JP2019001699A - 球状ガラス - Google Patents
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Abstract
【課題】機械的強度が高いと共に、長期間使用しても、表面剥離や表面傷が発生し難い球状ガラスを創案する。【解決手段】本発明の球状ガラスは、イオン交換による表面圧縮応力層を有するアルカリアルミノシリケートガラスからなり、ガラス組成中のLi2Oの含有量が0〜0.1質量%であり、且つILi surface/ILi 1/100 DOLの値が100未満であることを特徴とする。但し、ILi surfaceは、最表面から応力深さDOLの1/100までの深さ領域におけるLi発光強度の最大値であり、ILi 1/100 DOLは、応力深さDOLの1/100よりも深い領域におけるサチュレートした時点でのLi発光強度である。【選択図】なし
Description
本発明は、イオン交換による表面圧縮応力層を有する球状ガラスに関し、特に最表面付近のLi含有量が少ない球状ガラスに関する。
絶縁性が要求される転動体には、窒化珪素が広く使用されている。窒化珪素製の転動体は、絶縁性が高く、高強度であるというメリットを有する。その一方で、窒化珪素製の転動体は、密度が高く、球状に加工し難いというデメリットを有する(特許文献1参照)。
一方、ガラスは、絶縁材料であり、更に成形性や加工性が良好である。しかし、ガラスは、脆性材料であるため、軸受装置等に組み込まれる転動体に使用する場合に、高速回転、高摩擦、高荷重等の過酷な条件で破損する虞がある。
球状ガラスをイオン交換処理すると、表面圧縮応力層が形成されて、機械的強度を高めることができる(特許文献2参照)。
しかし、球状ガラスをイオン交換処理して、機械的強度を高めた場合でも、転動体として長期間使用した時に、表面剥離や表面傷が発生して、破損確率が上昇することがある。
本発明は、上記事情に鑑みなされたものであり、その技術的課題は、機械的強度が高いと共に、長期間使用しても、表面剥離や表面傷が発生し難い球状ガラスを創案することである。
本発明者等は、種々の検討を行った結果、以下の知見を得た。すなわち、イオン交換による表面圧縮応力層にLiが混入すると、最表面のKイオンが表面から抜け、圧縮応力値CSが低下し、球状ガラスの硬度が低下する。これにより、軸受装置等に組み込んだ際に、表面剥離が発生し、転動体の破損確率が高くなる。そこで、イオン交換処理、加工処理及び駆動時に、球状ガラスとLiを含む物質(例えば、イオン交換溶液、洗剤、潤滑物質等)を接触させないようにすると、表面圧縮応力層にLiが混入せず、上記不具合を解消することができる。
本発明の球状ガラスは、イオン交換による表面圧縮応力層を有するアルカリアルミノシリケートガラスからなり、ガラス組成中のLi2Oの含有量が0〜0.1質量%であり、且つILi surface/ILi 1/100 DOLの値が100未満であることを特徴とする。但し、ILi surfaceは、最表面から応力深さDOLの1/100までの深さ領域におけるLi発光強度の最大値であり、ILi 1/100 DOLは、応力深さDOLの1/100よりも深い領域におけるサチュレートした時点でのLi発光強度である。なお、「Li発光強度(ILi surface、ILi 1/100 DOL)」は、GD―OES(Glow discharge optical emission spectrometry)を用いて、Ar銃で深さ方向にエッチングしながら測定した時の値である。「ILi surface/ILi 1/100 DOLの値」は、ILi surfaceをILi 1/100 DOLで割った値である。
また、本発明の球状ガラスは、直径の寸法公差が0.01%以内であることが好ましい。ここで、「直径の寸法公差」は、少なくとも10か所で測定した直径の平均値に対する寸法公差であり、例えば、周知の接触式測長機により測定可能である。
