JP2018195669A - 電力機器用減震装置 - Google Patents
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Abstract
Description
従来、前記変圧器から発生する振動の伝搬を防止するため、防振ゴム等の防振材を用いて変圧器を弾性支持することがなされている。(特許文献1、2等参照)
例えば、図13(a)に示すように架台100上に変圧器101を設置し、架台100に組み込まれた防振ゴムあるいはスプリングダンパーなどの防振材102により変圧器101を弾性支持し、架台100を床103に設置している。この支持構造により変圧器101は床103上に弾性支持され、変圧器101の振動が防振材102で吸収される結果、周囲に変圧器101の振動騒音が伝達されないようになっている。
しかし、大きな地震などが発生した場合、変圧器101が想定以上の振幅で揺れるおそれがある。例えば、図13(b)に示すようにキャビネット105の内部に収容されている変圧器101が想定以上の振幅で横揺れした場合、キャビネット105の側壁に変圧器101の上部が激突してキャビネット105に損傷を与えるか、変圧器101の配線などに問題を発生させるおそれがある。
そこで、本願出願人は先に以下の特許文献3、4において変圧器の上部を水平方向に延在するボルトアームによって支持し、該ボルトアームを弾性材によって支持した構成の変圧器用減震装置を提案している。
先の特許文献3、4に記載した減震装置によって変圧器上部の想定外の横揺れを抑えることができ、地震の振動による変圧器上部の断線やショートなどを防止できる減震装置を提供することができた。
地震などにより大きな揺れが加わると、変圧器を複数のビームを介し弾性支持している耐震フレームがキャビネットフレームの内部で横揺れし、耐震フレームの上部が大きく横揺れしようとする。しかし、耐震フレームの上部コーナー部に設置されている変位抑制ブロックが耐震フレームの上部とキャビネットフレームの間を埋めているので、耐震フレームの上部は変位抑制ブロックを介しキャビネットフレームに当たって揺れ止めされる結果、耐震フレームの上部がキャビネットフレームの内側に激しく衝突しない。
地震などの揺れにより耐震フレームの上部が最も大きく横揺れしようとするが、耐震フレームの上部とキャビネットフレームの間を変位抑制ブロックが埋めているので、耐震フレームの激しい揺れを効率良く抑制することができ、キャビネットフレームに対する耐震フレームの衝突現象を抑制できる。
支柱部材に対し変位抑制ブロックを取り付けるにあたり、好適な厚さの調整用ライナーを用いて支柱部材に取り付けることで変位抑制ブロックとキャビネットの支柱との間の隙間を適切に埋めることができる。
このため、地震などにより大きな横揺れが変圧器などの電力機器を収容したキャビネットに作用したとしても、キャビネットの扉が不要に開いてしまうことが無く、キャビネットの一部が変形や損傷することがない。
地震などの揺れにより耐震フレームの上部が最も大きく横揺れしようとするが、耐震フレームの上部とキャビネットフレームの間を変位抑制ブロックが埋めているので、耐震フレーム上部の横揺れを抑制することができ、キャビネットフレームに対する耐震フレーム上部の激しい衝突現象を防止できる。
図1は、本発明に係る第1実施形態の電力機器用減震装置を適用した変圧器収納用のキャビネット1を示すもので、このキャビネット1は、図2に示すような矩形立体枠状のキャビネットフレーム2の外側に左右の側壁と背面壁からなる周壁2Aと、天井壁2Bと前面扉2C、2Cを設けて構成されている。この実施形態において前面扉2Cは観音開きタイプの扉が採用され、前面扉2Cの隣接部分中央にレバーハンドル錠2Kが設けられている。
図2に示すようにキャビネットフレーム2はいずれもL型鋼材からなる4本の支柱2aと、この4本の支柱2aの上端部を接続した4本の上部フレーム材2bと、4本の支柱2aの下端部を接続した4本の下部フレーム材2dとから矩形立体枠状に形成されている。支柱2aは2枚の帯板2fを角部2eでL字型に一体化したL型鋼材からなる。
キャビネットフレーム2を構成する4本の支柱2aのうち、左右に離間された支柱2aの間隔よりも前後に離間された支柱2aの間隔の方が小さくされている。従って、この実施形態のキャビネット1は左右の幅が前後の奥行きよりも大きく形成されている。
キャビネット1はキャビネット1を設置する床面にボルト止めなどの固定手段により固定され、キャビネット1の内部中央側には防振架台3に支持された変圧器(電力機器)5が収容されている。
