以下、本発明の実施例を、図面を参照して詳細に説明する。
(システム構成)
先ず、図1〜図10を用いて、実施例1の設備通信システムを説明する。
図1は、本実施例の設備通信システムの構成図である。設備通信システムは、ビル全体の設備を管理する上位装置9と、設備網5に接続される各設備装置により構成される。ここで、各設備装置とは、エアコンの室内機21〜26、室外機31,32、照明機器やセキュリティ機器などの付随する機器41,42、および、それらの各装置を管理するための管理装置11,12の総称である。
各設備装置は、CPU(Central Processing Unit)と、メモリと、ハードディスクなどの記憶手段(記憶部)と、ネットワークインタフェースとを有するコンピュータとして構成される。このコンピュータは、CPUが、メモリ上に読み込んだプログラム(アプリケーションや、その他のアプリとも呼ばれる)を実行することにより、各処理部により構成される制御部(制御手段)を動作させる。
上位装置9は、設備網5と異なるネットワークで管理装置11に接続される。上位装置9は、例えばビル全体の消費電力を最適化するために管理装置11に機器制御の指令を送信することで、その管理装置11から設備網5を介して、各設備装置を制御する。
なお、設備網5に接続されている各設備装置は、双方向(任意の方向)での送受信が可能である。例えば、管理装置11から室内機21にエアコンの温度調整信号を送信したり、室内機21から管理装置11に室内温度情報を通知したりする。
設備網5は、複数の通信モードを時系列で切り換えて通信可能なネットワークである。設備網5は、例えば、第1の通信モードとしての低速通信と、第2の通信モードとしての高速通信とが切り換わる。そして、低速通信の時間帯には、エアコンの温度調整信号などの重要な制御信号を送信し、高速通信の時間帯には、エアコンのファームウェア最新版などの大容量データを送信するなど、各通信モードに応じたデータ内容を送信するようにすれば、設備網5を有効活用することができる。
ここで、通信モードの切り換えは、通常の通信モードを基本とし、通信モードの変更トリガが発生したときには、通信モードを別のモードに切り換えることとする。なお、以下では、低速通信を通常の通信モードとし、高速通信をトリガに起因する通信モードとして説明する。一方、高速通信を通常の通信モードとし、低速通信をトリガに起因する通信モードとしてもよい。
また、設備通信システムの各設備装置は、低速通信だけに対応した低速装置と、低速通信および高速通信の両方に対応した高速装置とのいずれかに分類される。
図1では、太線の装置は高速通信と低速通信の両方に対応した高速装置を示し(室内機21など)、細線の装置は低速通信にのみ対応した低速装置を示す(室内機23など)。そして、本実施例の設備通信システムでは、各設備装置を2つのグループにグループ化している。第1グループ8aは、太線で示す、管理装置11、室内機21,22、室外機31、機器41を含めて構成された、高速装置のみのグループである。一方、第2グループ8bは、細線で示す、管理装置12、室内機23、25、26、室外機32、機器42と、太線で示す、室内機24を含めて構成された、低速装置と高速装置が混在するグループである。
各グループは、同じ冷媒系統に属する設備装置の集合体であり、室内機21,22、室外機31は、冷媒ガスを供給する第1の冷媒配管(破線で図示)で接続され、室内機23〜26、室外機32は、冷媒ガスを供給する第2の冷媒配管(破線で図示)で接続されている。
図2は、設備通信システムの装置管理テーブル101の一例である。ここに例示するように、装置管理テーブル101には、設備装置ごとに、装置種別、装置個別のアドレス、高速通信への対応可否(○が対応する高速装置、×が未対応の低速装置)、装置が属するグループが記載されている。この装置管理テーブル101は、各設備装置内に個々に記憶されるが、各設備装置内に記憶する装置管理テーブルの内容は、テーブルの全エントリとしてもよいし、自身からみて通信相手とならない装置のエントリを除外してもよい。通信相手とならない装置とは、例えば、自身が室内機21であるときの室内機22など、自身と同じ装置種別の装置である。
(通信装置構成)
図3は、設備通信システムの各設備装置におけるデータ送受信関連部位の詳細な構成図であり、記憶部51と、負荷部52と、通信部53と、制御部54(例、マイコン)とを有し、低速装置としての機構と、高速装置としての機構を1台の筐体に内蔵している。記憶部51には、負荷部52に関する各種パラメータ(ファンの回転速度など)などが記憶される。負荷部52は、例えば装置種別「管理装置」の場合は表示ディスプレイ、装置種別「室内機」の場合はファン、装置種別「室外機」の場合は圧縮機、装置種別「機器」の場合は照明ランプや撮像センサなどである。なお、以下では、通信部53と制御部54を合わせて、通信制御装置と呼ぶこともある。
この設備装置を「低速装置」として動作させるときには、通信部53内の符号化部61、変復調部62、復号化部63、空きチャネル検出部64を用い、かつ、制御部54内の送信データ生成部71、送信部72、受信部73、受信データ解析部74、通信制御部75を用いればよい。
一方、この設備装置を「高速装置」として動作させるときには、上述した低速装置の構成に加えて、制御部54内の通信速度判断部76、通信速度切換部77、低速検出期間生成指示部78を備えればよい。
まず、設備装置を低速装置として動作させる場合について説明する。低速装置としては、以下に示す通信機能を用いる。
符号化部61は、送信部72(例:UART送信回路)から通知された送信データ501に対して符号化処理(例:Non Return to Zero(以下、NRZと称する)符号からReturn to Zero(以下、RZと称する)符号への変換)を行う。
変復調部62は、変調回路と復調回路を備え、符号化部61が符号化した送信符号化信号502を変調し、設備網5に送信する。また、設備網5から受信した信号を復調し、復号化部63に通知する。なお、復調回路の前段に低域通過フィルタを備える構成が一般的である。また、高周波を利用しないベースバンド方式で信号を送受信する処理も、広義には変復調部62に含まれるとして説明する。
復号化部63は、変復調部62が復調した受信符号化信号503に対して復号化処理(例:RZ符号からNRZ符号への変換)を行い、受信データ504を受信部73に通知する。
空きチャネル検出部64は、変復調部62が復調した信号を監視し、伝送路である設備網5の空き状況を送信部72および受信部73に通知する。なお、設備網5はバス型であり、他の設備通信システムとは空きチャネル検出時分割多重アクセスする。
受信部73(例:UART受信回路)は、復号化部63からの信号を受信し、受信データ504を受信データ解析部74に通知する。
受信データ解析部74は、受信データ504に含まれるパケットの内容を解析し、通信制御部75に通知する。
通信制御部75は、解析したパケットの内容に基づいて、記憶部51へのデータアクセス処理および負荷部52への制御処理を実行する。さらに、通信制御部75の指示に基づいて、送信データ生成部71は、他装置に通知するパケットを生成し、送信部72に通知する。送信部72は、送信データ501を符号化部61に通知する。なお、通信制御部75は、負荷部52の状態に基づき自発的に送信データの生成指示を出してもよい。