また、本発明の球状ガラスは、表面が研磨面であることが好ましい。
また、本発明の球状ガラスは、ガラス組成として、質量%で、SiO2 45〜75%、Al2O3 10〜30%、Li2O 0〜0.1%、Na2O 5〜25%を含有することが好ましい。
また、本発明の球状ガラスは、表面圧縮応力層の圧縮応力値CSが300MPa以上、且つ応力深さDOLが30μm以上であることが好ましい。ここで、「圧縮応力値CS」と「応力深さDOL」は以下のように測定する。球状ガラスと同じ組成、同じ熱履歴を有するガラス板を用意する。次に、球状ガラスと同じ条件で、ガラス板をイオン交換処理して、球状ガラスと同じ表面組成プロファイルを有するガラス板を得る。表面組成プロファイルは、SEM−EDX(例えば、日立ハイテクノロジーズ製S4300−SE、堀場製作所製EX−250)によるZAF法のスタンダードレス定量分析を用いることで測定することができる。なお、同じ組成であるガラス同士について、周知のアルキメデス法や重液法で測定した密度を同一とすることで熱履歴を揃えることができる。続いて、表面応力計(例えば、株式会社折原製作所製FSM−6000)によりガラス板の断面を観察し、観察される干渉縞の本数とその間隔から、ガラス板の表面応力層の圧縮応力値CSp、応力深さDOLpを算出する。最後に、得られたCSpを球状ガラスのCS、DOLpを球状ガラスのDOLとして評価する。
また、本発明の球状ガラスは、転動体に用いることが好ましい。
本発明の球状ガラスにおいて、ILi surface/ILi 1/100 DOLの値は100未満であり、好ましくは60未満、20未満、10未満、5未満、3未満、1.5未満、特に1未満である。ILi surface/ILi 1/100 DOLの値が大き過ぎると、最表面のKイオンが表面から抜け、圧縮応力値CSが低下し、球状ガラスの硬度が低下し易くなり、結果として、軸受装置等に組み込んだ際に、表面剥離や表面傷が発生し、転動体の破損確率が高くなる。
ILi surface/ILi 1/100 DOLの値を低減する方法としては、上記の通り、Liを含まないイオン交換溶液、洗剤、潤滑物質等を用いることが有効である。洗剤、潤滑物質等からのLiの混入に対しては、球状ガラスの表面に対して、Liの混入を防ぐバリア膜を形成することも好ましい。この場合、バリア膜は、イオン交換処理後に形成することが好ましく、イオン交換前にバリア膜を形成する場合、イオン交換処理の直前にバリア膜を除去することが好ましい。
本発明の球状ガラスにおいて、ガラス組成中のLi2Oの含有量は0〜0.1質量%であり、好ましくは0〜0.1質量%未満、0〜0.05質量%未満、特に0〜0.01質量%未満である。Li2Oの含有量が多過ぎると、イオン交換処理時にイオン交換溶液中にLiが溶出して、イオン交換溶液を劣化させると共に、表面圧縮応力層中にLiが混入し易くなる。
本発明の球状ガラスは、アルカリアルミノシリケートガラスであり、アルカリアルミノシリケートガラスの中でも、ガラス組成として、質量%で、SiO2 45〜75%、Al2O3 10〜30%、Li2O 0〜0.1%、Na2O 5〜25%を含有することが好ましい。上記のように各成分の含有範囲を限定した理由を以下に説明する。なお、各成分の含有範囲の説明において、以下の%表示は、特段の断りがない限り、質量%を指す。
SiO2は、ガラスのネットワークを形成する成分であり、その含有量は、好ましくは45〜75%、45〜70%、45〜65%、45〜63%、特に48〜61%である。SiO2の含有量が多過ぎると、溶融性、成形性、加工性、熱膨張係数が低下し易くなる。一方、SiO2の含有量が少な過ぎると、ガラス化し難くなり、また熱膨張係数が不当に高くなるため、耐熱衝撃性が低下し易くなる。
