JP2018527345A - ポリマーおよびその使用方法 - Google Patents

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Abstract

対象において、例えば内皮性漏出、グリコカリックスの機能障害またはグリコカリックスの構造的完全性喪失によって生ずる器官再灌流に由来する、脈管およびリンパ系、例えば脳、脊髄、および肺の炎症、腫脹および二次傷害を処置するための方法が本明細書に記載される。一態様では、脈管系(例えば、脳、脊髄、器官、肺、リンパ系)の障害を処置する方法であって、ポリマー(例えば、荷電した多糖(例えば、多糖コンジュゲート))を対象に静脈内投与し、それによって障害を処置するステップを含む方法が本明細書に記載される。

Description

関連出願
本願は、2015年8月14日に出願された米国仮出願第62/205,408号の利益を主張し、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
脈管疾患は、循環器系に影響を及ぼす任意の状態を含み、動脈、静脈およびリンパ管の疾患から循環に影響を及ぼす血液障害まで多岐にわたる。グリコカリックスは、脈管系全体にわたって普遍的な保護機能を有する負に荷電した、プロテオグリカン、糖タンパク質、および糖脂質のネットワークを含み、その相対的な重要性は脈管構造におけるその実際の位置に応じて異なる。
ポリマー(例えば、カチオン性ポリマー)は、例えばグリコカリックスにおける多糖とのファンデルワールス相互作用(例えば、水素結合)または電荷−電荷相互作用(例えば、負電荷と正電荷の相互作用)を経由して、安定性および構造を脈管構造に提供することができる。ポリマーは、例えば負に荷電したグリコカリックスとの正電荷相互作用を経由して、安定性および構造を提供することができる。例えば、脈管構造、例えばグリコカリックスと相互に作用するポリマーの開発は、グリコカリックスの機能障害または構造的完全性喪失の結果起こりうる脈管系、脳、脊髄、器官、肺、およびリンパ系の障害の処置の基盤を提供する。
例えば、グリコカリックスの機能障害または構造的完全性喪失の結果起こりうる脈管系、脳、脊髄、器官、肺、およびリンパ系の障害を、安定性もしくは構造を向上させる、内皮の完全性を促進する、グリコカリックスの完全性を回復させる、またはグリコカリックスを横切る異常な体液輸送を低減することを提供することによって処置するための(例えば、正常な血液輸送を回復させるための)方法が、本明細書に記載される。
一態様では、脈管系(例えば、脳、脊髄、器官、肺、リンパ系)の障害を処置する方法であって、ポリマー(例えば、荷電した多糖(例えば、多糖コンジュゲート))を対象に静脈内投与し、それによって障害を処置するステップを含む方法が本明細書に記載される。一部の実施形態では、方法は、対象において正常な血液輸送を回復させる、または異常な体液輸送を低減する(例えば、脈管系の障害のない対象に比べて)。一部の実施形態では、方法は血液脳関門の透過性を低減する。一部の実施形態では、方法は血液脳関門の完全性を高める。一部の実施形態では、方法はVEGF媒介性劣化を低減する。
一部の実施形態では、障害は、脈管およびリンパ系の炎症、腫脹および二次傷害である。一部の実施形態では、障害は、グリコカリックスの機能障害またはグリコカリックスの構造的完全性喪失の結果である。一部の実施形態では、障害は、脳損傷(例えば、限局性またはびまん性脳損傷)、外傷性脳損傷、震盪、卒中(例えば、出血性卒中、虚血性卒中)、脳傷害、虚血、出血性ショック、再灌流損傷、再狭窄、急性呼吸窮迫症候群、急性腎不全、敗血症、敗血症性ショック、リンパ水腫および脊髄損傷から選択される。
一部の実施形態では、障害は脳損傷である。一部の実施形態では、脳損傷は震盪性脳損傷である。一部の実施形態では、脳損傷は中等度から重度の脳損傷である。一部の実施形態では、障害はコントラポイント損傷(contrapoint injury)である。一部の実施形態では、障害は外傷性脳損傷である。一部の実施形態では、障害は出血性ショックを患っている。一部の実施形態では、障害は虚血性再灌流損傷を患っている。一部の実施形態では、障害は卒中である。一部の実施形態では、障害は虚血性である。一部の実施形態では、障害は出血性である。一部の実施形態では、障害は眼の急性黄斑変性である。一部の実施形態では、障害は器官移植における再灌流損傷である。一部の実施形態では、障害は再狭窄である。一部の実施形態では、障害は急性呼吸窮迫症候群である。一部の実施形態では、障害は急性腎不全である。一部の実施形態では、障害は敗血症性ショックである。一部の実施形態では、障害は脊髄損傷である。一部の実施形態では、障害はリンパ水腫である。
一部の実施形態では、ポリマーは生理的pH(例えば、血液(6〜8)中)において可溶性である。一部の実施形態では、ポリマーは30〜300kDaの間の分子量(MW)を有する。一部の実施形態では、ポリマーは(例えば、荷電した残基、例えばアルギニンで)10〜35%官能化されている。一部の実施形態では、ポリマーはグリコカリックス表面と相互作用(例えば、水素結合、静電的相互作用、電解的相互作用)する。一部の実施形態では、ポリマーは荷電したポリマーである。一部の実施形態では、荷電したポリマーはポリカチオン性ポリマーである。一部の実施形態では、ポリマーは多糖である。一部の実施形態では、多糖はポリグルコサミンである。一部の実施形態では、ポリグルコサミンはベータ(1→4)ポリグルコサミンである。一部の実施形態では、ポリグルコサミンは、1−6または1−3ポリグルコサミンである。一部の実施形態では、多糖はポリガラクトサミンである。一部の実施形態では、ポリガラクトサミンは、ベータ(1−3)またはベータ(1−4)ガラクトサミンである。一部の実施形態では、ポリマーはポリペプチドである。一部の実施形態では、ポリマーは無毒性合成ポリマーである。
一部の実施形態では、静脈内投与はボーラス投与による。一部の実施形態では、静脈内投与は連続注入による。一部の実施形態では、投与は動脈内である。
一部の実施形態では、方法は、損傷後1、2、4、6、8、12、15、18、20、24時間、1、2、3、4、5、6、7日、1、2週間未満で投与される。
一態様では、障害を処置する方法であって、障害が、グリコカリックスの機能障害(例えば、保護関門を低減し、内液平衡失調、浮腫、毛細血管漏出、または接着を引き起こす)またはグリコカリックスの構造的完全性喪失であり、ポリマー(例えば、荷電した多糖(例えば、多糖コンジュゲート))を対象に静脈内投与し、それによって障害を処置するステップを含む、方法が本明細書に記載される。
一部の実施形態では、方法は、安定性もしくは構造を向上させる、内皮の完全性を促進する、グリコカリックスの完全性を回復させる、またはグリコカリックスを横切る異常な体液輸送を低減する(例えば、正常な血液輸送を回復させる)ことを提供する。
一部の実施形態では、方法は血液脳関門の透過性を低減する。一部の実施形態では、方法は血液脳関門の完全性を高める。
一部の実施形態では、方法はVEGF媒介性劣化を低減する。
図1は、FITC−PAAGならびにZO−1、CD31およびNeuNの抗体で染色して12時間後の脈管網の画像例を示す図である。
図2は、PAAGで処置された動物または対照(n=5匹/アーム)について、TBIの3日後にさまざまな染料浸透深度を検討した脈管漏出の定量化を示すグラフである。 図3は、全コホートでPAAGで処置された動物および対照動物について脈管漏出の定量化を示す図である。
図4は、PAAGで処置された動物および対照動物について脈管漏出の定量化を示す図である。
図5は、ビヒクルおよびPAAG処置TBI動物についてIba1細胞数の例を示すグラフである。
