JP2018192399A - 充填材、該充填材を用いた蒸留分離方法及び蒸留分離装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】多孔体であって、且つ充填高さを実用的レベルの高さまで低減できる充填材、該充填材を用いた蒸留分離方法及び蒸留分離装置を提供する。【手段】処理液が供給される蒸留塔内に充填される充填材が、多数の気孔を有する多孔体で構成されると共に、気孔内を浸透する液が、毛細管現象の作用により、充填材表面に浸出し、且つ、充填材表面を短時間に覆うように拡散する状態が発現し得るように構成された毛管構造体から成ることを特徴とする。毛管構造体の毛管力としては、一本の細管における毛管水柱で近似した第1式を用いて常温水の条件下で算出した毛管水柱高さが0.03m以上であり、且つ、前記毛管構造体の液の浸透速度としては、一本の細管を横に向け第2式を用いて算出した該細管内を水平方向に10mmを浸透するのに要する時間が0.1秒以下であるような特性を有する。【選択図】図3

Description

本発明は、充填塔に使用される充填材、該充填材を用いた蒸留分離方法及び蒸留分離装置に関し、特に、トリチウム水と軽水との分離に好適に実施することが可能な蒸留分離方法及び蒸留分離装置に関するものである。
充填塔を蒸留塔として用いた蒸留分離装置において、従来使用されているガラスビーズ等の充填材を用いて比揮発度が接近した成分の蒸留分離を行うと、蒸留塔の段数が実用的レベルを超えた多数の段数が必要となる。例えば、トリチウム水の蒸留分離の場合には、その濃度を10倍に濃縮するのに還流比を30として理論段数が230段を必要とするとの報告がある(以下の非特許文献1参照)。ここで、還流比を大きく取れば段数は少なくできる。しかし、還流比を大きくしようとすれば、エネルギーを増加する必要があり、エネルギーコストの増加を招来することになる。
そこで、かかる課題を解決するため、蒸留分離対象となる当該成分を選択的に吸着する吸着材を充填材として使用する充填塔式蒸留分離が効果的であることが提案されている(以下の非特許文献2参照)。この非特許文献2によれば、シリカゲルビーズを充填材とする場合の蒸留分離方法を検討すると、同じ還流比で理論段数を133段とすることができると推測される。
上記従来例のように、シリカゲルビーズのような選択的吸着材を充填材とする場合には、還流比及び理論段数を大幅に小さくできる。しかしながら、なお高い還流比を必要とするうえ、吸着材の製造には特殊な製法を必要とするため、運転に要するエネルギーが膨大となり、充填材の製造コストが高くなるという問題が生じる。
一方、近年、吸着性がなくても、その内部に特定の孔径の連通気孔をもつ多孔体から成る充填材が提案されている(以下の特許文献1参照)。この特許文献1の充填材は、例えば、ポリプロピレンから成る多孔体であって、平均孔径は80〜300μmとされている。このような構成の充填材では、連通気孔の内部に液が浸透することにより、濡れ表面積が大きくなる。その結果、気液接触面積の増加による分離性能の向上が図れるとされている。
昭55−8819号公開公報
「2009 Evaluation of Tritium Removal and Mitigation Technologies for Wastewater Treatment」, DOE/RL-2009-18 「Tritium Isotope Separation by Water Distillation Column Packed with Silica-gel Beads」, Journal of NUCLEAR SCIENCE and TECHNOLOGY Vol.41, No.5 pp619-623
しかし、上記のポリプロピレンから成る多孔体であって、平均孔径が80〜300μmの連通気孔をもつ充填材は、未だ充分な分離性能が得られていない。そのことは、後述する[実施例]の項で説明するように、本発明者らによる実験により、HETP(1理論段数当たりの相当高さ)がかなり高い値であり、充填高さを実用的レベルの高さまで低くできないということが立証されている。
本願発明は、上記課題に鑑みて考え出されたものであり、その目的は、多孔体であって、且つ充填高さを実用的レベルの高さまで低減できる充填材、該充填材を用いた蒸留分離方法及び蒸留分離装置を提供することである。
上記目的を達成するために請求項1記載の発明は、処理液が供給される蒸留塔内に充填される充填材であって、多数の気孔を有する多孔体で構成されると共に、気孔内を浸透する液が、毛細管現象の作用により、充填材表面に浸出し、且つ、充填材表面を短時間に覆うように拡散する状態が発現し得るように構成された毛管構造体から成ることを特徴とする。
用語「気孔」は、ひとまとまりの物体に含まれる微小な空洞を意味し、外気と接続している開気孔と物体内部に孤立している閉気孔とを含む。
また、用語「短時間」は、充填材表面を流下する液が気孔に侵入することにより当該位置において一旦途切れ、当該位置において途切れた状態から後続する流下液が通過するまでに、少なくとも前記気孔内を浸透する液が充填材表面を覆うように拡散し、前記後続する流下液と接触することを可能とする極めて短い時間を意味する。
