[第1実施形態]
(履物の構成)
図1は、第1実施形態に係る履物1の概略構成を示す。本実施形態に係る履物1は、例えば着用者の疲労度に基づいて、重心が移動する。特に、後述するように、本実施形態に係る履物1は、錘を備え、この錘を移動させることにより、重心を移動させることができる。本実施形態に係る履物1は、履物1と通信する端末装置2(図2参照)とともに、重心移動のためのシステム(以下、本実施形態に係るシステムという)を構成する。
図1に示すように、履物1は、重心移動機構11と、通信部12と、ストレージ13と、報知部16と、を備える。ここで、本実施形態に係る履物1はウォーキングシューズである。しかし、履物1はウォーキングシューズに限定されるものではない。履物1は、例えばウォーキングシューズ以外の運動靴、革靴、長靴、またはパンプス等であってもよい。また、履物1は、例えばスポーツサンダルのようなサンダル、またはブーツ等であってもよい。また、重心移動機構11、通信部12、ストレージ13および報知部16は、例えば履物1の靴底部分または中敷きに設けられる。また、図1は例示である。履物1は図1に示す構成要素の全てを含まなくてもよい。また、履物1は図1に示す以外の構成要素を備えていてもよい。
重心移動機構11は、履物1の重心を移動させることができる機構である。重心移動機構11は、重心を履物1のかかと側またはつま先側に移動させることができる。つまり、一般的な履物ではつま先とかかとのちょうど中間付近に重心があるところ、重心移動機構11は、重心を移動させてどちらかに偏らせることができる。本実施形態において、重心移動機構11は、通信部12で受信した重心を移動させる指示(以下、重心移動指示とする)に従って重心を移動させる。本実施形態において、重心移動機構11は、履物1のつま先側およびかかと側にそれぞれ設けられた2つの液体バッグと、これらの液体バッグを繋ぐチューブを備える。また、重心移動機構11は、チューブを介して一方の液体バッグの液体を他方の液体バッグに移動させるチューブポンプ110と、を備える(図8参照)。重心移動機構11は、重心移動指示に従ってチューブポンプ110のローラを回転させて液体を移動させる。例えば、チューブポンプ110がつま先側の液体バッグの液体をかかと側の液体バッグに移動させることによって、履物1の重心はかかと側に移動する。すると、液体の移動前と比較して履物1のつま先側が軽くなるため、履物1の着用者(以下、単に「着用者」という)はつま先を引き上げやすくなる。履物1の具体的な構成態様については、さらに後述する。
通信部12は通信のためのインタフェースである。履物1は、通信部12を備えることによって、端末装置2(図2参照)と通信可能である。本実施形態において、通信部12は、無線通信規格に従って通信を行う。無線通信規格は、例えば2G、3Gおよび4G等のセルラーフォンの通信規格を含む。セルラーフォンの通信規格は、例えばLTE(Long Term Evolution)およびW−CDMA(Wideband Code Division Multiple Access)を含む。また、セルラーフォンの通信規格は、例えばCDMA2000およびPDC(Personal Digital Cellular)を含む。また、セルラーフォンの通信規格は、例えばGSM(登録商標)(Global System for Mobile communications)およびPHS(Personal Handy-phone System)等を含む。また、無線通信規格は、例えばWiMAX(Worldwide Interoperability for Microwave Access)およびIEEE802.11、Bluetooth(登録商標)、Bluetooth(登録商標) Low Energyを含む。また、無線通信規格は、例えばIrDA(Infrared Data Association)およびNFC(Near Field Communication)等を含む。通信部12は、上述した通信規格の1つまたは複数をサポートすることができる。ここで、通信部12は、端末装置2(図2参照)と有線で通信することも可能である。
ストレージ13は、記憶部としてデータを記憶する。ストレージ13が記憶するデータは、通信部12が受信した重心移動指示を含んでもよい。また、ストレージ13が記憶するデータは、通信部12が受信したセンサ24(図2参照)の検出値を含んでもよい。また、ストレージ13が記憶するデータは、重心移動機構11が重心移動の際に実行する演算の中間データまたは結果データを含んでもよい。また、ストレージ13は、データを一時的に記憶してもよいし、着用者等によって削除されるまでずっと記憶してもよい。ストレージ13は、半導体記憶デバイスおよび磁気記憶デバイス等の任意の記憶デバイスで構成されてもよい。また、ストレージ13は、複数の種類の記憶デバイスで構成されてもよい。また、ストレージ13は、メモリカード等の可搬の記憶媒体と、記憶媒体の読み取り装置と、を組み合わせた構成であってもよい。
ストレージ13は、重心移動機構11にロードされるプログラムを記憶してもよい。例えば、重心移動機構11がプロセッサを備えており、プロセッサはストレージ13からロードしたプログラムによって、チューブポンプ110(図8参照)の動作制御等を実行してもよい。ここで、プログラムは、通信部12による通信を介して、ストレージ13に記憶されてもよい。ストレージ13は、後述する所定の閾値を記憶してもよい。
報知部16は、履物1または着用者が所定の状態にあることを着用者に報知する。報知部16は、例えばライト、スピーカおよび振動モータの少なくとも1つを備える。報知部16がライトを備える場合に、報知部16は着用者に対して光を発することができる。ライトは例えばLED(発光ダイオード:Light Emitting Diode)ライトであってもよい。また、報知部16がスピーカを備える場合に、報知部16は着用者に対して音を発することができる。また、報知部16が振動モータを備える場合に、報知部16は着用者に対して振動を発することができる。ここで、履物1の所定の状態は、例えば重心移動機構11が重心を移動させる状態であってもよい。また、着用者の所定の状態は、例えば疲労度が基準を超えた状態であってもよい。一例として、報知部16がライトおよびスピーカを備えている場合に、報知部16は、光および音を発することによって、重心移動機構11がこれから重心を移動させることを着用者に知らせてもよい。
(端末装置の構成)
図2は、端末装置2の概略構成を示す。本実施形態に係るシステムにおいて、端末装置2は、着用者の疲労度を推定し、重心移動指示を生成する。また、端末装置2は、生成した重心移動指示を履物1に送信する。
図2に示すように、端末装置2は、通信部22と、ストレージ23と、センサ24と、コントローラ25と、を備える。本実施形態において、端末装置2は、着用者に装着されるウェアラブル端末である。ウェアラブル端末は、着用者の手首に装着されるリストバンド型である。別の例として、ウェアラブル端末は、指に装着される指輪型、顔に装着されるメガネ型、頭部に装着される帽子型、または体に着用される衣服型であってもよい。ここで、端末装置2はウェアラブル端末に限定されるものではない。端末装置2は、例えばスマートフォン、タブレット端末またはフィーチャーフォン等でもよい。また、端末装置2は、例えばPDA、携帯音楽プレイヤー、ゲーム機、電子書籍リーダ、家電製品等でもよい。また、図2は例示である。端末装置2は、図2に示す構成要素の一部だけを備えてもよい。また、端末装置2は、図2に示す以外の構成要素を備えていてもよい。また、端末装置2は、1つの機器に限らない。つまり、端末装置2は、複数の機器で構成されてもよい。
通信部22は、履物1と通信するためのインタフェースである。本実施形態において、通信部22は、無線通信規格に従って通信を行う。通信部22は、上記の履物1の通信部12で説明した通信規格の1つまたは複数をサポートすることができる。ここで、通信部22は、履物1と有線で通信することも可能である。また、本実施形態において、通信部22は、GPS(Global Positioning System)衛星からのGPS信号を受信できる。
ストレージ23は、記憶部としてプログラムおよびデータを記憶する。ストレージ23は、コントローラ25の処理の中間データおよび処理結果(例えば重心移動指示等)を記憶する。また、ストレージ23は、センサ24が検出した値(データ)を記憶する。本実施形態において、ストレージ23は、通信部22が受信したGPS信号を記憶する。また、ストレージ23は、着用者のデータ(例えば身長、体重、性別、年齢等)を記憶してもよい。本実施形態において、センサ24および通信部22からのデータは、コントローラ25を介して、ストレージ23に記憶される。ストレージ23は、半導体記憶デバイスおよび磁気記憶デバイス等の任意の記憶デバイスで構成されてもよい。ストレージ23は、複数の種類の記憶デバイスで構成されてもよい。また、ストレージ23は、メモリカード等の可搬の記憶媒体と、記憶媒体の読み取り装置と、を組み合わせた構成であってもよい。
ストレージ23に記憶されるプログラムは、フォアグランドまたはバックグランドで実行されるアプリケーションと、アプリケーションの動作を支援する制御プログラムとを含む。アプリケーションは、例えばセンサ24に対して例えば着用者の動き、バイタルサインおよび筋電位の少なくとも1つを検知させる処理をコントローラ25に実行させる。制御プログラムは、例えば端末装置2のバッテリーの残量を管理するバッテリー管理プログラムである。
センサ24は着用者の動き、バイタルサインおよび筋電位の少なくとも1つを検出する。本実施形態において、センサ24は、モーションセンサ、バイタルセンサおよび筋電センサを含む。つまり、本実施形態において、センサ24は、着用者の動き、着用者のバイタルサインおよび着用者の筋電位を検出する。ここで、センサ24は、モーションセンサ、バイタルセンサおよび筋電センサのうちの一部だけを備えていてもよい。また、センサ24は、さらに別の検出装置(例えば紫外線センサ等)を備えていてもよい。
(モーションセンサ)
モーションセンサは、着用者の動きを直接的または間接的に検出する。モーションセンサは、例えば加速度センサと、ジャイロセンサと、気圧センサと、照度センサと、で構成される。
加速度センサは、着用者に働く加速度の方向および大きさを検出する。加速度センサは、例えばx軸方向、y軸方向およびz軸方向の加速度を検出する3軸(3次元)タイプである。加速度センサの種類は限定されない。加速度センサは、例えばピエゾ抵抗型であってもよい。また、加速度センサは、例えば静電容量型であってもよい。また、加速度センサは、例えば圧電素子(圧電式)または熱検知型によるMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)式であってもよい。
ジャイロセンサは、着用者の動作に基づく角速度を検出する。ジャイロセンサは、例えば振動したアームに作用するコリオリ力による構造体の変形から角速度を検出する3軸タイプの振動ジャイロセンサである。ここで、構造体は、例えば水晶、圧電セラミックス等の圧電材料を素材としてもよい。また、ジャイロセンサは、構造体をシリコン等の素材として、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)技術で形成されてもよい。また、ジャイロセンサは、光学式ジャイロセンサであってもよい。
気圧センサは、着用者の周囲の気圧(大気圧)を検出する。気圧センサは、例えば気圧変化を抵抗値に変換する抵抗変化型センサである。気圧センサは、例えば気圧変化を静電量の変化に変換する静電容量型センサであってもよい。また、気圧センサは、例えば圧力変化を発振周波数に変換する水晶発振周波数型センサであってもよい。
照度センサは、着用者の周囲光の照度を検出する。照度センサは、例えばフォトダイオードを用いたものでもよいし、フォトトランジスタを用いたものでもよい。
モーションセンサを構成する加速度センサ、ジャイロセンサ、気圧センサおよび照度センサは、それぞれ検出した加速度のデータ、角速度のデータ、気圧のデータおよび周囲光の照度のデータをストレージ23に出力する。コントローラ25は、モーションセンサが出力したデータに基づいて着用者の動きを把握する。
(バイタルセンサ)
バイタルセンサ(生体センサ)は、着用者からバイタルサイン(生体情報)を検出する。本実施形態において、バイタルセンサは、着用者の被検部位に装着されて、バイタルサインを検出する。本実施形態において、バイタルサインは、脈拍、脈波、血圧、血流量、体温、呼吸数、乳酸値および血糖値の少なくともいずれかを含む。
バイタルセンサは、発光部と受光部とを備える。発光部は、例えばコントローラ25の制御に従って、測定光を照射する。測定光は、被検部位のバイタルサインを検出可能な光である。測定光は、例えば赤外光である。発光部は、例えばLEDであってもよい。発光部は、例えば、VCSEL(Vertical Cavity Surface Emitting Laser)を含む半導体レーザーであってもよい。
受光部は、発光部が照射した測定光に対する散乱光を受光する。受光部は、受光した散乱光の光電変換信号をストレージ23に出力する。コントローラ25は、ストレージ23から光電変換信号を取得する。そして、コントローラ25は、受光部が受光した散乱光の強度に基づいて、バイタルサインを測定する。受光部は、例えばPD(フォトダイオード:Photo Diode)である。
例えば、発光部が照射した赤外光は、血液中のヘモグロビンにより吸収される。そのため、血液が多く流れるほど、受光部が受光する散乱光は少なくなる。受光部が受光する散乱光は、脈拍に応じて変動する。また、受光部が受光する散乱光の変化に基づいて、着用者の脈波が測定可能である。そして、脈波から、例えば脈拍数、脈圧、血圧の変化等の情報も得られる。例えば、バイタルセンサは、レーザー光を被検部位に照射した際に、生体組織で散乱した散乱光のドップラーシフトを利用して、血流量を測定するものであってもよい。
バイタルセンサは、バイタルサインをストレージ23に出力する。コントローラ25は、バイタルセンサが出力したバイタルサインに基づいて、着用者の状態を把握する。
