以下、本開示の実施形態について、図面を用いて説明する。
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態における医用画像処理装置100の構成例を示すブロック図である。医用画像処理装置100は、ポート110、ユーザインタフェース(UI:User Interface)120、ディスプレイ130、プロセッサ140、及びメモリ150を備える。
医用画像処理装置100には、CT装置200が接続される。医用画像処理装置100は、CT装置200からボリュームデータを取得し、取得されたボリュームデータに対して処理を行う。医用画像処理装置100は、PC(Personal Computer)とPCに搭載されたソフトウェアにより構成されてもよい。
CT装置200は、生体へX線を照射し、体内の組織によるX線の吸収の違いを利用して、画像(CT画像)を撮像する。生体としては人体等が挙げられる。生体は、被検体の一例である。
CT画像は、時系列に複数撮像されてもよい。CT装置200は、生体内部の任意の箇所の情報を含むボリュームデータを生成する。生体内部の任意の箇所は、各種臓器(例えば心臓、腎臓、大腸、小腸、肺)を含んでもよい。CT画像が撮像されることにより、CT画像における各画素(ボクセル)の画素値(CT値)が得られる。CT装置200は、CT画像としてのボリュームデータを医用画像処理装置100へ、有線回線又は無線回線を介して送信する。
具体的に、CT装置200は、ガントリ(図示せず)及びコンソール(図示せず)を備える。ガントリは、X線発生器(図示せず)やX線検出器(図示せず)を含み、コンソールにより指示された所定のタイミングで撮像することで、人体を透過したX線を検出し、X線検出データを得る。X線発生器は、X線管(図示せず)を含む。コンソールは、医用画像処理装置100に接続される。コンソールは、ガントリからX線検出データを複数取得し、X線検出データに基づいてボリュームデータを生成する。コンソールは、生成されたボリュームデータを、医用画像処理装置100へ送信する。コンソールは、患者情報、CT撮像に関する撮像条件、造影剤の投与に関する造影条件、その他の情報を入力するための操作部(図示せず)を備えてよい。この操作部は、キーボードやマウスなどの入力デバイスを含んでよい。
CT装置200は、連続的に撮像することで3次元のボリュームデータを複数取得し、動画を生成することも可能である。複数の3次元のボリュームデータによる動画のデータは、4D(4次元)データとも称される。
CT装置200は、操作部を介して、X線管の電圧(X線管電圧)や電流(X線管電流)を変更してCT画像を撮像してよい。CT装置200が、異なる電圧で複数回、CT画像を撮像してよい。CT装置200は、複数のタイミングの各々でCT画像を撮像してよい。CT装置200は、被検体が造影された状態で、CT画像を撮像してよい。このCT画像を、造影画像とも称し、造影ボリュームデータとも称する。CT装置200は、被検体が造影されていない状態で、CT画像を撮像してよい。このCT画像を、非造影画像とも称し、非造影ボリュームデータとも称する。
医用画像処理装置100内のポート110は、通信ポートや外部装置接続ポートを含み、CT画像から得られたボリュームデータを取得する。取得されるボリュームデータは、造影ボリュームデータ及び非造影ボリュームデータを含んでよい。取得されたボリュームデータは、直ぐにプロセッサ140に送られて各種処理されてもよいし、メモリ150において保管された後、必要時にプロセッサ140へ送られて各種処理されてもよい。また、ボリュームデータは、記録媒体や記録メディアを介して取得されてもよい。
ポート110は、CT装置200からDICOM(Digital Imaging and Communication in Medicine)データを取得してよい。DICOMデータは、ボリュームデータの撮像に関する情報(撮像情報)を含んでよい。撮像情報は、ボリュームデータ(ボリュームデータの基となる、X線検出器により検出された投影データ)の撮像時のX線管電圧、X線管電流、画像SD値、回転速度、CTDI値、の少なくとも一部を含んでよい。つまり、撮像情報は、撮像時の各種情報の実際の値(実測値)が含まれてよい。CT装置200からのボリュームデータは、DICOMデータに含まれて取得されてもよい。X線管電圧、X線管電流、画像SD値、回転速度、CTDI値の詳細については後述する。
なお、CT装置200により撮像されたボリュームデータやボリュームデータに係るDICOMデータは、CT装置200から画像データサーバ(PACS:Picture Archiving and Communication Systems)(不図示)に送られ、保存されてよい。ポート110は、CT装置200から取得する代わりに、この画像データサーバからボリュームデータやDICOMデータを取得してよい。このように、ポート110は、ボリュームデータやDICOMデータ等の各種データを取得する取得部として機能する。