上記構成によれば、気孔内を浸透する液が、毛細管現象の作用により、充填材表面に浸出し、且つ、充填材表面を短時間に覆うように拡散し、そのため、気液接触面積の増大及び蒸留塔における物質移動速度が高められる。この結果、HETP(理論段相当高さ:Height equivalent of theoretical plateの略)を低減でき、充填高さを実用的レベルの高さまで低くすることができる蒸留分離方法(請求項5記載の発明)及び蒸留分離装置(請求項6記載の発明)を実現可能とすることができる。
請求項2記載の発明は、請求項1記載の充填材であって、前記毛管構造体の毛管力としては、一本の細管における毛管水柱で近似した以下の第1式を用いて常温水の条件下で算出した毛管水柱高さが0.03m以上であるような特性を有することを特徴とする。
Figure 2018192399
上記構成により、好ましい毛管構造体の具体化が図れる。
請求項3記載の発明は、請求項1又は2記載の充填材であって、前記毛管構造体の液の浸透速度としては、一本の細管を横に向け以下の第2式を用いて算出した該細管内を水平方向に10mmを浸透するのに要する時間が0.1秒以下であるような特性を有することを特徴とする。
Figure 2018192399
但し、
上記構成によれば、より好ましい毛管構造体の具体化が図れる。
請求項4記載の発明は、請求項1〜3のいずれかに記載の充填材であって、前記毛管構造体の表面が親水化処理されていることを特徴とする。
上記構成によれば、毛管構造体の表面が親水化処理されることにより、毛管力が大きくなり、分離性能の更なる向上が図れる。
請求項5記載の発明は、請求項1〜4のいずれかに記載の充填材が充填された蒸留塔を用いて、処理すべき原液の蒸留分離を行うことを特徴とする蒸留分離方法である。
上記構成によれば、分離性能が改善し、且つ、充填高さを実用的レベルの高さまで低くできる蒸留分離方法が実現できる。
請求項6記載の発明は、蒸留塔を備えた蒸留分離装置であって、前記蒸留塔は請求項1〜4のいずれかに記載の充填材が充填されていることを特徴とする。
上記構成によれば、分離性能が改善し、且つ、充填高さを実用的レベルの高さまで低くできる蒸留分離装置が実現できる。
本発明によれば、気孔内を浸透する液が、毛細管現象の発現により、充填材表面に浸出し、且つ、充填材表面を短時間に覆うように拡散し、そのため、気液接触面積の増大及び蒸留塔における物質移動速度が高められる。この結果、HETP(理論段相当高さ:Height equivalent of theoretical plateの略)を低減でき、充填高さを実用的レベルの高さまで低くすることができる蒸留分離方法及び蒸留分離装置を実現可能とすることができる。
毛管構造体に関する材料と細管半径の組み合わせ毎の毛管水柱高さを示すグラフ。 毛管構造体に関する材料と細管半径の組み合わせ毎の液浸透速度(10mmを進む時間で表現)を示すグラフ。 毛管構造体から成る充填材を蒸留塔に使用した蒸留分離装置の全体構成図。
以下、本発明を実施の形態に基づいて詳述する。なお、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではない。
(実施の形態)
本発明に係る充填材は、処理液が供給される蒸留塔内に充填される充填材であって、毛管構造体から成る。ここで「毛管構造体」とは、多数の気孔を有する多孔体で構成されると共に、気孔内を浸透する液が、毛細管現象の作用により、充填材表面に浸出し、且つ、充填材表面を短時間に覆うように拡散する状態が発現し得るように構成された構造体を意味する。ここで、「気孔」とは、ひとまとまりの物体に含まれる微小な空洞を意味し、外気と接続している開気孔と物体内部に孤立している閉気孔とを含む。「気孔」は、ひとまとまりの物体に含まれる微小な空洞を意味し、外気と接続している開気孔と物体内部に孤立している閉気孔とを含む。また、ここで、「短時間」とは、充填材表面を流下する液が気孔に侵入することにより当該位置において一旦途切れ、当該位置において途切れた状態から後続する流下液が通過するまでに、少なくとも前記気孔内を浸透する液が充填材表面を覆うように拡散し、前記後続する流下液と接触することを可能とする極めて短い時間を意味する。なお、「短時間」の具体的な意義は、後述する[実施例]の段落0081において説明されている。
また、毛管構造体の具体的構成としては、毛管水柱高さが所定以上であり、且つ毛管構造体内を液が浸透する浸透速度が所定以上(なお、以下の具体的な表現としては、液が所定長さを浸透するのに要する時間が所定以下という表現)であることが必要である。ここで、毛管水柱高さが所定以上という限定によって、後述するように毛管構造体として要請される毛管力が得られるための多孔体の材質と孔径とが決定される。毛管構造体内を液が浸透する浸透速度が所定以上という限定によって、後述するように毛管構造体として要請される液の流動性が得られるための多孔体の材質と孔径とが決定される。
以下に、先ず、本発明に至る経緯について説明し、次いで、毛管構造体の毛管水柱高さの具体的な概念、及び毛管構造体の液浸透速度の具体的な概念について詳述する。
