JP2018167136A - 金属元素の溶媒抽出状態の把握方法 - Google Patents

金属元素の溶媒抽出状態の把握方法 Download PDF

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Abstract

【課題】一価の陽イオン交換型抽出剤HAを用いた一価の金属元素M’または二価の金属元素Mの溶媒抽出状態を正確に把握する方法を提供する。【解決手段】予め求めた各平衡定数、各総物質濃度、各総物質量、反応基準時間T’における反応率R、水相中の各総物質量のバランスと電気的中性条件に基づき、解離平衡下での水相中の二価酸イオン濃度と水素イオン濃度[H+]を求め、この水素イオン濃度[H+]を二価の金属塩および一価酸の解離平衡に当てはめて水相中の抽出に寄与する[M2+]、[M’+]の濃度を求め、さらに時刻T+ΔTにおける二価金属元素Mの濃度[M2+]T+ΔTおよび一価金属元素M’の濃度[M’+]T+ΔTと、時刻T+ΔTにおける水素イオン濃度[H+]T+ΔTを、[M2+]Tおよび[M’+]Tの経時変化に基づいて求め、この手順を繰り返し、金属元素M’、Mの抽出状態を把握することを特徴とする金属元素の溶媒抽出状態の把握方法。【選択図】図6

Description

本発明は、陽イオン交換型抽出剤を用いた溶媒抽出において、金属元素の抽出状態を把握する方法に関する。
溶媒抽出法は、抽出剤が含まれる有機相と金属元素が含まれる水相とを混合すると、金属元素の一部が有機相側に抽出されて平衡になる反応を利用したものである。金属元素の種類やpHによって、有機相側に抽出される割合(抽出率)が変化するため、適切な抽出剤と液性を選択することにより、金属元素を選択的に抽出させることができる。また、pHによって抽出率が変化することを利用して、有機相側から水相側へと金属元素を逆抽出させることもできる。
溶媒抽出に用いる有機相は水相に溶解しないか十分に溶解度が低く、静置することにより水相との比重差で分相か可能であるものが選定される。これらの反応を組み合わせ、例えば、不純物が含まれた水相から金属元素を選択的に有機相へと抽出させた後に、不純物を除去した清浄な水相に金属元素を逆抽出させることにより、水相中に含まれる金属元素の純度を高める目的などに利用することができる。
溶媒抽出装置を設計する場合、水相に含まれる金属元素の組成に応じて適切に抽出剤を選定するとともに、金属元素毎に抽出率のpH依存性を把握しておくことが、処理条件を決定するために重要となる。また、抽出反応が平衡に達するまでの時間や分相に要する時間に基づいて装置内の滞留時間を設定する必要がある。このように、溶媒抽出装置を設計するには、抽出過程を通じて抽出状態の変化を把握することが必要である。この場合、金属元素毎の抽出率を把握するためには、ビーカーや分液漏斗を用いて実液の抽出試験を行うことが確実であるが、抽出剤や金属元素の種類によっては文献値を用いることもできる。
これらの結果をもとに、pHや流量比などの最適処理条件を設定することになるが、単一の処理だけではプロセスの要求する十分な分離性能が得られない場合は、多段の溶媒処理装置を用いて繰り返し抽出反応を起こさせる操作が広く行われている。また、バッチ処理では、混合と分相を繰り返し行うことになり、抽出や逆抽出などの反応に応じてその液性を変化させる必要があり、処理が煩雑となるため、連続処理とされる場合が多い。このような経緯により、多段の溶媒抽出処理を連続して行うことができるミキサセトラなどの装置が使用されている。
図1、図2に一般的なミキサセトラの装置例を示す。図示するように、ミキサセトラ10はミキサ部11とセトラ部12を有しており、ミキサ部11からセトラ部に液が流れるように形成されている。ミキサ部11には有機相13と水相14が供給され混合される。ミキサ部11は抽出平衡に到達する時間よりも滞留時間が十分に長くなるよう設計される。混合液はオーバーフロー等でセトラ部12へと移送され、そこで比重差によって有機相と水相に分相する。セトラ部12は分相に要する時間よりも滞留時間が十分に長くなるよう設計されている。分相された有機相と水相は隣接段あるいは系外へと別々に移送される。また、必要に応じて、セトラ部12から排出された液の一部をミキサ部11に戻すことによって、有機相13と水相14の体積比(A/O比)などを調整する内部循環構造を有する場合もある。
上記構造の単段ミキサセトラを多段に連結し、各段の間で有機相や水相が流通できるようにした多段ミキサセトラを図2に示す。図2に示した通り、多段ミキサセトラでは有機相と水相を逆向きに流通させる(向流)構造となっている場合が多く、段数を増減させることで分離性能の調整が可能である。
溶媒抽出において、抽出状態を把握するには液の組成を知ればよく、組成となる各金属元素に対して行った抽出試験あるいは文献から求めた各金属元素の分配係数のデータをもとに物質収支を検討する方法が知られている。また、簡便な方法として、水と金属元素と抽出剤の平衡曲線を図示して求める方法が知られている。この方法を多段の向流接触ミキサセトラに適用し、必要な段数を求めることもできる(非特許文献1)。ただし、平衡曲線は金属元素ごとに異なり、またpH依存性があるため、金属元素およびpHの相違に応じて作図を行う必要があり、多くの金属元素を含む系では煩雑な検討が必要であった。また、作図による方法では平衡状態における処理条件を求めることしかできず、運転開始時や異常発生時などの過渡状態の抽出挙動を把握することは困難であった。
そこで、多成分系かつ過渡状態を含めた詳細な検討が必要となる核燃料再処理などの分野では電子計算機を用いたシミュレーション技術の適用が進められてきた(非特許文献2、特許文献1〜3)。このようなシミュレーション技術を用いれば、過渡状態を含めた溶媒抽出の状態をある程度は把握できるようになった。
一方、溶媒抽出の適用分野が広がり、抽出対象の金属元素の種類や液性の相違に応じて多様な抽出剤が開発されており、陽イオン交換型の反応機構を持つ抽出剤(D2EHPA, PC‐88A, Cyanex272など)が一般に用いられるようになっている。この陽イオン交換型の抽出剤は抽出反応に伴い水素イオンが水相中に放出されるため水相のpHが変化し、抽出反応がその影響を受ける。抽出条件を作図によって求める従来の方法では水素イオン濃度も含めた三次元の平衡曲線を作図する必要があるため、作図方法による抽出条件の解析は一層難しい(非特許文献3)。一方、従来の溶媒抽出シミュレーションは抽出反応に伴う水相のpH変化は考慮されていなかったため、陽イオン交換型抽出剤に適用した新たな溶媒抽出シミュレーションが開発されている(非特許文献4、特許文献4、5)。
特許第2565032号公報 特許第3162006号公報 特許第3644245号公報 特許第3950968号公報 特許第5678231号公報
