[0001]生物製剤は、一般的に、骨折治癒及び脊髄障害の外科的処置を含む医学用途において骨成長を促進するために使用されている。脊椎固定術(spine fusion)は、変性円板疾患や腰椎及び頸椎を冒す関節炎に対処するため、整形外科医及び神経外科医により実施されることが多い。歴史的には、通常、患者の腸骨稜から採取される自家骨移植が椎骨レベル(vertebral level)間の固定(fusion)を増強するために使用されてきた。
[0002]骨誘導性で脊椎固定を促進するために一般的に使用される一つのタンパク質は、組換えヒト骨形成タンパク質−2(rhBMP−2)である。その使用は、単一レベル前方経路腰椎椎体間固定術に関しては米国食品医薬品局(FDA)によって承認されている。それ以来、rhBMP−2の使用は著しく増大し、腰椎後方固定術ならびに頸椎固定術を含むまでに拡大している。
[0003]オキシステロールは、血液中ならびにヒト及び動物の組織中に存在するコレステロールの酸素化誘導体の一大ファミリーを形成する。オキシステロールは、アテローム性動脈硬化病変部に存在することが見出されており、細胞分化、炎症、アポトーシス、及びステロイド産生といった様々な生理的過程に役割を果たしている。一部の天然オキシステロールは堅牢な骨原性を有しており、骨成長に使用できる。最も強力な骨原性天然オキシステロールである20(S)−ヒドロキシコレステロールは、骨芽細胞及び脂肪細胞に分化できる多能性間葉細胞に適用すると、骨原性であると同時に抗脂肪生成性でもある。
[0004]一つのそのようなオキシステロールは、OXY133、すなわち(3S,5S,6S,8R,9S,10R,13S,14S,17S) 17−((S)−2−ヒドロキシオクタン−2−イル)−10,13−ジメチルヘキサデカヒドロ−lH−シクロペンタ[a]フェナントレン−3,6−ジオールであり、下記構造:
を示す。
[0005]OXY133を合成するためには、単一容器での実施が困難な、複雑で多段階の化学反応が必要になることが多い。例えば、OXY133を合成するためには、分子が合成される際に末端基を保護するための様々な保護剤の利用が必要になりうる。さらに、様々な脱保護剤も利用されることになり、それがコストの増大、安全性の低下、及び環境への悪影響をもたらす。さらに、OXY133の合成経路は、30%未満の非常に低い収率しかもたらすことができない。
[0006]組換え的に製造された天然ヒトタンパク質、例えばrhBMP-2及びrhPDGFは、新生骨形成を誘導又は増強するそれらの能力について数十年間にわたり研究されている。これらのタンパク質は骨治癒の支持に有効であるが、製造の複雑さ及び関連コストに関して欠点がある。これらの欠点に対処する一つの方法は、骨治癒を刺激又は増強するために骨シグナル伝達経路の一部を調節する小分子を同定することである。二つの例は、骨誘導性オキシステロールとスタチンである。
[0007]スタチンは、コレステロールを下げるために広く使用されているHMG−CoA還元酵素阻害薬である。ある種のスタチンは、インビトロ及びインビボの両方で骨形成を刺激することも示されている。スタチンは、MAPK及びTGFβ受容体シグナル伝達カスケードを通じて、骨芽細胞分化を刺激し、骨芽細胞アポトーシスを低減することにより、骨形成を増強すると考えられている。
[0008]オキシステロール及びスタチンはインビボで骨治癒を増強することが示されているが、どちらもrhBMP−2ほど強力でないことが示されている。ゆえに、製造が容易かつ安価であるにも関わらず、それらの最終的な実用性は限定的でありうる。オキシステロール及びスタチンはどちらも骨形成に効果を有し、異なる機序によって作用することが示されているので、プロドラッグ又はオキシステロール−スタチン化合物の形態で局所的に共送達すると、いずれかを単独で送達するより大きい相乗効果をもたらすことができるはずである。
[0009]そこで、骨原性、骨誘導性及び/又は骨伝導性の促進に使用するためのオキシステロール−スタチン化合物の費用効果の高い合成法を求める需要が存在する。特に、高収率及び改良されたプロセス安全性を有するOXY133−スタチン化合物の合成法は有益であろう。立体選択的な内因性出発原料からのOXY133−スタチン化合物、複合体又はプロドラッグの合成法も有益であろう。
[0010]骨原性、骨誘導性及び/又は骨伝導性の促進に使用するためのオキシステロール−スタチン化合物、及びその合成法を提供する。高収率及び改良されたプロセス安全性を有するOXY133−スタチン化合物又は複合体の単一容器中での合成法も提供する。立体選択的なOXY133−スタチン化合物の合成法も提供する。環境影響が少ない、製品コストの低いOXY133−スタチン複合体の合成法も提供する。
[0011]一部の態様において、式III:
の構造に対応する化合物又はその薬学的に許容可能な塩、水和物もしくは溶媒和物を提供する。式中、R1は保護基であり、R3は、少なくとも1個の炭素を有する脂肪族又は環状置換基である。他の側面において、R1は、メチル、エチル、シリル又はカルバメート基であり、R3は、(C6−C26)アルキル又はヘテロアルキル、(C2−C20)アリール又はヘテロアリール、(C6−C26)アリールアルキル又はヘテロアルキル及び(C5−C20)アリールアルキル又はヘテロアリール−ヘテロアルキル、(C4−C10)アルキルジイル又はヘテロアルキルジイル、又は(C4−C10)アルキレノ又はヘテロアルキレノ又はカルバメート又はベンジル又はシリルであるが、ただし、R3が(C6−C26)アルキルの場合、R1はtert−ブチルジメチルシリルではない。
[0012]他の態様において、式V:
の構造に対応するオキシステロール−スタチン化合物を提供する。式中、R1は上記のような保護基であり、R4はスタチン部分である。
[0013]一定の態様において、式VのR1がHの場合、式VI:
に対応する構造を有する化合物が提供される。式中、R4は、アトルバスタチン(atorvastatin)、セリバスタチン(cerivastatin)、フルバスタチン(fluvastatin)、ロバスタチン(lovastatin)、メバスタチン(mevastatin)、ピタバスタチン(pitavastatin)、プラバスタチン(pravastatin)、ロスバスタチン(rosuvastatin)又はシンバスタチン(simvastatin)から得られるスタチン部分である。得られるOXY133−アトルバスタチン化合物、OXY133−セリバスタチン化合物、OXY133−フルバスタチン化合物、OXY133−メバスタチン化合物、OXY133−ピタバスタチン化合物、OXY133−プラバスタチン化合物、OXY133−ロスバスタチン化合物及びOXY133−シンバスタチン化合物の化学構造は図9〜図16に示されている。
[0014]一態様において、R4がロバスタチン部分の場合、式VII:
に対応するオキシステロール−スタチン構造が提供される。
[0015]一部の態様は、オキシステロール−スタチン化合物の製造法に向けられ、該方法は、式I:
のプレグネノロンを、塩基の存在下でR1Xと反応させて、式II:
のプレグネノロン誘導体を形成させることを含む。式IIのプレグネノロン誘導体を有機金属化合物と反応させて、式III:
のC3保護ジオール誘導体を形成させる。
次に、式IIIのC3保護ジオール誘導体をボラン化合物と反応させて、式IV:
のオキシステロールの誘導体又はその薬学的に許容可能な塩を形成させる。式IVの一態様において、R1がHで、R3がヘキシルの場合、OXY133が得られる。式IVの一部の態様において、R1は保護基であり、Xはハロゲン化物であり、そしてR3は、少なくとも1個の炭素を有する脂肪族又は環状置換基である。他の態様において、R1は、メチル、エチル、カルバメート又はシリル基であり、R3は、(C6−C26)アルキル又はヘテロアルキル、(C2−C20)アリール又はヘテロアリール、(C6−C26)アリールアルキル又はヘテロアルキル及び(C5−C20)アリールアルキル又はヘテロアリール−ヘテロアルキル、(C4−C10)アルキルジイル又はヘテロアルキルジイル、又は(C4−C10)アルキレノ又はヘテロアルキレノである。他の態様において、R3はヘキシル基である。
[0016]一部の態様において、本開示のオキシステロール−スタチン化合物の製造法に利用される有機金属化合物は、式R3MgXの化合物で、式中、Xはハロゲン化物であり、R3は、少なくとも1個の炭素を有する脂肪族又は環状置換基を含む。他の態様において、有機金属化合物は式R3Liの化合物でもよく、式中、R3は、少なくとも1個の炭素を有する脂肪族又は環状置換基を含む。一側面において、R3MgXはn−ヘキシルマグネシウムクロリドであり、式IIIの化合物とテトラヒドロフラン中で反応させることにより、式IIIa:
の化合物が形成される。
[0017]本開示のオキシステロール−スタチン化合物の製造法に有用なボラン化合物は、BH3などである。式IIIaの化合物をBH3と反応させてボラン中間体を形成させ、次にこれを塩基性媒体中の過酸化水素中で反応させると、式Va:
の化合物が形成される。この反応のための有用な塩基は、NaOH、KOH又はCa(OH)2などである。
[0018]一定の態様において、式IVの化合物を、アトルバスタチン、セリバスタチン、フルバスタチン、ロバスタチン、メバスタチン、ピタバスタチン、プラバスタチン、ロスバスタチン又はシンバスタチンを含むスタチンと反応させると、式IVa:
に対応するC3保護オキシステロール−スタチン化合物が形成できる。
[0019]一定の態様において、式Vaの化合物を、アトルバスタチン、セリバスタチン、フルバスタチン、ロバスタチン、メバスタチン、ピタバスタチン、プラバスタチン、ロスバスタチン又はシンバスタチンを含むスタチンと反応させると、式V:
に対応するC3保護オキシステロール−スタチン化合物が形成できる。式中、R1は、メチル、エチル、カルバメート又はシリルなどのC3保護基であり、R4は、アトルバスタチン、セリバスタチン、フルバスタチン、ロバスタチン、メバスタチン、ピタバスタチン、プラバスタチン、ロスバスタチン又はシンバスタチンによって提供できるようなスタチン部分である。
[0020]他の側面において、式Vの化合物は、ヨウ素源、フッ化物源又はその他の適切な脱保護法を利用することによってC3で脱保護でき、式VI:
の化合物を得ることができる。式中、R4はスタチン部分であり、スタチンは、アトルバスタチン、セリバスタチン、フルバスタチン、ロバスタチン、メバスタチン、ピタバスタチン、プラバスタチン、ロスバスタチン又はシンバスタチンを含む。一態様において、スタチン部分R4はロバスタチンから誘導され、式VII:
に対応する化合物が形成される。
[0021]一部の態様において、式Vaの化合物を、無水コハク酸、アスパラギン酸、エチルカルバミン酸又はポリエチレングリコールを含む化合物と反応させ;得られた化合物をスタチン部分R4にカップリングさせると、式VIII:
の化合物を得ることができる。式中、Lはリンカーである。リンカーLは、ポリエチレングリコール系リンカー、アスパラギン酸系リンカー、コハク酸系リンカー又はウレタン系リンカーでありうる。スタチン部分R4は、アトルバスタチン、セリバスタチン、フルバスタチン、ロバスタチン、メバスタチン、ピタバスタチン、プラバスタチン、ロスバスタチン又はシンバスタチンから誘導される。他の側面において、式VIIIの化合物は、ヨウ素源、フッ化物源又はその他の適切な脱保護法によってC3で脱保護でき、式IX:
の化合物を得ることができる。ここで、ヨウ素源はトリメチルシリルヨージドであり、フッ化物源は、テトラ−n−ブチルアンモニウムフルオリド又はHFピリジン錯体で、水素源は接触水素化法で提供される水素ガスである。
[0022]様々な態様において、リンカーLの有無にかかわらずオキシステロール−スタチン化合物又は複合体の上記製造法は、単一容器で実施でき、オキシステロール−スタチン化合物又はその薬学的に許容可能な塩、水和物もしくは溶媒和物を得ることができる。
[0023]一定の態様において、本開示は、(i)式V:
の化合物;又は
(ii)式VI:
の化合物;又は
(iii)式VII:
の化合物;又は
(iv)式VIII:
の化合物;又は
(v)式IX:
の化合物と、薬学的に許容可能な担体又は希釈剤とを含む医薬組成物を提供する。式中、R1は保護基であり、R4はスタチン部分であり、そしてLはリンカーである。
[0024]他の態様において、本開示は、骨障害を患う哺乳動物の治療法を提供する。該治療法は、哺乳動物に、有効量の、
(i)式V:
の化合物;又は
(ii)式VI:
の化合物;又は
(iii)式VII:
の化合物;又は
(iv)式VIII:
の化合物;又は
(v)式IX:
の化合物及び薬学的に許容可能な担体又は希釈剤を投与することを含む。式中、R1は保護基であり、R4はスタチン部分であり、そしてLはリンカーである。オキシステロール−スタチン化合物は、哺乳動物に、(i)局所送達、又は(ii)全身送達によって投与される。骨障害は、骨折、骨粗鬆症又は骨減少症を含む。
[0025]様々な態様の追加の特徴及び利点は、一部は以下の説明の中で示され、一部は記載から明らかになるか、又は様々な態様に実施によって学ぶこともできる。様々な態様の目的及びその他の利点は、以下の説明及び添付の特許請求の範囲において特に指摘された構成要素及び組合せにより実現及び達成されるであろう。
[0026]態様のその他の側面、特徴、利益及び利点は、一部は、以下の説明、添付の特許請求の範囲及び添付図面に関して明白になるであろう。
[0027]図1は、本開示の一態様に示されている通り、酢酸プレグネノロンを含む出発反応物を用いてOXY133を合成するための段階的反応を示す。プレグネノロンを有機金属化合物と反応させて、2個のヒドロキシル基を有するステロール又はジオールを製造する。次にそのステロール又はジオールをボラン及び過酸化水素と反応させ、精製してOXY133を製造する。
[0028]図2は、単離され精製されたOXY133から得られた1H NMRデータのグラフ図を示す。
[0029]図3は、OXY133から得られた13C NMRデータのグラフ図を示す。
[0030]図4は、OXY133から得られた赤外分光データのグラフ図を示す。
[0031]図5は、OXY133から得られた質量分析データのグラフ図を示す。
[0032]図6は、OXY133を合成するための中間ステロール又はジオールから得られた1H NMRデータのグラフ図を示す。
[0033]図7は、OXY133を合成するための中間ステロール又はジオールから得られた13C NMRデータのグラフ図を示す。
[0034]図8は、OXY133−ロバスタチン化合物の合成スキームを示す。
[0035]図9は、OXY133−アトルバスタチン化合物の化学構造を示す。
[0036]図10は、OXY133−セリバスタチン化合物の化学構造を示す。
[0037]図11は、OXY133−フルバスタチン化合物の化学構造を示す。
[0038]図12は、OXY133−メバスタチン化合物の化学構造を示す。
[0039]図13は、OXY133−ピタバスタチン化合物の化学構造を示す。
[0040]図14は、OXY133−プラバスタチン化合物の化学構造を示す。
[0041]図15は、OXY133−ロスバスタチン化合物の化学構造を示す。
[0042]図16は、OXY133−シンバスタチン化合物の化学構造を示す。
[0043] 図面は正確な縮尺で描かれていないことは理解されるはずである。さらに、図面中の物体間の関係も正確な縮尺とは限らず、実際、サイズに関しては、逆転した関係を有することもある。図面は、示された各物体の構造に対する理解及び明確性をもたらすことを目的としているので、一部の特徴は、構造の特定の特徴を示すために誇張されていることもある。
発明の詳細な説明
[0044]本明細書及び添付の特許請求の範囲の目的のために、別途記載のない限り、成分の量、材料のパーセンテージ又は割合、反応条件、ならびに本明細書及び特許請求の範囲で使用されているその他の数値を表すすべての数字は、すべての場合において、“約”という用語によって修飾されていると理解されるものとする。従って、それに反することが示されない限り、以下の明細書及び添付の特許請求の範囲に示されている数値パラメーターは、本願が得ようとしている所望の性質に応じて変動しうる近似値である。少なくとも、そして特許請求の範囲への均等論の適用を制限しようとするのではなく、各数値パラメーターは、少なくとも、報告されている有効数字の桁数を考慮し、通常の丸め技術を適用することによって解釈されるべきである。
[0045]本願の広い範囲を示す数値範囲及び数値パラメーターは近似値ではあるが、特定の実施例中に示されている数値はできる限り正確に報告されている。しかしながら、いずれの数値も、それぞれの試験測定に見出される標準偏差に必然的に由来する一定の誤差を本質的に含有している。さらに、本明細書中に開示されたすべての範囲は、その中に包含されるありとあらゆる部分範囲も包含すると理解されるべきである。例えば、“1〜10”の範囲は、最小値1と最大値10の間(それらを含む)のありとあらゆる部分範囲、すなわち、1以上の最小値及び10以下の最大値を有するありとあらゆる部分範囲、例えば5.5〜10を含む。
定義
[0046]本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用されている単数形の“a”、“an”、及び“the”は、一つの指示対象に明示的かつ明白に限定されていない限り、複数の指示対象も含むことに注意する。従って、例えば、“アルカノールアミン”と言う場合、1つ、2つ、3つ又はそれ以上のアルカノールアミンを含む。
[0047]本明細書中で使用されている“生物活性薬”という用語は、一般的に、患者の生理を変更する何らかの物質を意味する。本明細書においては、“生物活性薬”という用語は、“治療薬”、“治療上有効量”、及び“医薬品有効成分”、“API”又は“薬物”という用語と互換的に使用されうる。“生物活性”組成物又は“医薬”組成物という用語も本明細書においては互換的に使用される。どちらの用語も、対象に投与できる組成物、対象に導入される医療デバイスを被覆するために使用される組成物又は医療デバイス中に存在する組成物を意味する。
[0048]本明細書中で使用されている“対象”という用語は、化合物で治療できる状態の症状を示している任意の動物を含む。適切な対象(患者)は、実験動物(例えば、マウス、ラット、ウサギ、又はモルモット)、家畜、及び飼育動物又はペット(例えば、ネコ、イヌ、又はウマ)を含む。ヒト以外の霊長類及びヒト患者を含むヒトも含まれる。典型的な対象は、ヘッジホッグシグナル伝達によって刺激される一つ又は複数の生理学的活性が異常な量(“正常”又は“健常”対象より低い量)を示す動物を含む。異常な活性は、ヘッジホッグ活性の活性化を含む様々な機序のいずれかによって調節できる。異常な活性は病的状態をもたらしうる。
[0049]“生分解性(biodegradable)”という用語は、ヒト体内で、酵素の作用により、加水分解作用により、及び/又はその他の類似の機序により、時間と共に分解する化合物又は成分を含む。様々な態様において、“生分解性”は、成分が体内で非毒性の成分に分解され、その成分が細胞(例えば骨細胞)に浸透して欠損を修復できることを含む。“生体浸食性(bioerodible)”とは、化合物又は成分が、少なくとも一部は、周辺組織中に見出される物質、流体と接触した場合、又は細胞作用により、時間と共に浸食又は分解されることを意味する。“生体吸収性(bioabsorbable)”とは、化合物又は成分が、例えば細胞又は組織によりヒト体内で分解され、吸収されることを意味する。“生体適合性”とは、化合物又は成分が、標的組織部位で実質的な組織刺激又は壊死を引き起こさない、及び/又は発がん性でないことを意味する。
[0050]本明細書中で使用されている“アルキル”という用語は、親アルカン、アルケン又はアルキンの単一炭素原子から1個の水素原子を除去することによって誘導された、飽和又は不飽和の、分枝、直鎖、又は環状一価炭化水素基のことを言う。典型的なアルキル基は、メチル;エチル類、例えばエタノール、エチル;プロピル類、例えばプロパン−1−イル、プロパン−2−イル、シクロプロパン−1−イル、プロパ−1−エン−1−イル、プロパ−1−エン−2−イル、プロパ−2−エン−1−イル、シクロプロパ−1−エン−1−イル、シクロプロパ−2−エン−1−イル、プロパ−1−イン−1−イル、プロパ−2−イン−1−イルなど;ブチル類、例えばブタン−1−イル、ブタン−2−イル、2−メチル−プロパン−1−イル、2−メチル−プロパン−2−イル、シクロブタン−1−イル、ブタ−1−エン−1−イル、ブタ−1−エン−2−イル、2−メチル−プロパ−1−エン−1−イル、ブタ−2−エン−1−イル、ブタ−2−エン−2−イル、ブタ−1,3−ジエン−1−イル、ブタ−1,3−ジエン−2−イル、シクロブタ−1−エン−1−イル、シクロブタ−1−エン−3−イル、シクロブタ−1,3−ジエン−1−イル、ブタ−1−イン−1−イル、ブタ−1−イン−3−イル、ブタ−3−イン−1−イルなどであるが、これらに限定されない。特定の飽和レベルが意図される場合、以下に定義のような“アルケニル”という用語体系が使用される。一部の態様において、アルキル基は(C1−C40)アルキルである。一部の態様において、アルキル基は(C1−C6)アルキルである。
