悪性B細胞は、腫瘍自体ならびに微小環境に存在する非腫瘍細胞に由来する生存シグナルを受ける。B細胞抗原受容体(BCR)及びサイトカイン受容体は、生存に寄与する。
B細胞リンパ腫のサブセットは、生存についてBCR及び/またはサイトカインのJAK/STATシグナル伝達に依存を呈する。SYKは、BCRシグナル伝達経路のBTK、PI3Kδ、及びPLCγ2の上流に位置し、潜在的な治療標的となる。さらなる生存支持は、腫瘍自己分泌シグナル伝達ループによって、または腫瘍微小環境中に存在する非腫瘍浸潤白血球に由来する炎症促進性サイトカインによって活性化され得る、サイトカイン誘発JAK/STAT経路によって媒介されるようである。
いくつかのサイトカインの血清濃度の増加が、CLL及び非ホジキンリンパ腫(「NHL」)において観察され、より悪性の疾患の進行が予測される。これらのサイトカインの供給源は、自己分泌刺激様式で腫瘍自体から誘導されても、または腫瘍微小環境内で無効な免疫応答を呈した非腫瘍白血球から誘導されてもよい。実験的に、IL4は、培養中のCLL B細胞の生存を促進し、フルダラビン及びクロラムブシルでの処置による死から保護することが示されている。この生存支持の根底にある機構は、BCL2ファミリーメンバーのサイトカイン誘導性アップレギュレーションであると思われる。
近年、慢性リンパ球性白血病(CLL)の病因におけるB細胞受容体(BCR)媒介シグナル伝達の重要性が近年、さらに明らかになっており、BCRシグナル伝達複合体内のキナーゼを標的とする薬物が、この疾患の処置に革命をもたらしている。再発性/難治性CLLのための最近承認された薬剤としては、イブルチニブ(BTK阻害剤)及びイデラリシブ(PI3Kδ阻害剤)が挙げられる。今日まで、これらの化合物は、部分的には腫瘍微小環境からのシグナルによって媒介され得る治癒作用を証明していない。重要なことに、イブルチニブについてのBTKもしくはPLCγの突然変異を通じるか、または未知の機序のせいで、ある割合の患者は、これらの新しい薬剤に対する耐性を発達させている。脾臓チロシンキナーゼ(SYK)は、非受容体キナーゼのSYK/ZAP70ファミリーに属し、B細胞内のBCR、ケモカイン及びインテグリン受容体の下流で活性化シグナルの伝達に中心的役割を果たし、特定のB細胞悪性腫瘍及び自己免疫疾患の処置の興味深い標的のままである。
CLL細胞は、微小環境を構成する様々な細胞からのシグナルに依存する。遺伝子セットエンリッチメント解析を用いて、マッチした血液及び骨髄と比較してリンパ節組織が豊富なIL−4遺伝子サインを同定した。リンパ球中のIL−4シグナルは、Janusタンパク質チロシンキナーゼJAK1及びJAK3を介して主に1型IL−4受容体(IL−4R)を介して誘導され、STAT6(pSTAT6)のリン酸化をもたらす。
本明細書に記載の組成物及び方法は、特定の突然変異を有する患者または現在の治療法に耐性である患者のための現在の処置プロトコールの欠点に対処する。本明細書に記載の組成物及び方法はまた、ナイーブな患者の処置のための相乗的処置を、それらが突然変異を有するか否かにかかわらず提供する。
組成物
本明細書に記載の組成物は、セルデュラチニブを含む。セルデュラチニブは、B細胞癌及び自己免疫疾患の前臨床モデルにおいて強力かつ広範な活性を示したSYK及びJAKファミリーの両方のメンバーの低分子ATP競合可逆阻害剤である。米国特許第8,138,339号に記載されているセルデュラチニブは、化学名4−(シクロプロピルアミノ)−2−(4−(4−(エチルスルホニル)ピペラジン−1−イル)フェニルアミノ)ピリミジン−5−カルボキサミドを有し、かつ以下の式を有する。
本明細書に記載のいくつかの実施形態では、セルデュラニブとはまた、その塩またはプロドラッグを指す場合もある。本明細書に記載のいくつかの実施形態では、セルデュラニブはまた、その薬学的に許容される塩またはプロドラッグを指す場合もある。
本明細書中で使用される場合、用語「薬学的に許容される塩」とは、その対イオンが薬学的用量の塩で患者に対して非毒性である任意の酸または塩基付加塩を指す。薬学的に許容される塩のホストは、医薬分野において周知である。本開示の化合物の薬学的に許容される塩がこれらの組成物において利用される場合、それらの塩は、好ましくは、無機または有機の酸及び塩基に由来する。このような酸塩の中では、以下が挙げられる:酢酸塩、アジピン酸塩、アルギン酸塩、アスパラギン酸塩、安息香酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、重硫酸塩、酪酸塩、クエン酸塩、ショウノウ酸塩、ショウノウスルホン酸塩、シクロペンタンプロピオン酸塩、ジグルコン酸塩、ドデシル硫酸塩、エタンスルホン酸塩、フマル酸塩、ルコヘプタン酸塩、グリセロリン酸塩、ヘミ硫酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキサン酸塩、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、2−ヒドロキシエタンスルホン酸塩、乳酸塩、マレイン酸塩、メタンスルホン酸塩、2−ナフタレンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、シュウ酸塩、パモ酸塩、ペクチン酸塩、過硫酸塩、3−フェニル−プロピオン酸塩、ピクリン酸塩、ピバル酸塩、プロピオン酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、チオシアン酸塩、トシル酸塩、ウンデカン酸塩、ハロゲン化水素(例えば、塩酸塩及び臭化水素酸塩)、硫酸塩、リン酸塩、硝酸塩、スルファミン酸塩、マロン酸塩、サリチル酸塩、メチレン−ビス−b−ヒドロキシナフトエ酸塩、ゲンチシン酸塩、イセチオン酸塩、ジ−p−トルオイル酒石酸塩、エタンスルホン酸塩、シクロヘキシルスルファミン酸塩、キノン酸塩など。薬学的に許容される塩基付加塩としては、限定するものではないが、アルカリもしくはアルカリ土類金属塩基または従来の有機塩基由来の塩、例えば、トリエチルアミン、ピリジン、ピペリジン、モルホリン、N−メチルモルホリン、アンモニウム塩、アルカリ金属塩、例えばナトリウム及びカリウムの塩、アルカリ土類金属塩、例えば、カルシウム及びマグネシウムの塩、有機塩基との塩、例えば、ジシクロヘキシルアミン塩、N−メチル−D−グルカミン、ならびにアルギニン、リジンなどのアミノ酸との塩などが挙げられる。
さらに、塩基性窒素含有基は、低級ハロゲン化アルキル、例えば、メチル、エチル、プロピル、及びブチル塩化物、臭化物、及びヨウ化物;硫酸ジアルキル、例えば、ジメチル、ジエチル、ジブチル、及びジアミル硫酸塩、長鎖ハロゲン化物、例えば、デシル、ラウリル、ミリスチル、及びステアリル塩化物、臭化物、及びヨウ化物;ハロゲン化アラルキル、例えば、ベンジル及びフェネチル臭化物等の薬剤を用いて、四級化してもよい。それによって、水または油溶性または分散性生成物が得られる。
セルデュラチニブ(または本明細書に記載される他の化合物)の「プロドラッグ」もまた包含され、これは、生理条件下で化学的変化を容易に受けて、本開示の化合物を提供する化合物である。さらに、プロドラッグは、エキソビボ環境において化学的方法または生化学的方法により本開示の化合物に変換され得る。例えば、適切な酵素または化学試薬と共に経皮パッチリザーバ内に配置されたとき、プロドラッグはゆっくりと本開示の化合物に変換され得る。プロドラッグは、活性薬物に変換されるまで、必ずしもというわけではないが、薬理学的に不活性である場合が多い。プロドラッグは、典型的には、プロ基(以下に定義する)で部分的には活性に必要と思われる薬物中の官能基をマスキングして、官能基、したがって、活性薬物を放出するための特定の使用条件下で切断などの変換を受けるプロ部分を形成することによって得られる。プロ部分の切断は、加水分解反応などにより自発的に進行してもよいし、あるいは酵素、光、酸もしくは塩基、または温度の変化などの物理的または環境的パラメーターの変化もしくはそれに対する暴露などの別の因子によって触媒されるかもしくは誘導されてもよい。薬剤は、プロドラッグが投与される細胞中に存在する酵素もしくは胃の酸性条件などの使用条件に対して内因性であってもよいし、または外因的に供給されてもよい。
「プロ基」とは、活性薬剤内の官能基をマスクしてプロ部分を形成する場合、その薬物をプロドラッグに変換する一種の保護基を指す。プロ基は、典型的には、特定の使用条件下で切断可能な結合を介して薬物の官能基に結合される。したがって、プロ基とは、特定の使用条件下で官能基を放出するために開裂するプロ部分の一部である。具体的な例として、式−NH−C(O)CH3のアミドプロ部分は、プロ基−C(O)CH3を含む。
本明細書に記載の化合物の官能基をマスキングしてプロドラッグを得るのに適した広範な種類のプロ基、及び得られるプロ部分は、当該技術分野で周知である。例えば、アミノ官能基は、インビボで加水分解されてアミノ基を提供し得るアミド、カルバメート、イミン、尿素、ホスフェニル、ホスホリルまたはスルフェニルプロ部分としてマスクされ得る。本開示は、徐放性またはプロドラッグ製剤としての使用のための溶解性または加水分解特性を改変するための当該分野で公知のエステル及びアシル基を含む。適切なプロ基の他の具体的な例及びそれらのそれぞれのプロ部分は、当業者には明らかであろう。
セルデュラチニブは、CLL、FL、NHL、及びDLBCLを含むがこれに限定されない、高度に前処置された患者及び/または再発性/難治性の血液癌に有用であり得ると考えられる。セルデュラチニブはまた、原発性びまん性大B細胞リンパ腫(DLBCL)細胞においてインビトロでアポトーシスを誘導することが示されている。セルデュラチニブは、非変異IGHV、高CD49d、ZAP−70、または表面IgM発現のような予後不良の場合に優先的な活性を有する原発性CLLにおいて、アポトーシスを誘発することが示されている。
いくつかの化学療法剤は、血液癌を防御する、例えば、BCRまたはサイトカイン媒介性シグナル伝達、IL−4媒介性シグナル伝達及び/またはBCR活性化経路に起因して、種々の血液癌に罹患した患者において薬物耐性を引き起こす。本開示の実施形態によれば、セルデュラチニブは、薬物耐性をもたらすこれらの防御機構を克服し得る。
いくつかの実施形態は、セルデュラチニブ、またはその薬学的に許容される塩もしくはプロドラッグ、及び化学療法剤を含む組成物を提供する。
いくつかの実施形態によれば、セルデュラチニブまたはその塩と、BCL−2阻害剤、BTK阻害剤、P13Kδ阻害剤、白金系薬剤、代謝拮抗剤、及びそれらの組み合わせから選択される化学療法剤を含む組成物が提供される。
いくつかの実施形態では、化学療法剤は、BCL−2阻害剤、BTK阻害剤、P13Kδ阻害剤、抗CD20抗体、ABT−199(ベネトクラクス)、リツキシマブ(Rituxan(登録商標)、Mabthera(登録商標)、Zytux(登録商標))、白金系薬物、代謝拮抗物質、イブルチニブ(Imbruvica(登録商標))、イデラリシブ(Zydelig(登録商標))、またはそれらの組み合わせである。いくつかの実施形態では、化学療法剤は、ベネトクラクス、リツキシマブ、イブルチニブ、イデラリシブ、ゲムシタビン、オキサリプラチン、及びそれらの組み合わせからなる群より選択される。
いくつかの実施形態では、化学療法剤は、デュベリシブ(PI3K−δ及びPI3K−γ阻害剤)、ウブリツキシマブ(抗CD20抗体)、オビヌツズマブ(抗CD20抗体)、ACP−196(BTK阻害剤)、TGR−1202(PI3K−δ阻害剤)、ニボルマブ(抗PD−1抗体)、ペンブロリズマブ(抗PD−1抗体)、ピジリズマブ(抗PD−1抗体)、CTL019(CAR−T阻害剤)、KTE−C19 CAR(CAR−T阻害剤)、またはEPZ−6438(EZH2阻害剤)、アリセリツブ(オーロラキナーゼ阻害剤)、またはモガムリズマブ(抗CCR4抗体)である。
いくつかの実施形態において、セルデュラチニブ及び化学療法剤は、アポトーシスにおいて相乗作用を提供し得る。いくつかの実施形態において、セルデュラチニブ及び化学療法剤は、Bcl−2タンパク質を発現する細胞株において相乗作用を提供し得る。いくつかの実施形態において、セルデュラチニブ及び化学療法剤は、Bimタンパク質を発現する細胞系において相乗作用を提供し得る。
いくつかの実施形態では、セルデュラチニブは処置用量で投与され、他の化学療法剤の量は、本明細書に記載される薬剤の処置用量の約10%〜65%低減された量であってもよい。
いくつかの実施形態では、組成物は、セルデュラチニブと、化学療法剤とを、約300:1〜約3:1のモル比で含む。