次に、設備装置を高速装置として動作させる場合について説明する。高速装置は、低速通信を用いて低速装置と通信を行い、高速通信を用いて高速装置と通信を行うように、高速通信と低速通信とを切り換えることができるものである。
通信速度判断部76は、受信データ解析部74が受信した速度切り換えのトリガ信号に基づき、低速通信と高速通信とを切り換えるか否かを判断する。この判断結果は、通信制御部75と通信速度切換部77とに通知される。
通信速度切換部77が、低速通信から高速通信に切り換えて信号を送受信する旨を、送信部72、受信部73、通信部53に指示すると、送信部72、受信部73、通信部53は高速通信用の処理を行う。一方、通信速度切換部77が、高速通信から低速通信に切り換えて信号を送受信する旨を、送信部72、受信部73、通信部53に指示すると、送信部72、受信部73、通信部53は低速通信用の処理を行う。なお、外部からトリガ信号を受信する代わりに、装置自身が高速通信を必要とするときに、通信制御部75が低速通信から高速通信に切り換えるトリガを発生させてもよい。
低速検出期間生成指示部78は、後述するように低速装置向けのチャネル使用検出信号(低速検出期間)を挿入するタイミングを指示する。
(基本通信方法)
図4は、設備通信システムでやりとりされるパケットの説明図である。パケットフォーマット80は、先頭から順に、ヘッダ欄81と、データ欄82と、パリティ欄83とを含めて構成される。なお、パケットフォーマット80内の各欄のかっこ書きは、各欄のデータ量(単位B:バイト)を示す。例えば、ヘッダ欄81は8バイトの固定長であり、データ欄82は可変長である。
ヘッダ欄81は、さらに、装置種別欄84と、送信元アドレス欄85と、送信先アドレス欄86と、通信種別欄87と、データ長欄88とを含めて構成される。データ長欄88は、データ欄82のデータ長を示す。
送信元アドレス欄85にはパケットの送信元装置のアドレスが記載され、送信先アドレス欄86にはパケットの送信先装置のアドレスが記載される。または、パケットの送信先装置を複数一括で指定するときには、送信先装置のアドレスとして、全装置を指定するマルチキャストアドレス「0xFFFF」、または、特定のビットを用いてグループ分けされた装置群を指定するマルチキャストアドレスが記載される。
なお、パケットフォーマット80には、低速通信と高速通信で同じデータフォーマットを用いてもよい。高速通信を行う場合は、高速装置は、低速通信を用いてヘッダ欄81を送信した後、後続するデータ欄82と、パリティ欄83とを高速通信に切り換えて送信してもよい。または、高速装置は、ヘッダ欄81と、データ欄82と、パリティ欄83とをすべて高速通信でまとめて送信してもよい。
また、本実施例では、複数の送信先装置への送信を総称する意味で「マルチキャスト」という用語を用いている。この広義のマルチキャストを実現するために、例えば、IP(Internet Protocol)で既定される狭義のマルチキャストやブロードキャストを用いてもよい。
表1に示すテーブル111は、送信元装置の装置種別を示す装置種別欄84の記載例を示す。例えば、送信元装置が室内機21であるときには、装置種別欄84には室内機を示す「0x02」が記載される。また、装置種別「機器」は、その設備の種類に基づいてさらに細分化して別々の値を割り当ててもよい。
表2に示すテーブル112は、パケットの目的を示す通信種別欄87の記載例を示す。No.1(制御)からNo.6(高速通信)までの各値は、それぞれONまたはOFFのいずれかを指定できる。よって、通信種別欄87には、図4で示す各値の論理和が記載される。例えば、「応答要」と「一括制御」とを同時に指定したいときには、「0x80」と「0x04」との論理和「0x84」が通信種別欄87に記載される。また、「0x0F」は、低速装置では未定義の値であり、高速装置ではヘッダ欄81に後続する通信が高速であることを示す。
表3に示すテーブル113は、データ長欄88の記載例を示す。データ長欄88の値が0x0000〜0x0030のときは、その値がそのままデータ長となる。一方、データ長欄88の値が0x0040〜のときは、図4で示したように、高速装置の場合に限り、その高速通信についての情報(高速通信回数、高速通信期間)が指定できる。
図5A、図5Bは、設備網5上の被変調信号と、設備装置の通信モードの説明図である。時系列グラフ121,122は、それぞれ上から順に、低速通信で送信されるパケット、高速通信で送信されるパケット、設備網5の通信モード(状態)を示す。設備網5の通信モードは、「高速」と記載された期間が高速通信の期間であり、その他が低速通信の期間である。
図5Aに示す時系列グラフ121では、低速通信で送信された1回トリガに従って、1回の高速通信が行われる例を示す。この例では、低速通信のデータパケット送信後、1回の高速通信を可能にする1回トリガが低速通信で送信される。この1回トリガは、通信種別欄87に0x0Fを設定したヘッダ欄81であり、以下では高速トリガとも呼ぶ。
この高速トリガを受信した高速装置は高速通信でのパケット受信の準備ができるので、続くパケットが高速通信で送信される。そして、1回の高速通信の後に送受信が所定期間発生しないことで、設備網5の通信モードは、通常の低速通信に戻る。なお、もし低速装置が高速トリガを受信してしまっても、低速装置にとっては通信種別欄87の「0x0F」という値は未定義なので、高速トリガは適切に無視され、低速装置が異常な応答をすることはない。
一方、図5Bに示す時系列グラフ122では、低速通信で送信された期間トリガに従って、複数回の高速通信が行われる例を示す。この例では、低速通信のデータパケット送信の後に設けられた待機時間である期間T1の後に、所定期間の間連続して高速通信を可能にする期間トリガが低速通信で送信される。この期間トリガは、通信種別欄87に0x0Fを設定し、かつ、データ長欄88に高速通信期間(または高速通信回数)を指定したヘッダ欄81である。
この期間トリガを受信した全ての高速装置は高速通信でのパケット送受信の準備ができる。そして、高速通信期間内であれば、どの高速装置でも高速通信を行ってもよい。高速通信で送信される各パケットは、互いに衝突しないように期間T2の余裕を持たせている。そして、高速通信期間を終了した後は、設備網5にパケットが流れない未使用期間T3の後に、低速通信に戻る。なお、期間T1≦期間T3、期間T2<期間T3とすることにより、高速通信期間中に低速装置がデータ送信を行うことを回避できる。
図6は、各設備装置間での1:1通信のシーケンス図である。図6を含む各シーケンス図では、図1に倣い、高速装置、高速通信を太線、低速装置、低速通信を細線で記載している。なお、各シーケンス図での動作主体は、あくまで高速装置の動作と、低速装置の動作とをわかりやすく説明するための例示であり、この例示以外の装置を高速装置や低速装置として動作させてもよい。
S11のシーケンスでは、管理装置12は、各設備装置(室内機23、室内機21、管理装置11)に、低速通信により個別にテーブル112で説明した「応答要」のパケットを送信する(「send」と図示)。そして、「応答要」のパケットを受信した各設備装置は、管理装置12に対して、低速通信により個別にパケット応答を行う(「ack」と図示)。これにより、管理装置12は各設備装置との通信が可能であることを把握できる。
