JP2018203662A - 生殖細胞追跡用抗体 - Google Patents

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Abstract

【課題】新規な生殖細胞追跡用抗体の提供。【解決手段】未分化生殖細胞表面抗原を認識する、生殖細胞追跡用抗体。【選択図】なし

Description

発明の背景
技術分野
本発明は、生殖細胞追跡用抗体に関する。また、本発明は、代理親魚技法において、移植した生殖細胞の宿主個体内での前記生殖細胞追跡用抗体を用いた、追跡方法に関する。
背景技術
近年ヒトをはじめとする動物での生殖技術の発展は大きな注目を浴びている。特に、魚類では、世界規模での食用水産資源消費量の増加および天然水産資源量の減少を解消するために、生殖技術としての種苗生産技術(人工種苗(稚魚)放流を含む)への期待が高まっている。
一般的に、魚類の種苗生産では、近親交配や特定疾病の発症による全滅を避けるために、親魚となる個体の遺伝的多様性が必要とされ、従って、多数の親魚を育成する必要がある。しかしながら、魚種によっては、種苗生産は難しい。例えば、クロマグロでは親魚は体重60kg以上と大型であり、遊泳方法から広い飼育環境を必要とする。また、チョウザメでは精子や卵の成熟に長い年月を要する。人為催熟が技術的に難しい魚種や、1対1交配が難しい魚種もいることから、多数の親魚を人為的な管理下で育成し、精子や卵を採取することは、コスト的および技術的に極めて難しい。
魚類の種苗生産技術として、本発明者らは、宿主(レシピエント)魚類とは異なる異種の魚類(ドナー魚類)由来の生殖細胞を、孵化前後の宿主魚類個体の腹腔内へ移植することによって、生殖細胞を生殖細胞系列(すなわち、精子または卵など配偶子)へ分化誘導することができることを見いだし、異種の宿主魚類での分離生殖細胞の生殖細胞系列への分化誘導に成功している(例えば、特許文献1参照)。この技術は、代理親魚技法または借り腹養殖技法とも呼ばれ、親魚の飼育に問題の多い魚類の精子や卵を、飼育しやすい異種の宿主魚類によって生産し、交配することにより低コストで簡便な種苗生産を可能にする技術であるとして期待されている。
特許文献1では、移植する生殖細胞として、始原生殖細胞、具体的には、始原生殖細胞に対して特異的に発現するvasa遺伝子の調節領域にGFP(Green Fluorescent Protein:緑色蛍光タンパク質)遺伝子を導入した遺伝子組換えニジマスの孵化胚から得た生殖隆起組織の懸濁液を原料に、緑色蛍光を指標としたフローサイトメトリー解析によって得られた蛍光強度の強い細胞集団を用いている。しかしながら、始原生殖細胞は、孵化前後の極めて若い胚に由来し、その数は孵化稚魚1尾当たり60個程度と大変少ないものであるため、商業的な量産化には向かないものであった。また、移植効率も望ましいものではなかった。
移植する生殖細胞の数を十分確保するために、例えば、非特許文献1では、ドナー魚類の生殖腺である精巣の細胞懸濁液から、生殖細胞を分離し、その分離生殖細胞を、代理親魚技法において、宿主魚類個体の腹腔内に移植する方法が開発された。また、望ましくない移植効率の下では、移植が成功したか否か(移植の成否)を早期に判断することが必要となるが、この文献には、移植の成否を、移植した生殖細胞の宿主魚類個体の生殖腺への生着の有無を指標に判断できることが示されている。
移植した細胞の宿主魚類個体の生殖腺への生着の有無は、生殖細胞に蛍光を発せさせるGFP遺伝子導入魚であれば簡易に判別できるが、GFP遺伝子導入魚の存在しない種類では利用できない。また、GFP遺伝子導入魚の作出には時間がかかり、マグロのように遺伝子導入魚の作出が困難な種類もある。さらに、遺伝子導入魚の生産が制限されている食用魚では実用化に向かないものであった。あるいは、移植した生殖細胞の宿主魚類個体の生殖腺への生着の有無は、移植後の宿主魚類個体の生殖腺をサンプルに、免疫組織染色等で診断することにより判断できる。しかしながら、免疫組織染色等での診断は、固定等の作業を必要とするため、簡易に、短時間では判断できず、また、移植した生殖細胞の検出感度も低いため、GFP遺伝子導入魚での判断よりも難しいものであった。
特開2003―235558号公報
Okutsu, T., Suzuki, K., Takeuchi, Y., Takeuchi, T., & Yoshizaki, G. (2006). Testicular germ cells can colonize sexually undifferentiated embryonic gonad and produce functional eggs in fish. Proceedings of the national academy of sciences of the United States of America, 103(8), 2725-2729.
このように、代理親魚技法において、生殖細胞の宿主魚類個体への移植の成否、すなわち、生殖細胞が宿主魚類個体の生殖腺への生着の有無について、GFP遺伝子導入魚同様に、簡易に確認できる、移植した生殖細胞の追跡方法は、発明者らが知る限り報告されていない。また、一般的な生殖技術の基礎研究では、精子や卵など生殖細胞の発生機構に関する研究が数多く報告されているが、遺伝子導入系統の作出と同程度に、生殖細胞を、特異的に、簡易に追跡できる方法は、本発明者らが知る限り報告されていない。
ところで、抗体とは、免疫システムの一部であり、抗原を認識して特異的に結合する働きをもつ。抗体は、抗体治療では、抗体医薬品として利用され、抗原抗体反応を通して、その抗原(例えば、細菌、ウイルス等)の機能を失活させることが知られている。そのため、従来では、例えば、細胞表面抗原を認識する抗体と、その抗原を含む細胞表面との反応では、細胞表面の機能が変化すると考えられていた。これに対して、本発明者らは今般、未分化生殖細胞表面抗原を認識する抗体を用いて、生殖細胞を、標識し、必要に応じて分離濃縮し、得られた標識された生殖細胞を宿主魚類個体の腹腔内に移植したところ、本抗体は移植後も生殖細胞から離れることなく、移植後20日経過しても、宿主魚類個体内で観察できることを確認した。また、本抗体で標識した生殖細胞は、移植した腹腔内から宿主魚類個体の生殖腺へ移動し、該生殖腺に生着した。すなわち、本抗体は、生殖細胞表面の機能を阻害することなく、生殖細胞を特異的に標識できることが分かった。さらに、本抗体を用いることで、vasa−GFP遺伝子導入魚と同程度に、移植した生殖細胞の追跡を可能とした。本発明はこれらの知見に基づくものである。
すなわち、本発明は、新規な生殖細胞追跡用抗体を提供することをその目的とする。また、本発明は、移植した生殖細胞の宿主個体内での、前記生殖細胞追跡用抗体を用いた、追跡方法を提供することもその目的とする。
本発明によれば、以下の発明が提供される。
(1)未分化生殖細胞表面抗原を認識する、生殖細胞追跡用抗体。
(2)直接標識されている、(1)に記載の生殖細胞追跡用抗体。
(3)FITC、フィコエリスリン、AlexaおよびHiLyteからなる群から選択される一種によって直接標識されている、(2)に記載の生殖細胞追跡用抗体。