(筋電センサ)
筋電センサは、着用者の筋肉の状態を検出する。本実施形態において、筋電センサは、着用者の脚部に装着されて、非侵襲で筋電位(皮膚表面の電位)を検出する。典型的には、筋電センサは、履物1の着用者の筋電位の値(筋電値)を検出する。
筋電センサは、検出した筋電位を、検出時間の情報とともにストレージ23に出力する。コントローラ25は、ストレージ23から筋電位を取得する。そして、コントローラ25は、筋電図を生成し、着用者の脚部の筋肉の状態変化を把握する。筋電センサは、タイプIの筋肉(遅筋)を測定対象としてもよい。タイプIの筋肉(遅筋)が多い部位としては、例えばふくらはぎが挙げられる。また、筋電センサは、タイプIIの筋肉(速筋)を測定対象としてもよい。タイプIIの筋肉(速筋)が多い部位としては、例えば脛が挙げられる。筋電センサは、例えば脛に装着されてもよい。ここで、一般に、着用者が運動する場合に、糖質を主なエネルギー源とするタイプIIの筋肉(速筋)の方が、タイプIの筋肉(遅筋)よりも状態が変化し易い。そのため、筋電センサは、脛に装着されてもよい。
(コントローラ)
コントローラ25は、着用者の動き、着用者のバイタルサインおよび着用者の筋電図の少なくとも1つに基づいて、着用者の疲労度を推定する。ここで、着用者の動きは、着用者に装着されたモーションセンサによって検出可能である。また、着用者のバイタルサインは、着用者に装着されたバイタルセンサによって検出可能である。また、着用者の筋電図は、着用者に装着された筋電センサによって検出可能である。つまり、コントローラ25は、前記着用者に装着されたモーションセンサ、バイタルセンサおよび筋電センサの少なくとも1つの出力に基づいて、着用者の疲労度を推定する。ここで、疲労度は、疲労の程度を数値化したものである。本実施形態において、着用者が疲れている程、疲労度の値は大きくなる。このように、端末装置2は、履物1の着用者の動き、着用者のバイタルサイン、および着用者の筋電位の少なくとも1つの情報を取得することができる。
また、コントローラ25は、疲労度に基づいて、履物1の重心を移動させるか否かを判定する。例えば、コントローラ25は、疲労度が所定の条件を満たした場合に、重心を移動させるための重心移動指示を生成する。そして、コントローラ25は、通信部22に重心移動指示を履物1へと送信させる。また、コントローラ25は、疲労度に応じて、履物1が光、音および振動の少なくとも1つを発するように指示できる。例えば、コントローラ25は、重心を移動する前に報知部16が着用者に対して光および音を発することを、重心移動指示に含めることができる。また、例えば、コントローラ25は、重心移動指示とは別に、報知部16が着用者に対して光、音または振動を発することを指示することができる。
(疲労度)
本実施形態において、端末装置2のコントローラ25は、以下に説明するように疲労度の推定を行う。また、コントローラ25は、推定した疲労度に応じた重心移動指示を生成する。重心移動指示は、通信部22によって履物1に送信される。履物1の重心移動機構11は、通信部12で受け取った重心移動指示に従って、履物1の重心をつま先側またはかかと側に移動する。つまり、履物1の重心は、コントローラ25が推定した着用者の疲労度に基づいて移動する。
着用者は、疲れてくるとつま先を十分に引き上げられないために、つま先が地面または階段等に接触して転倒することがある。コントローラ25は、疲労度を演算することによって、着用者の疲れ具合を推定する。そして、コントローラ25は、着用者が疲れていると判定する場合に、つま先を引き上げるために必要な筋肉にかかる負荷を、別の筋肉に移動させる。例えば、コントローラ25は、着用者が疲れていると判定すると、履物1の重心をかかと側に移動させる。すると、着用者のつま先は引き上げられやすくなる。
図3は、履物1の重心の位置と着用者の筋出力との関係を例示する図である。横軸はつま先を引き上げるために必要な筋出力であり、図3のデータを測定した着用者の最大の筋出力を100としている。筋出力が大きいほど着用者の負荷が大きい。出現確率は、図3のデータを測定した際の筋出力の分布を表す。例えばつま先重心時(履物1の重心がつま先側にある場合)において、筋出力が40以下である歩行の出現確率は40%未満である。一方、かかと重心時(履物1の重心が、かかと側にある場合)において、筋出力が40以下である歩行の出現確率は90%を超えている。また、図3によると、かかと重心時において、全体の50%(出現確率0.5)の歩行は筋出力が20未満で済んでいる。
図3から明らかなように、履物1の重心をかかと側に移動させることによって、つま先を引き上げるために必要な筋出力を低下させて、着用者の足の筋肉にかかる負荷を減らすことができる。コントローラ25は、着用者が疲れていると判定する場合に、履物1の重心をかかと側に移動させてもよい。逆に、履物1の重心をつま先側に移動させることによって、つま先を引き上げるために必要な筋出力を上昇させて、着用者の負荷を増加させることができる。コントローラ25は、着用者が回復した(疲れていない)と判定する場合に、履物1の重心をつま先側に移動させて、適切な負荷によって着用者の筋力を鍛えるようにしてもよい。ここで、歩行に必要な筋出力とは、つま先を引き上げるために必要な筋出力を含む。また、着用者の足の筋肉とは、つま先を引き上げるために必要な筋肉を含む。
(疲労度の第1の推定手法)
コントローラ25は、着用者の動きに基づいて疲労度を推定できる。着用者の動きは、センサ24のうちのモーションセンサが検出する。コントローラ25は、センサ24が出力したデータ(センサデータ)を取得する。
疲労度の第1の推定手法として、コントローラ25は、取得したセンサデータから単位時間当たりの歩数、一歩当たりに要する時間、歩行速度、歩幅、足上げ量および歩行ばらつきを算出する。ここで、単位時間当たりの歩数等の算出に用いられるセンサデータは瞬間値であってもよい。さらに、推定の精度を高めるために、このセンサデータは、所定の時間における統計値(例えば平均値、中央値等)が用いられてもよい。
コントローラ25は、例えば加速度データおよび加速度データの測定時間に基づいて、単位時間(例えば1分)当たりの歩数を算出する。また、コントローラ25は、単位時間当たりの歩数の逆数から、一歩当たりに要する時間を算出してもよい。また、コントローラ25は、加速度データを高速フーリエ変換(FFT: Fast Fourier Transform)し、特定の周波数を抽出し、一歩当たりに要する時間を算出してもよい。
コントローラ25は、例えばGPS信号に基づいて、端末装置2の位置情報および軌跡を求めることが可能である。そして、コントローラ25は、端末装置2の位置情報および軌跡(すなわち着用者の位置情報および軌跡)から、歩行速度および歩幅を算出できる。
コントローラ25は、算出した歩行速度、歩幅、およびストレージ23から取得した着用者のデータに基づいて、足上げ量を推定できる。足上げ量は、歩行時に引き上げた足の地面からの距離の最大値である。着用者の身長、体重、性別、年齢等から、歩幅に応じた足上げ量の範囲が統計的に定められる。そして、コントローラ25は、歩行速度に基づいて、足上げ量を推定可能である。
また、コントローラ25は、例えば加速度データに基づいて、歩行ばらつきを算出することができる。歩行ばらつきは、着用者が歩く際のリズムの変動を示す。コントローラ25は、例えばx軸方向、y軸方向およびz軸方向の加速度の合計値について、一歩ごとに直前の値との差分を演算することで、歩行ばらつきを算出する。コントローラ25は、例えば、つま先の上下方向(z軸方向)について、一歩ごとに直前の値との差分を演算することで、歩行ばらつきを算出してもよい。また、コントローラ25は、FFTによって抽出された周波数の時間変動から、歩行ばらつきを算出してもよい。また、コントローラ25は、歩行ばらつきとして、演算された値の標準偏差または変動係数を算出してもよい。
ここで、コントローラ25は、例えば気圧センサおよび照度センサのデータから、着用者が歩行している場所を推定可能である。例えばコントローラ25は、照度が所定の明るさ(例えば10000ルクス)よりも明るい場合には、着用者が屋外にいると推定してもよい。照度センサは、紫外線センサを含んでもよい。紫外線センサの値が、所定の値よりも大きい場合には、着用者が屋外にいると推定してもよい。また、例えばコントローラ25は、気圧の変化から着用者が平地を歩行しているか、階段を上り下りしているか、または登山中であるか等を推定してもよい。コントローラ25は、推定した着用者が歩行している場所に応じて、歩行に関するデータの算出値を調整してもよい。例えば、コントローラ25は、着用者が登山中であると判定した場合に、足上げ量がより大きくなるように補正してもよい。
コントローラ25は、単位時間当たりの歩数に基づいて、疲労度を推定できる。例えば、コントローラ25は、単位時間当たりの歩数の基準値からの減少量または減少率が大きくなるに応じて、疲労度が大きくなるように計算してもよい。一例として、コントローラ25は、1分当たりの歩数が基準値以上である場合の疲労度を0に設定する。そして、コントローラ25は、1分当たりの歩数が基準値から0.1歩減少するごとに、疲労度を1ポイントずつ増加させてもよい。また、例えば、コントローラ25は、1分当たりの歩数が基準値から1%減少するごとに、疲労度を1ポイントずつ増加させてもよい。ここで、基準値は、着用者の初期の(最初にウェアラブル端末を装着した時の)歩行に関するデータを用いて決定されてもよい。別の例として、基準値は、着用者が疲労していない時の複数の歩行に関するデータの統計値(例えば平均値、中央値等)を用いて決定されてもよい。
コントローラ25は、一歩当たりに要する時間に基づいて、疲労度を推定できる。例えば、コントローラ25は、一歩当たりに要する時間の基準値からの増加量または増加率が大きくなるに応じて、疲労度が大きくなるように計算してもよい。一例として、コントローラ25は、一歩当たりに要する時間が基準値以下である場合の疲労度を0に設定する。そして、コントローラ25は、一歩当たりに要する時間が0.1秒増加するごとに疲労度を1ポイントずつ増加させてもよい。また、例えば、コントローラ25は、一歩当たりに要する時間が基準値から1%増加するごとに、疲労度を1ポイントずつ増加させてもよい。
コントローラ25は、歩行速度に基づいて、疲労度を推定できる。例えば、コントローラ25は、歩行速度の減少量または減少率が大きくなるに応じて、疲労度が大きくなるように計算してもよい。一例として、コントローラ25は、歩行速度が基準値以上である場合の疲労度を0に設定する。そして、コントローラ25は、歩行速度が0.1[m/秒]減少するごとに、疲労度を1ポイントずつ増加させてもよい。また、例えば、コントローラ25は、歩行速度が基準値から1%減少するごとに、疲労度を1ポイントずつ増加させてもよい。
コントローラ25は、歩幅に基づいて、疲労度を推定できる。例えば、コントローラ25は、歩幅の減少量または減少率が大きくなるに応じて、疲労度が大きくなるように計算してもよい。一例として、コントローラ25は、歩幅が基準値以上である場合の疲労度を0に設定する。そして、コントローラ25は、歩幅が1[cm]減少するごとに、疲労度を1ポイントずつ増加させてもよい。また、例えば、コントローラ25は、歩幅が基準値から1%減少するごとに、疲労度を1ポイントずつ増加させてもよい。
コントローラ25は、足上げ量に基づいて疲労度を推定できる。例えば、コントローラ25は、足上げ量の減少量または減少率が大きくなるに応じて、疲労度が大きくなるように計算してもよい。一例として、コントローラ25は、足上げ量が基準値以上である場合の疲労度を0に設定する。そして、コントローラ25は、足上げ量が0.1[cm]減少するごとに、疲労度を1ポイントずつ増加させてもよい。また、例えば、コントローラ25は、足上げ量が基準値から1%減少するごとに、疲労度を1ポイントずつ増加させてもよい。
コントローラ25は、歩行ばらつきに基づいて、疲労度を推定できる。例えば、コントローラ25は、歩行ばらつきの増加率が大きくなるに応じて、疲労度が大きくなるように計算してもよい。一例として、コントローラ25は、歩行ばらつきが基準値以下である場合の疲労度を0に設定する。そして、コントローラ25は、歩行ばらつきが基準値から1%増加するごとに、疲労度を1ポイントずつ増加させてもよい。
コントローラ25は、着用者の動きに基づいて推定された疲労度が第1の条件を満たした場合に、重心をかかと側に移動させる重心移動指示を生成する。本実施形態において、第1の条件は、第1の閾値より大きいことである。また、コントローラ25は、着用者の動きに基づいて推定された疲労度が第2の条件を満たした場合に、重心をつま先側に移動させる重心移動指示を生成する。本実施形態において、第2の条件は、第2の閾値より小さいことである。ここで、第1の閾値は、着用者が疲労しており、転倒の危険性があるという判定に用いられる閾値である。また、第2の閾値は、着用者が疲労しておらず、転倒の危険性がないという判定に用いられる閾値である。また、第2の閾値は、着用者が疲労から回復しており、転倒の危険性が少ないという判定に用いられる閾値であってもよい。第2の閾値は、第1の閾値以下に設定される。例えば、第1の閾値は20ポイントに設定されてもよい。また、例えば、第2の閾値は5ポイントに設定されてもよい。
(疲労度の第2の推定手法)
コントローラ25は、着用者のバイタルサインに基づいて、疲労度を推定できる。着用者のバイタルサインは、センサ24のうちのバイタルセンサが検出する。コントローラ25は、センサ24が出力したデータ(センサデータ)を取得する。
疲労度の第2の推定手法として、コントローラ25は、取得したセンサデータから得られるバイタルサインのうち、脈拍、脈波、血圧、血流量、体温、呼吸数、乳酸値および血糖値の少なくとも1つに基づいて疲労度を推定する。ここで、疲労度の推定に使用されるバイタルサインは瞬間値であってもよい。しかし、推定の精度を高めるために、このバイタルサインは、所定の時間における統計値(例えば平均値、中央値等)であってもよい。
