JP2018202479A - アルミニウム合金の固液遷移制御複相鋳造鍛造法 - Google Patents
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Abstract
【課題】鍛造加工において、素材からの必要変形量が大きく、製品形状が複雑で、従来の鍛造加工法では造形が不可能、又は、造形難度が高い製品の製造を容易にするため、鋳造加工と鍛造加工を組み合わせることで、従来の鍛造法に比して予造形工程を大幅に短縮合理化すると同時に、鍛造に鋳造で作製した予造形粗品を用いても、従来の展伸棒材を用いた鍛造品と同等以上の機械的性質が得られることを目的とする。【解決手段】鋳造により作製したニアネットシェイプを持つプリフォームを、固相線温度と液相線温度との中間温度域にある所定の温度に加熱して、所定の固相粒と液相成分が共存する半溶融状態とした後、所定の時間半溶融状態を維持する、半溶融化処理を行うことでプリフォームの内部組織を均質化し、これを型打鍛造で最終形状に造形した後、所定の熱処理を行うことで所要の機械的性質を備えた完成品を得る。【選択図】図1
Description
本発明は、アルミニウム合金の鋳造と鍛造の複相的成形に関する。
従来、高強度及び高靱性を要求されるアルミニウム合金の自動車用部品などを鍛造加工により製造する場合には、素材として展伸棒材を所要の長さに切断した素片、即ちビレットを用いてきた。しかし、円柱状ビレットから必要変形量が大きな複雑形状製品を鍛造することは、鍛造造形途中での素材ビレットの割れや材料流れの不良による捲れ込みなどのキズ、金型内に材料が充満しないことで起こる欠肉、金型の摩耗進行などの問題のために難度が高い加工となる。通常、造形難度の高い製品を鍛造する場合、これらの問題を回避するため、複数回に分けて荒鍛造を行い、ビレットを徐々に製品形状に近付けていくため工程数が多くなる。これを解決するため、完成品形状に近い形状で鍛造用予造形粗品(以下、プリフォーム)を鋳造により製造した後、これを鍛造する方法が特開2001−353569号公報で提案されている。
鋳造によって製造されるプリフォーム内部の組織中に生成されるデンドライト状結晶は、偏析、ポロシティ、引け巣など種々の鋳造欠陥を内包しており、強度、延性等の機械的性質が低下している。そのため、鋳造によって製造されたプリフォームを鍛造した製品は、鍛造による機械的性質の向上効果を得たとしても、従来の工程、即ち、熱間押出し法により製造した棒材を切断して作製したビレットを鍛造した製品より機械的性質が劣る。但し従来の鍛造法では多くの工程を必要とする。そこで工程数の少ない鋳造法で作製したプリフォームを用いて、良質の製品を鍛造し得る加工プロセスの開発を行った。
本発明は、鋳造により作製したプリフォームを固相線温度と液相線温度との中間温度域にある所定の温度に加熱して、所定の固相粒と液相成分が共存する半溶融状態とした後、所定の時間の間、その半溶融状態を維持し、その後、所定の冷却を行い凝固させるという、半溶融化処理を行うことでデンドライト状結晶を球状化し、また微細な鋳巣を液相により充填して組織の均質化を実現した後、当該プリフォームに熱間鍛造又は冷間鍛造を加えて製品を得ることで、上記課題を解決する。
本発明によるアルミニウム合金の固液遷移制御複相鋳造鍛造法では、鋳造によりニアネットシェイプを持つプリフォームを作製することと、プリフォームに半溶融化処理を行うことで鋳造組織を球状化し、当該プリフォームに変形抵抗が低く変形能が高いという鍛造加工に望ましい特性を持たせることで、変形量が大きく造形の難度が高い形状の自動車部品、航空機部品、工作機械部品、農業機械部品、建設機械部品などの製造工程を大幅に短縮合理化することができる。併せて、プリフォームに半溶融化処理を行い、鋳造組織を均質化することと、鍛造による機械的性質の向上効果と、最終鍛造製品に所定の熱処理を加えることにより、従来工法による鍛造品と同等以上の機械的性質を得ることが可能となる。
