本発明の特定の実施形態では、菌類HXT1遺伝子は、さび病HXT1遺伝子である。
従って、本発明は、
(i)菌類HXT1遺伝子によって転写されたmRNAのヌクレオチド配列のうちの少なくとも18の隣接するヌクレオチドと実質的に同一であるヌクレオチド配列を有している第1の部分を含んでいる第1のRNA鎖;及び
(ii)第1鎖の第1の部分のヌクレオチド配列に対して実質的に相補的であるヌクレオチド配列を有している第2の部分を含んでいる第2のRNA鎖;
を含んでいるdsRNA分子を提供し、ここで、該菌類HXT1遺伝子は、さび病HXT1遺伝子である。
「さび病」又は「真菌さび病」は、本発明に関連して、系統学的なサビキン目(Pucciniales)の植物病原体を意味する。従って、「さび病HXT1遺伝子」は、HXT1タンパク質をコードする、系統学的なサビキン目(Pucciniales)の真菌種に由来する遺伝子である。系統学的なサビキン目(Pucciniales)の代表的な種は、ファコプソラ・パキリジ(Phakopsora pachyrhizi)、ウロミセス・ファバエ(Uromyces fabae)、プッシニア・ストリイホルミス(Puccinia striiformis)、プッシニア・トリチシナ(Puccinia triticina)及びプッシニア・グラミニス(Puccinia graminis)である。従って、さび病HXT1遺伝子は、上記種のうちの1つに由来する(即ち、上記種のうちの1つにおいて天然に存在している)遺伝子である。本発明に従って好ましいさび病HXT1遺伝子は、種ファコプソラ・パキリジ(Phakopsora pachyrhizi)のHXT1遺伝子である。
特定の実施形態では、本発明は、
(i)真菌さび病HXT1遺伝子によって転写されたmRNAのヌクレオチド配列のうちの少なくとも18の隣接するヌクレオチドと実質的に同一であるヌクレオチド配列を有している第1の部分を含んでいる第1のRNA鎖;及び
(ii)第1鎖の第1の部分のヌクレオチド配列に対して実質的に相補的であるヌクレオチド配列を有している第2の部分を含んでいる第2のRNA鎖;
を含んでいるdsRNA分子を提供し、ここで、前記真菌さび病HXT1遺伝子は、以下のものからなるリストから選択される:
(a)以下の配列識別番号に記載されている配列を含んでいるポリヌクレオチド:1、3、5、7、及び、9;
(b)以下の配列識別番号に記載されている配列を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド:2、4、6、8、及び、10;
(c)以下の配列識別番号に記載されている配列を有するポリヌクレオチドと少なくとも70%の配列同一性を有するポリヌクレオチド:1、3、5、7、及び、9;
(d)以下の配列識別番号に記載されている配列を有するポリペプチドと少なくとも70%の配列同一性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド:2、4、6、8、及び、10;
(e)以下の配列識別番号に記載されている配列を有するポリヌクレオチドと緊縮条件でハイブリダイズするポリヌクレオチド:1、3、5、7、及び、9。
本発明によれば、用語「配列同一性」は、考慮される長さのポリペプチド又はポリヌクレオチドのアミノ酸又はヌクレオチドの総数の百分率で表された、それぞれ別のポリペプチド又はポリヌクレオチドのアミノ酸又はヌクレオチドと同一である、それぞれ、ポリペプチド又はポリヌクレオチドのアミノ酸又はヌクレオチドの数として理解される。配列同一性は、好ましくは、グローバルアラインメントアルゴリズム又はローカルアラインメントアルゴリズムに基づいた適切な配列アラインメントコンピュータープログラムを使用して、本発明のポリペプチド又はポリヌクレオチドの配列を別のポリペプチド又はポリヌクレオチドと比較することによって決定する。
比較するポリペプチド又はポリヌクレオチドが異なる長さを有している場合、長い方の配列と共通している短い方の配列のそれぞれアミノ酸又はヌクレオチドの数が配列同一性の百分率を求めるその長さを決定するように、配列同一性の百分率を決定する。これらのコンピュータープログラムは、2つの配列をそれらの全長にわたって整列させるために、通常、「Needleman and Wunsch」グローバルアラインメントアルゴリズムを使用して、マッチする数を最大化し、且つ、ギャップ数を最小化する。一般に、デフォルトパラメータを、ギャップ導入ペナルティー(gap creation penalty)=10及びギャップ延長ペナルティー(gap extension penalty)=0.5(いずれも、ヌクレオチド及びタンパク質のアラインメントに対して)で使用する。好ましくは、同一性は、よく知られていて且つ一般に公開されているコンピュータープログラム「ClustalW」(Thompson et al., 1994, Nucleic Acids Research 22, 4673−4680)を用いて決定する。「ClustalW」は、「http://www.ebi.ac.uk/tools/clustalW2/index.html」において公に利用可能な状態にされている。本発明によるタンパク質と別のタンパク質の間の同一性を決定するためには、好ましくは、「ClustalW」コンピュータープログラムのバージョン2.1を使用する。その際、以下のパラメーターを設定しなければならない:KTUPLE=1、TOPDIAG=5、WINDOW=5、PAIRGAP=3、GAPOPEN=10、GAPEXTEND=0.05、GAPDIST=8、MAXDIV=40、MATRIX=GONNET、ENDGAPS(OFF)、NOPGAP、NOHGAP。
例えば、本発明による核酸分子のヌクレオチド配列と別の核酸分子のヌクレオチド配列の間の同一性を決定するためには、好ましくは、「ClustalW」コンピュータープログラムのバージョン2.1を使用する。その際、以下のパラメーターを設定しなければならない:KTUPLE=2、TOPDIAGS=4、PAIRGAP=5、DNAMATRIX:IUB、GAPOPEN=10、GAPEXT=5、MAXDIV=40、TRANSITIONS:負荷無(unweighted)。
本発明によれば、用語「緊縮条件下でハイブリダイズする」は、ポリヌクレオチドが別のポリヌクレオチドに他のポリヌクレオチドに対するよりも検出可能に大きな程度(例えば、バックグラウンドに対するよりも少なくとも2倍)でハイブリダイズ(通常は、プローブとしてデザインされている)する条件を示している。緊縮条件は、配列に依存し、そして、環境によって異なる。ハイブリダイゼーションの厳密性及び/又は洗浄条件を制御することによって、ポリヌクレオチドプローブと配列が100%同一であるポリヌクレオチドを識別することが可能である(相同的プロービング(homologous probing))。あるいは、配列同一性の程度がより低いポリヌクレオチドが検出されることを目的として、配列における多少の不整合が許容されるように緊縮条件を調節することが可能である(非相同的プロービング(heterologous probing))。一般に、ポリヌクレオチドプローブは、長さが約1000ヌクレオチド未満であり、好ましくは、長さが500ヌクレオチド未満である。
一般に、緊縮条件は、定められたイオン強度及びpHにおいて特異的配列に関する熱融点(Tm)よりも約5℃低いように選択する。該「Tm」は、完全にマッチするプローブに標的配列の50%がハイブリダイズする温度(定められたイオン強度及びpHにおいて)である。典型的には、塩濃度がpH7において約0.02モルであり且つ温度が少なくとも60℃である緊縮条件を選択する。塩濃度を低下させること及び/又は温度を上昇させることは、厳密性を上昇させる。RNA−DNAハイブリダイゼーション(ノーザンブロット(これは、例えば、100ntのプローブを使用する))に関する緊縮条件は、例えば、63℃で20分間、0.2×SSCでの少なくとも1回の洗浄を含んでいるような条件又はそれに等価な条件である。DNA−DNAハイブリダイゼーション(サザンブロット(これは、例えば、100ntのプローブを使用する))に関する緊縮条件は、例えば、少なくとも50℃の温度(通常は、約55℃)で20分間、0.2×SSCでの少なくとも1回(通常は、2回)の洗浄を含んでいるような条件又はそれに等価な条件である。以下のものも参照されたい:「Sambrook et al. (1989) Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Second Edition, Cold Spring Harbor Laboratory Press」、及び、「Sambrook and Russell (2001) Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Third Edition, Cold Spring Harbor Laboratory Press, NY」、並びに、「Ausubel et al. (1994) Current Protocols in Molecular Biology, Current Protocols, USA」の第1巻及び第2巻。
緊縮条件は、ホルムアミドのような不安定化剤を添加して達成することも可能である。代表的な低緊縮条件としては、37℃で30〜35%ホルムアミド、1M NaCl、1%SDS(ドデシル硫酸ナトリウム)からなる緩衝溶液を使用するハイブリダイゼーション、及び、50〜55℃で1×〜2×SSC(20×SSC=3.0M NaCl/0.3M クエン酸三ナトリウム)の中での洗浄などがある。代表的な中緊縮条件としては、37℃で40〜45%ホルムアミド、1.0M NaCl、1%SDSの中でのハイブリダイゼーション、及び、55〜60℃で0.5×〜1×SSCの中での洗浄などがある。代表的な高緊縮条件としては、37℃で50%>ホルムアミド、1M NaCl、1%SDSの中でのハイブリダイゼーション、及び、60〜65℃で0.1×SSCの中での洗浄などがある。場合により、洗浄緩衝液は、約0.1%〜約1%のSDSを含んでいてもよい。ハイブリダイゼーションの持続時間は、一般に、24時間未満であり、通常は、約4〜約12時間である。
ハイブリダイゼーションは、当業者にはよく知られている当技術分野において慣習的な方法に準じて実施することができる(特に、「Sambrook et al., 2001, Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Third Edition, Cold Spring Harbor Laboratory Press, NY」)。
本発明の特定の実施形態では、該dsRNA分子は、保護対象の植物又は作物に対して、予防的な方法(即ち、さび病菌による植物の感染は未だ起こっていない)で施用し得るか、又は、治療的な方法(即ち、植物は既にさび病菌に感染している)で施用し得る。従って、本発明は、有効で且つ植物に対して毒性を示さない量の本明細書中で定義されているdsRNA分子を含んでいる組成物にも関する。
本発明によるdsRNA分子は、インビトロ転写を用いて古典的な化学的合成若しくは固相DNSA合成によって作ることができるか、又は、それらは、動物細胞、細菌、酵母菌若しくは植物のような生物の中で異種(即ち、組換え)発現によって生成させることができる(Aalto et al, 2007 RNA 13: 422−429)。
従って、本発明は、本明細書中で定義されているdsRNA分子を産生するトランスジェニック生物、好ましくは、トランスジェニック微生物に関する。
従って、本発明は、さらにまた、少なくとも1のDNA分子を含み、さらに、5’位と、場合により3’位に、異種調節要素を含んでいる遺伝子構築物にも関し、ここで、該遺伝子構築物は、該DNA分子が本明細書中で定義されているdsRNA分子を形成し得るRNA転写産物をコードすることを特徴とする。本発明は、さらにまた、クローニングベクター及び/又は発現ベクターにも関し、ここで、該クローニングベクター及び/又は発現ベクターは、少なくとも1の上記遺伝子構築物を含んでいることを特徴とする。
「有効で且つ植物に対して毒性を示さない量」という表現は、作物上に存在しているか又はおそらく出現するであろう病原体を防除又は駆除するのに充分で、且つ、該作物について植物毒性の感知可能などのような症状も引き起こすことのない、本発明組成物の量を意味する。そのような量は、防除対象の病原体、作物の種類、気候条件、及び、本発明の組成物に含まれている化合物に応じて、広い範囲内で変動し得る。そのような量は、当業者が実行可能な範囲内にある温室内又は圃場における体系的な試験によって決定することが可能である。
かくして、有効で且つ植物に対して毒性を示さない量の本明細書中で定義されているdsRNA分子を活性成分として含み、並びに、農業上許容される支持体、担体、増量剤及び/又は界面活性剤を含んでいる、組成物も提供される。
本発明によれば、用語「支持体(support)」は、活性成分(即ち、dsRNA)と組み合わせて又は関連させて、植物に対してより容易に施用できるようにする、天然又は合成の有機化合物又は無機化合物を意味する。このような支持体は、従って、一般に不活性であり、また、農業上許容されるものであるべきである。支持体は、固体であることができるし、又は、液体であることもできる。適切な支持体の例としては、クレー、天然又は合成のシリケート、シリカ、樹脂、蝋、固形肥料、水、アルコール(特に、ブタノール)、有機溶媒、鉱油及び植物油、並びに、それらの誘導体などがある。このような支持体の混合物を使用することもできる。
本発明の組成物には、さらにまた、付加的な成分、例えば、限定するものではないが、界面活性剤、保護コロイド、粘着剤、増粘剤、揺変剤、浸透剤、安定化剤、金属イオン封鎖剤などを含ませることもできる。さらに一般的には、該活性化合物は、通常の製剤技術に従う固体又は液体の任意の添加剤と組み合わせることが可能である。
一般に、本発明の組成物には、0.05〜99重量%の活性成分、好ましくは、10〜70重量%の活性成分を含有させることができる。
本発明の組成物は、エーロゾルディスペンサー、カプセル懸濁液剤、冷煙霧濃厚剤(cold fogging concentrate)、散粉性粉剤、乳剤、水中油型エマルション剤、油中水型エマルション剤、カプセル化粒剤、細粒剤、種子処理用フロアブル剤、ガス剤(加圧下)、ガス生成剤(gas generating product)、粒剤、温煙霧濃厚剤(hot fogging concentrate)、大型粒剤、微粒剤、油分散性粉剤、油混和性フロアブル剤、油混和性液剤、ペースト剤、植物用棒状剤(plant rodlet)、乾燥種子処理用粉剤、農薬粉衣種子、可溶性濃厚剤(soluble concentrate)、可溶性粉剤、種子処理用溶液剤、懸濁製剤(フロアブル剤)、微量散布用液剤(ultra−low volume (ULV) liquid)、微量散布用懸濁液剤(ultra−low volume (ULV) suspension)、顆粒水和剤、水分散性錠剤、スラリー処理用水和剤、水溶性顆粒剤、水溶性錠剤、種子処理用水溶性粉剤及び水和剤などのような、さまざまな形態で使用することが可能である。これらの組成物には、処理対象の植物又は種子に対して噴霧装置又は散粉装置のような適切な装置を用いて施用される状態にある組成物のみではなく、作物に対して施用する前に希釈することが必要な商業的な濃厚組成物も包含される。