S12は、ともに高速装置である管理装置11と室内機21の間で、パケット送信だけを高速通信する例である。まず、室内機21は、時系列グラフ121で示した1回の高速トリガを低速通信で管理装置11に送信する(破線矢印はトリガを示す)。これにより、続くパケットは室内機21から管理装置11に高速通信される。一方、管理装置11から室内機21へのパケット応答は、高速トリガに続けて送信されるものではないため、低速通信のモードで送信される。
S13は、パケット送信とその応答との組み合わせを高速通信する例である。S12と同様に、管理装置11は高速トリガを室内機21に送信することで、続く「応答要」のパケットを室内機21に高速通信モードで送信する。さらに、室内機21は高速トリガを管理装置11に送信することで、続く応答パケットを管理装置11に高速通信モードで送信する。
S14は、高速通信期間を指定して、「応答要」のパケット送信とその応答パケットの組み合わせを連続して高速通信する例である。この例では、管理装置11は時系列グラフ122で示した高速トリガを室内機21に低速通信モードで送信することで、その後の高速通信期間は、室内機21と管理装置11との間のパケット送受信は、何れも高速通信モードで行われる。
一方、期間トリガによって設定された高速通信期間が経過した後は、高速通信モードから低速通信モードに戻るため、S15における、室内機21から管理装置11へのパケット送信、および、管理装置11から室内機21へのパケット応答は、低速通信で行われる。
このように、図6では、高速トリガを活用することで、同じ設備網5上での通信として、低速装置間での低速通信も、低速装置と高速装置との間での低速通信も、高速装置間での低速通信も、高速装置間での高速通信も、それぞれ可能となる。さらに、S14では高速通信期間を指定した高速トリガを用いることで、毎回高速トリガを送信する方法に比べ、効率的に高速通信できる。
図7は、各設備装置間でのマルチキャスト通信のシーケンス図である。
S21のシーケンスでは、管理装置12は、各設備装置(室内機23、管理装置11、室内機21、室内機22)に対して、低速通信により「応答要」のパケットをマルチキャストで送信する(図ではマルチキャストを示す「M」の後に送信パケットを示す「send」)。そして、「応答要」のパケットを受信した各設備装置は、低速通信により個別に管理装置12に応答する(「ack」と図示)。ここで、1台の管理装置12に対して、4つのパケット応答が到着するので、各到着時刻が衝突しないように、各設備装置は別装置とは異なる送信待ち時間(オフセット時間)だけ待ってから応答するとよい。このオフセット時間は、例えば、各設備装置の装置アドレスなどから計算される。
また、S22では、管理装置11は、高速通信期間を指定した高速トリガを、各高速装置(室内機21、室内機22)にマルチキャストで通知する(「M−期間トリガ」と図示)。そして、管理装置11は、各高速装置にマルチキャストで「応答要」のパケットを高速通信する。このパケットを受信した各高速装置は、高速通信期間内に応答パケットを個別に高速通信モードで送信する。
S23では、S22で指定された高速通信期間が終了した後、管理装置11は、各設備装置(左右4台)に応答不要のマルチキャスト送信を行う。
このように、図7では、マルチキャスト通信を高速トリガと併用することで、同じ設備網5上での通信として、低速通信での一斉通信や、高速通信での一斉通信を行うことができる。
(混信発生ケースとその対策方法の基本)
次に、1回トリガの送信後に、高速装置と低速装置の通信が正常に行えない図8Aの時系列グラフ131と、本実施例によりそれを回避した図8Bの時系列グラフ132の対比説明、および、期間トリガの送信後に、高速装置と低速装置の通信が正常に行えない図9Aの時系列グラフ133と、本実施例によりそれを回避した図9Bの時系列グラフ134の対比説明を行う。なお、時系列グラフ131、132、133、134の各グラフは、それぞれ上から順に、低速装置が送信する低速通信のデータ、高速装置が送信する低速通信のデータ、高速装置が送信する高速通信のデータを示す。
図8Aの時系列グラフ131は、低速通信の1回トリガの後に1回の高速通信が行われる例を示している。このとき、低速装置は、低速通信の1回トリガをキャリア検出できるが、それに続く高速通信の高速データをキャリア検出できないため(図8A中では「×」で表示)、1回トリガのキャリア検出後の待機時間である期間T1の経過後に、低速データの送信する場合がある。そして、高速装置からの高速データ送信と、低速装置からの低速データ送信が同時に実施されると、伝送路上で通信の衝突が発生してしまう。低速装置の空きチャネル検出処理は空きチャネル検出部64で行うが、例えば、空きチャネル検出部64が低域通過フィルタを備え、高速通信を検出できない場合に、この不具合が発生する。
一方、図8Bの時系列グラフ132は、図8Aの不具合の回避手法を説明するものであり、低速装置で検出可能な低速検出期間(チャネル使用検出信号)を適時送信することで、高速信号の送信期間中であっても、低速装置がキャリア検出できるようにしたものである。具体的には、高速装置が高速通信のデータを送信する場合、そのデータの先頭と、期間T4(<T1)の経過毎に低速装置向けのチャネル使用検出信号(低速検出期間)を挿入する。この際、高速通信用の送信データはパケット単位で分割され、図8Bの例では、一つの高速データが四分割されている。このようにして挿入された低速検出期間により、低速装置は伝送路が使用中であることを所定間隔でキャリア検出できる。そして、高速装置が最後の低速検出期間を送信完了した後に、期間T1の空きチャネル検出処理を行い、伝送路が使用されていないことを確認した後に、低速通信データを送信するので、伝送路上での通信の衝突を避け、正常に通信を行うことができる。この低速検出期間の挿入タイミングを指示するのが、図3に示した低速検出期間生成指示部78である。
図9Aの時系列グラフ133は、低速通信の期間トリガの後に複数回の高速通信が行われる例を示している。図8Aと同様に、高速装置が高速通信のデータを送信している間、低速装置は空きチャネル検出処理を行っても伝送路上で通信が行われていることをキャリア検出できない場合があり、期間T1の空きチャネル検出処理の後に低速通信のデータを送信してしまい、伝送路上で通信の衝突が発生してしまう。
一方、図9Bの時系列グラフ134は、図9Aの不具合の回避手法を説明するものであり、低速装置でキャリア検出可能な低速検出期間を適時挿入することで、高速信号の送信期間中であっても、低速装置がキャリア検出できるようにしたものである。具体的には、高速装置が高速通信のデータを送信する場合、各高速通信データの先頭に低速装置向けのチャネル使用検出信号(低速検出期間)を挿入する。このようにして挿入された低速検出期間により、低速装置は伝送路が使用中であることを所定間隔でキャリア検出できる。そして、高速装置が最後の低速検出期間を送信完了した後に、期間T1の空きチャネル検出処理を行い、伝送路が使用されていないことを確認した後に、低速通信データを送信するので、伝送路上での通信の衝突を避け、正常に通信を行うことができる。図9Bでも図8Aと同様に、低速検出期間生成指示部78がこの低速検出期間の挿入タイミングを指示する。
