JP2018191579A - 肺の製造方法 - Google Patents

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康夫 西條
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Keiryo Shu
啓亮 周
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哲彦 北原
俊邦 笹岡
Toshikuni Sasaoka
俊邦 笹岡
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Abstract

【課題】非ヒト哺乳動物の生体内で作製された多能性幹細胞由来の肺を製造する方法を提供する。【解決手段】肺の製造方法は、多能性幹細胞を調製する工程1と、非ヒト哺乳動物の8細胞期又は胚盤胞期の受精卵中に前記多能性幹細胞を移植する工程2と、前記受精卵を非ヒト仮親哺乳動物の母胎中で発生させて、産仔を得る工程3と、前記産仔個体から肺を取得する工程4と、を順に備える方法であり、前記非ヒト哺乳動物は、発生段階において、肺の発生が生じない異常を有する非ヒト哺乳動物であり、前記多能性幹細胞及び製造される肺は、前記非ヒト哺乳動物と異なる個体の異個体哺乳動物由来であり、且つ、前記非ヒト哺乳動物と前記異個体哺乳動物とは同種又は異種である。【選択図】なし

Description

本発明は、肺の製造方法、キメラ非ヒト哺乳動物の製造方法、キメラ非ヒト哺乳動物、肺製造用セット及びキメラ非ヒト哺乳動物の由来となる非ヒト哺乳動物の受精卵の遺伝子型決定方法に関する。
移植可能な臓器再生には、これまでいくつかの方法が試みられている。中心的な臓器再生としては、細胞の培養及び分化による方法が挙げられるが、大量の細胞培養の必要性や三次元構造物の作製等、技術及びコストの面で実用化が困難となっている。
近年、上記課題を克服する手段として、胚盤胞補完法による臓器再生技術が開発された(例えば、特許文献1参照)。この方法では、特定の臓器を欠損する遺伝子改変動物(主に、マウス)の胚の胚盤胞期に野生型多能性幹細胞(例えば、ES細胞、iPS細胞等)を注入することにより、多能性幹細胞由来の臓器を作製することができる。
再公表WO2008/102602号公報
特許文献1に記載の胚盤胞補完法による臓器再生技術では、腎臓、膵臓、胸腺及び毛の再生について成功したことが開示されている。しかしながら、これら臓器よりも大きく、より構造が複雑な臓器、例えば肺等の再生については開示されていない。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、非ヒト哺乳動物の生体内で作製された多能性幹細胞由来の肺の製造方法を提供する。また、前記多能性幹細胞由来の肺を有するキメラ非ヒト哺乳動物及びその製造方法を提供する。また、前記多能性幹細胞由来の肺を製造可能な肺製造用セットを提供する。また、簡便に判別可能なキメラ非ヒト哺乳動物の由来となる非ヒト哺乳動物の受精卵の遺伝子型決定方法を提供する。
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、肺欠損非ヒト哺乳動物の受精卵中に多能性幹細胞を注入することで、肺欠損非ヒト哺乳動物の生体内において前記多能性幹細胞由来の肺を作製できることを見出した。
すなわち、本発明は、以下の態様を含む。
本発明の第1態様に係る肺の製造方法は、多能性幹細胞を調製する工程1と、
非ヒト哺乳動物の8細胞期又は胚盤胞期の受精卵中に前記多能性幹細胞を移植する工程2と、
前記受精卵を非ヒト仮親哺乳動物の母胎中で発生させて、産仔を得る工程3と、
前記産仔個体から肺を取得する工程4と、
を順に備える方法であり、
前記非ヒト哺乳動物は、発生段階において、肺の発生が生じない異常を有する非ヒト哺乳動物であり、
前記多能性幹細胞及び製造される肺は、前記非ヒト哺乳動物と異なる個体の異個体哺乳動物由来であり、且つ、前記非ヒト哺乳動物と前記異個体哺乳動物とは同種又は異種である。
前記多能性幹細胞が胚性幹細胞(ES細胞)又は誘導型多能性幹細胞(iPS細胞)であってもよい。
前記多能性幹細胞がヒト、マウス又はラット由来であってもよい。
前記非ヒト哺乳動物が線維芽細胞成長因子10(FGF10)ノックアウト非ヒト哺乳動物であってもよい。
前記FGF10ノックアウト非ヒト哺乳動物において、FGF10の対立遺伝子が複合ヘテロ接合性の遺伝子型であってもよい。
前記FGF10ノックアウト非ヒト哺乳動物において、前記複合ヘテロ接合性の遺伝子型は、エクソン1がノックアウトされたFGF10とエクソン3がノックアウトされたFGF10との組み合わせによるものであってもよい。
前記非ヒト哺乳動物がマウスであってもよい。
上記第1態様に係る肺の製造方法において、移植用肺を製造してもよい。
前記肺が、実質的に前記異個体哺乳動物由来のものであってもよい。
本発明の第2態様に係るキメラ非ヒト哺乳動物の製造方法は、多能性幹細胞を調製する工程1と、
非ヒト哺乳動物の8細胞期又は胚盤胞期の受精卵中に前記多能性幹細胞を移植する工程2と、
前記受精卵を非ヒト仮親哺乳動物の母胎中で発生させて、産仔を得る工程3と、
を順に備える方法であり、
前記非ヒト哺乳動物は、発生段階において、肺の発生が生じない異常を有する非ヒト哺乳動物であり、
前記多能性幹細胞は、前記非ヒト哺乳動物と異なる個体の異個体哺乳動物由来であり、且つ、前記非ヒト哺乳動物と前記異個体哺乳動物とは同種又は異種である。
本発明の第3態様に係るキメラ非ヒト哺乳動物は、発生段階において、肺の発生が生じない異常を有する非ヒト哺乳動物の8細胞期又は胚盤胞期の受精卵中に、多能性幹細胞を移植し、前記受精卵を非ヒト仮親哺乳動物の母胎中で発生させて得られるキメラ非ヒト哺乳動物であって、
前記多能性幹細胞は、前記非ヒト哺乳動物と異なる個体の異個体哺乳動物由来であり、前記非ヒト哺乳動物と前記異個体哺乳動物とは同種又は異種であり、且つ、前記キメラ非ヒト哺乳動物の肺は実質的に前記異個体哺乳動物由来のものである。
前記多能性幹細胞が胚性幹細胞(ES細胞)又は誘導型多能性幹細胞(iPS細胞)であってもよい。
前記多能性幹細胞がヒト、マウス又はラット由来であってもよい。
前記非ヒト哺乳動物が線維芽細胞成長因子10(FGF10)ノックアウト非ヒト哺乳動物であってもよい。
前記FGF10ノックアウト非ヒト哺乳動物において、FGF10の対立遺伝子が複合ヘテロ接合性の遺伝子型であってもよい。
前記FGF10ノックアウト非ヒト哺乳動物において、前記複合ヘテロ接合性の遺伝子型は、エクソン1がノックアウトされたFGF10とエクソン3がノックアウトされたFGF10との組み合わせによるものであってもよい。
前記非ヒト哺乳動物がマウスであってもよい。
本発明の第4態様に係る肺製造用セットは、発生段階において、肺の発生が生じない異常を有する非ヒト哺乳動物の8細胞期又は胚盤胞期の受精卵と、
前記非ヒト細胞とは異なる個体の異個体哺乳動物由来の多能性幹細胞と、
を備え、
前記非ヒト哺乳動物と前記異個体哺乳動物とは同種又は異種である。
前記多能性幹細胞が胚性幹細胞(ES細胞)又は誘導型多能性幹細胞(iPS細胞)であってもよい。