[発明に至る経緯]
本発明者らは、構造体の内部に毛管力が作用する程度の空間を設けると、液は毛管力によってあらゆる面に拡がって行き、結果として充填材の表面の全体を液が覆う力が作用し、この力を利用した気液接触装置は大幅に物質移動速度を高めることを見出した。
従来では、充填材の表面の濡れ性を改善するための表面処理(例えば、特に水系においてステンレス材料を用いるとき、物理的なサンドブラスト、化学的な表面処理)が行なわれている。しかし、これらは液(特に水の場合)との接触角を小さくして濡れ性を改善するものであるが、接触角が存在する限り濡れ面積は物理的表面積のある割合に留まることを免れず、その面積は予測式が提案されており、物理的表面積より相当小さい。
例えば、規則充填物の例として計算すると以下のようである。この種のモデル式は複数のものが提案されているが、ここでは接触角の要素を含んだSRPモデル(University of Texas Separation Research Programの略称:)を用いた。
Figure 2018192399
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ここで、数3〜数8に以下の表1の条件数値を代入すると、
Figure 2018192399
仮に、濡れ性改善を試みて充填物表面の接触角を50°まで改善することが出来たとしてもその値は0.14に留まり、特に、液の空塔速度が小さい時(5m/mhのような)は、如何に有効に作用していない面積が多くなっているかが判る。
そこで、本発明者らは、蒸留塔内に充填される充填材を毛管構造体で構成すれば、液は毛管力によってあらゆる面に拡がって行き、結果として充填材の表面の全体を液が覆う力が作用することを見出した。毛管力は、例えば構成材料と水の接触角が同じであれば、細孔口径が小さいほど大きくなる。しかしながら、蒸留塔に用いる充填材は単に毛管現象を有するというだけでは効果がない。本発明者らは、液が毛管内を流動する際の速度が重要なファクターになっていることを見出した。この結果、気液接触面積の増大及び蒸留塔における物質移動速度が高められることにより、HETP(理論段相当高さ:Height equivalent of theoretical plateの略)を低減でき、充填高さを実用的レベルの高さまで低くすることができる。

Figure 2018192399
[毛管構造体の毛管水柱高さ]
毛管水柱高さは毛管構造体の毛管力を評価する指標であり、具体的には毛管力を一本の細管における毛管水柱で近似して表したもので以下の数8による。なお、使用する水は常温である。
Figure 2018192399
ここで、θ(接触角)と細管半径rは以下の表2の値を採用し、構成材料と細管半径rの組み合わせ毎に数8を用いて毛管水柱高さを算出し、その算出結果を表3に示す。また、表3に示す各毛管水柱高さを図1にグラフ化して示している。なお、図1においては、ガラスビーズ(r=10μm)、セルロース毛管構造体(r=10μm)、プラスチック毛管構造体(r=5μm)及びセラミック毛管構造体(r=35μm)における毛管水柱高さは、いずれも枠外の値であるので、0.3mまで描いている。
Figure 2018192399
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図1においてガラスビーズで細管半径が500μm、アルミ毛管構造体で細管半径が330μm、プラスチックで細管半径が100μm、セラミックス毛管構造体で細管半径が390μm、ステンレス毛管構造体で細管半径が180μm、あるいは銅毛管構造体で細管半径が270μmの場合は、毛管水柱高さが約0.03mである。また、プラスチックで細管半径が50μmの場合は、毛管水柱高さが約0.05mである。図1においてその他場合は、いずれも毛管水柱高さが約0.05mよりも格段に大きい値である。そこで、毛管構造体の毛管力としては、少なくとも毛管水柱高さが0.03m以上を有していることが好ましく、より好ましくは0.05m以上とした。この0.03m以上、より好ましくは0.05m以上を有する毛管構造体が、HETP(理論段相当高さ)の低減になることは後述する実施例、比較例により立証(より正確に説明すれば、0.03m以上、より好ましくは0.05m以上を有するという条件に加えて、後述する10mmを進む時間(秒)が0.1秒以内、より好ましくは0.05秒以内を有するという条件も付加された場合の立証)されている。
[毛管構造体の液浸透速度]
毛管構造体の液浸透速度は、液が所定長さを浸透するのに要する時間が所定以下という表現で示す。
同じ毛管構造であってもその空隙サイズがあまり小さすぎると毛管現象による流動性が流動摩擦によって低下し、充填塔の物質移動速度を低下させる。そこで、液は毛管力と毛管を流れる摩擦抵抗が等しくなって毛管構造体の中を流れが拡大してゆくと考え、水平方向に仮に10mmを浸透する時間を以下の数9により算出した結果を以下の表4に示す。この表4は、表3と同様の材料と細管半径の組み合わせ毎に算出される10mmを進む時間(秒)を示している。また、また、表4に示す各10mmを進む時間(秒)を図2にグラフ化して示している。なお、図2において、プラスチック毛管構造体(r=5μm)における当該時間(秒)は、枠外の値であるので、1.2秒まで描いている。