(4)生殖細胞が魚類の生殖細胞である、(1)〜(3)のいずれかに記載の生殖細胞追跡用抗体。
(5)魚類が、サケ科魚類またはサバ科魚類である、(4)に記載の生殖細胞追跡用抗体。
(6)抗体産生ハイブリドーマTA−No.6−28(NITE BP−02222)、TA−No.15−1(NITE BP−02223)、No.95(NITE BP−01937)、No.172(NITE BP−01938)およびNo.189(NITE BP−01939)により産生されるモノクローナル抗体からなる群から選択される少なくとも一種の抗体である、(5)に記載の生殖細胞追跡用抗体。
(7)(1)〜(6)のいずれかに記載の生殖細胞追跡用抗体を用いて標識した生殖細胞を、宿主に移植し、in vivoで追跡する方法。
(8)宿主個体へ移植する生殖細胞を提供する個体と、宿主個体とが、それぞれ、魚類である、(7)に記載の方法。
(9)魚類が、サケ科魚類またはサバ科魚類である、(8)に記載の方法。
(10)宿主個体へ移植する生殖細胞を提供する個体が、宿主個体とは異種である、(7)〜(9)のいずれかに記載の方法。
(11)生殖細胞を移植する宿主個体またはその部位が、透明または半透明である、(7)〜(10)に記載のいずれかに記載の方法。
(12)追跡期間が、宿主個体へ生殖細胞を移植した後20日間である、(7)〜(11)のいずれかに記載の方法。
(13)追跡を蛍光顕微鏡を用いて行う、(7)〜(12)のいずれかに記載の方法。
(14)(1)〜(6)のいずれかに記載の生殖細胞追跡用抗体を用いて標識した生殖細胞を宿主に移植し、in vivoで追跡する工程、および該宿主個体の生殖腺で、該抗体の発現が存在するまたは発現が高い宿主個体を選別する工程を含んでなる、宿主個体の生殖腺へ移植した未分化生殖細胞の生着が認められる個体の選別方法。
(15)(1)〜(6)のいずれかに記載の生殖細胞追跡用抗体を用いて、移植前の魚類個体の未分化生殖細胞を分離、濃縮する工程、該分離、濃縮した生殖細胞を、宿主魚類個体の腹腔内へ移植する工程、該宿主魚類個体の生殖腺において、該抗体の発現が存在するあるいは発現が高い宿主魚類個体を選別する工程、選別した魚類個体を成熟させ、宿主魚類個体の生殖腺に生着した未分化生殖細胞を配偶子へ分化誘導して、精子または卵を得る工程を含んでなる、魚類の精子または卵の生産方法。
(16)(1)〜(6)のいずれか一項に記載の生殖細胞追跡用抗体を用いて、移植前の魚類個体の未分化生殖細胞を分離、濃縮する工程、該分離、濃縮した生殖細胞を、宿主魚類個体の腹腔内へ移植する工程、該宿主魚類個体の生殖腺において、該抗体の発現が存在するまたは発現が高い宿主魚類個体を選別する工程、選別した魚類個体を成熟させ、宿主魚類個体の生殖腺に生着した未分化生殖細胞を配偶子へ分化誘導する工程、得られた精子および卵を交配する工程を含んでなる、魚類個体の生産方法。
本発明により、生殖細胞追跡用抗体を提供できる。また、本発明により、代理親魚技法において、移植した生殖細胞の宿主個体内での、前記生殖細胞追跡用抗体を用いた、追跡方法を提供できる。
No.15−1抗体で標識した粗精製精原細胞の蛍光顕微鏡写真(フィルター:WIB)(オリンパス社製)。 No.15−1抗体で分離濃縮した分離抗体標識細胞の遺伝子発現の結果。US:粗精製精原細胞、152+:No.15−1抗体で標識後分離濃縮した細胞、152−:No.15−1抗体で分離濃縮した細胞を取り除いた細胞集団、DW:水。 PKH26、No.15−1抗体およびNo.180抗体で識別した細胞(移植前)の蛍光顕微鏡写真、PKH26(フィルター:WIG(オリンパス社製))、No.15−1抗体およびNo.180抗体(フィルター:WIB)。 PKH26、No.15−1抗体およびNo.180抗体で識別した細胞(移植直後)の蛍光顕微鏡写真、PKH26(フィルター:WIG(オリンパス社製))、No.15−1抗体およびNo.180抗体(フィルター:WIB)。Non−TP:移植を行っていないニベ。 移植後14日目のニベ宿主の生殖腺の蛍光解析(蛍光視野(WIB)、明視野)の写真。 生着率のグラフ。縦軸:生着率(%)。横軸:移植した細胞の標識の種類。確認個体数=各試験区10匹。 生着した細胞数のグラフ。縦軸:陽性が確認された一対の生殖腺に生着している陽性細胞の平均数(個)。横軸:移植した細胞の標識の種類。それぞれの陽性確認個体数、PKH26:6匹、No.15−1:8匹、No.180:0匹。 免疫組織染色の結果。ブラウントラウト未成熟精巣。左側:HE染色。右側:蛍光染色(WIB)。 免疫組織染色の結果。ブラウントラウト排精精巣。左側:HE染色。右側:蛍光染色(WIB)。 No.95抗体で標識した細胞(移植前)の蛍光顕微鏡写真(WIB)。 移植後13日目および20日目のニジマス宿主の生殖腺の蛍光解析の写真。蛍光視野(WIB)(抗体No.95)、中間視野および明視野。 精巣分散細胞(未濃縮)(A)およびNo.172抗体を用いて濃縮した分離濃縮後の精巣分散細胞(B)(移植前)の蛍光顕微鏡写真(WIB)。 移植後13〜15日目の野生型ニジマス宿主の生殖腺の蛍光解析(蛍光視野)(WIB)の写真。移植細胞は、精巣分散細胞(未濃縮)(A)と分離濃縮後の精巣分散細胞(濃縮)(B)。 生着率のグラフ。縦軸:生着率(%)。横軸:移植した細胞の種類。確認個体数=各試験区8〜24匹。 生着した細胞数のグラフ。縦軸:陽性が確認された一対の生殖腺に生着している陽性細胞の平均数(個)。横軸:移植した細胞の種類。それぞれの陽性確認個体数、未濃縮:1〜5匹、濃縮:2〜7匹。 免疫組織染色の結果。No.172抗体で免疫組織染色(A:ニジマス雄、B:ニジマス雌、E:マスノスケ雄、F:マスノスケ雌、I:ベニザケ雄、J:ベニザケ雌)、No.189抗体で免疫組織染色(C:ニジマス雄、D:ニジマス雌、G:マスノスケ雄、H:マスノスケ雌、K:ベニザケ雄、L:ベニザケ雌)。 No.189抗体で標識したvasa−DsRed導入ニジマス精巣分散細胞(移植前)。明視野、蛍光視野:DsRed(フィルター:WIG)、抗体(フィルター:NIBA(オリンパス社製))、抗体+DsRed(フィルター:WIB)。 移植後14日目のニジマス宿主の生殖腺の蛍光解析の写真。横軸:移植した細胞の種類。DsRed(vasa−DsRed導入ニジマス精巣分散細胞(抗体処理無し))、DsRed−No.189(No.189抗体で標識したvasa−DsRed導入ニジマス精巣分散細胞)、WT−No.189(No.189抗体で標識した野生ニジマス)。縦軸:明視野、蛍光視野:DsRed(フィルター:WIG)、抗体(フィルター:NIBA)、抗体+DsRed(フィルター:WIB)。 生着率のグラフ。縦軸:生着率(%)。横軸:移植した分離染色細胞の種類。DsRed(vasa−DsRed導入ニジマス精巣分散細胞(抗体処理無し))、DsRed−189(No.189抗体で標識したvasa−DsRed導入ニジマス精巣分散細胞)、WT−189(No.189抗体で標識した野生ニジマス)。確認個体数=各試験区10〜11匹。 生着した細胞数のグラフ。縦軸:陽性が確認された一対の生殖腺に生着している陽性細胞の平均数(個)。黒:DsRed陽性細胞。斜線:No.189抗体陽性細胞。横軸:移植した分離染色細胞の種類。それぞれの陽性確認個体数、DsRed:3匹、DsRed−189:4匹、WT−189:4匹。
