以下、図面を参照して本発明に係る流体移送量測定装置、流体移送量測定方法、流体移送システム、流体移送方法、及び流体個別封入体の製造方法の実施形態について説明する。図面の説明において同一の要素には同一符号を付し、その重複説明を省略する。
まず、流体移送量測定装置及びそれを用いた流体移送量測定方法の実施形態を説明する。
<流体移送量測定装置及び流体移送量測定方法の第1実施形態>
図1(a)は流体移送量測定装置の第1実施形態を示す概略構成図であり、(b)は(a)のX−X線に沿う断面図であり、図1(a)の矢印は流体の移送方向(左から右へ)を示す。本実施形態の流体移送量測定装置1は、例えば流体移送システムに用いられるものであって、流体移送量を正確に把握するために使われている。
上述したように、流体の移送性能は流体の移送環境及び設備環境に大きく影響され、移送量のバラツキが発生しやすい。しかし、医療、製薬及び食品製造の現場では、数Lや数十Lといった大容量の移送であっても、数mLや数十mLといった小容量の移送であっても、規定通りの移送量を正確に移送されることが求められている。そこで、本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、移送環境及び設備環境の影響を考慮したうえで流体の移送量を測定し、その測定結果に基づき流体移送を行うことで規定通りの移送量を確実に確保し、流体移送量の精度を向上できることを見出した。
本発明でいう流体は、液体と気体を含む。流体としては、粒子や細胞や固形物などの粒状物を含む懸濁液、液体の薬品、醤油やたれなどの調味料、洗剤やシャンプーなどの日用品等が挙げられる。そして、液体の薬品としては、生理食塩水等の電解質輸液、ブドウ糖等の糖質注射液、血液製剤、抗生物質、抗体等の蛋白質性医薬品、低分子蛋白質、ホルモン等のペプチド性医薬品、核酸医薬品、細胞医薬品、各種感染症を予防するワクチン、ステロイド剤、インスリン、抗がん剤、蛋白質分解酵素阻害剤、鎮痛剤、解熱鎮痛消炎剤、麻酔剤、脂肪乳剤、血圧降下剤、血管拡張剤、ヘパリン塩化ナトリウムや乳酸カリウム等の電解質補正用注射液、ビタミン剤、造影剤等が挙げられる。
また、液体については、医療分野、製薬分野及び食品分野に問わず、身体に摂取する場合にその安全性や治療効果等が求められている。従って、大容量のコンクリートの分注等と異なり、数gや数mLレベルの重さや容量の管理が要求されており、高い精度での移送が実施されること、低作業負荷であることが重要である。特に医薬品の場合は、容量や粒子の数等が治療効果に大きく左右するので、厳格な管理が最も有益である。
本実施形態及び以下の実施形態においては、特に言及しない限り、流体を液体の薬品(以下、薬液Cと称する)とする。そして、薬液Cの移送方法は、滅菌処理された空気や無菌の空気等の気体を利用して薬液Cを押し出すことである。
図1(a)に示すように、流体移送量測定装置1は、薬液Cを移送可能とされる測定経路10と、該測定経路10上に設けられるとともに移送される薬液Cを外部から視認可能な視認部11と、該視認部11の特定区間の容積と該特定区間の長さとの関係性を示す表示部12とを備えている。
測定経路10は、同じ直径を有する円筒状の配管によって形成されているが、楕円筒状、角筒状などの配管により形成されても良い。そして、測定経路10の断面積をA1としたとき、A1≦100mm2の条件を満たすことが好ましい。これは、例えば後述の表示部12における目視可能な目盛り幅(すなわち、目盛りの間隔)を少なくとも1mm程度とし、薬液Cの移送量が10mLである場合に、移送量のバラツキを1%以下に抑えることを考慮し設定されたものである。このようにすれば、少量の薬液Cであっても、断面積が小さいほど薬液Cが充填される区間が長くなるため、僅かな薬液Cの容積の差を区間の長さの差として反映しやすい。そして、区間の長さの位置を正確に確認することで高精度に容積を確認することができるので、測定の精度を高めることができる。なお、測定経路10の断面積は、断面円形の場合はその半径、断面楕円の場合はその長軸半径及び短軸半径、断面矩形の場合はその幅及び高さ等に基づいて求められる。また、本実施形態を含む本発明において、測定経路の断面積又は直径は、特に断りがない限り測定経路内に形成された流体の移送方向に対して垂直な経路形状の断面積又は直径を表す。
測定経路10の材料としては、薬液Cへの影響の少ない材料であれば良く、例えばポリ塩化ビニル、エチレン酢酸ビニル共重合樹脂、ポリエチレン、シリコン樹脂、フッ素樹脂、ポリアミド樹脂などが挙げられる。測定経路10の長手方向(すなわち、薬液Cの移送方向)において、測定経路10の側壁の一部は切り取られて、その中に透明又は半透明なアクリル樹脂板を嵌め込むことにより窓状の視認部11をなしている。
視認部11の近接位置には、該視認部11の全長に延びる表示部12が配置されている。表示部12は、目盛りが印刷されたラベルやシールからなり、接着剤などで測定経路10の外壁に貼り付けられている。表示部12の目盛りは、視認部11の特定区間の容積と該特定区間の長さとの関係性を示すものである。特定区間は視認部11長さの一部であっても良く、該視認部11長さの全範囲であっても良い。
ここで、特定区間の容積と該特定区間の長さとの関係性は、例えば該特定区間の容積と長さとの間に比例関係があればその比例関係、比例関係がなくても両者の間に所定の規則性があればその規則性のこと指す。本実施形態では、測定経路10が同じ直径を有する円筒状の配管であるので、特定区間の容積と該特定区間の長さとの関係性を示す表示部12の目盛りは、特定区間の容積と該特定区間の長さとの比例関係を示し、同じ間隔を有するものである。一方、測定経路の断面積が所定の規則で変化する場合、例えば後述の変形例16に示すように測定経路45が薬液Cの移送方向に沿って直径が徐々に拡大される拡径管からなる場合には、特定区間の容積と該特定区間の長さと所定の規則性を示す。すなわち、薬液Cの移送方向に沿って後方(図1において右側)に行くほど測定経路45の断面積が大きくなるので、目盛りの間隔も後方に行くにつれて小さくなり、換言すれば後方に行くほど目盛りが細かくなっていく。
本実施形態において、目盛りは実線で描かれているが、破線、一点鎖線等の異なる線種で描かれても良く、或いはこれらの線種を併用して描かれても良い。また、目盛りとなる線は必要に応じて線の太さ、連続性、形状(例えば直線、波線)、色相、彩度、明度等を変えても良い。更に、目盛りのうち、薬液Cが達する部分の色が変化するように形成されても良い。このようにすれば、薬液Cが達した位置をより確認しやすくなる。なお、色の変化には、例えば温度による変色、感圧による変色などのように既に周知された技術を用いることができる。
このような構造を有する流体移送量測定装置1は、分岐コネクタや接続コネクタ等の接続部材を介せずに流体移送システムの移送経路に直接的に接続された状態(後述の流体移送システムの第1実施形態参照)、すなわち移送経路と一体化された状態で使用されても良く、又は分岐コネクタや接続コネクタ等の接続部材を介して流体移送システムの移送経路に間接的に接続された状態で使用されても良く(後述の流体移送システムの第2実施形態参照)、或いは流体移送システムから独立して使用されても良い。ここで、一体化とは、流体移送量測定装置1が流体移送システムの一部として該流体移送システムに事前に組み込まれることを意味する。また、間接的に接続された状態とは、分岐コネクタや接続コネクタ等の接続部材を利用し、既存の流体移送システムの移送経路に並列(例えば図24、25参照)又は直列(例えば図26参照)に接続するように取り付けることを意味する。
本実施形態の流体移送量測定装置1では、移送される薬液Cを外部から視認可能な視認部11と、該視認部11の特定区間の容積と該特定区間の長さとの関係性を示す表示部12とを備えるので、移送システムと同じ移送環境及び設備環境で薬液Cの移送量を実際に測定することができ、薬液Cの移送量を事前に把握することができる。そして、その測定した結果に基づき薬液Cの移送を行うことで、薬液C移送量精度の向上を図ることが可能になる。従って、このように移送環境及び設備環境の影響を考慮した流体移送量測定装置1によれば、数Lや数十Lといった大容量の移送であっても、数mLや数十mLといった小容量の移送であっても、規定通りの移送量を正確に移送することができる。
上述の流体移送量測定装置1を用いた測定方法として、例えば、該流体移送量測定装置1をポンプを有する流体移送システムに接続した後に、ポンプを一回転させることで薬液Cを移送させる。その際に、視認部11及び表示部12を介して移送前後における薬液Cの位置の変化を把握し、ポンプ一回転当たりの薬液Cの移送距離(すなわち、特定区間の長さ)を測定することができる。そして、移送距離は表示部12により容積と対応づけられているため、移送距離に基づいて移送量(すなわち容積)を算出することができる。或いは、該流体移送量測定装置1をポンプを有する移送システムに接続した後に、ポンプを所定時間で駆動することで薬液Cを移送させる。その際に、視認部11及び表示部12を介して移送前後における薬液Cの位置の変化を把握し、単位時間当たりの薬液Cの移送距離を測定する。そして、移送距離は表示部12により容積と対応づけられているため、移送距離に基づいて移送量(すなわち容積)を算出することができる。このようにすれば、薬液Cの移送量を容易且つ正確に把握することができる。
なお、薬液Cの先端面を基準面として表示部12の目盛りに基づき薬液Cの移送距離を測定する際に、仮に薬液Cの先端面が目盛りの間に止まった場合に、例えば画像処理で先端面の位置が目盛りの間隔に占める割合を算出し、その割合で案分しても良く、又は状況に応じて切り捨てや切り上げを行っても良い。また、薬液Cの先端面がメニスカスで凹型になった場合に、画像処理で先端面を近似直線に変換して直線として扱っても良く、或いは薬液Cの測定経路10壁面と接する最先端で判定したり、凹型の底面で判定したりしても良い。
なお、流体移送量測定装置1については、様々な変形例が考えられる。以下、図2〜図18を参照してその変形例を説明する。
<変形例1>
図2〜図4に示す変形例1では、流体移送量測定装置1Aの表示部13は、視認部11と一体化されている。具体的には、表示部13は、視認部11上に設けられており、その目盛りが視認部11を構成するアクリル樹脂板に直接印字されている。ここで、直接印字のほか、レーザ印字、アクリル樹脂板に溝を掘ることにより目盛りを形成しても良い。
表示部13の目盛りは、その間隔が同じであるが、識別しやすくするために薬液Cの移送方向に沿って右に進むにつれ、該移送方向に直交する方向に徐々に長くなるように形成されている。そして、この流体移送量測定装置1Aを使う際に、例えば図2(a)に示すように、薬液C(灰色部分参照)の先端面(すなわち液体と気体との境界面であり、気液界面ともいう)を視認部11上に設けられたスタートラインに配置させた後に、ポンプ駆動で薬液Cの移送を行う。
移送後の薬液Cの先端面が目標目盛りに達していない場合(図2(b)参照)、その不足分を目標目盛りまでの目盛り数で容易に算出することができる。一方、薬液Cの先端面が目標目盛りに達する場合(図3(a)参照)、移送量が適当であることが分かる。一方、薬液Cの先端面が目標目盛りを超えた場合(図3(b)参照)、その超過分を目標目盛りまでの目盛り数で容易に算出することができる。
変形例1の流体移送量測定装置1Aによれば、上記第1実施形態と同様な作用効果を得られるとともに、第1実施形態と同様に視認部11と表示部13とが一体化されていることで目盛りの振り間違いを防止し、視認部11と表示部13との位置ずれを防ぐことができる。
なお、空気等の気体で薬液Cを押出することにより移送する場合には、薬液Cの後端面にも気液界面が形成される。このため、図4に示すように、移送される薬液Cの後端面を基準にして測定を行っても良い。具体的には、薬液Cの後端面が視認部11上に設けられたスタートラインに位置したときに測定をスタートし(図4(a))、移送終了時に該後端面が目標目盛りに達する場合、移送量が適当であることが分かる(図4(b))。
<変形例2>
図5に示す変形例2では、流体移送量測定装置1Bの表示部14は、視認部15とは別体に設けられている。図5(a)は表示部14と視認部15とを分離した状態を示す図である。表示部14は、目盛りを有する板状部材によって構成されており、視認部15よりも広く形成されている。視認部15は、円筒状に形成され、測定経路10と同じ大きさの断面を有し、測定経路10同士に挟むようにこれらの測定経路10と接続されている。なお、この視認部15は、透明又は半透明な材料により形成されている。
