JP2018167572A - 多孔質体立体的圧縮成形物の製造方法 - Google Patents

多孔質体立体的圧縮成形物の製造方法 Download PDF

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栄英 安蒜
Shigehide Abiru
栄英 安蒜
平原 武彦
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Abstract

【課題】 容易に所望の形状とすることができ、成形後のサイズ変化が生じにくい、多孔質体立体的圧縮成形物の製造方法を提供する。
【解決手段】 多孔質体シートを金型の中に入れて熱プレスする熱プレス工程を有し、前記熱プレス工程は、圧縮時間が30秒以上5分以下、加熱温度が80℃以上150℃以下、および、圧縮倍数が5倍を超えて25倍以下を満たす条件で圧縮成形を行う工程であることを特徴とする。
【選択図】 図1

Description

本発明は、多孔質体立体的圧縮成形物の製造方法に関し、特に、内視鏡手術において用いる圧排体や緊急止血材、あるいは、子宮頚管拡張器等に適用可能な多孔質体立体的圧縮成形物を製造する方法に関する。
従来、外科手術では腹部や胸部などを大きく切開して行うのが通常であった。その為、切開部の再開、感染症の発症などのリスクを伴うほか、患者が動くことができない、切開部が痛む、術後回復に時間を要する、切開跡が残るなどの精神的苦痛が発生していた。しかし、近年、医療技術や医療機器、医療器具の進化に伴い、腹部に小さな穴を開けて医療機器(トロカール、別称トロッカー)を腹腔内に挿入し、モニターを見ながら、医療器具を操り、手術を行う内視鏡(腹腔鏡)手術が盛んに行われるようになってきた。内視鏡手術により、外科手術時に発生していた患者への精神的苦痛は改善されてきた。
内視鏡手術においては、体腔内に挿入される物は、トロカールを通すこととなるため、挿入時の形状は限定される。そこで、乾燥と圧縮成型とにより得られた、断面がトロカールの内腔断面よりも小さい、棒状の吸水膨張性材料を備えた圧排体が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
特許第5128672号公報
しかし、セルローススポンジ等の多孔質セルロース成形体は、乾燥と圧縮成型とを行った後に、吸湿等によりサイズ変化が生じやすかった。
そこで、本発明は、容易に所望の形状とすることができ、成形後のサイズ変化が生じにくい、多孔質体立体的圧縮成形物の製造方法を提供することを目的とする。
前記目的を達成するために、本発明の多孔質体立体的圧縮成形物の製造方法は、多孔質体シートを金型の中に入れて熱プレスする熱プレス工程を有し、前記熱プレス工程は、圧縮時間が30秒以上5分以下、加熱温度が80℃以上150℃以下、および、圧縮倍数が5倍を超えて25倍以下を満たす条件で圧縮成形を行う工程であることを特徴とする。
前記多孔質体立体的圧縮成形物の製造方法において、前記多孔質体シートとして、前記熱プレス工程の前工程において、前記熱プレス工程での圧縮方向とは異なる方向にプレス加工が行われた多孔質体シートを用いることが好ましい。
前記熱プレス工程において、直方体形状の前記多孔質体シートを用い、断面が円形または楕円形の金型を用いることが好ましい。
前記多孔質体立体的圧縮成形物の製造方法において、前記熱プレス工程の後に、さらに膨潤成形工程を含むことが好ましい。
前記多孔質体シートとして、セルローススポンジを用いることが好ましい。
本発明によれば、容易に所望の形状とすることができ、成形後のサイズ変化が生じにくい、多孔質体立体的圧縮成形物の製造方法を提供することができる。
図1は、本発明の多孔質体立体的圧縮成形物の製造方法を説明する工程図である。 図2は、熱プレス工程において用いる金型の一例を示す模式図である。 図3は、本発明の多孔質体立体的圧縮成形物の製造方法の他の例を説明する工程図である。
本発明の多孔質体立体的圧縮成形物の製造方法について、例をあげて説明する。ただし、本発明は、以下の例に限定および制限されない。なお、以下で参照する図面は、模式的に記載されたものであり、図面に描画された物体の寸法の比率などは、現実の物体の寸法の比率などとは異なる場合がある。図面相互間においても、物体の寸法比率等が異なる場合がある。