鈴木善孝、「化学工学の基礎」東京大学出版局(2010) P169 「Purexプロセス計算コードMIXSET」動力炉・核燃料開発事業団 PNCT 841‐77‐60(1977) 「錯体形成による金属の抽出」中塩他、化学工学42号(4) P182(1978) 「金属イオンの抽出分離プロセスの設計」西浜他、化学工学論文集vol.26(4) P.497(2000)
陽イオン交換型抽出剤を用いた抽出反応に伴う水相のpH変化を考慮した新たな溶媒抽出シミュレーションは、平衡状態については抽出状態を把握できるようになったが、抽出反応の速度は有機相と水相の混合状態や装置形状などの工学的な要素に大きく依存し、実機の操業前に把握することは困難であった。それに対し、平衡状態の把握ができれば設計は可能であるため、設計上の観点からは過渡状態を把握する必要性は低く、定量的な把握は試みられてこなかった。ただし、操業時は運転開始時や異常発生時に生じる過渡状態への対応方法によって、過渡状態時に得られる製品の歩留まりや純度が大きく低下しうるため、操業上の観点からは何らかの対応をとる必要があり、これまでは経験に基づき操業がなされてきた。
また、酸の価数が二価以上の場合、酸自身や酸と金属元素との解離状態が複数となり、解離状態ごとに別の抽出反応が起こるので、個々の解離状態を考慮しなければ抽出状態を正確に把握することができない。
さらに、水相中の酸や金属元素が完全解離しない場合(例えば、二価酸水溶液において金属元素濃度が高い場合)、完全解離しない化学種濃度が水素イオン濃度や金属イオン濃度を左右し、間接的に抽出反応に影響を与える。このため、すべての酸や金属元素の解離平衡を考慮しなければ、抽出状態を十分に把握することは困難である。
このように、従来の陽イオン交換型抽出剤による水相のpH変化を考慮した溶媒抽出シミュレーションでは、前述の複数の解離状態や水素イオン濃度の変化は考慮されていないので、抽出状態の把握は不十分であった。このような従来方法の課題に対して、本発明は一価の陽イオン交換型抽出剤と一価ないし二価の酸を用いた、一価ないし二価の金属元素の溶媒抽出について、個々の解離平衡に応じた抽出反応を考慮することによって、過渡状態の経時変化を含めた抽出状態を把握する方法を提供する。
本発明は以下の構成によって上記課題を解決した金属元素の溶媒抽出状態の把握方法に関する。
〔1〕一価の陽イオン交換型抽出剤HAを用いた一価の金属元素M’または二価の金属元素Mの溶媒抽出において、あらかじめ求めた各平衡定数、各総物質濃度、各総物質量、反応基準時間T’における反応率R、および水相中の各総物質量のバランスと電気的中性条件に基づき、解離平衡下での水相中の二価酸イオン濃度と水素イオン濃度[H]を求め、求めた水素イオン濃度[H]を二価の金属塩および一価酸の解離平衡に当てはめて、水相中の抽出に寄与する[M2+]、[M’]の濃度を求め、これらを次式〔I〕、次式〔II〕に当てはめて、時刻Tから微小時間ΔTが経過した時刻T+ΔTにおける二価金属元素Mの濃度[M2+]T+ΔTおよび一価金属元素M’の濃度[M’]T+ΔTを求め、さらに時刻Tから微小時間ΔTが経過した時刻T+ΔTにおける水素イオン濃度[H]T+ΔTを[M2+および[M’の経時変化に基づく次式〔III〕によって求め、この水素イオン濃度[H]T+ΔTを二価金属元素Mの濃度[M2+]T+ΔTおよび一価金属元素M’の濃度[M’]T+ΔTとともに式〔I〕、式〔II〕に適用し、この手順を繰り返すことによって、抽出開始から平衡状態になるまでの過渡状態を含めて水相の化学種の濃度の変化に応じた一価金属元素M’または二価金属元素Mの抽出状態を把握することを特徴とする金属元素の溶媒抽出状態の把握方法。
〔式I〕
Figure 2018167136
-------〔I〕
〔式II〕
Figure 2018167136
-------〔II〕
〔式III〕
[H]T+ΔT=[H]−2([M2+]T+ΔT−[M2+ )−([M’]T+ΔT−[M’])
・・・〔III〕
式中の記号は以下のとおり、
[H]は時刻Tにおける水素イオン濃度、
[H]T+ΔTは時刻T+ΔTにおける水素イオン濃度、
[M2+]は時刻Tにおける二価の金属イオンMの濃度、
[M2+]T+ΔTは時刻T+ΔTにおける二価の金属イオンMの濃度、
[M2+]EX−eqTは時刻Tにおいて解離平衡と抽出平衡が成り立った時の二価の金属イオンMの濃度、
[M’]は時刻Tにおける一価の金属イオンM’の濃度、
[M’]T+ΔTは時刻T+ΔTにおける一価の金属イオンM’の濃度、
[M’]EX−eqTは時刻Tにおいて解離平衡と抽出平衡が成り立った時の一価の金属イオンM’の濃度、
T’は反応基準時間、
Rは反応基準時間T’における一価金属元素M’および二価金属元素Mの反応率
〔2〕ミキサセトラにおける微小時間ΔTの間に各段と隣接段あるいは外部との間で液の流出入が起こることによる化学種Xの時刻T+ΔTにおける濃度[X]T+ΔTを表わす次式〔IV〕に基づき、上記式〔I〕、上記式〔II〕、次式〔III〕によってミキサセトラにおける一価金属元素M’あるいは二価金属元素Mの抽出状態を把握する上記〔1〕に記載する金属元素の溶媒抽出状態の把握方法。
〔式IV〕
Figure 2018167136
-------〔IV〕
式中の記号は以下のとおり、
X:液中の化学種(抽出に関与するX=M’、M、HA、水素イオンH、M’およびHAにより生成する金属錯体M’A、並びにMおよびHAにより生成する金属錯体MA)、
[X(i)]:時刻Tでの、流入液i(もしくは流出液i)におけるXの濃度、
(i):時刻Tでの、流入液i(もしくは流出液i)の単位時間当たりの流量、
V:Xが存在するミキサ部(もしくはセトラ部)の水相(もしくは有機相)の体積。
〔3〕金属元素MがLi、NiまたはCoであり、ミキサセトラを用いて、Li、NiまたはCoを含む溶液から各金属元素を抽出分離するときに、Li、NiおよびCoの抽出状態を把握する上記[2]に記載する方法。
本発明の方法は、一価の陽イオン交換型抽出剤HAを用いた一価の金属元素M’または二価の金属元素Mの溶媒抽出において、あらかじめ求めた各平衡定数、各総物質濃度、各総物質量、反応基準時間T’における反応率R、および水相中の各総物質量のバランスと電気的中性条件に基づき、解離平衡下での水相中の二価酸イオン濃度と水素イオン濃度[H]を求め、求めた水素イオン濃度[H]を二価の金属塩および一価酸の解離平衡に当てはめて、水相中の抽出に寄与する[M2+]、[M’]の濃度を求め、これらを式〔I〕、式〔II〕に当てはめて時刻Tから微小時間ΔTが経過した時刻T+ΔTにおける二価金属元素Mの濃度[M2+]T+ΔTおよび一価金属元素M’の濃度[M’]T+ΔTを求める。
式〔I〕および式〔II〕は、あらかじめ求めた各平衡定数、各総物質濃度、各総物質量から解離・抽出平衡が成り立つ時の一価金属イオンの濃度[M’EX−eqT(mol/L)および二価金属イオンの濃度[M2+EX−eqT(mol/L)を以下の〔式1〕〜〔式10〕から求め、さらに反応基準時間T’における反応率R、および水相中の各総物質量のバランスと電気的中性条件に基づき以下の方法で導かれる。
以下に式〔I〕および式〔II〕への導入方法を示す。なお、各式の記号は以下のとおりである。