本発明によるdsRNA化合物は、さらにまた、殺菌剤、除草剤、殺虫剤、殺線虫剤、殺ダニ剤、軟体動物駆除剤、抵抗性誘発物質、薬害軽減剤、シグナル化合物、生物学的薬剤、フェロモン活性物質又は生物学的活性を有する別の化合物などのような1種類以上の別の植物保護化合物又は植物成長促進性化合物と混合させることもできる。そのようにして得られた混合物は、拡大された活性スペクトルを有する。別の殺菌剤化合物との混合物が特に有利である。
本発明の別の特定の実施形態によれば、dsRNAは、保護対象の植物体内に導入されるか、又は、保護対象の植物体内で生成される。植物体内に導入された後、該dsRNAは、植物細胞のRNAi加工機構によって、所謂低分子dsRNA断片(siRNA)にさらに加工されることができ、及び、その後、その植物全体に分配されることができ、それによって、植物が真菌さび病病原体による感染から保護される。該導入されたdsRNAは、さらにまた、より長いdsRNAを真菌細胞が摂取した後、その真菌細胞のRNAi加工機構によって、siRNAに加工されることもできる。
あるいは、該dsRNAは、組織内で、一時的な方法で、空間的な方法で又は誘発可能な方法でdsRNAを発現させることを可能にするDNA分子又は遺伝子構築物を用いて植物細胞を安定な又は一時的な遺伝的形質転換に付すことによって、植物体内で生成され、次いで、それが、植物細胞のRNAi加工機構によって低分子dsRNA断片(siRNA)にさらに加工され得る。そのようにして生成されたdsRNAは、さらにまた、より長いdsRNAを真菌細胞が摂取した後、その真菌細胞のRNAi加工機構によって、siRNAに加工されることもできる。
一時的な遺伝的形質転換は、ウイルス誘導性遺伝子サイレンシング(VIGS)として知られている方法において組換え植物ウイルスを使用して、実施することができる。植物細胞内で組換えDNA分子又は組換えRNA分子の一過性発現を誘発させるために多くのVIGSベクターを利用することができる(Purkayastha et al., 2009, Plant Physiol.Biochem. 47: 967−976)。本発明によるdsRNAをダイズ植物体内で発現させるための好ましいVIGSベクターは、「Bean Pod Mottle Virus」である(BPMV;Zhang et al., 2010, Plant Physiol. 153: 52−65)。
従って、本発明は、植物細胞の内部で本発明のdsRNAを生成させることが可能な遺伝子構築物又はキメラ遺伝子にも関する。そのような遺伝子構築物又はキメラ遺伝子は、少なくとも1のDNA分子を含み、さらに、5’位と、場合により3’位に、植物体内で機能し得る異種調節要素を含んでおり、ここで、該遺伝子構築物又はキメラ遺伝子は、該DNA配列が当該植物体内で一度発現された本明細書中で定義されているdsRNA分子を形成し得ることを特徴とする。
特定の実施形態では、該遺伝子構築物又はキメラ遺伝子は、
・ 作動可能に連結された、植物細胞内で機能性を有するプロモーター調節要素;
・ 転写されたときに、センス方向のヌクレオチド配列を有している第1の部分及びアンチセンス方向のヌクレオチド配列を有している第2の部分を転写の方向に含んでいるRNA分子〔ここで、センス方向の第1の部分の前記ヌクレオチド配列は、真菌さび病HXT1遺伝子によって転写されたmRNAの少なくとも18の隣接するヌクレオチドと実質的に同一であるヌクレオチド配列からなり、及び、アンチセンス方向の第2の部分の前記ヌクレオチド配列は、アンチセンス方向ではあるが、センス方向の第1の部分のヌクレオチド配列に対して実質的に相補的であるヌクレオチド配列からなり、その実質的な相補性によって該mRNA分子の第1の部分と第2の部分が一緒になってハイブリダイズすることが可能となり、それによって、dsRNAを形成することが可能である〕を生成するDNA分子;及び、
・ 場合により、ターミネーター調節要素;
を含んでいる。
従って、該遺伝子構築物又はキメラ遺伝子は、
・ 作動可能に連結された、植物細胞内で機能性を有するプロモーター調節要素;
・ センス方向のヌクレオチド配列を有している第1の部分及びアンチセンス方向のヌクレオチド配列を有している第2の部分を転写の方向に含んでいるDNA分子〔ここで、センス方向の第1の部分の前記ヌクレオチド配列は、真菌さび病HXT1遺伝子のヌクレオチド配列の少なくとも18の隣接するヌクレオチドと実質的に同一であるヌクレオチド配列からなり、及び、アンチセンス方向の第2の部分の前記ヌクレオチド配列は、アンチセンス方向ではあるが、センス方向の第1の部分のヌクレオチド配列に対して実質的に相補的であるヌクレオチド配列からなる〕;及び、
・ 場合により、ターミネーター調節要素;
を含んでいる。
「センス方向」は、転写される所与のDNA分子又は所与のRNA分子に関して、そのヌクレオチド配列が5’から3’の方向に配列されているということを意味する。「アンチセンス方向」は、該ヌクレオチド配列がそのDNA分子又はRNA分子の3’から5’の方向に配列されているということを意味する。DNA分子は、通常、二本鎖であり、そして、該DNA分子上の転写される各部分(例えば、遺伝子のコード配列)は、そのヌクレオチド配列を該DNA鎖の一方においてセンス方向に有しており、及び、相補的なヌクレオチド配列をもう一方の鎖においてアンチセンス方向に有している。本発明に関連して、dsRNAを形成するRNAに転写されるようにデザインされたDNA分子は、同一鎖上に2つの実質的に相補的な部分を、一方はセンス方向に、及び、その実質的に相補的な部分はアンチセンス方向に、含んでいる。従って、前記DNA分子から転写された前記(一本鎖)RNAは、センス方向の転写された部分とアンチセンス方向のその実質的に相補的な部分の両方を含んでいる一本鎖でできており、従って、自分自身を折りたたんで実質的に相補的な部分を対形成させることによって、dsRNAに変わることができる。
本発明による遺伝子構築物又はキメラ遺伝子のDNA配列は、数種類の異なるデザインを有し得る。
第1の実施形態によれば、該DNA分子は、スペーサー又はイントロンによって隔てられた2つの核酸部分(1つは、そのヌクレオチド配列をセンス方向に有しており、1つは、そのヌクレオチド配列をアンチセンス方向に有している)を含んでいる。そのヌクレオチド配列をセンス方向に有している前記核酸部分は、真菌さび病HXT1遺伝子のヌクレオチド配列の少なくとも18の隣接するヌクレオチドと実質的に同一であり、そのヌクレオチド配列をアンチセンス方向に有している前記核酸部分は、そのヌクレオチド配列をセンス方向に有している前記部分と実質的に相補的であり、及び、前記スペーサー又はイントロンは、前記2つの別の核酸部分のヌクレオチド配列と配列同一性を全く示さない。植物細胞内のそのようなDNA配列の転写は、「センス/スペーサー(又は、イントロン)/アンチセンス」構築物に相当する長い一本鎖RNA分子を生成させる。この長いRNA転写産物は、RT−PCRによって検出することが可能である。前記2つのRNA部分のセンスヌクレオチド配列とアンチセンスヌクレオチド配列の間の実質的な配列相補性に起因して、それらは、自然に互いと対形成又はハイブリダイズしてdsRNAを形成し、それによって、このdsRNAは折りたたまれたRNAであり、そして、2つの相補的な部分を隔てているスペーサー又はイントロンのRNA配列はループを形成し、それによって、所謂「ヘアピン型」のdsRNAが形成される。そのdsRNAを、次いで、酵素複合体「DICER」によって分解して低分子dsRNA(siRNA)とする。これは、19〜25塩基の範囲内に含まれるサイズを有する小さな二本鎖RNAである。これらのsiRNAを、次いで、菌類細胞内の菌類HXT1遺伝子の転写されたmRNAと最終的に対形成させるためにRNAi酵素的機構で加工し、それによって、それらを分解させる。しかし、その加工のどの段階で植物細胞から菌類細胞に取り込まれるのかは未だ知られておらず、従って、正確な要素(dsRNA、siRNA・・・)も知られていない。
別の実施形態によれば、前記DNA分子は、2つの核酸部分(1つは、そのヌクレオチド配列をセンス方向に有しており、1つは、そのヌクレオチド配列をアンチセンス方向に有している)を含んでおり、ここで、その2つの配列は、直接互いに連続している(即ち、スペーサー、イントロン又は別の核酸要素で隔てられていない)。そのヌクレオチド配列をセンス方向に有している前記核酸部分は、真菌さび病HXT1遺伝子のヌクレオチド配列の少なくとも18の隣接するヌクレオチドと実質的に同一であり、そのヌクレオチド配列をアンチセンス方向に有している前記核酸部分は、そのヌクレオチド配列をセンス方向に有している前記部分と、部分的に又はその部分より多く、実質的に相補的であり、それら2つの核酸部分は異なる長さであり、そして、最も長い部分のうちの余分な部分はもう一方の(部分的に相補的な)部分のヌクレオチド配列とは配列相補性を全く示さないヌクレオチド配列を含んでいる。従って、センス方向内の前記部分とアンチセンス方向内の前記部分がそれらの相補的な部分に沿ってハイブリダイズすると、もう一方の部分と配列相補性を全く示さないもっとも長い前記部分の前記余分な部分によってループ構造が形成される。植物細胞内のそのようなDNA配列の転写は、「センス/アンチセンス」構築物に相当する長い一本鎖RNA分子を生成させる。この長いRNA転写産物は、RT−PCRによって検出することが可能である。前記2つのRNA部分のセンスヌクレオチド配列とアンチセンスヌクレオチド配列の間の実質的な配列相補性に起因して、それらは、自然に互いと対形成又はハイブリダイズしてdsRNAを形成し、それによって、このdsRNAは折りたたまれたRNAであり、そして、最も長い前記部分のうち前記余分な部分に対応するRNA部分はループを形成し、それによって、所謂「ヘアピン型」のdsRNAが形成される。そのdsRNAを、次いで、酵素複合体「DICER」によって分解して低分子dsRNA(siRNA)とする。これは、19〜25塩基の範囲内に含まれるサイズを有する小さな二本鎖RNAである。これらのsiRNAを、次いで、菌類細胞内の菌類HXT1遺伝子の転写されたmRNAと最終的に対形成させるためにRNAi酵素的機構で加工し、それによって、それらを分解させる。しかし、その加工のどの段階で植物細胞から菌類細胞に取り込まれるのかは未だ知られておらず、従って、正確な要素(dsRNA、siRNA・・・)も知られていない。
別の実施形態によれば、該遺伝子構築物は、
・ 植物細胞内で機能性を有する2つのプロモーター調節配列〔ここで、第1のプロモーター調節配列は、転写されたときにセンス方向に第1の核酸部分を少なくとも含んでいる第1のRNA分子を生成させる第1のDNA分子に作動可能に連結されており、及び、第2のプロモーター調節配列は、転写されたときにアンチセンス方向に第2の核酸部分(ここで、該第2の核酸部分は該第1の核酸部分と実質的に相補的である)を少なくとも含んでいる第2のRNA分子を生成させる第2のDNA分子に作動可能に連結されており、ここで、センス方向の該第1の核酸部分は、真菌さび病HXT1遺伝子によって転写されたmRNAのヌクレオチド配列の少なくとも18の隣接するヌクレオチドと実質的に同一であるヌクレオチド配列を含んでいる〕;
及び、
・ 場合により、ターミネーター調節配列;
を含んでいる。
この特定の実施形態において、該遺伝子構築物は、2つのキメラ遺伝子を含むことができ、ここで、一方のキメラ遺伝子は、転写されたときにセンス方向に第1の核酸部分(ここで、該第1の核酸部分は、真菌さび病HXT1遺伝子によって転写されたmRNAのヌクレオチド配列の少なくとも18の隣接するヌクレオチドと実質的に同一である)を少なくとも含んでいる第1のRNA分子を生成させる第1のDNA分子に作動可能に連結されている第1のプロモーター調節配列と場合によりターミネーター調節配列を含んでおり、及び、第2のキメラ遺伝子は、転写されたときにアンチセンス方向に第2の核酸部分(ここで、該第2の核酸部分はセンス方向の該第1の核酸部分と実質的に相補的である)を少なくとも含んでいる第2のRNA分子を生成させる第2のDNA分子に作動可能に連結されている第2のプロモーター調節配列と場合によりターミネーター調節配列を含んでいる。
これらの2つのキメラ遺伝子は、該dsRNAを形成させるための2つの一本鎖RNAのハイブリダイゼーションを最適化するために、好ましくは、植物細胞の中に共同して導入するが、それは、必ずしも必要ではない。
遺伝子構築物が2つのプロモーター調節配列を用いてデザインされる場合、該第1のプロモーター調節配列と該第2のプロモーター調節配列は異なっていても又は同一でもよく、好ましくは、異なっている。
本発明は、さらにまた、植物を形質転換するためのクローニングベクター及び/又は発現ベクターにも関し、ここで、該クローニングベクター及び/又は発現ベクターは、本明細書中で定義されている少なくとも1のキメラ遺伝子又は遺伝子構築物を含んでいることを特徴とする。
本発明は、さらに、本発明によるDNA分子又は遺伝子構築物を含んでいて、従って、本明細書中で定義されている本発明のdsRNA分子を発現するトランスジェニック植物細胞にも関する。
