JP2018190246A - 熱交換器の異常診断方法、異常診断システム、及びその制御装置 - Google Patents

熱交換器の異常診断方法、異常診断システム、及びその制御装置 Download PDF

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Abstract

【課題】熱交換器のように大型で、複雑な系統を有し、高温の流体を流通させる機器において、配管損傷等の異常を軽微な段階で検知し、異常の発生箇所とその要因を早期に特定する。【解決手段】熱媒体の間で熱交換を行う熱交換器における異常を診断するための熱交換器の異常診断方法であって、熱交換器各部に設置されたセンサからのデータに基づいて、熱交換器における熱媒体の熱吸収量を求め、熱交換器を複数のブロックに分け、各ブロック単位で熱媒体の熱吸収量を求め、熱交換器および各ブロック単位での熱吸収量について基準値を用いて評価することを特徴とする熱交換器の異常診断方法。【選択図】図1

Description

本発明は、熱交換器を備えた産業、化学および発電等の各種プラントにおいて、プラントに備えられた熱交換器の熱収支を評価するとともに、熱交換器の異常有無を診断する熱交換器の異常診断方法、異常診断システム、及びその制御装置に関する。
熱交換器は、2種類の流体(熱媒体)の間の伝熱によって熱エネルギーを輸送する機器であり、一方の流体が流れる配管やダクトといった流路の中に、もう一方の流体が流れる配管を設置する。これにより、低温側の流体を加熱したり、液体を蒸発させて蒸気に変換したり、逆に高温の流体を冷却したり、蒸気を凝縮させて液体に変換する。熱交換器にはプレート式、チューブ式および再生式等の型式があり、型式によって流体の配管の配置が異なる。一般に、熱交換器を設計する際に、伝熱させる熱量、熱交換する流体の温度、圧力、流速および相(液体、気体)等の諸条件を考慮して適切な型式が選択される。
熱交換器では、熱交換器で伝熱させる熱量が大きい場合、それぞれの流体を流通する配管同士の接触面積(伝熱面積とよぶ)を大きく設計する必要がある。また、気体を扱う熱交換器は、液体同士の熱交換器と比べて、接触面積を大きく設計する必要がある。これは、気体の単位体積あたりの熱容量が液体より小さいためである。伝熱量が多く、気体を扱う熱交換器は、1つの熱交換器が数十m規模に達し、かつ流体を流す配管を折り曲げるように配置して接触面積を確保している。従って、高温の燃焼ガスや過熱蒸気を扱う熱交換器では、クリープによる変形や破断、摩耗や腐食による配管の減肉といったリスクがある。これは、高温・高圧場と配管材料にとって熱的に厳しい条件下に設置されること、燃焼ガスに粉塵や腐食成分が含まれる場合があること、燃焼ガスや過熱蒸気の流速が局所的に速くなる場合があることによる。
以上のように、大型かつ複雑な形状を有する熱交換器の伝熱性能と信頼性の確保が、プラント全体の安定運用に不可欠となっている。このため、熱交換器の伝熱性能を評価するだけでなく、熱交換機の配管等の損傷を早期に検知する技術が求められている。
例えば、特許文献1には、燃焼排ガスの流路の中に、水および水蒸気を過熱する複数の熱交換器が直列に設置され、熱交換器ごとの伝熱特性を1次元のモデル計算で個別に計算し、計算結果と実測データを比較し、両者の差異を監視することで熱交換器の異常を検知する熱交換器の異常診断方法が記載されている。
また、特許文献2には、プラントで計測する複数のパラメータの相関の推移を監視し、過去の運転履歴を蓄積したデータベースと比較することで、プラントの異常検知を早める異常診断方法が記載されている。また、異常と診断された相関については、関連したパラメータの寄与度に関連付けて予めデータベースに登録した異常現象を抽出する工程を設け、異常現象を特定する異常診断方法が、併せて記載されている。
特許第3690992号公報 特開2017−062730号公報
本発明では、測定点数が限られた実測データを用い、配管形状および系統が複雑かつ大型の熱交換器を扱う産業、化学および発電等の各種プラントにおいて、熱交換器の伝熱性能を従来よりも高精度に評価し、配管等の損傷を軽微な段階で検知するとともに、その損傷箇所と要因を早期に特定しうる熱交換器の異常診断システムの構築を目的としている。このために、1つの熱交換器を複数のブロックに分けて、ブロックごとの伝熱性能(即ち熱吸収量)を評価する。
本発明が解決しようとする課題は、限られた点数で計測した温度、流量(又は流速)、圧力などの実測データを用いて、熱交換器の全体だけでなく、ブロックごとの個別の熱収支を評価することである。既存のプラントでは、運転で必要な最小限の計測点に留めている場合があり、ブロックごとの熱収支を評価するために必要な実測データ(温度、流量、圧力など)が揃わないことが想定される。そこで、不足する実測データの推算が必要となる。
また、熱交換器の配管が損傷する主な要因として、過熱によるクリープ、燃焼ガス中に含まれる粒子等の衝突による摩耗および硫黄やアルカリ成分(例えばNa、K、Clなど)による腐食が挙げられる。このうち、配管の過熱によるクリープについては、上述の熱収支の評価において、当該ブロックの配管の表面温度を推定することで、配管材料の熱履歴の評価が可能になる。この配管の熱履歴を評価する工程と、過熱によるクリープの観点での配管材料の余寿命を評価する工程を、上述した熱交換器の異常診断システムに組み込む必要がある。
本発明が解決しようとする上記の課題に関連して、特許文献1には、1つの熱交換器の全体の伝熱特性を計算によって評価し、計算結果と実測データを比較し、両者の差異を監視する異常診断方法が記載されている。しかし、熱交換器自体を複数のブロックに分割する概念については記載されておらず、熱交換器全体での異常有無の診断を目的としている。