このような構成を有する流体移送量測定装置1Bを使用する際に、図5(b)に示すように、視認部15を表示部14の手前に位置するように両者の相対位置を固定させる。そして、視認部15が透明又は半透明な材料により形成されるので、視認部15側からも表示部14の目盛りを確認できる状態になる。ここで、表示部14も透明又は半透明な材料によって形成される場合、表示部14を視認部15の手前に位置するようにしても良い。そして、表示部14が透明又は半透明な材料によって形成されて且つ視認部15の手前に位置して使用される場合、視認部15は全体が透明又は半透明でなくても良く、例えば第1実施形態又は変形例1に示すように透明な窓部が設けられても良い。
変形例2の流体移送量測定装置1Bによれば、上記第1実施形態と同様な作用効果を得られるほか、表示部14が視認部15と別体に設けられるので、測定するときに表示部14を視認部15に固定したり、測定終了後に表示部14を取り外したりすることが可能である。更に、目盛りが汚れるときに表示部14を容易に交換することができるので、流体移送量測定装置1Bの耐用性を高める効果を奏する。
<変形例3>
図6に示す変形例3では、流体移送量測定装置1Cの視認部16は、円筒状に形成されており、その直径が測定経路10よりも小さい。具体的には、視認部16は、測定経路10と同軸上に配置されるとともに、その両端が拡径部10aを介して測定経路10に接続されている。ここで、視認部16の特定区間は該視認部16長さの全範囲である。一方、表示部17は、視認部16に直接付され、その目盛りが破線状になっている。
変形例3の流体移送量測定装置1Cによれば、上記第1実施形態と同様な作用効果を得られるほか、視認部16の直径を測定経路10の直径より小さくすることで、移送の際に断面積が小さいほど薬液Cが充填される特定区間が長くなるため、僅かな薬液Cの容積の差を特定区間の長さの差として反映しやすく、薬液Cの位置を正確に確認することで測定の精度を高めることができる。また、視認部16を含む測定経路10の全ての直径を小さくする場合と比べて、測定したい移送量に相当する部分(すなわち、特定区間)だけの直径を小さくすることにより、測定経路10の全長が長くなり過ぎることを抑制できる。
<変形例4>
図7に示す変形例4では、流体移送量測定装置1Dの測定経路18及び視認部19は、それぞれ角筒状(例えば、四角筒状)を呈している。図7(b)に示す上下方向において、視認部19の幅は、該視認部19を除いた測定経路18の幅よりも小さい。この視認部19は透明又は半透明な材料によって形成され、その底面が測定経路18の底面と同一平面上に位置するように、拡径部18aを介して測定経路18に接続されている。ここで、視認部19の特定区間は該視認部19長さの全範囲である。一方、表示部30は、視認部19に直接付されており、その目盛りが破線状になっている。なお、図7(a)において、表示部30は横方向しか付されていないように見えるが、実際には視認部19の上方にも付されている。すなわち、視認部19の横方向及び上方向の何れの方向から表示部30を確認できるようになっている。そして、視認部19の横方向よりも上方向からのほうが、目視できる流体の幅が広く測定できるので、測定がしやすくなる。
変形例4の流体移送量測定装置1Dによれば、上記第1実施形態と同様な作用効果を得られるほか、視認部19の幅を測定経路18の幅より小さくすることで、移送の際に断面積が小さいほど薬液Cが充填される特定区間が長くなるため、僅かな薬液Cの容積の差を特定区間の長さの差として反映しやすく、薬液Cの位置を正確に確認することで測定の精度を高めることができる。また、測定したい移送量に相当する部分(すなわち、特定区間)だけの幅を小さくすることにより、測定経路18の全長が長くなり過ぎることを抑制できる。更に、測定経路18及び視認部19が角筒状に形成されており、円筒状の場合と比べて平面部があるので、測定経路18を固定しやすく、しかも視認部19を確認しやすくなる。その結果、測定経路18の固定作業及び視認部19の確認作業の負荷を低減することができる。
<変形例5>
図8(a)に示す変形例5では、流体移送量測定装置1Eの表示部31は、目盛りを有する板状部材により構成され、測定経路10及び視認部11に対して着脱可能に設けられている。この表示部31は、測定経路10の外壁に近接して配置され、測定経路10の長手方向に沿って延びている。そして、表示部31の長手方向において、少なくとも視認部11に対応する部分には、目盛りが印字されている。
変形例5の流体移送量測定装置1Eによれば、上記第1実施形態と同様な作用効果を得られるほか、表示部31が視認部11に対して着脱可能に設けられるので、測定するときに表示部31を測定経路10の外壁に配置したり、測定終了後に表示部31を取り外したりすることが可能である。その結果、流体移送量測定装置1Eが収納しやすくなるとともに、例えば流体移送量測定装置1Eが流体移送システムの移送経路と一体化された状態で使用される場合に、測定終了後に表示部31を取り外すことにより、移送作業等を邪魔することを防止できる。
<変形例6>
図8(b)に示す変形例6では、流体移送量測定装置1Fの表示部32は、視認部11が設けられた測定経路10の部分にはめられた複数のリング状の弾性部材(例えば、ゴムバンド)32aと、測定経路10に沿って延設されるとともに弾性部材32aをガイドするガイド部32bによって構成されている。ガイド部32bは、長尺状を呈し、測定経路10に対して着脱可能に設けられている。このガイド部32bは、測定経路10の外壁に近接して配置されている。そして、ガイド部32bの測定経路10に面する側には、視認部11の特定区間の容積と該特定区間の長さとの関係性を示す複数の凹部321が所定の規則性で形成されている。弾性部材32aは、ガイド部32bの各凹部321の位置に合わせるように配置されている。すなわち、弾性部材32aは、目盛りの役割を果たすものであり、その位置がガイド部32bによって決められている。ここで、ガイド部32bに代えて上述変形例5の板状部材を利用しても良い。また、リング状の弾性部材に代えて金属製のリング状部材を用いて良い。更に、上述のリング状部材に代えてクリップのような形状で一部固定の形態を利用しても良く、その場合、測定経路10の全周にリング状の弾性部材を設ける必要がなくなり、部材の節約を図ることができる。
変形例6の流体移送量測定装置1Fによれば、上記第1実施形態と同様な作用効果を得られるほか、リング状の部材を用いるので、例えば移送量を大幅に変更したいときや、目盛りの位置を変更したいときに、目盛りを印字する場合と比べてリング状の部材の位置を容易に動かすことができる。
<変形例7>
図9に示す変形例7では、流体移送量測定装置1Gの表示部33は、視認部11の特定区間の容積と該特定区間の長さとの関係性を色変化で表示するようにされている。具体的には、表示部33は、目盛りを有しておらず、例えば紫、青、緑、黄色、橙、赤等の多種類の色で上記の関係性を表している。ここで、多種類の色に代えて、単一色を用いてその濃さの変化で表示しても良い。
変形例7の流体移送量測定装置1Gによれば、上記第1実施形態と同様な作用効果を得られるほか、特定区間の容積と該特定区間の長さとの関係性を色変化で表示するので、例えば人目に付きやすい赤色の区間まで薬液Cが達する場合に入れ過ぎることを示すように、色別で表示の意味を区別することによって、単にシステムとして動作させるだけでなく、作業者が直感的に分かりやすいような構成とすることができ、作業負担を軽減することができる。
<変形例8>
図10(a)に示す変形例8では、流体移送量測定装置1Hの表示部35は、視認部34の特定区間の容積と該特定区間の長さとの関係性を視認部34の形状の変化で表示するようされている。具体的には、視認部34は、円筒状に形成され、測定経路10と同じ断面積を有し、測定経路10同士に挟まれるようにこれらの測定経路10と接続されている。なお、この視認部15は、透明又は半透明な材料により形成されている。
薬液Cの移送方向において、視認部34の両端部の外壁には、周方向に沿う前方溝部34aと後方溝部34bとがそれぞれ設けられている。ここで、前方溝部34aは表示部35の開始位置、後方溝部34bは表示部35の終了位置をそれぞれ示し、すなわち、前方溝部34a及び後方溝部34bは目盛りの役割を果たす。そして、前方溝部34aから後方溝部34bまでの区間は視認部34の特定区間になる。なお、視認部34における前方溝部34a及び後方溝部34bに対応する位置の断面積は、前方溝部34a及び後方溝部34bの設置によって変化しないように形成されて良く、これらの溝部の設置によって変化する(例えば、直径を小さくする)ように形成されても良い。
ここで、溝部に代えて突出部を設けても良い。例えば図10(b)に示すように、視認部34の両端部の外壁には、該外壁から突出する前方突出部34cと後方突出部34dとがそれぞれ設けられている。前方突出部34cは表示部35の開始位置、後方突出部34dは表示部35の終了位置をそれぞれ示し、すなわち、前方突出部34c及び後方突出部34dは目盛りの役割を果たす。そして、前方突出部34cから後方突出部34dまでの区間は視認部34の特定区間になる。なお、視認部34における前方突出部34c及び後方突出部34dに対応する位置の断面積、前方突出部34c及び後方突出部34dの設置によって変化しないように形成されても良く、これらの突出部の設置によって変化する(例えば、直径を大きくする)ように形成されても良い。
ここで、視認部34の両端部のうち一方の外壁に溝部、他方の外壁に突出部をそれぞれ設けても良い。例えば図10(c)に示すように、視認部34の両端部のうち前方の外壁には前方溝部34a、後方の外壁には後方突出部34dがそれぞれ設けられている。この場合、前方溝部34aは表示部35の開始位置、後方突出部34dは表示部35の終了位置をそれぞれ示し、すなわち、前方溝部34a及び後方突出部34dは目盛りの役割を果たす。そして、前方溝部34aから後方突出部34dまでの区間は視認部34の特定区間になる。なお、視認部34における前方溝部34a及び後方突出部34dに対応する位置の断面積は、前方溝部34a及び後方突出部34dの設置によって変化しないように形成されて良く、前方溝部34a及び後方突出部34dの設置によって変化する(例えば、前方溝部34aに対応する位置の直径を小さくし、後方突出部34dに対応する位置の直径を大きくする)ように形成されても良い。
変形例8の流体移送量測定装置1Hによれば、上記第1実施形態と同様な作用効果を得られるほか、更に以下の作用効果を得られる。すなわち、表示部の目盛りが印字された場合と比べて汚れに強い。また、表示部35の直径を大きくすることで気液界面を確認する場合には、気液界面の移動速度が直径が増える分一瞬遅くなるので変化を見逃し難い。また、目盛りが前後1箇所ずつ設けられるので、移送量が規定より多いか、少ないかをダイレクトに測定することができる。更に、2つの目盛り間の移送時間も合わせて測定することで、移送性能の分解能を高めることができる。
また、図10(a)に示すように前方溝部34a及び後方溝部34bの設置によって、視認部34におけるこれらの溝部に対応する位置の直径を小さくした場合は、直径が変化しない場合と比べて、より正確に容積の変化を測定できる。一方、図10(b)に示すように前方突出部34c及び後方突出部34dの設置によって、視認部34におけるこれらの突出部に対応する位置の直径を大きくした場合は、直径が変化しない場合と比べて、薬液Cの移送速度が遅くなり、作業者がその変化を見逃す可能性を低減することができる。
<変形例9〜11>
図11に示す変形例9では、流体移送量測定装置1Jの表示部36は所定の長さを有する1本の直線によって形成されている。すなわち、表示部36は、視認部11の特定区間の容積と該特定区間の長さとの関係性を直線の長さで示している。そして、該流体移送量測定装置1Jを使う際に、例えば図11(a)に示すように、薬液Cの先端面を直線の始端に位置させ、その後にポンプ駆動等で所定の時間で薬液Cの移送を行う。
移送後の薬液Cの先端面が直線の終端に達する場合(図11(b)参照)、移送量が適当であることが分かる。一方、薬液Cの先端面が直線の終端に達していない場合、又は超えた場合、移送量が適当でないことが分かり、その不足分又は超過分を直線の長さに基づいて求めることができる。
また、直線に代えて、図12に示すように流体移送量測定装置1K(変形例10)の表示部37に斜線、図13に示すように流体移送量測定装置1L(変形例11)の表示部38に曲線(例えば螺旋状の曲線)を用いても良い。
