以下、本発明を適用した画像形成装置として、電子写真方式でカラートナー像を形成するカラープリンタ(以下、単にプリンタという)の一実施形態について説明する。なお、本発明は、その適用分野がプリンタに限定されるものではなく、複写機、ファクシミリ、複写機能及びFAX機能を有する複合機などにも適用が可能である。
まず、このプリンタの基本的な構成について説明する。図1は、実施形態に係るプリンタを示す概略構成図である。このプリンタは、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、黒(K)のトナー像を作像するためのY,M,C,K用の感光体1Y,1M,1C,1Kを筐体内に備えている。感光体1Y,1M,1C,1Kは、金属製の素管を基体とするドラム状のものであるが、ループ内側に配設された複数の張架ローラによって張架される無端ベルト状の感光体を用いてもよい。
感光体1Y,1M,1C,1Kの上方には、転写ユニットが配設されている。この転写ユニットは、無端状の中間転写ベルト3のループ内に、駆動ローラ4、テンションローラ5、一次転写上流ローラ6、二次転写上流ローラ7、一次転写ローラ11Y,11M,11C,11Kなどを有している。また、中間転写ベルト3のループ外に、ニップ形成ローラ17、ベルトクリーニング装置20、トナー付着量センサー23などを有している。
図中反時計回り方向に回転駆動される駆動ローラ4の回転に伴って、図中矢印A方向に無端移動せしめられる中間転写ベルト3は、ポリイミド(PI)製のベルト基体だけからなる単層構造のベルトである。中間転写ベルト3の材料としては、PIの他に、PC、PAI、PPS、PEI、PEEK等を用いることも可能である。
中間転写ベルト3としては、厚みが20〜200[μm]、好ましくは80[μm]程度のものが用いられている。中間転写ベルト3の表面抵抗率は、1×10E9〜1×10E13[Ω/□]、好ましくは1×10E11[Ω/□]程度である(三菱化学製ハイレスターUP MCP HT45にて、印加電圧500Vの条件で測定した値)。また、中間転写ベルト3の体積抵抗率は、1×10E6〜1×10E12[Ω・cm]、好ましくは1×10E9[Ω・cm]程度である(三菱化学製ハイレスターUP MCP HT45にて、印加電圧100Vの条件で測定した値)。中間転写ベルト3の抵抗値を調整するための抵抗調整材としては、カーボンを用いることが望ましい。
感光体1Y,1M,1C,1Kは、中間転写ベルト3のおもて面に対して下方から当接してY,M,C,K用の一次転写ニップを形成している。感光体1Y,1M,1C,1Kとの間に中間転写ベルト3を挟み込んでいる一次転写ローラ11Y,11M,11C,11Kには、トナーの帯電極性とは逆極性の一次転写バイアスが印加される。
ニップ形成ローラ17は、中間転写ベルト3の周方向における全域のうち、駆動ローラ4に対する掛け回し箇所にベルトおもて面側から当接して二次転写ニップを形成している。ニップ形成ローラ17は電気的に接地されているのに対し、駆動ローラ4は、二次転写電源100から出力される重畳電圧からなる二次転写バイアスが印加される。二次転写電源100の出力端子は、駆動ローラ4の芯金に接続されている。駆動ローラ4の芯金の電位は、二次転写電源100からの出力電圧値とほぼ同じ値になる。
重畳バイアスを駆動ローラ4に印加しつつ、ニップ形成ローラ17を接地する代わりに、重畳バイアスをニップ形成ローラ17に印加しつつ、駆動ローラ4の芯金を接地してもよい。
駆動ローラ4は、ステンレス等からなる芯金に抵抗層を形成したものからなり、次のような特性を有している。即ち、外径は約24[mm]であり、芯金に半導電層が被覆されている。半導電層の材質としては、ポリカーボネート、フッ素系ゴム、シリコン系ゴムにカーボンや金属錯体等の導電粒子を分散させたもの、あるいはNBRやEPDM等のゴム、NBR/ECO共重合のゴム、ポリウレタン製の半導電性ゴムなどを例示することができる。半導電層の体積抵抗は106〜1012[Ω]、望ましくは107〜109[Ω]である。また、ゴム硬度(ASKER−C)が20〜50度の発泡タイプの材料を用いてもよいし、ゴム硬度が30〜60度のゴムタイプの材料を用いてもよいが、ベルト駆動を確実に行うために摩擦係数の高い半導電ゴムを薄層で形成したものが望ましい。
感光体1Y,1M,1C,1Kの表面上にYトナー像,Mトナー像,Cトナー像,Kトナー像(黒色トナー像)を作像する色ごとの構成は互いに同じであるので、Kトナー像を作像する構成だけについて説明する。図中時計回り方向に回転駆動される感光体1Kの表面(周面)は、除電ランプからの光照射を受けて除電される。そして、帯電装置8Kによってマイナス極性に一様に帯電せしめられた後、光書込装置9から出射される光変調されたレーザービームLの照射を受けた部分が電位を減衰させて静電潜像を担持する。このプリンタにおいては、光書込装置9として、光源から発したレーザービームを回転するポリゴンミラーで反射させて主走査方向に偏向せしめる方式のものを用いている。かかる方式のものに代えて、LEDアレイの複数のLEDから発した光のそれぞれによって光書込するものを用いてもよい。
感光体1Kの表面における静電潜像の箇所には、現像装置の現像スリーブ10Kの表面に担持される現像剤(磁性キャリア及びトナーの混合物)によってKトナーが付着せしめられる。これにより、静電潜像が現像されてKトナー像になる。なお、現像装置は、回転駆動される複数のスクリュー部材を具備する循環搬送路で搬送している現像剤を、循環搬送路における現像スリーブ10Kとの対向位置にて、図中時計回り方向に回転する現像スリーブ10Kの表面に汲み上げる。そして、汲み上げた現像剤を現像スリーブ10Kの回転に伴って感光体1Kとの対向位置に搬送して現像に寄与させた後、現像スリーブ10Kの回転に伴って循環搬送路との対向位置まで搬送したときにスリーブ表面から離脱させて循環搬送路に戻す。
循環搬送路内における所定の位置を通過する現像剤は、透磁率センサーからなるトナー濃度センサーによってトナー濃度が検知される。このトナー濃度の検知結果は、後述する制御部に送られる。制御部は、Y,M,C,Kの各色のそれぞれについて、トナー濃度センサーから送られてくるトナー濃度の検知結果が閾値を下回った場合に、トナー補給装置を所定時間駆動して現像装置にトナーを補給することで、現像剤のトナー濃度を回復させる。Y,M,C,K用のトナー補給装置は、トナーボトル25Y,25M,25C,25K内のYトナー,Mトナー,Cトナー,Kトナーを、Y,M,C,K用の現像装置内に送り込むものである。
K用の一次転写ニップにおいて、一次転写バイアスが印加される一次転写ローラ11Kと、感光体1Kの静電潜像との間には、一次転写電界が形成される。感光体1Kの表面上に作像されたKトナー像は、K用の一次転写ニップ内において、一次転写電界やニップ圧の作用により、中間転写ベルト3のおもて面に一次転写される。
一次転写ローラ11Y,11M,11C,11Kは、金属製の芯金と、この表面上に固定された導電性のスポンジ層とを具備する弾性ローラからなる。その外径は16[mm]程度、芯金径は10[mm]程度である。接地された外径が30[mm]の金属ローラを10[N]の力で前述のスポンジ層に押し当てた状態で、芯金に1000[V]の電圧を印加したときに流れる電流値Iに基づいて求められるスポンジ層の抵抗値Rは、3×107[Ω]である。その抵抗値Rは、電流値Iと、電圧値(1000V)とを、オームの法則の式(R=V/I)に代入することで求められる。
一次転写ローラ11Y,11M,11C,11Kに代えて、転写チャージャーや、転写ブラシなどを採用してもよい。
K用の一次転写ニップを通過した後の感光体1Kの表面には、中間転写ベルト3に一次転写されなかった転写残トナーが付着している。この転写残トナーは、ドラムクリーニング装置のクリーニングブレード12Kによって感光体1Kの表面から掻き取られる。
Y,M,Cにおいても、Kと同様にして、感光体1Y,1M,1C上に作像されたYトナー像,Mトナー像,Cトナー像が中間転写ベルト3のおもて面に一次転写される。
各色トナー像のうち、二色以上のトナー像を形成するフルカラーモードでは、感光体1Y,1M,1C,1Kの全てを中間転写ベルト3に当接させてY,M,C,K用の一次転写ニップを形成する。これに対し、Kトナー像だけを形成するモノクロモードでは、Y,M,C用の一次転写ローラ11Y,11M,11Cの移動によって中間転写ベルト3の張架姿勢を変化させて、中間転写ベルト3をY,M,C用の感光体1Y,1M,1Cから離間させる。これにより、K用の感光体1Kだけを中間転写ベルト3に当接させてK用の一次転写ニップだけを形成する。そして、Y,M,C用の感光体1Y,1M,1Cや、その周囲の現像装置などは、駆動を停止させる。
筐体内の下部には給紙装置14が配設されている。この給紙装置14は、給紙ローラ15の回転駆動によって、例えば普通紙などからなる記録シートPを図中矢印B方向に送り出す。送り出された記録シートPは、レジストローラ対16のレジストニップに先端を突き当ててスキューを補正した後、レジストローラ対16の駆動により、中間転写ベルト3上のトナー像に同期するタイミングで二次転写ニップに送られる。