なお、数12はLucas-Washburnの式として文献資料に示されているが、毛管力を圧力差に換算したものを用い、Hagen-Poiseuilleの流動式を利用して毛管流れを解析したものである。
Figure 2018192399
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これは、毛管力によって液が構造体内部を流れる時の流動速度が、充填塔の物質移動速度に関係していることを示している。毛管力が大きくても、液が浸透する構造が細かく、浸透速度が遅い構造は物質移動速度を高めるのに効果がないか、または小さい。各種の充填物を用いた蒸留分離試験により、この時間は例えば10mmを浸透するのに0.1秒以内、より好ましくは0.05秒以内であるような毛管構造体が充填塔の物質移動速度を高めるのに効果があることを見出した。
具体的には、図2においてガラスビーズで細管半径が10μm、アルミ毛管構造体で細管半径が40μm、セルロース毛管構造体で細管半径が10μm、プラスチック毛管構造体で細管半径が5μm、プラスチック毛管構造体で細管半径が50μm、プラスチック毛管構造体で細管半径が100μm、あるいはセラミックス毛管構造体で細管半径が35μmの場合は、要する時間が0.1秒以上である。また、ガラスビーズで細管半径が50μm、アルミ毛管構造体で細管半径が50μm、ステンレス毛管構造体で細管半径が75μmあるいは銅毛管構造体で細管半径50μmの場合は、要する時間が0.05秒以上である。図2においてその他場合は、いずれも要する時間が0.05秒よりも格段に小さい値である。そこで、毛管構造体の浸透速度としては、要する時間が少なくとも0.1秒以内であることが好ましく、より好ましくは0.05秒以内とした。この0.1秒以内、より好ましくは0.05秒以内を有する毛管構造体が、HETP(理論段相当高さ)の低減になることは後述する実施例、比較例により立証(より正確に説明すれば、0.1秒以内、より好ましくは0.05秒以内を有するという条件に加えて、毛管水柱高さが0.03m以上を有していることが好ましく、より好ましくは0.05m以上を有する条件も付加された場合の立証)されている。
[好ましい毛管構造体の具体例]
上記の[毛管構造体の毛管水柱高さ]及び[毛管構造体の液浸透速度]の条件を満たす毛管構造体が好ましい。なお、工業的作製を考慮して、材質としてはセラミック、ステンレス、アルミ、銅とするのが好ましい。このような条件から、具体的な好ましい毛管構造体としては、細孔口径が70μm(細管半径r=35に相当)以上、800(細管半径r=400に相当、なお、上記例ではr=390を使用)μm以下のセラミック毛管構造体、細孔口径が150μm(細管半径r=75に相当)以上、400(細管半径r=200に相当、なお、上記例ではr=180を使用)μm以下のステンレス毛管構造体、細孔口径が80μm(細管半径r=40に相当)以上、700(細管半径r=350に相当、なお、上記例ではr=330を使用)μm以下のアルミ毛管構造体、及び細孔口径が100μm(細管半径r=50に相当)以上、500(細管半径r=250に相当、なお、上記例ではr=270を使用)μm以下の銅毛管構造体である。
[蒸留分離装置の適用例]
図3は毛管構造体から成る充填材を蒸留塔に使用した蒸留分離装置の全体構成図である。蒸留分離装置1に供給される原液は、トリチウム水(HTO又はTO)を含む軽水(HO)である。この蒸留分離装置1においては、トリチウム水(HTO又はTO)を含む軽水(HO)を、原液よりも高濃度のトリチウム水と、原液よりも低濃度のトリチウム水に分離する用途に使用される。
蒸留分離装置1は、充填式の多段の蒸留塔2と、蒸留塔2の塔底部の貯留液を加熱して蒸気化するリボイラー3と、蒸留塔2の塔頂部から供給される蒸気を冷却して液化する凝縮器4と、凝縮器4からの凝縮液を貯留する還流タンク5と、還流タンク5の底部から蒸留塔2の塔頂部に凝縮液を還流する還流ラインL1に設けられるポンプ6と、還流ラインL1に設けられる制御弁V1と、凝縮器4に供給される冷却水の供給源である冷却槽7とを備える。蒸留塔2の充填材としては、毛管構造体から成る充填材が使用されている。凝縮器4の抽気は別途設けられた真空ポンプ(図示せず)に接続されており、この真空ポンプによって蒸留塔2内は真空になっている。また、運転温度は真空ポンプの真空度を調整することによって所定の値に制御されている。
なお、蒸留分離装置1は、必要に応じて、温度計、圧力計及び流量計を備えている。温度計、圧力計及び流量計としては、例えば、蒸留塔2の塔頂部に設けられる温度計T1及び圧力計P1、蒸留塔2の塔底部に設けられる温度計T2及び圧力計P2、還流ラインL1に設けられ蒸留塔2の塔頂部に戻される還流量を計測する流量計F1、冷却水往きラインL2に設けられる温度計T3及び流量計F2、冷却水戻りラインL3に設けられる温度計T4、還流タンク5に設けられる温度計T5等が挙げられる。