本発明に係る多孔質体立体的圧縮成形物の製造方法は、上述のように、多孔質体シートを金型の中に入れて熱プレスする熱プレス工程を有し、前記熱プレス工程は、圧縮時間が30秒以上5分以下、加熱温度が80℃以上150℃以下、および、圧縮倍数が5倍を超えて25倍以下を満たす条件で圧縮成形を行う工程であることを特徴とするものである。
図1に、本発明の多孔質体立体的圧縮成形物の製造方法を説明する工程図を示す。ここでは、多孔質体がセルローススポンジである場合について説明する。まず、セルローススポンジの湿潤状態の原反1を準備する(図1(a))。ついで、前記セルローススポンジの原反1をスライスカットして、シート状のセルローススポンジ2とする(図1(b))。このとき、シート状のセルローススポンジ2は湿潤状態のままである。そして、前記シート状のセルローススポンジ2を乾燥し、乾燥シート3とする(図1(c))。ついで、乾燥シート3にプレス加工を行い、圧縮する(図1(d))。このときの圧縮方向は、本実施形態ではシート厚みの方向である。得られた乾燥圧縮シート4を、所望の大きさに打抜き、打抜き品5を作製する(図1(e))。そして、得られた打抜き品5(多孔質セルロースシート)を金型の中に入れて熱プレスする熱プレス工程を行い、多孔質セルロース立体的圧縮成形物(多孔質体立体的圧縮成形物)6を得る(図1(f))。
図1(f)の熱プレス工程は、例えば図2に示すような金型10を用いて行うことができる。図2は、本発明における熱プレス工程に用いることのできる金型の一例を示す模式断面図である。
図2に示す金型10は、下で受ける金型11と上から圧縮する金型12の両方に、略半円形の溝が加工されており、セルローススポンジ等の多孔質体を圧縮した際に、円柱形状となるようにしたものである。
図2では、下で受ける金型11にスリット11Aが形成されて、前記スリット部に打抜き品の多孔質セルロースシート(打抜き品5)を入れて上から圧縮する金型12を示したが、本発明においては、金型はこの形状に限定されない。金型は、その形状を変えることで、様々な形状の多孔質体立体的圧縮成形物を得ることができ、必要な形状に合わせた成形ができる。したがって、打抜き品を角柱状に圧縮成形することもできるし、円柱状、楕円柱状等の角のない形状に圧縮成形することもできる。
また、多孔質体立体的圧縮成形物は、例えば、全長すべてが円柱状ではなく端部のみを角形状にして、例えば、特許第5128672号公報の図3のように、端部に造影糸挿通の出入り口を設けることもできる。
図1(f)での熱プレス工程は、圧縮時間、加熱温度および圧縮倍数の全てが、所定範囲内であるという条件を満たした圧縮成形工程である。
前記加熱温度とは、金型等の圧縮治具内部の温度であり、80℃以上150℃以下である。前記加熱温度は、100℃以上140℃以下であることが好ましく、120℃以上140℃以下であることがさらに好ましい。150℃を超えると、セルロースが変色する場合がある。また加熱温度が80℃未満では、熱プレス工程後に得られた成形物を放置した際に、大きさや形状が熱プレス工程前の状態に戻る方向でのサイズ変化が生じやすい。
前記圧縮倍数とは、「多孔質体立体的圧縮成形物の乾燥前の断面積/多孔質体立体的圧縮成形物の断面積」から求めた数値であり、5倍を超えて25倍以下である。前記圧縮倍数は、7倍〜25倍の範囲であることが好ましく、9倍〜18倍の範囲であることがより好ましい。圧縮倍数が5倍以下であると、熱プレス工程後に得られた成形物を放置した際に、大きさや形状が熱プレス工程前の状態に戻る方向でのサイズ変化が生じやすい。また、多孔質材料の特性を保つためには、圧縮倍数は25倍以下であることが必要である。ここで、「多孔質体立体的圧縮成形物の乾燥前の断面積」とは、多孔質体立体的圧縮成形物を乾燥前まで遡ったと仮定したときの仮想的な断面積で、シート状のセルローススポンジ(図1(b)の状態)の厚みの測定値Aと、多孔質体立体的圧縮成形物の熱プレス工程の前段階における多孔質体シート(図1(e)の打抜き品の状態)の幅との積である。
前記圧縮時間とは、熱プレス(加熱圧縮)した状態を維持する時間であり、30秒以上5分以下である。前記圧縮時間は、前記範囲内で、他の条件(加熱温度、圧縮倍数)に応じて決定することが可能である。例えば、加熱温度が高温である場合には、前記圧縮時間を短時間としても、所望の多孔質体立体的圧縮成形物を良好に製造することができる。