なお、図9Aの時系列グラフ133において、低速装置は、低速通信での期間トリガを受信し、所定時間、高速通信が行われることを認識することができれば、伝送路上で通信の衝突が発生しないようにすることができる。しかし、製品寿命の長い設備通信システムにおいて、既に設置済みの低速装置は、新仕様となる“低速通信での期間トリガ”を認識することができない。そのような場合でも、本実施例の方法は有効である。また、図8B、図9Bでは、低速検出期間を高速通信データとして示しているが、この信号を低速通信データとして扱うこととしても良い。
次に、図10を用いて、低速検出期間の具体例と、その有無による、低速装置の空きチャネル検出部64での高速通信データのキャリア検出可否の関係を説明する。
図10において、信号波形141、143は、設備網5上の伝送信号であり、信号波形141は低速検出期間を含まないものを、信号波形143は含むものを示している。また、信号波形142、144は、低速装置の空きチャネル検出部64内部での受信信号であり、信号波形142は信号波形141を低域通過フィルタ処理したものを、信号波形144は信号波形143を低域通過フィルタ処理したものを示している。
ここでは、通信方式の一例として、変復調部62がベースバンド方式、送信部72が調歩同期を使用する場合を説明する。この場合、低速装置の空きチャネル検出部64は、調歩同期通信のStart bit検出により設備網5上のキャリア検出を行う。以下では、HIGHレベルを無信号状態、LOWレベルをStart bitとして説明する。
信号波形141は、高速装置が設備網5上に伝送する高速通信データの信号波形を示している。ベースバンド方式の調歩同期通信であるため、基本的にはHIGH信号とLOW信号が混在した矩形波となる。
信号波形142は、信号波形141を低速装置の空きチャネル検出部64の内部で受信した信号波形を示している。空きチャネル検出部64は一般的に低域通過フィルタを備えており、この低域通過フィルタは、低速通信用の信号を受信するために時定数を大きく設計するので、これを通過した高速通信用の信号は波形が歪み、また、LOW期間が短いため、LOWレベルまで下がり切ることができない場合が出てくる。すなわち、高速装置が高速通信データを送信している間、低速装置は空きチャネル検出処理を行ってもLOWレベルのStart bitを検出できず、伝送路上で通信が行われていることを検出できない場合がある。
そこで、本実施例では、信号波形143に示すように、低速検出期間生成指示部78の指示に基づいて、高速装置が高速通信パケット間に低速検出期間を挿入した時の信号波形を示している。ここでは、低速検出期間として、低速通信用のStart bit、すなわち、高速通信用のクロックで複数回連続したLOW信号を送信するようにしている。これは、低速検出期間生成指示部78の指示を受けた通信部53が行う。
信号波形144は、信号波形143を低速装置の空きチャネル検出部64の内部で受信した信号波形を示している。信号波形143に含まれる、低域通過フィルタの時定数よりも十分に長いLOW信号を受信することで、信号波形142と異なり、信号波形144では、LOWレベルまで下がり切った信号を受信できるようになる。
これにより、低速装置の空きチャネル検出部64は、エッジトリガまたはレベルトリガの何れかの形式で、Start bitを検出することができ、伝送路の使用を正しく検出することができる。よって、旧方式の低速通信にしか対応していない低速装置と、新方式の高速通信に対応した高速装置が同一伝送路上に存在する場合でも、高速装置からの高速通信データの伝送中に低速装置が低速通信データを送信する事態を避けることができ、伝送路上で混信せずに通信を行うことができる。
なお、低速装置が信号波形143を受信した場合、変復調部62、復号化部63、受信部73、受信データ解析部74へと信号が流れるが、低速装置の場合は同期が取れていないため、パリティチェックやCRCにより異常データと解釈され、破棄されるので特に問題とならない。高速装置の場合も、このようなデータを異常値として規定しておけば、パリティチェックやCRCにより異常データと解釈され、破棄される。
また、別の方法として、低速検出期間にて、一時的に通信部53を低速通信モードに切り換えて、低速通信用のクロックで1回のLOW信号を送信することで、低速通信用のStart bitを送信する方法が考えられる。これは、低速検出期間生成指示部78の指示を受けた通信部53が行う。これにより、旧方式の低速通信にしか対応していない通信装置と、新方式の高速通信に対応した通信装置が同一伝送路上に存在する場合でも、伝送路上で混信せずに通信を行うことができる。
また、更に別の方法として、低速検出期間にて、全ビットが0(LOW)の高速通信用の1キャラクタデータを送信する方法が考えられる。これは、低速検出期間生成指示部78の指示を受けた送信データ生成部71が行う。これにより、旧方式の低速通信にしか対応していない通信装置と、新方式の高速通信に対応した通信装置が同一伝送路上に存在する場合でも、伝送路上で混信せずに通信を行うことができる。しかも、通信部53が送信する信号がNRZ信号であることが条件となるが、制御部54のソフト変更のみで対応できるので、通信部53で低速検出用の信号を挿入する上記例よりも簡単に実現できる。
次に、図11〜図14を用いて、実施例2の設備通信システムを説明する。実施例1の設備通信システムでは、通信方式として調歩同期を使用する例を説明したが、本実施例では、通信方式としてAMI符号を使用する例を説明する。なお、実施例1と共通する点は、重複説明を省略する。
実施例2の設備通信システムとして、変復調部62がベースバンド方式、調歩同期で、さらにAMI(Alternate Mark Inversion)符号を使用する通信方式である場合に、低速装置の空きチャネル検出処理にて高速通信データを検出できない場合と、その不具合を解消するための、低速検出期間生成指示部78の指示に基づいた低速検出期間の挿入方法について説明する。この実施例では、低域通過フィルタの影響ではなく、符号変換回路の影響に着目して説明する。簡単のため、本説明では高速信号の1bitが低速装置の受信回路の低域通過フィルタの時定数よりも十分に大きいものとしており、実施例1で説明した波形歪みの影響は排除している。
図11は、本実施例に関する設備通信システムの各設備装置の詳細な構成図である。図3で示した設備装置と同じ機能は同一符号を付し、その説明は省略する。
図11では、図3で示した符号化部61、復号化部63を、それぞれNRZ/RZ変換部201、RZ/NRZ変換部202に特定する。また、通信部53に含まれていた空きチャネル検出部64の代わりに、制御部54が空きチャネル検出部203を備える。
NRZ/RZ変換部201は、送信部72から受信したNRZ方式の信号をRZ方式に変換し、変復調部62に通知する。RZ方式は、ビット毎に0電位に戻るのでタイミングを取りやすいという利点がある。
RZ/NRZ変換部202は、変復調部62から受信したRZ方式の信号をNRZ方式に変換して、受信部73、および、空きチャネル検出部203に通知する。
空きチャネル検出部203は、RZ/NRZ変換部202から受信した信号(受信データ信号504)を監視し、伝送路の空き状況を判定する。具体的には、調歩同期通信のStart bit検出を行う。
次に、図12を用いて、低速装置が低速通信信号を送信してから受信するまでの各測定点での信号波形を説明する。