いくつかの実施形態において、組成物は、慢性リンパ性白血病(CLL)、小リンパ球性リンパ腫(SLL)、濾胞性リンパ腫(FL)、形質転換濾胞性リンパ腫(tFL)、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、及び/またはマントル細胞リンパ腫(MCL)などの血液癌を処置するために用いられる。
いくつかの実施形態では、この組成物は、血液癌であって、慢性リンパ性白血病(CLL)、小リンパ球性リンパ腫(SLL)、濾胞性リンパ腫(FL)、形質転換濾胞性リンパ腫(tFL)、びまん性大Bリンパ球性リンパ腫(DLBCL)、マントル細胞リンパ腫(MCL)、辺縁帯リンパ腫、粘膜関連リンパ組織(MALT)、またはヴァルデンストレームマクログロブリン血症(WM)である血液癌を処置するために用いられる。
いくつかの実施形態では、セルデュラチニブまたはその薬学的に許容される塩、及び化学療法薬、ベネトクラクス、及び少なくとも1つの薬学的に許容される担体または賦形剤を含む組成物が提供される。いくつかの実施形態では、組成物は、セルデュラチニブまたはその薬学的に許容される塩もしくはプロドラッグ、及び化学療法剤、ベネトクラクス、またはその薬学的に許容される塩もしくはプロドラッグ、及び少なくとも1つの薬学的に許容される担体または賦形剤を含む。
ABT−199(ベネトクラクス)は、BCL2阻害剤であり、例えば、米国特許第8,722,657号及び同第8,580,794号に記載されている。ベネトクラクスは、4−(4−{[2−(4−クロロフェニル)−4,4−ジメチルシクロヘキセ(dimethylcyclohex)−1−エン−1−イル]メチル}ピペラジン−1−イル)−N−({3−ニトロ−4−[(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イルメチル)アミノ]フェニル}−スルホニル)−2−(1H−ピロロ[2,3−b]ピリジン−5−イルオキシ)ベンズアミドという化学名を有し、以下の式を有する:
本明細書に記載される実施形態において、ベネトクラクスはまた、その薬学的に許容される塩(上記で定義される)を指す場合もある。
いくつかの実施形態において、セルデュラニブ及びベネトクラクスは、アポトーシスにおいて相乗作用を提供する。
いくつかの実施形態では、約300:1〜約3:1というセルデュラチニブ対ベネトクラクスのモル比で、セルデュラチニブ及びベネトクラクスを含む組成物が提供される。いくつかの実施形態では、組成物は治療量未満のセルデュラチニブ及び/またはベネトクラクスを含む。例えば、セルデュラチニブが治療用量で投与され、そしてベネトクラクスの量が、本明細書に記載されている薬剤の治療用量の約10%〜約65%減少した量であってもよいことが考えられる。いくつかの実施形態において、セルデュラチニブは、本明細書で定義される治療有効量で投与され、そしてベネトクラクスの量は、ベネトクラクスの治療用量の約10%〜約50%低減された量であってもよい。
いくつかの実施形態では、上記組成物は、約9:1〜約1:9というセルデュラチニブ対ベネトクラクスのモル比で、セルデュラチニブ及びベネトクラクスを含む。いくつかの実施形態では、上記組成物は、約2:1〜約1:2というセルデュラチニブ対ベネトクラクスのモル比で、セルデュラチニブ及びベネトクラクスを含む。いくつかの実施形態では、上記組成物は、約2:1〜約1:5というセルデュラチニブ対ベネトクラクスのモル比で、セルデュラチニブ及びベネトクラクスを含む。いくつかの実施形態では、上記組成物は、約1:1というセルデュラチニブ対ベネトクラクスのモル比で、セルデュラチニブ及びベネトクラクスを含む。いくつかの実施形態では、上記組成物は、約1:1、約1:2、約1:9、約2:1または約9:1というセルデュラチニブ対ベネトクラクスのモル比で、セルデュラチニブ及びベネトクラクスを含む。
いくつかの実施形態では、単独で、またはセルデュラチニブと組み合わせて、ベネトクラクスは、毎日約400mg投与される。いくつかの実施形態では、ベネトクラクスは、単独でまたはセルデュラチニブと組み合わせて、最初の7日間は毎日20mgで投与され、対象はベネトクラクスを服用している。
イブルチニブ(Imbruvica(登録商標))は、BTK阻害剤であり、例えば、米国特許第7,514,444号に記載されている。イブルチニブは、1−[(3R)−3−[4−アミノ−3−(4−フェノキシフェニル)−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−1−イル]ピペリジン−1−イル]プロプ−2−エン−1−オンの化学名であり、かつ以下の式を有する:
いくつかの実施形態では、この組成物は、セルデュラチニブ及びイブルチニブを含む。いくつかの実施形態において、セルデュラチニブ及びイブルチニブは、約300:1〜約3:1というセルデュラチニブ対イブルチニブのモル比で投与される。
いくつかの実施形態では、セルデュラチニブ、またはその薬学的に許容される塩もしくはプロドラッグ、及びイブルチニブは、セルデュラチニブとイブルチニブのモル比が約2:1〜約1:5で投与される。いくつかの実施形態では、セルデュラチニブ及びイブルチニブは治療量未満で投与される。
いくつかの実施形態では、セルデュラチニブ及びイブルチニブは、セルデュラチニブとイブルチニブとのモル比が約9:1〜約1:9で投与される。いくつかの実施形態では、セルデュラチニブ及びイブルチニブは、セルデュラチニブとイブルチニブとのモル比が約2:1〜約1:2で投与される。いくつかの実施形態では、セルデュラチニブ及びイブルチニブは、セルデュラチニブとイブルチニブのモル比が約1:1で投与される。いくつかの実施形態では、セルデュラチニブ及びイブルチニブは、セルデュラチニブとイブルチニブとのモル比が約1:1、約1:2、約1:9、約2:1、または約9:1で投与される。
いくつかの実施形態において、イブルチニブは、1日あたり約420mg〜約560mgで投与される。いくつかの実施形態では、イブルチニブは約140mgで投与され、1日3回または4回投与される。いくつかの実施形態において、イブルチニブは、セルデュラチニブと組み合わせて投与される場合、1日あたり約210mg〜約280mgで投与される。いくつかの実施形態において、イブルチニブは、セルデュラチニブと組み合わせて投与される場合、約140mgで投与され、毎日1回、1回半、または2回投与される。いくつかの実施形態において、イブルチニブは1日あたり560mgで投与される。いくつかの実施形態では、イブルチニブは、1日あたり420mgで投与される。いくつかの実施形態では、イブルチニブは1日あたり280mg投与される。いくつかの実施形態において、イブルチニブは1日あたり140mgで投与される。
いくつかの実施形態において、セルデュラチニブは、本明細書で定義される治療有効量で投与され、イブルチニブの量は、イブルチニブの治療用量の約10%〜約50%低減された量であり得る。
本明細書中に記載される化合物の投与されるべき量は、化合物IC50、化合物の生物学的半減期、対象の年齢、サイズ及び体重、ならびに治療される適応症などの要因を考慮して標準的な手順によって決定され得る。これら及び他の因子の重要性は、当業者に周知である。一般に、用量は、治療される被験体の約0.01〜50mg/kg、または0.1〜20mg/kgであろう。複数の用量を使用してもよい。
いくつかの実施形態によれば、セルデュラチニブの治療上有効な量は、IL−4及び/またはCD40Lが存在する場合、インビトロでアポトーシスの15%未満の減少を示す量であり、この場合、IL−4及び/またはCD40Lはリンパ節組織部位に存在することが予想される任意の量で存在する。いくつかの実施形態において、化学療法剤は、IL−4及び/またはCD40Lの存在下で、インビトロで少なくとも15%のアポトーシスの減少をもたらす量で投与され、この場合IL−4及び/またはCD40Lは、リンパ節組織部位に存在すると予想される任意の量で存在する。
特定の実施形態では、本方法に使用されるセルデュラチニブの治療上有効な量は、単独または所定の組み合わせのいずれかで、少なくとも約10mg/日である。一実施形態では、セルデュラチニブの治療有効量は、1投薬あたり少なくとも約10、20、30、40または50mgである。一実施形態では、セルデュラチニブの治療有効量は、1日あたり少なくとも約10、20、30、40、50、60、70、80、90または100mgである。
一実施形態において、セルデュラチニブの治療有効量は、1日あたり少なくとも30mg、35mg、40mg、45mg、50mg、55mg、60mgまたは65mgである。一実施形態では、セルデュラチニブの治療有効量は、少なくとも約15mg、20mg、25mg、30mgまたは35mgであり、毎日2回投与される。
特定の実施形態では、セルデュラチニブの治療有効量は、1日あたり約500、400、300、200、150、120、または100mg以下である。一実施形態では、セルデュラチニブの治療有効量は、1投薬あたり約300、200、150、120、100、90、80、70、60、55または50mg以下である。
特定の実施形態では、セルデュラチニブの治療有効量は、1日あたり約100mg、95mg、90mg、85mg、80mgまたは75mg以下である。特定の実施形態において、セルデュラチニブの治療有効量は、45mg、40mg、35mg、または30mg以下であり、毎日2回投与される。
一実施形態では、単独または別の薬剤との組み合わせで、セルデュラチニブは、1日に約10mg〜200mg、約25mg〜150mg、約50〜120mg、または約80〜100mg投与される。
1つの実施形態において、セルデュラチニブの治療有効量は、単独でまたは別の薬剤と組み合わせて、毎日25mgから120mgである。いくつかの実施形態では、セルデュラチニブの有効量は、毎日2回25mg〜50mgである。
一実施形態では、セルデュラチニブは、単独または別の薬剤との組み合わせで、約10mg〜150mg、約25mg〜120mg、約30〜80mg、約40〜50mgの用量で、1日に1〜2回投与される。特定の実施形態では、セルデュラチニブは、単独でまたは別の薬剤と組み合わせて、1日に1回、2回、3回または4回投与される。
1つの実施形態において、セルデュラチニブは、単独でまたは別の薬剤と組み合わせて、1日1回、約30mg〜約80mgが投与される。一実施形態では、セルデュラチニブは、単独でまたは別の薬剤との組み合わせで、約15mg〜約40mgで1日2回投与される。
1つの実施形態において、45mgのセルデュラチニブは、単独でまたは別の薬剤との組み合わせで、毎日2回投与される。1つの実施形態において、35mgのセルデュラチニブは、単独でまたは別の薬剤と組み合わせて、毎日2回投与される。
いくつかの実施形態において、セルデュラチニブまたはその薬学的に許容される塩の有効量は、毎日2回投与される、約40mg〜約50mgである。
いくつかの実施形態では、セルデュラチニブまたはその薬学的に許容される塩の有効量は、毎日2回投与される、約30mg〜約40mgである。
いくつかの実施形態では、セルデュラチニブまたはその薬学的に許容される塩の有効量は、単独でまたは別の薬剤と組み合わせて、1日あたり約30mg〜約45mg投与される。
いくつかの実施形態において、30mgのセルデュラチニブまたはその薬学的に許容される塩は、単独でまたは別の薬剤との組み合わせで、毎日2回投与される。
本発明の状況において、本明細書に記載される「治療上有効な、治療有効」または「有効量」という用語は、投与されるときの化合物もしくは物質または化合物もしくは物質の量が、その処置されている疾患、障害または病状の1つ以上の症状を予防、緩和もしくは改善するか、及び/または処置されている対象の生存を延長するのに十分であるか、もしくは効果的であることを示す。治療有効量は、化合物、疾患、障害、または病態及びその重症度、ならびに治療される哺乳動物の年齢、体重等に応じて変化するであろう。投与量は、例えば、1日4回までの分割用量で、または持続放出形態で好都合に投与され得る。
「治療用量」という用語は、所望の効果を生じるために必要とされ得る化合物または物質の量を指す。
本明細書中で使用される場合、「1日用量」とは、24時間以内に摂取される治療物質の総量を指す。
医薬品調製物
全体にわたって記載された組成物は、種々の医薬調製物中で投与され得る。適切な剤形は、部分的には、例えば、経口、経皮、経粘膜、吸入または注射(非経口)の使用または投与経路に依存する。そのような剤形は、化合物が標的細胞に達することを可能にすべきである。他の要因は、当該技術分野において周知であり、これには、毒性、及び化合物または組成物がその効果を発揮するのを遅らせる剤形などの考慮が挙げられる。技術及び製剤は、一般に、The Science and Practice of Pharmacy、21st edition、Lippincott、Williams and Wilkins、Philadelphia、PA、2005(本明細書中に参考として援用される)に見ることができる。
