本発明を実装するための様々な実施形態および構成が存在する。そのような実装の一つが図1に示されており、本発明の一実施形態に応じた、決済処理ネットワーク100が図示されている。ネットワーク100は、通信ネットワーク112を介してアクワイアラ・システム118に接続されている、複数のポイント・オブ・セール(POS)端末110を含む。アクワイアラ・システム118は、一つ以上のPOS端末110を操作する加盟店に対して、クレジット・カードおよび同様の取引を処理する一つ以上の取引処理システムを表す。図示されたPOS端末110が、同一の加盟店によって、または二つ以上の加盟店によって操作され得ることと、アクワイアラ・システム118が二つ以上のアクワイアラ・システムを表し得ること(例えば、異なる加盟店が異なるアクワイアラ・システムを使用できること)とを、理解されるべきである。
決済処理ネットワーク100において、POS端末110にてクレジット・カードを使用するカード保有者は、図1に示された複数のカード・イシュア120などの異なるカード・イシュアによって発行されたカードを有するのではないかと予想される。カード・イシュア120は、通信ネットワーク122を介してアクワイアラ・システム118と通信し、アクワイアラ・システム118は、加盟店からのカード取引を処理し、承認のためにカード取引を適切なカード・イシュアにルーティングする。さらに、顧客は、POS端末110のいずれか一つを操作する加盟店によって使用される現地通貨以外の通貨での取引の金額を知りたい(そして承認する)のではないかと予想される。そのような目的のために、通貨換算システム130は、通信ネットワーク132を介してアクワイアラ・システム118と通信する。
図示されたネットワーク112、122および132はそれぞれ、単一のネットワークまたは複数のネットワークによって実装され得る。例えば、一つの加盟店によって操作されるPOS端末110は、各加盟店がそのそれぞれのアクワイアラ・システム118と通信し、そのそれぞれのアクワイアラ・システム118を介して取引を処理するために、異なる加盟店によって操作されるPOS端末とは異なるネットワークを介して、アクワイアラ・システム118の一つに接続され得る。ネットワーク112、122、および132はそれぞれ、加盟店、アクワイアラ、および/またはイシュアによって運用される専用のプライベート・ネットワークによって(全体的にまたは部分的に)実装され得るし、またはインターネットなどのパブリック・ネットワークによって(全体的にまたは部分的に)実装され得る。
決済処理ネットワーク100において、POS端末110を操作する加盟店は、通常、当該加盟店の現地通貨を使用して取引を処理するが、外国のまたは現地通貨とは異なる、カードの自国通貨(またはカード保有者に使用/選好されるのではないかと思われる代替通貨)で取引金額を処理することもでき得ることも予想される。例えば、加盟店が、カード保有者/カード・イシュアの自国通貨での取引の金額を提供し、カード保有者が、カード保有者の口座に計上され、カード保有者によって支払われる(例えば、カード保有者の毎月の明細書を受け取った後に)、取引金額(自国通貨での)を取引の時点で知るようにすることができ得る。後でより詳細に説明するが、このように、通貨換算システム130は、加盟店の現地通貨から顧客の自国通貨に換算された取引の金額を顧客またはカード保有者に提供するために、POS端末の一つで使用される為替レートについての要求を、POS端末110の一つから、とりわけ受信し得る。
さらに、場合によっては(これらも後述するが)、通貨換算システム130は、イシュア(または加盟店)が現地通貨を自国通貨に換算したくない場合(例えば、非常に安定しているまたは強い通貨よりも、自国通貨が不安定な変動価値などによってリスクが高いと見受けられる場合)、DCCの下でカード保有者に提案する安定的な通貨を決定するために、イシュア(または加盟店)が、チップ・カードに存在する他のデータに(端末から)アクセスすることを可能にする。これに関連して、場合によっては、カード保有者の自国通貨が小国の通貨(あるいは主要または強い通貨でない)であり、通貨換算の定期的なまたは大きな需要がないために、恐らく価値の不安定な変動はないものの、換算のコストはより高くなり得ることも予想される。本記載の目的上、そのような国の通貨は(例え不安定でなくても)、自国通貨として使用するかどうかを判定する際に「安定」していないとみなされ得る。