二次転写ニップ内では、二次転写電界やニップ圧の作用により、中間転写ベルト3上のトナー像が記録シートPの表面に二次転写される。その後、二次転写ニップを通過した記録シートPは、二次転写ニップの上方に配設された定着装置18に送られる。
定着装置18は、ハロゲンランプ等の発熱源を有する定着ローラ18aと、これに向けて押圧される加圧ローラ18bとの当接によって定着ニップを形成している。定着装置18に送られた記録シートPは、定着ニップを通過する際に、加熱及び加圧される。この加熱及び加圧によってトナーを軟化させたトナー像は、記録シートPの表面に定着せしめられる。
定着装置18を通過した記録シートPは、排紙ローラ対19を経由した後、機外へと排出される。
二次転写ニップを通過した後の中間転写ベルト3のおもて面は、記録シートPに二次転写されなかった転写残トナーを付着させている。そして、中間転写ベルト3の無端移動に伴って、ベルトクリーニング装置20との対向位置に進入する。
ベルトクリーニング装置20は、片持ち支持された状態で自由端を中間転写ベルト3のおもて面に当接させているクリーニング部材21や、廃トナーコイル22などを有している。そして、クリーニング部材21によって中間転写ベルト3のおもて面から掻き取った転写残トナーを、廃トナーコイル22の回転駆動によってベルトクリーニング装置20から排出して廃トナーボトルに落とし込む。
なお、このプリンタは、所定のタイミングで次のような作像条件調整処理を実施する。即ち、中間転写ベルト3にY,M,C,Kのテストトナー像を形成する。そして、それぞれのテストトナー像のトナー付着量をトナー付着量センサー23によって検知した結果に基づいて、所定のトナー付着量になるように、現像スリーブに印加する現像バイアスなどの作像条件を調整する処理である。これにより、Yトナー像,Mトナー像,Cトナー像,Kトナー像の画像濃度を長期間に渡って安定化させることができる。この作像条件調整処理を実施するときには、テストトナー像をニップ形成ローラ17の表面に二次転写しないように、駆動ローラ4にトナーの帯電極性とは逆極性のバイアス(以下、逆バイアスという)を印加する。トナー付着量センサー23は、反射型光学センサーからなる。
また、このプリンタでは、青色の画像部分をCトナー像とMトナー像との二色重ね合わせによって再現する。また、赤色の画像部分をYトナー像とMトナー像との二色重ね合わせによって再現する。また、緑色の画像部分をYトナー像とCトナー像との二色重ね合わせによって再現する。
図2は、二次転写電源100の電気回路の要部を、制御部200、入力操作部501、環境センサー500、中間転写ベルト3、駆動ローラ4、及びニップ形成ローラ17とともに示すブロック図である。二次転写電源100は、直流電源110、着脱可能に構成された交流電源140などを有している。
直流電源110は、中間転写ベルト3の表面上のトナーに対して二次転写ニップ内でベルト側から記録シート側に向かう静電気力を付与するための直流電圧(直流成分)を出力するための電源である。そして、直流出力制御部111、直流駆動部112、直流電圧用トランス113、直流出力検知部114、出力異常検知部115、電気接続部221などを具備している。
交流電源140は、二次転写ニップ内に交番電界を形成するための交流電圧(交流成分)を出力する電源である。そして、交流出力制御部141、交流駆動部142、交流電圧用トランス143、交流出力検知部144、除去部145、出力異常検知部146、電気接続部242と、電気接続部243などを具備している。
制御部200は、直流電源110及び交流電源140からの出力を制御することが可能である。CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、及びRAM(Random Access Memory)などを有している。
直流出力制御部111には、制御部200から出力された、直流電圧の出力の大きさを制御するためのDC_PWM信号が入力される。更に、直流出力検知部114によって検知された直流電圧用トランス113の出力値も入力される。そして、直流出力制御部111は、入力されたDC_PWM信号のデューティー比及び直流電圧用トランス113の出力値に基づいて、次のような制御を行う。即ち、直流電圧用トランス113の出力値をDC_PWM信号で指示された出力値にするように、直流駆動部112を介して直流電圧用トランス113の駆動を制御する。
直流駆動部112は、直流出力制御部111からの制御に従って、直流電圧用トランス113を駆動する。また、直流電圧用トランス113は、直流駆動部112によって駆動され、負極性の直流の高電圧出力を行う。なお、交流電源140が接続されていない場合には、電気接続部221と駆動ローラ4とがハーネス301によって電気的に接続されるので、直流電圧用トランス113は、ハーネス301を介して駆動ローラ4に直流電圧を出力(印加)する。一方、交流電源140が接続されている場合、電気接続部221と電気接続部242とがハーネス302によって電気的に接続されるので、直流電圧用トランス113は、ハーネス302を介して交流電源140に直流電圧を出力する。
直流出力検知部114は、直流電圧用トランス113からの直流高電圧の出力値を検知し、直流出力制御部111に出力する。また、直流出力検知部114は、検知した出力値をFB_DC信号(フィードバック信号)として制御部200に出力する。これは、環境や負荷によって転写性が落ちないように、制御部200においてDC_PWM信号のデューティーを制御させるためである。本プリンタでは、二次転写電源100の本体に対して交流電源140が着脱可能であるため、交流電源140が接続されている場合と接続されていない場合とで、高電圧出力の出力経路のインピーダンスが変化する。このため、直流電源110が定電圧制御を行って直流電圧を出力した場合、交流電源140の有無に応じて出力経路中のインピーダンスが変化することにより分圧比が変化する。更に、駆動ローラ4に印加される高電圧が変化してしまうので、交流電源140の有無に応じて転写性が変化してしまう。
そこで、本プリンタでは、直流電源110が定電流制御を行って直流電圧を出力し、交流電源140の有無に応じて出力電圧を変化させるようになっている。これにより、出力経路中のインピーダンスが変化しても、駆動ローラ4に印加される高電圧を一定に保つことができ、交流電源140の有無によらず転写性を一定に保つことができる。更に、DC_PWM信号の値を変更せずに交流電源140を着脱することが可能になる。
このように本プリンタでは、直流電源110を定電流制御するようになっているが、次のような構成を採用してもよい。即ち、交流電源140の着脱時にDC_PWM信号の値を変更するなどして、駆動ローラ4に印加される高電圧を一定に保つことができれば、直流電源110を定電圧制御する構成を採用してもよい。
出力異常検知部115は、直流電源110の出力ライン上に配置されており、電線の地絡等によって出力異常が発生した際には、リークなどの出力異常を示す信号を制御部200に出力する。これにより、制御部200による直流電源110からの高圧出力を停止するための制御を実施することが可能になる。
交流出力制御部141には、制御部200から、交流電圧の出力の大きさを制御するAC_PWM信号や、交流出力検知部144によって検知された交流電圧用トランス143の出力値が入力される。そして、交流出力制御部141は、入力されたAC_PWM信号のデューティー比、及び交流電圧用トランス143の出力値に基づいて、次のような制御を行う。即ち、交流電圧用トランス143の出力値がAC_PWM信号で指示された出力値となるように、交流駆動部142を介して交流電圧用トランス143の駆動を制御する。
交流駆動部142には、交流電圧の出力周波数を制御するAC_CLK信号が入力される。そして、交流駆動部142は、交流出力制御部141からの制御及びAC_CLK信号に基づいて、交流電圧用トランス143を駆動する。交流駆動部142は、AC_CLK信号に基づいて交流電圧用トランス143を駆動することで、交流電圧用トランス143によって生成される出力波形を、AC_CLK信号で指示された任意の周波数に制御することができる。
交流電圧用トランス143は、交流駆動部142によって駆動されて交流電圧を生成し、生成した交流電圧と直流電圧用トランス113から出力された直流の高電圧とを重畳して重畳電圧を生成する。交流電源140が接続されている場合、即ち、電気接続部243と駆動ローラ4とがハーネス301で電気的に接続されている場合、交流電圧用トランス143は、生成した重畳電圧を、ハーネス301を介して駆動ローラ4に印加する。なお、交流電圧用トランス143は、交流電圧を生成しない場合には、直流電圧用トランス113から出力された直流の高電圧を、ハーネス301を介して駆動ローラ4に出力(印加)する。駆動ローラ4に出力された電圧(重畳電圧又は直流電圧)は、その後、ニップ形成ローラ17を介して直流電源110内に帰還する。