Al2O3は、イオン交換性能、歪点、ヤング率を高める成分である。しかし、Al2O3の含有量が多過ぎると、失透結晶が析出し易くなって、所望の形状に成形し難くなる。また溶融性、成形性、加工性、熱膨張係数が低下し易くなる。よって、Al2O3の好適な上限範囲は30%以下、28%以下、24%以下、23%以下、22%以下、21.5%以下、特に21%以下であり、好適な下限範囲は10%以上、12%以上、13%以上、15%以上、17%以上、特に18%以上である。
Li2Oの含有量や効果は、既述の通りである。
Na2Oは、イオン交換成分であると共に、溶融性や成形性を高める成分である。また耐失透性を改善する成分でもある。しかし、Na2Oの含有量が多過ぎると、体積電気抵抗率が低くなったり、熱膨張係数が不当に高くなるため、耐熱衝撃性が低下し易くなる。またガラス組成のバランスが崩れて、かえって耐失透性が低下する虞がある。よって、Na2Oの含有量は、好ましくは5〜25%、10〜25%、11〜22%、12〜20%、13〜19%、特に14〜18%である。
上記成分以外にも、例えば、以下の成分を導入してもよい。
B2O3は、液相温度、高温粘度、密度を低下させる成分であると共に、イオン交換性能、特に圧縮応力値CSを高める成分であるが、その含有量が多過ぎると、イオン交換によって表面にヤケが発生したり、耐水性、液相粘度、応力深さDOLが低下する虞がある。よって、B2O3の含有量は、好ましくは0〜6%、0〜4%、0.1〜3%、0.1〜2%、特に0.5〜1%未満である。
K2Oは、イオン交換を促進する成分であり、特にアルカリ金属酸化物の中では応力深さDOLを増大させる成分である。また高温粘度を低下させて、溶融性や成形性を高めたり、耐失透性を改善する成分である。しかし、K2Oの含有量が多過ぎると、熱膨張係数が不当に高くなり、耐熱衝撃性が低下したり、周辺材料と熱膨張係数が整合し難くなる。更に歪点が低下し過ぎたり、ガラス組成のバランスが崩れて、かえって耐失透性が低下する虞がある。よって、K2Oの含有量は、好ましくは0〜10%、0.1〜9%、1〜8%、2〜7%、特に4〜6%である。
モル%比K2O/Na2Oは、好ましくは0〜1、0〜0.8、0.05〜0.7、0.1〜0.5、0.15〜0.4、0.15〜0.3、特に0.15〜0.25である。このようにすれば、短時間で圧縮応力値CSと応力深さDOLが大きくなり易い。また、混合アルカリ効果によって比較的高い電気抵抗率を得ることができる。なお、「K2O/Na2O」は、K2Oの含有量をNa2Oの含有量で割った値である。
P2O5は、イオン交換性能を高める成分であり、特に応力深さDOLを増大させる成分である。一方、P2O5の含有量が多過ぎると、ガラスが分相したり、耐水性や耐失透性が低下し易くなる。よって、P2O5の含有量は、好ましくは0〜10%、0.1〜9%、1〜8%以下、2〜7%以下、特に3〜6%である。
MgO、CaO、SrO及びBaOの合量は、好ましくは0〜15%、0〜9%、0.5〜6%、特に1〜5%である。MgO、CaO、SrO及びBaOの合量が多過ぎると、密度や熱膨張係数が不当に高くなったり、耐失透性やイオン交換性能が低下し易くなる。
MgOとCaOは、高温粘度を低下させて、溶融性や成形性を高めたり、歪点やヤング率を高める成分であり、アルカリ土類金属酸化物の中では、イオン交換性能を高める効果が大きい成分である。しかし、MgOとCaOの含有量が多くなると、密度や熱膨張係数が高くなったり、ガラスが失透し易くなる。よって、MgOの含有量は、好ましくは10%以下、8%以下、6%以下、0.5〜5%、特に1〜4%である。CaOの含有量は、好ましくは6%以下、4%以下、2%以下、1%未満、特に0.5%未満である。