[H]:水素イオン濃度(mol/L)
[OH]:水酸化物イオン濃度(mol/L)
[HD]:二価酸HDの濃度(mol/L)
[HD]:二価酸水素イオンHDの濃度(mol/L)
[D2−]:二価酸イオンD2−の濃度(mol/L)
[HD’]:一価酸HD’の濃度(mol/L)
[D’]:一価酸イオンD’の濃度(mol/L)
[MD]:二価金属と二価酸からなる塩MDの濃度(mol/L)
[M2+]:二価金属イオンM2+の濃度(mol/L)
[M’D]:一価金属と二価酸からなる塩M’Dの濃度(mol/L)
[M’D]:一価金属と二価酸からなるイオンM’Dの濃度(mol/L)
[M’]:一価金属イオンM’の濃度(mol/L)
[HA]:抽出剤HAの濃度(mol/L)
[MA]:二価金属および抽出剤により生成する金属錯体MAの濃度(mol/L)
[M’A]:一価金属および抽出剤により生成する金属錯体M’Aの濃度(mol/L)
[Heq:〔式5〕を満たす(解離平衡が成り立つ時)水素イオン濃度(mol/L)
[HDeq:解離平衡が成り立つ時の二価酸水素イオンHDの濃度(mol/L)
[D2−eq:解離平衡が成り立つ時の二価酸イオンD2−の濃度(mol/L)
[HD’]eq:解離平衡が成り立つ時の一価酸HD’の濃度(mol/L)
[D’eq:解離平衡が成り立つ時の一価酸イオンD’の濃度(mol/L)
[M’Deq:解離平衡が成り立つ時の一価金属と二価酸からなるイオンM’Dの濃度(mol/L)
[M’eq:解離平衡が成り立つ時の一価金属元素イオンM’の濃度(mol/L)
[HEX−eq:〔式9〕を満たす(解離・抽出平衡が成り立つ時)水素イオン濃度(mol/L)
[M’EX−eq:解離・抽出平衡が成り立つ時の一価金属イオンの濃度(mol/L)
[M2+EX−eq:解離・抽出平衡が成り立つ時の二価金属イオンの濃度(mol/L)
[HA]EX−eq:解離・抽出平衡が成り立つ時の抽出剤HAの濃度(mol/L)
:水相の体積(L)
:有機相の体積(L)
式の平衡定数は以下のとおりである。
:水のイオン積=10−14
D1:HDの解離平衡定数=[H][HD]/[HD]
D2:HDの解離平衡定数=[H][D2−]/[HD]
:MDの解離平衡定数=[M2+][D2−]/[MD]
D’:HD’の解離平衡定数=[H][D’]/[HD’]
M’1:M’Dの解離平衡定数=[M’][M’D]/[M’D]
M’2:M’Dの解離平衡定数=[M’][D2−]/[M’D]
DM:Mの抽出平衡定数=[MA][H]/[M2+][HA]
DM’:M’の抽出平衡定数=[M’A][H]/[M’][HA]
式の総物質濃度およびそれらの計算式は以下のとおりである。
[Dall]:総D濃度(mol/L)=[HD]+[HD]+[D2−]+[MD]+[M’D]+[M’D]
[D’all]:総D’濃度(mol/L)=[HD’]+[D’]
[Mall]:総M濃度(mol/L)=[MD]+[M2+]
[M’all]:総M’濃度(mol/L)=2[M’D]+[M’D]+[M’]
式の総物質量およびそれらの物質収支式は以下のとおりである。
EX−all:Aの総物質量(mol)=〔[HA]+2[MA]+[M’A]〕V
EX−all:Mの総物質量(mol)=[M2+]V+[MA]V
M’EX−all:M’の総物質量(mol)=[M’]V+[M’A]V
〔水相中の解離平衡〕
はじめに、水相における解離平衡時の各化学種の濃度を求める。まず、下記〔式1〕〜〔式5〕により、解離平衡時の水素イオンの濃度[H]eqを求める。次に、下記〔式6a〕〜〔6e〕により、[H]eqを用いて各化学種の濃度[D2−] eq、[M’eq、[HD] eq、 [M’D]eqおよび[D’] eqを求める。
〔水相と有機相の解離・抽出平衡〕
次に、〔式6a〕〜〔6e〕で求めた解離平衡時の各化学種の濃度を前提として、さらに抽出反応が進んで抽出平衡に至ったときの解離・抽出平衡時の各化学種の濃度を求める。まず、下記〔式7a〕〔式7b〕〜〔式9〕により、〔式6a〕〜〔式6e〕で求めた[D2−]eq、[HD] eq、[M’D]eq、および[D’] eqを用いて解離・抽出平衡時の[H]EX-eqを求める。次に、下記〔式10a〕〜〔式10c〕により、[H]EX-eqを用いて解離・抽出平衡時の一価金属イオンの濃度 [M’] EX-eq、および二価金属イオンの濃度[M2+] EX-eqを求める。
〔物質移動を考慮した過渡状態の把握〕
物質移動を考慮し、時刻Tから微小時間ΔTが経過した後の時刻T+ΔTにおける各金属元素の濃度を求める。まず、〔式10a〕〜〔式10c〕により導かれた[M’]EX-eqおよび[M2+]EX-eqを用いて上記式〔I〕および上記式〔II〕を解き、[M2+]T+ΔTおよび[M’]T+ΔTを算出する。
上記〔水相中の解離平衡〕〜上記〔物質移動を考慮した過渡状態の把握〕の手順を繰り返すことによって、抽出開始から平衡状態になるまでの過渡状態を含めて水相の化学種の濃度の変化に応じた一価金属元素M’または二価金属元素Mの抽出状態を正確に把握することができる。
具体的な式〔式1〕〜〔式10c〕は以下のとおりである。
〔水相の解離平衡〕
〔式1〕
水相中では電気的中性が成り立つため、陽イオン濃度の総和と陰イオン濃度の総和は等しく、〔式1〕で表される。
2[M2+]+[H+]+[M’+]=2[D2−]+[HD]+[M’D]+[D’]+[OH] ・・・〔式1〕
〔式2〕
式〔1〕に各解離平衡定数、各総物質濃度および[H+]を代入して〔式2〕が導かれる。〔式2〕に示すように、二価酸イオン濃度[D2−]は水素イオン濃度[H+]の関数として表される。
[D2−]=〔2〔[Dall]−1/2[M’all]−[Mall]+1/2[D’all]〕+〔K/[H]〕−[H]−[H][D’all]/〔KD’+[H]〕〕/〔2[H]/〔KD1D2〕+[H]/KD2〕 ・・・〔式2〕
〔式3〕
各平衡定数の式および総D濃度である[Dall]の式から〔式3〕が導かれる。〔式3〕に示すように、一価金属イオン濃度[M’]は水素イオン濃度[H+]の関数として表される。
[M’]=1/2{〔KM’1 −4KM’1M’2〔1+[H]/KD2+〔[H]/KD1D2〕+ 〔[Mall] [D2−]/〔K+[D2−]〕〕−[Dall]/[D2−]〕〕0.5−KM’1} ・・・〔式3〕
〔式4〕
各平衡定数の式および総M’濃度である[M’all]の式から〔式4〕が導かれる。
[M’]=〔[D2−]/KM’2+1−{〔[D2−]/KM’2+1〕+8[M’all]〔[D2−]/KM’1M’2〕}0.5〕/〔4[D2−]/〔KM’1M’2〕〕 ・・・〔式4〕
〔式5〕
〔式3〕に〔式4〕を代入し[M’]を消去して〔式5〕が導かれる。〔式5〕は[H]のみの関数であるから、これを解き[H]を求める。この[H]を解離平衡が成り立つ時の解と定義し、[H]eqと表す。以降、解離平衡が成り立つ時の解であることを明示する場合はeqを添え字として用いる。