図1に示した工程図では、乾燥シートにプレス加工を行い、圧縮する工程(プレス加工工程)が含まれているが(図1(d))、この工程は必須ではない。この工程では、図1(f)に示す熱プレス工程での圧縮方向とは異なる方向でプレス加工を行っている。図1(d)に示すプレス加工が行われた多孔質体シートを用いて、図1(f)に示す熱プレス工程を行うことで、得られる多孔質体立体的圧縮成形物は2方向からの立体的圧縮作用を受けることができる。なお、図1(f)に示す熱プレス工程につき、2方向からの圧縮が可能であるような金型を用いることで、事前のプレス加工工程を簡略化しても同様の多孔質体立体的圧縮成形物を得ることができる。
図1(d)のプレス加工工程は、熱プレス加工であってもよいし、冷間プレス加工であってもよい。熱プレス加工は、例えば、プレス機の下型の表面温度が140〜150℃に加熱し、得たいプレスシートの厚みに合わせた厚みのスペーサーを下型に置いた状態にして、70tの加重をかけ多孔質体シートをプレスする方法である。また、冷間プレス加工は、例えば、室温(19℃)下で多孔質体シートをプレスする方法である。
図1においては、図1(d)のプレス加工工程において厚み方向のプレスを行った後、図1(f)の熱プレス工程において、幅方向(図中で紙面手前から奥に向かう方向)での圧縮成形を行って、円柱形状の多孔質体立体的圧縮成形物を製造した例を示しているが、さらに前記多孔質体立体的圧縮成形物の長さ方向について、熱プレス工程を行ってもよい。その場合、得られる多孔質体立体的圧縮成形物は、略球状とすることができる。
また、本発明においては、さらに図3に示す膨潤成形工程を行ってもよい。前記膨潤成形工程は、次のとおりである。まず、図1(f)の熱プレス工程によって得られた多孔質体立体的圧縮成形物6(図3(a))を、膨潤成形用金型20に入れて、多孔質体が吸液して膨潤する水等の液体を注入口21から注入する(図3(b))。このとき、多孔質体立体的圧縮成形物6は、膨潤成形用金型20の形状に膨潤する。この状態で、前記液体を乾燥させることで、多孔質体立体的圧縮成形物6は膨潤成形用金型20の形状に成形される(図3(c))。この方法を用いることで、多孔質体立体的圧縮成形物を、容易に、金型によって定められる所望の任意の形状とすることができる。また、膨潤成形後の多孔質体立体的圧縮成形物7は、形状がより整えられるので、金型の表面状態に応じた表面状態を付与させることもできる。例えば、金型の表面が平滑である場合は、多孔質体立体的圧縮成形物7の表面を平滑にすることができる。また、金型表面にエンボス加工等の表面加工が施されたものを用いると、前記エンボス加工等を多孔質体立体的圧縮成形物7に転写することができる。
注入口21から注入する液体は、用いる多孔質体が吸液して膨潤するものであれば任意の液体を使用することができる。上述のとおり水をそのまま用いてもよいが、水と混合して加熱することで糊化する物質を溶解させた溶液を用いると、多孔質体立体的圧縮成形物7表面にコーティング層を付与することができる。前記物質としては、例えば、アミロースおよびアミロペクチンのいずれかまたは両方を含んだデンプン、カルボキシメチルセルロースなどのセルロース誘導体、アガロース、カラギーナン、プルラン、ヒアルロン酸、ヒアルロン酸塩、コンドロイチン硫酸、ペクチン、ゼラチン、アルギン酸、アルギン酸塩を用いることができる。デンプンとしては、コーンスターチ、ワキシーコーンスターチ、小麦デンプン、米デンプン、馬鈴薯デンプン、タピオカデンプン、甘藷デンプン、豆デンプン、クズデンプン、カタクリデンプン、ワラビデンプン、サゴデンプンなどを用いることができる。
前記コーティング層を形成する物質の種類や溶液の濃度を調整することで、得られた多孔質体立体的圧縮成形物7の膨潤速度(膨潤に要する時間)を制御することが可能となる。例えば、前記液体として水を用いて膨潤成形工程を行ったセルローススポンジは、水中に浸漬すると瞬時(数秒)に膨潤するが、ゼラチン水溶液を用いて膨潤成形工程を行った場合には、膨潤まで約5分間かかる多孔質体立体的圧縮成形物を得ることができた。