また、鋳造によりプリフォームを作製するため、素材を展伸棒材ではなく素材溶湯を凝固させただけのインゴットに置き換えることができ、展伸工程を省略することが可能である。従来の円柱状ビレットを用いる鍛造工程ではバリなど不要部分が発生するが、ニアネットシェイプを持つプリフォームを用いて鍛造するため、バリを減少又は無くすことができる。さらに、プリフォーム作製のための鋳造工程で発生するランナー部や、バリなどの不要部分を回収し再利用することが可能であり、材料歩留りを大幅に改善できる。また、特別に成分調整した材料を用いるのではなく、半溶融化処理により組織を均質化することで機械的性質を向上させるため、一般に市場に流通している材料を使用できる。以上のことから材料コストの低減にも効果が大きい。
本発明のアルミニウム合金の固液遷移制御複相鋳造鍛造法は図1に示す通り、アルミニウム合金のインゴット10から金型を用いた重力鋳造法、ダイカスト法又は連続鋳造法によりプリフォームを製造し12、プリフォームに半溶融化処理14を施して組織を均質化した後、冷間又は熱間による型打鍛造にて製品形状に鍛造16し、溶体化処理と人工時効硬化処理を行うT6処理18を経て完成品20を得るものである。
以下に本発明のアルミニウム合金の固液遷移制御複相鋳造鍛造法について実施例により説明するが、本発明はこの実施例に限定されるものではない。
鋳造によるプリフォームの製造は、JIS A6061合金の成分規格を備えるアルミニウム合金を665〜750℃で溶解し、鍛造後の最終造形品の形状を考慮した予備形状・寸法を持った金型を用いて重力鋳造法によって行う。予備形状を最終造形品の形状に限りなく近付けることは可能だが、鍛造加工による予備形状の各部位の加工率が鍛造品形状に対して10%未満では鍛造による機械的性質の向上効果が十分得られないため、加工率が10%以上となるよう予備形状を設定する必要がある。ここで加工率とは予備形状と鍛造品形状の各該当部位の断面積の比であり、
加工率=(予備形状の断面積−鍛造品形状の断面積)÷予備形状の断面積×100
で求める。
加工率=(予備形状の断面積−鍛造品形状の断面積)÷予備形状の断面積×100
で求める。
前記の鋳造で製造したプリフォームをJIS A6061合金における固相線温度と液相線温度の中間の温度域である582〜652℃に加熱して半溶融化、つまり固相粒と液相成分の共存状態とし、0〜60分の間半溶融状態を維持した後で、大気中で放冷することで組織の均質化を行う。このときの冷却において、水冷など冷却速度が速すぎる場合プリフォームに割れが生じることがあり、炉冷など冷却速度が遅すぎる場合は結晶粒が必要以上に粗大化し機械的性質が低下するため、半溶融化後の冷却は大気中での放冷が望ましい。図2に示すように鋳造によるプリフォームの組織中にデンドライト状結晶が生成するが、図3に示すように半溶融化処理によりデンドライト状結晶は球状化し、引け巣、ガス巣などのプリフォーム内部の間隙を液相が充填することで組織が均質化する。
前記の半溶融化処理により組織を均質化したプリフォームを400〜480℃に加熱し、所要の形状・寸法を持つ金型で熱間型打鍛造した後、打抜きによりバリを除去することで最終形状に造形する。
前記の鍛造品において所要の機械的性質を確保するため、本事例に適した条件によりT6処理を行う。即ち、520〜570℃に加熱して1〜4時間恒温保持して溶体化した後水焼入れを行い、次いで130〜210℃に加熱した後2〜8時間恒温保持することで人工時効硬化処理を行う。図4に示すように完成品の組織は、鍛造により球状組織が圧縮され緻密になり、鍛流線が生まれている。
以上の工程により作製した鍛造品の機械的性質、特に引張強さ、0.2%耐力、伸びを測定したところ、(1)引張強さ328.7MPa、(2)0.2%耐力260.5MPa、(3)伸び11.3% が得られた。比較対象として市販の自動車に使われているアルミニウム合金A6061の鍛造製足回り部品の機械的性質も同様に測定したところ、(1’)引張強さ313.4MPa、(2’)0.2%耐力287.3MPa、(3’)伸び10.6%であった。
以上に説明したとおり本発明によって、複雑形状品の製造工程を大幅に短縮合理化しつつ、鋳造で作製したプリフォームを鍛造した製品において従来の展伸棒材を用いた鍛造品と同等の機械的性質を得ることができる。
10 アルミニウム合金インゴット
12 重力鋳造、ダイカスト又は連続鋳造工程