SrOとBaOは、高温粘度を低下させて、溶融性や成形性を高めたり、歪点やヤング率を高める成分である。しかし、SrOとBaOの含有量が多くなると、密度や熱膨張係数が高くなったり、イオン交換性能が低下し易くなる。よって、SrOの含有量は、好ましくは3%以下、2%以下、1%以下、0.5%以下、特に0.1%未満である。BaOの含有量は、好ましくは3%以下、2%以下、1%以下、0.5%以下、特に0.1%未満である。
質量比(MgO、CaO、SrO及びBaOの合量)/(Na2OとK2Oの合量)は、耐失透性を高める観点から、好ましくは0.5以下、0.4以下、特に0.3以下である。なお、「(MgO、CaO、SrO及びBaOの合量)/(Na2OとK2Oの合量)」は、MgO、CaO、SrO及びBaOの合量をNa2OとK2Oの合量で割った値である。
ZnOは、イオン交換性能を高める成分である。また低温粘性を低下させずに、高温粘性を低下させる成分である。しかし、P2O5の存在下でZnOを増量すると、ガラスが分相したり、失透し易くなる。よって、ZnOの含有量は、好ましくは6%以下、4%以下、1%以下、0.1%以下、特に0.01%以下である。
ZrO2は、イオン交換性能、ヤング率、歪点を高める成分であり、高温粘性を低下させる成分である。しかし、ZrO2の含有量が多くなると、耐失透性が低下し易くなる。よって、ZrO2の含有量は、好ましくは0〜10%、0〜5%、0〜3%、0〜1%未満、0〜0.4%、特に0〜0.1%未満である。
TiO2は、イオン交換性能を高める成分であり、高温粘性を低下させる成分である。しかし、TiO2の含有量が多くなると、ガラスが着色したり、失透し易くなる。よって、TiO2の含有量は、好ましくは0〜4%、0〜1%未満、0〜0.1%未満、特に0〜0.01%未満である。
SnO2は、イオン交換性能、特に圧縮応力値CSを高める成分である。しかし、SnO2の含有量が多くなると、SnO2に起因する失透が発生したり、ガラスが着色し易くなる。よって、SnO2の含有量は、好ましくは0〜3%、0.01〜2%、0.05〜1%、特に0.1〜0.5%である。
清澄剤として、As2O3、Sb2O3、CeO2、F、SO3、Clの群から選択された一種又は二種以上を含有させてもよい。但し、環境に対する配慮から、As2O3とSb2O3を添加しないことが好ましく、As2O3とSb2O3の含有量は、それぞれ0.1%未満、特に0.01%未満が好ましい。CeO2の含有量は、透過率を高めるために、0.1%未満、特に0.01%未満が好ましい。Fの含有量は、低温粘性の低下による応力緩和を抑制するため、0.1%未満、特に0.01%未満が好ましい。
CoO、NiO等の遷移金属酸化物は、ガラスを着色させる成分である。よって遷移金属酸化物の合量は、好ましくは0.5%以下、0.1%以下、特に0.05%以下である。
Nb2O5、La2O3等の希土類酸化物は、ヤング率を高める成分である。しかし、希土類酸化物の含有量が多くなると、原料コストが高騰し、耐失透性が低下し易くなる。よって、希土類酸化物の合量は、好ましくは3%以下、2%以下、1%未満、0.5%以下、特に0.1%以下である。
PbOとBi2O3の含有量は、環境に対する配慮から、それぞれ0.1%未満が好ましい。
本発明の球状ガラスは、以下のガラス特性を有することが好ましい。
密度は、好ましくは2.60g/cm3以下、2.55g/cm3以下、2.50g/cm3以下、2.49g/cm3以下、特に2.48g/cm3以下である。密度が低い程、転動体の軽量化を図ることができる。なお、「密度」とは、周知のアルキメデス法で測定した値を指す。
30〜380℃の温度範囲における熱膨張係数は、好ましくは70×10−7〜110×10−7/℃、75×10−7〜110×10−7/℃、80×10−7〜110×10−7/℃、特に85×10−7〜110×10−7/℃である。上記のように熱膨張係数を規制すれば、高速回転時に発生する熱により周辺の金属部材が膨張したとしても、適正に駆動させることができる。ここで、「熱膨張係数」とは、30〜380℃の温度範囲において、ディラトメーターで測定した平均値である。