信号波形151は、低速装置の送信部72が出力する、NRZ方式の送信データ501の波形を示している。
信号波形152は、低速装置のNRZ/RZ変換部201が出力する、RZ方式の送信符号化信号502の波形を示している。NRZ/RZ変換部201では、1bitのLOW信号を時間幅が半分の2bitのLOW-HIGH信号に変換し、1bitのHIGH信号を時間幅が半分の2bitのHIGH-HIGH信号と解釈することでRZ方式の信号を生成する。
信号波形153は、低速装置の変復調部62が設備網5上に伝送する、AMI符号変調された被変調信号波形を示している。
信号波形154は、設備網5から信号波形153を受信した他の低速装置の変復調部62が、信号波形153をAMI符号復調した受信符号化信号503の波形を示している。なお、これは、信号波形152と同形状である。
信号波形155は、設備網5から信号波形153を受信した他の低速装置のRZ/NRZ変換部202が出力する、NRZ方式の信号波形を示している。RZ/NRZ変換部202では、いわゆる波形伸長回路により、RZ方式の信号のLOW信号を固定時間長だけ伸長することで、NRZ方式の信号に変換する。なお、これは、信号波形151と同形状である。この信号が図11の受信データ504であり、受信部73に通知される。また、同じ受信データ504を利用して空きチャネル検出部203は伝送路が使用中か否かを判定する。空きチャネル検出部203では、HIGHからLOWへの立下りを検出することで調歩同期通信のStart bitを認識し、伝送路が使用中であると判断する。そして、信号波形155では、HIGHからLOWへの立下りを検出できるため、伝送路の使用を検出することができる。
これに対し、図13は、高速装置が送信した高速通信の信号を従来の低速装置が受信するまでの各測定点での信号波形の説明図であり、低速装置が伝送路の使用を検出できない状況を説明するものである。
信号波形161は、高速装置の送信部72が出力する、NRZ方式の送信データ501の波形を示している。
信号波形162は、高速装置のNRZ/RZ変換部201が出力する、RZ方式の送信符号化信号502の波形を示している。NRZ/RZ変換部201では、1bitのLOW信号を時間幅が半分の2bitのLOW-HIGH信号に変換し、1bitのHIGH信号を時間幅が半分の2bitのHIGH-HIGH信号と解釈することでRZ方式の信号を生成する。
信号波形163は、高速装置の変復調部62が設備網5上に伝送する、AMI符号変調された信号波形を示している。
信号波形164は、設備網5から信号波形163を受信した低速装置の変復調部62が、信号波形163をAMI符号復調した受信符号化信号503の波形を示している。なお、これは、信号波形162と同形状である。
信号波形165は、設備網5から信号波形163を受信した低速装置のRZ/NRZ変換部202が出力する、NRZ方式の信号波形を示している。RZ/NRZ変換部202では、図12でも説明したように、波形伸長回路で入力された信号波形164のLOW信号を固定時間長だけ伸長するので、LOW信号が頻出するRZ方式の信号波形164を変換したNRZ方式の信号波形165はLOWに張り付いた状態となり、当初の信号波形161は復元されない。この信号波形165が受信データ504として受信部73と空きチャネル検出部203に通知される。
この受信データ504は、元々は高速装置が送信した高速通信の信号であるため、同期が取れていない低速装置では、受信部73、もしくはその後段の受信データ解析部74では、パリティチェックやCRCにより異常データと解釈され、破棄されるので特に問題とならない。一方、空きチャネル検出部203では、HIGHからLOWへの立下りを検出できず、調歩同期通信のStart bitを認識できないため、伝送路が空き状態であると判断する。すなわち、高速装置が高速通信データを送信している間、低速装置は空きチャネル検出処理を行ってもStart bitを検出できず、伝送路上で通信が行われていることを検出できない場合がある。そして、伝送路が空いていると誤解した低速装置がデータ送信を開始すると、図8Aや図9Aに示した、伝送路上でのキャリア衝突が発生する。
図14は、図13で説明した不具合を解消する本実施例の手法を説明するものであり、低速検出期間生成指示部78の指示に基づいて、高速装置が高速通信のパケット間に低速検出期間を挿入した場合に、低速装置が受信するまでの各測定点での信号波形の説明図である。
信号波形171は、高速装置の送信部72が出力する、NRZ方式の送信データ501の波形を示している。ここでは、高速装置は、低速検出期間生成指示部78の指示に基づいて、高速通信のパケット間に低速検出期間信号を挿入している。この例では、低速検出期間として、全ビットが1(HIGH)となる高速通信用の1キャラクタデータを送信するようにしている。これは、低速検出期間生成指示部78の指示を受けた送信データ生成部71が行う。
信号波形172は、高速装置のNRZ/RZ変換部201が出力する、RZ方式の送信符号化信号502の波形を示している。NRZ/RZ変換部201では、1bitのLOW信号を時間幅が半分の2bitのLOW-HIGH信号に変換し、1bitのHIGH信号を時間幅が半分の2bitのHIGH-HIGH信号と解釈することでRZ方式の信号を生成する。
信号波形173は、高速装置の変復調部62が設備網5上に伝送する、AMI符号変調された信号波形を示している。
信号波形174は、設備網5から信号波形173を受信した低速装置の変復調部62が、信号波形173をAMI符号復調した受信符号化信号503の波形を示している。なお、これは、信号波形172と同形状である。
信号波形175は、設備網5から信号波形173を受信した低速装置のRZ/NRZ変換部202が出力する、NRZ方式の信号波形を示している。RZ/NRZ変換部202では、図12、13でも説明したように、波形伸長回路で入力された信号波形174のLOW信号を固定時間長だけ伸長するが、高速装置が送信する信号波形171に波形伸長回路の伸張時間よりも十分に長い低速検出期間(HIGH信号期間)を設けたので、低速装置で復元した信号波形175は、図13の信号波形165と異なり、HIGHに戻ることができる。この信号波形175が受信データ504として受信部73と空きチャネル検出部203に通知される。
この受信データ504は、元々は高速装置が送信した高速通信の信号であるため、同期が取れていない低速装置では、受信部73、もしくはその後段の受信データ解析部74において、パリティチェックやCRCにより異常データと解釈され、破棄されるので特に問題とならない。また、空きチャネル検出部203では、次のキャラクタがHIGHからLOWへの立下りを発生させるため、調歩同期通信のStart bitを認識することができ、伝送路が使用中であると判断する。
これにより、低速装置の空きチャネル検出部203によって、Start bitを検出することができ、伝送路の使用を正しく検出することができる。よって、旧方式の低速通信にしか対応していない低速通信装置と、新方式の高速通信に対応した高速通信装置が同一伝送路上に存在する場合でも、高速通信装置からの高速通信データの伝送中に低速通信装置が低速通信データを送信する事態を避けることができ、伝送路上で混信せずに通信を行うことができる。
