JP2018206596A - 試料冷却装置 - Google Patents

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【課題】比較的安価な液体ヘリウムフリーの冷凍機を用いて、最低到達温度が十分に低く(15K以下)で、なおかつ試料の面内方向の回転(±90度)を可能にする試料冷却装置を提供する。【解決手段】液体ヘリウムフリーの閉サイクルヘリウム冷凍機を利用した本発明の試料冷却装置において、外部から試料への熱流入を最小にするように、前記閉サイクルヘリウム冷凍機のコールドエンドに取り付けられた試料保持機構を設け、該試料保持機構は、熱遮蔽壁からなる熱遮蔽体と、該熱遮蔽体に囲われた伝熱部材と、該伝熱部材に着脱できる試料保持部と、該試料保持部に回転可能に取付られたサンプルステージと、を含む。該サンプルステージは、試料を保持したまま、回転することができる。【選択図】図1

Description

本発明は、試料冷却装置に関し、超高真空下で極低温に冷却可能な冷却装置に関するものである。
固体表面に関する低温実験は様々な目的で行われ、その目的に応じて寒剤が適宜選ばれる。そして、寒剤の種類と試料を保持する構造・機構(以下、「試料保持機構」と呼ぶ。)に応じて、試料表面の最低到達温度が決まる。低温実験の目的の一つは、常温では気体の分子を凍結凝縮して、固化することである。このように気体分子を固化することで、様々な基礎物性に関する実験が可能となる。ほとんどの気体分子は20Kの極低温で凍結凝縮することから、低温発生技術では、20Kを最低到達温度の目安の一つと見なすことが出来る。
20K以下の最低到達温度を得るには、寒剤としては液体ヘリウムが用いられる。ヘリウム4の沸点は常圧で4.2Kであり、試料近傍にヘリウムの流路を設ければ4Kに近い低温が得られることになる。非特許文献1には、液体ヘリウムを利用し、12.5Kまで冷却可能な超高真空試料冷却移動機構が記載されている。非特許文献2には、He冷凍機システムによる1K以下の低温冷却技術が記載されている。特許文献3には、150Kに冷却可能な液体ヘリウムを利用する超高真空試料冷却移動機構が記載されている。非特許文献6には、液体ヘリウムを用いたジュール・トムソン膨張による1mK以下に冷却可能な超高真空試料冷却機構が記載されている。特許文献1には、液体ヘリウムを利用し、25Kまで冷却可能な2軸移動機構が記載されている。特許文献2には、液体ヘリウムを利用し、20Kまで冷却可能な移動機構、及び放射シールドが記載されている。また、液体ヘリウムを寒剤として用いる超高真空(UHV)冷却試料マニピュレータ装置は既に幾つか市販されている。ただし、液体ヘリウムは高価なため、その結果、実験のランニングコストが高額となる。
また極低温を得る別の方法として、閉サイクルヘリウム冷凍機がある。液体ヘリウムフリーの冷凍機として、非特許文献3には、50K程度に冷却可能な液体ヘリウムフリー超高真空試料冷却移動機構が記載されている。非特許文献4には、パルスチューブ冷凍機を利用した、寒剤フリーの超高真空試料冷却機構が記載されているが、ビームの入射・出射は実質的にできない機構となっている。非特許文献5には、Gifford−McMahon(以下、GMという。)冷凍機を用いた40Kまで冷却可能な超高真空試料冷却移動機構が記載されている。GM冷凍機は、比較的安価な液体ヘリウムフリーの代表的な冷凍機であって、ヘリウムガスを作業流体とし、気体の断熱膨張(サイモン膨張)を利用する冷凍サイクルにより、低温にする装置である。GM冷凍機では、簡単に4K程度の低温が得られる。このように、閉サイクルヘリウム冷凍機による最低到達温度は4K以下であるので、最低温度部(コールドエンド)と試料とを熱接触させることで、試料を冷却することが出来る。この方法を用いれば、冷媒として液体ヘリウムを用いる必要が無いので、前述のコストの問題は大きく改善される。しかしこの方法では、試料保持機構の動作に制限がある。すなわち、閉サイクルヘリウム冷凍機を利用するこれまでの試料保持機構では、試料を極低温に冷却するためには、コールドエンドと試料との熱接触を良好にする必要があり、このために試料を面内方向に回転することが実質的にできない。そのため、例えば、極低温において凍結凝縮されたもの(例えば、気体分子等)に種々の作用を角度を変えて及ぼすことが難しく、例えば、試料表面の構造解析等に利用し易いとは言えない。
非特許文献7では、畜冷器の脱着が容易に可能な冷凍機、低温での熱伝導に優れた試料絶縁機構、電子衝撃加熱用のフィラメント、ビームの入射・出射用のスリットを有する開閉式の熱シールド、UHV中で出し入れ可能な試料ホルダー、Siダイオード温度センサ等から構築されたマニピュレータによる実験結果が述べられている。また、特許文献4では、超高真空中、7.2K未満に冷却可能で、装置外から様々なビームを試料の表面に照射し、前記表面からの反射ビームや放出ビームを装置外で測定可能であり、かつ、真空を破らず、試料の交換が可能である表面観測用試料冷却装置及び表面観測装置を提供すべく、表面観測用試料冷却装置が開示されている。特許文献5では、ねじれ及び撓みが可能な内部熱伝導ワイヤケーブル、その外表面に熱制御薄膜を被覆し、該熱制御膜の外側に断熱要素を介してねじれ及び撓みが可能な外部熱伝導ワイヤケーブルを積層し、その外表面に熱制御薄膜を被覆してなる輻射の影響を軽減させた熱伝導部材が開示されている。
ここで、試料表面の構造解析には、しばしば、イオンビーム等の荷電粒子が用いられる。具体的には、例えばイオンビームを試料に入射し、散乱イオン強度を試料面内方向の回転角度の関数として測定することで、表面の原子位置が決定される。このように、表面の構造解析では、試料を面内方向に回転することが重要である。
試料を面内方向に回転する機構を、試料保持機構に加えることは、試料への熱流入の増大につながる。これは面内方向の回転に必要な動きを大気から導入するために、大気側から試料への熱流入が不可避なためである。実際、閉サイクルヘリウム冷凍機を利用した試料保持機構において、最低到達温度が20K以下で、なおかつ試料を面内方向に回転可能なものはこれまでに実現されていない。そのため、閉サイクルヘリウム冷凍機を用いた試料冷却装置を構造解析に応用することが困難である。
特開2004−100989号公報 特開2004−103274号公報 米国特許第4516435号明細書 特開2015−025592号公報 特開2004−245790号公報
Aiura et al.、Rev.Sci.Instrum.74(2003)3177 小池良浩、大陽日酸技報、24(2005)60 Franzen,Kollias,El−Batanouny、Rev.Sci.Instrum.63(1992)4227 Pelliccione et al.、Rev.Sci.Instrum.84(2013)033703 J.Phys.E:Sci.Instrum.17(1984)22 Zhang et al.、Rev.Sci.Instrum. 82(2011)103702 鈴木拓、菱田俊一、日本物理学会概要集2013 秋季大会26pPSA−28
本発明では、比較的安価な液体ヘリウムフリーの冷凍機を用いて、最低到達温度が十分に低く、なおかつ試料の面内方向の回転を可能にする試料冷却装置を提供することを目的とする。
液体ヘリウムフリーの閉サイクルヘリウム冷凍機を利用した本発明の実施例である試料冷却装置において、外部から試料への熱流入を最小にするように、閉サイクルヘリウム冷凍機のコールドエンドに取り付けられた試料保持機構を設ける。これにより、液体ヘリウムを用いることなく最低到達温度が十分に低く、なおかつ試料を面内方向に高精度で回転することが可能になった。前記試料保持機構は、熱遮蔽壁からなる熱遮蔽体と、該熱遮蔽体に囲われた伝熱部材と、該伝熱部材に着脱できる試料保持部と、該試料保持部に回転可能に取付られたサンプルステージと、を含むことができる。該サンプルステージは、試料を保持したまま、回転することができる。
閉サイクルヘリウム冷凍機として、例えば、GM冷凍機と試料移動機構を組み合わせた装置において、試料移動機構の熱遮蔽設計やGM冷凍機の冷却性能等を十分なものにして、試料を面内方向に回転可能とする。