歪点は、好ましくは520℃以上、550℃以上、560℃以上、特に570〜750℃である。歪点が高い程、耐熱性が向上する。また歪点が高いと、イオン交換処理時に応力緩和が生じ難くなるため、高い圧縮応力値CSを確保し易くなる。
高温粘度102.5dPa・sに相当する温度は、好ましくは1650℃以下、1600℃以下、1580℃以下、1550℃以下、1540℃以下、特に1530℃以下である。高温粘度102.5dPa・sに相当する温度が低い程、低温でガラスを溶融することができる。よって、高温粘度102.5dPa・sに相当する温度が低い程、溶融窯等のガラス製造設備への負担が小さくなると共に、球状ガラスの泡品位を高めることができる。
液相温度は、好ましくは1200℃以下、1150℃以下、1130℃以下、1110℃以下、1090℃以下、特に1070℃以下である。液相温度が高過ぎると、球状に成形し難くなる。なお、「液相温度」は、標準篩30メッシュ(篩目開き500μm)を通過し、50メッシュ(篩目開き300μm)に残るガラス粉末を白金ボートに入れ、温度勾配炉中に24時間保持して、結晶の析出する温度を測定した値を指す。
液相粘度は、好ましくは104.0dPa・s以上、104.3dPa・s以上、104.5dPa・s以上、105.0dPa・s以上、特に105.4dPa・s以上である。液相粘度が低過ぎると、球状に成形し難くなる。なお、液相温度が1200℃以下であり、且つ液相粘度が104.0dPa・s以上であれば、マーブル成形法等で球状に成形可能である。なお、「液相粘度」は、液相温度におけるガラスの粘度を白金球引き上げ法で測定した値を指す。
150℃における体積電気抵抗率は、好ましくは105.0Ω・cm以上、105.5Ω・cm以上、106.0Ω・cm以上、106.5Ω・cm以上、107.0Ω・cm以上、107.5Ω・cm以上、108.0Ω・cm以上、108.5Ω・cm以上、108.7Ω・cm以上、109.0Ω・cm以上、特に109.5Ω・cm以上である。体積電気抵抗率が低いと、絶縁性が低下し易くなる。
本発明の球状ガラスにおいて、直径の寸法公差は、好ましくは0.1%以内であり、0.05%以内、0.02%以内、0.01%以内、0.005%以内、特に0.002%以内である。また、直径の寸法公差は、好ましくは10μm以内、5μm以内、3μm以内、2μm以内、1μm以内、0.5μm以内、特に0.1μm以内である。直径の寸法公差が大き過ぎると、駆動動作等が不安定になり、転動体として使用困難になる。
直径は、好ましくは100mm以下、80mm以下、50mm以下、30mm以下、20mm以下、特に10mm以下であり、また好ましくは1mm以上、2mm以上、4mm以上、特に5mm以上である。このようにすれば、軸受装置等に組み込まれる転動体に好適になる。
本発明の球状ガラスは、表面が研磨面であることが好ましい。表面を研磨面とすると、直径の寸法公差を低減し易くなる。研磨面の表面粗さRaは、好ましくは10nm以下、7nm以下、特に5nm以下である。研磨面の表面粗さRaが大き過ぎると、高速の回転、高摩擦、高荷重等の過酷な条件で、転動体が破損し易くなる。なお、球状ガラスの表面を研磨する方法として、種々の方法を採択することができるが、直径の寸法公差を低減する上で、球状ガラスを回動又は揺動させながら、研磨することが好ましい。