なお、高速装置が信号波形173を受信した場合、変復調部62、RZ/NRZ変換部202、受信部73、受信データ解析部74へと信号が流れるが、連続HIGHとなるデータを異常値として規定しておけば、パリティチェックやCRCにより異常データと解釈され、破棄される。
また、別の方法として、低速検出期間生成指示部78の指示を受けた通信部53が、波形伸長回路の伸張時間よりも十分に長い低速検出期間(HIGH信号期間)を挿入する方法が考えられる。
これにより、旧方式の低速通信にしか対応していない通信装置と、新方式の高速通信に対応した通信装置が同一伝送路上に存在する場合でも、伝送路上で混信せずに通信を行うことができる。しかも、高速通信用の1キャラクタデータよりも長い低速検出期間を挿入できるので、より高速な通信にも対応できる。
次に、図15〜図17を用いて、実施例3の設備通信システムを説明する。上述の実施例の設備通信システムでは、通信方式として調歩同期、AMI符号を使用する例を説明したが、本実施例では、通信方式としてFSK変調を使用する例を説明する。なお、上述の実施例と共通する点は、重複説明を省略する。
実施例3の設備通信システムとして、変復調部62がFSK(Frequency Shift Keying)変調方式である場合に、低速装置の空きチャネル検出処理にて高速通信データを検出できない場合と、その不具合を解消するための、低速検出期間生成指示部78の指示に基づいた低速検出期間の挿入方法について説明する。
図15は、本実施例に関する設備通信システムの高速装置の詳細な構成図であり、図16は低速装置の詳細な構成図である。図3で示した設備装置と同じ機能は同一符号を付し、その説明は省略する。
図15に示す高速装置は、通信部の送信側に高周波低域通過フィルタ(LPF:Low Pass Filter)901を備え、通信部の受信側に高周波低域通過フィルタ902を備える。また、図3で示した変復調部62の代わりに、低速FSK変調部211、高速FSK変調部212、低速FSK復調部213、高速FSK復調部214を備える。つまり、高速通信と低速通信の両用のために低速FSK信号が通過できるLPFの構成である。一方、図16に示す低速装置は、通信部の送信側に低周波帯域通過フィルタ(BPF:Band Pass Filter)903、通信部の受信側に低周波帯域通過フィルタ904を備える。また、図3で示した変復調部62の代わりに、低速FSK変調部211、低速FSK復調部213を備える。なお、図15、図16のいずれにおいても、符号化部61と復号化部63を含まない構成にしているが、含む構成であっても良い。
例えば、図15の送信部72は、低速通信時には2.4kbpsの送信データ501を低速FSK変調部211へ送信し、高速通信時には80kbpsで送信データ501を高速FSK変調部212へ送信する。低速FSK変調部211は、送信データ501を、マーク“1”は2.4kHz正弦波に、スペース“0”は3.6kHz正弦波にFSK変調し、高周波低域通過フィルタ901を通過させて、設備網5に送信する。一方、高速FSK変調部212は、送信データ501を、マーク“1”は80kHz正弦波に、スペース“0”は120kHz正弦波にFSK変調し、高周波低域通過フィルタ901を通過させて、設備網5に送信する。このような変調方式はMSK(Minimum Shift Keying)とも呼ばれる。
これに対し、低速FSK復調部213は、設備網5から受信した信号を低速通信用の搬送波周波数でFSK復調し、受信部73に受信データ504を通知する。高速FSK復調部214は、設備網5から受信した信号を高速通信用の搬送波周波数でFSK復調し、受信部73に受信データ504を通知する。
低速FSK変調部211と高速FSK変調部212、低速FSK復調部213と高速FSK復調部214の何れを使用するかは、通信速度切換部77、および、低速検出期間生成指示部78の指示に基づいて、スイッチにより切り替えられる。
続いて、図17を用いて、本実施例の空きチャネル検出部64の動作を説明する。
周波数グラフ181は、本実施例における低速信号と高速信号の周波数スペクトルの位置関係を示している。本実施例では、低速通信時はfc1=2.4kHzを中心にスペクトル分布し、高速通信時はfc2=80kHzを中心にスペクトル分布する。
低速装置の空きチャネル検出部64は、周波数検波回路などを用いて搬送波周波数fc1の信号エネルギーを検出することで伝送路の空き状況を判定する。高速装置の空きチャネル検出部64は、同じく周波数検波回路などを用いて搬送波周波数fc1と搬送波周波数fc2の信号エネルギーを検出することで伝送路の空き状況を判定する。
周波数グラフ182は、高速信号を、高速装置の空きチャネル検出部64で受信した時の周波数スペクトルを示している。高速装置の空きチャネル検出部64は、高周波低域通過フィルタ902により、搬送波周波数fc2の高速信号外の高周波成分を除去して受信する。この場合、高速装置は搬送波周波数fc2の信号を受信するので、空きチャネル検出部64は伝送路が使用中であると判断する。
周波数グラフ183は、低速信号を、高速装置の空きチャネル検出部64で受信した時の周波数スペクトルを示している。高速装置の空きチャネル検出部64は、高周波低域通過フィルタ902により、搬送波周波数fc2の高速信号外の高周波成分を除去して受信する。この場合、高速装置は搬送波周波数fc1の信号を受信するので、空きチャネル検出部64は伝送路が使用中であると判断する。
周波数グラフ184は、低速信号を、低速装置の空きチャネル検出部64で受信した時の周波数スペクトルを示している。低速装置の空きチャネル検出部64は、低周波帯域通過フィルタ904により、搬送波周波数fc1の低速信号外の高周波成分及び低周波成分を除去して受信する。この場合、低速装置は搬送波周波数fc1の信号を受信するので、空きチャネル検出部64は伝送路が使用中であると判断する。
周波数グラフ185は、高速信号を、低速装置の空きチャネル検出部64で受信した時の周波数スペクトルを示している。低速装置の空きチャネル検出部64は、低周波帯域通過フィルタ904により、搬送波周波数fc1の低速信号外の高周波成分及び低周波成分を除去して受信する。この場合、低速装置は搬送波周波数fc1の信号エネルギーを検出できないので、空きチャネル検出部64は伝送路が空き状態であると判断する。すなわち、高速装置が高速通信のデータを送信している間、低速装置は空きチャネル検出処理を行っても搬送波周波数fc1の信号エネルギーを検出できず、伝送路上で通信が行われていることを検出できない場合が出てくることになる。すると、低速装置は、伝送路上で高速通信が行われている間に、低速信号を送信する場合が出てくる。その場合、本来、高速FSK信号のみを受信したい高速装置は、周波数グラフ183に示したように、低速装置が誤って送信した低速FSK信号の干渉を受ける。
そのため、本実施例では、図5A、図5Bで説明したように、低速通信と高速通信を時分割で切り換えることで両者の干渉を防ぐ。時分割切換を確実に行うために、高速装置は、低速検出期間生成指示部78の指示に基づいて、高速通信中に低速検出期間を挿入する。具体的には、低速検出期間にて、搬送波周波数fc1のFSK信号を送信する。低速装置の空きチャネル検出部64で検出可能な最短時間分解能よりも長い信号を送信する。これは、低速検出期間生成指示部78の指示を受けた通信部53が行う。