[0051]本明細書中で使用されている“アルカニル”という用語は、親アルカンの単一炭素原子から1個の水素原子を除去することによって誘導された、飽和の、分枝、直鎖、又は環状アルキル基のことを言う。典型的なアルカニル基は、メタノール;エタノール;プロパノール類、例えばプロパン−1−イル、プロパン−2−イル(イソプロピル)、シクロプロパン−1−イルなど;ブタニル類、例えばブタン−1−イル、ブタン−2−イル(sec−ブチル)、2−メチル−プロパン−1−イル(イソブチル)、2−メチル−プロパン−2−イル(t−ブチル)、シクロブタン−1−イルなどであるが、これらに限定されない。一部の態様において、アルカニル基は(C1−C40)アルカニルである。一部の態様において、アルカニル基は(C1−C6)アルカニルである。
[0052]本明細書中で使用されている“アルケニル”という用語は、親アルケンの単一炭素原子から1個の水素原子を除去することによって誘導された、少なくとも一つの炭素炭素二重結合を有する不飽和の、分枝、直鎖、又は環状アルキル基のことを言う。該基は二重結合に関してシス又はトランス配置のいずれかを取りうる。典型的なアルケニル基は、エテニル;プロペニル類、例えばプロパ−1−エン−1−イル、プロパ−1−エン−2−イル、プロパ−2−エン−1−イル、プロパ−2−エン−2−イル、シクロプロパ−1−エン−1−イル;シクロプロパ−2−エン−1−イル;ブテニル類、例えばブタ−1−エン−1−イル、ブタ−1−エン−2−イル、2−メチル−プロパ−1−エン−1−イル、ブタ−2−エン−1−イル、ブタ−2−エン−1−イル、ブタ−2−エン−2−イル、ブタ−1,3−ジエン−1−イル、ブタ−1,3−ジエン−2−イル、シクロブタ−1−エン−1−イル、シクロブタ−1−エン−3−イル、シクロブタ−1,3−ジエン−1−イルなどであるが、これらに限定されない。一部の態様において、アルケニル基は(C2−C40)アルケニルである。一部の態様において、アルケニル基は(C2−C6)アルケニルである。
[0053]本明細書中で使用されている“アルキニル”という用語は、親アルキンの単一炭素原子から1個の水素原子を除去することによって誘導された、少なくとも一つの炭素炭素三重結合を有する不飽和の、分枝、直鎖、又は環状アルキル基のことを言う。典型的なアルキニル基は、エチニル;プロピニル類、例えばプロパ−1−イン−1−イル、プロパ−2−イン−1−イルなど;ブチニル類、例えばブタ−1−イン−1−イル、ブタ−3−イン−1−イルなどであるが、これらに限定されない。一部の態様において、アルキニル基は(C2−C40)アルキニルである。一部の態様において、アルキニル基は(C2−C6)アルキニルである。
[0054]本明細書中で使用されている“アルキルジイル”という用語は、親アルカン、アルケン又はアルキンの2個の異なる炭素原子のそれぞれから1個の水素原子を除去することによって、又は親アルカン、アルケン又はアルキンの単一炭素原子から2個の水素原子を除去することによって誘導された、飽和又は不飽和の、分枝、直鎖又は環状二価炭化水素基のことを言う。2つの一価基中心又は二価基中心の各結合価は、同じ又は異なる原子と結合を形成できる。典型的なアルキルジイルは、メタンジイル;エチルジイル類、例えばエタン−1,1−ジイル、エタン−1,2−ジイル、エテン−1,1−ジイル、エテン−1,2−ジイル;プロピルジイル類、例えばプロパン−1,1−ジイル、プロパン−1,2−ジイル、プロパン−2,2−ジイル、プロパン−1,3−ジイル、シクロプロパン−1,1−ジイル、シクロプロパン−1,2−ジイル、プロパ−1−エン−1,1−ジイル、プロパ−1−エン−1,2−ジイル、プロパ−2−エン−1,2−ジイル、プロパ−1−エン−1,3−ジイル、シクロプロパ−1−エン−1,2−ジイル、シクロプロパ−2−エン−1,2−ジイル、シクロプロパ−2−エン−1,1−ジイル、プロパ−1−イン−1,3−ジイルなど;ブチルジイル類、例えばブタン−1,1−ジイル、ブタン−1,2−ジイル、ブタン−1,3−ジイル、ブタン−1,4−ジイル、ブタン−2,2−ジイル、2−メチル−プロパン−1,1−ジイル、2−メチル−プロパン−1,2−ジイル、シクロブタン−1,1−ジイル;シクロブタン−1,2−ジイル、シクロブタン−1,3−ジイル、ブタ−1−エン−1,1−ジイル、ブタ−1−エン−1,2−ジイル、ブタ−1−エン−1,3−ジイル、ブタ−1−エン−1,4−ジイル、2−メチル−プロパ−1−エン−1,1−ジイル、2−メタニリデン−プロパン−1,1−ジイル、ブタ−1,3−ジエン−1,1−ジイル、ブタ−1,3−ジエン−1,3−ジイル、シクロブタ−1−エン−1,2−ジイル、シクロブタ−1−エン−1,3−ジイル、シクロブタ−2−エン−1,2−ジイル、シクロブタ−1,3−ジエン−1,2−ジイル、シクロブタ−1,3−ジエン−1,3−ジイル、ブタ−1−イン−1,3−ジイル、ブタ−1−イン−1,4−ジイル、ブタ−1,3−ジイン−1,4−ジイルなどであるが、これらに限定されない。特定の飽和レベルが意図される場合、アルカニルジイル、アルケニルジイル及び/又はアルキニルジイルという用語体系が使用される。一部の態様において、アルキルジイル基は(C1−C40)アルキルジイルである。一部の態様において、アルキルジイル基は(C1−C6)アルキルジイルである。また、基中心が末端炭素にある飽和非環式アルカニルジイル基も想定されている。例えば、メタンジイル(メタノ);エタン−1,2−ジイル(エタノ);プロパン−1,3−ジイル(プロパノ);ブタン−1,4−ジイル(ブタノ)などである(以下に定義のアルキレノとも呼ばれる)。
[0055]本明細書中で使用されている“アルキレノ”という用語は、直鎖の親アルカン、アルケン又はアルキンの2個の末端炭素原子のそれぞれから1個の水素原子を除去することによって誘導された、2つの末端一価基中心を有する直鎖アルキルジイル基のことを言う。典型的なアルキレノ基は、メタノ;エチレノ類、例えばエタノ、エテノ、エチノ;プロピレノ類、例えばプロパノ、プロパ[1]エノ、プロパ[1,2]ジエノ、プロパ[1]イノなど;ブチレノ類、例えばブタノ、ブタ[1]エノ、ブタ[2]エノ、ブタ[1,3]ジエノ、ブタ[1]イノ、ブタ[2]イノ、ブタ[1,3]ジイノなどであるが、これらに限定されない。特定の飽和レベルが意図される場合、アルカノ、アルケノ及び/又はアルキノという用語体系が使用される。一部の態様において、アルキレノ基は(C1−C40)アルキレノである。一部の態様において、アルキレノ基は(C1−C6)アルキレノである。
[0056]本明細書中で使用されている“ヘテロアルキル”、“ヘテロアルカニル”、“ヘテロアルケニル”、“ヘテロアルキルジイル”及び“ヘテロアルキレノ”という用語は、それぞれ、1個又は複数個の炭素原子がそれぞれ独立に同じ又は異なるヘテロ原子基で置換されたアルキル、アルカニル、アルケニル、アルキニル、アルキルジイル及びアルキレノ基のことを言う。これらの基に含めることができる典型的なヘテロ原子基は、−O−、−S−、−O−O−、−S−S−、−O−S−、−NR’、=N−N=、−N-=N−、−N(O)N−、−N=N−NR’−、−PH−、−P(O)2−、−O−P(O)2−、−SH2−、−S(O)2−などであるが、これらに限定されない。式中、各R’は、独立に、水素、本明細書中に定義のアルキル、アルカニル、アルケニル、アルキニル、アリール、アリールアリール、アリールアルキル、ヘテロアリール、ヘテロアリールアルキル又はヘテロアリール−ヘテロアリールである。
[0057]本明細書中で使用されている“アリール”という用語は、親芳香環系の単一炭素原子から1個の水素原子を除去することによって誘導された一価芳香族炭化水素基のことを言う。典型的なアリール基は、アセアントリレン、アセナフチレン、アセフェナントリレン、アントラセン、アズレン、ベンゼン、クリセン、コロネン、フルオランテン、フルオレン、ヘキサセン、ヘキサフェン、ヘキシレン、as−インダセン、s−インダセン、インダン、インデン、ナフタレン、オクタセン、オクタフェン、オクタレン、オバレン、ペンタ−2,4−ジエン、ペンタセン、ペンタレン、ペンタフェン、ペリレン、フェナレン、フェナントレン、ピセン、プレイアデン、ピレン、ピラントレン、ルビセン、トリフェニレン、トリナフタレンなどから誘導された基などであるが、これらに限定されない。一部の態様において、アリール基は(C5−C14)アリール又は(C5−C10)アリールである。一部の態様において、アリールはフェニル及びナフチルである。
[0058]本明細書中で使用されている“アリールジイル”という用語は、親芳香環系の2個の異なる炭素原子のそれぞれから1個の水素原子を除去することによって、又は親芳香環系の単一炭素原子から2個の水素原子を除去することによって誘導された二価芳香族炭化水素基のことを言う。2つの一価基中心又は二価中心の各結合価は、同じ又は異なる原子と結合を形成できる。典型的なアリールジイル基は、アセアントリレン、アセナフチレン、アセフェナントリレン、アントラセン、アズレン、ベンゼン、クリセン、コロネン、フルオランテン、フルオレン、ヘキサセン、ヘキサフェン、ヘキシレン、as−インダセン、s−インダセン、インダン、インデン、ナフタレン、オクタセン、オクタフェン、オクタレン、オバレン、ペンタ−2,4−ジエン、ペンタセン、ペンタレン、ペンタフェン、ペリレン、フェナレン、フェナントレン、ピセン、プレイアデン、ピレン、ピラントレン、ルビセン、トリフェニレン、トリナフタレンなどから誘導された二価の基であるが、これらに限定されない。一部の態様において、アリールジイル基は(C5−C14)アリールジイル又は(C5−C10)アリールジイルである。例えば、一部のアリールジイル基は、ベンゼン及びナフタレンから誘導された二価基、特にフェナ−1,4−ジイル、ナフタ−2,6−ジイル及びナフタ−2,7−ジイルである。
[0059]本明細書中で使用されている“アリーレノ”という用語は、親芳香環系の2個の隣接炭素原子のそれぞれから1個の水素原子を除去することによって誘導された、2つの隣接一価基中心を有する二価架橋基のことを言う。アリーレノ架橋基、例えばベンゼノを親芳香環系、例えばベンゼンに結合させると、縮合芳香環系、例えばナフタレンが得られる。この架橋は、得られる縮合環系へのその結合と一致する最大数の非累積二重結合を有すると推定される。炭素原子の二重計数を回避するために、アリーレノ置換基が代替置換基を含む構造上の2個の隣接置換基が一緒になることによって形成される場合、アリーレノ架橋の炭素原子は、構造の架橋炭素原子を代替する。一例として、下記構造:
を考えてみる。
[0060]式中、R1は、単独の場合は水素であるか、又はR2と一緒になった場合は(C5−C14)アリーレノであり;R2は、単独の場合は水素であるか、又はR1と一緒になった場合は(C5−C14)アリーレノである。
[0061]R1及びR2がそれぞれ水素の場合、得られる化合物はベンゼンである。R1とR2が一緒になってC6アリーレノ(ベンゼノ)の場合、得られる化合物はナフタレンである。R1とR2が一緒になってC10アリーレノ(ナフタレノ)の場合、得られる化合物はアントラセン又はフェナントレンである。典型的なアリーレノ基は、アセアントリレノ、アセナフチレノ、アセフェナントリレノ、アントラセノ、アズレノ、ベンゼノ(ベンゾ)、クリセノ、コロネノ、フルオランテノ、フルオレノ、ヘキサセノ、ヘキサフェノ、ヘキシレノ、as−インダセノ、s−インダセノ、インデノ、ナフタレン(ナフト)、オクタセノ、オクタフェノ、オクタレノ、オバレノ、ペンタ−2,4−ジエノ、ペンタセノ、ペンタレノ、ペンタフェノ、ペリレノ、フェナレノ、フェナントレノ、ピセノ、プレイアデノ、ピレノ、ピラントレノ、ルビセノ、トリフェニレノ、トリナフタレノなどであるが、これらに限定されない。特定の連結が意図される場合、関与する(アリーレノ架橋の)架橋炭素原子は角括弧内に示される。例えば、[1,2]ベンゼノ([1,2]ベンゾ)、[1,2]ナフタレノ、[2,3]ナフタレノなどである。従って、上記の例において、R1とR2が一緒になって[2,3]ナフタレノの場合、得られる化合物はアントラセンである。R1とR2が一緒になって[1,2]ナフタレノの場合、得られる化合物はフェナントレンである。一態様において、アリーレノ基は(C5−C14)又は(C5−C10)である。
[0062]本明細書中で使用されている“アリールアリール”という用語は、2個以上の同一又は同一でない親芳香環系が単結合によって直接結合されている環系の単一炭素原子から1個の水素原子を除去することによって誘導された一価炭化水素基のことを言う。そのような直接環結合の数は、関与する親芳香環系の数より一つ少ない。典型的なアリールアリール基は、ビフェニル、トリフェニル、フェニル−ナフチル、ビナフチル、ビフェニル−ナフチルなどであるが、これらに限定されない。アリールアリール基を構成する炭素原子の数が特定される場合、その数は各親芳香環を構成する炭素原子の数のことである。例えば、(C1−C14)アリールアリールは、各芳香環が5〜14個の炭素を含むアリールアリール基、例えばビフェニル、トリフェニル、ビナフチル、フェニルナフチルなどである。一部の場合において、アリールアリール基の各親芳香環系は、独立に、(C5−C14)芳香族又は(C1−C10)芳香族である。一部の態様において、アリールアリール基は、すべての親芳香環系が同一である基、例えば、ビフェニル、トリフェニル、ビナフチル、トリナフチルなどである。
[0063]本明細書中で使用されている“ビアリール”という用語は、単結合によって直接一緒に結合されている2個の同一親芳香族系を有するアリールアリール基のことを言う。典型的なビアリール基は、ビフェニル、ビナフチル、ビアントラシル(bianthracyl)などであるが、これらに限定されない。一部の場合において、芳香環系は(C5−C14)芳香環又は(C5−C10)芳香環である。一態様において、ビアリール基はビフェニルである。
[0064]本明細書中で使用されている“アリールアルキル”という用語は、炭素原子、典型的には末端炭素原子又はsp2炭素原子に結合されている水素原子の1個がアリール基で置換されている非環式アルキル基のことを言う。典型的なアリールアルキル基は、ベンジル、2−フェニルエタン−1−イル、2−フェニルエテン−1−イル、ナフチルメチル、2−ナフチルエタン−1−イル、2−ナフチルエテン−1−イル、ナフトベンジル、2−ナフトフェニルエタン−1−イルなどであるが、これらに限定されない。特定のアルキル部分が意図される場合、アリールアルカニル、アリールアルケニル及び/又はアリールアルキニルという用語体系が使用される。一部の態様において、アリールアルキル基は(C6−C40)アリールアルキル、例えば、アリールアルキル基のアルカニル、アルケニル又はアルキニル部分が(C1−C26)であり、アリール部分が(C5−C14)である。一部の態様において、アリールアルキル基は(C6−C13)、例えば、アリールアルキル基のアルカニル、アルケニル又はアルキニル部分が(C1−C3)であり、アリール部分が(C5−C10)である。
[0065]本明細書中で使用されている“ヘテロアリール”という用語は、親ヘテロ芳香環系の単一原子から1個の水素原子を除去することによって誘導された一価ヘテロ芳香族基のことを言う。典型的なヘテロアリール基は、アクリジン、アルシンドール、カルバゾール、β−カルボリン、クロマン、クロメン、シンノリン、フラン、イミダゾール、インダゾール、インドール、インドリン、インドリジン、イソベンゾフラン、イソクロメン、イソインドール、イソインドリン、イソキノリン、イソチアゾール、イソオキサゾール、ナフチリジン、オキサジアゾール、オキサゾール、ペリミジン、フェナントリジン、フェナントロリン、フェナジン、フタラジン、プテリジン、プリン、ピラン、ピラジン、ピラゾール、ピリダジン、ピリジン、ピリミジン、ピロール、ピロリジン、キナゾリン、キノリン、キノリジン、キノキサリン、テトラゾール、チアジアゾール、チアゾール、チオフェン、トリアゾール、キサンテンなどから誘導された基を含むが、これらに限定されない。一部の態様において、ヘテロアリール基は5〜14員ヘテロアリール、5〜10員ヘテロアリールである。一部の態様において、ヘテロアリール基は、いずれの環ヘテロ原子も窒素である親ヘテロ芳香環系、例えば、イミダゾール、インドール、インダゾール、イソインドール、ナフチリジン、プテリジン、イソキノリン、フタラジン、プリン、ピラゾール、ピラジン、ピリダジン、ピリジン、ピロール、キナゾリン、キノリンなどから誘導されたものである。
[0066]“ヘテロアリールジイル”という用語は、親ヘテロ芳香環系の2個の異なる原子のそれぞれから1個の水素原子を除去することによって、又は親ヘテロ芳香環系の単一原子から2個の水素原子を除去することによって誘導された二価ヘテロ芳香族基のことを言う。2つの一価基中心又は単一の二価中心の各結合価は、同じ又は異なる原子と結合を形成できる。典型的なヘテロアリールジイル基は、アクリジン、アルシンドール、カルバゾール、β−カルボリン、クロマン、クロメン、シンノリン、フラン、イミダゾール、インダゾール、インドール、インドリン、インドリジン、イソベンゾフラン、イソクロメン、イソインドール、イソインドリン、イソキノリン、イソチアゾール、イソオキサゾール、ナフチリジン、オキサジアゾール、オキサゾール、ペリミジン、フェナントリジン、フェナントロリン、フェナジン、フタラジン、プテリジン、プリン、ピラン、ピラジン、ピラゾール、ピリダジン、ピリジン、ピリミジン、ピロール、ピロリジン、キナゾリン、キノリン、キノリジン、キノキサリン、テトラゾール、チアジアゾール、チアゾール、チオフェン、トリアゾール、キサンテンなどから誘導された二価の基を含むが、これらに限定されない。一部の態様において、ヘテロアリールジイル基は5〜14員ヘテロアリールジイル又は5〜10員ヘテロアリールジイルである。一部の態様において、ヘテロアリールジイル基は、いずれの環ヘテロ原子も窒素である親ヘテロ芳香環系、例えば、イミダゾール、インドール、インダゾール、イソインドール、ナフチリジン、プテリジン、イソキノリン、フタラジン、プリン、ピラゾール、ピラジン、ピリダジン、ピリジン、ピロール、キナゾリン、キノリンなどから誘導された二価の基である。
[0067]本明細書中で使用されている“ヘテロアリーレノ”という用語は、親ヘテロ芳香環系の2個の隣接原子のそれぞれから1個の水素原子を除去することによって誘導された、2つの隣接一価基中心を有する二価架橋基のことを言う。ヘテロアリーレノ架橋基、例えばピリジノを親芳香環系、例えばベンゼンに結合させると、縮合ヘテロ芳香環系、例えばキノリンが得られる。この架橋は、得られる縮合環系へのその結合と一致する最大数の非累積二重結合を有すると推定される。環原子の二重計数を回避するために、ヘテロアリーレノ置換基が、代替置換基を含む構造上の2個の隣接置換基が一緒になることによって形成される場合、ヘテロアリーレノ架橋の環原子は、構造の架橋環原子を代替する。一例として、下記構造:
[式中、R1は、単独の場合は水素であるか、又はR2と一緒になった場合は5〜14員のヘテロアリーレノであり;R2は、単独の場合は水素であるか、又はR1と一緒になった場合は5〜14員のヘテロアリーレノである]を考えてみる。