本発明において、多孔質体立体的圧縮成形物の材料は、セルローススポンジ等のセルロース多孔質体およびポリビニルアルコール(PVA)多孔質体であることが好ましい。セルロースおよびPVAは生体に対する安全性の点で優れており、医療用途の材料として、好適に用いることができる。セルローススポンジやPVAスポンジは乾燥圧縮成型可能な素材であり、この乾燥圧縮されたセルローススポンジやPVAスポンジに水分を付与すれば吸水して膨張するので、この点からも好ましい材料である。本発明においては、セルロースおよびPVA以外であっても、熱プレス工程によって圧縮成形された後に、水等の付与により膨潤して圧縮成形前の形状に近い状態に戻るような材料であれば、適用可能である。なお、吸水膨張するスポンジとしては、ポリ尿素フォーム、ポリイソシヌレートフォーム等のウレタンフォームがあるが、これらは熱可塑性なので、セルローススポンジやPVAスポンジのように、吸水膨張により圧縮前の形状まで復元しない。
本発明において好適に用いることのできるセルローススポンジは、再生セルロース法、セルロース溶剤溶液法等の、従来からの製造プロセスで製造されるセルローススポンジをそのまま用いることができ、例えば、特許第3520511号公報に開示されたセルローススポンジが挙げられる。具体的には、セルロースを主成分とした溶解パルプから天然繊維を加えたビスコースを作製する。前記ビスコースに中性結晶芒硝を加えて混合し、混合物を作製する。前記混合物を成型型内に押し込み、または、シート状に排出し、加熱凝固させて、ブロック状、または、シート状セルローススポンジを得ることができる。また、セルローススポンジには、補強繊維として綿(コットン)、亜麻、ラミー、パルプを単独またはそれらを組合せて含むことも好ましい。これら補強繊維を含むことによりスポンジとしての強度が増し、リントを抑制することができる。さらに、これら補強繊維を含むことにより、例えば、多孔質セルロース立体的圧縮成形物を圧排体として用いる場合、術後にトロカールから取り出す際に圧排体の破損、脱落を抑制することができる。
市販のセルローススポンジとしては、東レセルローススポンジ(東レ・ファインケミカル(株)製、商品名)等を使用することができる。このセルローススポンジ原反は、例えば、ブロック形状のものであり、これらをカットしたりあるいは打ち抜いたりして、本発明における吸液膨張性材料として用いられるセルローススポンジの大きさに形成することができる。
セルローススポンジは、セルロース自体が吸水性を備えているので、吸水性能を付与する特別な後加工等を行う必要がなく、後加工工程が増えることや後加工に用いる薬剤の安全性についてのリスク管理に伴うコスト増加を抑えることが可能となる。また、セルローススポンジは、リントの発生が少なく、手術時の取扱性に優れており、さらに切開部組織への固着が極めて少ないという特性を有するため手術終了時の回収も容易である。また、吸液膨張性を備えているので、外科手術時に手術対象の臓器とその近傍の臓器との間に挟み込み、手術野を確保するための圧排体として用いる際、同時に、臓器の保護および血液や体液の吸着等の効果も持たせることができる。
例えば、ブロック状セルローススポンジからシートを作製する場合、押し出し方向をZ軸方向とすると、製造工程上、Z方向において引張強度が小さくなることがある。これと直交する方向のうち、シートの厚みの方向をY軸方向とし、Z軸方向およびY軸方向と直交する方向をX軸方向としたとき、熱プレス工程の前工程で得られる乾燥圧縮シートの打抜き品の長手方向がX軸方向と一致すると、引っ張りに強いシートになる。ブロック状セルローススポンジの引張強度測定値は、例えば、X軸方向が9〜17N/cm、Y軸方向が9〜18N/cm、Z軸方向が4〜9N/cmである。このとき、引張強度は、7cm×2cm×1cmの試験片を10個以上用意し、テンシロン万能試験機を用いて、前記の7cmの方向を引っ張る軸方向としてチャック間距離5cmで引張試験を行い、引張強度(N/cm)を測定し、平均した値である。
(実施例1)
ブロック状セルローススポンジを用意した。具体的には、セルロースを主成分とした溶解パルプから天然繊維を加えたビスコースを作製し、前記ビスコースに中性結晶芒硝を加えて混合し、混合物を作製した。前記混合物を成型型内に押し込み、加熱凝固させて、ブロック状セルローススポンジを得た。得られたブロック状セルローススポンジを、厚さ9mmのスライス状に切断して、シート状のセルローススポンジを得た。得られたシート状のセルローススポンジを55℃〜80℃の条件で乾燥し、乾燥シートとする。この乾燥シートに140℃〜150℃の条件でプレス加工を行い、厚さが3mmとなるように圧縮した。得られた乾燥圧縮シートを打ち抜き加工して、12mm(短手方向)×65mm(長手方向)×3mm(厚み方向)の打抜き品を作製した。得られた打抜き品を、図2に示す金型(φ4mm)の中に入れ、後述の表1でサイズ変化率の記載があるセルの条件で熱プレスを行い、各熱プレス条件での円柱形状の多孔質セルロース立体的圧縮成形物(多孔質体立体的圧縮成形物)を得た。このとき、圧縮倍数は7倍であり、密度は0.38g/cmであった。