14 半溶融化処理
16 冷間又は熱間型打鍛造工程
18 溶体化+人工時効硬化処理(T6処理)
20 完成品
12 重力鋳造、ダイカスト又は連続鋳造工程
14 半溶融化処理
16 冷間又は熱間型打鍛造工程
18 溶体化+人工時効硬化処理(T6処理)
20 完成品
Claims (3)
- 所要の形状・寸法及び、強度・等方性・均質性を併せ持つアルミニウム合金の造形品を、加熱・冷却・固相・液相・鋳造・鍛造を複相的に組み合わせた加工法によって作る製造法であって、先ず、当該アルミニウム合金を溶解して溶湯を得た後、当該溶湯を所要の形状・寸法を持つ鋳型を用いて鋳造し凝固させて、当該アルミニウム合金からなる所要の予造形粗品、即ちプリフォームを作製し、次に、当該プリフォームを、当該アルミニウム合金の固相線温度と液相線温度との中間温度域にある所定の温度に加熱して所定の固相粒と液相成分が共存する半溶融状態とし、所定の時間経過の間、当該半溶融状態を維持した後に、当該プリフォームを当該アルミニウム合金の固相線温度以下に冷却して、完全固体状態にした後、次いで、当該プリフォームを所定の温度に加熱又は冷却して、所要の形状・寸法を持つ金型を用いて熱間鍛造又は冷間鍛造を加え、所要の形状・寸法を持つ当該アルミニウム合金の鍛造品を作製し、更に、当該鍛造品に対して所定の経路に従う加熱・恒温保持・冷却を加えての所定の熱処理を加え、所要の内部組織及び強度・等方性・均質性を持つ最終造形品を製造するアルミニウム合金の複相的鋳造鍛造法であって、第1段階の予造形鋳造により、ニアネットシェイプを持つプリフォームを得て、従来鍛造法に比して予造形工程を大幅に短縮合理化すること、第2段階では半溶融化処理により、プリフォームの内部組織を溶解部と非溶解部とからなる所要の2相構造としてそのまま冷却し完全固体化することにより、変形抵抗が低く変形能が高いという鍛造加工に望ましい特性を持つ予造形粗品、即ち、鍛造適合性の高いプリフォームを作製すること、第3段階では変形しやすい内部組織を持つプリフォームに所定の鍛造加工を加え、所要の形状・寸法を持つ最終造形品を低加工力・小型加工機で容易且つ確実に得ること、第4段階では所定の熱処理により、当該アルミニウム合金の最終造形品に求められる強度特性を確実に得ること、などの特徴を有し、一連の鋳造、加熱、冷却、鍛造、熱処理を複相的且つ適切に結び付けて実行することにより、高強度、高等方性、高均質性を併せ持つアルミニウム合金造形品を製造できることを特徴とするアルミニウム合金の固液遷移制御複相鋳造鍛造法。
- 請求項1に説明したアルミニウム合金の固液遷移制御複相鋳造鍛造法であって、JIS6000系アルミニウム合金に対しては、プリフォームの半溶融化に際しては、582〜652℃に加熱し、0〜60分恒温保持した後、大気中で放冷することを特徴とする固液遷移制御複相鋳造鍛造法。
- 請求項1、2に説明したアルミニウム合金の固液遷移制御複相鋳造鍛造法であって、JIS6000系アルミニウム合金に対しては、請求項2に示す加工条件に加えて、鋳造工程では金型を用いた重力鋳造法、ダイカスト法又は連続鋳造法によってプリフォームを作製する、鍛造工程では当該プリフォームを400〜480℃に加熱して行う熱間鍛造法又は冷間鍛造法によって鍛造する、鍛造後の熱処理では当該鍛造品を520〜570℃に加熱して1〜4時間恒温保持した後水冷により速やかに冷却し、次いで130〜210℃に加熱して2〜8時間恒温保持した後大気中で放冷する、という加工条件によって一連の鋳造、加熱、冷却、鍛造、熱処理を適切な組み合わせと順序により実施することで、当該最終造形品の引張強さ=310MPa以上、0.2%耐力=260MPa以上、伸び=10%以上を達成することを特徴とする固液遷移制御複相鋳造鍛造法。
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CN114289658A (zh) * | 2021-12-27 | 2022-04-08 | 中国兵器科学研究院宁波分院 | 一种铝合金铸锻的复合成形方法 |
-
2017
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