JP2018531021A6 - 初代細胞試料を調製する方法 - Google Patents

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Abstract

本発明は、ヒト対象から得られた、臨床検査用の生存疾患細胞の試料を調製する方法を提供し、該方法は、アノイキスおよび/または細胞のアノイキスを阻害し、同時に、細胞がインビボであったときの細胞の生理機能およびゲノム組成を維持する。本発明の方法では、初代細胞を、2%超で、20%未満の酸素などの抗アノイキス雰囲気条件下、少なくとも1種のアノイキス阻害剤、好ましくは、少なくとも1種の内因性アノイキス経路の阻害剤および少なくとも1種の外因性アノイキス経路の阻害剤を含む培地中で培養する。また、アノイキスを阻害する条件下での表面付着を含む、複数の培養条件を組み合わせた方法も提供される。本発明の方法で使用するための組成物およびキットも提供される。
【選択図】なし

Description

関連出願
本出願は、2015年10月20日出願の米国特許仮出願第62/243,765号の優先日の利益を主張する。この内容は、参照によってその全体が本明細書に組み込まれる。
細胞がヒト組織検体から直接得られる場合に、臨床検査の試料としての使用に好適な生存ヒト疾患細胞を得ることが多くの制約により困難になっている。このことが、組織から抽出された生きたヒト細胞を使う臨床検査が、あるにしても、ほんのわずかしか存在しないことの大きな理由である。患者から検体が取り出された場所とは異なる場所で生存疾患細胞試料の調製を行わなければならない場合が多い。このためには、その組織を長期間にわたり細胞生存を維持する収集容器に入れて輸送する必要がある。さらに、試験に利用可能な患部組織の量は限られている。生検の間に検体が得られる場合、5〜10ミリグラムまたはそれ未満の患部組織が利用可能な全てであることもある。この量の組織検体では、生存細胞抽出用の従来の技術ではほんの少しの生存細胞しか得られない。臨床検査はかなりの生存疾患細胞を必要とし、このためには、患者の腫瘍を表わす好適な数になるように、抽出した細胞を増殖する必要が生じるであろう。これは、いくつかの追加の制約を生じさせる。第1に、細胞を増殖させるために利用できる時間が限られていることである。臨床検査結果は、適切な処置プロトコルをタイミングよく確実に選択するためには、患者検体の取得後、数日以内に入手できるのが理想的である。まれには、検体が患者から得られた30日後でも臨床結果が有用な場合もある。ほとんどの場合、臨床検査結果は2週間未満に使用可能になるように計画される必要がある。このために、理想的には、検体から抽出した少数の生存細胞を抽出および増殖し、2週間未満で十分な数の生存疾患細胞の提供を可能とする方法が必要となる。
さらに、臨床検査結果を信頼できるものとするためには、細胞を、検体中で元々認められる疾患細胞分布を維持するように抽出および増殖しなければならない。これは、ヒト検体に関係するいずれの臨床検査も、検体に由来する試験試料は元の検体それ自体を代表するものでなければならないということが理由である。例えば、腫瘍検体は、特定の相互の比率の種々の上皮細胞型−管腔、筋上皮、基底、幹−からなり、それから得られた試料は、ほぼ同じ比率のこれらの細胞型を含まなければならない。しかし、ヒト検体から直接得られた細胞の試料を抽出および増殖する場合、採用した条件に応じて、1つの細胞型が他のものよりより大きい速度で増殖するか、または別の細胞型が全く増殖しない可能性がある。そのようなことが起こると、得られた試料は、元の検体を代表するものではなく、従って、臨床試料としては信頼の置けないものとなるであろう。
細胞試料の調製のための関連する要件は、得られた疾患細胞が、試験される生理特性またはゲノム特性を保持するように、それらのインビボのゲノムおよび生理的活性プロファイルを保持していることである。例えば、細胞接着または細胞内シグナル伝達経路活性を測定するために、細胞のエクスビボ経路は、それらのインビボ機能を保持していなければならない。そうでなければ、臨床検査結果の精度は、信頼が損なわれるであろう。別の要件は、細胞試料調製に使用されるいずれの方法も、得られた検体の中から高い割合の試験可能な細胞試料を得ることができなければならないことである。
科学文献で記載されている、研究用の組織から初代細胞を取得するための現行の方式は、腫瘍組織から生存細胞試料を得るのに、50%未満の成功率であることが報告されている(例えば、Crystal,A.S.et al.(2014)Science 346:1480−1486を参照)。臨床医に、臨床検査結果を得るのに2週間まで待つという気持ちにさせるには、彼らの患者の処置の遅れを正当化するのに十分な良い検査結果が得られる見込みを示すことが必要となる。患者の処置の遅れはリスクを伴うので、臨床医は、高い有用性のある検査結果が入手可能であるという合理的な可能性なしに、このリスクを負わせる臨床検査を採用するのを好まない。
したがって、臨床検査用の生存疾患細胞試料を調製するための特有の要件−輸送期間中細胞の生存能力の保持、少量のみの検体の入手可能性、疾患細胞増殖に利用できる短い時間、元の腫瘍と同じ細胞試料組成の維持、高比率の試験可能細胞試料の採取、生理特性およびゲノム特性の維持−を考慮すると、試料が臨床検査での使用に好適するようにヒト組織検体から生じる初代細胞試料を調製する新規方法の開発が必要とされている。
Crystal,A.S.et al.(2014)Science 346:1480−1486
本明細書で記載の方法は、臨床検査に好適する生存疾患細胞試料の調製に対する障害に対処する。本発明は、対象から得られた生存疾患細胞(すなわち、初代細胞)の試料を調製する組成物および方法を提供し、これは、特に、生存疾患細胞をアノイキスに入らせる可能性が最も高い試験試料調製時間中に、アノイキス阻害剤(例えば、内因性および/または外因性アノイキス阻害剤)を含む培地中で、および/または抗アノイキス性のストレス軽減表面(例えば、水和細胞外マトリックスタンパク質の組み合わせ)上で、および/または抗アノイキス性のストレス軽減雰囲気条件下(例えば、2%超および20%未満の酸素)で、前記生存疾患細胞を培養することによる組成物および方法である。本発明の方法は、臨床的に意味のある時間枠で極めて正確な臨床検査が行えるように、インビボ細胞の生理特性およびゲノム特性を維持する十分に短い時間で、十分な数の初代ヒト細胞の調製を可能とする。したがって、一態様では、本発明は、ヒト対象から得られた、臨床検査用の生存疾患細胞の試料を調製する方法を提供し、該方法は、
ヒト対象から得られた生存疾患細胞の試料を、2%超および20%未満の酸素を含む条件下、少なくとも1種のアノイキス阻害剤を含む培地中で培養すること、および
生存疾患細胞の試料で臨床検査を実施すること、を含む。
別の態様では、本発明は、ヒト対象から得られた、臨床検査用の生存疾患細胞の試料を調製する方法を提供し、該方法は、
ヒト対象から得られた生存疾患細胞の試料を、6〜17%の酸素(例えば、10%の酸素)を含む条件下、少なくとも1種のアノイキス阻害剤を含む培地中で、例えば、少なくとも1時間(例えば、3時間)培養すること、
該試料を、6〜17%の酸素(例えば、10%の酸素)を含む条件下、少なくとも1種のアノイキス阻害剤を含み、消化酵素を欠く培地中で、例えば、少なくとも1時間(例えば、3時間)培養すること、および
該試料を、20%の酸素を含む条件下、アノイキス阻害剤を欠く培地中で培養し、それにより、臨床検査用の試料を調製すること、を含む。
別の態様では、本発明は、ヒト対象から得られた、臨床検査用の生存疾患細胞の試料を調製する方法を提供し、該方法は、
ヒト対象から得られた生存疾患細胞の試料を、6〜17%の酸素(例えば、10%の酸素)を含む条件下、少なくとも1種のアノイキス阻害剤を含む培地中、水和細胞外マトリックス(ECM)でコートした細胞培養容器表面上で培養すること、を含む。
別の態様では、本発明は、ヒト対象から得られた、臨床検査用の生存疾患細胞の試料を調製する方法を提供し、該方法は、
ヒト対象から得られた生存疾患細胞の試料を、6〜17%の酸素(例えば、10%の酸素)を含む条件下、少なくとも1種のアノイキス阻害剤を含む培地中、水和細胞外マトリックス(ECM)でコートした細胞培養容器表面上で培養すること、および
(i)フィブロネクチンおよびコラーゲン、(ii)コラーゲンおよびラミニン332(ラミニンV)または(iii)ラミニン332(ラミニンV)からなる水和細胞外マトリックス(ECM)を含む表面に生存疾患細胞の試料を付着させ、それにより、臨床検査用の試料を調製すること、を含む。
さらに別の態様では、本発明は、ヒト対象から得られた、臨床検査用の生存疾患細胞の試料を調製する方法を提供し、該方法は、
ヒト対象から得られた生存疾患細胞の試料を、6〜17%の酸素(例えば、10%の酸素)を含む条件下、少なくとも1種のカスパーゼ阻害剤、少なくとも1種のMMP3阻害剤および少なくとも1種のRho結合キナーゼ阻害剤を含む培地中で培養し、それにより、臨床検査用の試料を調製すること、を含む。
さらに別の態様では、本発明は、バイオセンサーを用いて、ヒト対象から得られた、臨床検査用の生存疾患細胞の試料を調製する方法を提供し、該方法は、
フィブロネクチンおよびコラーゲンからなる水和細胞外マトリックス(ECM)を含む表面に生存疾患細胞の試料を付着させること、および
バイオセンサーを用いて、生存疾患細胞の試料で臨床検査を実施すること、を含む。
さらに別の態様では、本発明は、ヒト対象から得られた、臨床検査用の生存疾患細胞の試料を調製する方法に関し、該方法は、
ヒト対象から得られた生存疾患細胞の試料を、6〜17%の酸素(例えば、10%の酸素)を含む条件下、少なくとも1種のアノイキス阻害剤(例えば、少なくとも1種の内因性アノイキス経路の阻害剤および少なくとも1種の外因性アノイキス経路の阻害剤)を含む培地中で培養すること、
フィブロネクチンおよびコラーゲンからなる水和細胞外マトリックス(ECM)を含む表面に生存疾患細胞の試料を付着させること、および
6〜17%の酸素(例えば、10%の酸素)を含む条件下、少なくとも1種のアノイキス阻害剤を含む培地中で、該表面に付着した試料の培養を継続すること、を含む。
一実施形態では、試料は、少なくとも1種の内因性アノイキス経路の阻害剤および少なくとも1種の外因性アノイキス経路の阻害剤を含む培地中で培養される。別の実施形態では、試料は、少なくとも1種の内因性アノイキス経路の阻害剤および/または少なくとも1種の外因性アノイキス経路の阻害剤、またはこれらの組み合わせを含む培地中で培養される。一実施形態では、少なくとも1種のアポトーシス阻害剤が抗アノイキス経路をアゴナイズする。一実施形態では、試料は、少なくとも1種のアノイキス経路の阻害剤を含む培地中で培養される。
一実施形態では、少なくとも1種のアノイキス阻害剤は、キナーゼ阻害剤、プロテアーゼ阻害剤、ストレス阻害剤、デスレセプター阻害剤、チトクロムC阻害剤およびアノイキス阻害剤からなる群から選択される。別の実施形態では、少なくとも1種のアノイキス阻害剤は、Rho結合キナーゼ阻害剤、ALK5阻害剤、カスパーゼ阻害剤、マトリックスメタロプロテアーゼ阻害剤、レドックス緩衝剤、活性酸素種阻害剤、TNF−α阻害剤、TGF−β阻害剤、チトクロムC放出阻害剤、カルシウムチャネル活性化のない炭酸脱水酵素アンタゴニスト、インテグリン安定剤、インテグリンリガンド、Fas阻害剤、FasL阻害剤、Bax阻害剤およびApaf−1阻害剤からなる群から選択される。種々のアノイキス阻害剤の非限定的例は、本明細書中、以降で記載される。特定の実施形態では、細胞試料を培養する培地は、2、3、4、5種またはそれを超えるアノイキス阻害剤などの2種またはそれを超えるアノイキス阻害剤を含む。例えば、一実施形態では、試料は、組み合わせて使用される、Rho結合キナーゼ阻害剤、カスパーゼ阻害剤およびMMP3阻害剤など少なくとも3種のアノイキス阻害剤を含む培地中で培養される。種々のその他のアノイキス阻害剤の組み合わせの非限定的例は、後で本明細書に記載される。
一実施形態では、試料は、6〜17%の酸素を含む条件下で培養される。別の実施形態では、試料は、10%の酸素を含む条件下で培養される。さらに別の実施形態では、試料は、17〜19%の酸素を含む条件下で培養される。特定の実施形態では、試料は、2種またはそれを超える異なる雰囲気条件下の異なる時間で、例えば、最初に6〜17%の酸素を含む条件、例えば、10%の酸素で一定期間培養され、その後、試料を異なる雰囲気条件下、例えば、1〜5%の酸素または17〜19%の酸素、または20%の酸素を含む条件に切り替えて、培養される。種々の好適な抗アノイキス性のストレス軽減雰囲気条件が本明細書でさらに構成される。
特定の実施形態では、生存疾患細胞の試料を、培養の前に、消化培地に一定時間接触させる。この場合、消化培地は、アノイキス、細胞表面接着分子損傷または非アノイキス手段の細胞死を生ずることなく、組織を消化する。通常、消化培地は、1つまたは複数の消化酵素を含む。特定の実施形態では、消化培地はまた、少なくとも1種のアノイキス阻害剤および複数のアノイキス阻害剤(例えば、少なくとも1種の内因性アノイキス経路の阻害剤および/または少なくとも1種の外因性アポトーシス経路の阻害剤)を含んでも良い。特定の実施形態では、消化培地はまた、少なくとも1種のアノイキス阻害剤を含む。
本発明の方法は、複数の異なる培地中の細胞試料を異なった期間培養すること、および/またはアノイキス阻害剤(単一または複数)に加えて、追加の成分を含む培地中で細胞試料を培養することを含み得る。例えば、一実施形態では、生存疾患細胞の試料は、接着経路の活性化を促進する少なくとも1つの成分を含む培地中で培養される。このような成分の非限定的例は、本明細書でさらに記載される。別の実施形態では、生存疾患細胞の試料は、生存疾患細胞の生理特性またはゲノム特性を保存する少なくとも1つの成分を含む無血清培地中で培養される。このような成分の非限定的例は、本明細書でさらに記載される。別の実施形態では、生存疾患細胞の試料は、細胞成長、細胞分裂または細胞周期を促進して細胞増殖を容易にする少なくとも1つの成分を含む無血清培地中で培養される。このような成分の非限定的例は、本明細書でさらに記載される。別の実施形態では、生存疾患細胞の試料は、接着の一時的反転を促進し、細胞の1つの容器から別の容器への移動を容易にする少なくとも1つの成分を含む培地中で培養される。このような成分の非限定的例は、本明細書でさらに記載される。
特定の実施形態では、臨床検査の実施の前に、生存疾患細胞の試料は、アノイキス阻害剤を欠く培地に移される。一実施形態では、生存疾患細胞の試料は、少なくとも1種のアノイキス阻害剤を含む培地中で少なくとも120時間培養され、その後、アノイキス阻害剤を欠く培地に移される。他の実施形態では、試料は、少なくとも1種のアノイキス阻害剤を含む培地中で少なくとも24〜96時間培養され、その後、アノイキス阻害剤を欠く培地に移される。一実施形態では、生存疾患細胞の試料は、20%の酸素を含む条件下で、アノイキス阻害剤を欠く培地に移される。
特定の実施形態では、臨床検査の実施の前に、生存疾患細胞の試料は、水和細胞外マトリックス(ECM)を含む表面に付着される。一実施形態では、水和したECMは折り畳まれる。一実施形態では、水和細胞外マトリックス(または水和したおよび折り畳まれたECM)は、フィブロネクチンおよびコラーゲンからなり、フィブロネクチンおよびコラーゲンはフィブリル表面および親水性表面を含むのが好ましい。
別の実施形態では、水和細胞外マトリックス(または水和したおよび折り畳まれたECM)は、コラーゲン−ラミニン332(ラミニンV)共構造からなる。さらに別の実施形態では、水和細胞外マトリックス(または水和したおよび折り畳まれたECM)は、ラミニン332(ラミニンV)からなる。一実施形態では、表面はバイオセンサー表面である。別の実施形態では、細胞表面は、細胞培養容器表面である。方法は、生存疾患細胞の試料にバイオセンサーを使って臨床検査を実施することをさらに含む。
本発明の方法は、ヒト対象から得ることができる多種多様の生存疾患細胞の使用に好適する。好ましい実施形態では、生存疾患細胞は癌細胞である。さらに、本発明の方法は、診断検査、遺伝子検査、治療計画検査などの多種多様のインビトロ臨床検査のための初代ヒト細胞の調製に好適する。一実施形態では、臨床検査は、バイオセンサーを使って行われる。一実施形態では、臨床検査は、生存疾患細胞の試料を少なくとも1種の薬剤に接触させ、試料の少なくとも1種の薬剤との接触の前後に、細胞接着または付着を測定することを含む。