前記多能性幹細胞がヒト、マウス又はラット由来であってもよい。
前記非ヒト哺乳動物が線維芽細胞成長因子10(FGF10)ノックアウト非ヒト哺乳動物であってもよい。
前記FGF10ノックアウト非ヒト哺乳動物において、FGF10の対立遺伝子が複合ヘテロ接合性の遺伝子型であってもよい。
前記FGF10ノックアウト非ヒト哺乳動物において、前記複合ヘテロ接合性の遺伝子型は、エクソン1がノックアウトされたFGF10とエクソン3がノックアウトされたFGF10との組み合わせによるものであってもよい。
前記非ヒト哺乳動物がマウスであってもよい。
上記第4態様に係る肺製造用セットは、移植用肺を製造するためのものであってもよい。
本発明の第5態様に係るキメラ非ヒト哺乳動物の由来となる非ヒト哺乳動物の受精卵の遺伝子型決定方法は、発生段階において、FGF10ノックアウト非ヒト哺乳動物の8細胞期又は胚盤胞期の受精卵中に、多能性幹細胞を移植し、前記受精卵を非ヒト仮親哺乳動物の母胎中で発生させて得られるキメラ非ヒト哺乳動物において、キメラ非ヒト哺乳動物の由来となる非ヒト哺乳動物の受精卵の遺伝子型を決定するための方法であって、
前記受精卵は、エクソン1、エクソン2及びエクソン3からなる群のうちの1つがノックアウトされたFGF10をヘテロの状態で有する同種の非ヒト哺乳動物の雌雄を交配して得られたものであり、且つ、交配する前記雌雄の同種の非ヒト哺乳動物において、ノックアウトされたエクソンの種類が異なり、
前記多能性幹細胞は、前記非ヒト哺乳動物と異なる個体の異個体哺乳動物由来であり、且つ、前記非ヒト哺乳動物と前記異個体哺乳動物とは同種又は異種であり、
前記キメラ非ヒト哺乳動物から体細胞を採取し、FGF10の発現を分析する工程1と、
前記分析工程の結果から前記キメラ非ヒト哺乳動物の由来となる非ヒト哺乳動物の受精卵の遺伝子型を決定する工程2と、
を順に備える方法である。
前記非ヒト哺乳動物がマウスであってもよい。
上記態様によれば、非ヒト哺乳動物の生体内で作製された多能性幹細胞由来の肺の製造方法を提供することができる。また、前記多能性幹細胞由来の肺を有するキメラ非ヒト哺乳動物及びその製造方法を提供することができる。また、前記多能性幹細胞由来の肺を製造可能な肺製造用セットを提供することができる。また、簡便に判別可能なキメラ非ヒト哺乳動物の由来となる非ヒト哺乳動物の受精卵の遺伝子型決定方法を提供することができる。
実施例1におけるホモ接合体KO個体(Fgf10(−/−))の産仔の組織切片をHE染色した結果を示す画像である。 実施例1における正常な肺を有するBDF1マウスの産仔の組織切片をHE染色した結果を示す画像である。 実施例1におけるGFP陽性のES細胞を注入したホモ接合体KO個体(Fgf10(−/−))の産仔の肺の組織切片をHE染色した結果を示す画像である。 実施例1におけるGFP陽性のES細胞を注入したホモ接合体KO個体(Fgf10(−/−))の産仔の肺を実体蛍光顕微鏡で観察した結果を示す画像である。 実施例1におけるGFP陽性のES細胞を注入したホモ接合体KO個体(FGF10(−/−))の産仔の肺の組織切片をDAPI染色し、蛍光顕微鏡で観察した結果を示す画像である。
≪肺の製造方法≫
本発明の一実施形態に係る肺の製造方法は、多能性幹細胞を調製する工程1と、非ヒト哺乳動物の8細胞期又は胚盤胞期の受精卵中に前記多能性幹細胞を移植する工程2と、前記受精卵を非ヒト仮親哺乳動物の母胎中で発生させて、産仔を得る工程3と、前記産仔個体から肺を取得する工程4と、を順に備える方法であり、前記非ヒト哺乳動物は、発生段階において、肺の発生が生じない異常を有する非ヒト哺乳動物であり、前記多能性幹細胞及び製造される肺は、前記非ヒト哺乳動物と異なる個体の異個体哺乳動物由来であり、且つ、前記非ヒト哺乳動物と前記異個体哺乳動物とは同種又は異種である。
従来では、臓器が大きく、構造が複雑である肺の再生は困難であると考えられていた。
これに対し、本実施形態の肺の製造方法によれば、非ヒト哺乳動物の生体内で多能性幹細胞由来の肺を簡便に作製することができる。
本実施形態の肺の製造方法における各工程について、以下に詳細を説明する。
<工程1>
まず、本実施形態の製造方法で得られる肺の由来となる多能性幹細胞を調製する。
この多能性幹細胞を非ヒト哺乳動物の受精卵の中で発生させることにより、産仔の体内において、多能性幹細胞由来の肺を製造することができる。
[多能性幹細胞]
なお、本明細書における「多能性幹細胞」とは、生体の様々な組織に分化する能力(分化万能性)を潜在的に持つ細胞を意味する。具体的には、内胚葉、中胚葉、外胚葉の全てに分化可能である細胞を指す。特に、本実施形態の肺の製造方法で用いられる多能性幹細胞は、肺の全ての細胞に発生する能力を有する。
多能性幹細胞としてより具体的には、例えば、初期胚より単離される胚性幹細胞(embryonic stem cells:ES細胞)、始原生殖細胞から単離される胚性生殖細胞(embryonic germ cells:EG細胞)(参考文献1:Michael J. S. et al., “Derivation of pluripotent stem cells from cultured human primordial germ cells”, Proc Natl AcadSci U S A, vol.95, 13726-13731, 1998.)、出生直後の精巣から単離される生殖細胞系列幹細胞(germline stem cells:GS細胞)、皮膚細胞等の体細胞に複数の遺伝子を導入することで、体細胞の脱分化を誘導し、ES細胞同様の多能性を有する体細胞由来人工多能性幹細胞(若しくは、誘導多能性幹細胞(induced pluripotent stem cell: iPS細胞))を挙げられ、これらに限定されない。また、前記ES細胞は、ntES細胞 (nuclear transfer Embryonic Stem Cell)を包含する。中でも、本実施形態の肺の製造方法で用いられる多能性幹細胞としては、ES細胞又はiPS細胞であることが好ましい。
また、本実施形態の肺の製造方法で用いられる多能性幹細胞の由来となる動物としては、哺乳動物であればよい。前記多能性幹細胞の由来となる動物として具体的には、例えば、ヒト、ブタ、ラット、マウス、ウシ、ヒツジ、ヤギ、ウマ、イヌ、チンパンジー、ゴリラ、オランウータン、サル、マーモセット、ボノボ等が挙げられ、これらに限定されない。
中でも、本実施形態の肺の製造方法で用いられる多能性幹細胞の由来となる動物としては、ヒト、マウス又はラットであることが好ましい。
上述の多能性幹細胞は、当該細胞を特異的に検出できることから、蛍光タンパク質を発現可能な状態で組み込んでいてもよい。
前記蛍光タンパク質としては、例えば、EBFP、ECFP、CFP、EGFP、GFP、EYFP、YFP、mOrange、DsRed、mCherry等が挙げられ、これらに限定されない。
多能性幹細胞に蛍光タンパク質を組み込む方法としては、例えば、蛍光タンパク質が組み込まれた発現ベクターを構築し、エレクトロポレーション法等を用いてES細胞内に導入する方法等が挙げられる。
<工程2>