これまでの説明はクレジット・カード取引に言及しているが、他のタイプの金融カードまたは取引カード、例えばデビット・カード、ロイヤリティ・カード、ATMカード、およびストアド・バリュー・カード、同様に多くの異なる構造を有する機器、例えば従来型の磁気ストライプ・カード、接触または非接触スマート・カード(電子チップ、回路および/またはメモリを組み込んだもの)、無線決済デバイスとして動作するキー・フォブ、バーチャル・カード、携帯電話およびタブレット、ならびに、カード保有者によって他の当事者(加盟店または非加盟店)と取引を行うために使用され得る、提示機器とは別の形態のもの、を使用して取引を処理するために、ネットワーク100により表される本発明の実施形態が用いられることができる、ということを理解されるべきである。
記載された実施形態では、POS端末110の一つを操作する加盟店は、異なる形態のカードを使用し得る顧客との取引を処理することができ、当該加盟店または当該顧客が加盟店によって使用される現地通貨で取引を行いたい場合がある(そうでない場合もある)。図2は、加盟店が自身の現地通貨で、またはカード保有者の顧客の自国通貨である外貨で(もしくは顧客に受諾可能であり得る他の安定した通貨で)取引を行うか否かを判定する処理を示すフロー図である。ステップ210において、顧客はPOS端末110でカード取引を開始し、ステップ212において、まず、POS端末110は、提示されたカードがチップ・カード(スマート・カード)であるかどうかを判定する。いくつかの実施形態では、POS端末110の会計係の支援によって、提示されたカードの物理的特徴が簡易的に観察されて、カードのタイプがその端末に入力されることによって、ステップ212が実施されてもよい。その他の場合では、POS端末(セルフ・サービス端末または会計係により操作される端末)のスロットにカードが挿入されて、端末自体が、どのタイプのカードが関与しているかを決定してもよい。さらにその他の実施形態では、POS端末110において受信された、非接触(無線)スマート・カードからの信号(これにより、与えられた取引に対し、スマート・カードがその取引に使用されていることが示される)によって、ステップ212が、少なくとも部分的に、実施されてもよい。
チップまたはスマート・カードが顧客によって提示された場合、ステップ214において、POS端末は自国通貨データがチップに記憶されているかを判定する。例えば、EMVCo LLC(emvco.comに記載されている)によって定義されかつ管理されるEMV規格を実装しているスマート・カードにより、取引が行われる場合において、共通の決済アプリケーション(チップ・カードおよび端末に存在する)が取引を開始するために選択されて使用されるときに、データ要素または「タグ」のリストを含む処理オプション・データ・オブジェクト・リスト(PDOL:processing options data objects list)が、スマート・カードにより、POS端末に提供されてもよい。当該タグは、使用されているカードの自国通貨を定義する、オプションの適用通貨コード(ACC)を含んでいてもよい。コードの値は、特定の国におけるその通貨を示す。チップのメモリにおけるACCに関するタグ・ロケーションがヌルまたはゼロの値である場合は、自国通貨は存在しない。ステップ214において自国通貨がPOS端末に提供された場合、その自国通貨は、図3と併せて以下に説明されるように、自国通貨(または他の何らかの安定した通貨)での取引金額をカード保有者に提供するかどうかを決定する際に、用いられてもよい。EMV規格を実装するための、利用可能な、タグに関するさらなる情報は、emvco.comのウェブサイト上で見られる「Common Payment Application Specification」バージョン1.0(2005)にて見つけることができ、引用により本明細書に組み込まれる。
ステップ216において、端末は、他の国データ(DCCに関連する)がチップに存在するかどうかも判定する。国関連データの例は後述する。しかしながら、簡潔に言えば、このデータは、イシュアまたはカード保有者の国に関するものであり、通貨を決定するため、カードの自国通貨か、それとも(自国通貨でなくても)安定していて、カード保有者にとって受諾可能かもしれないものか、に用いることができる。通貨データまたは国関連データの少なくとも一方がカードに記憶されている場合(ステップ218)、処理は図3に進む(換算された通貨が顧客に提案されるべきかどうかを判定するため)。