発明の具体的説明
本発明の一つの態様によれば、未分化生殖細胞表面抗原を認識する、生殖細胞追跡用抗体が提供される。
「生殖細胞」とは、有性生殖のための配偶子またそれらのもととなる細胞を意味する。生殖細胞は、魚類の場合、例えば、始原生殖細胞、卵原細胞、精原細胞、卵母細胞、精母細胞、精細胞、卵および精子が包含される。
本発明の好ましい態様によれば、生殖細胞は、本発明の生殖細胞追跡用抗体で特異的に認識できる限り特に制限されず、例えば、魚類、両生類、爬虫類、鳥類、および哺乳類の生殖細胞が挙げられ、好ましくは、魚類の生殖細胞である。
本発明の好ましい態様によれば、魚類は、本発明の生殖細胞追跡用抗体で特異的に認識できる限り特に制限されず、例えば、サケ科魚類(例えば、ニジマス、サケ、ヒメマス、マスノスケ)、アジ科魚類(例えば、ブリ)、フグ科魚類(例えば、トラフグ)、サバ科魚類(例えば、クロマグロ、ミナミマグロ)、タイ科魚類(例えば、マダイ)、カワスズメ科魚類(例えば、ティラピア)、ウナギ科魚類、シーラカンス科魚類などが挙げられる。本発明において魚類は、海水魚であっても、淡水魚であってもよい。好ましくは、種苗生産技術による資源保護が期待されている観点から、サケ科魚類またはサバ科魚類である。
「サケ科魚類」とは、サケ目サケ科に含まれる魚類を意味し、例えば、サケ属(タイヘイヨウサケ属(サルモ属ともいう))、タイセイヨウサケ属、イトウ属、イワナ属、コレゴヌス属魚類が挙げられ、好ましくは、サケ属(タイヘイヨウサケ属)、タイセイヨウサケ属魚類である。サケ科魚類の代表的な魚種として、サケ属(タイヘイヨウサケ属)では、例えば、サケ(シロザケ)、マスノスケ(キングサーモン)、ベニザケ(ヒメマス)、ギンザケ、カラフトマス、サクラマス(ヤマメ)、ニジマスが挙げられる。タイセイヨウサケ属では、例えば、アトランティックサーモン、ブラウントラウトが挙げられる。イトウ属では、例えば、イトウ、アムールイトウが挙げられる。イワナ属では、例えば、イワナ、オショロコマ、ホッキョクイワナが挙げられる。コレゴヌス属では、例えば、オームリ、シナノユキマスが挙げられる。本発明において、サケ科魚類の魚種は、食用水産資源として価値が高い観点から、好ましくは、ニジマス、ブラウントラウト、サケ、タイセイヨウサケ、ベニザケ、ギンザケ、マスノスケ、サクラマス、カラフトマスである。
「サバ科魚類」とは、スズキ目サバ科に含まれる魚類を意味し、例えば、マグロ属、スマ属、カツオ属、サバ属、サワラ属、ソウダガツオ属、ハガツオ属、イソマグロ属魚類が挙げられ、好ましくは、マグロ属、スマ属、カツオ属またはサバ属魚類である。サバ科魚類の代表的な魚種として、マグロ属では、例えば、クロマグロ(例えば、タイヘイヨウクロマグロ、タイセイヨウクロマグロ)、ミナミマグロ、メバチマグロ、キハダマグロ、ビンナガマグロ、タイセイヨウマグロ、コシナガマグロが挙げられる。スマ属では、例えば、スマ、タイセイヨウヤイトが挙げられる。カツオ属では、例えば、カツオが挙げられる。サバ属では、マサバ、ゴマサバが挙げられる。本発明のサバ科魚類の魚種は、好ましくは、クロマグロ、ミナミマグロ、メバチマグロ、キハダマグロ、ビンナガマグロ、タイセイヨウマグロまたはコシナガマグロであり、これらは総称としてマグロと呼ばれることもある。本発明のサバ科魚類の魚種は、より好ましくは、人工種苗生産による資源保護が期待されている点で、クロマグロ、ミナミマグロ、タイセイヨウマグロまたはスマである。
本発明の好ましい態様によれば、本発明の生殖細胞追跡用抗体は、未分化生殖細胞表面抗原を認識する抗体である。
「未分化生殖細胞表面抗原を認識する抗体」とは、未分化生殖細胞の細胞表面抗原と特異的に結合する抗体をいう。「特異的に結合」には、優先的に結合することも含まれる。「未分化生殖細胞」とは、分化する前の生殖細胞を意味し、特に、代理親魚技法においては、宿主魚類個体の腹腔内へ移植するドナー魚類由来の生殖細胞であって、移植後、宿主生殖腺へ生着できる生殖細胞を意味する。このような生殖細胞として、始原生殖細胞と、一部のA型精原細胞および一部の卵原細胞とが挙げられる。A型精原細胞の中でも、宿主生殖腺への生着能を有するA型精原細胞は、1%に満たないといわれている。
「A型精原細胞」とは、未分化精巣(未成熟精巣)において体細胞と共に存在する未分化生殖細胞であり、該A型精原細胞は、成熟を開始した精巣または成熟精巣において、B型精原細胞、精母細胞、精細胞、精子へと分化する細胞である。A型精原細胞には、精原細胞を複製し続ける精原幹細胞(SSC)が含まれる。SSCは、細胞膜透過性の核染色試薬であるHoechst33342で染色することにより染色性の薄い分画に濃縮される。本発明において、A型精原細胞は、好ましくは、精原幹細胞である。
「卵原細胞」とは、未分化卵巣(未成熟卵巣)に体細胞と共に存在する未分化生殖細胞であり、成熟に従って卵母細胞、卵へと分化する細胞である。卵原細胞は、卵原細胞を複製し続ける卵原幹細胞(OSC)が含まれる。本発明において、卵原細胞は、好ましくは、卵原幹細胞である。
本発明の好ましい態様によれば、生殖細胞追跡用抗体は、未分化生殖細胞表面抗原を認識するモノクローナル抗体である。「モノクローナル抗体」とは、単一の抗体産生細胞に由来するクローンから得られた抗体(免疫グロブリン分子)を意味し、免疫グロブリンのクラスとしては特に限定されず、例えば、IgG、IgM、IgA、IgD、IgEが挙げられ、好ましくは、IgGである。該モノクローナル抗体は、未分化生殖細胞、より好ましくは精巣または卵巣から分離された未分化生殖細胞を抗原として、抗体産生ハイブリドーマを作製し、該ハイブリドーマが産生する抗体について、未分化生殖細胞、その中でも未分化生殖細胞の細胞表面(すなわち未分化生殖細胞の細胞膜)を認識する抗体であることを検出することによって取得できる。抗体産生ハイブリドーマの作製は、常法に従って調製でき、例えば、抗原を、動物(例えば、マウス、ラット、ウサギなど)に投与し、免疫感作させ、該動物から得られたリンパ節由来の細胞とミエローマ細胞とを融合させることにより調製できる。未分化生殖細胞を認識する抗体であることの検出は、常法に従って行うことができ、例えば、Cell ELISA法、免疫細胞染色、in situハイブリダイゼーション、vasa遺伝子に対するRT−PCR法といった様々なスクリーニング法を用いることができるが、代理親魚技法においては、宿主生殖腺へ生着できる生殖細胞を認識する抗体であることの検出も行うことが望ましい。宿主生殖腺へ生着できる生殖細胞を認識する抗体であることの検出は、代理親魚技法において宿主生殖腺に移植した際の宿主生殖腺への生着能を確認する(非特許文献1を参照)ことにより行うことができる。未分化生殖細胞の細胞表面を認識する抗体であることの検出は、抗体で未分化生殖細胞を可視化した際に、細胞膜を明瞭に認識しているかを確認することにより行うことができる(後述する実施例参照)。
「代理親魚技法」とは、ドナー魚類から分離された生殖細胞を、孵化前後の宿主魚類個体の腹腔内へ移植し、宿主魚類個体の生殖腺において、移植した生殖細胞を生殖細胞系列へ分化誘導することを意味する(特許文献1参照)。