上記構成の蒸留分離装置1の動作は、一般的な蒸留分離装置と同様な動作である。以下に簡単に説明すると、原液は蒸留塔2の中央部から供給され、蒸留塔2内を流下し、蒸留塔2の塔底部においてリボイラー3によって加熱され蒸気を発生させる。発生蒸気は蒸留塔2内を上昇し、蒸留塔2内を下降する原液と気液接触が行われる。このとき、充填材が毛管構造体であることから、液が充填材表面全体を覆うように拡散していく状態が発現される。これにより気液接触面積が増大し、より多くの接触面で気液接触が行われることが可能となり、分離性能が向上する。
そして、この気液接触の過程で、下降液中のトリチウム濃度は増加し、上昇蒸気中のトリチウム濃度は減少する。そして、気液接触後の上昇蒸気は塔頂部に到達し、更に、凝縮器4に導かれる。凝縮器4では供給された蒸気が冷却水によって冷却され、還流タンク5を経て一部は塔頂部に戻され(還流)、一部は原液よりもトリチウム濃度の低い低濃度トリチウム水として排出ラインL4から排出される。一方、気液接触後の下降液体は塔底部に貯留され、この貯留液の一部は原液よりもトリチウム濃度の高い高濃度トリチウム水として排出ラインL5から回収される。
(その他の事項)
(1)毛管構造体の気孔は、連通孔でも独立孔でもよい。
(2)毛管構造体の表面が親水化処理されているのが好ましい。
(3)充填材としては、円柱ビーズ状や球状ビーズでもよく、また、実際の装置で使用されることが多い、規則充填物、または適切な圧力損失特性を有する不規則充填物であっても、その表面を多孔質にした充填材を採用したり、表面に多孔質材料を担持させる構成であってもよい。このような構成であっても、同様の効果を達成できる。
(4)上記実施の形態では、「処理の対象となる液(原液)」としては、トリチウム水を用いたけれども、本発明はこれに限定されず、重水やその他の比揮発度が接近した同位体の分離においても適用できる。
(5)蒸留分離装置は、上記実施の形態に限らず、ヒートポンプとして機能する蒸気圧縮機を設け、蒸留塔の塔頂部からの蒸気を、蒸気圧縮機を使用してリボイラーの加熱源に再利用する省エネルギー型の蒸留分離装置であってもよい。
以下、実施例により本発明をより具体的に説明する。本発明は以下の実施例によって何ら限定されるものではない。なお、以下の実施例、比較例においては、蒸留塔の大きさ(実施の形態のような実機の蒸留塔における胴径は数mレベルである)が異なること以外は上記実施の形態と同様の構成の試験用蒸留分離装置を用いて、材料及び孔径が異なる種々の充填材を使用し、原液を重水として蒸留分離を行なった。
[第1実験例]
第1実験例として、以下の実施例1〜実施例4および比較例1〜比較例4を行った。この第1実験例では、以下に述べるように、充填塔としては内径18mmのガラスカラムを用いた。
(実施例1)
充填材として直径0.34cm、長さ0.4cmのアルミナ製円柱ビーズ(西村陶業製 商品番号R−200)を用いた。この表面には10μm程度の微細孔が設けられている。
充填塔は内径18mmのガラスカラムに上記の充填材を充填高さが、ほぼ50cm〜60cmになるように充填したものを用いた。ボイラーには300mlの純水に重水2.0mlを投入して調製した。運転は大気圧状態とした。ボイラーの温度は約100℃となり、ボイラーのヒーターの出力は70〜75Wとして定常運転となるようにした。この時の留出量は約150ml/h(蒸発速度としては590kg/mh)であった。塔頂部から流出する蒸気は冷却器で冷却し、凝縮水の全量を塔頂部から流下させた。定常運転が得られるまで2時間を維持し、その後も定常運転を維持してさらに4時間経過後、ボイラーの下部の重水濃度と塔頂部の凝縮液の重水濃度をガスクロマトグラフで測定し次のデータを得た。
ボイラーの濃縮液;0.699%
塔頂部の凝縮液;0.563%
分離係数(塔頂濃度÷ボイラー濃度)=0.81
(実施例2)
充填材として直径0.3〜0.4cmのセルロース多孔性ビーズ(レンゴー(株)商品名ビスコパールPタイプ)を用いた。この表面には20〜30μm程度の微細孔が設けられている。充填塔は内径18mmのガラスカラムに上記の充填物を充填高さが、ほぼ50cm〜60cmになるように充填したものを用いた。ボイラーには300mlの純水に重水2.0mlを投入して調製した。運転は大気圧状態とした。ボイラーの温度は約100℃となり、ボイラーのヒーターの出力は60〜65Wとして定常運転となるようにした。この時の留出量は約150ml/h(蒸発速度としては590kg/mh)であった。塔頂部から流出する蒸気は冷却器で冷却し、凝縮水の全量を塔頂部から流下させた。定常運転が得られるまで2時間を維持し、その後も定常運転を維持してさらに4時間経過後、ボイラーの下部の重水濃度と塔頂部の凝縮液の重水濃度をガスクロマトグラフで測定し次のデータを得た。
ボイラーの濃縮液;0.828%
塔頂部の凝縮液;0.629%
分離係数(塔頂濃度÷ボイラー濃度)=0.76
(実施例3)