次いで、非ヒト哺乳動物の受精卵を作製し、8細胞期又は胚盤胞期まで成育させる。
8細胞期又は胚盤胞期まで成育された受精卵に上述の多能性幹細胞を、マイクロマニピュレーター等を用いて顕微鏡下で注入して、移植する。
受精卵への多能性幹細胞の移植時期としては、8細胞期又は胚盤胞期であればよく、ドナーである多能性幹細胞の含有率の高いキメラ胚となることから、8細胞期であることが好ましい。
移植する多能性幹細胞の細胞数としては、受精卵1個当たり4個以下であればよく、正常に発生し、より高い生存率となることから1個以上3個以下であることが好ましい。
このとき、多能性幹細胞は、受精卵の由来となる非ヒト哺乳動物とは異なる個体に由来する(すなわち、多能性幹細胞は、異個体哺乳動物由来である)。また、ドナーである多能性幹細胞とレシピエントである受精卵とは同種であってもよく、異種であってもよい。
異種間でのキメラ動物の作製は、従来から当該技術分野において多数の報告がなされており、例えば、ラット−マウス間のキメラ動物の作出、ヒツジ−ヤギ間のキメラ動物の作出等、近縁動物種間での胚胞キメラ動物が実際に報告されている。
よって、多能性幹細胞とレシピエントとなる受精卵とは異種であっても、これらの従来から知られているキメラ作出方法(例えば、移植する多能性幹細胞を、レシピエントとなる胚盤胞中に挿入する方法等)に基づいて、異種の肺をレシピエントとなる胚中で作製することができる。
[非ヒト哺乳動物]
本実施形態において用いられる非ヒト哺乳動物は、上述の多能性幹細胞のみに由来する肺を製造するために、発生段階において、肺の発生が生じない異常を有する非ヒト哺乳動物を用いることが好ましい。肺欠損を発生させる非ヒト哺乳動物であれば、特定の遺伝子を欠損することにより肺が欠損するノックアウト非ヒト哺乳動物であってもよい。
ノックアウトすることで肺を欠損する特定の遺伝子としては、例えば、線維芽細胞成長因子受容体2(Fiboroblast growth facotr receptor2)遺伝子、線維芽細胞成長因子10(Fibroblast growth factor 10;FGF10)遺伝子、ベータカテニン遺伝子、NKx2.1遺伝子等が挙げられ、これらに限定されない。
中でも、本実施形態の肺の製造方法で用いられる非ヒト哺乳動物としては、発生段階において肺の発生が生じない異常を有し、完全肺欠損の個体を得られることから、FGF10ノックアウト非ヒト哺乳動物であることが好ましい。
FGF10遺伝子はエクソン1、エクソン2及びエクソン3の3つのエクソンから構成されている。上述のエクソン1、エクソン2及びエクソン3のうち少なくともいずれか一つをノックアウトすることで、FGF10ノックアウト非ヒト哺乳動物を得ることができる。
この動物は、FGF10(−/−)のホモ接合体ノックアウト遺伝子型の場合に、肺の発生が行われず、産仔個体に肺が存在しない。
一方、この動物では、FGF10遺伝子の欠損がホモの状態(FGF10(−/−))では、肺が形成されず、生存することができない。そのため、FGF10遺伝子の欠損がヘテロの状態(FGF10(+/−))で維持されている。このようなヘテロの状態の非ヒト哺乳動物同士を交配し(FGF10(+/−)×FGF10(+/−))、受精卵を子宮内から採取する。採取された受精卵において、FGF10(+/+):FGF10(+/−):FGF10(−/−)が1:2:1の確率で生じる。
本実施形態の肺の製造方法では、この25%の確率で生じるFGF10(−/−)の受精卵を使用する。しかしながら、初期胚の段階で遺伝子型を決定することは困難であるため、出産された産仔の遺伝子型を決定し、目的とするFGF10(−/−)の遺伝子型を有する個体のみをその後の工程で使用すればよい。
FGF10ノックアウト非ヒト哺乳動物がマウスである場合、例えば、参考文献2(Yasue A et al., “Highly efficient targeted mutagenesis in one-cell mouse embryos mediated by the TALEN and CRISPR/Cas systems”, SCIENTIFIC REPORTS, 4 : 5705, DOI: 10.1038/srep05705, 2014.)に記載のとおり、FGF10遺伝子のExon1を標的とするガイドRNA(配列番号1)、又は、FGF10遺伝子のExon3を標的とするガイドRNA(配列番号2)を用いて、エクソン1のみをノックアウトしたFGF10EXON1ノックアウトマウス、又は、エクソン3のみをノックアウトしたFGF10EXON3ノックアウトマウスを作製することができる。
FGF10ノックアウト非ヒト哺乳動物において、遺伝子型の決定がより簡便であることから、FGF10の対立遺伝子が複合ヘテロ接合性の遺伝子型であることが好ましい。FGF10ノックアウト非ヒト哺乳動物が複合ヘテロ接合性の遺伝子型である場合、表現型はホモ接合体ノックアウト遺伝子型と同様であり、肺の発生が行われず、産仔個体に肺が存在しない。
FGF10ノックアウト非ヒト哺乳動物における複合ヘテロ接合性の遺伝子型の受精卵は、異なる変異を有するヘテロの状態の非ヒト哺乳動物同士を交配することで得られる。
具体的には、以下の表1に記載の複合ヘテロ接合性の遺伝子型の受精卵が挙げられる。なお、表1において「1」はFGF10のエクソン1、「2」はFGF10のエクソン2、「3」はFGF10のエクソン3を示す。また、「(+)」はエクソンが存在することを示し、「(−)」はエクソンがノックアウトされていることを示す。
中でも、本実施形態の肺の製造方法に用いられる受精卵における複合ヘテロ接合性の遺伝子型としては、エクソン同士の距離が十分に離れており変異の有無を検出しやすいことから、エクソン1がノックアウトされたFGF10と、エクソン3がノックアウトされたFGF10との組み合わせによるものであることが好ましい。
上記複合ヘテロ接合性の遺伝子型の受精卵は、ヘテロの状態のFGF10EXON1ノックアウト非ヒト哺乳動物と、ヘテロの状態のFGF10EXON3ノックアウト非ヒト哺乳動物とを交配することで得られる。
また、FGF10ノックアウト非ヒト哺乳動物は、作製段階でFGF10遺伝子をノックアウトすると共に、FGF10遺伝子領域に発現可能な状態で検出用の蛍光タンパク質の遺伝子をノックインしてもよい。蛍光タンパク質としては、上述の多能性幹細胞において例示されたものと同様のものが挙げられる。蛍光タンパク質をノックインすることにより、当該遺伝子の調節領域が活性化されると、FGF10の代わりに蛍光タンパク質の発現が生じ、FGF10遺伝子の欠損状態を蛍光検出により決定することができる。
このとき、移植する多能性幹細胞においても蛍光タンパク質が発現可能な状態で導入されている場合には、異なる蛍光波長の蛍光タンパク質の組み合わせとなるように、FGF10ノックアウト非ヒト哺乳動物に導入する蛍光タンパク質の種類を適宜選択すればよい。
また、本実施形態の肺の製造方法で用いられる非ヒト哺乳動物は、ヒト以外の哺乳動物であればよい。前記非ヒト哺乳動物として具体的は、例えば、ブタ、ラット、マウス、ウシ、ヒツジ、ヤギ、ウマ、イヌ、チンパンジー、ゴリラ、オランウータン、サル、マーモセット、ボノボ等が挙げられ、これらに限定されない。