例えば、閉サイクルヘリウム冷凍機の冷凍機ヘッドの先端のコールドエンドでは、冷凍機単体で4K程度の最低到達温度が得られるものを使用することができる。この低温は、中間ロッドを介して、サンプルホルダーに伝わる構造とすることができる。また、この中間ロッド及びサンプルホルダーを保持するサンプルステージへの輻射熱の侵入は、ラディエーションチューブ(例えば、金メッキ無酸素銅製)及びラディエーションシールドカバー(例えば、金メッキ無酸素銅製)により最小限に抑えることができる。
より具体的には、以下のようなものを提供することができる。
(1)閉サイクル冷凍機と、該閉サイクル冷凍機のコールドエンドに取り付けられる伝熱手段と、該伝熱手段へ外部からのラディエーションを遮断すべきシールド手段と、該伝熱手段に熱的に接触し、試料を特定の面内に回転可能に保持する試料保持手段と、前記伝熱手段、シールド手段、及び試料保持手段を真空中に維持可能な真空槽と、を備える試料冷却装置において、
前記試料保持手段は、前記特定の面内において回転可能な回転部材と、該回転部材を回転可能に受ける受け手段と、該回転部材に保持される前記試料を少なくとも前記真空槽又はシールド手段又は伝熱手段から電気的に絶縁可能である、高熱伝導性電気的絶縁部材と、及び、前記回転部材に電気絶縁的に係合して、前記特定の面内の回転運動を伝えるものであって、当該試料保持手段の外部からの回転駆動力を受けて回転させられる受動回転手段と、を含み、
当該試料冷却装置は、更に、前記伝熱手段に熱的に接続され、前記電気的絶縁部材に密着して、該電気的絶縁部材から前記伝熱手段へと熱の移動を可能にする、フレキシブルな伝熱継手と、及び、前記受動回転手段に係合して駆動させる外部駆動手段と、を含む、試料冷却装置。
(2)前記閉サイクル冷凍機は、GM冷凍機を含むことを特徴とする上記(1)に記載の試料冷却装置。
(3)前記伝熱手段は、伝熱棒を含むことを特徴とする上記(1)又は(2)に記載の試料冷却装置。
(4)前記シールド手段は、ラディエーションチューブを含むことを特徴とする上記(1)から(3)のいずれかに記載の試料冷却装置。
(5)前記回転部材は、サンプルステージを含むことを特徴とする上記(1)から(4)のいずれかに記載の試料冷却装置。
(6)前記受け手段は、ベアリングを含むことを特徴とする上記(1)から(5)のいずれかに記載の試料冷却装置。
(7)前記高熱伝導性電気的絶縁部材は、サファイアプレートを含むことを特徴とする上記(1)から(6)のいずれかに記載の試料冷却装置。
(8)前記受動回転手段は、前記回転部材との共通する軸に、電気的絶縁材料を介して結合するものであって、前記外部駆動手段の係合凸部若しくは凹部に係合して、駆動力を伝達できる伝達部材であることを特徴とする上記(1)から(7)のいずれかに記載の試料冷却装置。
(9)前記フレキシブルな伝熱継手は、銅編み線を含むことを特徴とする上記(1)から(8)のいずれかに記載の試料冷却装置。
(10)前記外部駆動手段は、駆動シャフトを含むことを特徴とする上記(1)から(9)のいずれかに記載の試料冷却装置。
(11)前記真空槽には、必要に応じてベーキング用のヒータが備えられることを特徴とする上記(1)から(10)のいずれかに記載の試料冷却装置。
(12)更に、装置移動機構を備え、前記試料保持手段を前記真空槽内において適切な位置に移動させることができることを特徴とする上記(1)から(11)のいずれかに記載の試料冷却装置
(13)前記試料保持手段は、前記伝熱手段の先端に備えられ、前記シールド手段は、前記伝熱手段を覆うラディエーションチューブ、及び、前記試料保持手段を覆うラディエーションシールドカバー、を含むことを特徴とする上記(1)から(12)のいずれかに記載の試料冷却装置。
(14)前記ラディエーションシールドカバーは、少なくとも試料の一部を露出させる開口を備えるシャッターを含むことを特徴とする上記(13)に記載の試料冷却装置。
(15)前記シャッターは、ヒンジにより前記ラディエーションシールドカバーに回動可能に取り付けられ、前記真空槽の外側からの駆動力が前記ラディエーションチューブの外側に沿うように延びる開閉用駆動シャフトにより、前記シャッターが開閉すべく、前記ヒンジにおいて回動させられることを特徴とする上記(14)に記載の試料冷却装置。
(16)前記GM冷凍機は、そのヘッド部から延びる円筒形状のファーストステージ、及び、そのファーストステージの端部から延びる円筒形状のセカンドステージを含み、前記ファーストステージは、前記セカンドステージより大きい口径を備え、前記セカンドステージの外側の前記ファーストステージの端部に、前記シールド手段が取り付けられ、前記セカンドステージの先端から延びる前記伝熱手段がロッド形状であり、前記シールド手段は、前記伝熱手段を外部からのラディエーションを遮蔽すべく、前記伝熱手段を覆うことを特徴とする上記(2)に記載の試料冷却装置。
(17)前記外部駆動手段は、駆動シャフトを含み、該駆動シャフトは、前記シールド手段の外側に沿って延び、前記シールド手段の外側に固定される少なくとも1つの軸受を通ることを特徴とする上記(1)から(12)のいずれかに記載の試料冷却装置。
(18)前記駆動シャフトは、少なくとも1つのユニバーサルジョイントにより接続されることを特徴とする上記(17)に記載の試料冷却装置。
(19)前記駆動シャフトは、前記真空槽の外側の駆動装置により駆動されることを特徴とする上記(18)に記載の試料冷却装置。
(20)更に、真空ポンプを備える上記(1)から(19)のいずれかに記載の試料冷却装置。
ここで、冷凍機とは、一般に、物体から熱を奪って周囲の温度以下に冷却し(冷凍)、大気に熱を捨てる装置のことをいう。冷却到達温度、冷却方法によって、蒸気圧縮式冷凍機、吸収式冷凍機、空気断熱式冷凍機、ジュール−トムソン効果式冷凍機、スターリングサイクル冷凍機がある。スターリング冷凍機は、スターリングサイクルを利用した冷凍機である。スターリングエンジンと同様の構造を持った機械を、電気モータなどのエンジン本体とは別のエネルギー源によってエンジンを駆動すれば、エンジンは温度差をもつので、低温側を冷却器として使える。これがスターリング冷凍機(Stirling refrigerator、あるいはStirling cooler)である。冷凍機には作動流体が冷凍機内部に必要であるが、極低温を得るための作動流体には、ヘリウムを用いることが多い。また、閉サイクルとは、作動流体がシステムの内部を循環し、熱エネルギー及び仕事の間の変換を行うサイクルを意味してよい。これに対してオープンサイクルがある。そして、閉サイクル冷凍機とは、上述のようなサイクルを利用して低温を発生させる装置を意味してよく、閉サイクルヘリウム冷凍機とは、ヘリウムを作動流体として用い、作動流体が冷凍機の内部を循環し、熱エネルギー及び仕事の間の変換を行うことにより、冷却(冷凍)する装置を意味することができる。スターリング冷凍機の構造に加えて、さらに、ディスプレーサに連動したロータリーバルブを持ち、このバルブにより管路の切り替えを周回的に行うことで、冷却性能を向上させた冷却器を、ギフォード・マクマホン冷凍機(Gifford−McMahon cooler、略称はGM冷凍機)という。また、上述するコールドエンドは、スターリング冷凍機(例えば、閉サイクルヘリウム冷凍機、GM冷凍機等)の低温側端を意味することができる。
