JP2018517405A5 - - Google Patents

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Description

インフルエンザA/上海/2/2013 H7配列の改変H7赤血球凝集素糖タンパク質
連邦政府の後援を受けた研究および開発によってなされた発明に対する権利に関する記載
本発明は、米国立衛生研究所(National Institute of Health)によって与えられた認可番号AI082642による米国政府の経済的支援によってなされたものである。米国政府は、本発明に特定の権利を有し得る。
関連出願に対する相互参照
本出願は、米国を指定している、35U.S.C.§371の下で2016年4月15日に出願されたPCT国際特許出願番号PCT/US2016/027935号の国内段階出願であり、2015年5月4日に提出された米国仮特許出願第62/156,718号に対する優先権を主張し、かつ2016年4月15日に提出された米国仮特許出願第62/323,351号に対する優先権を主張するものである。上記出願の全体を本明細書において引用により援用する。
電子提出された配列表の参照
本出願は、ASCIIフォーマットで電子提出された配列表(Sequence Listing)を含んでおり、これによってその全体を引用により援用する。2017年12月11日に作成された前記ASCIIコピーは「SEQUENCE LISTING MODIFIED H7_ST25」という名称であり、20KBバイトのサイズである。
本発明は、インフルエンザA/上海/2/2013 H7配列のH7赤血球凝集素糖タンパク質の配列改変である。
2つの別々に出現したインフルエンザAウイルス(IAV:influenza A viruses)、2009パンデミック(pandemic)H1N1(A(H1N1)pdm09)およびH7N9トリインフルエンザ(H7N9)に対して開発されたワクチンの免疫原性が一致しなかったことから、有効な体液性免疫応答の発達におけるT細胞の役割を評価する機会が提供された。たとえば、A(H1N1)pdm09は感染性が高く、既存の抗体がなかったために出現から12ヵ月以内に200を超える国々に広がったが、A(H1N1)pdm09インフルエンザによる罹患率および死亡率は予想より低かった。これはおそらく、季節性A(H1N1)株に晒されたか、またはそのワクチン接種を受けた個体に既に存在したT細胞応答によるものと考えられる。2013年に中国で出現したH7N9は、それよりもかなり高い致死性を伴った。その致死性およびパンデミックの可能性についての懸念から、H7N9ワクチンの生成が優先され、ワクチンは開発された。
インフルエンザワクチンは、メモリーT細胞に防御免疫を生じさせてアジュバントの不在下で抗体応答を刺激するように要請できる。よって通常、季節性インフルエンザ株に対する防御免疫を生じさせるために、1回のワクチン接種のみが必要とされる。中国のトリ起源H7N9インフルエンザ(これに対する交差反応性体液性免疫は存在しないと推定される)の再出現に対処するために生成された従来の組み換えH7赤血球凝集素ワクチンは、他のサブユニットおよび季節性インフルエンザワクチンと比べて効力が低いことが明らかになった。A(H1N1)pdm09とはまったく対照的に、非アジュバントH7N9ワクチンは抗原性が低く、フェーズI治験における非アジュバントH7N9赤血球凝集素(HA:hemagglutinin)によるワクチン接種の結果として得られた赤血球凝集阻害(HI:hemagglutination inhibition)セロコンバージョン率は、(類似の非アジュバントA(H1N1)pdm09サブユニットワクチンの89%に比べて)わずか6%および15.6%であった。これらのワクチンの治験では、これらのワクチンの抗原性を許容できる基準まで増加させるためにアジュバントの使用を必要としたが、米国の標準的な季節性インフルエンザワクチンにはアジュバントは使用されない。最近のフェーズII治験において、新型ウイルスに対する新たなメモリーTヘルパー細胞を生じさせるために2用量のH7N9ワクチンをアジュバントとともに投与したときですら、対象の59%しかセロコンバージョンしなかった。H7N9に感染したヒトにおけるH7N9に対する中和抗体の発達も、他のIAV感染に対する典型的な免疫応答に比べて遅く、H7N9 HAに対するIgGの結合活性は顕著に低い。他のH7サブタイプの治験において、弱毒H7N1ワクチンは低いHI力価をもたらし、不活性化サブユニットH7N7ワクチンは免疫原性が低かった。
H7 HAは一意に非抗原性であることを示す。2003年のオランダにおけるH7N7の大流行において観察された関連H7 HAに対するヒト抗体応答も、HI力価が減少した。まとめると、これらの研究は、自然感染の状況においてもH7N9感染に対する適応免疫応答は減少および遅延し得ることを示唆するものである。
CD4T細胞は、アイソタイプ転換および親和性成熟を支援してB細胞を助ける。よって、H7 HAに対する抗体応答の減少および遅延は、T細胞の助けが制限または抑制されたことを示唆する。H7N9配列に存在するCD4Tヘルパーエピトープは、他のIAVよりも少ない。エピトープ欠失の類似のパターンは、ヒト宿主に順応した慢性(「ヒット・アンド・ステイ」)のウイルス、たとえばエプスタイン・バーウイルス(EBV:Epstein Barr virus)および単純ヘルペスウイルス(HSV:Herpes simplex virus)などにおいて観察されているが、急性(「ヒット・アンド・ラン」)のウイルスでは観察されていない。エピトープ欠失が介在する免疫エスケープは、ヒト免疫不全ウイルス(HIV:human immunodeficiency virus)およびC型肝炎ウイルス(HCV:hepatitis C virus)に対するウイルス病原性の十分に確立された機構であるが、このエスケープ機構は過去にインフルエンザに対して記載されていない。
H7N9が宿主応答を最小化し得る別の手段は、我々のグループが識別した免疫エスケープの新たな機構である「免疫カムフラージュ」を採用することである。ヒトの配列との高いT細胞受容体(TCR:T cell receptor)「交差保存」を有する病原体に由来するT細胞エピトープは、ヒトゲノムに存在する配列パターンに対してCD4T細胞エピトープのTCRに面するパターンを比較するアルゴリズムであるヤヌスマトリクス(JanusMatrix)(エピバックス(EpiVax)、プロヴィデンス(Providence)、RI、USA)を用いて識別され得る。ヤヌスマトリクスは、生の配列アライメントによって捉えられない抗原認識の態様を考慮する相同性分析ツールである。共生ウイルスは、ヒトへの慢性感染症を確立しないウイルスよりも、これらのヤヌスマトリクスに定められる「ヒト様」T細胞エピトープを有意に多数含有する。
HCVは、自身と高度に交差保存されたエピトープを含み、インビトロで制御性T細胞(Treg:T regulatory cells)を顕著に拡張させる。このペプチドに応答するT細胞はTregに特徴的なマーカーを示し、インビトロでバイスタンダーエフェクターT細胞応答を能動的に抑制する。こうしたエピトープを多く有することを示す慢性疾患ウイルスと、急性疾患病原性ウイルスとのこの著しい相違点は、免疫カムフラージュが、特定のヒト病原体が適応免疫応答をエスケープするための重要な方法であり得ることを示唆する。
新たなインフルエンザ株に含有されるエピトープに特異的な既存のヘテロタイプT細胞メモリーは、アジュバントの必要性をなくし、A(H1N1)pdm09に対して観察されたとおり、単一用量の後に有効な抗体力価が発達することがある(非特許文献1)。A(H1N1)pdm09インフルエンザに対して観察されたとおり、既存の免疫を復活させるT細胞エピトープが複数のウイルスサブタイプに対する保護を助けることがある(非特許文献2)が、宿主配列に似たエピトープは免疫にとって有害であり得る。
大きいエピトープデータベースにおける発表済みのウイルスエピトープの遡及解析において、より大きなヒト交差保存は不在または制御性のT細胞応答に関連していた(非特許文献3)。まとめると、これらの知見は、特定のヒト病原体が重要なヒト制御性T細胞エピトープに似たT細胞エピトープを自身のプロテオームに含むように進化するかもしれないことを示す(「免疫カムフラージュ」)。
H7N9のT細胞エピトーププロファイル(わずかなエフェクターT細胞エピトープおよび多くの交差保存エピトープ)は、「ヒット・アンド・ラン」のウイルスよりも「ヒット・アンド・ステイ」ウイルスの方にかなり近い。ヒトからヒトへのH7N9の感染はまれであるが、このウイルスは「哺乳動物のシグネチャ」を有することが注目されている。限定されたヒトからヒトへの感染の症例が報告されている(非特許文献4)。ヒトからヒトへのH7N9の感染は疑われるよりも頻繁に起こるかもしれないが、抗体の低力価のために検出が困難になっている。H7N9プロテオームにおけるヒト様エピトープの発見は、H7N9の起源および進化ならびにそのヒトまたはその他の哺乳動物における循環期間に関する重要な疑問を提起している。
H7N9ゲノム(2013年4月2日にGISAIDウェブサイトにおいて公的に入手可能となった)を、免疫情報学ツールキットを用いて分析した。この分析は、H7 HAが予想よりも少ないT細胞エピトープを有しており、免疫原性が低いであろうことを示した。
したがって、抗原性を増すためのアジュバントを使用せずに中国のトリ起源H7N9インフルエンザの再出現に対処するための、より効力の高いインフルエンザワクチンがなおも必要とされている。
Greenberg MEら著、N.Engl.J.Med.、361:2405〜13、2009 Laurie KLら著、J.Infect.Dis.、202:1011〜20、2010 He Lら著、BMC Bioinformatics、15:S1、2014 Gao HNら著.、Int.J.Infect.Dis.、29C:254〜8、2014
本発明は、インフルエンザA/上海/2/2013 H7配列のH7赤血球凝集素糖タンパク質の配列改変を提供する(配列番号2)。野生型ウイルスの3つのアミノ酸を変更した結果、免疫原性を損なわずに交差反応性を低くした配列が得られた。さらに、本発明はアジュバントの使用を伴うか、または伴わずにより高い効力を有するワクチンを提供する。
一実施形態において、本発明は、インフルエンザA/上海/2/2013 H7配列の改変H7赤血球凝集素糖タンパク質(配列番号2)をコードする核酸とともに、その核酸を含むベクター、およびさらにそのベクターを含む細胞を提供する。
別の実施形態においては、選択された改変アミノ酸配列の配列番号3、配列番号2の全アミノ酸配列またはその配列番号3を含むフラグメントを含む1つまたはそれ以上のポリペプチドを含む組成物を対象に投与するステップによって、インフルエンザに対するワクチンを接種するための方法が提供される。
さらなる実施形態において、インフルエンザに対するワクチンを接種するための前記方法は、アジュバントを使用する。
別の実施形態において、ワクチンを接種するための方法は、インフルエンザのトリ起源H7N9インフルエンザに対するものである。
さらに別の実施形態において、本発明は、配列番号3のアミノ酸配列または配列番号2の全アミノ酸配列を含む1つまたはそれ以上のポリペプチドを含む組成物を投与するステップを含む、抗H7抗体応答を増強するための方法を提供する。
上記実施形態において、アジュバントが用いられてもよい。
さらなる実施形態において、本発明は、配列番号3のアミノ酸配列を含む1つもしくはそれ以上のポリペプチド、または配列番号2の全アミノ酸配列を含む1つもしくはそれ以上のポリペプチドを含み、さらにアジュバントを含んでもよいキットを含む。
さらに別の実施形態において、選択病原体に対するワクチン抗原の効力を改善するための方法であって、(a)ヒトプロテオームまたはヒトミクロビオームのいずれかに由来するタンパク質とTCRコンタクトを共有する成分T細胞エピトープを識別するステップと、(b)MHC結合を低減させるか、および/または前記標的T細胞エピトープのTCRコンタクトとヒトプロテオームもしくはヒトミクロビオームとの相同性を低減させるように前記T細胞エピトープに対する改変を行うステップであって、ここで前記ワクチン抗原に対して産生された抗体と、関連野生型タンパク質との間の機能的対応があることを条件とする、ステップとを含む、方法が提供される。
前の実施形態の別の態様において、エピトープは制御性T細胞と結合するか、またはエフェクターT細胞と結合できない。
同じ実施形態のさらなる態様は、前記標的T細胞エピトープのアミノ酸配列を異なるT細胞エピトープのアミノ酸配列に置換する改変を提供する。
同じ実施形態のさらに別の拡張において、前記標的T細胞エピトープと、ヒトゲノム、ヒトミクロビオーム、またはそれら両方のいずれかとの相同性を低減させるために改変が行われる。