中でも、本実施形態の肺の製造方法で用いられる非ヒト哺乳動物としては、マウスであることが好ましい。
上記のとおり、工程1で調製された多能性幹細胞を、レシピエントとなる8細胞期又は胚盤胞期(好ましくは、8細胞期)の受精卵の腔内に移植し、当該受精卵の腔内において、受精卵由来の内部細胞と移植された多能性幹細胞とによるキメラの細胞混合物を形成させることができる。
<工程3>
次いで、工程2において多能性幹細胞が移植された受精卵を、仮親となる受精卵の由来となった非ヒト哺乳動物と同種の偽妊娠又は妊娠メス動物の子宮内に移植する。この多能性幹細胞が移植された受精卵を、仮親子宮内で発生させて、産仔を得る。
<工程4>
次いで、工程3において得られた産仔から肺を得る。この肺は、多能性幹細胞に由来し、実質的に異個体哺乳動物由来のものである。
ここで、「実質的に異個体哺乳動物由来である」とは、肺を構成する細胞がレシピエントである非ヒト哺乳動物由来ではなく、全てドナーである異個体哺乳動物由来であることを意味する。又は、肺を構成する細胞のうちレシピエントである非ヒト哺乳動物由来のものが、移植等で拒絶反応を示さない程度の極微量しか含まないことを意味する。
本実施形態の肺の製造方法を用いることで、これまで製造が困難であった複雑な細胞構成を有する肺を製造することができた。また、製造された肺は、組織のほとんどすべてが受精卵に移植された多能性幹細胞に由来する再生肺である。得られた肺は、多能性幹細胞の由来となった動物と同種であって、肺に疾患を有する動物の移植用肺として用いてもよい。
[肺の形成確認]
肺の形成については、肉眼的所見、染色後の顕微鏡観察、或いは蛍光を利用した観察等の方法を用いた、マクロ又はミクロの形態学的解析、遺伝子発現解析等を行うことにより調べることができる。
例えば、肉眼的所見を行うことにより、実際に産仔の体内に肺が存在するか否か、肺の外観等の特徴を調べることができる。このようなマクロの形態学的解析とあわせて、ヘマトキシリン−エオジン(HE)染色等の一般的組織染色後の組織を顕微鏡によりミクロ的に観察することもできる。このようなミクロ的な観察により、具体的な肺内部の様々な細胞の構成まで含めて調べることができる。
さらに、条件に応じて蛍光を発する様に蛍光を使用した遺伝子発現解析を行うことも可能である。例えば、蛍光タンパク質が発現可能な状態で導入されたFGF10遺伝子ノックアウト非ヒト哺乳動物を用いる場合、FGF10遺伝子の欠損がホモの状態(FGF10(−/−))の場合、蛍光タンパク質の蛍光が両アリルから発生する。そのため、片方のアリルのみから蛍光が発生するFGF10遺伝子の欠損がヘテロの状態(FGF10(+/−))の蛍光では、蛍光量が少なくなる。このような特質を利用して、肺又は肺を構成する細胞が、FGF10遺伝子に関してどのような遺伝子型であるかを簡便に調べることができる。
また、多能性幹細胞としてiPS細胞及びmGS細胞を使用する場合において、例えば、Nanog−iPSと呼ばれるiPS細胞株の場合には、マーカー遺伝子が導入されていない。そのため、Nanog−iPSを用いて本実施形態の肺の製造方法により、キメラ胚を作製した場合、ドナーであるNanog−iPSとレシピエントである受精卵由来の細胞とを区別する術がなく、肺の補充がなされたか識別できない。したがって、Nanog−iPS細胞株に蛍光タンパク質を発現可能な状態で導入することにより、その由来を明らかにすることが可能となる。
≪キメラ非ヒト哺乳動物の製造方法≫
本発明の一実施形態に係るキメラ非ヒト哺乳動物の製造方法は、多能性幹細胞を調製する工程1と、
非ヒト哺乳動物の8細胞期又は胚盤胞期の受精卵中に前記多能性幹細胞を移植する工程2と、
前記受精卵を非ヒト仮親哺乳動物の母胎中で発生させて、産仔を得る工程3と、
を順に備える方法であり、
前記非ヒト哺乳動物は、発生段階において、肺の発生が生じない異常を有する非ヒト哺乳動物であり、
前記多能性幹細胞は、前記非ヒト哺乳動物と異なる個体の異個体哺乳動物由来であり、且つ、前記非ヒト哺乳動物と前記異個体哺乳動物とは同種又は異種である。
従来では、キメラ非ヒト哺乳動物の体内において、臓器よりも大きく、構造が複雑な臓器である肺を再生することは困難であると考えられていた。
これに対し、本実施形態のキメラ非ヒト哺乳動物の製造方法によれば、多能性幹細胞由来の肺を有するキメラ非ヒト哺乳動物を得ることができる。
本実施形態のキメラ非ヒト哺乳動物の製造方法について、工程1〜工程3は上述の肺の製造方法における工程1〜3と同様である。
≪キメラ非ヒト哺乳動物≫
本発明の一実施形態に係るキメラ非ヒト哺乳動物は、発生段階において、肺の発生が生じない異常を有する非ヒト哺乳動物の8細胞期又は胚盤胞期の受精卵中に、多能性幹細胞を移植し、前記受精卵を非ヒト仮親哺乳動物の母胎中で発生させて得られるキメラ非ヒト哺乳動物であって、
前記多能性幹細胞は、前記非ヒト哺乳動物と異なる個体の異個体哺乳動物由来であり、前記非ヒト哺乳動物と前記異個体哺乳動物とは同種又は異種であり、且つ、前記キメラ非ヒト哺乳動物の肺は実質的に前記異個体哺乳動物由来のものである。
従来では、キメラ非ヒト哺乳動物の体内において、臓器が大きく、構造が複雑な肺を再生することは困難であると考えられていた。
これに対し、本実施形態のキメラ非ヒト哺乳動物は、多能性幹細胞由来の肺を有するものである。また、この肺は実質的に前記異個体哺乳動物由来のものであることから、移植用肺として使用することができる。
本実施形態のキメラ非ヒト哺乳動物は、上述の肺の製造方法に従い、製造することができる。本実施形態のキメラ非ヒト哺乳動物を構成する細胞等について、以下に詳細を説明する。
[多能性幹細胞]
本実施形態のキメラ非ヒト哺乳動物が有する肺の由来となる多能性幹細胞としては、上述の肺の製造方法において例示されたものと同様のものが挙げられる。
中でも、本実施形態のキメラ非ヒト哺乳動物が有する肺の由来となる多能性幹細胞としては、ES細胞又はiPS細胞であることが好ましい。
また、前記多能性幹細胞の由来となる動物としては、哺乳動物であればよい。前記多能性幹細胞の由来となる動物としては、上述の肺の製造方法において例示されたものと同様のものが挙げられる。
中でも、前記多能性幹細胞の由来となる動物としては、ヒト、マウス又はラットであることが好ましい。
上述の多能性幹細胞は、当該細胞を特異的に検出できることから、蛍光タンパク質を発現可能な状態で組み込まれていてもよい。
前記蛍光タンパク質としては、上述の肺の製造方法において例示されたものと同様のものが挙げられる。
[非ヒト哺乳動物]
本実施形態のキメラ非ヒト哺乳動物を製造するために用いられた非ヒト哺乳動物は、多能性幹細胞のみに由来する肺とするために、発生段階において、肺の発生が生じない異常を有する非ヒト哺乳動物であることが好ましい。肺欠損を発生させる非ヒト哺乳動物であれば、特定の遺伝子を欠損することにより肺が欠損するノックアウト非ヒト哺乳動物であってもよい。
ノックアウトすることで肺を欠損する特定の遺伝子としては、上述の肺の製造方法において例示されたものと同様のものが挙げられる。