変形例9〜11の流体移送量測定装置によれば、上記第1実施形態と同様な作用効果を得られるほか、更に以下の作用効果を得られる。例えば撮像装置を用いて薬液Cの移送に伴う変化を観察する際に、複数の目盛りを有する場合と比べて、光の変化によって目盛りが薄く細く映ってしまう原因で判別し難くなったり、目盛りにゴミの付着で確認し難くなったりする場合であっても、撮像装置で薬液C移送の変化を追いかけながらも基本的に上述の直線、斜線又は曲線の始端及び終端での変化を捉えることで、環境変化に対応しやすいシステムとすることができるとともに、目標に対する到達度合が把握しやすくなる。
<変形例12>
図14に示す変形例12では、流体移送量測定装置1Mの測定経路10及び視認部11は、その一部がO字状に曲げられることにより、直線部分と曲線部分とを有するように形成されている。ここで、薬液Cの移送方向において、直線部分と曲線部分との最初連結位置(図14において、手前に位置する直線部分と曲線部分との連結位置)を表示部39の開始位置、それに次ぐ直線部分と曲線部分との連結位置(図14において、奥に位置する直線部分と曲線部分との連結位置)を表示部39の終了位置をそれぞれ示す。
変形例12の流体移送量測定装置1Mによれば、上記第1実施形態と同様な作用効果を得られるほか、例えば撮像装置を用いて薬液Cの移送に伴う変化を観察する際に、測定経路10の全長が長くなるような場合でも、撮像装置の1画面内に測定経路10を収めることができるので、作業者が一見して状態を把握しやすく、撮像装置の台数の増加を抑制することができる。
<変形例13>
図15に示す変形例13では、流体移送量測定装置1Nの表示部40を視認できない区間とし、それを挟んで前後方向の測定経路10を視認区間としている。表示部40は例えば黒塗りされており、一方、測定経路10は透明又は半透明な材料によって形成されている。そして、該流体移送量測定装置1Nを使って測定する場合、薬液Cが黒塗りされた表示部40に入り、再び視認できるようになるまでを測定することより、所定の容積の移送を確認することができる。
変形例13の流体移送量測定装置1Nによれば、上記第1実施形態と同様な作用効果を得られるほか、例えば複数の目盛りを有する場合と比べて、黒塗りされた表示部全体が剥がれる等で想定外の誤差が生じる可能性を減らすことができる。
<変形例14>
図16に示す変形例14では、流体移送量測定装置1Pの表示部41を視認できない区間とし、それを挟んで前後方向の測定経路10を視認区間としている。表示部41は接続コネクタ等の接続部材からなり、外部から内部に視認できない金属材料又は樹脂材料によって形成されている。一方、測定経路10は透明又は半透明な材料によって形成されている。そして、該流体移送量測定装置1Pを使って測定する場合、薬液Cが表示部41中を移送される間に測定することにより、所定の容積の移送を確認することができる。
変形例14の流体移送量測定装置1Pによれば、上記第1実施形態と同様な作用効果を得られるほか、既存の移送経路及び接続部材を利用し測定を行うことが可能であるので、コストの削減を図ることができる。
<変形例15>
図17に示す変形例15では、流体移送量測定装置1Qの測定経路42及び視認部43は、それぞれ円筒状を呈している。視認部43は、透明又は半透明な材料によって形成されている。視認部43の特定区間は該視認部43長さの全範囲である。また、視認部43には、表示部44の目盛りが直接付されている。一方、該視認部43を挟んで前後方向の測定経路42は全て黒塗りされて、視認できない区間とされている。
変形例15の流体移送量測定装置1Qによれば、上記第1実施形態と同様な作用効果を得られるほか、測定経路42は全て黒塗りされているので、移送される流体が外部光等に対してデリケートなものや、外部光に対して反応性のあるものである場合に、測定以外に外部光が遮断されるので、移送される流体の品質を維持することができる。
<変形例16>
図18に示す変形例16では、測定経路45が薬液Cの移送方向に沿って前方から後方に向かって直径が徐々に拡大される拡径管によって形成されている。測定経路45の側壁の一部は切り取られて、その中に透明又は半透明なアクリル樹脂板を嵌め込むことにより窓状の視認部47が配置されている。表示部46は、視認部47上に設けられており、その目盛りが視認部47を構成するアクリル樹脂板に直接印字されている。薬液Cの移送方向に沿って後方に行くほど測定経路45の断面積が大きくなるので、表示部46の目盛りの間隔も後方に行くにつれて小さくなり、換言すれば後方に行くほど目盛りが細かくなっている。
変形例16の流体移送量測定装置1Rによれば、上記第1実施形態と同様な作用効果を得られるほか、表示部46の目盛りの間隔も前方のほうが大きくなっているため、同じ目盛り間隔を有する第1実施形態の表示部12と比べて、前方のほうが薬液Cの同じ容積差を目盛りの差として認識しやすいので、特に測定開始時に測定の精度を高める効果を奏する。更に、目盛り間隔が広くなっている部分に、より細かな容積を測定可能な補助目盛りを設けることにより、より細かな移送量の測定が可能になる。なお、図18において表示部46の目盛りは実線で描かれているが、上述の第1実施形態のように破線、一点鎖線等の異なる線種で描かれても良く、或いはこれらの線種を併用して描かれても良い。また、目盛りとなる線は必要に応じて線の太さ、連続性、形状、色相、彩度、明度等を変えても良い。
ここで、表示部46は、視認部47の特定区間の容積と該特定区間の長さとの関係性を色変化で表示するようにされることが好ましい。例えば該表示部46は、上記の目盛りに加えて、各目盛り間隔を紫、青、緑、黄色、橙、赤等の多種類の色で表示しても良く、または単一色を用いてその濃さの変化で表示しても良い。或いは、該表示部46は、目盛りに代えて上述の変形例7のように紫、青、緑、黄色、橙、赤等の多種類の色で視認部47の特定区間の容積と該特定区間の長さとの関係性を表示しても良い。このように色別や色の濃さで表示の意味を区別することによって、作業者が直感的に分かりやすいような構成とすることができ、作業負担を軽減することができる。
更に、視認部47もしくは表示部46のうち、薬液Cが達する部分の色が変化するように形成されても良い。このようにすれば、薬液Cが達した位置をより確認しやすくなる。なお、色の変化には、例えば温度による変色、感圧による変色などのように既に周知された技術を用いることができる。なお、本変形例に記載された「表示部46が視認部47の特定区間の容積と該特定区間の長さとの関係性を色変化で表示するようにされる」こと、「視認部47もしくは表示部46のうち薬液Cが達する部分の色が変化するように形成される」ことについては、上述の変形例及び実施形態にも適用される。
本実施形態に係る流体移送量測定装置1の変形例は、上述の変形例に限定されない。例えば表示部は、圧力センサなどを利用して視認部の特定区間の内部圧力の変化を表示するように形成されても良く、またはひずみゲージなどを利用し、視認部の特定区間において移送される薬液Cの位置を変形により表示するように形成されても良い。
<流体移送量測定装置及び流体移送量測定方法の第2実施形態>
図19は流体移送量測定装置の第2実施形態を示す概略構成図である。本実施形態の流体移送量測定装置2と第1実施形態との相違点は、視認部及び表示部を設けずに、撮像部及び制御部を設けることである。その他の構成は第1実施形態と同様であるので、重複説明を省略する。
具体的には、本実施形態の流体移送量測定装置2は、薬液Cを移送可能とされる測定経路10と、該測定経路10の特定区間を流れる薬液Cを撮像する撮像部24と、流体移送量測定装置2全体の制御を行う制御部20とを備えている。
撮像部24は、例えばカメラからなり、測定経路10の特定区間の真上に配置され、該特定区間を流れる薬液Cを撮像し、撮像した画像を後述の画像検出部21に送信する。撮像された薬液Cの画像には、薬液Cが特定区間を流れる際の様子が全て含まれている。従って、例えば所定量の薬液Cが移送されるとき、薬液Cの先端面から後端面までの様子が全て撮像される。
撮像部24に用いられるカメラは、可視光画像を撮像する可視光カメラであっても良く不可視光画像を撮像する赤外線カメラや紫外線カメラであっても良い。そして、可視光カメラを用いた場合、少なくとも測定経路10の特定区間は透明又は半透明な材料によって形成されれば良く、或いは上記第1実施形態のように透明なアクリル樹脂板からなる窓状の視認部11を設けて、そこから流れる薬液Cを撮像しても良い。一方、赤外線カメラや紫外線カメラを用いた場合、該測定経路10の特定区間が透明又は半透明な材料により形成される必要がない。
制御部20は、例えばCPU、ROM、RAMを含むコンピュータを主体として構成されており、予め記憶された制御プログラムに基づいて、撮像部24の撮像タイミング等を含む装置全体の各操作を制御している。この制御部20は、撮像部24によって撮像された画像を検出するための画像検出部21と、該画像検出部21に検出された結果に基づいて特定区間の容積と該特定区間の長さとの関係を算出する算出部22と、算出部22の算出結果を示すディスプレイ23とを有する。
本実施形態において、画像検出部21は、撮像部24によって撮像された画像に対し画像処理を行い、移送される薬液Cの先端面又は後端面の画像を検出しても良く、移送される懸濁液中の特定の粒子などの画像を検出しても良い。この画像検出部21は、算出部22に接続されており、その検出した結果を算出部22に送信する。
例えば移送される懸濁液中の特定の粒子の画像を検出する場合、まず、撮像部24の設置個所に粒子を含む懸濁液(薬液C)が移送された状態を開始位置とし、その後にポンプを動作させて移送を行うとともに撮像部24で移送の様子を動画で撮像する。次に、画像検出部21で画像処理が行われる。制御部20は、画像処理した結果に基づいて特定の粒子の流れをトラッキングし、一定の時間で粒子の移送距離を測定する。ここで、移送様子とともに目盛りを有する表示部を撮像すれば、粒子の移送距離が測定しやすくなる。算出部22は、測定した粒子の移送距離に基づき、単位時間当たりの移送距離を算出する。なお粒子は、例えば形状、真円度、大きさ、突起状態、色相、彩度、明度等の特徴で見分ける。
以上の構成を有する流体移送量測定装置2では、画像検出部21が撮像部24により撮像された画像から気液界面(薬液Cの先端面又は後端面)或いは特定の粒子の画像を検出し、算出部22が画像検出部21の検出した結果に基づいて特定区間の容積と該特定区間の長さとの関係を算出するので、移送システムと同じ移送環境で薬液Cの移送量を実際に測定することができ、薬液Cの移送量を事前に把握することができる。そして、その測定した結果に基づき薬液Cの移送を行うことで、薬液C移送量の測定精度の向上を図ることが可能になる。更に、算出部22によって算出された結果がディスプレイ23に表示されるので、作業者が容易にその結果を確認することができる。なお、該流体移送量測定装置2を用いた流体移送方法について、後述する。
<流体移送量測定装置及び流体移送量測定方法の第3実施形態>
図20は流体移送量測定装置の第3実施形態を示す概略構成図である。本実施形態の流体移送量測定装置3と第2実施形態との相違点は、画像検出部21に代えて特定区間の内部圧力の変化を検出する圧力検出部25を設けることである。その他の構成は第2実施形態と同様であるので、重複説明を省略する。
具体的には、圧力検出部25は、それに備え付けられたセンサ26を介して、流体が測定経路10の特定区間を流れることによって該特定区間の内部圧力の変化を検出し、更にその検出結果を算出部22に送信する。センサ26は、測定経路10の内部に設置されている。圧力検出部25としては、例えば重錘型圧力計、U字型マノメータ、拡散型半導体歪ゲージ、レゾナントセンサなどが挙げられる。一方、算出部22は、圧力検出部25から送信された圧力結果に基づき、特定区間の容積と該特定区間の長さとの関係を算出する。例えば、算出部22は、薬液Cの先端面又は後端面での内部圧力変化に基づいて、特定区間の容積と該特定区間の長さとの関係を算出し、又は内圧の変化に応じて薬液Cの内容量の圧縮率を算出する。一方、制御部20は、算出部22により算出された結果をディスプレイ23を介して作業者に知らせる。
このように構成された流体移送量測定装置3によれば、上述の第2実施形態と同様な作用効果を得られる。また、該流体移送量測定装置3を用いた流体移送方法について、後述の流体移送量測定装置2を用いた流体移送方法と同様のため、その説明を省略する。
<流体移送量測定装置及び流体移送量測定方法の第4実施形態>
図21は流体移送量測定装置の第4実施形態を示す概略構成図である。本実施形態の流体移送量測定装置4と第2実施形態との相違点は、画像検出部21に代えて特定区間の変形を検出する変形検出部27を設けることである。その他の構成は第2実施形態と同様であるので、重複説明を省略する。