担体または賦形剤を用いて組成物を製造してもよい。担体または賦形剤は、化合物の投与を容易にするように選択してもよい。担体の例としては、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、種々の糖、例えば、ラクトース、グルコースもしくはスクロース、または種々のデンプン、セルロース誘導体、ゼラチン、植物油、ポリエチレングリコール及び生理学的に適合する溶媒が挙げられる。生理学的に適合する溶媒の例としては、注射用水(WFI)、生理食塩水及びデキストロースの滅菌溶液が挙げられる。
「薬学的に許容される担体または賦形剤」という用語は、一般的に安全であり、非毒性であり、かつ生物学的にもその他の点でも望ましくないものではない医薬組成物を調製するのに有用な担体または賦形剤を意味し、これには、獣医の用途及び同様にヒトの医薬用途に許容可能な担体または賦形剤が挙げられる。「薬学的に許容される担体または賦形剤」とは、本明細書で使用する場合、1つ以上のこのような担体または賦形剤の両方を包含する。
「投与する」という用語は、対象への、経口投与、坐剤としての投与、局所的接触、静脈内投与、腹腔内投与、筋肉内投与、病巣内投与、鼻腔内投与もしくは皮下投与、または徐放性デバイス、例えばミニ浸透圧ポンプの移植を指す。投与は、非経口及び経粘膜(例えば、頬、舌下、口蓋、歯肉、鼻、膣、直腸、または経皮)を含む、任意の経路による。非経口投与としては、例えば、静脈内、筋肉内、細動脈内、皮内、皮下、腹腔内、脳室内、及び頭蓋内が挙げられる。他の送達様式としては、限定するものではないが、リポソーム製剤の使用、静脈内注入、経皮パッチなどが挙げられる。
化合物は、静脈内、腹腔内、皮下、筋肉内、経口、経粘膜、直腸、経皮、または吸入を含む様々な経路で投与してもよい。いくつかの実施形態では、化合物は、経口投与によって投与されてもよい。経口投与の場合、例えば、化合物は、従来の経口剤形、例えば、カプセル剤、錠剤、及び液体調製物、例えば、シロップ剤、エリキシル剤、濃縮液剤中に製剤化してもよい。
吸入剤の場合、本開示の化合物は、乾燥粉末または適切な溶液、懸濁液、またはエアロゾルとして製剤化してもよい。粉末及び溶液は、当技術分野で公知の適切な添加剤を用いて製剤化してもよい。例えば、粉末は、乳糖またはデンプンのような適切な粉末基剤を含んでもよく、そして溶液は、プロピレングリコール、滅菌水、エタノール、塩化ナトリウム及び他の添加剤、例えば、酸、アルカリ及び緩衝塩を含んでもよい。そのような溶液または懸濁液は、スプレー、ポンプ、噴霧器、またはネブライザーなどによる吸入によって投与してもよい。本開示の化合物はまた、他の吸入療法、例えばコルチコステロイド、例えばプロピオン酸フルチカゾン、ジプロピオン酸ベクロメタゾン、トリアムシノロンアセトニド、ブデソニド、及びモメタゾンフロエート;ベータアゴニスト、例えば、アルブテロール、サルメテロール、及びフォルモテロール;抗コリン作動薬、例えば、臭化イプラトロピウムまたはチオトロピウム;血管拡張剤、例えば、トレプロスチナール(treprostinal)及びイロプロスト(iloprost);酵素、例えば、DNAase;治療用タンパク質;免疫グロブリン抗体;オリゴヌクレオチド、例えば一本鎖または二本鎖のDNAまたはRNA、siRNA;抗生物質、例えば、トブラマイシン;ムスカリン受容体アンタゴニスト;ロイコトリエン拮抗薬;サイトカインアンタゴニスト;プロテアーゼ阻害剤;クロモリンナトリウム;ネドクロリルナトリウム;及びクロモグリク酸ナトリウムと組み合わせて使用してもよい。
経口使用のための医薬調製物は、例えば、活性化合物を固体賦形剤と混合し、必要に応じて得られた混合物を粉砕し、所望により適切な助剤を加えた後に、顆粒混合物を処理して、錠剤または糖衣錠コアを得ることによって得てもよい。適切な賦形剤は、特に、充填剤、例えば、糖、例としては、ラクトース、スクロース、マンニトール、またはソルビトールを含む糖などの充填剤;セルロース調製物、例えば、トウモロコシデンプン、コムギデンプン、コメデンプン、ジャガイモデンプン、ゼラチン、トラガカントゴム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチル−セルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC)、及び/またはポリビニルピロリドン(PVP:ポビドン)である。所望であれば、架橋ポリビニルピロリドン、寒天もしくはアルギン酸などの崩壊剤、またはアルギン酸ナトリウムなどのその塩を添加してもよい。
糖衣錠コアが、好適なコーティングを用いて提供される。この目的のために、例えば、アラビアゴム、タルク、ポリビニルピロリドン、カルボポールゲル、ポリエチレングリコール(PEG)、及び/または二酸化チタン、ラッカー溶液、及び適切な有機溶媒または溶媒混合物を必要に応じて含み得る濃縮糖溶液を使用してもよい。染料または色素を、活性化合物用量の異なる組み合わせの同定または特徴付けのために、錠剤または糖衣錠コーティングに添加してもよい。
経口的に使用することができる医薬製剤には、ゼラチン製の押し込み型カプセル(「ジェルキャップ」)、ならびにゼラチン製の軟質密封カプセル、及びグリセロールまたはソルビトールなどの可塑剤が挙げられる。押込嵌めカプセルは、ラクトース等の注入剤、デンプン等の結合剤、及び/またはタルクもしくはステアリン酸マグネシウム等の潤滑剤、及び任意に、安定剤との混合物内に、活性成分を含んでもよい。軟性カプセルでは、活性化合物は、脂肪油、流動パラフィン、または液体ポリエチレングリコール(PEG)等の好適な液体中で溶解されても、または懸濁されてもよい。さらに、安定剤が添加されてもよい。
あるいは、例えば、筋肉内、静脈内、腹腔内及び/または皮下などの注射(非経口投与)を使用してもよい。注射のために、本開示の化合物は、生理学的に適合する緩衝液または溶液(例えば、生理食塩水、ハンクス溶液またはリンガー溶液)などの滅菌液体溶液中に処方される。さらに、化合物は、固体形態で処方され、使用直前に再溶解または懸濁されてもよい。凍結乾燥形態もまた製造されてもよい。
投与はまた、経粘膜、局所、経皮、または吸入手段によるものであってもよい。経粘膜、局所または経皮投与のためには、浸透すべき障壁に適切な浸透剤を製剤に使用する。このような浸透剤は、当該分野で一般的に公知であり、例えば、経粘膜投与のため、胆汁酸塩及びフシジン酸誘導体が挙げられる。さらに、浸透を促進するために界面活性剤を使用してもよい。経粘膜投与は、例えば、鼻スプレーまたは座薬(直腸または膣)を介してもよい。
本開示の局所組成物は、当該分野で公知の適切な担体の選択によって、油、クリーム、ローション、軟膏などとして製剤化される。適切な担体としては、植物油または鉱油、白色ワセリン(白色軟パラフィン)、分枝鎖脂肪または油、動物性脂肪及び高分子量アルコール(C12より大きい)が挙げられる。別の実施形態において、担体とは、有効成分が可溶性であるものである。乳化剤、安定化剤、湿潤剤及び抗酸化剤も含んでもよく、同様に必要に応じて、色または香りを付与する薬剤を含んでもよい。局所適用のためのクリームは、鉱油、自己乳化蜜蝋及び水の混合物から製剤化され、この混合物では少量の溶媒(例えば、油)に溶解された活性成分が混合される。さらに、経皮手段による投与は、有効成分が含浸された包帯などの経皮パッチまたは包帯剤、及び場合によっては当該技術分野で知られている1つ以上の担体または希釈剤を含んでもよい。経皮送達システムの形態で投与するために、用量投与は、当然ながら、投薬計画の全体にわたり断続的ではなく連続的である。
本開示の化合物はまた、同じ疾患を処置するための他の療法と併用してもよい。そのような併用には、異なる時間に化合物及び1つ以上の他の治療を施すこと、または化合物と1つ以上の他の治療法とを同時に施すことが含まれる。いくつかの実施形態において、投与量は、当業者に周知の方法によって、開示の化合物の1つ以上、または組み合わせて使用される他の治療薬について改変(例えば、化合物または治療単独と比較して投与量の減少)されてもよい。
併用での使用には、他の療法、薬物、医療手順などの使用が含まれ、この場合この他の療法または手順は、異なる時間(例えば、数時間以内のような短い時間(例えば、1,2,3、4〜24時間)内、または本開示の化合物よりも長い時間(例えば、1〜2日、2〜4日、4〜7日、1〜4週間)以内で、または本開示の化合物と同時に投与されてもよい。組み合わせての使用はまた、他の療法または手順の前後の短時間またはより長い時間内に投与される開示の化合物と共に、手術などの一回またはそれより低頻度で施される療法または医療処置での使用も含む。いくつかの実施形態では、本開示は、異なる投与経路によって、または同じ投与経路によって送達される、開示の化合物及び1つ以上の他の薬物治療薬の送達を提供する。任意の投与経路について組み合わせての使用には、任意の製剤中で一緒の同じ投与経路によって送達される、本開示の化合物及び1つ以上の他の薬物治療薬の送達が含まれ、この製剤には、投与されるとその治療活性を維持するように2つの化合物が化学的に連結される製剤を含む。一実施形態において、他の薬物療法は、本開示の1つ以上の化合物と同時投与されてもよい。同時投与による組み合わせでの使用には、化学的に結合した化合物の同時製剤化もしくは製剤の投与、または同じもしくは異なる経路によって投与される互いに短時間内(例えば、1時間、2時間、3時間、または最大24時間以内)の別々の製剤中の2種以上の化合物の投与が含まれる。別個の製剤の同時投与には、1つのデバイス、例えば同じ吸入デバイス、同じ注射器などを介した送達による同時投与、または互いに短時間内の別々のデバイスからの投与が含まれる。本開示の化合物と同じ経路によって送達される1つ以上の追加の薬物療法との同時製剤化には、1つの製剤で組み合わせた別個の化合物または化学的に結合されるように修飾されたが依然としてその生物学的活性を維持している化合物を含む、1つの装置によって投与できるように、一緒の材料の調製を含む。そのような化学的に結合した化合物は、インビボで実質的に維持された結合を有していてもよく、または結合は,インビボで破壊されて,2つの活性成分を分離してもよい。
方法
本明細書で提供されるいくつかの実施形態は、血液癌の治療をそれを必要とする患者に対して行う方法であって、有効量のセルデュラチニブを患者に投与することを包含する方法に関する。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の組成物を患者に投与することを包含する、血液癌の処置をそれを必要とする患者に対して行うための方法が提供される。
本明細書で提供されるいくつかの実施形態は、B細胞非ホジキンリンパ腫(NHL)、慢性リンパ球性白血病(CLL)、濾胞性リンパ腫(FL)、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)または他の形質転換されたFLのうちの1つ以上に罹患している患者を処置する方法に関する。
「患者」は、ヒト及び非ヒト動物、特に哺乳動物をいう。患者の例としては、限定するものではないが、ヒト、ウシ、イヌ、ネコ、ヤギ、ヒツジ、ブタ及びウサギが挙げられる。
本明細書で使用する用語「処置する」、「処置すること」、「処置」及びその文法的変形は、障害もしくは状態の1つ以上の付随症状の強度を部分的にもしくは完全に遅延、軽減、緩和もしくは低減すること、及び/または障害もしくは状態の1つ以上の原因を緩和、軽減もしくは妨げることを包含する。本明細書に記載の処置は予防的に、予防法として、一時的にまたは矯正的に適用されてもよい。
本明細書で使用する用語「予防する」、「予防すること」、「予防」及びそれらの文法的変形は、障害もしくは状態及び/またはその付随する症状の1つ以上の発現もしくは再発を部分的もしくは完全に遅延、もしくは妨害するか、あるいは障害もしくは状態に罹患するかもしくは再罹患しないよう対象を防御するか、あるいは障害もしくは状態またはその付随する症状の1つ以上に罹患するかもしくは再罹患する対象のリスクを軽減する方法を指す。
本明細書に記載される方法及び組成物は、典型的には、ヒト対象での治療に用いられる。しかしながら、それらはまた、他の動物対象における類似または同一の適応症を処置するために使用され得る。これに関連して、「被験体」、「動物被験体」などの用語は、ヒト及び非ヒト脊椎動物、例えば、哺乳動物、例えば、非ヒト霊長類、スポーツ及び商業動物、例えば、ウマ、ウシ、ブタ、ヒツジ、げっ歯類、及びペット、例えばイヌ及びネコを指す。