1/2{〔KM’1 −4KM’1M’2〔1+[H]eq/KD2+〔[H]eq /KD1D2〕+ 〔[Mall][D2−]/〔K+[D2−]〕〕−[Dall]/[D2‐]〕〕0.5−KM’1} = [D2−]/KM’2+1−{〔[D2‐]/KM’2+1)+8[M’all]〔[D2‐]/KM’1M’2〕}0.5〕/〔4[D2‐]/〔KM’1M’2〕 ・・・〔式5〕
〔式6a〕〜〔式6e〕
解離平衡時の〔式2〕および〔式3〕から〔式6a〕〜〔式6e〕が導かれる。これらの式は〔式4〕で求めた解離平衡時の水素イオン濃度[H]eqを代入した[D2−] eq、および[M’eqの解である。また、解離平衡時に成り立つ各[HD] eq、[M’D]eq、および[D’]eqを求めた式である。
[D2−]eq=〔2〔[Dall]−1/2[M’all]−[Mall]+1/2[D’all]〕+〔K/[H]eq〕−[H]eq−[H]eq[D’all]/〔KD’+[H]eq〕〕/〔2[H]eq 2/〔KD1D2〕+[H]eq/KD2〕 ・・・〔式6a〕
[M’]eq=1/2〔−KM’1+〔KM’1 −4KM’1M’2〔1+[H]eq/KD2+〔[H]eq /KD1D2〕+〔[Mall][D2−]eq/〔K+[D2−]eq〕〕−[Dall]/[D2−]eq〕〕0.5
・・・〔式6b〕
[HD]eq=[H]eq [D2−]eq/KD2 ・・・〔式6c〕
[M’D]eq=[M’]eq [D2−]eq/KM’2 ・・・〔式6d〕
[D’]eq=KD’[D’all]/〔KD’+[H]eq〕 ・・・〔式6e〕
〔水相と有機相の解離・抽出平衡〕
〔式7a〕〔式7b〕
Aの総物質量AEX−allおよび〔式1〕から〔式7a〕が導かれる。[HA]は水素イオン濃度[H+]の関数として表される。なお、〔式6a〕〜〔式6e〕で求めた各化学種の濃度[D2−]eq、[HD]eq、[M’D]eqおよび[D’] eqは、抽出に関与しない陰イオンに係る部分であるため、以降の式の記述を平易とするため、まとめて定数Cとして表す(〔式7b〕)。
[HA]=〔AEX−all−M’EX−all−[H]V−2MEX−all+〔2[M2+]+[H+]+[M’+]〕V〕/V =〔AEX−all−M’EX−all−[H]V−2MEX−all+〔K/[H]〕V+CV〕/V ・・・〔式7a〕
C=2[D2−]eq+[HD]eq+[M’D]eq+[D’]eq ・・・〔式7b〕
〔式8a〕〔式8b〕
金属元素Mの抽出平衡定数(KDM)と総物質量(MEX−all)、金属元素M’の抽出平衡定数(KDM’)と総物質量(M’EX−all)から〔式8a〕〔式8b〕が導かれる。〔式8a〕〔式8b〕に示すように、一価金属イオンの濃度[M’]および二価金属イオンの濃度[M2+]は[HA]および[H]の関数として表わされる。
[M’]=M’EX−all/〔V+V〔KDM’[HA]〕/[H] 〕 ・・・〔式8a〕
[M2+]=MEX−all/〔V+V〔KDM[HA]〕/[H]〕 ・・・〔式8b〕
〔式9〕
〔式8〕に〔式7a〕〔式7b〕を適用すれば、[HA]を[H]の関数で表すことができ、〔式9〕に示す式が成立し、数値計算により[H]を解くことができる。ここで得られた[H+]を解離・抽出平衡が成り立つ時の解と定義し、[HEX−eqと表す。以降、解離・抽出平衡が成り立つ時の解であることを明示する場合はEX−eqを添え字として用いる。
〔2{MEX−all/〔V+V〔KDM[HA] EX−eq 〕/ [H] EX−eq 〕}+{M’EX−all/〔V+V〔KDM’[HA] EX−eq〕/ [H] EX−eq〕}+[H] EX−eq〕V‐〔C+K/[H] EX−eq〕V=0 ・・・〔式9〕
〔式10a〕〜〔式10c〕
〔式7〕および〔式8〕に〔式9〕で求めた[HEX−eqを代入することによって〔式10a〕〜〔式10c〕が導かれる。解離・抽出平衡時の各化学種の濃度[HA]EX−eq、[M’]EX−eqおよび[M2+]EX−eqを求めることができる。
[HA]EX−eq=〔AEX−all−M’EX−all−[H EX−eq]V−2MEX−all+〔K/[H] EX−eq〕V+CV〕/V ・・・〔式10a〕
[M’]EX−eq=MEX−all/〔V+V〔KDM[HA]EX−eq〕/[H]EX−eq〕・・・〔式10b〕
[M2+]EX−eq=MEX−all/〔V+V〔KDM[HA]EX−eq 〕/[H]EX−eq 〕・・・〔式10c〕
〔物質移動を考慮した過渡状態の把握〕
上記〔式1〕〜〔式10c〕によって[M’]EX−eq、[M2+]EX−eqを導き、この時の値をある時刻Tにおける[M’]EX−eqT、[M2+]EX−eqTと定義し、それぞれの値を式〔I〕および式〔II〕に代入することにより、時刻T+ΔTにおける一価金属元素M’の濃度[M’] T+ΔTおよび二価金属元素M2+の濃度[M2+] T+ΔTを求める。
また、本発明の方法は、ミキサセトラにおける微小時間ΔTの間に各段と隣接段あるいは外部との間で液の流出入が起こることによる化学種Xの時刻T+ΔTにおける濃度[X]T+ΔTを表わす式〔IV〕に基づき、式〔I〕、式〔II〕および式〔III〕によってミキサセトラにおける一価金属元素M’あるいは二価金属元素Mの抽出状態を把握するので、液の流れが存在するミキサセトラの任意段における、水素イオン濃度および金属元素濃度の経時変化に応じた一価金属元素M’あるいは二価金属元素Mの抽出状態を正確に把握することができる。
本発明の方法によれば、一価の陽イオン交換型抽出剤ならびに一価または二価の酸を用いて、一価または二価の金属元素を溶媒抽出する場合について、水相での化学種の解離状態を求めることでpHが中性領域の抽出状態を正確に把握でき、かつ抽出開始から平衡状態になるまでの過渡状態を含めて抽出状態を正確に把握することができるので、工業的な操業条件に近い条件でシミュレーションを行うことができ、溶媒抽出装置の設計や初期設定の決定が容易となるだけではなく、従来はノウハウに頼っていた過渡状態の推移を定量的に把握することができ、運転条件と操業計画を容易に行うことができる。
ミキサセトラの断面概念図。 ミキサセトラの平面概念図。 ミキサセトラの物質移動の概念図。 本発明の方法を抽出濃度のシミュレーションに適用する手順を示すフロー図 実施例1のミキサセトラの構成図。 実施例1の各ミキサセトラ段の金属濃度について、シミュレーションと試験結果を比較したグラフ。 実施例1の各流出液について、シミュレーションによる金属濃度の経時変化を示すグラフ。 実施例1の各ミキサセトラ段の金属濃度について、シミュレーション結果の経時変化を示すグラフ。
以下、本発明を実施形態に即して具体的に説明する。
図1にミキサセトラの断面概念図を示す。図示するように、ミキサセトラ10はミキサ部11とセトラ部12を有しており、ミキサ部11からセトラ部12に液が流れるように形成されている。ミキサ部11には有機相と水相が供給され混合される。ミキサ部11は平衡に到達する時間よりも滞留時間が十分に長くなるよう設計される。混合液はオーバーフロー等でセトラ部12へと移送され、そこで比重差によって有機相13と水相14に分相する。セトラ部12は分相に要する時間よりも滞留時間が十分に長くなるよう設計されている。分相された有機相と水相は隣接段あるいは系外へと別々に流出する。