なお、圧縮倍数は、次のように算出した。シート状のセルローススポンジ(図1の(b))の厚みをノギスで測定し、厚みA(mm)とした。圧縮成形物の断面の直径については、2箇所測定し、その平均値をD(mm)とし、以下の式から圧縮倍数を算出した。なお、下記式における「12」は、打抜き品の短手方向長さである。
圧縮倍数=(A×12)/((D/2)×3.14)
得られた多孔質セルロース立体的圧縮成形物の圧縮直後の円柱の底面の直径D(mm)を測定した。さらに、温度20℃、湿度50RH%の条件下で1時間放置した後に直径D(mm)を測定し、次の式により、サイズ変化率を算出した。なお、円柱の底面の直径の測定は、ノギスを用いて2箇所を測定し、その平均値とした。
サイズ変化率(%)={(D−D)/D}×100
表1に、圧縮倍数が7倍で、圧縮温度および圧縮時間を変えて作製した多孔質セルロース立体的圧縮成形物のサイズ変化率(%)を示す。
Figure 2018167572
(実施例2)
実施例1と同様に得られたブロック状セルローススポンジを、厚さ12mmのスライス状に切断して、シート状のセルローススポンジを得た。得られたシート状のセルローススポンジを55℃〜80℃の条件で乾燥し、乾燥シートとする。この乾燥シートに140℃〜150℃の条件でプレス加工を行い、厚さが3mmとなるように圧縮した。得られた乾燥圧縮シートを打ち抜き加工して、12mm(短手方向)×65mm(長手方向)×3mm(厚み方向)の打抜き品を作製した。得られた打抜き品を、図2に示す金型(φ4mm)の中に入れ、後述の表2でサイズ変化率の記載があるセルの条件で熱プレスを行い、各熱プレス条件での円柱形状の多孔質セルロース立体的圧縮成形物(多孔質体立体的圧縮成形物)を得た。このとき、圧縮倍数は9倍であった。
表2に、圧縮倍数が9倍で、圧縮温度および圧縮時間を変えて作製した多孔質セルロース立体的圧縮成形物のサイズ変化率(%)を示す。
Figure 2018167572
(実施例3)
実施例1と同様に得られたブロック状セルローススポンジを、厚さ15mmのスライス状に切断して、シート状のセルローススポンジを得た。得られたシート状のセルローススポンジを55℃〜80℃の条件で乾燥し、乾燥シートとする。この乾燥シートに140℃〜150℃の条件でプレス加工を行い、厚さが3mmとなるように圧縮した。得られた乾燥圧縮シートを打ち抜き加工して、12mm(短手方向)×65mm(長手方向)×3mm(厚み方向)の打抜き品を作製した。得られた打抜き品を、図2に示す金型(φ4mm)の中に入れ、後述の表3でサイズ変化率の記載があるセルの条件で熱プレスを行い、各熱プレス条件での円柱形状の多孔質セルロース立体的圧縮成形物(多孔質体立体的圧縮成形物)を得た。このとき、圧縮倍数は11倍であった。
表3に、圧縮倍数が11倍で、圧縮温度および圧縮時間を変えて作製した多孔質セルロース立体的圧縮成形物のサイズ変化率(%)を示す。
Figure 2018167572
(実施例4)
実施例1と同様に得られたブロック状セルローススポンジを、厚さ18mmのスライス状に切断して、シート状のセルローススポンジを得た。得られたシート状のセルローススポンジを55℃〜80℃の条件で乾燥し、乾燥シートとする。この乾燥シートに140℃〜150℃の条件でプレス加工を行い、厚さが3mmとなるように圧縮した。得られた乾燥圧縮シートを打ち抜き加工して、12mm(短手方向)×65mm(長手方向)×3mm(厚み方向)の打抜き品を作製した。得られた打抜き品を、図2に示す金型(φ4mm)の中に入れ、後述の表4でサイズ変化率の記載があるセルの条件で熱プレスを行い、各熱プレス条件での円柱形状の多孔質セルロース立体的圧縮成形物(多孔質体立体的圧縮成形物)を得た。このとき、圧縮倍数は14倍であった。
表4に、圧縮倍数が14倍で、圧縮温度および圧縮時間を変えて作製した多孔質セルロース立体的圧縮成形物のサイズ変化率(%)を示す。
Figure 2018167572