本明細書に記載の実施形態では、治療とは、セルデュラチニブ単独療法または本明細書に記載の組成物を含む併用療法であってもよい。
いくつかの実施形態では、患者は、B細胞悪性腫瘍、慢性リンパ球性白血病(CLL)、濾胞性リンパ腫(FL)、または形質転換FLの1つ以上に罹患している。
いくつかの実施形態では、患者は進行した悪性腫瘍に罹患している。
いくつかの実施形態では、患者は、再発したか、または以前の化学療法に反応しなかった。いくつかの実施形態では、患者は、少なくとも2つの先の治療に失敗している。いくつかの実施形態では、患者は少なくとも1つの以前の治療に失敗している。
いくつかの実施形態では、患者は、B細胞悪性腫瘍を有する。いくつかの実施形態において、本明細書で提供される方法は、慢性リンパ性白血病(CLL)、小リンパ球性リンパ腫(SLL)、濾胞性リンパ腫(FL)、形質転換濾胞性リンパ腫(tFL)、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、及び/またはマントル細胞リンパ腫(MCL)などの血液癌を処置するために用いられる。
いくつかの実施形態において、本明細書で提供される方法は、非ホジキンリンパ腫(NHL)、慢性リンパ球性白血病(CLL)、小リンパ球性リンパ腫(SLL)、濾胞性リンパ腫(FL)、形質転換濾胞性リンパ腫(tFL)、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、及び/またはマントル細胞リンパ腫(MCL)などの血液癌を処置するために使用される。
いくつかの実施形態において、上記組成物は、慢性リンパ性白血病(CLL)、小型リンパ球性リンパ腫(SLL)、濾胞性リンパ腫(FL)、形質転換濾胞性リンパ腫(tFL)、びまん性大B細胞リンパ腫(DLBCL)、マントル細胞リンパ腫(MCL)、辺縁帯リンパ腫、粘膜関連リンパ組織(MALT)、及びヴァルデンストレームマクログロブリン血症(WM)から選択される血液癌を処置するために用いられる。
いくつかの実施形態では、有効量のセルデュラチニブ、ならびにBCL−2阻害剤、BTKインヒビター、P13Kδインヒビター、リツキシマブ、白金系薬物、代謝拮抗物質、及びそれらの組み合わせから選択される有効量の化学療法剤を、患者に投与することを包含する、血液癌の処置をそれを必要とする患者に対して行う方法が提供される。
いくつかの実施形態によれば、血液癌の治療方法は、血液癌の治療に使用される化学療法剤を投与することを包含する。いくつかの実施形態において、化学療法剤は、セルデュラチニブとは異なる作用機序(例えば、二重SYK/JAK阻害以外の機序)によって作用する。いくつかの実施形態では、一緒に、同時にまたは連続して投与される場合、セルデュラチニブ及び化学療法剤は、例えばアポトーシスを引き起こすかまたはそうでなければ腫瘍の大きさを減少させる相乗作用を提供し得る。例えば、セルデュラチニブ及び化学療法剤はそれぞれ、治療量未満の量(すなわち、各薬剤単独について治療量未満である量)で患者に投与されてもよい。また、セルデュラチニブまたは化学療法剤のいずれか一方を、治療量未満の量で患者に投与してもよい。いくつかの実施形態では、セルデュラチニブ及び化学療法剤は、約300:1〜約3:1または2:1〜約1:5のセルデュラチニブと化学療法剤とのモル比で投与される。
いくつかの実施形態では、患者は、B細胞悪性腫瘍を有する。いくつかの実施形態では、患者は、多発性骨髄腫及び急性骨髄性白血病などの骨髄悪性腫瘍を有する。
いくつかの実施形態では、血液癌は慢性リンパ球性白血病(CLL)である。いくつかの実施形態では、血液癌は、小リンパ球性リンパ腫(SLL)である。
いくつかの実施形態では、血液癌は、非ホジキンリンパ腫(NHL)である。いくつかの実施形態では、血液癌は、悪性のNHL(DLBCL、FL3B、MCLまたは形質転換NHLなど)である。いくつかの実施形態において、血液癌は、形質転換された非ホジキンリンパ腫(NHL)である。いくつかの実施形態では、血液癌は無痛性のNHLである。
いくつかの実施形態では、血液癌は濾胞性リンパ腫(FL)である。いくつかの実施形態では、FLは、グレード1、グレード2、グレード3A(FL3a)またはグレード3B(FL3b)である。いくつかの実施形態では、血液癌はFL3bである。いくつかの実施形態では、血液癌は、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)である。いくつかの実施形態では、血液癌はマントル細胞リンパ腫(MCL)である。
いくつかの実施形態では、患者は、多数の理由により、血液癌に対する薬物抵抗性、及び/または血液癌の再発を呈する。例えば、患者は、再発及び/または血液癌を治療するための薬剤に対する耐性に関連する突然変異を有する場合がある。例えば、患者は、del17p突然変異、TP53突然変異、ATM突然変異、STAT突然変異、STAT6突然変異、C481S STAT6突然変異、NOTCH経路に関連する突然変異、カドヘリン経路に関連する突然変異またはそれらの組み合わせを含む場合がある。
したがって、いくつかの実施形態は、血液癌の処置をそれを必要とする患者に対して行う方法であって、有効量のセルデュラチニブもしくはその薬学的に許容される塩、または本明細書に記載の組成物を患者に投与することを包含し、この患者が再発及び/または血液癌を処置するための別の薬物に対する耐性に関連している変異を有する方法を提供する。
いくつかの実施形態は、血液癌の治療をそれを必要とする患者に対して行う方法であって、有効量のセルデュラチニブまたはその薬学的に許容される塩、または本明細書に記載の組成物を患者に投与することを包含し、この患者が、再発及び/または血液癌を処置するための別の薬物に対する耐性に関連する変異を有し、セルデュラチニブまたは薬学的に許容されるその塩の有効量は、毎日投与される約25mg〜約120mgである方法を提供する。
いくつかの実施形態では、患者は、再発及び/または血液癌を治療するための薬物に対する耐性に関連する突然変異を有する場合がある。いくつかの実施形態において、患者は、del17p突然変異、TP53突然変異、ATM突然変異、STAT突然変異、STAT6突然変異、C481S BTK突然変異、NOTCH経路に関連する突然変異、またはカドヘリン経路に関連する突然変異、またはそれらの組み合わせを含む場合がある。いくつかの実施形態によれば、患者は、P53、BTK、及びEP300のいずれにも突然変異を有していない。いくつかの実施形態において、患者は、STATにおいてS86A変異を有し得る。
いくつかの実施形態では、患者は、del17p突然変異、TP53突然変異、ATM突然変異、STAT突然変異、STAT6突然変異、C481S BTK突然変異、NOTCH経路に関連する突然変異、カドヘリン経路に関連する突然変異、またはそれらの組み合わせを含んでもよい。いくつかの実施形態によれば、患者は、P53、BTK、及びEP300の全てにおいて突然変異を有していない。
いくつかの実施形態では、患者は、del17p突然変異、del11q突然変異、P53突然変異、ATM突然変異、STAT突然変異、STAT6突然変異、C481S STAT6突然変異、NOTCH経路に関連する突然変異、カドヘリン経路に関連する突然変異、またはそれらの組み合わせを含む場合がある。いくつかの実施形態では、患者は、del17p突然変異、del11q突然変異、TP53突然変異、ATM突然変異、STAT突然変異、STAT6突然変異、C481SBTK突然変異、NOTCH経路に関連する突然変異、カドヘリン経路に関連する突然変異、またはそれらの組み合わせを含む場合がある。
いくつかの実施形態において、患者は、MYD88突然変異、CARD11突然変異、またはA20突然変異を有する。いくつかの実施形態において、患者は、del11q、トリソミー12及びdel17pを含む高リスクの遺伝的異常を有する。いくつかの実施形態では、患者はdel17p突然変異を有する。いくつかの実施形態では、患者はdel11q突然変異を有する。
いくつかの実施形態において、患者は、CD79B突然変異、MYD88突然変異、CARD11突然変異、またはA20突然変異を有する。いくつかの実施形態では、患者はCD79B突然変異を有する。いくつかの実施形態では、患者はIKB欠損を有さない。
いくつかの実施形態では、患者はPLCγ2突然変異を有する。セルデュラチニブはホスホリパーゼCγ2(「PLCγ2」)及びJAKの上流に位置するSYKの二重阻害剤であるため、PLCγ2への変異を有する患者を処置するのに有用であると考えられる。
いくつかの実施形態では、患者はBTK突然変異を有する。いくつかの実施形態では、患者はPLCγ2突然変異を有する。いくつかの実施形態では、患者はIKB欠損を有さない。いくつかの実施形態において、患者は、IkB−アルファ、IkB−ベータ、IkB−イプシロン、またはIkBガンマの欠損を有さない。
いくつかの実施形態では、患者は、非突然変異型IGHV、高CD49d、ZAP−70、または表面IgM発現のような予後不良を有する場合がある。
いくつかの実施形態において、患者は、セルデュラチニブではない薬物に対する耐性を有する。これらの薬剤の非限定的な例は、抗CD20抗体、BCL−2阻害剤、BTK阻害剤、P13Kδ阻害剤、リツキシマブ、白金系薬物、代謝拮抗剤、イブルチニブ、イデラリシブ、フルダラビン(リン酸フルダラビン、Fludara(登録商標))、アントラサイクリン、BCR経路阻害剤、ベネトクラクス、または血液癌を処置するために使用される別の化学療法剤である。化学療法剤の他の非限定的な例としては、アルキル化剤、細胞骨格破壊剤、エポチロン、ヒストンデアセチラーゼ阻害剤、トポイソメラーゼIの阻害剤、トポイソメラーゼIIの阻害剤、ヌクレオチド類似体及び前駆体類似体、抗生物質、白金系薬物、レチノイド、ビンカアルカロイド、またはそれらの組み合わせが挙げられる。いくつかの実施形態では、患者は化学療法剤に対する耐性を有する。
いくつかの実施形態では、患者は、抗CD20抗体、BCL−2阻害剤、BTK阻害剤、P13Kδ阻害剤、白金系薬物、代謝拮抗剤、アントラサイクリン、BCR経路阻害剤、または血液癌を処置するために使用される別の化学療法剤に対する耐性を有する。いくつかの実施形態では、患者は、イブルチニブ、イデラリシブ、フルダラビン(リン酸フルダラビン、FLUDARA(登録商標))またはABT−199(ベネトクラクス)からなる群より選択される薬物に対する耐性を有する。いくつかの実施形態では、患者はイブルチニブに対する耐性を有する。
いくつかの実施形態では、患者は、血液癌を治療するための薬物を以前に投与されていた。非限定的な例では薬物としては、アルキル化剤、抗CD20抗体、BCL−2阻害剤、BTK阻害剤、P13Kδ阻害剤、リツキシマブ、白金系薬物、代謝拮抗剤、イブルチニブ、イデラリシブ、フルダラビン(リン酸フルダラビン、FLUDARA(登録商標))、アントラサイクリン、BCR経路阻害剤、ベネトクラクス、及び血液癌を治療するために使用される他の薬剤が挙げられる。化学療法剤の他の非限定的な例としては、細胞骨格破壊剤、エポチロン、ヒストンデアセチラーゼ阻害剤、トポイソメラーゼIの阻害剤、トポイソメラーゼIIの阻害剤、ヌクレオチド類似体及び前駆体類似体、抗生物質、白金系薬物、レチノイド、ビンカアルカロイド、またはそれらの組み合わせが挙げられる。
いくつかの実施形態では、患者は、アルキル化剤、抗CD20抗体、BCL−2阻害剤、BTK阻害剤、P13Kδ阻害剤、白金系薬物、代謝拮抗剤、アントラサイクリン、BCR経路阻害剤、または血液癌を治療するために使用される他の薬剤からなる群より選択される薬物を投与される。いくつかの実施形態では、薬物は、リツキシマブ、イブルチニブ、イデラリシブ、フルダラビン(リン酸フルダラビン、FLUDARA(登録商標))またはABT−199(ベネトクラクス)である。いくつかの実施形態では、薬物はR−CHOP(リツキシマブ;シクロホスファミド;塩酸ドキソルビシン;(ビンクリスチン);プレドニゾン)である。いくつかの実施形態では、薬物は、R−CVP(リツキシマブ;シクロホスファミド;ビンクリスチン;プレドニゾン)である。いくつかの実施形態では、薬物は、ベバシツマブである。いくつかの実施形態において、薬物は、フルダラビンとリツキシマブの組み合わせ、ベンダムスチンとリツキシマブの組み合わせ、またはベバシズマブとリツキシマブの組み合わせである。
いくつかの実施形態において、患者には、以前に、ベネトクラクス、リツキシマブ、イブルチニブ、イデラリシブ及びフルダラビンから選択された薬物が投与された。