交流出力検知部144は、交流電圧用トランス143の交流電圧の出力値を検知して交流出力制御部141に出力する。また、検出した出力値をFB_AC信号(フィードバック信号)として制御部200に出力する。これは、環境や負荷によって転写性を低下させないように、制御部200においてAC_PWM信号のデューティーを制御するためである。なお、交流電源140は、定電圧制御を行うものであるが、定電流制御を行うものを用いてもよい。また、交流電圧用トランス143(交流電源140)が生成する交流電圧の波形については、正弦波、矩形波の何れであってもよいが、本プリンタでは、短パルス状矩形波を採用している。交流電圧の波形を短パルス状矩形波にすることで、より画像品質の向上を図ることが可能になるからである。
なお、二次転写電源100は、出力電流値を所定の目標電流値と一致させるように出力電圧値を調整する定電流制御方式で直流電圧を出力する。また、ピークツウピーク値Vppを所定の目標値と一致させるように振幅を調整する定電圧制御方式で交流電圧を出力する。
図3は、重畳電圧からなる二次転写バイアスの波形の第一例を示すグラフである。同図に示される二次転写バイアスの波形は正弦波になっている。オフセット電圧Voffは、重畳電圧からなる二次転写バイアスの直流成分(直流電圧)の値である。同図におけるオフセット電圧Voffは、その極性がマイナスになっている。二次転写バイアスの波形が図示のような正弦波である場合には、オフセット電圧Voffと、二次転写バイアスの一周期(T)あたりにおける平均電位Vaveとが同じ値になる。よって、同図においては、平均電位Vaveもマイナス極性になっている。
このプリンタのように、ニップ形成ローラ17に対向する駆動ローラ4の芯金に二次転写バイアスを印加する構成では、二次転写バイアスの極性がトナーの正規帯電極性と同じになったときに、二次転写ニップ内のトナーに対して転写方向の静電気力が付与される。転写方向は、中間転写ベルト3側から記録シートP側に向かう方向である。一方、二次転写バイアスの極性がトナーの正規帯電極性とは逆極性になったときには、二次転写ニップ内のトナーに対して転写方向とは逆方向の静電気力が付与される。平均電位Vaveをトナーの正規帯電極性と同極であるマイナス極性にすることで、二次転写ニップ内でトナーを相対的にベルト表面側からシート表面側に向けて移動させる。これにより、中間転写ベルト3の表面上のトナー像を、記録シートPの表面上に二次転写することが可能になる。
同図において、転写ピーク値Vtは、二次転写バイアスの一周期(周期T)内で発生する二つのピーク値のうち、二次転写ニップ内でトナーに対して転写方向の静電気力をより強く付与する方のピーク値である。また、逆ピーク値Vrは、転写ピーク値Vtではない方のピーク値である。同図に示される二次転写バイアスでは、逆ピーク値Vrが転写ピーク値Vtとは逆極性(プラス極性)になっている。
二次転写バイアスの波形は、図3に示されるような正弦波に限られない。三角波や矩形波の二次転写バイアスを採用してもよい。図4は、重畳電圧からなる二次転写バイアスの波形の第二例を示すグラフである。同図に示される二次転写バイアスの波形は、矩形波である。図3に示される二次転写バイアスの正弦波や、図4に示される二次転写バイアスの矩形波は、何れも、後述する逆ピーク側デューティーが50[%]である。このような特性を有する波形からなる二次転写バイアスでは、何れも、一周期(周期T)あたりにおける平均電位Vaveがオフセット電圧Voffと同じ値になる。つまり、直流成分の値が平均電位Vaveと同じになる。
図5は、図3に示される二次転写バイアスにおける逆ピーク側デューティーを説明するためのグラフである。同図において、中心電位Vcは、二次転写バイアスの交流成分(交流電圧)のピークツウピーク値Vppにおける中心の電位である。また、逆ピーク側時間trは、交流成分の一周期(周期T)内において、二次転写バイアスの値が中心電位Vcから逆ピーク値Vrに向けて立ち上がり始めた瞬間から、逆ピーク値Vrを経て中心電位Vcに戻るまでの時間である。また、転写ピーク側時間tfは、交流成分の一周期(周期T)内において、二次転写バイアスの値が中心電位Vcから転写ピーク値Vtに向けて立ち上がり始めた瞬間から、転写ピーク値Vtを経て中心電位Vcに戻るまでの時間である。また、逆ピーク側デューティーは、周期T内で逆ピーク側時間trが占める割合であり、図示の波形の場合には50[%]である。つまり、図示の波形における逆ピーク側デューティーは50[%]である。
図6は、図4に示される二次転写バイアスにおける逆ピーク側デューティーを説明するためのグラフである。図示の矩形波においても、周期T内で逆ピーク側時間trが占める割合としての逆ピーク側デューティーは50[%]である。
逆ピーク側デューティー=50[%]の二次転写バイアスを用いて、二次転写ニップ内でトナーをベルト表面側から記録シート表面側に静電移動させるためには、転写ピーク値Vtの絶対値を、逆ピーク値Vrの絶対値よりも大きくする必要がある。そして、転写ピーク値Vtの絶対値が大きくなり過ぎると、二次転写ニップ内において、中間転写ベルト3表面と、凹凸シートのとの間で放電を発生させてしまう。この放電は、トナー粒子を逆帯電させて、そのトナー粒子の二次転写を著しく阻害することから、画像中に多くの白点を発生させてしまったり、トナーが中間転写ベルト上に再付着したりして、画質を著しく損ねてしまう。よって、転写ピーク値Vtの絶対値をある程度の値に留める必要がある。
なお、重畳バイアスからなる二次転写バイアスの波形は、図21に示されるように、綺麗な矩形波にはならないのが一般的である。図4や図6に示されるような綺麗な矩形波であれば、波形の立ち上がり部から立ち下がり部までの時間を一周期内におけるトナー転写阻害時間として容易に特定することが可能である。しかし、綺麗な矩形波でない場合には、そのような特定ができない。即ち、一方のピーク値(例えば転写ピーク値Vt)から他方のピーク値(例えば逆ピーク値Vr)への立ち上がりや、他方のピーク値から一方のピーク値への立ち下がりに時間を要する(ゼロでない)場合には、前述のような特定ができない。そこで、綺麗な矩形波でない場合には、本発明を適用するにあたって、ディーティーを次のように定義するとよい。即ち、二次転写バイアスの周期変動の波形で、ピークツウピークにおける一方のピーク値と他方のピーク値とのうち、二次転写ニップでベルト側から記録シート側へのトナーの静電移動をより阻害する方を阻害ピーク値として定義する。例えば、駆動ローラ4に二次転写バイアスを印加し、且つマイナス帯電性のトナーを用いる構成において、二次転写バイアスの一方のピーク値がプラス極性であり、且つ他方のピーク値がマイナス極性である場合には、プラス極性のピーク値が阻害ピーク値である。阻害ピーク値を他方のピーク値に向けてピークツウピーク値の30%の値だけシフトさせた位置を波形の基線とする。また、波形が基線よりも阻害ピーク値側となる時間を図21に示される阻害時間A’として定義する。より詳しくは、波形が基線から阻害ピーク値に向けて立ち上がり又は立ち下がり始めた時点から、基線まで立ち下がる又は立ち上がる直前までの時間を阻害時間A’として定義する。そして、阻害時間A’の周期Tにおける割合をデューティーとすればよい。具体的には、図21における「(阻害時間A’/周期T)×100%」の解をデューティーとして求めればよい。なお、駆動ローラ4に二次転写バイアスを印加し、且つマイナス帯電性のトナーを用いる構成では、逆ピーク値Vrが阻害ピーク値になる。そして、阻害時間A’は、基線から逆ピーク値Vrに向けて立ち上がり始めた時点から、基線まで立ち下がった後、更に転写ピーク値Vtに向けて立ち下がり始める直前までの時間になる。これに対し、二次転写バイアスをニップ形成ローラ17に印加し、且つマイナス帯電性のトナーを用いる構成では、二次転写バイアスとして、0[V]の位置を基準にして図21の波形を反転させた波形のものを採用することになる。この場合、転写ピーク値Vtが阻害ピーク値になる。そして、阻害時間A’は、基線から転写ピーク値Vtに向けて立ち下がり始めた時点から、基線まで立ち上がった後、更に逆ピーク値Vrに向けて立ち上がり始める直前までの時間になる。
以上の基本的な構成を備える本プリンタにおいては、次に列記する各種装置の組み合わせが、中間転写ベルト3の表面にトナー像を形成する像形成手段として機能している。即ち、光書込装置9、感光体1Y,1M,1C,1KにYトナー,Mトナー,Cトナー,Kトナーを作像するための各種装置、一次転写ローラ11Y,11M,11C,11K、及び一次転写バイアス電源からなる組み合わせである。
次に、本発明者らが行った各種のテストプリントについて説明する。
上述した基本的な構成を備えるプリンタ試験機を用意し、このプリンタ試験機における各色の現像条件(現像ポテンシャルなど)を次のように設定した。即ち、中間転写ベルト3上に一次転写されるベタのKトナー像に対するトナー付着量を、ベタのYトナー像,Mトナー像,Cトナー像に対するトナー付着量よりも少なくする条件。
