A.実施形態:
A−1.液体噴射装置の構成:
図1は、本発明の一形態としての液体タンクを備える液体噴射装置1の外観図である。図1には、互いに直交する3つの空間軸であるX軸、Y軸、Z軸が描かれている。X軸に沿った方向をX軸方向とし、Y軸に沿った方向をY軸方向とし、Z軸に沿った方向をZ軸方向(上下方向)とする。液体噴射装置1は、X軸方向とY軸方向に平行な面(XY平面)に設置されている。+Z軸方向が鉛直下方向であり、−Z軸方向が鉛直上方向である。以降に説明する他の図においても、必要においてX軸、Y軸、Z軸を付している。
液体噴射装置1は、いわゆるインクジェットプリンターであり、用紙などの記録媒体上に液体としてのインクを噴射することで記録媒体に対して印刷を行う。本実施形態の液体噴射装置1は、液体としてのブラックインクを用いて白黒印刷を行うプリンターである。
液体噴射装置1は、外表面を形成する外殻100を備える。外殻100は、略直方体形状であり、上面(第1面,第1壁)101と、下面(第2面,第2壁)102と、前面(第3面,第3壁)103と、背面(第4面,第4壁)104と、右側面(第5面,第5壁)105と、左側面(第6面,第6壁)106とを有する。上面101と下面102とはZ軸方向に対向する。前面103と背面104とはX軸方向に対向する。右側面105と左側面106とはY軸方向に対向する。前面103と背面104と右側面105と左側面106とは、それぞれ液体噴射装置1の設置面に対して略垂直な面である。上面101と下面102とは、それぞれ液体噴射装置1の設置面に対して略水平な面である。なお、本実施形態において「略垂直」や「略水平」とは、完全に「垂直」又は「水平」である意味に加え、概ね「垂直」又は「水平」である意味を含む。つまり、各面101〜106は、完全な平面ではなく凹凸等を許容し、外観において概ね「垂直」又は概ね「水平」であればよい。
液体噴射装置1は、さらに、前面カバー2と、排出口3と、操作部4と、上面カバー6とを備える。前面カバー2は、前面103の一部を構成し、下端部において軸支されており、上端部側を回動させることで開閉できる。図1では、前面カバー2は開いた状態である。前面カバー2を開くことで、排出口3が露出する。
排出口3は、記録媒体が排出される部分である。なお、記録媒体は、図示しない背面104側に設けられたトレイに配置されてもよい。トレイに配置された記録媒体が外殻100の内部に搬送されつつ、液体が記録媒体に噴射されることで、記録媒体への印刷が実行される。
操作部4は、利用者からの各種操作を受け付けるボタンである。各種操作としては、例えば、液体噴射装置1の印刷を開始させる操作や、後述する液体タンク内の流体を外部に排出させるための排出動作を実行させるための操作が挙げられる。
上面カバー6は、上面101を構成する。上面カバー6は、背面104側の端部が軸支されており、前面103側を回動させることで開閉できる。上面カバー6が開かれることで、液体噴射装置1の内部の状態を確認したり、後述する液体タンクの着脱操作を行ったり、液体タンクへの液体の注入を行ったりすることができる。
前面103のうちで、Y軸方向(後述するキャリッジ19の往復移動方向)において、キャリッジ19のホームポジションと重なる領域には、装置側窓部103aが形成されている。本実施形態では、装置側窓部103aは前面カバー2とは異なる位置であって、前面カバー2よりも−Y軸方向側に配置されている。装置側窓部103aは、ホームポジションに位置するキャリッジ19上に装着された液体タンク30の前面(視認面)404を、外部から利用者が視認するために設けられている。また、前面404には標識M1が設けられている。装置側窓部103aは、例えば前面103を貫通する貫通孔であってもよいし、透明な部材であってもよい。標識M1は液体タンク30が収容する液体の水位についての基準を示すための要素であり、本実施形態では上限の基準を示す。標識M1の詳細は後述する。なお、ホームポジションにおける液体タンク30の前面404を外部から視認できれば、装置側窓部103aは前面103に設けられていなくてもよい。例えば、装置側窓部103aは、上面101に設けられていてもよい。この場合、利用者は前方上方側から装置側窓部103aを視認することで、液体タンク30の前面404を視認できる。
図2は、液体噴射装置1の内部構成を示す模式図である。液体噴射装置1は、外殻100の内部に、制御部17と、液体噴射ヘッド12を備えたキャリッジ19と、キャリッジ19に着脱可能に搭載される液体タンク30とを備える。制御部17は、液体噴射装置1の各種動作(例えば、印刷動作)を制御する。
キャリッジ19は、液体噴射ヘッド12上に配置された装着部11を有する。装着部11は、例えば+Z軸方向が開口する凹形状であり、液体タンク30が装着される装着空間を形成する。装着部11は、装着空間を区画する下面から+Z軸方向側に突出する液体導入針部122を有する。液体導入針部122は、液体タンク30に接続される。液体導入針部122は中空状であり、先端側に内部と連通する連通孔が形成されている。液体導入針部122の内部には、液体導入針部122の連通孔を介して液体タンク30から供給される液体が流通する。液体噴射ヘッド12は、液体導入針部122と連通し、液体タンク30から供給された液体(本実施形態では、ブラックインク)を記録媒体20(例えば、印刷用紙)に対して噴射する。
また、装着部11は、標識M1を含む前面(視認面)404を利用者が視認するための装着部側窓部11aを有する。装着部側窓部11aは、少なくとも液体タンク30の標識M1と対向する位置に設けられている。装着部側窓部11aは、例えば装着部11を形成する壁を貫通する貫通孔であってもよいし、透明な部材であってもよい。ホームポジションにキャリッジ19が位置する場合、装置側窓部103a(図1)と装着部側窓部11aとを介して、利用者は標識M1を有する前面(視認面)404を視認できる。