図6は、PAAG処置TBI動物におけるNIMPR−14染色によって読み取られた好中球浸潤の例を示す図である。
図7は、ショックを受けていないおよび蘇生後の動物についてグリコカリックスの厚さの例を示すグラフである。
図8は、HS/蘇生の前後の血漿シンデカン−1プロテオグリカンの例を示すグラフである。
対象において、内皮性漏出、グリコカリックスの機能障害またはグリコカリックスの構造的完全性喪失によって生ずる器官再灌流に由来する、脈管およびリンパ系、例えば脳、脊髄、および肺の炎症、腫脹および二次傷害を処置するための方法が本明細書に記載される。例えば、本明細書に記載される方法は、保護関門の低減、内液平衡失調、浮腫、炎症、毛細血管漏出、もしくは接着、またはグリコカリックスの構造的完全性喪失の結果起こる障害を処置する。本明細書に記載される方法は、グリコカリックスの機能障害または構造的完全性喪失の結果起こりうる脈管系、脳、脊髄、器官、肺、およびリンパ系の障害を、安定性もしくは構造を向上させる、内皮の完全性を促進する、グリコカリックスの完全性を回復させる、またはグリコカリックスを横切る異常な体液輸送を低減することによって、処置する(例えば、正常な血液輸送を回復させる)。
一部の実施形態では、方法は血液脳関門の透過性を低減する。一部の実施形態では、方法は血液脳関門の完全性を高める。
グリコカリックス
本明細書に記載される方法は、グリコカリックスの機能障害またはグリコカリックスの構造的完全性喪失に起因するまたは帰着する(例えば、脈管系、脳、脊髄、器官、肺、およびリンパ系の)障害を処置する。グリコカリックスは、内腔を覆う脈管内皮細胞の頂端面に位置し、細胞および分子の接着および輸送を制御する広範囲の酵素およびタンパク質からなる。脈管構造におけるグリコカリックスの主な役割は、血漿および血管壁の恒常性を維持することである。酵素およびタンパク質ならびに他の分子実体は、脈管および他の疾患に対してグリコカリックスの関門を補強する働きをする。脈管内皮内におけるグリコカリックスの別の機能は、脈管透過性関門として働きながら、脈管壁を血流に直接曝露させないように遮蔽することである。その保護機能は、脈管系全体にわたって普遍的であり、その相対的な重要性は脈管構造におけるその実際の位置に応じて異なる。グリコカリックスは、負に荷電した、プロテオグリカン、糖タンパク質、および糖脂質のネットワークを含む。グリコカリックスは、流体の血漿から間質腔への濾過、内皮の血液細胞接着からの保護、内皮細胞による一酸化窒素(NO)産生のシグナルの媒介に関与する。その結果、グリコカリックスに対する傷害による損傷またはグリコカリックスの機能の途絶の影響を受けやすい、脳、脊髄、器官、肺およびリンパ系などの重要な脈管系にとって、グリコカリックスは保護関門として機能する。
グリコカリックスの変化は、例えば敗血症、局所または全身性炎症によって引き起こされる内皮傷害に関与し、内皮透過性を損ない、間質液移動および全身性浮腫を伴う。内皮グリコカリックスのそのような変化は、脈管緊張の喪失、血液量減少、浮腫形成、および器官機能障害に関連付けられる。グリコカリックスが乱れている対象は、保護機能が損なわれ、脈管脆弱性が亢進し、例えばアテローム性動脈硬化を加速しうる。グリコカリックスの構造または機能を損なうと、(例えば、急性、慢性の)腎不全、慢性腎疾患も伴う恐れがある。
障害
本明細書に記載される方法は、内皮グリコカリックスの機能障害または構造的完全性喪失に起因しうるさまざまな(例えば、脈管系、脳、脊髄、器官、肺、およびリンパ系の)障害を処置する。障害は、脈管構造における炎症促進性環境または脈管構造に対する炎症性(または免疫)攻撃をもたらす損傷の結果起こりうる。本明細書に記載される方法によって処置される例示的な障害としては、脳損傷(例えば、限局性またはびまん性脳損傷)、外傷性脳損傷、震盪、卒中(例えば、出血性卒中、虚血性卒中)、脳傷害、虚血、出血性ショック、再灌流損傷、再狭窄、急性呼吸窮迫症候群、急性腎不全、敗血症、敗血症性ショック、リンパ水腫および脊髄損傷が挙げられる。
一部の実施形態では、本明細書に記載される方法によって処置される障害はコントラポイント損傷である。
一部の実施形態では、障害は出血性ショックである。一部の実施形態では、障害は虚血性再灌流損傷である。一部の実施形態では、障害は眼の急性黄斑変性である。一部の実施形態では、障害は器官移植における再灌流損傷である。一部の実施形態では、障害は再狭窄である。一部の実施形態では、障害は急性呼吸窮迫症候群である。一部の実施形態では、障害は急性腎不全である。一部の実施形態では、障害は敗血症性ショックである。一部の実施形態では、障害は脊髄損傷である。一部の実施形態では、障害はリンパ水腫である。
本明細書に記載される方法によって処置される以下の例示的な障害は、例えばタンパク質、イオンおよび分子の脈管内皮を横切る転位を引き起こし、浮腫、炎症、腫脹および二次傷害を引き起こす、脈管内皮の完全性の崩壊をもたらす損傷である。
脳損傷は、生体の脳に対する任意の損傷、例えば頭部への激しい打撃によって引き起こされる損傷を指す。限局性脳損傷は特定の位置に対する損傷を指し、一方、びまん性脳損傷はより広範なエリアにわたる損傷を指す。限局性およびびまん性脳損傷は、同じ事象、例えば身体的外傷または他のタイプの脳損傷(卒中など)の結果として起こりうる。脳損傷は、中等度から重度と特徴付けることができる。特定の形の脳損傷としては、脳傷害、外傷性脳損傷、および卒中が挙げられる。
脳傷害は、脳細胞の破壊または劣化である。一般に、脳傷害は、識別不可能な著しい外傷誘発性傷害を指す。
外傷性脳損傷(TBI)は、外力によって脳が損傷するとき起こる。脳外傷は、頭蓋内の急激な加速/減速による、または運動と急激な衝撃との両方の組合せによる頭部への限局性の衝撃の結果として起こりうる。TBIは、損傷後何日かで生じる一連の事象から二次損傷を引き起こすことが多い。事象としては、初期の損傷からの傷害に実質的に寄与する頭蓋骨内の脳血流量および圧力の変化が挙げられる。
震盪または震盪性脳損傷は、脳が機能する方式を変える外傷性脳損傷を指す。震盪は、頭蓋骨の内部で脳を振盪する、頭部もしくは胴体への打撃、または落下もしくは他の損傷によって引き起こされうる。震盪の症状としては、気を失うこと、記憶喪失、発作、困難な歩行もしくは睡眠、脱力、しびれ、協調低下、繰り返される嘔吐もしくは悪心、錯乱、または不明瞭な発語が挙げられ、軽度から重度の範囲でありうる。震盪の症状は、数時間、数日間、数週間、または数か月続くことがある。
卒中は、脳傷害を引き起こす脈管事象である。出血性卒中は、破裂して周囲の脳に出血する弱くなった血管から結果起こる。動脈瘤および動静脈奇形は、出血性卒中を引き起こしうる2つのタイプの弱くなった血管である。出血性卒中は、脳内(脳の内部における)出血またはクモ膜下出血とすることができる。脳内出血の症状としては、身体の任意の部分における突然の脱力、麻痺またはしびれ、発語不能、眼球運動の正しい調節不能、嘔吐、不規則な呼吸、昏迷、および昏睡が挙げられる。クモ膜下出血の症状としては、突然始まる非常に重度の頭痛、意識喪失、悪心および嘔吐、明るい光を見ることが不能、項部硬直、めまい、錯乱、発作、および意識喪失が挙げられる。虚血性卒中は、脳の領域への血液の循環が突然喪失し、神経機能喪失をもたらすことによって特徴付けられる。例えば、急性虚血性卒中は、脳動脈の血栓性または塞栓性閉塞によって引き起こされ、出血性卒中より一般的である。虚血性卒中の症状としては、発語および理解が困難なこと、顔、腕または脚の麻痺またはしびれ、片眼または両眼で見ることが困難なこと、頭痛、ならびに歩行が困難なことが挙げられる。