また特許文献2には、プラントで計測する複数のパラメータの相関の推移を監視し、過去の運転履歴を蓄積したデータベースと比較することで、プラントの異常検知を早める異常診断方法と、異常と診断された相関に関連したパラメータの寄与度から異常現象を特定する異常診断方法が、併せて記載されている。しかし、不足する実測データを類推する概念、異常の部位を特定する概念、および材料の余寿命を診断する概念について言及されていない。従って、本特許文献では、実測データを過去に蓄積した運転履歴との比較に留まり、過去の事故事例の再発防止を主たる目的とした発明と考えられる。
このように、特許文献1および特許文献2には、熱交換器のような複雑で大型の機器を複数のブロックに分割し、熱収支などの性能を高精度に評価することによって配管損傷等の異常を軽微な段階で検知し、さらに異常の発生箇所とその要因を早期に特定する概念について言及されていない。また、不足する実測データを推算する概念や、材料の余寿命診断によって異常発生を予測する概念についても、言及されていない。
以上のことから本発明においては、「熱媒体の間で熱交換を行う熱交換器における異常を診断するための熱交換器の異常診断方法であって、熱交換器各部に設置されたセンサからのデータに基づいて、熱交換器における熱媒体の熱吸収量を求め、熱交換器を複数のブロックに分け、各ブロック単位で熱媒体の熱吸収量を求め、熱交換器および各ブロック単位での熱吸収量について基準値を用いて評価することを特徴とする熱交換器の異常診断方法」としたものである。
また本発明は、「熱交換器の入口における熱媒体の温度、熱交換器の出口における熱媒体の温度又は熱媒体の流通配管のメタル温度、および熱媒体の流量或いは熱媒体が循環する系統の場合は補給した熱媒体の流量を用いて熱交換器全体の熱吸収量を求め、熱交換器を分割したそれぞれのブロックについて、ブロック入口の熱媒体の温度、ブロック出口における熱媒体の温度又は熱媒体の流通配管のメタル温度、および熱媒体の流量或いは熱媒体が循環する系統の場合は補給した熱媒体の流量を用いて各ブロックの熱吸収量を求め、熱交換器および各ブロック単位での熱吸収量について基準値を用いて評価することを特徴とする熱交換器の異常診断方法。」としたものである。
また本発明は、「監視対象である熱交換器に設置された各種センサからの実測データを取り込むデータ取得部と、計算機とで構成された熱交換器の異常診断システムであって、計算機は入力部と出力部と演算部と記憶部を主たる構成要素として構成され、入力部に運転員などが入力した入力情報を得て、出力部に画面表示し、記憶部に各種のプログラム、および各種データを記憶し、演算部は、監視対象である熱交換器に設置された各種センサからの実測データを取り込むデータ取得部を用いたデータ入力処理機能と、入力部からの入力情報に基づいて熱交換器の構造をブロックに分割するブロック分割処理機能と、熱交換器全体での伝熱性能を評価する熱交換器全体伝熱性能評価診断処理機能と、分割されたブロックごとの伝熱性能を評価するブロック伝熱性能評価診断処理機能を含むことを特徴とする熱交換器の異常診断システム。」としたものである。
さらに本発明は、「熱交換器の異常診断システムからの情報を用いて、熱交換器を制御する熱交換器の制御装置であって、熱交換器の制御装置は、熱交換器の異常診断システムが与える指針である異常診断信号に基づいて、熱交換器各部の各種弁などを操作するとともに、熱交換器の異常診断システムにおいて、熱交換器のいずれかのブロックの配管の余寿命が短いと診断され、当該ブロックに流入する高温側の流体の温度を低減する指令を出す場合に、これを受けてブロックに流入する高温側の流体の温度を低減すべく各種弁を操作することを特徴とする熱交換器の制御装置。」としたものである。
本発明によれば、過去に発生した異常事象の再発防止だけでなく、想定される様々な異常事象に起因する機器異常の検知、発生箇所およびその要因の早期の特定が可能となる。
本発明の実施例によれば、産業、化学および発電等の各種プラントに備えられた熱交換器のような大型で複雑な系統を有する機器を複数のブロックに分割し、熱吸収量などの機器性能をブロックごとに評価することで、配管損傷等の機器異常を軽微な段階で検知するだけでなく、異常の発生箇所およびその要因を早期に特定することができる。仮に、ブロックごとの機器性能を評価するにあたり、実測データが不足する場合には、他のデータから推算することができる。
さらに本発明の実施例によれば、ブロックごとに評価した熱吸収量から当該ブロック内の流体配管のメタル温度を推算し、このメタル温度の経時変化を監視することができる。配管材料の熱履歴を評価することで、例えば過熱によるクリープの観点で配管材料の余寿命を評価し、クリープによる変形や破断などで想定される異常事象の予測が可能となる。
チューブ式熱交換器の系統と計測点の一例を示す図。 図1のチューブ式熱交換器を流通する熱媒体の出口側の伝熱管群を正面から見た図。 4つのブロックに分けた熱交換器の出口側の温度計測点の一例を示す図。 熱交換器のブロックごとの温度分布の一例を示す図。 熱交換器の全体およびブロックごとの熱吸収量の経時変化の一例を示す図。 6つのブロックに分けた熱交換器の出口側の温度計測点の一例を示す図。 実測データおよび推算値を用いた熱交換器のブロックごとの温度分布の一例を示す図。 実測データおよび推算値を用いた熱交換器の全体およびブロックごとの熱吸収量の経時変化の一例を示す図。 配管材料の寿命診断するデータベースの一例を示す図。 本発明の熱交換器の異常診断システムを実装したプラントの制御装置のモニタ表示画面の一例を示す図。