同じ実施形態のさらなる変更は、前記ワクチン抗原に対して産生された抗体と、関連野生型タンパク質との間の機能的対応が、前記標的T細胞エピトープに対して行われる改変によって妨げられないこと;前記標的T細胞エピトープの置換されたアミノ酸配列は、ワクチン抗原の変異配列に由来すること;前記標的T細胞エピトープの置換されたアミノ酸配列は、前記標的T細胞エピトープと相同であるタンパク質のアミノ酸配列に由来すること;および/または、置換されたアミノ酸配列はワクチン抗原を含む病原体の株もしくはクレードに存在し、かつ改変された前記T細胞エピトープは、前記ワクチン抗原をもたらすウイルスに過去に晒されていない対象におけるメモリーT細胞からの応答を誘導することを提供する。
前の実施形態のさらに他の形において、対象は、過去にワクチン接種または自然感染によって病原体に晒されたヒトの対象である。
同じ実施形態の付加的な要素は、インフルエンザウイルスのHAタンパク質を標的とする抗原を含み、このインフルエンザウイルスはインフルエンザA、インフルエンザB、またはインフルエンザCであってもよく、より特定的にはインフルエンザAおよびその血清型H1N1、H2N2、H3N2、H5N1、H7N7、H1N2、H9N2、H7N2、H7N3、H10N7、またはH7N9であってもよく、最も特定的にはH7N9血清型インフルエンザA/上海/2/2013であってもよい。
本発明のさらなる実施形態は、選択病原体に対するワクチン抗原の効力を改善するための方法であって、(a)前記ワクチン抗原に対して産生された抗体と、その関連野生型タンパク質との間の機能的対応を保存しながらの改変に対する良好な候補であり得るワクチン抗原に見出されるアミノ酸残基を識別するステップと、(b)前記アミノ酸残基をT細胞エピトープと置換することによって前記ワクチン抗原を改変するステップとを含む、方法を提供する。
前の実施形態は、ワクチン抗原の変異配列に由来するT細胞エピトープ;改変された前記ワクチン抗原と相同であるタンパク質のアミノ酸配列に由来する前記T細胞エピトープの挿入アミノ酸配列;ワクチン抗原を含む病原体の別の株またはクレードに見出されるT細胞エピトープを使用してもよく、T細胞エピトープは対象におけるメモリー細胞応答を誘導することが既知である。
最後の実施形態のさらなる変形は、過去にワクチン接種または自然感染によって病原体に晒されたヒトの対象を含む。
加えて同じ実施形態は、インフルエンザウイルスのHAタンパク質を標的とするワクチン抗原を提供してもよく、このインフルエンザウイルスはインフルエンザA、インフルエンザB、またはインフルエンザCであり、より好ましくはインフルエンザAおよびその血清型H1N1、H2N2、H3N2、H5N1、H7N7、H1N2、H9N2、H7N2、H7N3、H10N7、またはH7N9であり、より特定的にはH7N9血清型であり、最も特定的にはインフルエンザA/上海/2/2013である。
本発明の別の実施形態において、インフルエンザAに対するワクチン抗原の効力を改善するための方法が提供され、この方法は(a)前記インフルエンザAの株を取得するステップと、(b)前記インフルエンザAの株に存在する推定T細胞エピトープを識別するステップであって、前記T細胞エピトープは複数のタンパク質とTCRコンタクトを共有し、かつ前記T細胞エピトープは対象における制御性T細胞応答を誘導する、ステップと、(c)前記T細胞エピトープに見出された既存のアミノ酸残基を選択アミノ酸残基と交換することによって、前記インフルエンザAの株の前記推定T細胞エピトープを置換するステップとを含む。
この実施形態は、以下を含むようにさらに狭められてもよい。ヒトタンパク質、ヒトの対象、インフルエンザA/上海/2/2013 H7株において、321番目の位置、322番目の位置、および324番目の位置のアミノ酸残基が交換されたもの、より特定的には321番目の位置のアルギニンがアスパラギンに交換され、322番目の位置のセリンがスレオニンに交換され、324番目の位置のロイシンがリジンに交換されたもの。
本発明の別の実施形態は、病原体に対する改変されたワクチン抗原であり、前記抗原はT細胞メモリー、B細胞メモリー、および前記病原体のタンパク質に特異的な抗体を誘導する。
同じ実施形態の別の態様において、改変病原体はインフルエンザA、インフルエンザB、またはインフルエンザCであり、より特定的にはインフルエンザAおよびその血清型H1N1、H2N2、H3N2、H5N1、H7N7、H1N2、H9N2、H7N2、H7N3、H10N7、またはH7N9であり、さらにより特定的にはH7N9であり、最も特定的にはインフルエンザA/上海/2/2013である。
加えてこの実施形態は、タンパク質がインフルエンザA、より特定的には血清型H7N9、最も特定的にはインフルエンザA/上海/2/2013のH7タンパク質であるように狭められてもよい。
加えて本出願は、インフルエンザ赤血球凝集素(HA)糖タンパク質を生成するためのプロセスに向けられており、このプロセスは(a)C末端に6x Hisタグを有するウイルス株をコードする1つまたはそれ以上のcDNAを合成するステップと、(b)前記cDNAを発現ベクターのクローニング部位に挿入するステップと、(c)前記ベクターを細胞にトランスフェクトするステップとを含み、前記細胞は昆虫細胞、より特定的にはSf21(ヨトウガ(Spodoptera frugiperda))細胞である。
請求されるプロセスのより好ましいバージョンにおいて、赤血球凝集素はA125T突然変異を有する。
さらにより好ましいプロセスにおいては、cDNAはOpt_1 H7/安徽(Anhui)rHAおよび/またはWT H7/安徽rHAの1から560のアミノ酸残基をコードし、pBacPAK8発現ベクターのクローニング部位はXho I/Not Iクローニング部位である。
加えて本出願は、(a)2匹またはそれ以上の免疫不全マウスに再構成されたヒト末梢血単核細胞を移植するステップと、(b)マウスの半分に改変インフルエンザ赤血球凝集素糖タンパク質のワクチンを接種し、残りのマウスに非改変対照インフルエンザ赤血球凝集素糖タンパク質のワクチンを接種するステップと、(c)マウスから血清サンプルを集めるステップと、(d)酵素結合免疫吸着(ELISA:enzyme−linked immunosorbent)アッセイおよび/または酵素結合免疫スポット(ELISPOT:enzyme−linked immunospot)アッセイにおけるコーティング抗原として、組み換えインフルエンザ赤血球凝集素(HA)糖タンパク質を用いるステップと、(e)集められた血清サンプルをアッセイに導入するステップと、(f)サンプル中の抗HA IgG抗体の量を測定するステップと、(g)抗HA IgG力価を算出するステップとによって、前記改変インフルエンザ赤血球凝集素糖タンパク質の免疫原性を決定する方法を請求する。
改変インフルエンザ赤血球凝集素の免疫原性を決定する方法は、好ましくはNOD/scid/Jak3−/−マウス、健康なドナーのヘパリン処置された血液から新たに単離されたヒト末梢血単核細胞、ならびに改変非アジュバントOpt_1 H7/安徽rHAワクチン接種マウス、および非改変非アジュバントWT H7/安徽rHAワクチン接種マウスを用いることによって変更されてもよい。
最近の季節性インフルエンザA株HAタンパク質に対するH7−HAの抗原性の可能性を比較するEpiMatrix免疫原性スケールを示す図である。 改変H7赤血球凝集素(配列番号2)の完全配列を示す図である。下線を付けた配列(1)は、改変クラスタ321(配列番号)である。 インフルエンザA/上海/2/2013 H7(配列番号4)の完全配列を示す図である。下線を付けた配列(2)は、改変のために識別されたT細胞エピトープクラスタ(配列番号5)である。 インフルエンザA/上海/2/2013 H7エピトープクラスタ321(配列番号5)のEpiMatrix分析を示す図である。結果を、CPRYVKQRS(配列番号7)、PRYVKQRSL(配列番号8)、RYVKQRSLL(配列番号9)、YVKQRSLLL(配列番号10)、VKQRSLLLA(配列番号11)、KQRSLLLAT(配列番号12)、QRSLLLATG(配列番号13)、RSLLLATGM(配列番号14)、SLLLATGMK(配列番号15)、LLLATGMKN(配列番号16)、LLATGMKNV(配列番号17)、LATGMKNVP(配列番号18)、ATGMKNVPE(配列番号19)について示す。 インフルエンザA/上海/2/2013 H7のエピトープクラスタ321のヤヌスマトリクス分析ヒトエピトープネットワークを示す図である。 エピバックスMOD1 H7赤血球凝集素(配列番号2)に対するインフルエンザA/上海/2/2013 H7(配列番号4)のクラスタ321(配列番号5)に対する改変(配列番号6)を示す図である。結果を、CPRYVKQNT(配列番号20)、PRYVKQNTL(配列番号21)、RYVKQNTLK(配列番号22)、YVKQNTLKL(配列番号23)、VKQNTLKLA(配列番号24)、KQNTLKLAT(配列番号25)、QNTLKLATG(配列番号26)、NTLKLATGM(配列番号27)、TLKLATGMK(配列番号28)、LKLATGMKN(配列番号29)、KLATGMKNV(配列番号30)、LATGMKNVP(配列番号18)、ATGMKNVPE(配列番号19)について示す。 インフルエンザA/上海/2/2013 H7(配列番号3)の改変エピトープクラスタ321のEpiMatrix分析を示す図である。 改変インフルエンザA/上海/2/2013 H7エピトープクラスタ321のヤヌスマトリクス分析ヒトエピトープネットワークを示す図である。 組み換えエピバックスOpt1 H7赤血球凝集素ワクチンの免疫原性をテストするために用いられるマウスモデルを示す図である。 サイトスケープ(Cytoscape)ネットワークで視覚化した、ヒトゲノムとのヒト配列交差保存に対してヤヌスマトリクスで分析した異なるカテゴリのペプチドを示す図である。図10Aは、H7以外のIAV株、すなわちA(H1N1)、A(H3N2)、およびA(H5N1)の、免疫優性および高度に保存されたHAエピトープの変異体を表すペプチドを示す。各ペプチドをダイヤモンド形で表す。ソースペプチドに含まれるHLA結合9量体フレームを四角形として示す。各9量体フレームに対して、類似のHLA結合親和性および同一のTCRに面する残基を有するヒト9量体を三角形として示し、それらが由来するヒトタンパク質を円形として示す。 サイトスケープ(Cytoscape)ネットワークで視覚化した、ヒトゲノムとのヒト配列交差保存に対してヤヌスマトリクスで分析した異なるカテゴリのペプチドを示す図である。図10Bは、ヒトゲノムとのTCR交差保存によって順序付けたH7H9 ICSペプチドを示す。各ペプチドをダイヤモンド形で表す。ソースペプチドに含まれるHLA結合9量体フレームを四角形として示す。各9量体フレームに対して、類似のHLA結合親和性および同一のTCRに面する残基を有するヒト9量体を三角形として示し、それらが由来するヒトタンパク質を円形として示す。 サイトスケープ(Cytoscape)ネットワークで視覚化した、ヒトゲノムとのヒト配列交差保存に対してヤヌスマトリクスで分析した異なるカテゴリのペプチドを示す図である。図10Cは、図10Bに示した選択されたH7H9 ICSペプチドのヒト類似体を示す。各ペプチドをダイヤモンド形で表す。ソースペプチドに含まれるHLA結合9量体フレームを四角形として示す。各9量体フレームに対して、類似のHLA結合親和性および同一のTCRに面する残基を有するヒト9量体を三角形として示し、それらが由来するヒトタンパク質を円形として示す。 免疫情報学的予測とインビトロのHLA結合との比較を示す図である。各ペプチドに対するHLAクラスII結合の結果を、対応するHLA対立因子に対するそのEpiMatrixZスコアと比較した。真陽性(黒色)のバーは、正しく予測されたHLA結合ペプチドの結果を反映する。偽陽性(灰色)のバーは、誤って予測されたHLA結合ペプチドの結果を反映する。偽陰性(白色)のバーは、誤って予測された非結合ペプチドの結果を反映した。 図12Aおよび図12Bは、個々のH7N9ペプチドおよび対照に対するヒトIFNγ応答を示す図である。図12Aは、ドナー(n=18)の個別(円形)および平均(バー)のSIを示すチャートである。ヤヌスマトリクス・デルタによって測定された、ヒトゲノムのペプチドとの予測される交差保存の程度に従って、チャート上にH7N9ペプチドを配置している。図12Bは、SIによって測定された、18人の健康なドナーにおける各ペプチドへの平均応答を、自身との交差保存の尺度であるヤヌスマトリクス・デルタと負の相関をさせてプロットしたグラフである。 プールされたH7N9ペプチドに対するヒトIFNγ応答のグラフを示す図である。 