本発明の好ましい態様によれば、生殖細胞追跡用抗体は、例えば、抗体産生ハイブリドーマTA−No.6−28(NITE BP−02222)、TA−No.15−1(NITE BP−02223)、No.95(NITE BP−01937)、No.172(NITE BP−01938)およびNo.189(NITE BP−01939)により産生されるモノクローナル抗体が挙げられ、より好ましくはTA−No.15−1(NITE BP−02223)、No.95(NITE BP−01937)、No.172(NITE BP−01938)およびNo.189(NITE BP−01939)により産生されるモノクローナル抗体から選択され、さらに好ましくは、TA−No.15−1(NITE BP−02223)、No.95(NITE BP−01937)およびNo.189(NITE BP−01939)により産生されるモノクローナル抗体から選択される。これらの抗体は、後述する実施例で確認されているとおり、未分化生殖細胞表面を認識する抗体であり、また代理親魚技法において、移植後、生殖細胞表面の機能を阻害することなく、移植した生殖細胞の追跡を可能とする。
TA−No.6−28は、サバ科魚類精原細胞を特異的に認識する抗体を産生するハイブリドーマであり、2016年3月22日(原寄託日)付で、独立行政法人製品評価技術基盤機構特許微生物寄託センター(日本国千葉県木更津市かずさ鎌足2丁目5番8号)に、受託番号がNITE BP−02222(国内寄託NITE P−02222より移管)(識別の表示:TA−No.6−28)として寄託されている。TA−No.6−28は、骨髄腫細胞と抗体産生細胞であるBリンパ細胞を細胞融合させ作製されたハイブリドーマであり、その形態は円形で弱接着性であり、終濃度1%のPenicillin−Streptomycin,Liquid(Gibco)および10%ウシ胎児血清(FBS)を含むHybirdoma−SFM培地(Gibco、12300-067)中で37℃、5%CO下のインキュベートにより増殖する。マウス抗体産生能(IgG抗体)を有し、その産生量は1〜10μg/ml程度である。
TA−No.15−1は、サバ科魚類精原細胞を特異的に認識する抗体を産生するハイブリドーマであり、2016年3月22日(原寄託日)付で、独立行政法人製品評価技術基盤機構特許微生物寄託センター(日本国千葉県木更津市かずさ鎌足2丁目5番8号)に、受託番号がNITE BP−02223(国内寄託NITE P−02223より移管)(識別の表示:TA−No.15−1)として寄託されている。TA−No.15−1は、骨髄腫細胞と抗体産生細胞であるBリンパ細胞を細胞融合させ作製されたハイブリドーマであり、その形態は円形で弱接着性であり、終濃度1%のPenicillin−Streptomycin,Liquid(Gibco)および10%ウシ胎児血清(FBS)を含むHybirdoma−SFM培地(Gibco、12300-067)中で37℃、5%CO下のインキュベートにより増殖する。マウス抗体産生能(IgG抗体)を有し、その産生量は1〜10μg/ml程度である。
No.95(NITE BP−01937)は、サケ科魚類精原細胞を特異的に認識する抗体を産生するハイブリドーマであり、2014年9月11日(原寄託日)付で、独立行政法人製品評価技術基盤機構特許微生物寄託センター(日本国千葉県木更津市かずさ鎌足2丁目5番8号)に、受託番号がNITE BP−01937(識別の表示:95−8(TF0268))として寄託されている。No.95は、骨髄腫細胞と抗体産生細胞であるBリンパ細胞を細胞融合させ作製されたハイブリドーマであり、その形態は円形で弱接着性であり、終濃度1%のPenicillin−Streptomycin,Liquid(Gibco)および10%ウシ胎児血清(FBS)を含むHybirdoma−SFM培地(Gibco、12300-067)中で37℃、5%CO下のインキュベートにより増殖する。マウス抗体産生能(IgG抗体)を有し、その産生量は1〜10μg/ml程度である。
No.172(NITE BP−01938)は、サケ科魚類精原細胞を特異的に認識する抗体を産生するハイブリドーマであり、2014年9月11日(原寄託日)付で、独立行政法人製品評価技術基盤機構特許微生物寄託センター(日本国千葉県木更津市かずさ鎌足2丁目5番8号)に、受託番号がNITE BP−01938(識別の表示:172−3(TF0268))として寄託されている。No.172は、骨髄腫細胞と抗体産生細胞であるBリンパ細胞を細胞融合させ作製されたハイブリドーマであり、その形態は円形で弱接着性であり、終濃度1%のPenicillin−Streptomycin,Liquid(Gibco)および10%ウシ胎児血清(FBS)を含むHybirdoma−SFM培地(Gibco、12300-067)中で37℃、5%CO下のインキュベートにより増殖する。マウス抗体産生能(IgG抗体)を有し、その産生量は1〜10μg/ml程度である。
およびNo.189(NITE BP−01939)は、サケ科魚類精原細胞を特異的に認識する抗体を産生するハイブリドーマであり、2014年9月11日(原寄託日)付で、独立行政法人製品評価技術基盤機構特許微生物寄託センター(日本国千葉県木更津市かずさ鎌足2丁目5番8号)に、受託番号がNITE BP−01939(識別の表示:189−5(TF0268))として寄託されている。No.189は、骨髄腫細胞と抗体産生細胞であるBリンパ細胞を細胞融合させ作製されたハイブリドーマであり、その形態は円形で弱接着性であり、終濃度1%のPenicillin−Streptomycin,Liquid(Gibco)および10%ウシ胎児血清(FBS)を含むHybirdoma−SFM培地(Gibco、12300-067)中で37℃、5%CO下のインキュベートにより増殖する。マウス抗体産生能(IgG抗体)を有し、その産生量は1〜10μg/ml程度である。
本発明の好ましい態様によれば、本発明の生殖細胞追跡用抗体は、蛍光色素、酵素、ビオチンなどで標識されている抗体であり、より好ましくは、可視化するために発色等の工程を必要とせず励起光下で簡易に観察できる観点から、蛍光色素で標識されている抗体である。蛍光色素は、励起光下で観察できれば特に制限されない。好ましくは、コントラストがよく、細胞への安全性が高い観点から、FITC、フィコエリスリン、AlexaおよびHiLyteであり、より好ましくはAlexaである。市販品としては、励起光下で緑色蛍光を発し、PKH26のような赤色蛍光とのコントラストが良好な観点から、Alexa488である。
抗体の標識方法は、直接法であっても、間接法であってもよい。本発明の好ましい態様によれば、抗体の標識方法は、二次抗体など可視化するためにその他の抗体を必要としないため、簡易に観察でき、かつ、二次抗体、発色剤、溶媒などによって細胞が悪影響を受けにくい観点から、直接法による標識が好ましい。直接法による標識は、公知の方法に従って行うことができ、当業者であれば、標識および標識を結合する抗体の種類、これらの濃度、標識期間等、標識条件を適宜調整することができる。