本発明の方法は、このような溶媒抽出において、一価の陽イオン交換型抽出剤HAを用いた一価の金属元素M’または二価の金属元素Mの溶媒抽出に適用される。抽出状態を把握するため、まず初期設定値に基づき、水相の解離平衡および抽出反応平衡を考慮した各金属元素濃度〔[M’all]および[Mall])を求め、続いてこれを用いて微小時間ΔT後の水相の化学種濃度[X]T+ΔTを求める。化学種Xは、抽出に関与するM’、M、HA、水素イオンH、M’およびHAにより生成する金属錯体M’A、並びにMおよびHAにより生成する金属錯体MAである。
本発明の方法によってミキサセトラの抽出状態を把握するためには、まず初期設定値を用いて、水相の解離平衡および抽出反応平衡を考慮した各金属濃度を求め、続いてこれを用いて、微小時間ΔT後の水相の化学種濃度の変化に応じた抽出状態を把握する。次にミキサセトラの流量によるΔT間の化学種濃度の変化量を求める。このΔT間の化学種濃度の変化量および初期設定値から、時刻T+ΔTの化学種濃度を求める。これらの計算を繰り返していけば、各化学種濃度の経時変化を把握することができる。
一価の陽イオン交換型抽出剤ならびに一価または二価の酸を用いた、一価または二価の金属元素の溶媒抽出において、塩酸(一価酸HD’=HClの場合)と硫酸(二価酸HD=HSOの場合)を含む酸水溶液中の二価の金属元素Mについて、水酸化ナトリウム(NaOH)でpHを調整しながら溶媒抽出処理を行う場合(即ちM’=Naの場合)の例を以下に示す。
〔水相中の解離平衡〕
水相中では主に以下の解離平衡が成り立っている。なお、以下の式に示していない化学種については水相中で完全解離するものとする。なお、一価酸の代表例は塩酸であり、二価酸の代表例は硫酸であるが、本発明の方法は塩酸や硫酸に限らず、他の一価酸ないし二価酸の場合にも適用することができる。これらは原料鉱石等の酸浸出時や溶媒抽出処理に先立つpH調整時の酸として添加される他、原料中の金属塩に塩素イオンや硫酸イオン等として含まれる場合がある。pH調整時の一価ないし二価のアルカリについても同様である。
〔式11a〕〜〔式11g〕
水相中の化学種の解離反応は以下の通りである。なお、添え字の(a)は水相中の化学種を示す。
(a)←→H (a)+OH (a) ・・・〔式11a〕
SO4(a)←→H (a)+HSO (a) ・・・〔式11b〕
HSO (a)←→H (a)+SO 2− (a) ・・・〔式11c〕
MSO4(a)←→M2+ (a)+SO 2− (a) ・・・〔式11d〕
HCl(a)←→H (a)+Cl (a) ・・・〔式11e〕
NaSO4(a)←→Na (a)+NaSO (a) ・・・〔式11f〕
NaSO (a)←→Na (a)+SO 2− (a) ・・・〔式11g〕
〔式12a〕〜〔式12g〕
〔式11a〕〜〔式11g〕における水のイオン積と、それ以外の各物質の解離平衡定数は、それぞれK、Ks1、Ks2、K、KCl、KN1、KN2として、以下のように〔式12a〕〜〔式12g〕で表される。
=[H (a)][OH (a)] ・・・〔式12a〕
s1=〔[H (a)][HSO (a)]〕/[HSO4(a)] ・・・〔式12b〕
s2=〔[H (a)][SO 2− (a)]〕/[HSO (a)] ・・・〔式12c〕
=〔[M2+ (a)][SO 2− (a))]〕/[MSO4(a)] ・・・〔式12d〕
Cl=〔[H (a)][Cl (a)]〕/[HCl(a)] ・・・〔式12e〕
N1=〔[Na (a)][NaSO (a)]〕/[NaSO4(a)]・・・〔式12f〕
N2=〔[Na (a)][SO 2− (a)]〕/[NaSO (a)] ・・・〔式12g〕
〔式13a〕〜〔式13d〕
〔式11a〕〜〔式11g〕に示す水相中の元素、硫黄S、塩素Cl、二価金属M、ナトリウムNaについての総濃度を〔式13a〕〜〔式13d〕で示す。
[Sall]=[HSO4(a)]+[HSO (a)]+[SO 2− (a)]+[MSO4(a)]+[NaSO4(a)]+[NaSO (a)] ・・・〔式13a〕
[Clall]=[Cl (a)]+[HCl(a)] ・・・〔式13b〕
[Mall]=[M2+ (a)]+[MSO4(a)] ・・・〔式13c〕
[Naall]=[Na (a)]+[NaSO4(a)]+[NaSO (a)]・・・〔式13d〕
〔式14〕
溶媒抽出の液は電気的に中性であるので、〔式1〕から下記〔式14〕が成り立つ。
2[M2+ (a)]+[H (a)]+[Na (a)]=2[SO 2− (a)]+[HSO (a)]+[NaSO (a)]+[Cl (a)]+[OH (a)] ・・・〔式14〕
〔式15〕
〔式13a〕〜〔式13d〕および〔式14〕から下記〔式15〕が成り立つ。
[Sall]−1/2[Naall]−[Mall]+1/2[Clall]=1/2〔[H (a)]+2[SO 2− (a)]+[HSO (a)]+[Cl (a)]+[OH (a)]〕 ・・・〔式15〕
〔式16a〕〜〔式16d〕
〔式12a〕〜〔式12g〕と〔式13a〕〜〔式13d〕から[HSO]、[HSO ]、[HCl]、[OH]の各濃度は解離平衡定数を用いて以下のように表される。
[HSO]=[H][HSO ]/Ks1=[H][SO 2−]/Ks1・Ks2・・・〔式16a〕
[HSO ]=[H][SO 2−]/Ks2 ・・・〔式16b〕
[HCl]=[H][Cl]/KCl=[H][Clall]/〔KCl+[H]〕 ・・・〔式16c〕
[OH]=K/[H] ・・・〔式16d〕
〔式17〕
〔式15〕に〔式16a〕〜〔式16d〕の各濃度式を代入すると〔式17a〕が得られる。
2〔[Sall]−1/2[Naall]−[Mall]+1/2[Clall]〕=〔[H (a)]+2〔[H (a)[SO 2− (a)]/Ks1s2〕+[H (a)][SO 2− (a)]/Ks2+〔[H (a)][Clall]/〔[H (a)]+KCl〕〕−〔K/[H (a)]〕〕 ・・・〔式17a〕
〔式17a〕を硫酸イオン濃度[SO 2−]と水素イオン濃度[H]の関数に整理すると〔式17b〕が得られる。〔式17b〕は〔式2〕と同じである。〔式17b〕が成立するのは、[SO 2−]が0≦[SO 2−]≦[Sall]の範囲であるので、この濃度から式〔式17b〕が成立するpH範囲を定めることができる。
[SO 2− (a)]=〔2〔[Sall]−1/2[Naall]−[Mall]+1/2[Clall]〕+〔K/[H (a)]〕−[H (a)]−[H (a)][Clall]/〔KCl+[H (a)]〕〕/〔2[H (a)/〔KS1S2〕+[H (a)]/KS2〕 ・・・〔式17b〕
〔式18a〕〜〔式18c〕
液中の[NaSO ]、[NaSO]、[MSO]は解離平衡定数を用いて以下のように表される。