コーナー部材6は上板6aと下板6bと側板6cからなるコ字型に形成され、上方に位置するコーナー部材6の下板6bと下方に位置するコーナー部材6の上板6aを貫通するストッパーボルト8に複数の規制ナット10が螺合されている。規制ナット10は上方のコーナー部材6の下板6bを上下から挟む位置と下方のコーナー部材6の上板6aを上下から挟む位置にそれぞれ配置されている。ストッパーボルト8に対するこれら規制ナット10の螺合位置を調整することで下部架台3Aと上部架台3Bの離間可能な距離が制限されている。
防振架台3において、上下のフレーム枠7、7の間の部分にコイルバネあるいは弾性樹脂などの弾性体からなる複数の防振部材9が介在されている。また、防振架台3はその長辺側をキャビネット1の底部長辺側と平行に配置させてキャビネット1の底部側中央の床面にボルト止めなどの手段により固定されている。
耐震フレーム12は、キャビネットフレーム2の支柱2aより若干内側に配置され、変圧器5の最上部よりも若干高い位置まで延在された4本のL型鋼材からなる支柱部材12aを有している。図4〜図6などに示すように、支柱部材12aは角部12bを介し2枚の帯板12c、12cをL字型に一体化してなる。
以下、説明の便宜上、図7に示すキャビネット1の概形において、右側の側面をキャビネット1の前面1D、左側の側面をキャビネット1の背面1E、上側の側面をキャビネット1の右側面1F、下側の側面をキャビネット1の左側面1Gとして説明する。
図7に示すようにキャビネット1の前面1D側に立設されている2本の支柱部材12aはそれらの角部12bをキャビネット1の前面側と中央側に対向するように、一方の帯板12cをキャビネット1の前面に対し平行に、他方の帯板12cをキャビネット1の前面に対し直角に向けて配置されている。
また、キャビネット1の背面1E側に立設されている2本の支柱部材12aはそれらの角部12bをキャビネット1の背面側と中央側に対向するように、一方の帯板12cをキャビネット1の背面に対し平行に、他方の帯板12cをキャビネット1の背面に対し直角に向けるように配置されている。
キャビネット1の右側面側に配置されている上部フレーム部材12dは角部12eをキャビネット1の右端側に向け、一方の帯板12fを水平に他方の帯板12fを鉛直に向けて右側2本の支柱部材12aに一体化されている。
図2に示すように耐震フレーム12の右側面側と左側面側にそれぞれ補強用のブレース部材13がX型に接続され、耐震フレーム12の右側の2本の支柱部材12aの高さ方向中央部に補強用の中央フレーム部材14aが架設されている。耐震フレーム12の左側の2本の支柱部材12aの高さ方向中央部にも補強用の中央フレーム部材14aが架設されている。耐震フレーム12の右側の2本の支柱部材12aの底部側に補強用の底部フレーム部材14bが架設され、耐震フレーム12の左側の2本の支柱部材12aの底部側にも補強用の底部フレーム部材14bが架設されている。
図7、図11に示すように変圧器5において固定基板5dのコーナー部分に形成された図示略のねじ穴に接続ボルト18が螺合され、接続ボルト18の上端部が固定基板5dから上方に所定長さ突出されている。
固定基板5dの接続ボルト突出部分にアーム部材17の接続リング17aが接続され、アーム部材17の他端側がボックスフレーム15の支持板15aに形成された透孔を通過してボックスフレーム15の下方側に延出され、この延出部分に弾性体17bが図示略のフランジ板やナットを介し装着されている。アーム部材17の他端側に形成されたねじ軸部にナット部材17cが螺合されていて、このナット部材17cの螺合位置を調整することにより、アーム部材17に張力を印加することができ、接続ボルト18を介して変圧器5をボックスフレーム15側に引きつけるように引張力が印加されている。
変位抑制ブロック20は図4、図6、図9に示すように矩形状の基板20aとこの基板20aの3つの周辺部から立設された側板20bとを具備したブロック状に形成され、基板20aにおいて側板20bを設けていない側の周辺部に近い部分をその厚さ方向に貫通するねじ孔20cが形成され、このねじ孔20cにボルト型の支持軸部材21が螺合されている。
基板20aのねじ孔20cに挿通した支持軸部材21を回転操作することにより支持軸部材21のねじ孔通過位置を変更することができ、これによって基板20aに対するフット部材21の突出位置を変更することができる。支持軸部材21においてねじ孔20cを挿通した位置を挟むように調整ナット26、27の位置調節を行い、調整ナット26、27によって基板20aを挟み込むことで、支持軸部材21の最終的な位置決めを行ってフット部材25の位置を固定することができる。なお、フット部材25の外面には図9、図10に示すように弾性体の板材からなるダンパー25aが貼着されていることが好ましい。