特定の実施形態では、患者は60歳以上であり、第1選択のがん治療後に再発する。特定の実施形態では、患者は18歳以上であり、二次的な癌治療後に再発または難治性である。特定の実施形態では、患者は60歳以上であり、第一選択がん治療に対して基本的に難治性である。特定の実施形態では、患者は70歳以上であり、以前は治療されていない。特定の実施形態では、患者は70歳以上であり、癌治療の恩恵を受けることができないか、及び/または受けない可能性がある。
いくつかの実施形態では、患者はBcl−2タンパク質を発現する。いくつかの実施形態では、患者はBimタンパク質を発現する。
いくつかの実施形態は、血液癌の治療をそれを必要とする患者に対して行う方法であって、患者に有効量のセルデュラチニブまたはその薬学的に許容される塩を患者に投与することを包含し、この患者は、CD79B突然変異を有し、PLCγ2突然変異を有するか、またはIKB欠失は有さない方法を提供する。
いくつかの実施形態は、B細胞リンパ腫を治療する方法であって、有効量のセルジュラチブまたはその薬学的に許容される塩を、IκBα遺伝子のダウンレギュレーションを有する癌細胞を有するB細胞リンパ腫患者に投与することを包含し、細胞はIκBα遺伝子の両方の対立遺伝子に不活性化突然変異を有さず、CD40受容体シグナル経路の調節解除を有さず、トール様受容体シグナル伝達経路の調節解除を有さない方法を提供する。
いくつかの実施形態では、細胞はCD40の活性化を有さない。いくつかの実施形態では、細胞は、不活性なIκBαタンパク質を有さない。いくつかの実施形態では、細胞は、B細胞受容体シグナル経路またはサイトカイン受容体シグナル経路の調節解除を有する。いくつかの実施形態では、細胞はCARD11もしくはMYD88の活性の増加、またはA20の活性の減少を有する。
いくつかの実施形態は、B細胞リンパ腫患者が、セルデュラチニブまたはその薬学的に許容される塩を含む療法に適しているか否かを判定する方法であって、患者の癌細胞において、IκBαタンパク質の活性もしくは発現、またはCD40受容体シグナル伝達経路もしくはトール様受容体経路の活性を測定すること、及びIκBαタンパク質が不活性である場合、CD40受容体シグナル伝達経路が調節解除される場合、またはトール様受容体シグナル伝達経路が調節解除される場合、その患者が治療に適していないと判断することを包含する方法を提供する。
いくつかの実施形態において、B細胞リンパ腫は、びまん性大B細胞リンパ腫(DLBCL)である。いくつかの実施形態では、癌性細胞はBリンパ球である。いくつかの実施形態では、CD40受容体シグナル伝達経路の調節解除は、CD40の活性化を含む。
いくつかの実施形態は、有効量のセルデュラチニブまたはその薬学的に許容される塩及びNF−κB阻害剤を患者に投与することを包含する、IκBα遺伝子のダウンレギュレーションを有する癌細胞を有する患者のB細胞リンパ腫を処置する方法を提供する。いくつかの実施形態では、細胞は、CD40受容体シグナル伝達または調節解除されたトール様受容体シグナル伝達を調節解除している。いくつかの実施形態では、CD40受容体シグナル伝達経路の調節解除は、CD40の活性化を含む。
本開示のいくつかの実施形態は、有効量のセルデュラチニブ及び有効量のベネトクラクスを投与すること、または本明細書に記載のセルデュラチニブ及びベネトクラクスを含む組成物を患者に投与することを含む、血液癌の治療をそれを必要とする患者に対して行う方法を提供する。
本開示の別の実施形態によれば、血液癌の治療をそれを必要とする患者に対して行う方法は、治療有効量のセルデュラチニブと、同じ血液癌を処置するために使用される化学療法剤(例えば、ベネトクラクス)との組み合わせ(この組み合わせは、治療有効量未満の量のセルデュラチニブ及び治療有効量未満の化学療法剤を含む)の治療上有効な量を投与することを包含する。
本明細書では、血液癌を治療するための有効量のセルデュラチニブ及び有効量のベネトクラクスを患者に投与する方法が提供される。いくつかの実施形態において、セルデュラチニブ及びベネトクラクスは、同時にまたは連続して投与される。いくつかの実施形態では、血液癌は、難治性または再発性の血液癌である。いくつかの実施形態において、再発性または難治性の血液癌は、慢性リンパ性白血病(CLL)、小リンパ球性リンパ腫(SLL)、濾胞性リンパ腫(FL)、形質転換濾胞性リンパ腫(tFL)、びまん性大B−細胞リンパ腫(DLBCL)またはマントル細胞リンパ腫(MCL)である。
また、本明細書には、血液癌の治療のための、セルデュラチニブまたはその薬学的に許容される塩と、ベネトクラクスなどの化学療法薬と、少なくとも1つの薬学的に許容される担体または賦形剤とを含むそのような組成物の使用方法も提供される。いくつかの実施形態では、血液癌は、難治性または再発性の血液癌である。いくつかの実施形態において、再発性または難治性の血液癌は、慢性リンパ性白血病(CLL)、小リンパ球性リンパ腫(SLL)、濾胞性リンパ腫(FL)、形質転換濾胞性リンパ腫(tFL)、びまん性大B−細胞リンパ腫(DLBCL)またはマントル細胞リンパ腫(MCL)である。
いくつかの実施形態では、セルデュラチニブ及びベネトクラクスは、約300:1〜約3:1のセルデュラチニブ対ベネトクラクスのモル比で投与される。いくつかの実施形態では、セルデュラチニブ及びベネトクラクスは、約9:1〜約1:9のセルデュラチニブ対ベネトクラクスのモル比で投与される。いくつかの実施形態において、セルデュラチニブ及びベネトクラクスは、約2:1〜約1:2のセルデュラチニブ対ベネトクラクスのモル比で投与される。いくつかの実施形態において、セルデュラチニブ及びベネトクラクスは、約2:1〜約1:5のセルデュラチニブ対ベネトクラクスのモル比で投与される。いくつかの実施形態において、セルデュラチニブ及びベネトクラクスは、約1:1のセルデュラチニブ対ベネトクラクスのモル比で投与される。いくつかの実施形態において、セルデュラチニブ及びベネトクラクスは、治療量未満の量で投与される。いくつかの実施形態では、セルデュラチニブ及びベネトクラクスは、セルデュラチニブとベネトクラクスとのモル比が約1:1、約1:2、約1:9、約2:1または約9:1で投与される。
いくつかの実施形態では、単独かまたはセルデュラチニブとの組み合わせかにかかわらず、ベネトクラクスは、処置されている対象の約0.01及び50mg/kgまたは0.1及び20mg/kgで投与される。いくつかの実施形態では、単独またはセルデュラチニブとの組み合わせでのベネトクラクスは、約10mg、20mg、50mg、100mg、150mg、200mg、250mg、300mg、350mg、400mgまたは約450mgを毎日1回投与される。いくつかの実施形態では、ベネトクラクスは、単独でまたはセルデュラチニブとの組み合わせで、約600mg、約550mg、約500mg、約450mg、約400mg、約350mg、約300mg、約250mg、約200mg、約150mg、約100mg、または約50mg未満で毎日投与される。
いくつかの実施形態では、単独で、またはセルデュラチニブと組み合わせて、ベネトクラクスは、毎日約400mg投与される。いくつかの実施形態では、ベネトクラクスは、単独でまたはセルデュラチニブと組み合わせて、最初の7日間は毎日20mgで投与され、対象はベネトクラクスを服用している。
本開示のいくつかの実施形態は、本明細書に記載されるようなセルデュラチニブ及びイブルチニブを含む組成物を患者に投与することを包含する、有効量のセルデュラチニブ及び有効量のイブルチニブを投与することを含む、血液癌の治療をそれを必要とする患者に対して行う方法を提供する。
本開示の別の実施形態によれば、血液癌の治療をそれを必要とする患者に対して行う方法は、治療有効量のセルデュラチニブと、同じ血液学的癌を処置するために使用される化学療法剤(例えば、イブルチニブ)との組み合わせを投与することを包含し、この組み合わせは、治療有効量未満の量のセルデュラチニブ及び治療有効量未満の化学療法剤を含む。
いくつかの実施形態では、セルデュラチニブ及びイブルチニブ(Imbruvica(登録商標))は、セルデュラチニブとイブルチニブのモル比が約2:1から約1:5で投与される。いくつかの実施形態では、セルデュラチニブ及びイブルチニブは治療量未満で投与される。いくつかの実施形態において、セルデュラチニブ及びイブルチニブは、同時にまたは連続して投与される。
いくつかの実施形態では、セルデュラチニブ及びイブルチニブは、セルデュラチニブとイブルチニブとのモル比が約9:1〜約1:9で投与される。いくつかの実施形態では、セルデュラチニブ及びイブルチニブは、セルデュラチニブとイブルチニブとのモル比が約2:1〜約1:2で投与される。いくつかの実施形態では、セルデュラチニブ及びイブルチニブは、セルデュラチニブとイブルチニブのモル比が約1:1で投与される。いくつかの実施形態では、セルデュラチニブ及びイブルチニブは、セルデュラチニブとイブルチニブとのモル比が約1:1、約1:2、約1:9、約2:1、または約9:1で投与される。
別の実施形態では、本開示は、本明細書に記載の任意の1つ以上の化合物(複数可)または組み合わせを含む組成物の有効量を、1つ以上の他の治療または癌を処置するのに有効な医学的手順と組み合わせて、対象に施すことによって、その必要な対象において癌を処置する方法を提供する。他の療法または医療手順には、適切な抗癌療法(例えば、薬物療法、ワクチン療法、遺伝子治療、光線力学療法)または医療手順(例えば、外科手術、放射線治療、温熱療法、骨髄または幹細胞移植)が挙げられる。一実施形態では、1つ以上の適切な抗癌治療または医学的手順は、化学療法剤(例えば、化学療法薬)、放射線治療(例えば、X線、γ線、または電子、陽子、中性子、またはアルファ粒子ビーム)、温熱加熱(例えば、マイクロ波、超音波、高周波アブレーション)、ワクチン療法(例えば、AFP遺伝子肝細胞癌ワクチン、AFPアデノウイルスベクターワクチン、AG−858、同種異系GM−CSF分泌乳癌ワクチン、樹状細胞ペプチドワクチン)、遺伝子療法(例えば、Ad5CMV−p53ベクター、MDA7をコードするアデノウイルスベクター、アデノウイルス5−腫瘍壊死因子アルファ)、光線力学療法(例えば、アミノレブリン酸、モテキサチンルテチウム)、手術、または骨髄及び幹細胞移植による処置から選択される。
キット
別の実施形態では、本開示は、本明細書に記載の化合物もしくは組み合わせのいずれか1つ、またはこれらの化合物のいずれかの薬学的に許容される塩、溶媒和物、互変異性体、異性体もしくは重水素化類似体、あるいはその医薬組成物を備えるキットを提供する。いくつかの実施形態では、化合物または組成物は、例えば、バイアル、ボトル、フラスコ中にパッケージングされ、これが、例えばボックス、外被、またはバッグ内にさらにパッケージされてもよく;この化合物または組成物は、哺乳動物、例えばヒトへの投与について、米国食品医薬品局または同様の規制当局によって承認されている;この化合物または組成物は、プロテインキナーゼ媒介疾患または状態についての哺乳動物、例えばヒトへの投与が承認されている;本明細書に記載のキットは、化合物または組成物がプロテインキナーゼ媒介性疾患または状態について哺乳動物、例えばヒトに投与するのに適しているかまたは認可されていることを、使用の書面の説明及び/または他の指示に含んでもよい;そしてこの化合物または組成物は、単位用量または単回剤形(例えば、単回用量丸薬、カプセルなど)にパッケージングされてもよい。
実施例1:セルデュラチニブは、15DLBCL細胞に対して2μMで広く活性である。
材料及び方法:DLBCL細胞株生存率アッセイ
ATCCから購入した細胞株を、10ポイント濃度応答曲線を用いて、384ウェルプレート中でCellTiter Glo(Promega)アッセイを用いてスクリーニングしてIC50を作成した。各IC50値は、少なくとも4回の反復実験の平均である。FACSベースのカスパーゼ3切断検出キット(BD Biosciences)及びEdu組込みを用いて、その後の分析を行った。
セルデュラチニブは、より標的化された薬剤と比較して、DLBCL細胞株において広範な抗腫瘍活性を示した。下の表1は、他の関連するキナーゼ阻害剤と比較した、セルデュラチニブのIC
50値をまとめている:PRT06318(Syk阻害剤、米国特許第6,432,963号に記載されている);InSolution(商標)JAK阻害剤I(CAS 457081−03−7;表3の「Pan−Jak」);CP−690550(Jak3阻害剤);イデラリシブ(PI3Kδ阻害剤);IPI−145(PI3Kδ及びγ阻害剤);及びドキソルビシン(「ドキソ」、アントラサイクリン)である。これらの阻害剤は、市販されているか、または当業者に公知の合成方法に従って製造される。