本発明を適用し得るな植物の中で、以下のものを挙げることができる:主要農作物、例えば、トウモロコシ(Zea mays)、ダイズ(Glycine max)、ワタ(Gossypium hirsutum)、アブラナ属油料種子(Brassica oilseeds)、例えば、セイヨウアブラナ(Brassica napus)(例えば、カノラ)、カブ(Brassica rapa)、カラシナ(B.juncea)(例えば、マスタード)及びアビシニアガラシ(Brassica carinata)、イネ(Oryza sativa)、コムギ(Triticum ssp.、特に、Triticum aestivum)、テンサイ(Beta vulgaris)、サトウキビ(Saccharum Officinarum)、エンバク(Avena sativa)、ライムギ(Secale cereale)、オオムギ(Hordeum vulgare)、アワ、ライコムギ、アマ、ブドウの木、並びに、種々の植物学的分類群のさまざまな果実及び野菜、例えば、バラ科各種(Rosaceae sp.)(例えば、仁果(pip fruit)、例えば、リンゴ及びナシ、さらに、核果、例えば、アンズ、サクラ、アーモンド及びモモ、液果(berry fruits)、例えば、イチゴ)、リベシオイダエ科各種(Ribesioidae sp.)、クルミ科各種(Juglandaceae sp.)、カバノキ科各種(Betulaceae sp.)、ウルシ科各種(Anacardiaceae sp.)、ブナ科各種(Fagaceae sp.)、クワ科各種(Moraceae sp.)、モクセイ科各種(Oleaceae sp.)、マタタビ科各種(Actinidaceae sp.)、クスノキ科各種(Lauraceae sp.)、バショウ科各種(Musaceae sp.)(例えば、バナナの木及びバナナ園(banana trees and plantings))、アカネ科各種(Rubiaceae sp.)(例えば、コーヒー)、ツバキ科各種(Theaceae sp.)、アオギリ科各種(Sterculiceae sp.)、ミカン科各種(Rutaceae sp.)(例えば、レモン、オレンジ及びグレープフルーツ);ナス科各種(Solanaceae sp.)(例えば、トマト、ジャガイモ、トウガラシ、ナス)、ユリ科各種(Liliaceae sp.)、キク科各種(Compositiae sp.)(例えば、レタス、チョウセンアザミ及びチコリー(これは、ルートチコリー(root chicory)、エンダイブ又はキクニガナを包含する))、セリ科各種(Umbelliferae sp.)(例えば、ニンジン、パセリ、セロリ及びセルリアック)、ウリ科各種(Cucurbitaceae sp.)(例えば、キュウリ(これは、ピックルキュウリ(pickling cucumber)を包含する)、カボチャ、スイカ、ヒョウタン及びメロン)、ネギ科各種(Alliaceae sp.)(例えば、タマネギ及びリーキ)、アブラナ科各種(Cruciferae sp.)(例えば、白キャベツ、赤キャベツ、ブロッコリー、カリフラワー、芽キャベツ、タイサイ、コールラビ、ラディッシュ、セイヨウワサビ、コショウソウ、ハクサイ)、マメ科各種(Leguminosae sp.)(例えば、ラッカセイ、エンドウ及びインゲンマメ(例えば、クライミングビーン(climbing beans)及びソラマメ))、アカザ科各種(Chenopodiaceae sp.)(例えば、フダンソウ(mangold)、フダンソウ(spinach beet)、ホウレンソウ、ビートルート)、アオイ科(Malvaceae)(例えば、オクラ)、クサスギカズラ科(Asparagaceae)(例えば、アスパラガス);園芸作物及び森林作物(forest crops);観賞植物;及び、これら作物の遺伝子組み換えが行われた相同物。本発明を適用し得る正確な植物は、本明細書中で定義されている本発明によるHXT1遺伝子を含んでいる菌類(好ましくは、さび病菌)によって感染されやすい植物である。
本発明が適用される好ましい植物は、ダイズ植物である。従って、本発明の特定の実施形態において、該トランスジェニック植物細胞は、ダイズ植物細胞である。
本発明は、さらにまた、本発明によるトランスジェニック植物細胞を含んでいるトランスジェニック植物、トランスジェニック種子又はそれらの一部分にも関する。
本発明の特定の実施形態において、該トランスジェニック植物、トランスジェニック種子又はそれらの一部分は、ダイズ植物、ダイズ種子又はそれらの一部分である。
用語「キメラ遺伝子」、「遺伝子構築物]又は「発現カセット」は、一般に、遺伝子の基本低な要素、即ち、プロモーター、コード配列及びターミネーターを含んでいる人工的な遺伝子を意味することが意図されており、ここで、該要素は、自然界に見られる少なくとも2種類の遺伝子に由来し、及び/又は、少なくとも2種類の異なる生物の同じ遺伝子(即ち、同じ機能を有するタンパク質をコードする遺伝子)に由来する。典型的な「キメラ遺伝子」、「遺伝子構築物]又は「発現カセット」は、転写の方向に互いに機能的に連結されている、植物細胞内で機能するプロモーター調節配列、RNAに転写され得るDNA配列、及び、場合により、植物細胞内で機能するターミネーターを含んでいる。
表現「キメラ遺伝子」、「遺伝子構築物]又は「発現カセット」は、さらにまた、プロモーター調節配列に直接的には連結していないが、例えば、同じプロモーター調節配列の制御下にある幾つかのコード配列を含んでいる多シストロン性構築物の一部分である、タンパク質をコードする配列又はmRNAも包含し得る。そのような状況下では、該プロモーター調節配列の制御下にある各コード配列は、「キメラ遺伝子」又はあ「発現カセット」としてデザインされる。
本発明によれば、表現「互いに機能的に連結されている」は、キメラ遺伝子の遺伝要素が、それらの機能が協調されて、コード配列の発現を可能とするように、互いに連結されているということを意味する。例として、プロモーターは、それがコード配列を確実に発現させること〔即ち、mRNA(つまり、タンパク質をコードしている)であろうと、又は、任意の別のタイプのRNA(例えば、dsRNA)であろうと、そのRNA分子への転写〕が可能である場合、そのコード配列に機能的に連結されている。本発明によるキメラ遺伝子の構築及びそれのさまざまな要素のアセンブリーは、当業者にはよく知られている技術〔特に、以下のものに記載されている技術:「Sambrook et al. (2001, Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Third Edition, Cold Spring Harbor Laboratory Press, NY)」〕を用いて実施することができる。該キメラ遺伝子を構成する調節要素の選択は、本質的に、植物に依存し、及び、その調節要素がその中で機能しなければならない細胞の種類に依存し、当業者は、所与の植物の中で機能する調節要素を選択することができる。
本発明によるキメラ遺伝子が含んでいることが可能なプロモーターは、構成的又は誘導性であることがき、空間的に又は時間的に調節することが可能である。
本発明のキメラ遺伝子の中で使用することが可能な構成的プロモーターの中で、例として、以下のものを挙げることができる:細菌プロモーター、例えば、オクトピンシンターゼ遺伝子のプロモーター又はノパリンシンターゼ遺伝子のプロモーター(Sanders et al., 1987, Nucl. Acids Res.15: 1543−1548)、ウイルスプロモーター、例えば、カリフラワーモザイクウイルスの19S若しくは35S RNAの転写を制御する遺伝子のプロモーター(CaMV; Lawton et al., 1987, Plant Mol. Biol. 9: 315−324; Odell et al., 1985, Nature, 313: 810−812)、又は、キャッサバ葉脈モザイクウイルスのプロモーター(CsVMV;特許出願WO97/48819に記載されている)。植物起源のプロモーターの中で、以下のものを挙げることができる:リブロース−ビスカルボキシラーゼ/オキシゲナーゼ(RuBisCO)小サブユニット遺伝子のプロモーター、特許出願EP 0507698に記載されているヒストン遺伝子のプロモーター、又は、イネアクチン遺伝子のプロモーター(Wang et al., 1992, Mol. Cell. Biol., 12:3 399−3406; US 5,641,876)。
本発明のキメラ遺伝子の中で使用することが可能な誘導性プロモーターの中で、例として、以下のものを挙げることができる:オーキシン−結合タンパク質をコードする遺伝子のプロモーター(Schwob et al., 1993, Plant J. 4: 423−432)、UDP−グルコースフラボノイドグリコシルトランスフェラーゼをコードする遺伝子のプロモーター(Ralston et al., 1988, Genet., 119: 185−197)、MIPプロテイナーゼインヒビターをコードする遺伝子のプロモーター(Cordero et al., 1994, Plant J., 6: 141−150)、又は、グリセルアルデヒド−3−ホスフェートデヒドロゲナーゼをコードする遺伝子のプロモーター(Martinez et al., 1989, J. Mol. Biol., 208: 551−565; Quigley et al., 1989, J. Mol. Evol., 29: 412−421; Kohler et al., 1995, Plant Mol. Biol., 29: 1293−1298)。
本発明のキメラ遺伝子の中で使用することが可能な組織特異的プロモーターの中で、例として、以下のものを挙げることができる:根特異的プロモーター、例えば、特許出願WO 00/29594に記載されている根特異的プロモーター、花特異的プロモーター、例えば、特許出願WO 98/22593、WO 99/15679若しくはWO 99/43818に記載されている花特異的プロモーター、又は、果実特異的プロモーター、特に、種子特異的プロモーター、例えば、特許出願WO 91/13993、WO 92/17580、WO 98/45460、WO 98/45461若しくはWO 99/16890に記載されている種子特異的プロモーター。
用語「ターミネーター調節配列」は、植物細胞内又は植物体内で機能する任意の配列を意味することが意図されており、そして、細菌由来(例えば、アグロバクテリウム・ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)のnosターミネーター又はocsターミネーター)であっても、又は、ウイルス由来(例えば、CaMV 35Sターミネーター)であっても、又は、植物由来(例えば、特許出願EP 0633317に記載されているヒストンターミネーター)であっても、ポリアデニル化配列も包含する。
本発明による構築物を組み込んだ形質転換細胞及び/又は形質転換植物を確認するための選択段階は、本発明の構築物の中に存在している選択マーカー遺伝子又は細胞若しくは植物の形質転換に使用されたプラスミド(これは、該構築物を含んでいる)の中に存在している選択マーカー遺伝子の存在に基づいて、実施することができる。該選択マーカー遺伝子は、転写の方向に機能的に連結された以下の要素を含んでいるキメラ遺伝子の形態であり得る:植物細胞内で機能するプロモーター調節配列、選択マーカーをコードする配列、及び、植物細胞内で機能するターミネーター調節配列。
使用することが可能な選択マーカーの中で、抗生物質に対する抵抗性に関する遺伝子を含んでいるマーカー、例えば、ヒグロマイシンホスホトランスフェラーゼ遺伝子のマーカー(Gritz et al., 1983, Gene 25:179−188)、カナマイシンに対する抵抗性を誘発させるネオマイシンホスホトランスフェラーゼ II 遺伝子のマーカー(Wirtz et al., 1987, DNA, 6: 245−253)又はアミノグリコシド3”−アデニルトランスフェラーゼ遺伝子のマーカーなどを挙げることができるが、さらに、除草剤に対する耐性に関する遺伝子〔例えば、ビアラホスに対する耐性に関するbar遺伝子(White et al., 1990, Nucl. Acids Res.18: 1062)、グリホセートに対する耐性に関するEPSPS遺伝子(US 5,188,642)又はイソオキサゾール系に対する耐性に関するHPPD遺伝子(WO 96/38567)〕を含んでいるマーカーなども挙げることができる。さらにまた、容易に確認することが可能な酵素(例えば、GUS酵素)をコードする遺伝子、GFPタンパク質をコードする遺伝子、又は、色素若しくは形質転換細胞内で色素の産生を調節する酵素をコードする遺伝子なども挙げることができる。そのようなマーカー遺伝子は、特に、以下の特許出願に記載されている:WO 91/02071、WO 95/06128、WO 96/38567、及び、WO 97/04103。
本発明は、さらに、真菌さび病HXT1遺伝子の阻害を誘発させるdsRNAを発現することが可能なトランスジェニック植物細胞又はトランスジェニック植物を生成させる方法にも関し、ここで、該方法は、植物細胞を本発明によるキメラ遺伝子又は遺伝子構築物を用いて形質転換させる段階を含んでいる。
該方法は、さらに、形質転換された植物細胞を選択する段階も含み得る。
本発明の特定の実施形態において、本発明は、本発明による本明細書中に記載されているdsRNAを発現することが可能なトランスジェニック植物細胞又はトランスジェニック植物を生成させる方法に関し、ここで、該方法は、植物細胞を本発明によるキメラ遺伝子又は遺伝子構築物を用いて形質転換させる段階を含んでいる。好ましくは、該植物細胞は、ダイズ植物細胞であり、又は、該植物は、ダイズ植物である。
本発明による細胞又は植物を得るために、当業者は、多くの既知形質転換方法のうちの1つを使用することができる。
これらの方法のうちの1つでは、形質転換させる宿主生物の細胞又は組織をポリエチレングリコール(PEG)及び本発明のベクターと接触させる(Chang and Cohen, 1979, Mol. Gen. Genet. 168: 111−115; Mercenier and Chassy, 1988, Biochimie 70: 503−517)。エレクトロポレーションは、もう1つの方法であり、この方法では、形質転換させる細胞又は組織及び本発明のベクターを電場に付す(Andreason and Evans, 1988, Biotechniques 6: 650−660; Shigekawa and Dower, 1989, Aust. J. Biotechnol. 3: 56−62)。別の方法では、該ベクターをマイクロインジェクション法によって細胞又は組織に直接注入する(Gordon and Ruddle, 1985, Gene 33: 121−136)。有利には、「微粒子銃(biolistic)」法を使用し得る。その方法では、その表面に本発明のベクターが吸着されている微粒子で細胞又は組織を衝撃する(Bruce et al., 1989, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 86: 9692−9696; Klein et al., 1992, Biotechnology 10: 286−291; US 4,945,050)。好ましくは、植物の細胞又は組織の形質転換は、アグロバクテリウム(Agrobacterium)属の細菌を使用して実施することができ、好ましくは、当該植物の細胞又は組織にアグロバクテリウム・ツメファシエンス(A.tumefaciens)を感染させることによって実施することができる(Knopf, 1979, Subcell. Biochem. 6: 143−173; Shaw et al., 1983, Gene 23:315−330)、又は、アグロバクテリウム・リゾゲネス(A.rhizogenes)を感染させることによって実施することができる(Bevan and Chilton, 1982, Annu. Rev. Genet. 16: 357−384; Tepfer and Casse−Delbart, 1987, Microbiol. Sci. 4: 24−28)。好ましくは、アグロバクテリウム・ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)を用いた植物の細胞又は組織の形質転換は、Hieiら(1994, Plant J. 6: 271−282)によって記載されたプロトコルに従って実施する。当業者は、形質転換させる宿主生物の種類に応じて適切な方法を選択するであろう。