ステップ212におけるPOS端末に提示されたカードがチップ・カードでない場合、または、チップから利用可能な、通貨データ(ステップ214)または他の国関連データ(ステップ216)の少なくとも一方が存在するのではない場合(ステップ218)では、ステップ220において、磁気的に符号化されたストライプ(磁気ストライプ)がそのカードで利用可能であるかどうかが判定される。
ステップ212におけるPOS端末に提示されたカードがチップ・カードでない場合、または、チップ・カードが提示されたが、ステップ214および216において、カード通貨データも国データもチップからPOS端末に提供されない場合では、ステップ220において磁気的に符号化されたストライプ(磁気ストライプ)がそのカードで利用可能であるかどうかが判定される。ステップ220は、カード保有者によって提示されているカードを会計係が観察することによって、少なくとも部分的には、実施され得る。代替的には、一例として、POS端末110がセルフ・サービス端末である場合に、ステップ220において、端末のカード・リーダが、磁気ストライプと磁気ストライプに記憶されたデータとを検出してもよい。磁気ストライプが利用可能であれば、図4と併せてすぐに説明するが、自国通貨が決定され得る。ステップ220において利用可能な磁気ストライプが存在しない場合、ステップ224において、加盟店POS端末の現地通貨で、例えばカードに表示されているかもしれないカード番号を店員が手動で入力することによって、取引が行われる。ステップ224において取引が行われた後に、レシートがステップ230において印刷され、顧客/カード保有者に提供される。
場合によっては、例えば、磁気ストライプがカード上に存在するが読み取ることができない場合、店員がカード番号を手動で入力することもあり得る。そのような場合、手動で入力されたカード番号とカード・イシュアの定められた所在地とに基づいて自国通貨が決定されてもよい。
図3は、ステップ214および216(図2)において、POS端末110に提示されたスマート・カードが、通貨カード・データ(例えば、適用通貨コード)または他の関連する国データを有する場合に用いられる処理を示す。ステップ310において、カード通貨データまたは国データが読み取られ、ステップ312において、POS端末は、カードおよび取引が動的通貨換算に適格であるか否かを判定する。自国通貨および他のデータを読み取り、カード取引がDCCにとって適格であるかどうかを判定するための詳細な処理(ステップ310および312)は、図5と併せて後述される。直接の通貨換算(DCC)があるいくつかの場合では、顧客に提案される通貨がカード自国通貨以外のもの(例えば、カード自国通貨よりも安定した通貨)かもしれないこと、は想定されるべきである。
チップ・カードは、様々な理由で通貨換算に適格でない場合がある。簡潔に言えば、例としては、自国通貨は実際には現地通貨と同一の通貨である場合があり、その場合、取引は適格ではない(通貨換算の必要もない)。別の例としては、加盟店(またはそのアクワイアラ)は、通貨を全く換算しないことを選択するかもしれない。場合によっては、使用されているカードのカード・イシュアは、そのカード保有者に対して、動的通貨換算を許可しない場合がある(全ての換算を自身で行うことを好む)。他のケースでは、加盟店が動的に換算する能力は、加盟店自身のアクワイアラによって一時停止されている場合がある(例えば、過去の問題のため、または加盟店によって要求された換算の料金のため)。これらまたは他の理由により取引が適格でない場合は、(例えば、顧客によって入力されたPINから)顧客が認証された後などに、ステップ314において、加盟店の現地通貨で取引が行われる。レシート(現地通貨での取引を示す)がステップ316において印刷されて、顧客に提供される。
ステップ312において、カードおよび取引が動的通貨換算に対して適格である場合、POS端末110は、ステップ320において、(例えば、ステップ310においてスマート・カードからアクセスされた通貨データ(ACC)または他の国関連データに基づいて)通貨を現地通貨から換算するための為替レートを取得する。為替レートは、ネットワーク112、アクワイアラ・システム118、およびネットワーク132を介して、通貨換算システム130から(アクワイアラ・システムを介し、POS端末からの要求に応答して)取得される。代替の実施形態では、為替レートが、アクワイアラ・システム118を経由せずに、システム130から直接返されることもできる。ステップ322において、POS端末は、受信された為替レートを使用して(換算された通貨での)取引の金額を計算し、ポイント・オブ・セール端末でその金額を(DCC情報の一部として)表示する。そして、ステップ324において、カード保有者はDCC情報を承認するかどうかを判断する。承認されない場合、取引は現地通貨で行われ(ステップ314)、レシートが印刷され顧客に提供される(ステップ316)。