[NaSO]= [Na][NaSO ]/KN1=[Na[SO 2−]/KN1・KN2 ・・・〔式18a〕
[NaSO ]= [Na][SO 2−]/KN2 ・・・〔式18b〕
[MSO]= [M2+][SO 2−]/K=[Mall][SO 2−]/〔K+[SO 2−]〕 ・・・〔式18c〕
〔式19a〕〔式19b〕
〔式13a〕に、〔式16a〕〜〔式16d〕および〔式18a〕〜〔式18c〕に示した[HSO ]、[HSO]、[HCl]、[OH]の各濃度、および〔式17a〕〜〔式17b〕の各濃度式を代入すると、[Sall]から[Na]の関数である〔式19a〕が得られる。〔式13d〕に同様の[HSO ]、[HSO]、[HCl]、[OH]の各濃度、および〔式17a〕〜〔式17b〕の各濃度式を代入すると、[Mall] から[Na]の関数である〔式19b〕が得られる。〔式19a〕および〔式19b〕は〔式3〕および〔式4〕と同じである。
[Na]=1/2{−KN1+〔KN1 −4KN1N2〔1+[H]/KS2+〔[H]/Ks1・KS2〕+〔[Mall][SO 2−]/〔K+[SO 2−]〕〕−[Sall]/[SO 2−]〕〕0.5} ・・・〔式19a〕
[Na]=〔‐〔[SO 2−]/KN2+1〕+〔[SO 2−]/KN2+1〕+8〔[SO 2−]/KN1N2〕[Naall]〕0.5/ 4[SO 2−]/KN1N2 ・・・〔式19b〕
〔式19a〕および〔式19b〕に〔式17b〕を適用すれば、[Na]を[H]の関数で表すことができ、〔式5〕に示す式が成立し、数値計算により[H]を解くことができる。ここで得られた[H]を解離平衡が成り立つ時の解とし、得られた解([H]eq)を〔式17b〕に代入することにより[SO 2−]eqが求まり、[SO 2−]eqを〔式19a〕に代入することにより[Na]eqが求まる。さらに、これらの解([SO 2−]eqおよび[Na]eq)を〔式16a〕〜〔式16d〕および〔式18a〕〜〔式18c〕に代入することにより [HSO ]eq、[HSO]eq、[HCl]eq、[NaSO ]eq、[NaSO]eq、[MSO]eqおよび[OH]eqを得ることができ、水相中における解離平衡時の化学種濃度を数値計算により導き出すことができる。
〔水相と有機相の抽出平衡〕
〔式20a〕〔式20b〕
二価の抽出金属Mおよび一価のNaが抽出剤HAで抽出される場合の抽出平衡は以下のとおりである。添え字(a)は水相中の化学種、添え字(o)は有機相中の化学種を示す。
2+ (a)+2HA(o)←→MA2(o)+2H (a) ・・・〔式20a〕
Na (a)+HA(o)←→NaA(o)+H (a) ・・・〔式20b〕
〔式21〕
〔式20a〕および〔式20b〕の抽出平衡定数は、KDM、KDNaとして〔式21a〕〜〔式21b〕で表される。なお、この抽出平衡では、陽イオンのM2+、Naが抽出に寄与し、中性分子(MSO、NaSO)および、OHを除く陰イオン(NaSO 等)は寄与しないものとした。
DM= [MA2(o)][ H (a)]/[HA(o)][M2+ (a)] ・・・〔式21a〕
DNa= [NaA(o)][ H (a)]/[ HA(o)][ Na (a)] ・・・〔式21b〕
〔式22a〕〜〔式22’c〕
抽出に関与する二価金属M2+、一価金属Na、抽出剤Aの物質収支について、総物質量を以下の通り定義した。式中、Vは体積を表し、添え字のmaはミキサ部水相,moはミキサ部有機相を示す。また添え字EX−allは抽出反応における総物質量を表す。
EX-all= [MA2(o)]Vmo+[M2+ (a)]Vma ・・・〔式22a〕
[MA]Vmo=MEX-all−[M2+ (a)]Vma ・・・〔式22’a〕
NaEX-all= [NaA(o)]Vmo+[Na (a)]Vma ・・・〔式22b〕
[NaA]Vmo=NaEX-all−[Na (a)]Vma ・・・〔式22’b〕
EX-all= 〔[HA(o)]+2[MA2(o)]+[NaA(o)]〕Vmo ・・・〔式22c〕
EX‐all=[HA(o)]Vmo+2〔MEX‐all−[M2+ (a)]Vma〕+〔NaEX‐all−[Na (a)]Vma〕 ・・・〔式22’c〕
〔式23〕
〔式22’c〕を変形すると下記〔式23〕になる。
EX‐all−NaEX‐all−[H (a)]Vma−2MEX‐all=[HA]Vmo−〔2[M2+ (a)]+[Na (a)]+[H (a)]〕Vma ・・・〔式23〕
〔式24〕
ここで、〔式23〕中の〔2[M2+]+[Na]+[H]〕Vmaの項は、抽出に関与しない陰イオンに係る部分であるため、以降の式の記述を平易とするため、まとめて定数Cとして表すと、下記〔式23’〕になり、さらに[OH]は水のイオン積を[H]で除したもの(K/[H])であるので、これを代入することにより下記〔式24〕が導かれる。〔式24〕は〔式7〕と同じである。
〔2[M2+]+[Na]+[H]〕Vma=〔2[SO 2−]+[HSO ]+[OH]+[NaSO ]+[Cl]〕Vma=〔C+[OH]〕Vma ・・・〔式23’〕
〔C=2[SO 2−]+[HSO ]+[NaSO ]+[Cl]〕
[HA]=〔AEX‐all−NaEX‐all−[H]Vma−2MEX‐all+〔K/[H]〕Vma+C・Vma〕/Vmo ・・・〔式24〕
〔式25a〕〔式25b〕
抽出時の物質収支の式〔式22a〕〜〔式22c〕、抽出平衡定数の式〔式21a〕および〔式21b〕から下記〔式25a〕〔式25b〕が導かれ、[M2+]および[Na]が[H]の関数として表される。
[M2+]EX−eq=MEX−all/〔Vma+Vmo〔KDM[HA] EX−eq 〕/[H] EX−eq 〕 ・・・〔式25a〕
[Na] EX−eq=NaEX−all/〔Vma+Vmo〔KDNa[HA] EX−eq〕/[H] EX−eq〕・・・〔式25b〕
〔式26〕
式[14]に〔式25a〕および〔式25b〕で求めた[M2+]および [Na]を適用すれば、電気的中性条件が成り立つ条件を[H]の関数で表すことができ、〔式26〕に示す式が成立し、数値計算により[H]を解くことができる。〔式26〕は〔式9〕と同じである。ここで得られた[H]を解離・抽出平衡が成り立つ時の値と定義し、[H]EX−eqと表す。
〔2{MEX−all/〔V+V〔KDM[HA]EX−eq 〕/ [H]EX−eq 〕}+{NaEX−all/〔V+V〔KDM’[HA]EX−eq〕/[H]EX−eq〕}+[H]EX−eq〕V−〔C+K/[H]EX−eq〕V=0 ・・・〔式26〕
〔式26〕の解である[H]EX−eqを〔式24〕に代入して[HA]EX−eqを求め、これら[H]EX−eqおよび[HA]EX−eqの値から〔式25a〕および〔式25b〕によって[M2+]EX−eqおよび[Na]EX−eqが得られる。
以上の方法によって、各初期設定値を用いて、水相の解離平衡および抽出反応平衡を考慮した平衡時の金属濃度[M2+]EX−eqおよび[Na]EX−eqを導くことが可能となる。