別の態様では、本発明は、細胞培養組成物に関し、該組成物は、2%超および20%未満の酸素(例えば、6〜17%の酸素、10%の酸素)を含む条件下、少なくとも1種のアノイキス阻害剤を含む培地中で培養された初代ヒト癌細胞を含む。細胞培養組成物の一実施形態では、培地は、少なくとも1種の内因性アノイキス経路の阻害剤および少なくとも1種の外因性アノイキス経路の阻害剤を含み、細胞は、6〜17%の酸素(例えば、10%の酸素)を含む条件下で培養される。細胞培養組成物の別の実施形態では、培地は、少なくとも3種のアノイキス阻害剤(例えば、Rho結合キナーゼ阻害剤、カスパーゼ阻害剤およびMMP3阻害剤)を含み、細胞は、6〜17%の酸素(例えば、10%の酸素)を含む条件下で培養される。
別の態様では、本発明は、水和細胞外マトリックス(ECM)を介してバイオセンサー表面に付着させた初代ヒト癌細胞を含むバイオセンサー表面に関し、該ECMは、(i)フィブロネクチンおよびコラーゲン、(ii)コラーゲンおよびラミニン332(ラミニンV)または(iii)ラミニン332(ラミニンV)からなる。バイオセンサー表面の一実施形態では、ECMは、フィブリル表面および親水性表面を含むフィブロネクチンおよびコラーゲンからなる。一実施形態では、水和したECMは折り畳まれる。
別の態様では、本発明は、水和細胞外マトリックス(ECM)を介して細胞培養容器表面に付着させた初代ヒト癌細胞を含む細胞培養容器表面に関し、該ECMは、(i)フィブロネクチンおよびコラーゲン、(ii)コラーゲンおよびラミニン332(ラミニンV)または(iii)ラミニン332(ラミニンV)からなる。細胞培養容器表面の一実施形態では、ECMは、フィブリル表面および親水性表面を含むフィブロネクチンおよびコラーゲンからなる。一実施形態では、水和したECMは折り畳まれる。
本発明の方法を実施するためのキット、ならびに初代細胞試料から生存疾患細胞を培養するための培養条件を最適化するための方法も本発明に包含される。
本発明の種々の実施形態の詳細は、下記説明に記述される。本発明の他の特長、目的、および利点は、説明および図面、ならびに特許請求の範囲から明らかとなるであろう。
本発明は、後で、細胞が生存している間に臨床検査に使用される、ヒト対象から得た組織検体から抽出した生存疾患細胞の試料を調製する方法を記載する。これらの方法は、ヒト初代生存疾患細胞試料が検査のために組織から抽出、培養および調製される場合に、疾患(例えば、癌)細胞がアノイキスに入る割合を減らす。現在まで、アノイキスに対する研究は、健康な細胞機能を保持しながら、細胞アポトーシス系を利用して癌細胞を殺すことを主に目的としてきた。アノイキス研究は、腫瘍試料由来の生存癌細胞などの初代ヒト細胞の安定な試験可能な生存培養の状態を達成するために、一時的にアノイキスを停止する逆の機能に関しては取り組んでこなかった。
生存細胞を得て試験するために、最初に、患者から取り出した新しい組織から生存細胞を単離する必要がある。本発明は、細胞がそれらの元の組織から単離されると、それらのインビボの状態を代表する十分な生存細胞を回収するのが可能となるように、アノイキスプロセスを中断する方法を記載する。本発明は、インビボにあったときの疾患細胞と同等の生理機能およびゲノム組成を有する細胞試料を調製する方法も記載する。本発明はまた、細胞接着経路がシグナル伝達経路機能を妨害するのを防ぐように、培養表面に付着させる細胞試料を調製する方法も記載する。本発明の方法は、アノイキス阻害剤を含む培地の使用および/または抗アノイキス性のストレス軽減雰囲気条件の使用および/または細胞の抗アノイキス性のストレス軽減表面への付着、および/またはこれらの組み合わせを含む。
本発明の有用性および別々の利点は、異なる培地に対する経験的結果と本発明との比較により明らかである。特に、本発明は、一貫した臨床検査結果を得るために、ミリグラム量の疾患組織から迅速に培養できる異種細胞集団を提供する。本発明の組成物および方法を使って培養された細胞の形態学的およびバイオマーカー分析は、疾患を表すマーカー(エストロゲンレセプター、プロゲステロンレセプター,ErbBファミリーレセプター、CD10、クローディン4、CD49f、および本明細書で記載のその他のマーカー)が豊富な複数の疾患細胞型(管腔、基底、幹、間葉)の存在を示すが、一方、他の当該技術分野で既知のおよび市販の培地は、臨床検査用の疾患細胞の好適な試料を生成できない。その他の培地のタイプは、通常、同様に、疾患細胞患者試料を特徴付ける管腔疾患細胞型を増殖させる機能を有しない。さらに、その他の培地のタイプは、健康な細胞または幹細胞または扁平細胞型のみに対応する。これは、患者試料由来の異種疾患細胞の混合物に対する本発明の望ましい成果と一致しない。まとめると、本発明は、対象由来の初代疾患細胞の試料から、臨床検査に好適する特定されたマーカーを有する異種型の細胞をもたらすが、当該技術分野において既知の他の培地は、そうではない。
本発明の種々の態様は、以下のサブセクションでさらに記載される。
アノイキスの阻害
対象由来の生存疾患細胞試料などの初代細胞を、臨床検査に使用できるように成功裏に培養することに対する障害は、細胞におけるプログラム死に対する天然の制御システムの一部である、アノイキスである。プログラム死は、限定されないが、法外な数の変異の蓄積、pH、細胞齢、環境要因、極端に高いまたは低い酸素分圧などの種々の形態のストレス;サイトカイン、ケモカイン、細胞内シグナル伝達分子、タンパク質および種々のRNAとの接触;ならびに確定した組織境界を超える細胞成長、を含む潜在的に一緒に機能する多くの因子に応答して開始され得る。プログラム細胞死活性のバランスは、細胞内の、アノイキス促進性または血管新生促進性の相互連結したタンパク質経路により達成される。例えば、BAXおよびBAKなどのマルチドメインアノイキス促進ファミリーメンバーは、活性化されると、ミトコンドリアを透過性にして、アノイキスを誘発し、一方、抗アノイキスBcl−2ファミリーメンバーは、ミトコンドリアの完全性を保存する。BH3−only分子(BH3s)は、BAX−BAKを活性化することにより、または抗アノイキスメンバーを不活化することによりアノイキスを促進する。
2つの形のアノイキス経路、内因性および外因性、について報告されている(例えば、Fulda,S.and Debatin,K.M.(2006)Oncogene 7:4798−4811、参照)。内因性アノイキス経路は、ミトコンドリア膜透過化、チトクロムc放出、および細胞傷害性刺激に応答したアポプトソーム形成を特徴とする。外因性アノイキス経路は、TNFスーパーファミリーのデスレセプターへのリガンド結合に応答して活性化される。代表的リガンドには、TNF−αおよびFasLが含まれる。デスレセプター活性化は、ミトコンドリア膜透過化、チトクロムc放出を生じ、カスパーゼ依存性開裂およびアノイキス促進タンパク質Bidのミトコンドリアへの移動を介して、アノイキスの後期に進行する。内因性および外因性経路の両方は、ミトコンドリア膜透過化、チトクロムC放出、およびカスパーゼ活性化を共通成分として含む。
本発明のアノイキスの阻害は、阻害効率の観点から、初期のアノイキスイベントの開始の防止および取り組みに重点を置いている。アノイキスプロセスの遮断は、後で、細胞死の前に行うことができ、また、既にアノイキスの後期に入っている細胞培養試料を復活させるのが望ましい場合もある。疾患初代細胞のpHおよびレドックス電位および金属イオン濃度(特にカルシウムの放出)の緩衝化は、好ましい初期のアノイキス防止のポイントである。初期のアノイキス阻害ポイントは、ミトコンドリアの透過性の破壊およびチトクロムc放出の阻害を含むのが好ましい。少し後のアノイキスプロセス防止のポイントは、カスパーゼ活性カスケードの分断およびその他のプロテアーゼの破壊を含むのが好ましい。Bcl−2ファミリーの抗アノイキス分子の増加した発現により、またはBax、Apaf−1またはカスパーゼ−8などのアノイキス促進分子の低減化により調節解除されたアノイキスは、アノイキスの阻害に組み合わせ得る追加の実施形態である。
したがって、本発明の方法では、対象から得られた生存疾患細胞の試料は、少なくとも1種のアノイキス阻害剤を含む培地中で培養される。特定の実施形態では、培地は、少なくとも1種の内因性アノイキス阻害剤および少なくとも1種の外因性アノイキス阻害剤を含む。他の実施形態では、培地は、少なくとも1種の内因性アノイキス阻害剤および少なくとも1種の外因性アノイキス阻害剤を含む。他の実施形態では、アポトーシス阻害剤は、抗アノイキス経路をアゴナイズするように選択される。
培養に適する細胞を得るために(下記でさらに考察される)、組織検体に対するいずれかの初期の予備的なステップ後に、検体から抽出された細胞は、アノイキス阻害剤を含む、およびより好ましくは、アノイキス阻害剤の組み合わせを含む、最も好ましくは、内因性および/または外因性アノイキス促進経路の阻害剤および/または抗アノイキス活性化因子から選択される組み合わせを含む培地中で培養される。
下表1は、一般型のアノイキス阻害剤およびこれらの型に入る代表的阻害剤クラスの非限定的例、および具体的試薬の例、ならびに阻害剤が内因性アノイキス経路、外因性アノイキス経路または両経路に共通の成分(本明細書においては、「共有経路」アノイキス阻害剤と称する)に影響を与えるか否かを示す。
Figure 2018531021
一実施形態では、少なくとも1種のアノイキス阻害剤は、Rho結合キナーゼ阻害剤であり、これの非限定的例には、Y−27632、GSK429286AおよびRKI−1447が含まれる。一実施形態では、少なくとも1種のアノイキス阻害剤は、カスパーゼ阻害剤、例えば、汎カスパーゼ阻害剤(例えば、Z−VAD−FMK)、カスパーゼ3阻害剤(例えば、Z−DEVD−FMK、Q−VD−OPh)、カスパーゼ8阻害剤(例えば、Z−IETD−FMK、Ac−LETD−CHO、Q−VD−OPh)および/またはカスパーゼ9阻害剤(例えば、Z−LEHD−CHO、Ac−LETD−CHO、Q−VD−OPh)である。一実施形態では、少なくとも1種のアノイキス阻害剤は、チトクロムC阻害剤であり、これの非限定的例には、メラトニンおよびメタゾラミドが含まれる。一実施形態では、少なくとも1種のアノイキス阻害剤は、マトリックスメタロプロテアーゼ(MMP3)阻害剤であり、これの非限定的例には、UK−356618が含まれる。一実施形態では、少なくとも1種のアノイキス阻害剤は、ALK5阻害剤であり、これの非限定的例には、セリチニブ、RepSox、アレクチニブ、AP26113、GW788388、SD−208およびガルニセルチブ(LY2157299)が含まれる。一実施形態では、少なくとも1種のアノイキス阻害剤は、TNF−α阻害剤であり、これの非限定的例には、R−7050、インフリキシマブ、ゴリムマブ、アダリムマブ、セルトリズマブおよびエタネルセプトが含まれる。一実施形態では、少なくとも1種のアノイキス阻害剤は、TGF−β阻害剤であり、これの非限定的例には、フレソリムマブが含まれ、ならびに、セリチニブ、RepSox、アレクチニブ、AP26113、GW788388、SD−208およびガルニセルチブ(LY2157299)などのTGF−β経路シグナル伝達阻害剤である。一実施形態では、少なくとも1種のアノイキス阻害剤は、酸化ストレス軽減剤(すなわち、活性酸素種阻害剤)であり、これの非限定的例には、グルタチオン、グルタチオンエチルエステル、メチオニン、シスチン、システイン、グルタミン酸およびグリシンが含まれる。一実施形態では、少なくとも1種のアノイキス阻害剤は、レドックス緩衝剤であり、これの非限定的例には、ナイアシン、ナイアシン関連化合物、カルシフェロール、ベータカロチンおよびビタミンCが含まれる。一実施形態では、少なくとも1種のアノイキス阻害剤は、接着関連アノイキス阻害剤であり、これの非限定的例には、フィブリノーゲン、フィブロネクチン、およびテトラヨードサイロニンが含まれる。一実施形態では、少なくとも1種のアノイキス阻害剤は、Fasおよび/またはFasL阻害剤であり、これの非限定的例には、トリヨードサイロニンおよびテトラヨードチロニンが含まれる。一実施形態では、少なくとも1種のアノイキス阻害剤は、Bax阻害剤であり、これの非限定的例には、Bax阻害剤−1およびV5ペプチドが含まれる。一実施形態では、少なくとも1種のアノイキス阻害剤は、Apaf−1阻害剤であり、これの非限定的例には、QM31およびミノサイクリンが含まれる。
他の実施形態では、細胞は、2、3、4、5、6、7、8、9または10種のアノイキス阻害剤などの2種またはそれを超えるアノイキス阻害剤と共に培養される。上述のアノイキス阻害剤のいずれも組み合わせて使用できる。例えば、一実施形態では、細胞は、Rho結合キナーゼ阻害剤およびカスパーゼ阻害剤と共に培養される。別の実施形態では、細胞は、Rho結合キナーゼ阻害剤およびMMP3阻害剤と共に培養される。別の実施形態では、細胞は、カスパーゼ阻害剤およびMMP3阻害剤と共に培養される。別の実施形態では、細胞は、Rho結合キナーゼ阻害剤、カスパーゼ阻害剤およびMMP3阻害剤と共に培養される。別の実施形態では、細胞は、Rho結合キナーゼ阻害剤、カスパーゼ阻害剤、MMP3阻害剤およびデスレセプター阻害剤(例えば、TFN−α阻害剤、TNFR1阻害剤、TGF−β阻害剤、ALK5/TGFBR1阻害剤、Fas阻害剤またはFasL阻害剤)と共に培養される。別の実施形態では、細胞は、キナーゼ阻害剤、プロテアーゼ阻害剤、ストレス阻害剤、デスレセプター阻害剤、チトクロムC阻害剤およびアノイキス阻害剤のそれぞれと共に培養され、これらの非限定的例には、表1で示したおよび上記した試薬が含まれる。その他の好適なアノイキス阻害剤の組み合わせは、本明細書で提供される手引を使って決定できる(例えば、実施例3〜5を参照されたい)。
阻害剤は通常、疾患細胞試料中の細胞の量に応じて、100,000細胞当たり0.001〜0.1マイクロモル、好ましくは、100,000〜10,000,000細胞当たり0.01〜0.1マイクロモルの濃度で培地に添加される。
特定の実施形態では、培地中での単一アノイキス阻害剤の使用により、特定の細胞型で利益が得られる。しかし、特定の実施形態では、臨床検査用の試料の調製のための最適条件を与える内因性、外因性、およびアノイキス阻害成分を組み合わせることで利益が得られる。抗アノイキス成分の組み合わせにより、異なる患者由来の大多数の検体からの異種疾患細胞集団が、生存疾患細胞の臨床検査に好適するものになる。どの生存細胞検査に対しても、検体を、急速に、壊滅的に有用でなくする能力をそれぞれが有する、多くの異なる個々のまたは組み合わせた前述の理由のいずれかのために、それぞれの患者検体はアノイキスに入り得る。組織からの生存細胞検査のための取り出し時の、アノイキスへのこれらの経路の組み合わせの顕著な減衰によってのみ、異種疾患細胞の試料を安定にすることができる。臨床検査は、検査用に受け入れられる大部分の試料が患者の処置を導くための試験結果情報を確実に医師に提供することを必要とする。本発明は、この要求を実現する手段を提供する。
抗アノイキス雰囲気条件
インビトロ初代細胞培養がアノイキスに入るか否かに影響を与える別の因子は、細胞が培養される雰囲気の条件であることが明らかになった。これまでに、培地中で少なくとも1種のアノイキス阻害剤の使用と、2%超および20%未満の酸素の条件下の培養との組み合わせが、生存疾患細胞試料中の初代細胞のアノイキスをさらに阻害することが明らかになった。機構に拘泥するものではないが、2%超および20%未満の酸素の雰囲気条件中での細胞培養が、酸化ストレスに関連するアノイキスを低減すると考えられている。別の実施形態では、細胞試料は、解糖およびミトコンドリアの細胞増殖を促す機能を許容する雰囲気条件中で維持される。より好ましい実施形態では、細胞培養は、酸化ストレスに関連するアノイキスにおける還元と、細胞増殖を促す酸素に対する要件とをバランスさせる雰囲気条件中で維持される。最も好ましい実施形態は、細胞がインビボで受ける低酸素条件(1〜5%の酸素)と、大気中(20%の酸素)への曝露時に細胞が受ける正常酸素圧条件との間の変動範囲である、6%〜17%の酸素を含む雰囲気条件中で細胞試料を維持することである。別の実施形態では、細胞は、10%の酸素を含む条件下で培養される。さらに他の実施形態では、細胞は、6〜9%の酸素、9〜11%の酸素、8〜12%の酸素、7〜13%の酸素、6〜14%の酸素、11〜13%の酸素、13〜15%の酸素、15〜17%,9〜15%の酸素、6%の酸素、7%の酸素、8%の酸素、9%の酸素、11%の酸素、12%の酸素、13%の酸素、14%の酸素、15%の酸素、16%の酸素または17%の酸素を含む条件下で培養される。別の実施形態では、細胞は、1〜5%の酸素を含む条件下で培養される。