このような条件に設定したことにより、消費量が他の色よりも多くなる傾向の高いKトナーの消費量を抑えて、ランニングコストの低減を図ることができる。前述の条件であっても、Kトナー像が良好に二次転写されれば、Kトナー像にぼそつきは発生しないが、二次転写不良が生じると、Kトナー像にぼそつきが発生してしまう。ぼそつきは二次転写不良が原因で発生するものであるので、前述のような条件に設定した場合には、Kトナー像のトナー付着量を他色と同じにする条件に設定する場合に比べて、Kトナー像のぼそつきが発生し易くなる。
プリンタ試験機により、中間転写ベルト3の表面にY,M,C,Kのベタトナー像を形成し、それぞれのトナー付着量と、トナー帯電量Q/Mとを測定した。トナー付着量については、次のようにして測定した。即ち、Y,M,C,Kのベタトナー像(大きさ2cm×10cm)を中間転写ベルト3に一次転写した後、それらを二次転写ニップに進入させる前に、プリンタ試験機を停止させた。そして、真空ポンプにつないだトナー吸引治具により、各色のトナー像のトナーを個別に吸引し、その重量を測定した。その後、重量[mg]をベタトナー像の面積(10cm2)で除算した結果をトナー付着量とした。
表1に示されるように、プリンタ試験機は、ベタのKトナー像のトナー付着量を、ベタのYトナー像,Mトナー像,Cトナー像のトナー付着量よりも多くする条件に設定されていることがわかる。
各色のトナー像のトナー帯電量Q/Mについては次のようにして測定した。即ち、トナー付着量の測定のために吸引治具で吸引するときに、吸引治具に電荷量測定器(ケスレー社製 エレクトロメータMODEL617)を接続して、トナーの電荷量を測定した。この測定結果と、吸引したトナーの重量[mg]とに基づいて、トナー帯電量Q/M[μC/g]を求めた。
中間転写ベルト3上に一次転写された各色のトナーと、トナー帯電量Q/Mと、プリントのタイミングとの関係を図7に示す。なお、この測定は、後述する第一テストプリントと同じ条件の連続プリントにおいて、一枚目の記録シートPに転写されるトナー像と、501枚目の記録シートPに転写されるトナー像とのそれぞれについて実施した。つまり、第一テストプリントと同じ条件の連続プリントにおいて、一枚目の二次転写工程の直前と、501枚目の二次転写工程の直前とのそれぞれで連続プリントを一時停止させて測定を行った。同図における一枚目は前者のトナー像を意味しており、501枚目は後者のトナー像を意味している。
同図に示されるように、ベタのKトナー像のトナー帯電量Q/Mが、ベタのCトナー像のトナー帯電量Q/Mよりも少なくなっている。ベタのMトナー像のトナー帯電量Q/Mは、ベタのCトナー像の墨名0帯電量Q/Mよりも少しだけ大きくなり、ベタのYトナー像のトナー帯電量Q/Mは、Mトナー像と同じか、あるいはMトナー像よりも少しだけ多くなった。
Kのトナー帯電量Q/Mが他色のトナー帯電量Q/Mよりも少なくなる理由は、二つあると考えられる。一つ目の理由は、Yトナー像,Cトナー像,Mトナー像,Kトナー像のうち、一次転写工程が最後になるKトナー像だけ、他色用の一次転写ニップを通過しないことから、他色用の一次転写ニップを通過する際のチャージアップが生じないからである。Yトナー像,Mトナー像,Cトナー像は何れも、他色用の一次転写ニップを通過する際にチャージアップする。Yのトナー帯電量Q/Mが各色の中で最も多くなるのは、他色用の一次転写ニップでのチャージアップ量(通過回数)が最も多くなるからである。以下、他色用の転写工程を経ないことによってチャージアップしないこと起因して他色のトナーよりもトナー帯電量Q/Mが低くなる現象を「無チャージアップ起因の低帯電量」という。
二つ目の理由は、Yトナー,Mトナー,Cトナー,Kトナーのうち、Kトナーだけカーボンブラックを含有していることから、摩擦帯電し難くなっていることである。図8は、一次転写ニップに進入する前の感光体表面上における各色トナー像の帯電量Q/Mとベルト上のトナーQ/Mを示すグラフである。同図にトナー帯電量Q/Mが示されるトナーは何れの色も一次転写ニップ進入前であることから、多色の一次転写ニップを通過することによるチャージアップを引き起こしていない。図示のように、前記チャージアップを引き起こす前においても、各色トナーのうち、Kトナーの帯電量Q/Mが最も小さくなっている。これは、Kトナーだけ、カーボンを含有しているからである。以下、カーボンを含有することによって帯電量が比較的低くなる現象を「カーボン起因の低帯電量」という。
[第一テストプリント]
上述したプリンタ試験機において、直流電圧だけからなる二次転写バイアスを駆動ローラ4を印加する条件で、青ベタのテストトナー像と、黒ベタのテストトナーとを記録シートP上にプリントした。そして、記録シートP上におけるそれらテストトナー像のぼそつきを評価した。
この第一テストプリントにおける諸条件は次の通りである。
・実験室の温湿度:23℃50%(以下、MMとも言う)、及び27℃80%(以下、HHとも言う)の二通り。
・プロセス線速:256[mm/sec]。
・記録シート:Rey Office(商品名:画像のぼそつきが目立つ紙種)。
・テストトナー像:同一の記録シート上に、ベタのKトナー像、ベタのYトナー像、ベタのMトナー像、ベタのCトナー像、及びマゼンタとシアンとの二色重ね合わせによるベタの青トナー像。
・テストトナー像の画像面積率:5[%]
・評価対象のプリントシート:連続プリントにおける一枚目のプリントシート、及び多量の連続プリントにおける501枚目のプリントシート。
・二次転写バイアス:23℃50%環境(MM)で−1kV〜−2.5kV、27℃80%環境(HH)で−0.5〜−3kV。
ぼそつきについては、評価者によって次に列記する五段階で評価した。
・ランク5:全くぼそつきなく、良好な画質。
・ランク4:ややぼそつきあるが、比較的良好な画質。
・ランク3.5:ややぼそつきがあるが、許容範囲内の画質。
・ランク3:ぼそつきがあり、許容限界を少し下回る画質(許容できない)。
・ランク2:ランク1とランク3との間のぼそつきがある画質。
・ランク1:青ベタの場合には色がまったく再現していない画質であり、黒ベタの場合には記録シートの色が透ける画質。
第一テストプリントのKトナー像(ベタ)におけるぼそつきランクと、二次転写バイアスと、環境と、プリントシートの出力タイミングとの関係を、図9に示す。また、第一テストプリントの青トナー像(ベタ)におけるぼそつきランクと、二次転写バイアスと、環境と、プリントシートの出力タイミングとの関係を、図10に示す。それらの図において、一枚目は、連続プリントにおける一枚目に出力したプリントシートを意味している。また、501枚目は、連続プリントにおいて501枚目に出力したプリントシートを意味している。
図9、図10からわかるように、Kトナー像のぼそつきと、青トナー像のぼそつきとを同じ記録シートP上でランク3.5以上にできた(両立)のは、MMの環境における一枚目、及びHHの環境における一枚目だけである。それらのうち、HH環境における一枚目は、−1.5[kV]の二次転写バイアスの条件でしか両立できていないので、転写バイアスの余裕度が低いと言える。501枚目のプリントシートのトナー像では、両立できる条件がなかった。これは、連続プリント枚数が増加するにつれて、現像装置内のトナーの劣化が進行したからである。具体的には、第一テストプリントのように、低画像面積率(第一テストプリントでは5%)の画像を連続プリントすると、現像装置内では、現像に寄与せずに循環搬送路内で長時間に渡って混合及び攪拌されてストレスを受け続けるトナーが発生する。そのトナーは、トナー粒子表面に添加された外添剤を粒子内部に埋没させたり、外添剤を粒子から離脱させたりしている。それらによって外添剤を不足させたトナー粒子は、十分量の外添剤を表面に付着させているトナー粒子に比べて、中間転写ベルト3との接触面積を大幅に増加させていることから、中間転写ベルト3との付着力を高めている。よって、このようなトナーは、記録シートPに二次転写され難くなる。
[第二テストプリント]
次に列記する条件で、プリンタ試験によって第二テストプリントを実施した。
・温湿度:HH(27℃80%)。
・プロセス線速:256mm/sec。
・記録シート:Rey Office。
・テストトナー像:同一の記録シート上に、ベタのKトナー像、ベタのYトナー像、ベタのMトナー像、ベタのCトナー像、及びマゼンタとシアンとの二色重ね合わせによるベタの青トナー像。
・テストトナー像の画像面積率:5[%]。
・評価対象のプリントシート:連続プリントにおける一枚目のプリントシート。
・二次転写バイアス
条件A:直流電圧のみ。
条件B:逆ピーク側デューティーが50[%]未満である低デューティーの重畳電圧。
条件C:逆ピーク側デューティーが50[%]を超える高デューティーの重畳電圧。
二次転写バイアスの各条件における各種の特性を次の表2に示す。
図11は、平均電位Vave=−1[kV]、ピークツウピーク値Vpp=3[kV]に設定した条件Bの二次転写バイアスの波形を示すグラフである。図12は、平均電位Vave=0[kV]、ピークツウピーク値Vpp=4[kV]に設定した条件Cの二次転写バイアスの波形を示すグラフである。