図14Aおよび図14Bは、H7N9からのヒト様ペプチドによって誘導されるTreg細胞の拡張を示す図である。図14Aについては、ゲーティング戦略は生CD3リンパ球に基づくものであり、次いでCD4対FoxP3に対して分析した。図14Bについては、単一の対象に対する代表的な結果をドットプロットで示しており、3人の対象に対する平均を下のチャートに示している。p<0.01。 図15A〜15Cは、季節性インフルエンザ免疫優性HAエピトープのH7相同体の抑制的活性を表すさまざまなグラフの図である。免疫優性HAエピトープのH7N9変異体であるペプチドH7N9−13は、他のペプチドと同時投与されたときにT細胞応答の低減に関連した。H7N9ペプチドのプールに対する健康なドナーのELISpot応答は、H7N9−13の存在下で有意に減少した(n=7)(図15A)が、ヒトとの類似が少ないペプチドであるH7N9−9では減少しなかった(n=4)(図15B)。H7N9−13は、循環するIAV株の他の免疫優性HAペプチドに対する応答を抑制できた(n=2)(図15C)。*p<0.05。**p<0.01。 HLA DR3トランスジェニックマウスにおいてOpt1 H7N9 VLPワクチンによって刺激されたHAI抗体の保護レベルを示す図である。 Opt1 H7に対するヒトポリクローナル抗体活性をグラフで示す図である。 図18A〜Bは、野生型組み換えH7またはエピバックスOpt1組み換えH7によって免疫化したマウスにおける、免疫化の10日後の抗H7 IgG抗体応答のレベルについて報告する図である。A/安徽/1/2013インフルエンザウイルス株のエピバックス改変H7赤血球凝集素糖タンパク質(Opt_1 H7/安徽rHA)は、野性型組み換えH7と比べて抗H7 IgG抗体応答の増加を誘導し(図18A)、平均5倍高い抗H7抗体力価を誘導した(図18B)。 図19A〜Bは、野生型組み換えH7またはエピバックスOpt1組み換えH7によって免疫化したマウスにおける、免疫化の10日後の抗H7 IgG ELISpot応答のレベルを、マウス当りの形質細胞の数によってグラフで示す図である。A/安徽/1/2013インフルエンザウイルス株のエピバックス改変H7赤血球凝集素糖タンパク質(Opt_1 H7/安徽rHA)は、非改変WT H7/安徽rHAタンパク質で免疫化したテスト対象に比べて抗H7形質細胞数の増加(図19A)および20倍多い数の抗H7形質細胞(図19B)を誘導した。 乱交雑インフルエンザエピトープのEpiBarおよびEpiMatrix分析を含む免疫原性インフルエンザHAペプチドの例を示す。インフルエンザHAペプチドのスコアはEpiMatrixにおいて8つの対立因子すべてに対して極度に高く、そのクラスタスコアは22である。10のクラスタスコアは有意とみなされる。帯状のEpiBarパターンは、乱交雑エピトープの特徴である。結果を、PRYVKQNTL(配列番号21)、RYVKQNTLK(配列番号22)、YVKQNTLKL(配列番号23)、VKQNTLKLA(配列番号24)およびKQNTLKLAT(配列番号25)について示す。Zスコアは9量体フレームが所与のHLA対立因子に結合する可能性を示す。上位5%のすべてのスコアを「ヒット」とみなし、簡略化のため、10%未満の非ヒット(*)は図20においてマスクされる。 ヤヌスマトリクスアルゴリズムは、MHCに面するアグレトープおよびTCRに面するエピトープの両方のアミノ酸含有量をどのように考慮したかを示す。示したように、各MHCリガンドは2つの面を有する。すなわち、MHC結合面(アグレトープ、MHC/HLAに対して下向きの矢印のアミノ酸残基)、およびTCR相互作用面(エピトープ、TCRに対して上向きの矢印のアミノ酸残基)である。
本明細書において開示されるのは、H7赤血球凝集素(hemagluttinin)の改変配列である(図2)。この配列改変は、インフルエンザA/上海/2/2013 H7クラスタ321に対する3アミノ酸の変更である(図6)。このクラスタは改変のための免疫情報学的分析によって、予測されたT細胞エピトープ含有量、およびヒトタンパク質に対する交差反応性の予測が高いことから選択された(図4および図5)。この3アミノ酸の変更によって、著しく低いヒト交差保存を有する配列が生じ(図6および図8)、一方でHLA結合の可能性は保持される(図7)。
EpiMatrixツールキット(エピバックス、プロヴィデンス、RI、USA)を用いた、最近の季節性インフルエンザA株HAタンパク質に対するH7 HAの免疫原性の可能性の比較では、H7 HAタンパク質に対する免疫原性の非常に低い可能性が予測された。加えてこの分析は、T細胞受容体(TCR)に面する残基において、ヒトゲノム中のT細胞エピトープとの高度の交差保存を有する主要H7N9 HAエピトープを識別した。
最初の公的に入手可能な(GISAID http://platform.gisaid.org/)インフルエンザA/上海/2/2013 H7の配列(図3)に対して、免疫情報学を用いた。この分析は、図3の下線を付けた配列(2)のH7クラスタ321を改変の標的として識別した。EpiMatrixクラスタ分析は、H7クラスタ321が8つの主要なMHCクラスIIスーパータイプの間で高度に保存されることを予測した(図4)。クラスタ321に対するヤヌスマトリクス分析(エピバックス、プロヴィデンス、RI、USA)は、クラスタ321がT細胞受容体に面する残基において、ヒトゲノム中のT細胞エピトープとの高度の交差保存を有することを予測した。ヤヌスマトリクスヒトエピトープネットワーク(図5)は、このエピトープを星形の中心の四角形として示しており、その記号からの各々の伸長は、H7クラスタに対する交差反応性を有するヒトタンパク質配列を表す。
A/上海/2/2013 H7クラスタ321エピトープに対して、3つの配列変更が行われた(図6)。これらの変更は、インフルエンザの古典的H3エピトープCPRYVKQNTLKLAT(配列番号1)に対する同一性を有する配列を導入した。図6に示されるとおり、位置321(1)のアミノ酸がアルギニンからアスパラギンに変更され、位置322(2)はセリンからスレオニンに変更され、位置324(3)はロイシンからリジンに変更された。H7赤血球凝集素の完全な改変配列は図2に提供されており、改変クラスタ321は下線付きの配列(1)として示される。
改変クラスタのEpiMatrix分析は、A/上海/2/2013 H7のクラスタ321に対する3つの単一のアミノ酸改変が、エピトープ含有量または8つの主要なMHCクラスIIスーパータイプのクラスタの保存を変更しないことを示す(図7)。
図8のヤヌスマトリクス分析エピトープネットワーク図に示されるとおり、A/上海/2/2013 H7のクラスタ321に対する3つの単一の配列改変は、T細胞受容体に面する残基のヒトゲノム中のT細胞エピトープとの交差保存を低減した。
ヤヌスマトリクスツール(エピバックス、プロヴィデンス、RI、USA)を用いて、ヒトタンパク質の複数の予測HLAリガンドと交差保存されたH7N9のエピトープを識別した。HCVにおけるヒト様Tregエピトープの発見に基づき(Losikoff PTら、J.Hepatol.、pii:S0168−8278(14)00613〜8、2014)、H7N9における同様に交差保存されたエピトープは、H7N9に対する適応免疫の減弱の原因となる可能性があることを見出した。H7N9インフルエンザT細胞エピトープペプチドに対するH7N9ナイーブ対象のPBMCの応答を評価し、それらのTCR面におけるヒトゲノムとの交差保存の程度と逆相関することを見出した(図12B)。
Tregは、インビトロでヒト様H7エピトープとの共培養において拡張することを発見した(図14Aおよび図14B)。バイスタンダー抑制アッセイにおける拡張Tregの機能を学んだ(図15A〜15C)。ヒト様H7N9エピトープに応答するTreg細胞の正確な起源をなおも定める必要があり(胸腺由来の天然Tregまたは誘導された末梢Treg)、ワクチン開発に対する関連は明瞭である。H7N9感染において報告されているとおり(Guo Lら、Emerg.Infect.Dis.、20:192〜200、2013)、自然感染またはH7N9 HAを用いた非アジュバントワクチン接種の状況において、Treg応答はこれらのエピトープによって誘導され、体液性免疫応答は減少および遅延するかもしれない。
TCR−HLA−II−ペプチド相互作用のレベルでヤヌスマトリクスを用いると、位置2、3、5、7、および8のアミノ酸を、同じHLAによって制限されることが予測されるペプチドの組における相同エピトープを識別するために用いられる「TCRに面する」ものと指定することを支持する証拠が存在する。加えて、中央の結合溝の外側、特にN末端に位置するクラスII HLAリガンド内のいくつかの位置に対する役割がある。
他のヒト病原体またはヒト共生生物に由来するエピトープとのTCR交差保存の影響を評価することなく、選択されたH7N9 ICSペプチドと交差保存されたヒト由来ペプチドに対する「類似体」を比較するために、ヤヌスマトリクスを用いた。クラスI HLA制限エピトープに焦点を合わせて、ウイルス感染の範囲における免疫調節(「異種免疫」と名付けられる)に対する証拠が公知である。加えて、ヒトミクロビオームと交差保存されたエピトープが記載されており、これはT細胞反応性に寄与し得る(Su LFら、Immunity、38:373〜83、2013)。
ヒトゲノム対ヒトミクロビオーム交差保存の比率は、エフェクターではなく制御性T細胞応答に関連することが報告されている(Moise Lら.、Hum.Vaccin.Immunother.、9:1577〜86、2013)。エフェクターT細胞応答の大きさと有意に相関したヤヌスマトリクス・デルタのスコア(図12B)を用いた。
未露出ドナーのPBMCを用いた再刺激アッセイにおけるT細胞応答を分析した。ナイーブドナーのインビトロ調査は、観察される応答がH7N9未露出のヒト対象のワクチン接種または感染後に生じ得る応答を代表し得るため、関連するものと定めた。
ヒト宿主との高度な交差保存を有するH7N9インフルエンザT細胞エピトープは、自身との交差保存が低いエピトープとは対照的に、インビトロでTregを拡張でき、他のH7N9ペプチドと共インキュベートされたときにPBMCにおけるIFNγ分泌を低減できる(図14A、図14Bおよび図15A〜C)。Tヘルパーエピトープとヒトプロテオームのエピトープ配列との交差保存は、ウイルス病原体に対する免疫応答の重要なモジュレーターである。
請求されるヒト様エピトープによるTおよびB細胞応答の調節は、ワクチン接種および感染におけるH7N9 HAに対する中和抗体の力価および親和性を低減させる。H7N9ワクチンを開発するために現在使用される従来のアプローチの成功に対する障壁を提示することに加え、ヒト病原体がヒトの免疫防御をエスケープまたは調節する機構のリストには「免疫カムフラージュ」が加えられ得る。
EpiMatrix(エピバックス、プロヴィデンス、RI、USA)を用いて、H7N9の免疫原性の可能性を評価した。他のインフルエンザ株に見出される類似のエピトープよりもヒト配列との交差保存が多いいくつかのH7N9 CD4T細胞エピトープを識別した(図10)。A(H3N2)およびA(H1N1)の免疫優性エピトープと配列の場所が対応するH7 HA配列は、TCRに面する位置に、HLA−DR提示の状況における自己抗原との類似を増加させる突然変異を有する。H7N9ワクチン効力を低減させて、より低い力価、より低い親和性の抗体の開発に寄与するために、ヒト様H7N9エピトープを予測した。ナイーブなヒトドナーの末梢血単核細胞(PBMC:peripheral blood mononuclear cells)を用いてインビトロT細胞アッセイを行い、ヒトゲノムと交差保存されたH7N9クラスII制限T細胞エピトープに応答する細胞の表現型および機能を調べ、これらのペプチドに対する応答と、ヒトタンパク質に由来する対応ペプチドおよびH7N9における交差保存の低いペプチドに対する応答とを比較した。H7N9タンパク質配列に含まれる高度に交差保存されたエピトープは低い免疫原性を示し、機能性Tregを刺激し、これはH7N9ワクチンおよびウイルス免疫病原性に対する顕著な意味を有する発見である(図12A、図12B、図13、図14A、図14B、および図15A〜15C)。
定義
本明細書において用いられる「アジュバント」という用語は、ワクチンの効果を助けて増強する物質を示す。
本明細書において用いられる「アミノ酸配列」という用語は、アミノ酸がペプチド鎖を形成するように連結する、すなわちペプチド結合によってともに連結される順序を示す。
本明細書において用いられる「抗体」という用語(「免疫グロブリン」としても公知である)は、形質細胞によって生成されて、たとえばウイルスなどの外来物体を識別および中和するために免疫系によって用いられるタンパク質を示す。