特定の実施形態では、細胞は、2種またはそれを超える異なる雰囲気条件下で、異なる期間にわたり培養される。例えば、細胞は、最初に、6〜17%の酸素(例えば、10%の酸素)を含む条件下で培養され、その後、1〜5%の酸素を含む条件下、または17〜19%の酸素を含む条件下、または18〜20%の酸素を含む条件下、または20%の酸素を含む条件下で培養される。
細胞培養用の雰囲気条件および温度の他の態様は、哺乳動物(例えば、ヒト細胞)の培養に通常使用されるものである。例えば、細胞は通常、少なくとも5%の二酸化炭素、40%〜100%の相対湿度(RH)(例えば、85%RH)、および37℃の温度を含む雰囲気条件で培養される。
表面付着およびアノイキス阻害
大抵の非形質転換および多くの癌上皮細胞型は、それらが水和細胞外マトリックス(ECM)との接触を失う場合にアノイキスを受ける。この現象は、接着関連アノイキスと呼ばれる。上皮細胞の構造的および機能的完全性の維持は、異なるタイプの表面レセプターを必要とする高い動的細胞−細胞および細胞−マトリックス相互作用を必要とする。これらのレセプターには特に、カドヘリンおよびインテグリンなどの接着分子があり、これらは、隣接細胞上の他の細胞接着レセプターを認識し、これらと相互作用することにより、およびECMの成分に結合することにより、重要な役割を果たしている。細胞に機械的足場を与えることに加えて、これらの構造体はまた、機能的に重要であり、それらは、ECMおよび隣接細胞からの、生存および増殖に不可欠なシグナルを伝達する。ECMの組成、パターニング、および構造的性質は、哺乳動物細胞の生存能力の復元および形成に不可欠であることが示された。これらの接触またはシグナルまたはそれらの完全性の低減または消失は、高い頻度でアノイキスを開始させる。
上皮細胞のアノイキスの低減は、生存疾患細胞の均一な試料の調製にとって、特に臨床検査の目的にとって、不可欠である。接着関連アノイキスは、上皮細胞などの足場依存性細胞によりインビボで開始され、周囲組織細胞外マトリックス(ECM)から脱離するアノイキスの1つの形態である。近くの細胞間の通信、ならびに細胞とECMとの間の通信が増殖または生存に不可欠なシグナルであるため、通常、細胞はそれらが属する組織の近傍にとどまる。細胞がECMから脱離すると、正常細胞−マトリックス相互作用が消失し、これが、内因性および外因性アノイキスのいくつかの形態に繋がる。まさしくそれらの性質により、疾患細胞は、多くの場合、異種付着安定性を有する。癌では、不十分な付着は、病理学的に極めて致命的な形態の疾患である、転移として特徴付けられる。臨床検査用に必要な疾患細胞の均一な試料の調製は、それらの元の環境中のECMからの取り外しを伴い、これにより、アノイキスが誘導され得る。
したがって、本発明の方法の種々の実施形態は、細胞が取り外されたECMを、インビトロECMで置き換え、細胞−細胞および細胞−ECM接触を回復し、それにより、アノイキスを阻害または低減する。さらに、1つまたは複数の成分を培地に加えて、細胞−細胞および/または細胞−ECM接着の回復および/または活性化を促進し、アノイキスを防止することができる。
したがって、本発明の方法の特定の実施形態は、細胞−細胞および/または細胞−ECM接着の回復および/または活性化を促進し、アノイキスを防ぐ少なくとも1つの成分を含む培地の使用を含む。この形態のアノイキス活性を防ぐ接着経路活性化因子は、限定されないが、Ca2+、Mg2+、Mn2+、トリヨードサイロニン、テトラヨードサイロニン、フェチュイン;フィブロネクチン、コラーゲン、ラミニン、ビトロネクチン、細胞間CAM、血管CAM、MAdCAM、グリコサミノグリカン、プロテオグリカン、またはこれらの誘導体および/またはペプチドなどの細胞外マトリックス成分またはこのような成分の組み合わせの溶液型(例えば、フィブリノーゲン)またはコーティングからなる群から選択できる。接着斑キナーゼ活性を高め、インテグリン破壊後のPTENアノイキス促進を弱めるEGFなどの増殖因子も同様に本発明に含められる。
特定の実施形態では、2種またはそれを超える、アノイキスを阻害する上記成分を培地に使用できる。例えば、一実施形態では、生存疾患細胞の試料は、少なくとも1つの内因性アノイキス阻害剤および少なくとも1種の外因性アノイキス阻害剤を含む培地中で培養される。
さらなる実施形態では、生存細胞試料は、細胞外マトリックスを介して、培養容器(例えば、ウエルに分割された培養皿、T25、T75、およびT150フラスコ、多層培養容器など)などの培養表面にまたは試験表面(例えば、バイオセンサー表面)に付着される。他の実施形態では、生存細胞試料は、ECMが完全に湿潤し、使用前にECMが脱水されないように十分な水を保持している、水和ECMを介して細胞培養容器または試験表面に付着される。さらなる実施形態では、生存細胞試料は、ECMが秩序化、構造化された、再現可能な配置のタンパク質成分(単一または複数)からなり、水和し、折り畳まれているECMを介して細胞培養容器または試験表面に付着される。いくつかの実施形態では、生存細胞の細胞試料は、フィブリルと親水性を組み合わせたコラーゲンおよびこれらのタンパク質の、特異的インテグリンにより認識でき、および/または例えば、カドヘリンまたはアドへリンを介して細胞−細胞相互作用を促進できる天然インビボ様構造を維持するように調製されたフィブロネクチン表面に付着される。特定の実施形態では、コラーゲンおよびフィブロネクチンは、親水性フィブリル中に形成され、2つのタンパク質相互作用は、特異的アミノ酸配列結合部位から構成される。いくつかの実施形態では、細胞−ECM付着は、コラーゲン−ラミニン332共構造を形成する。ラミニン332は、ラミニンVとしても知られ、特定の実施形態では、培養表面上の単一ECMとして使用できる。いくつかの実施形態では、ECMでコートされる表面は、プラスチック、ガラス、または特に金電極を刷り込まれたガラス、またはチタンコートプラスチック、または導波管中に形成された光学的に活性な金属コートガラスもしくはプラスチック、金コートガラスである。他の好ましい実施形態では、ECMでコートされる表面は、臨床検査目的用のバイオセンサーである。
表面付着を伴うそれぞれの実施形態では、表面コーティングは、当業者に既知の標準的方法を使って調製される。例えば、水和ECMまたは水和し、折り畳まれたECMを調製する方法は、当該技術分野で十分に確立されている(例えば、Anderson,D.G.et al.(2004)Nat.Biotechnol.22:863−866;Flaim,C.J.et al.(2005)Nat.Methods 2:119−125;Falsey,J.R.et al.(2001)Bioconjug.Chem.12:346−353;Kuschel,C.et al.(2006)Biotechniques 40:523−531;Reticker−Flynn,N.E.et al.(2012)Nat.Commun.3:1122、を参照されたい)。
他の実施形態では、表面への細胞付着は、細胞付着のレベルが細胞にストレスを与える条件、またはアノイキスを高める条件により促進されないことを保証するように最適化される。これらの条件は、細胞内シグナル伝達活性を妨害する細胞付着を生ずる可能性がある。他の実施形態では、表面への細胞付着は、細胞外のコーティングおよび接着機構が目的のシグナル伝達経路に適合することを保証するように最適化される。
したがって、特定の実施形態では、臨床検査を行うための初代細胞を調製する本発明の方法は、水和細胞外マトリックス(ECM)を含む表面に細胞試料を付着させることを含むステップの包含を含む。一実施形態では、ECMは、フィブロネクチンおよびコラーゲンからなる。一実施形態では、折り畳まれたECMが使われる。別の実施形態では、フィブロネクチンおよびコラーゲンは、フィブリルおよび親水性表面を含む。一実施形態では、ECMは、フィブリルおよび親水性のコラーゲン−ラミニン332(ラミニンV)共構造からなる。別の実施形態では、ECMは、ラミニン332(ラミニンV)からなる。本発明は、臨床検査を行うための初代細胞の調製方法を提供し、該方法は、
生存疾患細胞試料を、水和細胞外マトリックス(ECM)、または水和し、折り畳まれたECMを含むバイオセンサー表面に付着させることであって、該ECMは、(i)フィブロネクチンおよびコラーゲン、(ii)コラーゲンおよびラミニン332(ラミニンV)または(iii)ラミニン332(ラミニンV)からなること、および
バイオセンサーを用いて、生存疾患細胞の試料で臨床検査を実施すること、を含む。
特定の実施形態では、生存疾患細胞の試料を、異なる期間に、2種またはそれを超える異なる表面に付着させてもよい。例えば、最初に、細胞を上述の抗アノイキス性のストレス軽減ECMを含む、培養プレート、培養フラスコまたはその他の培養容器などの細胞表面に付着させて、一定時間培養してもよい。その後、細胞をこの表面から取り外し(例えば、下記でさらに記載されるように)、続けて、臨床検査用のバイオセンサー表面などの別の表面に付着させてもよい。このバイオセンサー表面は、上述の抗アノイキス性のストレス軽減ECMも含み得る。
複数の培養条件を組み合わせて使用
インビボ細胞生存および機能の調節は、複数のシグナル入力および安定な細胞プロセスを維持する応答のために、極めて複雑であることが分かっている。これは、細胞微小環境が細胞に与える効果に対して、特に当てはまる。検査室の環境でのヒト初代細胞の培養は、失敗と位置づけられ、また、高度に再現可能な初代組織の培養、特に疾患細胞の培養は、可能ではないという一般的な考え方で特徴付けられてきた。この考えはまた、すべての生存する初代細胞の機能的な臨床検査の開発を今日まで妨げてきた。この失敗の歴史には、エクスビボでの生存培養を確立するために、初代細胞により必要とされる複数のシグナル入力および応答に対処する必要性についての考慮の欠落が重くのしかかっていた。種々の疾患細胞がエクスビボで培養される場合、それらは、天然の調節制御シグナル伝達が破壊されるのに伴いアノイキスを受けるであろう。臨床検査用の疾患細胞の調製を目的として、この調節制御を克服するために、種々の方法を組み合わせて、調節シグナル維持要求に対処し、アノイキスを防ぐことが必要となる。初代細胞調製のための本発明の方法は、臨床検査用の初代細胞の調製のために、組み合わせて使用される複数の異なる培地および/または培養条件の使用を包含する。異なる培地および/または培養条件を組み合わせて使用することは、十分な時間で十分な数の細胞が得られるように、また、同時に、細胞の生理特性およびゲノム特性を維持し、それらが臨床検査で信頼性の高い結果を与えるように、初代細胞の調製をさらに改善する。
特定の実施形態では、細胞試料は、最初に、アノイキス阻害剤(単一または複数)を含む培地中で培養され、その後続けて、アノイキス阻害剤(単一または複数)を含まない培地中で培養される。特定の実施形態では、細胞試料は、最初、2%超および20%未満の酸素(例えば、3%超で19%未満の酸素、6〜17%の酸素、10%の酸素、またはその他の本明細書で記載の2%超および20%未満の任意の雰囲気条件)を含む雰囲気中で維持され、その後、20%の酸素を含む雰囲気中で維持される。特定の実施形態では、アノイキス阻害剤(単一または複数)を含む培地中で細胞試料が培養される時間は、1〜10時間、10〜20時間、20〜30時間、30〜40時間、40〜50時間、または50時間超の範囲である。例えば、細胞試料は、アノイキス阻害剤(単一または複数)を含む培地中で、少なくとも12時間、少なくとも24時間、少なくとも48時間、少なくとも96時間、少なくとも120時間、24〜48時間、24〜96時間、または24〜120時間培養できる。特定の実施形態では、2%超および20%未満の酸素を含む雰囲気中で細胞試料が維持される時間は、1〜10時間、10〜20時間、20〜30時間、30〜40時間、40〜50時間、または50時間超の範囲である。例えば、細胞試料は、少なくとも12時間、少なくとも24時間、少なくとも48時間、少なくとも96時間、少なくとも120時間、24〜48時間、24〜96時間、または24〜120時間にわたり、2%超および20%未満の酸素を含む雰囲気中で維持できる。
他の実施形態では、細胞試料は、細胞を1つの培養容器から別の容器に移した後、2%超および20%未満の酸素を含む雰囲気中で一定時間維持される。特定の実施形態では、細胞を1つの培養容器から別の容器に移した後、2%超および20%未満の酸素を含む雰囲気中で細胞試料が維持される時間は、1〜10時間、10〜20時間、20〜30時間、30〜40時間、40〜50時間、または50時間超の範囲である。好ましい実施形態は、細胞を1つの培養容器から別の容器に移した後、6%〜17%の酸素を含む雰囲気条件中で細胞試料を培養するものである。特定の実施形態では、新しい培養容器に細胞試料を移した後、維持される雰囲気条件は、1〜5%、6〜9%、9〜11%、8〜12%、7〜13%、6〜14%、11〜14%、14〜17%、もしくは17%〜20%の範囲の酸素を含むか、または6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%もしくは17%の酸素の条件を含む。いくつかの実施形態では、細胞試料は、最初に、細胞を1つの培養容器から別の培養容器に移した後、2%超および20%未満の酸素を含む雰囲気中で維持され、その後、20%の酸素を含む環境中に置かれる。
他の実施形態では、細胞試料は、細胞を1つの培養容器から別の容器に移した後、アノイキス阻害剤(単一または複数)を含む培地中で一定時間、培養される。特定の実施形態では、細胞を1つの培養容器から別の容器に移した後、アノイキス阻害剤を含む培地中で細胞試料が培養される時間は、1〜10時間、10〜20時間、20〜30時間、30〜40時間、40〜50時間、または50時間超の範囲である。いくつかの実施形態では、細胞試料は、細胞を1つの培養容器から別の培養容器に移した後、最初に、アノイキス阻害剤(単一または複数)を含む培地中で培養され、その後、アノイキス阻害剤(単一または複数)を含む培地中に置かれる。
特定の実施形態では、細胞は、種々の成分を補充した基本培地中で培養される。一実施形態では、基本培地は無血清基本培地である。別の実施形態では、基本培地は、本明細書で記載のアノイキス阻害剤(単一または複数)を含み、後述のように機能追加の機能を果たす追加の成分を含み得る。本明細書で記載の成分の添加により改変され得る無血清基本培地の非限定的例には、DMEM、F12、50%DMEM/50%F12、MEGM、MCDB−170が挙げられる。
別の実施形態では、細胞は、成長、分裂または細胞周期を促進して細胞増殖を容易にする少なくとも1つの成分を含む無血清培地中で培養される。このタイプの成分を含む培地は、アノイキス阻害剤(単一または複数)を含む培地と同じとすることができ、または細胞の移動先の異なる培地とすることができる。成長、分裂、または細胞周期を促進して、細胞増殖を容易にする成分の非限定的例には、腫瘍微小環境に関連する増殖因子、HGF、FGF(1〜4型)、エキソソーム、miRNA、その他の低分子タンパク質非コードRNA、より長鎖のタンパク質非コードRNA、ホルモン、IGF、VEGF、EGF、インターロイキン、サイトカイン、ケモカイン、および疾患細胞中のおよびその周辺の細胞により産生されるオートクリンまたはパラクリン因子として知られ得る他の因子が挙げられる。