[0068]R1及びR2がそれぞれ水素の場合、得られる化合物はベンゼンである。R1とR2が一緒になって6員のヘテロアリーレノ(ピリジノ)の場合、得られる化合物はイソキノリン、キノリン又はキノリジンである。R1とR2が一緒になって10員のヘテロアリーレノ(例えばイソキノリン)の場合、得られる化合物は、例えばアクリジン又はフェナントリジンである。典型的なヘテロアリーレノ基は、アクリジノ、カルバゾロ、β−カルボリノ、クロメノ、シンノリノ、フラン、イミダゾロ、インダゾレノ、インドレノ、インドリジノ、イソベンゾフラノ、イソクロメノ、イソインドレノ、イソキノリノ、イソチアゾレノ、イソオキサゾレノ、ナフチリジノ、オキサジアゾレノ、オキサゾレノ、ペリミジノ、フェナントリジノ、フェナントロリノ、フェナジノ、フタラジノ、プテリジノ、プリノ、ピラノ、ピラジノ、ピラゾレノ、ピリダジノ、ピリジノ、ピリミジノ、ピロレノ、ピロリジノ、キナゾリノ、キノリノ、キノリジノ、キノキサリノ、テトラゾレノ、チアジアゾレノ、チアゾレノ、チオフェノ、トリアゾレノ、キサンテノなどであるが、これらに限定されない。特定の連結が意図される場合、関与する(ヘテロアリーレノ架橋の)架橋原子は角括弧内に示される。例えば、[1,2]ピリジノ、[2,3]ピリジノ、[3,4]ピリジノなどである。従って、上記の例において、R1とR2が一緒になって[1,2]ピリジノの場合、得られる化合物はキノリジンである。R1とR2が一緒になって[2,3]ピリジノの場合、得られる化合物はキノリンである。R1とR2が一緒になって[3,4]ピリジノの場合、得られる化合物はイソキノリンである。一部の態様において、ヘテロアリーレノ基は5〜14員ヘテロアリーレノ又は5〜10員ヘテロアリーレノである。一部の態様において、ヘテロアリーレノ基は、いずれの環ヘテロ原子も窒素である親ヘテロ芳香環系から誘導されたもの、例えば、イミダゾロ、インドロ、インダゾロ、イソインドロ、ナフチリジノ、プテリジノ、イソキノリノ、フタラジノ、プリノ、ピラゾロ、ピラジノ、ピリダジノ、ピリジノ、ピロロ、キナゾリノ、キノリノなどである。
[0069]本明細書中で使用されている“ヘテロアリール−ヘテロアリール”という用語は、2個以上の同一又は同一でない親ヘテロ芳香環系が単結合によって直接結合されている環系の単一原子から1個の水素原子を除去することによって誘導された一価ヘテロ芳香族基のことを言う。そのような直接環結合の数は、関与する親ヘテロ芳香環系の数より一つ少ない。典型的なヘテロアリール−ヘテロアリール基は、ビピリジル、トリピリジル、ピリジルプリニル、ビプリニルなどであるが、これらに限定されない。環原子の数が特定される場合、その数は各親ヘテロ芳香環系を構成する原子の数のことである。例えば、5〜14員のヘテロアリール−ヘテロアリールは、各親ヘテロ芳香環系が5〜14個の原子を含むヘテロアリール−ヘテロアリール基、例えばビピリジル、トリピリジルなどである。一部の態様において、各親ヘテロ芳香環系は、独立に、5〜14員のヘテロ芳香族、又は5〜10員のヘテロ芳香族である。一部の態様において、ヘテロアリール−ヘテロアリール基は、すべての親ヘテロ芳香環系が同一である基である。一部の態様において、ヘテロアリール−ヘテロアリール基は、各ヘテロアリール基が、いずれの環ヘテロ原子も窒素である親ヘテロ芳香環系、例えば、イミダゾール、インドール、インダゾール、イソインドール、ナフチリジン、プテリジン、イソキノリン、フタラジン、プリン、ピラゾール、ピラジン、ピリダジン、ピリジン、ピロール、キナゾリン、キノリンなどから誘導されたものである。
[0070]本明細書中で使用されている“ビヘテロアリール”という用語は、単結合によって直接一緒に結合されている2個の同一親ヘテロ芳香環系を有するヘテロアリール−ヘテロアリール基のことを言う。典型的なビヘテロアリール基は、ビピリジル、ビプリニル、ビキノリニルなどであるが、これらに限定されない。一部の態様において、ヘテロ芳香環系は5〜14員ヘテロ芳香環又は5〜10員ヘテロ芳香環である。一部の態様において、ビヘテロアリール基は、ヘテロアリール基が、いずれの環ヘテロ原子も窒素である親ヘテロ芳香環系から誘導されたもの、例えば、ビイミダゾリル、ビインドリル、ビインダゾリル、ビイソインドリル、ビナフチリジニル、ビプテリジニル、ビイソキノリニル、ビフタラジニル、ビプリニル、ビピラゾリル、ビピラジニル、ビピリダジニル、ビピリジニル、ビピロリル、ビキナゾリニル、ビキノリニルなどである。
[0071]本明細書中で使用されている“ヘテロアリールアルキル”という用語は、炭素原子、典型的には末端炭素原子又はsp2炭素原子に結合されている水素原子の1個がヘテロアリール基で置換されている非環式アルキル基のことを言う。特定のアルキル部分が意図される場合、ヘテロアリールアルカニル、ヘテロアリールアルケニル及び/又はヘテロアリールアルキニルという用語体系が使用される。一部の態様において、ヘテロアリールアルキル基は6〜20員ヘテロアリールアルキル、例えば、ヘテロアリールアルキルのアルカニル、アルケニル又はアルキニル部分が1〜6員であり、ヘテロアリール部分が5〜14員ヘテロアリールである。一部の態様において、ヘテロアリールアルキルは6〜13員ヘテロアリールアルキル、例えば、アルカニル、アルケニル又はアルキニル部分が1〜3員であり、ヘテロアリール部分が5〜10員ヘテロアリールである。
[0072]本明細書中で使用されている“置換された”という用語は、1個又は複数個の水素原子がそれぞれ独立に同じ又は異なる置換基で置換されている基のことを言う。典型的な置換基は、−X、−R、−O−、=O、−OR、−O−OR、−SR、−S−、=S、−NRR、=NR、ペルハロ(C1−C6)アルキル、−CX3、−CF3、−CN、−OCN、−SCN、−NCO、−NCS、−NO、−NO2、=N2、−N3、−S(O)2O−、−S(O)2OH、−S(O)2R、−C(O)R、−C(O)X、−C(S)R、−C(S)X、−C(O)OR、−C(O)O−、−C(S)OR、−C(O)SR、−C(S)SR、−C(O)NRR、−C(S)NRR及び−C(NR)NRR[式中、各Xは、独立にハロゲン(例えば−F又は−Cl)であり、各Rは、独立に、水素、アルキル、アルカニル、アルケニル、アルカニル、アリール、アリールアルキル、アリールアリール、ヘテロアリール、ヘテロアリールアルキル又はヘテロアリール−ヘテロアリール(本明細書中に定義の通り)である]などであるが、これらに限定されない。何らかの特定基を置換する実際の置換基は、置換される基が何であるか(identity)による。
[0073]本明細書中で使用されている“溶媒和物”という用語は、開示化合物の一つ又は複数の分子と溶媒の一つ又は複数の分子を含む集合体(aggregate)のことを言う。溶媒和物を形成する溶媒の例は、水、イソプロパノール、エタノール、メタノール、DMSO、酢酸エチル、酢酸、及びエタノールアミンなどであるが、これらに限定されない。“水和物”という用語は、溶媒分子が水である集合体又は複合体のことを言う。溶媒は、例えば水などの無機溶媒でもよく、その場合は溶媒和物は水和物でありうる。あるいは、溶媒はエタノールなどの有機溶媒でもよい。従って、本開示の化合物は、一水和物、二水和物、半水和物、セスキ水和物、三水和物、四水和物などを含む水和物として、ならびにそれに対応する溶媒和物形として存在しうる。開示化合物は真の溶媒和物のこともあるが、他の場合においては、開示化合物は単に外来(adventitious)水を保持しているだけか又は水+何らかの外来溶媒との混合物のこともある。
[0074]本明細書中で使用されている“オキシステロール”という用語は、酸化コレステロールの一つ又は複数の形態を包含することを意味する。本明細書中に記載のオキシステロールは、WO 2013169399 A1(引用によってその全文を本明細書に援用する)に記載されているように、単独で又は集合的に患者の骨成長に対して活性である。
[0075]オキシステロール、ステロール又はジオールは薬学的に許容可能な塩でもよい。可能性ある薬学的に許容可能な塩のいくつかの例は、化合物の毒性を実質的に増大しない塩形成(salt forming)酸及び塩基、例えば、マグネシウム、カリウム及びアンモニウムなどのアルカリ金属の塩、塩酸、ヨウ化水素酸、臭化水素酸、リン酸、メタリン酸、硝酸及び硫酸などの鉱酸の塩、ならびに酒石酸、酢酸、クエン酸、リンゴ酸、安息香酸、グリコール酸、グルコン酸、グロン酸、コハク酸、アリールスルホン酸、例えばp−トルエンスルホン酸などの有機酸の塩などである。
[0076]オキシステロール、ステロール又はジオールの薬学的に許容可能な塩は、無機又は有機塩基、無機又は有機酸及び脂肪酸を含む薬学的に許容可能な非毒性の塩基又は酸から製造される塩を含む。無機塩基から誘導される塩は、アルミニウム、アンモニウム、カルシウム、銅、第二鉄、第一鉄、リチウム、マグネシウム、マンガン、亜マンガン、カリウム、ナトリウム、亜鉛などの塩を含む。薬学的に許容可能な有機非毒性塩基から誘導される塩は、第一、第二、及び第三アミン、置換アミン(天然置換アミンを含む)、環状アミン、及び塩基性イオン交換樹脂の塩、例えば、アルギニン、ベタイン、カフェイン、コリン、N,N’−ジベンジルエチレンジアミン、ジエチルアミン、2−ジエチルアミノエタノール、2−ジメチルアミノエタノール、エタノールアミン、エチレンジアミン、N−エチル−モルホリン、N−エチルピペリジン、グルカミン、グルコサミン、ヒスチジン、ヒドラバミン、イソプロピルアミン、リシン、メチルグルカミン、モルホリン、ピペラジン、ピペリジン、ポリアミン樹脂、プロカイン、プリン類、テオブロミン、トリエチルアミン、トリメチルアミン、トリプロピルアミン、トロメタミンなどの塩を含む。本願の化合物が塩基性の場合、塩は無機及び有機酸を含む薬学的に許容可能な非毒性酸から製造できる。そのような酸は、酢酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、カンファースルホン酸、クエン酸、エタンスルホン酸、ギ酸、フマル酸、グルコン酸、グルタミン酸、臭化水素酸、塩酸、イセチオン酸、乳酸、マレイン酸、リンゴ酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、マロン酸、粘液酸、硝酸、パモ酸、パントテン酸、リン酸、プロピオン酸、コハク酸、硫酸、酒石酸、p−トルエンスルホン酸、トリフルオロ酢酸などである。脂肪酸塩も使用できる。例えば、2個より多い炭素、8個より多い炭素、又は16個より多い炭素を有する脂肪酸塩、例えば、酪酸、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸などの塩である。
[0077]一部の態様において、オキシステロール、ステロール、又はジオールの溶解度を下げて制御放出デポー効果の獲得の一助とするために、オキシステロール、ステロール、又はジオールは、遊離塩基として利用されるか又は比較的低溶解度の塩にして利用される。例えば、本願では、脂肪酸塩などの不溶性塩が利用できる。代表的な脂肪酸塩は、オレイン酸、リノール酸などの塩、又は8〜20個の炭素の溶解度を有する脂肪酸塩、例えばパルメエート(palmeate)又はステアリン酸塩などである。
[0078]用語“溶媒和物”は、溶質、例えば化合物又はその薬学的に許容可能な塩の一つ又は複数の分子と、溶媒の一つ又は複数の分子とによって形成される複合体又は集合体である。そのような溶媒和物は、実質的に固定された溶質と溶媒のモル比を有する結晶性固体のこともある。適切な溶媒は、例えば、水、エタノールなどである。
[0079]本明細書中で使用されている“生物活性”組成物又は“医薬”組成物という用語は、互換的に使用されうる。どちらの用語も、対象に投与できる組成物を意味する。生物活性組成物又は医薬組成物は、本明細書においては、現開示の“医薬組成物”又は“生物活性組成物”と呼ばれることもある。時に、“OXY133の投与”という語句は、本明細書においては、この化合物を対象に投与する文脈中で使用される(例えば、対象を化合物と接触させる、化合物を注射する、薬物デポーで化合物を投与するなど)。そのように使用される化合物は、一般的に、OXY133を含む医薬組成物又は生物活性組成物の形態でありうることは理解されるはずである。
[0080]“治療上有効量”又は“有効量”とは、投与された場合に、オキシステロール(例えばOXY133)、ステロール、ジオールが生物活性の変化、例えば骨成長の増強などをもたらすような量である。患者に投与される用量は、様々な要因、例えば、投与される薬物の薬物動態特性、投与経路、患者の状態及び特徴(性別、年齢、体重、健康、サイズなど)、及び症状の程度、併用療法、治療の頻度及び所望の効果に応じて、単回投与のこともあれば複数回投与のこともある。一部の態様において、製剤は即時放出用として設計される。他の態様において、製剤は持続放出用として設計される。他の態様において、製剤は、一つ又は複数の即時放出表面と一つ又は複数の持続放出表面を含む。
[0081]“薬学的に許容可能な担体”とは、生物学的に又はその他の点で有害でない材料を意味する。例えば、その材料を、何らかの望ましくない生物学的作用を引き起こしたり又はそれが含有されている医薬組成物の他の成分のいずれとも有害な様式で相互作用をすることなく、対象に投与できることを意味する。
[0082]本明細書中において、“類似体”又は“誘導体”という用語は、構造及び機能が別の化学物質に類似している化学分子のことを言う。多くの場合、単一の元素又は基によって構造的に異なるが、親化学物質と同じ機能を保持しているならば、2個以上の基(例えば、2、3、又は4個の基)の修飾によって異なっていてもよい。そのような修飾は当業者には日常操作であり、例えば、酸のエステル又はアミド、アルコール又はチオールのためのベンジル基、及びアミンのためのtert−ブトキシカルボニル基のような保護基など、化学部分の追加又は置換を含む。そのほか、アルキル置換などのアルキル側鎖に対する修飾(例えば、メチル、ジメチル、エチルなど)、側鎖の飽和又は不飽和レベルに対する修飾、ならびに置換フェニル及びフェノキシなどの修飾基の付加も含まれる。誘導体には、ビオチン又はアビジン部分、西洋ワサビペルオキシダーゼなどの酵素、及び放射性標識、生物発光、化学発光、又は蛍光部分などの複合体(conjugate)も含まれうる。さらに、本明細書中に記載の薬剤に対しても、それらの薬物動態特性を変更するため、例えば、その他の望ましい性質の中でも、インビボもしくはエクスビボにおける半減期を増大させるため、又はそれらの細胞浸透性を増大させるために、部分を付加することができる。また、薬剤の多数の望ましい品質(例えば、溶解度、バイオアベイラビリティ、製造など)を増強することが知られているOXY133誘導体も含まれる。“誘導体”という用語は、その範囲内に、機能的に等価の又は機能的に改良された分子を提供する付加、削除、及び/又は置換など、親配列に対してなされた変更も含む。
[0083]“部分(moiety)”という用語は、分子のいずれかの部分(part)のことを言う。
[0084]“デポー”は、カプセル、マイクロスフェア、マイクロ粒子、マイクロカプセル、マイクロファイバー粒子、ナノスフェア、ナノ粒子、コーティング、マトリックス、ウェハース、ピル、ペレット、エマルション、リポソーム、ミセル、ゲル、又はその他の医薬送達組成物又はそれらの組合せなどであるが、これらに限定されない。一部の態様において、デポー用の適切な材料は、薬学的に許容可能な生分解性及び/又は何らかの生体吸収性材料で、FDA認可又はGRAS材料である。これらの材料は、ポリマー性でも非ポリマー性でも、合成でも天然でも、又はそれらの組合せでもよい。
[0085]本明細書中で利用されている“移植可能な”という用語は、哺乳動物体内への留置成功の可能性を保持している生体適合性デバイス(例えば薬物デポー)のことを言う。本明細書中で利用されている“移植可能なデバイス”という表現及び同様の表現は、手術、注射、又はその他の適切な手段によって移植可能で、その主機能はその物理的存在又は機械的性質のいずれかを通じて達成される物体のことを言う。
[0086]“局所”送達は、一つ又は複数の薬物が、組織内、例えば、骨空洞内、又はそれにごく近接して(例えば約0.1cm以内、又は好ましくは約10cm以内)配置される送達を含む。例えば、薬物デポーから局所送達される薬物の用量は、経口用量又は注射用量より例えば10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、99%、99.9%又は99.999%少ないであろう。
[0087]“哺乳動物”という用語は、分類学上のクラス“哺乳類”の生物のことを言い、ヒト、その他の霊長類、例えば、チンパンジー、類人猿、オランウータン及びサル、ラット、マウス、ネコ、イヌ、ウシ、ウマなどを含むが、これらに限定されない。
[0088]オキシステロールは、骨原性、骨伝導性及び/又は骨誘導性などの一つ又は複数の機序により、新しい骨組織の内部成長を増強又は加速できる“骨原性”でありうる。
[0089]OXY133を含むオキシステロールを効率的及び安全に合成するための新規組成物及び方法を提供する。OXY133を効率的及び安全に生成できる方法及び組成物も提供する。
[0090]以下のセクション見出しは制限されるべきでなく、他のセクション見出しと交換することも可能である。
オキシステロール
[0091]本開示は、骨原性オキシステロール(例えばOXY133)、ステロール、又はジオール及びインビトロにおけるその骨分化促進能力を含む。OXY133は特に有効な骨原性物質である。様々な用途において、OXY133は、局所的な骨形成刺激から利益を得る状態、例えば、脊椎固定術、骨折修復、骨再生/組織用途、歯科インプラントのための顎の骨密度増大、骨粗鬆症などの治療に有用である。OXY133の一つの特別な利点は、その他の骨原性オキシステロールと比べた場合に、非常に容易な合成及び固定までの改良された時間を提供することである。OXY133は、骨成長のための同化治療薬として働くことができる小分子であるだけでなく、様々なその他の状態の治療にも有用な物質である。
[0092]出願開示の一側面は、式:
を有するOXY133という名称の化合物、又はその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物もしくは水和物である。OXY133は、OXY133又はその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物もしくは水和物と、薬学的に許容可能な担体とを含む生物活性組成物又は医薬組成物として使用できる。
[0093]開示の別の側面は、細胞又は組織においてヘッジホッグ(Hh)経路媒介応答を誘導(刺激、増強)するための方法であり、該方法は、細胞又は組織を治療上有効量のOXY133と接触させることを含む。細胞又は組織は、体外(in vitro)でも、又は哺乳動物などの対象の体内でもよい。ヘッジホッグ(Hh)経路媒介応答は、骨芽細胞分化、骨の形態形成、及び/又は骨増殖の刺激;発毛及び/又は軟骨形成の刺激;新生血管形成(neovasculogenesis)、例えば血管新生(angiogenesis)の刺激(それによって虚血組織への血液供給が増強される);又は脂肪細胞分化、脂肪細胞の形態形成、及び/又は脂肪細胞増殖の阻害;又は神経新生を起こす前駆細胞の刺激を含む。Hh媒介応答は、再生医療に使用するための様々な種類の組織のいずれの再生も含みうる。開示の別の側面は、骨障害、骨減少症、骨粗鬆症、又は骨折を有する対象の治療法であり、該方法は、OXY133を含む有効量の生物活性組成物又は医薬組成物を対象に投与することを含む。対象は、例えば、骨量を増大させ、骨粗鬆症の症状を改善し、アテローム性動脈硬化症を低減、排除、予防又は治療するなどのために、生物活性組成物又は医薬組成物を、治療上有効な用量で、有効な剤形で、選択された間隔で投与されうる。対象は、骨粗鬆症の症状を改善するために生物活性組成物又は医薬組成物を、治療上有効な用量で、有効な剤形で、選択された間隔で投与されうる。一部の態様において、OXY133を含む組成物は、標的手術領域で細胞の骨芽細胞分化を誘導するために間葉幹細胞を含んでいてもよい。
[0094]様々な側面において、OXY133は、局所投与により、細胞、組織又は器官に投与できる。例えば、OXY133は、クリームなどを用いて局所適用することも、又は細胞、組織もしくは器官に注射するか又は別の方法で直接導入することも、又は本明細書において検討されている薬物デポーなどの適切な医療デバイスを用いて導入することもできる。
[0095]一部の態様において、OXY133、ステロール、又はジオールの用量は、およそ10pg/日〜およそ80mg/日である。OXY133、ステロール、又はジオールの更なる用量は、およそ2.4ng/日〜およそ50mg/日;およそ50ng/日〜およそ2.5mg/日;およそ250ng/日〜およそ250mcg/日;およそ250ng/日〜およそ50mcg/日;およそ250ng/日〜およそ25mcg/日;およそ250ng/日〜およそ1mcg/日;およそ300ng/日〜およそ750ng/日又はおよそ0.50mcg/日〜およそ500ng/日などである。様々な態様において、用量は、約0.01〜およそ10mcg/日又はおよそ1ng/日〜約120mcg/日であろう。