これにより、低速装置の空きチャネル検出処理によって、搬送波周波数fc1の信号エネルギーを検出することができ、伝送路が使用中であることを正しく検出することができる。よって、旧方式の低速通信にしか対応していない通信装置と、新方式の高速通信に対応した通信装置が同一伝送路上に存在する場合でも、伝送路上で混信せずに通信を行うことができる。
なお、そのような信号を低速装置が受信した場合、低速FSK復調部213、受信部73、受信データ解析部74へと信号が流れるが、搬送波に載せるデータを空にしたり、異常値として規定しておいたりすれば、パリティチェックやCRCにより異常データと解釈され、破棄される。
高速装置が受信した場合、高速FSK復調部214で復調できず、異常信号として破棄されるので特に問題とならない。
(低速検出期間生成指示部78の処理フローチャート)
図18〜図24を用いて、実施例1〜3における設備装置の送受信処理を説明する。
図18は、低速装置の送受信処理を示すフローチャートである。以下では、低速通信で送信されるパケットを「低速パケット」とし、高速通信で送信されるパケットを「高速パケット」とする。
先ず、S101では、低速装置は、低速パケットの受信を待ち、S102では、低速装置は、低速パケットの受信があるか否かを判定する。S102でYesならS103に進み、NoならS111に進む。
S103では、低速装置は、低速パケットを受信し、S104では、低速装置は、受信したパケットが正常であるか否かを判定する。S104でYesならS105に進み、NoならS101に戻る。
パケットが正常であった場合、S105では、低速装置は、受信したパケットが自身宛であるか否かを判定する。受信パケットの送信先アドレス欄86に、自身のアドレスまたは自身が属するマルチキャスト宛先があるときには、受信したパケットは自身宛である。S105でYesならS106に進み、NoならS101に戻る。
S106では、低速装置は、受信パケットに基づいた処理を行った後、受信パケットへの応答が必要か否かを判定する。S106でYesならS107に進み、NoならS101に戻る。
S107では、低速装置は、パケット応答用のackデータを作成し、S113にて、作成したackデータを送信処理する。
一方、S102で低速受信がなかったとき、S111では、低速装置は、自身から送信するパケットが存在するか否かを判定する。S111でYesならS112に進み、NoならS101に戻る。
S112では、低速装置は、これから送信するパケット(送信パケット)の作成処理(詳細は図19)を行う。
S113では、低速装置は、S107で用意したackデータ、または、S112で新規作成されたパケットについて、期間T3の待ち時間の後に、パケット送信処理(詳細は図20)を行う。
図19は、高速通信および低速通信時の送信パケット作成処理S112等の詳細を示すフローチャートである。ここでは、動作主体をパケット送信元の設備機器として説明する。
先ず、S201では、設備機器は、送信パケットのヘッダを作成するか否かを判定する。S201でYesならS202に進み、NoならS208に進む。なお、図6等に示したack等はヘッダを持たないデータであるため、これらを作成するときには、S208に進む。
S202では、設備機器は、送信パケットの宛先は1台であるか否か(複数台か)を判定する。S202でYesならS203に進み、NoならS204に進む。S203では、設備機器は、ユニキャストとして、送信先となる1台分のアドレスを送信パケットのヘッダ欄81に記載する。一方、S204では、設備機器は、マルチキャストとして、複数の送信先を示すアドレスを送信パケットのヘッダ欄81に記載する。
その後、S205では、設備機器は、送信パケットへの応答が必要であるか否かを判定する。S205でYesならS206に進み、NoならS207に進む。S206では、設備機器は、送信パケットの通信種別欄87に応答要を記載する。一方、S207では、設備機器は、送信パケットの通信種別欄87に応答要を記載しない。なお、通信種別欄87には、図4で列挙したその他必要な種別値を記載してもよい。
その後、S208では、設備機器は、送信パケットのデータを作成するか否かを判定する。この分岐は、ヘッダ欄81だけを先行して送信する場合は、Noとなる。S208でYesならS209に進み、NoならS210に進む。S209では、設備機器は、送信パケットのデータ欄82とそのデータ長欄88とを作成する。
最後に、S210では、高速通信時はデータ分割を行う。低速通信時は本ステップを省略する。
図24は、S210で実行される、データ分割方法を説明する図である。301はデータ構造の例を示しており、データ列311は、S209で作成した元のデータ部であるデータ欄82を表す。データ列312は、データ列311(データ欄82)を分割した状態を表す。低速通信の最大伝送速度が既知であれば、期間T4で送信可能な最大データ長が算出できるため、その最大データ長以下になるようにデータを分割する。なお、ここでは、データ欄82を分割1〜分割4に四分割した例を示している。
また、データ列313は、各々の分割データをパケット化した送信パケットP1〜P4を表す。各パケットのヘッダ欄81、パリティ欄83は図4で示したものと同じである。ここでは、さらに分割フラグ欄321を付加し、ヘッダ欄81と合わせて新しい分割パケット用の拡張ヘッダとして使用する例を示している。
表4に示すテーブル302は、分割フラグ欄321の記載例を示す。例えば、分割が行われていない場合、および、分割された最終データを含むパケットの場合「0x00」が記載される。また、分割されたデータで後続データがあるデータを含むパケットの場合「0x01」が記載される。
次に説明する図20は、高速通信および低速通信時のパケット送信処理の詳細を示すフローチャートである。
先ず、S221では、設備機器は、図20のフローチャートの呼出元から指定された期間(T1,T2,T3のいずれか)を待機し、その期間中にキャリア検出しなかったときに、設備網5が空いており通信可能と判断する。
S222では、高速通信時は低速検出期間の挿入処理を行う。本処理の具体例は図10等で既に述べたとおりであり、所定のデータを送信したり、所定の無信号期間を設けたりする。なお、低速通信時は本ステップを省略する。
S223では、設備機器は、送信パケット(データ)を設備網5に送信する。ここで、高速通信にするか、低速通信にするかは、図20のフローチャートの呼出元から指定されたとおりである。
S224では、設備機器は、S223のデータが正常に送信できたか否かを判定する。S224でYesならS225に進み、NoならS221に戻る。なお、データの再送信を複数回繰り返しても正常に送信できない場合は異常状態として、再送信を終了する。
S225として、分割した時の残りのパケットのような未送信データがあればS221に戻り、なければ終了する。
次に説明する図21は、高速装置の受信処理を示すフローチャートである。
先ず、S301では、高速装置は、低速パケットの受信を待ち、S302では、高速装置は、低速パケットを受信したか否かを判定する。S302でYesならS303に進み、Noなら端子B1(図22のS401)に進む。
S303では、高速装置は、低速パケットを受信する。この低速パケットは、例えば、高速通信の準備をするための高速トリガである。