本発明の生殖細胞追跡用抗体は、未分化生殖細胞の分離、濃縮にも用いることができる。未分化生殖細胞の分離、濃縮方法は、未分化生殖細胞の分離、濃縮する方法は、生きたまま、未分化生殖細胞を分離、濃縮することができれば特に限定されず、公知の方法を用いることができ、例えば、標識した抗体を用いたフローサイトメトリー解析での細胞分離(単離)、磁気ビーズをつけた抗体を用いた磁気細胞分離、パーコールを用いた密度勾配遠心法を用いることができ、好ましくは、細胞に悪影響を与えにくい観点から細胞分離である。
本発明の生殖細胞追跡用抗体を用いて分離、濃縮した未分化生殖細胞は、そのまま宿主個体へ移植でき、移植前に洗浄する必要はない。また、移植後も、本発明の生殖細胞追跡用抗体は、一定期間、生殖細胞に結合した状態で宿主個体内に存在できることから、移植後の生殖細胞の追跡を行うことができる。よって、本発明の生殖細胞追跡用抗体を用いることにより、生殖細胞の分離、濃縮および生殖細胞の追跡を、遺伝子導入系統と同様に、行うことができる。遺伝子導入系統は、何世代も継代する必要があるが、本発明の生殖細胞追跡用抗体を用いれば、遺伝子導入系統と同様な効果を有する系統を、短時間の操作で作出することができる。
本発明の生殖細胞追跡用抗体を用いることにより、生殖細胞を、遺伝子導入系統と同様に、簡易に、高感度に、確認することができる。特に、本発明の生殖細胞追跡用抗体を用いることにより、特に、代理親魚技法において、生殖細胞を移植した後に、宿主個体内で、移植した生殖細胞の動態を、遺伝子導入系統を作出しないでも、簡易に、確認することができる。すなわち、本発明の一つの態様によれば、本発明の生殖細胞追跡用抗体を用いて標識した生殖細胞を、宿主に移植し、in vivoで追跡する方法が提供される。
本発明の好ましい態様によれば、本発明の追跡方法において、宿主個体へ移植する生殖細胞を提供する個体(ドナー個体)と、宿主個体とは、同種であっても、異種であってもよい。本発明の好ましい態様によれば、特に、代理親魚技法において、宿主個体へ移植する生殖細胞を提供する個体(ドナー個体)と、宿主個体とは、それぞれ魚類である。異種の魚類としては同属異種の魚類や異属の魚類を挙げることができ、例えば、ドナー魚類がニジマスの場合、同属異種の宿主魚類としてヤマメを、異属の宿主魚類としてブラウントラウト、イワナを具体的に例示することができ、ドナー魚類がクロマグロの場合、同属異種の宿主魚類として、メバチマグロ、ビンナガマグロ、キハダマグロ、メバチマグロ等を、異属の宿主魚類としてスマ、マサバを具体的に例示することができ、ドナー魚類がブリやカンパチの場合、異属の宿主魚類として、マアジやニベを例示することができる。また、ドナー魚類がハタ、ウナギの場合は、近縁の飼育が容易な異種の魚類を用いることができる。また、異種の魚類を用いる場合、例えばドナー魚類由来の未分化生殖細胞として、成魚までの育成が比較的高コスト、高労力である魚類(例えば宿主魚類より大型の魚類)の未分化生殖細胞を用い、宿主魚類として、成魚までの育成が比較的低コスト、低労力である魚類(例えばドナー魚類より小型の魚類)を用いると、移植後の宿主魚類を育成することによって、ドナー魚類の卵や精子を、例えば比較的小型の水槽を用いて、比較的低コスト、低労力で分化誘導することが可能となる。このメリットを享受するために好ましいドナー魚類と宿主魚類の組み合わせとしては、クロマグロ(ドナー)とマサバ(宿主)の組み合わせを例示することができる。
本発明の追跡方法において、生殖細胞を移植する宿主個体または移植する部位は、移植した生殖細胞を、生きた状態で、非侵襲的に、観察することができる観点から、外観観察により可視化できることが好ましく、例えば、透明または半透明であることが好ましい。透明または半透明の個体として、例えば、魚類の孵化稚魚、鶏の卵が挙げられ、透明または半透明の部位として、例えば、透明または半透明な臓器が挙げられる。透明または半透明な臓器として、例えば、膀胱、眼球が挙げられる。透明または半透明な臓器は、不透明な部位(例えば皮膚)をはがした臓器であってもよく、例えば、マウスの実験モデルで用いられる睾丸が挙げられる(S. Yoshida, M. Sukeno and Y-i. Nabeshima: A vasculature-associated niche for undifferentiated spermatogonia in the mouse testis. Science 317, 1772-1776 (2007))。生殖細胞を移植する宿主個体が透明または半透明であれば、移植した生殖細胞を、宿主個体が生きた状態で、非侵襲的に確認できる。例えば、孵化稚魚がニベの場合には、孵化後0日目〜13日目は、透明であるため、移植直後は、生きた状態で、非侵襲的に、外観観察により、生殖細胞を確認できる。
本発明の追跡方法において、追跡期間は、生殖細胞追跡用抗体を用いて標識した生殖細胞の標識が、確認できる限り制限されない。代理親魚技法において、追跡期間は、移植した生殖細胞の宿主個体の生殖腺への生着が確認された状態と、そのまま配偶子まで成熟する割合が一致する、移植後20日間が好ましい。追跡期間は、移植した生殖細胞の宿主個体の生殖腺への生着が確認された状態と、そのまま配偶子まで成熟する割合がほぼ一致する、移植後13日間であってもよい。よって、追跡期間は、例えば、ニジマスの場合、好ましくは移植後13日以上、より好ましくは移植後14日以上、より好ましくは移植後16日以上、より好ましくは移植後18日以上、より好ましくは移植後20日以上、さらに好ましくは移植後30日以上であり、海産魚の場合、ニジマスよりも移植した生殖細胞が宿主個体の生殖腺へ生着するのが早いため、好ましくは移植後10日以上、より好ましくは移植後14日以上、より好ましくは移植後16日以上、より好ましくは移植後20日以上、さらに好ましくは移植後30日以上である。
本発明の追跡方法において、追跡は、簡易な観察によって確認できる観点から、顕微鏡下で行うことが好ましい。標識が蛍光標識の場合は、蛍光顕微鏡下で行うことが好ましい。
本発明の追跡方法により、移植が成功した宿主個体を選別することができる。よって、本発明の一つの態様によれば、本発明の生殖細胞追跡用抗体を用いて標識した生殖細胞を宿主に移植し、in vivoで追跡する工程、および該宿主個体の生殖腺で、該抗体の発現が存在するまたは発現が高い宿主個体を選別する工程を含んでなる、宿主個体の生殖腺へ移植した未分化生殖細胞の生着が認められる個体の選別方法が提供される。
移植した生殖細胞の宿主個体の生殖腺への生着が確認された状態と、そのまま配偶子まで成熟する割合がほぼ一致する、移植後14日目、すなわち、孵化後14日目以降は、孵化稚魚表皮に色素沈着が起き、上皮も発達してくるため、非侵襲的に、外観観察により移植した生殖細胞を確認することは難しい。通常、代理親魚技法では、移植したロットごとに、移植効率の差異が見られるため、ランダムなサンプリングにより移植が成功した宿主個体が含まれるロットを選別することで、宿主個体の生殖腺へ移植した未分化生殖細胞の生着が認められる個体を選別できる。このように大型種や希少種のような、遺伝子組換系統の樹立が難しい個体であっても、本発明の生殖細胞追跡用抗体を用いることで、簡易的に、遺伝子組換系統と同様に、特定の細胞集団である生殖細胞を標識可能である。