脈拍は、心臓の拍動によって周期的に起こる鼓動である。脈波は、心臓の血液駆出に伴う血管の拍動(脈拍)変化を図にしたものである。また、血圧は、血管内の圧力である。図4は、脈波を例示する図である。また、図4の横軸は時間、縦軸はPDの出力値(電圧値)である。図4に示すように、例えば脈波のピーク間隔から脈拍を得ることができる。所定の時間内(例えば1分間)に心臓が拍動する回数(脈拍数または心拍数)から、着用者の状態変化を推定することができる。また、脈波の最大値、最小値、および脈波の振幅値(脈圧)から、所定の血圧(例えば収縮期血圧および拡張期血圧)を推定してもよい。
血流量は、所定の時間内(例えば1分間)に血管を流れる血液の量である。体温および呼吸数は、それぞれ体の温度および所定の時間内(例えば1分間)の呼吸の回数である。本実施形態において、乳酸値は、血中乳酸値のことである。つまり、乳酸値、は血液中の乳酸の濃度である。血糖値は、血液内のグルコース(ブドウ糖)の濃度である。
コントローラ25は、脈拍に基づいて疲労度を推定できる。運動強度が大きくなると、心拍数は上昇する。例えば、コントローラ25は、脈拍の基準値からの増加量または増加率が大きくなるに応じて、疲労度が大きくなるように計算してもよい。一例として、コントローラ25は、脈拍が基準値以下である場合の疲労度を0に設定する。そして、コントローラ25は、脈拍が1[回/min]増加するごとに、疲労度を1ポイントずつ増加させてもよい。また、例えば、コントローラ25は、脈拍が基準値から1%増加するごとに、疲労度を1ポイントずつ増加させてもよい。ここで、基準値は、例えば着用者が最初にウェアラブル端末を装着した時のデータに基づいて設定する等、疲労度の第1の推定手法で説明した方法で設定されてもよい。
コントローラ25は、脈波に基づいて、疲労度を推定できる。例えば、コントローラ25は、得られた脈波を2回微分することにより、加速度脈波を算出してもよい。加速度脈波に含まれる低周波成分(例えば0.15Hz未満の成分)は、交感神経機能を反映する。また、加速度脈波に含まれる高周波成分(例えば0.15Hz以上の成分)は、副交感神経機能を反映する。コントローラ25は、低周波成分を高周波成分で割った比率(LF/HF)を求めて、疲労度に対応付けてもよい。例えば、比率(LF/HF)が2よりも大きい場合には、疲労状態であると判定される。一例として、コントローラ25は、比率(LF/HF)が2以下である場合の疲労度を0に設定する。そして、コントローラ25は、比率(LF/HF)が2よりも大きい場合に、0.1増加するごとに、疲労度を1ポイントずつ増加させてもよい。
コントローラ25は、血圧に基づいて、疲労度を推定できる。運動強度が大きくなると心拍数、心筋収縮力および血管抵抗の増大に伴って、血圧は上昇する。例えば、コントローラ25は、血圧の基準値からの増加量または増加率が大きくなるに応じて、疲労度が大きくなるように計算してもよい。一例として、コントローラ25は、血圧が基準値以下である場合の疲労度を0に設定する。そして、コントローラ25は、血圧が5[mmHg]上昇するごとに、疲労度を1ポイントずつ増加させてもよい。また、例えば、コントローラ25は、血圧が基準値から1%上昇するごとに、疲労度を1ポイントずつ増加させてもよい。ここで、コントローラ25は、上記の判定において、例えば収縮期血圧を使用してもよい。別の例としてコントローラ25は、上記の判定において、拡張期血圧を使用してもよい。
コントローラ25は、血流量に基づいて疲労度を推定できる。運動強度が大きくなると、心拍数の上昇に伴って、血流量は上昇する。例えば、コントローラ25は、血流量の基準値からの増加率が大きくなるに応じて、疲労度が大きくなるように計算してもよい。一例として、コントローラ25は、血流量が基準値以下である場合の疲労度を0に設定する。そして、コントローラ25は、血流量が基準値から1%増加するごとに、疲労度を1ポイントずつ増加させてもよい。
コントローラ25は、体温に基づいて、疲労度を推定できる。運動強度が大きくなると体温は上昇する。例えば、コントローラ25は、体温の基準値からの増加量または増加率が大きくなるに応じて、疲労度が大きくなるように計算してもよい。一例として、コントローラ25は、体温が基準値以下である場合の疲労度を0に設定する。そして、コントローラ25は、体温が0.1[℃]上昇するごとに、疲労度を1ポイントずつ増加させてもよい。また、例えば、コントローラ25は、体温が基準値から0.3%増加するごとに、疲労度を1ポイントずつ増加させてもよい。
コントローラ25は、呼吸数に基づいて、疲労度を推定できる。運動強度が大きくなると、呼吸数は上昇する。例えば、コントローラ25は、呼吸数の基準値からの増加量または増加率が大きくなるに応じて、疲労度が大きくなるように計算してもよい。一例として、コントローラ25は、呼吸数が基準値以下である場合の疲労度を0に設定する。そして、コントローラ25は、呼吸数が1[回/min]上昇するごとに、疲労度を1ポイントずつ増加させてもよい。また、例えば、コントローラ25は、呼吸数が基準値から5%増加するごとに、疲労度を1ポイントずつ増加させてもよい。
コントローラ25は、乳酸値に基づいて、疲労度を推定できる。図5は運動強度と血中乳酸濃度(乳酸値)との関係を例示する図である。図5の例では、横軸が運動強度の大きさを示す。また、図5の例では、縦軸が血中乳酸濃度(乳酸値)を示す。運動強度が乳酸性閾値LTを超えて大きくなると、乳酸値が上昇する。一例として、コントローラ25は、乳酸値が乳酸性閾値LTに対応する基準値(図5の例では約1.7[mmol/リットル])以下である場合の疲労度を0に設定する。そして、コントローラ25は、乳酸値が0.1[mmol/リットル]増加するごとに、疲労度を1ポイントずつ増加させてもよい。また、例えば、コントローラ25は、乳酸値が基準値から10%増加するごとに、疲労度を1ポイントずつ増加させてもよい。
コントローラ25は、血糖値に基づいて、疲労度を推定できる。着用者が運動すると、血中グルコースが筋へ取り込まれるため、血糖値は低下する。例えば、コントローラ25は、血糖値の基準値からの減少率が大きくなるに応じて、疲労度が大きくなるように計算してもよい。一例として、コントローラ25は、血糖値が基準値以上である場合の疲労度を0に設定する。そして、コントローラ25は、血糖値が基準値から1%減少するごとに、疲労度を1ポイントずつ増加させてもよい。
コントローラ25は、疲労度の第1の推定手法と同様に、着用者のバイタルサインに基づいて推定された疲労度が第1の閾値より大きい場合に、重心をかかと側に移動させる第1の重心移動指示を生成する。また、コントローラ25は、第2の閾値より小さい場合に、重心をつま先側に移動させる第2の重心移動指示を生成する。
(疲労度の第3の推定手法)
コントローラ25は、着用者の筋電図に基づいて、疲労度を推定できる。コントローラ25は、筋電センサが検出した筋電位から筋電図を生成し、着用者の脚部の筋肉の状態変化を把握する。
筋電図は、筋線維から発生する活動電位(筋電位)の変化を示すものである。着用者が疲労すると、筋電位の周期的な変化の時間間隔が広くなる。すなわち、筋電図を周波数解析した際の平均周波数は、筋肉が疲労するに従い低くなる。速筋、遅筋と呼ばれる2種類の筋肉のうち、疲労時には高周波数成分を発生する速筋の活動が減少するため、平均周波数は低くなる。したがって、コントローラ25は、筋電図における平均周波数の変化から、疲労度を推定できる。
図6(A)は、筋電センサが検出した筋電位の時間変化を例示する図である。コントローラ25は、ストレージ23から筋電位の時間変化を取得する。そして、コントローラ25は、所定の時間(例えば3秒)ごとに平均周波数を求める。図6(B)はコントローラ25が求めた所定の時間ごとの平均周波数を示す図である。一例として、コントローラ25は、平均周波数が基準値以上である場合の疲労度を0に設定する。そして、コントローラ25は、平均周波数が基準値から1Hz減少するごとに、疲労度を1ポイントずつ増加させてもよい。また、例えば、コントローラ25は、平均周波数が基準値から1%減少するごとに、疲労度を1ポイントずつ増加させてもよい。ここで、基準値は、例えば着用者が最初にウェアラブル端末を装着した時のデータに基づいて設定する等、疲労度の第1の推定手法で説明した方法で設定されてもよい。
ここで、別の推定手法として、コントローラ25は、基準値を用いずに疲労度を推定してもよい。この推定手法では、コントローラ25は、所定の時間ごとの平均周波数について、直前の平均周波数と比較した減少量または減少率を求める。そして、コントローラ25は、求めた減少量または減少率に応じて疲労度を増減させる。例えば、コントローラ25は、疲労度の推定の開始時の初期値を0に設定する。コントローラ25は、平均周波数が直前の平均周波数より上昇した場合には、疲労度を減少させる。ただし、疲労度は0を下限とする。そして、コントローラ25は、平均周波数が直前の平均周波数から減少した場合に、減少量または減少率に応じて疲労度を増加させる。
コントローラ25は、疲労度の第1および第2の推定手法と同様に、着用者の筋電図に基づいて推定された疲労度が第1の閾値より大きい場合に、重心をかかと側に移動させる第1の重心移動指示を生成する。また、コントローラ25は、第2の閾値より小さい場合に、重心をつま先側に移動させる第2の重心移動指示を生成する。
(基準値、閾値の調整)
本実施形態において、コントローラ25は、疲労度の第1から第3の推定手法の少なくとも1つを用いて、着用者の運動中の疲労度を推定する。上記のように、コントローラ25は、疲労度の推定の際に基準値を用いる。また、コントローラ25は、重心移動指示を生成する際に、第1の閾値および第2の閾値を用いる。本実施形態に係る履物1は、以下に説明するように、基準値、第1の閾値および第2の閾値の少なくとも1つを調整することが可能である。
図7は、疲労度の一日ごとの変化を例示する図である。図7の例において、横軸は日数を示す。また、縦軸はセンサデータに基づく値(本実施形態においては一日ごとの疲労度)の大きさを示す。コントローラ25は、図7に示されるような疲労度に関する統計データを演算で求めて、基準値、第1の閾値および第2の閾値が適切であるか否かを判定する。
コントローラ25は、一日単位で、疲労度の統計値を求める。図7の例では、コントローラ25は、一日分の疲労度のうち第1の閾値より大きい値を平均して、第1のセンサデータに基づく値d1を演算する。また、コントローラ25は、一日分の疲労度のうち第2の閾値より小さい値を平均して、第2のセンサデータに基づく値d2を演算する。ここで、コントローラ25は、第1のセンサデータに基づく値d1が存在する一日についてだけ、第2のセンサデータに基づく値d2を演算する。そして、コントローラ25は、第1のセンサデータに基づく値d1が存在しない一日について、一日分の疲労度の全てを平均して、第3のセンサデータに基づく値d3を演算する。
コントローラ25は、例えば日付が変わるタイミングで一日分のセンサデータを取得し、図7に示すような疲労度の一日ごとの変化のデータを更新する。ここで、一日の開始は0時を基準としなくてもよい。例えば、午後10時を基準として、前日の午後10時から本日の午後10時までが、第1の判定および第2の判定を実行する一日であってもよい。
コントローラ25は、図7に示すような疲労度の一日ごとの変化から、以下のような着用者の状態を容易に把握できる。図7の例では、3日目、4日目、6日目および8日目に、第1の閾値よりも大きい第1のセンサデータに基づく値d1が存在する。コントローラ25は、これらの日に、着用者がつま先を上げにくくなる程度に疲労したことを把握できる。また、3日目および8日目に、第2の閾値よりも小さい第2のセンサデータに基づく値d2が存在する。コントローラ25は、3日目および8日目については、着用者のつま先を上げにくくなる程度であった疲労が、その後に回復したことを把握できる。
コントローラ25は、一ヶ月分のセンサデータを取得し終わると(例えば月が変わると)、第1のセンサデータに基づく値d1が存在した日数が第3の閾値より大きいか否かについて判定する。第3の閾値は、基準値、第1の閾値および第2の閾値の少なくとも1つを修正する必要があるかどうかを判定する閾値である。本実施形態において、第3の閾値は一ヶ月の半分の日数(例えば15日)に設定される。コントローラ25は、第1のセンサデータに基づく値d1が存在した日数が第3の閾値より大きい場合、すなわち頻繁に第1の閾値を超える場合には、基準値、第1の閾値および第2の閾値が適切でないと判定する。そして、コントローラ25は、ストレージ23に記憶されている基準値、第1の閾値および第2の閾値の少なくとも1つを書き換える。例えば、コントローラ25は、第1の閾値および第2の閾値が低すぎると判定した場合には、これらをより大きな値に設定してもよい。また、例えば、コントローラ25は、現在の基準値が疲労度を過度に大きく推定させると判定した場合に、基準値について調整してもよい。
本実施形態において、第3の判定は、一ヶ月ごとに実行される。ここで、第3の判定は、一ヶ月でなく所定の日数ごとに実行されてもよい。例えば、所定の日数は、20日であってもよい。第3の閾値は、所定の日数に応じて変化してもよい。例えば所定の日数が20日の場合に、第3の閾値は、例えば10日であってもよい。
(重心移動機構)
以下、本実施形態に係る履物1の重心移動機構11の構成例を、より具体的に説明する。
<第1構成例>
図8は、本実施形態に係る履物1の重心移動機構11の第1構成例を示す図である。本実施形態に係る履物1の重心移動機構11は、履物1の底部(靴底部分)に設けられている。図8に示す例では、履物1を透過させて重心移動機構11を示している。図8においては、重心移動機構11を破線で示してある。図8(A)は、履物1の斜め方向から重心移動機構11を示す透視図である。また、図8(B)は、履物1の底部側から重心移動機構11を示す透視図である。
図9は、図8に示した履物1において、第1構成例に係る重心移動機構11のみを示す図である。図9(A)および図9(B)ともに、履物1を上方から見た、すなわちZ軸の負方向に向いて見た重心移動機構11を示している。