中でも、本実施形態のキメラ非ヒト哺乳動物を製造するために用いられた非ヒト哺乳動物としては、発生段階において肺の発生が生じない異常を有し、完全肺欠損の個体を得られることから、FGF10ノックアウト非ヒト哺乳動物であることが好ましい。
さらに、FGF10ノックアウト非ヒト哺乳動物において、遺伝子型の決定がより簡便であることから、FGF10の対立遺伝子が複合ヘテロ接合性の遺伝子型であることが好ましい。
FGF10ノックアウト非ヒト哺乳動物における複合ヘテロ接合性の遺伝子型の受精卵としては、上述の肺の製造方法において例示されたものと同様のものが挙げられる。
中でも、本実施形態のキメラ非ヒト哺乳動物を製造するために用いられた受精卵における複合ヘテロ接合性の遺伝子型としては、エクソン同士の距離が十分に離れており変異の有無を検出しやすいことから、エクソン1がノックアウトされたFGF10と、エクソン3がノックアウトされたFGF10との組み合わせによるものであることが好ましい。
また、FGF10ノックアウト非ヒト哺乳動物は、FGF10遺伝子領域に発現可能な状態で検出用の蛍光タンパク質の遺伝子がノックインされていてもよい。蛍光タンパク質としては、上述の肺の製造方法において例示されたものと同様のものが挙げられる。蛍光タンパク質をノックインされていることにより、当該遺伝子の調節領域が活性化されると、FGF10の代わりに蛍光タンパク質の発現が生じ、FGF10遺伝子の欠損状態を蛍光検出により決定することができる。
このとき、肺の由来となる多能性幹細胞においても蛍光タンパク質が発現可能な状態で導入されている場合には、FGF10ノックアウト非ヒト哺乳動物に導入されている蛍光タンパク質と多能性幹細胞に導入されている蛍光タンパク質とが、異なる蛍光波長の蛍光タンパク質の組み合わせとなるようにすることが好ましい。
また、本実施形態のキメラ非ヒト哺乳動物を製造するために用いられた非ヒト哺乳動物は、ヒト以外の哺乳動物であればよい。前記非ヒト哺乳動物としては、上述の肺の製造方法において例示されたものと同様のものが挙げられる。
中でも、本実施形態のキメラ非ヒト哺乳動物を製造するために用いられた非ヒト哺乳動物としては、マウスであることが好ましい。
また、上述の多能性幹細胞は、上述の非ヒト哺乳動物とは異なる個体に由来する(すなわち、多能性幹細胞は、異個体哺乳動物由来である)。また、多能性幹細胞の由来となる異個体哺乳動物と非ヒト哺乳動物とは同種であってもよく、異種であってもよい。
≪肺製造用セット≫
本発明の一実施形態に係る肺製造用セットは、発生段階において、肺の発生が生じない異常を有する非ヒト哺乳動物の8細胞期又は胚盤胞期の受精卵と、
前記非ヒト細胞とは異なる個体の異個体哺乳動物由来の多能性幹細胞と、
を備え、
前記非ヒト哺乳動物と前記異個体哺乳動物とは同種又は異種である。
本実施形態の肺製造用セットによれば、簡便に多能性幹細胞に由来する肺を非ヒト哺乳動物の体内において作製することができる。また、この肺は実質的に前記異個体哺乳動物由来のものであることから、移植用肺として使用することができる。
[受精卵]
本実施形態の肺製造用セットが備える受精卵は、8細胞期又は胚盤胞期であればよく、多能性幹細胞の含有率の高いキメラ胚が得られることから、8細胞期であることが好ましい。
本実施形態の肺製造用セットが備える受精卵の由来となる非ヒト哺乳動物は、多能性幹細胞のみに由来する肺を製造するために、発生段階において、肺の発生が生じない異常を有する非ヒト哺乳動物を用いることが好ましい。肺欠損を発生させる非ヒト哺乳動物であれば、特定の遺伝子を欠損することにより肺が欠損するノックアウト非ヒト哺乳動物であってもよい。
ノックアウトすることで肺を欠損する特定の遺伝子としては、上述の肺の製造方法において例示されたものと同様のものが挙げられる。
中でも、本実施形態の肺製造用セットが備える受精卵の由来となる非ヒト哺乳動物としては、発生段階において肺の発生が生じない異常を有し、完全肺欠損の個体を得られることから、FGF10ノックアウト非ヒト哺乳動物であることが好ましい。
また、この動物は、FGF10(−/−)のホモ接合体ノックアウト遺伝子型の場合に、肺の発生が行われず、産仔個体に肺が存在しない。
一方、この動物では、FGF10遺伝子の欠損がホモの状態(FGF10(−/−))では、肺が形成されず、生存することができない。そのため、FGF10遺伝子の欠損がヘテロの状態(FGF10(+/−))で維持されている。このようなヘテロの状態の非ヒト哺乳動物同士を交配し(FGF10(+/−)×FGF10(+/−))、受精卵を子宮内から採取する。採取された受精卵において、FGF10(+/+):FGF10(+/−):FGF10(−/−)が1:2:1の確率で生じる。
本実施形態の肺製造用セットが備える受精卵は、この25%の確率で生じるFGF10(−/−)の受精卵である。しかしながら、初期胚の段階で遺伝子型を決定することは困難であるため、出産された産仔の遺伝子型を決定し、目的とするFGF10(−/−)の遺伝子型を有する個体のみを使用すればよい。
さらに、FGF10ノックアウト非ヒト哺乳動物において、遺伝子型の決定がより簡便であることから、FGF10の対立遺伝子が複合ヘテロ接合性の遺伝子型であることが好ましい。FGF10ノックアウト非ヒト哺乳動物が複合ヘテロ接合性の遺伝子型である場合、表現型はホモ接合体ノックアウト遺伝子型と同様であり、肺の発生が行われず、産仔個体に肺が存在しない。
FGF10ノックアウト非ヒト哺乳動物における複合ヘテロ接合性の遺伝子型の受精卵としては、上述の肺の製造方法において例示されたものと同様のものが挙げられる。
中でも、本実施形態のキメラ非ヒト哺乳動物を製造するために用いられた受精卵における複合ヘテロ接合性の遺伝子型としては、エクソン同士の距離が十分に離れており変異の有無を検出しやすいことから、エクソン1がノックアウトされたFGF10と、エクソン3がノックアウトされたFGF10との組み合わせによるものであることが好ましい。
また、FGF10ノックアウト非ヒト哺乳動物は、FGF10遺伝子領域に発現可能な状態で検出用の蛍光タンパク質の遺伝子がノックインされていてもよい。蛍光タンパク質としては、上述の肺の製造方法において例示されたものと同様のものが挙げられる。蛍光タンパク質をノックインされていることにより、当該遺伝子の調節領域が活性化されると、FGF10の代わりに蛍光タンパク質の発現が生じ、FGF10遺伝子の欠損状態を蛍光検出により決定することができる。
このとき、肺の由来となる多能性幹細胞においても蛍光タンパク質が発現可能な状態で導入されている場合には、FGF10ノックアウト非ヒト哺乳動物に導入されている蛍光タンパク質と多能性幹細胞に導入されている蛍光タンパク質とが、異なる蛍光波長の蛍光タンパク質の組み合わせとなるようにすることが好ましい。
また、本実施形態の本実施形態の肺製造用セットが備える受精卵の由来となる非ヒト哺乳動物は、ヒト以外の哺乳動物であればよい。前記非ヒト哺乳動物としては、上述の肺の製造方法において例示されたものと同様のものが挙げられる。
中でも、本実施形態の本実施形態の肺製造用セットが備える受精卵の由来となる非ヒト哺乳動物としては、マウスであることが好ましい。
[多能性幹細胞]
本実施形態の肺製造用セットが備える多能性幹細胞としては、上述の肺の製造方法において例示されたものと同様のものが挙げられる。