S304では、高速装置は、受信したパケットが正常であるか否かを判定する。S304でYesならS305に進み、NoならS301へ戻る。パケットが正常であった場合、S305では、高速装置は、受信したパケットに高速トリガが指定されているか否かを判定する。S305でYesならS306に進み、Noなら端子A(図18のS105)に進む。なお、端子Aから処理を実行した後にS101に戻るときには、そのS101ではなく、S301へと戻る。
S306では、高速装置は、受信した高速トリガに高速通信の期間指定があるか否かを判定する。S306でYesならS307に進み、NoならS311に進む。S307では、高速装置は、高速通信期間(または高速送受信回数)を計測する高速通信カウンタを開始する。このカウンタは、図21などのフローチャートの本処理とは別に常時監視を行い、指定された範囲内で高速通信できるようにカウンタを更新する。
次に、S311では、高速装置は、高速パケットを受信し、S312では、高速装置は、受信した高速パケットが正常であるか否かを判定する。S312でYesならS313に進み、NoならS320に進む。パケットが正常であった場合、S313では、高速装置は、受信した高速パケットが自身宛であるか否かを判定する。S313でYesならS314に進み、NoならS320に進む。
S314では、高速装置は、受信パケットに基づいた処理を行った後、受信パケットへの応答が必要であるか否かを判定する。S314でYesならS315に進み、NoならS320に進む。
S315では、高速装置は、パケット応答用のackデータを作成し、S316にて、高速装置は、所定の待ち時間(低速通信中なら期間T1、高速通信中なら期間T2)の経過を待って、「応答要」の応答パケットを送信する。
その後、S320では、高速装置は、S307の高速通信カウンタが現在、有効期間(または有効回数)であるか否かを判定する。S320でYesならS321に進み、NoならS301に戻る。S321では、高速装置は、先に受信した高速パケットに続く高速パケットの受信を待ち、S322では、高速装置は、高速パケットの受信があるか否かを判定する。S322でYesならS323に進み、Noなら端子B2(図23のS421)に進む。
S323で、高速装置は、高速パケットを受信すると、S324では、高速装置は、受信したパケットが正常であるか否かを判定する。S324でYesなら端子C(S306)に戻り、NoならS320に戻る。これらの処理を高速期間カウンタが有効である間、繰り返すことで、全ての高速パケットを受信し、必要なデータを復元することができる。
次に説明する図22は、高速装置の送信処理を複数回連続して行うときの、初回分の送信処理を示すフローチャートである。
先ず、S401では、高速装置は、自身から送信するパケットが存在するか否かを判定する。S401でYesならS402に進み、Noなら端子D(図21のS301)に進む。
S402では、高速装置は、高速通信を行うか否かを判定する。S402でYesならS403に進み、Noなら端子F(図18のS112)に進む。なお、図18のフローにおいてS101に戻る代わりに、S301に戻る。高速通信を行う場合、S403では、高速装置は、送信パケットの通信種別欄87に高速トリガを設定する。
S404では、高速装置は、高速通信期間の指定を行うか否かを判定する。S404でYesならS405に進み、NoならS406に進む。S405では、高速装置は、送信パケットのデータ長欄88に高速通信期間(または高速通信回数)を設定する。また、S406では、高速装置は、高速トリガのデータ欄82を含む送信パケットを作成する(詳細は図19)。
次のS407では、高速装置は、待ち時間T3だけ待った後、S406で作成されたパケットを低速通信で送信する(詳細は図20)。S411では、高速装置は、S307と同様に、高速通信カウンタを開始する。なお、高速通信期間を指定しない場合は、本ステップを省略する。最後のS412では、高速装置は、高速通信によりパケットを送信する(詳細は図20)。そして、S412の次に端子E(図21のS320)に進む。
次に説明する図23は、高速装置の送信処理の2回分以降を示すフローチャートである。
先ず、S421では、高速装置は、自身から送信する2回分以降のパケットが存在するか否かを判定する。S421でYesならS422に進み、Noなら端子E(図21のS320)に進む。
S422では、高速装置は、高速通信を行うか否かを判定する。S422でYesならS424に進み、NoならS423に進む。高速通信を行わない場合、S423では、高速装置は、高速通信カウンタ終了を待ってから、端子F(図18のS112)に進む。なお、図18のフローにおいてS101に戻る代わりに、S301に戻る。一方、高速通信を行う場合、S424では、高速装置は、現在の高速通信期間を見直すか否かを判定する。S424でYesならS425に進み、NoならS426に進む。
高速通信期間を見直す場合、S425では、高速装置は、送信パケットのデータ長欄88に高速通信期間を再指定する。これにより、高速通信期間が延長される。
その後、S426では、高速装置は、通信データを含めた送信パケットを作成する(詳細は図19)。そして、S427では、高速装置は、待ち時間T2だけ待ってから高速通信でパケットを送信する(詳細は図20)。最後に、S431では、高速装置は、S411と同様に、再設定した高速通信カウンタを開始し、端子E(図21のS320)に進む。
以上説明した本実施例の設備通信システムでは、低速装置と高速装置とが混在する設備網5であっても、高速装置が低速通信検出期間を挿入することで、低速装置が高速通信中であることを検出でき、低速通信と高速通信とを同じ設備網5で使い分けることができるので、システムの可用性を高めることができる。
なお、本発明は前記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、前記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。
また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。
また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。また、上記の各構成、機能、処理部、処理手段などは、それらの一部または全部を、例えば集積回路で設計するなどによりハードウェアで実現してもよい。
また、前記の各構成、機能などは、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し、実行することによりソフトウェアで実現してもよい。
各機能を実現するプログラム、テーブル、ファイルなどの情報は、メモリや、ハードディスク、SSD(Solid State Drive)などの記録装置、または、IC(Integrated Circuit)カード、SDカード、DVD(Digital Versatile Disc)などの記録媒体に置くことができる。
また、制御線や情報線は説明上必要と考えられるものを示しており、製品上必ずしも全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際にはほとんど全ての構成が相互に接続されていると考えてもよい。
さらに、各装置を繋ぐ通信手段は、無線LAN、有線LAN、その他の通信手段に変更してもよい。