虚血または「虚血性事象」は、脈管閉塞または組織への血液の供給制限を一般に伴う脈管疾患である。虚血は、細胞代謝に必要とされる酸素およびグルコースの不足を引き起こしうる。虚血は、一般に組織の傷害または機能障害をもたらす問題のある血管によって引き起こされる。虚血は、うっ血(例えば、血管収縮、血栓症、または塞栓症)によって生ずる、身体の所与の部分における血液または酸素の局所的喪失を指すこともある。原因としては、塞栓症、粥状動脈硬化動脈(atherosclerosis artery)の血栓症、外傷、静脈の問題、動脈瘤、心臓の状態(例えば、心筋梗塞、僧帽弁膜症、慢性心房細動(chronic arterial fibrillation)、心筋症、および義肢)、(例えば、部分または完全血管閉塞をもたらす四肢に対する)外傷または外傷性損傷、胸郭出口症候群、アテローム性動脈硬化、低血糖、頻脈、低血圧、血管の(例えば、腫瘍による)外部圧迫、鎌状赤血球症、(例えば、凍傷による)局在的超低温、止血帯適用、グルタミン酸受容体刺激、動静脈奇形、組織または器官に供給する重要な血管の破裂、および貧血が挙げられる。
一過性虚血事象は、一般に急性梗塞(例えば、組織死)なしに(例えば、限局的な脳、脊髄、または網膜における)血流喪失によって引き起こされる神経機能障害の一過性(例えば、一時的な)エピソードを指す。一部の実施形態では、一過性虚血事象は、72時間、48時間、24時間、12時間、10時間、8時間、4時間、2時間、1時間、45分、30分、20分、15分、10分、5分、4分、3分、2分、または1分未満続く。
出血性ショックは、身体の器官への血流が十分でないほど大出血があったときに起こる。血液が酸素および他の必須物質を器官および組織に運ぶので、大出血によって身体の器官を停止させ始める恐れがある。出血性ショックのよくある原因としては、重度の熱傷、深い切傷、銃創、外傷、および切断が挙げられる。出血性ショックの症状としては、不安、青い唇および指の爪、低または無尿量、大量の発汗、浅呼吸、めまい、錯乱、胸痛、意識消失、低血圧、頻脈、ならびに虚脈が挙げられる。
再灌流損傷は、虚血または酸素欠乏の期間の後に組織への血液供給が復帰するとき引き起こされる組織傷害を指す。循環が回復すると、酸化ストレスの誘導によって炎症および酸化傷害が生じることがある。一部の実施形態では、再灌流損傷は器官移植に次いで起こる。
再狭窄は、血流制限を導く血管狭窄(例えば、動脈、器官内の血管)を指す。
急性呼吸窮迫症候群(ARDS)は、十分な酸素が肺に到達し、血液中に入り込むのを妨害する、生命を脅かすような肺状態である。ARDSは、通常、既に重病であるヒトにおいて発症する。ARDSのヒトは呼吸が速く、十分な空気を肺に入れることが困難であり、血中酸素レベルが低い。
急性腎不全は、腎臓が血液から老廃物を濾過することが突然できなくなることを指す。急性腎不全は急性腎損傷と呼ばれることもあり、急速に(例えば、数時間かけて、数日かけて)発症する恐れがある。
敗血症は、菌血症(すなわち、血液中の細菌)を含めて、セプチセミア(すなわち、血流中の有機体、それらの最終代謝産物または毒素)、ならびに内毒血症(すなわち、血液中のエンドトキシン)を含めて、毒血症(すなわち、血液中の毒素)の結果起こりうる感染症の潜在的に生命を脅かすような合併症である。敗血症は、感染症と戦うために血流に放出された化学物質が身体全体にわたる炎症反応の引き金となるとき起こりうる。炎症は、複数の器官系を傷害し、破綻させる恐れがある一連の変化の引き金となりうる。敗血症は敗血症性ショックに進行することがあり、血圧が劇的に降下し、死に至る恐れがある。敗血症性ショックは感染症の合併症として起こり、毒素によって全身の炎症反応が惹起される可能性がある。敗血症性ショックは、感染後に血圧が危険なほど低いレベルに降下するとき起こりうる。
脊髄損傷は、脊髄の正常な運動、感覚、または自律神経機能における一時的または永久的な変化をもたらす、脊髄に対する損傷を指す。脊髄損傷は、典型的には脊椎骨を骨折するまたは脱臼させる、脊椎への突然の外傷性打撃の結果起こる。
化合物
本明細書に記載されるポリマーは非経口投与(例えば、静脈内注射)され、内皮表面において、すなわちグリコカリックス層において活性である。ポリマーは(例えば、グリコカリックスと相互作用することによって)、内皮脈管組織を体液漏出から保護する。グリコカリックスと相互作用することによって、化合物は安定性および構造を提供し、例えば、内皮の内接着を促進し、グリコカリックスを横切る異常な体液輸送を低減し、それによって本明細書に記載される障害を処置することができる。
一部の実施形態では、化合物は、グリコカリックスにおける多糖とのファンデルワールス相互作用(すなわち、水素結合)を経由して、安定性および構造を提供する。一部の実施形態では、化合物は、負のグリコカリックスとの正電荷相互作用を経由して、安定性および構造を提供する。一部の実施形態では、化合物は、血液量から表面に分割し、グリコカリックスにインターカレート(intercolation)することによって、安定性および構造を提供する。一部の実施形態では、化合物は、血液量から内皮細胞の表面に分割することによって、安定性および構造を提供する。
本出願に有用なポリマーは生理的pH(例えば、血液(6〜8)中)において可溶性である。一部の実施形態では、ポリマーは30〜300kDaの間の分子量(MW)を有する。一部の実施形態では、ポリマーは多糖である。一部の実施形態では、多糖はポリグルコサミンである。一部の実施形態では、多糖はポリガラクトサミンである。一部の実施形態では、ポリマーはポリペプチドである。一部の実施形態では、ポリマーは無毒性合成ポリマーである。
一部の実施形態では、ポリマーは、生理的pHにおいてグリコカリックスの表面で(例えば、ファンデルワールス相互作用、静電的相互作用、電荷−電荷相互作用、水素結合相互作用、カチオン−アニオン相互作用を経由して)相互作用する。
一部の実施形態では、方法は、安定性もしくは構造を向上させる、内皮の内接着を促進する、グリコカリックスの完全性を回復させる、またはグリコカリックスを横切る異常な体液輸送を低減することを提供する。
一部の実施形態では、本明細書に記載されるポリマーは、「カチオン性部分」(単数または複数)を含む。用語「カチオン性部分」(単数または複数)は、5もしくはそれよりも高いpKaを有し(例えば、5またはそれよりも高いpKaを有するルイス塩基)、かつ/または以下の条件(本明細書に記載されているポリマーの生成時、または本明細書に記載されているポリマーの対象への投与後)の少なくとも1つで正電荷を有する部分(単数または複数)を指す。例示的なカチオン性部分としては、アミン基(例えば、第一級、第二級、第三級または第四級アミンなどの荷電したアミン基)、グアニジン含有部分(例えば、グアニジウム部分などの荷電したグアニジン)、ならびにヘテロ環式および/またはヘテロ芳香族部分(例えば、ピリジニウムまたはヒスチジン部分などの荷電した部分)が挙げられる。「カチオン性ポリマー」は、合成または製剤化されたとき複数(すなわち、少なくとも2個)の正電荷を有するポリマーを指す。一部の実施形態では、カチオン性ポリマー、例えばポリアミンは少なくとも3、4、5、10、15、または20個の正電荷を有する。一部の実施形態では、ポリマー(例えば、多糖、ポリペプチドまたは合成ポリマー)は、例えば荷電したアミノ酸による修飾またはそれらを含むことによって正に荷電している。一部の実施形態では、ポリマーは10〜50%の間のアルギニンを含む。一部の実施形態では、ポリマーは10〜50%の間のリシンを含む。一部の実施形態では、ポリマーは10〜50%の間の天然または非天然カチオン性アミノ酸を含む。