[0096]化合物OXY133、ステロール、又はジオールのほかに、開示の他の態様は、OXY133中に存在する任意の立体中心におけるありとあらゆる個別の立体異性体、例えばジアステレオマー、ラセミ体、エナンチオマー、及び化合物のその他の異性体も包含する。開示の一部の態様において、OXY133、ステロール、オキシステロール、ジオールは、化合物のすべての多形、溶媒和物又は水和物、例えば水和物及び有機溶媒と形成される溶媒和物を含みうる。
[0097]塩を作る能力は化合物の酸性度又は塩基性度に依存する。化合物の適切な塩は、酸付加塩、例えば、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、過塩素酸、硫酸、硝酸、リン酸、酢酸、プロピオン酸、グリコール酸、乳酸、ピルビン酸、マロン酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、炭酸、桂皮酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ヒドロキシエタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、シクロヘキサンスルファミン酸、サリチル酸、p−アミノサリチル酸、2−フェノキシ安息香酸、及び2−アセトキシ安息香酸を用いて製造される塩;サッカリンを用いて製造される塩;アルカリ金属塩、例えば、ナトリウム及びカリウム塩;アルカリ土類金属塩、例えば、カルシウム及びマグネシウム塩;及び有機又は無機リガンドを用いて形成される塩、例えば第四級アンモニウム塩などであるが、これらに限定されない。更なる適切な塩は、化合物の酢酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、安息香酸塩、炭酸水素塩、硫酸水素塩、酒石酸水素塩、ホウ酸塩、臭化物、エデト酸カルシウム、カンシル酸塩、炭酸塩、塩化物、クラブラン酸塩、クエン酸塩、二塩酸塩、エデト酸塩、エジシル酸塩、エストレート、エシレート、フマル酸塩、グルセプト酸塩、グルコン酸塩、グルタミン酸塩、グリコリルアルサニル酸塩、ヘキシルレゾルシン酸塩、ヒドラバミン、臭化水素酸塩、塩酸塩、ヒドロキシナフトエ酸塩、ヨウ化物、イソチオネート(isothionate)、乳酸塩、ラクトビオン酸塩、ラウリン酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、マンデル酸塩、メシル酸塩、メチルブロミド、メチル硝酸塩、メチル硫酸塩、ムチン酸塩(mucate)、ナプシル酸塩、硝酸塩、N−メチルグルカミンアンモニウム塩、オレイン酸塩、パモ酸塩(エンボネート)、パルミチン酸塩、パントテン酸塩、リン酸塩/二リン酸塩、ポリガラクツロン酸塩、サリチル酸塩、ステアリン酸塩、硫酸塩、塩基性酢酸塩、コハク酸塩、タンニン酸塩、酒石酸塩、テオクル酸塩、トシル酸塩、トリエチオジド及び吉草酸塩などであるが、これらに限定されない。
[0098]様々な態様において、OXY133、ステロール、又はジオールは一つ又は複数の生物学的機能を含む。すなわち、OXY133、ステロール、又はジオールは、間葉幹細胞又は骨髄間質細胞と接触すると、生物学的応答を誘導できる。例えば、OXY133、ステロール、又はジオールは骨芽細胞分化を刺激できる。一部の態様において、OXY133、ステロール、又はジオールを含む生物活性組成物は、哺乳動物細胞、例えばインビトロの細胞又はヒトもしくは動物体内の細胞に投与されると、一つ又は複数の生物学的機能を含みうる。例えば、そのような生物活性組成物は、骨芽細胞分化を刺激できる。一部の態様において、そのような生物学的機能は、ヘッジホッグ経路の刺激によって生じうる。
中間ジオールの製造法
[0099]一部の態様において、現開示は、以下に示すように、OXY133の製造に使用される中間ジオールの製造法を提供する。該ジオールも骨成長の促進のために使用できる。OXY133を製造するための従来の合成法は、効率が悪く、大規模製造には適していなかった。OXY133の立体異性体の中には、他の立体異性体より最適性に劣るものもある。開示の方法は、立体選択的であり、以下に示すジオールの特定の異性体を高収率で製造する。このジオールは、最適に効果的なOXY133の異性体を製造することが示されている。
[00100]開示されているのは、中間ジオールを合成するための反応の複数の態様である。合成されるジオールは、(3S,8S,9S,10R,13R,14S,17R)−10,13−ジメチル−17−[(S)−2−ヒドロキシオクタン−イル]−2,3,4,7,8,9,11,12,14,15,16,17−ドデカヒドロ−1H−シクロペンタ[a]フェナントレン−3−オールのIUPAC名を持つ。一般的に、ジオールの合成法は、以下に示すように、プレグネノロン、酢酸プレグネノロン又はプレグネノロン誘導体を有機金属試薬と反応させて、C20位のアルキル化を促進することを含む。
[00101]一態様において、上記スキーム1に示されているように、酢酸プレグネノロン(式1)は、有機金属試薬によってアルキル化され、式2として上に示されている中間ジオールを合成できる。一部の態様において、酢酸プレグネノロンは、酢酸プレグネノロン分子上のC20位のアルキル化を促進するためにグリニャール試薬と反応させる。一部の態様において、n−ヘキシルマグネシウムクロリドが有機金属試薬として使用される。
[00102]一部の態様において、上記スキーム2に示されているように、プレグネノロンをn−ヘキシルマグネシウムクロリドのようなグリニャール試薬と反応させてプレグネノロン分子上のC20位のアルキル化を促進し、式2として示されている中間ジオールを形成させる。
[00103]中間ジオール(式2)又は(3S,8S,9S,10R,13R,14S,17R)−10,13−ジメチル−17−[(S)−2−ヒドロキシオクタン−イル]−2,3,4,7,8,9,11,12,14,15,16,17−ドデカヒドロ−1H−シクロペンタ[a]フェナントレン−3−オールの合成法は立体選択的であり、高収率のジオールを製造する。例えば、一部の態様において、ジオールの所望立体異性体の収率は約60%〜約70%である。一部の態様において、ジオールの所望立体異性体の収率は約50%〜約60%である。しかしながら、パーセント収率はこれらの数値より高いことも又は低いこともありうることは想定されている。例えば、上に示されている式2のパーセント収率は、約20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%又は95%でありうる。一部の態様において、パーセント収率は95%より高いこともある。
[00104]様々な態様において、アルキル化反応は、テトラヒドロフランなどの極性有機溶媒中で実施される。しかしながら、反応は、様々な極性有機溶媒中で実施することができる。例えば、反応は、ジエチルエーテル、エチルエーテル、ジメチルエーテル中などで実施できる。
[00105]一部の態様においては、プレグネノロン又は酢酸プレグネノロンが出発反応物として使用される。しかしながら、他の態様において、酢酸プレグネノロンの誘導体が使用されることもある。例えば、本開示に使用できる化合物のその他の具体例は、硫酸プレグネノロン、リン酸プレグネノロン、ギ酸プレグネノロン、プレグネノロンヘミオキサレート、プレグネノロンヘミマロネート、プレグネノロンヘミグルタレート、20−オキソプレグン(oxopregn)−5−エン−3β−イルカルボキシメチルエーテル、3β−ヒドロキシプレグン−5−エン−20−オンスルフェート、3−ヒドロキシ−19−ノルプレグナ(norpregna)−1,3,5(10)−トリエン−20−オン、3−ヒドロキシ−19−ノルプレグナ−1,3,5(10),6,8−ペンタエン−20−オン、17α−イソプレグネノロンスルフェート、17−アセトキシプレグネノロンスルフェート、21−ヒドロキシプレグネノロンスルフェート、20β−アセトキシ−3β−ヒドロキシプレグン−5−エン−スルフェート、硫酸プレグネノロン 20−エチレンケタール、硫酸プレグネノロン 20−カルボキシメチルオキシム、20−デオキシプレグネノロンスルフェート、21−アセトキシ−17−ヒドロキシプレグネノロンスルフェート、17−プロピルオキシプレグネノロンスルフェート、17−ブチルオキシプレグネノロンスルフェート、硫酸プレグネノロンの21−チオールエステル、ピリジニウム、イミダゾリウム、6−メチルプレグネノロンスルフェート、6,16α−ジメチルプレグネノロンスルフェート、3β−ヒドロキシ−6−メチルプレグナ−5,16−ジエン−20−オンスルフェート、3β−ヒドロキシ−6,16−ジメチルプレグナ−5,16−ジエン−20−オンスルフェート、3−ヒドロキシプレグナ−5,16−ジエン−20−オンスルフェート、ジオスゲニン(diosgenin)スルフェート、3β−ヒドロキシアンドロスト(hydroxyandrost)−5−エン−17β−カルボン酸メチルエステルスルフェート、3α ヒドロキシ−5β−プレグナン−20−オンホルメート、3α−ヒドロキシ−5β−プレグナン−20−オンヘミオキサレート、3α−ヒドロキシ−5β−プレグナン−20−オンヘミマロネート、3α−ヒドロキシ−5β−プレグナン−20−オンヘミスクシネート、3α−ヒドロキシ−5β−プレグナン−20−オンヘミグルタレート、エストラジオール−3−ホルメート、エストラジオール−3−ヘミオキサレート、エストラジオール−3−ヘミマロネート、エストラジオール−3−ヘミスクシネート、エストラジオール−3−ヘミグルタレート、エストラジオール−17−メチルエーテル、エストラジオール−17−ホルメート、エストラジオール−17−ヘミオキサレート、エストラジオール−17−ヘミマロネート、エストラジオール−17−ヘミスクシネート、エストラジオール−17−ヘミグルタレート、エストラジオール−3−メチルエーテル、17−デオキシエストロン、及び17β−ヒドロキシエストラ−1,3,5(10)−トリエン−3−イルカルボキシメチルエーテルなどである。
[00106]一部の態様において、有機金属試薬はn−ヘキシルマグネシウムクロリドを含む。しかしながら、一部の態様において、アルキル化反応は、例えばn−ヘキシルリチウムのようなアルキルリチウムを使用して実施されてもよい。様々な態様において、有機金属試薬は、ハロゲン化アルキルを含む。例えば、有機金属試薬は、下記式:
R−Mg−X
を有しうる。上記式中、Mgはマグネシウムを含み、Xは、塩素、臭素、フッ素、ヨウ素、又はアスタチンを含み、そしてRは、アルキル、ヘテロアルキル、アルカニル、ヘテロアルカニル、アルケニル、ヘテロアルケニル、アルキニル、アルキルジイル、ヘテロアルキルジイル、アルキレノ、ヘテロアルキレノ、アリール、アリールジイル、アリーレノ、アリールアリール、ビアリール、アリールアルキル、ヘテロアリール、ヘテロアリールジイル、ヘテロアリーレノ、ヘテロアリール−ヘテロアリール、ビヘテロアリール、ヘテロアリールアルキル又はそれらの組合せを含む。一部の態様において、R置換基は、(C1−C20)アルキル又はヘテロアルキル、(C2−C20)アリール又はヘテロアリール、(C6−C26)アリールアルキル又はヘテロアルキル及び(C5−C20)アリールアルキル又はヘテロアリール−ヘテロアルキル、(C4−C10)アルキルジイル又はヘテロアルキルジイル、又は(C4−C10)アルキレノ又はヘテロアルキレノを含む。R置換基は、環式又は非環式でも、分枝又は非分枝でも、置換又は非置換でも、芳香族でも、飽和又は不飽和鎖でも、又はそれらの組合せでもよい。一部の態様において、R置換基は脂肪族基である。一部の態様において、R置換基は環式基である。一部の態様において、R置換基はヘキシル基である。
[00107]あるいは、有機金属試薬は、式:
R−Li
を含んでいてもよい。上記式中、Liはリチウムを含み、そしてRは、アルキル、ヘテロアルキル、アルカニル、ヘテロアルカニル、アルケニル、ヘテロアルケニル、アルキニル、ヘテロアルカニル、アルキルジイル、ヘテロアルキルジイル、アルキレノ、ヘテロアルキレノ、アリール、アリールジイル、アリーレノ、アリールアリール、ビアリール、アリールアルキル、ヘテロアリール、ヘテロアリールジイル、ヘテロアリーレノ、ヘテロアリール−ヘテロアリール、ビヘテロアリール、ヘテロアリールアルキル又はそれらの組合せを含む。一部の態様において、R置換基は、(C1−C20)アルキル又はヘテロアルキル、(C2−C20)アリール又はヘテロアリール、(C6−C26)アリールアルキル又はヘテロアルキル及び(C5−C20)アリールアルキル又はヘテロアリール−ヘテロアルキル、(C4−C10)アルキルジイル又はヘテロアルキルジイル、又は(C4−C10)アルキレノ又はヘテロアルキレノを含む。R置換基は、環式又は非環式でも、分枝又は非分枝でも、置換又は非置換でも、芳香族でも、飽和又は不飽和鎖でも、又はそれらの組合せでもよい。一部の態様において、R置換基は脂肪族基である。一部の態様において、R置換基は環式基である。一部の態様において、R置換基はヘキシル基である。
[00108]一部の態様において、アルキル化反応は発熱性であるので、反応容器は、最適な反応動力学を維持するために温度制御されうる。一部の態様において、発熱反応は、溶液1ポンド(約454g)あたり約1000BTUを放出する。反応が強発熱性であるため、グリニャール試薬は、揮発性成分、例えばエーテルが反応熱によって気化しないように徐々に加えねばならない。一部の態様において、反応容器は内部冷却コイルによって冷却できる。冷却コイルには、外部ガス/液体冷蔵装置によって冷却剤が供給されてもよい。一部の態様において、反応容器の内部温度は、15℃、10℃、5℃又は1℃未満に維持される。一部の態様において、反応容器は、式2の中間ジオールを形成させるアルキル化反応の間、約0℃に維持される。
[00109]様々な態様において、式2のジオールは副産物と共に合成されるので、精製することができる。例えば、得られる式2のジオールはジアステレオマー混合物の副産物のこともある。様々な態様において、式2のジオールは単離及び精製できる。すなわち、式2のジオールは、ろ過、遠心分離、蒸留(揮発性液体をそれらの相対揮発度に基づいて分離する)、結晶化、再結晶化、蒸発(不揮発性溶質から揮発性液体を除去するため)、溶媒抽出(不純物を除去するため)、溶媒中への組成物の溶解(その溶媒にはその他の成分が溶解する)、又はその他の精製法によって単離及び精製し、所望純度、例えば約95%〜約99.9%にすることができる。ジオールは、ジオールを有機及び/又は無機溶媒、例えば、THF、水、ジエチルエーテル、ジクロロメタン、酢酸エチル、アセトン、n,n−ジメチルホルムアミド、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド、アンモニア、t−ブタノール、n−プロパノール、エタノール、メタノール、酢酸、又はそれらの組合せと接触させることによって精製することもできる。
[00110]様々な態様において、アルキル化工程及び精製工程は同じ反応容器内で行われる。
[00111]一部の態様において、ジオールは、塩化アンモニウム水溶液又は酢酸でクエンチングして存在するアニオンの量を低減し、反応を中和して、得られる有機層から分離される。分離された残渣は、蒸発により回収され、シリカゲルカラムクロマトグラフィーによって精製される。
[00112]ジオールは、無水物又は一水和物形でありうる。しかしながら、他の態様において、精製ジオールは他の水和物形、例えば、二水和物、半水和物、セスキ水和物、三水和物、四水和物などのほか、対応する溶媒和物形で結晶化されてもよい。他の態様において、精製ジオールは、共結晶又は薬学的に許容可能な塩として結晶化される。
OXY133の製造法
[00113]一部の態様において、現開示は、以下に示すように、OXY133の製造法を提供する。従来のOXY133の合成法は、OXY133中間体のジアステレオマー混合物を生成するので、分離のための精製法が必要となる。中間ジオールの形成で上述したように、開示の方法は、立体選択的であり、OXY133の特定の異性体を高収率で製造する。OXY133の式を以下に示す。
[00114]開示されているのは、OXY133を合成するための反応の複数の態様である。OXY133は、(3S,5S,6S,8R,9S,10R,13S,14S,17S)−17−((S)−2−ヒドロキシオクタン−2−イル)−10,13−ジメチルヘキサデカヒドロ−1H−シクロペンタ[a]フェナントレン−3,6−ジオールのIUPAC名を持つ。OXY133は、従来、以下に示すように、スケールアップには不適切な複雑な方法によって合成されていた。
[00115]しかしながら、反応を単一の容器内で実施するには困難がある。上に示された反応は、反応工程を実施するためにより多くの試薬を必要とし(例えば保護及び脱保護のための基及び工程)、環境に悪影響を及ぼす。さらに、公知法は、高価で入手がしばしば困難な試薬を必要とする。さらに、スキーム3に示された方法は、比較的低収率であり、より多くの分解生成物、不純物を有し、多くの有毒副産物を生じる。
[00116]一般的に、本明細書中に開示されているOXY133の合成法は、以下に示す反応において、本明細書中に記載のようにして合成されたジオールをボランと反応させることを含む。
[00117]一部の態様において、粗製及び未精製OXY133は、スキーム4の反応で、式2を有する中間ジオールのヒドロホウ素化及び酸化反応を通じて製造される。反応に使用できるボラン化合物は、BH3、B2H6、BH3S(CH3)2(BMS)、ホスフィン及びアミンとのボラン付加物、例えばボラントリエチルアミン;RBH2(式中、R=アルキル及びハロゲン化物)の形態の一置換ボラン、モノアルキルボラン(例えば、IpcBH2、モノイソピノカンフェイルボラン)、モノブロモ−及びモノクロロ−ボラン、モノクロロボランと1,4−ジオキサンの複合体、バルキーボラン(bulky borane)を含む二置換ボラン、例えばジエチルボランなどのジアルキルボラン化合物、ビス−3−メチル−2−ブチルボラン(ジシアミルボラン)、9−ボラビシクロ[3,3,1]ノナン(9−BBN)、ジシアミルボラン(Sia2BH)、ジシクロヘキシルボラン(Chx2BH)、トリアルキルボラン、ジアルキルハロゲノボラン、ジメシチルボラン(C6H2Me3)2BH、アルケニルボラン、ピナコールボラン、又はカテコールボラン、又はそれらの組合せなどである。
[00118]手短に言えば、ヒドロホウ素化及び酸化反応は二段階反応である。ホウ素及び水素はアルケンの二重結合に付加し、アルケンと複合体を形成する。従って、反応のホウ素化局面は立体選択的であり位置選択的である。反応の酸化局面は、ホウ素の代わりにヒドロキシル置換基を提供するために塩基性の過酸化水素水を必要とする。Vollhart,KP,Schore,NE,2007,Organic Chemistry:Structure and Function,第5版,Custom Publishing Company(ニューヨーク州ニューヨーク)参照。このように、式2を有する中間保護ジオールをボラン及び過酸化水素と反応させて粗C3保護OXY133を形成させる。一部の態様において、粗OXY133の形成工程は、アルキル化反応と同じ反応容器内で実施される。他の態様において、粗OXY133の形成工程は、アルキル化反応とは異なる反応容器内で実施される。
[00119]OXY133を合成するヒドロホウ素化−酸化工程は、中間ジオールの形成工程と同様、立体選択的であり、高収率をもたらす。例えば、一部の態様において、粗OXY133のパーセント収率は、これらの量より高いことも又は低いこともある。例えば、上に示されている式2のパーセント収率は、約20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%又は95%でありうる。一部の態様において、パーセント収率は95%より高いこともある。
[00120]様々な態様において、ヒドロホウ素化−酸化反応は、テトラヒドロフランなどの極性有機溶媒中で実施される。しかしながら、反応は、様々な極性有機溶媒中で実施することができる。例えば、反応は、ジエチルエーテル、エチルエーテル、ジメチルエーテル中などで実施できる。
[00121]一部の態様において、ヒドロホウ素化−酸化反応は発熱性であるので、反応容器は、最適な反応動力学を維持するために温度制御することができる。具体的には、酸化局面は極度に発熱性である。反応が強発熱性であるため、過酸化水素は、揮発性成分、例えばエーテルが反応熱のために気化しないように徐々に加えることができる。一部の態様において、反応容器は内部冷却コイルによって冷却できる。冷却コイルには、外部ガス/液体冷蔵装置によって冷却剤が供給されてもよい。一部の態様において、反応容器の内部温度は、10℃、5℃、1℃又は0℃未満に維持される。一部の態様において、反応容器は、ヒドロホウ素化−酸化反応の間、約−5℃に維持される。