液体噴射ヘッド12のキャリッジ19は、図示しない駆動機構によって駆動され、Y軸方向に沿って延びるガイドレール13によってガイドされながら記録媒体20上で往復移動を繰り返す。また、液体噴射装置1は、記録媒体20を排出口3(図1)に向けて搬送するための搬送機構を有する。キャリッジ19が往復移動する動きと、記録媒体20が搬送される動きとに合わせて、液体噴射ヘッド12から液体が噴射されることによって、記録媒体20に画像などが印刷される。
液体タンク30は、液体噴射ヘッド12に供給するための液体を収容する。本実施形態が収容する液体は、ブラックのインクであり、顔料粒子が溶媒に溶解したインクである。液体タンク30は、液体導入針部122に着脱可能に接続される。液体タンク30が液体導入針部122に接続されることで、液体タンク30の液体が液体導入針部122に流通可能となる。
液体噴射装置1はさらに、液体噴射ヘッド12から流体(例えば、液体や空気)を定期的に吸い出すための動作(排出動作)を実行する排出部18を有する。
排出部18は、外殻100の内部に配置されている。排出部18は、キャップ14と、吸引チューブ15と、吸引ポンプ16とを備える。液体噴射装置1が印刷動作を行っていない間は、キャリッジ19は、印刷動作における移動領域から外れた位置であるホームポジションに配置される。
キャップ14は、ホームポジションの下方に配置された有底箱状の部材である。キャップ14は、図示しない昇降機構によってZ軸方向(上下方向)に移動可能である。キャップ14は、上昇することで、液体噴射ヘッド12の下面側に押し当てられる。これにより、キャップ14は、液体噴射ヘッド12の下面に形成されたノズル孔を覆うように閉空間を形成する(閉空間状態)。この閉空間によって、ノズル12内のインクが乾燥することを抑制できる。
吸引チューブ15は、キャップ14(詳細にはキャップ14底面に形成された貫通孔)と吸引ポンプ16とを連通させる。吸引ポンプ16は、閉空間状態において駆動することによって、吸引チューブ15を介して、液体噴射ヘッド12や液体タンク30の流体(液体や空気)を吸引する。これにより、液体噴射ヘッド12への液体の初期充填が行われたり、液体噴射ヘッド12内の劣化した液体(乾燥して増粘した液体)を吸い出すことができる。
A−2.液体タンクの概略説明:
図3は、液体タンク30の主に流路構成を説明するための概念図である。液体タンク30の詳細構成を説明する前に、図3を用いて液体タンク30の概略説明を以下に行う。また、以下に説明するときに用いる「上流側」「下流側」は、液体タンク30から液体噴射ヘッド12に向かう液体の流れ方向を基準とする。なお、図3において液体が存在する領域にはドットを付している。
液体タンク30は、液体が流れる流路として、上流側から順に、第2液体室52と、接続流路54と、第1液体室51と、液体連通流路80と、液体供給部50と、を備える。また、液体タンク30は、空気が流れる流路として、空気連通流路70を備える。
第2液体室52には、液体注入部42を通って外部から液体が注入できる。また、第2液体室52は、一端である大気開放部44を含む大気連通部300によって大気と連通する。第2液体室52は、第1液体室51に供給する液体を収容可能である。
接続流路54は、第1液体室51と第2液体室52とを接続し、第2液体室52の液体を第1液体室51に供給可能である。接続流路54は、上流側から順に、フィルター室542と、中間流路544と、弁配置室546とを有する。フィルター室542は、第2液体室52に接続されている。具体的には、フィルター室542は、第2液体室52内で開口する流入開口548を有する。つまり、流入開口548は第2液体室52に接続されている。フィルター室542は、フィルター室542を上流側と下流側とに区画するフィルター部材541を有する。フィルター部材541は、上流側から下流側へと流通する液体中の異物を捕捉して、異物が下流側へと流通することを抑制する。これにより、液体噴射ヘッド12に異物が流入する可能性を低減できるので、液体噴射ヘッド12の目詰まりや液体の噴射不良の発生を低減できる。また、弁配置室546より上流側にフィルター室542が配置されていることで、異物が弁配置室546に流入する可能性が低減される。これにより、異物による後述する弁機構の開閉動作に不具合が生じる可能性を低減できる。フィルター部材541は、板状のステンレス鋼によって形成されたフィルターであり、液体を通過させ異物の通過を抑制できる複数の細孔を有する。なお、フィルター部材541は、液体を通過させ異物の通過を抑制できれば他の部材によって形成されていてもよい。
中間流路544は、フィルター室542と弁配置室546とを連通させる流路である。弁配置室546は、第1液体室51に接続された入口開口部547を有する。つまり、入口開口部547は、接続流路54の一端(下流端)を形成する。入口開口部547は、流路断面が円形状の貫通孔を形成する。弁配置室546には、入口開口部547を開閉させて第2液体室52から第1液体室51への液体の流入を制御するための弁機構60の一部が配置されている。弁機構60が開状態となることで、第2液体室52と第1液体室51とが連通し、第2液体室52の液体が第1液体室51へと流入する。また弁機構60が閉状態となることで、第2液体室52と第1液体室51とは非連通状態となる。
弁機構60は、弁体64と、ロッド67と、受圧板68と、第1付勢部材62と、第2付勢部材65とを備える。弁体64は、円板状の部材であり、弁配置室546内に配置されている。弁体64は、円環状のシール部材66を挟んで入口開口部547と対向する。シール部材66は、入口開口部547を取り囲むように入口開口部547の周縁部に配置されている。弁体64が、シール部材66に当接することで、弁配置室546と第1液体室51とは非連通状態となる。弁体64が、シール部材66から離れることで、弁配置室546と第1液体室51とは連通状態となる。ロッド67は、一端が弁体64に接続され、他端が受圧板68に接続された棒状部材である。ロッド67は、入口開口部547に挿通されている。受圧板68は、円板状の部材である。受圧板68は、第1付勢部材62および第2付勢部材65の付勢力によって第1液体室51を区画する可撓性を有する第1フィルム91に当接する。