中でも、本実施形態の肺製造用セットが備える多能性幹細胞としては、ES細胞又はiPS細胞であることが好ましい。
また、前記多能性幹細胞の由来となる動物としては、哺乳動物であればよい。前記多能性幹細胞の由来となる動物としては、上述の肺の製造方法において例示されたものと同様のものが挙げられる。
中でも、前記多能性幹細胞の由来となる動物としては、ヒト、マウス又はラットであることが好ましい。
上述の多能性幹細胞は、当該細胞を特異的に検出できることから、蛍光タンパク質を発現可能な状態で組み込まれていてもよい。
前記蛍光タンパク質としては、上述の肺の製造方法において例示されたものと同様のものが挙げられる。
また、本実施形態の肺製造用セットが備える多能性幹細胞の細胞数としては、受精卵1個に対し4個以下であればよく、正常に発生し、より高い生存率となることから1個以上3個以下であることが好ましい。
また、上述の多能性幹細胞は、上述の非ヒト哺乳動物とは異なる個体に由来する(すなわち、多能性幹細胞は、異個体哺乳動物由来である)。また、多能性幹細胞の由来となる異個体哺乳動物と非ヒト哺乳動物とは同種であってもよく、異種であってもよい。
≪キメラ非ヒト哺乳動物の由来となる非ヒト哺乳動物の受精卵の遺伝子型決定方法≫
本発明の一実施形態に係るキメラ非ヒト哺乳動物の由来となる非ヒト哺乳動物の受精卵の遺伝子型決定方法は、発生段階において、FGF10ノックアウト非ヒト哺乳動物の8細胞期又は胚盤胞期の受精卵中に、多能性幹細胞を移植し、前記受精卵を非ヒト仮親哺乳動物の母胎中で発生させて得られるキメラ非ヒト哺乳動物において、キメラ非ヒト哺乳動物の由来となる非ヒト哺乳動物の受精卵の遺伝子型を決定するための方法であって、
前記受精卵は、エクソン1、エクソン2及びエクソン3からなる群のうちの1つがノックアウトされたFGF10をヘテロの状態で有する同種の非ヒト哺乳動物の雌雄を交配して得られたものであり、且つ、交配する前記雌雄の同種の非ヒト哺乳動物において、ノックアウトされたエクソンの種類が異なり、
前記多能性幹細胞は、前記非ヒト哺乳動物と異なる個体の異個体哺乳動物由来であり、且つ、前記非ヒト哺乳動物と前記異個体哺乳動物とは同種又は異種であり、
前記キメラ非ヒト哺乳動物から体細胞を採取し、FGF10の発現を分析する工程1と、
前記分析工程の結果から前記キメラ非ヒト哺乳動物の由来となる非ヒト哺乳動物の受精卵の遺伝子型を決定する工程2と、
を順に備える方法である。
従来では、多能性幹細胞由来の正常な細胞も混在するため、キメラ非ヒト哺乳動物の由来となる非ヒト哺乳動物の受精卵の遺伝子型がヘテロ接合体であるか、又は、ホモ接合体であるか、を判別することが困難であった。また、多能性幹細胞に蛍光タンパク質等のマーカー遺伝子を導入することで判別していたが、多能性幹細胞由来の肺を移植用肺として使用する場合には、マーカー遺伝子等の外来遺伝子が導入されていないことが望ましい。
これに対し、本実施形態の遺伝子型決定方法によれば、簡便にキメラ非ヒト哺乳動物の由来となる非ヒト哺乳動物の受精卵の遺伝子型を判別することができる。
本実施形態の遺伝子型決定方法において使用されるキメラ非ヒト哺乳動物は、上述の肺の製造方法に従い、製造されたキメラ非ヒト哺乳動物であって、その中でも、多能性幹細胞とFGF10ノックアウト非ヒト哺乳動物の受精卵とを用いて製造されたものである。
多能性幹細胞は、非ヒト哺乳動物と異なる個体の異個体哺乳動物由来である。また、多能性幹細胞の由来となる異個体哺乳動物と非ヒト哺乳動物と同種であってもよく、異種であってもよい。
また、多能性幹細胞は、蛍光タンパク質が発現可能な状態で導入されているものであることが好ましい。これにより、後述するように、キメラ非ヒト哺乳動物から採取された細胞のうち、多能性幹細胞に由来する体細胞、又は、非ヒト哺乳動物に由来する体細胞のいずれであるかを簡便に判別することができる。
キメラ非ヒト哺乳動物の製造に用いられたFGF10ノックアウト非ヒト哺乳動物の受精卵として具体的には、エクソン1、エクソン2及びエクソン3からなる群のうちの1つがノックアウトされたFGF10をヘテロの状態で有する同種の非ヒト哺乳動物の雌雄を交配して得られたものである。さらに、雌雄の同種の非ヒト哺乳動物においてノックアウトされたエクソンの種類が異なることで、複合ヘテロ接合性の遺伝子型の受精卵を得ることができる。より具体的には、上述の肺の製造方法において、表1に例示された複合ヘテロ接合性の遺伝子型の受精卵である。
また、FGF10ノックアウト非ヒト哺乳動物としては、マウスであることが好ましい。
次いで、本実施形態の遺伝子型決定方法について、以下に詳細を説明する。
<工程1>
まず、キメラ非ヒト哺乳動物の産仔から体細胞を採取する。
体細胞としては、血液等の体液に含まれる細胞であってもよく、特定の組織から採取した細胞であってもよい。
次いで、キメラ非ヒト哺乳動物の製造に用いられた多能性幹細胞に蛍光タンパク質が発現可能な状態で導入されている場合、得られた体細胞を、フローサイトメーター等を使用して、蛍光タンパク質が陽性である細胞と、陰性である細胞とを分取してもよい。これにより、まず、多能性幹細胞由来の体細胞と、非ヒト哺乳動物に由来する体細胞とを判別することができる。この場合、蛍光タンパク質が陰性である細胞について遺伝子型決定法を行えばよい。
又は、採取された体細胞をそのまま遺伝子型決定法に用いてもよい。
遺伝子型決定法としては、例えば、細胞からゲノムDNAを抽出し、PCR法により、FGF10のエクソン1、エクソン2及びエクソン3近傍の領域をそれぞれ増幅する方法等が挙げられる。
PCR法において、FGF10のエクソン1近傍の領域を増幅する場合、例えば、以下のPCRプライマーを使用すればよい。
エクソン1フォワードプライマー:5’−CAGCAGGTCTTACCCTTCCA−3’(配列番号3)
エクソン1リバースプライマー:5’−TACAGGGGTTGGGGACATAA−3’(配列番号4)
また、PCR法において、FGF10のエクソン3近傍の領域を増幅する場合、例えば、以下のPCRプライマーを使用すればよい。
エクソン3フォワードプライマー:5’−TGACTCTTCTGTTGTTAGCGTTG−3’(配列番号5)
エクソン3リバースプライマー:5’−ACATCCAAAGCCTTCCTTCC−3’(配列番号6)
本実施形態の遺伝子型決定法に用いられるキメラ非ヒト哺乳動物は、上述したように、複合ヘテロ接合性の遺伝子型の受精卵を用いて製造されたものである。そのため、得られたPCR産物を電気泳動する、又は、検量線を作成して定量する等により、キメラ非ヒト哺乳動物の遺伝型を決定することができる。
又は、PCR産物のダイレクトシークエンスを行うことで、塩基配列を決定し、キメラ非ヒト哺乳動物の遺伝型を決定することができる。
又は、PCR産物をミスマッチ特異的ヌクレアーゼで切断することで、ヘテロ遺伝子変異の有無を確認することができる。
<工程2>
次いで、工程1において得られたPCR産物の電気泳動結果又は定量結果から、遺伝型を下記のとおり決定することができる。