(実施例5)
実施例1と同様に得られたブロック状セルローススポンジを、厚さ21mmのスライス状に切断して、シート状のセルローススポンジを得た。得られたシート状のセルローススポンジを55℃〜80℃の条件で乾燥し、乾燥シートとする。この乾燥シートに140℃〜150℃の条件でプレス加工を行い、厚さが3mmとなるように圧縮した。得られた乾燥圧縮シートを打ち抜き加工して、12mm(短手方向)×65mm(長手方向)×3mm(厚み方向)の打抜き品を作製した。得られた打抜き品を、図2に示す金型(φ4mm)の中に入れ、後述の表5でサイズ変化率の記載があるセルの条件で熱プレスを行い、各熱プレス条件での円柱形状の多孔質セルロース立体的圧縮成形物(多孔質体立体的圧縮成形物)を得た。このとき、圧縮倍数は16倍であった。
表5に、圧縮倍数が16倍で、圧縮温度および圧縮時間を変えて作製した多孔質セルロース立体的圧縮成形物のサイズ変化率(%)を示す。
Figure 2018167572
(実施例6)
実施例1と同様に得られたブロック状セルローススポンジを、厚さ24mmのスライス状に切断して、シート状のセルローススポンジを得た。得られたシート状のセルローススポンジを55℃〜80℃の条件で乾燥し、乾燥シートとする。この乾燥シートに140℃〜150℃の条件でプレス加工を行い実施例1と同様に圧縮したところ、厚さが3.6mmとなった。得られた乾燥圧縮シートを打ち抜き加工して、12mm(短手方向)×65mm(長手方向)×3.5mm(厚み方向)の打抜き品を作製した。得られた打抜き品を、図2に示す金型(φ4mm)の中に入れ、後述の表6でサイズ変化率の記載があるセルの条件で熱プレスを行い、各熱プレス条件での円柱形状の多孔質セルロース立体的圧縮成形物(多孔質体立体的圧縮成形物)を得た。このとき、圧縮倍数は18倍であった。
表6に、圧縮倍数が18倍で、圧縮温度および圧縮時間を変えて作製した多孔質セルロース立体的圧縮成形物のサイズ変化率(%)を示す。
Figure 2018167572
(実施例7)
実施例1と同様に得られたブロック状セルローススポンジを、厚さ27mmのスライス状に切断して、シート状のセルローススポンジを得た。得られたシート状のセルローススポンジを55℃〜80℃の条件で乾燥し、乾燥シートとする。この乾燥シートに140℃〜150℃の条件でプレス加工を行い、実施例1と同様に圧縮したところ、厚さが4.08mmとなった。得られた乾燥圧縮シートを打ち抜き加工して、12mm(短手方向)×65mm(長手方向)×3.5mm(厚み方向)の打抜き品を作製した。得られた打抜き品を、図2に示す金型(φ4mm)の中に入れ、後述の表7でサイズ変化率の記載があるセルの条件で熱プレスを行い、各熱プレス条件での円柱形状の多孔質セルロース立体的圧縮成形物(多孔質体立体的圧縮成形物)を得た。このとき、圧縮倍数は20倍であった。
表7に、圧縮倍数が20倍で、圧縮温度および圧縮時間を変えて作製した多孔質セルロース立体的圧縮成形物のサイズ変化率(%)を示す。
Figure 2018167572
(実施例8)
実施例1と同様に得られたブロック状セルローススポンジを、厚さ30mmのスライス状に切断して、シート状のセルローススポンジを得た。得られたシート状のセルローススポンジを55℃〜80℃の条件で乾燥し、乾燥シートとする。この乾燥シートに140℃〜150℃の条件でプレス加工を行い、実施例1と同様に圧縮したところ、厚さが3.53mmとなった。得られた乾燥圧縮シートを打ち抜き加工して、12mm(短手方向)×65mm(長手方向)×3.5mm(厚み方向)の打抜き品を作製した。得られた打抜き品を、図2に示す金型(φ4mm)の中に入れ、後述の表8でサイズ変化率の記載があるセルの条件で熱プレスを行い、各熱プレス条件での円柱形状の多孔質セルロース立体的圧縮成形物(多孔質体立体的圧縮成形物)を得た。このとき、圧縮倍数は23倍であった。
表8に、圧縮倍数が23倍で、圧縮温度および圧縮時間を変えて作製した多孔質セルロース立体的圧縮成形物のサイズ変化率(%)を示す。
Figure 2018167572
(比較例1)