図8および図9に示すように、第1構成例に係る重心移動機構11は、チューブポンプ110と、つま先側の液体バッグ111Aと、かかと側の液体バッグ111Bと、を備える。また、図9に示すように、チューブポンプ110は、つま先側の液体バッグ111A、および、かかと側の液体バッグ111Bに接続されるチューブ112と、チューブ内を通る液体を送り出すためのローラ114と、ローラ114を回転させるモータ116と、を備える。本構成例において液体は水である。しかし、液体は水に限定されない。例えば、水よりも比重が大きく粘性のある液体等が用いられてもよい。液体は、例えば油などであってもよい。
第1構成例において、チューブ112は、外力が加えられると潰れた形状に変形し、当該外力を除くと元の形状に復元する。チューブ112は、例えば塩ビまたはナイロンのような、可撓性を有するとともに形状が復元する性質を有する素材で構成してもよい。チューブ112が可撓性を有することにより、履物1が変形したとしても、履物1の変形に応じてチューブ112も変形する。このため、履物1の着用者が歩行などする際に、重心移動機構11に不具合または破損などが生じるリスクを低減することができる。
ローラ114は、図9に示すように、モータ116によって回転駆動されるアームを有する構成とすることができる。図9に示すように、各アームの先端が自由に回転する機構を備えることにより、ローラ114が回転する際に各アーム先端とチューブ112との摩擦を低減することができる。モータ116がローラ114を確実に回転することができるように、ローラ114自体は、比較的硬質の素材で構成してもよい。一方で、ローラ114の各アームおよび各アーム先端の回転機構などは、チューブ112を潰すことができれば、任意の固さおよび形状とすることができる。ローラ114が有するアームは、図9に示すように2つには限定されず、1つ以上の任意の数とすることができる。
モータ116は、ローラ114を回転駆動させる。第1構成例において、モータ116は、電力により駆動される。モータ116は、ローラ114を回転駆動させるものであれば、任意のモータとすることができる。モータ116は、例えばサーボモータまたはステッピングモータなどを含む。モータ116の電力は、履物1の内部または外部から供給される。例えば、モータ116の電力は、履物1の任意の箇所に備えられたバッテリーから供給されるようにしてもよい。また、例えば、モータ116の電力は、履物1の外部に備えられたバッテリーからケーブルなどを経て供給されてもよい。
第1構成例に係る重心移動機構11は、端末装置2の通信部22からの重心移動指示を、通信部12を介して受け取る。重心移動機構11は、重心移動指示に従って、チューブポンプ110のモータ116の回転を制御する。図9に示すように、モータ116の回転に従って、ローラ114はチューブ112を押しつぶしながら正転または逆転する。ローラ114がチューブ112を押しつぶしながら回転すると、チューブ112内の液体が移動するため、つま先側の液体バッグ111Aとかかと側の液体バッグ111Bとの間で液体の移動が生じる。このようにして、重心移動機構11は、履物1の重心をつま先側またはかかと側に移動させることができる。また、重心移動機構11は、重心の移動が完了すると、チューブポンプ110のモータ116の回転を停止させる。また、重心移動機構11は、モータ116の回転速度を変化させることで、履物1の重心が移動する速度を変更することができる。
例えば、図9(A)に示すように、モータ116の回転を制御して、ローラ116を反時計回りに回転させたとする。この場合、モータ116の回転に従って、ローラ116がチューブ112を押しつぶしながら回転することにより、チューブ112内の液体は、液体バッグ111Aから液体バッグ111Bに向けて移動する。この動作により、液体バッグ111A内の液体が減少したぶんだけ、液体バッグ111B内の液体は増加する。このようにして、重心移動機構11は、履物1のかかと側に重心を移動させることができる。ここで、重心移動機構11が移動させる重心とは、重心移動機構11の重心としてもよいし、履物1の重心としてもよい。
液体バッグ111A内の液体が減少すると、液体バッグ111A内は負圧になる。また、液体バッグ111B内の液体が増加すると、液体バッグ111B内は正圧になる。液体バッグ111Aおよび液体バッグ111Bの素材は、液体バッグ内の圧力に応じて変形し易いものにすると、液体バッグ111Aと液体バッグ111Bとの間で液体が移動し易い。そこで、本構成例においては、液体バッグ111Aおよび液体バッグ111Bの少なくとも一方を、またはこれらの両方を、可撓性を有する素材で構成してもよい。可撓性を有する素材とは、例えば低密度または高密度ポリエチレンおよび塩ビのような素材とすることができる。
液体バッグ111Aおよび液体バッグ111Bの少なくとも一方は可撓性を有するバッグを含むようにすることで、液体バッグ111Aと液体バッグ111Bとの間で液体が移動し易くすることができる。また、液体バッグ111Aおよび液体バッグ111Bの少なくとも一方は可撓性を有することにより、履物1が変形したとしても、履物1の変形に応じて液体バッグ111Aおよび/または液体バッグ111Bも変形する。このため、履物1の着用者が歩行などする際に、重心移動機構11に不具合または破損などが生じるリスクを低減することができる。
一方、例えば、図9(B)に示すように、モータ116の回転を制御して、ローラ116を時計回りに回転させたとする。この場合、モータ116の回転に従って、ローラ116がチューブ112を押しつぶしながら回転することにより、チューブ112内の液体は、液体バッグ111Bから液体バッグ111Aに向けて移動する。この動作により、液体バッグ111B内の液体が減少したぶんだけ、液体バッグ111A内の液体は増加する。このようにして、重心移動機構11は、履物1のつま先側に重心を移動させることができる。
このように、本構成例において、履物1は、重心を移動させる機構11を備えている。また。本構成例において、履物1は、第1の空間111Aと、第2の空間111Bと、を備えている。そして、本構成例において、重心を移動させる機構11は、第1の空間111Aと第2の空間111Bとの間で流動性物質が移動することにより、前記重心を移動させる。ここで、本構成例において、流動性物質は、例えば水または油などの液体とする。本構成例において、流動性物質は、ゲルを含むものであってもよい。本構成例において、流動性物質は、粉状物、粒状物、砂、砂鉄、ビーズ、および磁性流体の少なくともいずれかを含むものとしてもよい。また、本構成例において、履物1は、第1の空間111Aと第2の空間111Bとの間で流動性物質を移動させる例えばチューブポンプ110のようなポンプを備える。また、前記第1の空間111Aおよび前記第2の空間111Bの少なくとも一方は、可撓性を有するバッグを含んでもよい。
上述した第1構成例に係る重心移動機構11は、第1の空間としてつま先側液体バッグ111Aと、第2の空間としてかかと側液体バッグ111Bと、を備えている。ここで、第1の空間および/または第2の空間は、必ずしも履物1とは別個の部材の液体バッグとして構成しなくてもよい。例えば、第1の空間および第2の空間の少なくとも一方は、履物1の底部内に形成した空間などとしてもよい。この場合、例えば履物1の靴底部分をゴムなどの素材で構成し、その靴底部分の内部に空間を形成してもよい。また、例えば、第1の空間および第2の空間の少なくとも一方は、履物1の中敷内に形成してもよい。この場合、例えば履物1の中にインソールを敷くことができるように構成し、このインソールの内部に空間を形成してもよい。
図10は、第1実施形態に係る履物1の動作を説明する図である。例えば、かかと側の液体バッグ111Bからつま先側の液体バッグ111Aに液体が移動するなどして、つま先側の液体バッグ111Aに比較的多くの液体が貯えられたとする。この場合、重心移動機構11の重心は、履物1のつま先側に移動する。したがって、履物1の重心も、かかと側からつま先側に移動する。したがって、この場合、図10(A)に示すように、履物1の着用者が足首の力を抜いた状態では、履物1のつま先側が下がった状態になる。このように、履物1は、重心をつま先側に移動させることによって、着用者の負荷を増加させる。したがって、履物1の着用者は、つま先を引き上げるために必要な筋力を鍛えることができるため、歩行に必要な筋力の低下を抑制することができる。
一方、履物1の着用者が歩き続けるなどして脚の筋肉が疲労してくると、つま先を十分に引き上げられずに、つま先が地面または階段等に接触し易くなる。この状態のまま履物1の着用者が歩行を続けると、転倒するリスクが高くなる。したがって、この場合、つま先側の液体バッグ111Aからかかと側の液体バッグ111Bに液体を移動させて、かかと側の液体バッグ111Bに比較的多くの液体が貯えられるようにする。この場合、重心移動機構11の重心は、履物1のかかと側に移動する。したがって、履物1の重心も、つま先側からかかと側に移動する。したがって、この場合、図10(B)に示すように、履物1の着用者が足首の力を抜いた状態でも、履物1のつま先側が上がった状態になる。このように、履物1の重心がかかと側に移動することによって、履物1の着用者はつま先を十分に引き上げ易くなり、つま先が地面または階段等に接触し難くなる。したがって、履物1は、着用者が転倒するリスクを低減することができる。
<第2構成例>
次に、本実施形態に係る履物1の重心移動機構11の第2構成例を説明する。第2構成例は、上述した第1構成例を簡略化するものである。以下、上述した第1構成例と同様の説明は、適宜、簡略化または省略する。
図11は、本実施形態に係る履物1の重心移動機構11の第2構成例を示す図である。図11に示す例では、履物1を透過させて重心移動機構11を示している。図11においては、重心移動機構11を破線で示してある。図11(A)は、履物1の斜め方向から重心移動機構11を示す透視図である。また、図11(B)は、履物1の底部側から重心移動機構11を示す透視図である。
図12は、図11に示した履物1において、第2構成例に係る重心移動機構11のみを示す図である。図12(A)は、履物1を上方から見た、すなわちZ軸の負方向に向いて見た重心移動機構11を示している。また、図12(B)および図12(C)は、履物1を横側から見た、すなわちY軸の正方向に向いて見た重心移動機構11を示している。
図11および図12に示すように、第2構成例に係る重心移動機構11は、バルブ120と、つま先側の液体バッグ111Aと、かかと側の液体バッグ111Bと、を備える。また、図12に示すように、バルブ120とつま先側の液体バッグ111Aとは、チューブ112Aによって接続されている。同様に、バルブ120とかかと側の液体バッグ111Bとは、チューブ112Bによって接続されている。第2構成例においては、つま先側の液体バッグ111Aとかかと側の液体バッグ111Bとの間で、チューブ112A,112Bおよびバルブ120を経て、液体が移動する。本構成例においても液体は水である。しかし、液体は水に限定されず、例えば、水よりも比重が大きく粘性のある液体、例えば油等が用いられてもよい。
本構成例において、液体バッグ111Aおよび液体バッグ111Bは、第1構成例と同様の構成とすることができる。また、本構成例において、チューブ112Aおよびチューブ112Bは、第1構成例のチューブ112と同様の構成とすることができる。
バルブ120は、液体を通過させる開状態と、液体を通過させない閉状態とを切り換える。バルブ120は、液体を通過させる/通過させない状態を切り換え可能な構成であれば、任意のものを採用することができる。例えば、バルブ120は、コントローラ25などからの制御信号に応じて、電力によって開状態/閉状態を切り換え可能に構成してもよい。この場合、バルブ120は、第1構成例のチューブポンプ110と同様に、履物1の内部または外部から供給される電力により駆動させてもよい。また、バルブ120は、例えば、履物1の着用者などによる操作に応じて、手動で開状態/閉状態を切り換え可能に構成してもよい。
図12(A)に示すように、バルブ120が閉状態の時は、液体バッグ111Aと液体バッグ111Bとの間で液体が移動しない。したがって、バルブ120が閉状態の時は、液体バッグ111Aに貯えられる液体の量も、液体バッグ111Bに貯えられる液体の量も、変化しない。この場合、重心移動機構11の重心は移動しない。
図12(B)に示すように、バルブ120が開状態の時は、液体バッグ111Aと液体バッグ111Bとの間で液体が移動することができる。したがって、バルブ120が開状態の時は、図12(B)に示す力Pを作用させると、液体バッグ111Aから液体バッグ111Bに液体が移動する。液体バッグ111Aから液体バッグ111Bに液体が移動すると、重心移動機構11の重心はかかと側液体バッグ111Bの方に移動し、履物1の重心もかかと側に移動する。この場合、力Pは、例えば履物1の着用者が履物1を着用したまま、つま先側を強く踏み込む動作によって作用させることができる。すなわち、履物1の着用者は、歩行を続けるなどして疲労したら、バルブ120を開状態に切り換えてつま先側を強く踏み込めば、履物1の重心を移動させることができる。履物1の重心を移動させた後、履物1の着用者は、バルブ120を閉状態にすることにより、履物1の重心を移動させた後の状態を維持することができる。
バルブ120が開状態の時、図12(C)に示す力Pを作用させると、液体バッグ111Bから液体バッグ111Aに液体が移動する。液体バッグ111Bから液体バッグ111Aに液体が移動すると、重心移動機構11の重心はつま先側液体バッグ111Aの方に移動し、履物1の重心もつま先側に移動する。この場合、力Pは、例えば履物1の着用者が履物1を着用したまま、かかと側を強く踏み込む動作によって作用させることができる。すなわち、履物1の着用者は、休憩するなどして疲労が回復したら、バルブ120を開状態に切り換えてかかと側を強く踏み込めば、履物1の重心を移動させることができる。履物1の重心を移動させた後、履物1の着用者は、バルブ120を閉状態にすることにより、履物1の重心を移動させた後の状態を維持することができる。