本明細書において用いられる「産生された抗体」という用語は、病原体に感染したか、またはワクチン接種を受けた対象の形質細胞によって生成された抗体を示す。
本明細書において用いられる「抗原」という用語は、免疫系が外来または危険であると認知した物質を示す。
本明細書において用いられる「クレード」という用語は、祖先およびそのすべての子孫からなる生活形群を示す。
本明細書において用いられる「エフェクターT細胞(単数または複数)」という用語は、特異的免疫応答を開始できる(細胞傷害性T細胞としての)形態に分化するために誘導された1つまたはそれ以上の(T細胞としての)リンパ球を示し、エフェクターリンパ球とも呼ばれる。
本明細書において用いられる「相同性」(または「相同性(複数)」)という用語は、同じ種または異なる種の有機体間でのタンパク質または核酸の配列の類似性を示す。
本明細書において用いられる「ヒトミクロビオーム」という用語は、ヒトの身体の内側または上で生きることのできる微生物の集合体を示す。
本明細書において用いられる「ヒトプロテオーム」という用語は、特定のときにヒトのゲノム、細胞、組織、または有機体によって発現されるタンパク質全体の組を示す。より特定的には、ヒトプロテオームとは定義された条件下で所与の時間に所与のタイプの細胞または有機体において発現されるヒトタンパク質の組である。
本明細書において用いられる「応答を誘導する」(または「応答(複数)を誘導する」)という用語は、ある実体が別の実体を機能させる能力を示す。
本明細書において用いられる「cDNA」という用語は「相補(complementary)DNA」を示し、これは逆転写酵素という酵素の反応によって特定のRNAから転写された合成DNAである。
本明細書において集合的に用いられる「トランスフェクト」または「トランスフェクトする」または「トランスフェクション」という用語は、核酸を標的細胞に計画的に導入するプロセスを示す。
本明細書において用いられる「ベクター」という用語は、遺伝子材料を標的細胞に移すために用いられる媒体を示し、「クローニング部位」とはDNAフラグメントのコピーを作製できるベクターの部分である。
本明細書において用いられる「Opt_1」という用語は、意図的に改変されたバージョンを示す。
本明細書において用いられる「WT」という用語は、「野生型(wild type)」バージョンすなわち天然に見出されるバージョンを示す。
本明細書において用いられるインフルエンザウイルスとは、6つの属、すなわちインフルエンザウイルスA、インフルエンザウイルスB、インフルエンザウイルスC、イサウイルス、ソゴトウイルス、およびクアランジャウイルスを含むRNAウイルスのファミリーを示す。最初の3つの属は、トリ(トリインフルエンザも参照)、ヒト、およびその他の哺乳動物を含む脊椎動物においてインフルエンザを引き起こすウイルスを含む。イサウイルスはサケに感染し、ソゴトウイルスは脊椎動物ならびにたとえばマダニおよびカなどの無脊椎動物に感染する。核タンパク質およびマトリックスタンパク質の抗原の相違によって識別される3つの属のインフルエンザウイルスは、次の脊椎動物に感染する。インフルエンザウイルスAはヒト、その他の哺乳動物、およびトリに感染し、すべてのインフルエンザのパンデミックを引き起こす。インフルエンザウイルスBは、ヒトおよびアザラシに感染する。インフルエンザウイルスCはヒト、ブタ、およびイヌに感染する。
本明細書において用いられる「メモリーB細胞(単数または複数)」という用語は、再感染の場合の加速した、より頑強な抗体介在免疫応答(二次免疫応答としても公知である)の生成に重要な、一次感染後に胚中心内で形成される1つまたはそれ以上のB細胞サブタイプを示す。
本明細書において用いられる「メモリーT細胞」という用語は、過去に自身の同族抗原に遭遇して応答した感染およびおそらくは感染と戦ったT細胞(Tリンパ球としても公知である)の部分集合を示す。
本明細書において用いられる「自然感染」という用語は、通常体内に存在しないたとえば細菌、ウイルス、および寄生生物などの微生物の侵入および増殖を示す。感染は症状を引き起こさず無症状性のこともあるし、症状を引き起こして臨床的に明白となることもある。感染は局在化したままのこともあるし、血管またはリンパ管を通じて広がって全身性(身体全体)になることもある。侵入する微生物は意図的に、すなわち注射によって宿主に導入されたのではなく、たとえば呼吸または摂食などの自然な身体の機能の結果として、たとえば眼、外耳道、口、鼻腔および肺、および尿道などの通常の露出範囲、またはたとえば切り傷、引っ掻き傷、もしくはその他の擦過傷などの開放創を介して入る。
本明細書において用いられる「核酸」という用語は、生細胞に存在する複雑な有機物質、特にDNAまたはRNAを示し、それらの分子は連結されて長鎖になった多くのヌクレオチドからなる。
本明細書において用いられる「病原体」という用語は、疾患を引き起こし得る細菌、ウイルス、またはその他の微生物を示す。
本明細書において用いられる「ポリペプチド」という用語は、ともに結合されて鎖となり、タンパク質分子の一部(または全部)を形成する多数のアミノ酸残基からなる直鎖有機ポリマーを示す。
本明細書においてアミノ酸配列を示すときに用いられる「位置」という用語は、アミノ酸の配列において特定のアミノ酸残基が見出され得る場所を示す。たとえば、あるアミノ酸がポリペプチドの最初の位置にあると述べるとき、それは前記ポリペプチドのN末端に位置する始まりのアミノ酸であることを示す。
本明細書においてワクチンを考察するときに用いられる「に対して産生された」という用語は、病原体に感染したか、または抗原のワクチン接種を受けた対象の形質細胞によって生成された抗体を示す。
本明細書において用いられる「制御性T細胞(「Tregs」とも呼ばれ、以前は「サプレッサーT細胞」として公知であった)」という用語は、免疫系を調節し、自己抗原に対する耐性を維持し、自己免疫疾患を抑止するT細胞の部分母集団を示す。これらの細胞は一般的に、エフェクターT細胞の誘導および増殖を抑制またはダウンレギュレートする。
本明細書において用いられる「選択アミノ酸残基」という用語は、所与のポリペプチドの特定のアミノ酸残基を置換するように、アミノ酸が有する特定の特性および生理化学的特質に対して発明者が注意深く選択したアミノ酸を示す。
本明細書において用いられる「血清型」という用語は、細菌またはウイルスの種の中の別個のバリエーションを示す。
本明細書において用いられる「株」という用語は、微生物(例、ウイルスまたは細菌または真菌)の遺伝学的サブタイプを示す。
本明細書において用いられる「T細胞エピトープ(抗原決定因子としても公知である)」という用語は、免疫系、特定的にはT細胞によって認識される抗原の部分を示す。
本明細書において用いられる「ワクチン接種」という用語は、病原体に対する適応免疫を発達させるために個体の免疫系を刺激するための抗原材料の投与を示す。
本明細書において用いられる「ワクチン」という用語は、メモリーT細胞および抗体の生成を刺激して、1つまたはいくつかの疾患に対する免疫を提供するために用いられる物質を示し、ワクチンは、疾患を誘導することなく抗原として作用するように処理された疾患の原因媒介物、その生成物、または合成代用物から調製される。
本明細書において用いられる「変形物(変異体)」という用語は、あるものの形態またはバージョンであって、同じものの他の形態または標準とは何らかの点で異なるものを示す。
本明細書において用いられる「野生型」という用語は、ある種の自然に発生する典型的な形態の表現型を示す。
本明細書において用いられる略語は、次のとおりに定義される。
APC 抗原提示細胞(antigen presenting cell)
CEFT サイトメガロウイルス(HCMV)、エプスタイン・バーウイルス、インフルエンザウイルス、破傷風トキソイドウイルス(Cyto−megalovirus(HCMV)、Epstein−Barr virus、Flu viruses、Tetanus toxoid virus)
DMSO ジメチルスルホキシド(dimethyl sulfoxide)
DPBS ダルベッコリン酸緩衝食塩水(Dulbecco’s Phosphate−Buffered Saline)
HBSS ハンクス平衡塩類溶液(Hank’s Balanced Salt Solution)
HLA ヒト白血球抗原(human leukocyte antigen)
HPLC 高速液体クロマトグラフィー(high performance liquid chromatography)
IAV インフルエンザAウイルス
ICS 免疫原性コンセンサス配列(immunogenic consensus sequences)
MHC 主要組織適合複合体(major histocompatibility complex)
PBMC 末梢血単核細胞
PHA フィトヘマグルチニン(phytohaemagglutinin)
TCR T細胞受容体
Treg 制御性T細胞
TRF 時間分解蛍光(time resolved fluorescence)
本明細書において用いられる「および/または」という用語は、一方または他方または両方を有する可能性と定義される。たとえば「Aおよび/またはB」は、Aのみ、またはBのみ、またはAとBとの組み合わせを有するシナリオを提供する。請求項がAおよび/またはBおよび/またはCと読めるとき、その構成はAのみ、Bのみ、Cのみ、C以外のAおよびB、A以外のBおよびC、B以外のAおよびC、またはA、BおよびCの3つすべてを構成要素として含んでもよい。
A/上海/2/2013 H7のインシリコ分析
EpiMatrixシステム(エピバックス、プロヴィデンス、RI、USA)を用いて、全体的および局所的の両方の免疫原性の可能性に対して、H7N9インフルエンザのアミノ酸配列を分析した。識別された推定エピトープクラスタを、GenBank(登録商標)(米国立衛生研究所(National Institutes of Health)、ベセスダ(Bethesda)、MD、USA)より入手可能な非冗長タンパク質データベースと、ラホーヤアレルギー免疫研究所(La Jolla Institute for Allergy and Immunology)(ラホーヤ(La Jolla)、CA、USA)の免疫エピトープデータベースと、エピバックス社(エピバックス、プロヴィデンス、RI、USA)が維持する公知のMHCリガンドおよびT細胞エピトープのデータベースとに対してさらにスクリーニングした。
全体的免疫原性の評価−A/上海/2/2013 H7のクラスII
入力配列を重複する9量体のフレームにパーズし、多くの付加的な「ファミリーメンバー」対立因子と機能的に同等またはほぼ同等な8つの一般的クラスII対立因子、すなわち「スーパータイプ」のパネルに関して、各フレームを評価した。8つのスーパータイプ対立因子と、それぞれのファミリーメンバーとは、ヒト母集団の98%をはるかに超える部分を「包含」する(Southwood、Sら.、J.Immunol.、160(7):3363〜73、1998)。各々のフレームの対立因子による「評価」で、HLA結合親和性を予測した。EpiMatrixシステム評価スコアは約−3から+3の範囲にわたり、正規分布した。1.64より高いEpiMatrixシステム評価スコアを「ヒット」と分類し、これは中程度から高い親和性でHLA分子に結合する有意な確率を伴う、したがってそれらがたとえば樹状細胞またはマクロファージなどのAPCの表面に提示され、そこで通過するT細胞に調べられ得る有意な確率を有する、免疫原性の可能性を示す。
所与のタンパク質に多くのHLAリガンド(すなわちEpiMatrixのヒット)が含まれるほど、そのタンパク質が免疫応答を誘導する可能性が高くなる。所与のサイズのタンパク質に対して期待される予測T細胞エピトープの数と、EpiMatrixシステムによって予測された推定エピトープの数との差であるEpiMatrixタンパク質スコアと呼ばれるスコアを、各タンパク質に与えた。EpiMatrixタンパク質スコアを、観察された免疫原性と相関させた。EpiMatrixタンパク質スコアを「正規化」して、標準化スケール上にプロットした。「平均」タンパク質のEpiMatrixタンパク質スコアは0であり、0より高いスコアは過剰なMHCリガンドの存在を示し、免疫原性の可能性が高いことを示すのに対し、0より低いスコアはMHCリガンドの可能性の存在が期待より少ないことおよび免疫原性の可能性がより低いことを示す。+20より高いスコアの付いたタンパク質は、有意な免疫原性の可能性を有するとみなされる。
局所的免疫原性の評価−A/上海/2/2013 H7のクラスII