ABC及びGCBサブタイプの両方を表す15の細胞株のパネルにおいて、9人がアポトーシスを受け、さらに2人が細胞周期停止を経験した。3つの細胞株はSYKに感受性であるがJAK阻害には感受性がなく、1つの細胞株はJAKに感受性であったがSYK阻害には感受性ではなかったのに対し、SYK及びJAK阻害の協力的な効果が細胞株の4つで観察された。15の細胞株のうち3つ(DB、TOLEDO及びRCK8)はセルデュラチニブ耐性であった。
表1はまた、CD79突然変異を含むLY10(OCI−LY10)細胞株がセルデュラチニブに対して感受性であることを示す。表1はさらに、IkB−アルファ発現を欠く細胞株であるRCK8がセルデュラチニブ耐性をもたらし得ることを示す。これらの観察に基づいて、セルデュラチニブは、CD79突然変異を保有するが、IKBファミリーメンバーの欠損がある患者ではない患者の処置に有用であり得ることが想定される。
図1及び図2は、それぞれ、FACS分析によるEdu取り込みの阻害パーセント及びカスパーゼ3切断の誘導率を示す棒グラフを示す。
上記のデータによって、セルデュラチニブがDLBCL細胞系に対して2μMで広く活性であり、アポトーシスを誘導することによって主に作用することが実証される。
セルデュラチニブは、B細胞白血病及びリンパ腫、例えばDLBCLの処置に有用であると考えられる。
実施例2:初代ヒトCLL細胞に対するセルデュラチニブの効果
24の初代CLL試料中のセルデュラチニブ
CLL細胞単離及び培養:ヒトB細胞富化カクテルキット(Stemcell Technologies、Vancouver、BC、Canada)を用いて、CLL細胞(患者全血由来)を精製し、抗CD5/CD19で染色して純度を確認したところ、全ての症例で95%を超えていた。単離されたCLL細胞を、15%ウシ胎仔血清(Gibco、Grand Island、NY、USA)、ペニシリン(100IU)及びストレプトマイシン(100μg/mL)を含むRPMI−1640中で、1×107細胞/mLの密度で、2.5mg/mLのCpG、100ng/mLのCD40L、10ng/mLのIL−4の有無において、培養した。抗IgM刺激は、プレート結合抗IgM(10μg/mL)を用いて行った。JAK1/JAK2(Cell Signaling Technology、Danvers、MA)及びSTAT3(Cell Signaling Technology、Danvers、MA、USA)のリン酸化を検出するために、CLL細胞を、10ng/mLのIL−6(R&D Systems、Minneapolis、MN)を用いて刺激した。
細胞生存率アッセイ及びIC50測定:CLL患者から単離したCD5+/CD19+細胞を、漸増濃度のセルデュラチニブ(101−105nM)の有無において72時間インキュベートし、細胞生存度を前に記載のとおり、2μg/mLヨウ化プロピジウム(PI)(Molecular Probe)を用いる染色によって測定した。生存細胞ゲート中の1万個の事象を、FACS LSR2(BD Biosciences)によってカウントし、データを各標本(100%)について一致したビヒクル対照に対して正規化した。その後、GraphPad Prism 6プログラム(San Diego、CA、USA)を用いてIC50 を生成した。
共培養条件:ヒト骨髄間質細胞株HS−5は、ATCCから入手し、NK−Tert(NKTert)はDr.Jan A.Burger(M.D.Anderson)から贈呈され、CLL細胞、及び間質細胞共培養アッセイは以前に記載されていた(例えば、Cheng et al.、Leukemia.2014;28(3):649−657)。要するに、間質細胞を、24ウェルプレートに5×104細胞/ウェルの濃度で播種し、24時間インキュベートして細胞を接着させた。次いで、RPMI培地中の間質細胞のコンフルエントな層上に、CLL細胞を、100:1(5×106細胞/mL)の比で培養物に添加した。穏やかなピペッティングによりCLL細胞を採取し、接着性間質細胞層をそのまま残した。
一次CLL試料を、セルデュラチニブを連続希釈し、72時間後の細胞生存度をPI/7AADフローサイトメトリーで測定した。
IL−4/CD40Lの存在下または非存在下で二重SYK/JAK阻害剤であるセルデュラチニブで24の初代CLL試料を処理し、ヨウ化プロピジウム/アネキシンV染色及びPARP切断を用いてアポトーシスを評価した。セルデュラチニブのB細胞受容体及びサイトカイン受容体誘導性シグナル伝達に対する効果を、イムノブロッティング及びフローサイトメトリーによって評価した。
24人の患者からのCLL細胞を24時間、48時間及び72時間、セルデュラチニブで処置し、ヨウ化プロピジウム及びアネキシンV染色を用いて生存率を評価した。セルデュラチニブは、濃度及び時間依存的な方式でアポトーシスを誘導した。
変異していないIGHV及びCD49dの高発現は、進行性疾患及びCLLの予後不良に関連する。治療的使用のために重要なことに、セルデュラチニブは、低いCD49dまたはZAP70発現(<30%)を有するCLL細胞と比較して、高CD49dまたはZAP70発現(>30%)を有するM−CLL及びCLL細胞中と比較してU−CLL中で、有意に大きいアポトーシスを誘導した。
セルデュラチニブを用いたCLL細胞の処理は、アポトーシス促進カスパーゼ3タンパク質の切断/活性化を誘導し、またアポトーシスのマーカーである85kDaのPARPサブフラグメントのレベルの上昇も誘導することが見出された。セルデュラチニブ誘発アポトーシスは、カスパーゼ阻害剤ZVADとの同時処置によって阻害され、これは、CLL細胞のセルデュラチニブ誘導アポトーシスがカスパーゼ依存性機構を介して起こることを示している。さらに、アポトーシス促進タンパク質NOXAのレベルは、ZVADの存在下でのセルデュラチニブ処置の24時間後に増加したが、抗アポトーシスタンパク質MCL1は減少した。
リンパ節におけるBCRのライゲーションは、CLLの生存及び化学療法に対する耐性を高める。セルデュラチニブの前処理は、可溶性抗IgM及び固定化抗IgM誘導性シグナル伝達経路の両方を阻害することができた。IL−4は、CLL細胞のJAK/STAT−6経路を介してシグナル伝達し、化学療法からの媒介性保護において重要であることが示されている。セルデュラチニブによるCLL細胞の処理は、IL−4誘導STAT6リン酸化を抑止した。さらに、セルデュラチニブ阻害IL−4は、ZVADの存在下で24時間後に表面IgM発現を増大させた。
患者において、リンパ節組織部位は、アポトーシスからCLL細胞を保護する様々なシグナルを提供する。したがって、本発明者らは、IL−4及びCD40Lを使用してインビトロでリンパ節環境を模倣した。24時間後のIL−4/CD40L処理は、非処理細胞と比較してCLL細胞の生存率を増大させた。
この実施例は、初代ヒトCLL細胞のセルデュラチニブによる処置がカスパーゼ依存性アポトーシスを誘導し、CLL試料の予後マーカーが不良で力価が増大していることを示した。セルデュラチニブは、患者で達成可能な濃度(約2.2μM)でBCR及びIL−4媒介シグナル伝達を克服した;セルデュラチニブドは、IL−4/CD40L支持体の有無のもとでアポトーシスを誘導した。
60のCLL試料中のセルデュラチニブ
上述の方法に従って分析した60個のCLL試料において、60のCLLにおけるIC50は0.37〜10.02μMの範囲であった。コホートのセルデュラチニブの平均IC50は2.57μMであり、これは臨床的に達成可能である。
既知の予後因子によって層別化されたCLLサブグループ間で、セルデュラチニブによる細胞死滅が異なるか否かも研究した。非突然変異IGHV(N=33)対突然変異IGHV(N=27)のCLL細胞は、IC50が低く、したがってセルデュラチニブに対してより感受性であることが判明した(P=0.0395)(スチューデント検定で分析したデータ)(図5)。高リスク遺伝子異常(del(11q)、トリソミー12、及びdel(17p)を含む)を有するCLL細胞はまた、del(13q)を持つ細胞、またはこれらの特定の遺伝子異常を全く欠いている細胞よりもセルデュラチニブに対してより感受性であった(図6)。したがって、CLL細胞は、特にIGHV及び細胞遺伝学による予後不良の症例において、セルデュラチニブに対して感受性である。
セルデュラチニブはまた、例えば、Zap70によって証明されるように予後不良の場合にも有用であると考えられる。
実施例3:セルデュラチニブの第I相試験の臨床結果及び相関結果
再発性/難治性CLL/SLLまたはB細胞非ホジキンリンパ腫(NHL)を有する患者においてセルデュラチニブに関するヒト初回試験を実施した。28日サイクルの3+3用量漸増試験を実施した;研究された用量は、毎日1回15mg〜65mg、毎日2回45mgまでの範囲であった。患者は、72時間のPK評価のために1日目に単回投与を受けた。4日目に連続投与を開始した。CLL/SLLまたはB細胞NHLを有する43人の患者に投与した。年齢中央値は67歳(23〜85歳)であり、以前の治療法(tx)の中央値は3(1〜8)であった。
薬物動態(「PK」)、薬力学(「PD」)、及び安全性をモニターした。応答は、標準的な基準によって評価した。SYK及びJAKの阻害レベルは、B細胞抗原、IL2、IL4、IL6、及びGM−CSFの受容体を介したシグナル伝達を測定する様々な全血アッセイを用いて測定した。CCL3、CCL4、及び他の炎症マーカー(β2M及びCRP)を含む腫瘍負荷の血清マーカーも測定されていた。
PKは、12〜16時間の半減期及び2:1のピークトラフ比を有する毎日1回の投与に適切であることが観察された。サイクル1の28日目に、循環リンパ球(80−90%阻害)及び血清炎症マーカー(例えば、β2M、CRP、CCL4;50−90%阻害)におけるSYK及びJAKの飽和阻害は、40mg用量のCminで達成された、約0.6〜1μMの血漿濃度で生じた。65mg用量では、これらのパラメーターは、サイクル1の1日目に80〜90%阻害され、さらに低い用量と比較してさらに即時の効果を示した。65mg用量では、定常状態Cmin及びCmax濃度は、試験したB細胞リンパ腫細胞株の大部分においてアポトーシスを誘導するのに十分な、それぞれ、約1及び2μMであった。
一般に、セルデュラチニブは十分に耐容されている。合計10人の患者が200日以上にわたってセルデュラチニブに残り、そのうち2人は1年以上継続していた。
表2は、n=28である経口投与後の定常状態の薬物動態のデータをまとめたものである。
ここでn=20であり、45mg BIDの用量群では、以下が観察された:Cmin=1.27±0.6μM;Cmax=2.16±0.5μM;Cave=1.4±0.7μM;AUC_tau=33.3±15.9μM*時間;T1/2−27.5±22.5時間。
65mgの単回用量のセルデュラチニブに続いて、FL患者の全血においてBCRシグナル伝達の完全な阻害が観察されたことが観察された。
表3は、n=43であるPK/PDデータをまとめたものである。
40〜100mgのQD用量という観点では、平均定常状態(SS)Cmin及びCmax濃度は、それぞれ、0.77±0.41及び1.63±0.56μMでプラトーに達し、平均定常状態(SS)Cave濃度は、1.07±0.44μMであることが見出され、BCRの阻害%(Cmin−Cmax)は、92〜100%であり、IL4の阻害%(Cmin−Cmax)は、63〜78%であった。40〜100mgというQD投与によって、末梢血におけるSYK及びJAKシグナル伝達の50〜100%(定常−状態Cmin−Cmax)阻害、ならびに炎症の血清マーカーの有意な阻害が生じた。
これらの結果に基づいて、10mg〜約75mgのセルデュラチニブの1日用量が、血液癌の処置をそれを必要とする患者に行うのに有用であると考えられる。
SYK及びJAKシグナル伝達の阻害の程度ならびに炎症の血清マーカーの阻害は、腫瘍応答と有意に相関した。PKは、t1/2が12〜16時間でピークトラフ比が2:1のQD投与に適しているが、pH依存性の低溶解性には分解に限界があり、生理学的モデリングではBID投与が全体的な暴露を増大することが示唆されたと思われる。
これは、末梢血アッセイにおけるSS CminでのSYK及びJAKの完全な阻害が観察された45mgのBID用量で達成され、これは暴露のほぼ倍増と一致した。45mgのBID用量では、初代細胞及び細胞株の両方を用いて前臨床腫瘍モデルにおいてアポトーシスを誘導するのに十分な濃度である約1.5μMまでSS Cminが増大された。患者における45mg BID用量のその後の評価によって、この用量レベルで処置された全ての患者についてより高いCmin、Cmax、及びAUC値が示され、PDマーカーは両方の経路の完全な阻害を示した。