<第3構成例>
次に、本実施形態に係る履物1の重心移動機構11の第3構成例を説明する。図13は、本実施形態に係る履物1の重心移動機構11の第3構成例を示す図である。図13に示す例では、履物1を透過させて重心移動機構11を示している。図13においては、重心移動機構11を破線で示してある。図13(A)は、履物1の斜め方向から重心移動機構11を示す透視図である。また、図13(B)は、履物1の底部側から重心移動機構11を示す透視図である。
図14は、図13に示した履物1において、第3構成例に係る重心移動機構11のみを示す図である。図14(A)および図14(B)は、履物1を上方から見た、すなわちZ軸の負方向に向いて見た重心移動機構11を示している。
図13および図14に示すように、第3構成例に係る重心移動機構11において、つま先側の液体バッグ111Aと、かかと側の液体バッグ111Bとは、1つの空間の部分に対応している。第3構成例において、液体バッグ111Aと、液体バッグ111Bとは、第1および第2構成例と同様に、チューブを経て接続してもよいが、図13および図14に示すように一体として形成してもよい。液体バッグ111Aと液体バッグ111Bとが一体として形成された部分は、第1および第2構成例の液体バッグ111Aおよび液体バッグ111Bと同様の構成とすることができる。
図14に示すように、第3構成例に係る重心移動機構11は、つま先側の液体バッグ111Aおよびかかと側の液体バッグ111B内部に、電磁石130と、磁性流体132とを備える。
電磁石130は、通電することで磁力を発生させる磁石であれば、任意のもので構成することができる。第3構成例において、重心移動機構11は、つま先側の電磁石130Aと、かかと側の電磁石130Bとを備えている。図13および図14においては、つま先側の電磁石130Aおよびかかと側の電磁石130Bは、それぞれ3つずつ設置した例を示しているが、1以上の任意の個数の電磁石を設置してもよい。
第3構成例において、重心移動機構11は、つま先側の電磁石130Aに磁力を発生させる状態と、かかと側の電磁石130Bに磁力を発生させる状態とを切り換える。例えば、重心移動機構11は、コントローラ25などからの制御信号に応じて、磁石130Aに磁力を発生させるか、電磁石130Bに磁力を発生させるかを切り換えてもよい。この場合、第1構成例のチューブポンプ110と同様に、履物1の内部または外部から供給される電力により、電磁石130Aまたは電磁石130Bに磁力を発生させてもよい。また、重心移動機構11は、例えば、履物1の着用者などによるスイッチの操作に応じて、電磁石130Aおよび電磁石130Bのいずれに磁力を発生させるかを切り換えてもよい。
第3構成例においては、つま先側の液体バッグ111Aとかかと側の液体バッグ111Bとの間で、磁性流体132が移動する。本構成例において、磁性流体とは、磁性を帯びた任意の流体とすることができる。磁性流体は、液状のものに限定されず、例えば砂鉄、磁性を帯びた粉状物または粒状物、磁性を帯びたビーズのようなものとしてもよい。
図14(A)に示すように、かかと側の電磁石130Bが磁力を発生すると、磁性流体132は液体バッグ111Bの方に移動する。磁性流体132が液体バッグ111Bの方に移動すると、重心移動機構11の重心はかかと側液体バッグ111Bの方に移動し、履物1の重心もかかと側に移動する。かかと側の電磁石130Bが磁力を発生している間は、履物1の重心はかかと側に維持される。
図14(B)に示すように、つま先側の電磁石130Aが磁力を発生すると、磁性流体132は液体バッグ111Aの方に移動する。磁性流体132が液体バッグ111Bの方に移動すると、重心移動機構11の重心はつま先側液体バッグ111Aの方に移動し、履物1の重心もつま先側に移動する。つま先側の電磁石130Aが磁力を発生している間は、履物1の重心はつま先側に維持される。
このように、本構成例において、履物1は、第1の空間111Aと第2の空間111Bとの間で流動性物質を移動させる電磁石130を備えている。本構成例において、流動性物質は磁性を有する。この場合、流動性物質は、砂鉄、ビーズ、および磁性流体の少なくともいずれかを含む。
<第4構成例>
次に、本実施形態に係る履物1の重心移動機構11の第4構成例を説明する。図15は、本実施形態に係る履物1の重心移動機構11の第4構成例を示す図である。図15に示す例では、履物1を透過させて重心移動機構11を示している。図15においては、重心移動機構11を破線で示してある。図15(A)は、履物1の斜め方向から重心移動機構11を示す透視図である。また、図15(B)は、履物1の底部側から重心移動機構11を示す透視図である。
図16は、図15に示した履物1において、第4構成例に係る重心移動機構11のみを示す図である。図16(A)〜図16(C)は、履物1を上方から見た、すなわちZ軸の負方向に向いて見た重心移動機構11を示している。第4構成例に係る重心移動機構11は、履物1を横側から見た、すなわちY軸の正方向に向いて見た場合も、図16(A)〜図16(C)とほぼ同様の構成とすることができる。
図15および図16に示すように、第4構成例に係る重心移動機構11においては、上述した第1から第3までの構成例とは異なり、つま先側の液体バッグ111Aおよびかかと側の液体バッグ111Bを設けていない。第4構成例に係る重心移動機構11は、図15および図16に示すように、錘140と、ボールねじ142と、モータ144とを備えている。
錘140は、質量を有する任意の材料で構成することができるが、比重の大きな材料を用いて構成することにより、小型化することができる。錘140にはボールねじ142が貫通している。錘140においてボールねじ142が貫通する孔は、ネジ切りされる。錘140の材料は限定されないが、施したネジ切りが維持できる程度の強度を有するように構成するのが望ましい。
ボールねじ142は、錘140を貫通している。ボールねじ142は、錘140が移動する範囲においてネジ切りされる。ボールねじ142の長手方向を軸として回転させることにより、錘140の位置を移動させることができる。
モータ144は、ボールねじ142を回転駆動させる。第4構成例において、モータ144は、電力により駆動される。モータ144は、ボールねじ142を回転駆動させるものであれば、任意のモータとすることができる。モータ144は、例えばサーボモータまたはステッピングモータなどを含んで構成することができる。モータ144の電力は、履物1の内部または外部から供給される。例えば、モータ144の電力は、履物1の任意の箇所に備えられたバッテリーから供給されるようにしてもよい。また、例えば、モータ144の電力は、履物1の外部に備えられたバッテリーからケーブルなどを経て供給されてもよい。
第4構成例に係る重心移動機構11は、モータ144によってボールねじを回転運動させることにより、例えばガイドレールなどのガイドに沿って錘140を移動させることができる。
図16(A)に示すように、錘140がつま先側に位置する場合、重心移動機構11の重心はつま先の方に位置し、履物1の重心もつま先の方に位置する。ここで、モータ144を駆動させて、ボールねじ142をX軸負方向から正方向に見て時計回りに回転させると、錘140は、X軸負方向に移動する。
図16(B)に示すように、錘140が重心移動機構11の長手方向の中央付近に位置する場合、重心移動機構11の重心は中央付近に位置し、履物1の重心も中央付近に位置する。ここで、モータ144をさらに駆動させて、ボールねじ142をX軸負負方向から正方向に見て時計回りに回転させると、錘140は、X軸負方向にさらに移動する。
図16(C)に示すように、錘140がかかと側に位置する場合、重心移動機構11の重心はかかとの方に位置し、履物1の重心もかかとの方に位置する。このようにして、第4構成例に係る重心移動機構11は、重心をつま先の方からかかとの方に移動させることができる。
ここで、モータ144を駆動させて、ボールねじ142をX軸負負方向から正方向に見て反時計回りに回転(逆回転)させると、錘140は、X軸正方向に移動する。したがって、第4構成例に係る重心移動機構11は、重心をかかとの方からつま先の方に移動させることもできる。本構成例において、錘140は、履物1のつま先側または当該履物1のかかと側に移動する。
このように、本構成例において、履物1は、錘140と、錘140を移動させる駆動部144と、を備えている。また、履物1は、駆動部144が錘140を移動させることにより、重心を移動させることができる。また、図15に示すように、本構成例において、錘140は、履物1の底部内において移動するようにしてもよい。本構成例において、駆動部144は、例えば電力駆動するモータ144とすることができる。この場合、駆動部144は、駆動部144の回転により、錘140を移動させる。
また、本構成例において、駆動部144は、履物1の着用者の動き、着用者のバイタルサイン、および着用者の筋電位の少なくともいずれかに基づいて、錘140を移動させてもよい。さらに、本構成例において、履物1はコントローラ15を備えてもよい。この場合、コントローラ15は、履物1の着用者の所定の動き、履物1の着用者の所定のバイタルサイン、および履物1の着用者の所定の筋電位の少なくともいずれかを検知したら、駆動部144が錘140を移動させるように制御する。また、コントローラ15は、履物1の着用者の所定の動き、履物1の着用者の所定のバイタルサイン、および履物1の着用者の所定の筋電位の少なくともいずれかを検知してもよい。この場合、コントローラ15は、検知した値が所定の条件を満足していると判定したら、駆動部144が錘140を移動させるように制御してもよい。
また、履物1が上述した端末装置2と通信可能である場合、駆動部144は、端末装置2が取得した情報に基づいて、錘140を移動させてもよい。ここで、端末装置2が取得した情報とは、例えば履物1の着用者の動き、着用者のバイタルサイン、および着用者の筋電位の少なくとも1つとしてもよい。
第4構成例の変形例として、電力駆動するモータ144を採用せずに、履物1の着用者の手動操作により錘140を移動させるようにしてもよい。この場合、駆動部とは、人力により駆動されるボールねじ142とすることができる。例えば、モータ144を備えずに、履物1の着用者が自らボールねじ142を回転させることにより、錘140を移動可能にしてもよい。また、第4構成例の他の変形例として、モータ144およびボールねじ142を備えずに、履物1の着用者が、自ら手動操作により、錘140を移動可能にしてもよい。
<第5構成例>
次に、本実施形態に係る履物1の重心移動機構11の第5構成例を説明する。以下、上述した第4構成例までと同様の説明は、適宜、簡略化または省略する。図17は、本実施形態に係る履物1の重心移動機構11の第5構成例を示す図である。図17に示す例では、履物1を透過させて重心移動機構11を示している。図17においては、重心移動機構11を破線で示してある。図17(A)は、履物1の斜め方向から重心移動機構11を示す透視図である。また、図17(B)は、履物1の底部側から重心移動機構11を示す透視図である。
図18は、図17に示した履物1において、第5構成例に係る重心移動機構11のみを示す図である。図18(A)〜図18(C)は、履物1を上方から見た、すなわちZ軸の負方向に向いて見た重心移動機構11を示している。
図17および図18に示すように、第5構成例に係る重心移動機構11においては、第4構成例と同様に、つま先側の液体バッグ111Aおよびかかと側の液体バッグ111Bを設けていない。第5構成例に係る重心移動機構11は、図17および図18に示すように、錘140と、曳索150と、プーリ152、モータ154とを備えている。
錘140は、第4構成例の錘140と同様の構成とすることができる。ただし、第5構成例において、錘140は、曳索150の一部に固定することにより、曳索150の運動に応じて錘140の位置が移動するように構成する。
曳索150は、ロープ、ナイロン、またはゴムなど、綱状または紐状の任意の材料で構成することができる。曳索150が伸縮性を有することは必須ではない。しかしながら、曳索150は伸縮性を有することにより、曳索150のあそびを低減することができる。したがって、伸縮性を有する曳索150は、錘140の位置を滑ることなく良好に移動させることができる。曳索150の一部に錘140を固定することにより、曳索150を動かすことで、錘140の位置を移動させることかできる。
プーリ152は、アルミまたはプラスチックなど、動力の伝達に好適な強度を有する任意の素材で構成することができる。図18に示すように、第5構成例に係る重心移動機構11は、プーリ152Aおよびプーリ152Bを備えている。プーリ152Bは、モータ154の動力が伝達されることにより、回転運動する。プーリ152Bが回転運動することにより、曳索150は、プーリ152Aとプーリ152Bとの間で、錘140を直線運動させる。
モータ154は、プーリ152Bを回転駆動させる。第5構成例においても、モータ154は、電力により駆動される。モータ154は、プーリ152Bを回転駆動させるものであれば、任意のモータとすることができる。モータ144は、例えばサーボモータまたはステッピングモータなどを含んで構成することができる。モータ154の電力は、履物1の内部または外部から供給される。
第5構成例に係る重心移動機構11においては、モータ154は、ピニオンギヤ156を回転駆動することにより、ピニオンギヤ156の回転運動をプーリ152Bのギヤに伝達させている。しかしながら、第5構成例に係る重心移動機構11は、図17および図18に示すような構成に限定されず、モータ156の駆動により錘140の位置を移動させることができれば、各種の構成とすることができる。
第5構成例に係る重心移動機構11においては、モータ154によって駆動されるプーリ152Bの回転運動を、曳索150の直線運動に変換することにより、錘140の位置を移動させることができる。