ステップ324においてカード保有者がDCC情報を承認した場合、取引は処理および換算された通貨で行われ(例えば、カード保有者によるPINの入力後に)、ステップ330において、取引のレシートが印刷されてカード保有者に提示される。カード協会(MasterCard(登録商標)、Visa(登録商標)、American Express(登録商標)など)により使用されている現在の規則は、カード保有者が提示されていて、カード保有者がDCC情報(現地通貨での取引の金額、使用された為替レート、換算された通貨での取引の金額)を承認したという、文書化された証拠を要求する場合があり、加盟店はそのような目的のために印刷されたレシートにカード保有者の署名を得ることができる。取引がDCCを使用して処理される場合、現地通貨での取引の金額が加盟店の口座に貸方として計上され(手数料を控除)、換算された通貨での取引の金額がカード保有者の口座に借方として計上される。
図4は、チップ・カードが使用されていないか(ステップ212)、またはカード通貨データ(もしくは他の国情報)がチップ・カードに記憶されていない(ステップ214、216)がために、ステップ220(図2)において、磁気ストライプが利用可能であると判定された場合に、実施される処理を示す。この処理では、ステップ410において、まず磁気ストライプを有するカードがスワイプされ、そしてステップ420において、ストライプに符号化されたカード番号が読み取られる。POS端末は、カード番号からの銀行識別番号(BIN:bank identification number)を使用して(典型的にはカード番号の最初の6桁の一部)、ステップ422において、カード・イシュアが現地のものであるかどうか(加盟店の現地通貨と同一の通貨を使用するか)を判定する。例えば、カード・イシュアが加盟店と同一の国の銀行として識別された場合、ステップ422において、POS端末はカード・イシュアが現地のものであると判定する。イシュアが現地のものである場合、取引は加盟店の現地通貨で行われ(ステップ426)、ステップ428において、レシートが印刷され、顧客/カード保有者に提供される。
ステップ422においてカード・イシュアが現地のものでないと判定された場合、ステップ430において、POS端末は、自国通貨(典型的にはカード・イシュアの所在地に対応する)または現地通貨の選択肢を提示する。多くの場合では、カード・イシュアの所在地に基づく、一つの自国通貨が提示される。しかしながら、場合によっては、いくつかの自国通貨の選択肢が顧客に提供され得る。一例としては、いくつかのヨーロッパ諸国にまたがって顧客を有する可能性が高い、ヨーロッパに所在するカード・イシュアについては、顧客は、現地通貨を使用するか、ユーロを使用するか、または他のいくつかの一般的なヨーロッパの通貨を使用するか、の選択肢が与えられるかもしれない。
カード保有者は通貨の選択肢を提供し(ステップ432)、その選択肢が自国通貨(加盟店の現地通貨以外の通貨)である場合、POS端末110は、選択された自国通貨の為替レートを通貨換算システム130から取得する(ステップ434)。ステップ436においては、ステップ440におけるカード保有者の承認/受諾のために、為替レートおよび選択された自国通貨での取引の金額がPOS端末に表示される。カード保有者によって受諾された場合、ステップ442において、選択された自国通貨で取引が行われ、レシートが印刷されて(ステップ444)、カード保有者に提供される。
カード保有者が、(1)ステップ432において自国通貨(現地通貨以外の通貨)を選択しなかった、または(2)ステップ440において表示された為替レートおよび換算された取引金額を受諾しなかった、のいずれかの場合、現地通貨で取引が行われ(ステップ426)、レシートが印刷されて(ステップ428)、カード保有者に提供される。