UI120は、タッチパネル、ポインティングデバイス、キーボード、又はマイクロホンを含んでもよい。UI120は、医用画像処理装置100のユーザから、任意の入力操作を受け付ける。ユーザは、医師、放射線技師、又はその他医療従事者(Paramedic Staff)を含んでもよい。
UI120は、ボリュームデータにおける関心領域(ROI:Region of Interest)の指定や輝度条件の設定等の操作を受け付ける。関心領域は、各種組織(例えば、血管、気管支、臓器、骨、脳、心臓、足、首、血流)の領域を含んでよい。組織は、病変組織、正常組織、臓器、器官、など生体の組織を広く含んでよい。
ディスプレイ130は、LCD(Liquid Crystal Display)を含んでもよく、各種情報を表示する。各種情報は、ボリュームデータから得られる3次元画像を含む。3次元画像は、ボリュームレンダリング画像、サーフェスレンダリング画像、仮想内視鏡画像(VE画像)、MPR画像、CPR画像、等を含んでもよい。ボリュームレンダリング画像は、レイサム(RaySum)画像、MIP(Maximum Intensity Projection)画像、MinIP(Minimum Intensity Projection)画像、平均値(Average)画像、又はレイキャスト(Raycast)画像を含んでもよい。
メモリ150は、各種ROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)の一次記憶装置を含む。メモリ150は、HDD(Hard Disk Drive)やSSD(Solid State Drive)の二次記憶装置を含んでもよい。メモリ150は、USBメモリやSDカードの三次記憶装置を含んでもよい。メモリ150は、各種情報やプログラムを記憶する。各種情報は、ポート110により取得されたボリュームデータ、DICOMデータ、プロセッサ140により生成された画像、プロセッサ140により設定された設定情報、各種プログラムを含んでもよい。メモリ150は、プログラムが記録される非一過性の記録媒体の一例である。
プロセッサ140は、CPU(Central Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)、又はGPU(Graphics Processing Unit)を含んでもよい。プロセッサ140は、メモリ150に記憶された医用画像処理プログラムを実行することにより、各種処理や制御を行う処理部160として機能する。
図2は、処理部160の機能構成例を示すブロック図である。
処理部160は、領域抽出部161、画像生成部162、領域判定部163、レジストレーション処理部164、補正処理部165、及びサブトラクション処理部166を備える。処理部160は、医用画像処理装置100の各部を統括する。なお、処理部160に含まれる各部は、1つのハードウェアにより異なる機能として実現されてもよいし、複数のハードウェアにより異なる機能として実現されてもよい。また、処理部160に含まれる各部は、専用のハードウェア部品により実現されてもよい。
領域抽出部161は、ボリュームデータにおいて、セグメンテーション処理を行ってよい。この場合、UI120がユーザからの指示を受け付け、指示の情報が領域抽出部161に送られる。領域抽出部161は、指示の情報に基づいて、公知の方法により、ボリュームデータから、セグメンテーション処理を行い、関心領域を抽出(segment)してもよい。また、ユーザからの詳細な指示により、手動で関心領域を設定(set)してもよい。また、観察対象が予め定められている場合、領域抽出部161は、ユーザ指示なしでボリュームデータから、セグメンテーション処理を行い、観察対象を含む関心領域を抽出してもよい。抽出される領域には、各種組織(例えば、血管、気管支、臓器、骨、脳、心臓、足、首、血流)の領域を含んでよい。
画像生成部162は、ポート110により取得されたボリュームデータに基づいて、3次元画像を生成してよい。画像生成部162は、ポート110により取得されたボリュームデータから、指定された領域や領域抽出部161により抽出された領域に基づいて、つまり了3次元画像を生成してよい。画像生成部162は、レジストレーション処理部164によりレジストレーションされたボリュームデータに基づいて、3次元画像を生成してよい。画像生成部162は、補正処理部165により補正されたボリュームデータに基づいて、3次元画像を生成してよい。画像生成部162は、サブトラクション処理部166により生成されたサブトラクションボリュームデータに基づいて、3次元画像を生成してよい。
領域判定部163は、非造影ボリュームデータにおける高輝度領域(例えばCT値が値500以上の領域)が骨の領域であるか、石灰化又はステントの領域であるかを判定する。ステントは、各種の金属(例えばステンレス鋼、Ni−Ti、タンタル、Co−Cr)を含んで形成されてよい。この場合、ステントの領域は、金属を示す領域の一例である。