本発明の球状ガラスは、イオン交換による表面圧縮応力層を有し、その圧縮応力値CSは、好ましくは300MPa以上、500MPa以上、特に700MPa以上である。圧縮応力値CSが大きい程、球状ガラスの機械的強度が高くなる。しかし、圧縮応力値CSが大き過ぎると、内在する引っ張り応力値CTが極端に高くなる虞がある。よって、表面圧縮応力層の圧縮応力値CSは、好ましくは2500MPa以下である。なお、イオン交換時間を短くする、或いはイオン交換温度(イオン交換溶液の温度)を下げると、圧縮応力値CSを大きくすることができる。
応力深さDOLは、好ましくは10μm以上、30μm以上、50μm以上、特に70μm以上である。応力深さDOLが大きい程、高回転時の摩耗や異物により、表面に深い傷が付いた場合に、球状ガラスが割れ難くなる。一方、応力深さDOLが大き過ぎると、内在する引っ張り応力値CTが極端に高くなる虞がある。よって、応力深さDOLは、好ましくは500μm以下、300μm以下、特に200μm以下である。なお、イオン交換時間を長くする、或いはイオン交換温度を上げると、応力深さDOLを大きくすることができる。
本発明の球状ガラスにおいて、内部の引っ張り応力値CTは、好ましくは200MPa以下、150MPa以下、100MPa以下、特に50MPa以下である。内部の引っ張り応力値CTが小さい程、内部の欠陥によって球状ガラスが破損し難くなるが、内部の引っ張り応力値CTが極端に小さくなると、圧縮応力値CSや応力深さDOLが低下して、球状ガラスの機械的強度が低下してしまう。よって、内部の引っ張り応力値CTは、好ましくは1MPa以上、10MPa以上、特に15MPa以上である。なお、「内部の引っ張り応力値CT」は、下記の数式1により算出した値を指す。
[数1]
CT = CS×DOL/(t×1000−2×DOL)
CT:内部の引っ張り応力値(MPa)
t:球状ガラスの直径(mm)
CS:圧縮応力値(MPa)
DOL:応力深さ(μm)
CT = CS×DOL/(t×1000−2×DOL)
CT:内部の引っ張り応力値(MPa)
t:球状ガラスの直径(mm)
CS:圧縮応力値(MPa)
DOL:応力深さ(μm)
本発明の球状ガラスは、例えば、以下のようにして作製することができる。まず所望のアルカリアルミノシリケートガラスのガラス組成になるように調合したガラスバッチを連続溶融炉に投入し、1500〜1600℃で加熱溶融して、溶融ガラスを得た後、清澄容器、攪拌容器を経由して、成形装置に供給した上で球状に成形し、徐冷する。
成形方法として、種々の成形方法を採択することができる。特にマーブル成形法、液滴成形法、浮上成形を採択することが好ましい。このようにすれば、寸法精度が高い球状ガラスを成形し易くなる。結果として、表面を少量の研磨で、或いは表面を研磨しなくても、直径の寸法公差を低減することができる。
次に、必要に応じて、球状ガラスの表面を回転させながら研磨処理して、直径の寸法公差を低減する。
続いて、球状ガラスをイオン交換処理して、表面圧縮応力層を形成する。イオン交換処理は、360〜500℃(好ましくは370〜430℃)のKNO3溶融塩中に球状ガラスを4〜120時間(好ましくは24〜100時間)浸漬することで行うことができる。生産効率の観点から、複数の球状ガラスを同時にイオン交換処理することが好ましく、その場合、球状ガラス同士が接触しないように、球状ガラスの直径よりもメッシュ幅が小さい金属製治具等に複数の球状ガラスを等間隔に配列し、この治具を積層した状態でイオン交換処理することがより好ましい。
イオン交換処理は、複数回行ってもよい。イオン交換処理を複数回行うと、深さ方向のKイオン濃度の分布曲線を屈曲させることができ、表面圧縮応力層の圧縮応力値CSと応力深さDOLを増大させつつ、内部に蓄積される引っ張り応力の総量を低減することができる。
イオン交換処理を二回行う場合、イオン交換処理の間に熱処理工程を設けてもよい。このようにすれば、同一の硝酸カリウム溶融塩により、深さ方向のKイオン濃度の分布曲線を屈曲させることができる。更に一回目のイオン交換処理の時間を短縮することができる。