また、選別した個体を飼育し、生殖細胞を成熟させることにより、ドナー由来の精子及び/又は卵を形成せしめる。よって、本発明の一つの態様によれば、本発明の生殖細胞追跡用抗体を用いて、移植前の魚類個体の未分化生殖細胞を分離、濃縮する工程、該分離、濃縮した生殖細胞を、宿主魚類個体の腹腔内へ移植する工程、該宿主魚類個体の生殖腺において、該抗体の発現が存在するあるいは発現が高い宿主魚類個体を選別する工程、選別した魚類個体を成熟させ、宿主魚類個体の生殖腺に生着した未分化生殖細胞を配偶子へ分化誘導して、精子または卵を得る工程を含んでなる、魚類の精子または卵の生産方法が提供される。
さらに、得られた魚類の精子または卵を受精することにより、ドナー魚類を生産することができる。よって、本発明の一つの態様によれば、本発明の生殖細胞追跡用抗体を用いて、移植前の魚類個体の未分化生殖細胞を分離、濃縮する工程、該分離、濃縮した生殖細胞を、宿主魚類個体の腹腔内へ移植する工程、該宿主魚類個体の生殖腺において、該抗体の発現が存在するまたは発現が高い宿主魚類個体を選別する工程、選別した魚類個体を成熟させ、宿主魚類個体の生殖腺に生着した未分化生殖細胞を配偶子へ分化誘導する工程、得られた精子および卵を交配する工程を含んでなる、魚類個体の生産方法が提供される。
本発明の魚類個体の生産方法の利用例として、魚類の遺伝子資源の保存への利用が考えられる。具体的には、希少種、絶滅危惧種の未成熟生殖細胞を凍結保存し、必要な時に飼育が容易な近縁種の宿主に移植すれば、これらの宿主は希少種、あるいは絶滅危惧種(場合によっては既に絶滅した種)に由来する卵や精子を作出することが可能となる。また、今後遺伝子導入等の技術により様々な有用系統・品種が作出された場合、個体の経代飼育を行わなくてもこれらの維持が可能であり、必要なときに宿主胚への移植により個体へ改変することが可能となる。
本発明を以下の実施例によって詳細に説明するが、本発明は、これらに限定されるものではない。
例1:生殖細胞追跡用抗体の作製
未分化生殖細胞表面を認識する抗体産生ハイブリドーマTA−No.15−1(NITE BP−02223)、No.95(NITE BP−01937)、No.172(NITE BP−01938)およびNo.189(NITE BP−01939)により産生されるモノクローナル抗体に対して、No.15−1はプロテインA精製、No.95、No.172、No.189はMGPP精製を行い、その後蛍光色素の直接標識を行った。プロテインA精製はHiTrap Protein A HP Columns(GE healthcare)を用いて、MGPP精製はimmunoAsist MG―PP(Kanto Reagent)を用いて、常法に従いIgGおよびIgMを精製した。直接法により緑色蛍光物質であるALEXA fluor 488(life technology)を抗体に直接標識した。具体的には、0.1M―NaHCOに、規定量のIgM、IgGを、透析し、そこにDMSOに溶解したAlexa fluor 488を規定量ずつ混和し、室温で1時間撹拌した。次に、P4カラム(GE healthcare)にてゲル濾過し、抗体に結合しなかった溶液中に遊離しているAlexa fluor488を分離することで蛍光物質を直接標識した抗体を得た。
得られた直接標識したモノクローナル抗体を、生殖細胞追跡用抗体として用いた。
例2:サバ科魚類での生殖細胞の追跡
(1)抗体標識
1個体のクロマグロ(2〜3歳体重30〜40kg、生殖腺重量100〜200g程度)から精巣を摘出し、細かく切り刻んだ。細かく刻んだ精巣に、終濃度2mg/mlのコラゲナーゼH(Roche)、終濃度1.65mg/mlのディスパーゼII(合同酒精)/L−15培地(インビトロジェン)(5%ウシ胎児血清(FBS))10mlを添加し、2時間、20℃で、ピペッティングによる物理的な分散を行いながらインキュベートした。L−15培地(インビトロジェン)1mlを添加して酵素反応を停止した。得られた細胞懸濁液(約1000万細胞/ml)を、パーコール(GE Healthcare)密度勾配遠心法に供し、細胞懸濁液中に含まれる精原細胞を粗精製することで、粗精製精原細胞を得た。
粗精製精原細胞に対して、生殖細胞追跡用抗体を用いて標識を行った。生殖細胞追跡用抗体として抗体産生ハイブリドーマTA−No.15−1(NITE BP−02223)のモノクローナル抗体をALEXA488で直接標識した抗体を用いた。標識は、生殖細胞追跡用抗体を28μg/mlの濃度で、粗精製精原細胞(100万細胞/ml)に添加し、4℃下で、30分反応させて行った。得られた抗体標識細胞の蛍光顕微鏡(フィルター:WIB)(Olympus)下での結果を図1に示す。
生殖細胞追跡用抗体で標識された抗体標識細胞をEPICS ALTRA(ベックマンコールター)を用いて分離濃縮し、精原細胞全般で確認されるvasa、A型精原細胞で確認されるdead end、生殖腺体細胞で確認されるgsdf、減数分裂マーカーsycp3およびβ−actin遺伝子の発現を確認した。各遺伝子の発現は、下記表に記載のプライマーを用いて、RT−PCR法で確認した。
結果を図2に示す。結果に示されるように、抗体標識され、かつ、分離濃縮された分離抗体標識細胞は、A型精原細胞を多く含む未分化生殖細胞であることが分かった。
生殖細胞追跡用抗体以外に、抗体産生ハイブリドーマNo.180のモノクローナル抗体を、生殖細胞追跡用抗体と同様に、ALEXA488で直接標識した抗体(対照抗体)と、生細胞の細胞膜表面を標識するPKH26(SIGMA-ALDRICH)とを用いて、粗精製精原細胞の標識を行った。ここで、抗体産生ハイブリドーマNo.180は、サバ科魚類精原細胞を特異的に認識する抗体を産生するハイブリドーマであり、PCT/JP2017/012111の実施例の例2の記載の方法に従って作製した。具体的には、クロマグロの精原細胞と推定される細胞(具体的には、フローサイトメトリー分析で、他の精巣細胞より大型で丸い内部構造が単純な形態の細胞)を多く含む分画(Aゲート)の細胞集団を抗原として用いて、マウスに免疫して得たモノクローナル抗体産生ハイブリドーマの一つである。
標識は、対照抗体を、2.15μg/mlの濃度で、粗精製精原細胞(100万細胞/ml)に添加し、4℃下で、30分反応させて行った。また、PKH26を用いて、製品プロトコルに従い、粗精製精原細胞の生細胞を標識した。
上記の方法で得られた、粗精製精原細胞を、それぞれ、生殖細胞追跡用抗体、対照抗体およびPKH26で標識した細胞を、移植に用いた。それぞれの標識後移植前の細胞の蛍光顕微鏡下の写真を図3に示す。図3に示されるように、PKH26では、全ての細胞で赤色蛍光を確認でき、No.15−1およびNo.180では、緑色蛍光を確認できた。
(2)サバ科宿主への移植