上述する伝熱手段は、熱を伝える手段を意味することができ、熱を伝える媒体(固体及び/又は液体や気体を含む流体、ヒートパイプのような構造物や複合体を含んでよい)を意味することができる。例えば、伝熱部材を含んでよい。該伝熱部材は伝熱棒を含んでよい。これらには、極低温で伝導性の高い固体を用いることができる。この伝熱手段は、取り付けられるコールドエンドから低温を以遠に伝える(即ち、熱を遠方より吸収する(若しくは奪う))ことができ、その伝達方向を長手方向とすることができる。前記コールドエンドに近い方が、より容易に低温になり易いが、試料に対して種々の作用を及ぼすためには、前記コールドエンドとの干渉を避けることができる分だけ離れていることが好ましい。一方、離れすぎると最低到達温度が高くなり易い。このような伝熱手段は、2以上の並列する通路(又は導体)を備えてもよい。伝熱手段は、長手方向に熱を容易に伝達することができるものが好ましい。例えば、金属製の中間ロッドのようなものは、その一方の端面を閉サイクルヘリウム冷凍機のコールドエンドに取り付け得るので、他端部の熱をコールドエンド側に移動させることができる。ここで、金属製とは、例えば、銅又は銅合金或いは無酸素銅等を材料に用いて中間ロッドを構成する場合を含んでよい。ここで、前記コールドエンドへの伝熱手段の取付は、高い熱伝達性を備える方法で行うことが好ましい。コールドエンドの端面及び伝熱手段の端面を突合せ接合する場合は、両端面の真実接触面積が大きくなると熱伝達性が高くなるので、両端面の平坦度が高く表面粗さが小さいことが好ましい。また、両端面間に塑性変形性が高い無酸素銅等からなる薄板を挟んで押し付けることにより、両端面の間の隙間に塑性変形された銅等が入り込み接触するので、熱伝達率を向上させることもできる。前記コールドエンド側は極低温になるため、周囲の温度(例えば、室温、ファーストステージ等)より高く、前記伝熱手段は周囲環境に面している長手方向の側面を持ち、高い熱伝導率によりその中心部の温度とほぼ等しい側面温度を有する。周囲環境から可視光等で見られる、即ち、光や熱等による放射エネルギーが、環境物から容易に伝熱手段に入射される。そこで、シールド手段により、環境物から見られないようにすることが好ましい。このシールド手段は、周囲環境よりも低温になり得る熱遮蔽壁や熱遮蔽体を含んでよい。また、ラディエーションチューブを含んでよい。熱遮蔽壁及び/又は熱遮蔽体からなる低温のラディエーションチューブを含んでよい。伝熱手段がこのようなシールド手段で覆われると、入射する熱エネルギーが小さくなり、好ましい。このようなラディエーションチューブは、ファーストステージに接触することで十分冷却され、且つ、その低温が長手方向に伝達し易い材料である金属製、特に、銅、アルミ、鉄、ステンレスから構成されることが好ましい。環境から入り込むエネルギーは、主に、紫外線、可視光、及び赤外線や遠赤外線によってもたらされるので、このような材料は不透明性が高く、これらを効率よく遮蔽できる。
上述する試料保持手段は、試料保持部を含んでよい。試料保持部は、試料を保持し、特定の面内において試料の回転を可能とすることができる。試料保持部は、その試料の温度を十分低く保つことができ、その試料を筐体等から電気的に浮いた状態にすることができる。試料保持部は、回転部材と、受け手段と、高熱伝導性電気的絶縁部材と、及び、受動回転手段と、を含んでよい。回転部材は、サンプルステージを含んでよく、該サンプルステージには、試料を保持するサンプル(試料)ホルダーを備えてもよい。特定の面は、試料の表面を含んでよい。回転部材は、試料を冷却可能に低温部材に接触してよい。受け手段は、前記所定の面内で試料が回転できるように回転部材を受ける。この受け手段は、ベアリングを含むことができ、ローラベアリング及び/又はボールベアリングを含むことができる。真空中で用いられるため、例えば、固体潤滑されたベアリングが好ましい。ベアリングは、筐体等の固定部材に対して回転部材が容易に回転できるようにすることができる。試料が筐体等の固定部材から電気的に絶縁状態であることが好ましい。例えば、ベアリング等のような受け手段が、絶縁性の材料から構成されてもよい。また、受け手段の回転部材側において、高熱伝導性電気的絶縁部材を用いることができる。高熱伝導性及び電気絶縁性備える材料としては、例えば、セラミックが挙げられ、特に、ダイヤモンド、立方晶の窒化ホウ素、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム等を用いることができる。例えば、高熱伝導性電気的絶縁部材は、セラミック部材、ダイヤモンド部材、立方晶の窒化ホウ素部材、酸化アルミニウム部材、窒化アルミニウム部材等を含んでよい。高熱伝導性及び電気絶縁性が機能する形状を備え、薄膜状、板状、棒状、円筒状等を含むことができる。バルク部材の形成容易性から、酸化アルミニウムを用いることが好ましい。特に、単結晶の酸化アルミニウム(例えば、サファイア)を用いることができる。例えば、サファイアプレートを含むことができる。試料保持手段の近傍に、前記回転部材を回転させる駆動装置を配置することは、不必要な熱量の流入や、清浄な真空状態の維持が難しくなるおそれがあるので、好ましくない。従って、回転部材は、試料保持手段の外側(例えば、真空槽の外側)にある駆動手段から伝達される回転駆動力を受け取る受動回転手段により回転させられる。この受動回転手段は、回転部材の回転と実質的に同じ向きに回転してよい。前記伝熱手段の長手方向に沿って延びるワイヤ等により回転駆動力が伝達される場合は、前記所定面内の回転の回転軸に対して、ほぼ垂直な回転軸を持つことも多いと考えられるので、回転駆動力の向きを例えば約90度変える機構を備えることが好ましい。このような機構には、駆動側及び受動側にそれぞれ対応する係合凸部若しくは係合凹部を備えて駆動力を伝達することができる伝達部材を含んでよい。このような伝達部材は、平歯車、傘歯車、冠歯車、ウォームギア(例えば、ねじ歯車(ウォーム)及びはす歯歯車(ウォームホイール)の組合せ機構)、ベルト若しくはタイミングベルト及びプーリ、又は、スプロケット及びローラーチェーン等を含んでよい。測定対象となる試料に応じて、その構造、形状、材質等が適宜変更、修正、調製される。本発明の実施例である試料冷却装置は、特に、板状の試料を用いることが多いため、それに則したサンプルホルダーの構造、形状、材質を選択すべきである。特に、表面に、電子ビーム、放射線、その他の光等を照射して、反射する放射線や光などのスペクトルを解析することを念頭に置けば、表面をツライチに出しやすいサンプルホルダーが好ましいと考えられる。
前記高熱伝導性電気的絶縁部材は、熱伝導性が高い電気的絶縁部材であり、例えば、絶縁性のセラミックス等がその材料として好適に用いられる。例えば、サファイアプレートを含むことができる。上述するフレキシブルな伝熱継手とは、少なくとも2つの部材の間に熱を伝えることができる継手を意味してよく、熱の導管又は導体を意味してよい。この伝熱継手は、フレキシブルであり、柔軟に変形できる。例えば、前記伝熱継手により接続された少なくとも2つの部材が相対的な移動をすることが容易にできるほど柔軟に変形可能であってよい。具体的には、2つの部材(例えば、電気的絶縁部材及び伝熱手段)の間に張力が働くと、撓んだ状態からピンと張った状態になることができてもよい。或いは、撓んだ状態であって、前記2つの部材の少なくとも1つが回転する等の相対移動をしたために、前記伝熱継手が曲がったり、ねじれたりすることができる。このような伝熱継手としては、熱伝導率の高い材料からなる細線を束ねたもの(撚ったものを含む)を含むことができる。細線は、容易に屈曲等の変形が可能なものが好ましい。例えば、無酸素銅製の細線を含むことができる。例えば、銅編み線を含んでもよい。外部駆動手段は、ねじり力を伝達可能な剛性の高い線やワイヤ等を含むことができ、例えば、最終シャフトを含む駆動シャフトを含んでもよい。また、駆動シャフトの先端などに取り付けられる傘歯車を含む歯車のような係合機構を含んでもよい。そして、剛直なシャフトの場合は特にフレキシブルなカップリング(例えば、ユニバーサルジョイント)を用いて駆動軸の向きを変えることができる。また、このような外部駆動手段には、真空槽内又は槽外に配置されたモータ等によりねじり力を与えてもよい。モータは、サーボモータやステッピングモータを含んでよく、エンコーダーを更に備えてもよい。真空槽外にモータがある場合は、真空槽の外側から内側にねじり力のような力を伝達できる継手を備えることができる。例えば、磁性流体シールにより、真空を維持しながら直接駆動軸を真空槽の内外を貫通させることもできる。クリーンな超高真空を実現するように、内外を貫通する軸のようなものがないマグネットカップリングのような継手を用いることもできる。