変形検出部27は、流体が測定経路10の特定区間を流れることによって測定経路10の特定区間で生じた変形(ここでは、測定経路10のひずみ)を検出している。本実施形態では、変形検出部27は、それに備え付けられたひずみゲージ28を介して流体の流れに起因する測定経路のひずみを検出し、検出した結果を算出部22に送信する。ひずみゲージ28は、該特定区間の測定経路10の外壁に密着するように配置されている。算出部22は、変形検出部27から送信されてきたひずみの結果に基づき、特定区間の容積と該特定区間の長さとの関係を算出する。例えば、算出部22は、薬液Cの先端面又は後端面でのひずみに基づいて、特定区間の容積と該特定区間の長さとの関係を算出する。制御部20は、算出部22により算出された結果をディスプレイ23を介して作業者に知らせる。
このように構成された流体移送量測定装置4によれば、上述の第2実施形態と同様な作用効果を得られる。また、該流体移送量測定装置4を用いた流体移送方法について、後述の流体移送量測定装置2を用いた流体移送方法と同様のため、その説明を省略する。
次に、流体移送システム及び流体移送方法の実施形態を説明する。
<流体移送システム及び流体移送方法の第1実施形態>
図22は流体移送システムの第1実施形態に示す概略構成図である。本実施形態の流体移送システム50は、例えば製薬現場に用いられたものであって、容積が比較的大きい第1容器51に貯留される薬液Cを、容積が比較的に小さい複数の第2容器52に無菌環境下で均一に移送(すなわち、分注)するためのシステムである。
流体移送システム50は、上述の第1容器51及び複数の第2容器52のほか、第1容器51と各第2容器52とをそれぞれ接続して第1容器51に貯留される薬液Cを各第2容器52に移送する複数の移送経路56と、移送経路56と直接的に接続された流体移送量測定装置1とを備えている。
第1容器51は、滅菌処理が施された無菌バッグまたは滅菌バッグであり、例えば薬液Cに対して低吸着性及び低溶出性を有する高密度ポリエチレン(HDPE)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリカーボネート(PC)、ポリスチレン(PS)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、シクロオレフィンポリマー(COP)、シクロオレフィンコポリマー(COC)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリ塩化ビニル、エチレン酢酸ビニル共重合樹脂、フッ素樹脂、シリコン樹脂、ABS樹脂、ポリアミド樹脂等によって形成されている。なお、第1容器51は、ガラスや金属などの素材によって形成されても良い。
第1容器51は、その内部に貯留される薬液Cを外部に取り出すための出口ポート51aを有する。出口ポート51aは、内部に開閉コックが設けられ、開閉可能にされている。第1容器51の内部には、薬液Cのほか、移送用気体Gも貯留されている。移送用気体Gとしては、たとえばガンマ線等により滅菌処理された空気、無菌フィルタを通した無菌的な空気等の気体を用いることができる。また、図示しないが、第1容器51は、無菌フィルタを備えた通気口を有し、無菌フィルタを介して外部空間に連通してもよい。
第1容器51は、その内部に貯留された薬液Cと移送用気体Gを順次送り出すように、切換部58によって上下姿勢を変換できるように配置されている。切換部58は、例えば第1容器51を固定した状態で上下反転できる構造を有しており、第1容器51の姿勢を薬液Cの下方に出口ポート51aが位置する薬液移送姿勢(図22の実線部分参照)と、薬液Cの上方に出口ポート51aが位置する気体移送姿勢とに切り換えている(図22の二点鎖線部分参照)。
本実施形態の第2容器52は、例えば無菌または滅菌された軟質バッグであり、上述した第1容器51と同じ材料によって形成されている。第2容器52の一端部には、該第2容器52の内部に充填される薬液Cを外部に取り出すための取り出しポート52aと、該第2容器52内の空気を外部に排出するためのエアベント52bと、移送経路56と接続して薬液Cを内部に注入するための注入管52cとがそれぞれ設けられている。
図22に示すように、これらの第2容器52は、取り出しポート52a、エアベント52b及び注入管52cが下方に向くように吊持されている。そして、これらの第2容器52は並列するように配置されるとともに、上述の移送経路56を介してそれぞれ第1容器51と接続されている。
本実施形態において、移送経路56は、複数の配管53a,53b,53c,53d,53e、分岐コネクタ54a,54b,54c,54d、及び接続コネクタ55によって形成されているが、これに限定されずに、例えば接続コネクタを用いずに金属材料によって形成されても良い。図22に示すように、移送経路56は、4段分岐されながら各第2容器52に接続されている。このため、各移送経路56は、第1容器51側から順に、第1配管53a、第1分岐コネクタ54a、第2配管53b、第2分岐コネクタ54b、第3配管53c、第3分岐コネクタ54c、第4配管53d、第4分岐コネクタ54d、第5配管53e、及び接続コネクタ55を有する。
第1分岐コネクタ54a、第2分岐コネクタ54b、第3分岐コネクタ54c及び第4分岐コネクタ54dは、それぞれT字状を呈し、同じ材質且つ同じ大きさで形成されている。そして、第1分岐コネクタ54aにより分岐された2本の第2配管53b、第2分岐コネクタ54bにより分岐された2本の第3配管53c、第3分岐コネクタ54cにより分岐された第4配管53d、第4分岐コネクタ54dにより分岐された第5配管53eは、それぞれ同じ材料、同じ長さ且つ同じ口径で形成されている。また、これらの配管は、それぞれの分岐コネクタに対して対称になるように設けられ、且つねじれずに配置されている。
本実施形態において、第1容器51と第1配管53aとの接続、配管53a,53b,53c,53d,53eと分岐コネクタ54a,54b,54c,54dとの接続、接続コネクタ55と第5配管53e及び注入管52cとの接続は、無菌接続である。
これらの配管、分岐コネクタ及び接続コネクタに用いられる材料としては、薬液Cへの影響の少ない材料であれば良く、例えばポリ塩化ビニル、エチレン酢酸ビニル共重合樹脂、ポリエチレン、シリコン樹脂、フッ素樹脂、ポリアミド、ポリプロピレン、ポリスチレン、ABS樹脂などが挙げられており、又はガラスや金属等の素材であっても良い。
図示しないが、第1分岐コネクタ54aには、それによって分岐された第2配管53b同士を選択的に第1配管53aと連通させる開閉コックが内蔵されている。同様に、第2分岐コネクタ54b、第3分岐コネクタ54c及び第4分岐コネクタ54dも開閉コックを有する構造になっている。
移送経路56の第2配管53bの途中には、ポンプ57が配置されている。ポンプ57には、遠心ポンプ、プロペラポンプ、粘性ポンプ(摩擦ポンプともいう)、往復動ポンプ、回転ポンプなどを用いても良く、又は医療分野に広く使用されるフィンガーポンプ、ペリスタポンプ(登録商標)などを用いても良い。そして、移送される薬液Cの衛生性等を考慮した場合には、薬液Cと直接触れないフィンガーポンプ、ペリスタポンプが好ましい。
流体移送量測定装置1は、分岐コネクタや接続コネクタ等の接続部材を介せずに、移送経路56の第2配管53bに直接的に接続されている。すなわち、流体移送量測定装置1は、流体移送システム50の一部として該流体移送システム50に事前に組み込まれており、移送経路56と一体化されている。本実施形態において、ポンプ57の性能による移送への影響(すなわち、設備環境による影響)を調べるため、流体移送量測定装置1は、ポンプ57の直後の位置に配置されている。
ここで、流体移送量測定装置1の測定経路10(すなわち、第2配管53b)の断面積をA1とし、第1容器51の断面積をA2としたとき、1<A2/A1の条件を満たすことが好ましい。このようにすれば、少量の薬液Cであっても、移送する際に断面積が小さいほど薬液Cが充填される区間が長くなるため、僅かな薬液Cの容積の差を、測定経路10の区間の長さとして反映しやすく、その位置を正確に確認することで高精度に容積を確認することができ、測定の精度を高めることができる。なお、測定経路10の断面積は、断面円形の場合はその半径、断面楕円の場合はその長軸半径及び短軸半径、断面矩形の場合はその幅及び高さ等に基づいて求められる。第1容器51の断面積は薬液Cを貯留する部分の断面積である。
また、測定経路10の断面及び第1容器51の断面を円近似した場合において、測定経路10の直径をD1とし、第1容器51の直径をD2としたとき、1<D2/D1の条件を満たすことが好ましい。このようにすれば、少量の薬液Cであっても、移送する際に直径が小さいほど薬液Cが充填される区間が長くなるため、僅かな薬液Cの容積の差を、区間の長さとして反映しやすく、その位置を正確に確認することで高精度に容積を確認することができ、測定の精度を高めることができる。なお、測定経路10の断面は測定経路10の内径部分の断面であり、第1容器51の断面は第1容器51の外壁の厚さを除いた部分の断面である。ここで、円近似は、測定経路の内部の形状を最小二乗法により近似することを指す。
ここで、流体移送量測定装置1に係る表示部12の特定区間の容積と該特定区間の長さとの関係性を確認する方法について説明する。例えば確実に保証される10mLの薬液Cを2回分用意し、まず1回分の10mLの薬液Cを第1容器51に入れて、ポンプ57の駆動で該1回分の薬液Cを移送する。そして、薬液Cが流体移送量測定装置1の視認部11を通過する際に、表示部13における10mLに相当する目盛りに薬液Cの気液界面が到達するかを確認する。次に、2回分の10mLの薬液Cを第1容器51に入れた後に、ポンプ57の駆動で該2回分の薬液Cを移送する。そして、1回分に合わせて合計20mLの薬液Cの気液界面が表示部13における20mLに相当する目盛りに到達するかを確認する。
以上の構成を有する流体移送システム50によれば、流体移送量測定装置1を利用して薬液Cの移送量を実際に測定することができ、薬液Cの移送量を事前に把握することができる。そして、その測定した結果に基づき薬液Cの移送を行うことで、薬液C移送量精度の向上を図ることができる。このようにすることで、薬液Cの移送環境や設備環境が変わっても、これらの影響を全て考慮した測定が行われるので、規定通りの移送量を容易且つ確実に確保することができる。その結果、数mLや数十mLといった小容量の移送であっても、規定通りの移送量を正確に移送することができる。
なお、流体移送量測定装置1の設置場所として、上述した第2配管53bのほか、第1配管53a、第3配管53c、第4配管53d、第5配管53eであっても良い。また、本実施形態の流体移送システム50には、上述した各変形例や第2〜第4実施形態の流体移送量測定装置2,3,4にも適用される。
流体移送システム50を用いた流体移送方法は、流体移送量測定装置1を用いて薬液Cの移送量を測定する測定ステップと、測定結果に基づいて薬液C移送量を設定する設定ステップと、設定結果に基づいて薬液Cを移送する移送ステップとを備えている。
測定ステップでは、まず、切換部58を介して所定量(例えば10mL)の薬液Cを流体移送量測定装置1の視認部11の所定位置に送り出し、そのときの薬液Cの先端面に対応する表示部12の目盛りを記録する。続いて、ポンプ57を一回転させることで所定量の薬液Cを移送する。ポンプ57作動後における薬液Cの先端面の位置を視認部11を介して確認し、それに対応する表示部12の目盛りを記録する。
次に、ポンプ57の作動前後の目盛りに基づき、ポンプ57の一回転当たりの移送距離を算出する。続いて、移送距離及び測定経路10の断面積に基づき、移送量(すなわち容積)を算出する。また、必要に応じて薬液Cの重量や薬液C中の粒子の重量を算出しても良い。なお、測定に用いられた所定量の薬液Cについては、例えばポンプ57を逆回転させることで第1容器51に戻しても良く、又は外部に排出しても良い。
設定ステップでは、測定ステップで測定した結果、及び第2容器52への薬液C移送量(例えば30mL)に基づいてポンプ57の回転数を算出し、その算出結果をポンプ57の回転数として設定する。
移送ステップでは、設定したポンプ57の回転数に基づき、更に切換部58を介して薬液移送姿勢と気体移送姿勢との切り換えを制御しながら、図22に示す複数の第2容器52のうち右下の第2容器52に先に薬液Cを移送する。このとき、第1分岐コネクタ54a、第2分岐コネクタ54b、第3分岐コネクタ54c及び第4分岐コネクタ54dのコックの開閉状況は図23に示す通りである。これによって、薬液Cが図23の灰色で示す経路に沿って第2容器52に移送され、下方から第2容器52の内部に充填される。このように下方から薬液Cを充填することで、重力の影響による薬液Cの泡立ちを抑制する効果を奏する。