〔物質移動を考慮した過渡状態の把握〕
〔式25b〕において、Na=M’であるとし、〔式25a〕および〔式25b〕によって[M2+]EX−eqおよび[M’]EX−eqが得られる。
ある時刻Tにおいて、この[M’]EX−eq、[M2+]EX−eqを、[M’]EX−eqT、[M2+]EX−eqTとして、それぞれの値を式〔I〕および式〔II〕に代入することによって、時刻T+ΔTにおける一価金属元素M’の濃度[M’]T+ΔTおよび二価金属元素M2+の濃度[M2+] T+ΔTを把握することができる。
Figure 2018167136
・・・〔I〕
Figure 2018167136
・・・〔II〕
式中の記号は以下のとおり:
[M2+]:時刻Tにおける二価の金属イオンMの濃度
[M2+]T+ΔT:時刻T+ΔTにおける二価の金属イオンMの濃度
[M2+]EX−eqT:時刻Tにおいて解離平衡と抽出平衡が成り立った時の二価の金属イオンMの濃度
[M’]:時刻Tにおける一価の金属イオンM’の濃度
[M’]T+ΔT:時刻T+ΔTにおける一価の金属イオンM’の濃度
[M’]EX−eqT:時刻Tにおいて解離平衡と抽出平衡が成り立った時の一価の金属イオンM’の濃度
T’は反応基準時間
Rは反応基準時間T’における一価金属元素M’および二価金属元素Mの反応率
また〔式20a〕〔式20b〕に示すように、二価の金属Mおよび一価のNaの抽出に伴いHが放出されることから、時刻Tから微小時間ΔTが経過した後の時刻T+ΔTにおける水素イオン濃度は次式〔III〕によって表される。なお、同式の[M’+]T+ΔTおよび[M2+]T+ΔT項は式〔I〕および式〔II〕によって与えられる。
[H]T+ΔT=[H]−2([M2+]T+ΔT−[M2+ )−([M’]T+ΔT−[M’])
・・・〔III〕
このように、時刻Tから微小時間ΔTが経過した後の時刻T+ΔTにおける各金属元素の濃度[M’+]T+ΔTおよび[M2+]T+ΔTは式〔I〕および〔II〕によって把握され、また、時刻Tから微小時間ΔTが経過した後の時刻T+ΔTにおける水素イオン濃度は式〔III〕によって把握される。したがって、これらの計算を繰り返すことにより抽出開始から平衡状態になるまでの過渡状態を含めて水相の化学種濃度の変化に応じた抽出状態を正確に把握することができる。
また、本発明の方法において、検討対象となる金属元素Mの抽出平衡定数KDMおよびpH調整用に添加するNaの抽出平衡定数KDNaは文献値でもよく、事前の試験によって求めてもよい。試験で求める場合は、例えば分析対象となる金属元素を共存させた状態で分液ロート等により単段の抽出試験を行えば良い。この試験では、抽出反応が平衡となるよう十分長い時間混合を行った後に液をサンプリングし、有機相と水相に含まれる金属元素濃度と水相のpHをそれぞれ測定する。これらの結果を、〔式12a〕〜〔式12g〕、〔式13a〕〜〔式13d〕、〔式21a〕、〔式21b〕、および〔式22a〕、〔式22b〕に当てはめることによって、KDMおよびKDNaを求めることができる。好ましくは、複数のpH条件において同様の抽出試験を行い、平衡定数の平均値を求めればより正確なKDMおよびKDNaを求めることができる。なお、この場合、他の平衡定数値は仮定して用いれば良い。
また、本発明の方法では、反応基準時間T’における反応率Rは、あらかじめ求めた値を用いる反応速度は反応界面の表面積に依存するため、撹拌強度や装置形状の影響を受ける。また、分相が完全に行われない場合も見かけの反応率が低下する。したがって、実機の形状や撹拌強度を模擬した試験装置を用いて事前の抽出試験を行うことが好ましい。あるいは実機の運転開始後に本発明のシミュレーションとの比較を行って反応率Rの値を調整することによってより正確な抽出状況を把握することができる。
ミキサセトラ群のうちのn段目にかかる液の流れを図3に示す。ミキサセトラの液の流れとして、n段目のミキサ部には、n+1段目のセトラ部から水相が供給され、n−1段目のセトラ部から有機相が供給される。n段目のミキサ部からはセトラ部へ水相と有機相が流出する。また、全ての段のセトラ部およびミキサセトラの外部装置からも、水相もしくは有機相が供給可能であり、図3に示すように液の流れが複数存在している。
次式〔IV〕は時刻T〜T+ΔT間の、n段目のミキサ部およびセトラ部の液の流れに基づく、液中の化学種Xの濃度変化量を表している。
〔式IV〕
Figure 2018167136
・・・〔IV〕
上記式〔IV〕において、
X:液中の化学種(抽出に関与するX=M’、M、HA、水素イオンH、M’およびHAにより生成する金属錯体M’A、並びにMおよびHAにより生成する金属錯体MA)、
[X(i)]:時刻Tでの、流入液(もしくは流出液)iにおけるXの濃度
(i):時刻Tでの、流入液(もしくは流出液)iの単位時間当たりの流量
V:Xが存在するミキサセトラにおけるミキサ部(もしくはセトラ部)の水相(もしくは有機相)の体積。
ミキサセトラについて、本発明の方法を適用したシミュレーションを、開始時刻T(T=0)から微小時間ΔTずつ繰り返していくことによって、微小時間ΔTの時間幅で、設定した抽出時間に至るまでの金属元素Mの濃度の経時変化を把握することができる。具体的には、図4のシミュレーションの適用に示すように、時刻Tから微小時間ΔTまでの抽出反応により変化した水素イオン濃度と金属元素濃度を把握し、引き続き、先の時刻T+ΔTを新たな時刻Tとして、さらにΔT経過したときの水素イオン濃度と金属元素濃度を把握することによって、設定した抽出時間に至るまでの金属元素Mの濃度の経時変化を把握することができる。
本発明の方法を抽出濃度のシミュレ‐ションに適用する手順を図4のフロー図に示す。図示するように、式〔I〕〜式〔III〕、式〔IV〕を組み込んだ制御部には、予め初期設定値が入力される。初期設定値は流量VT=0(i)、濃度[X(i)]T=0(Xは前述のとおり)、ミキサ部の水相体積V(a)、ミキサ部の有機相体積V(o)、各平衡定数、反応率R、抽出時間(計算時間)、微小時間ΔTなどである。初期設定値の入力後、液の流れに基づいた金属元素Mの濃度変化を式〔IV〕によって把握する。続いて、式〔I〕〜式〔III〕に基づいて、時刻Tから微小時間ΔTまでの抽出反応により変化した水素イオン濃度と金属元素濃度を把握する。引き続き、先の時刻T+ΔTを新たな時刻Tとして、さらにΔT経過したときの水素イオン濃度と金属元素濃度を把握する(図中:T→T+ΔT)。これを設定した抽出時間に達するまで繰り返す(図中:設定した抽出時間に達したか)。設定した抽出時間に達したときに、この濃度シミュレーションを終了する(図中:シミュレーション終了)。
本発明の方法において、金属元素は一価の金属元素M’または二価の金属元素Mである。上記反応式〔I〕〜〔IV〕は二価金属元素を1個、一価金属元素を1個含む場合であるが、液中に各一種類以上の金属元素を含む場合でも、各金属元素の抽出反応式について、共通な[H]、[HA]を用いて、それぞれ独立して抽出濃度を把握することができる。具体的には、例えば、ミキサセトラを用いて、Co2+およびNi2+を含む溶液からCoとNiを抽出分離するときに、CoおよびNiの抽出状態を抽出時間の経過に応じて把握することができる。