画像のぼそつきの評価については第一テストプリントと同様にして実施した。図13は、第二テストプリントの条件AにおけるKトナー像のぼそつきランクと直流電圧からなる二次転写バイアスの値との関係を示すグラフである。また、図14は、第二テストプリントの条件Aにおける青トナー像のぼそつきランクと直流電圧からなる二次転写バイアスの値との関係を示すグラフである。また、図15は、第二テストプリントの条件BにおけるKトナー像のぼそつきランクと重畳電圧からなる二次転写バイアスのピークツウピーク値Vpp及び平均電位Vaveとの関係を示すグラフである。また、図16は、第二テストプリントの条件Bにおける青トナー像のぼそつきランクと重畳電圧からなる二次転写バイアスのピークツウピーク値Vpp及び平均電位Vaveとの関係を示すグラフである。また、図17は、第二テストプリントの条件CにおけるKトナー像のぼそつきランクと重畳電圧からなる二次転写バイアスのピークツウピーク値Vpp及び平均電位Vaveとの関係を示すグラフである。また、図18は、第二テストプリントの条件Cにおける青トナー像のぼそつきランクと重畳電圧からなる二次転写バイアスのピークツウピーク値Vpp及び平均電位Vaveとの関係を示すグラフである。
第二テストプリントにおいて、Kトナー像(ベタ)と、青トナー像(ベタ)とで何れもぼそつきのランクを3.5以上にすることができた二次転写バイアスの条件(両立条件)を次の表3にまとめて示す。
表3に示されるように、条件Aや条件Bでは、Kトナー像と青トナー像とでぼそつきランクを両立できる電圧条件が存在しないが、条件Cでは両立できる電圧条件が存在している。この結果から、逆ピーク側デューティーを50[%]よりも高くすることで、Kトナーの消費量を抑えつつ、画像のぼそつきの発生を抑え得ることがわかった。
参考までに、Kトナー像と青トナー像とでぼそつきランクを両立できる電圧条件における転写ピーク値Vt[kV]及び逆ピーク値Vr[kV]を次の表4に示す。
表4に示されるように、Kトナー像と青トナー像とでぼそつきランクを両立できる電圧条件において、転写ピーク値Vtは−3.05〜−3.90[kV]の範囲であり、逆ピーク値Vrは−0.55〜+0.60[kV]の範囲であった。
なお、条件A(直流電圧だけ)において、二次転写バイアスを−3[kV]にした場合には、Kトナー像のぼそつきランクが1、青トナー像のぼそつきランクが2であった。直流電圧の−3[kV]という数値は、表4における重畳電圧の転写ピーク値Vtと比較すればそれほど高い値ではない。よって、転写方向の静電気力を付与する極性の電圧をある程度の時間継続して印加すると、二次転写ニップ内でトナーに逆電荷を注入してしまうことが示唆される。
逆ピーク側デューティーが50[%]を超える高デューティーの重畳電圧からなる二次転写バイアスを用いることで、Kトナー像と青トナー像とでぼそつきランクを両立させることができたのは、次に説明する理由によるものと考えられる。即ち、無端移動する中間転写ベルト3が二次転写ニップ内に進入すると、二次転写バイアスにより、二次転写ニップに進入したベルト箇所に対する充電が始まる。そして、その充電量がある閾値を超えると、トナー帯電量が低く、トナー付着量も少ないベタトナー像中のトナーに対する逆電荷の注入が始まる。二次転写ニップに進入したベルト箇所に対する充電は、主に転写ピーク側時間tf内で起こることから、この転写ピーク側時間tfが長くなるほど、Kトナーに対する逆電荷の注入量が増加する。高デューティーの二次転写バイアスは、低デューティーの二次転写バイアスに比べて、転写ピーク側時間tfが短いことから、Kトナーに対する逆電荷の注入量を低減して、二次転写不良の発生を抑えることが可能になると考えられる。
また、トナー帯電量が高く、トナー付着量も多いマゼンタとシアンの二色重ね合わせによる青トナー像を二次転写ニップ内でベルト表面側から記録シート表面側に静電移動させるためには、転写ピーク値Vtの絶対値をある程度大きくする必要がある。そして、転写ピーク値Vtの絶対値を大きくし過ぎると、二次転写ニップ内において、中間転写ベルト3表面と、記録シートのとの間で放電を発生させてしまう。この放電は、トナー粒子を逆帯電させて、そのトナー粒子の二次転写を著しく阻害することから、画像中に多くの白点を発生させてしまい、画質を著しく損ねてしまう。よって、転写ピーク値Vtの絶対値をある程度の値に留める必要がある。
[第三テストプリント]
次に列記する条件で、プリンタ試験によって第三テストプリントを実施した。
・温湿度:HH(27℃80%)。
・プロセス線速:352mm/sec。
・記録シート:Rey Office。
・テストトナー像:同一の記録シート上に、ベタのKトナー像、及びマゼンタとシアンとの二色重ね合わせによるベタの青トナー像。
・テストトナー像の画像面積率:5[%]。
・二次転写バイアスの条件:表4に示される条件。
・二次転写バイアスの交流成分の周波数:1000[Hz]。
テストトナー像を複数の記録シートに連続プリントし、501枚目のプリントシートにおけるKトナー像のぼそつきと、青トナー像のぼそつきとを評価したところ、何れもランク3.5未満になってしまった(何れもランク3)。なお、1枚目のプリントシートでは、Kトナー像、青トナー像ともに、ぼそつきのランクは3.5以上であった。501枚目のプリントシートでぼそつきのランクが許容範囲外になったのは、上述したように、連続プリント枚数の増加に伴う現像装置内のトナー劣化の進行によるものである。
[第四テストプリント]
次に列記する条件で、プリンタ試験によって第四テストプリントを実施した。
・温湿度:HH(27℃80%)。
・プロセス線速:352mm/sec。
・記録シート:Rey Office。
・テストトナー像:同一の記録シート上に、ベタのKトナー像、及びマゼンタとシアンとの二色重ね合わせによるベタの青トナー像。
・テストトナー像の画像面積率:5[%]。
・二次転写バイアスの逆ピーク側デューティー:85[%]。
・二次転写バイアスの平均電位Vave:−0.5[kV]。
・二次転写バイアスのピークツウピーク値:3[kV]。
・二次転写バイアスの交流成分の周波数:500〜2500[Hz]。
それぞれの周波数の条件で、テストトナー像を501枚の記録シートに連続プリントし、501枚目のプリントシートにおけるKトナー像のぼそつきと、青トナー像のぼそつきとを評価した。この結果を次の表5に示す。
表5に示されるように、2000[Hz]以下の周波数領域では、周波数を高くするにつれて、ぼそつきのランクを向上させることができる。501枚目のプリントシートであっても、周波数を1500〜2000[Hz]に設定すれば、Kトナー像と青トナー像とでぼそつきのランクを両立させることが可能である。
1500〜2000[Hz]のように周波数を比較的高く設定することで、Kトナー像、青トナー像ともにぼそつきを許容範囲内に留めることができた理由は、次のように考えられる。即ち、二次転写バイアスによる交番電界が二次転写ニップに形成されると、交番電界がトナーに対して中間転写ベルト3側から記録シートP側に向かう静電気力を付与する向きになっているときに、中間転写ベルト3の表面上のトナーが記録シートPに転移する。交番電界の向きは短時間で複数回切り替わるが、トナーが二次転写ニップに進入してから一回目の切り替わりのタイミングでベルト上の全てのトナー粒子が記録シートPの表面に転移にするわけではない。切り替わり回数が増加するにつれて、記録シートPの表面に転移するトナー粒子の数が増えていく。劣化していなくて中間転写ベルト3との付着力をそれほど高めていないトナーでは、二次転写ニップを通過するまでの電界向きの切り替わり回数が比較的少なくても、記録シートPに対して十分量のトナーが転移する。これに対し、劣化を進行させていて中間転写ベルト3との付着力を高めているトナーでは、二次転写ニップを通過するまでの電界向きの切り替わり回数(=周波数)が比較的少ないと、記録シートに対して十分量のトナーを転移させることができない。但し、二次転写バイアスの交流成分の周波数をある程度高い値に設定して電界向きの切り替わり回数を比較的多くすれば、十分量のトナーを記録シートPに転移させることが可能になる。
なお、表5における周波数=2250[Hz]以上のように、周波数を過剰に高くすると、切り替わり時間を過剰に短くして一回あたりの切り替わりでトナーをベルト側からシート側に移動させる時間を確保することが困難になる。この結果、ぼそつきを悪化させてしまう。
また、周波数を高くするにつれて、二次転写工程のときに画像部の周囲にトナー粒子を散らせる転写チリを悪化させ易くなることから、転写チリの抑制という観点からすれば、周波数は低い方がよい。よって、転写チリの抑制という観点では、周波数を2000[Hz]に固定することは望ましくない。