次に、第1分岐コネクタ54a、第2分岐コネクタ54b、第3分岐コネクタ54c及び第4分岐コネクタ54dのコックの開閉状況を調整しながら、上述したポンプ57の回転数に基づいて並列された各第2容器52に順次に薬液Cを移送する。
本実施形態の流体移送方法によれば、測定ステップで流体移送量測定装置1を用いて薬液Cの移送量を測定し、設定ステップで上述の測定結果に基づいて第2容器52への薬液C移送量を設定し、移送ステップで上述の設定結果を基に各第2容器52への移送を行う。このように薬液Cの移送量を事前に確認できるので、薬液C移送量精度の向上を図ることが可能になる。その結果、薬液Cの移送量のバラツキを確実に防止することができる。
<流体移送システム及び流体移送方法の第2実施形態>
図24は流体移送システムの第2実施形態に示す概略構成図である。本実施形態の流体移送システム60と第1実施形態との相違点は、流体移送量測定装置の測定経路が分岐コネクタを介して移送経路に間接的に接続されることである。その他の構成は第1実施形態と同様であるので、重複説明を省略する。
具体的には、流体移送量測定装置1の測定経路10は移送経路56から分岐され、分岐コネクタ61を介して第2配管53bに並列に接続されている。分岐コネクタ61は、第1分岐コネクタ54aと同様に内部に開閉コックが設けられている。ここで、測定経路10は、配管53a,53b,53c,53d,53eと同じ材料及び同じ口径を有するように形成されている。また、測定経路10の開放端は無菌フィルタ62を介して外部空間と連通している。
以上の構成を有する流体移送システム60によれば、上述の第1実施形態と同様な作用効果を得られるほか、分岐コネクタ61を用いて既存の流体移送システムの移送経路に流体移送量測定装置1を後付けで簡単に取り付けることができるので、流体移送量測定装置1の設置によるコストへの影響を抑制することができる。
なお、測定に用いられる薬液Cを回収するために、流体移送システム60は、例えば図25に示すように、流体移送量測定装置1の測定経路10を長くして第1容器51に接続するように構成されても良い。この場合には、ポンプ57の逆回転操作を行わずに、通常の回転操作で測定用の薬液Cを第1容器51に戻すことができる。
上記流体移送システム60を用いた流体移送方法は、上述の第1実施形態と同様に測定ステップ、設定ステップ及び移送ステップを備えるが、ポンプ57の回転数で制御を行わずにポンプ57の作動時間で制御を行うことである。
測定ステップでは、まず、第1容器51に貯留される薬液C及び移送用気体Gが流体移送量測定装置1の測定経路10のみを流れるように、第1分岐コネクタ54a及び分岐コネクタ61の開閉コックを調整する。次に、切換部58を介して所定量(例えば10mL)の薬液Cを流体移送量測定装置1の視認部11の所定位置に送り出し、そのときの薬液Cの先端面に対応する表示部12の目盛りを記録する。続いて、ポンプ57を所定の時間(例えば10秒)で作動させて所定量の薬液Cを移送する。ポンプ57作動後の薬液Cの先端面の位置を視認部11を介して確認し、それに対応する表示部12の目盛りを記録する。
次に、ポンプ57の作動前後の目盛りから、ポンプの単位時間当たりの移送距離を算出する。続いて、移送距離及び測定経路10の断面積に基づき、移送量(すなわち容積)を算出する。また、必要に応じて薬液Cの重量や薬液C中の粒子の重量を算出しても良い。
設定ステップでは、測定ステップで測定した結果、及び第2容器52への薬液C移送量(例えば30mL)に基づいてポンプ57の作動時間を算出し、その算出した結果を作動時間として設定する。
移送ステップでは、設定したポンプ57の作動時間、更に切換部58を介して薬液移送姿勢と気体移送姿勢との切り換えを制御しながら、複数の第2容器52のうち右下の第2容器52に先に薬液Cを移送する。次に、第1分岐コネクタ54a、第2分岐コネクタ54b、第3分岐コネクタ54c及び第4分岐コネクタ54dのコックの開閉状況を調整しながら、上述したポンプ57の作動時間に基づいて並列された各第2容器52に順次に薬液Cを移送する。
流体移送システム60を用いた流体移送方法によれば、上述の第1実施形態と同様な作用効果を得られる。
上述の実施形態において、流体移送量測定装置1が分岐コネクタ61を介して移送経路56に並列に接続されることを説明したが、該流体移送量測定装置1が接続コネクタを介して移送経路56に直列に接続されても良い。例えば図26に示す流体移送システム80では、流体移送量測定装置1が2つの接続コネクタ81を介して移送経路56に直列に接続されている。このように構成された流体移送システム80は、第2実施形態の流体移送システム60と同様な作用効果を得られる。
また、図示しないが、流体移送量測定装置1は流体移送システムから独立して配置されても良い。すなわち、測定経路10を移送経路56と接続せずに、物理的に移送経路56から離れるように流体移送量測定装置1を設置しても良い。この場合には、測定に用いられるポンプなどを含む設備環境を移送時の設備環境と同じにすることが好ましい。
また、測定に用いられる測定流体は必ずしも実際の移送流体(ここでは、第1容器51に貯留される薬液C)と同じにする必要がなく、測定流体と移送流体は、成分の近いものであれば異なっても良い。
<流体移送システム及び流体移送方法の第3実施形態>
図27は流体移送システムの第3実施形態に示す概略構成図である。本実施形態の流体移送システム63と第1実施形態との相違点は、流体移送量測定装置1に代えて流体移送量測定装置2を用いることである。その他の構成は第1実施形態と同様であるので、重複説明を省略する。
本実施形態において、制御部20は、流体移送量測定装置2に関する各制御を行うほか、流体移送量測定装置2を除いた流体移送システム63の各構成の制御も行うようにされている。具体的には、制御部20は、切換部58の切り換え、ポンプ57の作動、第1分岐コネクタ54a、第2分岐コネクタ54b、第3分岐コネクタ54c及び第4分岐コネクタ54dの開閉コックの開閉状況等に関する制御を実施する。また、該制御部20は、流体移送量測定装置2により測定された結果に基づき、第2容器52への流体移送量の設定も行う。
このような構成を有する流体移送システム63の移送方法は、上述の第1実施形態と同様であるので、その説明を省略する。
本実施形態の流体移送システム63及びその流体移送方法は、上述の第1実施形態と同様な作用効果を得られるほか、システム全体の制御を行う制御部20を備えるため、測定ステップ、設定ステップ及び移送ステップを自動的に実施することが可能になるので、作業効率を高めることができる。
<流体移送システム及び流体移送方法の第4実施形態>
図28は流体移送システムの第4実施形態に示す概略構成図である。本実施形態の流体移送システム66と第3実施形態との相違点は、第2容器52への移送量が正しいか否かを検証するための検証手段を更に備えることである。その他の構成は第3実施形態と同様であるので、重複説明を省略する。
具体的には、流体移送システム66は、第3実施形態で説明した流体移送システム63の構造に加えて、第1容器51の形状、重量及び内圧の少なくとも一つの変化を検出する第1検出部64と、第1検出部64により検出された結果、及び流体移送量測定装置2により測定された結果に基づいて移送量の正確性を検証する第1検証部65と、を更に備えている。第1検出部64及び第1検証部65は、制御部20の内部に組み込まれて、制御部20の指令に従って動作している。
本実施形態において、第1検出部64は、第1容器51の内部に設置されたセンサ(図示せず)を介して第1容器51の内圧の変化を検出し、その結果を第1検証部65に送信する。例えば、この第1検出部64は、各第2容器52への薬液C移送前後における内圧をそれぞれ検出して、検出した結果を第1検証部65に送信する。
第1検証部65は、第1検出部64の検出結果と、算出部22により算出された結果に基づいてそれぞれの移送量を算出し、更に両者の差を算出して予め記憶された所定の閾値と比較することで移送量の正確性を検証する。そして、両者の差が所定の閾値を超えた場合、第1検証部65は、その結果を制御部20に送信する。制御部20は、流体移送システム66の移送作業を停止させるとともに、ディスプレイ23にエラーメッセージを表示させ、更に備え付けられたスピーカーで警告音を発したり警告灯を点滅させたりすることで作業者に知らせる。作業者は、その検証の結果に基づいてポンプ57の回転回数又は回転時間を調整することで、移送量の修正を行う。例えば、実際の移送量が多い場合は、規定の移送量に合わせるようにポンプ57の回転回数又は回転時間を減らし、実際の移送量が少ない場合にポンプ57の回転回数又は回転時間を増やす。
本実施形態の流体移送システム66によれば、上述の第3実施形態と同様な作用効果を得られるほか、第1検出部64及び第1検証部65を備えるので、第1検出部64及び第1検証部65を介し移送量の正確性を検証することができる。このため、第2容器52への移送量の精度を更に高めることができ、各第2容器52に均一の薬液C移送量を移送することができる。なお、本実施形態の第1検出部64は、上述した第1容器51の内圧変化のほか、移送に伴う第1容器51の形状変化又は重量変化を検出しても良い。
そして、この流体移送システム66を用いた流体移送方法は、上述の測定ステップ、設定ステップ及び移送ステップのほか、第1検出部64及び第1検証部65を介して検証ステップを更に備える。検証ステップでは、上述したように、第1検出部64が薬液C移送前後における第1容器51の内圧の変化を検出し、第1検証部65が第1検出部64の検出結果と、算出部22により算出された結果に基づいて移送量の正確性を検証する。検証ステップは、第2容器52への薬液C移送終了毎に実施されても良く、又は所定の頻度(例えば第2容器52五個につき一回の頻度)で実施されても良い。
流体移送システム66を用いた流体移送方法によれば、上述の第3実施形態と同様な作用効果を得られるほか、検証ステップを更に備えるので、薬液C移送量の精度を一層高めることができる。
<流体移送システム及び流体移送方法の第5実施形態>
図29は流体移送システムの第5実施形態に示す概略構成図である。本実施形態の流体移送システム69と第4実施形態との相違点は、薬液Cの充填により第2容器52で生じる変化に基づいて第2容器52への移送量の正確性を検証することである。その他の構成は第4実施形態と同様であるので、重複説明を省略する。
具体的には、流体移送システム69は、第3実施形態で説明した流体移送システム63の構造に加えて、第2容器52の形状、重量及び内圧の少なくとも一つの変化を検出する第2検出部67と、第2検出部67により検出された結果、及び流体移送量測定装置2により測定された結果に基づいて移送量の正確性を検証する第2検証部68と、を更に備えている。第2検出部67及び第2検証部68は、制御部20の内部に組み込まれて、制御部20の指令に従って動作している。
本実施形態において、第2検出部67は、各第2容器52の外壁に設置されたセンサ(図示せず)を介して各第2容器52の形状の変化をそれぞれ検出し、検出結果を第2検証部68に送信する。例えば、第2検出部67は、移送された薬液Cの充填によって各第2容器52で生じた形状変化をそれぞれ検出し、その結果を第2検証部68に送信する。
第2検証部68は、第2検出部67の検出結果と、算出部22により算出された結果に基づいてそれぞれの移送量を算出し、更に両者の差を算出して予め記憶された所定の閾値と比較して移送量の正確性を検証する。そして、両者の差が所定の閾値を超えた場合、第2検証部68はその結果を制御部20に送信する。制御部20は、流体移送システム69の移送作業を停止させるとともに、ディスプレイ23にエラーメッセージを表示させて、更に備え付けられたスピーカーで警告音を発したり警告灯を点滅させたりすることで作業者に知らせる。作業者は、その検証の結果に基づいてポンプ57の回転回数又は回転時間を調整することで、移送量の修正を行う。例えば、実際の移送量が多い場合は、規定の移送量に合わせるようにポンプ57の回転回数又は回転時間を減らし、実際の移送量が少ない場合にポンプ57の回転回数又は回転時間を増やす。