キャビネット1において前面1D側に位置する左右2本の支柱部材12aはいずれもL型鋼材からなり、それらの角部12bはキャビネット1の前面側かつ中央側に向けられている。このため、図7に示すようにキャビネット1の前面左側(図7では前面1Dの下側)の支柱部材12aに取り付けられている変位抑制ブロック20は、フット部材25をキャビネット1の前面左側(図7では下側)に向けて配置され、フット部材25はキャビネット1の左隅側の支柱2aの帯板2fに押し付けられている。また、キャビネット1の前面右側(図7では前面1Dの上側)の支柱部材12aに取り付けられている変位抑制ブロック20は、フット部材25をキャビネット1の右側(図7では上側)に向けて配置され、フット部材25はキャビネット1の右隅側(図7では右上側)の支柱2aの帯板2fに押し付けられている。
変位抑制ブロック20が支柱2aと支柱部材12aの間を埋めるように設けられている状態の概要とアーム部材17が変圧器5の上部を弾性支持している状態の概要を図8に略図で示しておく。
また、防振架台3のコーナー部分に設けたストッパーボルト8と規制ナット10の作用により下部架台3Aと上部架台3Bの離間距離を制限できるので、地震などの震動により変圧器5が多少の横揺れを起こしたとしても、変圧器5の傾きの上限を一定角度以内に規制できる。このため、地震により多少の横揺れを受けた場合であっても変圧器5に生じる傾きの少ない構造を提供できる。
また、キャビネット1では、変圧器5の上部に対し弾性部材17bを介し横向きに設けたアーム部材17で弾性支持しているので、変圧器5に地震などにより多少の横揺れが作用しても変圧器5が大きく横揺れすることがない。
この場合、変圧器5を複数のアーム部材17を介し弾性支持している耐震フレーム12がキャビネットフレーム2の内部で横揺れし、耐震フレーム12の上部が最も大きく横揺れしようとする。しかし、耐震フレーム12の上端部コーナー部分に設置されている変位抑制ブロック20が耐震フレーム12の上部とキャビネットフレーム2の間を図7、図8に示すように埋めているので、耐震フレーム12の上部は変位抑制ブロック20を介しキャビネットフレーム2に当たって揺れ止めされる結果、耐震フレーム12の上部がキャビネットフレーム2の内側に激しく衝突する現象は生じない。
このため、大きな地震が発生した場合であっても耐震フレーム12がキャビネット1に大きな衝撃を与えないので、前面扉2Cが不意に開放されてしまうことが無く、耐震フレーム12の衝突によって生じるキャビネット1の損傷や変形を生じないキャビネット1を提供できる。
また、耐震フレーム12の上部の揺れを変位抑制ブロック20で抑えることができるので、変圧器5の上部側に存在する配線の断線や配線周り部分の損傷も防止できる。
また、変位抑制ブロック20において、基板20aを貫通した支持軸部材21の一端にフット部材25を備えているので、耐震フレーム12の上部とキャビネットフレーム2の間の間隙に変位抑制ブロック20を介挿した状態においてフット部材25の位置を調節し、フット部材25をキャビネットフレーム2の内面に確実に押し付けることができる。
変位抑制ブロック20の側板20をキャビネットフレーム2の内面に接触させるには、支柱部材12aの上端部に変位抑制ブロック20をボルト止めする際の調整用ライナー28の厚さ調整により調節可能となる。また、変位抑制ブロック20において支持軸部材21の位置調節によりフット部材25の位置調節ができる。
フット部材25の位置調節のためには、各変位抑制ブロック20の支持軸部材21の位置を調節する必要があるが、図7の配置では支持軸部材21の位置決めを行うための支持軸部材21の端部位置と調整ナット26をキャビネット1の中央側向きに配置できる。このため、キャビネット1の中央側の空きスペースを利用して作業者が楽な作業姿勢で支持軸部材21の位置調節、調整ナット26の締め付け作業ができる。
これに対し、支持軸部材21の向きや調整ナット26の位置がキャビネット1の側壁より、あるいは、背面側向きの場合は、ナットの締め付け作業のためのスペース確保が難しくなるか、作業姿勢が悪くなり、変位抑制ブロック20の取り付け調整作業が容易ではなくなる。
一辺の幅50mmのL字鋼板から溶接により矩形立体形状に組まれた図2に示す高さ2350mm、幅1600mm、奥行き1000mmのキャビネットフレームを有するキャビネットを用意した。キャビネットフレームには鋼板製の側壁と天井壁と観音開き状の前面壁が取り付けられている。前面扉には施錠可能なレバーハンドル式の開閉機構と鍵が設けられている。
このキャビネットフレームを加振装置の鉄製の基盤上にボルト止めし、その内部に幅1060mm、奥行き650mm、高さ209mmの防振架台(特許機器(株)製商品名、OS式防振装置OMT-K11029)を設置し、この防振架台上に幅1130mm、高さ1135mm、奥行き645mm、重量1360kgの変圧器をボルト止めにより設置した。