次に、このプリンタの特徴的な構成について説明する。このプリンタにおいては、上述したプリンタ試験機と同様に、次のような条件でトナー像を形成するように像形成手段を構成している。即ち、Y,M,C,Kのトナー像のうち、Kトナー像の中間転写ベルト3上におけるトナー付着量を、他色のトナー像の中間転写ベルト3上におけるトナー付着量よりも少なくする条件である。具体的には、かかる条件を満足するように、Y,M,C,Kの現像条件(現像ポテンシャルなど)を設定している。これにより、Kトナーの消費量を抑えて低ランニングコスト化を図ることができる。
また、このプリンタにおいては、二次転写バイアスとして、逆ピーク側デューティーが50[%]を超える高デューティーの重畳電圧からなるものを出力するように、二次転写電源100を構成している。これにより、Y,M,C,Kの何れの色においても、画像のぼそつきの発生を抑えることができる。
図2に示されるように、制御部200には、機内温度、及び機内湿度を測定する環境センサー500が接続されている。制御部200は、環境センサー500に内臓される温度センサーからの出力に基づいて機内温度を把握したり、環境センサーに内蔵される湿度センサーからの出力に基づいて機内湿度(相対湿度)を把握したりすることができる。そして、それらの把握結果に基づいて、機内の環境について、HH、MM、LLの何れであるのかを把握する。例えば、温度及び湿度に基づいて算出される絶対湿度が14.6[g/m3]以上である場合をHHとし、5[g/m3]以上、14.6[g/m3]未満である場合をMMとし、5[g/m3]未満である場合をLLとする。
環境がLLやMMである場合は、何れの色においても、トナー帯電量Q/Mを十分に高い値に維持することが可能であることから、画像のぼそつきは発生しない。このため、制御部200は、環境がLLやMMである場合には、ピークツウピーク値Vppを0[kV]にし、平均電位Vaveだけ、その環境に応じた値(予めの実験に基づいて設定された数値)にするための制御信号を二次転写電源100に出力する。
一方、環境がHHである場合は、何れの色においても、トナー帯電量Q/Mを高い値に維持することが困難になることから、画像のぼそつきを発生させるおそれがある。そこで、制御部200は、環境がHHである場合には、平均電位VaveをHH環境に対応する値にするための制御信号を二次転写電源100に出力する。具体的には、直流出力制御部111には、制御部200から、直流電圧の出力の大きさを制御するDC_PWM信号を出力する。更に、直流出力検知部114によって検知された直流電圧用トランス113の出力値も出力する。そして、直流出力制御部111は、入力されたDC_PWM信号のデューティー比及び直流電圧用トランス113の出力値に基づいて、次のような制御を行う。即ち、直流電圧用トランス113の出力値をDC_PWM信号で指示された出力値にするように、直流駆動部112を介して直流電圧用トランス113の駆動を制御する。
ピークツウピーク値Vppについては、あらかじめHH用に格納されていたVpp電圧値にするべく、制御部200は、直流出力制御部111に対し、直流電圧の出力の大きさを制御するDC_PWM信号を出力する。更に、直流出力検知部114によって検知された直流電圧用トランス113の出力値も出力する。そして、直流出力制御部111は、入力されたDC_PWM信号のデューティー比及び直流電圧用トランス113の出力値に基づいて、次のような制御を行う。即ち、直流電圧用トランス113の出力値をDC_PWM信号で指示された出力値にするように、直流駆動部112を介して直流電圧用トランス113の駆動を制御する。
HHの環境下において、トナー帯電量Q/Mを十分に大きくすることができていないにもかかわらず、転写ピーク値Vtや平均電位Vaveの値(転写方向の静電力を強くする側の値)を比較的小さくすると、十分な強度の二次転写電界を形成することができない。これにより、二次転写不良による画像のぼそつきを発生させてしまう。一方で、LLやMMや環境において、トナー帯電量Q/Mを十分に大きくしているにもかかわらず、転写ピーク値Vtや平均電位Vaveの値を比較的大きくすると、二次転写ニップ内で放電による白点を発生させ易くなる。そして、白点による画像濃度不足を引き起こしてしまう。
そこで、制御部200は、環境がHHである場合には、転写ピーク値Vt、ピークツウピーク値Vppのそれぞれを、環境がLLやMMである場合に比べてより大きな値にするように、二次転写電源100からの出力を制御する。かかる構成では、環境にかかわらず、画像のほそつきの発生を抑えつつ、画像中に白点を発生させることによる画像濃度不足の発生を抑えることができる。
[実施例]
次に、実施形態に係るプリンタに、より特徴的な構成を付加した実施例について説明する。なお、以下に特筆しない限り、実施例に係るプリンタの構成は、実施形態と同様である。
上述したように、トナーの劣化が進行するにつれて、トナー像の二次転写性が低下してトナー像のぼそつきのランクを悪化させる。但し、ある程度劣化したトナーを用いる場合であっても、二次転写バイアスの交流成分の周波数を比較的高い帯域に設定すれば、トナー像のぼそつきのランクを許容範囲内にすることが可能である。この一方で、転写チリの発生を抑制するという観点からすれば、周波数を高くすることは望ましくない。
そこで、実施例に係るプリンタの制御部200は、Y,M,C,Kの各色のそれぞれについて、トナーの劣化度合いを判定して結果に基づいて、二次転写バイアスの交流成分の周波数を設定する処理を実施するようになっている。二次転写電源100に対し、前記結果に応じた周波数の交流成分を出力させるための制御信号を出力するのである。なお、各色のトナーの劣化度合いは、色毎の出力画像面積率の違いにより、一律に進行しないのが一般的である。このため、制御部200は、各色のトナーの劣化度合いを判定した結果のうち、最も悪い結果に応じた周波数の交流成分を二次転写電源100から出力させるようになっている。以下、Y,M,C,Kのうち、トナーの劣化度合いが最も悪くなっている色を、「最大劣化色」という。
実施例に係るプリンタにおける、「最大劣化色」のトナーの劣化度合いを判定した結果と、二次転写バイアスの交流成分の周波数との関係を、次の表6に示す。
表6において、トナーの劣化度合いの数値が大きくなるほど、トナーの劣化が進行していることを示している。また、劣化度合い=0は、新品のトナーと同様に、ほとんど進行していないことを示している。また、劣化度合い=4は、画像面積率=50[%]の画像を500枚出力した場合におけるトナーの劣化の進行状況を示している。図示のように、制御部200は、「最大劣化色」のトナーの劣化度合いが6以下である場合には、劣化度合いが大きくなるにつれて交流成分の周波数を高くする。また、「最大劣化色」のトナーの劣化度合いが6を超える場合には、劣化度合いが6である場合に比べて周波数を増加させるとぼそつきランクを却って悪化させてしまうので、劣化度合いが6である場合と同じ周波数(2000Hz)のままにする。
かかる構成の本プリンタにおいては、「最大劣化色」のトナーの劣化度合いが6以下である場合に、トナーの劣化度合いにかかわらず、トナー像のぼそつきを許容範囲内に留めることができる。
なお、トナーの劣化度合いを把握する方法としては、様々な方法が知られている。例えば、特開2007‐304316号公報、特開2004‐240369号号公報、特開平06‐003913号公報、特開平08‐227201号公報、特開2006‐251409号公報に記載されたものを例示することができる。
次に、実施例に係るプリンタに、より特徴的な構成を付加した各具体例について説明する。なお、以下に特筆しない限り、各具体例に係るプリンタの構成は、実施例と同様である。
[第一具体例]
第一具体例に係るプリンタの制御部200は、過去の500枚分のプリントにおける出力画像の平均画像面積率(以下、単に平均画像面積率という)に基づいて、トナーの劣化度合いについて0から8までの何れに該当するのかを判定する。より詳しくは、平均画像面積率が低くなるほど、トナーの劣化度合いについてより大きな数値であると判定する。
かかる構成では、特別な動作を行うことなく、制御部200による演算処理だけでトナーの劣化度合いを判定することができる。
[第二具体例]
平均画像面積率とトナーの劣化度合いとはある程度の相関関係にあるものの、トナーの劣化の進行は、平均画像面積率の他、過去の出力時の環境変動などにも影響される。このため、平均画像面積率だけに基づいて、トナーの劣化度合いを正確に把握することは困難である。
そこで、制御部200は、例えば500枚の出力を行う毎などといった定期的なタイミングで、トナーの劣化度合いを検査するための劣化検査処理を実施する。この劣化検査処理では、まず、Y,M,C,Kのベタのテストトナー像を中間転写ベルト3上に互いに重ねないで形成する。このとき、トナー像を現像する際の現像ポテンシャル(感光体地肌部電位と潜像電位との差)や、トナー像を一次転写する際の一次転写バイアスについては、予め定められた所定の値に設定する。トナーの劣化が進行するにつれて、トナー像の現像性が低下し、且つ一次転写性も低下するので、中間転写ベルト3上に形成されたテストトナー像のトナー付着量と、トナーの劣化度合いとは良好な相関関係にある。その相関係数は、平均画像面積率とトナーの劣化度合いとの相関係数よりも高い。