〔実施例1〕
ミキサセトラを複数段組み合わせて、Co、NiおよびLiを含む液からそれぞれの元素を分離回収した。このミキサセトラの構成を図5に示す。原料液はpH4.3の硫酸溶液で、Co6.4g/L、Ni6.0g/L、Li3.2g/L、およびpH調整のため添加したアルカリ由来のNaを含み、この硫酸溶液を4段目に780mL/hで供給した。また、抽出段のpHを安定させるため7.5Nのアンモニア水を2段目に60mL/hで供給した。これらの水相は段番号の大きい方から小さい方に向かって流れ、抽残液として1段目から流出させて回収した。また、逆抽出酸として1N硫酸を15段目に250mL/hで供給し、11段目から流出させて回収するとともに、その一部を洗浄酸として用い、これを10段目から供給して5段目から流出させて回収した。一方、有機相は、0.60mol/Lの抽出剤(PC‐88A)を990mL/hで1段目に供給した。有機相は段番号の小さい方から大きい方に向かって流れ、15段目から廃溶媒として流出させて回収した。
以上の処理系について、本発明のシミュレーションと試験を行い、50時間運転後における各段の水相中のCo濃度、Ni濃度、Li濃度のプロファイルを比較した。また、抽残液、Ni逆抽出液、およびCo逆抽出液のCo濃度、Ni濃度、Li濃度の変化をシミュレーションで検討した。これらで得られた結果を図6、図7、図8に示す。図6は運転開始から50hにおけるMS各段のCo、NiおよびLi濃度について、シミュレーション結果と試験結果を比較した図である。図7は、シミュレーションから得られた図5に記載する各流出液について、その組成の経時変化を示した図である。図8は、ミキサセトラ各段のCo、NiおよびLi濃度について、シミュレーション結果の経時変化を示した図である。各濃度プロファイルを比較すると、いずれの元素についても、シミュレーションと試験でよく一致している。抽残液、Ni逆抽液、Co逆抽液におけるCo、NiおよびLiの濃度変化は、試験では測定することができなかったが、そのような場合でもシミュレーションにより挙動を把握することができ、20時間程度で平衡に到達することが把握できた。
本発明の方法は、一価の陽イオン交換型抽出剤ならびに一または二価酸を用いて、一または二価金属元素を溶媒抽出する場合について、水相での化学種の解離状態を求めることによってpHが中性領域の抽出状態を正確に把握でき、かつ抽出開始から平衡状態までの過渡的な状態を含めて抽出状態を正確に把握することができるので、溶媒抽出装置の設計や初期設定の決定が容易になる。また、従来はノウハウに頼っていた過渡的状態における推移を定量的に把握することができ、運転条件と操業計画の決定を容易に行うことができる。
10‐ミキサセトラ、11‐ミキサ部、12‐セトラ部、13‐有機相、14‐水相

Claims (3)

  1. 一価の陽イオン交換型抽出剤HAを用いた一価の金属元素M’または二価の金属元素Mの溶媒抽出において、あらかじめ求めた各平衡定数、各総物質濃度、各総物質量、反応基準時間T’における反応率R、および水相中の各総物質量のバランスと電気的中性条件に基づき、解離平衡下での水相中の二価酸イオン濃度と水素イオン濃度[H]を求め、求めた水素イオン濃度[H]を二価の金属塩および一価酸の解離平衡に当てはめて、水相中の抽出に寄与する[M2+]、[M’]の濃度を求め、これらを次式〔I〕、次式〔II〕に当てはめて、時刻Tから微小時間ΔTが経過した時刻T+ΔTにおける二価金属元素Mの濃度[M2+]T+ΔTおよび一価金属元素M’の濃度[M’]T+ΔTを求め、さらに時刻Tから微小時間ΔTが経過した時刻T+ΔTにおける水素イオン濃度[H]T+ΔTを[M2+および[M’の経時変化に基づく次式〔III〕によって求め、この水素イオン濃度[H]T+ΔTを二価金属元素Mの濃度[M2+]T+ΔTおよび一価金属元素M’の濃度[M’]T+ΔTとともに式〔I〕、式〔II〕に適用し、この手順を繰り返すことによって、抽出開始から平衡状態になるまでの過渡状態を含めて水相の化学種の濃度の変化に応じた一価金属元素M’または二価金属元素Mの抽出状態を把握することを特徴とする金属元素の溶媒抽出状態の把握方法。
    〔式I〕
    Figure 2018167136
    ・・・〔I〕
    〔式II〕
    Figure 2018167136
    ・・・〔II〕
    〔式III〕
    [H]T+ΔT=[H]−2([M2+]T+ΔT−[M2+ )−([M’]T+ΔT−[M’])
    ・・・〔III〕
    式中の記号は以下のとおり、
    [H]は時刻Tにおける水素イオン濃度、
    [H]T+ΔTは時刻T+ΔTにおける水素イオン濃度、
    [M2+]は時刻Tにおける二価の金属イオンMの濃度、
    [M2+]T+ΔTは時刻T+ΔTにおける二価の金属イオンMの濃度、
    [M2+]EX−eqTは時刻Tにおいて解離平衡と抽出平衡が成り立った時の二価の金属イオンMの濃度、
    [M’]は時刻Tにおける一価の金属イオンM’の濃度、
    [M’]T+ΔTは時刻T+ΔTにおける一価の金属イオンM’の濃度、
    [M’]EX−eqTは時刻Tにおいて解離平衡と抽出平衡が成り立った時の一価の金属イオンM’の濃度、
    T’は反応基準時間、
    Rは反応基準時間T’における一価金属元素M’および二価金属元素Mの反応率
  2. ミキサセトラにおける微小時間ΔTの間に各段と隣接段あるいは外部との間で液の流出入が起こることによる化学種Xの時刻T+ΔTにおける濃度[X]T+ΔTを表わす次式〔IV〕に基づき、上記式〔I〕、上記式〔II〕、次式〔III〕によってミキサセトラにおける一価金属元素M’あるいは二価金属元素Mの抽出状態を把握する請求項1に記載する金属元素の溶媒抽出状態の把握方法。
    〔式IV〕
    Figure 2018167136
    ・・・〔IV〕
    式中の記号は以下のとおり、
    X:液中の化学種(抽出に関与するX=M’、M、HA、水素イオンH M’およびHAにより生成する金属錯体M’A、並びにMおよびHAにより生成する金属錯体MA)、
    [X(i)]:時刻Tでの、流入液i(もしくは流出液i)におけるXの濃度、
    (i):時刻Tでの、流入液i(もしくは流出液i)の単位時間当たりの流量、
    V:Xが存在するミキサ部(もしくはセトラ部)の水相(もしくは有機相)の体積。
  3. 金属元素MがLi、NiまたはCoであり、ミキサセトラを用いて、Li、NiまたはCoを含む溶液から各金属元素を抽出分離するときに、Li、NiおよびCoの抽出状態を把握する請求項2に記載する方法。

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