本発明による植物は、上記で定義されている形質転換植物細胞を含んでいる。特に、該形質転換植物は、上記形質転換植物細胞を再生させることによって得ることができる。該再生は、当該植物種の種類に応じて、任意の適切な方法によって達成される。
本発明は、さらにまた、形質転換された植物若しくはその一部分、並びに、再生された上記植物を栽培する及び/又は交雑させることによって誘導される植物若しくはその一部分、並びに、形質転換された植物の種子にも関する。
本発明は、さらにまた、本発明の植物、その一部分又は種子から得られる最終生成物(例えば、粗びき粉、油又は繊維など)にも関する。
本発明は、さらにまた、それらの植物の部分及びそれらの植物の子孫も包含する。用語「それらの植物の一部分」は、地上部であろうと又は地下部であろうと、それらの植物の任意の器官を意味することが意図されている。地上部の器官は、茎、葉及び雄性生殖器官と雌性生殖器官を含んでいる花である。地下部の器官は、主に、根であるが、それらは、塊茎でもあり得る。用語「子孫」は、本発明による互いの植物の再生から誘導される胚を含んでいる種子を主に意味することが意図されている。拡大解釈すれば、用語「子孫」は、本発明による形質転換植物の間の交雑又は本発明による形質転換植物との交雑から誘導される新しい世代のそれぞれにおいて形成される全ての種子にも適用される。子孫及び種子は、さらにまた、当該形質転換植物の栄養繁殖によってによっても得ることができる。本発明による種子は、殺菌活性、除草活性、殺虫活性、殺線虫活性、殺細菌活性又は殺ウイルス活性から選択される活性を有する少なくとも1種類の活性製品を含んでいる農薬組成物でコーティングすることができる。
本発明は、さらに、植物病原体を防除する方法にも関し、ここで該方法は、当該病原体に本明細書中で定義されている本発明のdsRNA分子又は該dsRNAを含んでいる組成物を与えることを含む。好ましくは、該植物病原体は、真菌さび病である。
本発明に関連して、真菌さび病は、特に、分類学上のサビキン目(Pucciniales)の真菌であり、より特定的には、プッシニア属(Puccinia)の真菌、好ましくは、プッシニア・グラミニス(Puccinia graminis)、プッシニア・トリチシナ(Puccinia triticina)若しくはプッシニア・ストリイホルミス(Puccinia striiformis)、又は、ウロミセス属(Uromyces)の真菌、好ましくは、ウロミセス・ファセオリ(Uromyces phaseoli)若しくはウロミセス・アペンジクラツス(Uromyces appendiculatus)、又は、ファコプソラ属(Phakopsora)の真菌、好ましくは、ファコプソラ・パキリジ(Phakopsora pachyrhizi)である。
本発明は、さらにまた、植物(好ましくは、作物植物)を処理する方法も包含し、ここで、該方法は、有効で且つ植物に対して毒性を示さない量の本発明によるdsRNA分子又は本発明による組成物を植物がそこで生育しているか若しくは生育することが可能な土壌、植物の葉及び/若しくは果実、又は、植物の種子に施用することを特徴とする。
本発明は、さらにまた、植物、作物又は種子の病原体(好ましくは、真菌さび病)を防除する方法にも関し、ここで、該方法は、栽培学的に有効で且つ植物に対して毒性を示さない量の本発明によるdsRNA分子又は本発明による組成物を植物がそこで生育しているか若しくは生育することが可能な土壌、植物の葉及び/若しくは果実、又は、植物の種子に施用することを特徴とする。
本発明に関連して、施用は、種子、植物若しくは果実に対して、又は、植物がそこで生育しているか若しくは植物をそこで栽培するのが望ましい土壌若しくは不活性底土〔例えば、無機底土(例えば、砂、ロックウール、グラスウール;発泡鉱物、例えば、パーライト、バーミキュライト、ゼオライト又は発泡クレー)、軽石、火砕性の物質若しくは材料、合成有機底土(例えば、ポリウレタン)、有機底土(例えば、泥炭、堆肥、木製廃棄物、例えば、コイア、木材繊維若しくは木材チップ、樹皮)、又は、液体底質(例えば、浮遊水耕システム、Nutrient Film Technique、Aeroponics)〕に対して、種子処理として、茎葉施用として、茎施用(stem application)として、灌注若しくは滴下施用〔化学溶液灌水(chemigation)〕として、実施することができる。
従って、本発明は、植物病原体(特に、真菌さび病)を防除する方法に関し、ここで、該方法は、有効で且つ植物に対して毒性を示さない量の本発明によるdsRNA分子又は本発明による組成物を植物がそこで生育しているか若しくは生育することが可能な土壌、植物の葉及び/若しくは果実、又は、植物の種子に施用することを特徴とする。
本発明の目的のためには、本発明の対象である組成物は、
・ 該組成物のうちの1種類を含んでいる液体を当該植物の地上部に噴霧すること;
・ 散粉すること、粒剤又は粉剤を土壌中に混和すること、当該植物の周囲に噴霧すること、及び、樹木の場合には、注入すること又は塗りつけること;
・ 該組成物のうちの1種類を含んでいる植物保護混合物を用いて当該植物の種子にコーティング又はフィルムコーティングを施すこと;
などのさまざまな処理方法を用いて、植物に施用することが可能である。
本発明の方法は、治療方法、予防方法又は根絶する方法のいずれかであり得る。
本発明による処理方法において通常施用される活性dsRNA化合物の薬量は、一般に、また、有利には、
・ 茎葉処理では、0.0001〜10,000g/ha、好ましくは、0,0001〜1000g/ha、さらに好ましくは、0.001〜300g/haである;灌注又は滴下施用の場合、特に、ロックウール又はパーライトなどの不活性底土を用いる限り、該薬量は低減させることも可能である;
・ 種子処理では、種子100kg当たり0.0001〜200g、好ましくは、種子100kg当たり0.001〜150gである;
・ 土壌処理では、0.0001〜10,000g/ha、好ましくは、0.001〜5,000g/haである。
本明細書中に示されている薬量は、本発明の方法を例証するための例として与えられている。当業者は、特に処理対象の植物又は作物の種類に応じて、該施用薬量を適合させる方法を理解するであろう。
特定の条件下、例えば、処理又は防除の対象の病原体の種類に応じて、より少ない薬量で充分な保護を提供できる場合がある。特定の気候条件、抵抗性、又は、別の要因、例えば、病原体の種類若しくは侵襲の程度(例えば、上記病原体による植物の侵襲の程度)などによって、組み合わせられた活性成分のより多い薬量が必要となる場合がある。最適な薬量は、通常、幾つかの要因、例えば、処理対象の病原体の種類、侵襲されている植物若しくは植物材料の種類若しくは成育の程度、植生の密度、又は、施用方法などに依存する。
本発明のdsRNAは、別の植物保護化合物又は植物成長促進性化合物と混合させて使用することが可能であり、ここで、該植物保護化合物又は植物成長促進性化合物は、通常施用されるそれらの薬量で使用する。
そのような植物保護化合物又は植物成長促進性化合物は、殺菌剤、除草剤、殺虫剤、殺線虫剤、殺ダニ剤、軟体動物駆除剤、抵抗性誘発物質、薬害軽減剤、生物学的化合物、又は、作物保護活性を有する別の化合物であり得る。
本発明による処理方法は、さらにまた、塊茎又は根茎のような繁殖器官(propagation material)を処理するのにも、さらには、種子、実生又は移植実生(seedlings pricking out)及び植物又は移植植物(plants pricking out)を処理するのにも、有用であり得る。この処理方法は、根を処理するのにも有用であり得る。本発明による処理方法は、関係している植物の樹幹、茎又は柄、葉、花及び果実のような植物の地上部、並びに、真菌感染(例えば、干し草のような貯蔵に起因する感染)に感染しやすい概して全ての材料物質を処理するのにも有用であり得る。
本発明は、さらに、植物病原体(特に、真菌さび病、HXT1遺伝子)の発現を阻害する方法にも関し、ここで、該方法は、以下の:
(i) 植物細胞を本発明によるキメラ遺伝子を用いて形質転換させる段階;
(ii) そのように形質転換された細胞又はその細胞から再生させた植物を該キメラ遺伝子の転写を可能とする条件下に置く段階;
(iii) 該細胞又は該植物が該病原体と接触することを可能にする段階;
を含んでいる。
本発明に従って、全ての植物及び植物の部分を処理することができる。植物は、望ましい及び望ましくない野生植物、栽培品種並びに植物変種(植物変種又は植物育種家の権利によって保護されても又は保護されなくても)のような全ての植物及び植物群を意味する。栽培品種及び植物変種は、慣習的な繁殖方法及び育種方法(これらは、1種類以上の生物工学的方法によって、例えば、倍加半数体、プロトプラスト融合、ランダム突然変異誘発及び定方向突然変異誘発、分子標識若しくは遺伝標識又は生物工学法及び遺伝子工学法などを使用して、補助することができるか又は補うことができる)によって得られる植物であることができる。植物の部分は、植物の地上及び地下の全ての部分及び全ての器官、例えば、枝条、葉、花及び根などを意味し、ここで、例えば、葉、針状葉、茎、枝、花、子実体、果実及び種子、並びに、根、球茎及び根茎などを挙げることができる。作物並びに栄養繁殖器官及び生殖繁殖器官(vegetative and generative propagating material)、例えば、挿木(cutting)、球茎、根茎、匍匐茎及び種子なども、植物の部分に属する。
本発明による処理方法は、遺伝子組換え生物(GMO)、例えば、植物又は種子などの処理において使用することができる。遺伝子組換え植物(又は、トランスジェニック植物)は、異種遺伝子がゲノムに安定的に組み込まれている植物である。表現「異種遺伝子」は、本質的に、供給されたか又は当該植物の外部で構築された遺伝子であって、核のゲノム、葉緑体のゲノム又はミトコンドリアのゲノムの中に導入されたときに、興味深いタンパク質若しくはポリペプチドを発現することにより、又は、その植物内に存在している別の1つ若しくは複数の遺伝子をダウンレギュレート若しくはサイレンシングすることにより、当該形質転換された植物に新しい又は改善された作物学的特性又は別の特性を付与する遺伝子を意味する〔例えば、アンチセンス技術、コサプレッション技術、RNA干渉(RNAi)技術又はマイクロRNA(miRNA)技術などを使用する〕。ゲノム内に位置している異種遺伝子は、導入遺伝子とも称される。植物ゲノム内におけるその特異的な位置によって定義される導入遺伝子は、形質転換又は遺伝子導入イベントと称される。
植物種又は植物品種、それらの生育場所及び生育条件(土壌、気候、生育期、養分(diet))に応じて、本発明の処理により、相加効果を超える効果(「相乗効果」)も生じ得る。かくして、例えば、本発明により使用し得る活性化合物及び組成物の施用量の低減及び/又は活性スペクトルの拡大及び/又は活性の増強、植物の生育の向上、高温又は低温に対する耐性の向上、渇水又は水中若しくは土壌中に含まれる塩分に対する耐性の向上、開花能力の向上、収穫の容易性の向上、促進された成熟、収穫量の増加、果実の大きさの増大、植物の高さの増大、葉の緑色の向上、より早い開花、収穫された生産物の品質の向上及び/又は栄養価の増加、果実内の糖度の上昇、収穫された生産物の貯蔵安定性の向上及び/又は加工性の向上などが可能であり、これらは、実際に予期された効果を超えるものである。
特定の施用量において、本発明による活性化合物組合せは、植物において強化効果(strengthening effect)も示し得る。従って、本発明による活性化合物組合せは、望ましくない微生物類による攻撃に対して植物の防御システムを動員させるのにも適している。これは、適切な場合には、本発明による組合せの例えば菌類に対する強化された活性の理由のうちの1つであり得る。本発明に関連して、植物を強化する(抵抗性を誘導する)物質は、処理された植物が、その後で望ましくない微生物類を接種されたときに、それらの微生物類に対して実質的な程度の抵抗性を示すように、植物の防御システムを刺激することができる物質又は物質の組合せを意味するものと理解される。この場合、望ましくない微生物類は、植物病原性の菌類、細菌類及びウイルス類を意味するものと理解される。従って、処理後特定の期間、上記病原体による攻撃から植物を保護するために、本発明による物質を用いることができる。保護が達成される期間は、植物が該活性化合物で処理されてから、一般に、1〜10日間、好ましくは、1〜7日間に及ぶ。
本発明に従って処理するのが好ましい植物及び植物品種は、特に有利で有益な形質を植物に付与する遺伝物質を有している全ての植物(育種によって得られたものであろうと、及び/又は、生物工学的方法によって得られたものであろうと)を包含する。
本発明に従って処理するのが同様に好ましい植物及び植物品種は、1以上の生物的ストレスに対して抵抗性を示す。即ち、そのような植物は、害虫及び有害微生物に対して、例えば、線虫類、昆虫類、ダニ類、植物病原性の菌類、細菌類、ウイルス類及び/又はウイロイド類などに対して、良好な防御を示す。
線虫抵抗性植物又は昆虫抵抗性植物の例は、例えば、以下のものに記載されている:米国特許出願第11/765,491号、米国特許出願第11/765,494号、米国特許出願第10/926,819号、米国特許出願第10/782,020号、米国特許出願第12/032,479号、米国特許出願第10/783,417号、米国特許出願第10/782,096号、米国特許出願第11/657,964号、米国特許出願第12/192,904号、米国特許出願第11/396,808号、米国特許出願第12/166,253号、米国特許出願第12/166,239号、米国特許出願第12/166,124号、米国特許出願第12/166,209号、米国特許出願第11/762,886号、米国特許出願第12/364,335号、米国特許出願第11/763,947号、米国特許出願第12/252,453号、米国特許出願第12/209,354号、米国特許出願第12/491,396号、米国特許出願第12/497,221号、米国特許出願第12/644,632号、米国特許出願第12/646,004号、米国特許出願第12/701,058号、米国特許出願第12/718,059号、米国特許出願第12/721,595号、米国特許出願第12/638,591号。
本発明に従って同様に処理し得る植物及び植物品種は、1以上の非生物的ストレスに対して抵抗性を示す植物である。非生物的なストレス状態としては、例えば、渇水、低温に晒されること、熱に晒されること、浸透ストレス、湛水、土壌中の塩分濃度の上昇、より多くの鉱物に晒されること、オゾンに晒されること、強い光に晒されること、利用可能な窒素養分が限られていること、利用可能なリン養分が限られていること、日陰回避などを挙げることができる。