充填材として直径0.3〜0.4cmのガラスの焼結体である多孔性ガラスビーズ(ROBU社製)を用いた。この表面には40〜100μm程度の微細孔が設けられている。充填塔は内径18mmのガラスカラムに上記の充填材を充填高さが、ほぼ50cm〜60cmになるように充填したものを用いた。ボイラーには300mlの純水に重水2.0mlを投入して調製した。運転は大気圧状態とした。ボイラーの温度は約100℃となり、ボイラーのヒーターの出力は60〜65Wとして定常運転となるようにした。この時の留出量は約80ml/h(蒸発速度としては300kg/mh)であった。塔頂部から流出する蒸気は冷却器で冷却し、凝縮水の全量を塔頂部から流下させた。定常運転が得られるまで2時間を維持し、その後も定常運転を維持してさらに4時間経過後、ボイラーの下部の重水濃度と塔頂部の凝縮液の重水濃度をガスクロマトグラフで測定し次のデータを得た。
ボイラーの濃縮液;0.980%
塔頂部の凝縮液;0.523%
分離係数(塔頂濃度÷ボイラー濃度)=0.53
(実施例4)
充填材としてアルミの焼結体である多孔性アルミナ板(NDC販売社製)を直径0.3〜0.4cmのペレットに加工して用いた。この表面には約200μm程度の微細孔が設けられている。充填塔は内径18mmのガラスカラムに上記の充填物を充填高さが、ほぼ50cm〜60cmになるように充填したものを用いた。ボイラーには300mlの純水に重水2.0mlを投入して調製した。運転は大気圧状態とした。ボイラーの温度は約100℃となり、ボイラーのヒーターの出力は60〜65Wとして定常運転となるようにした。この時の留出量は約70ml/h(蒸発速度としては270kg/mh)であった。塔頂部から流出する蒸気は冷却器で冷却し、凝縮水の全量を塔頂部から流下させた。定常運転が得られるまで2時間を維持し、その後も定常運転を維持してさらに4時間経過後、ボイラーの下部の重水濃度と塔頂部の凝縮液の重水濃度をガスクロマトグラフで測定し次のデータを得た。
ボイラーの濃縮液;0.771%
塔頂部の凝縮液;0.482%
分離係数(塔頂濃度÷ボイラー濃度)=0.63
(比較例1)
実施例と同じ装置で、同じ運転条件を採用し、充填材に微細孔のないガラスビーズ(4mmφ)を同じ充填高さに充填し、同様にして重水濃度を測定すると以下のとおりとなった。
ボイラーの濃縮液;0.792
塔頂部の凝縮液;0.703
分離係数(塔頂濃度÷ボイラー濃度)=0.89
(比較例2)
実施例と同じ装置で、同じ運転条件を採用し、充填物にゼオライトビーズ(ユニオン昭和 商品番号MS-13X、3〜4mmφ)を同じ充填高さに充填し、同様にして重水濃度を測定すると以下のとおりとなった。
ボイラーの濃縮液;0.967
塔頂部の凝縮液;0.844
分離係数(塔頂濃度÷ボイラー濃度)=0.87
(比較例3)
実施例と同じ装置で、同じ運転条件を採用し、充填物にPP(ポリプロピレン)製プラスチック焼結多孔体、細孔径が200μm(富士ケミカル 厚み4mm)を同じ充填高さに充填し、同様にして重水濃度を測定すると以下のとおりとなった。
ボイラーの濃縮液;0.785
塔頂部の凝縮液;0.691
分離係数(塔頂濃度÷ボイラー濃度)=0.88
(比較例4)
実施例と同じ装置で、同じ運転条件を採用し、充填物にPP(ポリプロピレン)製プラスチック焼結多孔体、細孔径100μm(富士ケミカル 厚み4mm)を同じ充填高さに充填し、同様にして重水濃度を測定すると以下のとおりとなった。
ボイラーの濃縮液;0.726
塔頂部の凝縮液;0.785
分離係数(塔頂濃度÷ボイラー濃度)=0.93
ここで、上記実施例と上記比較例において蒸留塔のHETP(理論段相当高さ)を計算したので、その結果を以下の表5に示す。但し、100℃における重水の比揮発度は0.975とした。
なお、HETPの計算は以下の式を使った。
HETP=Z/N
N={Log(Separation Factor)/Log(α)}−1
但し、Separation Factor:分離係数
α:比揮発度
Z:充填層高さ[m]
Figure 2018192399
(第1実験例における実験結果の検討)
(1)表5より、実施例1〜4のHETPが、比較例1(充填物が細孔のないガラスビーズ)のHETPの15〜49%であることが明示される。このことから、充填物の細孔の有無によってHETPを低くできることが導かれる。
(2)また、表5より、実施例1〜4のHETPが、比較例2(充填物がゼオライトビーズ)のHETPの22〜72%であることが明示される。このことから、以下の事項が導かれる。即ち、ゼオライトビーズも実施例1〜4の充填物と同様に多孔質であるが、その細孔サイズは例えば0.15〜0.43μmであり、あまりにも多孔質構造の空洞部分が小さいので液の移動に時間が掛かりすぎる。このため、蒸留塔には効果が小さいと考えられる。つまり、HETPを低くするためには、多孔質であることが前提であるが、細孔サイズがあまりにも小さい場合は却って不適当であることが導かれる。
(3)また、表5より、実施例1〜4のHETPが、比較例3(充填物がPP製(ポリプロピレン)プラスチック焼結多孔体、細孔径が200μm)のHETPの22〜72%であることが明示される。このことから、以下の事項が導かれる。即ち、充填物がポリプロピレンのような高分子の多孔体の場合は、HETPを低くするのに不適当であることが導かれる。この理由は、水とポリプロピレンの接触角が大きいため、毛管構造で水を吸引する力が小さく、そのため、毛管構造部分を液が移動するエリアが小さいことによるものと考えられる。なお、細孔サイズを大きくすれば液の移動時間は短くできるが、その移動は重力やその他の力が作用して限定される。