以下、図示した実施例に基づいて本発明の熱交換器の異常診断方法、異常診断システム、及びその制御装置について説明する。
実施例1では、本発明に係る熱交換器の異常診断方法の基本的な考え方について説明する。
図1に、熱交換器の一例として、チューブ式熱交換器についての系統と計測点の一例を示す。また図2は、図1に示したチューブ式熱交換器を流通する熱媒体の出口側の伝熱管群を正面から見た図であり、出口側で温度監視する計測点の一例を示す。
図1では、熱交換器100のダクト1に、熱媒体2が高温で流入し、伝熱管5内を流通する熱媒体3を高温化する。顕熱が低下した熱媒体2は、ダクト1より流出し、下流側の機器に流入する。熱媒体2の温度は、伝熱管5の前後2箇所で監視される。上流側温度Tf1−inはダクト入口における熱媒体2の温度計11で、下流側温度Tf1−outはダクト出口における熱媒体2の温度計12で、それぞれ計測される。熱媒体2の圧力、流量、組成に関する計測点について本図では図示しないが、熱交換器100の上流側に設置した計測器で計測したデータを用いることができ、あるいはダクト1内に計測器を設置してデータ取得するのが良い。ダクト1の出入り口における熱媒体2の温度と流量、およびダクト1における放熱量が分かれば、熱交換器100の全体での熱媒体3への伝熱量を求めることができる。
ここで、ダクト1内を流れる熱媒体2の流動が乱れていたり、あるいはダクト1外部への放熱の影響で壁面近傍の熱媒体2の温度が低下するために、ダクト1内を流れる熱媒体2の温度分布は、不均一となる場合が多い。さらに熱媒体2に含まれる不純物(例えば粒子、スケール、揮発した無機物が再凝縮したものなど)が伝熱管5に局所的に付着・成長・剥離する場合があり、熱媒体2から熱媒体3への伝熱量も不規則に変動する。また、熱媒体3にも不純物(例えば異物、粒子、スケールなど)を含む場合があり、多くの系統に分岐して小径化し、かつ配管形状も複雑な伝熱管5内で流路抵抗となって熱媒体3の流量が減少すると、当該箇所の伝熱管5が局所的に高温化する可能性も考えられる。
以上のことから、熱交換器100の伝熱性能を把握するだけでなく、異常有無を監視し、異常を早期に検知して異常発生箇所を特定することは、熱交換器100を含むプラント全体の安定運用、補修の期間とコスト削減に不可欠である。
そこで、伝熱管5を流れる熱媒体3の圧力と温度(ガス温度、蒸気温度)と流量を計測し、熱交換器100における熱媒体3の熱吸収量の評価および監視が不可欠である。熱交換器100全体での熱吸収量については、熱媒体3の入口側ヘッダ配管4および熱媒体3の出口側ヘッダ配管6に設置した以下の実測データより求める。
・入口ヘッダ配管における熱媒体3の圧力計7で計測した圧力Pf2
・入口側ヘッダ配管における熱媒体3の流量計8で計測した流量Qf2:(流量測定が困難な場合、流速や差圧等の他の実測データより求めても良い。また熱媒体2が循環する系統の場合、系統に補給される熱媒体2の流量・温度・圧力が必要になる場合もある)
・入口側ヘッダ配管における熱媒体3の温度計9で計測した温度Tf2−in
・出口側ヘッダ配管における熱媒体3の温度計10で計測した温度Tf2−out
さらに、熱媒体3の出口側ヘッダ配管6に近い伝熱管5には、図2に示すような熱媒体3の伝熱管のメタル温度計13〜16が複数設置されており、それぞれメタル温度TM1〜TM4を計測している場合があり、局所的な温度の増減を検知することで、異常有無を検知する取り組みがなされている。本実施例には図示しないものの、可能であれば伝熱管中を流れる熱媒体3の流体温度を計測するほうが望ましいことは自明である。本発明では、これら既存のメタル温度TM1〜TM4を活用し、多数の系統に分岐している伝熱管5を複数のブロックに分けて、ブロックごとの熱媒体3の熱吸収量を評価および監視する。これによりブロックごとの熱吸収量の変化から、伝熱管5の異常を早期に検知するものである。
図3に、図2のブロック分けの一例として、既存の4箇所のメタル温度計13〜16で計測したメタル温度TM1〜TM4を活用すべく、4つのブロックに分けた場合の計測点との位置関係を示す。ブロック1〜4のそれぞれの伝熱管5を流れる熱媒体3の代表温度を、上述のメタル温度TM1〜TM4より熱伝導率計算を基に伝熱計算で求める。なおメタル温度TM1〜TM4は、熱交換器100のダクト1の外部で、かつ伝熱管6の外部表面に設置されている場合が多い。この場合、熱媒体3の代表温度は、理論的には当該ブロックのメタル温度より高くなる。
図4に、図3で分けたブロックごとのメタル温度TM1〜TM4、およびこれらメタル温度から伝熱計算で求めた熱媒体3の代表温度の瞬時値の分布の一例を示す。この図4によれば、熱交換器100のダクト1の側面側のブロック1、4におけるメタル温度TM1、TM4、およびこれらメタル温度から伝熱計算で求めた熱媒体3の代表温度は、熱交換器100のダクト1の中央部のブロック2、3におけるメタル温度TM2、TM3、およびこれらメタル温度から伝熱計算で求めた熱媒体3の代表温度よりも低くなる傾向がある。また図3に示すように、4箇所のメタル温度計13〜16は熱交換器100のダクト1の外部に設置されている事例を示しているので、メタル温度TM1〜TM4は、伝熱管6の内部の熱媒体3の代表温度よりも低くなる事例を示している。
図4では、さらにメタル温度TM1〜TM4、およびこれらメタル温度から伝熱計算で求めた熱媒体3の代表温度の異常の有無を判定するうえでの基準となる基準温度(限界温度)として以下の2つの指標を記載している。指標とする基準温度の1つは、出口側ヘッダ配管における熱媒体2の温度計10で計測した温度Tf2−outであり、他の1つはブロックごとのメタル温度TM1〜TM4の下限値(正常時)である。