本発明に従って同様に処理し得る植物及び植物品種は、増大した収量特性を特徴とする植物である。そのような植物における増大した収量は、例えば、改善された植物の生理機能、生長及び発育、例えば、水の利用効率、水の保持効率、改善された窒素の利用性、強化された炭素同化作用、改善された光合成、上昇した発芽効率及び促進された成熟などの結果であり得る。収量は、さらに、改善された植物の構成(architecture)によっても影響され得る(ストレス条件下及び非ストレス条件下)。そのような改善された植物の構成としては、限定するものではないが、早咲き、ハイブリッド種子産生のための開花制御、実生の活力、植物の寸法、節間の数及び距離、根の成長、種子の寸法、果実の寸法、莢の寸法、莢又は穂の数、1つの莢又は穂当たりの種子の数、種子の体積、強化された種子充填、低減された種子分散、低減された莢の裂開及び耐倒伏性などがある。収量についてのさらなる形質としては、種子の組成、例えば、炭水化物含有量、タンパク質含有量、油含有量及び油の組成、栄養価、抗栄養化合物の低減、改善された加工性並びに向上した貯蔵安定性などがある。
本発明に従って処理し得る植物は、雑種強勢(これは、結果として、一般に、増加した収量、向上した活力、向上した健康状態並びに生物的及び非生物的ストレスに対する向上した抵抗性をもたらす)の特性を既に呈しているハイブリッド植物である。そのような植物は、典型的には、雄性不稔交配母体近交系(inbred male−sterile parent line)(雌性親)を別の雄性稔性交配母体近交系(inbred male−fertile parent line)(雄性親)と交雑させることによって作られる。ハイブリッド種子は、典型的には、雄性不稔植物から収穫され、そして、栽培者に販売される。雄性不稔植物は、場合により(例えば、トウモロコシにおいて)、雄穂を除去することによって〔即ち、雄性繁殖器官(又は雄花)を機械的に除去することによって〕、作ることができる。しかしながら、より典型的には、雄性不稔性は、植物ゲノム内の遺伝的決定基の結果である。その場合、及び、特に種子がハイブリッド植物から収穫される所望の生産物である場合、典型的には、該ハイブリッド植物において雄性稔性を確実に完全に回復させることは有用である。これは、雄性不稔性に関与する遺伝的決定基を含んでいるハイブリッド植物において雄性稔性を回復させることが可能な適切な稔性回復遺伝子を雄性親が有していることを確実なものとすることによって達成することができる。雄性不稔性に関する遺伝的決定基は、細胞質内に存在し得る。細胞質雄性不稔(CMS)の例は、例えば、アブラナ属各種(Brassica species)に関して記述された(WO 92/05251、WO 95/09910、WO 98/27806、WO 05/002324、WO 06/021972、及び、US 6,229,072)。しかしながら、雄性不稔性に関する遺伝的決定基は、核ゲノム内にも存在し得る。雄性不稔性植物は、遺伝子工学などの植物バイオテクノロジー法によっても得ることができる。雄性不稔性植物を得る特に有用な方法は、WO 89/10396に記載されており、ここでは、例えば、バルナーゼなどのリボヌクレアーゼを雄ずい内のタペータム細胞において選択的に発現させる。次いで、タペータム細胞内においてバルスターなどのリボヌクレアーゼインヒビターを発現させることによって、稔性を回復させることができる(例えば、WO 91/02069)。
本発明に従って処理し得る植物又は植物品種(遺伝子工学などの植物バイオテクノロジー法によって得られたもの)は、除草剤耐性植物、即ち、1種類以上の所与の除草剤に対して耐性にされた植物である。そのような植物は、遺伝的形質転換によって得ることができるか、又は、当該除草剤耐性を付与する突然変異を含んでいる植物を選抜することによって得ることができる。
除草剤抵抗性植物は、例えば、グリホセート耐性植物、即ち、除草剤グリホセート又はその塩に対して耐性にされた植物である。植物は、種々の方法によって、グリホセートに対して耐性にすることができる。例えば、グリホセート耐性植物は、酵素5−エノールピルビルシキミ酸−3−リン酸シンターゼ(EPSPS)をコードする遺伝子で植物を形質転換させることによって得ることができる。そのようなEPSPS遺伝子の例は、以下のものである:細菌サルモネラ・チフィムリウム(Salmonella typhimurium)のAroA遺伝子(突然変異CT7)(Comai et al., 1983, Science 221: 370−371)、細菌アグロバクテリウム属各種(Agrobacterium sp.)のCP4遺伝子(Barry et al., 1992, Curr. Topics Plant Physiol. 7: 139−145)、ペチュニアのEPSPSをコードする遺伝子(Shah et al., 1986, Science, 233: 478−481)、トマトのEPSPSをコードする遺伝子(Gasser et al., 1988, J. Biol. Chem. 263: 4280−4289)又はオヒシバ属(Eleusine)のEPSPSをコードする遺伝子(WO 01/66704)。それは、例えばEP 0837944、WO 00/66746、WO 00/66747又はWO 02/26995などに記述されているように、突然変異EPSPSであることも可能である。グリホセート耐性植物は、さらにまた、US 5,776,760及びUS 5,463,175に記述されているように、グリホセートオキシドレダクターゼ酵素をコードする遺伝子を発現させることによって得ることもできる。グリホセート耐性植物は、さらにまた、例えばWO 02/036782、WO 03/092360、WO 2005/012515及びWO 2007/024782などに記述されているように、グリホセートアセチルトランスフェラーゼ酵素をコードする遺伝子を発現させることによって得ることもできる。グリホセート耐性植物は、さらにまた、例えばWO 01/024615又はWO 03/013226などに記述されているように、上記遺伝子の自然発生突然変異を含んでいる植物を選抜することによって得ることもできる。グリホセート耐性を付与するEPSPS遺伝子を発現する植物は、例えば、米国特許出願第11/517,991号、米国特許出願第10/739,610号、米国特許出願第12/139,408号、米国特許出願第12/352,532号、米国特許出願第11/312,866号、米国特許出願第11/315,678号、米国特許出願第12/421,292号、米国特許出願第11/400,598号、米国特許出願第11/651,752号、米国特許出願第11/681,285号、米国特許出願第11/605,824号、米国特許出願第12/468,205号、米国特許出願第11/760,570号、米国特許出願第11/762,526号、米国特許出願第11/769,327号、米国特許出願第11/769,255号、米国特許出願第11/943801号又は米国特許出願第12/362,774号などに記載されている。グリホセート耐性を付与する別の遺伝子(例えば、デカルボキシラーゼ遺伝子)を含んでいる植物は、例えば、米国特許出願第11/588,811号、米国特許出願第11/185,342号、米国特許出願第12/364,724号、米国特許出願第11/185,560号又は米国特許出願第12/423,926号などに記載されている。
別の除草剤抵抗性植物は、例えば、酵素グルタミンシンターゼを阻害する除草剤(例えば、ビアラホス、ホスフィノトリシン又はグルホシネート)に対して耐性にされている植物である。そのような植物は、当該除草剤を解毒する酵素を発現させるか、又は、阻害に対して抵抗性を示す突然変異グルタミンシンターゼ酵素を発現させることによって、得ることができる(例えば、米国特許出願第11/760,602号に記載されている)。そのような有効な一解毒酵素は、ホスフィノトリシンアセチルトランスフェラーゼをコードする酵素である(例えば、ストレプトマイセス属各種(Streptomyces species)に由来するbarタンパク質又はpatタンパク質)。外因性のホスフィノトリシンアセチルトランスフェラーゼを発現する植物は、例えば、米国特許第5,561,236号、米国特許第5,648,477号、米国特許第5,646,024号、米国特許第5,273,894号、米国特許第5,637,489号、米国特許第5,276,268号、米国特許第5,739,082号、米国特許第5,908,810号及び米国特許第7,112,665号などに記述されている。
さらなる除草剤耐性植物は、さらにまた、酵素ヒドロキシフェニルピルビン酸ジオキシゲナーゼ(HPPD)を阻害する除草剤に対して耐性にされている植物である。HPPDは、パラ−ヒドロキシフェニルピルベート(HPP)がホモゲンチセートに変換される反応を触媒する酵素である。HPPD阻害薬に対して耐性を示す植物は、WO 96/38567、WO 99/24585、WO 99/24586、WO 09/144079、WO 02/046387又はUS 6,768,044に記述されているように、自然発生抵抗性HPPD酵素をコードする遺伝子を用いて、又は、突然変異HPPD酵素若しくはキメラHPPD酵素をコードする遺伝子を用いて、形質転換させることができる。HPPD阻害薬に対する耐性は、さらにまた、HPPD阻害薬による天然HPPD酵素の阻害にもかかわらずホモゲンチセートを形成させることが可能な特定の酵素をコードする遺伝子を用いて植物を形質転換させることによっても得ることができる。そのような植物及び遺伝子は、WO 99/34008及びWO 02/36787に記述されている。HPPD阻害薬に対する植物の耐性は、さらにまた、WO 04/024928に記述されているように、HPPD耐性酵素をコードする遺伝子に加えてプレフェナートデヒドロゲナーゼ(PDH)活性を有する酵素をコードする遺伝子を用いて植物を形質転換させることによって改善することもできる。さらに、植物は、WO 2007/103567及びWO 2008/150473に記載されているように、そのゲノムの中にHPPD阻害薬を代謝又は分解することが可能な酵素(例えば、CYP450酵素)をコードする遺伝子を加えることによって、HPPD阻害薬除草剤に対してさらに耐性にすることができる。
さらに別の除草剤抵抗性植物は、アセトラクテートシンターゼ(ALS)阻害薬に対して耐性にされている植物である。既知ALS阻害薬としては、例えば、スルホニル尿素系除草剤、イミダゾリノン系除草剤、トリアゾロピリミジン系除草剤、ピリミジニルオキシ(チオ)ベンゾエート系除草剤、及び/又は、スルホニルアミノカルボニルトリアゾリノン系除草剤などがある。ALS酵素(「アセトヒドロキシ酸シンターゼ(AHAS)」としても知られている)における種々の突然変異体は、例えば「Tranel and Wright(2002, Weed Science 50: 700−712)」などに記述され、さらに、米国特許第5,605,011号、米国特許第5,378,824号、米国特許第5,141,870号及び米国特許第5,013,659号などにも記述されているように、種々の除草剤及び除草剤の群に対する耐性を付与することが知られている。スルホニル尿素耐性植物及びイミダゾリノン耐性植物の作製については、米国特許第5,605,011号、米国特許第5,013,659号、米国特許第5,141,870号、米国特許第5,767,361号、米国特許第5,731,180号、米国特許第5,304,732号、米国特許第4,761,373号、米国特許第5,331,107号、米国特許第5,928,937号及び米国特許第5,378,824号並びにWO 96/33270に記述されている。別のイミダゾリノン耐性植物についても、例えば、WO 2004/040012、WO 2004/106529、WO 2005/020673、WO 2005/093093、WO 2006/007373、WO 2006/015376、WO 2006/024351及びWO 2006/060634などに記述されている。さらなるスルホニル尿素耐性植物及びイミダゾリノン耐性植物は、さらにまた、例えば、WO 2007/024782及び米国特許出願第61/288958号などにも記述されている。
イミダゾリノン及び/又はスルホニル尿素に対して耐性を示す別の植物は、例えば、ダイズに関してはUS 5,084,082に記述されているように、イネに関してはWO 97/41218に記述されているように、テンサイに関してはUS 5,773,702及びWO 99/057965に記述されているように、レタスに関してはUS 5,198,599に記述されているように、又は、ヒマワリに関してはWO 01/065922に記述されているように、誘導された突然変異誘発、当該除草剤の存在下での細胞培養における選抜又は突然変異育種によって得ることができる。
本発明に従って同様に処理し得る植物又は植物品種(遺伝子工学などの植物バイオテクノロジー法によって得られたもの)は、昆虫抵抗性トランスジェニック植物、即ち、特定の標的昆虫による攻撃に対して抵抗性にされた植物である。そのような植物は、遺伝的形質転換によって得ることができるか、又は、そのような昆虫抵抗性を付与する突然変異を含んでいる植物を選抜することによって得ることができる。
本明細書中で使用されている場合、「昆虫抵抗性トランスジェニック植物」には、以下のものをコードするコード配列を含んでいる少なくとも1の導入遺伝子を含んでいる任意の植物が包含される:
(1) バシルス・ツリンギエンシス(Bacillus thuringiensis)に由来する殺虫性結晶タンパク質又はその殺虫活性を示す一部分、例えば、クリックモアら「Crickmore et al. (1998, Microbiology and Molecular Biology Reviews, 62: 807−813」によって記載され、クリックモアら「Crickmore et al.,“Bacillus thuringiensis toxin nomenclature” (2014), http://www.btnomenclature.info/」によって更新された殺虫性結晶タンパク質又はその殺虫活性を示す一部分、例えば、Cryタンパク質類(Cry1Ab、Cry1Ac、Cry1B、Cry1C、Cry1D、Cry1F、Cry2Ab、Cry3Aa、又は、Cry3Bb)のタンパク質若しくはその殺虫活性を示す一部分(例えば、EP−A 1999141、及び、WO 2007/107302)、又は、例えば米国特許出願第12/249,016に記載されている合成遺伝子によってコードされているタンパク質;又は、