[00122]一定の態様において、保護ジオールは、ジオールの塩、水和物、溶媒和物又は結晶形のパーセント結晶化度が、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、又は少なくとも99%でありうる。一部の態様において、パーセント結晶化度は実質的に100%でありうる。実質的に100%とは、ジオールの全量が当該技術分野で公知の方法を用いて測定できる限りにおいて結晶性であるように見えることを示す。従って、治療上有効量のジオールは、結晶化度が異なる量を含みうる。これらの中には、ある量の固体形の結晶化ジオールが、その後液体中に溶解、部分溶解、懸濁又は分散される場合が含まれる。
OXY133の精製
[00123]一部の態様において、粗OXY133は、精製の前に反応混合物から分離されねばならない。一部の態様において、ジクロロエタンなどの有機溶媒を粗OXY133反応混合物に加え、得られた有機層を分離する。分離されると、粗OXY133は半固体の粘稠塊として存在する。粗OXY133を任意の適切な手段(例えばジクロロメタンなど)によって溶解し、メタノール−酢酸エチルなどの有機溶媒とともにシリカゲルカラムに入れ、粗OXY133を溶媒和させる。一部の態様において、粗OXY133は、結晶化又は再結晶化されてもよい。一部の態様において、精製OXY133は、以下に示すように、アセトン/水の3:1混合物中で粗OXY133を再結晶化させることにより形成される。
[00124]上に示されているように、結晶化させると、精製OXY133は水和物を形成する。しかしながら、それは無水物形であってもよい。一部の態様において、本明細書中に記載のOXY133のいずれかの結晶形のパーセント結晶化度はOXY133の全量に対して変動しうる。
[00125]一定の態様において、OXY133は、OXY133の塩、水和物、溶媒和物又は結晶形のパーセント結晶化度が、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、又は少なくとも99%でありうる。一部の態様において、パーセント結晶化度は実質的に100%でありうる。実質的に100%とは、OXY133の全量が当該技術分野で公知の方法を用いて測定できる限りにおいて結晶性であるように見えることを示す。従って、治療上有効量のOXY133は、結晶化度が異なる量を含みうる。これらの中には、ある量の固体形の結晶化OXY133が、その後液体中に溶解、部分溶解、又は懸濁もしくは分散される場合が含まれる。
[00126]一態様において、精製OXY133は一水和物として結晶化される。しかしながら、他の態様において、精製OXY133は、他の水和物形、例えば、二水和物、半水和物、セスキ水和物、三水和物、四水和物などのほか、対応する溶媒和物形で結晶化されることもある。他の態様において、精製OXY133は、共結晶又は薬学的に許容可能な塩として結晶化される。
[00127]一部の態様において、粗OXY133を含有する反応混合物は、ヘプタンと混合することによって固化させることもできる。生成物はその後ろ過されて、塩化メチレン中に懸濁できる。一部の態様において、粗OXY133は、懸濁液からろ過され、アセトンと水又はその他の有機もしくは無機溶媒(例えば、ジエチルエーテル、ジクロロメタン、酢酸エチル、アセトン、n,n−ジメチルホルムアミド、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド、アンモニア、t−ブタノール、n−プロパノール、エタノール、メタノール、酢酸又はそれらの組合せ)を用いて結晶化できる。
[00128]様々な態様において、粗OXY133は任意のその他の慣用手段によって単離及び精製できる。すなわち、粗OXY133は、ろ過、遠心分離、蒸留(揮発性液体をそれらの相対揮発度に基づいて分離するため)、結晶化、再結晶化、蒸発(不揮発性溶質から揮発性液体を除去するため)、溶媒抽出(不純物を除去するため)、溶媒中への組成物の溶解(その溶媒にはその他の成分が溶解する)、又はその他の精製法によって単離及び精製され、所望純度、例えば約95%〜約99.9%にすることができる。様々な態様において、ヒドロホウ素化−酸化工程と精製工程は同じ反応容器内で実施される。様々な態様において、アルキル化工程、ヒドロホウ素化−酸化工程及び精製工程は同じ反応容器内で実施される。
[00129]中間ジオール(式2)の合成法は立体選択的であり、高収率のOXY133を製造する。例えば、一部の態様において、精製OXY133の収率は約20%〜約99%である。一部の態様において、精製OXY133の収率は約20%〜約80%である。一部の態様において、精製OXY133の収率は約25%〜約70%又は約28%である。しかしながら、パーセント収率はこれらの数値より高いことも又は低いこともありうることは想定されている。
[00130]一部の態様において、精製OXY133は、結晶化によって結晶形で形成される。すなわち、OXY133を、液体供給ストリームから、液体供給ストリームを冷却することによって、又は反応混合物中の副産物及び未使用反応物の溶解度を低下させる沈殿剤を添加することによって分離すると、OXY133は結晶を形成する。一部の態様において、固体結晶は、次に、ろ過又は遠心分離によって残りの液体から分離される。結晶は溶媒中に再溶解された後、再結晶化されてもよく、その後ろ過又は遠心分離によって残りの液体から結晶を分離し、OXY133の高純度サンプルを得る。一部の態様において、結晶はその後粒状化して所望の粒径にすることもできる。
[00131]一部の態様において、得られたOXY133の純度は核磁気共鳴又は質量分析によって確認される。図2〜5に示されているように、1H NMR、13C NMR、赤外分光、及び質量分析は、OXY133生成物が高純度を有している(例えば、98%〜99.99重量%の純度を有している)ことを示していた。
[00132]一部の態様において、粗OXY133は精製できる。その場合、精製OXY133は溶媒中に結晶化形で形成され、次いで溶媒から取り出され、約98%〜約99.99%の純度を有する高純度OXY133を形成する。一部の態様において、OXY133は、精製の前又は後にろ過又は真空ろ過によって回収できる。
プレグネノロン誘導体の製造法
[00133]一部の態様において、本開示は、ジオール誘導体の製造に有用な出発原料、従ってOXY133類似体の製造に適切なプレグネノロン誘導体の製造法を提供する。これらのプレグネノロン誘導体はC3位を保護されている。有用なプレグネノロン誘導体は、
を含む。
[00134]式中、R1は保護基であり、メチル、エチル、ベンジル、カルバメート又はシリル基などでありうる。一部の態様において、プレグネノロン誘導体は、R1がメチル、エチル、ベンジル、ターシャリーブチルジメチルシリル(TBS)、tert−ブチル、アリル、トリイソプロピルシリル、又はtert−ブチルジメチルシリル基でありうる化合物を含む。一般的に、プレグネノロン誘導体の合成法は当該技術分野で公知であり、ウィリアムソンエーテル合成及びウルマン縮合を含む。
[00135]一定の態様において、ウィリアムソン合成の後、C3にアルキルベースのエーテルを提供するために、プレグネノロンを塩基の存在下でR1Xなどのハロゲン化アルキルと反応させる。様々な態様において、R1はC1−C5第一アルキル基、例えば、メチル、エチル、プロピル、tert−ブチルでありうる。有用な塩基は、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム又は水酸化カルシウムなどの強塩基を含む。
[00136]他の態様において、有用なプレグネノロン誘導体は、C3位に、例えば(C2−C10)アリール又はヘテロアリール基などの芳香族基を含む。一部の態様において、プレグネノロンのC3位にフェノール基をカップリングさせるために、ウルマン縮合又はウィリアムソンエーテル合成が使用できる。ウルマン縮合では、プレグネノロンなどの芳香族アルコールを、銅及び強塩基の存在下、約160℃で芳香族ハロゲン化物と反応させると、プレグネノロンのC3に芳香族エーテルを得ることができる。ウィリアムソンエーテル合成と同様、有用な強塩基は、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム又は水酸化カルシウムを含む。
ジオール誘導体の製造法
[00137]一定の態様において、OXY133類似体の製造に有用な中間C3保護ジオールの製造法を提供する。一般的に、C3位を保護されている中間ジオール誘導体の合成法は、以下に示されているように、プレグネノロンのC20位におけるアルキル化を促進するために、プレグネノロン誘導体、例えば、プレグネノロンエーテル、エステル又はカルバメートと、有機金属試薬との反応を含む。
[00138]式中、R1は、少なくとも1個の炭素を有する脂肪族又は環状置換基でありうる。他の態様において、R1は、tert−ブチル、アリル、トリイソプロピルシリル、tert−ブチルジメチルシリル、カルバメート又はシリル基でありうる。しかしながら、一部の態様において、保護ジオールのC20位にn−ヘキシル基が存在する場合、R1はtert−ブチルジメチルシリル(TBS)ではあり得ない。
[00139]様々な態様において、オキシステロールの誘導体の製造法は、式II:
のプレグネノロン誘導体を有機金属化合物と反応させて、式III:
のC3保護ジオール誘導体を形成させる。式中、R1は保護基であり、R3は、(C6−C26)アルキル又はヘテロアルキル、(C2−C20)アリール又はヘテロアリール、(C6−C26)アリールアルキル又はヘテロアルキル及び(C5−C20) アリールアルキル又はヘテロアリール−ヘテロアルキル、(C4−C10)アルキルジイル又はヘテロアルキルジイル、又は(C4−C10)アルキレノ又はヘテロアルキレノである。
[00140]式IVの化合物の製造に有用な有機金属化合物は、式R3MgXの化合物で、式中、Xはハロゲン化物であり、R3は、少なくとも1個の炭素を有する脂肪族又は環状置換基を含む。他の側面において、有機金属化合物は式R3Liを含み、式中、R3は、少なくとも1個の炭素を有する脂肪族又は環状置換基を含む。他の側面において、R3は、(C6−C26)アルキル又はヘテロアルキル、(C2−C20)アリール又はヘテロアリール、(C6−C26)アリールアルキル又はヘテロアルキル及び(C5−C20) アリールアルキル又はヘテロアリール−ヘテロアルキル、(C4−C10)アルキルジイル又はヘテロアルキルジイル、又は(C4−C10)アルキレノ又はヘテロアルキレノである。一部の態様において、R3はヘキシル基である。
[00141]中間C3保護ジオール(式III)の合成法は立体選択的であり、高収率のC3保護ジオールを製造する。例えば、一部の態様において、ジオールの所望立体異性体の収率は約60%〜約70%である。一部の態様において、ジオールの所望立体異性体の収率は約50%〜約60%である。しかしながら、パーセント収率はこれらの数値より高いことも又は低いこともありうることは想定されている。例えば、上に示されている式2のパーセント収率は、約20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%又は95%でありうる。一部の態様において、パーセント収率は95%より高いこともある。
[00142]様々な態様において、グリニャール試薬を用いるアルキル化反応は、テトラヒドロフランなどの極性有機溶媒中で実施される。しかしながら、反応は、様々な極性有機溶媒中で実施することができる。例えば、反応は、ジエチルエーテル、エチルエーテル、ジメチルエーテル中などで実施できる。
[00143]一部の態様において、有機金属グリニャール試薬はn−ヘキシルマグネシウムクロリドを含む。しかしながら、一部の態様において、アルキル化反応は、例えばn−ヘキシルリチウムのようなアルキルリチウムを使用して実施されてもよい。様々な態様において、有機金属試薬はハロゲン化アルキルを含む。例えば、有機金属試薬は、下記式:
R3−Mg−X
を有する。上記式中、Mgはマグネシウムを含み、Xは、塩素、臭素、フッ素、ヨウ素、又はアスタチンを含み、そしてR3は、アルキル、ヘテロアルキル、アルカニル、ヘテロアルカニル、アルケニル、ヘテロアルケニル、アルキニル、ヘテロアルカニル、アルキルジイル、ヘテロアルキルジイル、アルキレノ、ヘテロアルキレノ、アリール、アリールジイル、アリーレノ、アリールアリール、ビアリール、アリールアルキル、ヘテロアリール、ヘテロアリールジイル、ヘテロアリーレノ、ヘテロアリール−ヘテロアリール、ビヘテロアリール、ヘテロアリールアルキル又はそれらの組合せを含む。一部の態様において、R3置換基は、(C1−C20)アルキル又はヘテロアルキル、(C2−C20)アリール又はヘテロアリール、(C6−C26)アリールアルキル又はヘテロアルキル及び(C5−C20)アリールアルキル又はヘテロアリール−ヘテロアルキル、(C4−C10)アルキルジイル又はヘテロアルキルジイル、又は(C4−C10)アルキレノ又はヘテロアルキレノを含む。R3置換基は、環式又は非環式でも、分枝又は非分枝でも、置換又は非置換でも、芳香族でも、飽和又は不飽和鎖でも、又はそれらの組合せでもよい。一部の態様において、R3置換基は脂肪族基である。一部の態様において、R3置換基は環式基である。一部の態様において、R3置換基はヘキシル基である。
[00144]あるいは、有機金属試薬は、式:
R3−Li
を含んでいてもよい。
[00145]上記式中、Liはリチウムを含み、そしてR3は、アルキル、ヘテロアルキル、アルカニル、ヘテロアルカニル、アルケニル、ヘテロアルケニル、アルキニル、ヘテロアルカニル、アルキルジイル、ヘテロアルキルジイル、アルキレノ、ヘテロアルキレノ、アリール、アリールジイル、アリーレノ、アリールアリール、ビアリール、アリールアルキル、ヘテロアリール、ヘテロアリールジイル、ヘテロアリーレノ、ヘテロアリール−ヘテロアリール、ビヘテロアリール、ヘテロアリールアルキル又はそれらの組合せを含む。一部の態様において、R3置換基は、(C1−C20)アルキル又はヘテロアルキル、(C2−C20)アリール又はヘテロアリール、(C6−C26)アリールアルキル又はヘテロアルキル及び(C5−C20)アリールアルキル又はヘテロアリール−ヘテロアルキル、(C4−C10)アルキルジイル又はヘテロアルキルジイル、又は(C4−C10)アルキレノ又はヘテロアルキレノを含む。R3置換基は、環式又は非環式でも、分枝又は非分枝でも、置換又は非置換でも、芳香族でも、飽和又は不飽和鎖でも、又はそれらの組合せでもよい。一部の態様において、R3置換基は脂肪族基である。一部の態様において、R3置換基は環式基である。一部の態様において、R3置換基はヘキシル基である。
[00146]一部の態様において、アルキル化反応は発熱性であるので、反応容器は、最適な反応動力学を維持するために温度制御されうる。一部の態様において、発熱反応は、溶液1ポンド(約454g)あたり約1000BTUを放出する。反応が強発熱性であるため、グリニャール試薬は、揮発性成分、例えばエーテルが反応熱によって気化しないように徐々に加えることができる。一部の態様において、反応容器は内部冷却コイルによって冷却できる。冷却コイルには、外部ガス/液体冷蔵装置によって冷却剤が供給されてもよい。一部の態様において、反応容器の内部温度は、15℃、10℃、5℃又は1℃未満に維持される。一部の態様において、反応容器は、式IIIの中間保護ジオールを形成させるためのアルキル化反応の間、約0℃に維持される。
[00147]様々な態様において、式IIIの保護ジオールは副産物と共に合成されるので、精製することができる。例えば、得られる式IIIの保護ジオールはジアステレオマー混合物の副産物のこともある。様々な態様において、式IIIの保護ジオールは単離及び精製できる。すなわち、式IIIのC3保護ジオールは、ろ過、遠心分離、蒸留(揮発性液体をそれらの相対揮発度に基づいて分離する)、結晶化、再結晶化、蒸発(不揮発性溶質から揮発性液体を除去するため)、溶媒抽出(不純物を除去するため)、溶媒中への組成物の溶解(その溶媒にはその他の成分が溶解する)、又はその他の精製法によって単離及び精製され、所望純度、例えば約95%〜約99.9%にすることができる。C3保護ジオールは、それを有機及び/又は無機溶媒、例えば、THF、水、ジエチルエーテル、ジクロロメタン、酢酸エチル、アセトン、n,n−ジメチルホルムアミド、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド、アンモニア、t−ブタノール、n−プロパノール、エタノール、メタノール、酢酸、又はそれらの組合せと接触させることによって精製することもできる。
[00148]様々な態様において、アルキル化工程及び精製工程は同じ反応容器内で行われる。
[00149]一部の態様において、C3保護ジオールは、塩化アンモニウム水溶液又は酢酸でクエンチングして存在するアニオンの量を低減し、反応を中和して、得られる有機層からそれを分離する。分離された残渣は、蒸発により回収され、シリカゲルカラムクロマトグラフィーによって精製される。
[00150]C3保護ジオールは、無水物又は一水和物形でありうる。しかしながら、他の態様において、精製ジオールは他の水和物形、例えば、二水和物、半水和物、セスキ水和物、三水和物、四水和物などのほか、対応する溶媒和物形で結晶化されてもよい。他の態様において、精製保護ジオールは、共結晶又は薬学的に許容可能な塩として結晶化される。
[00151]一部の態様において、式IIIのジオール誘導体はボラン化合物と反応させて、式IV:
の、C3を保護されたオキシステロールの誘導体又はその薬学的に許容可能な塩を形成させることができる。
[00152]
オキシステロール−スタチン化合物の製造法
[00153]一般的に、本明細書中に開示のC3保護OXY133の合成法は、以下に示す反応において、上記のようにして合成された保護ジオールをボランと反応させることを含む。
[00154]一部の態様において、粗製及び未精製C3保護OXY133は、反応スキーム6において、式IIIaを有する中間保護ジオールのヒドロホウ素化及び酸化反応を通じて製造される。反応に使用できるボラン化合物は、BH3、B2H6、BH3S(CH3)2(BMS)、ホスフィン及びアミンとのボラン付加物、例えばボラントリエチルアミン;RBH2(式中、R=アルキル及びハロゲン化物)の形態の一置換ボラン、モノアルキルボラン(例えば、IpcBH2、モノイソピノカンフェイルボラン)、モノブロモ−及びモノクロロ−ボラン、モノクロロボランと1,4−ジオキサンの複合体、バルキーボラン(bulky borane)を含む二置換ボラン、例えばジエチルボランなどのジアルキルボラン化合物、ビス−3−メチル−2−ブチルボラン(ジシアミルボラン)、9−ボラビシクロ[3,3,1]ノナン(9−BBN)、ジシアミルボラン(Sia2BH)、ジシクロヘキシルボラン(Chx2BH)、トリアルキルボラン、ジアルキルハロゲノボラン、ジメシチルボラン(C6H2Me3)2BH、アルケニルボラン、ピナコールボラン、又はカテコールボラン、又はそれらの組合せなどである。
[00155]手短に言えば、スキーム6に示されているように、ヒドロホウ素化及び酸化反応は二段階反応である。ホウ素及び水素はアルケンの二重結合に付加し、アルケンと複合体を形成する。従って、反応のホウ素化局面は立体選択的であり位置選択的である。反応の酸化局面は、ホウ素の代わりにヒドロキシル置換基を提供するために塩基性の過酸化水素水を必要とする。Vollhart,KP,Schore,NE,2007,Organic Chemistry:Structure and Function,第5版,Custom Publishing Company(ニューヨーク州ニューヨーク)参照。このように、式IIIを有するC3保護中間ジオールをボラン及び過酸化水素と反応させてC3が保護された粗OXY133を形成させる。一部の態様において、粗C3保護OXY133を形成させる工程は、アルキル化反応と同じ反応容器内で実施される。他の態様において、粗C3保護OXY133を形成させる工程は、アルキル化反応とは異なる反応容器内で実施される。
[00156]C3保護OXY133合成のヒドロホウ素化−酸化工程は、中間ジオールの形成工程と同様、立体選択的であり、高収率をもたらす。例えば、一部の態様において、粗OXY133のパーセント収率は、これらの量より高いことも又は低いこともある。例えば、上に示されている式2のパーセント収率は、約20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%又は95%でありうる。一部の態様において、パーセント収率は95%より高いこともある。