領域判定部163は、高輝度領域のサイズ(高輝度領域の塊のサイズ)が所定サイズ以上である場合、高輝度領域が骨の領域であると判定してよい。この高輝度領域は、ボリュームデータの全体又は領域抽出部161により抽出されたボリュームデータの一部に含まれる。領域判定部163は、非造影ボリュームデータに対応する造影ボリュームデータにおける高輝度領域と血流の領域との距離が所定距離以上である場合、高輝度領域が骨の領域であると判定してよい。
領域判定部163は、高輝度領域のサイズが所定サイズ未満である場合、高輝度領域が石灰化又はステントの領域であると判定してよい。領域判定部163は、非造影ボリュームデータに対応する造影ボリュームデータにおける高輝度領域と血流の領域との距離が所定距離未満である場合、高輝度領域が石灰化又はステントの領域であると判定してよい。
領域判定部163は、領域抽出部161により抽出された各領域のうち、軟組織の領域(例えば肝臓、腎臓、心筋、脳などの領域)を特定してよい。軟組織の領域は、詳細に特定すること無く、例えばCT値が値0以下の領域を軟組織としてよい。例えばCT値が値100以下の領域を軟組織としてもよい。また、領域判定部163は、既知のセグメンテーション手段を用いて軟組織に含まれる腫瘍などの病変部の領域を抽出しても良い。軟組織の領域の特定は、血流と臓器の位置確認や、血流と病変部の位置関係の確認に使用されてよい。
レジストレーション処理部164は、取得された複数のボリュームデータに対し、レジストレーション処理を行い、複数のボリュームデータの位置合わせを行ってよい。レジストレーション処理は、公知の手法が用いられてよい。このレジストレーション処理は、剛体レジストレーションを含んでよい。このレジストレーションは、非剛体レジストレーションを含んでよい。レジストレーション処理部164は、造影ボリュームデータと非造影ボリュームデータとのレジストレーションでは、骨の領域及び肺を含む空気の領域をレジストレーションしてから、軟組織のレジストレーションを行ってよい。
補正処理部165は、取得された複数のボリュームデータに関し、且つ、DICOMデータに含まれて取得された撮像情報を基に、ボリュームデータを補正する。
補正処理部165は、第1補正処理を実施してよい。第1補正処理は、ボリュームデータ内に存在するブルーミングアーチファクトの低減に係る処理である。これによって、サブトラクション画像の品質が向上する。
補正処理部165は、第1補正処理において、ブルーミングアーチファクトの影響により拡大された骨や石灰化された領域(カルシウムの領域)の縮小処理や拡大処理を行ってよい。例えば、X線管電圧が低い(所定の通常電圧よりも低い、低電圧、以下同様)状態で撮像されると、造影剤やカルシウムのCT値が増大する傾向にあり、そのためにブルーミングアーチファクトの影響を受けやすく、骨や石灰化の領域が拡大し易い。補正処理部165は、X線管電圧が低電圧の状態で撮像されたボリュームデータに対して縮小処理を行うことで、X線管電圧が通常電圧や通常電圧よりも高い高電圧の状態で撮像されたボリュームデータと同じサイズ(ボリュームデータの占める範囲)に補正できる。あるいは、補正処理部165は、ファントムを用いたキャリブレーションを行うことによって、X線管電圧が低電圧の状態で撮像されたボリュームデータについての適切な縮小処理の程度を、CT装置200毎に取得することができる。
同様に、補正処理部165は、X線管電圧が通常電圧又は高電圧の状態で撮像されたボリュームデータに対して拡大処理を行うことで、X線管電圧が低電圧の状態で撮像されたボリュームデータと同じサイズに補正できる。なお、縮小処理の縮小率及び拡大処理の拡大率は、X線管電圧の大きさの高さの比に依存してよい。
骨の領域では、緻密質が海綿質よりもCT値が大きい。そのため、骨の緻密質の方が実際よりも大きく描出され易い。骨の緻密質は、骨の領域の周端部に位置するので、補正処理部165は、骨の領域のサイズを縮小する縮小処理を行ってよい。補正処理部165は、X線管電圧が低電圧の状態で撮像された骨の領域のボリュームデータに対して縮小処理を行うことで、X線管電圧が通常電圧や高電圧の状態で撮像された骨の領域のボリュームデータと同じサイズに補正できる。つまり、補正処理部165は、ボリュームデータにおいて骨の緻密質の領域を縮小できる。
同様に、補正処理部165は、X線管電圧が通常電圧又は高電圧の状態で撮像された骨の領域のボリュームデータに対して拡大処理を行うことで、X線管電圧が低電圧の状態で撮像された骨の領域のボリュームデータと同じサイズに補正できる。つまり、補正処理部165は、ボリュームデータにおいて骨の緻密質の領域を拡大できる。
補正処理部165は、高輝度領域としての骨の領域と血管領域との距離が所定距離以上である場合に限って、ボリュームデータに対する拡大処理を実施するか否かを決定してよい。これにより、医用画像処理装置100は、血管近傍において骨の領域が拡大されることで、血管の領域を侵食し、石灰化が存在すると誤認識されることを抑制できる。