(2) バシルス・ツリンギエンシス(Bacillus thuringiensis)に由来する第2の別の結晶タンパク質又はその一部分の存在下において殺虫活性を示す、バシルス・ツリンギエンシス(Bacillus thuringiensis)に由来する結晶タンパク質又はその一部分、例えば、Cry34結晶タンパク質とCry35結晶タンパク質で構成されているバイナリートキシン(Moellenbeck et al., 2001, Nat. Biotechnol. 19: 668−672; Ping et al., 2006, Applied Environm. Microbiol. 71: 1765−1774)、又は、Cry1A若しくはCry1Fタンパク質とCry2Aa若しくはCry2Ab若しくはCry2Aeタンパク質で構成されているバイナリートキシン(米国特許出願第12/214,022号、及び、EP−A 2300618);又は、
(3) バシルス・ツリンギエンシス(Bacillus thuringiensis)に由来する種々の殺虫性結晶タンパク質の一部分を含んでいる殺虫性ハイブリッドタンパク質、例えば、上記(1)のタンパク質のハイブリッド、又は、上記(2)のタンパク質のハイブリッド、例えば、トウモロコシイベントMON89034で産生されるCry1A.105タンパク質(WO 2007/027777);又は、
(4) 上記(1)〜(3)のいずれか1つのタンパク質において、標的昆虫種に対するさらに強い殺虫活性を得るために、及び/又は、影響を受ける標的昆虫種の範囲を拡大するために、及び/又は、クローニング若しくは形質転換に際してコード化DNA中に導入された変化に起因して、幾つかのアミノ酸(特に、1〜10のアミノ酸)が別のアミノ酸で置き換えられていているもの、例えば、トウモロコシイベントMON863若しくはMON88017におけるCry3Bb1タンパク質又はトウモロコシイベントMIR604におけるCry3Aタンパク質;又は、
(5) バシルス・ツリンギエンシス(Bacillus thuringiensis)又はバシルス・セレウス(Bacillus cereus)に由来する殺虫性分泌タンパク質又はその殺虫活性を示す一部分、例えば、「http://www.lifesci.sussex.ac.uk/home/Neil_Crickmore/Bt/vip.html」において挙げられている栄養生長期殺虫性タンパク質(vegetative insecticidal protein)(VIP)、例えば、VIP3Aaタンパク質類のタンパク質;又は、
(6) バシルス・ツリンギエンシス(Bacillus thuringiensis)又はバシルス・セレウス(Bacillus cereus)に由来する第2の分泌タンパク質の存在下において殺虫活性を示す、バシルス・ツリンギエンシス(Bacillus thuringiensis)又はバシルス・セレウス(Bacillus cereus)に由来する分泌タンパク質、例えば、VIP1Aタンパク質とVIP2Aタンパク質で構成されているバイナリートキシン(WO 94/21795);又は、
(7) バシルス・ツリンギエンシス(Bacillus thuringiensis)又はバシルス・セレウス(Bacillus cereus)に由来する種々の分泌タンパク質の一部分を含んでいる殺虫性ハイブリッドタンパク質、例えば、上記(1)のタンパク質のハイブリッド、又は、上記(2)のタンパク質のハイブリッド;又は、
(8) 上記(5)〜(7)のいずれか1つのタンパク質において、標的昆虫種に対するさらに強い殺虫活性を得るために、及び/又は、影響を受ける標的昆虫種の範囲を拡大するために、及び/又は、クローニング若しくは形質転換に際してコード化DNA中に導入された変化(それでも、まだ、殺虫性タンパク質をコードしている)に起因して、幾つかのアミノ酸(特に、1〜10のアミノ酸)が別のアミノ酸で置き換えられていているもの、例えば、ワタイベントCOT102におけるVIP3Aaタンパク質;又は、
(9) バシルス・ツリンギエンシス(Bacillus thuringiensis)に由来する結晶タンパク質の存在下において殺虫活性を示す、バシルス・ツリンギエンシス(Bacillus thuringiensis)又はバシルス・セレウス(Bacillus cereus)に由来する分泌タンパク質、例えば、VIP3とCry1A若しくはCry1Fで構成されているバイナリートキシン(米国特許出願第61/126083号、及び、米国特許出願第61/195019号)、又は、VIP3タンパク質とCry2Aaタンパク質若しくはCry2Abタンパク質若しくはCry2Aeタンパク質で構成されているバイナリートキシン(米国特許出願第12/214,022号、及び、EP−A 2300618);又は、
(10) 上記(9)のタンパク質において、標的昆虫種に対するさらに強い殺虫活性を得るために、及び/又は、影響を受ける標的昆虫種の範囲を拡大するために、及び/又は、クローニング若しくは形質転換に際してコード化DNA中に導入された変化(それでも、まだ、殺虫性タンパク質をコードしている)に起因して、幾つかのアミノ酸(特に、1〜10のアミノ酸)が別のアミノ酸で置き換えられていているもの。
もちろん、「昆虫抵抗性トランスジェニック植物」は、本明細書中で使用されている場合、上記クラス(1)〜(10)のいずれか1つのタンパク質をコードする遺伝子の組合せを含んでいる任意の植物も包含する。一実施形態では、異なった標的昆虫種に対して異なったタンパク質を使用した場合に影響を受ける標的昆虫種の範囲を拡大するために、又は、同一の標的昆虫種に対して殺虫活性を示すが作用機序は異なっている(例えば、当該昆虫体内の異なった受容体結合部位に結合する)異なったタンパク質を用いることによって当該植物に対する昆虫の抵抗性の発達を遅延させるために、昆虫抵抗性植物は、上記クラス(1)〜(10)のいずれか1つのタンパク質をコードする2つ以上の導入遺伝子を含んでいる。
「昆虫抵抗性トランスジェニック植物」は、本明細書中で使用されている場合、さらに、例えばWO 2007/080126、WO 2006/129204、WO 2007/074405、WO 2007/080127及びWO 2007/035650などに記述されているような、植物の害虫に摂取されたときにその害虫の成長を阻害する二本鎖RNAを発現時に産生する配列を含んでいる少なくとも1の導入遺伝子を含んでいる任意の植物も包含する。
本発明に従って同様に処理し得る植物又は植物品種(遺伝子工学などの植物バイオテクノロジー法によって得られたもの)は、非生物的ストレスに対して耐性を示す。そのような植物は、遺伝的形質転換によって得ることができるか、又は、そのようなストレス抵抗性を付与する突然変異を含んでいる植物を選抜することによって得ることができる。特に有用なストレス耐性植物としては、以下のものなどがある:
(1) 植物細胞内又は植物内におけるポリ(ADP−リボース)ポリメラーゼ(PARP)遺伝子の発現及び/又は活性を低減させることが可能な導入遺伝子を含んでいる植物(WO 00/04173、WO /2006/045633、EP−A 1807519又はEP−A 2018431に記述されている);
(2) 植物又は植物細胞のPARGコード化遺伝子の発現及び/又は活性を低減させることが可能なストレス耐性を強化する導入遺伝子を含んでいる植物(例えば、WO 2004/090140などに記述されている);
(3) ニコチンアミダーゼ、ニコチン酸ホスホリボシルトランスフェラーゼ、ニコチン酸モノヌクレオチドアデニルトランスフェラーゼ、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドシンテターゼ又はニコチンアミドホスホリボシルトランスフェラーゼを包含するニコチンアミドアデニンジヌクレオチドサルベージ合成経路の植物機能性酵素(plant−functional enzyme)をコードするストレス耐性を強化する導入遺伝子を含んでいる植物(例えば、EP−A 1794306、WO 2006/133827、WO 2007/107326、EP−A 1999263又はWO 2007/107326などに記述されている)。
本発明に従って同様に処理し得る植物又は植物品種(遺伝子工学などの植物バイオテクノロジー法によって得られたもの)は、収穫された生産物の改変された量、品質及び/若しくは貯蔵安定性、並びに/又は、収穫された生産物の特定の成分の改変された特性を示す。例えば:
(1) 野生型の植物細胞又は植物において合成された澱粉と比較して、その物理化学的特性〔特に、アミロース含有量若しくはアミロース/アミロペクチン比、枝分かれ度、平均鎖長、側鎖分布、粘性挙動、ゲル化強度(gelling strength)、澱粉粒径及び/又は澱粉粒子形態〕が変えられていて、特定の用途により適した変性澱粉を合成するトランスジェニック植物。変性澱粉を合成する該トランスジェニック植物は、例えば、EP−A 0571427、WO 95/04826、EP−A 0719338、WO 96/15248、WO 96/19581、WO 96/27674、WO 97/11188、WO 97/26362、WO 97/32985、WO 97/42328、WO 97/44472、WO 97/45545、WO 98/27212、WO 98/40503、WO 99/58688、WO 99/58690、WO 99/58654、WO 00/08184、WO 00/08185、WO 00/08175、WO 00/28052、WO 00/77229、WO 01/12782、WO 01/12826、WO 02/101059、WO 03/071860、WO 04/056999、WO 05/030942、WO 2005/030941、WO 2005/095632、WO 2005/095617、WO 2005/095619、WO 2005/095618、WO 2005/123927、WO 2006/018319、WO 2006/103107、WO 2006/108702、WO 2007/009823、WO 00/22140、WO 2006/063862、WO 2006/072603、WO 02/034923、WO 2008/017518、WO 2008/080630、WO 2008/080631、EP 07090007.1、WO 2008/090008、WO 01/14569、WO 02/79410、WO 03/33540、WO 2004/078983、WO 01/19975、WO 95/26407、WO 96/34968、WO 98/20145、WO 99/12950、WO 99/66050、WO 99/53072、US 6,734,341、WO 00/11192、WO 98/22604、WO 98/32326、WO 01/98509、WO 01/98509、WO 2005/002359、US 5,824,790、US 6,013,861、WO 94/04693、WO 94/09144、WO 94/11520、WO 95/35026、WO 97/20936、WO 2010/012796、WO 2010/003701に開示されている;
(2) 非澱粉炭水化物ポリマーを合成するか又は遺伝子組換えがなされていない野生型植物と比較して改変された特性を有する非澱粉炭水化物ポリマーを合成するトランスジェニック植物。その例は、ポリ−フルクトース(特に、イヌリン型及びレバン型のポリ−フルクトース)を産生する植物(EP−A 0663956、WO 96/01904、WO 96/21023、WO 98/39460及びWO 99/24593に開示されている)、α−1,4−グルカン類を産生する植物(WO 95/31553、US 2002031826、US 6,284,479、US 5,712,107、WO 97/47806、WO 97/47807、WO 97/47808及びWO 00/14249に開示されている)、α−1,6−分枝 α−1,4−グルカン類を産生する植物(WO 00/73422に開示されている)、及び、アルテルナンを産生する植物(WO 00/47727、WO 00/73422、EP 06077301.7、US 5,908,975及びEP−A 0728213などに開示されている)である;
(3) ヒアルロナンを産生するトランスジェニック植物(例えば、WO 2006/032538、WO 2007/039314、WO 2007/039315、WO 2007/039316、JP−A 2006−304779及びWO 2005/012529などに開示されている)。
(4) トランスジェニック植物又はハイブリッド植物、例えば、「可溶性固形物高含有量」、「低辛味」(LP)及び/又は「長期保存」(LS)などの特性を有するタマネギ(米国特許出願第12/020,360号及び米国特許出願第61/054,026号に記述されている)。
本発明に従って同様に処理し得る植物又は植物品種(遺伝子工学などの植物バイオテクノロジー法によって得ることができるもの)は、改変された繊維特性を有する植物(例えば、ワタ植物)である。そのよう植物は、遺伝的形質転換によって得ることができるか、又は、そのような改変された繊維特性を付与する突然変異を含んでいる植物を選抜することによって得ることができる。そのような植物としては、以下のものなどがある:
(a) 改変された形態のセルロースシンターゼ遺伝子を含んでいる植物(例えば、ワタ植物)(WO 98/00549に記述されている);
(b) 改変された形態のrsw2相同核酸又はrsw3相同核酸を含んでいる植物(例えば、ワタ植物)(WO 2004/053219に記述されている);
(c) スクロースリン酸シンターゼの発現が増大している植物(例えば、ワタ植物)(WO 01/17333に記述されている);
(d) スクロースシンターゼの発現が増大している植物(例えば、ワタ植物)(WO 02/45485に記述されている);
(e) 繊維細胞に基づいた原形質連絡のゲーティングのタイミングが(例えば、繊維選択的β−1,3−グルカナーゼのダウンレギュレーションを介して)改変されている植物(例えば、ワタ植物)(WO 2005/017157に記述されているか、又は、WO 2009/143995に記述されている);
(f) 反応性が(例えば、nodCを包含するN−アセチルグルコサミントランスフェラーゼ遺伝子の発現及びキチンシンターゼ遺伝子の発現を介して)改変されている繊維を有する植物(例えば、ワタ植物)(WO 2006/136351に記述されている)。
本発明に従って同様に処理し得る植物又は植物品種(遺伝子工学などの植物バイオテクノロジー法によって得ることができるもの)は、改変されたオイルプロフィール特性を有する植物(例えば、ナタネ植物又は関連するアブラナ属植物)である。そのよう植物は、遺伝的形質転換によって得ることができるか、又は、そのような改変されたオイルプロフィール特性を付与する突然変異を含んでいる植物を選抜することによって得ることができる。そのような植物としては、以下のものなどがある:
(a) オレイン酸含有量が高いオイルを産生する植物(例えば、ナタネ植物)(例えば、US 5,969,169、US 5,840,946、US 6,323,392又はUS 6,063,947などに記載されている);
