JP2018206700A - 酸化チタン電極触媒、可逆型燃料電池、空気二次電池及び酸化チタン電極触媒の製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
本発明の酸化チタン電極触媒は、式1:TiOx(式1において、0<x<2である。)で示される電極触媒であり、電極触媒を構成する各微粒子が、原子レベルの構造において、配位多面体であるTiO6八面体が3つのエッジを共有し、且つ、少なくとも1つの稜を共有するネットワーク構造を有する。このような構成を備える本発明の酸化チタン電極触媒は、燃料電池の酸素還元反応のために適した酸化チタンシステムの触媒活性構造を有し、燃料電池において、白金触媒の代替として有効である。
次に、本実施形態に係る酸化チタン電極触媒の製造方法について説明する。酸化チタン電極触媒の製造方法の一例として、まず、導電担体上にチタン含有前駆体を分散させた後、導電担体上に分散させたチタン含有前駆体を、10-20〜101atmの酸素分圧下、500〜1000℃で加熱することで、本発明の酸化チタン電極触媒を製造することができる。ここで、導電担体としては、特に限定されず、例えば、カーボン材料、導電性酸化物、非酸化物半導体等の公知の材料を用いることができる。ここで、チタン含有前駆体は、チタンを含む化合物であればよく、例えば、チタン炭化物、チタン窒化物、硝酸チタン、硫酸チタンなどの無機チタン化合物、アルキルチタネート類、アシレート類、キレート類、アルコキシド類などの有機チタン化合物等が挙げられる。
本実施形態に係る酸化チタン電極触媒を用いて酸素還元及び酸素発生極を作製することができる。当該酸素還元及び酸素発生極は、可逆型燃料電池または空気二次電池に用いることができる。可逆型燃料電池または空気二次電池の電解液としては、酸性溶液、アルカリ溶液、中性溶液、有機系溶媒のいかなる性質をもつ電解液も使用することができる。可逆型燃料電池の燃料としては特に制限されず、水素、メタノール又は水素化合物等を用いることができる。空気二次電池の場合も同様に電解液や負極活物質は特に限定されない。
多層のカーボンナノチューブ上に分散させたオキシチタニウムテトラピラジノポルフィラジン(TiOTPPz)の熱分解によって触媒を合成した。すなわち、TiOTPPzをカーボンナノチューブと混合し、アルゴン雰囲気下で900℃まで加熱し、水素2体積%、酸素0.05体積%を含有するアルゴン雰囲気下(平衡酸素分圧1.3×10-19atm)、900℃で保持・熱処理し(熱処理時間=0時間、0.5時間、1時間、3時間、5時間、及び、10時間)、室温まで冷却した。カーボン材料の触媒反応への寄与について確認するために、フッ化水素酸で酸化物を除去することで、酸化物を有さないサンプルについても準備した。
酸素還元反応の活性は、回転リング−ディスク電極及び3つの電極セルを備えた電気化学システム(参照電極=可逆水素電極、RHE;対極=ガラス状炭素)を用いて、0.1M H2SO4の酸性電解液中で測定した。作用電極は、ガラス状炭素を基板として触媒粉末を担持して用いた。ここで、サンプルは4.90±0.05mgを、5%ナフィオン(登録商標)を8μL含有する160Lの1−ヘキサノールに分散させ、ガラス状炭素電極の表面に落とし、30℃で一晩乾燥させることで、ガラス状炭素電極の表面に対して1.3〜1.4mg/cm2の割合で担持した。均質で且つ光学顕微鏡の下で平面を有するサンプルとなるように、本発明者らは当該プロセスを最適化した。
Rigaku Rapid−S X線回折形(Ag Kα放射線:22keV)、を用いて得られたX線全散乱データからPDFを得た。また、平均波長λは0.556Åであった。当該平均波長は、PDFguiプログラムを用いたPDFフィッティングによってNIST CeO2基準により計算した(参考文献1:C.L.Farrow,P.Juhas,J.W.Liu,D.Bryndin,E.S.Bozin,J.Bloch,T.Proffen,S.J.L.Billinge,Journal of Physics−Condensed Matter,2007,19,art.no.335219.)。サンプルはリンデマンガラスキャピラリーに封入した。曲面画像プレート上に記録された、画像データの24フレーム(露出時間=1フレームあたり2時間)を統合した。サンプル無しで集めた画像データを抽出した後、各ピクセルの強度をデバイ・シエラー環、画像プレートの厚さ及びX線の極性形成の比率によって修正した。次に、当該ピクセルデータを全散乱パターンに変換した。酸化物を備えるサンプルの当該散乱データから、HF及びガラスキャピラリーで処理することでサンプルの強度を抽出した。これらの異なる強度は、カーボン相との相互作用だけでなく酸化物相からの散乱をも包含していると考えられるが、後者の寄与度は無視できるほど小さい。このように、XPS解析によって測定されたTiOx組成物の原子散乱因子を用いて全散乱パターンを標準化し、このようにして得られた全構造関数をフーリエ変換によって、縮小されたPDFに変換した。
Al Kα(1.487keV)をX線源として使用し、サーモフィッシャーサイエンティフィック社の「Theta Probe」を用いてXPSデータを記録した。Shirley法でバックグランドを削除することによってスペクトルを修正した。また、C1sピーク(284.5eV)を用いることによってスペクトルを電荷修正した。ピーク強度は曲面フィッティングの最小二乗法によって測定し、相対感度を用いてatom%に変換した。