ここで図5に目を向けると、図3のステップ310および312を実施するための、より具体的には、端末110における通貨および国に関する様々なタグの使用に基づいて、カード取引が直接の通貨換算(DCC)を使用してもよいかどうかを判定するための、POS端末110で実施される処理が示されている。ほとんどの場合、DCCが利用可能であるかどうかの判定は、チップ・カードまたはPOS端末に記憶されたタグの解析に基づく。しかしながら、予備ステップとして、例えば、加盟店が現地通貨でのみ取引を行うという選好のために、加盟店はDCCを使用しないようにそのPOS端末を事前にプログラムすることができる。加盟店がそのようにPOS端末をプログラムしている場合、ステップ510において、POS端末はDCCが利用可能でないと判定し、ステップ512において、取引は加盟店の現地通貨でのみ行われる。
ステップ510においてDCCが利用可能である場合、端末は、チップ・カードに記憶された様々なタグを取得する必要がある。チップ・カードからのタグの読み取りは、取引を処理するという目的のために、端末およびチップ・カードにより使用されるアプリケーションの制御下において実現される。例えば、端末およびチップ・カードの両方においてサポートされる様々なアプリケーションが存在し得る。アプリケーションはそれぞれ固有のアプリケーションID(AID)によって識別される。アプリケーションは、取引が行われる顧客の口座と、取引を処理するために用いられる可能性のある加盟店の決済プロセッサと、を決定することができる。以前に参照されたEMV規格を使用して取引を開始する際に、相互にサポートされるアプリケーションが選択される。場合によっては、チップ・カードと端末によりサポートされるアプリケーションのうち、一つのアプリケーションしか両方によりサポートされないかもしれないが、そしたら、それが使用される。複数のアプリケーションがサポートされる、他の場合では、選択されるアプリケーションは、加盟店またはカード保有者の選好に基づいていてもよい。記載の実施形態では、選択されたアプリケーションは、カード保有者にDCCを提供するために、アプリケーションによって必要とされるタグのリストを含んでおり、したがって、ステップ518において、チップ・カードおよび端末の両方に対して必要なタグのリストを識別する。
データ要素またはタグの取得は、通貨の換算方法を決定するために読み取られる必要がある、チップ・カードのメモリ内のファイルロケーションを、チップ・カードがまず特定することによって実現される。ステップ520において、カードによって端末に送信されるアプリケーション・ファイル・ロケータ(AFL)により、ファイルが識別される。AFLの受信に応答して、ステップ524において、端末は、当該端末からカードに送信されたレコード読み取りコマンドを使用して、指示されたタグをカードから読み取る。アプリケーション・データ(識別されたタグを表す)は、レコード読み取りコマンドへの応答でカードから端末へ返され、そしてステップ526において、取引に使用され得る自国通貨または他の通貨を決定するために、端末により通貨換算システム130に(端末データと共に)提供される。EMV規格を実装しているカードで使用される、アプリケーション・ファイル・ロケータ(AFL)およびレコード読み取りコマンドの構造および動作の具体的な詳細は、以前に参照されたEMVCoのウェブサイト(emvco.com)で見つけることができる。
次の表は、チップ・カードから取得されるか別々の要素として記憶されている)、またはPOS端末で提示(記憶)されて(端末のメモリに事前にプログラムされている)、通貨換算システム130に送信されるであろう、データ要素またはタグの例を示す。
図6は、(POS端末の)現地通貨から自国通貨または別の通貨へ取引を換算するために、上記のタグを使用する通貨換算システム130により実施される処理を示す。ステップ610において、システム130は、まず、端末が現地の端末通貨を使用するように要求されているかを判定する。これは、恐らく(前述のように)DCCの使用を望まない加盟店のためであり、システム130は、その端末を、その加盟店によって使用されている(おそらく多数のうちの)一つとして認識する。また、場合によっては、アクワイアラまたはイシュアは、通貨市場における突然の不安定性といった様々な理由により、DCCを使用しないことを(例えば、一時的に)選択してもよい。端末が端末通貨を使用するよう要求されている場合は、ステップ612において、システムは、現地の端末通貨を(その通貨が何であれ)提案すべきであると、端末に応答する。端末が端末通貨を使用するよう要求されていない場合は、ステップ613において、システム130は自国通貨および端末通貨の両方を決定する。自国通貨は、存在するならば適用通貨コードタグによって決定されるが、存在しないならば主要口座番号タグまたはイシュア識別番号タグ内のBINによって決定される。