(4)また、表5より、実施例1〜4のHETPが、比較例4(充填物がPP製(ポリプロピレン)プラスチック焼結多孔体、細孔径が100μm)のHETPの10〜34%であることが明示される。このことから、以下の事項が導かれる。即ち、比較例3と同様に、充填物がポリプロピレンのような高分子の多孔体の場合は、HETPを低くするのに不適当であることが導かれる。但し、水とポリプロピレンの接触角が大きくても細孔サイズを小さくすると、毛管構造で水を吸引する力は大きくすることができる。しかし、細孔サイズが小さい場合は毛管構造部分を液が移動するのに時間が掛かりすぎることになり、HETPを低くするのに不適当であると認められる。
(5)表5より、総括的な結論としては、本発明による充填物のHETPはガラスビーズのそれの15〜49%、ゼオライトビーズのそれの22〜72%となったから、同じ性能を必要とする蒸留塔の充填高さを大きく低減することができ、その効果は大きい。
[第2実験例]
第2実験例として、以下の実施例5および比較例5,6を行った。この第2実験例では、以下に述べるように、充填塔としては内径100mmのステンレス製円塔容器を用いた。また、充填材として不規則充填物を用いた。なお、後述する第3実験例では充填材として規則充填物を用いたことにおいて相違する。
(実施例5)
充填材としてアルミの焼結体で構成された「多孔質アルミ十字型」を用いた。「多孔質アルミ十字型」は、多孔質アルミ板(代表寸法12.5mm)を十字型に成型したものであり、表面には約200μm程度の微細孔が設けられている。充填塔は内径100mmのステンレス製円塔容器に上記の充填物を充填高さが、41.5cmになるように充填したものを用いた。ボイラーには55Lの純水に重水1kgを投入して調製した。運転は所定減圧状態とした。ボイラーの温度は約65℃となり、ボイラーのヒーターの出力は12kwとして定常運転となるようにした。この時の留出量は約18.4l/h(蒸発速度としては2000kg/m2h)であった。塔頂部から流出する蒸気は冷却器で冷却し、凝縮水の全量を塔頂部から流下させた。定常運転が得られるまで2時間を維持し、その後も定常運転を維持してさらに4時間経過後、ボイラーの下部の重水濃度と塔頂部の凝縮液の重水濃度をガスクロマトグラフで測定し次のデータを得た。
ボイラーの濃縮液;1.740%
塔頂部の凝縮液;1.441%
分離係数(塔頂濃度÷ボイラー濃度)=0.828
(比較例5)
実施例5と同じ装置で、同じ運転条件を採用し、充填物に「マツイカスケードミニリング」(マツイマシン株式会社製)を用いて充填高さが100cmとなるように充填し、実施例5と同様の測定方法により重水濃度を測定すると以下のとおりとなった。なお、「マツイカスケードミニリング」は、多孔質でない不規則充填物(代表寸法17mm)であり、ショットブラスト表面処理によって表面があらされている。
ボイラーの濃縮液;1.630%
塔頂部の凝縮液;1.373%
分離係数(塔頂濃度÷ボイラー濃度)=0.842
(比較例6)
実施例5と同じ装置で、同じ運転条件を採用し、充填物に不規則充填物であるセラミック製ラシヒリング(表面がゼオライトでコーティングされ、代表寸法12.5mm)を用いて充填高さが48cmとなるように充填し、実施例5と同様の測定方法により重水濃度を測定すると以下のとおりとなった。なお、当該セラミック製ラシヒリングは、表面がゼオライトでコーティングされている。
ボイラーの濃縮液;1.706%
塔頂部の凝縮液;1.468%
分離係数(塔頂濃度÷ボイラー濃度)=0.860
Figure 2018192399
(第2実験例における実験結果の検討)
表6より、実施例5のHETPが、比較例5のHETPの36%、比較例6のHETPの62%であることが明示される。このことから、不規則充填物の場合であっても、多孔質でない充填物(比較例5)や多孔質であっても細孔サイズが小さすぎる充填物(比較例6)に対して、好ましい細孔サイズで構成された「多孔質アルミ十字型」(実施例5)がHETPを低くできることが導かれる。なお、微細孔形成手段として、アルミの焼結体で構成するのが好ましいことが理解される。
[第3実験例]
第3実験例として、以下の実施例6および比較例7,8を行った。この第3実験例では、以下に述べるように、充填塔としては内径100mmのステンレス製円塔容器を用いた。また、充填材として規則充填物を用いた。
(実施例6)