例示的なカチオン性部分としては、アミン、例えば第一級、第二級、第三級、および第四級アミン、ならびにポリアミン(例えば、分枝状および直鎖状ポリエチレンイミン(PEI)またはそれらの誘導体、例えば、ポリエチレンイミン−PLGA、ポリエチレンイミン−ポリエチレングリコール−N−アセチルガラクトサミン(PEI−PEG−GAL)もしくはポリエチレンイミン−ポリエチレングリコール−トリ−N−アセチルガラクトサミン(PEI−PEG−トリGAL)誘導体)が挙げられる。一部の実施形態では、カチオン性部分は、カチオン性脂質(例えば、1−[2−(オレオイルオキシ)エチル]−2−オレイル−3−(2−ヒドロキシエチル)イミダゾリニウムクロリド(DOTIM)、ジメチルジオクタデシルアンモニウムブロミド、1,2 ジオレイルオキシプロピル−3−トリメチルアンモニウムブロミド、DOTAP、1,2−ジミリスチルオキシプロピル−3−ジメチル−ヒドロキシエチルアンモニウムブロミド、1,2−ジミリストイル−sn−グリセロ−3−エチルホスホコリン(EDMPC)、エチル−PC、1,2−ジオレオイル−3−ジメチルアンモニウム−プロパン(DODAP)、DC−コレステロール、およびMBOP、CLinDMA、1,2−ジリノレイルオキシ−3−ジメチルアミノプロパン(DLinDMA)、pCLinDMA、eCLinDMA、DMOBA、およびDMLBA)を含む。一部の実施形態では、例えばカチオン性部分がポリアミンである場合、ポリアミンは、ポリアミノ酸(例えば、ポリ(リシン)、ポリ(ヒスチジン)、およびポリ(アルギニン))および誘導体(例えば、ポリ(リシン)−PLGA、イミダゾールで修飾されたポリ(リシン))またはポリビニルピロリドン(PVP)を含む。一部の実施形態では、例えばカチオン性部分が複数のアミンを含むカチオン性ポリマーである場合、アミンを、ポリマーに沿ってアミンが約4〜約10オングストローム(例えば、約5〜約8または約6〜約7)離れているように配置することができる。一部の実施形態では、アミンを、核酸作用物質上のホスフェートと位置を合わせてポリマーに沿って配置することができる。カチオン性部分は5もしくはそれよりも高いpKaを有する、かつ/または生理的pHにおいて正に荷電していることができる。
一部の実施形態では、カチオン性部分は少なくとも1つのアミン(例えば、第一級、第二級、第三級または第四級アミン)、または複数のアミン(それぞれ独立して、第一級、第二級、第三級または第四級アミン)を含む。一部の実施形態では、カチオン性部分は、例えば1つまたは複数の第二級または第三級アミンを有するポリマーであり、例えばカチオン性ポリビニルアルコール、ポリアミン分枝状および星状PEGならびにポリエチレンイミンである。
一部の実施形態では、カチオン性部分は、窒素含有ヘテロ環式またはヘテロ芳香族部分(例えば、ピリジニウム、イミダゾリウム(immidazolium)、モルホリニウム、ピペリジニウム(piperizinium)など)を含む。一部の実施形態では、カチオン性ポリマーは、ポリビニルピロリジン(polyvinyl pyrolidine)またはポリビニルピロリジノン(polyvinylpyrolidinone)などの窒素含有ヘテロ環式またはヘテロ芳香族部分を含む。
一部の実施形態では、カチオン性部分は、グアマナジウム(guanadinium)部分(例えば、アルギニン部分)を含む。一部の実施形態では、ポリマー(例えば、多糖、ポリペプチドまたは合成ポリマー)は、酸アミンまたは酸グアニジンで修飾することによって正に荷電している。
追加の例示的なカチオン性部分としては、アグマチン(agamatine)、プロタミンスルフェート、ヘキサデメトリンブロミド(hexademethrine bromide)、セチルトリメチルアンモニウムブロミド、1−ヘキシルトリエチル−アンモニウムホスフェート、1−ドデシルトリエチル−アンモニウムホスフェート、スペルミン(例えば、スペルミン四塩酸塩)、スペルミジンおよびその誘導体(例えば、N1−PLGA−スペルミン、N1−PLGAN5、N10,N14−トリメチル化−スペルミン、(N1−PLGA−N5,N10,N14,N14−テトラメチル化−スペルミン)、PLGA−glu−ジ−トリCbz−スペルミン、トリCbz−スペルミン、アミフィポル(amiphipole)、PMAL−C8、およびアセチル−PLGA5050−glu−ジ(N1−アミノ−N5,N10,N14−スペルミン)、ポリ(2−ジメチルアミノ)エチルメタクリレート)、ヘキシルデシルトリメチルアンモニウムクロリド、ヘキサジメトリンブロミド、ならびにアテロコラーゲンが挙げられる。
本明細書では用語「ポリマー」は、当技術分野において使用されるその通常の意味で、すなわち1種または複数の繰返し単位(モノマー)が共有結合的結合で接続されていることを特徴とする分子構造として記載されている。繰返し単位はすべて同一でもよく、または場合によっては、1種類よりも多い繰返し単位がポリマー内に存在していてもよい。ポリマーは、天然または非天然(すなわち、合成)のポリマーであってよい。ポリマーは、ホモポリマー、または2種もしくはそれよりも多いモノマーを含有するコポリマーであってよい。ポリマーは直鎖状でも、分枝状でもよい。
一部の実施形態では、ポリマーは可溶性ポリガラクトサミンまたはポリガラクトサミン誘導体である。一部の実施形態では、可溶性ポリガラクトサミンまたは誘導体化されたポリガラクトサミンは、ベータ(1→3)連結またはベータ(1→4)連結によって接続されている。一部の実施形態では、ポリマーは、可溶性ポリグルコサミンまたはポリグルコサミン誘導体である。一部の実施形態では、可溶性ポリグルコサミンまたは誘導体化されたポリグルコサミンは、β(1→4)、(1→6)連結または(1→3)連結によって接続されている。
一部の実施形態では、多糖、ポリペプチドまたは合成ポリマーは修飾されていない(例えば、正味の正電荷を有していない)が、可溶性のままである。
1種類よりも多い繰返し単位がポリマー内に存在している場合、ポリマーは「コポリマー」である。ポリマーを用いる任意の実施形態では、用いられるポリマーをコポリマーであってよいと理解されるものとする。コポリマーを形成する繰返し単位は、任意の様式で配列されていてもよく、例えば、繰返し単位はランダムに、交互に、または「ブロック」コポリマー、すなわちそれぞれ第1の繰返し単位を含有する1つもしくは複数の領域(例えば、第1のブロック)、およびそれぞれ第2の繰返し単位を含有する1つもしくは複数の領域(例えば、第2のブロック)などを含有するコポリマーとして配列されていてもよい。ブロックコポリマーは、2種(ジブロックコポリマー)、3種(トリブロックコポリマー)、またはそれよりも多い数の異なるブロックを有することができる。配列に関して、コポリマーはランダム配列でも、ブロック配列でも、またはランダム配列とブロック配列の組合せを含有してもよい。
一部の実施形態では、ポリマーは、生物由来である、すなわちバイオポリマーである。バイオポリマーの非限定的な例として、ペプチドもしくはタンパク質(すなわち、さまざまなアミノ酸のポリマー)、またはDNAもしくはRNAなどの核酸が挙げられる。一部の実施形態では、ポリマーはポリペプチドである。一部の実施形態では、ポリマーは多糖である。
本明細書では「ポリマー多分散指数(PDI)」または「ポリマー多分散性」は、所与のポリマー試料における分子質量分布を指す。算出されたポリマーPDIは、重量平均分子量を数平均分子量で割ったものである。PDIは、1つのポリマーバッチにおける個々の分子質量の分布を示す。ポリマーPDIは典型的には1よりも高い値を有するが、ポリマー鎖が均一の鎖長に近づくにつれて、PDIは単一(1)に近似する。
可溶性ポリグルコサミンおよびポリグルコサミン誘導体
本明細書に記載される疾患または疾患の症状、例えば脳損傷を処置または予防するための可溶性ポリグルコサミンまたは誘導体化されたポリグルコサミンを含有する化合物および組成物。