これらの指標との比較により、仮に、各ブロックの熱媒体3の代表温度が温度計10で計測した温度Tf2−outより高い場合には、当該ブロックの伝熱管5が高温場に暴露されていることとなり、熱によるクリープ破断に対する伝熱管5の余寿命が短くなっている可能性についての予測および評価が可能となる。
一方、各ブロックのメタル温度TM1〜TM4が、それぞれについての正常時の下限値を下回った場合には、当該ブロックの伝熱管5への付着物成長による熱吸収量の低下、または伝熱管5の損傷で熱媒体3が外部(例えばダクト1内など)に漏洩したことによる熱吸収量の低下が考えられる。前者の付着物成長には、付着物を除去するために圧縮ガスを高速で噴射(スートブローなど)したり、ノッカーなどで振動や打撃を与える対策が有効である。後者の熱媒体3の漏洩に対しては、早期に検知してプラントを停止し、漏洩箇所の補修または伝熱管の交換が必要となる。
図4では、伝熱管5を複数のブロックに分けて、ブロックごとの熱媒体3の温度あるいはメタル温度を、異常の有無を判定するうえでの基準とする指標と共に記述しているが、図5は熱交換器における熱吸収量を評価および監視する観点から記述したものである。図5は、熱交換器全体と各ブロックにおける熱吸収量の時間変化例を、異常の有無を判定するうえでの基準とする指標と共に記述したものである。基準とする指標は、熱交換器全体と各ブロックについての正常時の下限値である。
上記のような異常の徴候と、この徴候に対する想定事象の検知精度を高めるためには、図5に示すような熱吸収量の評価結果を経時変化として把握することが重要である。熱交換器全体の熱吸収量で、プラントの操作条件に応じた当該熱交換器での伝熱特性を評価し、熱交換器としての仕上がりを監視・評価する。このために、過去の運転実績より策定した正常時の下限値を表示し、判定指標に用いると良い。
さらに、ブロックごとの熱吸収量の経時変化も表示する。本実施例では、ブロックごとの熱媒体3の代表温度については、メタル温度の実測値から伝熱計算で求めているものの、ブロックごとの熱媒体3の流量の実測データが無い場合を示している。本実施例では、熱媒体3の配管がヘッダ式で供給および回収されている。このような系統では、まずは伝熱管5を流れる熱媒体3の流量は全て同じと仮定して1本あたりの流量を求め、各ブロックの伝熱管5の本数を乗じることで、各ブロックごとの熱媒体3の流量を推定すると良い。このような手順で求めた各ブロックの熱吸収量の経時変化を表示し、あわせて異常有無を診断する判定指標として、過去の運転実績より策定した正常時の下限値を表示すると良い。熱吸収量が上昇傾向でかつ他のブロックと比較して高い、または熱吸収量が減少傾向でかつ上述の下限値より低い、などの形で熱交換器100の伝熱管5の異常有無をブロックごとに診断できる。
なお、図4、図5において熱媒体3の温度あるいはメタル温度を、異常の有無を判定するうえでの基準とする指標と共に記述するに際し、これらの指標は過去の運転実績や熱負荷に応じて可変に設定されるべきである。このため、指標設定用のデータベースを準備して逐次参照しながら指標を定めるのがよい。データベース内のテーブルは、熱交換器さらにはそのブロックについて、熱負荷ごとに過去の運転実績での温度或は熱吸収量が記憶され、構成されている。またこのテーブルは、熱媒体2に含まれる固体(灰など)の量や成分なども参考情報として記憶されるのがよい。熱負荷ごとの過去の運転実績における温度或は熱吸収量は、正常運転と診断された値が記憶されており、異常の有無を判定するうえで基準とする指標は、正常範囲の上限および下限値が適宜設定される。
以上説明した本発明に係る熱交換器の異常診断方法を適用することで産業、化学および発電等の各種プラントに備えられた大型で複雑な系統の熱交換器の配管損傷等の機器異常を軽微な段階で検知するだけでなく、異常の発生箇所を早期に特定し、異常の要因推定も可能となる。
実施例1においては、熱交換器の異常診断方法に関して、熱交換器を複数のブロックに分割したときに、各ブロックにおいて温度計測ができる(計測器が設置されている)事を前提として説明しているが、一般には温度計測ができないブロックを含むようにブロック分割されることがある。実施例2では、温度計測ができないブロックを含む場合について説明する。
図6に、熱交換器を6つのブロックに分けた場合の出口側の温度計測点の一例を示している。また図7にブロックごとのメタル温度と熱媒体3の代表温度の分布の一例を示している。図8に熱吸収量の経時変化の一例をそれぞれ示している。実施例1は熱交換器を4つのブロックに分割する場合であるが、実施例2は、同じ熱交換器を6つのブロックに分割した場合の実施例である。実施例1と異なる部分について説明する。
まず、図6で各ブロックに対する出口温度の温度計測点について説明する。ブロック1、ブロック3、ブロック4、ブロック6には、熱媒体3の伝熱管のメタル温度計13〜16が設置され、それぞれメタル温度TM1〜TM4を計測している。その一方で、ブロック2とブロック5については、熱媒体3の伝熱管のメタル温度計は設置されていない。従って、ブロックごとのメタル温度を評価するには、ブロック2とブロック5のメタル温度の推算が必要となる。