図18(A)に示すように、錘140がつま先側に位置する場合、重心移動機構11の重心はつま先の方に位置し、履物1の重心もつま先の方に位置する。ここで、モータ154を駆動させて、ピニオンギヤ156をZ軸正方向から負方向に見て時計回りに回転させると、錘140は、X軸負方向に移動する。
図18(B)に示すように、錘140が重心移動機構11の長手方向の中央付近に位置する場合、重心移動機構11の重心は中央付近に位置し、履物1の重心も中央付近に位置する。ここで、モータ144をさらに駆動させて、ボールねじ142をZ軸負正方向から負方向に見て時計回りに回転させると、錘140は、X軸負方向にさらに移動する。
図18(C)に示すように、錘140がかかと側に位置する場合、重心移動機構11の重心はかかとの方に位置し、履物1の重心もかかとの方に位置する。このようにして、第5構成例に係る重心移動機構11は、重心をつま先の方からかかとの方に移動させることができる。
ここで、モータ154を駆動させて、ピニオンギヤ156をZ軸正方向から負方向に見て反時計回りに回転(逆回転)させると、錘140は、X軸正方向に移動する。したがって、第5構成例に係る重心移動機構11は、重心をかかとの方からつま先の方に移動させることもできる。
第4構成例に係る重心移動機構11は、錘140の位置を移動させる機構を柔軟な材料で構成することは困難であることも想定される。第4構成例に係る重心移動機構11が柔軟な材料で構成できない場合、履物1は重心移動機構11を内蔵する部分において変形し難くなる。一方、第5構成例に係る重心移動機構11において、プーリ152およびモータ154(ピニオンギヤ156)以外は、柔軟な材料で構成することができる。このため、第5構成例に係る重心移動機構11は全体として柔軟な材料で構成でき、履物1は重心移動機構11を内蔵する部分においても変形し易い。したがって、第5構成例に係る重心移動機構11は、不具合または破損などが生じるリスクを低減することができるとともに、履物1の着用者に快適な履き心地を提供することができる。
第5構成例の変形例として、電力駆動するモータ154を採用せずに、履物1の着用者が、自ら手動操作により、錘140を移動可能にしてもよい。
<第6構成例>
次に、本実施形態に係る履物1の重心移動機構11の第6構成例を説明する。第6構成例に係る重心移動機構11は、上述した第5構成例に係る重心移動機構11において、モータ154を用いることなく錘140の位置を移動させるものである。したがって、上述した第5構成例と同様の説明は、適宜、簡略化または省略する。
第6構成例に係る重心移動機構11は、図17および図18に示した重心移動機構11において、モータ154の代わりに、ぜんまいバネによる駆動機構を採用する。
第6構成例においては、履物1のかかと部分などに、図19(A)に示すような可動機構を内蔵させる。図19(A)に示す可動機構は、履物1の着用者の足が踏む力によって、踏込部160が固定部162に対して閉じるように構成される。このため、可動部164は、踏込部160と固定部162とが互いに可動であるように接続する。可動部164は、踏込部160と固定部162とで軸を共有する回動機構とすることができる。また、固定部162は、例えば履物1の靴底部分近傍に固定される部分とする。また、可動部164は、踏込部160と固定部162とに対して復元力を与える例えばバネのような機構を備える。このため、図19(A)に示す力Pを作用させると、踏込部160は固定部162に対して閉じるが、図19(A)に示す力Pを弱めたり無くしたりすると、踏込部160は固定部162に対して元の位置に戻る。
図19(A)に示す可動機構は、踏込部160にラック168を備えている。このラック168は、図19(B)に示す動力蓄積機構のピニオン170に噛み合うように構成される。特に、図19(A)に示す可動機構のラック168は、図19(A)に示す力Pを作用させる時にのみ、図19(B)に示す動力蓄積機構のピニオン170を回転させるように構成する。すなわち、図19(A)に示す踏込部160が復元する際には、ラック168は、図19(B)に示す動力蓄積機構のピニオン170を回転させないように構成する。履物1の着用者が足を踏み込んだり通常の歩行をしたりする際は、図19(A)に示す力Pを繰り返し作用させるため、図19(B)に示す動力蓄積機構のピニオン170を、常に同じ方向に回転させることができる。
図19(B)に示す動力蓄積機構は、ピニオン170の回転に応じてぜんまいバネ172が巻かれることにより、動力を蓄積することができる。履物1の着用者が足を踏み込んだり通常の歩行をしたりする際、図19(B)に示す動力蓄積機構のピニオン170は、ラック168によって絶えず回転される。したがって、図19(B)に示す動力蓄積機構において、所定以上の動力が蓄積されたら、それ以上はピニオン170が空回りするように構成して、ぜんまいバネ172が過度に巻かれないようにしてもよい。
そして、図19(B)に示す動力蓄積機構は、ぜんまいバネ172に蓄積された動力を解放することにより、ピニオンギヤ174を回転させることができる。図19(B)に示す動力蓄積機構は、通常はピニオンギヤ174の回転を停止させておき、例えば履物1の着用者の操作などに応じて、ピニオンギヤ174の回転を開始させる構成としてもよい。
図19(B)に示す動力蓄積機構は、ぜんまいバネ172を動力としているため、ピニオンギヤ174を一方向にのみ回転させる。そこで、第6構成例においては、図19(C)に示すような動力反転機構を備えていてもよい。
図19(C)に示す動力反転機構において、プーリ152Bおよび曳索150は、第5構成例と同様に構成することができる。一方、図19(C)に示す動力反転機構は、プーリ152Bのギヤと噛み合うリバースギヤ158を備える。また、図19(C)に示す動力反転機構において、ピニオンギヤ174は、図19(C)に示す方向S1または方向S2に移動可能に構成する。ピニオンギヤ174の移動は、例えば履物1の着用者などによる操作に応じて、手動で方向S1側または方向S2側に移動可能に構成してもよい。図19(C)に示すピニオンギヤ174は、図19(B)に示す動力蓄積機構のピニオンギヤ174である。
図19(C)に示すピニオンギヤ174は、方向S1側に移動させた際に、プーリ152Bのギヤと噛み合うように構成する。また、図19(C)に示すピニオンギヤ174は、方向S2側に移動させた際に、リバースギヤ158と噛み合うように構成する。このような構成により、例えば図19(C)に示すピニオンギヤ174が時計回りに回転する場合、方向S1側に移動させれば、曳索150は錘140を履物1のかかと側に移動する。一方、この場合、図19(C)に示すピニオンギヤ174を方向S2側に移動させれば、曳索150は錘140を履物1のつま先側に移動する。
以上説明したように、本構成例において、駆動部は、履物1に対する加重に基づいて回転するようにしてもよい。本構成例において、駆動部は、電力駆動するモータではなく、例えばぜんまいバネなどによる動力蓄積機構とすることができる。
<第7構成例>
次に、本実施形態に係る履物1の重心移動機構11の第7構成例を説明する。図20は、本実施形態に係る履物1の重心移動機構11の第7構成例を示す図である。図20に示す例では、履物1を透過させて重心移動機構11を示している。図20においては、重心移動機構11を破線で示してある。図20は、履物1の斜め方向から重心移動機構11を示す透視図である。
図20に示すように、第7構成例に係る重心移動機構11は、履物1のつま先側およびかかと側のそれぞれに、収容部180を備えている。この収容部180は、図80に示す棒状の錘182を収容可能な孔として形成することができる。収容部180は、貫通孔としてもよいし、片方が閉鎖された孔としてもよいし、蓋付きの孔としてもよい。また、収容部180は、錘182の形状に合わせて、各種の形状とすることができる。
図20に示す例においては、つま先側の収容部180Aと、かかと側の収容部180Bとで、それぞれ2つずつ収容部を設けてある。しかしながら、本構成例に係る重心移動機構11において、つま先側の収容部180Aと、かかと側の収容部180Bとは、それぞれ1つ以上の任意の数の収容部を設けてよい。
このように、第7構成例において、履物1の着用者が、自ら手動操作により、錘182を移動することができる。
第7構成例に係る重心移動機構11においては、それぞれの収容部180に錘182を挿入したり取りだしたりすることで、履物1のつま先側の重量と、履物1のかかと側の重量とを、それぞれ調整することができる。例えば、履物1の着用者は、歩行中に疲労を感じた際に、つま先側の収容部180Aに挿入されていた錘182を取り出して、かかと側の収容部180Bに挿入することができる。
(フローチャート)
図21は、本実施形態に係るシステムにおいて、コントローラ25が実行する、履物1の重心の移動に関する処理を例示するフローチャートである。
着用者に装着された端末装置2のコントローラ25は、センサ24が検出したデータ(センサデータ)を取得する(ステップS1)。
コントローラ25は、センサデータに基づく値が第1の閾値を超えた場合に(ステップS2のYes)、ユーザに通知を行う(ステップS3)。本実施形態において、センサデータに基づく値は、上記の第1〜第3の推定手法の少なくとも1つを用いて推定される疲労度である。また、本実施形態において、ユーザへの通知は、報知部16を用いた通知である。例えば、コントローラ25は、通信部12および通信部22を介して報知部16に、光を発する指示を送ることによって、ユーザへの通知を実施する。ここで、ユーザへの通知は、疲労度に応じて変化させてもよい。例えば、疲労度が第1の閾値を大きく超えた場合には、そうでない場合と比べて、ユーザへの通知の音量が大きくてもよい。
コントローラ25は、センサデータに基づく値が第1の閾値を超えない場合に(ステップS2のNo)、ステップS5の処理に進む。
コントローラ25は、ユーザへの通知(警告)の後に、履物1の重心をかかと側に移動させる(ステップS4)。詳細に説明すると、コントローラ25は、疲労している着用者がつま先を上げやすくするために、重心をかかと側に移動させる第1の重心移動指示を生成する。そして、コントローラ25は、通信部12および通信部22を介して、重心移動機構11に第1の重心移動指示を送る。重心移動機構11は、第1の重心移動指示に従って、つま先側の液体バッグ111Aからかかと側の液体バッグ111Bに液体を移動させて、履物1の重心の移動を行う。
コントローラ25は、センサデータに基づく値が第1の閾値を超えず、かつ、第2の閾値未満である場合に(ステップS5のYes)、ユーザに通知を行う(ステップS6)。本実施形態において、コントローラ25は、センサデータに基づく値(疲労度)が第1の閾値を超えた後でなければ、ステップS6の処理に進めない。つまり、コントローラ25は、ステップS5の処理によって、着用者が疲労から回復したか否かを判定する。ステップS6でのユーザへの通知は、ステップS3と同様であるため、詳細な説明を省略する。
コントローラ25は、センサデータに基づく値が第1の閾値を超えず、かつ、第2の閾値以上である場合に(ステップS5のNo)、ステップS1の処理に戻る。
コントローラ25は、ユーザへの通知(警告)の後に、履物1の重心をつま先側に移動させる(ステップS7)。本実施形態において、コントローラ25は、疲労から回復した着用者に適切な負荷を与えるために、重心をつま先側に移動させる第2の重心移動指示を生成する。そして、コントローラ25は、通信部12および通信部22を介して、重心移動機構11に第2の重心移動指示を送る。重心移動機構11は、第2の重心移動指示に従って、かかと側の液体バッグ111Bからつま先側の液体バッグ111Aに液体を移動させて、履物1の重心の移動を行う。
コントローラ25は、ステップS5またはS7の処理の後で、センサデータに基づく値が第1の閾値を超えた回数が第3の閾値を超えている場合に(ステップS8のYes)、ユーザに通知を行う(ステップS9)。本実施形態において、ステップS9でのユーザへの通知は、ステップS3と同様であるため、詳細な説明を省略する。
コントローラ25は、センサデータに基づく値が第1の閾値を超えた回数が第3の閾値を超えない場合に(ステップS8のNo)、ステップS1の処理に戻る。
コントローラ25は、ステップS9の処理の後に、ストレージ23に記憶されている基準値、第1の閾値および第2の閾値のうち少なくとも1つを更新する(ステップS10)。本実施形態において、コントローラ25は、疲労度が第1の閾値を超えた回数が第3の閾値よりも多いことから、設定された基準値および閾値の少なくとも1つが適切でないと判定し、その値を修正する。
以上のように、本実施形態に係る履物1は、重心を移動させる重心移動機構11を備える。そして、重心は、着用者の疲労度に基づいて移動することができる。また、本実施形態に係るシステムは、履物1と、着用者の動き、バイタルサインおよび筋電図の少なくとも1つを取得する端末装置2と、を備える。本実施形態に係るシステムにおいて、疲労度は、通信部12によって端末装置2から取得される着用者の動き、バイタルサインおよび筋電図の少なくとも1つに基づいて推定することができる。
本実施形態に係る履物1およびシステムにおいては、着用者の疲労度が推定されてもよい。疲労度が大きい程、つま先が地面または階段等に接触しやすく、着用者の転倒の危険性が高い。履物1は、例えば着用者の疲労度に基づいて重心を移動させる、重心移動機構11を備える。そのため、履物1は、例えば疲労度が大きい場合に重心をかかと側に移動させて、着用者がつま先を引き上げやすくすることにより、転倒するリスクを低減できる。また、履物1は、例えば疲労度が小さい場合には、重心をつま先側に戻して、着用者に適切な負荷を与えることができる。このように、本実施形態に係る履物1およびシステムは、転倒の危険性に応じて、着用者の負荷を調整することができる。
また、本実施形態においては、モーションセンサ、バイタルセンサおよび筋電センサのうちのいずれのセンサデータが用いられる場合でも、疲労度が推定されるようにできる。そのため、履物1の重心移動の判定において、例えば同じ閾値を使用できる等、統一的な扱いが可能である。
[第2実施形態]