(b) リノレン酸含有量が低いオイルを産生する植物(例えば、ナタネ植物)(US 6,270,828、US 6,169,190又はUS 5,965,755に記載されている);
(c) 飽和脂肪酸のレベルが低いオイルを産生する植物(例えば、ナタネ植物)(例えば、US 5,434,283又は米国特許出願第12/668303号などに記載されている)。
本発明に従って同様に処理し得る植物又は植物品種(遺伝子工学などの植物バイオテクノロジー法によって得ることができるもの)は、改変された種子脱粒特性を有する植物(例えば、ナタネ植物又は関連するアブラナ属植物)である。そのよう植物は、遺伝的形質転換によって得ることができるか、又は、そのような改変された種子脱粒特性を付与する突然変異を含んでいる植物を選抜することによって得ることができる。そのような植物としては、種子の脱粒が遅延されているか又は低減されている植物(例えば、ナタネ植物)などがある(米国特許出願第61/135,230号、WO 2009/068313及びWO 2010/006732に記述されている)。
本発明に従って同様に処理し得る植物又は植物品種(遺伝子工学などの植物バイオテクノロジー法によって得ることができるもの)は、翻訳後タンパク質修飾パターンが改変されている植物(例えば、タバコ植物)である(例えば、WO 2010/121818及びWO 2010/145846に記載されている)。
本発明に従って処理し得る特に有用なトランスジェニック植物は、アメリカ合衆国内における規制除外(non−regulated status)についてのアメリカ合衆国農務省(USDA)の動植物検疫局(APHIS)に対する申請の対象である(ここで、そのような申請は、許可されているか又は審理中である)、形質転換イベント又は形質転換イベントの組合せを含んでいる植物である。いつ何時でも、この情報は、APHIS(4700 River Road, Riverdale, MD 20737,USA)から、例えば、そのインターネットサイト(URL http://www.aphis.usda.gov/brs/not_reg.html)において、容易に入手することができる。本出願の出願日においてAPHISが審理中であるか又はAPHISによって許可された規制除外に対する申請は、下記情報を含んでいる申請であった:
− 申請: 当該申請の識別番号。形質転換イベントについての技術的な記述は、APHISから(例えば、APHISのウェブサイトにおいて、該申請番号を参照することによって)入手可能な個々の申請書類の中に見いだすことができる。それらの記述は、参照によって本明細書中に組み入れる。
− 申請の拡張: 拡張が請求されている、先の申請についての言及。
− 会社: 当該申請を提出している事業体の名称。
− 規制物: 関連する植物種。
− トランスジェニック表現型: 形質転換イベントによって植物に付与された形質。
− 形質転換イベント又はライン: 規制除外が請求されている1つ又は複数のイベント(場合により、ラインとも称される)の名称。
− APHIS文書: APHISに請求することが可能な、申請に関してAPHISによって刊行されている種々の文書。
単一の形質転換イベント又は形質転換イベントの組合せを含んでいる特に有用なさらなる植物は、例えば、国又は地域のさまざまな規制機関によるデータベースに記載されている〔例えば、「http://gmoinfo.jrc.it/gmp_browse.aspx」及び「http://www.agbios.com/dbase.php」を参照されたい〕。
本発明に従って処理し得る特に有用なトランスジェニック植物は、下記のものを包含する、形質転換イベント又は形質転換イベントの組合せを含んでいて例えば国又は地域のさまざまな規制機関によるデータベースに記載されている植物である:イベント1143−14A(ワタ、昆虫防除、寄託されていない、WO2006/128569に記載されている);イベント1143−51B(ワタ、昆虫防除、寄託されていない、WO2006/128570に記載されている);イベント1445(ワタ、除草剤耐性、寄託されていない、US−A 2002−120964又はWO02/034946に記載されている);イベント17053(イネ、除草剤耐性、PTA−9843として寄託されている、WO2010/117737に記載されている);イベント17314(イネ、除草剤耐性、PTA−9844として寄託されている、WO2010/117735に記載されている);イベント281−24−236(ワタ、昆虫防除−除草剤耐性、PTA−6233として寄託されている、WO2005/103266又はUS−A 2005−216969に記載されている);イベント3006−210−23(ワタ、昆虫防除−除草剤耐性、PTA−6233として寄託されている、US−A 2007−143876又はWO2005/103266に記載されている);イベント3272(トウモロコシ、品質形質、PTA−9972として寄託されている、WO2006/098952又はUS−A 2006−230473に記載されている);イベント40416(トウモロコシ、昆虫防除−除草剤耐性、ATCC PTA−11508として寄託されている、WO2011/075593に記載されている);イベント43A47(トウモロコシ、昆虫防除−除草剤耐性、ATCC PTA−11509として寄託されている、WO2011/075595に記載されている);イベント5307(トウモロコシ、昆虫防除、ATCC PTA−9561として寄託されている、WO2010/077816に記載されている);イベントASR−368(ベントグラス、除草剤耐性、ATCC PTA−4816として寄託されている、US−A 2006−162007又はWO2004/053062に記載されている);イベントB16(トウモロコシ、除草剤耐性、寄託されていない、US−A 2003−126634に記載されている);イベントBPS−CV127−9(ダイズ、除草剤耐性、NCIMB No.41603として寄託されている、WO2010/080829に記載されている);イベントCE43−67B(ワタ、昆虫防除、DSM ACC2724として寄託されている、US−A 2009−217423又はWO2006/128573に記載されている);イベントCE44−69D(ワタ、昆虫防除、寄託されていない、US−A 2010−0024077に記載されている);イベントCE44−69D(ワタ、昆虫防除、寄託されていない、WO2006/128571に記載されている);イベントCE46−02A(ワタ、昆虫防除、寄託されていない、WO2006/128572に記載されている);イベントCOT102(ワタ、昆虫防除、寄託されていない、US−A 2006−130175又はWO2004/039986に記載されている);イベントCOT202(ワタ、昆虫防除、寄託されていない、US−A 2007−067868又はWO2005/054479に記載されている);イベントCOT203(ワタ、昆虫防除、寄託されていない、WO2005/054480に記載されている);イベントDAS40278(トウモロコシ、除草剤耐性、ATCC PTA−10244として寄託されている、WO2011/022469に記載されている);イベントDAS−59122−7(トウモロコシ、昆虫防除−除草剤耐性、ATCC PTA 11384として寄託されている、US−A 2006−070139に記載されている);イベントDAS−59132(トウモロコシ、昆虫防除−除草剤耐性、寄託されていない、WO2009/100188に記載されている);イベントDAS68416(ダイズ、除草剤耐性、ATCC PTA−10442として寄託されている、WO2011/066384又はWO2011/066360に記載されている);イベントDP−098140−6(トウモロコシ、除草剤耐性、ATCC PTA−8296として寄託されている、US−A 2009−137395又はWO2008/112019に記載されている);イベントDP−305423−1(ダイズ、品質形質、寄託されていない、US−A 2008−312082又はWO2008/054747に記載されている);イベントDP−32138−1(トウモロコシ、ハイブリダイゼーション系、ATCC PTA−9158として寄託されている、US−A 2009−0210970又はWO2009/103049に記載されている);イベントDP−356043−5(ダイズ、除草剤耐性、ATCC PTA−8287として寄託されている、US−A 2010−0184079又はWO2008/002872に記載されている);イベントEE−1(ナス、昆虫防除、寄託されていない、WO2007/091277に記載されている);イベントFI117(トウモロコシ、除草剤耐性、ATCC 209031として寄託されている、US−A 2006−059581又はWO98/044140に記載されている);イベントGA21(トウモロコシ、除草剤耐性、ATCC 209033として寄託されている、US−A 2005−086719又はWO1998/044140に記載されている);イベントGG25(トウモロコシ、除草剤耐性、ATCC 209032として寄託されている、US−A 2005−188434又はWO98/044140に記載されている);イベントGHB119(ワタ、昆虫防除−除草剤耐性、ATCC PTA−8398として寄託されている、WO2008/151780に記載されている);イベントGHB614(ワタ、除草剤耐性、ATCC PTA−6878として寄託されている、US−A 2010−050282又はWO2007/017186に記載されている);イベントGJ11(トウモロコシ、除草剤耐性、ATCC 209030として寄託されている、US−A 2005−188434又はWO98/044140に記載されている);イベントGM RZ13(テンサイ、ウイルス抵抗性、NCIMB−41601として寄託されている、WO2010/076212に記載されている);イベントH7−1(テンサイ、除草剤耐性、NCIMB 41158又はNCIMB 41159として寄託されている、US−A 2004−172669又はWO2004/074492に記載されている);イベントJOPLIN1(コムギ、耐病性、寄託されていない、US−A 2008−064032に記載されている);イベントLL27(ダイズ、除草剤耐性、NCIMB41658として寄託されている、WO2006/108674又はUS−A 2008−320616に記載されている);イベントLL55(ダイズ、除草剤耐性、NCIMB 41660として寄託されている、WO2006/108675又はUS−A 2008−196127に記載されている);イベントLLワタ25(ワタ、除草剤耐性、ATCC PTA−3343として寄託されている、WO03/013224又はUS−A 2003−097687に記載されている);イベントLLRICE06(イネ、除草剤耐性、ATCC−23352として寄託されている、US 6,468,747又はWO00/026345に記載されている);イベントLLRICE601(イネ、除草剤耐性、ATCC PTA−2600として寄託されている、US−A 2008−2289060又はWO00/026356に記載されている);イベントLY038(トウモロコシ、品質形質、ATCC PTA−5623として寄託されている、US−A 2007−028322又はWO2005/061720に記載されている);イベントMIR162(トウモロコシ、昆虫防除、PTA−8166として寄託されている、US−A 2009−300784又はWO2007/142840に記載されている);イベントMIR604(トウモロコシ、昆虫防除、寄託されていない、US−A 2008−167456又はWO2005/103301に記載されている);イベントMON15985(ワタ、昆虫防除、ATCC PTA−2516として寄託されている、US−A 2004−250317又はWO02/100163に記載されている);イベントMON810(トウモロコシ、昆虫防除、寄託されていない、US−A 2002−102582に記載されている);イベントMON863(トウモロコシ、昆虫防除、ATCC PTA−2605として寄託されている、WO2004/011601又はUS−A 2006−095986に記載されている);イベントMON87427(トウモロコシ、授粉制御、ATCC PTA−7899として寄託されている、WO2011/062904に記載されている);イベントMON87460(トウモロコシ、ストレス耐性、ATCC PTA−8910として寄託されている、WO2009/111263又はUS−A 2011−0138504に記載されている);イベントMON87701(ダイズ、昆虫防除、ATCC PTA−8194として寄託されている、US−A 2009−130071又はWO2009/064652に記載されている);イベントMON87705(ダイズ、品質形質−除草剤耐性、ATCC PTA−9241として寄託されている、US−A 2010−0080887又はWO2010/037016に記載されている);イベントMON87708(ダイズ、除草剤耐性、ATCC PTA9670として寄託されている、WO2011/034704に記載されている);イベントMON87754(ダイズ、品質形質、ATCC PTA−9385として寄託されている、WO2010/024976に記載されている);イベントMON87769(ダイズ、品質形質、ATCC PTA−8911として寄託されている、US−A 2011−0067141又はWO2009/102873に記載されている);イベントMON88017(トウモロコシ、昆虫防除−除草剤耐性、ATCC PTA−5582として寄託されている、US−A 2008−028482又はWO2005/059103に記載されている);イベントMON88913(ワタ、除草剤耐性、ATCC PTA−4854として寄託されている、WO2004/072235又はUS−A 2006−059590に記載されている);イベントMON89034(トウモロコシ、昆虫防除、ATCC PTA−7455として寄託されている、WO2007/140256又はUS−A 2008−260932に記載されている);イベントMON89788(ダイズ、除草剤耐性、ATCC PTA−6708として寄託されている、US−A 2006−282915又はWO2006/130436に記載されている);イベントMS11(ナタネ、授粉制御−除草剤耐性、ATCC PTA−850又はPTA−2485として寄託されている、WO01/031042に記載されている);イベントMS8(ナタネ、授粉制御−除草剤耐性、ATCC PTA−730として寄託されている、WO01/041558又はUS−A 2003−188347に記載されている);イベントNK603(トウモロコシ、除草剤耐性、ATCC PTA−2478として寄託されている、US−A 2007−292854に記載されている);イベントPE−7(イネ、昆虫防除、寄託されていない、WO2008/114282に記載されている);イベントRF3(ナタネ、授粉制御−除草剤耐性、ATCC PTA−730として寄託されている