第1付勢部材62は、弁配置室546内に配置された圧縮コイルばねである。第1付勢部材62は、弁体64をシール部材66側に向けて付勢する。第2付勢部材65は、第1液体室51内に配置された圧縮コイルばねである。第2付勢部材65は、受圧板68を第1フィルム91側に向けて付勢する。第1液体室51内の液体が液体噴射ヘッド12によって供給されて消費されることで、第1液体室51内が負圧になったときに、第1付勢部材62および第2付勢部材65の付勢力に抗して、第1フィルム91によって受圧板68,ロッド67,弁体64がシール部材66および入口開口部547から離れる方向に付勢される。これにより、弁体64が、シール部材66から離れることで弁機構60が開状態となり、弁配置室546と第1液体室51とは連通状態となる。連通状態において、第2液体室52から第1液体室51に液体が供給され、第1液体室51内の圧力がある程度上昇したときに(例えば、負圧より大きくなったときに)、第1付勢部材62および第2付勢部材65の付勢力によって、弁体64がシール部材66側に移動してシール部材66に当接する。これにより弁機構60は閉状態となり、弁配置室546と第1液体室51とは非連通状態となる。上記のごとく、弁機構60は、少なくとも第1液体室51内が負圧になったときに開状態となるので、第1液体室51内の圧力を安定させることができる。つまり、弁体64の上流側と下流側との圧力差が所定値より大きくなった場合に開状態となる弁機構を用いた場合に比べ、液体噴射ヘッド12のノズル孔の高さ位置と、第2液体室52の液面高さ位置との差(水頭差)に応じて第1液体室51内の圧力が変動することを抑制できる。これにより、第2液体室52から第1液体室51への液体の供給を安定して行うことができる。
第1液体室51は、液体供給部50に供給する液体を収容可能である。液体連通流路80は、第1液体室51と液体供給部50とを接続し、第1液体室51の液体を液体供給部50に供給可能である。空気連通流路70は、第1液体室51と液体供給部50とを接続し、第1液体室51と液体供給部50との間で空気を流通可能である。
液体供給部50は、下流端に液体供給口505を有する。液体供給口505は、液体導入針部122を受け入れる。液体供給部50は、液体噴射ヘッド12の液体導入針部122に着脱可能に接続される。具体的には、液体供給部50の液体供給口505を介して液体供給部50内に液体導入針部122が挿入されることで、液体供給部50は液体導入針部122と接続される。これにより、液体供給部50から液体導入針部122に液体が供給可能となる。
液体供給部50の内部には、液体供給部50の流路を開閉するための供給部弁機構200が配置されている。供給部弁機構200は、下流側から順に、弁座202と、弁体203と、バネ204とを備える。
弁座202は、略円環状の部材である。弁座202は、例えば、ゴムやエラストマー等の弾性体によって構成されている。弁座202は、液体供給部50の内部に圧入されている。弁体203は、略円柱状の部材である。弁体203は、液体タンク30がキャリッジ19上に搭載される前の状態(装着前状態)において、弁座202に形成された孔(弁孔)を塞ぐ。バネ204は、圧縮コイルバネである。バネ204は、弁体203を弁座202側に向かう方向に付勢する。液体タンク30がキャリッジ19上に搭載されて、液体供給部50が液体導入針部122に接続された液体タンク30の装着状態では、液体導入針部122が弁体203を上流側へと押すことで、弁体203が弁座202から離れる方向に移動する。これにより、供給部弁機構200が開状態となり、液体供給部50から液体導入針部122への液体の供給が可能となる。
A−3.液体タンク30の詳細構成:
図4は、液体タンク30の一部分解斜視図である。図5は、タンク本体40の第1の斜視図である。図6は、タンク本体40の第2の斜視図である。図7は、タンク本体40の第3の斜視図である。図8は、タンク本体40を−Y軸方向側から見た第1の図である。図9は、タンク本体40を−Y軸方向側から見た第2の図である。図10Aは、タンク本体40を+Y軸方向側から見た図である。図10Bは、フィルター室542の模式図である。図5,図6,図7,図8では、タンク本体40に配置された弁機構60も図示している。図9では、弁機構60のうちロッド67も図示している。
図4に示すように、液体タンク30は、タンク本体40と、第1フィルム91と、第2フィルム92と、第3フィルム93とを備える。液体タンク30は、略直方体形状である。液体タンク30において、X軸方向は長さ方向であり、Y軸方向は幅方向であり、Z軸方向は高さ方向である。
液体タンク30は、上面(第1面,第1壁)401と、下面(第2面,第2壁)402と、背面(第3面,第3壁)403と、前面(第4面,第4壁)404と、左側面(第5面,第5壁)405と、右側面(第6面,第5壁)406とを有する。液体タンク30がキャリッジ19上に装着された装着状態において、上面401と下面402とはZ軸方向に対向する。装着状態において、背面403と前面404とはX軸方向に対向する。装着状態において、左側面405と右側面406とはY軸方向に対向する。左側面405は、第3フィルム93によって形成されている。右側面406は、第1フィルム91によって形成されている。上面401と下面402と背面403と前面404とはタンク本体40によって形成されている。背面403と前面404と左側面405と右側面406とは、それぞれ液体噴射装置1の設置面に対して略垂直な面である。上面401と下面402とは、それぞれ液体噴射装置1の設置面に対して略水平な面である。各面401〜406は、完全な平面ではなく凹凸等を許容し、外観において概ね「垂直」又は概ね「水平」であればよい。また、前面404は、液体タンク30(詳細には、第2液体室52)内の液体の水位を外部から視認可能な視認面を構成する。例えば、前面404は、透明または半透明な部材によって形成されている。前面404には、液体の水位(液面)の基準(例えば、上限や下限)に対応する標識(例えば、目盛りやマーク)が設けられていてもよい。本実施形態では、図5に示すように、前面404には上限に対応する標識M1が設けられている。例えば、液体注入部42から液体を注入する際に、液面が上限に対応する標識M1に達した場合に、利用者は液体の注入を停止する。また、例えば、下限に対応する標識(下限標識)が設けられている場合、液体タンク30(詳細には第2液体室52)の液面が下限標識に達した場合に、利用者は液体注入部42から液体を第2液体室52に注入する。