ニベ(孵化後13〜14日齢)の稚魚(宿主)に対して、それぞれ生殖細胞追跡用抗体、対照抗体およびPKH26で標識した細胞を、約10000細胞/尾となるように、マイクロインジェクション法(Yazawa, R., Takeuchi, Y., Higuchi, K., Yatabe, T., Kabeya, N & Yoshizaki, Goro(2010)Chub mackerel gonads support colonization, survival, and proliferation of intraperitoneally transplanted xenogenic germ cells. Biology of reproduction, 82, 896-904参照)に従って、ニベ宿主の腹腔内に接種した。移植直後の写真を図4に示す。Non−TPは、移植を行っていないニベを示す。図4に示されるように、移植した部位で、No.15−1およびNo.180では、緑色蛍光を確認でき、PKH26では、赤色蛍光を確認できた。No.180およびPKH26の蛍光は、No.15−1より強いものであった。
移植後14日目に開腹して、ニベ宿主の生殖腺に生着した細胞について、蛍光解析を行った。結果を図5に示す。図5に示されるように、蛍光視野において、PKH26では、赤色蛍光を確認でき、No15−1では、緑色蛍光を確認できた。No180では、蛍光を確認できなかった。
また、生殖細胞追跡用抗体、対照抗体およびPKH26で標識した細胞の、移植後のそれぞれの生着率を図6に示す。生着率は下記式によって算出した。
生着率(%)=宿主の生殖腺で陽性が確認された個体数/生着を確認した移植個体数
また、生着した細胞数として、陽性が確認された一対の生殖腺に、いくつの陽性細胞が生着しているかを確認した。結果を図7に示す。
結果に示されるように、生殖細胞追跡用抗体およびPKH26で標識した細胞は、ニベ宿主への移植後13日目でも、確認できた。ニジマスでは、移植した生殖細胞は、移植後20日目程度で、宿主の生殖腺に生着し、そのまま増殖、分化を経たのち成熟して配偶子へ分化誘導されると報告されている(Okutsu T, Suzuki K, Takeuchi Y, Takeuchi T, Yoshizaki G. Testicular germ cells can colonize sexually undifferentiated embryonic gonad and produce functional eggs in fish. Proc Natl Acad Sci U S A 2006;103:2725-9.参照)。海産魚は、ニジマスと比較して、生育温度が高く、仔魚期における発生速度も速い。そのため、ニジマスよりも短い期間で、移植細胞が宿主生殖腺に生着することが確認されている(データ示さず)。一方、対照抗体で標識した細胞を移植した宿主では、宿主生殖腺への生着は認められず、その生着率は0%であった。
例3:サケ科魚類:ブラウントラウトでの追跡
(1)蛍光免疫組織染色
ブラウントラウトの精巣(未成熟:1歳齢と排精:2歳齢)を採取し、ブアン固定液を用いて固定し、常法に従って、パラフィン包埋組織切片(厚さ:4μm)を作成した。組織切片に対して、生殖細胞追跡用抗体を用いて蛍光免疫組織染色を行った。生殖細胞追跡用抗体として抗体産生ハイブリドーマNo.95(NITE BP−01937)のモノクローナル抗体を1次抗体として用いた。2次抗体としてgouat anti−mouse IgG IgG alexa 488 conjugated(life thechnology)を用い、常法に従って一次抗体に対して反応させた。また、HE染色も行った。それぞれの結果を、図8(未成熟)および図9(排精)に示す。
図8および図9に示されるように、生殖細胞追跡用抗体は、A型精原細胞特有の形状で明瞭に染めることができた。すなわち、生殖細胞追跡用抗体は、A型精原細胞を特異的に標識することが確認された。
(2)抗体標識
ブラウントラウト(1歳齢)の精巣を採取し、0.2%トリプシン(worthington)で処理し、分散した。分散した細胞に対して、生殖細胞追跡用抗体を用いて標識を行った。生殖細胞追跡用抗体として抗体産生ハイブリドーマNo.95(NITE BP−01937)のモノクローナル抗体をALEXA488で直接標識した抗体を用いた。
標識は、生殖細胞追跡用抗体を30μg/mlの濃度で、分散した細胞(100万細胞/ml)に添加し、4℃下で、30分反応させて行った。生殖細胞追跡用抗体で標識した細胞を、移植に用いた。標識後移植前の細胞の蛍光顕微鏡下の写真を図10に示す。
(3)移植
野生型ニジマス(受精後30日齢)の稚魚(宿主)に、生殖細胞追跡用抗体で標識した標識細胞を約10000細胞/尾となるように、マイクロインジェクション法に従って、宿主の腹腔内に接種した。
移植後13日目と移植後20日目とに開腹して、ニジマス宿主の生殖腺に生着した細胞について、蛍光解析を行った。結果を図11に示す。
結果に示されるように、移植後20日目であっても、生殖細胞を追跡可能であることが確認された。
例4:サケ科魚類:タイヘイヨウサケ属での生殖細胞の分離濃縮
(1)抗体標識(磁気ビーズ)
vasa遺伝子組み換え魚であるvasa−GFP導入ニジマス(東京海洋大学、水圏フィールド教育センター、大泉ステーションより入手)の精巣(1歳齢)を採取した。vasa−GFPは、東京海洋大学、水圏フィールド教育センター、大泉ステーションで継代されている野生型系統のニジマスにvasa−GFP遺伝子生殖細胞高発現ベクターを導入したニジマスであり、精原細胞が蛍光観察条件において緑色蛍光を発する。精巣を、0.2%トリプシン(worthington)で分散し、細胞懸濁液(精巣分散細胞)を得た。
得られた細胞懸濁液に対して、生殖細胞追跡用抗体を用いて標識を行った。生殖細胞追跡用抗体として抗体産生ハイブリドーマNo.172(NITE BP−01938)のモノクローナル抗体を磁気ビーズ(Miltenyi Biotec)で標識した抗体を用いた。標識された細胞をmini MACS separator(Miltenyi Biotec)を用いて分離濃縮し、移植に用いた。分離濃縮前の精巣分散細胞と、分離濃縮後の精巣分散細胞の蛍光顕微鏡下の写真を図12に示す。
(2)移植
野生型ニジマス(受精後26〜34日齢)(宿主)に、分離濃縮後の精巣分散細胞を、約3000細胞/尾となるように、マイクロインジェクション法に従って、宿主の腹腔内に接種した。対照として、分離濃縮を行っていない精巣分散細胞(未濃縮)を同細胞数、移植した。移植後13〜15日目に開腹して、生殖腺に生着した細胞について、蛍光解析を行った。蛍光視野の写真を図13に示す。また、分離濃縮後の精巣分散細胞と、未濃縮の精巣分散細胞との、タイヘイヨウサケ属宿主への生着率と生着した細胞数を、上記例2の方法に従って算出した。結果を図14および15に示す。
例5:サケ科魚類:タイヘイヨウサケ属での追跡
(1)免疫組織染色
ニジマスの雄(1歳齢)および雌(1歳齢)(それぞれ東京海洋大学、水圏フィールド教育センター、大泉ステーションより入手)、マスノスケの雄(1歳齢)および雌(1歳齢)(それぞれ、東京海洋大学、水圏フィールド教育センター、大泉ステーションより入手)、ベニザケの雄(1齢)および雌(1齢)(それぞれ東京海洋大学、水圏フィールド教育センター、大泉ステーションより入手)を採取し、ブアン固定液を用いて固定し、常法に従って、パラフィン包埋組織切片(厚さ:4μm)を作成した。組織切片に対して、抗体産生ハイブリドーマNo.172(NITE BP−01938)およびNo.189(NITE BP−01939)により産生されるモノクローナル抗体を1次抗体として、免疫組織染色を行った。2次抗体としてimmPRESS Reagent KIT(フナコシ株式会社)を用い、常法に従い、組織切片をDAB発色させた。また、HE染色も行った。それぞれの結果を図16に示す。