ポリグルコサミンは、キチンまたはキトサンから誘導することができる。キトサンは、甲殻類(例えば、エビ、カニ、ロブスター)の外骨格の主構成成分である、N−アセチルグルコサミンのポリマーであるキチンの脱アセチルから誘導される不溶性ポリマーである。キトサンは、一般にβ(1→4)ポリグルコサミンであり、50%未満がアセチル化されているが、キチンは、一般に50%より多くがアセチル化されていると考えられる。ポリグルコサミンは、さまざまな真菌および節足動物でもみられる。β(1→4)ポリグルコサミンの合成源および代替源は、ポリグルコサミン誘導体の出発材料として機能することができる。ポリグルコサミンは、1→6連結もしくは1→3連結で接続されても、またはグルカン側鎖(すなわち、β−グルカン)を含有してもよい。ポリグルコサミンは、ポリアセチルグルコサミンとは対照的に、本明細書では50%未満がアセチル化されていると定義される。50%より多くのアミノ基がアセチル化されている場合、ポリマーはポリアセチルグルコサミンと考えられる。
本明細書に記載される可溶性ポリグルコサミンは、中性pHの水溶性ポリグルコサミンまたは、ヒドロキシルまたはアミン部分においてアセチル基以外では誘導体化されていないポリグルコサミンを指す。可溶性ポリグルコサミンは、グルコサミンおよびアセチルグルコサミンモノマーを含む。一般に、(中性pHにおいて)水溶性ポリグルコサミンは、約5,000kDaまたはそれ未満の分子量、および80%またはそれよりも高い脱アセチル化度を有する。
本明細書に記載されるポリグルコサミン誘導体は、遊離ヒドロキシルまたはアミン基を正に荷電したまたは中性の部分で官能化することによって生成される。官能化のパーセントは、正に荷電したまたは中性の部分で官能化されたポリグルコサミン主鎖のモノマーの合計パーセントと定義される。脱アセチル化度および官能化度により、特定の電荷密度が、官能化されたポリグルコサミン誘導体に付与される。得られた電荷密度は、溶解性および処置の実効性に影響を及ぼす。したがって、本発明によれば、脱アセチル化度、官能化および分子量は最適な有効性に対して最適化されなければならない。本明細書に記載されるポリグルコサミン誘導体は、生理的(中性)pHにおける溶解性を含めて、有利ないくつかの特性を有する。一部の実施形態では、ポリグルコサミン誘導体は、最大pH10において可溶性である。本明細書に記載されるポリグルコサミン誘導体は、pH2〜pH10において可溶性である。本明細書に記載されるポリグルコサミン誘導体は、pH5〜pH9において可溶性である。本明細書に記載されるポリグルコサミン誘導体は、pH6〜pH8において可溶性である。本明細書に記載されるポリグルコサミン誘導体は、pH6.5〜pH8において可溶性である。本明細書に記載されるポリグルコサミン誘導体は、pH7〜pH8において可溶性である。一部の実施形態では、ポリグルコサミン誘導体の分子量は、15〜350kDaの間である。一部の実施形態では、ポリグルコサミン誘導体の分子量は、25〜250kDaの間である。一部の実施形態では、ポリグルコサミン誘導体の分子量は、30〜150kDaの間である。
脱アセチル化度(DDA)が50%よりも高く、官能化がポリグルコサミン主鎖の全モノマーの2%〜50%の間であるポリグルコサミンが、本発明において使用される。脱アセチル化度によって、ポリグルコサミンポリマー中の全モノマーに対する遊離アミノ基の相対的含有量が決定する。ポリグルコサミンの脱アセチル化度の決定に使用することができる方法としては、例えばニンヒドリン試験、一次電位差滴定法(linear potentiometric titration)、近赤外分光法、核磁気共鳴分光法、臭化水素滴定法、赤外分光法、および一次導関数UV分光光度法が挙げられる。好ましくは、本明細書に記載される可溶性ポリグルコサミンまたは誘導体化されたポリグルコサミンの脱アセチル化度は、定量的赤外分光法によって決定される。
アミンの活性誘導体化による官能化(%)は、ポリグルコサミンポリマーのモノマーの全数に対して決定される。好ましくは、本明細書に記載される誘導体化されたポリグルコサミンの官能化(%)は、H−NMRまたは定量的元素分析によって決定される。脱アセチル化度および官能化度により、特定の電荷密度が、官能化されたポリグルコサミン誘導体に付与される。得られた電荷密度は、溶解性、ならびに組織、バイオフィルムの構成成分および細菌性膜との相互作用の強度に影響を及ぼす。分子量は、誘導体化されたポリグルコサミンの粘膜付着性およびバイオフィルム破壊能においても重要な因子である。したがって、本発明によれば、これらの特性は最適な有効性に対して最適化されなければならない。例示的なポリグルコサミン誘導体については、米国特許第8,119,780号に記載されており、それは参照により全体として本明細書に組み込まれる。
本明細書に記載されるポリグルコサミン誘導体は、約1.0〜約3.0の間の範囲の多分散指数(PDI)を有する。本明細書に記載されるポリグルコサミン誘導体は、約1.2〜約2.8の間の範囲の多分散指数(PDI)を有する。本明細書に記載されるポリグルコサミン誘導体は、約1.0〜約2.5の間の範囲の多分散指数(PDI)を有する。本明細書に記載されるポリグルコサミン誘導体は、約1.5〜約2.0の間の範囲の多分散指数(PDI)を有する。本明細書では多分散指数(PDI)は、所与のポリマー試料における分子量の分布の尺度である。算出されたPDIは、重量平均分子量を数平均分子量で割ったものである。この算出は、1のポリマーバッチにおける個々の分子量の分布を示す。PDIは常に1より高い値を有するが、ポリマー鎖が均一の鎖長に近づくにつれて、PDIは単一(1)に近似する。天然源に由来するポリマーのPDIは、天然源(例えば、カニ対エビ対真菌に由来するキチンまたはキトサン)によって決まり、さまざまな反応、生成、加工処理、取扱い、貯蔵および精製条件によって改変または調節される。多分散性を決定する方法としては、例えばゲルパーミエーションクロマトグラフィー(サイズ排除クロマトグラフィーとしても公知)、光散乱測定、およびMALDIからまたはエレクトロスプレー質量分析からの直接計算が挙げられる。好ましくは、本明細書に記載される可溶性ポリグルコサミンまたは誘導体化されたポリグルコサミンのPDIは、HPLCおよびマルチアングル光散乱法によって決定される。
中性および生理的pHにおいて可溶性である本明細書に記載されるポリグルコサミン誘導体(すなわち、誘導体化されたポリグルコサミン)は、選択されたさまざまな分子量を有し、本発明のために、5〜1,000kDaの範囲の分子量を含む。誘導体化されたポリグルコサミンは、最大約10のpHにおいて可溶性である。本明細書に記載される実施形態は、中間範囲の分子量(30〜150kDa、例えば約30〜約150kDa)の誘導体化されたポリグルコサミンである。一部の実施形態では、誘導体化されたポリグルコサミンの分子量は10〜1,000kDaの間である。一部の実施形態では、誘導体化されたポリグルコサミンの分子量は15〜350kDaの間である。一部の実施形態では、誘導体化されたポリグルコサミンの分子量は20〜200kDaの間である。一部の実施形態では、官能化されたポリグルコサミンの分子量は30〜150kDaの間である。
本明細書に記載される官能化されたポリグルコサミン誘導体には下記:
(A)ポリグルコサミン−アルギニン化合物、
(B)ポリグルコサミン−天然アミノ酸誘導体化合物、
(C)ポリグルコサミン−非天然アミノ酸化合物、
(D)ポリグルコサミン−酸アミン化合物、
(E)ポリグルコサミン−グアニジン化合物、および
(F)中性ポリグルコサミン誘導体化合物
が含まれる。
(A)ポリグルコサミン−アルギニン化合物