中間転写ベルト3上に形成されたY,M,C,Kのテストトナー像は、中間転写ベルト3の無端移動に伴って、やがて二次転写ニップに進入する。このとき、二次転写ニップ内で、テストトナー像をニップ形成ローラ17に転移させないように、制御部200は、逆バイアス(トナーの帯電極性とは逆極性の直流電圧)を二次転写電源100から出力させる。この出力により、トナーを電気的に中間転写ベルト3の表面に引き寄せるのである。
二次転写ニップを通過した後のY,M,C,Kのテストトナー像は、中間転写ベルト3の移動に伴ってトナー付着量センサー23との対向位置を通過するときに、自らのトナー付着量が検知される。制御部200は、トナー付着量センサー23からの出力に基づいて、Y,M,C,Kのトナーの劣化度合いを判定し、それらの判定結果に基づいて、「最大劣化色」のトナーの劣化度合いを判定する。
図19は、本プリンタの制御部200によって実施される劣化検査処理の処理フローを示すフローチャートである。フローチャートにおけるS(ステップ)2〜7までのフローが劣化検査処理の処理フローである。この処理フローに先立って、制御部200は、劣化検査処理を実施すべき定期タイミングについて到来したか否かを判定し(S1)、到来した場合にS2以降の処理フローを実施する。
劣化検査処理を開始した制御部200は、連続プリントジョブ中であるか否かを判定し(S2)、連続プリントジョブ中である場合には(S2でY)、連続プリントジョブを一時中止してから(S3)、S4以降の処理フローを実施する。一方、連続プリントジョブ中でない場合には(S2でN)、S3の工程を実施することなく、S4以降の処理フローを実施する。
S4以降の処理フローにおいて、制御部200は、まず、二次転写電源100から逆バイアスを出力させた後(S4)、Y,M,C,Kのテストトナー像を中間転写ベルト3上に形成する(S5)。その後、トナー付着量センサー23からの出力に基づいて「最大劣化色」のトナーの劣化度合いを判定する(S6、S7)。最後に、連続プリントジョブを一時中止している場合には(S8でY)連続プリントジョブを再開してから、一時中止していない場合には(S8でN)直ちに、一連の処理フローをS1にリターンさせる。
かかる構成においては、第一具体例に係るプリンタに比べて、「最大劣化色」のトナーの劣化度合いを正確に把握することができる。
[第三具体例]
トナーの一次転写性は、トナーの劣化度合いの他に、環境などにも影響を受ける。よって、中間転写ベルト3の表面に一次転写されたトナー像のトナー付着量は、トナーの劣化度合いの他、環境にも影響されている。
そこで、本プリンタにおいては、Y,M,C,K用の感光体1Y,1M,1C,1Kの表面上のテストトナー像のトナー付着量を個別に検知するY,M,C,K用のトナー付着量センサーを設けている。そして、感光体1Y,1M,1C,1K上に形成したY,M,C,Kのテストトナー像のトナー付着量を、Y,M,C,K用のトナー付着量センサーによって個別に検知する。
制御部200は、例えば500枚の出力を行う毎などといった定期的なタイミングで、トナーの劣化度合いを検査するための劣化検査処理を実施する。この劣化検査処理では、まず、Y,M,C,Kのベタのテストトナー像をY,M,C,K用の感光体1Y,1M,1C,1Kに形成する。このとき、トナー像を現像する際の現像ポテンシャルについては、予め定められた所定の値に設定する。トナーの劣化が進行するにつれて、トナー像の現像性が低下する。よって、Y,M,C,K用の感光体1Y,1M,1C,1Kに形成されたY,M,C,Kのテストトナー像のトナー付着量と、Y,M,C,Kのトナーの劣化度合いとは良好な相関関係にある。その相関係数は、トナー付着量の検知結果が環境による一次転写性の影響を受けていない分だけ、中間転写ベルト3の表面に一次転写されたY,M,C,Kのテストトナー像のトナー付着量と、Y,M,C,Kのトナーの劣化度合いとの相関係数よりも高い。
Y,M,C,K用の感光体1Y,1M,1C,1K上に形成されたY,M,C,Kのテストトナー像は、Y,M,C,K用のトナー付着量センサーによってトナー付着量が検知される。制御部200は、Y,M,C,K用のトナー付着量センサーからの出力に基づいて、Y,M,C,Kのトナーの劣化度合いを判定し、それらの判定結果に基づいて、「最大劣化色」のトナーの劣化度合いを判定する。
かかる構成においては、第二具体例に係るプリンタに比べて、「最大劣化色」のトナーの劣化度合いを正確に把握することができる。
[第四具体例]
第四具体例に係るプリンタにおいては、操作表示部51に設けられたぼそつき発生ボタンがユーザーによって押下されたことに基づいて、制御部200がトナーの劣化度合いを判定する。つまり、出力画像にぼそつきを感じたユーザーによってぼそつき発生ボタンが押された場合に、トナーの劣化度合いについてある程度進行していると判定する。表6のように0〜8までの数値で判定するのではなく、周波数の変更が必要になるほど劣化しているという定性的な判定を行うのである。そして、ぼそつき発生ボタンが押下されると、交流成分の周波数を所定の上限閾値の範囲内で、それまでの値よりも高くする。
その後、平均画像面積率の変化によっては、トナーの劣化度合いが改善してくる。にもかかわらず、周波数を高くしたままでいると、転写チリのランクを不要に悪化させてしまうことになる。そこで、制御部200は、ぼそつき発生ボタンが押されたことに基づいて交流成分の周波数を高くした場合には、その後、プリント枚数の増加に伴って周波数を徐々に低くしていく。
次に、実施形態に係るプリンタの一部の構成を他の構成に変形した変形形態について説明する。図19は、本発明を適用した変形形態に係るプリンタを示す概略構成図である。なお、以下に特筆しない限り、変形形態に係るプリンタの構成は、実施形態と同様である。同図において、トナー像形成ユニット91Y,91M,91C,91Kの下方には、無端状の中間転写ベルト3を張架しながら図中反時計回り方向に無端移動せしめる転写ユニットが配設されている。転写ユニットは、像担持体たる中間転写ベルト3の他に、駆動ローラ4、テンションローラ5、二次転写裏面ローラ92、4つの一次転写ローラ11Y,11M,11C,11Kなどを有している。また、ベルトクリーニング装置20、トナー付着量センサー23なども有している。
中間転写ベルト3は、そのループ内側に配設された駆動ローラ4、二次転写裏面ローラ92、駆動ローラ4、及び4つの一次転写ローラ11Y,11M,11C,11Kによって張架されている。そして、駆動手段によって図中反時計回り方向に回転駆動される駆動ローラ4の回転力により、同方向に無端移動せしめられる。
4つの一次転写ローラ11Y,11M,11C,11Kは、無端移動せしめられる中間転写ベルト3を感光体1Y,1M,1C,1Kとの間に挟み込んでいる。これにより、中間転写ベルト3のおもて面と、感光体1Y,1M,1C,1Kとが当接するY,M,C,K用の一次転写ニップが形成されている。一次転写ローラ11Y,11M,11C,11Kには、一次転写電源によってそれぞれ一次転写バイアスが印加されている。これにより、感光体1Y,1M,1C,1K上のY,M,C,Kトナー像と、一次転写ローラ11Y,11M,11C,11Kとの間に転写電界が形成される。Y用の感光体1Y表面に形成されたYトナーは、感光体1Yの回転に伴ってY用の一次転写ニップに進入する。そして、転写電界やニップ圧の作用により、感光体1Y上から中間転写ベルト3上に一次転写される。このようにしてYトナー像が一次転写せしめられた中間転写ベルト3は、その後、M,C,K用の一次転写ニップを順次通過する。そして、感光体1M,1C,1K上のM,C,Kトナー像が、Yトナー像上に順次重ね合わせて一次転写される。この重ね合わせの一次転写により、中間転写ベルト3上にはカラー画像が形成される。
転写ユニットの下方には、二次転写ニップ裏打ちローラ36、シート搬送ベルト(一般的には二次転写ベルトや転写部材などとも呼称される)41などを具備するシート搬送ユニット38が配設されている。無端状のシート搬送ベルト41は、そのループ内側に配設された二次転写ニップ裏打ちローラ36、分離ローラ42などの複数のローラによって張架された状態で、二次転写ニップ裏打ちローラ36の回転駆動によって図中時計回り方向に回転せしめられる。そして、二次転写ニップ裏打ちローラ36により、中間転写ベルト3の周方向における全域のうち、二次転写裏面ローラ92に対する掛け回し領域に当接している。つまり、転写ユニットの二次転写裏面ローラ92と、シート搬送ユニット38の二次転写ニップ裏打ちローラ36とは、互いの間に中間転写ベルト3及びシート搬送ベルト41を挟み込んでいる。これにより、中間転写ベルト3のおもて面と、ニップ形成部材たるシート搬送ベルト41のおもて面とが当接する二次転写ニップが形成されている。
シート搬送ベルト41のループ内に配設された二次転写ニップ裏打ちローラ36は接地されているのに対し、中間転写ベルト3のループ内に配設された二次転写裏面ローラ92には、二次転写電源100によって二次転写バイアスが印加される。これにより、二次転写裏面ローラ92と、二次転写ニップ裏打ちローラ36との間に、マイナス極性のトナーを二次転写裏面ローラ92側から二次転写ニップ裏打ちローラ36側に向けて静電移動させる二次転写電界が形成される。