他の実施形態では、培地は、接着活性の一時的反転を促進し、細胞培養液の1つの容器から別の容器への緩やかな移動を容易にする少なくとも1つの成分からなる。このタイプの成分を含む培地は、アノイキス阻害剤(単一または複数)を含む培地と同じとすることができ、または細胞の移動先の異なる培地とすることができる。接着活性の一時的反転を促進して細胞培養液の1つの容器から別の容器への緩やかな移動を容易にする成分の非限定的例には、非酵素および酵素処理剤、EGTA、EDTAなどのCa2+、Mg2+、および/またはMn2+キレート化剤、および当該技術分野に従事している人には知られている、その他の二価の金属イオンキレート化剤、およびさらに追加して、ディスパーゼ、TrypLE、トリプシン、アクターゼ、アキュマックス、コラゲナーゼ、ヒアルロニダーゼ、エラスターゼ、トリプシン阻害剤、STEMxyme、プロナーゼ、デオキシリボヌクレアーゼが挙げられる。異なった温度で、異なる時間量にわたり適用された、差次的濃度でのこのグループのメンバーの組み合わせは、本実施形態に含まれる。
他の実施形態では、培地は、疾患細胞の生理特性またはゲノム特性を保存する少なくとも1つの成分を含む無血清培養基本培地である。このタイプの成分を含む培地は、アノイキス阻害剤(単一または複数)を含む培地と同じとすることができ、または細胞の移動先の異なる培地とすることができる。疾患細胞の生理特性またはゲノム特性を保存する成分の非限定的例には、必須および非必須アミノ酸、特にビタミンB、希少必須金属、pH緩衝剤(単一または複数)(例えば、ヘペスとしても知られる:N−[2−ヒドロキシエチル]ピペラジン−N’−[2−エタンスルホン酸]、NaHPO、NaHPO)、塩(Na、K、Fe、Zn、Cu、Mg2+、Ca2+、Mn2+、Cl、CO、SO)、亜セレン酸塩、ケイ酸塩、ブドウ糖または糖類またはその他の生物学的に実用的な炭素源、脂質、リポ酸などの脂肪酸、ピルビン酸塩、BSA(例えば、Albumaxまたはその他の血清アルブミンなどの試薬も含む)、トランスフェリン、増殖因子、ケモカイン、サイトカイン、マイトジェン、エタノールアミン、ホスホエタノールアミン、アルブミン、ホルモン(例えば、プロゲステロン、テストステロン、エストラジオール−特に17β−エストラジオール、ヒドロコルチゾン、インスリン)、プトレシン、ピルビン酸塩、チミジン、リノール酸、葉酸、フォリン酸、コリン、ピリドキサール塩酸塩、ビオチン、ヒポキサンチン、プリンおよびプリン誘導体、ピリミジンおよびピリミジン誘導体、抗生物質、抗真菌薬(anti−fungals)、抗真菌薬(anti−mycotics)が挙げられる。培地成分は、疾患上皮細胞増殖を支援するように選択でき、前記選択成分は、健康な疾患のない上皮細胞の増殖から分離させることができる。増殖因子、サイトカイン、およびケモカインは、疾患細胞試料中の細胞の量に応じて、100,000細胞当たり0.001〜0.1ナノモル、好ましくは、100,000〜1,000,000細胞当たり0.01〜0.1ナノモルで添加される。
ヒト対象から得られた、臨床検査用の生存疾患細胞の試料を調製するための、本発明の組み合わせ方法の一実施形態では、該方法は、
ヒト対象から得られた生存疾患細胞の試料を、6〜17%の酸素(例えば、10%の酸素)を含む条件下、少なくとも1種の内因性アノイキス経路の阻害剤および少なくとも1種の外因性アノイキス経路の阻害剤を含む培地中で培養すること、
生存疾患細胞の試料で臨床検査を実施すること、を含む。
ヒト対象から得られた、臨床検査用の生存疾患細胞の試料を調製するための、本発明の組み合わせ方法の別の実施形態では、該方法は、
ヒト対象から得られた生存疾患細胞の試料を、6〜17%の酸素(例えば、10%の酸素)を含む条件下、少なくとも1種の消化酵素および少なくとも1種のアノイキス阻害剤を含む培地中で、例えば、少なくとも1時間(例えば、1〜3時間、3時間、または3時間以下)培養すること、
該試料を、6〜17%の酸素(例えば、10%の酸素)を含む条件下、少なくとも1種のアノイキス阻害剤を含み、消化酵素を欠く培地中で、例えば、少なくとも10時間、または少なくとも24時間、または少なくとも48時間、または少なくとも96時間、または少なくとも120時間、または24〜48時間、または24〜96時間、または24〜120時間にわたり培養すること、および
該試料を、20%の酸素を含む条件下、アノイキス阻害剤を欠く培地中で培養し、それにより、臨床検査用の試料を調製すること、を含む。
ヒト対象から得られた、臨床検査用の生存疾患細胞の試料を調製するための、本発明の組み合わせ方法の別の実施形態では、該方法は、
ヒト対象から得られた生存疾患細胞の試料を、6〜17%の酸素(例えば、10%の酸素)を含む条件下、少なくとも1種の内因性アノイキス経路の阻害剤および少なくとも1種の外因性アノイキス経路の阻害剤を含む培地中で培養すること、および
(i)フィブロネクチンおよびコラーゲン、(ii)コラーゲンおよびラミニン332(ラミニンV)または(iii)ラミニン332(ラミニンV)からなる水和細胞外マトリックス(ECM)を含む表面に生存疾患細胞の試料を付着させること、を含む。
一実施形態では、生存疾患細胞の試料が付着される表面は、バイオセンサー表面であり、該方法は、生存疾患細胞の試料でバイオセンサーを使って臨床検査を行うことをさらに含む。
ヒト対象から得られた、臨床検査用の生存疾患細胞の試料を調製するための、本発明の組み合わせ方法の別の実施形態では、該方法は、
ヒト対象から得られた生存疾患細胞の試料を、6〜17%の酸素(例えば、10%の酸素)を含む条件下、少なくとも1種のアノイキス阻害剤を含む培地中で培養すること、
フィブロネクチンおよびコラーゲンからなる水和細胞外マトリックス(ECM)を含む表面に生存疾患細胞の試料を付着させること、および
6〜17%の酸素(例えば、10%の酸素)を含む条件下、少なくとも1種のアノイキス阻害剤を含む培地中で、該表面に付着した試料の培養を継続すること、を含む。
一実施形態では、試料は、少なくとも1種の内因性アノイキス経路の阻害剤および少なくとも1種の外因性アノイキス経路の阻害剤と共に培養される。一実施形態では、生存疾患細胞の試料が付着される表面は、バイオセンサー表面であり、該方法は、生存疾患細胞の試料でバイオセンサーを使って臨床検査を行うことをさらに含む。
ヒト対象から得られた、臨床検査用の生存疾患細胞の試料を調製するための、本発明の組み合わせ方法のさらに別の実施形態では、該方法は、
ヒト対象から得られた生存疾患細胞の試料を、6〜17%の酸素(例えば、10%の酸素)を含む条件下、少なくとも1種の消化酵素(例えば、コラゲナーゼおよびヒアルロニダーゼ)および少なくとも1種のアノイキス阻害剤(例えば、内因性アノイキス阻害剤(単一または複数)および/または外因性アノイキス阻害剤(単一または複数))を含む培地中で3時間以下の時間にわたり培養すること、
生存疾患細胞の試料を、水和し、ヒトコラーゲンIおよびヒトフィブロネクチンからなる折り畳まれた細胞外マトリックス(ECM)を含む細胞培養容器表面上に播種し、6〜17%の酸素(例えば、10%の酸素)を含む条件下、少なくとも1種のアノイキス阻害剤(例えば、内因性アノイキス阻害剤(単一または複数)および/または外因性アノイキス阻害剤(単一または複数))を含む培地中で培養すること、および
該試料を無血清基本培地中、生存疾患細胞で臨床検査が実施されるまで、または生存疾患細胞の50%〜80%の培養密度が達成されるまで、培養すること、を含む。
この組み合わせ方法は、最後の培養ステップ後に、追加のステップを含み得る。例えば、一実施形態では、接着活性の一時的反転を促進する少なくとも1種の成分(例えば、最小限の酵素および二価の金属イオン結合培地)を含む培地中での、細胞の接着成分を傷つけることなく、生存疾患細胞の表面への付着を反転する条件下で、10分以下の細胞の培養により初代細胞が採取される。別の実施形態では、組み合わせ方法は、水和し、折り畳まれた細胞外マトリックス(ECM)(例えば、ヒトコラーゲンIおよびヒトフィブロネクチンからなる)を含む表面(例えば、第2の培養容器、またはバイオセンサー表面)への採取細胞を移動させ、6〜17%の酸素(例えば、10%の酸素)を含む条件下、少なくとも1種のアノイキス阻害剤を含む培地中で少なくとも1〜8時間、例えば、有効な付着と拡散が観察させるまで培養することをさらに含むことができる。
臨床検査用の細胞を調製するために本発明の方法に従った初代細胞の培養後、方法は、疾患細胞集団の特定と特性評価を含むこともできる。一実施形態では、疾患細胞集団は、表2に挙げたものなどの特異的マーカーのFACSまたはqPCR法を用いた検出により特定および/または特徴付ける。追加でまたは代わりに、疾患細胞集団は、バイオセンサーを使った接着および/または細胞内シグナル伝達経路活性の試験により特定および/または特徴付けることができる。
細胞試料およびその初期調製
本発明の方法は、多種多様の初代細胞、特に初代ヒト細胞、特に、ヒト対象由来の生存疾患細胞に適用できる。
一実施形態では、細胞は腫瘍試料由来の癌細胞である。
いくつかの実施形態では、細胞試料は、コア針生検、穿刺吸引、真空補助下コア生検、画像誘導コア針生検、外科生検、外科的切除、または任意のその他の好適な医療手技から得た新しい固形癌組織検体から抽出される。
いくつかの実施形態では、細胞試料は、任意の疾患もしくは正常生体組織または生体液から得られる。
好ましい実施形態では、疾患上皮細胞は、乳房組織、胃組織、結腸/腸組織、肺組織、頭部組織、頸部組織、耳下腺組織、卵巣組織、子宮組織、頸部組織、前立腺組織、膵臓組織、腎臓/腎性組織、または骨および/または骨髄から得られ得る。特定の実施形態では、組織は、標準的乳癌病理タイプ−例えば、臨床病理学的マーカー:ER+/HER2−、ER+/HER2+、ER−/HER2+、ER−/HER2−により記載されるものを有する患者から得られる。
いくつかの実施形態では、異なる成分または異なる濃度の成分からなる培地が、細胞調製の異なる段階で使用される。いくつかの実施形態では、細胞試料は、1、2、3、4種またはそれを超える異なる培地を用いて調製される。いくつかの実施形態では、細胞試料は、細胞調製の異なる段階で、異なる酸素濃度からなる雰囲気条件中で維持される。いくつかの実施形態では、1、2、3、4種またはそれを超える異なる雰囲気条件が、細胞調製の異なる段階で使用される。他の実施形態では、異なる培地、およびアノイキス阻害剤、および雰囲気条件、および付着条件が、任意の組み合わせで一緒に使用される。
疾患細胞試料を調製するために、組織検体は通常、最初に、より小さい部分に機械的に分割され、アノイキス、細胞表面接着分子損傷、またはその他の非アノイキス手段による細胞死を生ずることなく、組織消化することが分かっている酵素剤(すなわち、消化酵素)を含む消化培地中に置かれる。したがって、特定の実施形態では、対象から試料を取得後、生存疾患細胞試料を、1つまたは複数の酵素剤を含む消化培地と一定時間接触させる。この場合、消化培地は、アノイキス、細胞表面接着分子損傷または非アノイキス手段の細胞死を生ずることなく、組織を消化する。酵素剤は、次の非限定的例から選択できる:いずれかの既知のタイプのコラゲナーゼ、ヒアルロニダーゼ、パパイン、ディスパーゼ、エラスターゼ、トリプシンおよびこれらの任意の組み合わせ。一実施形態では、消化培地は、コラゲナーゼおよびヒアルロニダーゼの混合物を含む。組み合わせて使用する場合、酵素剤を種々の比率で使って、収率を最適化し、細胞に対する損傷を減らし得る。組織検体は、いずれかの上記の薬剤からなる消化培地中に、数分から数日までの異なる期間にわたり置き得る。最も好ましい実施形態では、酵素剤は、細胞の酵素への暴露時間を制限し、生存細胞の異種集団の収率を最適化するように選択される。
他の実施形態では、消化培地は、少なくとも1種のアノイキス阻害剤を補充される。好ましい実施形態は、内因性アノイキス経路誘導を標的にする少なくとも1種のアノイキス阻害剤および外因性アノイキス経路誘導を標的にする少なくとも1種のアノイキス阻害剤で、消化培地を補充することである。消化培地はまた、少なくとも1種のアノイキス阻害剤を補充できる。さらなる実施形態は、任意のアノイキス阻害剤またはアノイキス阻害剤の組み合わせを、抽出プロセス中に、連続的にまたは間欠的に使用することである。一実施形態では、対象から組織試料を入手後、細胞は少なくとも1種の消化酵素(例えば、コラゲナーゼおよびヒアルロニダーゼ)および少なくとも1種のアノイキス阻害剤を含む培地中、好ましくは、2%超および20%未満の酸素(より好ましくは6〜17%の酸素、より好ましくは10%の酸素)の条件下で培養される。細胞は、この培地中で一定時間(例えば、少なくとも1時間、少なくとも2時間、少なくとも3時間または1〜5時間または3時間にわたり)培養され、その後、細胞は同じ培地(すなわち、アノイキス阻害剤(単一または複数)を含む)であるが消化酵素のない培地中で培養される。
本発明の組成物または方法を実施する場合、目的の疾患細胞が存在するという判断は、特定の細胞型を特定するマーカーの発現を検査することにより行い得る。細胞型特定のためのマーカーの非限定的例には、下表2に挙げるものが含まれる。多くの場合で試料の不均一性があることを考慮すると、一般的細胞型に特異的な、または目的の疾患に特異的な1つまたは複数のマーカーの使用が最も望ましい。マーカー発現特性評価、定量化、または存在は、タンパク質、mRNAレベル、その他のより小分子のRNAレベル(例えば、siRNA、lncRNA、ミクロRNA、調節RNA)を、例えば、FACS、定量的もしくは他のPCR法、質量分析、またはポリアクリルアミドゲルを用いて検査することにより行うことができる。
Figure 2018531021
特定の初代細胞材料を用いて作業して本発明と無関係の他の研究または商業上の目標に適合させるためには、細胞の形質転換が望ましい場合がある。
初代細胞の形質転換はインビボ腫瘍機能活性を代表していない細胞状態を作り出す可能性があるので、本発明は、インビボ状態が存在しなくなるような、細胞の遺伝的、エピジェネティックな機能、または疾患の機能を改変する細胞の形質転換を除外する。
さらに、マウスモデルの腫瘍原性は、単離細胞試料中の癌細胞の存在を決定するための標準になっている。このような実験により得られたかなりの成果および知識にも関わらず、本発明は、多くの内因性腫瘍型は、患者の診療に有用な、許容され得るレベルのマウスにおけるインビボ疾患の信頼性および増殖の一貫性に到達していないことを認識している。多くの腫瘍型は、マウス中で確実に増殖しない。マウスは細胞のレベルで根本的にヒトとは異なり(例えば、重要なタンパク質は、両哺乳動物で同じ名称であるが、細胞の経路の機能を変え、影響を与える異なる配列、構造、機能、および位置を有する)、十分なマウス異種移植材料を得る時間の量は、有用な臨床検査結果に対する時間要件には適合しない。従って、臨床検査用の有用な細胞を試験または提供するための手段としての異種移植モデルは、本発明の領域外にある。
ある実施形態では、細胞試料の調製は、臨床検査が行われる場所(例えば、検査室、病院)で行われる。従って、細胞は対象からの取り出しから本明細書で記載の細胞試料調製方法の開始までの時間を橋渡しするよく知られた移動培地中で保存できる。別の実施形態では、細胞試料の調製は、患者から検体が取り出された場所とは異なる場所で行われ、検体収集キットに入れて検体を輸送することが必要となる。検体を細胞試料が調製される場所に輸送するのに必要な時間は、1〜36時間、および36時間超の範囲になり得る。
培地の調製
本発明の方法で使用するための培地は、所望の濃度の成分を基本培地に加える標準的方法で調製できる。本発明で使用するための培地の調製は、液体または固体形態の個々の成分の水溶液または有機溶液としての添加により行うことができる(最終的有機溶媒組成物の0.3%以下が好ましい)。成分は混合された後に、保存および調製の容易さと均質性を目的としたブレット濃縮(bullet concentrated)ストック溶液の作製のために作業培地の最終調製が行われる。本組成物または方法の実施のためにブレット濃縮ストック溶液を使用する場合、試薬を、好ましくは、水溶解度レベル、すなわち、塩で混合し、より高い水溶性の成分は、水性ブレット型として保存され、より低い水溶性で、疎水性の成分は、エタノール、ジメチルホルムアミド、および/またはジメチルスルホキシドストックとして保存される。非タンパク質性成分のストック溶液を含む組成物は、使用寿命を延ばすために、理想的には、密閉した遮光性容器中、−30℃〜−80℃で保存され得る。
1つまたは複数のアノイキス阻害剤(必要に応じて、上述のその他の成分を含む)を含む培地は、生存疾患細胞の試料に適用する前に、細胞に対するアノイキスが影響を与える可能性をさらに減らすように、10%O、5%CO、37℃の環境条件中に置くことによりさらにコンディショニングされ得る。