本実施形態の流体移送システム69によれば、上述の第4実施形態と同様な作用効果を得られる。また、該流体移送システム69を用いた流体移送方法は、上述の第4実施形態と同じであるので、その説明を省略する。なお、本実施形態において、第2検出部67は、上述した第2容器52の形状変化のほか、第2容器52の内圧変化又は重量変化を検出しても良い。
また、本実施形態の流体移送システム69は、上述の第4実施形態の第1検出部64及び第1検証部65を更に備えるようになっても良い。このようにすることで、第1容器51及び第2容器52双方の変化に基づいて第2容器52への薬液C移送量の正確性を検証することができるので、移送量の精度をより一層高めることができる。
<流体移送システム及び流体移送方法の第6実施形態>
図30は流体移送システムの第6実施形態に示す概略構成図である。本実施形態の流体移送システム70と第1実施形態との相違点は、第1容器51に貯留される薬液Cを撹拌するための撹拌部71を更に備えることである。その他の構成は第1実施形態と同様であるので、重複説明を省略する。
図30に示すように、撹拌部71は、シーソー状に形成されており、水平な設置面に設置された基台72と、該基台72に揺動可能に支持されるとともに第1容器51を載置する載置板73とを有する。図示しないが、載置板73の上面には、載置される第1容器51の位置ずれを防止するための突起が複数設けられている。これらの突起は、載置される第1容器51の形状に合わせるように該第1容器51の周囲に配置されている。ここで、上述の突起に代えて、第1容器51の形状にフィットしながら該第1容器51の位置ずれを防止する凹部を載置板73の上面に設けて良い。
このように構成された流体移送システム70によれば、上述の第1実施形態と同様な作用効果を得られるほか、撹拌部71を備えるので、更に以下の作用効果も得られる。すなわち、撹拌部71を利用して第1容器51を揺動させることにより貯留される薬液Cを撹拌し、薬液Cに含まれる成分の均一性を図ることができる。その結果、各第2容器52に充填された薬液Cの成分の均一性も保つことができ、第2容器52間での成分のバラツキを確実に防止することができる。特に、流体が粒子などを含む懸濁液の場合、粒子などが沈降しやすく、撹拌部71で懸濁液を撹拌することにより、粒子等の均一性を維持した状態で各第2容器52に懸濁液を移送することができる。
流体移送システム70を用いた流体移送方法は、上述の第1実施形態と同様であり、且つ同様な作用効果を得られる。
<流体移送システム及び流体移送方法の第7実施形態>
図31は流体移送システムの第7実施形態に示す概略構成図である。本実施形態の流体移送システム74と第6実施形態との相違点は、撹拌部の構造上の違いにある。その他の構成は第6実施形態と同様であるので、重複説明を省略する。
具体的には、本実施形態に係る撹拌部75は、薬液C中に浮遊する複数の撹拌子77と、これらの撹拌子77を回転させる回転部76とから構成されている。撹拌子77は、磁性材料により形成されており、その比重が薬液Cと略同じである。また、薬液Cが粒子を有する場合に、撹拌子77の大きさは薬液Cの粒子より大きいことが好ましい。回転部76は、第1容器51の外部に配置され、磁石及び該磁石を回転するためのモータが内蔵されている。
そして、撹拌子77の比重が薬液Cと略同じであるので、該撹拌子77を薬液Cに均一に分散することができ、薬液Cをムラなく撹拌することが可能になる。
また、第1容器51より下流側の第1配管53aの途中には、薬液C中の粒子の通過を許容して撹拌子77の通過を阻止するフィルタ78が設置されている。なお、フィルタ78の設置場所は、第1配管53aに限らず、第1容器51より下流且つ第2容器52までの間であれば特に制限されない。しかし、第2容器52に近付くにつれて移送経路56が多く分岐され、フィルタ78の設置個所が増えるので、コストアップの抑制を考慮した場合には第1配管53aにフィルタを設置することが好ましい。
なお、本実施形態において、フィルタ78に代えて磁力で撹拌子77を除去する磁力除去部を設けても良い。例えば、第1配管53aの途中位置に該第1配管53aの外壁に円環状の磁力除去部を取り付けて、移送される薬液C中の撹拌子77を第1配管53aの外壁に吸着させ、定期的に吸着した撹拌子77を回収すれば良い。
このように構成された流体移送システム74によれば、上述の第6実施形態と同様な作用効果を得られる。また、該流体移送システム74を用いた流体移送方法は、上述の第6実施形態と同様であり、且つ同様な作用効果を得られる。
第1容器51に貯留される薬液Cを撹拌するための撹拌部としては、上述した内容のほか、例えば撹拌翼による撹拌、振動による撹拌、又は薬液Cを対流させるように該薬液Cを加熱することも挙げられる。また、第1容器51に外力を加えて該第1容器51を変形させることで撹拌したり、第1容器51を揺らすことで撹拌したりすることも考えられる。更に、移送経路56に撹拌部を設けて移送される薬液Cを撹拌しても良い。
<流体移送システム及び流体移送方法の第8実施形態>
図32は流体移送システムの第8実施形態に示す概略構成図である。本実施形態の流体移送システム82と第1実施形態との相違点は、流体移送量測定装置1が第2容器52の直前に配置されることである。その他の構成は第1実施形態と同様であるので、重複説明を省略する。また、流体移送システム82を用いた流体移送方法は、上述の第1実施形態と同様であるので、詳細説明を省略する。
具体的には、流体移送量測定装置1は接続コネクタ55と第2容器52との間に配置されており、第2容器52の注入管52cと直接的に接続されている。このように構成された流体移送システム82によれば、上述の第1実施形態と同様な作用効果を得られるほか、流体移送量測定装置1が第2容器52の直前に配置されるので、第1容器51から第2容器52の入口までの配管やポンプ等の設備環境、及び移送環境による移送への影響を容易に検証し把握することができる。そして、設備環境及び移送環境による影響が生じる場合に、その影響を考慮した移送量を調整することによって、薬液C移送量の精度を更に高めることができる。
<流体移送システム及び流体移送方法の第9実施形態>
図33は流体移送システムの第9実施形態に示す概略構成図である。本実施形態の流体移送システム83と第8実施形態との相違点は、流体移送量測定装置1が第1容器51の直後にも配置されることである。その他の構成は第8実施形態と同様であるので、重複説明を省略する。また、該流体移送システム83を用いた流体移送方法は、上述の第1実施形態と同様であるので、詳細説明を省略する。
具体的には、流体移送システム83は2つの流体移送量測定装置1を有しており、一つは上述の第8実施形態と同様に第2容器52の直前に配置され、残りは第1容器51の直後に配置されている。第1容器51の直後に配置された流体移送量測定装置1は、第1配管53aに直接的に接続されており、切換部58寄り側に位置している。このように構成された流体移送システム83によれば、上述の第8実施形態と同様な作用効果を得られるほか、流体移送量測定装置1が第1容器51の直後にも配置されるので、第1容器51の出口ポート51aから切換部58までの設備環境による移送への影響も把握することができ、薬液C移送量の精度をより高めることができる。
なお、流体移送量測定装置1の配置数は、必要に応じて適宜に増やしても良い。また、流体移送量測定装置1は、第1容器51の直後のみに配置されても良い。
<流体移送システム及び流体移送方法の第10実施形態>
図34は流体移送システムの第10実施形態に示す概略構成図である。本実施形態の流体移送システム84と第1実施形態との相違点は、ポンプを用いずに重力で移送を行うことである。その他の構成は第1実施形態と同様であるので、重複説明を省略する。
また、本実施形態の流体移送システム84を用いた流体移送方法は、ポンプを用いずに重力を利用して移送を行う点において上述の第1実施形態と異なるが、その他は上述の第1実施形態と同様であるので、詳細説明を省略する。
<流体移送システム及び流体移送方法の第11実施形態>
図35は流体移送システムの第11実施形態に示す概略構成図である。本実施形態の流体移送システム85と第1実施形態との相違点は、第2容器52を有しておらず、移送される薬液Cが外部に排出されることである。その他の構成は第1実施形態と同様であるので、重複説明を省略する。
具体的には、流体移送システム85は、第1容器51と、第1容器51の内部に貯留される薬液Cを移送するための移送経路86と、移送経路86に配置されるポンプ57と、移送経路と一体化された流体移送量測定装置1とを備えている。
そして、本実施形態の流体移送システム85を用いた流体移送方法は、移送ステップで移送される薬液Cを外部に排出する点において上述の第1実施形態と異なるが、その他は上述の第1実施形態と同様であるので、詳細説明を省略する。
上述した流体移送システムの第6及び第7実施形態において、各第2容器52に充填された薬液Cの成分の均一性を保つために第1容器51に貯留される薬液Cを撹拌するための撹拌部を設ける例を説明した。しかし、第1容器51に貯留される流体が細胞等の粒状物を有する懸濁液の場合に、撹拌部によって細胞等の粒状物にダメージに与える可能性がある。そこで、本発明者らは、懸濁液中の粒状物の上下移動速度を調整することにより、粒状物にダメージを与えずに粒状物の均一性を保つことができることを更に見出した。
より詳細に説明すると、粒状物を有する懸濁液の場合は、粒状物が重力で沈降しやすく、第1容器51の底部に溜まるので、このまま移送すると第2容器52に充填される懸濁液中の粒状物の数や種類等が大きく変わり、成分の不均一を招いてしまう。上述したように特に医薬品の分野では、粒子を含む粒状物の数や種類等が治療効果に大きく左右するので、これらの厳格な管理が求められている。この問題を解決するために撹拌部を設ける手法が考えられるが、撹拌子や撹拌翼等の撹拌部材が粒状物とぶつかることによって、粒状物に悪影響を及ぼす可能性がある。特に粒状物が細胞の場合は、撹拌部材とぶつかることでダメージを受けてしまう。そして、本発明者らは、粒状物の上下移動速度の現在値を算出し、算出した現在値と目標値との差が許容幅を超えた場合に、上下移動速度を調整する調整物質を注入し、上下移動速度の現在値を目標値に維持することで、粒状物の均一性を確保することを見出した。ここで、粒状物の上下移動速度(以下、単に「移動速度」という場合がある)は、粒状物が沈降・浮上速度を指す。
図36は移動速度調整装置を示す概略構成図であり、図36において流体移送システム50の構成を省略する。移動速度調整装置90は、例えば流体移送システム50に備え付けられ、第1容器51に貯留される懸濁液K内部の粒状物Rの上下移動速度を調整する。この移動速度調整装置90は、粒状物Rの上下移動速度の目標値及び許容幅を記憶する記憶部91と、粒状物Rの上下移動速度の現在値を算出する算出部92と、算出された上下移動速度の現在値と記憶された目標値との差が許容幅を超えているか否かを判定する判定部93と、現在値と目標値との差が許容幅を超えると判定される場合に第1容器51の内部に調整物質を注入して粒状物Rの上下移動速度を調整する調整物質注入部94とを備えている。また、移動速度調整装置90は、該移動速度調整装置90全体の制御を行う制御部95を更に備えることが好ましい。
ここで、粒状物Rを有する懸濁液Kは、食品分野であれば、例えば果実入り飲料や固形物入り調味料等の液体が挙げられる。医薬品分野であれば、生理食塩水等の電解質輸液、ブドウ糖等の糖質注射液、血液製剤、抗生物質、抗体等の蛋白質性医薬品、低分子蛋白質、ホルモン等のペプチド性医薬品、核酸医薬品、細胞医薬品、各種感染症を予防するワクチン、ステロイド剤、インスリン、抗がん剤、蛋白質分解酵素阻害剤、鎮痛剤、解熱鎮痛消炎剤、麻酔剤、脂肪乳剤、血圧降下剤、血管拡張剤、ヘパリン塩化ナトリウムや乳酸カリウム等の電解質補正用注射液、ビタミン剤、造影剤等の液体において、液体に溶けない各種化合物や各種細胞などの粒状物を含む懸濁液が挙げられる。
本実施形態では、懸濁液Kは生物由来材料からなる懸濁液であることが好適である。そして、懸濁液K中の粒状物Rの沈降速度は、1時間当たり30cm以下が好ましく、6cm以下がより好ましく、0.25cm以下が更に好ましい。これは、以下のことを考慮して設定されるものである。例えば懸濁液Kが果実入り飲料であって自動充填を行う場合において、200Lの飲料を500mL×400本の分注容器に分注するのに、1分間に40本分注すれば分注完了まで10分かかる。10分間で粒状物R(すなわち果実)が沈降すると分注容器間の粒状物Rのバラツキが大きいため、最初と最後の分注容器間の粒状物Rの濃度差を約5%の差に収めようとすれば、高さにして100cm分の飲料が5cm以下の沈降にまで抑制する必要がある。従って、10分間で5cm以下の計算になり、すなわち1時間当たり30cm以下が望ましい。そして、上述の濃度差を約1%に収めようとすれば、粒状物Rの沈降速度は1時間当たり6cm以下になる。