結果に示されるように、抗体産生ハイブリドーマNo.172(NITE BP−01938)およびNo.189(NITE BP−01939)により産生されるモノクローナル抗体は、ニジマスをはじめとするその他タイヘイヨウサケ属の魚種における精原細胞を特異的に標識、追跡できる可能性が明らかとなった。
(2)抗体標識
vasa遺伝子組み換え魚であるvasa−DsRed導入ニジマス(東京海洋大学、水圏フィールド教育センター、大泉ステーションより入手)の精巣(1歳齢)と、野生型ニジマス(東京海洋大学、水圏フィールド教育センター、大泉ステーションより入手)の精巣(1齢)とを採取した。vasa−DsRedは、東京海洋大学、水圏フィールド教育センター、大泉ステーションで継代されている野生型系統のニジマスにvasa−DsRed遺伝子生殖細胞高発現ベクターを導入したニジマスであり、精原細胞が蛍光観察条件において赤色蛍光を発する。
それぞれの精巣を、0.2%トリプシン(worthington)で処理し、分散して、それぞれの細胞懸濁液(精巣分散細胞)を得た。それぞれの得られた細胞懸濁液に対して、生殖細胞追跡用抗体を用いて標識を行った。生殖細胞追跡用抗体として抗体産生ハイブリドーマNo.189(NITE BP−01939)のモノクローナル抗体をALEXA488で直接標識した抗体を用いた。標識したvasa−DsRed導入ニジマス精巣分散細胞および野生型ニジマス精巣分散細胞を、それぞれ、そのまま移植に用いた。標識後移植前の細胞の蛍光顕微鏡下の写真を図17に示す。
図17に示されるように、生殖細胞追跡用抗体で標識した細胞と、vasa−DsRed遺伝子導入魚で発光する細胞とは、重複しており、よって、生殖細胞追跡用抗体が、vasa−DsRed遺伝子導入魚と同程度に使用できることが確認された。
(3)移植
野生型ニジマス(受精後35日齢)に、標識したvasa−DsRed導入ニジマス精巣分散細胞および野生型ニジマス精巣分散細胞を、それぞれ約4000細胞/尾となるように、マイクロインジェクション法に従って、宿主の腹腔内に接種した。
移植後14日目に開腹して、ニジマス宿主の生殖腺に生着した細胞について、蛍光解析を行った。結果を、図18に示す。
図18に示されるように、移植後14日目であっても、生殖細胞を追跡可能であることが確認された。また、vasa遺伝子導入魚と、同程度の感度で、生殖細胞を追跡できることが確認された。
また、移植細胞として用いた、標識した細胞vasa−DsRed導入ニジマス精巣分散細胞および標識下野生型ニジマス精巣分散細胞の、ニジマス宿主への生着率および生着した細胞数を、上記例2の方法に基づいて算出した。結果を図19および20に示す。
結果に示されるように、抗体産生ハイブリドーマNo.189(NITE BP−01939)のモノクローナル抗体を用いて標識した移植実験における生着率は、遺伝子導入魚を用いた移植実験で確認された生着率と同程度であることが確認された。また、生着した細胞数も、本生殖細胞追跡用抗体で標識した移植実験の平均生着細胞数は、遺伝子導入魚を用いた移植実験で確認された平均生着細胞数と同程度であることが確認された。

Claims (16)

  1. 未分化生殖細胞表面抗原を認識する、生殖細胞追跡用抗体。
  2. 直接標識されている、請求項1に記載の生殖細胞追跡用抗体。
  3. FITC、フィコエリスリン、AlexaおよびHiLyteからなる群から選択される一種によって直接標識されている、請求項2に記載の生殖細胞追跡用抗体。
  4. 生殖細胞が魚類の生殖細胞である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の生殖細胞追跡用抗体。
  5. 魚類が、サケ科魚類またはサバ科魚類である、請求項4に記載の生殖細胞追跡用抗体。
  6. 抗体産生ハイブリドーマTA−No.6−28(NITE BP−02222)、TA−No.15−1(NITE BP−02223)、No.95(NITE BP−01937)、No.172(NITE BP−01938)およびNo.189(NITE BP−01939)により産生されるモノクローナル抗体からなる群から選択される少なくとも一種の抗体である、請求項5に記載の生殖細胞追跡用抗体。
  7. 請求項1〜6のいずれか一項に記載の生殖細胞追跡用抗体を用いて標識した生殖細胞を、宿主に移植し、in vivoで追跡する方法。
  8. 宿主個体へ移植する生殖細胞を提供する個体と、宿主個体とが、それぞれ、魚類である、請求項7に記載の方法。
  9. 魚類が、サケ科魚類またはサバ科魚類である、請求項8に記載の方法。
  10. 宿主個体へ移植する生殖細胞を提供する個体が、宿主個体とは異種である、請求項7〜9のいずれか一項に記載の方法。
  11. 生殖細胞を移植する宿主個体またはその部位が、透明または半透明である、請求項7〜10に記載のいずれか一項に記載の方法。
  12. 追跡期間が、宿主個体へ生殖細胞を移植した後20日間である、請求項7〜11のいずれか一項に記載の方法。
  13. 追跡を蛍光顕微鏡を用いて行う、請求項7〜12のいずれか一項に記載の方法。
  14. 請求項1〜6のいずれか一項に記載の生殖細胞追跡用抗体を用いて標識した生殖細胞を宿主に移植し、in vivoで追跡する工程、および
    該宿主個体の生殖腺で、該抗体の発現が存在するまたは発現が高い宿主個体を選別する工程
    を含んでなる、宿主個体の生殖腺へ移植した未分化生殖細胞の生着が認められる個体の選別方法。
  15. 請求項1〜6のいずれか一項に記載の生殖細胞追跡用抗体を用いて、移植前の魚類個体の未分化生殖細胞を分離、濃縮する工程、
    該分離、濃縮した生殖細胞を、宿主魚類個体の腹腔内へ移植する工程、
    該宿主魚類個体の生殖腺において、該抗体の発現が存在するあるいは発現が高い宿主魚類個体を選別する工程、
    選別した魚類個体を成熟させ、宿主魚類個体の生殖腺に生着した未分化生殖細胞を配偶子へ分化誘導して、精子または卵を得る工程
    を含んでなる、魚類の精子または卵の生産方法。
  16. 請求項1〜6のいずれか一項に記載の生殖細胞追跡用抗体を用いて、移植前の魚類個体の未分化生殖細胞を分離、濃縮する工程、
    該分離、濃縮した生殖細胞を、宿主魚類個体の腹腔内へ移植する工程、
    該宿主魚類個体の生殖腺において、該抗体の発現が存在するまたは発現が高い宿主魚類個体を選別する工程、
    選別した魚類個体を成熟させ、宿主魚類個体の生殖腺に生着した未分化生殖細胞を配偶子へ分化誘導する工程、
    得られた精子および卵を交配する工程
    を含んでなる、魚類個体の生産方法。
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