実施例1と同様に得られたブロック状セルローススポンジを、厚さ7mmのスライス状に切断して、シート状のセルローススポンジを得た。得られたシート状のセルローススポンジを55℃〜80℃の条件で乾燥し、乾燥シートとする。この乾燥シートに140℃〜150℃の条件でプレス加工を行い、厚さが3mmとなるように圧縮した。得られた乾燥圧縮シートを打ち抜き加工して、12mm(短手方向)×65mm(長手方向)×3mm(厚み方向)の打抜き品を作製した。得られた打抜き品を、図2に示す金型(φ4mm)の中に入れ、後述の表9でサイズ変化率の記載があるセルの条件で熱プレスを行い、各熱プレス条件での円柱形状の多孔質セルロース立体的圧縮成形物(多孔質体立体的圧縮成形物)を得た。このとき、圧縮倍数は5倍であった。
表9に、圧縮倍数が5倍で、圧縮温度および圧縮時間を変えて作製した多孔質セルロース立体的圧縮成形物のサイズ変化率(%)を示す。
Figure 2018167572
本例で得られた多孔質セルロース立体的圧縮成形物のサイズ変化率は、各条件とも実施例と比較して全体的に大きいものであり、また、サイズ変化率を小さくしようとすると、高温かつ長時間の熱プレスが必要であり、作業工程上好ましいものであるとはいえない。本例の製造方法では、容易に所望の形状とすることができるとは言い難く、得られた圧縮成形物も成形後のサイズ変化が生じにくいとはいえない物であった。
(比較例2)
実施例2で得られた打抜き品を、図2に示す金型(φ4mm)の中に入れ、圧縮温度20℃および圧縮時間5分の条件でプレスを行い、円柱形状の多孔質セルロース立体的圧縮成形物(多孔質体立体的圧縮成形物)を得た。このとき、圧縮倍数は9倍であった。本例で得られた多孔質セルロース立体的圧縮成形物のサイズ変化率は18%と大きいものであり、成形後のサイズ変化が生じにくいとはいえない物であった。
以上より、実施例においては、サイズ変化率の小さい多孔質体立体的圧縮成形物が得られ、特に好適な条件ではサイズ変化率が0%となる多孔質体立体的圧縮成形物が得られた。これらの多孔質体立体的圧縮成形物は、サイズ変化率が小さいにもかかわらず、膨潤時には、元の形状まで戻りやすい。したがって、本発明の多孔質体立体的圧縮成形物は、圧縮時には所望の形状であり、吸液によって容易に拡張可能であることから、内視鏡手術において用いる圧排体や緊急止血材、あるいは、子宮頚管拡張器等に好適に適用できるといえる。
(実施例9)
実施例1と同様に得られたブロック状セルローススポンジを、厚さ15mmのスライス状に切断して、シート状のセルローススポンジを得た。得られたシート状のセルローススポンジを55℃〜80℃の条件で乾燥し、乾燥シートとする。この乾燥シートに140℃〜150℃の条件でプレス加工を行い、厚さが3mmとなるように圧縮した。得られた乾燥圧縮シートを打ち抜き加工して、11mm(短手方向)×65mm(長手方向)×3mm(厚み方向)の打抜き品を作製した。得られた打抜き品を、図2に示す金型(φ3mm)の中に入れ、140℃で3分間の条件で熱プレスを行い、円柱形状の多孔質セルロース立体的圧縮成形物(多孔質体立体的圧縮成形物)を得た。このとき、圧縮倍数は25倍であった。
得られた立体的圧縮成形物を図3(b)に示す膨潤成形用金型20(φ3.8mm)に入れ固定し、注入口21から水1mLを注入した。そして、膨潤成形用金型20ごと真空乾燥機(ヤマト科学、角形真空定温乾燥DP610)で80℃、50分間乾燥したところ、図3(c)に示すような、膨潤成形用金型20の形状の多孔質セルロース立体的圧縮成形物(多孔質体立体的圧縮成形物)が得られた。この多孔質セルロース立体的圧縮成形物は、表面が熱プレス工程後の多孔質セルロース立体的圧縮成形物に比べて、表面が平滑であった。得られた多孔質セルロース立体的圧縮成形物は、水に入れたとき、瞬時に膨潤した(膨張時間は約2秒)。また、サイズ変化率(%)は0%であった。
(実施例10)
実施例1と同様に得られたブロック状セルローススポンジを、厚さ15mmのスライス状に切断して、シート状のセルローススポンジを得た。得られたシート状のセルローススポンジを55℃〜80℃の条件で乾燥し、乾燥シートとする。この乾燥シートに140℃〜150℃の条件でプレス加工を行い、厚さが3mmとなるように圧縮した。得られた乾燥圧縮シートを打ち抜き加工して、11mm(短手方向)×65mm(長手方向)×3mm(厚み方向)の打抜き品を作製した。得られた打抜き品を、図2に示す金型(φ3mm)の中に入れ、140℃で3分間の条件で熱プレスを行い、円柱形状の多孔質セルロース立体的圧縮成形物(多孔質体立体的圧縮成形物)を得た。このとき、圧縮倍数は25倍であった。