[00157]様々な態様において、ヒドロホウ素化−酸化反応は、テトラヒドロフランなどの極性有機溶媒中で実施される。しかしながら、反応は、様々な極性有機溶媒中で実施することができる。例えば、反応は、ジエチルエーテル、エチルエーテル、ジメチルエーテル中などで実施できる。
[00158]一部の態様において、ヒドロホウ素化−酸化反応は発熱性であるので、反応容器は、最適な反応動力学を維持するために温度制御することができる。具体的には、酸化局面は極度に発熱性である。反応が強発熱性であるため、過酸化水素は、揮発性成分、例えばエーテルが反応熱のために気化しないように徐々に加えることができる。一部の態様において、反応容器は内部冷却コイルによって冷却できる。冷却コイルには、外部ガス/液体冷蔵装置によって冷却剤が供給されてもよい。一部の態様において、反応容器の内部温度は、10℃、5℃、1℃又は0℃未満に維持される。一部の態様において、反応容器は、ヒドロホウ素化−酸化反応の間、約−5℃に維持される。
[00159]一定の態様において、C3保護ジオールは、ジオールの塩、水和物、溶媒和物又は結晶形のパーセント結晶化度が、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、又は少なくとも99%でありうる。一部の態様において、パーセント結晶化度は実質的に100%でありうる。実質的に100%とは、C3保護ジオールの全量が当該技術分野で公知の方法を用いて測定できる限りにおいて結晶性であるように見えることを示す。従って、治療上有効量のジオールは、結晶化度が異なる量を含みうる。これらの中には、ある量の固体形のC3保護結晶化ジオールが、その後液体中に溶解、部分溶解、又は懸濁もしくは分散される場合が含まれる。
[00160]化合物OXY133は強力な骨原性オキシステロールとして作用できるので、インビトロで骨前駆細胞の骨分化と、ラット及びウサギの脊椎固定モデルにおけるインビボで堅牢な骨形成を誘導する。その結果、OXY133は、脊椎固定術及び癒着不能骨折の修復に潜在的用途を有する局所投与用の候補薬物となる。
[00161]式VaのC3保護OXY133分子を考えると、別の化合物部分とOXY133−スタチン化合物又は複合体を形成するために利用できる部位は、ほかに二つ、すなわちC6及びC20しかないことは明白である。式VaのC3保護OXY133分子において、C6−ヒドロキシル基は、C20位のヒドロキシル基よりも別の薬物に対して高反応性である。なぜならば、一部の態様において直鎖アルキル基を有するC20位のヒドロキシル基とは対照的に、ヒドロキシル基との反応を妨害する他の基がその周囲にないからである。
[00162]様々な態様において、保護OXY133分子は、C6−ヒドロキシル基を通じて、薬物、例えばHMG−CoA還元酵素阻害薬又はスタチン部分、例えば以下の表1に示されているロスバスタチン(Crestor(登録商標))、アトルバスタチン(Lipitor(登録商標))、プラバスタチン(Pravachol(登録商標))、フルバスタチン(Lescol(登録商標))、ピタバスタチン(Livalo(登録商標))、シンバスタチン(Zocor(登録商標))又はロバスタチン(Mevacor(登録商標))の部分と反応することができる。
[00163]一態様において、C3保護OXY133分子は、C6でロバスタチンと反応でき、式VIIa:
を有するオキシステロール−スタチン化合物を形成する。
[00164]形成されたら、C3保護OXY133ロバスタチン化合物は、当業者に公知の古典的な化学の方法を使用してC3を脱保護できる。例えば、C3の保護基がシリル基の場合、それを脱保護するために、フッ化物源、例えばテトラ−n−ブチルアンモニウムフルオリド(TBAF)又は及びHFピリジン錯体が使用できる。他の側面において、C3の保護基がメチル又は別の直鎖アルキルの場合、ヨウ素源、例えばトリメチルシリルヨージド(CH3)3SiI、ヨードトリメチルシラン(TMSI)が使用できる。式VIIaの化合物の脱保護により、式VII:
のOXY133−ロバスタチン化合物が形成される。
[00165]オキシステロールスタチン化合物の全合成を図8に示す。
[00166]図9は、OXY133−アトルバスタチン化合物の化学構造である。図10は、OXY133−セリバスタチン化合物の化学構造である。図11は、OXY133−フルバスタチン化合物の化学構造である。図12は、OXY133−メバスタチン化合物の化学構造である。図13は、OXY133−ピタバスタチン化合物の化学構造である。図14は、OXY133−プラバスタチン化合物の化学構造である。図15は、OXY133−ロスバスタチン化合物の化学構造である。図16は、OXY133−シンバスタチン化合物の化学構造である。
[00167]一定の態様において、スタチンなどの骨特異的薬物送達剤は、加水分解可能なリンカー結合Lを介して、C3保護OXY133分子に連結することができる。例えば、スタチン又はその部分のためのリンカー連結は、コハク酸系リンカー、アスパラギン酸系リンカー及び/又はカルバミン酸系リンカーなどであるが、これらに限定されない。
[00168]様々な態様において、スタチンは、加水分解可能なリンカー結合を介して薬物分子に連結することができる。薬物分子が、スタチンへの結合後も薬理活性を保持している場合、非加水分解性結合も使用できる。エステル基は、より不安定なチオエステル及びより安定なアミドと比較して好適な安定性の範囲にあるので、使用できる(L.Gilら,Bioorg.Med.Chem.1999,7,901−919)。エステル基のインビボ安定性は、エステル基に隣接して配置された置換によってさらに微調整できる(T.C.Bruiceら,Bioorganic Mechanisms,Vol.1,W.A.Benjamin,New York,1966,1−258)。一部の態様において、C3保護OXY133−スタチン化合物は、全身投与(経口、腹腔内、又は静脈内)に適しうる。その場合、骨組織への選択的沈着、その後のリンカーの酵素的加水分解、そして標的組織への骨原性物質OXY133及びスタチンの制御された速度での放出を伴う。C3保護OXY133−スタチンを形成するために、スタチン又はスタチン部分R4をC3保護OXY133の6位にそのように連結することは、以下に示すように、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDCI)の存在下、無水コハク酸へのエステル結合を介した直接的なカップリングにより達成できる。
式中、R1は上記定義の通りであり、R4は、スタチン又はスタチン部分である。
[00169]他の態様においてC3保護OXY133との結合に有用なリンカーLは、以下に示すようなアスパラギン酸系リンカー、コハク酸系リンカー又はウレタン系リンカーなどであるが、これらに限定されない。
オキシステロール−スタチン化合物又はプロドラッグの使用
[00170]オキシステロールはコレステロールの誘導体で、細胞アポトーシス及びコレステロール恒常性を含む一定範囲の活性を有することが示されている。骨誘導性オキシステロールの群は、インビトロで間葉幹細胞分化を刺激し、インビボで骨形成を誘導し、脊椎固定を支持することが確認されている。オキシステロールは、ヘッジホッグシグナル伝達経路の活性化を通じて骨形成に影響を及ぼすと考えられている。
[00171]使用時、OXY133は骨状態に対する治療を提供する。OXY133は、骨形成、骨芽細胞分化、骨形態形成及び/又は骨増殖を促進する。治療は、開放骨折及び癒着不能のリスクの高い骨折を治療するために投与でき、そしてまた脊椎障害のある対象にも投与できる。すなわち、OXY133は、脊椎固定を誘導でき、変性円板疾患や腰椎又は頸椎を冒す関節炎の治療に役立ちうる。
[00172]OXY133で処置された間葉幹細胞は、骨芽細胞分化を増大することが示されている。従って、一部の態様において、OXY133を間葉幹細胞と共に脊椎部位に移植すると、骨芽細胞分化を通じて骨成長を誘導できる。骨膜組織は、通常の骨折修復過程の早期に関与する一つの組織タイプであり、様々な細胞タイプ(例えば間葉幹細胞)及び骨折修復に必要な骨成長因子を動員できる。従って、一部の態様において、骨膜組織は、脱灰骨組成物中の間葉幹細胞及び/又は成長因子の供給源として利用される。
[00173]組換え的に製造された天然ヒトタンパク質、例えばrhBMP-2及びrhPDGFは、新生骨形成を誘導又は増強するそれらの能力について数十年間にわたり研究されている。これらのタンパク質は骨治癒の支持に有効であるが、製造の複雑さ及び関連コストに関して欠点がある。これらの欠点に対処する一つの方法は、骨治癒を刺激又は増強するために骨シグナル伝達経路の一部を調節する小分子を同定することである。二つの例は骨誘導性オキシステロール及びスタチンである。
[00174]スタチンは、コレステロールを下げるために広く使用されているHMG−CoA還元酵素阻害薬である。ある種のスタチンは、インビトロ及びインビボの両方で骨形成を刺激することも示されている。スタチンは、MAPK及びTGFβ受容体シグナル伝達カスケードを通じて、骨芽細胞分化を刺激し、骨芽細胞アポトーシスを低減することにより、骨形成を増強すると考えられている。
[00175]オキシステロール及びスタチンはインビボで骨治癒を増強することが示されているが、どちらもrhBMP−2ほど強力でないことが示されている。ゆえに、製造が容易かつ安価であるにも関わらず、それらの最終的な実用性は限定的でありうる。オキシステロール及びスタチンはどちらも骨形成に効果を有し、異なる機序によって作用するので、プロドラッグ又はオキシステロール−スタチン化合物の形態で局所的に共送達すると、いずれかを単独で送達するより大きい相乗効果をもたらすことができるはずである。
[00176]一部の態様において、OXY133−スタチン化合物は、患者の手術部位に直接移植又は注入できる。一部の態様において、上で詳細に説明した方法から得られたOXY133−スタチン化合物はデポーの形態である。様々な態様において、複数のデポー(例えばペレット)が手術部位に投与できる。一部の態様において、複数のデポーが用意され(例えばキットで)、手術部位に投与されて、骨成長に必要な部位を三角形に包囲する(triangulate)及び/又は取り囲む。様々な態様において、複数のデポーは、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10個のデポーを含む。一部の態様においては、ガラス転移温度を下げて、デバイスの安定性に影響を及ぼすために、可塑剤が使用される。
[00177]様々な態様において、デポーは、OXY133−スタチン化合物及び生分解性ポリマーを非晶質形、結晶形又は半結晶形で含み、結晶形は、多形、溶媒和物又は水和物を含みうる。
[00178]一部の態様において、OXY133−スタチン化合物は、固体又は半固体形のデバイスで投与される。固体又は半固体形のデバイスは、約1〜約2000センチポアズ(cps)、1〜約200cps、又は1〜約100cpsの予め付与された(predosed)粘度を有しうる。固体又は半固体のデバイスが標的部位に投与された後、半固体又は固体デポーの粘度は増大し、半固体は、約1×102〜約6×105ダイン/cm2、又は2×104〜約5×105ダイン/cm2、又は5×104〜約5×105ダイン/cm2の範囲の弾性率を有する。
[00179]様々な態様において、半固体又は固体デポーは、約0.10dL/g〜約1.2dL/g又は約0.20dL/g〜約0.50dL/gの固有粘度によって示されるような分子量(MW)を有するポリマーを含みうる。その他の固有粘度範囲は、約0.05〜約0.15dL/g、約0.10〜約0.20dL/g、約0.15〜約0.25dL/g、約0.20〜約0.30dL/g、約0.25〜約0.35dL/g、約0.30〜約0.35dL/g、約0.35〜約0.45dL/g、約0.40〜約0.45dL/g、約0.45〜約0.55dL/g、約0.50〜約0.70dL/g、約0.55〜約0.6dL/g、約0.60〜約0.80dL/g、約0.70〜約0.90dL/g、約0.80〜約1.00dL/g、約0.90〜約1.10dL/g、約1.0〜約1.2dL/g、約1.1〜約1.3dL/g、約1.2〜約1.4dL/g、約1.3〜約1.5dL/g、約1.4〜約1.6dL/g、約1.5〜約1.7dL/g、約1.6〜約1.8dL/g、約1.7〜約1.9dL/g、又は約1.8〜約2.1dL/gなどであるが、これらに限定されない。
[00180]一部の態様において、デポーは完全に生分解性でなくてもよい。例えば、デバイスは、ポリウレタン、ポリ尿素、ポリエーテル(アミド)、PEBA、熱可塑性エラストマー性オレフィン、コポリエステル、及びスチレン性熱可塑性エラストマー、スチール、アルミニウム、ステンレススチール、チタン、金属合金(非鉄金属含量が高く鉄の相対割合が低い)、炭素デバイス、ガラスデバイス、プラスチック、セラミック、メタクリレート、ポリ(N−イソプロピルアクリルアミド)、PEO−PPO−PEO(プルロニック)又はそれらの組合せを含みうる。典型的には、このような種類のマトリックスは、一定量の時間の後、除去する必要がありうる。
[00181]様々な態様において、デポー(例えばデバイス)は、OXY133−スタチン化合物の即時放出、又は持続放出を提供できる生体浸食性、生体吸収性、及び/又は生分解性バイオポリマーを含みうる。適切な持続放出バイオポリマーの例は、ポリ(アルファ−ヒドロキシ酸)、ポリ(ラクチド−コ−グリコリド)(PLGA)、ポリラクチド(PLA)、ポリグリコリド(PG)、ポリ(アルファ−ヒドロキシ酸)のポリエチレングリコール(PEG)複合体、ポリオルトエステル(POE)、ポリ(エステルアミド)、ポリアスピリン、ポリホスファゲン、デンプン、アルファー化デンプン、ヒアルロン酸、キトサン、ゼラチン、アルギネート、アルブミン、フィブリン、ビタミンE化合物、例えばアルファートコフェリルアセテート、d−アルファートコフェリルスクシネート、D,L−ラクチド、又はL−ラクチド−カプロラクトン、デキストラン、ビニルピロリドン、ポリビニルアルコール(PVA)、PVA−g−PLGA、PEGT−PBTコポリマー(多活性)、PEO−PPO−PAAコポリマー、PLGA−PEO−PLGA、PEG−PLG、PLA−PLGA、ポロキサマー407、PEG−PLGA−PEGトリブロックコポリマー、SAIB(スクロース・アセテート・イソブチレート)又はそれらの組合せなどであるが、これらに限定されない。
[00182]一部の態様において、デポーは、少なくとも一つの生分解性ポリマーを含み、その少なくとも一つの生分解性ポリマーは、ポリ(ラクチド−コ−グリコリド)(PLGA)、ポリラクチド(PLA)、ポリグリコリド(PGA)、D−ラクチド、D,L−ラクチド、L−ラクチド、D,L−ラクチド−コ−ε−カプロラクトン、L−ラクチド−コ−ε−カプロラクトン、D,L−ラクチド−コ−グリコリド−コ−ε−カプロラクトン、ポリ(D,L−ラクチド−コ−カプロラクトン)、ポリ(L−ラクチド−コ−カプロラクトン)、ポリ(D−ラクチド−コ−カプロラクトン)、ポリ(D,L−ラクチド)、ポリ(D−ラクチド)、ポリ(L−ラクチド)、ポリ(エステルアミド)又はそれらの組合せの一つ又は複数を含む。
[00183]一部の態様において、デポーは、デポーの全重量を基にして、wt%で約99.5%、99%、98%、97%、96%、95%、94%、93%、92%、91%、90%、89%、88%、87%、86%、85%、84%、83%、82%、81%、80%、79%、78%、76%、75%、74%、73%、72%、71%、70%、65%、60%、55%、50%、45%、35%、25%、20%、15%、10%、又は約5%の少なくとも一つの生分解性材料を含み、残りは活性及び/又は不活性の医薬成分である。
[00184]マンニトール、トレハロース、デキストラン、mPEG及び/又はPEGがポリマーの可塑剤として使用できる。一部の態様において、所望の放出プロフィールを提供するために、ポリマー及び/又は可塑剤をデポー上に被覆してもよい。一部の態様において、被覆厚は、例えば約5、10、15、20、25、30、35、40、45、又は50ミクロンの薄さから、デポー(例えばデバイス)からのOXY133−スタチン化合物、ステロール、又はジオールの放出を遅延させるために、60、65、70、75、80、85、90、95、100ミクロンまでのより厚いコーティングでありうる。一部の態様において、デポー上のコーティングの範囲は、デバイスからの放出を遅延させるために、約5ミクロン〜約250ミクロン又は約5ミクロン〜約200ミクロンの範囲である。
[00185]デポー(例えばデバイス)は、様々なサイズ、形状及び構造(configuration)でありうる。デポーのサイズ、形状及び構造を決定する際、考慮されうるいくつかの要因がある。例えば、サイズ及び形状とも、標的組織部位におけるデポーの容易な配置を可能にする。さらに、系の形状及びサイズは、移植後にデポーが動くのを最少化又は防止するように選ばれるべきである。様々な態様において、デポーは、ロッド様又はフィルムもしくはシートのような平面状(例えばリボン様)などに成形することができる。デバイスの配置を容易にするために柔軟性は考慮事項であろう。
[00186]放射線マーカーをデバイスに含めることにより、使用者はデポー(例えばデバイス)を患者の標的部位に正確に配置することが可能になる。これらの放射線マーカーは、使用者が部位におけるデポーの移動及び分解を経時的に追跡することも可能にする。この態様において、使用者は、多数の画像診断法のいずれかを使用して、デポー(例えばデバイス)を部位に正確に配置できる。そのような画像診断法は、例えばX線イメージング又は蛍光透視法などである。そのような放射線マーカーの例は、バリウム、ホスフェート、ビスマス、ヨウ素、タンタル、タングステン、及び/又は金属ビーズもしくは粒子などであるが、これらに限定されない。様々な態様において、放射線マーカーは、球状であるか又はデポー(例えばデバイス)を囲むリングでありうる。
[00187]一部の態様において、OXY133−スタチン化合物は、送達デバイス(例えば、注射器、銃式送達デバイス、又はOXY133、ステロール、もしくはジオールを標的器官又は解剖学的領域に適用するのに適切な任意の医療デバイス)の一部でありうる“カニューレ”又は“針”を用いて標的部位に投与できる。デバイスのカニューレ又は針は、患者への身体的及び精神的外傷を最小限にするように設計される。
[00188]一部の態様において、デポーは、縫合針を用いて標的組織部位に縫合できる。針の寸法は、とりわけ移植部位に依存する。例えば、様々な手術(外科的処置)における筋肉面の幅は、1〜40cmで変動しうる。従って、針は、様々な態様において、これらの特定領域に合わせて設計できる。
[00189]本開示の態様は、本明細書中に定義の通りの治療上有効量の開示化合物と薬学的に許容可能な担体又は希釈剤とを用いて製造された医薬組成物として有用である。開示化合物は医薬組成物として製剤化でき、治療を必要としている対象、例えばヒト患者などの哺乳動物に、選択された投与経路(例えば、経口、鼻腔内、腹腔内、又は非経口的に、静脈内、筋肉内、局所もしくは皮下経路により、又は組織への注射により)に適合した様々な形態で投与できる。
[00190]従って、本開示の化合物は、薬学的に許容可能なビヒクル、例えば不活性希釈剤又は吸収(同化)可能な食用担体と組み合わせて経口的に、又は吸入もしくは吹送により、全身投与できる。それらは、硬質又は軟質ゼラチンカプセルに封入することも、圧縮して錠剤にすることも、又は患者の食事の食品に直接配合することもできる。経口治療投与の場合、化合物は、1種又は複数腫の賦形剤と組み合わせ、摂取可能な錠剤、バッカル錠、トローチ、カプセル、エリキシル、懸濁液、シロップ、ウェハースなどの形態で使用できる。化合物は不活性の粉末担体と組み合わせて、対象に吸入させるか又は吹送してもよい。そのような組成物及び製剤は、少なくとも0.1%の本開示の態様の化合物を含有すべきである。組成物及び製剤のパーセンテージは当然ながら変動し得、所与の単位剤形の重量の約2%〜約60%でありうる。そのような治療上有用な組成物中の化合物の量は、有効な用量レベルが得られるような量である。