第2実施形態に係る履物1およびシステムについて説明する。本実施形態の履物1およびシステムの構成は、第1実施形態と同じである。したがって、第1実施形態と同様の説明は、適宜、簡略化または省略する。本実施形態において、コントローラ25は、疲労度を推定することなく、履物1の重心を移動させる。
ウェアラブル端末である端末装置2のセンサ24は、着用者の動き、バイタルサインおよび筋電位の少なくとも1つを検出する。本実施形態においても、センサ24は、モーションセンサ、バイタルセンサおよび筋電センサを含む。本実施形態に係る履物1は、着用者の動きに基づいて、重心を移動させる。また、本実施形態に係る履物1は、着用者のバイタルサインに基づいて、重心を移動させる。また、本実施形態に係る履物1は、着用者の筋電図に基づいて、重心を移動させる。
(着用者の動きに基づく重心移動)
履物1の重心が着用者の動きに基づいて移動する場合について説明する。第1実施形態において、モーションセンサが検出する着用者の動きは、疲労度に密接に関連する着用者の運動の状態、特に歩行状態に関するものであった。本実施形態において、コントローラ25は、運動の状態に限らない着用者の動き、つまり、広く体動に基づいて、履物1の重心を移動させる。そのため、着用者は、特定の動きを行うことによって、履物1の重心を意図的に移動させることが可能である。
コントローラ25は、モーションセンサが検出した着用者の動きが所定の条件を満たした場合に、重心を移動させるための重心移動指示を生成する。所定の条件は、第1の条件および第2の条件を含む。着用者の動きが第1の条件を満たした場合に、コントローラ25は重心をかかと側に移動させる第1の重心移動指示を生成する。また、着用者の動きが第2の条件を満たした場合に、コントローラ25は重心をつま先側に移動させる第2の重心移動指示を生成する。
例えば、第1の条件は、着用者が歩行せずに、停止状態で腕を後方に素早く振ることであってもよい。また、例えば、第1の条件は、着用者が歩行せずに履物1のかかと部分を地面に複数回連続して接触させることであってもよい。また、例えば、第1の条件は、着用者が歩行せずにしゃがんで履物1に手を接触させることであってもよい。コントローラ25は、モーションセンサの検出値に基づいて第1の条件が満たされたと判定した場合に、重心をかかと側に移動させる第1の重心移動指示を生成する。
例えば、第2の条件は、着用者が歩行せずに、停止状態で腕を前方に素早く振ることであってもよい。また、例えば、第2の条件は、着用者が歩行せずに履物1のつま先部分を地面に複数回連続して接触させることであってもよい。コントローラ25は、モーションセンサの検出値に基づいて第2の条件が満たされたと判定した場合に、重心をつま先側に移動させる第2の重心移動指示を生成する。
また、本実施形態において、コントローラ25は、モーションセンサが検出した着用者の動きから算出された運動の状態(特に歩行状態)にも基づいて、履物1の重心を移動させる。歩行状態は、単位時間当たりの歩数、一歩当たりに要する時間、歩行速度、歩幅、足上げ量および歩行ばらつきの少なくとも1つを含む。
コントローラ25は、着用者の歩行状態が所定の条件を満たした場合に、重心を移動させるための重心移動指示を生成する。着用者の歩行状態が第1の条件を満たした場合に、コントローラ25は、重心をかかと側に移動させる第1の重心移動指示を生成する。また、着用者の歩行状態が第2の条件を満たした場合に、コントローラ25は、重心をつま先側に移動させる第2の重心移動指示を生成する。
ここで、コントローラ25は、着用者の歩行状態が第1の閾値より大きいことを第1の条件としてもよい。また、コントローラ25は、着用者の歩行状態が第2の閾値より小さいことを第2の条件としてもよい。第1実施形態とは異なり、本実施形態における第1の閾値および第2の閾値は、着用者の歩行状態の種類に応じて設定される。第1の閾値および第2の閾値との比較に用いられる着用者の歩行状態に関する値は、瞬間値であってもよい。しかし、判定の精度を高めるために、この歩行状態に関する値は、所定の時間における統計値(例えば平均値、中央値等)が用いられることが好ましい。
コントローラ25は、単位時間(例えば1分)当たりの歩数が基準値から5歩よりも大きく減少したことを第1の条件としてもよい。また、コントローラ25は、第1の条件が満たされた後で、単位時間当たりの歩数の基準値からの減少量が3歩より小さくなったことを第2の条件としてもよい。ここで、5歩が第1の閾値に対応する。また、3歩が第2の閾値に対応する。
コントローラ25は、一歩当たりに要する時間が基準値から1.0秒よりも大きく増加したことを第1の条件としてもよい。また、コントローラ25は、第1の条件が満たされた後で、一歩当たりに要する時間の基準値からの増加量が0.8秒より小さくなったことを第2の条件としてもよい。ここで、1.0秒が第1の閾値に対応する。また、0.8秒が第2の閾値に対応する。
コントローラ25は、歩行速度が基準値から1.0[m/秒]よりも大きく減少したことを第1の条件としてもよい。また、コントローラ25は、第1の条件が満たされた後で、歩行速度の基準値からの減少量が0.3[m/秒]より小さくなったことを第2の条件としてもよい。ここで、1.0[m/秒]が第1の閾値に対応する。また、0.3[m/秒]が第2の閾値に対応する。
コントローラ25は、歩幅が基準値から10[cm]よりも大きく減少したことを第1の条件としてもよい。また、コントローラ25は、第1の条件が満たされた後で、歩幅の基準値からの減少量が3[cm]より小さくなったことを第2の条件としてもよい。ここで、10[cm]が第1の閾値に対応する。また、3[cm]が第2の閾値に対応する。
コントローラ25は、足上げ量が基準値から2[cm]よりも大きく減少したことを第1の条件としてもよい。また、コントローラ25は、第1の条件が満たされた後で、足上げ量の基準値からの減少量が1[cm]より小さくなったことを第2の条件としてもよい。ここで、2[cm]が第1の閾値に対応する。また、1[cm]が第2の閾値に対応する。
コントローラ25は、歩行ばらつきが基準値から10%よりも大きく増加したことを第1の条件としてもよい。また、コントローラ25は、第1の条件が満たされた後で、歩行ばらつきの基準値からの増加量が3%より小さくなったことを第2の条件としてもよい。ここで、10%が第1の閾値に対応する。また、3%が第2の閾値に対応する。
ここで、第1実施形態と同様に、コントローラ25は、第3の閾値を設定して、基準値、第1の閾値および第2の閾値の少なくとも1つを調整してもよい。また、第1実施形態と同様に、コントローラ25は、着用者の動きに応じて、報知部16に、光、音および振動の少なくとも1つを発するように指示してもよい。
(着用者のバイタルサインに基づく重心移動)
履物1の重心が着用者のバイタルサインに基づいて移動する場合について説明する。第1実施形態において、バイタルサインに基づいて算出された疲労度が履物1の重心を移動する判定に使用されていた。本実施形態において、コントローラ25は、バイタルサインをより直接的に履物1の重心を移動する判定に使用する。
コントローラ25は、バイタルセンサが検出したバイタルサインが所定の条件を満たした場合に、重心を移動させるための重心移動指示を生成する。所定の条件は第1の条件および第2の条件を含む。バイタルサインが第1の条件を満たした場合に、コントローラ25は、重心をかかと側に移動させる第1の重心移動指示を生成する。また、バイタルサインが第2の条件を満たした場合に、コントローラ25は、重心をつま先側に移動させる第2の重心移動指示を生成する。
ここで、コントローラ25は、着用者のバイタルサインの通常の状態(基準値)からの差が、第1の閾値より大きいことを第1の条件としてもよい。また、コントローラ25は、着用者のバイタルサインの通常の状態(基準値)からの差が、第2の閾値より小さいことを第2の条件としてもよい。第1実施形態とは異なり、本実施形態における第1の閾値および第2の閾値は、バイタルサインの種類に応じて設定される。第1の閾値および第2の閾値との比較に用いられるバイタルサインの値は、瞬間値であってもよい。しかし、判定の精度を高めるために、このバイタルサインの値は、所定の時間における統計値(例えば平均値、中央値等)が用いられることが好ましい。
本実施形態において、バイタルサインは、脈拍、脈波、血圧、血流量、体温、呼吸数、乳酸値および血糖値の少なくとも1つを含む。
コントローラ25は、脈拍の基準値からの増加量が20[回/min]より大きくなったことを第1の条件としてもよい。また、コントローラ25は、第1の条件が満たされた後で、脈拍の基準値からの増加量が6[回/min]より小さくなったことを第2の条件としてもよい。ここで、20[回/min]が第1の閾値に対応する。また、6[回/min]が第2の閾値に対応する。
コントローラ25は、例えば、脈波を二階微分することにより加速度脈波を算出して、低周波成分を高周波成分で割った比率(LF/HF)を求める。そして、コントローラ25は、比率(LF/HF)が2よりも大きくなったことを第1の条件としてもよい。また、コントローラ25は、第1の条件が満たされた後で、比率(LF/HF)が2より小さくなったことを第2の条件としてもよい。この例において、第1の閾値および第2の閾値は、ともに2である。
コントローラ25は、血圧の基準値からの上昇量が30[mmHg]よりも大きくなったことを第1の条件としてもよい。また、コントローラ25は、第1の条件が満たされた後で、血圧の基準値からの上昇量が10[mmHg]より小さくなったことを第2の条件としてもよい。ここで、30[mmHg]が第1の閾値に対応する。また、10[mmHg]が第2の閾値に対応する。
コントローラ25は、血流量が基準値からの上昇率が10%よりも大きくなったことを第1の条件としてもよい。また、コントローラ25は、第1の条件が満たされた後で、血流量の基準値からの上昇率が3%より小さくなったことを第2の条件としてもよい。ここで、10%が第1の閾値に対応する。また、3%が第2の閾値に対応する。
コントローラ25は、体温の基準値からの上昇量が1[℃]よりも大きくなったことを第1の条件としてもよい。また、コントローラ25は、第1の条件が満たされた後で、体温の基準値からの上昇量が0.3[℃]より小さくなったことを第2の条件としてもよい。ここで、1[℃]が第1の閾値に対応する。また、0.3[℃]が第2の閾値に対応する。
コントローラ25は、呼吸数の基準値からの増加量が15[回/min]よりも大きくなったことを第1の条件としてもよい。また、コントローラ25は、第1の条件が満たされた後で、呼吸数の基準値からの増加量が5[回/min]より小さくなったことを第2の条件としてもよい。ここで、15[回/min]が第1の閾値に対応する。また、5[回/min]が第2の閾値に対応する。
コントローラ25は、乳酸値の基準値からの増加量が0.5[mmol/リットル]よりも大きくなったことを第1の条件としてもよい。また、コントローラ25は、第1の条件が満たされた後で、乳酸値の基準値からの増加量が0.2[mmol/リットル]より小さくなったことを第2の条件としてもよい。ここで、0.5[mmol/リットル]が第1の閾値に対応する。また、0.2[mmol/リットル]が第2の閾値に対応する。
コントローラ25は、血糖値の基準値からの減少率が15%よりも大きくなったことを第1の条件としてもよい。また、コントローラ25は、第1の条件が満たされた後で、血糖値の基準値からの減少率が5%より小さくなったことを第2の条件としてもよい。ここで、15%が第1の閾値に対応する。また、5%が第2の閾値に対応する。
ここで、第1実施形態と同様に、コントローラ25は、第3の閾値を設定して、基準値、第1の閾値および第2の閾値の少なくとも1つを調整してもよい。また、第1実施形態と同様に、コントローラ25は、着用者のバイタルサインに応じて、報知部16に、光、音および振動の少なくとも1つを発するように指示してもよい。
(着用者の筋電図に基づく重心移動)
履物1の重心が着用者の筋電図に基づいて移動する場合について説明する。第1実施形態において、筋電図に基づいて算出された疲労度が履物1の重心を移動する判定に使用されていた。本実施形態において、コントローラ25は、筋電図をより直接的に履物1の重心を移動する判定に使用する。
コントローラ25は、筋電センサが検出した筋電位に基づいて、筋電図を生成する。コントローラ25は、筋電図が所定の条件を満たした場合に、重心を移動させるための重心移動指示を生成する。所定の条件は、第1の条件および第2の条件を含む。筋電図が第1の条件を満たした場合に、コントローラ25は、重心をかかと側に移動させる第1の重心移動指示を生成する。また、筋電図が第2の条件を満たした場合に、コントローラ25は、重心をつま先側に移動させる第2の重心移動指示を生成する。
ここで、コントローラ25は、着用者の筋電図に基づく値の通常の状態(基準値)からの差が、第1の閾値より大きいことを第1の条件としてもよい。また、コントローラ25は、着用者の筋電図に基づく値の通常の状態(基準値)からの差が、第2の閾値より小さいことを第2の条件としてもよい。第1の閾値および第2の閾値との比較に用いられる筋電図に基づく値は、瞬間値であってもよい。しかし、判定の精度を高めるために、この筋電図に基づく値は、所定の時間における統計値(例えば平均値、中央値等)が用いられることが好ましい。
コントローラ25は、着用者の筋電図から所定の時間ごとの平均周波数を演算で求める。本実施形態において、着用者の筋電図に基づく値は、所定の時間ごとの平均周波数(以下、単に「平均周波数」という)である。コントローラ25は、平均周波数の基準値からの減少量が10Hzより大きくなったことを第1の条件としてもよい。また、コントローラ25は、第1の条件が満たされた後で、平均周波数の基準値からの減少量が3Hzより小さくなったことを第2の条件としてもよい。ここで、10Hzが第1の閾値に対応する。また、3Hzが第2の閾値に対応する。
ここで、第1実施形態と同様に、コントローラ25は、第3の閾値を設定して、基準値、第1の閾値および第2の閾値の少なくとも1つを調整してもよい。また、第1実施形態と同様に、コントローラ25は、着用者の筋電図に応じて、報知部16に、光、音および振動の少なくとも1つを発するように指示してもよい。