また、試料の裏側に設けられたフィラメントからの荷電粒子等を表面(又は裏面)にぶつけることがあり得るので、試料及び/又はサンプルホルダーの電位を、真空槽等よりも高く(若しくは低く)することが好まれる。そのため、試料及び/又はサンプルホルダーは、真空槽等から電気的に絶縁されていることが好ましい。一方、試料及び/又はサンプルホルダーは面内で回転可能に設けられているので、回転機構から、或いは、その回転機構と共に、真空槽等から電気的に絶縁されていることが好ましい。一方、低温を実現するためには、熱吸収部材(例えば、中間ロッド等を含む伝熱手段)に密着することが好ましい。このような特性を得るために、熱の良伝導材料であるが電気的に絶縁性のセラミックス特に酸化アルミニウム(例えば、多結晶酸化アルミニウムや、サファイア等の単結晶酸化アルミニウム)を介在させることができる。また、一連の動作は、高真空中で行われるので、有機成分が混入しないことが好ましい。従って、回転部材とそれを支持する回転しない部材との間の摺動部には、油、グリース等を使用することが難しい。そのため、二硫化モリブデン等の固体潤滑剤を表面にコーティングさせた材料(例えば、スパッタリングにより二硫化モリブデン付着させたステンレス鋼等)を用いることが好ましい。真空槽は、高真空を達成するために、ベーキングを行うためのヒータを備えてもよい。
上述する装置移動機構は、XYステージ及びそれらに垂直なZ軸方向に移動できるZステージを含んでもよい(xyzステージ)。このような移動機構による移動を容易にするために、ベローズを更にそなえることができる。
以上のような構成を備えるため、本発明の実施例である試料冷却装置は、液体ヘリウムを用いることなく、試料を、例えば、30K以下、20K以下、又は15K以下等に冷却し、なおかつ試料を面内方向に高精度で回転させることが可能になった。このような回転としては、例えば時計回りを正にして、±10度若しくはそれ以上、±30度若しくはそれ以上、±50度若しくはそれ以上、±70度若しくはそれ以上、或いは、±90度若しくはそれ以上、或いは、0から+又は−の何れかにおいて10度若しくはそれ以上、30度若しくはそれ以上、50度若しくはそれ以上、70度若しくはそれ以上、90度若しくはそれ以上等を例として挙げることができる。これに加え、本装置は、固体表面の実験研究に応用する際にしばしば求められる種々の仕様を満たすことができる。
本発明の実施例である試料冷却装置の概略模式図である。 本発明の実施例である試料冷却装置を示す一部を切り取った斜視図である。 本発明の実施例である試料冷却装置の試料保持機構を構成するサンプルステージの周りの正面からの斜視図である。 本発明の実施例である試料冷却装置の試料保持機構を構成するサンプルステージの周りの背面からの斜視図である。 サンプルホルダー及びその周辺の詳細を示す分解斜視図である。 サンプルホルダー及びその搬送に用いるサンプルトランスファーを示す斜視図である。 サンプルホルダー及びその搬送に用いる別のサンプルトランスファーを示す斜視図である。 サンプルステージ等の試料保持機構を装着したボート部材の概略を示す概略斜視図である。 サンプルステージ等の試料保持機構を装着したボート部材の概略を示す概略正面図である。 サンプルステージ等の試料保持機構を装着したボート部材の概略を示す概略A−A断面図である。 別の実施例にかかるサンプルステージ等の試料保持機構を装着したボート部材の概略を示す概略断面図である。 更に別の実施例にかかるサンプルステージ等の試料保持機構を装着したボート部材の概略を示す概略断面図である。 図11の実施例にかかるサンプルステージ等の試料保持機構を装着したボート部材の概略を示す概略横断面図であり、伝熱継手である銅編み線の一部を切断し断面を表すようにした概略図である。 1つの実施例における伝熱継手に相当する銅編み線の概略断面図である。 極低温における、銅及びサファイアの熱伝導率の温度変化を示すグラフである。 試料冷却装置のGM冷凍機ヘッド及びそれに接続される中間ロッド等を内包するラディエーションチューブを示す正面図である。 試料冷却装置のGM冷凍機ヘッド及びそれに接続される中間ロッド等を内包するラディエーションチューブを示す側面図である。 試料冷却装置のGM冷凍機ヘッド及びそれに接続される中間ロッド等を内包するラディエーションチューブを示す上面図である。 試料冷却装置のGM冷凍機ヘッド及びそれに接続される中間ロッド等を内包するラディエーションチューブを示す斜視図である。 試料部を拡大した斜視図である。 試料冷却装置のGM冷凍機ヘッドに接続される中間ロッド等を内包するラディエーションチューブを示す斜視図である。 試料冷却装置のGM冷凍機ヘッドに接続される中間ロッド等を内包するラディエーションチューブの外面に沿う駆動伝達経路を示すイメージ斜視図である。 別の実施例における、装置移動機構の上から取り付ける試料冷却装置のGM冷凍機ヘッド及びそれに接続される中間ロッド等を内包するラディエーションチューブを示す部分断面斜視図である。 別の実施例における、装置移動機構の上から取り付ける試料冷却装置のGM冷凍機ヘッド及びそれに接続される中間ロッド等を内包するラディエーションチューブを示す部分断面側面図である。 ラディエーションシールドカバーの開状態を示す正面からの写真である。 ラディエーションシールドカバーの閉状態を示す正面からの写真である。 冷却開始からの経過時間と、中間ロッド部およびサンプルステージとの温度の関係を示すグラフである。 試料の面内回転角度と、中間ロッド部およびサンプルステージ部との温度の関係を示すグラフである。 本発明の実施例における試料冷却装置を用いた試料加熱試験において、タンタル試料と中間ロッド部における温度の関係を示すグラフである。
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施例を説明するが、本発明の範囲を限定するものではない。
[実施例1]
図1は、本発明の実施例である冷却装置の一例を示す模式図である。本発明の試料冷却装置10は、GM冷凍機のヘッド12、これにヘリウムガスを供給するチューブ14及びこれからヘリウムガスを排出するチューブ16、ヘリウムガスを圧縮するヘリウムガスコンプレッサー18からなるGM冷凍機と、GM冷凍機のヘッド12の下側にある装置移動機構20と、この装置移動機構20の槽内の移動機構を槽外から操作可能に接続するフランジ22、必要に応じてベーキング用ヒータ24を着脱可能に備える真空槽26(図1では、手前側を透明にしている。)、及びバルブ28で接続される真空ポンプ30からなる真空槽系と、ファーストステージ32を備えるGM冷凍機のヘッド12の先端のセカンドステージ(コールドエンド)34の下端に接続される中間ロッド36、ファーストステージ32の下端に接続されて中間ロッド36を覆うラディエーションチューブ38、及びそれらの下側に位置する試料部40からなる試料保持システムと、真空槽26の下方部で試料部40に高さを合わせてゲートバルブ42を備えるサンプルトランスファー機構44と、を含む。このサンプルトランスファー機構44は、真空ポンプ49で排気される真空槽の外部から操作可能な操作部46にマグネットカップリングで接続されるサンプルトランスファー装置48を備える。GM冷凍機は、比較的安価な液体ヘリウムフリーの冷凍機であり、市販のものを利用できる。上記装置移動機構20は、フランジ22に対して高さ方向以外(水平方向若しくはXY方向)が固定されたXYステージ20aと、このXYステージのフレームを固定する中間フランジの高さ方向(Z方向)を調整可能なZ軸調節機構20bと、及び、XY方向及びZ方向の動きを可能にするベローズ20cと、を備える。これにより、試料部40の真空槽26内の位置を微調整できる。真空ポンプ30、49としては、例えば、市販のターボ分子ポンプを用いることができる。磁気浮上型が好ましい。