研究に関連するとみなされ、2例以上の患者で生じる、グレード3以上の治療下発現緊急有害事象(AE)は以下であった:疲労(n=5)、貧血及び好中球減少(各々n=3)、及び腹痛、好中球数の減少、及び肺炎(各々n=2)。全体的に最も高い暴露は、45mgのBID用量で達成され、ここでは2用量制限毒性(DLT)が生じた:グレード3の膵炎及びグレード3の疲労。
PK/AEプロファイルに基づいて、1.25〜1.5μMまたはそれ以上のSS Cminにおいて、より高い等級の有害事象が存在するようであった。PKモデリングによって、35mg BIDの用量が、1.02μMのSS Cmin、1.3μMのSS Cmax、1.2μMのSS Cave、100〜100%BCRの阻害(Cmin−Cmax)、及び90〜95%のIL4(Cmin−Cmax)を生じ、これは、許容可能であり、有効であり、一貫した抗腫瘍活性を提供することが示された。
SS Cminが0.7μMの再発性/難治性のCLL及びFL患者においては、一貫した腫瘍反応が観察された。
CLL、FL、及び形質転換されたFL(3Bのグレード)を有する5人の重度に前処置された患者において、30〜65mgQDの範囲の用量で部分的応答が観察された。2人の部分的な反応が、45mgのBID用量群で観察され、患者の1名はFLで、もう1名はCLLであった。応答は、典型的には2サイクルの処置後に起こった。複数の患者が節の減少を示し、1年以上にわたり臨床的利益を維持している。
結論
セルデュラチニブは、リンパ系悪性腫瘍を有する対象において良好に耐容されている。セルデュラチニブは、高レベルのSYK及びJAK阻害において良好なPKプロファイル及び良好な耐容性を示した。PKデータは毎日1回投与をサポートし、Cminで実質的な阻害を維持した。最大阻害を伴うSYK/JAKシグナル伝達の用量依存的かつ選択的阻害は、80%より大きかった;JAK2またはPKCの阻害は検出されなかった。BCRシグナル伝達経路は、定常状態Cmin/Cmaxで90−100%阻害され、JAK/STATシグナル伝達は60〜80%Cmin/Cmaxで阻害された。PKデータによって、毎日1回40mg〜100mgの経口の曝露のプラトーを示し、その結果、定常状態Cminでマイクロモル未満の曝露(約0.7μM)を生じた。溶解性がその理由であり得ると考えられる。BID投薬は、曝露においてこのプラトーを克服し、PD効果を増強した。
セルデュラチニブは、β2M、CRP、TNFR、及びCCL3/4などの炎症のマーカーである血液中の複数の血清タンパク質を有意に減少させた。腫瘍応答と炎症の血清マーカー(例えば、β2M及びCCL4)の阻害との間に有意な相関が観察された。
セルデュラチニブは、高度に前処置された患者において有望な活性を有する。これらのデータは、再発性/難治性B細胞悪性腫瘍を有する患者のこの研究における臨床的活動の証拠を示した。今日まで、CLL、FL、及びDLBCLを有する患者を含む部分的な反応が観察されている。他のBCR経路阻害剤で病気が進行した(または容認できなかった)患者を含め、複数の患者で腫瘍の縮小が見られた。他のBCR経路阻害剤で見られるように、リンパ球増加症の証拠が観察された。結果によってまた、これらの重度に前処置された患者において、セルデュラチニブが耐容性が良好であることが示された。
これらの結果によって、部分的な反応を含めて、再発性または難治性の血液癌患者においてセルデュラチニブが活性であり、耐容性が高いという追加の証拠が提供される。
実施例4:セルデュラチニブは、イブルチニブ感受性及びイブルチニブ耐性初代CLL細胞及びBTKC481S形質転換細胞株の増殖を阻止することが判明した。
イブルチニブはSelleckchem(Houston、TX、USA)から購入した。
細胞分離及び培養:ヒトB細胞富化カクテルキット(Human B cell Enrichment Cocktail)(Stemcell Technologies、Vancouver、BC、Canada)を用いてCLL細胞を精製し、純度の検証のために抗CD5/CD19(それぞれ、クローンHIB19及びUCHT2、eBioscience、San Diego、CA)で染色し、これは全ての場合において95%を超えていた。単離されたCLL細胞を、15%ウシ胎仔血清(Gibco、Grand Island、NY)、ペニシリン(100IU)及びストレプトマイシン(100μg/mL)を含むRPMI−1640中で、1×107細胞/mLの密度で、2.5mg/mLのCpG(ODN2006、Invivogen(San Diego、CA)から購入したヒト特異的な、刺激性B型CpG−ODN)、100ng/mLのCD40L(Enzo Life Sciences、Plymouth Meeting、PA)、10ng/mLのIL−4 CD40L(Enzo Life Science,Plymouth Meeting,PA)の有無で培養した。抗IgM刺激は、プレート結合抗IgM(10μg/mL)を用いて行った。
細胞増殖アッセイ:ブロモデオキシウリジン(BrdU)を8日間の培養で、組み合わせた刺激(2.5μg/mL CpG、100ng/mL CD40L、10ng/mL IL−4及び10μg/mLのプレート結合IgM)とともに8日で添加した。BrdU+細胞のパーセンテージは、BrdUフローキット(BD Biosciences)を製造業者の指示に従って使用してフローサイトメトリーによって分析した。
BTK C481S及びT316A変異構築物の作製:pCMV6発現ベクター中のBTK野生型(WT)cDNAクローンを、ORIGENE(Rockville、MD USA)から購入した。BTKC481S及びBTKT316A突然変異体ベクターは、QuikChange II部位特異的突然変異誘発キット(Agilent Technologies、Cedar Creek、TX、USA)を用いて製造者の指示に従って作製した。変異体構築物の同一性は、サンガー配列決定によって確認した。
細胞トランスフェクション、細胞計数及び生存率アッセイ:製造業者のプロトコール(Amaxa、Cologne、Germany)に従って、キットV、Program U−13をAmaxa Nucleofectorで用いて、TMD8細胞にWT BTKまたはBTKC481S変異体の構築物をトランスフェクトした。トランスフェクション後、細胞を回収のために24ウェルプレート中のNKTert細胞と共に24時間共培養した。次いで、トランスフェクトされたTMD8細胞に、イブルチニブ、セルデュラチニブ及びビヒクル(DMSO)を添加し、Muse Cell Analyzer(Millipore、Hayward、CA、USA)を用いてMuse(商標)Count&Viabilityキットを用いて細胞生存率を測定した。
フローサイトメトリー:FACS分析のための細胞染色は、以前に記載されたように最適化された量の蛍光色素結合mAbを用いて行った(例えば、Cheng et al.、Leukemia.2014;28(3):649−657)。簡単に説明すると、洗浄緩衝液(1×PBS、0.5%BSA、0.1%NaN3)で2回洗浄した後、1×106個の細胞を洗浄緩衝液100μLに懸濁し、蛍光色素結合mAbで染色し、室温で20分間インキュベートした。フローサイトメーターでスキャンする前に、細胞をPerm/Wash緩衝液中で2回洗浄した。細胞内燐光分析のために、新たに単離したCLL細胞を、直ちに2〜4%パラホルムアルデヒドで固定し、−80℃で保存した。凍結保存した細胞を室温で解凍し、氷上で50%メタノールで4時間浸透させた。1×106個の細胞を100μLの洗浄緩衝液に懸濁し、蛍光色素複合mAbで染色し、室温で20分間インキュベートした。次いで、フローサイトメトリーをLSR2フローサイトメーター(BD Biosciences)で行い、データをFlowJoソフトウェア(FLOWJO LLC、Ashland、OR、USA)を用いて分析した。
イブルチニブに応答した患者からのイブルチニブ治療の前に単離した初代細胞を、組み合わせ刺激の条件下で250nMのイブルチニブまたはセルデュラチニブのいずれかで処置した。8日目にBrdUの取り込みを測定した。これらの細胞は、この濃度のいずれかの薬剤に同等に良好に応答した。
3人のイブルチニブ再発患者から単離した細胞についても同様の実験を行った。これらの試料は、イブルチニブ耐性を付与するBTK突然変異を保有する。2人の患者は既知の突然変異BTKC481Sを有し、1人の他の患者はBTKT316Aを有していた。生細胞数を7日間毎日カウントした。
これらの突然変異細胞をイブルチニブ及びセルデュラチニブに対して試験すると、イブルチニブ処置後に有意な数のBrdU+ CLL細胞が残ったが、セルデュラチニブはBrdU+細胞集団の外観を3つの場合全てにおいて、ほぼ完全に遮断した。これらの実験では、セルデュラチニブがイブルチニブ感受性で細胞増殖をブロックするだけでなく、イブルチニブ耐性CLL細胞でもブロックしたことが実証される。
セルチュラチブがイブルチニブ抵抗性細胞の増殖を直接抑制するか否かを試験するために、BTKC481S及び野生型BTK(WT)発現ベクターの両方を構築し、クローニングし、次いで、イブルチニブ感受性リンパ腫細胞株TMD8にトランスフェクトした。イブルチニブまたはセルデュラチニブに曝露した後の細胞増殖を評価した。
WT BTKでトランスフェクトしたTMD8細胞の増殖は、250nMでイブルチニブとセルデュラチニブの両方によって同様に阻害されたことが観察された(図3)。しかし、BTKC481S−トランスフェクト細胞は、予想どおりイブルチニブに対する感受性が低かった(図4)。その一方、これらの細胞の増殖は、WT BTK細胞で観察されたブロックと同様に、セルデュラチニブによって効果的にブロックされた。
実施例5:濾胞性リンパ腫患者の症例研究
症例研究1(患者1):患者は、形質転換濾胞性3Bリンパ腫(IHCによりMYC/BCL2/BCL6陽性)を有する71歳の白人女性であった。腫瘍は、CD20+、CD10−、BCL2(強)、cMYC(50%)及びKi67(80%)であった。
患者の事前の治療には以下を含んだ:R−CHOP(Rituximab;シクロホスファミド;塩酸ドキソルビシン;オンコビン;プレドニゾン)(2013年11月〜2014年2月)。患者は2015年2月に再発した。患者は2015年3月に1日1回、口で65mgのセルドラチブ(「PO QD」)を開始した。
次のことが観察された:定常状態Cmin−Cmaxは0.73−1.74μMであり;阻害%BCRシグナル伝達は100%であった;阻害%IL2、IL4、IL6シグナル伝達は60〜100%であった;そして阻害%GM−CSFは約20%であった。患者は2サイクル後にセルデュラチニブに対する部分的反応(69%)を示した。
患者1は2015年8月に進行した。患者1は5サイクルの治療後に再発した。
症例研究2(患者2):患者は、濾胞性リンパ腫を有する71歳の白人女性であった。
患者の事前の治療には以下を含んだ:クロラムブシル(1998;CR)、フルダラビン/リツキサン(1999−2000;CR)、及びアバスチン/リツキサン(2011年3月〜2012年1月)。患者2は、2014年9月に再発した。患者2は、2014年10月にセルデュラチニブ45mgのPO QDを開始し、疲労のせいで用量は30mgに減少した。
次のことが観察された:定常状態Cmin−Cmaxは0.25−0.63μMであった。阻害%BCRシグナル伝達;pSYK Y525/525については90%、pERK Y204については0%;阻害%IL2、IL4、IL6シグナル伝達は60〜100%であった;GM−CSF阻害%は0%であった;2サイクル後のセルデュラチニブに対する部分的応答(56%)、及び治療で1年後に76%リンパ節低減。
患者2はまだ薬物投与中である。
症例研究3(患者3):患者は、濾胞性リンパ腫を有する79歳の白人男性であった。患者の腫瘍は、STATにおいてS86A変異を有する。
患者の事前の治療:R−CVP(リツキシマブ;シクロホスファミド;ビンクリスチン;プレドニゾロン)(2006−2007)、R−維持(2006−2008)、BR(ベンダムスチン;リツキシマブ)(5/2013−9/2013)、イブルチニブ(10/2013−4/2014)、R−CHOP(12/2013−4/2014)。患者3は、2014年5月に再発した。患者3は、2014年6月に毎日2回(「PO BID」)経口でセルデュラチニブ15mgを投与された。安定した疾患がセルデュラチニブで6ヶ月間、患者3において観察された(20%のリンパ節減)。
