部64dとの間に環状の第2凹部64fが形成される。後軸64における第1凹部64e及び第2凹部64fは、熱変色性筆記具60の長手方向に直交する方向で端部64bの外周面から凹んでいる。また、図示されるような連続的な環状の第1及び第2凹部64e,64fの少なくとも一方が、不連続な環状の凹部として形成される実施形態も可能である。
端部64bは、後軸本体部64aの内部に形成された穴から縮径されて連続的に長手方向に延びる縦穴64gを有する。また、端部64bは、長手方向に対して直交して延びる横穴64hも有する。横穴64hは縦穴64gに直交して端部64bを貫通している。
次に、後軸64に第2の摩擦体75がどのように固定されるかについて、図10、図11を参照して説明する。
第2の摩擦体75は、後軸64の端部64bに対してその表面を覆うように形作られて結合されている。また、第2の摩擦体75はその内側に、図10の(b)及び(e)に示されるように、端部64bの横穴64hに相補的な、したがってそれを埋める軸部75aを有する。さらに、第2の摩擦体75、端部64bの環状の第1凹部64e及び第2凹部64fにそれぞれ相補的な、従って半径方向内側に延びてそれらを埋める環状の第1凸部75b及び第2凸部75cも有する。
第2の摩擦体75が、このように、長手方向を横切る方向で後軸64の端部64bに形成された前述の横穴64h及び第1及び第2凹部64e,64fを埋めるので、第2の摩擦体75の使用中にそれを端部64bから引き抜くように作用する力は、第2の摩擦体75の軸部75a及び第1及び第2凸部75b、75cを介して端部64bの横穴64h及び第1及び第2凹部64e,64fによって支持される。したがって、端部64bの表面と第2の摩擦体75の内面との間に接着力又は接合力がたとえ全く期待できない場合であっても、第2の摩擦体75は後軸64の端部に強固に固定されることが可能である。
本実施形態では、第2の摩擦体75と後軸64は、第1の摩擦体70とキャップ80の場合と同様に、いわゆる二色成形法を用いて成形されて結合されている。また、上記実施形態では、第1の摩擦体70とキャップ80、及び第2の摩擦体75と後軸64は、それぞれ二色成形法によって成形されたが、それらが、性能もしくは機能を高めるため、又は意匠上の要請から3色以上の多色成形法によって成形、又は接着や溶着等の実施形態も可能である。
また、熱変色性筆記具60は、第1の摩擦体70と第2の摩擦体75のどちらか一方だけを具備する実施形態も可能である。
このように構成される図7〜図11に示すキャップ式の熱変色性筆記具60においても、キャツプを取り外して、該筆記具の熱変色性インクにより形成された筆跡を、キャップ80の第1の摩擦体70や、後軸64の第2の摩擦体75で、擦過して変色又は消色させる際にも従来のスチレン系エラストマーなどのエラストマーや、プラスチック発泡体などから構成される摩擦体に較べ、擦過する際の抵抗感も少なく、また、軽い力でも十分な摩擦熱が得られ、更に、細かい部分の消去等も容易となる今までにない優れた機能を発揮する熱変色性筆記具であることが確認された。
次に、実施例及び比較例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明は下記実施例等に限定されるものではない。
(製造例1〜5)
下記製造例1〜5により、各摩擦体を製造した。
<製造例1>
ポリプロピレン系樹脂(MG05ES、日本ポリプロ社製):95質量%
水添石油樹脂(アイマーブP−140、出光興産社製): 5質量%
上記配合成分を射出成型して成形体を得た。
<製造例2>
ポリプロピレン系樹脂(J105G、プライムポリマー社製):99質量%
水添テルペン樹脂(P−105、ヤスハラケミカル社製): 1質量%
上記配合成分を射出成型して成形体を得た。
<製造例3>
ポリプロピレン系樹脂(L−MODU S400、出光興産社製):100質量%
上記配合成分を射出成型して成形体を得た。
<製造例4:エラストマー:比較例用>
SEBSエラストマー(タフテックH1052、旭化成社製):100質量%
上記配合成分を射出成型して成形体を得た。
<製造例5:エラストマー:比較例用>
オレフィンエラストマー(ENGAGE8180、ダウ・ケミカル社製):100質量%
上記配合成分を射出成型して成形体を得た。
得られた各成形体を用いて、下記各方法により、摩擦体の引張弾性率、永久伸び、摩擦係数を測定等した。
(引張弾性率の測定方法)
JIS K 7161:2014-1に準拠して引張弾性率を測定した。
(永久伸びの測定方法)
試験片を2倍に伸長した状態で23℃、6時間保持した後、応力を取り除く。伸びた長さを伸長前の長さで除した値(%)を算出した。
(摩擦係数の測定方法)
市販の表面性測定器(HEIDON−14D、新東科学株式会社)を使用し、成形体を上質紙に対して、加重4.9N、角度90°、筆記速度100mm/minにて摩擦することによって摩擦係数を測定した。
これらの引張弾性率、永久伸び、摩擦係数の結果を下記表1に示す。
Figure 2019010796
上記で得られた製造例1〜5の成形体を図1〜図6に準拠するノック式の熱変色性筆記具(ボールペンURN−180:ボール径0.5mm)の摩擦体40に用いた。
熱変色性インクは、三菱鉛筆社製のURN−180で用いている黒色の熱変色性インクを充填した(25℃で黒色、60℃以上で消色)。
この各熱変色性筆記具を用いて筆記した筆跡を、製造例1〜5で得た各摩擦体40で擦過して消色させたところ、製造例1〜3で得た各摩擦体では、製造例4及び5の各エラストマーの摩擦体に較べ、消色の際の抵抗感が少なく、また、軽い力でも十分な摩擦熱が得られて簡単に消色し、更に、細かい部分の消去等も容易となる熱変色性筆記具となることが判った。
熱変色性インクにより形成された筆跡を、擦過して変色又は消色させる摩擦体及びこの摩擦体を備えたボールペン、マーキングペン、鉛筆等に好適な熱変色性筆記具が得られる。
1 ノック式の熱変色性筆記具
2 軸筒
3 前軸
4 後軸
5 リフィール
10 内筒
40 摩擦体

Claims (5)

  1. 熱変色性筆記具に使用される摩擦体であって、該摩擦体を構成する材料のうち、ポリプロピレン系樹脂が50質量%以上であり、摩擦体の引張弾性率(JIS K 7161:2014-1)が70MPa以上であることを特徴とする摩擦体。
  2. 永久伸びが50%以上であることを特徴とする請求項1記載の摩擦体。
  3. 摩擦係数が0.3〜0.5であることを特徴とする請求項1又は2記載の摩擦体。
  4. 摩擦体には、ロジン系樹脂、テルペン系樹脂、石油系樹脂、フェノール系樹脂、石炭系樹脂、キシレン系樹脂から選ばれる少なくとも1種の熱可塑性樹脂が含有されていることを特徴とする請求項1〜3の何れか一つに記載の摩擦体。
  5. 少なくとも熱変色性のインクを使用した熱変色性筆記具であって、該熱変色性筆記具には、請求項1〜4の何れか一つに記載の摩擦体を備えたことを特徴とする熱変色性筆記具。
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