クラスIIに対して、潜在的T細胞エピトープはタンパク質配列全体にランダムに分布するのではなく、特定の領域に「クラスタ化」する傾向がある。T細胞エピトープ「クラスタ」の長さは9から約25アミノ酸の範囲であり、複数の対立因子および複数のフレームにまたがるそれらの親和性を考慮すると、4から40の結合モチーフを含み得る。最も反応性の高いT細胞エピトープクラスタの多くが単一の9量体フレームを含み、それは少なくとも4つの異なるHLA対立因子に対して反応性であることが予測されることが発見された(以後「EpiBar」と呼ぶ)。EpiBarを含有する配列は、インフルエンザ赤血球凝集素306−318(クラスタスコア22)、破傷風毒素825−850(クラスタスコア46)、およびGAD65 557−567(クラスタスコア23)を含む。EpiBarの視覚的表示を図20に示し、それは、乱交雑インフルエンザエピトープのEpiBarおよびEpiMatrix分析の例を示す。インフルエンザHAペプチドは乱交雑の免疫原性であることが公知のエピトープである。EpiMatrixにおいて、そのスコアは8つの対立因子すべてに対して極度に高い。上記で述べたように、そのクラスタスコアは22である。10より高いクラスタスコアは有意とみなされる。帯状のEpiBarパターンは、乱交雑エピトープの特徴である。結果を、PRYVKQNTL(配列番号21)、RYVKQNTLK(配列番号22)、YVKQNTLKL(配列番号23)、VKQNTLKLA(配列番号24)およびKQNTLKLAT(配列番号25)について図20に示す。Zスコアは9量体フレームが所与のHLA対立因子に結合する可能性を示す。上位5%のすべてのスコアを「ヒット」とみなし、簡略化のため、10%未満の非ヒット(*)は図20においてマスクされる。
T細胞エピトープクラスタ、特に「EpiBar」を含む配列はHLAクラスII分子の範囲に非常に良好に結合し、かつヒト対象から採取した血液サンプルのアッセイにおいて非常に免疫原性が高い傾向があることが見出された。McMurry JAら(Vaccine、25(16):3179〜91、22/01/2007)によって報告されるとおり、自然感染によって野兎病またはワクシニアのいずれかに晒された対象のほぼ100%が、各々約20ペプチドを含むT細胞エピトープクラスタのプールに対するエクスビボT細胞応答を生じた。EpiBarおよびT細胞エピトープクラスタは非常に強力な免疫原であることを観察した。1つまたはそれ以上の優性T細胞エピトープクラスタの存在によって、別様には低いスコアのタンパク質に対しても有意な免疫応答が可能になった。
潜在的T細胞エピトープクラスタを見出すために、異常に高密度の推定T細胞エピトープを有する領域について、EpiMatrix分析結果をスクリーニングした。次いで、これらの領域に含まれる有意なEpiMatrixスコアを総計して、EpiMatrixクラスタ免疫原性スコアを作成し、ここで正のスコアは免疫原性の可能性の増加を示し、負のスコアはランダムに生成した配列または「平均的」配列よりも可能性が減少したことを示す。+10より高いスコアの付いたT細胞エピトープクラスタは、有意な免疫原性の可能性を有するものとみなした。
ヤヌスマトリクスアルゴリズムは、図21に示すとおり、MHCに面するアグレトープおよびTCRに面するエピトープの両方のアミノ酸含有量を考慮したものである。図21に示すように、各MHCリガンドは2つの面を有する。すなわち、MHC結合面(アグレトープ、MHC/HLAに対して下向きの矢印のアミノ酸残基)、およびTCR相互作用面(エピトープ、TCRに対して上向きの矢印のアミノ酸残基)である。同一のエピトープと変異体アグレトープとを有する予測リガンドは、それらが同じMHC対立因子と結合するときには、交差反応性T細胞応答を刺激し得る。入力配列を重複する9量体のフレームにパーズし、選択した参照データベースに対してスクリーニングした。適合するアグレトープ(すなわち、入力ペプチドと同じHLAに結合することがEpiMatrixによって予測されたもの)を有し、かつ入力ペプチドのTCRコンタクトに正確に一致する参照配列が戻された。
結果
行ったインシリコ分析は、インフルエンザAのA/上海/2/2013 H7株の324番目の位置に有意なT細胞エピトープの存在を識別した(「エピトープ321」)。その結果を図4に報告する。加えて、エピトープ321のTCRコンタクトとヒトゲノム内にあるT細胞エピトープとの対応を確立した。図5を参照。インフルエンザA/上海/2/2013 H7の改変エピトープクラスタ321のEpiMatrix分析を図7に示す。加えて、行ったインシリコ分析は、一般的変異体のTCRコンタクトと、ヒトゲノムに含まれるT細胞エピトープとの間に有意な対応がないことを発見した。図8を参照。インフルエンザのA/上海/2/2013 H7株の提案される改変を図6に示す。図2は、本出願において構想され、構築され、テストされて請求されるA/上海/2/2013 H7変異体の配列である。
ゲノム分析およびエピトープ予測
GISAID(http://platform.gisaid.org/)からの4つのヒトH7N9インフルエンザ配列(A/杭州(Hangzhou)/1/2013、A/安徽/1/2013、A/上海/1/2013、およびA/上海/2/2013)のHLAクラスII制限エピトープについて分析し、広いHLAおよび株の適用範囲を可能にするように構築免疫原性コンセンサス配列(ICS)を構築した。それぞれ正の対照およびH7N9ペプチドのヒト「類似体」の働きをするための、A(H1N1)、A(H3N2)、およびA(H5N1)からの4つの公的に利用可能なインフルエンザAエピトープと、ヒトタンパク質からの5つのペプチドとに加えて、自身とのさまざまな程度の交差保存を有する15の代表的なICSを選択した。ヒト類似体ペプチドは、ヤヌスマトリクス(エピバックス、プロヴィデンス、RI、USA)によって、選択されたH7N9ペプチドによる模倣の標的であり得ると識別されたペプチドに含まれるものであった。
循環するIAVとのペプチド類似性およびヒトゲノムとの交差保存
H7N9ペプチドと他のIAV株との類似性が報告されている(De Groot ASら、Hum.Vaccin.Immunother.、9:950−6、2013)。ヤヌスマトリクス(エピバックス、プロヴィデンス、ロードアイランド(Rhode Island)、USA)を用いて、ヒトゲノムとの交差保存を評価した。ユニプロット(UniProt)で概観されるヒトゲノムデータベースを、比較のためのヒト配列のソースとして翻訳した(The UniProt Consortium、Nucleic Acids Res.、40:D71〜5、2012)。
De Groot ASら(Hum.Vaccin.Immunother.、9:950〜6、2013)に記載されるとおりに、H7N9 ICSペプチドを生成した。複数のHLA結合9量体フレームを含有するペプチドを与えられると、ヤヌスマトリクスはこうしたフレームの各々をT細胞受容体に面する残基(位置2、3、5、7、および8)と、HLA結合残基(位置1、4、6、および9)とに分けた。その後、ヤヌスマトリクスはヒトゲノムデータベースにおいて交差保存エピトープの可能性があるもの(100%のTCR面の同一性および同じHLAスーパータイプの少なくとも1つに結合することが予測されるもの)をサーチした。ヒトゲノムにおいて見出された各TCR一致9量体(この研究の目的のためにヒト9量体のZスコアの10%に設定された)に対するソースペプチドにおける各EpiMatrixヒットに、ユーザが定めた演繹を適用することによって、「ヤヌスマトリクス・デルタ」スコアと呼ばれるヒトゲノム交差保存の定量的尺度を算出した。ヤヌスマトリクス・デルタが高くなることは、それら自体がクエリペプチドとHLA制限を共有する自己(ヒト)ペプチドに、より多数のTCRが一致していることを示す。それらのペプチドに対するヤヌスマトリクス・デルタ値は0から37.89の範囲だった。演繹の後、ソースペプチドにおけるヒットを合計して、ヤヌスマトリクス調整クラスタスコアを算出するために用いた。ペプチドの元のEpiMatrixクラスタスコアと、そのヤヌスマトリクス調整クラスタスコアとの差を算出した(以後「ヤヌスマトリクス・デルタ」と呼ぶ)。すなわち、ヤヌスマトリクス・デルタ=EpiMatrixクラスタスコア−ヤヌスマトリクス調整クラスタスコア。
ヤヌスマトリクス・デルタ値が高くなることは、ヒトゲノムとの交差保存が大きいことによって免疫原性に対する元の可能性が割り引かれたことを示した。
ペプチドの完全なリストとともに、それらの循環IAV株の対応ペプチドとの配列類似性、およびヒトゲノムとの交差保存を表1に提供する。
列1:ペプチドの免疫学的特徴に基づいて割り当てられたグループ。
列2:ペプチドの名称。H7N9 ICSペプチドの名称は、ヤヌスマトリクス・デルタによって順序付けられた。ヒト類似体ペプチドには、対応するH7N9ペプチドに従って番号が付けられた。
列3:ペプチド配列。
列4:IAVまたはヒトプロテオームのいずれかからの、各ペプチドのソースタンパク質。
列5:IAVとの類似性のパーセンテージ。2012/13 TIVからの2つのIAV株のいずれかにおける対応配列と、各ペプチドとを比較することによって、IAVの循環株との類似性を定めた。どのペプチドに対しても、インフルエンザB株ウィスコンシン(Wisconsin)/1/2010との保存はなかった。80%より低い任意のパーセンテージを「−」で表した。
列6:ヤヌスマトリクス・デルタと、ヒトデータベースに見出される一致の数とによって表された、各ペプチドとヒトゲノムとの交差保存。
予測される免疫学的特性によるペプチドのグループ化
サイトスケープ(サイトスケープ・コンソーシアム、サンディエゴ(San Diego)、カリフォルニア、USA)を用いて、各ペプチドとヒトゲノムとの予測交差反応性の定性分析を提供した。図10A〜10Cは、各々のペプチドに対するサイトスケープネットワークを示す。
ヒトPBMCを用いてインビトロでのIAVエピトープに対する免疫応答を比較するために、いくつかのタイプの可能な免疫応答を誘発し得るIAVペプチドを選択した。図10Aに示したように、第1のグループは、H7以外のIAV株、すなわちA(H1N1)、A(H3N2)、およびA(H5N1)の、免疫優性および高度に保存されたHAエピトープの変異体を表すペプチドからなっていた。
図10Bに示したように、第2のグループのペプチドは、H7N9抗原に由来するICSペプチド(H7N9 ICSペプチド)のリストから選択した(De Groot ASら、Hum.Vaccin.Immunother.、9:950〜6、2013)。この研究のために、最大の乱交雑HLA結合の可能性、ペプチド合成に困難をもたらすことが公知であるシステインおよび疎水性ドメインがないこと、ならびに上述のヤヌスマトリクスアルゴリズムを用いたヒトゲノムとの予測TCR/HLA一致に基づいて、EpiAssemblerアルゴリズム(エピバックス、プロヴィデンス、RI、USA)によって生成した101のICSの部分集合を選択した。H7N9 ICSペプチドは、それらのヤヌスマトリクス・デルタスコアによって順序付けられる。記載されるアッセイのいくつかにおいて、このペプチドの組は、ヒトゲノムとの交差保存の程度に従ってさらにプールに分離された。
最も広範なヒト交差保存を有するH7N9ペプチドに対して、対応するH7N9ペプチドがTCRに面する残基を共有するヒト配列の1つまたは2つのペプチドを、図10Cに示したように、合成のために選択した。これらのヒト「類似体」ペプチドに、それらがTCRに面するアミノ酸を共有するH7N9ペプチドによって番号を付けた。たとえば、12−HUMANはペプチドH7N9−12のヒト類似体である。
ペプチド合成
本発明のペプチドは、いずれも当業者に公知の標準的な合成法および手順を用いることによって、商業的に入手可能な出発材料、文献において公知の化合物を用いるか、または容易に調製される中間物質から、さまざまなやり方で調製された。有機分子の調製ならびに官能基の転換および操作のための標準的な合成法および手順は、当該技術分野の関連科学文献または標準的な教科書から得ることができる。任意の1つまたはいくつかの供給源に限定されないが、たとえば本明細書において引用により援用されるSmith、M.B.およびMarch、J.、March’s Advanced Organic Chemistry:Reactions、Mechanisms、and Structure、5th edition、John Wiley & Sons:New York、2001;Greene、T.W.、Wuts、P.G.M.、Protective Groups in Organic Synthesis、3rd edition、John Wiley & Sons:New York、1999;R.Larock、Comprehensive Organic Transformations、VCH Publishers(1989);L.FieserおよびM.Fieser、Fieser and Fieser’s Reagents for Organic Synthesis、John Wiley and Sons(1994);ならびにL Paquette、ed.、Encyclopedia of Reagents for Organic Synthesis、John Wiley and Sons(1995)などの古典的テキストは、当業者に公知の有機合成の有用かつ認知された参照教科書である。