全ての実施形態で、培地は無菌で、または実質的に無菌形態で使用される。この形態は、当業者に既知の種々の方法により作り出し得るが、組成物および個々の成分に有害でないように行われるのが好ましい。例えば、好ましい方法は、0.1〜1.0マイクロメートルのポアサイズの低タンパク質結合膜フィルターを使ったフィルター滅菌である。
いくつかの実施形態では、当業者に明らかなように、所定の成分の濃度は、含まれる表に列挙した範囲を超えて増減させることができ、増減した濃度の効果は、ルーチン的な実験を用いて決定できる。本培地配合物の特異的疾患細胞または組織型のための最適化は、経験的な手法、例えば、滴定、添加、除去、もしくは実験計画法(DOE)、またはこれらの組み合わせを用いて実施できる。
培養条件の最適化
培地組成物、培地成分の濃度、培地または雰囲気条件が使用される時間、条件が適用される処理段階/ステップ、使われる異なるタイプの培地、または細胞が付着される表面のタイプ、を含む細胞調製条件を最適化するために、一連の実験を行い、細胞増殖速度、細胞試料中の生存細胞の型、細胞試料中の得られる細胞型の比率、細胞が表面に付着するか否か、細胞の生存能力、細胞のミトコンドリア活性、またはこれらの条件の任意の組み合わせ下における任意の他の細胞調製結果の測定を行うことができる。これらの実験由来の結果を使って、特定の臨床検査、または疾患、または細胞型、または組織型の要件のために最適な細胞調製条件を選択できる。
その他の好適な最適化手法および解析は、本明細書の手引きを考慮すれば、当業者に容易に明らかになる。
組成物およびキット
本発明の方法で使用する組成物、ならびに本発明の方法を実施するためのキットも包含される。
一実施形態では、本発明は、生存疾患細胞の単離および初代細胞の調製方法の実施に好適なキットを提供する。このキットは、本明細書で記載の環境条件のための使用説明書および培地およびECM成分を含む付着表面を含む、いずれかの形態の本組成物を作製するための使用説明書を備えることができる。例えば、キットは、好適な水溶液中で混合および希釈できる別々のストック成分を提供できる。特定の実施形態では、少なくとも一部のキットの成分は、異なった温度で、または液体として、または粉末として保存される。特定の実施形態では、キットは、疾患細胞を培養するための、本明細書で記載のECM成分を含む表面などのアノイキス低減表面上のコート表面を含む。
別の態様では、本発明は、2%超および20%未満の酸素を含む条件下、少なくとも1種のアノイキス阻害剤を含む培地中で培養される初代ヒト癌細胞を含む細胞培養組成物を提供する。細胞培養組成物の一実施形態では、培地は、少なくとも1種の内因性アノイキス経路の阻害剤および少なくとも1種の外因性アノイキス経路の阻害剤を含み、細胞は、6〜17%の酸素(例えば、10%の酸素)を含む条件下で培養される。細胞培養組成物の別の実施形態では、培地は、少なくとも1種の内因性アノイキス経路の阻害剤、少なくとも1種の外因性アノイキス経路の阻害剤を含み、細胞は、6〜17%の酸素(例えば、10%の酸素)を含む条件下で培養される。さらに他の実施形態では、培地は、複数の培地を組み合わせた使用に関する上記セクションで記載の1つまたは複数の追加の成分を含む。
別の態様では、本発明は、水和細胞外マトリックス(ECM)を介してバイオセンサー表面に付着した初代ヒト癌細胞を含むバイオセンサー表面を提供し、該ECMは、(i)フィブロネクチンおよびコラーゲン、(ii)コラーゲンおよびラミニン332(ラミニンV)または(iii)ラミニン332(ラミニンV)からなる。一実施形態では、ECMはフィブロネクチンおよびコラーゲンからなり、好ましくは、フィブリル表面および親水性表面を含む。別の実施形態では、ECMは、コラーゲンおよびラミニン332(ラミニンV)からなる。さらに別の実施形態では、ECMは、ラミニン332(ラミニンV)からなる。一実施形態では、水和したECMは折り畳まれる。
別の態様では、本発明は、水和細胞外マトリックス(ECM)を介して細胞培養容器表面に付着した初代ヒト癌細胞を含む細胞培養容器表面を提供し、該ECMは、(i)フィブロネクチンおよびコラーゲン、(ii)コラーゲンおよびラミニン332(ラミニンV)または(iii)ラミニン332(ラミニンV)からなる。一実施形態では、ECMはフィブロネクチンおよびコラーゲンからなり、好ましくは、フィブリル表面および親水性表面を含む。別の実施形態では、ECMは、コラーゲンおよびラミニン332(ラミニンV)からなる。さらに別の実施形態では、ECMは、ラミニン332(ラミニンV)からなる。一実施形態では、水和したECMは折り畳まれる。
臨床検査
臨床検査用の初代細胞を調製する本発明の方法は、必要に応じ、培養ステップ(単一または複数)後に、細胞試料の臨床検査を行うステップを含むことができる。したがって、試験前の適切な時間に、試料に対し1つまたは複数の臨床検査を実施するために、患者の生存疾患細胞試料を上述した抗アノイキス調製条件から取り出すことができる。臨床検査(単一または複数)は、臨床的に意味のある、および/または有用な結果、例えば、限定されないが、診断検査、遺伝子検査、および特定の治療計画の効力を判定する検査の結果を得るように設計された初代細胞を使用する任意の臨床検査とすることができる。
一実施形態では、臨床検査は、バイオセンサーを使って行われる。したがって、本発明の方法は、臨床検査の前に、生存疾患細胞の試料をバイオセンサー表面に付着できる(例えば、本明細書で記載の抗アノイキス付着条件を使って)。本発明により提供された培養初代細胞を使って実施されるバイオセンサーベースアッセイの非限定的例には、薬剤(単一または複数)が生存疾患細胞の細胞接着およびシグナル伝達経路活性の変化を生じるか否かを判定するためのアッセイ、例えば、Laingらによる米国特許出願公開第20130330761号および同第20150125894号に記載のアッセイが含まれる。これら両特許の全内容は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
一実施形態では、本明細書で記載のいずれかの培養方法により調製された生存疾患細胞の試料は、薬剤の添加が生存疾患細胞の細胞接着およびシグナル伝達経路活性の変化を生ずるか否かを判定するように評価される。特定の実施形態では、これらの調製法は、標的療法薬が対象の癌細胞で機能しているかどうかを判定するために扱うことが意図されているシグナル伝達経路に対し、標的療法薬である第1の薬剤が影響を与えるか否かを評価する方法と組み合わせられる。このような方法は、
対象から得た生存癌細胞の試料を、無血清培地中で培養することであって、該培地がいずれかの抗アノイキス成分または本明細書で記載の条件をさらに含むこと、
試料を第1の薬剤と、第1の薬剤が扱うことを意図しているのと同じシグナル伝達経路に選択的に影響を与えることが分かっている第2の薬剤とを、細胞接着または付着に与える効果により測定して、シグナル伝達経路を上方制御または下方制御するように接触させて、第1の試薬および第2の試薬の両方に接触させた試料を生成すること、
試料を第1の薬剤または第2の薬剤の単独と接触させた対象から得た生存癌細胞の試料と比較して、第1の試薬および第2の試薬の両方と接触させた生存細胞中の細胞接着または付着を連続的に測定すること、
連続測定値の数学的解析により、第1の薬剤および第2の薬剤の両方と接触させた試料中で細胞接着または付着の変化が発生したか否かを、第1の薬剤または第2の薬剤を単独で接触させた試料と比較して、判定すること、および
対象の治療的使用のための第1の薬剤を選択することであって、第1の薬剤は、第2の薬剤と組み合わせた場合、第1または第2の薬剤の単独の場合と比較して、細胞接着または付着の変化を生じ、第1の薬剤が対象の癌細胞の細胞内シグナル伝達経路で機能していることを示すこと、を含むことができる。
他の実施形態では、これらの細胞調製法は、HERファミリーレセプターを標的とする治療薬が対象由来の生存癌細胞試料中で機能するか否かを評価する方法と組み合わされる。このような評価方法は、
対象から得た生存癌細胞の試料を、血清および増殖因子不含培地中で培養すること、
(1)試料の第1の部分とHERファミリーレセプターを標的とする治療薬およびニューレグリンとを接触させること、および/または(2)試料の第2の部分とHERファミリーレセプターを標的とする治療薬および上皮増殖因子とを接触させること、
(1)試料を治療薬またはニューレグリンの単独と接触させた対象から得た生存癌細胞の試料と比較して、治療薬およびニューレグリンの両方と接触した試料の第1の部分、および/または(2)試料を治療薬または上皮増殖因子の単独と接触させた対象から得た生存癌細胞の試料と比較して、治療薬および上皮増殖因子の両方と接触した試料の第2の部分の生存細胞の細胞接着または付着を連続的に測定すること、
(1)治療薬またはニューレグリンの単独と接触させた試料と比較して、治療薬およびニューレグリンの両方と接触した第1の部分、および/または(2)治療薬または上皮増殖因子の単独と接触させた試料と比較して、治療薬および上皮増殖因子の両方と接触した第2の部分で細胞接着または付着の変化が発生したか否かを、連続測定値の数学的解析により判定すること、
対象を処置する治療薬を選択することであって、細胞接着または付着の変化が、(1)治療薬またはニューレグリンの単独の場合と比較して、第1の部分で発生し、および/または(2)治療薬または上皮増殖因子の単独の場合と比較して、第2の部分で発生しており、治療薬は対象の癌細胞中で機能していることを示すこと、を含むことができる。
いくつかの実施形態では、本明細書で記載のいずれかの培養方法により調製された生存疾患細胞の試料は、薬剤(単一または複数)の添加が生存疾患細胞の細胞接着およびシグナル伝達経路活性の変化を生ずるか否かを判定するように評価される。特定の実施形態では、これらの細胞調製法は、標的療法薬が対象の癌細胞で機能しているかどうかを判定するために扱うことが意図されているシグナル伝達経路に対し、標的療法薬である第1の薬剤が影響を与えるか否かを評価する方法と組み合わせられる。このような方法は、
対象から得た生存癌細胞の試料を、血清を含まず、標的療法薬または第2の薬剤に対し感受性または抵抗性をもたらし得る細胞内シグナル伝達機能に影響を与えることが分かっている選択天然薬剤または因子を含む培地中で培養すること、
試料を第1の薬剤と、第1の薬剤が扱うことを意図しているのと同じシグナル伝達経路に選択的に影響を与えることが分かっている第2の薬剤とを、細胞接着または付着に与える効果により測定して、シグナル伝達経路を上方制御または下方制御するように接触させて、第1の試薬および第2の試薬の両方に接触させた試料を生成すること、
試料を第1の薬剤または第2の薬剤の単独と接触させた対象から得た生存癌細胞の試料と比較して、第1の試薬および第2の試薬の両方と接触させた生存細胞中の細胞接着または付着を連続的に測定すること、
連続測定値の数学的解析により、第1の薬剤および第2の薬剤の両方と接触させた試料中で細胞接着または付着の変化が起こったか否かを、第1の薬剤または第2の薬剤を単独で接触させた試料と比較して、判定すること、および
対象の治療的使用のための第1の薬剤を選択することであって、第1の薬剤は、第2の薬剤と組み合わせた場合、第1または第2の薬剤の単独の場合と比較して、細胞接着または付着の変化を生じ、第1の薬剤が、抵抗性もしくは感受性薬剤または因子の存在下で、対象の癌細胞の細胞内シグナル伝達経路で機能していることを示すこと、を含むことができる。
本明細書で記載の方法により調製された初代細胞を使って、および/または本明細書で記載の組成物(例えば、初代細胞培養、細胞培養容器表面、バイオセンサー表面)を使って実施される臨床検査は、診断目的に、例えば、初代細胞試料を得た対象が特定の疾患または障害(例えば、癌、自己免疫疾患、など)を有するかどうかを診断するために、使用できる。この場合、臨床検査の結果に基づいて診断判定基準が決定される。
さらに、初代細胞試料を得た対象は、臨床検査の結果に基づいて処置できる(例えば、治療計画は、臨床検査の結果に基づいて選択できる)。例えば、一実施形態では、本明細書で記載の細胞調製法および組成物は、癌と診断されたヒト対象を処置する方法と組み合わせられる。この場合の選択治療計画は、本明細書で記載の細胞調製法および組成物を用いた臨床検査の結果に基づいている。一実施形態では、癌と診断されたヒト対象のこのような処置方法は、
下記を含む方法により対象癌細胞中で扱うことが意図されているシグナル伝達経路で治療的に活性であると判断された標的療法薬である第1の薬剤を対象に投与すること:
対象から得た(例えば、本明細書で記載の培養方法に応じた)生存癌細胞(例えば、初代および/または転移性癌細胞)を含む試料を培養すること、
細胞接着または付着に与える効果により測定して、シグナル伝達経路を上方制御または下方制御するように、試料を第1の薬剤と、第1の薬剤が扱うことを意図しているのと同じシグナル伝達経路に選択的に影響を与えることが分かっている第2の薬剤とを接触させて、第1の試薬および第2の試薬の両方に接触させた試料を生成すること、
試料を第1の薬剤または第2の薬剤の単独と接触させた対象から得た生存癌細胞の試料と比較して、第1の試薬および第2の試薬の両方と接触させた生存初代または転移癌細胞中の細胞接着または付着を連続的に測定すること(例えば、バイオセンサーを使って、この場合、生存細胞は本明細書で記載の方法に従ってバイオセンサー表面に付着される)、
連続測定値の数学的解析により、第1の薬剤または第2の薬剤を単独で接触させた試料と比較して、第1の薬剤および第2の薬剤の両方と接触させた試料中で細胞接着または付着の変化が起こったか否かを特徴付ける出力値を、パーセンテージとして表して、決定すること、および
第1の薬剤を対象に投与することであって、細胞接着または付着の変化を特徴付ける出力値が、閾値(例えば、50%)と等しいまたはそれより大きく、対象の癌細胞の細胞内シグナル伝達経路で、第1の薬剤が治療的に活性であることを示すこと、を含む。
定義
特に断らなければ、本明細書で使用されるすべての技術的および科学的用語は、本発明が属する当業者により一般に理解されているものと同じ意味を有する。このセクションで記載される定義が、参照により本明細書に組み込まれる、特許、出願、出願公開および他の刊行物に記載される定義と相いれないまたは別の理由で矛盾する場合には、このセクションで記載される定義が参照により本明細書に組み込まれる定義より優先する。本明細書で使用される場合、次の用語は、次に示す定義を有することが意図されている。
本明細書で使用される場合、用語の「約」は、おおよそ、ほぼ、概略、または周辺を意味する。この用語「約」が数値の範囲と組み合わせて使用される場合、これは、記載の数値の上下の境界を拡大することにより範囲を変更する。一般に、本明細書で使われる場合、用語の「約」は、数値を表示値の上下に10%だけ変更する。一態様では、用語の「約」は、使用されている数の数値のプラスまたはマイナス20%を意味する。したがって、約50%は、45%〜55%の範囲にあることを意味する。本明細書で記載される終端点による数値範囲には、その範囲内に含まれる全ての数および分数が包含される(例えば、1〜5には、1、1.5、2、2.75、3、3.90、4、および5が包含される)。
細胞に関連する用語の「活性化因子」、「活性化する」、または「撹乱剤」、「撹乱する」、「撹乱」は、当該技術分野における熟練者によく知られた細胞に影響を与える試薬、有機分子、シグナル伝達因子、生化学的、核酸、またはタンパク質を使った特定の対象または活性の細胞の生理的操作を意味する。影響は、何らかの細胞生理的活性の調節を意味し、限定されないが、上方または下方制御を含み得る。
用語の「アノイキス」は、静止状態、老化に導き、最終的に細胞死に至る活性を意味する。このアノイキスは、細胞が周囲細胞外マトリックス(ECM)および隣接細胞から脱離する際に、足場依存性細胞の接着分子のシグナル伝達により誘発される。近くの細胞間の通信、ならびに細胞とECMとの間の通信が増殖または生存の調節に不可欠なシグナルを提供するために、通常、細胞はそれらが属する組織の近傍にとどまる。細胞がそれらの天然のECMまたはそれらの近隣細胞から離脱する場合、正常細胞−マトリックスおよび細胞−細胞相互作用が失われ、細胞はアノイキスシグナル伝達を開始することになる。本発明は、初代細胞のアノイキスシグナル伝達および初代患者疾患細胞のアノイキス関連活性を阻止することを目的とし、その結果、前記細胞を患者の機能細胞の臨床検査に使用し得る。これは、接着関連媒介シグナル伝達を介した撹乱に対する応答の測定に依存し得る。