背面403には、液体タンク30をキャリッジ19の装着部11(図2)に着脱させるためのレバー59が設けられている。レバー59は、装着状態において、装着部11と係合することで液体タンク30が装着部11から外れることを抑制する。装着部11は、弾性変形可能である。利用者はレバー59を背面403側に押し付けることで、レバー59を背面403側に弾性変形させることによって装着部11との係合を解除する。この係合の解除によって、液体タンク30が装着部11から取り外し可能となる。
タンク本体40は、略直方体形状であり、例えば、ポリプロピレンやポリスチレンなどの合成樹脂によって形成されている。第1フィルム91と第2フィルム92と第3フィルム93とはそれぞれ、タンク本体40の異なる部分に気密に貼り付けられることで、液体タンク30内における液体や空気が流通する流路などをタンク本体40と共に区画形成する。
タンク本体40(図6)は、+Y軸方向側が開口した凹形状である。タンク本体40は、凹形状のタンク本体40の底部を形成する一側壁408を有する。一側壁408は、第1液体室51と第2液体室52とを区画する壁である。
一側壁408は、X軸方向とZ軸方向とに略平行である。図5に示すように、一側壁408の一方の側(−Y軸方向側)には、第1液体室51と液体連通流路80と空気連通流路70とが形成されている。また図6に示すように、一側壁408の一方の側とは反対側の他方の側(+Y軸方向側)には、第2液体室52が形成されている。これにより、液体タンク30のスペースを効率良く利用して第1液体室51と液体連通流路80と空気連通流路70と第2液体室52とを配置できるので、液体タンク30の大型化を抑制できる。
図4や図8に示すように、一側壁408には、空気連通流路70や液体連通流路80を区画形成する溝部や、第1液体室51を形成する凹部が形成されている。一側壁408の−Y軸方向側の端面に第1フィルム91が気密に貼り付けられることで、第1液体室51や空気連通流路70や液体連通流路80が区画形成される。また図4および図6に示すように、一側壁408と対向するタンク本体40の+Y軸方向側端面には、第3フィルム93が気密に貼り付けられることで、第2液体室52が区画形成される。
タンク本体40(図4)は、さらに液体注入部42を有する。液体注入部42は、上面401と背面404と左側面406とが交差するコーナー部48の底面49から+Z軸方向に延びる。液体注入部42は、筒状の部材であり、第1流路および第2流路を形成する。液体注入部42の内部には、仕切壁45が配置されている。この仕切壁45によって、第1流路と第2流路とに仕切られている。液体注入時には、第1流路が第2液体室52に液体を流入するための液体注入路、第2流路が第2液体室52から空気を排出するための空気排出路として機能する。液体注入部42は、液体タンク30の液体使用時には図示しないキャップが装着される。また、タンク本体40の上部には、大気連通部300の一端部である大気開放部44が形成されている。大気連通部300は、細い溝状の流路や、インクが逆流したときに収容可能なバッファー室を有する。大気連通部300の他端部は第2液体室52に接続されている。これにより、液体タンク30の使用時には、第2液体室52は大気に連通する。大気連通部300の詳細は後述する。
図6に示すように、第2液体室52は、装着状態において底面を形成する第2液体室底面404faを有する。第2液体室底面404faは、下面402の内表面である。第2液体室底面404faには、装着状態において、鉛直下方向(−Z軸方向)に沿って貫通する流入開口548が形成されている。流入開口548は、下面402に形成されたフィルター室542の上流端である。
フィルター室542(図7)は、下面402から突出する枠状部材549と、枠状部材549の下端面に気密に貼り付けられる第2フィルム92(図4)によって区画形成されている。フィルター室542は、装着状態において第2液体室52よりも下方(−Z軸方向)に位置する。枠状部材549の内側には、フィルター部材541が配置されている。本実施形態では、例えば、枠状部材549の内側に形成された枠状の配置部543(図10B)に配置されている。フィルター部材541は、板状であり、装着状態において鉛直下方向(−Z軸方向)と直交する。また、フィルター部材541の周縁部には、中間流路544に連通する連通開口545が形成されている(図7,図10B)。第2液体室52の液体は、矢印Y1に示すように−Z軸方向に沿って流れることで、流入開口548、フィルター部材541を通過し、フィルター部材541を通過した液体は+Z軸方向に沿って流れることで連通開口545を通過する。連通開口545を通過した液体は中間流路544に流入する。以上のように、フィルター部材541(図10B)は、装着状態において、フィルター室542を流入開口548を含む上側に位置する第1部分542Aと、第1部分542Aよりも下側に位置する第2部分542Bとに区画する。また、フィルター部材541は、装着状態において、流入開口548の下方に位置する。これにより、フィルター部材541に気泡が付着した場合でも、付着した気泡を流入開口548を介して第2液体室52に導くことができるので、第1液体室51および液体供給部50に気泡が流出する可能性を低減できる。