21stセンチュリー・バイオケミカルズ(21st Century Biochemicals)(マールボロ(Marlboro)、MA、USA)による9−フルオロニルメトキシカルボニル(Fmoc:fluoronylmethoxycarbonyl)化学物質を用いて、合成ペプチドを製造した。約20.1mgのペプチドが生成され、分析逆相HPLCによって確認したペプチド純度は>80%であった。ペプチド質量は、タンデム質量分析によって確認した。調製したペプチドは白色粉末の外観を有した。
クラスII HLA結合アッセイ
計算的予測を検証するために、HLAクラスII結合親和性アッセイを行った。5つの一般的HLA DRB1対立因子、すなわちHLA DRB1*0101、DRB1*0301、DRB1*0401、DRB1*0701、およびDRB1*0801に対する競合アッセイにおける結合親和性について、24のペプチドすべてを評価した(図11)。3つの濃度(1、10、および100μΜ)の非ビオチン化テストペプチドを用いて、可溶性クラスII分子(ベナロヤ研究所(Benaroya Institute)、シアトル(Seattle)、WA、USA)へのビオチン化標準ペプチド(25nM)の結合に対して競合させた。反応を37℃にて24時間インキュベートして、平衡に到達させた。次いで、パン抗HLA−DR抗体、たとえばL243、抗HLA−DRA(BioXCell、ウエストレバノン(West Lebanon)、NH、USA)などでコートした96ウェルプレート上に、クラスII HLA−ペプチド複合体を捕捉した。次いでこのマイクロウェルプレートを洗浄して過剰なペプチドを除去し、ユーロピウム標識したストレプトアビジン(パーキンエルマー(Perkin−Elmer)、ホプキントン(Hopkinton)、MA、USA)とともに室温にて1時間インキュベートした。ユーロピウム活性化緩衝剤(パーキンエルマー、ホプキントン、MA、USA)を加えてプレートを室温にて15〜20分間現像してから、時間分解蛍光(TRF)プレートリーダー(BMGラボテック社(BMG Labtech GMBH)、オルテンベルク(Ortenberg)、DE)においてプレートを読取った。アッセイは3つ組で行った。24のペプチドすべてについて、クラスII HLA対立因子結合ポケットの広い表現を提供するHLAクラスII対立因子の選択である5つの対立因子、すなわちDRB1*0101、DRB1*0301、DRB1*0401、DRB1*0701、およびDRB1*0801に対して結合アッセイを行った。
アッセイしたすべてのペプチド−HLA結合相互作用のうち、50%は標的対立因子への強い結合親和性を示し(推定IC50<1μΜ)、13%は中程度の結合を示し(1μM<推定IC50<10μΜ)、11%は弱い結合親和性を示し(10μM<推定IC50<100μΜ)、11%は有意な親和性を示さなかった(推定IC50>100μΜ)。18のケースにおいては、データが結合親和性を確立するには不十分であった。
ペプチド−HLA結合対を真陽性(TP:true positive)、偽陽性(FP:false positive)、真陰性(TN:true negative)、または偽陰性(FN:false negative)のいずれかに分類することによって、計算的予測と結合アッセイの結果との一致を評価した。所与のHLA対立因子に対して、EpiMatrixZスコア≧1.64であることはそのペプチドが予測バインダーの上位5%に入っていることを示し、「ヒット」とみなされる。不確定の測定値を除き、全体の予測の成功率は85%であった。予測と結合との相関は、DRB*0101に対して82%、DRB1*0301に対して75%、DRB1*0401に対して95%、DRB1*0701に対して73%、DRB1*0801に対して100%であった(図11)。これらの相関は、EpiMatrixおよびその他のエピトープマッピングツールを用いて予測されたIAVペプチドに対する過去に発表された結果の範囲内である(Moise Lら、Hum.Vaccin.Immunother.、9:1598−1607、2013)。
PBMCの単離
非特定化した健康なドナーから白血球除去フィルターが得られ(ロードアイランド・ブラッドセンター(Rhode Island Blood Center)、プロヴィデンス、RI、USA)、年齢を特定した健康なドナーからバフィーコートが得られた(リサーチ・ブラッド・コンポーネンツ(Research Blood Components)、ブライトン(Brighton)、MA、USA)。ヒト血液を用いたすべての研究は、NIHの規定に従い、ロードアイランド大学(University of Rhode Island)機関審査委員会の承認を得て行った。
すべての白血球除去フィルターおよびバフィーコートは、血液を採取したのと同じ日に取得および処理した。以下のとおりに、フィコール・パーク(Ficoll−Paque)密度勾配遠心分離(GEヘルスケア・バイオサイエンシズ(GE Healthcare Biosciences)、ピッツバーグ(Pittsburg)、PA、USA)によって、白血球除去フィルターまたはバフィーコートから新鮮なPBMCを単離した。ハンクス平衡塩類溶液(HBSS)(セルグロ(Cellgro)、マナッサス(Manassas)、VA、USA)ならびに2.5%スクロースおよび5mM EDTA(pH=7.2)によって、白血球除去フィルターを逆流させた。シリンジによってバフィーコートを取り出し、ダルベッコリン酸緩衝食塩水(DPBS)(サーモフィッシャー・サイエンティフィック(Thermo Fisher Scientific)、ウォルサム(Waltham)、MA、USA)で希釈した。フィルターまたはバフィーコートからの血液の下にフィコール(ヒストパーク(Histopaque)1077)(シグマアルドリッチ(Sigma−Aldrich)、セントルイス(St.Louis)、MO、USA)を敷いてから、単核細胞を単離するために遠心分離した。PBMCを別のチューブに移し、DPBSで2回洗浄した。次いで、PBMCを次の細胞培地に再懸濁した。RPMI 1640(セルグロ、マナッサス、VA、USA)ならびに10%ヒトAB血清(バレーバイオメディカル(Valley Biomedical)、ウィンチェスター(Winchester)、VA、USA)、1%L−グルタミン(ライフテクノロジーズ(Life Technologies)、カールスバッド(Carlsbad)、CA、USA)、および0.1%ゲンタマイシン(セルグロ、マナッサス、VA、USA)。
PBMCの培養
新しく単離したPBMCを個々のペプチド(10μg/ml)またはペプチドのプール(10μg/ml)とともに、5%CO雰囲気下で37℃にて8日間培養して、抗原特異的T細胞を拡張させた。ペプチドを培養物に入れる前に、ペプチドをDMSOに溶解し、培地でさらに希釈した。ウェル当りのペプチド当りのDMSOの最大濃度は0.2%であった。48ウェル細胞培養プレートのウェルにおいて、150μlの培地中の2×10の細胞を、150μlの各個々のペプチドまたはプールで刺激した。正の対照ウェルは、1μg/mlのPHA(サーモフィッシャー・サイエンティフィック、ウォルサム、MA、USA)、または10μg/mlのCEFTペプチドプール(CTL、シェーカーハイツ(Shaker Heights)、OH、USA)を受取った。負の対照ウェルは、培地および0.2%DMSOのみを受取った。3日目および6日目に、細胞に10ng/mlのIL−2(BDファーミンゲン(BD Pharmingen)、サンディエゴ(San Diego)、CA、USA)を半培地交換によって補充した。8日目に、PBMCを集めて洗浄し、ELISpotアッセイによってサイトカイン分泌を測定するための抗原再刺激の準備をした。HLA−DR遮断実験のために、同じドナーからのPBMCを5μg/mlの精製NA/LE(登録商標)マウス抗ヒトHLA−DR抗体(BDファーミンゲン、サンディエゴ、CA、USA)の存在下または不在下で培養した。
HLA−DR遮断アッセイ
ペプチドがHLA−DRによって提示されたかどうかを識別するために、3人の健康なドナーにおけるIFNγ酵素結合免疫スポット(ELISpot)によるエピトープ特異的T細胞応答に対する抗HLA−DR抗体の影響を調べた。10のペプチド(IAV−1、H7N9−2、−4、−7、−9、−12、−13、−14A、5−HUMAN−A、および−B)に対して、HLA−DRを遮断することによってペプチド特異的スポット形成が100%阻害され、これらのペプチドはHLA−DRによって制限されることを示した(表2)。
方法に記載されるとおり、抗HLA−DR遮断抗体の存在下または不在下で、PBMCをH7N9ペプチドおよび対照とともにインキュベートした。ほとんどのペプチド特異的応答は抗体の添加によって阻害され、これらのペプチドが確かにHLA−DR分子によって提示されたことを示唆した。阻害は常に完全ではなく、1つのケース(H7N9−11)では遮断抗体の存在下で応答が増加したため、他のクラスII対立因子(DP、DQ)および/またはクラスI HLAによる提示の可能性は除外できない。
N/A:遮断Abの不在下の応答はアッセイバックグラウンド未満であった。
7つのペプチド(IAV−2、−3、−4、H7N9−1、−3、−8、および−10)は、HLA−DRに加えて、またはその代わりにたとえばHLA−DP、HLA−DQ、またはクラスI HLAなどの別のHLA分子によって提示されたために、HLA−DR遮断によって部分的にしか阻害されないT細胞応答を誘導した。ペプチドのいくつかは、EpiMatrix(エピバックス プロヴィデンス、RI、USA)によって識別されたクラスI HLA結合モチーフを含有していた。ペプチドH7N9−11のケースでは、HLA−DRが遮断されたときを除いて応答は不在であり、他のHLA対立因子がこのペプチドを提示するかもしれないことを示唆した。
ELISpotアッセイ
18人の個別の健康なドナーからのPBMCを、培養物中で個々のペプチドによって8日間にわたって刺激した。ΙFΝγ ELISpotキットを用いた製造者のプロトコル(マブテック(Mabtech)AB、シンシナティ(Cincinnati)、OH、USA)に従うELISpotアッセイにおいて、個々のペプチドによる再刺激に応答したヒトΙFΝγ生成を測定した(図12A)。ペプチドに対するエクスビボ応答は24〜48時間ではバックグラウンドより有意に高く上昇せず、前駆体集団を拡張せずに検出するにはエピトープ特異的T細胞の頻度が低過ぎたことを示唆したため、ELISpotアッセイは8日間の拡張期間の後に行われた。抗ヒトΙFΝγ捕捉抗体を予めコートしたELISpotプレートに、細胞を1×10/ウェルまたは1.5×10/ウェルにて移し、対応するペプチド10μg/mlによって再刺激した。正の対照ウェルを、1μg/mlのPHAまたは10μg/mlのCEFTによって刺激した。負の対照は、ペプチド刺激培養物に存在するのと同じ濃度のDMSO(0.2%)を伴う培地のみを受取った。すべての刺激および対照を3つ組のウェルに投与した。ELISpotプレートを5%CO雰囲気下で37℃にて24時間インキュベートし、洗浄し、二次HRP標識抗ΙFΝγ検出抗体とともにインキュベートし、TMB基質を加えることによって現像した。免疫スポットリーダー、すなわちCTL S5 UVアナライザー(セルラーテクノロジー・リミテッド(Cellular Technology Limited)、シェーカーハイツ、OH、USA)を用いて、生のスポットカウントを記録した。スポット数が百万PBMC当りバックグラウンドより50を超えて多く、かつバックグラウンドの少なくとも2倍であるとき、その応答を陽性とみなした。各ペプチドの3つ組の平均スポット数を負の対照ウェルの平均スポット数で割ることによって、ELISpot SIを定めた。
各応答のSI(刺激指数(stimulation index))を算出することによって、データを分析した。図12Bに示すとおり、有意な負の相関(p<0.05)が観察された。
マルチカラーフローサイトメトリ
約3×10のPBMCを、0.5μg/mlの抗CD49dおよび抗CD28抗体(BDファーミンゲン)(BDバイオサイエンシズ(BD Biosciences)、サンホゼ(San Jose)、CA、USA)の存在下で8日間にわたり、10μg/mlの個々のペプチドもしくはプールされたペプチド、または負の対照としての0.2%DMSOを有する培地によって刺激した。3日目および6日目にIL−2(10ng/ml)を加えた。8日目に、PBMCを10μg/mlの対応ペプチドまたは負の対照によって24時間再刺激した。9日目に細胞を集めて洗浄し、フローサイトメトリ分析の準備をした。