耐震フレームの上部前面側と上部背面側に幅175mm、側壁高さ1400mmのU字型鋼板からなる上部フレーム部材をボルト止めし、上部フレーム材と支柱部材との交差部分に設けたボックスフレームに穴あき円柱状のゴム弾生体を介し長さ300mmのアーム部材4本によって変圧器の上部コーナー部分4か所を抑えた。
厚さ5mm、長さ96mm、幅50mmの鋼板からなる基板の3辺に高さ1650mmの側板を立設した変位抑制ブロックを用い、基板のねじ孔を貫通する長さ63mmの支持軸部材の一端に直径40mmの円盤状フット部材を設けた。フット部材の表面に厚さ6mmのゴムダンパーを張り付けた。
この変位抑制ブロックを4基用い、耐震フレームの最上部とその周囲のキャビネットフレームとの間の隙間埋めを行い、実施例のキャビネットを構成した。
その結果、前面扉の施錠状態は保持され、キャビネット各部に損傷や変形は見られなかった。
前記キャビネットに変位抑制ブロックを設けていないこと以外は実施例と同等のキャビネットを構成し、上述の試験と同じ条件で震度7に相当する振動を140秒間付加する加振試験を行った。
その結果を図12に示すが、キャビネット前面扉のレバーハンドル錠は施錠していたにも係わらず、鍵が外れて開放してしまい、キャビネットの左側壁底部に浮き上がり変形部分が生じた。なお、図12ではキャビネットの内部に収容されている変圧器の記載は略し、キャビネットの概形のみ示している。
以上の対比から、耐震フレームを内部に設けたキャビネットにおいて変位抑制ブロックを設けて耐震フレームとキャビネットフレームの隙間埋めを行った構造の耐震性向上効果を確認することができた。また、変位抑制ブロックを設けていない場合、大きな地震が発生すると、レバーハンドル式のフック錠で施錠しているにも拘わらずフック部の変形により鍵が外れて前面扉が開放してしまうほどの衝撃が変圧器と耐震フレームからキャビネットフレームに負荷される恐れがあることも分かった。
Claims (5)
- 矩形立体枠状のキャビネットフレームに周壁と天井壁と前面扉を備えてキャビネットが構成され、該キャビネットの内部に矩形立体枠状に組まれた耐震フレームが設置され、該耐震フレームの内側に底部を防振架台に支持された電力機器が設置されるとともに、
前記電力機器上部と前記耐震フレームとの間に横向きに、かつ、弾性部材を介し架設されて前記電力機器上部を拘束支持する複数のアーム部材が設けられ、
前記耐震フレームの上部コーナー部と該耐震フレームの上部コーナー部に隣接する前記キャビネットフレームとの間に変位抑制ブロックが介挿されたことを特徴とする電力機器用減震装置。 - 前記変位抑制ブロックが、前記耐震フレームと前記キャビネットフレームとの間に介挿される基板と、該基板の少なくとも3つの辺からそれぞれ立設された側板と、前記基板をその厚さ方向に貫通して該基板の厚さ方向にスライド移動自在に設けられたボルト型の支持軸部材と、該支持軸部材に螺合されて前記基板に対する前記支持軸部材の挿通位置を調節する複数の調整ナットと、前記支持軸部材の一端側に取り付けられて前記基板に対向する前記キャビネットフレームの側部に押し付けられるフット部材とを備えたことを特徴とする請求項1に記載の電力機器用減震装置。
- 前記耐震フレームの上部コーナー部にそれぞれ前記変位抑制ブロックが取り付けられ、前記各変位抑制ブロックが各フット部材をそれらに隣接する前記キャビネットフレームに押し当て、前記各支持軸部材の他端側の調整ナットを前記キャビネットの内側に向けて配置されたことを特徴とする請求項2記載の電力機器用減震装置。
- 前記キャビネットフレームが鋼材製の4本の支柱とこれら4本の支柱の上端部を連結した上部フレーム材と前記4本の支柱の下端部を連結した下部フレーム材を備えて矩形立体枠状に組まれ、
前記耐震フレームが、鋼材製の4本の支柱部材とこれら4本の支柱部材の上端部を連結した上部フレーム部材と前記4本の支柱部材の下端部を連結した下部フレーム部材を備えて矩形立体枠状に組まれ、
前記キャビネットフレームの支柱の内側の近接した位置に前記耐震フレームの支柱部材が配置され、前記支柱部材の上端部に前記変位抑制ブロックが取り付けられたことを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の電力機器用減震装置。 - 前記変位抑制ブロックが前記支柱部材の上端部に厚さ調整用ライナーを介し取り付けられたことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の電力機器用減震装置。
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