中間流路544および弁配置室546(図6)は、第2液体室52内に形成されている。中間流路544および弁配置室546は、一側壁408と、一側壁408から凹形状のタンク本体40の開口側(+Y軸方向側)に向かって立ち上がる流路壁46と、流路壁46の+Y軸方向側の端面466に気密に貼り付けられたフィルム(図示せず)によって区画形成される。フィルムが貼り付けられる端面466には、シングルハッチングを付している。
中間流路544は、装着状態において、水平方向成分と鉛直上方向成分とを有する方向に延びる。なお、他の実施形態では中間流路544は、鉛直上方に延びるように形成されていてもよい。弁配置室546は、タンク本体40を+Y軸方向側から見たときに略円形形状である。弁配置室546には、入口開口部547が形成されている。具体的には、入口開口部547は、一側壁408を貫通する貫通孔である。
第1液体室51(図8)は、一側壁408に形成され、水平方向(本実施形態では、−Y軸方向)側が開口する凹部と、凹部の−Y軸方向側端面に気密に貼り付けられた第1フィルム91(図4)によって形成されている。第1液体室51の容積(最大容積)は、第2液体室52(最大容積)よりも小さい。第1液体室51は、第1フィルム91と対向する側壁515と、装着状態において鉛直下方向側に位置する底壁517と、装着状態において底壁517から鉛直上方向に向かって延びる円弧状の周囲壁518と、を有する。側壁515には、入口開口部547が形成されている。周囲壁518は、底壁517と対向する部分を有する。周囲壁518は、装着状態において、第1液体室51のうちで最も高い位置に配置された最上部519を有する。
液体連通流路80(図8)は、装着状態において、上側に凸形状の流路を形成する。本実施形態では、液体連通流路80は、装着状態において、逆U字形状の流路を形成する。液体連通流路80は、液体の流れ方向において、上流側から順に、上流端82と、上昇流路83と、液体中間流路86と、下降流路84と、下流端85と、を有する。
上流端82は、第1液体室51の周囲壁518に形成された開口であり、第1液体室51に接続されている。上昇流路83は、上流端82の下流側に位置し、装着状態および流れ方向において上方に延びる。本実施形態では、上昇流路83は上流端82から鉛直上方向に向かって延びる。なお、他の実施形態では、上昇流路83は、上方成分を有すれば斜めに延びていてもよい。ここで、装着状態において、入口開口部547は、上流端82より低い位置に配置されている。つまり、入口開口部547は上流端82よりも底壁517に近い位置に配置されている。
ここで、液体は顔料粒子を含むので、液体が気体に触れ、かつ、弁機構60の開閉による圧力変化を受けることで顔料粒子が凝集して異物となる場合がある。上記のごとく、装着状態において入口開口部547が上流端82よりも低い位置に配置されているので、入口開口部547よりも液体の水位が低くなることを抑制できる。よって、入口開口部547の周囲に気体が存在することを抑制できるので、入口開口部547の周囲に異物が発生する可能性を低減できる。これにより、異物が液体噴射ヘッド12に流入する可能性を低減できる。
液体中間流路86は、上昇流路83と下降流路84とを接続する。液体中間流路86は、装着状態において、液体連通流路80のうちで最も高い部分に位置する。つまり、液体連通流路80は、装着状態において、液体連通流路80の両端を形成する上流端82および下流端85よりも高い部分である。液体中間流路86は、液体の流れを上向きから下向きへと変更する流路であり、180度折れ曲がった流路である。また、液体中間流路86は、装着状態において、後述する空気連通流路70の最も高い部分(空気第2流路73)よりも低い位置に配置されている。
下降流路84は、流れ方向において上昇流路83および液体中間流路86よりも下流側に位置し、装着状態において下方に延びる。本実施形態では、下降流路84は液体中間流路86から鉛直下方向に向かって延びる。なお、他の実施形態では、下降流路84は、下方成分を有すれば斜めに延びていてもよい。
下流端85は、流れ方向において、下降流路84よりも下流側に位置し、液体供給部50に接続されている。下流端85は、下降流路84と液体供給部50の後述する上流端としての液体入口809とを接続する接続室として形成されている。この接続室は、空気連通流路70の後述する第2接続端75も兼ねている。
空気連通流路70(図8)は、一端を形成する第1接続端72と、空気第1流路76と、空気第2流路73と、空気第3流路74と、他端を形成する第2接続端75と、を有する。装着状態において、空気連通流路70は、液体連通流路80と第1液体室51との接続位置である上流端82よりも高い位置で第1液体室51に接続されている。また、液体中間流路86の上端部が、第1液体室51の最上部519より高い位置に配置されているため、液体タンク30は、第1液体室51の最上部519付近まで液体を収容することができる。
第1接続端72は、周囲壁518のうちで最上部519に形成された開口である。つまり、空気連通流路70は、装着状態において、第1液体室51の最上部519に接続されている。空気第1流路76は、装着状態において、第1接続端72から上方に延びる。空気第2流路73は、空気第1流路76と空気第3流路74とを接続し、装着状態において水平方向(本実施形態では、X軸方向)に延びる。空気第3流路74は、装着状態において、空気第2流路73から下方に延びる。空気第3流路74は、第2接続端75は、液体供給部50に接続されている。第2接続端75は、空気第3流路74と液体入口809とを接続する接続室として形成されている。