一部の実施形態では、本明細書に記載されるポリマーはポリグルコサミン−アルギニン化合物であり、アルギニンは、ペプチド(アミド)結合を介してそのカルボニルを経由してポリグルコサミンのグルコサミンの第一級アミンに結合している
[式中、各Rは独立して、水素、アセチル、および次式:
の基またはそのラセミ混合物から選択され、R置換基の少なくとも25%はHであり、少なくとも1%はアセチルであり、少なくとも2%は上に示す式の基である]。
一部の実施形態では、ポリグルコサミン−アルギニン化合物は次式
[式中、mは0.02〜0.50であり、qは0.50〜0.01であり、sは1であり、p+q+m=1であり、官能化度(%)はm・100%であり、Xは
からなる群から選択される]
のものであり、調製物は5kDa未満の分子量を有する化合物を実質的に含まない。
(B)ポリグルコサミン−天然アミノ酸誘導体化合物
一部の実施形態では、本明細書に記載されるポリマーはポリグルコサミン−天然アミノ酸誘導体化合物であり、天然アミノ酸はヒスチジンまたはリシンであってよい。アミノは、ペプチド(アミド)結合を介してそのカルボニルを経由してポリグルコサミンのグルコサミンの第一級アミンに結合している
[式中、各Rは独立して、水素、アセチル、および次式:
の基またはそのラセミ混合物から選択され、R置換基の少なくとも25%はHであり、少なくとも1%はアセチルであり、少なくとも2%は上に示す式の基もしくは次式:
の基またはそのラセミ混合物から選択され、R置換基の少なくとも25%はHであり、少なくとも1%はアセチルであり、少なくとも2%は上に示す式の基である]。
(C)ポリグルコサミン−非天然アミノ酸化合物
一部の実施形態では、本明細書に記載されるポリマーはポリグルコサミン−非天然アミノ酸化合物であり、非天然アミノ酸は、ペプチド(アミド)結合を介してそのカルボニルを経由してポリグルコサミンのグルコサミンの第一級アミンに結合している
[式中、各Rは独立して、水素、アセチル、および次式
(式中、Rは非天然アミノ酸側鎖である)の基から選択され、R置換基の少なくとも25%はHであり、少なくとも1%はアセチルであり、少なくとも2%は上に示す式の基である]。
非天然アミノ酸は、オルニチン(2,5−ジアミノペンタン酸)など、生物系で普通はみられない側鎖を有するものである。本発明によれば、任意の非天然アミノ酸を使用することができる。一部の実施形態では、ポリグルコサミンにカップリングしている非天然アミノ酸は次式
を有する。
(D)ポリグルコサミン−酸アミン化合物
一部の実施形態では、本明細書に記載されるポリマーは、ポリグルコサミン−酸アミン化合物またはそれらのグアニジル化相当物である。酸アミンは、ペプチド(アミド)結合を介してそのカルボニルを経由してポリグルコサミンのグルコサミンの第一級アミンに結合している
[式中、各Rは独立して、水素、アセチル、および次式
(式中、Rは、アミノ、グアニジノ、およびアミノまたはグアニジノ基で置換されているC〜Cアルキルから選択される)
の基から選択され、R置換基の少なくとも25%はHであり、少なくとも1%はアセチルであり、少なくとも2%は上に示す式の基である]。
一部の実施形態では、Rは下記
の1つから選択される。
(E)ポリグルコサミン−グアニジン化合物
一部の実施形態では、本明細書に記載されるポリマーはポリグルコサミン−グアニジン化合物である
[式中、各Rは独立して、水素、アセチル、およびRが付着している窒素と一緒にグアニジン部分を形成する基から選択され、R置換基の少なくとも25%はHであり、少なくとも1%はアセチルであり、少なくとも2%は付着している窒素と一緒にグアニジン部分を形成する]。
(F)中性ポリグルコサミン誘導体化合物
一部の実施形態では、本明細書に記載されるポリマーは中性ポリグルコサミン誘導体化合物である。例示的な中性ポリグルコサミン誘導体化合物としては、ポリグルコサミンの1つまたは複数のアミン窒素が糖などの中性部分に共有結合的に付着しているものが挙げられる
[式中、各Rは独立して、水素、アセチル、および糖(例えば、天然に存在するまたは修飾糖)またはα−ヒドロキシ酸から選択される]。
糖は、グルコース、マンノース、ラクトース、マルトース、セロビオース(cellubiose)、スクロース、アミロース、グリコーゲン、セルロース、グルコネート、またはピルベートなどの単糖、二糖または多糖とすることができる。糖は、スペーサーを介してまたは末端の糖のカルボン酸、ケトンもしくはアルデヒド基を介して共有結合的に付着することができる。α−ヒドロキシ酸の例としては、グリコール酸、乳酸、およびクエン酸が挙げられる。一部の好ましい実施形態では、中性ポリグルコサミン誘導体は、ポリグルコサミン−ラクトビオン酸化合物またはポリグルコサミン−グリコール酸化合物である。例示的な塩および共誘導体としては、当技術分野において公知のもの、例えば米国特許第8,119,780号に記載されているものが挙げられ、その内容は参照により全体として組み込まれる。
投与経路
本明細書に記載される方法は、非経口投与(例えば、静脈内注入、例えばボーラス静注、静脈内持続注入によって)することができる。記載される方法を使用して、任意の従来の無毒性の薬学的に許容される担体、アジュバントまたはビヒクル中の本明細書に記載されるポリマーを送達することができる。一部の実施形態では、ポリマーの安定性を高めるために、組成物(例えば、本明細書に記載されているポリマーを含む組成物)のpHを薬学的に許容される酸、塩基または緩衝剤で調整することができる。
本明細書に記載される組成物は、無菌注射製剤の形態、例えば注射可能な無菌水溶液または懸濁液とすることができる。無菌注射製剤は、無毒性の非経口的に許容される希釈剤または溶媒中の注射可能な無菌溶液または懸濁液であってよい。無菌の不揮発性油(例えば、合成モノグリセリドまたはジグリセリド)を溶媒または懸濁化媒体として用いることができる。オレイン酸およびそのグリセリド誘導体などの脂肪酸が、注射剤の調製において有用であり、オリーブ油またはヒマシ油などの薬学的に許容される天然油が特にそれらのポリオキシエチル化の形で有用である。TweenもしくはSpanなどの界面活性剤または他の乳化剤あるいはバイオアベイラビリティエンハンサーも使用することができる。無菌注射剤の調製に適した溶媒または懸濁化媒体の一部の例としては、1,3−ブタンジオール、マンニトール、水、リンゲル液、等張食塩水、エタノール、グリセロール、プロピレングリコール、液体ポリエチレングリコール、シクロデキストリン誘導体、または植物性油を含む調製物が挙げられる。
本明細書に記載されるポリマーは、約0.5〜約100mg/体重1kgの範囲の投与量、あるいは例えば4〜120時間毎に1mg〜1000mg/用量の間の投与量で、例えば注射によって静脈内投与(例えば、静脈内注入、ボーラス静注)することができる。一部の実施形態では、本明細書に記載されるポリマーは動脈内投与される。本明細書における方法は、有効量のポリマーまたはポリマー組成物を投与して、所望のまたは明示された効果を達成することを企図する。典型的には、本明細書で提供されるポリマーを、1日、2日、3日、4日、5日、6日、または7日、1週間、2週間、または3週間当たり約1〜約3回(例えば、ボーラス静注により)あるいは持続注入で投与する。担体材料と組み合わせて、単一の剤形を生成することができる有効成分の量は、処置される宿主および特定の投与方式に応じてさまざまである。典型的な製剤は、約5%〜約95%(例えば、約20%〜約80%)のポリマー(w/w)を含有する。
キット