実施例2の異常診断方法では、この不足するブロック2とブロック5のメタル温度を推算するため、まずブロック2とブロック5の熱吸収量の合計を推算する。この推算方法として、熱交換器全体の熱吸収量から実測データのそろっている他のブロック(ブロック1、ブロック3、ブロック4、ブロック6)の熱吸収量を減ずると良い。次に、ブロック2とブロック5のそれぞれの熱吸収量の推算には、例えば、他のブロックの熱吸収量の分布から内挿または外挿で策定した近似式を用いると良い。このような推算で求めたブロック2、ブロック5の熱吸収量を用い、実施例1記載の方法で求めた各ブロックを流れる熱媒体3の流量、入口側ヘッダ配管における熱媒体3の温度計で計測した温度Tf2−inを熱媒体3の流入温度とすれば、各ブロック出口における熱媒体3の温度の推算が可能になる。
これら推算において、各ブロック出口における熱媒体3の温度分布を示す図7、熱吸収量の経時変化を示す図8を用いると良い。なお図7においてブロック2の熱媒体3の温度、メタル温度は、ブロック1の熱媒体3の温度、メタル温度とブロック3の熱媒体3の温度、メタル温度の中間値として内挿により求めたものであり、ブロック5の熱媒体3の温度、メタル温度は、ブロック4の熱媒体3の温度、メタル温度とブロック6の熱媒体3の温度、メタル温度の中間値として内挿により求めたものである。また図8において、推算により求められたブロック2、ブロック5の熱吸収量の時間推移が点線で、その基準とする指標とともに、図示されている。
なお、本実施例では、実測データが不足する場合として、計測するセンサが非設置の場合について説明したが、設置したセンサ自身が計器異常となった場合も同様の手法で推算すると良い。
また、ブロックごとに評価した熱吸収量から、当該ブロック内の伝熱管のメタル温度の最高値を推算することも可能である。このメタル温度の経時変化から熱履歴を評価し、例えば図9に示すような過熱によるクリープの観点で配管材料の余寿命を評価することも可能である。なお図9においては、温度毎の応力(縦軸)と破断時間(横軸)の関係を示しており、実施例1、2により求めたブロックごとのメタル温度について、当該ブロックにおける過去の応力(製造時の機械応力や、運転時の熱応力)との関係で、当該ブロックにおけるメタルが破断に至るまでの破断時間を推定することが可能である。
以上のように、本発明の熱交換器の診断方法を用いた異常診断システムを適用することで産業、化学および発電等の各種プラントに備えられた大型で複雑な系統の熱交換器の配管損傷等の機器異常を軽微な段階で検知するだけでなく、異常の発生箇所を早期に特定し、異常の要因推定も可能となる。
特に、不足する実測データを推算で求めることでブロックの分割数を多くすると、異常検知の際の解像度を高められる。また、各ブロックの熱吸収量より推算した当該ブロック内の伝熱管の熱履歴も評価することで、例えば過熱によるクリープの観点で配管材料の余寿命評価が可能となる。クリープによる変形や破断などで想定される異常事象も予測することで、機器の予防保全も可能となる。
実施例3では、本発明の熱交換器の異常診断方法を用いた異常診断システムを構築するに不可欠な要素である出力部の構成について説明する。ここで述べる出力部はモニタの画面であり、運転員がモニタ画面に表示された表示内容を判断して、入力部から操作を行いモニタ画面に反映し、あるいは、異常診断システムにおける各種判断に寄与せしめる用途のものである。ここでは、ブロックごとに求めたメタル温度や熱媒体3の温度、あるいは熱吸収量などの各種状態量をモニタ画面に表示することについて説明する。
図10は、実施例1、実施例2に記載した熱交換器の異常診断システムを実装したプラントの制御装置において、熱交換器の性能と異常有無を監視するモニタ画面の一例を示す。
図10のモニタ画面表示例では、左右、中央、上下に6種類の表示画面例を示しているが、このうち上段の3画面及び中央下段の表示例は、実施例1、実施例2で説明済みであるので、表示内容の説明は割愛する。
図10の左下の画面例では、熱交換器の診断結果を文字表記する。例えば熱媒体ごとの運転状況、ブロックごとの熱吸収量の評価状況、伝熱管の健全性、総合評価と今後の運用上の提案内容などが可視化されて表示される。図10の右下の画面例では、リアルタイムデータ、蓄積データ及び伝熱管の余寿命診断結果などが、表形式にして対比されて表示される。なお、これらの表示画面は、単一画面として表示されることも、複数画面を併記しながら表示されることも可能であり、その時に利用者に伝えたい内容が熱交換器本体、内部状態、各種の評価結果などと共に総合的に把握可能な形式で適宜表示されるように工夫されるのがよい。
例えば、熱交換器の性能と異常有無を監視する画面には、熱交換器の系統(図10左上)と計測点の概略図(図10中央上)、熱交換器の中で分けたブロックを示すのがよい。前記の計測点で計測した圧力、温度、流量(または流速)等の実測データと、計測機器の非設置または計測機器の不良等で計測不可となった箇所のデータを推算により求めたデータを、一覧表として示すのがよい。
またこれら実測および推算で得たデータをもとに、熱交換器の全体および各ブロックの熱吸収量を求め、経時変化で示す(図10右上)のが有効である。熱吸収量の変化をブロックごとに把握することで、伝熱管への付着物成長や伝熱管の損傷といった異常事象に起因する伝熱性能の低下傾向を早期に検知し、異常事象が発生したブロックを特定する。異常が軽微な段階で検知し、異常が発生した場所を特定することで、熱交換器の補修コストを削減するとともに、プラントの稼動率を向上させる。
また伝熱管への付着物成長や伝熱管の損傷といった異常事象の検知精度を高めるため、運転履歴データベースより抽出した過去の運転データを活用するのがよい。このため、熱交換器の性能と異常有無を監視する画面(図10左下)には、運転履歴データベースより抽出した、運転状況が類似の実測および推算データおよび正常範囲を明示すると良い。運転履歴データベースより抽出した実績値と、リアルタイムの実測および推算で得たデータとを比較し、正常または異常の診断結果を表示すると良い。