液体供給部50(図7)は、装着状態において、下流端85よりも下方に位置する。また、液体供給部50は、装着状態において、液体供給口505に向かって下方に延びる。本実施形態では、液体供給部50は、装着状態において、液体供給口505に向かって鉛直下方向に向かって延びているが、他の実施形態では、下方向成分を有していれば斜めに延びていてもよい。
液体供給部50(図8)は、液体入口809と、第1供給部501と、第2供給部502とを有する。液体入口809は、液体の流れ方向において、液体供給部50の上流端を形成する。液体入口809は、装着状態において鉛直上方向に向かって開口している。第1供給部501は、内部に液体入口809に接続された流路を形成する。第1供給部501は、タンク本体40内に形成されている。第2供給部502は、第1供給部501に接続されている。第2供給部502は、装着状態において、下面402から鉛直下方に突出する部材によって形成されている。第2供給部502は、液体供給口505を有する。液体供給口505は、装着状態において、鉛直下方向に向かって開口している。
図8に示すように、液体タンク30を一側壁408の一方の側(−Y軸方向側)から見たときに、液体注入部42と液体供給口505とは対角の位置に配置されている。例えば、液体タンク30を一側壁408の一方の側(−Y軸方向側)から見たときに、液体注入部42は、装着状態において第1液体室51よりも鉛直上方側、かつ、第1液体室51よりも水平方向(例えば、X軸方向)の一方側(+X軸方向側)に位置し、液体供給口505は装着状態において第1液体室51よりも鉛直下方向側、かつ、第1液体室51よりも水平方向(例えば、X軸方向)の他方の側(−X軸方向側)に位置する。これにより、液体注入部42から液体供給口505までの距離が短くなることを抑制できるので、液体注入部42から第2液体室52に液体を注入した際に気泡が発生した場合でも、液体供給口505に気泡が到達する可能性を低減できる。これにより、液体供給部50内のうちで液体供給口505の近傍に滞留する気泡を低減できるので、液体噴射ヘッド12に気泡が流入する可能性を低減できる。また、液体注入部42から液体供給口505までの液体が流通する流路を効率良く配置できるので、液体タンク30の大型化を抑制できる。
次に、図9および図10Aを用いて、大気連通部300について説明する。大気連通部300の説明に用いる「上流側」「下流側」は、外部から第2液体室52に向かう流体(空気)の流れ方向を基準とする。
大気連通部300は、上流側から順に、上流端としての大気開放部44と、第1大気流路302(図9)と、第2大気流路304(図9)、蛇行流路306(図9)と、気液分離室308(図9)と、バッファ室310(図10A)と、大気中間流路372(図9)と、下流端としての大気導入部340とを備える。ここで、大気連通部300のうちで、一側壁408の一方の側(−Y軸方向側)に形成された各種流路は、タンク本体40と第1フィルム91(図4)とによって区画され、一側壁408の他方の側(+Y軸方向側)に形成された各種流路は、タンク本体40と第3フィルム93(図4)によって区画されている。バッファ室310は、上流側から順に、第1バッファ室312と、第2バッファ室314と、第3バッファ室316と、第4バッファ室318と、第5バッファ室319と、を備える。
大気開放部44(図9)は、上面401のうち背面403側の部分から+Z軸方向に延びる筒状の部材である。第1大気流路302(図9)は、大気開放部44と第2大気流路304とを接続する流路である。第2大気流路304は、X軸方向に沿って延びる細長い流路である。蛇行流路306は、第2大気流路304と気液分離室308とを接続する流路である。蛇行流路306は、大気連通部300の流路長を長くするために細長く蛇行した流路である。これにより、第2液体室52の液体中の水分が蒸発することを抑制できる。気液分離室308を内周壁307には、図示しない気液分離膜が配置されている。気液分離膜は、気体の透過を許容すると共に液体の透過を許容しない素材で形成されている。気液分離室308の下流端は、一側壁408を貫通する貫通孔331である。貫通孔331によって、気液分離室308と第1バッファ室312(図10A)とを接続する。第1バッファ室312は、第3フィルム93とタンク本体40の+Y軸方向側端面との隙間311を介して第2バッファ室314と連通している。
第2バッファ室314と第1中間接続流路341(図8)とは、一側壁408を貫通する貫通孔332によって連通している。第1中間接続流路341の下流端は一側壁408を貫通する貫通孔333である。貫通孔333によって、第1中間接続流路341と第3バッファ室316(図10A)とは連通する。第3バッファ室316と第2中間接続流路344とは、一側壁408を貫通する貫通孔334によって連通する。第2中間接続流路344と第4バッファ室318とは、一側壁408を貫通する貫通孔335によって連通する。第4バッファ室318と第3中間接続流路371とは、一側壁408を貫通する貫通孔336によって連通する。第3中間接続流路371と第5バッファ室319とは、一側壁408を貫通する貫通孔337と、貫通孔337周囲に形成された切欠部338とによって連通する。第5バッファ室319の底面319aは、上流側である切欠部338から下流側である貫通孔339に向けて下方に位置するように傾斜している。これにより、貫通孔339から第5バッファ室319に液体が侵入した場合でも、切欠部338に液体が到達する可能性を低減できる。
第5バッファ室319と大気中間流路372とは、一側壁408を貫通する貫通孔339によって連通する。大気中間流路372と第2液体室52とは、一側壁408を貫通する大気導入部340によって連通する。大気導入部340は、装着状態において、第2液体室52の上面近傍に配置されている。
A−4.液体タンク30への液体の初期充填:
図11〜図13を用いて液体タンク30への液体の初期充填について説明する。図11は、液体の初期充填を説明するための第1の図である。図12は、液体の初期充填を説明ための第2の図である。図13は、液体の初期充填を説明するための第3の図である。図11〜図13において、液体が存在する領域にはドットを付している。
液体の初期充填では、まず、液体注入部42(図5)から液体を第2液体室52(図6)に注入する。次に、図11の矢印に示すように、液体噴射ヘッド12から液体供給部50を介して液体タンク30内の流体(例えば、空気や液体)の吸引(排出動作)を開始する。この吸引は、排出部18(図2)の吸引ポンプ16を駆動させることで行われる。この吸引によって第1液体室51内が負圧になることで弁機構60が開状態となり、第2液体室52の液体が入口開口部547を介して第1液体室51に流入する。ここで、液体連通流路80の上昇流路83によって、液体の液体供給部50への流れが堰き止められるので、第1液体室51から液体供給部50へ液体が流入することを抑制できる。一方で、第1液体室51への液体の流入に伴い、空気連通流路70および液体供給部50を通って第1液体室51内の空気が液体噴射ヘッド12側へと排出される。これにより、第1液体室51の水位は上昇する。
図12に示すように、第1液体室51の水位が上昇して、液体連通流路80の最上部と同じ高さに達すると、液体連通流路80内への液体の流入が開始され、矢印YTに示すように液体連通流路80から液体供給部50側へ液体が流入する。この液体連通流路80から液体供給部50側への液体の流入は、吸引ポンプ16からの吸引に加えサイフォン現象によって、急速に行われる。
図13に示すように、吸引がさらに継続されると、液体連通流路80を流入した液体は、第2接続端75を介して空気連通流路70へと流入する。また、液体連通流路80に流入した液体は液体供給部50および液体噴射ヘッド12に流入する。空気連通流路70に液体が流入することで、空気連通流路70に存在する空気は、第1液体室51に流入する。空気連通流路70に存在する空気が第1液体室51に流入することで、第1液体室51の水位は下がる。しかしながら、空気連通流路70の容積に比べ第1液体室51の容積は十分に大きいので、上流端82に空気が達する程度に第1液体室51の水位が下がることを抑制できる。言い換えれば、上流端82は、第1液体室51に液体が満たされた状態から空気連通流路70の容積分の空気が第1液体室51に流入した場合において、第1液体室51のうちで流入した空気が位置する領域よりも装着状態において下側の位置に接続されている。このように、液体連通流路80に液体が満たされた後において、上流端82から第1液体室51の空気が液体連通流路80に流入ことを抑制できるので、初期充填時において気泡が液体噴射ヘッド12に流入する可能性を低減できる。
以上のようにして、第1液体室51、液体連通流路80、液体供給部50、液体噴射ヘッド12への液体の初期充填が完了する。初期充填が完了した後に、吸引ポンプ16による吸引が停止される。なお、初期充填が完了したときの第1液体室51内の液体は、第1液体室51全域に存在するのではなく、空気連通流路70の容積程度の空気が存在する。
A−5.液体の初期充填後の液体タンク30について:
図14〜図18を用いて、液体の初期充填後の液体タンク30について説明する。図14は、液体の初期充填後の液体タンク30について説明するための第1の図である。図15は、液体の初期充填後の液体タンク30について説明するための第2の図である。図16は、液体の初期充填後の液体タンク30について説明するための第3の図である。図17は、液体の初期充填後の液体タンク30について説明するための第4の図である。図18は、液体の初期充填後の液体タンク30について説明するための第5の図である。図14〜図18において液体が存在する領域にはドットを付している。
図14に示すように、液体の初期充填後の液体タンク30において、時間が経過するにつれて、タンク本体40や第1フィルム91(図4)を透過して外部から空気が第1液体室51に徐々に侵入する。これにより、第1液体室51の気泡が成長して大きくなり、第1液体室51の水位は低下する。しかしながら、初期充填後からあまり時間が経過していない場合では、外部から第1液体室51に流入する空気量は少ないため、第1液体室51の水位が上流端82よりも上側に位置する状態が維持される。この状態では、上昇流路83を介した液体噴射ヘッド12への気泡の流入を抑制できるので、液体噴射ヘッド12から液体が噴射されない現象であるノズル抜けの発生を抑制できる。
図15に示すように、さらに時間が経過して、外部からさらに空気が第1液体室51に侵入し、さらに第1液体室51の気泡が成長した場合、第1液体室51の水位が上流端82の上端部を下回る。この場合、上流端82が第1液体室51に存在する空気と接するため、第1液体室51の空気が液体連通流路80へと流入可能となる。第1液体室51の空気が液体連通流路80へと流入した場合、液体連通流路80内の液体(第1液体)と第2液体室51内の液体(第2液体)とが連続的に繋がらず、空気によって第1液体と第2液体とが分断される。
図15の状態で、液体噴射ヘッド12から液体が噴射されて記録動作(印字動作)が実行された場合、以下に説明する現象が生じる。つまり、図16に示すように、液体連通流路80の液体が消費されると共に、矢印YPに示すように空気連通流路70を介して第1液体室51の空気が液体供給部50側へと流入する。さらに、記録動作が実行されると、図17に示すように、液体供給部50内の液体が消費されて、空気が液体噴射ヘッド12側に流入することで、ドット抜けが生じ得る。