充填材として「アルミ溶射マツイ規則250S」を用いた。「アルミ溶射マツイ規則250S」は、既存の充填物(金属の波板で構成された「マツイ規則250S」)の表面にアルミ溶射層が設けられている充填物であって、その表面には約200μm程度の微細孔が設けられている。充填塔は内径100mmのステンレス製円塔容器に上記の充填物を充填高さが、90cmになるように充填したものを用いた。ボイラーには55Lの純水に重水1kgを投入して調製した。運転は大気圧状態とした。ボイラーの温度は約65℃となり、ボイラーのヒーターの出力は12kwとして定常運転となるようにした。この時の留出量は約18.4l/h(蒸発速度としては2000kg/m2h)であった。塔頂部から流出する蒸気は冷却器で冷却し、凝縮水の全量を塔頂部から流下させた。定常運転が得られるまで2時間を維持し、その後も定常運転を維持してさらに4時間経過後、ボイラーの下部の重水濃度と塔頂部の凝縮液の重水濃度をガスクロマトグラフで測定し次のデータを得た。
なお、上記アルミ溶射層の形成に際しては、プラズマ溶射やアーク溶射等の公知の溶射法を用いた。
ボイラーの濃縮液;1.711%
塔頂部の凝縮液;1.350%
分離係数(塔頂濃度÷ボイラー濃度)=0.789
(比較例7)
実施例6と同じ装置で、同じ運転条件を採用し、充填材としてはアルミ溶射していない「マツイ規則250S」(マツイマシン株式会社製)を用いて充填高さが90cmとなるように充填し、実施例6と同様の測定方法により重水濃度を測定すると以下のとおりとなった。
ボイラーの濃縮液;1.836%
塔頂部の凝縮液;1.583%
分離係数(塔頂濃度÷ボイラー濃度)=0.863
Figure 2018192399
(第3実験例における実験結果の検討)
表7より、実施例6のHETPが、比較例7のHETPの54%であることが明示される。このことから、規則充填物の場合であっても、多孔質でない充填物(比較例7)に対して、アルミ溶射により表面に微細孔を設けた充填物(実施例6)がHETPを低くできることが導かれる。なお、微細孔形成手段として、アルミ溶射によりアルミ溶射層を形成するのが好ましいことが理解される。また、不規則充填物である実施例5と、規則充填物である実施例6とを比較すると、圧力損失を小さく抑えることができるという観点から、規則充填物である実施例6の方が好ましい。
(第1実験例〜第3実験例における実験結の総括)
以上のように本発明による充填物のHETPはガラスビーズのそれの15〜49%、ゼオライトビーズのそれの22〜72%となったから、同じ性能を必要とする蒸留塔の充填高さを大きく低減することができ、その効果は大きい。
比揮発度が接近している成分の蒸留分離(例えば重水と軽水、トリチウムと軽水、トリチウムと重水、など)には充填高を如何に低くするかが工業上の課題になっている。従来、この問題に対して、充填物に吸着性を持たせる試みが為されてきた。本発明は吸着性を有しないが多数の気孔を有する毛管構造体を構成することにより、吸着材の場合よりもさらに分離効果を高めることが出来ることを見出した。このような構造に分離効果を高める効果があることの理論的な考察はなお継続しているが、以下のように考えられる。即ち、充填材の表面は、この試験を行った液流下速度(第1実験例の270kg/mh〜590kg/mhと、第2および第3実験例の2000kg/mh)では、表面のある一点に着目すると、常時液が流れるのではなく、しばしば液流下が途切れ、蒸気と直接接触し、しばらく後に液が再び表面を覆って流れ下るものと推測される。蒸気と接触したとき、表面には多孔部分に液が留まっており、この部分が蒸気中の成分と接触して、より蒸気の平衡濃度に接近するものと考えられる。そこに流下液が接触するので流下液の濃度が、多孔質の存在しない場合よりも高く濃縮されるものと考えられる。
本発明は、蒸留塔に使用される充填材、該充填材を用いた蒸留分離方法、及び蒸留分離装置に、特に、トリチウム水のように比揮発度が接近した成分の蒸留分離に好適に実施することが可能な蒸留分離方法及び蒸留分離装置に適用することが可能である。
1:蒸留装置 2:蒸留塔
3:リボイラー 4:凝縮器

Claims (6)

  1. 処理液が供給される蒸留塔内に充填される充填材であって、
    多数の気孔を有する多孔体で構成されると共に、気孔内を浸透する液が、毛細管現象の作用により、充填材表面に浸出し、且つ、充填材表面を短時間に覆うように拡散する状態が発現し得るように構成された毛管構造体から成ることを特徴とする充填材。
  2. 前記毛管構造体の毛管力としては、一本の細管における毛管水柱で近似した以下の第1式を用いて常温水の条件下で算出した毛管水柱高さが0.03m以上であるような特性を有する請求項1記載の充填材。
    Figure 2018192399
  3. 前記毛管構造体の液の浸透速度としては、一本の細管を横に向け以下の第2式を用いて算出した該細管内を水平方向に10mmを浸透するのに要する時間が0.1秒以下であるような特性を有する請求項1又は2記載の充填材。
    Figure 2018192399
  4. 前記毛管構造体の表面が親水化処理されている請求項1〜3のいずれかに記載の充填材。
  5. 請求項1〜4のいずれかに記載の充填材が充填された蒸留塔を用いて、処理すべき原液の蒸留分離を行うことを特徴とする蒸留分離方法。
  6. 蒸留塔を備えた蒸留分離装置であって、
    前記蒸留塔は請求項1〜4のいずれかに記載の充填材が充填されていることを特徴とする蒸留分離装置。

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