さらに、伝熱管の損傷を未然に防ぐには、伝熱管の余寿命診断が有効である。伝熱管の配管材料データベースと照合して診断した伝熱管の余寿命、そして上記のデータおよび余寿命から伝熱管の損傷リスクの高いブロックを抽出し、この抽出されたブロックの伝熱管を保護する対策案を画面(図10右下)に表示すると良い。各ブロックの伝熱管の余寿命を均等化し、伝熱管の損傷前、すなわち熱交換器で異常発生する前にプラントを停止させることで、伝熱管の損傷で発生する2次被害も予防する。また、本実施例では、過熱によるクリープ破談を想定し、図9に示すような時間と応力と温度についての伝熱管の配管材料データベースを参照した診断結果の例(図10左下)を示しているが、腐食や磨耗といった他の想定事象に対する材料のデータベースも必要に応じて併用すると良い。
このように熱交換器の異常診断システムのモニタ画面には、熱交換器の系統と計測点、計測点で計測したデータ、計測機器を不設置或いは計測機器の不良で計測不足となった箇所を計測データより推算したデータ、運転履歴データベースより抽出した運転状況が類似の際の実測および推算で得たデータ、伝熱管の配管材料データベースと照合して診断した伝熱管の余寿命、そして上記のデータおよび余寿命から伝熱管の損傷リスクの高いブロックを抽出し、この抽出されたブロックの伝熱管を保護する対策案を表示することができる。
以上のように、リアルタイムの運転データを運転履歴データベースに蓄積した正常時のデータと比較することで、熱交換器の異常を早期に検知し、またブロック単位で異常発生箇所を特定する。また、リアルタイムの運転データの経時変化を配管材料のデータベースと照合し、配管材料の余寿命として診断することで、配管材料の損傷などの異常発生のリスクを低減するとともに、異常発生時の要因特定も可能となるプラントの制御システムを提供する。なお、本実施例では、熱交換器を対象とした異常診断システムおよびこのシステムを実装したプラントの制御装置について示したが、熱を扱う他の機器(例えば燃焼炉、反応器、加熱器、攪拌槽など)にも適用可能である。
以上、実施例1、実施例2では本発明に係る熱交換器の異常診断方法の考え方について説明し、実施例3では本発明に係る熱交換器の異常診断システムにおける主要な要素であるモニタ画面の表示について説明した。これに対し実施例4では、熱交換器の異常診断システムの具体的な構成事例について説明する。
熱交換器の異常診断システムは、監視対象である熱交換器に設置された各種センサからの実測データを入力するデータ入力部と、計算機とで構成される。計算機は入力部と出力部と演算部と記憶部を主たる構成要素として構成されており、入力部と出力部によりヒューマンインターフェイスを形成する。
入力部は、キーボード、タッチパネル、トラッカーなどの入力手段で構成され、運転員などが入力手段を操作することで、計算機に対して適宜運転員からの入力情報を与える。で力部は実施例3で述べたモニタであり、図10のような内容を表示可能である。記憶部は、演算装置が実行する各種のプログラムを記憶するプログラム記憶部、あるいは演算装置における各種処理の中間段階あるいは終了時における各種データを記憶するデータ記憶部、さらには各種データベースを含む概念である。各種データベースの中には、熱媒体3の代表温度の異常の有無を判定するうえでの基準となる基準温度(限界温度)などを含んでいる。
演算部は、入力部から運転員などによる入力情報を適宜得て、プログラム記憶部から対応するプログラムを読みだして、そのプログラム内容に従って各種処理を実行する。各種処理は、データ記憶部や各種データベースの参照および保存であり、出力部のモニタ画面の形成などである。以下においては、演算部の処理内容を処理機能として説明する。
演算部における複数の処理機能のうち、最初に実行されるのは、監視対象である熱交換器に設置された各種センサからの実測データを入力するデータ入力部を用いたデータ入力処理機能である。データ入力処理機能においては、一般には自動的に所定周期ごとに各種センサからの実測データを入力し、適宜加工して各種データベースに蓄積保存する。この時に入力するデータは、図1、図2に例示する熱交換器各部のセンサ(7−16)からの実側データである。
演算部において次に実行される処理機能は、ブロック分割処理機能である。ブロック分割処理は、入力部の入力情報(例えば運転員指示など)に基づいて例えば図1、図2の熱交換器の構造をモニタ画面に図示し、モニタ画面上で運転員にブロック分割処理を促すことで実行される。ブロック分割処理後には、図3、図6の画面を表示するのがよい。以上のデータ入力処理機能とブロック分割処理機能は、以下に述べる診断処理の前処理的な機能であり、実質的には以下の機能により診断処理を実施する。
最初の診断処理は、熱交換器全体での伝熱性能(即ち熱吸収量)を評価する工程である熱交換器全体伝熱性能評価診断処理機能である。この具体的な内容については、実施例1などで説明済みであるので、ここでの説明を割愛するが、熱交換器全体の熱吸収量を評価するために、以下の3種類の実測データを用いる。この2種類の熱媒体となる流体のうち、少なくとも1方についての実測データ取得が不可欠である。これらのデータは、データ入力部により確保され、データベースなどに記憶されているものとする。
・熱交換器の入口における流体の温度Tf2−in
・熱交換器の出口における流体の温度Tf2−out又は熱交換器の出口における、流体が流れる配管のメタル温度
・熱交換器内を流通する流体の総流量Qf2又は流体の補給流量(流体が循環する系統構成の場合)