必要に応じて、直径の寸法公差を低減するために、イオン交換処理後の球状ガラスの表面を回転させながら研磨処理してもよい。
実施例に基づいて、本発明を説明する。但し、本発明は、以下の実施例に何ら限定されない。以下の実施例は、単なる例示である。
表1は、球状ガラス及びガラス板のガラス組成とガラス特性を示している。
次のようにして、試料No.1〜6を作製した。まず、表中のガラス組成となるように、ガラス原料を調合し、白金容器を用いて1580℃で8時間溶融した。次に、溶融ガラスの一部をカーボン板の上に流し出して板状に成形した後、徐冷して、ガラス板を得た。また、残りの溶融ガラスをサイコロ状に成形して、サイコロ状ガラスを得た後、球状ガラスに再成形し、回転させながら、表面を研磨処理した。なお、試料No.1〜6に係るガラス板と球状ガラスは、熱履歴が略同一になるように、それぞれ調整されており、その場合、同一のイオン交換条件でイオン交換処理を行った場合、両者の表面組成プロファイルと表面圧縮応力層の状態も同一になる。
続いて、ガラス板を用いて、各種特性を評価した。
密度は、周知のアルキメデス法によって測定した値である。
熱膨張係数αは、30〜380℃の温度範囲において、ディラトメーターで測定した平均値である。
ヤング率Eは、周知の共振法によって測定した値である。
歪点Ps、徐冷点Ta、軟化点Tsは、ASTM C336、ASTM C338の方法によって測定した値である。
高温粘度104.0dPa・s、103.0dPa・s、102.5dPa・sに相当する温度は、白金球引き上げ法によって測定した値である。
液相温度TLは、標準篩30メッシュ(篩目開き500μm)を通過し、50メッシュ(篩目開き300μm)に残るガラス粉末を白金ボートに入れ、温度勾配炉中に24時間保持して、結晶の析出する温度を測定した値である。
続いて、ガラス板の両表面に光学研磨を施した後、イオン交換処理を行った。イオン交換処理は430℃のKNO3溶融塩中に4時間浸漬することで行った。イオン交換処理後、各ガラス板の表面を洗浄し、表面応力計(折原製作所製FSM−6000)を用いて観察される干渉縞の本数とその間隔から表面圧縮応力層の圧縮応力値CSと応力深さDOLを算出した。算出に当たり、各ガラス板の屈折率を1.50、光学弾性定数を30[(nm/cm)/MPa]とした。
体積電気抵抗率ρは、イオン交換処理後の0.7mm厚の板状試料を測定試料とし、ASTM C657−78に基づいて150℃における値を測定したものである。
また、試料No.1に係るガラス板(イオン交換処理されていないもの)を用意し、その両表面に光学研磨を施した後、Liを含まないKNO3溶融塩を用いて、430℃4時間の条件でイオン交換処理を行い、表面圧縮応力層を有するガラス板を6枚作製した。なお、表面圧縮応力層の応力深さDOLは40μmであった。
続いて、80℃のCH3(CH2)16COOLiを含む鉱物油中に12日間浸漬した後、Liを含まない溶媒で洗浄して、板状の試料Aを得た。また、80℃の大気雰囲気中で12日間保管した後、Liを含まない溶媒で洗浄して、板状の試料Bを得た。また、80℃のCH3(CH2)16COOLiを含む鉱物油中に6日間浸漬した後、Liを含まない溶媒で洗浄して、板状の試料Cを得た。また、80℃の大気雰囲気中で6日間保管した後、Liを含まない溶媒で洗浄して、板状の試料Dを得た。また、60℃のCH3(CH2)16COOLiを含む鉱物油中に18日間浸漬した後、Liを含まない溶媒で洗浄して、板状の試料Eを得た。更に、60℃の大気雰囲気中で18日間保管した後、Liを含まない溶媒で洗浄して、板状の試料Fを得た。