、WO01/041558又はUS−A 2003−188347に記載されている);イベントRT73(ナタネ、除草剤耐性、寄託されていない、WO02/036831又はUS−A 2008−070260に記載されている);イベントT227−1(テンサイ、除草剤耐性、寄託されていない、WO02/44407又はUS−A 2009−265817に記載されている);イベントT25(トウモロコシ、除草剤耐性、寄託されていない、US−A 2001−029014又はWO01/051654に記載されている);イベントT304−40(ワタ、昆虫防除−除草剤耐性、ATCC PTA−8171として寄託されている、US−A 2010−077501又はWO2008/122406に記載されている);イベントT342−142(ワタ、昆虫防除、寄託されていない、WO2006/128568に記載されている);イベントTC1507(トウモロコシ、昆虫防除−除草剤耐性、寄託されていない、US−A 2005−039226又はWO2004/099447に記載されている);イベントVIP1034(トウモロコシ、昆虫防除−除草剤耐性、ATCC PTA−3925として寄託されている、WO03/052073に記載されている)、イベント32316(トウモロコシ、昆虫防除−除草剤耐性、PTA−11507として寄託されている、WO2011/084632に記載されている)、イベント4114(トウモロコシ、昆虫防除−除草剤耐性、PTA−11506として寄託されている、WO2011/084621に記載されている)。
本発明の組成物は、材木の表面又は内部で発生するであろう菌類病に対しても使用することができる。用語「材木(timber)」は、全ての種類の木材、そのような木材を建築用に加工した全てのタイプのもの、例えば、ソリッドウッド、高密度木材、積層木材及び合板などを意味する。本発明による材木の処理方法は、主に、本発明の1種類以上の化合物又は本発明の組成物を接触させることにより行う。これには、例えば、直接的な塗布、噴霧、浸漬、注入、又は、別の適切な任意の方法が包含される。
配列のリスト:
配列識別番号1: ファコプソラ・パキリジ(Phakopsora pachyrhizi)のHXT1タンパク質をコードする遺伝子のヌクレオチド配列
配列識別番号2: ファコプソラ・パキリジ(Phakopsora pachyrhizi)のHXT1タンパク質のアミノ酸配列
配列識別番号3: ウロミセス・ファバエ(Uromyces fabae)のHXT1タンパク質をコードする遺伝子のヌクレオチド配列
配列識別番号4: ウロミセス・ファバエ(Uromyces fabae)のHXT1タンパク質のアミノ酸配列
配列識別番号5: プッシニア・ストリイホルミス(Puccinia striiformis)のHXT1タンパク質をコードする遺伝子のヌクレオチド配列
配列識別番号6: プッシニア・ストリイホルミス(Puccinia striiformis)のHXT1タンパク質のアミノ酸配列
配列識別番号7: プッシニア・グラミニス(Puccinia graminis)のHXT1タンパク質をコードする遺伝子のヌクレオチド配列
配列識別番号8: プッシニア・グラミニス(Puccinia graminis)のHXT1タンパク質のアミノ酸配列
配列識別番号9: プッシニア・トリチシナ(Puccinia triticina)のHXT1タンパク質をコードする遺伝子のヌクレオチド配列
配列識別番号10: プッシニア・トリチシナ(Puccinia triticina)のHXT1タンパク質のアミノ酸配列
本発明のさまざまな態様は、以下の実験的な実施例を用いて、より充分に理解されるであろう。
以下に記載されている全ての方法及び操作は、例として与えられており、同様の結果を達成するために利用可能なさまざまな方法の中で選択されたものに対応する。この選択は、結果の質に対して影響を及ぼすことはなく、従って、当業者は、同様の結果を達成するために、任意の適切な方法を使用することができる。特に、及び、実施例において別途明記されていない限り、使用された全ての組換えDNA技術は、「Sambrook and Russel (2001, Molecular cloning: A laboratory manual, Third edition, Cold Spring Harbor Laboratory Press, NY)」、「Ausubel et al. (1994, Current Protocols in Molecular Biology, Current protocols, USA, Volumes 1 and 2)」及び「Brown (1998, Molecular Biology LabFax, Second edition, Academic Press, UK)」に記載されている標準的なプロトコルに従って実施されている。植物分子生物学に関する標準的な材料及び方法は、「Croy R.D.D. (1993, Plant Molecular Biology LabFax, BIOS Scientific Publications Ltd (UK)」及び「Croy R.D.D. Blackwell Scientific Publications (UK)」に記載されている。PCR(ポリメラーゼ連鎖反応)に関する標準的な材料及び方法についても、「Dieffenbach and Dveksler (1995, PCR Primer: A laboratory manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press, NY)」及び「McPherson et al. (2000, PCR−Basics: From background to bench, First edition, Springer Verlag, Germany)」に記載されている。
実施例
実施例1: ファコプソラ・パキリジ(Phakopsora pachyrhizi)のHXT1遺伝子の確認
HXT1のファコプソラ・パキリジ(Phakopsora pachyrhizi)オルソログを得るために、Linkら「Link et al. (2013, Molecular Plant Pathology, 15: 379−93)」によって生成された注釈付きの吸器トランスクリプトームをヘキソース輸送体オルソログに関して検索した。ヘキソース輸送体の1つの候補「contig_05320」は、ウロミセス・ファバエ(U.fabae)HXT1に対して相同性を示し、並びに、プッシニア・グラミニス f.sp. トリチシ(Puccinia graminis f.sp. Tritici)及びメラムプソラ・ラリシ−ポプリナ(Melampsora larici−populina)に由来するヘキソース輸送体の候補に対しても相同性を示した。ウロミセス・ファバエ(U.fabae)のゲノムデータ(Link et al. 2014, Frontiers in Plant Science, 29; 5:587)を使用するReciprocal BLAST検索によって、「contig_05320」がウロミセス・ファバエ(U.fabae)HXT1に最も近い相同体であることが確認された。
実施例2: VIGSのためのベクターの構成
VIGSを首尾よく実施するためには、宿主植物に対して充分に確立されているウイルスシステムを使用することが必要である。ダイズの場合、Bean Pod Mottle Virus(BPMV)が、VIGS及び外来遺伝子の一過性発現の両方に対して、確立されている(Zhang et al., 2010, Plant Physiology, 153: 52−65)。既に確立されているベクター(BSMV)を使用したPanwarら「Panwar et al.(2013, Plant Molecular Biology, 81: 595−608)」のアプローチと同様に、本発明者らも、VIGSに対してBPMVシステムを適合させることを選択した。
本発明者らのBPMVサイレンシングプラスミドベクターは、小さなコートタンパク質をコードする配列とターミネーター配列の間にBamHIクローニングサイトを含んでいる(図1)。サイレンシング構築物のために、ファコプソラ・パキリジ(P.pachyrhizi)のHXT1遺伝子に対する特異的なプライマーを用いるRT−PCRを感染した植物材料から調製したRNAに対して実施し、そのPCR産物をBamHI部位に挿入した。次いで、プラスミドを、エレクトロポレーションを使用して増幅するために、「E.coli DH5α」に形質転換させる。pBPMVプラスミドへのクローニングは指向性ではないので、挿入の方向について、コロニーPCRを用いて試験する。正しい構築物も、配列決定する。センス方向とアンチセンス方向に挿入断片を有している両方の構築物をサイレンシング実験に使用する。
該BPMVゲノムは、2本のプラス鎖RNAで構成され、そのうちのRNA2をクローニングに使用する。植物に接種するために、粒子衝撃を用いて、BPMV RNA1(感染を増強するためのダイズモザイクウイルス)を含んでいる3つのプラスミド及びサイレンシング構築物をダイズの初生葉に同時に送達する。
粒子衝撃のために、11日齢の実生(初生葉は完全に展開しているが、それ以上の葉は展開していない)を微粒子銃装置(biolistic device)の真空チャンバーの中に移し、葉を茎用のV字型の切り込みがあるプラスチックトレーで支える。葉を、金属網を用いてその重さによって該トレー上で平らにする。本発明者らは、1.0μmの金粒子、1,100−psiの破裂板及び6cmの距離を使用している。そのチャンバーを排気して−25(Hg)とした後、粒子衝撃に付す。その後、植物を湿らせ、100%湿度のもとで一晩維持し、その後、22℃及び明期16時間の標準的な温室条件に置く。
重度にウイルス感染した葉を収穫し、その樹液を、さらなる植物に2回目のなすりつけ接種を施すために使用した。次いで、これらの植物の三つ葉にファコプソラ・パキリジ(P.pachyrhizi)の夏胞子を用いて接種した。
実施例3: HXT1遺伝子の発現レベルの測定
サイレンシング効果を評価するために、初生葉が完全に展開したときに、その初生葉になすりつけることによって、植物にウイルスを接種する。全てのスクリーンに対して、20個体の植物をサイレンシング構築物と一緒に使用し、5個体の植物を空ベクターと一緒に使用し、3個体の植物を非感染対照として使用する。植物は、温室の中で、無作為分布で維持する。第3の三つ葉が完全に展開したら、第2及び第3の三つ葉の小葉にファコプソラ・パキリジ(P.pachyrhizi)の夏胞子を用いて噴霧によって接種する。本発明者らは、2mg/mLの胞子と少量の粉ミルク及び分散をよくするために加えたTween20からなる懸濁液を用いている。植物を湿度100%で24時間暗所に維持し、その後、それらを標準的な温室管理下に戻す。さび病を接種してから5日間経過した後、RNAをqPCR用に調製する。第2又は第3の三つ葉の1枚の小葉を選択し、Agilent(Waldbronn)製の「Plant RNA Isolation Kit」を用いるRNAの調製に100mgの葉材を使用する。RNA濃度は、蛍光定量法を用いて測定する(Qubit 2.0, Thermo Fisher Scientific, Life Technologies, Waltham)。全てのサンプルに関するqPCRは、2反復で測定する。本発明者らが使用するqPCR−化学は、「SensiFast SYBR no−Rox Kit(Bioline GmbH, Luckenwalde)」である。
qPCRの結果は、Pp_RPS14に対して標準化する。全てのサンプルは、最初に別々に評価し、次いで、全ての植物の平均を用いて、サイレンシングが首尾よく実施されたかどうかを決定する。サイレンシング効果の有意性は、標準的なt検定によって決定する。qPCRの結果に関する全ての統計分析は、REST−2009ソフトウェア(Pfaffl 2001, Nucleic Acids Research, 29:e45)を用いて実施する。
残った小葉は、症状評価に使用する。
HXT1遺伝子に関して、低減された転写産物レベル(図2A)及び低減された菌類感染が観察された。感染の10日後に実施した病害の表現型症状評価(「Godoy et al., 2006, Fitopatologia Brasileira 31: 63−68」に記載されているファコプソラ・パキリジ(Phakopsora pachyrhizi)の評価の図式的な尺度に基づく)は、BPMV空ベクターに感染した植物が60%に近い葉症状を示しているのに対して、HXT1サイレンシング構築物を含んでいるBPMVベクターに感染した植物は、僅かに約5%の葉症状しか示さなかった。
それに対して、VIGSについて異なるファコプソラ・パキリジ(P.pachyrhizi)標的遺伝子(SDH1)を用いてアッセイした場合、転写産物レベルは低減されたのにも関わらず、対照(空BPMVベクター)と比較してファコプソラ・パキリジ(P.pachyrhizi)感染の低減は観察されなかった(図2B)。
実施例4: HXT1タンパク質のさび病特異的群の確認
ファコプソラ・パキリジ(P.pachyrhizi)のHXT1タンパク質の配列に基づき、BLAST配列アラインメントツールを使用して、別の種において相同配列を確認した。
これらの相同配列の間の配列同一性の割合(%)が、表1に示されている。
これらの相同HXT1タンパク質は、それら自体の間で、別のクラスのヘキソース輸送体との配列同一性の割合(%)〔これは、Yinら「Yin et al.(2011, MPMI 24: 554−561)」によって確認された提案された「HXT1−相同体」との配列同一性の割合(%)を包含する〕よりも大きな配列同一性の割合(%)を示し、それによって、これらのヘキソース輸送体が別のタイプのヘキソース輸送体とは充分に異なっている相同HXT1タンパク質の群を形成していることを示している。さらに、これらのHXT1タンパク質は、さび病以外の菌類においては相同タンパク質を見いだせず、それによって、この群の相同HXT1タンパク質がさび病に対して特異的であるということを示している。
別の菌類に由来するヘキソース輸送体タンパク質も含んでいる配列アラインメントに基づいて、系統樹を作成した(図3)。アラインメントは、マトリックスBlosumを使用し、ギャップエクステンションを0,05に固定し、及び、ギャップオープンペナルティを10として、ClustalW2上で実施した。該系統樹は、デフォルトパラメータ及び10のブートストラップを使用して、Phyml(Guindon et al. (2010), Systematic Biology, 59(3): 307−21)で作成した。該相同HXT1タンパク質をその系統樹の1本の枝の上にグループ分けし、それによって、さび病種の中でこれらのHXT1タンパク質の多少の特異性を確認した。