端末通貨は端末国コードタグによって決定される。次に、ステップ616において、システムは自国通貨が安定しているか(例えば、前述のように、不安定性にさらされておらず、主要国のものである)を判定する。ステップ616において自国通貨が安定している場合、ステップ620において、システム130は次に、カード保有者の選好言語が自国通貨と一致するかを判定する。選好言語は言語選好タグによって提供される。ステップ620においては、ほとんどの場合において、カード保有者は自分の自国通貨と一致する選好言語をとるであろう。ステップ624において、システム130は自国通貨が提案されるべきであると決定し、メッセージを端末110に返して、POS端末での選択/承認のために自国通貨を提案する(図3のステップ322および324)。
しかしながら、場合によっては、選好言語が一致しない恐れがある。例えば、外国人が一時的に別の国に居住していて、一時的な国でクレジット・カード口座を開設していることもあり得るが、多くの場合、第三国で取引を行うときに、外国人は、その外国人の自国を使用して取引を行うことを好むだろう。言語選好は外国人の出身国を示してもよく、安定しているならば、その国の通貨が、カード保有者に提案されることができる。したがって、ステップ626において、(ステップ620においてカードの自国通貨が言語選好と一致しない場合、またはステップ616においてカードの自国通貨が安定していないと判定された場合)、システムは、言語選好に基づいて(場合により自国通貨の国も考慮して)、カード保有者の出身国またはカード保有者の別の選好国(自国通貨の国以外)を決定でき得る。具体例としては、香港の英国市民は(その地位が旧英国植民地であったため)、香港の銀行の口座を長い間使用している場合があるが、米国などの第三国で買い物をするためにカード口座を使用する場合に、英国の通貨を使用することを好むかもしれない。ステップ626において、システム130はカード保有者の言語選好を見てもよい。この具体例では、選好言語が中国語ではなく英語である場合、ステップ626において、システムはカード保有者が恐らく英国市民だろうと(または英国市民でなくとも、英国が取引通貨の選好国であろうと)判断してもよい。決定された国が安定した通貨を有する場合(ステップ628)、その決定された国の通貨(具体例では英国ポンド)が、カード保有者が選択する(例えば、図3のステップ324において)ために、ステップ630においてカード保有者に提案されてもよい。しかしながら、ステップ626において決定された国が安定していない通貨を有する場合(ステップ628)、他の何らかの安定した通貨が、ステップ632においてカード保有者に提案される。
図7は、本発明の実施形態が実装され得る例示的なコンピュータ・システムを示すブロック図である。この例は、POS端末110、アクワイアラ・システム118、および通貨換算システム130の機能、ならびに本明細書に記載された本発明の他の構成要素および機能を提供するために、全体的に、部分的に、または様々な修正と共に使用され得るようなコンピュータ・システム700を示す。
バス790を介して電気的に結合され得るハードウェア要素を備えるコンピュータ・システム700が示されている。ハードウェア要素は、一つ以上の中央処理ユニット710、一つ以上の入力デバイス720(例えば、マウス、キーボードなど)、および一つ以上の出力デバイス730(例えば、ディスプレイデバイス、プリンタなど)を含んでいてもよい。コンピュータ・システム700は、コンピュータ可読情報を一時的におよび/またはより永続的に内包する、リモート、ローカル、固定、および/または取り外し可能な、記憶デバイスおよび記憶媒体を表す一つ以上の記憶デバイス740、ならびに、記憶デバイス740にアクセスするための一つ以上の記憶媒体リーダ750もまた含んでいてもよい。記憶デバイス740は、例としては、プログラム可能、フラッシュ更新可能などの、ランダム・アクセス・メモリ(「RAM」)および/または読み出し専用メモリ(「ROM」)といった、ディスク・ドライブ、光学記憶デバイス、ソリッド・ステイト記憶デバイスでもよい。