再刺激したPBMCを、最初に固定可能な生存率染色剤450(BDホライゾン(BD Horizon))(BDバイオサイエンシズ、サンホゼ、CA、USA)とともに室温にて15分間インキュベートした。その後、T細胞表面抗原に対する蛍光色素コンジュゲート抗ヒトモノクローナル抗体(Alexa Fluor(登録商標)700抗CD3、PerCP−Cy5.5抗CD4、APC抗CD25、およびFITC抗CD39)(BDファーミンゲン)(BDバイオサイエンシズ、サンホゼ、CA、USA)によって、4℃にて30分間細胞を染色した。次いで細胞を固定し、FoxP3固定/透過処理溶液、すなわちFoxP3/転写因子染色緩衝剤セット(eバイオサイエンス(eBioscience)、サンディエゴ、CA、USA)を室温にて30分間用いることによって透過性にしてから、PEコンジュゲート抗ヒトFoxP3抗体、すなわちクローン259D/C7(BDファーミンゲン)(BDバイオサイエンシズ、サンホゼ、CA、USA)によって室温にて少なくとも30分間染色した。FoxP3透過処理緩衝剤(eバイオサイエンス、サンディエゴ、CA、USA)によって細胞を洗浄し、ベクトン・ディッキンソン(Beckton−Dickinson)LSR−IIフローサイトメータ(BDバイオサイエンシズ、サンホゼ、CA、USA)を用いたフローサイトメトリによって取得した。FlowJoソフトウェア(ツリースター(Treestar)、アッシュランド(Ashland)、OR、USA)においてデータを分析した。
プールされたペプチドのT細胞反応性
上述の観察をH7N9感染および/またはワクチン接種とより特定的に関係付けるために、2つのペプチドプールによって同じ実験を行った(図13)。第1のプールは、10から20のヤヌスマトリクス・デルタ値を有するH7N9 ICSペプチドを含んだ(H7N9−4から−12)。第2のプールは、20より高いヤヌスマトリクス・デルタ値を有するペプチドを含んだ(H7N9−13から−14B)。第1のプールには第2のプールよりも多くのペプチドがあったため、体積単位当たりの合計が同じになるようにプール濃度を等しくした。最もヒトに近いH7N9ペプチドからなる第2のプールのSIは、第1のプールよりも有意に低かった(p<0.05)。これらの結果は5人のドナーの平均応答を反映する。ペプチドは、それらの循環するIAVとの類似性、ヒト配列との交差保存、または自己抗原としての状態に基づくそれらの予測される免疫学的特性に従うグループにプールされ、その結果はプール内の個々のペプチドに対して観察されたものと一致した。
Treg表現型決定
加えて、ペプチドが健康なドナーのPBMCにおいてTregを拡張する能力について、ペプチドを個別にテストした。20より大きいヤヌスマトリクス・デルタ値を有する3つのペプチドはすべて、インビトロで培地よりも有意に高い割合のCD3CD4FoxP3T細胞の拡張を誘導した(n=3)(図14、p<0.05)。並行して行ったアッセイにおけるCD25FoxP3およびCD39FoxP3Tregの頻度にも同様の傾向が観察されたが、CD39FoxP3頻度の増加のみが統計学的に有意であった。プールされたインフルエンザAエピトープは、インビトロでCD25FoxP3およびCD39FoxP3T細胞の類似の拡張を誘導しなかった(n=9)。
バイスタンダー抑制
公知のHLA乱交雑およびヒトTCRシグネチャを有するペプチドは、自然感染またはワクチン接種において起こり得る隣接炎症応答に対して制御効果を及ぼし得るかどうかを定めるために、バイスタンダー抑制実験を行った。ヤヌスマトリクス・デルタ値21.85を有する季節性インフルエンザHA免疫優性エピトープのH7相同体であるペプチドH7N9−13の存在下または不在下で、正常な対象のPBMCをH7N9 ICSペプチドのプール(H7N9−1、−2、−9、および−13を除くすべてを含む)によって刺激した。H7N9−13の添加によってプールが希釈されないことを確実にするために、両方の培養物が同じ絶対濃度のプールされたペプチドを有し、H7N9−13の添加が唯一の変数となるように、濃度を調整した。H7N9−13との共インキュベーションは、プールされたペプチドに対するT細胞応答を有意に抑制した(n=7)(図15A、p<0.01)。これに対し、H7N9−13ほどヒトゲノムとの交差保存がないペプチドH7N9−9との共インキュベーションは、H7N9エピトープのプールに対するT細胞応答を抑制せず(n=4)(図15B)、H7N9−13の免疫抑制活性はペプチド特異的であることを示唆した。
他のIAV株からのペプチドを用いた効果を確認するために、循環IAV株(IAV−1から−4)のHAからの個々のペプチドもしくはプールされたペプチド、または循環IAV株の配列と高い類似性を有するM1からのH7N9ペプチド(H7N9−3)を用いて、同じ実験を行った。2人の個別のドナーからのPBMCを用いて、ペプチドH7N9−13は、H7N9−3不在下のIAV−3に対する応答に比べて、H7N9−3と共培養されたときにIAV−3に対するT細胞応答を有意に抑制し、H7N9−3が存在するときの第1のドナーにおけるペプチドIAV−1および第2のドナーにおけるIAV−2に対して類似のT細胞応答の低減が観察された(図15C、すべてp<0.05)。統計学的に有意ではないが、高いヤヌスマトリクス・デルタスコア(>20)を有したH7N9−13、−14Aおよび−14Bの存在下でも、IAVペプチド(1〜4)のプールに対する応答の低減が観察された。
統計分析
グラフパッドプリズム(Graphpad Prism)(グラフパッドソフトウェア社(GraphPad Software、Inc.)、ラホーヤ、CA、USA)またはマイクロソフトエクセル(Microsoft Excel)(マイクロソフト社(Microsoft Corporation)、レドモンド(Redmond)、WA、USA)を用いて、p値および統計的有意性を定めるためのテストを行った。ヤヌスマトリクス・デルタとSIとを相関させるときに、ピアソン関数を用いてRを定めた。スチューデントt検定を用いて、対応または独立のT細胞反応性値の統計的有意性を算出した。
HLA DR3マウス免疫化
6〜8週齢の6匹の雌HLA DR3トランスジェニックマウスのグループを筋肉内刺激し、その4週間後に、野生型赤血球凝集素(図3)と、ノイラミニダーゼと、マトリックスタンパク質とで構成されるA/上海/2/2013(H7N9)ウイルス様粒子か、またはクラスタ321を操作したA/上海/2/2013(H7N9)赤血球凝集素(図2)とともに調合された同じノイラミニダーゼと、マトリックスタンパク質とで構成されるウイルス様粒子のいずれかによって追加免疫した。インフルエンザマトリックスタンパク質(M1)、ノイラミニダーゼ、赤血球凝集素または操作された赤血球凝集素を発現するプラスミドで一過的にトランスフェクトされた哺乳動物細胞培養物発現系(HEK 293T細胞)において、ウイルス様粒子を生成した。細胞培養上清を集め、超遠心分離によってVLPを精製した。HA含有量に従うワクチン用量は、タンパク質濃度に基づくものであった。用量当り0.12μg(低)、0.6μg(中)、または3μg(高)のいずれかのHAによってマウスを免疫化した。野生型および操作免疫原の両方をイムジェクトアラム(Imject Alum)アジュバントと共調合した。赤血球凝集阻害アッセイによる中和抗体活性の測定のために、各免疫化の前および追加免疫化の4週間後に血清を集めた。クラスタ321操作A/上海/2/2013ウイルス様粒子ワクチンによって免疫化したマウスは、防御レベルの赤血球凝集阻害抗体を発達させ、H7−HAの改変は中和エピトープを保存したことを示唆した。加えて、クラスタ321操作A/上海/2/2013ウイルス様粒子ワクチンは、野生型ウイルス様粒子ワクチンよりも早く、かつ低い用量で赤血球凝集阻害抗体を産生した(図16)。
赤血球凝集阻害アッセイ
ウマ赤血球の凝集を阻害できるHAに対する機能性抗体を評価するために、HAI(Hemagglutination Inhibition)アッセイを用いた。CDC研究室に基づくインフルエンザ調査マニュアルからプロトコルを適応させた。非特異的阻害剤を不活性化するために、テストの前に血清を受容体破壊酵素(RDE:receptor destroying enzyme)(デンカ生研株式会社(Denka Seiken、Co.)、東京(Tokyo)、JP)で処理した。1部の血清に3部のRDEを加え、37℃にて一晩インキュベートした。56℃にて約30分間インキュベートすることによって、RDEを不活性化した。RDE処理血清をv底マイクロタイタープレートにおいて2倍段階希釈した。約8HAU/50μLに調整した等体積のリアソータントウイルスを各ウェルに加えた。リアソータントウイルスは、マウス適応株A/プエルトリコ(Puerto Rico)/8/1934の内部遺伝子と、A/上海/2/2013の表面タンパク質HAおよびNAとを含んだ。プレートに蓋をして、室温にて20分間インキュベートした後、1%ウマ赤血球(HRBC)(ランパイアバイオロジカルス(Lampire Biologicals)、パイパーズビル(Pipersville)、PA、USA)のPBS溶液を加えた。赤血球を4℃にて保存し、調製から72時間以内に使用した。撹拌によってプレートを混合し、蓋をし、室温にて1時間RBCを沈降させた。非凝集RBCを含有する最終ウェルの相互希釈度によって、HAI力価を定めた。各プレートに対して、正および負の血清対照が含まれた。
NOD/scid/Jak3−/−マウスモデルにおけるヘッドトゥヘッド免疫原性の研究
トリインフルエンザ情報共有の国際推進機構(Global Initiative on Sharing Avian Influenza Data)(ミュンヘン(Munich)、ドイツ(Germany))から得られたA125T突然変異を有するH7赤血球凝集素配列(#EPI439507)を用いて、組み換え赤血球凝集素(HA)糖タンパク質を調製した(Nakamura Kら、Vaccine、34(3):328−33、2015(ePub)を参照)。Opt_1 H7/安徽rHAおよびWT H7/安徽rHAの1から560アミノ酸残基をコードするcDNA鎖を、C末端の6 Hisタグ配列とともに合成した。次いで、このタグ付きcDNA鎖をpBacPAK8発現ベクター(クロンテックラボラトリーズ社(Clontech Laboratories、Inc.)、大津(Otsu)、滋賀(Shiga)、日本(Japan))のクローニング部位(XhoI/NotI)に挿入し、Sf21(ヨトウガ)昆虫細胞(サーモフィッシャー・サイエンティフィック、横浜(Yokohama)、神奈川(Kangawa)、日本)にトランスフェクトした。このSf21(ヨトウガ)昆虫細胞はウシ胎仔血清(FCS:fetal calf serum)条件に適応されており、培養上清からTALON(登録商標)スピンカラム(クロンテックラボラトリーズ社、大津、滋賀、日本)を用いて、製造者のプロトコルに従って精製された。
Opt_1 H7/安徽rHAの特徴付けは、WT H7/安徽rHAに匹敵する抗原性を示唆した。ヒトポリクローナル血清抗体はOpt_1 H7/安徽rHAおよびWT H7/安徽rHAに対して同一の結合を示すことが見出され、Opt_1 H7/安徽rHAに導入された突然変異は免疫優性エピトープの露出に対していかなる影響も有さないことを確認した。A/安徽/1/2013インフルエンザウイルス株のエピバックス改変H7赤血球凝集素糖タンパク質(Opt_1 H7/安徽rHA)の免疫原性をテストするために、16匹のNOD/scid/Jak3−/−マウス(Hattori Sら、Antimicrob Agents Chemother、53(9):3887−93、2009)(S 岡田(Okada)、熊本大学(Kumamoto University)、熊本(Kumamoto)、熊本県(Kumamoto Prefecture)、日本)に2〜5×10のヒト末梢血単核細胞(PBMC)を静脈内移植した。このヒト末梢血単核細胞(PBMC)は健康なヒトドナーのヘパリン処置血液から、フィコール・ハイパーク(Ficoll−Hypaque)PBMC分離技術(フィコール・パークプラス(Ficoll−Paque Plus)、GEヘルスケア・ライフサイエンシズ(GE Healthcare Life Sciences)、東京(Tokyo)、日本)を用いた密度遠心分離によって、製造者のプロトコルに従って新たに単離されたものである。16の母集団のうち2匹のマウスの各々に同じドナーからのPBMCを移植した。すべての動物を特異的病原体を含まない条件下で維持し、すべて8〜15週齢のマウスを用いた。すべての手順は、国立感染症研究所(National Institute of Infectious Diseases)(日本)の倫理委員会の承認を得た。