例えば、FGF10を発現する正常な細胞におけるPCR産物の量と比較して、エクソン1の近傍領域におけるPCR産物の量が低減(1/2量程度)されており、エクソン2の近傍領域におけるPCR産物の量が低減(1/2量程度)されている場合、キメラ非ヒト哺乳動物の由来となる非ヒト哺乳動物の受精卵の遺伝子型が複合ヘテロ接合であり、エクソン1がノックアウトされたFGF10とエクソン2がノックアウトされたFGF10との組み合わせであると決定することができる。
また、例えば、FGF10を発現する正常な細胞におけるPCR産物の量と比較して、エクソン1の近傍領域におけるPCR産物の量が低減(1/2量程度)されており、エクソン3の近傍領域におけるPCR産物の量が低減(1/2量程度)されている場合、キメラ非ヒト哺乳動物の由来となる非ヒト哺乳動物の受精卵の遺伝子型が複合ヘテロ接合であり、エクソン1がノックアウトされたFGF10とエクソン3がノックアウトされたFGF10との組み合わせであると決定することができる。
また、例えば、FGF10を発現する正常な細胞におけるPCR産物の量と比較して、エクソン2の近傍領域におけるPCR産物の量が低減(1/2量程度)されており、エクソン3の近傍領域におけるPCR産物の量が低減(1/2量程度)されている場合、キメラ非ヒト哺乳動物の由来となる非ヒト哺乳動物の受精卵の遺伝子型が複合ヘテロ接合であり、エクソン2がノックアウトされたFGF10とエクソン3がノックアウトされたFGF10との組み合わせであると決定することができる。
一方、例えば、FGF10を発現する正常な細胞におけるPCR産物の量と比較して、エクソン1、エクソン2及びエクソン3の近傍領域におけるPCR産物の量のいずれか一つが低減(1/2量程度)されており、それ以外のエクソンの近傍領域におけるPCR産物の量が変わらない(同程度である)場合、キメラ非ヒト哺乳動物の由来となる非ヒト哺乳動物の受精卵の遺伝子型はFGF10(+/−)のヘテロ接合体であると決定することができる。
また、例えば、FGF10を発現する正常な細胞におけるPCR産物の量と比較して、いずれのエクソン近傍領域におけるPCR産物の量も変わらない(同程度である)場合、キメラ非ヒト哺乳動物の由来となる非ヒト哺乳動物の受精卵の遺伝子型はFGF10(+/+)の野生型であると決定することができる。
以下、実施例により本発明を説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
[実施例1]肺欠損マウスにおける肺再生
1.肺欠損マウスの作製
肺欠損を特徴とするノックアウトマウスとして、FGF10ノックアウト(KO)マウスを使用した。なお、FGF10KOマウスの作製方法は、参考文献2(Yasue A et al., “Highly efficient targeted mutagenesis in one-cell mouse embryos mediated by the TALEN and CRISPR/Cas systems”, SCIENTIFIC REPORTS, 4 : 5705, DOI: 10.1038/srep05705, 2014.)に記載のとおりである。具体的には、CRISPR/Cas法を用いて、FGF10遺伝子のExon1を標的とするガイドRNA(配列番号1)とCas9タンパク質とをBDF1マウス胚にインジェクションして、FGF10KOマウスを得た。
また、得られたFGF10KOマウスにおいて、ホモ接合体KO個体(FGF10(−/−))では、胚を欠損していることから生存不可能であるため、ヘテロ接合体個体(FGF10(+/−))で継代維持した。
2.肺欠損マウス胚の作製
次いで、「1.肺欠損マウスの作製」で得られたFGF10KOマウスのうちヘテロ接合体個体(FGF10(+/−))同士を交配して、受精卵を作製した。このうち、対照として、ES細胞を注入せずにBDF1雌マウスの胎内に胚を移植して成長させ、産仔を得た。移植胚数は40個であった。得られた産仔における遺伝子型は、体細胞を採取し、ゲノムDNAを抽出し、ヘテロ変異のDNA鎖を切断するSurveyor nuclease(Integurated DNA technologies社製、型番:706020)を用いて、判定した。遺伝子型及び産仔数について、以下の表2に示す。
理論値では、野生型:ヘテロ:ホモ=1:2:1であり、ホモ接合体KO個体(FGF10(−/−))の割合は25%である。一方、表2から、実際に得られたホモ接合体KO個体(FGF10(−/−))の割合は、4/13×100≒約30.8%であり、理論値よりも高かった。
また、ホモ接合体KO個体(FGF10(−/−))の産仔について、組織切片を作製し、HE染色した画像を図1Aに示す。また、対照として、正常な肺を有するBDF1マウスの産仔について、組織切片を作製し、HE染色した画像を図1Bに示す。図1Aにおいて、黒矢印は、通常肺が形成される部分を指し示している。また、図1Bにおいて、BDF1マウスの産仔の肺を指し示している。
図1A及び図1Bから、ホモ接合体KO個体では、肺が欠損していることが確かめられた。
3.ES細胞の注入
また、「1.肺欠損マウスの作製」で得られたFGF10KOマウスのうちヘテロ接合体個体(FGF10(+/−))同士を交配して、受精卵を作製した。得られた受精卵を8細胞期まで成長させ、ES細胞を8細胞期の胚1個当たり4細胞ずつ、マイクロマニピュレーターを用いて顕微鏡下で注入した。使用したES細胞にはGFPでマーキングされた株(RENKA)(本発明者作成)を使用した。注入後の胚はBDF1雌マウスの胎内へ移植し、産仔を得た。
得られた産仔のうち、肺全体においてGFP陽性である個体において肺を摘出した。次いで、摘出した肺について切片を作製し、HE染色して顕微鏡(オリンパス社製、BX53)を用いて観察した。結果を図2に示す。
また、摘出した肺について切片を作製する前に、実体蛍光顕微鏡(オリンパス社製、SZX9)を用いて、肺全体を観察した。結果を図3に示す。
また、摘出した肺について切片を作製し、DAPI(4’,6−diamidino−2−phenylindole)(同仁化学研究所製)を用いて核を染色し、蛍光顕微鏡(オリンパス社製、A1)を用いて観察した。結果を図4に示す。
図2より、肺の構造は正常マウスにおける構造と同じであることが確かめられた。また、当該肺を有するトランスジェニックマウスは問題なく成育し、肺機能について問題もなかった。
また、図3及び図4より、肺全体においてGFP陽性であることから、肺がES細胞由来であることが確かめられた。
本実施形態によれば、非ヒト哺乳動物の生体内で作製された多能性幹細胞由来の肺の製造方法を提供することができる。また、前記多能性幹細胞由来の肺を有するキメラ非ヒト哺乳動物及びその製造方法を提供することができる。また、前記多能性幹細胞由来の肺を製造可能な肺製造用セットを提供することができる。また、簡便に判別可能なキメラ非ヒト哺乳動物の由来となる非ヒト哺乳動物の受精卵の遺伝子型決定方法を提供することができる。

Claims (27)

  1. 多能性幹細胞を調製する工程1と、
    非ヒト哺乳動物の8細胞期又は胚盤胞期の受精卵中に前記多能性幹細胞を移植する工程2と、
    前記受精卵を非ヒト仮親哺乳動物の母胎中で発生させて、産仔を得る工程3と、