図2は、本発明の1つの実施例である試料冷却装置(GM冷凍機ヘッドに接続されたコンプレッサーは除く。)の一部を部分的に切り取った断面を含む斜視図を示す。図1で模式的に示したGM冷凍機のヘッド12は、100℃以上の高温に耐えない蓄冷器が容易に着脱可能な構造となっている。このGM冷凍機のヘッド12を取り外すことで、200℃程度のベーキングが実施可能となり、その結果、超高真空(10−8 Pa以下)が得られる。このGM冷凍機ヘッド12の先端のセカンドステージ(コールドエンド)34では、冷凍機単体で4K程度の最低到達温度が得られる。この低温は、中間ロッド36を介して、最終的に、サンプルホルダー50に伝わる構造となっている。また中間ロッド36やサンプルステージ52への輻射熱の侵入は、ファーストステージ32に接続された金メッキ無酸素銅製のラディエーションチューブ38とラディエーションシールドカバー(後述)により最小限に抑えられている。ステッピングモータ107を備える回転導入器100が備えられている。
試料部40に配置される試料保持機構は、xyz方向の移動が可能なxyzステージ及び回転動作が可能な回転ステージから構成される装置移動機構20に中間ロッド36及びGM冷凍機ヘッド12を介して接続されて、真空槽26(図1参照)内で、真空を破らず、任意の方向に試料を移動できる構成とされている。これにより、構造解析の際に必要となる試料位置の調整が可能となる。
図3及び図4は、中間ロッド36の先端部に設置され、試料部40に配置される試料保持機構を構成するサンプルステージ52の周りの詳細な正面からの斜視図及び背面からの斜視図をそれぞれ示す。また図5は、モリブデン製サンプルホルダー50及びその周辺の詳細を示す分解斜視図である。そして、図6A及び6Bは、サンプルホルダー50及びその搬送に用いるサンプルトランスファー62(2種類)を示す斜視図である。薄板形状の試料56は、このサンプルホルダー50のリヤプレート58とサンプルホルダー50の間に挟むことで固定されてもよく、リヤプレート58の開口部に溶接されてもよい。このとき、スリ割りボルト59により、リヤプレート58とサンプルホルダー50とを締結することができる。このサンプルホルダー50は、サンプルステージ52に固定される。その際、ホルダーネジ60(図3参照)を利用し、サンプルホルダー50とサンプルステージ52を密着させる。即ち、ホルダーネジ60を回転することで、サンプルホルダー50とサンプルステージ52の間に押し付け力を付与し良好な熱伝導及び/又は熱伝達を得る。ホルダーネジ60の回転には、図6A又は6Bのサンプルトランスファー62を用いる。このサンプルトランスファー62は、サンプルトランスファー治具64を備え、サンプルホルダー50をサンプルステージ52に設置する際又は取り外す際にも用いる。すなわち、サンプルホルダー50はサンプルステージ52から、その長手方向に抜き差しが可能な構造となっており、マグネットフィードスルー等(例えば、サンプルトランスファー装置48及び操作部46による機構)と組み合わせることで、サンプルホルダー50の下端側の突起部51を掴むことにより超高真空中での試料交換が可能である。サンプルホルダー50をサンプルステージ52から外す際には、前述のホルダーネジ60をサンプルトランスファー62を用いて緩める。こうすることで、サンプルホルダー50を容易に取り外すことが出来る。サンプルステージ52は面内回転用ギア66に同期して回転するように設置されており、この面内回転用ギア66を回転させることで、試料を極低温に保ちつつ、面内方向に回転することが出来る。このとき、開口部122(図20参照)の枠との干渉を避けるため、図6Bのように切除下面65を備えるようにしてもよい。
サンプルステージ52と中間ロッド36は、ボート部材76のトップ面77が中間ロッド36の下端面に密着してなされる電気的及び熱的な接続を介して、接続され得るが、ここでは、サファイアプレート86を介在させることにより電気的には絶縁されている。従って、サンプルステージ52に1kV程度の高電圧を高電圧印加用端子70に印加することが可能である。またサンプルホルダー50の背後には、熱電子放出用のタングステン(W)フィラメント72を設置してあるので、サンプルステージ52に正の高電圧を印加しながらタングステンフィラメント用配線74からWフィラメント72に通電することで、試料を1000K以上に加熱することが出来る。サファイアプレート86は、極低温での熱伝導が良好である一方で、高温では熱を伝え難い性質がある。従って、最低到達温度付近では、試料温度はセカンドステージ34の温度とほぼ同じであるが、加熱中は試料56の温度を選択的に上げることが出来る。試料56の中間ロッド36を介しての冷却は、中間ロッド36に密着されるトップ面77を備えるボート部材76のデッキ78に一端を密着される銅編み線80の熱伝導を利用して行われる。この銅編み線80の他端部は、サファイアプレート86に密着される。この銅編み線80は、サンプルステージ52がサファイアプレート86と共に時計回り及び反時計回りの90度を面内回転することができるように、フレキシブルであり、かつ、十分な長さを備える。図3の基本状態においては、後述するラディエーションカバー内の空間に撓んだ状態にある。サファイアプレート86の温度は、この他端部と同じ回転位置に配置される温度センサ82により測定される。
図7、図8、及び図9は、試料部40に配置される、サンプルステージ52等の試料保持機構を装着したボート部材76の概略を示す概略斜視図、概略正面図、及び概略A−A断面図である。これらの図で示されるサンプルステージ52は、図3において示される基本状態から、90度反時計回りに回転した状態にあり、サンプルステージ52からサンプルホルダー50がほぼ抜き出された状態になっている。サンプルステージ52は、上部カバー84及びサファイアプレート86を備え、挿入されたサンプルホルダー50の両側の傾斜部50aにマッチする傾斜部84aを介して、下側の下部基材68に、ホルダーネジ60により、電気的絶縁のための碍子を介して押し付けられる。下部基材68及びサファイアプレート86の中央には円形の開口部が設けられ、その開口部に沿って外側(該開口部を規定する下部基材68の縁部)にローラベアリングのようなベアリング88によって、かかる押し付け力が支持される。尚、ホルダーネジ60の下部基材68側の端部は、ボート部材76に固定されるが、ナット90で締結されている。下部基材68は、中空円筒軸92のプレート側の端部の凸部との係合により、該中空円筒軸92と共に回転する。該中空円筒軸92は、面内回転用ギア66の内周面に固定され、面内回転用ギア66と同期して回転する。面内回転用ギア66は、最終シャフト94の先端にある傘歯車96と係合し、最終シャフト94が、カップリング93(図3参照)を経由して、面内回転用回転導入器100からの回転により回転すると、最終的に面内回転用ギア66が回転し、サンプルステージ52が面内において回転する。
図10は、別の実施例におけるボート部材76の概略を示す略式断面図である。サンプルステージ52は、同様に90度反時計回りに回転した状態にあり、サンプルステージ52からサンプルホルダー50が抜き出された状態になっている。サンプルステージ52は、上部カバー84及びサファイアプレート86を備え、この図では抜き出されているが挿入されるサンプルホルダー50の両側の傾斜部50aにマッチする傾斜部84aを介して、図中下側の下部基材68に、ホルダーネジ60により碍子61を介して、押し付けられる。下部基材68及びサファイアプレート86の中央には円形の開口部が設けられ、中空円筒軸92の内径を規定する。該中空円筒軸92は、ボールベアリングのようなベアリング88によって、回転自在に支持される。ホルダーネジ60の下部基材68側の端部は、下部基材68の下面に固定されるが、ナット90で締結されている。サファイアプレート86は、中空円筒軸92と共に回転する。中空円筒軸92は、他端側に面内回転用ギア66を備える。面内回転用ギア66は、最終シャフト94の先端にある傘歯車96と係合し、最終シャフト94が、複数のユニバーサルジョイント98(図18参照)を経由して、面内回転用回転導入器100からの回転により回転すると、最終的に面内回転用ギア66が回転し、サンプルステージ52が面内において回転する。