[00191]錠剤、トローチ、ピル、カプセルなどは下記のものも含有しうる。すなわち、結合剤、例えばトラガカントガム、アカシア、コーンスターチ又はゼラチン;賦形剤、例えばリン酸二カルシウム;崩壊剤、例えばコーンスターチ、ジャガイモデンプン、アルギン酸など;滑沢剤、例えばステアリン酸マグネシウム;及び甘味剤、例えばスクロース、フルクトース、ラクトースもしくはアスパルテーム、又はフレーバー、例えばペパーミント、ウィンターグリーン油、もしくはチェリーフレーバーなどを加えてもよい。単位剤形がカプセルの場合、上記の種類の材料に加えて、液体担体、例えば植物油又はポリエチレングリコールを含有していてもよい。様々なその他の材料も、コーティングとして又は固体単位剤形の物理的形態を別様に変更するために存在してもよい。例えば、錠剤、ピル、又はカプセルは、ゼラチン、ワックス、セラック又は糖などでコーティングしてもよい。シロップ又はエリキシルは、活性化合物、甘味剤としてスクロース又はフルクトース、保存剤としてメチル及びプロピルパラベン、色素及びチェリー又はオレンジフレーバーなどのフレーバーを含有しうる。当然ながら、何らかの単位剤形の製造に使用されるあらゆる材料は、薬学的に許容可能で、使用される量において実質的に非毒性でなければならない。さらに、化合物は、徐放性製剤及びデバイスに組み込むこともできる。例えば、化合物は、持続放出カプセル、持続放出錠剤、持続放出ピル、及び持続放出ポリマー又はナノ粒子に組み込むこともできる。
[00192]本開示に記載されている化合物は、点滴又は注射により、静脈内又は腹腔内又は皮下に投与することもできる。化合物の溶液は、任意に非毒性の界面活性剤を混合されていてもよい水中に調製できる。分散液も、グリセロール、液体ポリエチレングリコール、トリアセチン、及びそれらの混合物中、及び油中に調製できる。通常の貯蔵及び使用条件下で、これらの製剤は、微生物の増殖を防止するために保存剤を含有できる。
[00193]注射又は点滴に適切な医薬剤形は、無菌の水溶液又は分散液、又は無菌の注射用又は点滴用の溶液又は分散液を即時調製するために適応された化合物を含む無菌粉末(任意にリポソーム中に封入されていてもよい)などでありうる。いずれの場合も、最終的な剤形は、無菌であり、流体であり、製造及び貯蔵の条件下で安定であるべきである。液体担体又はビヒクルは、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、液体ポリエチレングリコールなど)、植物油、非毒性のグリセリルエステル、及びそれらの適切な混合物を含む溶媒又は液体分散媒でありうる。適切な流動性は、例えば、リポソームの形成によって、分散液の場合は必要な粒径の維持によって又は界面活性剤の使用によって維持できる。微生物の作用の防止は、様々な抗菌剤及び抗真菌剤、例えばパラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チメロサールなどによってもたらすことができる。多くの場合、等張剤、例えば糖、緩衝液又は塩化ナトリウムを含めるのが好適である。注射用組成物の長期吸収は、吸収遅延剤、例えばモノステアリン酸アルミニウム及びゼラチンの使用によってもたらすことができる。
[00194]無菌の注射用溶液は、所要量の化合物を、適切な溶媒中に、必要に応じて上に列挙された様々なその他の成分と共に配合し、次いでろ過滅菌することによって製造される。無菌の注射用溶液を製造するための無菌粉末の場合、製造法は、真空乾燥及び凍結乾燥技術であり、これにより、活性成分+事前に滅菌ろ過された溶液中に存在する何らかの追加の所望成分の粉末が得られる。
[00195]局所投与の場合、化合物は純粋形で適用されてもよい。しかしながら、皮膚科学的に許容可能な担体(固体でも又は液体でも)と組み合わせた組成物又は製剤として皮膚に投与するのが望ましいであろう。
[00196]有用な固体担体は、微粉末固体、例えば、タルク、クレイ、微結晶性セルロース、シリカ、アルミナなどである。その他の固体担体は、非毒性のポリマー性ナノ粒子又はマイクロ粒子などである。有用な液体担体は、化合物が、任意に非毒性の界面活性剤の助けを借りて、有効なレベルで溶解又は分散できる水、アルコール又はグリコール又は水/アルコール/グリコールブレンドなどである。香料及び追加の抗菌剤などのアジュバントも、所与の用途のための性質を最適化するために加えてもよい。得られた液体組成物は、吸収パッド、含浸包帯(impregnated bandage)及びその他のドレッシング(dressing)によって適用できるか、又はポンプ式もしくはエアゾール噴霧器を用いて患部にスプレーできる。
[00197]合成ポリマー、脂肪酸、脂肪酸塩及びエステル、脂肪アルコール、変性セルロース又は変性無機物質などの増粘剤も液体担体と共に用いて、使用者の皮膚に直接適用するための塗布可能なペースト、ゲル、軟膏、石けんなどを形成させることができる。
[00198]化合物を皮膚に送達するために使用できる有用な皮膚科学的組成物の例は当該技術分野で公知である。例えば、Jacquetら(米国特許第4,608,392号)、Geria(米国特許第4,992,478号)、Smithら(米国特許第4,559,157号)及びWortzman(米国特許第4,820,508号)参照。これらはすべて引用によって本明細書に援用する。
[00199]本開示に記載された化合物の有用な用量は、それらのインビトロ活性、及び動物モデルにおけるインビボ活性を比較することによって決定できる。マウス及びその他の動物の有効量からヒトの用量を推定するための方法は当該技術分野で公知である。例えば米国特許第4,938,949号参照(引用によって本明細書に援用する)。
[00200]例えば、ローションなどの液体組成物中の化合物の濃度は、約0.1〜約25重量%、又は約0.5〜10重量%でありうる。ゲル又は粉末などの半固体又は固体組成物中の濃度は、約0.1〜約5重量%、又は約0.5〜約2.5重量%でありうる。
[00201]治療に使用するために必要な化合物の量は、選択された特定の塩だけでなく、投与経路、治療される状態の性質、患者の年齢及び状態によっても変動するので、最終的には担当医又は臨床医の判断に委ねられる。
[00202]本開示のプロドラッグの有効な用量及び投与経路は従来通りである。薬剤の正確な量(有効量)は、例えば、対象の種、年齢、体重及び全身状態又は臨床状態、治療される何らかの障害の重症度又は機序、使用される特定の薬剤又はビヒクル、投与の方法及びスケジュールなどに応じて対象ごとに異なるであろう。治療上有効量は、当業者に公知の慣用手順によって経験的に決めることができる。例えば、The Pharmacological Basis of Therapeutics,Goodman及びGilman編,Macmillan Publishing Co.,ニューヨーク参照。例えば、有効量は、最初は細胞培養アッセイか又は適切な動物モデルで推定することができる。動物モデルは、適切な濃度範囲及び投与経路の決定にも使用できる。次いで、そのような情報を用いて、ヒトへの投与のための有用な用量及び経路を決定することができる。治療用量は、同等の治療薬の用量に対する類似性によって選択することもできる。
[00203]特定の投与様式及び投与計画は、担当医が症例の詳細(例えば、対象、疾患、関係する病状、及び治療が予防的であるかどうか)を考慮して選択する。治療は、数日間から数ヶ月間、又はさらには数年間にわたる化合物の毎日又は1日数回投与を必要としうる。
[00204]しかしながら、一般に、適切な用量は、1日約0.001〜約100mg/kg、例えば約0.01〜約100mg/kg体重の範囲、例えば、レシピエントの体重1キログラムあたり1日約0.1mgより大、又は約1〜約10mgの範囲であろう。例えば、適切な用量は、1日約1mg/kg、10mg/kg、又は50mg/kg体重でありうる。
[00205]化合物は、例えば単位剤形あたり0.05〜10000mg、0.5〜10000mg、5〜1000mg又は約100mgの活性成分を含有する単位剤形で都合よく投与される。
[00206]本開示に記載のプロドラッグ化合物は、例えば、約0.5〜約75μM、約1〜50μM、約2〜約30μM、又は約5〜約25μMのピーク血漿中濃度を達成するために投与できる。例示的血漿中濃度は、少なくとも又はせいぜい0.25、0.5、1、5、10、25、50、75、100、又は200μMなどである。例えば、血漿中濃度は、約1〜100マイクロモル又は約10〜約25マイクロモルでありうる。これは、例えば、化合物の0.05〜5%溶液(任意に生理食塩水中)の静脈内注射、又は約1〜100mgの化合物を含有するボーラスの経口投与によって達成できる。望ましい血中濃度は、1時間あたり約0.00005〜5mg/kg体重、例えば、少なくとも又はせいぜい0.00005、0.0005、0.005、0.05、0.5、又は5mg/kg/時間を提供する連続点滴によって維持できる。あるいは、そのような濃度は、約0.0002〜20mg/kg体重、例えば、体重1kgあたり少なくとも又はせいぜい0.0002、0.002、0.02、0.2、2、20、又は50mgの化合物を含有する間欠点滴によって得ることもできる。
[00207]プロドラッグ化合物は、1回量で又は適切な間隔で投与される分割量として、例えば1日1回又は1日2、3、4回もしくはそれ以上のサブ用量(sub-dose)として都合よく提供されうる。サブ用量自体はさらに、緩く間隔を空けたいくつかの別個の投与、例えば吸入器からの頻回吸入などに分割することもできる。
[00208]本開示の一側面は、本明細書中に示されたOXY133−スタチン化合物又はその薬学的に許容可能な塩もしくは溶媒和物と、薬学的に許容可能な担体とを含む生物活性組成物又は医薬組成物である。これらの生物活性又は医薬組成物は、本明細書においては、“医薬組成物”又は“開示の生物活性組成物”と呼ばれることもある。時に、“化合物の投与”という語句は、本明細書においては、このプロドラッグ化合物を対象に投与する(例えば、対象を化合物と接触させる)文脈中で使用される。そのように使用されるプロドラッグ化合物は、一般的に、プロドラッグ化合物を含む医薬組成物又は生物活性組成物の形態でありうることは理解されるはずである。
[00209]開示の別の側面は、例えば対象の細胞又は組織においてヘッジホッグ(Hh)経路媒介応答を誘導(刺激、増強)するための方法であり、該方法は、細胞又は組織を有効量(例えば治療上有効量)のオキシステロール−スタチンプロドラッグと接触させることを含み、ヘッジホッグ(Hh)経路媒介応答は、骨芽細胞分化、骨の形態形成、及び/又は骨増殖の刺激である。Hh媒介応答は、再生医療に有用でありうる。
[00210]開示の別の側面は、骨障害、骨減少症、骨粗鬆症、又は骨折を有する対象の治療法であり、該方法は、OXY133−スタチンプロドラッグを含む有効量の生物活性組成物又は医薬組成物を対象に投与することを含む。対象は、例えば、骨量を増大させ、骨粗鬆症の症状を改善し、又は骨の形態形成及び/又は骨増殖の増大から利益を受けるであろうその他の状態を低減、排除、予防又は治療するために、生物活性組成物又は医薬組成物を、治療上有効な用量で、有効な剤形で、選択された間隔で投与されうる。対象は、骨粗鬆症の症状を改善するために生物活性組成物又は医薬組成物を、治療上有効な用量で、有効な剤形で、選択された間隔で投与されうる。一態様において、対象は、骨形成を誘導するために、哺乳動物の間葉幹細胞を採取し(例えば、対象から、又は適切な哺乳動物から、又は組織もしくは細胞バンクから)、その哺乳動物の間葉幹細胞を化合物で処理して細胞の骨芽細胞分化を誘導し、そしてその分化細胞を対象に投与することによって治療される。
[00211]開示のいずれの方法においても、OXY133−スタチン化合物は、細胞、組織又は器官に局所投与によって投与できる。例えば、OXY133−スタチン化合物はクリームなどで局所適用することも、又は細胞、組織もしくは器官に注射又は別の方法で直接導入することも、又は適切な医療デバイス(例えばインプラント)で導入することもできる。あるいは、化合物は、例えば、経口、静脈内(IV)、又は腹腔内(ip)注射もしくは皮下注射などの注射によって全身投与することもできる。
[00212]開示の別の側面は、本明細書中に記載の方法の一つ又は複数を実施するためのキットである。キットは、有効量(例えば治療上有効量)の化合物を任意に容器中に含むことができる。
[00213]開示の別の側面は、対象(例えばヒトなどの動物)の体内で使用するための、表面を有する基材を含むインプラントである。インプラントの表面又は内部は、周辺骨組織に骨形成を誘導するのに足る量のOXY133−スタチン化合物を含む生物活性組成物又は医薬組成物を含む。
[00214]本明細書中に示されている化合物のほかに、開示の他の態様は、式中に示されている任意の立体中心におけるありとあらゆる個別の立体異性体、例えばジアステレオマー、ラセミ体、エナンチオマー、及び化合物のその他の異性体も包含する。開示の態様において、化合物のすべての多形及び溶媒和物、例えば水和物及び有機溶媒と形成されるものも含まれる。そのような溶媒和物は、実質的に固定された溶質と溶媒のモル比を有する結晶性固体のこともある。適切な溶媒は当業者には公知であり、例えば水、エタノール又はジメチルスルホキシドである。そのような異性体、多形、及び溶媒和物は、当該技術分野で公知の方法、例えば、位置特異的及び/又はエナンチオ選択的合成及び分割によって製造できる。
[00215]塩を作る能力はオキシステロール−スタチン化合物又はプロドラッグの酸性度又は塩基性度に依存する。化合物の適切な塩は、酸付加塩、例えば、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、過塩素酸、硫酸、硝酸、リン酸、酢酸、プロピオン酸、グリコール酸、乳酸、ピルビン酸、マロン酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、炭酸、桂皮酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ヒドロキシエタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、シクロヘキサンスルファミン酸、サリチル酸、p−アミノサリチル酸、2−フェノキシ安息香酸、及び2−アセトキシ安息香酸を用いて製造される塩;サッカリンを用いて製造される塩;アルカリ金属塩、例えば、ナトリウム及びカリウム塩;アルカリ土類金属塩、例えば、カルシウム及びマグネシウム塩;及び有機又は無機リガンドを用いて形成される塩、例えば第四級アンモニウム塩などであるが、これらに限定されない。
[00216]更なる適切な塩は、本開示に記載の化合物の酢酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、安息香酸塩、炭酸水素塩、硫酸水素塩、酒石酸水素塩、ホウ酸塩、臭化物、エデト酸カルシウム、カンシル酸塩、炭酸塩、塩化物、クラブラン酸塩、クエン酸塩、二塩酸塩、エデト酸塩、エジシル酸塩、エストレート、エシレート、フマル酸塩、グルセプト酸塩、グルコン酸塩、グルタミン酸塩、グリコリルアルサニル酸塩、ヘキシルレゾルシン酸塩、ヒドラバミン、臭化水素酸塩、塩酸塩、ヒドロキシナフトエ酸塩、ヨウ化物、イソチオネート(isothionate)、乳酸塩、ラクトビオン酸塩、ラウリン酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、マンデル酸塩、メシル酸塩、メチルブロミド、メチル硝酸塩、メチル硫酸塩、ムチン酸塩(mucate)、ナプシル酸塩、硝酸塩、N−メチルグルカミンアンモニウム塩、オレイン酸塩、パモ酸塩(エンボネート)、パルミチン酸塩、パントテン酸塩、リン酸塩/二リン酸塩、ポリガラクツロン酸塩、サリチル酸塩、ステアリン酸塩、硫酸塩、塩基性酢酸塩、コハク酸塩、タンニン酸塩、酒石酸塩、テオクル酸塩、トシル酸塩、トリエチオジド及び吉草酸塩などであるが、これらに限定されない。本明細書において、化合物への言及は、その薬学的に許容可能な塩又は溶媒和物も含むことは理解されるはずである。
[00217]特に対象の治療に使用する場合、開示のいずれの方法、組成物又はキットにおいても、開示の組成物は、任意に一つ又は複数のその他の適切な治療薬と組み合わせてもよい。特定の状態の治療に適切な任意の治療薬が使用できる。適切な薬剤又は薬物は当業者には明白であろう。例えば、骨障害の治療の場合、従来の治療薬が本開示の組成物と組み合わせて使用できる。いくつかのそのような薬剤は、例えば、副甲状腺ホルモン、フッ化ナトリウム、インスリン様成長因子I(ILGF−I)、インスリン様成長因子II(ILGF−II)、形質転換成長因子ベータ(TGF−β)、シトクロムP450阻害薬、骨原性プロスタノイド、BMP2、BMP4、BMP7、BMP14、及び/又はビスホスホネート又はその他の骨吸収阻害薬などである。
[00218]一部の態様において、本開示の組成物又は化合物は医薬組成物として製剤化でき、該組成物は、本開示の組成物と薬学的に許容可能な担体とを含む。担体は、当然ながら、当業者には周知の通り、活性成分の何らかの分解を最小化するように、そして対象における何らかの有害副作用を最小化するように選ばれる。医薬組成物の薬学的に許容可能な担体及びその他の成分の検討については、例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences,第18版,Mack Publishing Company,1990参照。いくつかの適切な薬学的担体は、当業者には明白であるが、例えば、水(無菌水及び/又は脱イオン水を含む)、適切な緩衝液(例えばPBS)、生理食塩水、細胞培地(例えばDMEM)、人工脳脊髄液、ジメチルスルホキシド(DMSO)などである。
[00219]当業者であれば、開示の特定の製剤は、少なくとも一部は、使用される特定の薬剤又は薬剤の組合せ及び選択された投与経路に依存することは分かるであろう。従って、本開示の組成物の適切な製剤には幅広いバリエーションがある。いくつかの代表的製剤を以下で解説するが、その他は当業者には明白であろう。化合物は、治療を必要としている細胞、組織又は器官に局所的に又は直接的に投与できる。あるいは全身的に投与することもできる。
[00220]経口投与に適切な製剤又は組成物は、有効量の化合物が水、生理食塩水、又はフルーツジュースなどの希釈剤中に溶解された液体溶液;予め決められた量の活性成分を固体、顆粒又は凍結乾燥細胞としてそれぞれ含有するカプセル、サシェ又は錠剤;水性液体中の溶液又は懸濁液;及び油中水型エマルション又は水中油型エマルションを含みうる。錠剤形は、ラクトース、マンニトール、コーンスターチ、ジャガイモデンプン、微結晶性セルロース、アカシア、ゼラチン、コロイド状二酸化ケイ素、クロスカルメロースナトリウム、タルク、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、及びその他の賦形剤、着色剤、希釈剤、緩衝剤、湿潤剤、保存剤、フレーバー、及び薬理学的に適合可能な担体の一つ又は複数を含みうる。適切な経口送達用製剤は、本開示の薬剤が消化管内で分解するのを防止するために、合成及び天然ポリマー性マイクロスフェア又はその他の手段に組み込むこともできる。
[00221]非経口投与(例えば静脈内)に適切な製剤は、水性及び非水性の等張無菌注射溶液(抗酸化剤、緩衝液、静菌薬、及び製剤を対象レシピエントの血液と等張にする溶質を含有しうる)、及び水性及び非水性の無菌懸濁液(懸濁化剤、可溶化剤、増粘剤、安定剤、及び保存剤を含みうる)などである。製剤は、単位用量又は複数回用量用の密封容器(例えばアンプル及びバイアル)中に提供でき、使用直前に無菌の液体担体(例えば注射用水)を添加するだけの凍結乾燥条件下で貯蔵できる。即時注射用の溶液及び懸濁液は、前述の種類の無菌の粉末、顆粒、及び錠剤から調製できる。
[00222]化合物は、単独で又はOXY133−スタチンプロドラッグを含むその他の治療薬と組み合わせて、吸入投与のためのエアゾール製剤にすることもできる。これらのエアゾール製剤は、加圧された許容可能な推進剤、例えばジクロロジフルオロメタン、プロパン、窒素などの中に入れることができる。
[00223]局所投与用の適切な製剤は、ロゼンジ(活性成分をフレーバー、通常はスクロース及びアカシア又はトラガカント中に含む);芳香錠(pastille)(活性成分を不活性基剤、例えばゼラチン及びグリセリン、又はスクロース及びアカシア中に含む);洗口液(活性成分を適切な液体担体中に含む);又はクリーム、エマルション、懸濁液、溶液、ゲル、ペースト、泡沫、滑沢剤、スプレー、坐剤などである。
[00224]その他の適切な製剤は、例えば、化合物の持続放出に適切なヒドロゲル及びポリマー、又は化合物の小用量送達のためのナノ粒子などである。