試料A〜Fについて、GD―OES(堀場製作所製GD-PROFILER2)により、Ar銃で深さ方向にエッチングしながら、Li発光強度(ILi surface、ILi 1/100 DOL)を測定した。ILi surfaceは、最表面から応力深さDOLの1/100までの深さ領域におけるLi発光強度の最大値であり、ILi 1/100 DOLは、応力深さDOLの1/100よりも深い領域におけるサチュレートした時点でのLi発光強度である。その結果を表2に示す。
また、試料No.1に係る球状ガラス(直径4mm、直径の寸法公差0.006%)を用意し、Liを含まないKNO3溶融塩を用いて、430℃4時間の条件でイオン交換処理を行い、表面圧縮応力層を有する球状ガラスを6個作製した。続いて、1つの球状ガラスについて、80℃のCH3(CH2)16COOLiを含む鉱物油中に12日間浸漬した後、Liを含まない溶媒で洗浄して、球状の試料Aを作製した。更に、80℃の大気雰囲気中で12日間保管した後、Liを含まない溶媒で洗浄して、球状の試料Bを作製し、80℃のCH3(CH2)16COOLiを含む鉱物油中に6日間浸漬した後、Liを含まない溶媒で洗浄して、球状の試料Cを作製し、80℃の大気雰囲気中で6日間保管した後、Liを含まない溶媒で洗浄して、球状の試料Dを作製し、60℃のCH3(CH2)16COOLiを含む鉱物油中に18日間浸漬した後、Liを含まない溶媒で洗浄して、球状の試料Eを作製し、更に60℃の大気雰囲気中で18日間保管した後、Liを含まない溶媒で洗浄して、球状の試料Fを作製した。
試料A〜Fについて、軸受装置の内輪と外輪の間に組み込み、荷重をかけた状態で10時間駆動させた後、軸受装置からを取り出し、表面状態を電子顕微鏡で確認し、表面傷が殆ど認められなかったものを「○」、僅かに表面傷が認められたものを「△」、多数の表面傷が認められたものを「×」として評価した。
表2から分かるように、試料A、C、Eは、ILi surface/ILi 1/100 DOLがそれぞれ65、58、95であるため、表面傷の評価が「△」であったが、試料B、D、Fは、ILi surface/ILi 1/100 DOLがそれぞれ0.8、1.3、1.3であるため、表面傷の評価が「○」であった。
なお、表2に係る実験は、試料No.1を用いて行ったが、試料No.2〜6を用いた場合でも、同様の傾向が認められた。
本発明の球状ガラスは、ベアリング等の軸受装置の内輪と外輪の間に位置する転動体に特に好適であり、それ以外にも、レンズ球、遊戯球にも適用可能である。
Claims (6)
- イオン交換による表面圧縮応力層を有するアルカリアルミノシリケートガラスからなり、
ガラス組成中のLi2Oの含有量が0〜0.1質量%であり、
且つILi surface/ILi 1/100 DOLの値が100未満であることを特徴とする球状ガラス。
但し、ILi surfaceは、最表面から応力深さDOLの1/100までの深さ領域におけるLi発光強度の最大値であり、ILi 1/100 DOLは、応力深さDOLの1/100よりも深い領域におけるサチュレートした時点でのLi発光強度である。 - 直径の寸法公差が0.01%以内であることを特徴とする請求項1に記載の球状ガラス。
- 表面が研磨面であることを特徴とする請求項1又は2に記載の球状ガラス。
- ガラス組成として、質量%で、SiO2 45〜75%、Al2O3 10〜30%、Li2O 0〜0.1%、Na2O 5〜25%を含有することを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の球状ガラス。
- 表面圧縮応力層の圧縮応力値CSが300MPa以上、且つ応力深さDOLが30μm以上であることを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の球状ガラス。
- 転動体に用いることを特徴とする請求項1〜5の何れかに記載の球状ガラス。
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