転写ユニットの下方には、記録シートPを複数枚重ねた紙束の状態で収容している給紙装置14が配設されている。この給紙装置14は、紙束の一番上の記録シートPに給紙ローラ15を当接させており、これを所定のタイミングで回転駆動させることで、その記録シートPを給送路に向けて送り出す。給送路の末端付近には、レジストローラ対16が配設されている。このレジストローラ対16は、給紙装置14から送り出された記録シートPをローラ間に挟み込むとすぐに両ローラの回転を停止させる。そして、挟み込んだ記録シートPを二次転写ニップ内で中間転写ベルト3上の4色重ね合わせトナー像に同期させ得るタイミングで回転駆動を再開して、記録シートPを二次転写ニップに向けて送り出す。二次転写ニップで記録シートPに密着せしめられた中間転写ベルト3上のカラー画像は、二次転写電界やニップ圧の作用によって記録シートP上に一括二次転写される。このようにして表面にフルカラートナー像が形成された記録シートPは、二次転写ニップを通過すると、中間転写ベルト3から曲率分離する。更に、シート搬送ベルト41を掛け回している分離ローラ42の曲率によってシート搬送ベルト41から曲率分離する。
なお、ニップ形成部材たるシート搬送ベルト41を中間転写ベルト3に当接させて二次転写ニップを形成する構成に代えて、次のような構成を採用してもよい。即ち、ニップ形成部材たるニップ形成ローラを中間転写ベルト3に当接させて二次転写ニップを形成する構成である。
二次転写ニップを通過した後の中間転写ベルト3には、記録シートPに転写されなかった転写残トナーが付着している。これは、中間転写ベルト3のおもて面に当接しているベルトクリーニング装置20によってベルト表面からクリーニングされる。中間転写ベルト3のループ内側に配設された駆動ローラ4は、ベルトクリーニング装置20によるベルトのクリーニングをループ内側からバックアップする。
トナー付着量センサー23は、中間転写ベルト3のループ外側に配設されている。そして、中間転写ベルト3の周方向における全域のうち、テンションローラ5に対する掛け回し箇所に対して、所定の間隙を介して対向している。この状態で、中間転写ベルト3上に一次転写されたトナー像が自らとの対向位置に進入した際に、そのトナー像の単位面積あたりのトナー付着量(画像濃度)を測定する。
二次転写ニップよりもシート搬送方向の下流側には、定着装置18が配設されている。この定着装置18は、ハロゲンランプ等の発熱源を内包する定着ローラ18aと、これに所定の圧力で当接しながら回転する加圧ローラ18bとによって定着ニップを形成している。
定着装置18内に送り込まれた記録シートPは、その未定着トナー像担持面を定着ローラ18aに密着させる姿勢で、定着ニップに挟まれる。そして、加熱や加圧の影響によってトナー像中のトナーが軟化さしめられて、フルカラー画像が定着せしめられる。定着装置18内から排出された記録シートPは、定着後搬送路を経由した後、機外へと排出される。
以上に説明したものは一例であり、次の態様毎に特有の効果を奏する。
[態様A]
態様Aは、像担持体(例えば中間転写ベルト3)の表面に複数色のトナー像を形成する像形成手段(例えば、光書込装置9、感光体1Y,1M,1C,1KにYトナー,Mトナー,Cトナー,Kトナーを作像するための各種装置、一次転写ローラ11Y,11M,11C,11K、及び一次転写バイアス電源からなる組み合わせ)と、重畳電圧を出力する電源(例えば二次転写電源100)とを備え、前記像担持体とニップ形成部材(例えばニップ形成ローラ17)との当接による転写ニップに前記重畳電圧による転写電界を形成しながら、前記転写ニップ内で前記像担持体上のトナー像を記録シート(例えば記録シートP)に転写する画像形成装置(例えばプリンタ)において、前記複数色のトナー像のうち、黒色トナー像(例えばKトナー像)の前記像担持体上におけるトナー付着量を、他色のトナー像の前記像担持体上におけるトナー付着量よりも少なくする条件でトナー像を形成するように前記像形成手段を構成し、且つ、前記重畳電圧における二つのピーク値のうち、前記転写ニップ内でトナー像前記像担持体側から前記記録シート側に向けてトナーをより強く静電移動させる転写ピーク値(例えば転写ピーク値Vt)ではない方である逆ピーク値(例えば逆ピーク値Vr)の側の値になっている時間の一周期における割合である逆ピーク側デューティーが50[%]よりも高い前記重畳電圧を出力するように、前記電源を構成したことを特徴とするものである。
態様Aにおいては、像形成手段が、黒色トナー像の像担持体上におけるトナー付着量を、他色のトナー像の像担持体上におけるトナー付着量よりも少なくする条件でトナー像を形成することで、黒色トナーの消費量を抑えることができる。
また、態様Aにおいては、次に説明する理由により、画像のぼそつきの発生を抑えることができる。即ち、像担持体の表面が転写ニップ内に進入すると、電源から出力される重畳電圧により、転写ニップに進入した像担持体箇所に対する充電が始まる。そして、その充電量がある閾値を超えると、トナー帯電量が他の色よりも低く、トナー付着量も他の色よりも少ない黒トナーに対する逆電荷の注入が始まる。転写ニップに進入した像担持体ト箇所に対する充電は、重畳電圧が転写ピーク値の側の値になっている時間内で起こることから、この時間が長くなるほど、黒トナーに対する逆電荷の注入量が増加する。態様Aのように、逆ピーク側デューティーが50[%]を超える重畳電圧を用いると、本発明者らが実験で明らかにしたように、黒トナーに対する逆電荷の注入量を低減して、転写不良の発生を抑えることが可能になる。これにより、転写不良による画像のぼそつきの発生を抑えることができる。
[態様B]
態様Bは、態様Aであって、前記黒トナー像を形成するための黒トナーがカーボンを含有するものであることを特徴とするものである。かかる構成では、黒色のトナー粒子を安価なカーボンによって着色することで、黒色のトナーのランニングコストを更に低減することができる。
[態様C]
態様Cは、態様A又はBにおいて、環境を検知する環境検知手段(例えば環境センサー500)と、前記重畳電圧のピークツウピーク値(例えばピークツウピーク値Vpp)を前記環境検知手段による検知結果に対応する値に変更する制御手段(例えば制御部200及び二次転写電源100の組み合わせ)とを設けたことを特徴とするものである。かかる構成においては、環境にかかわらず、画像のぼそつきの発生を抑えつつ、画像中に白点を発生させることによる画像濃度不足の発生を抑えることができる。
[態様D]
態様Dは、態様A又はBにおいて、環境を検知する環境検知手段と、前記重畳電圧の一周期の平均電位(例えば平均電位Vave)を前記環境検知手段による検知結果に対応する値に変更する制御手段とを設けたことを特徴とするものである。かかる構成においては、環境にかかわらず、画像のぼそつきの発生を抑えつつ、画像中に白点を発生させることによる画像濃度不足の発生を抑えることができる。
[態様E]
態様Eは、態様A又はBにおいて、前記重畳電圧のピークツウピーク値、及び前記重畳電圧の一周期の平均電位のそれぞれを、前記環境検知手段による検知結果に対応する値に変更する制御手段を設けたことを特徴とするものである。かかる構成においても、環境にかかわらず、画像のぼそつきの発生を抑えつつ、画像中に白点を発生させることによる画像濃度不足の発生を抑えることができる。
[態様F]
態様Fは、態様A〜Eの何れかにおいて、使用されるトナーの劣化状態を把握する把握手段と、前記重畳電圧の交流成分の周波数を前記把握手段による把握結果に対応する値に変更する制御手段とを設けたことを特徴とするものである。かかる構成においては、トナーの劣化度合いにかかわらず、画像のぼそつきの発生を抑えつつ、画像中に白点を発生させることによる画像濃度不足の発生を抑えることができる。
[態様G]
態様Gは、態様A〜Eの何れかにおいて、使用されるトナーの劣化状態を把握する把握手段と、前記重畳電圧のピークツウピーク値を前記把握手段による把握結果に対応する値に変更する制御手段とを設けたことを特徴とするものである。かかる構成においては、トナーの劣化度合いにかかわらず、画像のぼそつきの発生を抑えつつ、画像中に白点を発生させることによる画像濃度不足の発生を抑えることができる。
[態様H]
態様Hは、態様A〜Eの何れかにおいて、使用されるトナーの劣化状態を把握する把握手段と、前記重畳電圧の一周期の平均電位を前記把握手段による把握結果に対応する値に変更する制御手段とを設けたことを特徴とするものである。かかる構成においては、トナーの劣化度合いにかかわらず、画像のぼそつきの発生を抑えつつ、画像中に白点を発生させることによる画像濃度不足の発生を抑えることができる。
[態様I]
態様Iは、態様A〜Hの何れかであって、前記逆ピーク側デューティーが70[%]以上、90[%]以下であることを特徴とするものである。
[態様J]
態様Jは、態様Iであって、前記逆ピーク側デューティーが80[%]以上であることを特徴とするものである。