用語の「抗生物質」は、非哺乳動物細胞の増殖を阻害する比較的低分子量の天然または合成の化学物質を意味する。最初は、細菌、放線菌、および真菌などの種々の微生物種によりそれらが産生される天然で発見されたが、抗生物質は、化学的に合成、または天然の化合物を化学的に改変して、半合成抗生物質を産生し得る。抗生物質の主要な種類は、(1)ペニシリン、セファロスポリンおよびモノバクタムを含むβ−ラクタム系薬、(2)アミノグリコシド系薬、例えば、ゲンタマイシン、トブラマイシン、硫酸ネチルマイシン、およびアミカシン、(3)テトラサイクリン系薬、(4)スルホンアミド系薬およびトリメトプリム、(5)フルオロキノロン系薬、例えば、シプロフロキサシン、ノルフロキサシン、およびオフロキサシン、(6)バンコマイシン、(7)例えば、エリスロマイシン、アジスロマイシン、およびクラリスロマイシンなどを含むマクロライド系薬、および(8)その他の抗生物質系薬、例えば、ポリミキシン系薬、クロラムフェニコールおよびリンコサミド系薬である。市販の混合物が含まれる(例えば、P/S/A−ペニシリン−ストレプトマイシン−アンホテリシンB、抗生物質−抗真菌薬溶液としても知られる)。
用語の「アポトーシス」は、プログラム細胞死を意味し、生理学的増殖調節および組織恒常性調節の重要な制御系である。アポトーシスは、腫瘍形成の調節に重要な役割を果たしている。多くの抗癌療法は、癌細胞のアポトーシスシグナル伝達経路を活性化するように設計される。いくつかの細胞では、アポトーシスはアノイキスの後の段階であり得る。
用語の「アノイキス阻害剤」は、アノイキス促進機能を阻害するか、または内因性または外因性シグナル伝達経路の抗アノイキス活性化を可能とし、それによりアノイキスを抑制する分子または条件を意味する。本発明における好ましい阻害剤は、一定期間後、可逆的である。この場合の可逆的阻害剤は、除去時にアノイキスに対する効果が持続しない試薬の適用により引き起こされる阻害を含む。可逆的阻害剤は、患者試料が試験前にそれらのインビボ様状態に戻されるので好ましい。
用語の「アッセイ」または「アッセイすること」は、例えば、存在、非存在、量、程度、動態学、動力学、標的のタイプ、例えば、外来性の刺激(例えば、治療薬)による刺激時の細胞の光学的応答またはバイオインピーダンス応答などを決定するための分析を意味する。
用語の「付着する」または「付着」は、例えば、物理的吸収、化学結合、化学誘引などのプロセスまたはそれらの組み合わせなどにより表面に結合された、本開示の表面改質物質、細胞、リガンド候補化合物などの実体を意味する。特に、「細胞付着」、「細胞接着」または「細胞試料付着」は、培養または細胞繋留材料との相互作用などによる、細胞の一体となった表面への結合または表面との相互作用を意味する。
用語の「付着パターン」は、表面への細胞または細胞試料の表面への結合の観察可能な形質または特徴を意味する。付着パターンは、例えば、付着部位の数などのように、定量的とすることができる。付着パターンは、例えば、水和細胞外マトリックスへの付着の好ましい分子部位などのように、定性的とすることもできる。
用語の「基礎形態」は、薬剤または刺激の導入に先立つ細胞または細胞試料の形態および構造を意味する。
用語の「ベースライン測定値」は、検査される一連の細胞の生理的開始点を意味し、薬物が添加される前の一定期間にわたる測定値の評価に基づいている。
用語の「バイオセンサー」は、分析物または分析物もしくは細胞の生理状態の変化を測定する装置を意味する。いくつかの実施形態では、バイオセンサーは通常、次の3つの部分を含む:分析物に結合するまたはこれを認識する生物学的成分または要素(細胞外マトリックス、細胞シグナル伝達分子または細胞増殖、組織、細胞、代謝物、異化産物、生体分子、イオン、酸素、二酸化炭素、炭水化物、タンパク質等の非限定例を挙げられる)、検出器要素(光学的、圧電気的、電気化学的、温度測定的または磁気的等、物理化学的様式で操作する)および両方の構成成分と関連するトランスデューサー。用語の「バイオセンサー」は、光学的バイオセンサーおよびインピーダンスバイオセンサーを包含する。用語「光学的バイオセンサー」は、蛍光、吸収、透過率、密度、屈折率および光の反射を測定する装置を意味する。いくつかの実施形態では、光学的バイオセンサーは、生細胞、病原体またはそれらの組み合わせにおける分子認識または分子刺激イベントを定量化可能なシグナルに変換するための光学的トランスデューサーを含むことができる。さらに、いくつかの実施形態は、フォトニック結晶デバイス、導波型光デバイスおよび表面プラズモン共鳴装置を包含することができる。用語の「インピーダンスバイオセンサー」は、生きた患者細胞の複素インピーダンス変化(デルタZまたはdZ)を測定する機器を意味し、インピーダンス(Z)は、オームの法則(Z=V/I)に説明されている通り、電圧の電流に対する比に関連付けられる。これは、細胞との電極界面における局所イオン環境に対し感受性があり、このような変化を、電圧および電流変動の関数として検出する。正常機能またはその撹乱の結果としての細胞の生理的変化は、電極周囲の電流の流れに定量化可能な変化をもたらし、測定されるシグナルの大きさと特徴に影響を与える。いくつかの実施形態では、インピーダンスバイオセンサーは、生細胞、病原体またはそれらの組み合わせにおける分子認識または分子刺激イベントを定量化可能なシグナルに変換するための電極または電気回路を含むことができる。いくつかの実施形態では、ISFETバイオセンサーは、生細胞、病原体またはそれらの組み合わせにおける分析物認識または細胞刺激イベントを定量化可能なシグナルに変換するためのイオン選択電界効果電気トランスデューサーを含むことができる。ISFETバイオセンサーにおける分析物濃度が変化すると、トランジスタの電流が変化し、これにより定量化シグナルが生じる。
用語の「細胞接着」は、別の細胞への、細胞外マトリックス成分への、または表面(例えば、マイクロタイタープレート)への細胞の結合を意味する。
用語「細胞増殖」は、細胞成長および細胞分裂の結果としての細胞数の増加を意味する。
用語「細胞試料」は、特定の対象から単離された細胞を意味し、細胞は、対象の生体液、排泄物または組織から単離される。組織から単離される細胞には、腫瘍細胞を包含することができる。組織から単離される細胞には、ホモジナイズされた組織および細胞抽出物ならびにそれらの組み合わせを包含する。細胞試料には、乳房組織、胃組織、結腸/腸組織、肺組織、頭部組織、頸部組織、耳下腺組織、卵巣組織、子宮組織、頸部組織、前立腺組織、膵臓組織、腎臓/腎性組織、または骨および/または骨髄、血液、血清、血漿、尿、精液、精液(seminal fluid)、精漿、前立腺液、尿道球腺液(カウパー腺液)、排泄物、涙、唾液、汗、任意の実用形式の生検材料、腹水、外科的切除物、脳脊髄液、リンパ液、骨髄または毛髪からの単離物を包含するが、これらに限定されない。
用語の「細胞シグナル伝達」は、情報の細胞内または細胞間伝達を意味する。細胞シグナル伝達は、細胞間、細胞とECM間の直接的な接触により、または1つの細胞から別の細胞へと取り入れられる物質の放出により達成することができる。細胞間シグナル伝達は、2分子(例えば、リガンドおよびレセプター)間の相互作用を介して起こり得る。受容体結合は、細胞内シグナル伝達のカスケードを誘発し得る(例えば、細胞内における生化学的変化または膜電位の変更の開始)。
用語の「細胞生存」は、代謝、成長、運動、生殖、ある種の応答性および適応性等、特定の機能を行う能力によって特徴付けられる細胞の生存能力を意味する。
用語の「既知組成の」は、化学的組成物中の種々の成分の個々の構造、化学式、ならびに組成およびパーセンテージが既知であるか、または定義され得ることを意味する。本発明では、この目的に対し、培地は、通常、組織培養を目的に調製されるいずれの動物血清も含まない。また、未知の/未定義の化学成分を有するいずれの組織抽出物も含まない。個々の患者由来の異種疾患細胞型集団の所望の成長/増殖を支援するのに必要な全ての必須成分は、既知組成である。
用語の「細胞骨格」は、内部細胞足場の構成を意味する。細胞の細胞骨格は、細胞質または膜成分および/または細胞内オルガネラの支援をする役割のフィラメントを含む。細胞骨格はまた、細胞の形状を維持するのを助ける。
用語の「疾患細胞試料」または「疾患細胞集団」または「疾患細胞」は、個々の患者の腫瘍(単一または複数)または患部組織または体液から抽出された疾患細胞の混合物、特に、上皮細胞を意味する。疾患細胞試料は、異常な増殖を特徴とする組織または体液であってよい。細胞試料は、特定の亜型の組成物の異種であり、例えば、上皮間葉連続体上の、分化もしくは未分化の管腔、筋上皮、基底、幹細胞または特に上記全ての混合物からなり得、それらは患者の腫瘍のインビボ状態を表す。特定の癌内因性亜型は、差次的パーセンテージの特定の型の疾患細胞を有し得る(例えば、ER+乳癌は、管腔上皮癌として知られ、従って、高い割合の管腔系統の抽出細胞およびより少ないパーセンテージの他の上皮型を有し得る。別の例のトリプルネガティブ乳癌は、基底上皮癌として知られ、従って、高い割合の基底系統の抽出細胞およびより少ないパーセンテージの他の上皮型を有し得る)ことが分かっている。試料は、生存または複製可能、または分裂、または非分裂、または細胞周期の任意の時点または複数時点の組み合わせ試料から特になり得る。細胞は、アノイキスに入っていてもまたは入っていなくても、またはアノイキスの任意のレベルに完全に関わっていてもよい。細胞試料は、それらの疾患経路活性を基準にして選択し得る。
「細胞外マトリックス成分」または「ECM成分」は、動物の細胞外マトリックス中で生じる分子を意味する。この分子は、いずれかの種由来およびいずれかの組織型由来の細胞外マトリックスの成分であり得る。細胞外マトリックス成分の非限定例として、ラミニン、コラーゲン、フィブロネクチン、他の糖タンパク質、ペプチド、グリコサミノグリカン、プロテオグリカンなどが挙げられる。細胞外マトリックス成分には、増殖因子を含むこともできる。
用語の「細胞外マトリックスコーティング」は、天然生体分子または生化学物質、または1つまたは複数の天然生体分子または生化学物質に由来するまたは1つまたは複数の天然生体分子または生化学物質をベースとする生化学物質であり、細胞外マトリックス中で見つかり得る、1つまたは複数の分子を含む細胞培養表面上のコーティングを意味する。例えば、細胞外マトリックスコーティングには、例えば、フィブロネクチン、コラーゲン、ラミニン、その他の糖タンパク質、ペプチド、グリコサミノグリカン、プロテオグリカン、ビトロネクチン、細胞間CAM、血管CAM、MAdCAM、またはこれらの誘導体を含み得、または天然の生化学物質リシンおよびオルニチンをベースにしたポリマー分子である、ポリリジンまたはポリオルニチンなどの生化学物質を含み得る。アミノ酸などの天然の生化学物質をベースにしたポリマー分子は、天然の生化学物質の異性体またはエナンチオマーを使用し得る。コーティングは、細胞表面レセプターまたは細胞表面同族結合タンパク質または前記細胞表面タンパク質に親和性を有するタンパク質も含み得る。理想的には、コーティングに使われる細胞外マトリックスは、ECM分子を特定の細胞型およびシグナル伝達経路に適合させることにより、利用可能な属および種から選択される。
用語の「外因性アノイキス」は、生存細胞の外因性シグナル伝達経路に関連する活性を意味する。外因性経路は、例えば、腫瘍壊死因子レセプター1(TNFR1)およびFas/CD95などの原形質膜上のデスレセプターにより活性化できる。リガンドがこれらのレセプターに結合すると、死誘導シグナル伝達複合体(DISC)が形成され、カスパーゼカスケードがメンバーである酵素カスケードおよびさらに下流のアノイキスイベントが開始される。
用語の「外因性アノイキス阻害剤」は、外因性アノイキス経路に影響を与える(例えば、妨げる)ことにより、アノイキスを阻害する薬剤、例えば、デスレセプター(例えば、TNFR1、ALK5/TGFBR1、Fas/CD95)の原形質膜に対する活性を阻害する薬剤を意味する。外因性アノイキス阻害剤の非制限的例には、デスレセプターに結合するまたは他の方法でデスレセプターの活性を阻害する薬剤、例えば、抗体およびIg融合タンパク質(例えば、TNFR1、ALK5/TGFBR1またはFas/CD95に対する)、ならびにデスレセプターのためのリガンドに結合するまたは他の方法でそのリガンドの活性を阻害する薬剤、例えば、抗体およびIg融合タンパク質(例えば、TFN−α、TGF−βまたはFasLに対する)が挙げられる。外因性アノイキス阻害剤のその他の非限定的例には、デスレセプターによるシグナル伝達を阻害する(例えば、TNFR1、ALK5/TGFBR1またはFas/CD95によるシグナル伝達を阻害する)小分子薬剤、WNTシグナル伝達アゴニストが挙げられる。外因性アノイキス阻害剤のその他の非限定的例には、アノイキスを阻害するインテグリン安定剤およびインテグリンリガンドが挙げられる。
用語の「折り畳まれた細胞外マトリックス」は、ECMを含む天然のまたは未変性の状態で、再現可能で、秩序化され、構造化された配置のタンパク質成分(単一または複数)であるECMを意味する。
用語の「健常細胞試料」は、検査されている疾患がない細胞、あるいは疾患がない組織から抽出された細胞の細胞試料を意味する。例えば、対象の乳癌に対する治療薬の効果に関して特定の対象が検査されている場合、非癌性細胞または非乳房組織由来の細胞は、「健康」であると見なされる。用語の「健常細胞試料」は、対象の全体健康状態に対する判断または反映ではない。
用語の「水和細胞外マトリックス」は、細胞外マトリックス成分から調製され、ヒト細胞が付着することが意図されている表面に適用され、表面に適用後、ECMが完全に湿潤され、使用前に脱水させないように十分な水を保持している細胞外マトリックスを意味する。
用語の「低酸素」は、20.094%未満の酸素分圧である細胞試料条件を意味する(そのため、正常酸素圧と呼ばれる)。大気中の酸素分圧は海面で20.094%であり、大抵の癌細胞は、インビボで2%未満の酸素分圧下にあると報告されている。極めて低い酸素量および極めて高い、酸素正常状態の20%酸素などの酸素量は、大抵の細胞、特に初代細胞をアノイキスに入らせると報告されている。
用語の「内因性アノイキス」は、生存細胞の内因性シグナル伝達経路に関連する活性を意味する。内因性アノイキス経路は、ミトコンドリアの膜の透過化およびチトクロムcの細胞質中への放出を特徴とする。その後、チトクロムcは、多タンパク質複合体を形成することができ、カスパーゼカスケードおよびさらに下流のアノイキスイベントの活性化を開始する。
用語の「内因性アノイキス阻害剤」は、内因性経路に影響を与える(例えば、妨げる)ことにより、アノイキスを阻害する薬剤、例えば、ミトコンドリアの膜の透過化および/またはチトクロムCの細胞質中への放出を阻害する薬剤を意味する。内因性アノイキス阻害剤の非限定的例には、レドックス緩衝剤および活性酸素種阻害剤などのストレス阻害剤が挙げられる。
用語の「試料」は、本開示において、装置、マイクロプレートまたは方法を用いて単離、操作、測定、定量化、検出または分析すべき部分を含有し得る任意のものを意味する。試料は、生体液または生体組織などの生体試料であってよい。生体液の例として、細胞培地などの培地中の細胞の懸濁液、尿、血液、血漿、血清、唾液、精液、糞便、痰、脳脊髄液、涙、粘液、羊水などが挙げられる。生体組織は、通常、特定の種類の細胞とその細胞間物質との凝集塊であり、ヒト、動物、植物、細菌、真菌またはウイルス構造の構造材料の1種を形成し、結合、上皮、筋肉および神経組織を包含する。生体組織の例には、器官、腫瘍、リンパ節、動脈および個々の細胞(単一または複数)も挙げられる。生体試料は、生体分子(例えば、タンパク質、酵素、核酸、炭水化物、生体分子に結合している化学分子)を含有する細胞懸濁液、溶液をさらに含んでもよい。