次の診断処理は、ブロックごとの伝熱性能を評価する工程であるブロック伝熱性能評価診断処理機能である。ここでは、熱交換器全体での伝熱性能(即ち熱吸収量)に加え、1つの熱交換器を複数のブロックに分けて、ブロックごとの伝熱性能を評価する工程を設ける。なおこの段階では先に述べたブロック分割処理機能は実行済みである。
ブロック伝熱性能評価診断処理機能は、ブロック分割処理機能により分割された結果として、全てのブロックにおける実測データが計測データとして存在するか否かを判定する。ブロックにおける実測データが計測データとして存在する場合には、熱交換器全体での伝熱性能(即ち熱吸収量)を求めたと同様にして、当該ブロックでの伝熱性能(即ち熱吸収量)を求める。この具体的な内容は、実施例1などで説明済みであるが、1つの熱交換器を複数のブロックに分けて、ブロックごとの熱吸収量を評価するために、上述した熱交換器全体の評価と同様に、以下3種類の実測データを用いる。2種類の熱媒体となる流体のうち、少なくとも1方についての実測データ取得が不可欠である。
・各ブロック入口における流体の温度
・各ブロック出口における流体の温度又は各ブロック出口における、流体が流れる配管のメタル温度
・各ブロックを流通する流体の総流量又は流体の補給流量(流体が循環する場合)。
なお各ブロックの伝熱性能を評価するにあたり、温度、流量(又は流速)、圧力等の実測データが不足するブロックが存在する場合には、他のブロックなどの実測データを用いて推算する工程である不明ブロックデータ推算処理機能を実行する。なお実測データが不足する場合として、計測するセンサが設置されていない場合だけでなく、設置したセンサ自身が計器異常となった場合も含めるのがよい。
また、不明ブロックデータ推算処理機能における不足する実測データの推算方法としては、まず当該ブロックの熱吸収量を推算する。当該ブロックの熱吸収量の推算方法として、例えば熱交換器全体の熱吸収量から他のブロックの熱吸収量を引く方法、および近隣のブロックの熱吸収量を内挿又は外挿する方法などを用いる。推算した当該ブロックの熱吸収量を用い、不足する実測データを逆問題として推算する。
さらに、ブロックごとの熱吸収量から、当該ブロック内の流体配管のメタル温度を逆問題として推算する工程であるメタル温度推算処理機能を設ける。
またモニタ画面形成処理機能により、モニタ画面を形成する。モニタ画面形成処理機能により形成されたモニタ画面の一例は、図10のようなものであるが、伝熱性能を評価するうえで重要なのは単なるトレンドではなく、熱媒体3の代表温度の異常の有無を判定するうえでの基準となる基準温度(限界温度)などとの対比表示により、運転員により明確に現状を認識せしめることであり、このためにモニタ画面形成処理機能では、データベースを参照して該当する基準温度(限界温度)を抽出して、モニタ画面上に合わせて表示する。これにより運転員をして、このメタル温度の経時変化を監視することで配管材料の熱履歴を評価し、例えば過熱によるクリープの観点で配管材料の余寿命を評価せしめることを可能とする。
実施例5は、実施例4の熱交換器の異常診断システムが与える指針に基づいて熱交換器を制御する熱交換器の制御装置について説明する。
熱交換器の制御装置は、熱交換器の異常診断システムが与える指針である異常診断信号に基づいて、熱交換器各部の各種弁などを操作する。各種弁は、熱媒体の流量や、圧力や温度を制御するための制御弁や開閉弁である。異常診断信号は、熱吸収量やメタル温度がその基準値に対して、過度に大きいあるいは過度に小さいことを示す信号であり、この状態の継続により熱交換器の運転を不安定にし、さらには運転継続不能とすることを予見する信号である。
熱交換器の異常診断システムにおいて、熱交換器のいずれかのブロックの配管の余寿命が短いと診断され、当該ブロックに流入する高温側の流体の温度を低減する指令を出す場合に、熱交換器の制御装置は、これを受けてブロックに流入する高温側の流体の温度を低減すべく各種弁を操作する。
複数の熱交換器を直列に備える熱交換器であり、そのいずれかのブロックの配管の余寿命が短いと診断された場合に、熱交換器の制御装置は、当該ブロックの上流側の熱交換器に噴射するブローの間隔を短くして配管の汚れを軽減し、上流側の熱交換器の熱吸収量を高めることで、当該ブロックに流入する高温側の流体の温度を低減する。
また熱交換器の制御装置は、熱媒体が流通する配管材料が、過熱によるクリープで変形あるいは破断する前にプラントの熱負荷を低減するか或いはプラントを停止させる。
本発明の異常診断システムは、熱交換器を備えた産業、化学および発電等の各種プラントにおいて、熱交換器をはじめとして燃焼炉や反応器など、内部に高温の流体が流通する機器に適用可能である。
1:ダクト、2:熱媒体1、3:熱媒体2、4:熱媒体2の入口側ヘッダ配管、5:伝熱管、
6:熱媒体2の出口側ヘッダ配管、7:入口ヘッダ配管における熱媒体2の圧力、8:入口側ヘッダ配管における熱媒体2の流量、9:入口側ヘッダ配管における熱媒体2の温度計、10:出口側ヘッダ配管における熱媒体2の温度計、11:ダクト入口における熱媒体1の温度計、12:ダクト出口における熱媒体1の温度計、13:熱媒体2の伝熱管のメタル温度計1、
14:熱媒体2の伝熱管のメタル温度計2、15:熱媒体2の伝熱管のメタル温度計3、
16:熱媒体2の伝熱管のメタル温度計4、100:熱交換器

Claims (14)

  1. 熱媒体の間で熱交換を行う熱交換器における異常を診断するための熱交換器の異常診断方法であって、
    前記熱交換器各部に設置されたセンサからのデータに基づいて、熱交換器における熱媒体の熱吸収量を求め、前記熱交換器を複数のブロックに分け、各ブロック単位で熱媒体の熱吸収量を求め、前記熱交換器および各ブロック単位での熱吸収量について基準値を用いて評価することを特徴とする熱交換器の異常診断方法。