本明細書に記載されているポリマーを含むキットも本明細書に記載される。一部の実施形態では、本明細書に記載されるポリマーは組成物(例えば、水性組成物、水溶液)で提供される。一部の実施形態では、本明細書に記載されるポリマーを含む組成物は容器で提供される。例えば、本明細書に記載されるポリマーを含む組成物は、袋(例えば、プラスチック袋またはポリマー袋)、バイアル、ビン、または注射器で提供することができる。さらに、本明細書に記載されるポリマーを含むキット(例えば、本明細書に記載されているポリマーを含む組成物)に、投与のための指示書を添付することができる。キットには、医薬品の製造、使用、または販売を規制する政府機関によって規定された形式の通知書を添付することができ、その通知書は、機関がヒトに投与するための組成物の形態を承認したことを示すものである。例えば、そのような通知書は、処方薬に対して米国食品医薬品局が承認した表示または承認された製品の添付文書のものであってよい。
(実施例1)
損傷後の脳におけるPAAGの静脈注射の分布
マウス9匹に、制御式皮質衝撃装置(4.0m/秒で損傷深さ1.15mm)で加えたTBIを与えた。すべてのマウスに、PAAGを3つの濃度(食塩水中のPAAG 8mg/kg、40mg/kg、80mg/kg)の1つで尾静脈経由にてIV注射した。次いで、PAAG注射の1時間、4時間、12時間後に、1つの脳が時点/用量の各組合せについて収集されるように脳を収集した。次いで、脳を薄切し、DM6000顕微鏡(Leica)で50、100、および200倍の倍率で画像化した。
PAAG強度が脈管構造、さらには同側の損傷の半影部においても経時的に増加した。FITC PAAGが血管壁に沿って蓄積し、最高用量のPAAGで処置した4および12時間後に収集された脳、ならびに中用量で処置した12時間後に収集された脳から採取された切片において脳の脈管網が明らかになった。しかし、PAAGの存在は、80mg/kgの用量で送達して1時間後に同側において視認可能であった。FITC−PAAGが脳の内皮に付着している/その近位にあることを確認するために、発明者らは内皮細胞マーカーZO−1およびCD31について免疫組織化学的検査を行った。ZO−1は内皮タイトジャンクションの構成成分であり、CD31は、主に内皮細胞上に存在している血小板内皮細胞接着分子(PECAM−1)である。両抗体は、血管中にPAAGと共局在する。PAAGは、NeuNおよびPAAG染色の近傍により表されて、神経脈管単位の近くに存在していることも実証された。図1は、80mg/kgのFITC−PAAG(緑色)によって明らかになり、ZO−1、CD31およびNeuNの抗体で共染色(赤色)された脈管網の画像の例を示す。黄色は共染色を示す。処置して12時間後に撮られた画像。PAAGはIV送達後に脳に存在しており、脈管構造および損傷した海馬に局在した。
(実施例2)
TBIによって誘発された血液脳関門透過性に対するPAAGの効果
4.0m/秒で損傷深さ1.3mm
TBIの3日後、屠殺する4時間前に、マウスに8mg/kgのPAAGまたは食塩水を尾静脈経由で与えた(動物5匹/群)。屠殺する1時間前に、680 Alexa Fluor赤外色素とコンジュゲートさせた1mg/mLの10kDaデキストラン200ulをマウスに与えた。マウスに、60mLの氷冷PBSを4mL/分の速度で左心室経由にて灌流した。次いで、脳を幅2mmの切片に薄切し、Li−Cor odysseyスキャナー(Li−Cor Bioscience,Inc.)で走査した。各切片を象限に分け、Image Studio(Li−Cor Bioscience,Inc.)を使用して、各象限の平均蛍光強度を算出した。各脳について象限の強度を定量化するために、中間切片が損傷部位の中心を含む連続した3つの切片の平均蛍光強度を平均し、対照のQ1に基準化した。この損傷レベルは、図2に示すように損傷深さ1.3mm、1.2mm、および1.15mmで脈管漏出を決定した予備実験に基づいて選択した。深さと共に透過性が増加する傾向が明らかであった。この研究に基づいて、1.3mmの損傷深さが最適であった。というのは、この損傷レベルで3日目に、海馬は依然として無傷であり、脈管漏出は最大であったからである。
損傷が位置している象限1の平均蛍光強度の差は有意に近づいた(p=0.061)(TBI:1+/−0.50、TBI+PAAG:0.48+/−0.19)。n=マウス5匹/群。脳切片の代表的な画像を図3Aに示す。注射が困難であるとわかったマウス2匹(各群から1匹)を除くと、結果は有意になった(p<0.05)(TBI:1.1+/−0.50、TBI+PAAG:0.48+/−0.19)。不適格なマウスを除去した実験群の脳切片の代表的な画像を図3Bに示す。例示的な画像を図3Cに示す。N=4/アーム マウス/群
PAAGによって、損傷した脳における脈管透過性の量が減少した。
(実施例3)
TBIによって誘発された血液脳関門透過性に対するPAAGの効果
4.0m/秒で損傷深さ1.3mm
損傷の1時間後に、およびTBIの3日後である屠殺する4時間前に、マウスに8mg/kgのPAAGまたは食塩水を尾静脈経由で与えた。さらに、屠殺する1時間前に、680 Alexa Fluor赤外色素とコンジュゲートさせた1mg/mLの10kDaデキストラン200ulをマウスに与えた。マウスに、60mLの氷冷PBSを4mL/分の速度で左心室経由にて灌流した。次いで、脳を幅2mmの切片に薄切し、Li−Cor odysseyスキャナー(Li−Cor Bioscience,Inc.)で走査した。各切片を象限に分け、Image Studio(Li−Cor Bioscience,Inc.)を使用して、各象限の平均蛍光強度を算出した。各脳について象限の強度を定量化するために、中間切片が損傷部位の中心を含む連続した3つの切片の平均蛍光強度を平均し、対照のQ1に基準化した。
損傷が位置している象限1の平均蛍光強度の差は有意に近づいた(p=0.061)(TBI+PAAG:0.027)。図4B。例示的な画像を図4Aに示す。PAAGで処置したTBIマウスは、脳の同側において10kD IRタグ付け色素に対する透過性が有意に低下したことを実証した。N=動物8匹/群。P<0.027。各実験群からの脳切片の代表的な3つの画像。N=4/アーム マウス/群。
(実施例4)
外傷性脳損傷後に静脈内投与されたPAAGの効果
2群の動物8匹のそれぞれに、ビヒクル(対照)またはPAAG(実験群)を投与した。両群に、制御式皮質衝撃(損傷深さ1.3mm、4.0m/秒)により頭蓋骨開放外傷性脳損傷を与えた。損傷の2および24時間後、動物に8mg/kgのPAAG(実験群)または等容量のビヒクル(対照)を静脈内投与により与えた。
損傷の3日後、動物を屠殺し、次いで30mlの氷冷PBS、次いでPBS中30mlの4%PFAで左心室経由にて灌流した。灌流後、脳を4%PFA中に終夜放置した。翌日、それらの脳を30%スクロース溶液に移し、いったん(2〜3日)沈めて、OCTに置き、ドライアイスで冷やしたプラットフォームを使用して凍結した。
次いで、脳を厚さ10umの切片に薄切し、次いで染色した。損傷部位を横切る切片8枚を染色し、画像化し、定量化した。
炎症によって活性化されたミクログリアは、図5に示されているようにIba1を上方制御した。PAAGで処置すると、炎症によるミクログリアの活性化が減少した。
図6に示されているように、PAAGで処置された動物は、NIMPR−14染色によって読み取られる好中球浸潤も阻害された(n=3)。
(実施例5)
ラットにおける出血性ショックの研究
100%Oを自発呼吸するSprague−Dawley雄性ラット14匹にイソフルラン(2%)で麻酔し、気管切開した。頚動脈に血圧を記録するためのカニューレを挿入した。大腿静脈および動脈にそれぞれ、蛍光色素注入および採血のためのカニューレを挿入した(出血性試料および血液試料)。出血性ショック(HS)/蘇生処置:PAAG(8mg/kg)+LR(15ml/kg、低容量)の組合せまたはLR単独(45ml/kg)のいずれかとして。ショックを受けていない動物(ベースライン)と蘇生後動物(乳酸リンゲル液(Lactated Ringers sollution)(LR)またはPAAG+LR)を比較した。