用語の「無血清」または「無血清培地」は、実質的に血清または組織抽出物を含まない細胞培地を意味する。特定の実施形態では、培地中に、0%(完全に不含)、または0.001%、0.005%、0.01%、0.10%、または1.0%未満の合計血清が存在する。血清のタイプの例には、種々の形態のウシ血清(仔ウシ血清(calf serum)、ウシ胎仔血清、仔ウシ血清(bovine calf serum)、ドナー仔ウシ血清、defined fetal bovine serum、新生児仔ウシ血清、など)、ウマ血清およびヒト血清、デキストラン抽出血清、加熱不活性化血清、ガンマ線照射血清、加熱不活性化−デキストラン抽出血清が挙げられる。
用語の「共有経路アノイキス阻害剤」は、共有阻害剤が外因性アノイキスおよび内因性アノイキスの両方の阻害に効果的であり得るように、内因性および外因性アノイキス経路により共有される細胞内シグナル伝達経路または成分に影響を与えることにより(例えば、妨げることにより)アノイキスを阻害する薬剤を意味する。共有経路アノイキス阻害剤の非限定的例には、Rho結合キナーゼ阻害剤、カスパーゼ阻害剤、マトリックスメタロプロテアーゼ阻害剤、WNTシグナル伝達アゴニスト、およびチトクロムC阻害剤が挙げられる。
用語の「実質的に不含」は、少なくとも約90%、好ましくは95%、99%またはそれを超えるパーセンテージでその他の成分から分離されていることを意味する。例えば、成分は、本明細書で記載のその他の細胞、試薬、タンパク質、ペプチド、化合物、または組成物であってよい。
用語の「相乗作用」または「相乗的効果」は、2種またはそれを超える薬剤を組み合わせた効果が、それぞれの薬剤の別々の(個別の)効果の合計より大きい場合の、2種またはそれを超える薬剤の相互作用を意味する。
用語の「標的経路薬」、「経路薬」、または「標的薬」は、疾患プロセスに関与する特異的生体分子(例えば、タンパク質)に結合し、それによりその活性を調節するように設計された治療能力を有する任意の分子または抗体を意味する。
用語の「治療薬」は、生物(ヒトまたは非ヒト動物)に投与時に、局所的および/または全身性作用により所望の薬理的、免疫原性、および/または生理的効果を誘発する、任意の合成または天然の生物学的に活性な化合物または物質の組成物を意味する。この用語は、タンパク質、ペプチド、ホルモン、核酸、遺伝子構築物などの従来から薬物、ワクチン剤、およびバイオ医薬品とみなされている化合物または化学薬品を包含する。薬剤は、獣医学用途および植物などの農業用途、ならびにその他の領域を含む医用に使われる生理活性物質であってよい。用語の治療薬には、限定されないが、薬物;ビタミン;ミネラル栄養補助剤;疾患もしくは疾病の処置、予防、診断、治癒または緩和のために使われる物質;または身体の構造もしくは機能に影響を与える物質;または所定の生理的環境に置かれた後に生物学的に活性になる、またはより活性になるプロドラッグも含まれる。治療薬には、抗癌治療薬、統合失調症治療薬、抗炎症剤、および抗生物質が挙げられるが、これらに限定されない。
範囲が与えられる場合、端点が包含される。さらに、別段の指示がない限り、あるいは文脈および当業者の理解により明らかでない限り、範囲で表される値は、文脈により明確に別義が示されない限り、その範囲の下限値の単位の10分の1まで、本発明の別の実施形態で示した範囲内の任意の特定の値または部分範囲を取ることができることを理解されたい。
全ての引用した情報源、例えば、特許、特許公報、参考文献、刊行物、データベース、データベース項目、および本明細書で引用した技術は、引用で明示的に述べられていない場合であっても、参照によりその全体が本出願に組み込まれる。引用情報源および本出願の間で相反する記載がある場合には、本出願の記載が優先されるものとする。
実施例
本発明は、以下の実施例を参照することによりさらに完全に理解されるであろう。しかし、これらを、本発明の範囲を限定するものと解釈するべきではない。本明細書で記載の実施例および実施形態は例証の目的のためのみのものであり、それらを考慮すれば、当業者に対して種々の修正または変更が示唆され、また、それらの修正または変更は、本出願の趣旨および範囲内に、ならびに添付した特許請求の範囲内に包含されるべきであることは、理解されよう。
実験デザインの考察
本発明で記載の初代疾患細胞の取得と培養方法を使って、臨床検査用の疾患細胞が調製される。
通常、タンパク質結合およびアノイキスの生化学的原理は、組織の起源に関わりなく、ECMに付着する種々の細胞型全体にわたり普遍的であると理解される。したがって、本明細書で記載の方法は、組織の起源に関わりなく、ECMに付着可能な全ての細胞型に適用可能である。
以降で提供する3つの実施例は、本明細書で記載の臨床検査のための初代細胞の調製方法の種々の実施形態を示す。特に、下記の場合に発生する利点について実証する:細胞試料の培養時に、1)10%の酸素条件、または2)1種または複数のアノイキス阻害剤、または3)水和されたおよび折り畳まれたECM、が用いられる場合。これら3つの変数のそれぞれは、「1度に1つの変数」法を使って、従来の条件に対し単独で評価される。これらの変数を3つの実施例に分離する場合、それらは、考察の目的上、「改善」条件と標識され、それらが比較される条件は、「従来」条件と標識される。
実施例1−異なる酸素条件下での培養方法の比較
実施例2−1種または複数のアノイキス阻害分子を用いた場合と用いない場合の培養方法の比較
実施例3−水和し、折り畳まれたECMを用いた場合と用いない場合の培養方法の比較
実施例で使用する要素
組織:2人の異なる患者(C54、C517A)検体由来の疾患乳房組織をこれらの実施例で使用した。肥大性および乳癌組織は、代表的組織モデルを提供する。理由は、それらのアノイキスおよびアノイキス調節機構は、他の患部組織型を代表するものであるためである。さらに、乳癌は米国で毎年診断される全ての癌の内の20%を占め、女性の最もよくある型の癌である。患者由来の組織は、本明細書で記載の組織検体収集技術を使って得られた。それぞれの試験用細胞試料を疾患乳房組織の別々の一定分量から抽出した。それぞれの検体の一定分量は、30ミリグラムの組織から構成された。
細胞:患者乳房組織検体から抽出した疾患上皮細胞を試験のために選択した。上皮細胞は、代表的細胞モデルである。理由は、それらで認められるアノイキスおよびアノイキス調節機構は、他の腫瘍細胞型を代表するものであるためである。
アノイキス阻害剤:これらの実験で次の3種のアノイキス阻害剤分子を単独でおよび組み合わせて使用した:Rhoキナーゼ阻害剤、カスパーゼ阻害剤、およびMMP3阻害剤。これらのそれぞれは、異なるアノイキス調節の経路に影響を与え、それらの関連する機能は、どのようにしてそれらが結合を介して広範に相互接続され、調節されるかということを含めて、タンパク質切断、リン酸化および脱リン酸化などの酵素活性、および重要な細胞機能の制御を含む。
細胞外マトリックス(ECM)コーティング:次の2つのタイプのECMコーティングを評価した:1)水和し、折り畳まれたECM;2)非水和で、折り畳まれていないECM。それぞれのコーティングは、コラーゲンIおよびヒトフィブロネクチンから構成された。
酸素:次の3種の異なる酸素濃度を有する雰囲気条件を評価した:1)2%酸素;2)10%酸素;3)20%酸素。
培養条件の評価
疾患細胞試料を培養する際の2つの重要な目標は、細胞コロニーの大きさを拡大することと、試験に利用できる細胞の数を増やすことである。より大きい細胞数と細胞コロニーサイズの両方をもたらす一連の培養条件は、異なるセットの条件から得られるものに比べて、優れている。
3種それぞれの試料は、1つの変数を除いて、細胞試料を同じ条件下で培養し、その後、比較した。特定の培養条件変数が、同じ患者から得られた細胞試料に与える影響を比較するために、2つの異なる尺度−細胞数と細胞コロニーサイズの変化−を用いた。細胞数により、異なる培養条件下で産生された細胞数の横に並べた増加の比較が可能となる。細胞コロニーサイズにより、異なる培養条件下で産生された細胞コロニーのサイズの変化の比較が可能となる。それぞれの尺度は、培養された後の細胞試料の状態への異なる洞察を与える。細胞数は、培養条件の短期間の評価を与え、一方、細胞コロニーサイズの変化は、細胞試料の全体的な長期にわたる堅牢さに関する指標を与える。
それぞれ3つの異なる実施例は、3つの基本変数−雰囲気の酸素濃度、アノイキス阻害剤の存在または非存在、およびECMコーティングのタイプ−が細胞試料に与える効果を分離するように設計されている。それぞれの実施例で、「従来」条件に比較して「改善」条件が試験される。改善条件は、アノイキスの細胞試料に対する有害作用を低減することにより、細胞培養の結果を改善することが意図されている。それぞれの実施例で、細胞試料が数日間培養された後で、細胞数と細胞コロニーサイズを測定し、細胞試料内でアノイキスを回復させる効果を評価する。一組の条件がより大きい細胞数と細胞コロニーサイズの両方をもたらす場合には、これらの条件は、その比較対象に比べて、優れていると見なされるであろう。
細胞数:電子工学的細胞計数装置のCountess(Life Technologies)を使って、それぞれの実験の終わりに細胞の試料中の細胞数を計数した。それぞれの実施例で、同じ患者由来の2つの別々の組織の一定分量から得た2つの細胞試料を異なる条件下で並行して試験する。計数の前に、細胞試料をトリパンブルーで処理して生細胞と死細胞との間での識別を可能とした。生細胞(トリパンブルーで染色されないもの)のみを計数した。5日間培養後、全ての細胞試料を2回繰り返して計数し、細胞数を報告する。「改善」細胞培養と「従来」細胞培養との間の相対パーセンテージの差異を計算することにより、並行して培養したそれぞれの細胞試料由来の細胞数を比較する。5日後に、その比較対象より多い細胞数が得られる細胞培養条件を、優れていると見なした。
細胞コロニーサイズ:細胞試料中の細胞コロニーサイズの変化を定量化するために、培養の開始後の第1の(早期の)日に、4つの細胞コロニーのサイズを決定し、第2の、さらに後の日に、これらの4つのコロニーのサイズと比較する。第1の画像を培養開始後48時間に取得し、第2の画像を48〜96時間後に取得する。コロニーサイズを測定するために、40xの倒立顕微鏡使ってコロニーの画像を作製し、それぞれのコロニーが含むピクセルの数を決定することにより、細胞コロニーの面積が定量される。第1と第2の画像の間の4つのコロニーの合計サイズの絶対変化を、2つの異なる条件下でそれぞれの細胞試料について計算し、報告する。次に、「改善」細胞培養と「従来」細胞培養との間の相対パーセンテージの差異を計算することにより、このコロニーサイズの変化を比較する。その比較対象に比べて細胞コロニーサイズより大きい変化を生ずる培養条件を、優れていると見なした。
実施例1:3種の異なる酸素条件下での培養方法の比較
この実施例では、患者C517由来の初代細胞試料を抽出培地中、および水和し、折り畳まれたECMコーティングからなる細胞培養表面上に少なくとも1種のアノイキス阻害剤を含む初期培地中、次記の、3種の異なる酸素条件下で調製した:1)10%酸素条件(「改善」条件);2)低(2%)酸素条件;3)正常酸素圧(20%)条件。2%および20%の酸素条件は、「従来」の条件を表す。
この実施例用の細胞試料は次のように調製した:
ヒト患部組織検体を取得し、最初に、明らかな脂肪部分を除去し、検体を1〜4mmの大きさの小片に切り刻むことにより調製した。その後、切り刻んだ検体をそれぞれ30mgの大きさの一定分量に調製した。
切り刻んだ検体試料の一定分量を抽出培地中で少なくとも3時間(「抽出期間」)タンブリングすることにより疾患細胞を抽出した。抽出培地には、無血清で、DMEM/F12培地、コラゲナーゼおよびヒアルロニダーゼ(消化酵素)の混合物、および少なくとも1種のアノイキス阻害剤分子を含めた。さらに、この培地には、上皮増殖因子、エストラジオール、Ca2+、Mg2+、トリヨードサイロニン、テトラヨードサイロニン、グルタチオン、アデニンを含む追加の成分を含めた。
組織試料から抽出した細胞を、抽出培地から回収し、コラーゲンおよびフィブロネクチンの組み合わせからなる、水和し、折り畳まれた細胞外マトリックスを含む表面上に播種した。
その後、細胞試料を抽出に使った培地(上記のもの、但し、消化酵素(コラゲナーゼおよびヒアルロニダーゼ)は除いた)中で培養した。
全ての組織試料を37℃、5%CO、85%相対湿度および2%、10%、または20%の酸素で培養した(可変条件が評価される)。
その後、酵素による緩やかな取り外しプロセスで処理して細胞を培養容器から取り出した後、洗浄して、試験容器に移した。
これら3種の培養試料の結果を表3および4に示している。各表で、「改善」条件(10%酸素)が、従来の条件(2%または20%酸素)と比較される。細胞数および細胞コロニーサイズの変化および最適化条件と従来の条件との間のパーセント差異が報告されている。細胞コロニーサイズの変化は、ピクセルで報告されている。
Figure 2018531021
細胞数および細胞コロニーサイズの両方が、2%酸素条件に比較して、10%酸素条件下で劇的に高かった。これらは、生細胞試料を培養した場合、2%酸素(低酸素)条件に対し、10%酸素の使用の優位性を実証している。
Figure 2018531021
細胞数および細胞コロニーサイズの両方が、20%条件に比較して、10%酸素条件下で劇的に高かった。したがって、これらの結果は、生細胞試料を培養した場合、20%酸素(正常酸素圧)条件に対し、10%酸素の使用の優位性を実証している。
まとめると、これらの実施例は、正常酸素圧条件(20%)未満の条件および低酸素より高い条件の雰囲気条件中での細胞培養の優位性を実証している。2%と20%の条件に対する結果は同等であり、これは、細胞試料結果は、酸素濃度が10%に収束するに伴い向上することを示唆している。したがって、当業者は、2%より高い任意の酸素濃度および20%より低い酸素濃度が、細胞の培養に通常使われる、低酸素(2%)または正常(20%)酸素濃度よりも優れているという本明細書で提示した結果を、容易に理解するであろう。
実施例2:1種または複数のアノイキス阻害分子を用いた場合と用いない場合の培養方法の比較
この実施例では、2人の患者、C54およびC517由来の初代細胞試料を用いて、アノイキス阻害剤分子が細胞数および細胞コロニーサイズに与える影響を分離するように試験した。それぞれの細胞試料を、水和し、折り畳まれたECMコーティングからなる細胞培養表面上で、10%の酸素条件下、培養した。全てのアノイキス阻害剤分子の非存在、または3種の異なるアノイキス阻害剤分子の内の1種の単独での存在もしくは組み合わせての存在のみの点で差別化されている、5種の異なる培地の内の次記の1種中で試料を培養した:1)アノイキス阻害剤分子なし;2)カスパーゼ阻害剤;3)MMP3阻害剤;4)Rho結合キナーゼ阻害剤;5)カスパーゼ、MMP3およびRho結合キナーゼ阻害剤の組み合わせ。
この実施例用の細胞試料は次のように調製した:
ヒト患部組織検体を取得し、最初に、明らかな脂肪部分を除去し、検体を1〜4mmの大きさの小片に切り刻むことにより調製した。その後、切り刻んだ検体をそれぞれ30mgの大きさの一定分量に分類した。
切り刻んだ検体試料の一定分量を抽出培地中で少なくとも3時間(「抽出期間」)タンブリングすることにより疾患細胞を抽出した。抽出培地には、無血清で、DMEM/F12培地、コラゲナーゼおよびヒアルロニダーゼ(消化酵素)の混合物、および次記を含めた:1)アノイキス阻害剤分子なし;2)カスパーゼ阻害剤;3)MMP3阻害剤;4)Rho結合キナーゼ阻害剤;または5)カスパーゼ、MMP3およびRho結合キナーゼ阻害剤の組み合わせ(可変条件が評価される)。さらに、評価される5種の異なる代替培地のそれぞれの培地には、上皮増殖因子、エストラジオール、Ca2+、Mg2+、トリヨードサイロニン、テトラヨードサイロニン、グルタチオン、アデニンを含む追加の成分を含めた。
組織試料から抽出した細胞を、抽出培地から回収し、コラーゲンおよびフィブロネクチンの組み合わせからなる、水和し、折り畳まれた細胞外マトリックスを含む表面上に播種した。
その後、細胞試料を抽出に使った培地(上記のもの、但し、消化酵素(コラゲナーゼおよびヒアルロニダーゼ)は除いた)中で培養した。
全ての組織試料を37℃、5%CO、85%相対湿度および10%の酸素で培養した。