得られた立体的圧縮成形物を図3(b)に示す膨潤成形用金型20(φ3.8mm)に入れ固定し、注入口21からコーティング剤1mLを注入した。コーティング剤としては、オブラート(国光オブラート製、オブラート、Lot.CABGAI)を常温で水と混合して5wt%の水溶液としたものを用いた。そして、膨潤成形用金型20ごと真空乾燥機(ヤマト科学、角形真空定温乾燥DP610)で80℃、50分間乾燥したところ、図3(c)に示すような、膨潤成形用金型20の形状の多孔質セルロース立体的圧縮成形物(多孔質体立体的圧縮成形物)が得られた。この多孔質セルロース立体的圧縮成形物は、表面にコーティング層が形成されていた。得られたコーティング層付き多孔質セルロース立体的圧縮成形物は、水に入れたときの膨潤時間は3分であった。また、サイズ変化率(%)は0%であった。
なお、膨潤時間は、次の方法で測定した。500ccの蒸留水が入ったビーカーに、多孔質セルロース立体的圧縮成形物を落とし入れ、水浸漬を開始した時間を0分として、水浸漬開始から1分毎にスポンジを取り出しノギスにて、厚みと幅を測定し、断面積を算出した。断面積の増減差が1%以内であった初めの時間を膨潤時間とした。
以上の実施例では、直方体形状の多孔質体を円柱形状の圧縮成形物としたものを示したが、本発明はこれらに限定されない。例えば、圧縮成形物の形状は円柱形状と単純なものであっても、膨潤後には様々な形状となるような多孔質体圧縮成形物とすることも可能である。例えば、膨潤後の形状(圧縮前の形状)によって、圧縮時に(折り畳みが必要となる等の理由で)表面平滑性に欠けるような形状となるようなものであっても、膨潤成形工程を行うことによって、平滑性に優れた多孔質体圧縮成形物を得ることができる。
以上、実施の形態の具体例として、多孔質体シートとしてセルローススポンジシートを使用して円柱形状に成形した製造方法の例をあげて本発明を説明したが、本発明の多孔質体立体的圧縮成形物の製造方法は、これらの具体例で記載されたもののみに限定されるものではなく、種々の態様が可能である。
1 原反
2 シート状のセルローススポンジ
3 乾燥シート
4 乾燥圧縮シート
5 打抜き品
6 多孔質セルロース立体的圧縮成形物(多孔質体立体的圧縮成形物)
7 多孔質体立体的圧縮成形物(膨潤成形後)
10 金型
11 下で受ける金型
11A スリット
12 上から圧縮する金型
20 膨潤成形用金型
21 注入口

Claims (5)

  1. 多孔質体シートを金型の中に入れて熱プレスする熱プレス工程を有し、
    前記熱プレス工程は、圧縮時間が30秒以上5分以下、加熱温度が80℃以上150℃以下、および、圧縮倍数が5倍を超えて25倍以下を満たす条件で圧縮成形を行う工程であることを特徴とする、
    多孔質体立体的圧縮成形物の製造方法。
  2. 前記多孔質体シートとして、前記熱プレス工程の前工程において、前記熱プレス工程での圧縮方向とは異なる方向にプレス加工が行われた多孔質体シートを用いる、請求項1記載の多孔質体立体的圧縮成形物の製造方法。
  3. 前記熱プレス工程において、直方体形状の前記多孔質体シートを用い、断面が円形または楕円形の金型を用いる、請求項1または2記載の多孔質体立体的圧縮成形物の製造方法。
  4. 前記熱プレス工程の後に、さらに膨潤成形工程を含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の多孔質体立体的圧縮成形物の製造方法。
  5. 前記多孔質体シートとして、セルローススポンジを用いる、請求項1から4のいずれか一項に記載の多孔質体立体的圧縮成形物の製造方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN116036353A (zh) * 2022-12-05 2023-05-02 上海七木医疗器械有限公司 一种可吸收栓塞材料及其制备方法与应用
WO2024171125A1 (en) * 2023-02-16 2024-08-22 Stora Enso Oyj Method of hot pressing a solid cellulose foam, and a solid cellulose foam produced from said method

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