[00225]当業者であれば、当面の特定用途に基づいて、適切又は適当な製剤を選択、適応又は開発できることは分かるであろう。さらに、本開示の医薬組成物は、全身投与であれ、局所投与であれ又はその両方であれ、様々に異なる経路による投与用に製造することができる。そのような例は、関節内、頭蓋内、皮内、肝内、筋肉内、眼内、腹腔内、髄腔内、静脈内、皮下、経皮、又は直接骨領域のアテローム性動脈硬化部位に、例えば、直接注射、カテーテル又はその他の医療デバイスを用いた導入、局所適用、直接適用により、及び/又は動脈もしくはその他の適切な組織部位へのデバイスの移植により実施される投与などであるが、これらに限定されない。
[00226]化合物は、外科用又は医療デバイス又はインプラント内に含有されるように、又はそれからの放出に適合するように製剤化することもできる。一定の側面において、インプラントは化合物で被覆されるか又は別の方法で処理されてもよい。例えば、本開示の組成物でインプラントを被覆するために、ヒドロゲル、又はその他のポリマー(例えば生体適合性及び/又は生分解性ポリマー)を使用することができる(例えば、ヒドロゲル又はその他のポリマーを使用することにより、組成物を医療デバイスで使用するために適応させることができる)。医療デバイスを薬剤で被覆するためのポリマー及びコポリマーは当該技術分野で周知である。医療デバイス及びインプラントの例は、縫合糸及び人工関節などのプロテーゼ(これらに限定されない)などで、例えば、ピン、スクリュー、プレート又は人工関節の形状でありうる。
[00227]開示の一部の態様において、化合物は、様々な慣用アッセイのいずれかによる測定で、治療応答を、未処理の対照サンプルのそれよりも約1%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、150%、200%、又はそれより多く刺激又は阻害することができる。これらの範囲の中間値も含まれる。
[00228]化合物の用量は錠剤又はカプセルなどの単位剤形に含まれうる。“単位剤形”という用語は、本明細書においては、動物(例えばヒト)対象への単位用量として適切な、物理的に別個の単位のことを言い、各単位は、所望効果をもたらすために十分な量と算出された予め決められた量の開示薬剤を単独で又は他の治療薬と組み合わせて、薬学的に許容可能な希釈剤、担体、又はビヒクルも共に含有する。
[00229]当業者であれば、個別患者における薬剤の所望効果量又は有効濃度を達成するために、使用される組成物の正確な製剤の適切な用量、スケジュール及び投与法を日常的に決定することができる。また、当業者は、化合物の“有効濃度”の適切な指標を、疾患、障害、又は状態の適切な臨床症状の分析だけでなく、適切な患者サンプル(例えば血液及び/又は組織)の直接又は間接分析により、容易に決定及び使用することもできる。
[00230]ヒトなどの動物に投与される化合物又はその組成物の正確な用量は、本開示の文脈においては、対象の種、年齢、体重、及び全身状態、治療される何らかの障害の重症度又は機序、使用される特定の薬剤又はビヒクル、その投与様式、患者が受けているその他の投薬、及び特定の患者に対する個別の投与計画及び用量レベルを決定する場合に担当医が通常考慮するその他の要因などに応じて対象ごとに異なるであろう。インビボで所望濃度を達成するために使用される用量は、化合物の形態の効力、宿主における化合物関連の薬力学、追加薬剤の有無、罹患個人の病状の重症度、ならびに全身投与の場合、個人の体重及び年齢によって決定される。用量サイズは、使用される特定の薬剤、又はその組成物に随伴しうる何らかの有害副作用の存在によって決定されることもある。有害副作用は、可能な限り常に最小限に維持するのが一般的に望ましい。
[00231]例えば、用量は、約5ng(ナノグラム)〜約1000mg(ミリグラム)、又は約100ng〜約600mg、又は約1mg〜約500mg、又は約20mg〜約400mgの範囲で投与できる。例えば、用量は、体重に対する用量比約0.0001mg/kg〜約1500mg/kg、又は約1mg/kg〜約1000mg/kg、又は約5mg/kg〜約150mg/kg、又は約20mg/kg〜約100mg/kgを達成するように選ぶことができる。例えば、用量単位は、約1ng〜約5000mg、又は約5ng〜約1000mg、又は約100ng〜約600mg、約1mg〜約500mg、又は約20mg〜約400mg、又は約40mg〜約200mgの化合物又は化合物を含む組成物の範囲でありうる。開示の一態様において、本開示に記載されている化合物の量(例えば数グラム)は、例えば脊椎固定術において足場の一部として局所投与される。
[00232]オキシステロール−スタチン化合物の用量は、所望の治療効果を引き出すために必要に応じて、1日1回、1日2回、1日4回、又は1日5回以上投与できる。例えば、用量投与計画は、本開示の化合物の血清濃度が、約0.01〜約1000nM、又は約0.1〜約750nM、又は約1〜約500nM、又は約20〜約500nM、又は約100〜約500nM、又は約200〜約400nMの範囲を達成するように選ぶことができる。例えば、本開示の化合物の最大半量(half maximum dose)を示す平均血清濃度が約1μg/L(マイクログラム/リットル)〜約2000μg/L、又は約2μg/L〜約1000μg/L、又は約5μg/L〜約500μg/L、又は約10μg/L〜約400μg/L、又は約20μg/L〜約200μg/L、又は約40μg/L〜約100μg/Lの範囲を達成するように選ぶことができる。
[00233]開示の一定の態様は、治療結果を改良するために、オキシステロール−スタチン化合物とは独立に又はそれと相乗的に作用する追加の薬剤を用いた治療も含みうる。併用療法で投与される場合、オキシステロール−スタチン化合物以外の薬剤は、化合物と同時に投与することも、又は所望に応じて交互に投与することもできる。組成物中に2種類(以上)の薬物を組み合わせることもできる。それぞれの用量は、組み合わせて使用される場合、いずれかを単独で使用する場合より少なくなりうる。適切な用量は、標準的な投与パラメーターを用いて当業者が決定できる。
[00234]開示の一態様において、本明細書中に開示されたいずれ方法(インビトロでも又はインビボでも)にとってもキットが有用である。そのようなキットは、化合物又はその生物活性もしくは医薬組成物を含むほか、例えばHh経路媒介活性の増大をもたらす一つ又は複数のその他のオキシステロール、又はその他の適切な治療薬も含みうる。キットは任意に、方法を実施するための説明書を含んでいてもよい。開示のキットの任意の構成要素は、適切な緩衝液、薬学的に許容可能な担体など、容器、又は包装材料などである。キットの試薬は容器に入っていてもよく、試薬はその容器中で例えば凍結乾燥形又は安定化された液体形で安定である。試薬は、単一の使用形態、例えば単一剤形でよい。当業者であれば、開示のいずれかの方法を実施するために適切なキットの構成要素は分かるであろう。
[00235]様々な状態が、オキシステロール−スタチン化合物を単独で又は他の治療薬と組み合わせて使用することにより、治療できる。オキシステロール−スタチン化合物はヘッジホッグ経路の活性の増大をもたらすことができる。
[00236]オキシステロール−スタチン化合物の一つの作用は、多能性細胞を標的にして、骨芽細胞など様々な細胞タイプへのそれらの系統特異的分化を誘導することでありうる。例えば、化合物で処理された間葉幹細胞は、骨芽細胞分化マーカーの誘導発現を示すことができる。いかなる特定機序にも拘束されることは望まないが、この系統特異的分化は、これらの細胞におけるヘッジホッグシグナル伝達の誘導によるものであることが示唆される。しかしながら、本明細書中で議論されている治療法は、化合物が機能する機序がどのようなものであるかを問わず、本開示に含められる。オキシステロール−スタチン化合物は、骨形成、骨芽細胞分化、骨形態形成及び/又は骨増殖の刺激から利益を受けるであろう状態の治療に有用でありうる。当業者には明白であろうが、これらの状態又は治療の中には、例えば、脊椎固定術又は骨粗鬆症における局所骨形成を刺激するための骨誘導療法、骨折の修復又は治癒、顎骨形成の増大に臨床利益がある歯科処置、外傷又は口蓋裂/口唇裂などの先天性欠陥による頭蓋顔面骨欠損の修復、及び自然の骨成長が不適切ないくつかのその他の筋骨格障害などがある。治療は、開放骨折及び癒着不能リスクの高い骨折を治療するためだけでなく、脊椎固定術(例えば、前方経路腰椎椎体間固定術、腰椎後方固定術、及び頸椎固定術)の必要がある対象を含む脊椎障害を有する対象又は変性円板疾患もしくは腰椎及び頸椎を冒す関節炎を有する対象にも投与できる。さらに、オキシステロール−スタチン化合物は、特に加齢及び閉経後集団における骨粗鬆症、すなわち破骨細胞による骨吸収の増大と並行して骨芽細胞による骨形成の減少に起因する骨粗鬆症の治療にも使用できる。
[00237]さらに詳しくは、下記種類の骨関連治療が実施できる。一部の態様において、化合物は、局所骨形成を刺激するために体内に局所的に送達される骨原性物質として使用できる。送達は、コラーゲンI(これに限定されない)などの適合性分子で構成される足場(scaffold)を用い、それに化合物を吸収させた後、体内に配置することによって行われる。例えば、オキシステロール−スタチン化合物を含有する足場は、二つ以上の椎骨の固定が適応される脊椎固定術、偽関節、及び癒着不能固定などにおいて、横突起の間又は椎間板に配置することができる。他の態様において、オキシステロール−スタチン化合物を含有する足場は、骨形成及び骨折の治癒を刺激するために骨折骨に配置される;化合物による骨再生が適応される頭蓋冠又は顎顔面骨欠損などの骨欠損部に配置される;又は歯科インプラントなどの歯科処置前の骨再生手段として骨形成を刺激するために顎骨に配置される。他の態様において、オキシステロール−スタチン化合物はインビトロで骨原性物質として使用できる。例えば、オキシステロール−スタチン化合物は、間葉幹細胞などの骨前駆細胞に、そのような細胞を局所骨形成を刺激するために上記のような整形外科的処置及びその他の処置に適用する前に、それらの骨分化を刺激するために投与することができる。さらにその他の態様において、オキシステロール−スタチン化合物は、インビトロで骨前駆細胞のヘッジホッグシグナル伝達経路を刺激するために使用することもできる。それによってインビトロ又はインビボで骨前駆細胞の骨分化がもたらされる。
[00238]上記及び以下の実施例において、すべての温度はセ氏で示され;そして、別途記載のない限り、すべての部及びパーセンテージは重量による。上記の骨原性オキシステロールは、関心対象の標的細胞、組織又は器官への直接的な局所投与に有用である。
[00239]本願のこれら及びその他の側面は、以下の実施例を検討することにより、さらに理解されるであろう。これらの実施例は、本願のある特定の態様を説明することを目的としたものであり、特許請求の範囲によって定義されているその範囲を制限することを意図したものではない。
[00240]実施例1
[00241]酢酸プレグネノロンからの製造
[00242]8.25mLのTHF中n−ヘキシルマグネシウムクロリド(2M、16.5mmol)を、激しい電磁撹拌下及び氷浴冷却下で、酢酸プレグネノロンのTHF中溶液に添加した。酢酸プレグネノロン溶液は、4.5mLのTHF中に1.79gの化合物1、酢酸プレグネノロン(5mmol)を含有していた。添加は2分間かけて行われた。添加完了後、混合物を室温で3.5時間撹拌した。その時点で混合物はゲルに変わった。次に、そのゲルを、飽和NH4Cl水溶液及びMTBE(メチルターシャリーブチルエーテル)の混合物で砕解(digest)した。有機層を分離し、水で3回洗浄して蒸発させた。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより、EtOAc(酢酸エチル)/石油エーテル混合物(比率70/30)を用いて分離し、化合物2、ジオールを白色固体として得た。1.29g(3.21mmol)の固体ジオールを64%の単離収率で抽出した。反応を以下のAに示す。
[00243]CDCl3中のジオールの400MHzにおける1H NMRデータを以下に示す:δ: 0.8-1.9 (40H), 1.98 (m, 1H), 2.09 (m, 1H), 2.23 (m, 1H), 2.29 (m, 1H), 3.52 (m, 1H), 5.35 (m, 1H)(図6に示されている通り)。図7のCDCl3中のジオールの100MHzにおける13C NMRデータを以下に示す: d: 13.6, 14.1, 19.4, 20.9, 22.4, 22.6, 23.8, 24.2, 26.4, 30.0, 31.3, 31.6, 31.8, 31.9, 36.5, 37.3, 40.1, 42.3, 42.6, 44.0, 50.1, 56.9, 57.6, 71.7, 75.2, 121.6, 140.8。
[00244]生成したジオールは、(3S,8S,9S,10R,13R,14S,17R)−10,13−ジメチル−17−[(S)−2−ヒドロキシオクタン−イル]−2,3,4,7,8,9,11,12,14,15,16,17−ドデカヒドロ−1H−シクロペンタ[a]フェナントレン−3−オールのIUPAC名を持つ。
実施例2
[00245]プレグネノロンからの製造
[00246]実施例1の代わりに、上記反応スキームAの化合物2は、以下のスキームBに示されたプレグネノロンから、化合物1から化合物2への変換で利用したのと同じ手順を利用して製造することもできる。この手順では、10gのプレグネノロンが7.05gの化合物2に変換された。これは55%の収率に相当する。
[00247]2500mLのn−ヘキシルマグネシウムクロリド(2M、5mol)を反応器に入れ、溶液を−5℃に冷却した。酢酸プレグネノロンのTHF中溶液を反応器に、内部反応温度を1℃未満に維持する速度で投入した。プレグネノロン溶液は、8リットルのTHF中に500gのプレグネノロン(1.4mol)を含有していた。添加完了後、混合物を0℃に1時間保持した後、一晩かけて室温に温まらせた。反応混合物は固体のゼラチン状塊になった。追加のTHF2リットルを加えた後、10mlの氷酢酸を加えた。反応混合物を5℃に冷却し、350mlの氷酢酸を添加してクエンチングしたところ、溶液が得られた。反応混合物を減圧下で濃縮し、濃厚シロップにした。化合物をジクロロメタンに溶解し、水洗し、最後に飽和炭酸水素ナトリウムで洗浄した。有機層を減圧下で琥珀色油になるまで濃縮した。質量回収は約800グラムであった。粗材料をそのまま次の工程に利用した。
[00248]生成したジオールは、(3S,8S,9S,10R,13R,14S,17R)−10,13−ジメチル−17−[(S)−2−ヒドロキシオクタン−イル]−2,3,4,7,8,9,11,12,14,15,16,17−ドデカヒドロ−1H−シクロペンタ[a]フェナントレン−3−オールのIUPAC名を持つ。
実施例3
[00249]粗ヘキシルジオール生成物(800グラム)を8リットルのTHFに溶解し、反応器に入れ、−5℃に冷却した。THF中ボラン−THF複合体(1M、6.3モル、4.5当量)6300mLを、内部反応温度を1℃未満に維持する速度で投入した。添加が完了したら、反応混合物を0℃で1.5時間撹拌した後、一晩かけて室温に温まらせた。反応を以下に示す。
[00250]反応混合物を、10%水酸化ナトリウム(4750mL)と30%過酸化水素(1375mL)の混合物の添加によりクエンチングした。クエンチングは極めて発熱性であったので、完了に数時間を要した。内部温度は10℃未満に維持された。クエンチング量の添加完了後、混合物を1.5時間保冷した後、一晩かけて室温に温まらせた。次に8リットルのジクロロメタンを加えた。有機層を単離し、7リットルの新鮮水で洗浄し、減圧下で濃縮した。生成物は粘稠性の油状塊として単離されたが、放置により固化した。
[00251]生成物を4リットルのジクロロメタンに溶解し、ジクロロメタン中に調製されたシリカゲルカラムに入れた。カラムを最初に25%酢酸エチルで溶離し、7−メチル−7−トリデシルアルコール副産物を溶離した。次に、カラムを10%メタノール−酢酸エチルで溶離して、OXY133を溶媒和した。回収画分を合わせ、減圧下で濃縮してワックス状固体を得た。化合物をアセトン−水混合物(3:1)に溶解し、減圧下で濃縮して残留溶媒を除去した。得られた粗OXY133を次の工程で利用した。
[00252]あるいは、ヒドロホウ素化/酸化から回収された粘稠生成物は、ヘプタンと撹拌することによって固化させ、ろ過により生成物を単離することもできる。単離生成物を塩化メチレン(7.3mL塩化メチレン/g固体)中に懸濁させる。生成物をろ過により単離し、そのまま次の工程で使用した。
実施例4
[00253]630グラムの粗OXY133を1500mlの3:1 アセトン/水混合物に還流下で溶解し、次いで室温に冷却することによってOXY133を再結晶化させた。結晶固体を真空ろ過により回収し、乾燥させて、336gを得た。これは化合物1からの通算収率28%であった。製造されたOXY133は一水和物で、(3S,5S,6S,8R,9S,10R,13S,14S,17S)−17−((S)−2−ヒドロキシオクタン−2−イル)−10,13−ジメチルヘキサデカヒドロ−1H−シクロペンタ[a]フェナントレン−3,6−ジオール、一水和物のIUPAC名を持つ。
[00254]図1に、酢酸プレグネノロンを含む出発反応物を用いてOXY133を合成するための段階的反応を示す。プレグネノロンを有機金属化合物と反応させて、2個のヒドロキシル基を有するステロール又はジオールを製造する。次にそのステロール又はジオールをボラン及び過酸化水素と反応させ、精製してOXY133を製造する。
[00255]CDCl3中のOXY133の400MHzにおける1H NMRデータを以下に示す:δ: 0.66 (m, 1H), 0.85 (m, 10 H), 1.23 (m, 18 H), 1.47 (m, 9 H), 1.68 (m, 4 H), 1.81 (m, 1H), 1.99 (m, 1H), 2.06 (m. 1H), 2.18 (m, 1H), 3.42 (m, 1H), 3.58 (m, 1H)。CDCl3中のOXY133の400MHzにおける13C NMRデータを以下に示す: d: 13.7, 14.0, 14.3, 21.2, 22.5, 22.8, 23.9, 24.4, 26.6, 30.1, 31.1, 32.1, 32.5, 33.9, 36.5, 37.5, 40.4, 41.7, 43.1, 44.3, 51.9, 53.9, 56.5, 57.9, 69.6, 71.3, 75.4。OXY133の赤外分光データは、3342cm−1、2929cm−1、2872cm−1、2849cm−1にピークを示した。OXY133のターボスプレー質量分析データは、438.4 m/z [M+NH4]+、420.4 m/z (M-H2O+NH4]+、403.4 m/z [M-H2O+H]+、385.4 m/z [M-2H2O+H]+にピークを示した。OXY133の1H NMR、13C NMR、IR、及びMSを図2、3、4及び5にそれぞれ示す。図6は、OXY133を合成するための中間ステロール又はジオールから得られた1H NMRデータのグラフ図である。図7は、OXY133を合成するための中間ステロール又はジオールから得られた13C NMRデータのグラフ図である。
実施例5
[00256]酢酸プレグネノロンからの代替一容器(one-vessel)手順
[00257]100mLのn−ヘキシルマグネシウムクロリド(THF中2M、200mmol)をフラスコに入れ、−10℃に冷却した。200mlの無水THF中に20gの酢酸プレグネノロン(56mmol)を含有する溶液を、内部反応温度を−10℃未満に維持しながら滴加した。添加完了後、混合物を30分間撹拌した後、室温に温まらせた。室温で4時間後、混合物はゼラチン状の撹拌可能な塊になった。混合物を0℃に冷却し、200mLのボラン−THF複合体(THF中1M、200mmol)を、内部温度を0℃未満に維持しながら滴加した。添加が完了したら、得られた溶液を一晩かけて室温に温まらせた。
[00258]混合物を0℃に冷却し、10%NaOH(190mL)と30%H2O2(55mL)の混合物を徐々に添加してクエンチングした。クエンチングが完了したら、混合物をMTBE(合計800mL)で抽出し、エマルションを得た。ブラインを添加し、層を分離させた。有機相を減圧下で濃縮し、透明粘稠油を得た。この油を、前に説明したプラグカラム法を利用してさらに精製した。
[00259]当業者には、本明細書中に記載された様々な態様に対して、本明細書における教示の精神又は範囲から逸脱することなく、様々な修正及び変更が可能であることは明らかであろう。ゆえに、様々な態様は、本教示の範囲内で様々な態様のその他の修正及び変更もカバーするものとする。