サンプルをTEMで観察し、粒子サイズ及びカーボンマトリックス(母体)への分散状態を調べた。高角環状暗視野(HAADF)スキャニングTEMによって得られたZコントラスト像は、明らかにTPPz分子由来のアモルファス状のカーボンマトリクス上にサポートされた酸化チタン(エネルギー分散X線分光によって確認した)の微粒子(数ナノメートルのスケール)の存在を示している(図1)。これらのアモルファス状のカーボンマトリクス上の酸化チタンナノ粒子は、カーボンナノチューブネットワーク内に分散している。当該カーボンナノチューブネットワークにより、当該微粒子がさらに凝集してしまうのを防ぎ、電気化学反応に必要な電子伝導性を保持する。
図3は、コアレベルX線光電子スペクトルを用いたチタンイオンの酸化状態の分析結果を示す。図3(a)は、Ti 2pスペクトルである。ドットで示されるデータが実験データであり、太線の引き出し線で示されたデータがシミュレーションによるデータであり、その他の線はフォークト関数にフィットするピークを示す。ドットで描かれた垂線は昇温のみの熱処理時間0時間のサンプルにおけるTiIVピーク位置を示す。図3(b)は熱処理時間に対する組成変化を示す。
チタンの酸化物について、電子の相関が存在するならば(すなわちクープマンの定理が不当であるならば)、TiIIIの存在に関連するピークの強度は、その正確な量を反映しないおそれがある。しかしながら、そうではない場合、当該チタンの酸化物の組成は、(0時間)TiIV 0.76TiIII 0.24O1.6N0.12またはTiO1.6N0.12;(0.5時間)TiIV 0.78TiIII 0.22O1.8N0.16またはTiO1.8N0.16;(1時間)TiIV 0.89TiIII 0.11O2.0N0.05またはTiO2.0N0.05;(3時間)TiIVO2.2N0.02;(5時間)TiIVO2.2;(10時間)TiIVO2.3である。表1にチタンの酸化物の表面組成(at%)を示す。表1で「a」と記したものについて、531eVの周辺のピークはカルボン酸塩及び水酸化物に対応している一方、532eV周辺のピークはキノングループに対応している。これらのピークは接近しているため、デコンボリューションされたピーク領域は多大なエラーを含んでいる可能性がある。
カーボンマトリックスのみに関連する活性について検討した。以下にカーボン材料についての分析を整理する。カーボン材料のみに関連する活性は、窒素ドープカーボン材料の活性点であるピリジンのNの量によって説明することはできない。これは図8に示すXPS分析の結果から分かるように、熱処理時間の増加に伴いピリジンのNの量が単調に減少するためである。活性の傾向は、これらの変化がPDF(図9)で連続して現れる構造ほど明らかではないかもしれないけれどもサイトごとの活性を変化させるπ共役システムのサイズの変化に起因する。
サンプルの原子構造の分析をXRD及びPDF(図4)によって実施した。900℃(熱処理時間=0時間)まで昇温したサンプルの構造をPDF分析(図4)で分析したところ、TiO6八面体が3つのエッジを共有する(図5)、レピドクロサイト型層状チタン酸塩であった。積層形態は、中間層方向に沿って反射するXRDパターン(図4(a))の9°未満に位置する散漫散乱強度の存在に示されるように無秩序であった。PDFフィッティングモデルは、(i)2つのチタン原子と4つの酸素原子(P21/m)による化学的な短距離秩序(すなわち、層内の原子の位置)のモデリングのための孤立した層、及び、(ii)数密度をモデリングするための大等方性原子置換パラメーターによる同様のレピドクロサイト構造の3つの層で構成した。当該モデリングの自由度がほとんど無いことを考慮すると(当該モデルはたった1つの独立したTiサイトとOサイトを有し、NまたはTiIII位のような他の欠陥を有さないことに留意する)、最も低いフィッティングの性質であっても当該構造モデルの正当性を確認するために十分である。モデル単位セルにおいて、a=14.1(4)Å、b=4.233(14)Å、c=3.059(11)Å、β=88(4)°であった。
上述の試験により、ブルッカイトのようなTiO6八面体結合を有する不規則なドメインの形成が、電気化学的酸素還元反応における触媒活性の基点となり、ブルッカイトのようなドメインに存在するこのような八面体ネットワークは酸素還元反応における活性サイトを有することがわかった。
Claims (6)
- 式1:TiOx(式1において、0<x<2である。)で示される電極触媒であり、前記電極触媒を構成する各微粒子が、原子レベルの構造において、配位多面体であるTiO6八面体が3つのエッジを共有し、且つ、少なくとも1つの稜を共有するネットワーク構造を有する酸化チタン電極触媒。
- 酸素の電気化学反応における酸素還元反応の触媒としても用いられる請求項1に記載の酸化チタン電極触媒。
- 酸素の電気化学反応における酸素発生反応の触媒としても用いられる請求項1に記載の酸化チタン電極触媒。
- 請求項1〜3のいずれか一項に記載の酸化チタン電極触媒を酸素還元及び酸素発生極として用いた可逆型燃料電池。
- 請求項1〜3のいずれか一項に記載の酸化チタン電極触媒を酸素還元及び酸素発生極として用いた空気二次電池。
- 導電担体上にチタン含有前駆体を分散させた後、前記導電担体上に分散させたチタン含有前駆体を、10-20〜101atmの酸素分圧下、500〜1000℃で加熱することで、請求項1〜3のいずれか一項に記載の酸化チタン電極触媒を製造する方法。
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