    前記産仔個体から肺を取得する工程4と、
    を順に備え、
    前記非ヒト哺乳動物は、発生段階において、肺の発生が生じない異常を有する非ヒト哺乳動物であり、
    前記多能性幹細胞及び製造される肺は、前記非ヒト哺乳動物と異なる個体の異個体哺乳動物由来であり、且つ、前記非ヒト哺乳動物と前記異個体哺乳動物とは同種又は異種であることを特徴とする肺の製造方法。
  2. 前記多能性幹細胞が胚性幹細胞(ES細胞)又は誘導型多能性幹細胞(iPS細胞)である請求項1に記載の肺の製造方法。
  3. 前記多能性幹細胞がヒト、マウス又はラット由来である請求項1又は2に記載の肺の製造方法。
  4. 前記非ヒト哺乳動物が線維芽細胞成長因子10(FGF10)ノックアウト非ヒト哺乳動物である請求項1〜3のいずれか一項に記載の肺の製造方法。
  5. 前記FGF10ノックアウト非ヒト哺乳動物において、FGF10の対立遺伝子が複合ヘテロ接合性の遺伝子型である請求項4に記載の肺の製造方法。
  6. 前記FGF10ノックアウト非ヒト哺乳動物において、前記複合ヘテロ接合性の遺伝子型は、エクソン1がノックアウトされたFGF10とエクソン3がノックアウトされたFGF10との組み合わせによるものである請求項5に記載の肺の製造方法。
  7. 前記非ヒト哺乳動物がマウスである請求項1〜6のいずれか一項に記載の肺の製造方法。
  8. 移植用肺を製造する、請求項1〜7のいずれか一項に記載の肺の製造方法。
  9. 前記肺が、実質的に前記異個体哺乳動物由来のものである請求項1〜8のいずれか一項に記載の肺の製造方法。
  10. 多能性幹細胞を調製する工程1と、
    非ヒト哺乳動物の8細胞期又は胚盤胞期の受精卵中に前記多能性幹細胞を移植する工程2と、
    前記受精卵を非ヒト仮親哺乳動物の母胎中で発生させて、産仔を得る工程3と、
    を順に備え、
    前記非ヒト哺乳動物は、発生段階において、肺の発生が生じない異常を有する非ヒト哺乳動物であり、
    前記多能性幹細胞は、前記非ヒト哺乳動物と異なる個体の異個体哺乳動物由来であり、且つ、前記非ヒト哺乳動物と前記異個体哺乳動物とは同種又は異種であることを特徴とするキメラ非ヒト哺乳動物の製造方法。
  11. 発生段階において、肺の発生が生じない異常を有する非ヒト哺乳動物の8細胞期又は胚盤胞期の受精卵中に、多能性幹細胞を移植し、前記受精卵を非ヒト仮親哺乳動物の母胎中で発生させて得られるキメラ非ヒト哺乳動物であって、
    前記多能性幹細胞は、前記非ヒト哺乳動物と異なる個体の異個体哺乳動物由来であり、前記非ヒト哺乳動物と前記異個体哺乳動物とは同種又は異種であり、且つ、前記キメラ非ヒト哺乳動物の肺は実質的に前記異個体哺乳動物由来のものであることを特徴とするキメラ非ヒト哺乳動物。
  12. 前記多能性幹細胞が胚性幹細胞(ES細胞)又は誘導型多能性幹細胞(iPS細胞)である請求項11に記載のキメラ非ヒト哺乳動物。
  13. 前記多能性幹細胞がヒト、マウス又はラット由来である請求項11又は12に記載のキメラ非ヒト哺乳動物。
  14. 前記非ヒト哺乳動物が線維芽細胞成長因子10(FGF10)ノックアウト非ヒト哺乳動物である請求項11〜13のいずれか一項に記載のキメラ非ヒト哺乳動物。
  15. 前記FGF10ノックアウト非ヒト哺乳動物において、FGF10の対立遺伝子が複合ヘテロ接合性の遺伝子型である請求項14に記載のキメラ非ヒト哺乳動物。
  16. 前記FGF10ノックアウト非ヒト哺乳動物において、前記複合ヘテロ接合性の遺伝子型は、エクソン1がノックアウトされたFGF10とエクソン3がノックアウトされたFGF10との組み合わせによるものである請求項15に記載のキメラ非ヒト哺乳動物。
  17. 前記非ヒト哺乳動物がマウスである請求項11〜16のいずれか一項に記載のキメラ非ヒト哺乳動物。
  18. 発生段階において、肺の発生が生じない異常を有する非ヒト哺乳動物の8細胞期又は胚盤胞期の受精卵と、
    前記非ヒト細胞とは異なる個体の異個体哺乳動物由来の多能性幹細胞と、
    を備え、
    前記非ヒト哺乳動物と前記異個体哺乳動物とは同種又は異種であることを特徴とする肺製造用セット。
  19. 前記多能性幹細胞が胚性幹細胞(ES細胞)又は誘導型多能性幹細胞(iPS細胞)である請求項18に記載の肺製造用セット。
  20. 前記多能性幹細胞がヒト、マウス又はラット由来である請求項18又は19に記載の肺製造用セット。
  21. 前記非ヒト哺乳動物が線維芽細胞成長因子10(FGF10)ノックアウト非ヒト哺乳動物である請求項18〜20のいずれか一項に記載の肺製造用セット。
  22. 前記FGF10ノックアウト非ヒト哺乳動物において、FGF10の対立遺伝子が複合ヘテロ接合性の遺伝子型である請求項21に記載の肺製造用セット。
  23. 前記FGF10ノックアウト非ヒト哺乳動物において、前記複合ヘテロ接合性の遺伝子型は、エクソン1がノックアウトされたFGF10とエクソン3がノックアウトされたFGF10との組み合わせによるものである請求項22に記載の肺製造用セット。
  24. 前記非ヒト哺乳動物がマウスである請求項18〜23のいずれか一項に記載の肺製造用セット。
  25. 移植用肺を製造するためのものである請求項18〜24のいずれか一項に記載の肺製造用セット。
  26. 発生段階において、FGF10ノックアウト非ヒト哺乳動物の8細胞期又は胚盤胞期の受精卵中に、多能性幹細胞を移植し、前記受精卵を非ヒト仮親哺乳動物の母胎中で発生させて得られるキメラ非ヒト哺乳動物において、キメラ非ヒト哺乳動物の由来となる非ヒト哺乳動物の受精卵の遺伝子型を決定するための方法であって、
    前記受精卵は、エクソン1、エクソン2及びエクソン3からなる群のうちの1つがノックアウトされたFGF10をヘテロの状態で有する同種の非ヒト哺乳動物の雌雄を交配して得られたものであり、且つ、交配する前記雌雄の同種の非ヒト哺乳動物において、ノックアウトされたエクソンの種類が異なり、
    前記多能性幹細胞は、前記非ヒト哺乳動物と異なる個体の異個体哺乳動物由来であり、且つ、前記非ヒト哺乳動物と前記異個体哺乳動物とは同種又は異種であり、
    前記キメラ非ヒト哺乳動物から体細胞を採取し、FGF10の発現を分析する工程1と、
    前記分析工程の結果から前記キメラ非ヒト哺乳動物の由来となる非ヒト哺乳動物の受精卵の遺伝子型を決定する工程2と、
    を順に備えることを特徴とするキメラ非ヒト哺乳動物の由来となる非ヒト哺乳動物の受精卵の遺伝子型決定方法。
  27. 前記非ヒト哺乳動物がマウスである請求項26に記載のキメラ非ヒト哺乳動物の遺伝子型決定方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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CN115772539A (zh) * 2022-11-17 2023-03-10 南京医科大学 一种具有ⅰ型气管发育不全表型的双侧肺脏缺失小鼠模型及其构建方法

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