コンピュータ・システム700は、通信システム760(例えば、モデム、無線または有線のネットワーク・カード、赤外線通信デバイス、Bluetooth(登録商標)デバイス、近距離無線通信(NFC:near field communications)デバイス、セルラー通信デバイスなど)をさらに含んでいてもよい。通信システム760は、前述のように、ネットワーク、システム、コンピュータ、モバイル・デバイスおよび/または他の構成要素と、データが交換されることを可能にし得る。システム700はワーキング・メモリ780も含んでおり、これは上述のようにRAMおよびROMデバイスを含み得る。いくつかの実施形態では、コンピュータ・システム700は、処理加速ユニット770もまた含む場合があり、これはデジタル信号プロセッサ、専用プロセッサおよび/または同様のものを含むことができる。
コンピュータ・システム700は、ワーキング・メモリ780内に配置されて図示されているように、オペレーティング・システム784および/または他のコード788を含む、ソフトウェア要素もまた備えることができる。ソフトウェア・コード788は、本明細書に記載のアーキテクチャの様々な要素の機能を実装するために使用され得る。例えば、システム700などのコンピュータ・システムによって記憶および/または実行されるソフトウェアは、図2、図3、図4、図5および図6に見受けられる処理を実装する際に使用されることができ、それによって、本明細書に記載された、これらの処理の固有の要素および新規な特徴を実施するために、特別に設計およびプログラムされたデバイス(例えば、チップ・カード、POS端末110、および通貨換算システム130)を提供することができる。
コンピュータ・システム700の代替的な実施形態が、上述のものからの変形を非常に多く有し得ることを理解されるべきである。例えば、カスタマイズされたハードウェアが使用されてもよく、および/または、特定の要素は、ハードウェア、ソフトウェア(アプレットなどの、ポータブル・ソフトウェアを含む)、またはその両方で実装されてもよい。さらに、ネットワーク入力/出力、データ取得デバイスといった、他のコンピューティング・デバイスへのコネクションが存在していてもよい(図示せず)。
本明細書に記載の様々な方法および処理は、説明を簡単にするために、特定の構造的および/または機能的構成要素に関して説明されている場合があるが、本発明の方法は、いずれの特定の構造的および/または機能的アーキテクチャに限定されず、代わりに、適切なハードウェア、ファームウェア、および/またはソフトウェア構成のいずれにおいても実装されることができる。同様に、様々な機能は特定の個々のシステム構成要素に帰するが、文脈が別に示していない限り、この機能は、本発明の異なる実施形態に応じて、他の様々なシステム構成要素間で分散または組み合わせることができる。一例としては、アクワイアラ・システム118および通貨換算システム130はそれぞれ、一つ以上の記憶デバイスおよび処理要素を有する単一のシステムにより、実装されてもよい。他の例としては、アクワイアラ・システム118および通貨換算システム130は、それぞれ複数のシステムによって実装されてもよく、それらの個別の機能が、一つの場所内または複数のリンクされた場所にまたがる異なる複数のシステムに分散された状態であってもよい。
また、本明細書に記載の様々なフローおよび処理(例えば、図2、図3、図4、図5および図6に示されたもの)は、説明を簡単にするために、特定の順序で記載されているが、文脈が別に示さない限り、本発明の様々な実施形態に応じて、様々な手順が並べ替えられ、追加され、および/または省略されてもよい。また、一つの方法または処理に関して記載された手順は、他の記載された方法または処理に組み込まれてもよく、同様に、特定の構造的アーキテクチャに応じて、および/または一つのシステムに関して、記載されたシステム構成要素は、代替の構造的アーキテクチャを構成してもよいし、および/または他の記載されたシステムに組み込まれてもよい。したがって、説明を簡単にし、例示的な特徴を示すために、様々な実施形態が特定の特徴と共に(またはなしで)記載されている場合があるが、本明細書に記載された、特定の実施形態に関する様々な構成要素および/または特徴は、文脈が別に示さない限り、他の実施形態を提供するために、置換、追加、および/または除去されることができる。結果的に、本発明が例示的な実施形態に関して説明されたが、本発明は、以降の特許請求の範囲内での全ての修正物および同等物をカバーするよう意図されていることは理解されよう。
本発明の目下のところの好ましい実施形態における詳細な説明が上記で与えられているが、本発明の精神から変化することなく、様々な代替物、修正物、および同等物が当業者には明らかであろう。したがって、上記の説明は、本発明の範囲を限定するものとして解釈されるべきではなく、本発明の範囲は添付の特許請求の範囲によって定義される。