液浸対物レンズ(Zeiss 63x、N.A.0.95)およびテキサスレッド(TR)用のフィルターセット、ならびにフルオレセインイソチオシアネート(FITC)蛍光を用いた顕微鏡を使用し、速度計測装置(Optical Doppler Velocimeter)およびデジタルカメラ(CoolSnap CF)に接続した。精巣挙筋を、サーモスタットで制御された台座の上に配置し、不透過性プラスチックフィルムで覆った。
TRまたはFITCで標識されているデキストラン(70および500kDa)を使用して、グリコカリックス(5、6)によって占有される空間を測定した。ベースラインで、TR−デキストラン70(10mg/ml)を、無傷グリコカリックスの厚さを決定するのに注射し、続いて、HS/蘇生後にFITC−デキストラン500(10mg/ml)を注射した。
内皮グリコカリックスの厚さを以下の通り測定した。簡潔に言えば、落射照明画像および透過照明画像を使用して、蛍光カラム幅および微小血管の解剖学的(内腔)径を測定した。グリコカリックスの厚さをこれらの2つの測定値間の差によって推定した。
図7は、ショックを受けていないおよび蘇生後の動物についてグリコカリックスの厚さを示す。内皮グリコカリックスの厚さ(上方)は、ショックに供した後、PAAG+LR(n=20本血管)またはLR単独(n=30本血管)で蘇生したラットの精巣挙筋の後毛細管小静脈において測定した。EG脱落は、ベースラインおよびPAAG+LRと比較して、LR単独での蘇生後において有意に高かった。データは平均±SEMとして表した。* ベースラインと有意差がある(p<0.05)。† LR単独と有意差がある(p<0.05)。
図8は、PAAG+LR(N=4実験/群)またはLR単独(N=7実験/群)でのHS/蘇生の前後における血漿シンデカン−1プロテオグリカンのレベルを示す。PAAG群の蘇生後のシンデカン−1のレベルは、ベースラインのレベルと比較して変化しなかったが、LR単独群の蘇生後のシンデカン−1のレベルより有意に低かった。データは平均±SEMとして表した。* ベースラインと有意差がある(p<0.05)。† LR単独と有意差がある(p<0.05)。

Claims (46)

  1. 脈管系(例えば、脳、脊髄、器官、肺、リンパ系)の障害を処置する方法であって、ポリマー(例えば、荷電した多糖(例えば、多糖コンジュゲート))を対象に静脈内投与し、それによって前記障害を処置するステップを含む、方法。
  2. 前記対象において正常な血液輸送を回復させる、または異常な体液輸送を低減する(例えば、前記脈管系の障害のない対象に比べて)、請求項1に記載の方法。
  3. 前記障害が、前記脈管およびリンパ系の炎症、腫脹および二次傷害である、請求項1に記載の方法。
  4. 血液脳関門の透過性を低減する、請求項1に記載の方法。
  5. 血液脳関門の完全性を高める、請求項1に記載の方法。
  6. 前記障害が、グリコカリックスの機能障害またはグリコカリックスの構造的完全性喪失の結果である、請求項1に記載の方法。
  7. VEGF媒介性劣化を低減する、請求項1に記載の方法。
  8. 前記障害が、脳損傷(例えば、限局性またはびまん性脳損傷)、外傷性脳損傷、震盪、卒中(例えば、出血性卒中、虚血性卒中)、脳傷害、虚血、出血性ショック、再灌流損傷、再狭窄、急性呼吸窮迫症候群、急性腎不全、敗血症、敗血症性ショック、リンパ水腫および脊髄損傷から選択される、請求項1に記載の方法。
  9. 前記障害が脳損傷である、請求項1に記載の方法。
  10. 前記脳損傷が震盪性脳損傷である、請求項1に記載の方法。
  11. 前記脳損傷が中等度から重度の脳損傷である、請求項1に記載の方法。
  12. 前記障害がコントラポイント損傷である、請求項1に記載の方法。
  13. 前記障害が外傷性脳損傷である、請求項1に記載の方法。
  14. 前記障害が出血性ショックを患っている、請求項1に記載の方法。
  15. 前記障害が虚血性再灌流損傷を患っている、請求項1に記載の方法。
  16. 前記障害が卒中である、請求項1に記載の方法。
  17. 前記障害が虚血性である、請求項1に記載の方法。
  18. 前記障害が出血性である、請求項1に記載の方法。
  19. 前記障害が眼の急性黄斑変性である、請求項1に記載の方法。
  20. 前記障害が器官移植における再灌流損傷である、請求項1に記載の方法。
  21. 前記障害が再狭窄である、請求項1に記載の方法。
  22. 前記障害が急性呼吸窮迫症候群である、請求項1に記載の方法。
  23. 前記障害が急性腎不全である、請求項1に記載の方法。
  24. 前記障害が敗血症性ショックである、請求項1に記載の方法。
  25. 前記障害が脊髄損傷である、請求項1に記載の方法。
  26. 前記障害がリンパ水腫である、請求項1に記載の方法。
  27. 前記ポリマーが、生理的pH(例えば、血液(6〜8)中)において可溶性である、請求項1に記載の方法。
  28. 前記ポリマーが30〜300kDaの間の分子量(MW)を有する、請求項1に記載の方法。
  29. 前記ポリマーが(例えば、荷電した残基、例えばアルギニンで)10〜35%官能化されている、請求項1に記載の方法。
  30. 前記ポリマーがグリコカリックス表面と相互作用(例えば、水素結合、静電的相互作用、電解的相互作用)する、請求項1に記載の方法。
  31. 前記ポリマーが、荷電したポリマーである、請求項1に記載の方法。
  32. 荷電したポリマーがポリカチオン性ポリマーである、請求項1に記載の方法。
  33. 前記ポリマーが多糖である、請求項1に記載の方法。
  34. 前記多糖がポリグルコサミンである、請求項1に記載の方法。
  35. ポリグルコサミンがベータ(1→4)ポリグルコサミンである、請求項31に記載の方法。
  36. ポリグルコサミンが、1−6または1−3ポリグルコサミンである、請求項31に記載の方法。
  37. 前記多糖がポリガラクトサミンである、請求項1に記載の方法。
  38. 前記ポリガラクトサミンが、ベータ(1−3)またはベータ(1−4)ガラクトサミンである、請求項34に記載の方法。
  39. 前記ポリマーがポリペプチドである、請求項1に記載の方法。
  40. 前記ポリマーが無毒性合成ポリマーである、請求項1に記載の方法。
  41. 前記静脈内投与がボーラス投与による、請求項1に記載の方法。
  42. 前記静脈内投与が持続注入による、請求項1に記載の方法。
  43. 前記投与が動脈内投与である、請求項1に記載の方法。
  44. 損傷後1、2、4、6、8、12、15、18、20、24時間、1、2、3、4、5、6、7日、1、2週間未満で投与される、請求項1に記載の方法。
  45. 障害を処置する方法であって、前記障害が、グリコカリックスの機能障害(例えば、保護関門を低減し、内液平衡失調、浮腫、毛細血管漏出、または接着を引き起こす)または前記グリコカリックスの構造的完全性喪失であり、前記方法が、ポリマー(例えば、荷電した多糖(例えば、多糖コンジュゲート))を対象に静脈内投与し、それによって前記障害を処置するステップを含む、方法。
  46. 安定性もしくは構造を向上させる、内皮の完全性を促進すること、グリコカリックスの完全性を回復させること、または前記グリコカリックスを横切る異常な体液輸送を低減すること(例えば、正常な血液輸送を回復させること)を提供する、請求項45に記載の方法。
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