PBMCにPBMCを移植してから約24時間後に、テスト対象の半分、すなわちすべて異なるドナーのPBMCが移植された8匹のマウスに、90μgの非アジュバント改変Opt_1 H7/安徽rHAを静脈内ワクチン接種し、一方でテスト母集団の他方の半分(対照の目的で第1のグループのテストマウスの一匹と同じドナーのPBMCが移植されたマウス)には90μgの非アジュバント野生型WT H7/安徽rHAを静脈内ワクチン接種した。この手順を図9に示す。免疫化から約10日後にテスト対象を屠殺し、血清サンプルを集め、動物の脾臓を分析のために取り出した。抗HA IgG力価および形質細胞レベルを定めるために、酵素結合免疫吸着(ELISA)および/または酵素結合免疫スポット(ELISPOT)アッセイにおけるコーティング抗原として組み換えインフルエンザ赤血球凝集素(HA)糖タンパク質を用いた(Onodera Tら、Proc Natl Acad Sci USA、109(7):245−90、2012(ePub)およびAdachi Yら、J Exp Med、212(10):1709−23、2015(ePub)を参照)。
図17は、A/安徽/1/2013インフルエンザウイルス株のエピバックス改変H7赤血球凝集素糖タンパク質(Opt_1 H7/安徽rHA)に対するヒトポリクローナル抗体活性のレベルを示す。図18Aおよび図18Bに示すとおり、A/安徽/1/2013インフルエンザウイルス株のエピバックス改変H7赤血球凝集素糖タンパク質(Opt_1 H7/安徽rHA)は、野性型組み換えH7と比べて抗H7 IgG抗体応答の増加を誘導し(図18A)、平均5倍高い抗H7抗体力価を誘導し(図18B)、図19Aおよび図19Bに示すように、非改変WT H7/安徽rHAタンパク質で免疫化したテスト対象に比べて抗H7形質細胞数の増加(図19A)および20倍多い数の抗H7形質細胞(図19B)を誘導した。
図17、図18A、図18B、図19Aおよび図19Bにおいて報告されるデータは、Tregエピトープの除去がA/安徽/1/2013インフルエンザウイルス株のエピバックス改変H7赤血球凝集素糖タンパク質(Opt_1 H7/安徽rHA)の免疫原性を改善することを確証するものである。
いくつかの実施形態において、H7ポリペプチドすなわち図2のポリペプチドは、1つまたはそれ以上の置換、欠失、挿入、反転、融合、およびトランケーション、またはこれらのいずれかの組み合わせによってアミノ酸配列が異なってもよい。変異体ポリペプチドは、1つまたはそれ以上の置換、欠失、挿入、反転、融合、およびトランケーション、またはこれらのいずれかの組み合わせによってアミノ酸配列が異なってもよい。変異体ポリペプチドは完全に機能性であってもよいし、1つまたはそれ以上の活性における機能を欠いていてもよい。完全に機能性の変異体は典型的に、保存的変異または重要でない残基もしくは重要でない領域の変異のみを含有する。加えて機能性変異体は、機能の変化をもたらさないか、または重要でない変化をもたらす類似アミノ酸の置換を含み得る。代替的に、こうした置換は機能にある程度の正または負の影響を与え得る。非機能性変異体は典型的に、1つまたはそれ以上の非保存的なアミノ酸の置換、欠失、挿入、反転、またはトランケーション、あるいは重要な残基または重要な領域における置換、挿入、反転、または欠失を含む。
加えて本技術は、同一性の程度は低いが、本技術の核酸分子がコードするポリペプチドによって行われるのと同じ機能の1つまたはそれ以上を行うための十分な類似性を有するポリペプチドを包含する。類似性は、保存されたアミノ酸置換によって定められる。こうした置換とは、ポリペプチド内の所与のアミノ酸を類似の特徴の別のアミノ酸で置換するものである。保存的置換は、おそらく表現型的にサイレントである。保存的置換として典型的にみられるのは、脂肪族アミノ酸Ala、Val、Leu、およびIleのうちの1つから別のものへの置換;ヒドロキシル残基SerおよびThrの交換、酸性残基AspおよびGluの交換、アミド残基AsnおよびGlnの置換、塩基性残基LysおよびArgの交換、ならびに芳香族残基PheおよびTyrの置換である。どのアミノ酸の変更が表現型的にサイレントになると考えられるかに関するガイダンスは、たとえばBowie、J.ら、Science、247:1306〜1310、1990などに見出される。
本明細書において用いられる、2つのポリペプチド(またはポリペプチドのある領域)が実質的に相同または同一であるとは、それらのアミノ酸配列が少なくとも約45〜55%、典型的には少なくとも約70〜75%、より典型的には少なくとも約80〜85%、より典型的には約90%より高く、またはそれ以上で相同または同一であるときである。2つのアミノ酸配列または2つの核酸配列のパーセント相同性または同一性を定めるために、それらの配列を最適な比較の目的のために整列させる(例、他方のポリペプチドまたは核酸分子との最適な整列のために、一方のポリペプチドまたは核酸分子の配列に間隙が導入されてもよい)。次いで、対応するアミノ酸位置またはヌクレオチド位置にあるアミノ酸残基またはヌクレオチドを比較する。一方の配列のある位置が、他方の配列の対応する位置と同じアミノ酸残基またはヌクレオチドで占められているとき、それらの分子はその位置において相同である。本明細書において用いられるアミノ酸または核酸の「相同性」とは、アミノ酸または核酸の「同一性」と同等である。2つの配列間のパーセント相同性は、それらの配列が共有する同一位置の数の関数である(例、パーセント相同性は、同一の位置の数/位置の合計数×100に等しい)。
いくつかの実施形態において、本技術は本発明のポリペプチドのポリペプチドフラグメントを含む。いくつかの実施形態において、本技術は本明細書に記載されるポリペプチドの変異体のフラグメントを包含する。本明細書において用いられるフラグメントは、少なくとも約5つの隣接アミノ酸を含む。有用なフラグメントは、ポリペプチドの生物活性の1つまたはそれ以上を保持するフラグメント、およびポリペプチド特異的抗体を生成するための免疫原として用いられ得るフラグメントを含む。生物活性フラグメントは、たとえば約6、9、12、15、16、20、もしくは30、またはそれ以上のアミノ酸の長さである。フラグメントは分離して(他のアミノ酸またはポリペプチドに融合されずに)いてもよいし、もっと大きなポリペプチドの中にあってもよい。いくつかのフラグメントが単一のもっと大きなポリペプチドの中に含まれていてもよい。一実施形態において、宿主における発現のために設計されたフラグメントは、ポリペプチドフラグメントのアミノ末端に融合された異種プレポリペプチドおよびプロポリペプチド領域と、フラグメントのカルボキシル末端に融合された付加的領域とを有し得る。
いくつかの実施形態において、本技術はキメラまたは融合ポリペプチドを提供する。これらのポリペプチドは、本発明のポリペプチドが異種タンパク質、すなわちそのポリペプチドと実質的に相同でないアミノ酸配列を有するポリペプチドと動作的に連結されたものを含む。「動作的に連結された」とは、ポリペプチドと異種タンパク質とがインフレームで融合されたことを示す。
いくつかの実施形態において、単離されるポリペプチドは天然にそれを発現する細胞から精製されてもよいし、それを発現するように変更された(組み換え)細胞から精製されてもよいし、公知のタンパク質合成法を用いて合成されてもよい。いくつかの実施形態において、本技術のポリペプチドは組み換えDNA技術によって生成される。限定ではなく例として、ポリペプチドをコードする核酸分子が発現ベクターにクローニングされ、その発現ベクターが宿主細胞に導入され、その宿主細胞においてポリペプチドが発現される。次いで、標準的タンパク質精製技術を用いた適切な精製スキームによって、細胞からポリペプチドが単離され得る。
いくつかの実施形態において、ポリペプチドはたとえば、D−立体異性体などの天然に発生するアミノ酸の改変形、天然に発生しないアミノ酸;アミノ酸類似体;および模倣体などを含み得る。
本発明のワクチンは、投与の前後のペプチド凝集を防ぎ、かつ生物活性を保持する。本発明のワクチンは典型的に、投与前の再構成を必要としない無菌の貯蔵安定かつ薬学的に許容可能な、すぐに投与できる水溶液である。本発明のワクチンは対象への投与に好適であり、これはそれらのワクチンが薬学的に許容可能であり、無毒性であり、ペプチドの生物学的効果またはホルモン効果に悪影響を与え得るいかなる成分も含有しないことを意味する。
請求されるワクチンは典型的に密閉された容器、バイアル、またはカートリッジの中に貯蔵され、それは典型的に長期貯蔵に好適である。「長期貯蔵に好適である」とは、そのバイアル、容器、またはカートリッジが、長期貯蔵の間に成分の脱出またはたとえば微生物などの外部成分の移入をさせないことを意味する。
本発明のワクチンは、好ましくは注射によって、典型的には筋肉内注射によって投与される。
本発明のワクチンは、単一用量または複数用量の密閉された容器、バイアル、またはカートリッジの中に貯蔵され得る。密閉された容器、バイアル、またはカートリッジは典型的に、単一または複数用量の注射ペンまたは薬物送達デバイスとともに用いるために好適である。密閉容器は1またはそれ以上の用量の本発明のワクチンを含んでもよく、各用量は有効量の本明細書に記載のワクチンを含む。
単一用量注射ペンまたは薬物送達デバイスは、典型的にはディスポーザブルのデバイスであり、これは本明細書に記載されるワクチンの有効量の単一用量を含む密閉容器を使用する。複数用量注射ペンまたは薬物送達デバイスは、典型的には本明細書に記載される医薬組成物中に有効量のワクチンの2以上の用量を含有する。複数用量ペンは典型的に、本明細書に記載される貯蔵安定ワクチンの所望の体積を投与するように調整され得る。特定の実施形態において、複数用量注射ペンは、1本の針を複数回使用することによって起こり得る、微生物混入物の移入が容器またはカートリッジに入ることを防ぐ。
本明細書において用いられる有効量とは、所望の応答を誘発するために十分な量を示す。本発明において、所望の生物学的応答とは、病原体、特にインフルエンザA/上海/2/2013に対する抗体を生成することを含む。
本明細書において用いられる対象とは動物、たとえば哺乳動物、たとえばヒトなどであってもよい。

Claims (10)

  1. インフルエンザ赤血球凝集素(HA)糖タンパク質を生成するためのプロセスであって、次のステップ、
    (a)C末端に6x Hisタグを有するウイルス株をコードする1つまたはそれ以上のcDNAを合成するステップと、
    (b)前記cDNAを発現ベクターのクローニング部位に挿入するステップと、
    (c)前記ベクターを細胞にトランスフェクトするステップと
    を含む、プロセス。
  2. 前記細胞は昆虫細胞である、請求項に記載のプロセス。
  3. 前記昆虫細胞はSf21(ヨトウガ(Spodoptera frugiperda))細胞である、請求項に記載のプロセス。
  4. 前記赤血球凝集素はA125T突然変異を有する、請求項に記載のプロセス。
  5. 前記cDNAはOpt_1 H7/安徽rHAおよび/またはWT H7/安徽rHAの1から560のアミノ酸残基をコードする、請求項に記載のプロセス。
  6. 前記クローニング部位はpBacPAK8発現ベクターのXhoI/NotIクローニング部位である、請求項に記載のプロセス。
  7. 改変インフルエンザ赤血球凝集素糖タンパク質の免疫原性を決定する方法であって、次のステップ、
    (a)2匹またはそれ以上の免疫不全マウスに再構成されたヒト末梢血単核細胞を移植するステップと、
    (b)前記マウスの半分に前記改変インフルエンザ赤血球凝集素糖タンパク質のワクチンを接種し、残りのマウスに非改変対照インフルエンザ赤血球凝集素糖タンパク質のワクチンを接種するステップと、
    (c)マウスから血清サンプルを集めるステップと、
    (d)酵素結合免疫吸着(ELISA)アッセイおよび/または酵素結合免疫スポット(ELISPOT)アッセイにおけるコーティング抗原として、組み換えインフルエンザ赤血球凝集素(HA)糖タンパク質を用いるステップと、
    (e)前記集められた血清サンプルをアッセイに導入するステップと、
    (f)抗HA IgG抗体を測定するステップと、
    (g)抗HA IgG力価を算出するステップと
    を含む、方法。
  8. 前記マウスはNOD/scid/Jak3−/−マウスである、請求項に記載の方法。
  9. 前記ヒト末梢血単核細胞は、健康なドナーのヘパリン処置された血液から新たに単離される、請求項に記載の方法。
  10. 前記マウスの半分には改変非アジュバントOpt_1 H7/安徽rHAがワクチン接種され、他方の半分には非改変非アジュバントWT H7/安徽rHAがワクチン接種される、請求項に記載の方法。
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