  2. 熱交換器の入口における熱媒体の温度、前記熱交換器の出口における熱媒体の温度又は熱媒体の流通配管のメタル温度、および熱媒体の流量或いは熱媒体が循環する系統の場合は補給した熱媒体の流量を用いて熱交換器全体の熱吸収量を求め、
    前記熱交換器を分割したそれぞれのブロックについて、ブロック入口の熱媒体の温度、ブロック出口における熱媒体の温度又は熱媒体の流通配管のメタル温度、および熱媒体の流量或いは熱媒体が循環する系統の場合は補給した熱媒体の流量を用いて各ブロックの熱吸収量を求め、
    前記熱交換器および各ブロック単位での熱吸収量について基準値を用いて評価することを特徴とする熱交換器の異常診断方法。
  3. 請求項2に記載の熱交換器の異常診断方法であって、
    熱回収部で分割した複数の前記ブロックのそれぞれについて、熱吸収量を評価するための熱媒体の温度、流量或いは流速等の実測データが不足する場合に、他のブロックの実測データを用いて当該ブロックで不足するデータを推算することを特徴とする熱交換器の異常診断方法。
  4. 請求項3に記載の熱交換器の異常診断方法であって、
    熱交換器全体の熱吸収量から、実測データが揃っているブロックの熱吸収量の総和を引くことで、実測データが不足するブロックの熱吸収量を推算することを特徴とする熱交換器の異常診断方法。
  5. 請求項3に記載の熱交換器の異常診断方法であって、
    熱交換器全体の熱吸収量から、実測データが揃っているブロックの熱吸収量の分布を内挿または外挿して、実測データが不足するブロックの熱吸収量を推算することを特徴とする熱交換器の異常診断方法。
  6. 請求項2から請求項5のいずれか1項に記載の熱交換器の異常診断方法であって、
    熱回収部で分けたブロックごとの熱吸収量の分布を正常時の分布と比較し、ブロックごとに機器の異常有無を診断することを特徴とする熱交換器の異常診断方法。
  7. 請求項2から請求項6のいずれか1項に記載の熱交換器の異常診断方法であって、
    熱回収部で分けたブロックごとの熱吸収量から、それぞれのブロックにおける熱媒体が流通する配管のメタル温度を推算し、このメタル温度の経時変化より配管材料の熱履歴を評価し、この配管材料の余寿命を評価することを特徴とする熱交換器の異常診断方法。
  8. 監視対象である熱交換器に設置された各種センサからの実測データを取り込むデータ取得部と、計算機とで構成された熱交換器の異常診断システムであって、
    計算機は入力部と出力部と演算部と記憶部を主たる構成要素として構成され、
    入力部に運転員などが入力した入力情報を得て、出力部に画面表示し、記憶部に各種のプログラム、および各種データを記憶し、
    前記演算部は、監視対象である熱交換器に設置された各種センサからの実測データを取り込むデータ取得部を用いたデータ入力処理機能と、前記入力部からの入力情報に基づいて熱交換器の構造をブロックに分割するブロック分割処理機能と、熱交換器全体での伝熱性能を評価する熱交換器全体伝熱性能評価診断処理機能と、分割されたブロックごとの伝熱性能を評価するブロック伝熱性能評価診断処理機能を含むことを特徴とする熱交換器の異常診断システム。
  9. 請求項8に記載の熱交換器の異常診断システムであって、
    演算部は、各ブロックの伝熱性能を評価するにあたり、実測データが不足するブロックが存在する場合には、他のブロックなどの実測データを用いて推算する不明ブロックデータ推算処理機能を備えていることを特徴とする熱交換器の異常診断システム。
  10. 請求項9に記載の熱交換器の異常診断システムであって、
    不明ブロックデータ推算処理機能は、熱交換器及び分割されたブロックにおける実測データを用いてブロックの不足するデータを推算することを特徴とする熱交換器の異常診断システム。
  11. 請求項8から請求項10のいずれか1項に記載の熱交換器の異常診断システムであって、
    前記出力部には、熱交換器全体での伝熱性能、および分割されたブロックごとの伝熱性能が、これらの基準値と共に画面表示されることを特徴とする熱交換器の異常診断システム。
  12. 請求項8から請求項11のいずれか1項に記載の熱交換器の異常診断システムからの情報を用いて、熱交換器を制御する熱交換器の制御装置であって、
    熱交換器の制御装置は、熱交換器の異常診断システムが与える指針である異常診断信号に基づいて、熱交換器各部の各種弁などを操作するとともに、熱交換器の異常診断システムにおいて、熱交換器のいずれかのブロックの配管の余寿命が短いと診断され、当該ブロックに流入する高温側の流体の温度を低減する指令を出す場合に、これを受けてブロックに流入する高温側の流体の温度を低減すべく各種弁を操作することを特徴とする熱交換器の制御装置。
  13. 請求項12に記載の熱交換器の制御装置であって、
    熱交換器は、複数の熱交換器を直列に備える熱交換器であり、そのいずれかのブロックの配管の余寿命が短いと診断された場合に、当該ブロックの上流側の熱交換器に噴射するブローの間隔を短くして配管の汚れを軽減し、上流側の熱交換器の熱吸収量を高めることで、当該ブロックに流入する高温側の流体の温度を低減することを特徴とする熱交換器の制御装置。
  14. 請求項12に記載の熱交換器の制御装置であって、
    熱媒体が流通する配管材料が、過熱によるクリープで変形あるいは破断する前にプラントの熱負荷を低減するか或いはプラントを停止させることを特徴とする熱交換器の制御装置。
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