一方、懸濁液Kが固形物入り薬剤である場合において、例えば1Lの薬剤が貯留されるバッグやボトルから20mL×50本の分注容器に分注するのにクリーンブース内で30分かかるとして、1Lの薬剤が貯留されるバッグやボトルが約40cm×10cm程度の大きさであり、最初と最後の分注容器間の粒状物Rの濃度差を約5%の差に収めようとすれば、高さにして40cm分の薬剤が2cm以下の沈降にまで抑制する必要がある。沈降速度は1時間で4cmが望ましいということになる、そして、上述の濃度差を約1%に収めようとすれば、粒状物Rの沈降速度は1時間当たり0.8cm以下になる。
また、懸濁液Kが輸液であり、例えば250mLの輸液を1時間かけて点滴を行う場合において、250mLの輸液バッグが約25cm×15cm程度の大きさであり、最初と最後との粒状物Rの濃度差を約5%の差に収めようとすれば、高さにして25cm分の輸液が1.25cm以下の沈降にまで抑制する必要がある。従って、粒状物Rの沈降速度は1時間では1.25cm以下が望ましいということになる。そして、上述の濃度差を約1%に収めようとすれば、粒状物Rの沈降速度は1時間当たり0.25cm以下になる。
また、懸濁液Kの粘度は100cp以下であることが好ましく、10cp以下であることがより好ましい。これは、懸濁液K中に気泡が発生した場合に、気泡が速やかに消えるのが望ましいが、粘度が高いほど気泡の寿命が長くなるので、粘度を低くすると気泡が速く消えるからである。また、ポンプでの移送を考慮した場合に、粘度が低い方は懸濁液Kが流れやすくなるからである。
そして、懸濁液Kに含まれる粒状物Rは、その直径又は最大幅が目視できるレベルである100μm以上が望ましく、顕微鏡やマイクロスコープ等を介して確認する場合、その直径又は最大幅は1μm以上であることが望ましい。
記憶部91は、予め設定された粒状物Rの上下移動速度の目標値及び許容幅を記憶するとともに、移動速度調整装置90に関する各プログラムも記憶している。この記憶部91は、判定部93と接続され、制御部95の指令に従って粒状物Rの上下移動速度の目標値及び許容幅を判定部93に出力する。
判定部93は、制御部95に接続され、制御部95の指令に従って算出部92で算出した粒状物Rの上下移動速度の現在値と目標値との差が許容幅を超えるか否かを判定し、更にその判定結果を制御部95に出力する。
調整物質注入部94は、例えば内部に液体の調整物質が貯留される容器を有し、注入管94aを介して調整物質を一定量ずつ第1容器51の内部に注入できるように構成されている。図示しないが、調整物質注入部94は、例えばシリンジポンプのように1ピストンで30mLの調整物質を第1容器51内に注入できる構造を有する。この調整物質注入部94は、制御部95に接続され、制御部95の指令を基に調整物質の注入作業を実施する。
調整物質は、懸濁液Kの上下移動速度が早ければその速度を抑制する抑制物質と、上下移動速度が遅ければその速度を促進する促進物質とを含む。例えば、懸濁液Kが生物由来の材料からなった場合、それに対応する調整物質は、食用の食塩水や生理食塩水のような生物由来材料からなる成分を含む懸濁液、若しくは生体適合性を有する成分を含む懸濁液である。このとき、調整物質としての懸濁液Kには粒状物Rが含まれても良く、含まれなくても良いが、粘度や抵抗を調整するなら、微小な粒状物Rが含まれても良い。なお、本実施形態では、調整物質としての懸濁液Kには粒状物Rが含まれている。
また、調整物質は、粒状物Rの生体材料や生体に無害であること、生体材料に影響を与えにくい組成を有すること、変化しにくい組成を有すること、付加的な役割を持つことが望まれている。
より詳細に説明すると、無害であることに関しては、粒子(すなわち、粒状物)の密度の方が液体の密度より高い場合に、液体に生体等に対して顕著な悪影響がない物質を液体に溶かして濃度を高めたり、又は粒子の密度の方が軽い場合に水などの液体を増やして濃度を薄めたりすることで、粒子≒液体とする。すなわち、濃度を高めたり薄めたりする材料としては、特に粒子の効果に悪影響がない物質を使う。濃度を調整して沈降を抑制するのは良いが、その効用以上に悪いこと(例えば飲料であれば風味の劣化、医薬品であれば薬効の低下)を引き起こす物質の使用は避けるべきである。
生体材料に影響を与えにくい組成は、例えば生体材料と浸透圧が近いもの、又は液体のpHを変化させないものである。更に、組成は粒子同士の凝集を促進しないものが好ましい。これは凝集で粒子が大きくなるので沈降速度も大きくなるからである。例えば、粒子が細胞の場合は、EDTAといったキレート剤などの細胞同士の凝集を抑制する成分を含むことが好ましい。
変化しにくい組成は、揮発しやすい成分を含まないことであり、例えば沸点が通常の室温以上である40℃以上の物質のみから構成されている。また、液体の揮発を抑制するために、調整物質は水より沸点の高い水溶性物質を含むことが望ましく、ソルビトールやカラギーナンなどの多糖類やグリセリンなどの多価アルコールなどが好適である。また、変化しにくい組成として、例えば酸化しやすい成分を含まないことが挙げられる。
付加的な役割を持つことは、速度調整のほか、特定の利用目的において有用性が高いことを指す。例えば、凍結可能な組成、pHを安定させる組成、生体材料を安定させる組成等が挙げられる。なお、生体材料を安定させる組成は、例えば粒状物の保護液として機能することが考えられる。
特に食品向けの場合、調整物質としては、例えばL-アスパラギン酸ナトリウム、L-イソロイシン等のアミノ酸や、5’−イノシン酸二ナトリウム、5’−ウリジル酸二ナトリウム等の核酸や、クエン酸カルシウム、コハク酸ナトリウム等の有機酸や、塩化カリウム、リン酸三カリウム等の無機酸が挙げられる。一方、医薬品向けの場合、凍結可能な組成としてはDMSO牛血清やアルブミン等が挙げられており、pHを安定させる組成としてはMES、Bis−Tris、ADA、PIPES、ACES、MOPSO、BES等が挙げられており、生体材料を安定化させる組成としては抗酸化物質(例えばチオール、アスコルビン酸、ポリフェノール)、重合防止剤(ラジカル捕捉剤、プロトン捕捉剤)、酸素捕捉剤等が挙げられる。
なお、調整物質注入で粒状物Rの移動速度を調整した結果、粒状物Rと液体との比重差は1以下が望ましく、0.1以下がより望ましい。
制御部95は、例えばCPU、ROM、RAMを含むコンピュータを主体として構成されており、記憶部91で予め記憶された制御プログラムに基づいて、算出部92の算出や調整物質注入部94の注入タイミング等を含む装置全体の各操作を制御している。
一方、算出部92は、懸濁液Kに光を照射する照射部921と、懸濁液Kを透過した光(以下、透過光という)の強さを懸濁液Kの高さと関連付けて受光する受光部922と、透過光の強さと懸濁液Kの高さとの結果に基づき粒状物Rと液体との境界面の高さを計算するとともに、境界面での粒状物Rの上下移動速度の現在値を計算する計算部923とを有する。
照射部921は、例えば点状、線状又は面状の光源によって形成されている。光源は可視光の波長を含む自然光であっても良く、特定波長を有する光や、可視光以外の波長を有する光であっても良い。また、粒状物Rが特定波長の光を吸収若しくは反射や散乱しやすい場合は、その特定波長を含む光源が望ましい。更に、粒状物Rが複種類含まれる場合や、光への特性が異なる場合は、複数の波長を含む光源が望ましい。なお、本実施形態では、照射部921は、複数のLEDを高さ方向(すなわち上下方向)に沿って所定の間隔で直線状に配置してなる線状光源からなり、第1容器51の片側(図36では第1容器51の左側)に立設されている。
受光部922は、複数の受光素子を高さ方向に沿って直線状に配置してなる線状センサであり、第1容器51を挟んで照射部921の反対側(図36では第1容器51の右側)に立設されている。複数の受光素子は、照射部921の複数のLEDに対して1対1で配置されるとともに、各LEDと同じ高さに位置している。このようにすれば、懸濁液Kを透過した光で受光素子によって検出された場合、透過光の強さと懸濁液Kの高さとは関連付けられる。なお、ここでは、受光部922は受光素子を点状又は面状に配置することにより形成されても良い。
図37は粒状物の沈降状態に伴う透過光の強度と懸濁液の高さとの関係を示す模式図であり、図37において左側は粒状物Rの沈降状態と時間との関係、右側は受光部922で検出した透過光の強さと懸濁液Kの高さとの関係をそれぞれ示す。例えば、図37(a)に示すように、測定スタート時(すなわち、t=0)に、粒状物Rが懸濁液Kの全高さ方向にわたって略均一状態で分散されるため、受光部922で検出した透過光の強度が低く、懸濁液Kの高さ方向に沿って略1本の縦線状になる。
測定スタートから5分経過後(t=5分)、図37(b)に示すように、粒状物Rの沈降に伴って懸濁液K中の粒状物Rと液体(すなわち、溶媒)間に境界面Sが生じる。ここで、境界面Sの特定方法としては、例えば図38(a)の破線円及び破線に示すように、所定の強さ以上の光を透過したら粒状物Rがないとみなす(小さな粒状物Rは除いて1群の速度とする)こととし、そのとき位置を境界面とする。又は、図38(b)の破線円及び破線に示すように、透過光の強度が変化する幅の中央値となる高さを1群の粒状物Rの位置と定義し、その中央値の上下移動速度を採用する。ここでの幅は、ある所定値以下から他の所定値以上の強度を指す。
また、粒状物Rの沈降速度は、重さ、大きさ、体積、抵抗及び浮力のほか、液体の対流や貯留される容器の形状などにも影響されているので、必ずしも重いものや大きいものが速く沈降するとは限らない。本実施形態では、説明の煩雑を避けるために図37及び図38に示すように大きいものが速く沈降することとする。
そして、図37(b)に示すように、粒状物Rの大きさを起因する沈降速度の違いで、境界面Sは傾斜面を呈する。境界面Sより上の部分は、粒状物Rがないので透過光の強度が高く、境界面より下の部分は粒状物が溜まる状態になるので、透過光の強度が低くなる。
測定スタートから10分経過後(t=10分)、図37(c)に示すように、粒状物Rの更なる沈降によって粒状物Rと液体との境界面Sの位置は更に下がる。粒状物Rの沈降速度の違いで、境界面Sの傾斜度合も大きくなる。
なお、受光部922の各受光素子で検出した透過光の強さに関しては、上述のように各受光素子で検出した透過光の強さを全てデータとして採用されても良く、又は受光素子の高さ方向に沿って受光素子を複数の区間を均等に分けて、各区間の平均値、各区間の中央値、誤差を少なくするために最低値(すなわち、最も光を透過しない値)や外れ値を除いた値等をデータとして採用しても良い。
本実施形態では、第1容器51は光透過性を有する材料によって形成される必要がある。第1容器51は透明な材料によって形成されることが好ましいが、全波長に対して透過率が90%以上であれば薄く曇るような容器であっても、最初に水などで最大値を計測してからその変化を追えば利用することも可能である。
計算部923は、まず、透過光の強さと懸濁液の高さとの結果に基づき、上述のような方法で特定した境界面Sの高さを計算する。次に、計算部923は境界面Sでの粒状物の上下移動速度の現在値を計算する。具体的には、計算部923は、少なくとも2つの時刻(例えば、開始時刻A、終了時刻B)における境界面の高さをそれぞれ計算し、更に高さ方向における境界面の差/(B−A)で粒状物Rの移動速度の現在値を計算する。
そして、測定時刻が2つ以上の場合、例えば1分間隔で時刻A、B、C、D、Eで5回測定する場合、全体の挙動が見える観点から、時刻が一番離れるAとE(すなわち、開始時刻をA、終了時刻をEとする)のデータに基づいて粒状物Rの上下移動速度を算出することが望ましいが、開始時刻及び終了時刻は必ずしもこれに限らない。
しかし、開始時刻については、例えば第1容器51内部の流れがまだ強く巻いている場合、AB間は境界面の高さがあまり変化せずに、BC間で徐々に変化し、CD間で大分変化し、DE間で安定することも考えられる。このような場合は、予め定めた一定以上の粒状物Rの沈降(浮上)速度が測定できないと開始時刻として見なさなくても良く、或いは各時刻の移動速度をそれぞれ算出し、移動速度の変化が予め定めた一定値以内(例えばプラスマイナス10%)でないと開始時刻と見なさなくても良い。