以上のように、本実施形態に係る履物1は、重心を移動できる重心移動機構11を備える。また、本実施形態に係るシステムは、履物1と、着用者の動き、バイタルサインおよび筋電図の少なくとも1つを取得する端末装置2と、を備える。本実施形態において、重心は、着用者の動き、バイタルサインおよび筋電図の少なくとも1つに基づいて移動する。
本実施形態においても、第1実施形態と同様に、転倒の危険性に応じて着用者の負荷を調整することができる。また、本実施形態に係るシステムは、疲労度と関連性のない着用者の動き、バイタルサイン、筋電図に基づく値についても、履物1の重心移動の判定に用いることができる。例えば「停止状態で腕を後方に素早く振る」動きによって、履物1の重心を移動させることが可能である。
(その他の実施形態)
本開示を図面および実施形態に基づき説明してきたが、当業者であれば、本開示に基づき種々の変形および修正を行うことが容易であることに注意されたい。したがって、これらの変形および修正は、本開示の範囲に含まれることに留意されたい。例えば、各手段または各ステップなどに含まれる機能などは、論理的に矛盾しないように再配置可能であり、複数の手段またはステップなどを1つに組み合わせたり、或いは分割したりすることが可能である。
(第1変形例)
上記の第1および第2実施形態に係るシステムでは、端末装置2がセンサ24を備えていた。そして、端末装置2は、着用者に着用されるウェアラブル端末であった。第1変形例に係る履物1を備えるシステムでは、履物1がセンサ14を備える。そして、端末装置2はセンサ24を備えない。
図22は、本変形例に係る履物1の概略構成を示す。図22に示すように、履物1は、重心移動機構11と、通信部12と、ストレージ13と、センサ14と、報知部16と、を備える。重心移動機構11、通信部12、ストレージ13および報知部16は、第1および第2実施形態と同じ構成にすることができる。
また、図23は、本変形例に係るシステムの端末装置2の概略構成を示す。図23に示すように、端末装置2は、通信部22と、ストレージ23と、コントローラ25と、を備える。本変形例において、端末装置2はウェアラブル端末ではなくてもよい。本変形例において、端末装置2は、例えばスマートフォンである。
履物1のセンサ14は、上記の実施形態におけるセンサ24に対応する。つまり、センサ14は、着用者の動き、バイタルサインおよび筋電位の少なくとも1つを検出する。本変形例において、センサ14は、モーションセンサ、バイタルセンサおよび筋電センサを含む。ここで、センサ14は、モーションセンサ、バイタルセンサおよび筋電センサのうちの一部だけを備えていてもよい。また、センサ14は、さらに別の検出装置(例えば紫外線センサ等)を備えていてもよい。
ここで、センサ14がバイタルセンサを含む場合に、センサ14は、着用者が履物1を履いた際に着用者の足に接触するように、履物1に備えられてもよい。さらに、センサ14は、着用者の足裏、足甲および足首の少なくとも一箇所に接触するように配置されてもよい。例えば、履物1がハイカットの靴である場合に、センサ14は、足首に接触するように履き口に設けられていてもよい。また、例えばセンサ14は、足裏に接触するように、履物1の中敷きの表面に設けられていてもよい。
また、センサ14が筋電センサを含む場合に、センサ14は、着用者が履物1を履いた際に着用者の足に接触するように、履物1に備えられてもよい。さらに、センサ14は、着用者のふくらはぎおよび脛の少なくとも一箇所に接触するように配置されてもよい。例えば、履物1がブーツである場合に、センサ14は、ふくらはぎおよび脛に接触するように設けられていてもよい。
本変形例においては、ウェアラブル端末等を装着することなく、着用者が履物1を履くだけでバイタルサインおよび筋電位の少なくとも一方の検出が可能である。また、本変形例においては、センサ14がモーションセンサを含む場合に、履物1の細かい動きを検出可能である。そのため、本変形例においては、着用者の歩行に関する動きを、より正確に検出することが可能になる。
(第2変形例)
上記の第1変形例に係るシステムでは、履物1がセンサ14を備える。そして、端末装置2はセンサ24を備えない。第2変形例に係る履物1を備えるシステムでは、履物1がさらにコントローラ15を備える。本変形例において、コントローラ15は、上記の実施形態において端末装置2のコントローラ25が実行していた処理の一部または全部を実行する。
図24は、本変形例に係る履物1の概略構成を示す。図22に示すように、履物1は、重心移動機構11と、通信部12と、ストレージ13と、センサ14と、コントローラ15と、報知部16と、を備える。重心移動機構11、通信部12、ストレージ13および報知部16は、第1および第2実施形態と同じである。また、センサ14は第1変形例と同じである。また、本変形例の端末装置2の構成は、第1変形例と同じである(図23参照)。
コントローラ15は、センサ14からセンサデータを取得して、着用者の動き、バイタルサインおよび筋電図の少なくとも1つに基づいて、疲労度を推定してもよい。また、コントローラ15は、モーションセンサの出力に基づいて、着用者の動きに基づいて算出された歩行状態を推定してもよい。また、コントローラ15は、バイタルセンサの出力に基づいて、着用者の動きに基づいて算出された歩行状態を推定してもよい。また、コントローラ15は、筋電センサの出力に基づいて筋電図を生成してもよい。
本変形例においては、コントローラ15が履物1の重心移動に関する処理を実行することによって、端末装置2のコントローラ25の処理負担を軽減することができる。また、本変形例においては、上記のように、コントローラ15が疲労度または歩行状態を推定する場合には、センサ14から出力されるセンサデータを、履物1と端末装置2との間で通信する必要がない。そのため、履物1および端末装置2の通信処理の負荷を軽減することができる。
(第3変形例)
上記の第1および第2実施形態に係るシステムでは、端末装置2は、1つの機器で構成されていた。第3変形例に係る履物1を備えるシステムでは、端末装置2は、複数の機器で構成される。
図25(A)および図25(B)は、本変形例に係るシステムの端末装置2の概略構成を示す。本変形例において、端末装置2は、第1の端末装置2Aと第2の端末装置2Bとで構成される。図25(A)に示すように、第1の端末装置2Aは、通信部22Aと、ストレージ23Aと、コントローラ25Aと、を備える。また、図25(B)に示すように、第2の端末装置2Bは、通信部22Bと、ストレージ23Bと、センサ24Bと、を備える。
第2の端末装置2Bは、例えば着用者に装着されるウェアラブル端末である。また、第1の端末装置2Aは、例えばスマートフォンである。第1の端末装置2Aおよび第2の端末装置2Bは、通信部22Aおよび通信部22Bを用いて互いに通信を行う。また、第1の端末装置2Aおよび第2の端末装置2Bの少なくとも一方は、履物1とも通信を行う。第1の端末装置2Aおよび第2の端末装置2Bは、それぞれが物理的に別の装置であるが、互いに連携して、上記の実施形態における端末装置2と同様の処理を実行する。また、本変形例の履物1の構成は、第1および第2実施形態と同じである(図1参照)。
第2の端末装置2Bが備えるセンサ24Bは、上記の実施形態におけるセンサ24に対応する。つまり、センサ24Bは、着用者の動き、バイタルサインおよび筋電位の少なくとも1つを検出する。本変形例において、センサ24Bは、モーションセンサ、バイタルセンサおよび筋電センサを含む。ここで、センサ24Bは、モーションセンサ、バイタルセンサおよび筋電センサのうちの一部だけを備えていてもよい。また、センサ24Bは、さらに別の検出装置(例えば紫外線センサ等)を備えていてもよい。
例えば、センサ24Bが筋電センサを含む場合に、第2の端末装置2Bは、靴下またはサポータ型のウェアラブル端末であってもよい。このとき、筋電センサは、着用者の靴下またはサポータに備えられる。靴下またはサポータは、着用者のふくらはぎおよび脛に接触する。そのため、筋電センサは、筋電位を正確に検出することが可能である。
第2の端末装置2Bは、センサ24Bが検出したセンサデータをストレージ23Bに一時的に記憶する。そして、第2の端末装置2Bは、必要なセンサデータを通信部22Bから出力する。第1の端末装置2Aは、通信部22Aによって、第2の端末装置2Bからセンサデータを取得する。第1の端末装置2Aは、取得したセンサデータをストレージ23Aに一時的に記憶する。そして、第1の端末装置2Aのコントローラ25Aは、取得したセンサデータに基づいて、履物1の重心の移動に関する処理を実行する。
本変形例においては、端末装置2は、物理的に分離可能な第1の端末装置2Aと第2の端末装置2Bとで構成される。そのため、本変形例においては、履物1の重心の移動に関する処理を実行するコントローラ25Aを備える第1の端末装置2Aから離れて、センサ24Bを備える第2の端末装置2Bを配置することが可能である。したがって、本変形例においては、ウェアラブル端末である第2の端末装置2Bを、比較的自由な位置に装着することができる。また、第2の端末装置2Bの構成要素を少なくできるため、着用者に装着される第2の端末装置2Bの軽量化を図ることが可能である。
(その他)
また、上記の実施形態および変形例における筋電センサに代えて、筋電計が使用されてもよい。筋電計は例えば筋電図を生成して、筋電図のデータをコントローラ25等に出力してもよい。また、上記の実施形態および変形例におけるバイタルセンサはバイタルサインを出力した。ここで、バイタルセンサはバイタルサインを算出可能なデータをコントローラ25等に出力してもよい。このとき、コントローラ25等は、バイタルセンサの出力に基づいてバイタルサインを演算してもよい。例えば、コントローラ25は、バイタルセンサの受光部が受光した散乱光の光電変換信号を取得する。そして、コントローラ25は、散乱光の強度に基づいてバイタルサインを演算してもよい。また、履物1がセンサ14として照度センサを備える場合に、例えばコントローラ25は照度の変化から着用者の足の上げ下げを正確に把握できる。このとき、コントローラ25は、着用者の足上げ量等を、さらに正確に算出することが可能である。
本開示内容の多くの側面は、プログラム命令を実行可能なコンピュータシステムその他のハードウェアにより実行される、一連の動作として示される。各実施形態では、種々の動作または制御方法は、例えばプログラム命令(ソフトウェア)で実装された専用回路(例えば、特定機能を実行するために相互接続された個別の論理ゲート)により実行されることに留意されたい。また、各実施形態では、種々の動作または制御方法は、例えば一以上のプロセッサにより実行される論理ブロックおよび/またはプログラムモジュール等により実行されることに留意されたい。論理ブロックおよび/またはプログラムモジュール等を実行する一以上のプロセッサには、例えば、一以上のマイクロプロセッサおよびCPU(中央演算処理ユニット)が含まれる。また、このようなプロセッサには、例えばASIC(Application Specific Integrated Circuit)およびDSP(Digital Signal Processor)が含まれる。また、このようなプロセッサには、例えばPLD(Programmable Logic Device)およびFPGA(Field Programmable Gate Array)が含まれる。また、このようなプロセッサには、コントローラ、マイクロコントローラ、マイクロプロセッサ、ここに記載する機能を実行可能に設計されたその他の装置が含まれる。また、このようなプロセッサには、上記の具体例の組合せが含まれる。ここに示す実施形態は、例えば、ハードウェア、ソフトウェア、ファームウェア、ミドルウェア、マイクロコードまたはこれらいずれかの組合せにより実装される。命令は、必要なタスクを実行するためのプログラムコードまたはコードセグメントであってもよい。そして、命令は、機械読取り可能な非一時的記憶媒体その他の媒体に格納することができる。コードセグメントは、手順、関数、サブプログラム、プログラム、ルーチン、サブルーチン、モジュール、ソフトウェアパッケージ、クラスまたは命令、データ構造もしくはプログラムステートメントのいずれかの任意の組合せを示すものであってもよい。コードセグメントは、他のコードセグメントまたはハードウェア回路と、情報、データ引数、変数または記憶内容の送信および/または受信を行い、これにより、コードセグメントが他のコードセグメントまたはハードウェア回路と接続される。
また、ストレージ13,23,23Aおよび23Bは、さらに、ソリッドステートメモリ、磁気ディスクおよび光学ディスクの範疇で構成されるコンピュータ読取り可能な有形のキャリア(媒体)として構成することができる。かかる媒体には、ここに開示する技術をプロセッサに実行させるためのプログラムモジュール等のコンピュータ命令の適宜なセットまたはデータ構造が格納されてもよい。コンピュータ読取り可能な媒体には、可搬型コンピュータディスク、RAM(Random Access Memory)およびROM(Read-Only Memory)が含まれる。また、コンピュータ読取り可能な媒体には、EPROM(Erasable Programmable Read-Only Memory)が含まれる。また、コンピュータ読取り可能な媒体には、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory)が含まれる。また、コンピュータ読取り可能な媒体には、フラッシュメモリ等の書換え可能でプログラム可能なROMもしくは情報を格納可能な他の有形の記憶媒体または上記の具体例いずれかの組合せが含まれる。メモリは、プロセッサまたはプロセッシングユニットの内部および/または外部に設けることができる。ここで用いられるように、「メモリ」という語は、あらゆる種類の長期記憶用、短期記憶用、揮発性、不揮発性またはその他のメモリを意味する。つまり、「メモリ」は、特定の種類および/または数に限定されない。また、記憶が格納される媒体の種類も限定されない。