図11は、更に別の実施例におけるボート部材76の概略を示す略式断面図であり、タングステンフィラメント72等を図10から省略したものである。サンプルステージ52は、同様に90度反時計回りに回転した状態にあり、サンプルステージ52にサンプルホルダー50が固定された状態になっている。サンプルステージ52は、上部カバー84及びサファイアプレート86を備え、挿入されたサンプルホルダー50は、その両側の傾斜部50aにマッチする傾斜部84aを介して、サファイアプレート86に押し付けられる。サファイアプレート86は、それに密着して支えるバックアップ基材85を含む下側の下部基材68に、ホルダーネジ60により碍子61を介して、押し付けられる。真空中で、サンプルホルダー50を挿入又は脱装する際には、このホルダーネジ60は緩められ、サンプルホルダー50の上端側(突起部51のある下端部とは反対側の端部)で若干肉薄で幅狭となるように先細り形態となっていることと相まって、(開口部に試料56を付けた若しくは付けていない状態の)サンプルホルダー50を挿入し易くなっている。そして、挿入の度合いが高くなると、緩めたホルダーネジ60のために図中上方に移動可能な上部カバー84を押し上げる。次に、サンプルトランスファー装置48を用いて、このホルダーネジ60を締めることにより、サンプルホルダー50の下側のサファイアプレート86への押し付け力を増大させ密着性を向上させる。これにより、サンプルホルダー50及び試料56の温度をより早く低下させ、より低い温度まで到達させることができる。図12は、図11のボート部材76の概略縦断面図を90度回転させた概略横断面である。サファイアプレート86は、その表面81aにサンプルホルダー50及び銅編み線端子81をそれぞれホルダーネジ60及び締結ネジ81bにより押し付けられた状態で互いに離して備える。サファイアは、電気絶縁性であるが、熱伝導性が高いため、サンプルホルダー50と銅編み線端子81との間では、電気は流れないが、熱は十分流れることになる。一方、銅は良導電性であり良熱伝導性であるので、銅編み線をかしめる等することにより各細線の間の熱伝達性を向上させた銅編み線端子81から銅編み線80を介して、ボート部76及びそのトップ面77が密着する中間ロッド36へと、電気及び熱が十分に流れることが期待される。図13は、銅編み線80の横断面80aを示す。また、銅及びサファイアの熱伝導率の温度依存性を特に極低温領域においてグラフにしたものを図14に示す。この図から分かるように、サファイアは、10Kから100Kの間で非常に高い熱伝導率を示し、銅も、同じような範囲で非常に高い熱伝導率を示す。このため、温度センサ82は、十分低い温度を示すことができる。一般に、回転等の相対的な移動をする少なくとも2つの部材の間の熱伝達は、相対的な移動を容易にさせるために、ベアリング等を介在させるので、接触面積が小さく、熱伝達率が小さくなる。そのため、熱伝導管又は熱伝導体で両者をつないで、別ルートの熱伝導経路を実現させることが好ましい。しかしながら、剛性の高い金属管や金属ロッドでは、両者の相対的な移動が困難である。そのため、フレキシブルな熱伝導管又は熱伝導体で両者をつないで、熱伝導の別ルートを確保する。このようなフレキシブルな熱伝導管又は熱伝導体としては、例えば、銅等の金属細線を撚ったものが挙げられ、その一例は、上述する銅編み線80である。図13に示すように各細線80bはほぼ同じ太さを備え、互いに接触可能に撚られているが、細線同士が接着又は溶着されている訳ではないので、編み線として、フレキシブルであり、屈曲や湾曲等が自在に行われる。例えば、各細線の径は、約1mm以下が好ましい。より柔軟性を望むのであれば、約0.5mm以下が好ましい。更に、柔軟なものを望めば、約0.1mm以下が好ましい。より、柔軟なものを望めば、約0.04mm以下が好ましい。あまり細すぎると、取り扱いが不便となるので、約0.0001mm以上が好ましい。約0.01mm以上が好ましい。熱伝導率が高い無酸素銅製が好ましい。従って、相対移動による両者の最大離間距離を担保可能な十分な撓みを持たせれば、サンプルステージ52の移動を妨げることなく、十分な熱伝導を担保できる。
図15A、15B、及び15C、並びに、16A及び16Bは、図1の概略図に示されるように、装置移動機構20の上から取り付けるGM冷凍機ヘッド12及びそれに接続される中間ロッド等36を内包するラディエーションチューブ38等を示す正面図、側面図、及び上面図であり、並びに、上から見た斜視図及びその試料部近傍を拡大した部分斜視図である。図17及び18は、GM冷凍機ヘッド12の一部及びそれに接続される中間ロッド等を内包するラディエーションチューブ38の外側等に沿う駆動伝達経路の一部を示す斜視図及びイメージ斜視図である。図19A及び19Bは、GM冷凍機ヘッド12及びそれに接続される中間ロッド36等を内包するラディエーションチューブ38等を示す一部接断面を備える正面図及び斜視図である。1つの実施例において、面内回転用の回転導入器100、ラディエーションシールドカバー用回転導入器108、温度センサ及び低温コントロールヒータ用電流導入端子110、試料高電圧印加用端子112を備える。GM冷凍機ヘッド12において、ヘリウムガスを供給/排出するチューブ並びにコンプレッサーは省略されている。GM冷凍機ヘッド12の下に配置される装置移動機構20は、ステッピングモータ107を含む面内回転用回転導入器100、ラディエーションシールドカバー用回転導入器108、温度センサ及び低温コントロールヒータ用電流導入端子110、及び試料高電圧印加用端子112を備える。上述のように、ステッピングモータ107の回転を、面内回転用回転導入器100により、真空槽26内の最終シャフト94に伝え、傘歯車96、面内回転用ギア66、及びサンプルステージ52を回転させることができる。温度センサ及び低温コントロールヒータ用電流導入端子110は、それぞれ独立に、上述した温度センサ82を含み真空槽26内に配置される温度センサ及び低温コントロールヒータ114(図3参照)に接続される。また、試料高電圧印加用端子112は、上述するサンプルステージ52に正の高電圧を印加するために使用され、また、タングステンフィラメント72に通電すべく、タングステンフィラメント用配線74に電流を流すために使用される。中間ロッド36を覆うラディエーションチューブ38は、ファーストステージ32から下方に延びているが、面内回転用回転導入器100からの駆動シャフト104は、ラディエーションチューブ38の外側を這った後、途中から内側に入り込む。また、ステッピングモータ107を含むラディエーションシールドカバー用回転導入器108からの駆動シャフト116は、ラディエーションチューブ38の外面に沿うように延びている。そして、試料部40の位置にラディエーションシールドカバー118が配置されている。ラディエーションシールドカバー118は、その上のラディエーションチューブ38から接続部120を経由して接続される少し径を拡大したチューブ形状のものである。その背面側は、内包する試料保持機構を包含できるように、横断面が長四角となる半円筒半四角柱形状をしている。ラディエーションシールドカバー118の下端側の半分以降では、正面側において円筒が縦に半割されたように、フロント部分が切り取られ、正面視で長四角の開口部122がほぼ垂直に形成される。該開口部122の縁を規定する枠を形成するとともに、その枠は、上下にやや幅広のシャッター受け面となる上枠136及び下枠138を面を合わせてほぼ垂直に備える。前記開口部122内には、図3及び4に示すサンプルステージ52が顔を出している。図18は、また別の実施例において、駆動シャフト104及びカップリング93を経由して最終シャフト94までの駆動伝達経路を示すイメージ斜視図である。ラディエーションチューブ38の外側に沿って軸受102により回転自在に固定された駆動シャフト104を示している。この回転は、手動によっても与えることができるが、ステッピングモータ107で与える方が、定量性に勝るので好ましい。