一方、終了時刻については、例えば時刻C、D、Eでは粒状物Rの移動速度がほぼ変化しない場合、或いは容積が大きめの粒状物を高濃度で添加することで堆積してしまう場合、AB間、BC間、CD間、DE間の境界面高さの差(移動距離)をそれぞれ算出し、境界面高さの差が一定以下である場合は、沈降がかなり進展し堆積かその直前の状態としてデータから除外し、時刻AC間で粒状物Rの移動速度を算出しても良く、又は安全の観点から時刻Cの1つ前の時刻AB間で移動速度を算出しても良い。
そして、上記のような開始時刻及び終了時刻に関する処理からすべて外れた場合、すなわち開始時刻も終了時刻も決められない場合、計算部923は制御部95にその情報を出力するとともに警告音や警告メッセージを発する等で作業者に知らせるような構造としても良い。
粒状物Rの上下移動速度を算出する方法としては、上記内容のほか、トラッキング法も考えられる。すなわち、粒状物Rを顕微鏡やマイクロスコープで上面(もしくは下面)から観察した状態において、画像内の1つの粒状物を対象にして顕微鏡のZ方向(すなわち、高さ方向)を一定量上下させ、焦点が合うようにオートフォーカスをかける等で粒状物Rの動きをトラッキングし、顕微鏡やマイクロスコープのZ方向の移動量の変化と経過時間に基づき上下移動速度を直接算出する方法である。そして、トラッキング法を採用する場合、高さ方向にトラッキングしやすいように、懸濁液Kを貯留する容器は、顕微鏡やマイクロスコープのステージに載置されるときに高さがそれほど高くなく且つ平たいものが望ましい。
このとき、粒状物Rの移動速度は3次元方向に存在するが、その鉛直方向成分だけ(すなわち、上述のZ方向又は高さ方向)を採用する。また、粒状物Rの切り分け方法としては、基本的に輪郭抽出で粒状物を切り出し、それぞれ以下のように判定する。例えば、形が一定の特徴量(例:面積が所定値以下、最長径が所定値以下)を具備しないと粒状物Rとして認識せず、または色情報(例:明度、彩度、色相)が一定範囲でないと粒状物Rとして認識しない。或いは、複数の粒状物Rが重なる場合を避けるために、粒状物Rの周囲が裏面の色情報(例:明度、彩度、色相)の範囲にないと粒状物として認識しない。ここで、測定前に水などの透明な液体で撮影し、その撮影結果を裏面情報とすることが望ましい。つまり、裏面が灰色の壁なら灰色で判定するが、裏面が多少複雑な部屋の景色などでも事前の撮影結果を裏面情報としても良い。
トラッキング法を用いた場合、粒状物Rの移動速度は、例えば以下のように算出する。まず、ステップ1ではオートフォーカス顕微鏡で粒状物Rを特定する。このとき、顕微鏡の画面内に粒状物Rが1つであることが望ましいが、複数であればそのうちの一つをターゲットとして特定する。ステップ2では、特定した粒状物Rの観察時のZ軸方向の位置を測定する。ステップ3では、予め定められた一定時間後(例えば10秒後)にZ軸方向を移動させてオートフォーカスを実行する。ステップ4では、オートフォーカス後のZ軸方向の位置を測定する。ステップ5では、上記ステップ2とステップ4で測定したZ軸方向の位置の差を算出し、その間の時間で除算して粒状物Rの移動速度を求める。なお、上述の算出方法において、ステップ3を複数回繰り返し、ステップ2及びステップ4で測定したZ軸方向の位置の差に基づいてステップ5を実施しても良い。
そして、計算部923で計算された移動速度の現在値と目標値との差が許容幅を超えると判定される場合、調整物質注入部94は制御部95の指令を基に第1容器51の内部に調整物質を注入して粒状物Rの移動速度を調整する。調整物質が第1容器51の内部に注入されると、貯留される懸濁液K中の粒状物Rの移動速度が改善される。ここで、算出部92の計算部923は改善後の移動速度の現在値を改めて計算し、算出した現在値の結果を判定部93に出力し、判定部93は改善後の現在値と目標値の差が許容幅を超える否かを再度判定する。
そして、改善後の移動速度の現在値と目標値との差が許容幅を依然超えていると判定された場合に、制御部95は調整物質注入部94に再度調整物質を注入するように指示し、調整が再度実施される。しかし、下記のような場合には、再度調整が行われなくても良い。例えば、1回の調整が30mLのような定量しかできないとき、目標値が1cm/分で、許容幅が0.1cm/分のような場合に、仮に調整前の移動速度が1.3cm/分で1回調整後が0.8cm/分になったとする。つまり、調整物質注入部94による調整物質の注入は離散的であるので、許容幅に入らない場合もあり得る。その場合は、例外処理として、改善後の移動速度の現在値と目標値との差が許容幅を超えている場合であっても、許容幅を飛び越した場合は、そこで調整を終了しておけば良い。
以上のように構成された本実施形態では、移動速度調整装置90を介して懸濁液K中の粒状物Rの上下移動速度を調整し、粒状物Rの上下移動速度が0になるようにすることで、第1容器51に貯留される懸濁液K中の粒状物Rの均一性を維持することができる。そして、この状態で第2容器52を懸濁液Kを移送すると、第2容器52に移送される(すなわち、第2容器52に充填される)懸濁液K中の粒状物Rの均一性を保つことができる。これによって、第2容器52に充填される粒状物Rの数や重量や体積等を管理することが可能になる。
特に、生物由来材料入りの食品や医薬品では、例えば果肉や細胞等の大きさや重さにバラツキが多く、加えて液体の組成に応じて密度が変わることも多く、しかも多量の粒状物Rを充填するため、粒状物Rを1個ずつトラッキングして移動速度を算出するには負荷が非常に高い。これに対し、本実施形態では粒状物Rと液体との境界面を利用し粒状物Rの上下移動速度を算出する方法が有益であり、その算出結果に基づき調整物質の注入で粒状物Rの上下移動速度を調整することで、長い時間で粒状物Rの均一性を保つことが可能になる。
なお、本実施形態では、粒状物Rの濃度は以下の実情を考慮したものである。すなわち、粒状物Rの個数が比較的少ない食品分野において、例えばみかん等の柑橘類系の果粒入り飲料の場合、果粒が20%の飲料などがありえて、さらに例えば1mL当たり0.2gの粒(砂じょう)が含まれることがある。ここで、柑橘類は種類にもよるが通常1個で30g〜120gであり、5〜10房のじょうのうを有し、1房当たり粒(砂じょう)を50〜200個有する。仮に1個100gで10房×200個の砂じょうを有すると、1砂じょうが0.05gであり、1gもしくは1mL当たり4個の粒状物を含む飲料を200mLや1000mL充填し製造することになる。1000mLを製造するタンクが200Lなら、200×1000×4個が1タンク内に入っており、この粒状物の速度を1個1個トラッキングして、平均速度を算出するのは困難である。
一方、粒状物Rが比較的多く、細胞を利用した医薬品分野において、利用時には1mL当たり10の4乗や5乗個、培養時には1mL当たり10の6乗や7乗個などとする場合も多い。このとき、1つの容器に10mLとして10の6乗個の粒状物を含む場合などがある。ゆえに、個数の濃度としては1mL当たり4個以上で利用する場合が多く、食品や医薬品では一般には10の7乗個以下で利用する場合が多い。特に数が多くなるような利用工程では10の4乗個以上で利用するのが最適である。もしくは、一つの容器や一つのタンク当たりの粒状物総個数として、100個以上で利用する場合が多く、特に1万個以上、さらに望ましくは100万個(10の6乗個)以上で利用するのが最適である。
なお、本実施形態において、制御部95は、2回目以降の調整物質の注入が必要な場合に、前回注入量及び改善後の粒状物Rの移動速度の現在値の結果に基づいて、これから注入の結果を予想して調整物質の注入量を制御することが好ましい。
ここで、調整物質注入量の制御は量の制御及び物質の制御が挙げられる。量の制御は、例えばn回目の調整(すなわち、n回目の注入)に関して、調整前の移動速度の現在値Aと調整後の移動速度の現在値Bと目標値Cの、ABCの差に比例して注入量を増減させるなどによって実施する。一例として、粒状物Rの沈降速度調整前の現在値が20cm/秒、目標値が5cm/秒である場合、調整物質を100mL注入し、調整後の現在値が10cm/秒になった場合には、100mL/(20−10)cmの計算に基づいて1cm下げるのに10mLを要するという結果になる。従って、目標の5cmまでの差が10−5=5cmであるので、10mL×5=50mL注入することになる。
また、量の制御は常に直前の情報を利用することもできる。例えば粒状物Rの沈降速度の調整前の現在値が20cm/秒、目標値が5cm/秒である場合、調整物質を100mL注入し、調整後の現在値が10cm/秒になった場合には、100mL/(20−10)cmの計算に基づいて1cm下げるのに10mLを要するという結果になる。従って、目標の5cmまでの差が10−5=5cmであるので、10mL×5=50mL注入することになる。しかし、例えば実際に注入した結果、8cmまでにしか下がらず、目標まで8−5=3cmまで必要となった場合は、50mLで2cm下がったのが最新の結果(すなわち、直前の情報)であるので、直前の結果を利用するならば1cm下げるのに25mL注入しているので、25mL×3=75mL注入することが必要になる。このように、複数回前の情報を常に利用するのではなく、直前の情報を利用することによって、特に少ない容量を対象にする場合は、調整物質を繰り返し注入することで対象容量の増加を軽視できなくなる場合も多く、比例的に効果が見られない可能性があるので適している。また、第1容器51に貯留される液体や調整物質等のpHが高い場合や低い場合などで、粒状物Rの凝集などが進む場合などでも、注入するたびに挙動が変化することがあり得るので、直前の情報を利用するのが望ましい。
また、制御部95は、目標値ではなく、許容範囲をいきなりオーバーしないように、又は調整回数(すなわち、注入回数)を少なくできるように、許容幅の上限や下限を対象に制御しても良く、若しくは状況に応じて許容幅の上限よりも大きい値、許容幅の下限よりも小さい値を対象に調整しても良い。
一方、物質の制御は、例えばn回目の調整に関して、調整前の移動速度の現在値Aと調整後の移動速度の現在値Bと目標値Cの、ABCの差に比例するような異なる調整物質に変更することで実施される。
更に、本実施形態において、制御部95は、2回目以降の調整物質注入が必要な場合に、前回注入量及び改善後現在値の結果に加えて、これまでに調整物質の注入で調整した結果にも基づいて、これから注入の結果を予想して調整物質の注入量を制御することがより好ましい。この場合、例えば懸濁液の比重や粘度などの特性をデータベースとして記憶部91に記録しておき、過去の調整結果を適用することで調整回数を減らしたり、或いは懸濁液に種別IDがあって種別IDごとの過去調整結果を適用することで調整回数を減らしたりする。データベースには、例えばどの位の容量(又は重さ)の懸濁液Kに対してどの種類の調整物質をどの位の容量(又は重さ)注入することによって調整が適切に完了できたという情報等が蓄積されている。
また、ここで、調整物質の種類を変更して調整を行っても良い。例えば粒状物Rの沈降速度の調整前現在値が20cm/秒、目標値が5cm/秒である場合、調整物質Aを100mL注入し、調整後の現在値が10cm/秒になり、目標の5cmまでの差が10−5=5cmに対し、調整物質Aよりも効果が2倍の調整物質Bを用意し、該調整物質Bを25mL注入する。このようにすれば、いきなり目標値を大幅に超えるようなことを抑制しつつ、2回目以降の注入量を抑え、調整後の溶液が大容量になるのを避けることができる。
次に、流体個別封入体の製造方法として、内部に薬液Cが封入された第2容器52(以下、薬液封入済容器52という)を挙げて説明する。
薬液封入済容器52の製造方法は、流体移送量測定装置を用いて薬液Cの移送量を測定する測定ステップと、測定ステップで測定された結果に基づいて第1容器51に貯留される薬液Cの移送量を設定する設定ステップと、設定ステップで設定された結果に基づいて薬液Cを各第2容器52に移送する移送ステップと、薬液Cが移送された各第2容器52を封止する封止ステップと、を備えている。
測定ステップ、設定ステップ及び移送ステップは、上述した流体移送方法の第1実施形態と同様であるので、その重複説明を省略するが、以下では封止ステップのみを説明する。
封止ステップでは、内部に薬液Cが移送された各第2容器52に対し、接続コネクタ55から注入管52cを取り外して該注入管52cの端部を熱溶着等で封止する。これによって、薬液封入済容器52が完成する。このような製造方法によれば、薬液C移送量の精度を向上することができる。
以上、本発明の実施形態について詳述したが、本発明は、上記の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の精神を逸脱しない範囲で、種々の設計変更を行うことができるものである。例えば、本発明は上述の各実施形態及び各変形例の組み合わせにも適用される。