図17に示すように、液体噴射ヘッド12側に空気が流入し、ドット抜けが生じた場合、利用者は操作部4(図1)を操作して排出部18に排出動作を実行させる。これにより、液体の初期充填と同様の過程(図12〜図13)を経て、図18に示すように液体が液体連通流路80、液体供給部50、液体噴射ヘッド12に充填される。また、第2液体室52の液体の量が少なくなった場合は、利用者は液体注入部42(図4)から第2液体室52に液体を注入する。ここで、液体噴射ヘッド12の記録動作(印字動作)や、排出部18による排出動作によって、液体連通流路80に液体の流れが生じた場合、液体連通流路80の圧力損失分だけ液体連通流路80よりも下流側の圧力が低下する。しかしながら、圧力の低下の程度は非常に小さいため、空気連通流路70の第2接続端75側の水位は殆ど低下しない。よって、空気連通流路70から液体供給部50に気泡が流入する可能性が低減される。
なお、液体噴射ヘッド12は、液体タンク30から空気が液体噴射ヘッド12内に流入したことを検出するセンサを新たに設け、センサによって空気の流入を検出した場合に、液体噴射装置1は排出動作の実行を促すことを利用者に報知してもよい。この報知は、例えば、前面103(図1)に新たに表示部を設けて、この表示部に排出動作の実行を促すメッセージを表示することで行ってもよい。
上記実施形態によれば、液体供給部50は、装着状態において、下流端85より下方に位置し、液体供給口505に向かって下方に延びている(図8)。これにより、液体タンク30が水平方向に大型化することを抑制できる。またこれにより、液体供給部50から液体噴射ヘッド12へと円滑に液体を流通させることができるので、液体噴射ヘッド12への液体の供給を効率良く行うことができる。
また、上記実施形態によれば、液体噴射ヘッド12側から液体タンク30内の吸引を行って液体噴射ヘッド12などに液体を充填する場合において、空気連通流路70に流入してきた液体によって押し出された空気を空気連通流路70を介して第1液体室51へと逃がすことができる。よって、液体噴射ヘッド12への液体の充填時において、気泡が液体噴射ヘッドに流入する可能性を低減できる。また、上記実施形態によれば、弁機構60は第1液体室51の液体が液体噴射ヘッド12から吸引されて負圧になることで開状態となるので、液体噴射ヘッド12からの吸引が行われていない液体注入部42から第2液体室52への液体の注入時には弁機構60は閉状態となる。よって、液体注入部42から第2液体室52への液体の注入時に発生した第2液体室52の気泡が、第1液体室51へと流入することを抑制できる。
また上記実施形態によれば、第1液体室51は第2液体室52よりも容積が小さいので、第1液体室51の空気を吸引して液体噴射ヘッド12に排出する場合において、空気の吸引量を低減できる。これにより、空気の吸引時間を短縮できる。また、上記実施形態によれば、空気連通流路70は、装着状態において、第1液体室51の最上部519に接続されている(図8)。これにより、空気連通流路70に液体が流入する可能性を低減できる。また、初期充填時や、初期充填後の排出部18を用いた排出動作の際に、空気連通流路70を介して液体供給部50側の空気を第1液体室51に円滑に流入させることができる。
B.変形例:
なお、この発明は上記の実施例や実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
B−1.第1変形例:
本発明は、インクジェットプリンター、及び、インクジェットプリンターにインクを供給するための液体タンクに限らず、インク以外の他の液体を噴射する任意の液体噴射装置及びその液体を収容するための液体タンクにも適用することができる。例えば、以下のような各種の液体噴射装置及びその液体タンクに適用可能である。
(1)ファクシミリ装置等の画像記録装置
(2)液晶ディスプレイ等の画像表示装置用のカラーフィルターの製造に用いられる色材噴射装置
(3)有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイや、面発光ディスプレイ (Field Emission Display、FED)等の電極形成に用いられる電極材噴射装置
(4)バイオチップ製造に用いられる生体有機物を含む液体を噴射する液体噴射装置
(5)精密ピペットとしての試料噴射装置
(6)潤滑油の噴射装置
(7)樹脂液の噴射装置
(8)時計やカメラ等の精密機械にピンポイントで潤滑油を噴射する液体噴射装置
(9)光通信素子等に用いられる微小半球レンズ(光学レンズ)などを形成するために紫外線硬化樹脂液等の透明樹脂液を基板上に噴射する液体噴射装置
(10)基板などをエッチングするために酸性又はアルカリ性のエッチング液を噴射する液体噴射装置
(11)他の任意の微小量の液滴を吐出させる液体噴射ヘッドを備える液体噴射装置。
なお、「液滴」とは、液体噴射装置から吐出される液体の状態をいい、粒状、涙状、糸状に尾を引くものも含むものとする。また、ここでいう「液体」とは、液体噴射装置が噴射させることができるような材料であれば良い。例えば、「液体」は、物質が液相であるときの状態の材料であれば良く、粘性の高い又は低い液状態の材料、及び、ゾル、ゲル水、その他の無機溶剤、有機溶剤、溶液、液状樹脂、液状金属(金属融液)のような液状態の材料も「液体」に含まれる。また、物質の一状態としての液体のみならず、顔料や金属粒子などの固形物からなる機能材料の粒子が溶媒に溶解、分散または混合されたものなども「液体」に含まれる。また、液体の代表的な例としては上記実施形態で説明したようなインクや液晶等が挙げられる。ここで、インクとは一般的な水性インクおよび油性インク並びにジェルインク、ホットメルトインク等の各種の液体状組成物を包含するものとする。
本発明は、上述の実施形態や実施例、変形例に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の構成で実現することができる。例えば、発明の概要の欄に記載した各形態中の技術的特徴に対応する実施形態、実施例、変形例中の技術的特徴は、上述の課題の一部又は全部を解決するために、あるいは、上述の効果の一部又は全部を達成するために、適宜、差し替えや、組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。