その後、酵素による緩やかな取り外しプロセスで処理して細胞を培養容器から取り出した後、洗浄して、試験容器に移した。
3種の培養試料の結果を表5〜8に示している。各表で、「改善」条件(1つまたは複数のアノイキス阻害剤)が、従来条件(アノイキス阻害剤なし)と比較される。細胞数および細胞コロニーサイズの変化および最適化条件と従来の条件との間のパーセント差異が報告されている。細胞コロニーサイズの変化は、ピクセルで報告されている。
Figure 2018531021
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細胞数および細胞コロニーサイズの両方が、アノイキス阻害剤なしで培養された細胞試料比較対象に比べて、1つまたは複数のアノイキス阻害剤分子を含む培地中で調製されたそれぞれの細胞試料において大きかった。したがって、これらの結果は、生細胞試料を培養する場合、培地中の1つまたは複数のアノイキス阻害剤の優位性を実証している。さらに、3種の異なるアノイキス関連経路に影響を与える3種の異なるアノイキス阻害剤分子が評価され、それぞれが優れた結果をもたらすことが明らかになったので、この実施例は、アノイキス阻害剤分子を使用する利点は、性質上一般的なものであり、特定のアノイキス阻害剤の分子または種類に限定されないことを実証している。
実施例3:水和および折り畳みがあるECMと、水和および折り畳みがないECMを用いた培養方法の比較
この実施例では、患者C54由来の初代細胞試料を用いて、細胞培養表面の水和および折り畳みのあるECMによるコーティングが細胞数および細胞コロニーサイズに与える影響を分離するように試験した。それぞれの細胞試料を、10%酸素条件下、少なくとも1種のアノイキス阻害剤を含む培地中、次記を用いてコートした細胞培養容器中で培養した:1)水和および折り畳みのあるECM;または2)非水和および折り畳みのないECM。
この実施例用の細胞試料は次のように調製した:
ヒト腫瘍組織検体を取得し、最初に、明らかな脂肪部分を除去し、検体を1〜4mmの大きさの小片に切り刻むことにより調製した。その後、切り刻んだ検体をそれぞれ30mgの大きさの一定分量に分類した。
切り刻んだ検体試料の一定分量を抽出培地中で少なくとも3時間(「抽出期間」)タンブリングすることにより腫瘍細胞を抽出した。抽出培地には、無血清で、DMEM/F12培地、コラゲナーゼおよびヒアルロニダーゼ(消化酵素)の混合物、および少なくとも1種のアノイキス阻害剤分子を含めた。さらに、この培地には、上皮増殖因子、エストラジオール、Ca2+、Mg2+、トリヨードサイロニン、テトラヨードサイロニン、グルタチオン、アデニンを含む追加の成分を含めた。
組織試料から抽出した細胞を、抽出培地から回収し、次記を含む表面上に播種した:1)コラーゲンおよびフィブロネクチンからなる水和および折り畳みのある細胞外マトリックス;または2)非水和および折り畳みのない細胞外マトリックス(可変条件が評価される)。
その後、細胞試料を抽出に使った培地(上記のもの、但し、消化酵素(コラゲナーゼおよびヒアルロニダーゼ)は除いた)中で培養した。
全ての組織試料を37℃、5%CO、85%相対湿度および10%の酸素で培養した。
その後、酵素による緩やかな取り外しプロセスで処理して細胞を培養容器から取り出した後、洗浄して、試験容器に移した。
この2種の培養試料の結果を下表9に示している。この表では、「改善」条件(水和および折り畳まれたECM)が、従来条件(非水和および折り畳まれていないECM)と比較される。細胞数および細胞コロニーサイズの変化および最適化条件と従来の条件との間のパーセント差異が報告されている。細胞コロニーサイズの変化は、ピクセルで報告されている。
Figure 2018531021
非水和および折り畳みのないECMを使って調製された細胞試料に比較して、細胞数および細胞コロニーサイズの両方が、水和および折り畳みのあるECMを使って調製されたそれぞれの細胞試料において大きい。したがって、これらの結果は、生細胞試料を培養する場合、水和および折り畳みのあるECMでコートした細胞培養容器を使用することの優位性を実証している。

Claims (45)

  1. ヒト対象から得られた、臨床検査用の生存疾患細胞の試料を調製する方法であって、
    前記ヒト対象から得られた生存疾患細胞の試料を、2%超および20%未満の酸素を含む条件下、少なくとも1種のアノイキス阻害剤を含む培地中で培養すること、および
    前記生存疾患細胞の試料で臨床検査を実施すること、を含む方法。
  2. ヒト対象から得られた、臨床検査用の生存疾患細胞の試料を調製する方法であって、
    前記ヒト対象から得られた生存疾患細胞の前記試料を、6〜17%の酸素を含む条件下、少なくとも1種の消化酵素および少なくとも1種のアノイキス阻害剤を含む培地中で培養すること、
    前記試料を、6〜17%の酸素を含む条件下、少なくとも1種のアノイキス阻害剤を含み、消化酵素を欠く培地中で培養すること、を含む方法。
  3. ヒト対象から得られた、臨床検査用の生存疾患細胞の試料を調製する方法であって、
    前記ヒト対象から得られた生存疾患細胞の前記試料を、6〜17%の酸素を含む条件下、少なくとも1種のアノイキス阻害剤を含む培地中、水和細胞外マトリックス(ECM)でコートした細胞培養容器表面上で培養すること、を含む方法。
  4. ヒト対象から得られた、臨床検査用の生存疾患細胞の試料を調製する方法であって、
    前記ヒト対象から得られた生存疾患細胞の前記試料を、6〜17%の酸素を含む条件下、少なくとも1種のアノイキス阻害剤を含む培地中、水和細胞外マトリックス(ECM)を含む細胞培養容器表面上で培養すること、および
    (i)フィブロネクチンおよびコラーゲン、(ii)コラーゲンおよびラミニン332(ラミニンV)または(iii)ラミニン332(ラミニンV)からなる水和細胞外マトリックス(ECM)を含むバイオセンサー表面に生存疾患細胞の前記試料を付着させ、それにより、臨床検査用の前記試料を調製すること、を含む方法。
  5. ヒト対象から得られた、臨床検査用の生存疾患細胞の試料を調製する方法であって、
    前記ヒト対象から得られた生存疾患細胞の前記試料を、6〜17%の酸素を含む条件下、少なくとも1種のカスパーゼ阻害剤、少なくとも1種のMMP3阻害剤および少なくとも1種のRho結合キナーゼ阻害剤を含む培地中で培養し、それにより、臨床検査用の前記試料を調製すること、を含む方法。
  6. ヒト対象から得られた、臨床検査用の生存疾患細胞の試料を、バイオセンサーを使って調製する方法であって、
    フィブロネクチンおよびコラーゲンからなる水和細胞外マトリックス(ECM)を含むバイオセンサー表面に生存疾患細胞の前記試料を付着させること、および
    バイオセンサーを用いて、生存疾患細胞の前記試料で臨床検査を実施すること、を含む方法。
  7. 前記試料が、6〜17%の酸素を含む条件下で培養される、請求項1に記載の方法。
  8. 前記試料が、10%の酸素を含む条件下で培養される、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
  9. 前記試料が、少なくとも1種の内因性アノイキス経路の阻害剤および少なくとも1種の外因性アノイキス経路の阻害剤を含む培地中で培養される、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
  10. 前記少なくとも1種のアノイキス阻害剤が、抗アノイキス経路をアゴナイズする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
  11. 前記少なくとも1種のアノイキス阻害剤が、キナーゼ阻害剤、プロテアーゼ阻害剤、ストレス阻害剤、デスレセプター阻害剤、チトクロムC阻害剤および接着関連アノイキス阻害剤からなる群から選択される、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
  12. 前記少なくとも1種のアノイキス阻害剤が、Rho結合キナーゼ阻害剤、ALK5阻害剤、カスパーゼ阻害剤、マトリックスメタロプロテアーゼ阻害剤、WNTシグナル伝達アゴニスト、レドックス緩衝剤、活性酸素種阻害剤、TNF−α阻害剤、TGF−β阻害剤、チトクロムC放出阻害剤、カルシウムチャネル活性化のない炭酸脱水酵素アンタゴニスト、インテグリン安定剤、インテグリンリガンド、Fas阻害剤、FasL阻害剤、Bax阻害剤およびApaf−1阻害剤からなる群から選択される、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
  13. 前記試料が、少なくとも3種のアノイキス阻害剤を含む培地中で培養される、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
  14. 生存疾患細胞の前記試料を、培養の前に、消化培地に一定時間接触させる方法であって、前記消化培地が、アノイキス、細胞表面接着分子損傷または非アノイキス手段による細胞死を生ずることなく、組織を消化する、請求項1および請求項3〜5のいずれか1項に記載の方法。
  15. 前記消化培地が、少なくとも1種のアノイキス阻害剤を含む、請求項14に記載の方法。
  16. 生存疾患細胞の前記試料が、少なくとも1種のアノイキス阻害剤を含む前記培地中で少なくとも1時間培養される、請求項1および請求項3〜5のいずれか1項に記載の方法。
  17. 生存疾患細胞の前記試料が、20%の酸素を含む条件下で、アノイキス阻害剤を欠く前記培地に移される、請求項16に記載の方法。
  18. 生存疾患細胞の前記試料が、接着経路の活性化を促進する少なくとも1つの成分を含む培地中で培養される、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
  19. 前記少なくとも1つの成分が、Ca2+、Mg2+、Mn2+、トリヨードサイロニン、テトラヨードサイロニン、フェチュイン、溶液型の細胞外マトリックス成分、フィブロネクチン、コラーゲン、ラミニン、ビトロネクチン、細胞間CAM、血管CAM、MAdCAM、グリコサミノグリカン、プロテオグリカン、および増殖因子からなる群から選択される、請求項18に記載の方法。
  20. 生存疾患細胞の前記試料が、接着の一時的反転を促進し、細胞の1つの容器から別の容器への移動を容易にする少なくとも1つの成分を含む培地中で培養される、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
  21. 前記少なくとも1つの成分が、EGTA、EDTA、二価の金属イオンキレート化剤などのCa2+、Mg2+、および/またはMn2+キレート化剤、ディスパーゼ、TrypLE、トリプシン、アクターゼ、アキュマックス、コラゲナーゼ、ヒアルロニダーゼ、エラスターゼ、トリプシン阻害剤、STEMxyme、プロナーゼおよびデオキシリボヌクレアーゼからなる群から選択される、請求項20に記載の方法。
  22. 生存疾患細胞の前記試料が、無血清培地中で培養される、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
  23. 生存疾患細胞の前記試料が、前記生存疾患細胞の生理特性またはゲノム特性を保存する少なくとも1つの成分を含む培地中で培養される、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
  24. 前記生存疾患細胞の生理特性またはゲノム特性を保存する少なくとも1つの成分が、必須および非必須アミノ酸、ビタミン、希少必須金属、pH緩衝剤(単一または複数)、塩(Na、K、Fe、Zn、Cu)、亜セレン酸塩、ケイ酸塩、ブドウ糖またはその他の生物学的に実用的な炭素源、脂質、リポ酸などの脂肪酸、ピルビン酸塩、トランスフェリン、増殖因子、ケモカイン、サイトカイン、マイトジェン、エタノールアミン、アルブミン、ホルモン(例えば、プロゲステロン、テストステロン、エストラジオール)、プトレシン、ピルビン酸塩、チミジン、リノール酸、葉酸、フォリン酸、コリン、ピリドキサール塩酸塩、ビオチン、ヒポキサンチン、プリンおよびプリン誘導体、ピリミジンおよびピリミジン誘導体、からなる群から選択される、請求項23に記載の方法。
  25. 生存疾患細胞の前記試料が、細胞成長、細胞分裂または細胞周期を促進して細胞増殖を容易にする少なくとも1つの成分を含む無血清培地中で培養される、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
  26. 細胞増殖、細胞分裂、または細胞周期を促進する前記少なくとも1つの成分が、腫瘍または疾患微小環境に関連する増殖因子、HGF、FGF(1〜4型)、エキソソーム、miRNA、その他の低分子タンパク質非コードRNA、より長いタンパク質非コードRNA、ホルモン、IGF、VEGF、インターロイキン、サイトカイン、ケモカイン、および前記疾患細胞中およびその周辺の細胞により産生されるオートクリンまたはパラクリン因子、からなる群から選択される、請求項25に記載の方法。
  27. 生存疾患細胞の前記試料が、水和細胞外マトリックス(ECM)を含む表面に付着される、請求項1、2および5のいずれか1項に記載の方法。
  28. 前記ECMが水和され、折り畳まれている、請求項3、4、6および27のいずれか1項に記載の方法。
  29. 前記表面がバイオセンサー表面である、請求項27に記載の方法。
  30. 前記表面が細胞培養容器表面である、請求項27に記載の方法。
  31. 前記水和細胞外マトリックスが、フィブロネクチンおよびコラーゲンからなる、請求項3、4および27のいずれか1項に記載の方法。
  32. 前記細胞外マトリックスが水和され、折り畳まれている、請求項31に記載の方法。
  33. 前記フィブロネクチンおよびコラーゲンが、フィブリルおよび親水性表面を含む、請求項6または請求項31に記載の方法。
  34. 前記水和細胞外マトリックスが、ラミニン332(ラミニンV)またはコラーゲン−ラミニン332(ラミニンV)共構造からなる、請求項3、4および27のいずれか1項に記載の方法。
  35. 前記ECMが水和され、折り畳まれている、請求項34に記載の方法。
  36. 臨床検査が、バイオセンサーを使って前記試料で実施される、請求項1〜6および29のいずれか1項に記載の方法。
  37. 前記臨床検査が、生存疾患細胞の前記試料を少なくとも1種の薬剤に接触させ、前記試料の前記少なくとも1種の薬剤との接触の前後に、細胞接着または付着を測定することを含む、請求項36に記載の方法。
  38. 前記生存疾患細胞が癌細胞である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
  39. 6%〜17%の酸素を含む条件下、少なくとも1種のアノイキス阻害剤を含む培地中で培養される初代ヒト癌細胞を含む、細胞培養組成物。
  40. 前記培地が少なくとも3種のアノイキス阻害剤を含み、前記細胞が10%の酸素を含む条件下で培養される、請求項39に記載の細胞培養組成物。
  41. バイオセンサー表面であって、水和細胞外マトリックス(ECM)を介して前記バイオセンサー表面に付着した初代ヒト癌細胞を含み、前記ECMが、(i)フィブロネクチンおよびコラーゲン、(ii)コラーゲンおよびラミニン332(ラミニンV)または(iii)ラミニン332(ラミニンV)からなる、バイオセンサー表面。
  42. 前記水和ECMが、フィブリル表面および親水性表面を含むフィブロネクチンおよびコラーゲンからなる、請求項41に記載のバイオセンサー表面。
  43. 細胞培養容器表面であって、水和細胞外マトリックス(ECM)を介して前記細胞培養表面に付着した初代ヒト癌細胞を含み、前記ECMが、(i)フィブロネクチンおよびコラーゲン、(ii)コラーゲンおよびラミニン332(ラミニンV)または(iii)ラミニン332(ラミニンV)からなる、細胞培養容器表面。
  44. 前記水和ECMが、フィブリル表面および親水性表面を含むフィブロネクチンおよびコラーゲンからなる、請求項43に記載の細胞培養容器表面。
  45. 前記水和ECMが折り畳まれている、請求項41〜44に記載の方法。
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