図19A及び19Bは、別の実施例における、装置移動機構の上から取り付ける試料冷却装置のGM冷凍機ヘッド及びそれに接続される中間ロッド等を内包するラディエーションチューブを示す部分断面斜視図及び部分断面側面図である。上述するように、銅編み線80がラディエーションカバー内の空間に撓んだ状態にあることがわかる。これにより、サンプルステージ52がサファイアプレート86と共に時計回り及び反時計回りの90度を面内回転しても、銅編み線80が対応可能となっている。また、図18に示すようにラディエーションチューブ38の外側に沿っている駆動シャフト104は、途中からユニバーサルジョイント98を経由してラディエーションチューブ38内に入り、回転駆動力を伝える駆動シャフト104は、図3及び4に示すカップリング93に接続されて、最終シャフト94に回転駆動力を伝える。
図20及び21は、ラディエーションシールドカバー118の(イ)開状態及び(ロ)閉状態をそれぞれ示す正面からの写真である。図20において、ラディエーションシールドカバー118の向かって左側の側部に、上述する駆動シャフト116及び回転軸受124が固定され、ヒンジ126により回動可能に固定されたラディエーションシールドカバー部シャッター(以下、「シャッター」)128を開閉できるように該駆動シャフト116は係合する。シャッター128は、ヒンジ側屈曲部130、その高さ中央において横(水平)に延びるスリット134を規定する上板140及び下板142を含むフロント部133、及び留め金側屈曲部132を備える。ヒンジ側屈曲部130及び留め金側屈曲部132は、少し離れてサンプルステージ52を覆うように、ヒンジ部から少し前面側に延びてからほぼ90度に屈曲し、フロント部133のフロント面を形成する。前記開口部122の枠の上枠136及び下枠138のフロント側に、前記上板140及び下板142の背面側が接触し、前記上板140及び下板142の冷却が促進される。開口部122からサンプルホルダー50が横向きにスライドして取り出されるためには、サンプルホルダー50が押し付けられるサファイアプレート86の表面が開口部122の右横枠144よりもフロント側に突出することが好ましい。尚、サンプルステージ52をサファイアプレート86に締め付けるホルダーネジ60等は、前記スリット134から突出するため、シャッター128とは干渉しない。駆動シャフト116は、回転軸受124が固定されたヒンジ126を直接的に駆動するが、必要であるならば、減衰機構を設けて、より高いトルクを生じるようにしてもよい。このようにして、このシャッター128を開けることで、真空を破らずに試料の交換が可能である。
上述では、ラディエーションシールドカバー用回転導入器108を用いて、シャッター128の開閉を行ったが、サンプルホルダー50の着脱には、真空槽26の長手方向に対して、ほぼ垂直な方向の駆動が必要となる。この駆動を実現するためには、サンプルステージ52若しくはボート部材76或いはラディエーションチューブ38の長手方向に対して垂直な方向(或いは、サンプルステージ52若しくはボート部材76或いはラディエーションチューブ38は垂直方向に延びるといえるので、それに直角な方向である水平な方向)に相対的な移動を実現する。このような場合は、図1に示すような真空槽26の側面に取り付けたサンプルトランスファー機構44を備えることができる。真空槽26は、フランジ22を介して、中間ロッド36やサンプルステージ52に対して固定されているので、これを基準に、サンプルステージ52に対する相対位置を特定・固定することができる。更に、水平方向に十分な移動距離を取ることができるので、図1並びに図6A及び6Bに示すようにサンプルトランスファー装置48又はサンプルトランスファー62を用いて、サンプルホルダー50の抜き差しができる。シャッター128を開けることで、長四角の開口部122からサンプルステージ52を露出させ、ホルダーネジ60を緩めて、サンプルホルダー50を抜き出し、更にそれから試料56が固定されたリヤプレート58を抜き出すこともできる。
また、シャッター128が閉じた状態であっても、スリット134から試料56が露出しているので、必要に応じて、電子ビームや電磁波等を、試料56表面に照射することができる。或いは、試料56表面に照射した光の反射光若しくは散乱光を検出することも可能である。
[実験例]
図1に示す試料冷却装置10により、以下のような確認実験を行った。室温状態にある試料冷却装置10のGM冷凍機のスイッチを入れ、試料を付けることなく予備試験として、冷却を開始した。その結果として、図22に、冷却開始からの経過時間と、中間ロッド36及びサンプルステージ52の温度との関係を示す。このグラフにおいては、シリコンダイオード温度センサーで測定された中間ロッド36及びサンプルステージ52のそれぞれの各温度と、冷却開始からの経過時間が示されている。冷却開始後、4時間以内に、中間ロッド36及びサンプルステージ52のそれぞれの温度が一定の値を示すようになり、互いにそれぞれの最低温度に到達したといえる。このときのセカンドステージ34の最低到達温度は、10.0Kであった。
上述のように、無負荷状態で、一旦最低到達温度を示した後、面内回転用回転導入器100のステッピングモータ107を駆動し、サンプルステージ52を面内で0度から時計回りに90度回転させた。このときの回転速度は、約8.6度/分であった。このときの試料の面内回転角度(基本状態を0度とする)に対する、中間ロッド36及びサンプルステージ52のそれぞれの温度をプロットしたグラフを図23に示す。この図から分かるように、中間ロッド36の温度は所々でピーク様を示しつつ徐々に上がっているように見えるが、7.5Kを超えることがなかった。一方、サンプルステージ52の温度は、同様に、所々でピーク様を示しつつ徐々に上がっているように見えるが、15K以下に保たれたことが分かる。
次に、サンプルホルダー50に試料として多結晶タンタルを取り付け、上述のように、一旦は最低到達温度に到達させた後、電子衝撃加熱を開始した。この電子衝撃加熱は、試料へ650〜1000Vの電圧を印加し、タングステンフィラメントに5〜9Aの電流を通電することで行った。これにより、0〜40mAのエミッション電流を得た。図24は、この電子衝撃加熱中の、試料、セカンドステージ、サンプルステージ、中間ロッド、編み導線付近の温度を調べた結果であるが、この試料加熱試験における多結晶タンタル及び中間ロッドのそれぞれの温度の経時変化を示したグラフである。加熱中の、タングステンフィラメントの通電電流と試料への印加電圧を調整することで、試料の温度を1375K以下の範囲で連続的に可変であることが示される。一方、加熱中も中間ロッドは200K以下に保たれた。このため、冷凍機ヘッドへの熱ダメージは無いことが分かる。ちなみに、加速電圧1000V、エミッション電流が37.3mAでは、1375Kの試料温度が得られた。
次に、上述のように無負荷状態で一旦最低到達温度を示した後、面内回転用回転導入器のステッピングモータを駆動し、サンプルステージを面内で時計回り又は反時計回りに10度、45度、90度試料を回転した後、逆方向に同じ角度だけ回転した際の、最初の角度からのずれを調べた。駆動した角度は、ステッピングモーターに付属するロータリーエンコーダーを用いて測定し、実際のサンプルステージの角度は、レーザーオートコリメーターを用いて計測した。その面内方向の回転精度についての評価結果を表1にまとめる。すべての実験において、角度のずれは0.5度に収まったことが分かる。
以上述べてきたように、本願の発明の試料冷却装置では、外部から試料への熱流入を最小にするように、閉サイクルヘリウム冷凍機のコールドエンドに取り付けられた試料保持機構を設計・製作することで、液体ヘリウムを用いることなく、試料を15K以下に冷却し、なおかつ試料を面内方向に高精度で回転することが可能になった。これに加え、本装置は、固体表面の実験研究に応用する際にしばしば求められる下記仕様を満たす。
(1)200℃程度のベーキングに耐え、超高真空(10−8 Pa以下)が得られること。
(2)真空を破らずに試料交換が可能なこと。
(3)表面観測のために様々なビームの入射・出射が可能なこと。
(4)ビームの試料電流が測定できるように試料は電気的に絶縁されていること。
(5)試料表面清浄化のために、電子衝撃加熱により1000K以上の加熱が可能なこと。
(6)試料表面の最低到達温度が15K以下であること。
(6)試料を面内方向に±90度の範囲で、精度0.5度以下の精度で回転可能なこと。