これらの事例研究では、セルデュラチニブが現在まで耐容性が良好であり、濾胞性リンパ腫を有する事前に重度に処置された患者において有望な活性を有することが示されている。応答は他の非ホジキンリンパ腫(NHL)で見られた。
実施例6:セルデュラチニブ及びABT−199(ベネトクラクス)の組み合わせで観察された相乗作用
DLBCL細胞株における相乗的抗腫瘍活性を、Cell Titer Gloアッセイを用いて測定した。簡潔には、5,000個の細胞を、96ウェルプレートに完全組織培養培地でプレートした。セルデュラチニブ及びベネトクラクスを、単一薬剤として、または1:1、1:2、1:9、2:1、及び9:1の比でセルトラチクスとベネトクラクスとの組み合わせの後に、6つの異なる濃度範囲(10、3、1、0.3、0.1、0.03μM)で細胞に適用した。細胞を、37℃の組織培養インキュベーター中で72時間、薬物の有無にかかわらずインキュベートした後、製造業者のプロトコール(Promega)に従ってCellTiter Gloによる評価を行った。相乗作用は、Prismソフトウェアを用いたIC50測定後、他のいずれかの箇所(Jacquement et al.、Molecular Cancer 2012)に記載されているように、組み合わせ指標スコアを計算することによって評価した。化合物は市販されているか、または当業者に公知の合成方法に従って製造される。
DLBCL細胞株
以下の表4(μMで示されるIC
50)に示されるように、ABT−199及びセルデュラチニブは、DLBCL細胞株において相乗作用を示した。DLBCL細胞株は、ATCCから購入した。強い相乗作用は、0.1〜0.3(括弧内)の範囲とみなされる;中程度の相乗作用は、0.3〜0.6の範囲にあると考えられ;わずかな相乗作用は、0.6〜0.8の範囲にあると考えられ;相加作用は、0.8〜1.2の範囲であると考えら;わずかな拮抗作用は、>1.2の範囲であると考えられる。
SU−DHL4細胞株では、セルデュラチニブは1.49μMのIC50値を示したが、ABT−199は、1.63μMのIC50値を示した。対照的に、ABT−199に対するセルデュラチニブの1:1の比は、0.57μMというIC50値を示した。同様に、U2932細胞株では、セルデュラチニブは3.73μMというIC50値を示したが、ABT−199は0.49μMというIC50値を示した。対照的に、ABT−199に対するセルデュラチニブの1:1の比は、0.18μMというICIC50値を示した。
CLL初代細胞
CLL細胞をIL−4/CD40Lで6時間処理し、次いでABT−199またはセルデュラチニブ単独または組み合わせてさらに24時間インキュベートした。ABT−199は、セルデュラチニブまたはビヒクル対照と比較して、IL−4/CD40Lの非存在下でのCLL細胞生存率を有意に低下させた。ABT−199誘導アポトーシスに対するIL−4/CD40L保護CLL細胞による処理;しかし、代表的な試料(図7A)及び要約(n=9)(図7B)に示すIL−4/CD40Lの有無の処置にかかわらず、セルデュラチニブによる処置は、細胞生存率を同様のレベルまで低下させた。さらに、2つの薬物の組み合わせで処置したCLL細胞は、いずれかの薬物単独よりも、CLL細胞生存率を大幅に低下させた。
CLLについて以前に記載された分画2薬剤分析法を用いて、セルデュラチニブとABT−199との間の相乗的相互作用を評価した。対角線より上の値は、相加的な相互作用を表し、線の下の値は相乗的である。IL4/CD40Lの存在下では、相乗的関係が大部分の試料(n=8/9)で観察された(図7C)。
ABT−199と組み合わせたセルデュラチニブは、CD40L及びIL−4からの微環境支援の存在下で、より高いレベルのCLL細胞死を生成するために相乗作用を発揮した。
本明細書で提供されるデータは、ABT−199及びセルデュラチニブによって引き起こされる相乗作用をさらに実証する。このデータによってまた、Bcl−2/Bcl−XL阻害剤と組み合わせたセルデュラチニブが有用である可能性が示唆されている。
実施例7:セルデュラチニブとイブルチニブの組み合わせで観察された相乗作用
DLBCL細胞株における相乗的抗腫瘍活性を、Cell Titer Gloアッセイを用いて測定した。簡潔には、5,000個の細胞を、96ウェルプレートに完全組織培養培地でプレートした。セルデュラチニブとイブルチニブを、1つの薬剤として、または1:1、1:2、1:9、2:1、及び9:1の比でセルデュラチニブとイブルチニブとの併用後のいずれかで、6つの異なる濃度範囲(10、3、1、0.3、0.1、0.03μM)で細胞に適用した。細胞を、37℃の組織培養インキュベーター中で72時間、薬物の有無にかかわらずインキュベートした後、製造業者のプロトコール(Promega)に従ってCellTiter Gloによる評価を行った。相乗作用は、Prismソフトウェアを用いたIC50 測定後、他のいずれかの箇所(Jacquement et al.、Molecular Cancer 2012)に記載されているように、組み合わせ指標スコアを計算することによって評価した。化合物は市販されているか、または当業者に公知の合成方法に従って製造される。
以下の表5に示すように、イブルチニブ及びセルデュラチニブは、相乗作用の結果を示した。強い相乗作用は、0.1〜0.3の範囲(括弧内)とみなされる;中程度の相乗作用は0.3〜0.6の範囲にあると考えられ;わずかな相乗作用は0.6〜0.8の範囲にあると考えられ;相加作用は0.8〜1.2の範囲であると考えられ;わずかな拮抗作用は>1.2の範囲にあると考えられる。
OCI−Ly18細胞株において、セルデュラチニブは1.33μMのIC50値を示し、一方、イブルチニブは1.24μMというIC50値を示した。対照的に、セルデュラチニブとイブルチニブとの1:1の比は、0.5μMというIC50値を示した。同様に、U2932細胞株では、セルデュラチニブは3.73μMというIC50値を示したが、ABT−199は0.49μMというIC50値を示した。対照的に、ABT−199に対するセルデュラチニブの1:1の比は、0.18μMというIC50値を示した。
同様に、VAL細胞株において、セルデュラチニブは1.33μMのIC50値を示し、一方、イブルチニブは4.56μMというIC50値を示した。対照的に、セルデュラチニブとイブルチニブとの2:1の比は、0.98μMというIC50値を示した。
実施例8:IκBαの遺伝的またはCD40L媒介性の喪失は、DLBCL細胞株における二重SYK/JAK阻害剤セルデュラチニブに対する抵抗性と関連する
NFκBの調節不全は、様々なB細胞悪性腫瘍において観察され、腫瘍進行に寄与する増殖及び生存シグナルを生じる。正常な休止状態では、NFκBは、核輸送またはDNAへのアクセスを阻害する、IκB(NFκBの阻害剤)ファミリーメンバーとの物理的会合を介して、主に負に調節される。B細胞において、NFκBは、ユビキチン化及び分解のための負の調節タンパク質を標的とする、IκBメンバーのIKK複合体依存性リン酸化を導く、様々な外部刺激(例えば、B細胞抗原受容体、トール様受容体、サイトカイン受容体、CD40の連結)を介して活性化される。これらの外部シグナルは、自己分泌様式で腫瘍自体によって、または腫瘍微小環境によって提供される。しかし、ある場合には、CD79A/B、MYD88、及びCARD11への突然変異の活性化、ならびにA20及びIκBファミリーメンバーのような負の調節因子の不活性化との関連で記載されているように、外部刺激の必要性は、NFκBの決定的な調節因子への突然変異によって影響を受けるか、または完全に回避される。
セルデュラチニブは、CARD11、MYD88、及びA20に変異を保有するDLBCL細胞株において抗腫瘍活性を維持した。しかしながら、DLBCL細胞株のサブセットは、15のDLBCL細胞株のスクリーニング(3つは、セルデュラチニブに対して完全に耐性であった)で、生存についてSYK及びJAKシグナル伝達に様々な程度の依存性を示す。次世代配列決定により、セルデュラチニブ耐性細胞株RCK8の1つにおいてIκBα遺伝子の2対立遺伝子不活性化が明らかになった。1つの対立遺伝子は、エキソン1にフレームシフト突然変異を有し、その結果、停止コドンを生じ、第2の対立遺伝子は、Gln154におけるエクソン3のナンセンス突然変異であり、停止コドンにもつながる。細胞系は、タンパク質レベルでIκBα発現を欠いていた。したがって、本発明者らは、IκBαの喪失がセルデュラチニブに対する耐性の原因である可能性を探求した。
RCK8におけるIκBαの喪失と一致して、細胞株は基礎NFκB活性の増強を示した。野生型IκBαの再発現は、NFκBの迅速な抑制、及び最終的には細胞周期停止及び細胞死をもたらし、これによって、この細胞株は生存についてこの遺伝子の喪失に依存することが示された。NFκBの抑制と関連して、細胞pAKT S473及びpERK Y202が減少したが、pSTAT3 Y705では減少しなかった。次に、本発明者らは、SYK/JAK阻害に対する耐性が生じ得るか否かを決定するために、siRNAを用いてセルデュラチニブ感受性細胞株においてIκBαをノックダウンしようと試みた。試験したDLBCL細胞株(n=4)のいずれもIκBα遺伝子のノックダウンを許容できなかったが、RCK8におけるさらなる変異がIκBαのホモ接合性喪失条件下での生存を可能にすることが示唆されている。CD40の連結は、タンパク質レベルでIκBαの一時的なダウンレギュレーションをもたらす。したがって、本発明者らは、これを複数のDLBCL細胞株において特徴付け、IκBαがCD40刺激後30〜60分以内に最大限抑制され、処置前レベルに2〜4時間で戻ったことを見出した。しかしながら、NFκB活性化への影響はより長く、試験した7つのセルデュラチニブ感受性細胞株のうち5つはCD40Lとの共培養によって耐性になった。この耐性と関連して、NFκBの誘導だけでなく、pERK Y204、pAKT S473、及びpSTAT3 Y705も誘導された。興味深いことに、CD40L誘導性のNFκB活性化はセルデュラチニブによって阻害されなかったが、他のシグナル伝達事象は、抵抗性の生成にもかかわらず阻害された。
要約すると、IκBαの喪失は、セルデュラチニブ耐性DLBCL細胞株RCK8におけるバーゼルNFκB活性の増強及び生存と関連することが実証された。高レベルの基礎pNFκB(p65)サブユニットが明らかであり、IKB−アルファ発現の再導入は、pNFκB及び細胞死の減少をもたらす。いくつかのDLBCL細胞株におけるpNFκBの増大(p65)及びセルデュラチニブ耐性に関連するCD40L誘導のIKB−アルファのダウンレギュレーション。
特に定義されない限り、本明細書で用いる全ての技術用語及び科学用語は、本開示が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を表す。
本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用される場合、単数形「a」、「an」、及び「the」は、文脈が別途明確に指示しない限り、複数指示対象を含むことに留意すべきである。したがって、例えば、「ある薬剤(an agent)」への言及は、複数の薬剤を包含する。
本明細書で使用される場合、用語「含む(comprising)」または「含む(comprises)」とは、組成物及び方法が列挙された要素を含むが、他の要素を排除しないことを意味するものとする。組成物及び方法を定義するために使用される場合、「〜から本質的になる」とは、述べられた目的に関して、任意の本質的に重要性の他の要素を組み合わせに排除することを意味するものとする。したがって、本明細書で定義される要素から本質的になる組成物は、特許請求される基本的及び新規な特性(複数可)に実質的に影響を与えない他の材料またはステップを排除しない。「からなる」とは、他の成分の微量な要素及び実質的な方法ステップを除外することを意味するものとする。これらの移行用語の各々によって定義される実施形態は、本開示の範囲内にある。
数的指定、例えば、温度、時間、量及び濃度(範囲を含む)の前に使用される場合の用語「約」は、近似を示しており、これは(+)または(−)10%、5%または1%変化してもよい。
本明細書に記載されている全ての刊行物、特許出願、特許及び他の参考文献は、それぞれが個々に参照により組み込まれているかのように、その全体が参照により明白に組み込まれる。矛盾する場合には、定義を含めた本明細書が優先する。
本開示は、上記の実施形態に関連して記載されているが、前述の説明及び実施例は、例示を意図するものであり、本開示の範囲を限定するものではないことを理解されたい。本開示の範囲内の他の態様、利点及び変更は、本開示が関係する当業者には明らかであろう。