尚、これまでの実施例では冷凍機としてGM冷凍機を用いたが、他の種類の冷凍機のコールドエンドに本技術の熱シールドや伝熱棒(中間ロッド)等を取り付けることにより、同様の試料冷却移動装置を構築することができることは理解されるべきである。
10 試料冷却装置
12 GM冷凍機のヘッド
14 ヘリウムガスを供給するチューブ
16 ヘリウムガスを排出するチューブ
18 ヘリウムガスコンプレッサー
20 装置移動機構
20a XYZステージ
20b 回転ステージ
22 23 フランジ
24 ベーキング用ヒータ
26 真空槽
28 バルブ
30 49 真空ポンプ
32 ファーストステージ
34 セカンドステージ(コールドエンド)
36 中間ロッド
38 ラディエーションチューブ
40 試料部
42 ゲートバルブ
44 サンプルトランスファー機構
46 操作部
48 サンプルトランスファー装置
50 サンプルホルダー
52 サンプルステージ
56 試料
58 リヤプレート
59 スリ割りボルト
60 ホルダーネジ
61 碍子
62 サンプルトランスファー
64 サンプルトランスファー治具
66 面内回転用ギア
68 下部基材
70 高電圧印加用端子
72 タングステン(W)フィラメント
74 タングステンフィラメント用配線
76 ボート部材
77 トップ面
78 デッキ
80 銅編み線
81 銅編み線端子
82 温度センサ
84 上部カバー
85 バックアップ基材
86 サファイアプレート
88 ベアリング
90 ナット
92 中空円筒軸
93 カップリング
94 最終シャフト
96 傘歯車
98 ユニバーサルジョイント
100 面内回転用回転導入器
102 軸受
104 駆動シャフト
107 ステッピングモータ
108 ラディエーションシールドカバー用回転導入器
110 温度センサ及び低温コントロールヒータ用電流導入端子
112 試料高電圧印加用端子
114 低温コントロールヒータ
116 駆動シャフト
118 ラディエーションシールドカバー
120 接続部
122 長四角の開口部
124 回転軸受
126 ヒンジ
128 ラディエーションシールドカバー部シャッター
130 ヒンジ側屈曲部
132 留め金側屈曲部
133 フロント部
134 スリット
136 上枠
138 下枠
140 上板
142 下板
144 右横枠

Claims (20)

  1. 閉サイクルヘリウム冷凍機と、
    該閉サイクルヘリウム冷凍機のコールドエンドに取り付けられる伝熱手段と、
    該伝熱手段へ外部からのラディエーションを遮断すべきシールド手段と、
    該伝熱手段に熱的に接触し、試料を特定の面内に回転可能に保持する試料保持手段と、
    前記伝熱手段、シールド手段、及び試料保持手段を真空中に維持可能な真空槽と、
    を備える試料冷却装置において、
    前記試料保持手段は、
    前記特定の面内において回転可能な回転部材と、
    該回転部材を回転可能に受ける受け手段と、
    該回転部材に保持される前記試料を少なくとも前記真空槽又はシールド手段又は伝熱手段から電気的に絶縁可能である、高熱伝導性電気的絶縁部材と、及び
    前記回転部材に電気絶縁的に係合して、前記特定の面内の回転運動を伝えるものであって、当該試料保持手段の外部からの回転駆動力を受けて回転させられる受動回転手段と、
    を含み、
    更に、前記伝熱手段に熱的に接続され、前記電気的絶縁部材に密着して、該電気的絶縁部材から前記伝熱手段へと熱の移動を可能にする、フレキシブルな伝熱継手と、及び
    前記受動回転手段に係合して駆動させる外部駆動手段と、
    を含む、試料冷却装置。
  2. 前記閉サイクルヘリウム冷凍機は、GM冷凍機を含むことを特徴とする請求項1に記載の試料冷却装置。
  3. 前記伝熱手段は、伝熱棒を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の試料冷却装置。
  4. 前記シールド手段は、ラディエーションチューブを含むことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の試料冷却装置。
  5. 前記回転部材は、サンプルステージを含むことを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の試料冷却装置。
  6. 前記受け手段は、ベアリングを含むことを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の試料冷却装置。
  7. 前記高熱伝導性電気的絶縁部材は、サファイアプレートを含むことを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の試料冷却装置。
  8. 前記受動回転手段は、前記回転部材との共通する軸に、電気的絶縁材料を介して結合するものであって、前記外部駆動手段の係合凸部若しくは凹部に係合して、駆動力を伝達できる伝達部材であることを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載の試料冷却装置。
  9. 前記フレキシブルな伝熱継手は、銅編み線を含むことを特徴とする請求項1から8のいずれかに記載の試料冷却装置。
  10. 前記外部駆動手段は、駆動シャフトを含むことを特徴とする請求項1から9のいずれかに記載の試料冷却装置。
  11. 前記真空槽には、必要に応じてベーキング用のヒータが備えられることを特徴とする請求項1から10のいずれかに記載の試料冷却装置。
  12. 更に、装置移動機構を備え、前記試料保持手段を前記真空槽内において適切な位置に移動させることができることを特徴とする請求項1から11のいずれかに記載の試料冷却装置
  13. 前記試料保持手段は、前記伝熱手段の先端に備えられ、
    前記シールド手段は、前記伝熱手段を覆うラディエーションチューブ、及び、前記試料保持手段を覆うラディエーションシールドカバー、を含むことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の試料冷却装置。
  14. 前記ラディエーションシールドカバーは、少なくとも試料の一部を露出させる開口を備えるシャッターを含むことを特徴とする請求項13に記載の試料冷却装置。
  15. 前記シャッターは、ヒンジにより前記ラディエーションシールドカバーに回動可能に取り付けられ、
    前記真空槽の外側からの駆動力が前記ラディエーションチューブの外側に沿うように延びる開閉用駆動シャフトにより、前記シャッターが開閉すべく、前記ヒンジにおいて回動させられることを特徴とする請求項14に記載の試料冷却装置。
  16. 前記GM冷凍機は、そのヘッド部から延びる円筒形状のファーストステージ、及び、そのファーストステージの端部から延びる円筒形状のセカンドステージを含み、
    前記ファーストステージは、前記セカンドステージより大きい口径を備え、
    前記セカンドステージの外側の前記ファーストステージの端部に、前記シールド手段が取り付けられ、
    前記セカンドステージの先端から延びる前記伝熱手段がロッド形状であり、
    前記シールド手段は、前記伝熱手段を外部からのラディエーションを遮蔽すべく、前記伝熱手段を覆うことを特徴とする請求項2に記載の試料冷却装置。
  17. 前記外部駆動手段は、駆動シャフトを含み、
    該駆動シャフトは、前記シールド手段の外側に沿って延び、前記シールド手段の外側に固定される少なくとも1つの軸受を通ることを特徴とする請求項1から12のいずれかに記載の試料冷却装置。
  18. 前記駆動シャフトは、少なくとも1つのユニバーサルジョイントにより接続されることを特徴とする請求項17に記載の試料冷却装置。
  19. 前記駆動シャフトは、前記真空槽の外側の駆動装置により駆動されることを特徴とする請求項18に記載の試料冷却装置。
  20. 更に、真空ポンプを備える請求項1から19のいずれかに記載の試料冷却装置。
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