補正処理部165は、第2補正処理を実施してよい。第2補正処理は、サブトラクション画像において、骨の海綿質の描画を抑制するための処理である。これによって、サブトラクション画像の品質が向上する。第2補正処理は、サブトラクションボリュームデータにおいて、骨の領域のCT値を補正する処理であってもよい。第2補正処理は、骨の海綿質の領域を高輝度領域に変換する処理であってもよい。また、補正処理部165は、サブトラクションボリュームデータをレンダリングするときに、骨の領域をいわゆるマスク処理により除去しても良い。
補正処理部165は、第2補正処理において、X線管電圧が通常電圧の状態で撮像されたボリュームデータにおける骨の海綿質の領域を、骨の海綿質の領域のCT値を、骨の緻密質の領域のCT値と同値に置換してよい。これにより、補正処理部165は、X線管電圧が低電圧の状態で撮像されたボリュームデータの骨の海綿質の領域の一部に発生したアーチファクトによって、サブトラクション画像に海綿質の領域にアーチファクトが表示されることを抑制できる。
サブトラクション処理部166は、造影ボリュームデータから非造影ボリュームデータを差し引いて(サブトラクション処理を実施して)、サブトラクションボリュームデータを生成する。サブトラクション処理部166は、ボリュームデータの全体をサブトラクション処理の対象としてもよいし、ボリュームデータの一部の領域をサブトラクション処理の対象から除外し、他の一部をサブトラクション処理の対象としてもよい。
サブトラクション処理部166は、造影ボリュームデータにおいてCT値が値0以下の領域を、サブトラクション処理の対象領域から除外してよい。
これにより、医用画像処理装置100は、CT値の低い(値0以下の)軟組織を示す領域のボリュームデータをサブトラクション処理後に残存できる。
サブトラクション処理部166は、造影ボリュームデータにおいてCT値が値100以下の領域をサブトラクション処理の対象領域から除外し、且つ、CT値が値100より大きく値200以下である領域では線形に徐々にサブトラクション処理における差引量を遷移させてよい。つまり、サブトラクション処理部166は、造影ボリュームデータから非造影ボリュームデータを差し引く際の非造影ボリュームデータの該当領域(CT値が値100より大きく値200以下である領域に対応する領域)の値に、該当領域内の位置に応じて線形に変化する係数を乗算する。サブトラクション処理部166は、造影ボリュームデータから、線形に変化する係数が乗算された非造影ボリュームデータを差し引いて、サブトラクションボリュームデータを生成してよい。
これにより、医用画像処理装置100は、CT値の低い(値100以下の)軟組織を示す領域のボリュームデータをサブトラクション処理後に残存できる。また、医用画像処理装置100は、CT値の比較的低い(値100〜値200)領域では、このCT値の比較的低い領域の内側及び外側においてサブトラクション結果が滑らかに繋がる(seamless)ように、サブトラクション画像を補正して生成できる。つまり、サブトラクション処理部166は、徐々にグラデーションをかけながら、サブトラクション画像を生成できる。
サブトラクション処理部166は、サブトラクション処理を、ボリュームデータのCT値を書き換えることで実施してよい。例えば、補正処理部165は、CT値を書き換える際に、書換え対象のボクセルの周辺ボクセルのCT値を基に、書換え対象のボクセルのCT値を書き換えてよい。例えば、補正処理部165は、非造影ボリュームデータから抽出された骨や石灰化の領域に対応する、造影ボリュームデータにおける骨や石灰化の領域を書き換え対象とし、CT値を値0にしてもよい。結果的に、骨や石灰化をサブトラクション画像から抑制できれば良いからである。
これにより、医用画像処理装置100は、特定の領域のCT値を書き換えることでも、造影ボリュームデータから骨や石灰化の領域を除外でき、血流等の領域のみ残存したボリュームデータを取得できる。
補正処理部165は、非造影ボリュームデータにおいて骨の領域が存在する場合、骨の領域の周辺ボクセルのCT値を、骨の領域のCT値(例えば値500)に変換してよい。サブトラクション処理部166は、造影ボリュームデータの各ボクセルのCT値から、骨の領域の周辺ボクセルのCT値が変換された非造影ボリュームデータの各ボクセルのCT値を差し引いて、サブトラクションボリュームデータを生成してよい。
これにより、医用画像処理装置100は、サブトラクション処理の対象となる複数のボリュームデータが位置ずれしていても、造影ボリュームデータにおける骨の領域が削除される可能性を高くできる。つまり、医用画像処理装置100は、骨周辺の領域の予備的補正により、位置ずれによるサブトラクション処理の処理結果を改善できる。また、医用画像処理装置100は、造影ボリュームデータにおける高輝度領域がブルーミングアーチファクトの影響により実際よりも拡大されても、この影響を抑制して、サブトラクションボリュームデータを生成できる。
補正処理部165は、非造影ボリュームデータにおいて石灰化又はステントの領域が存在する場合、石灰化又はステントの領域の周辺ボクセルのCT値を石灰化又はステントの領域のCT値(例えば値500)に変換してよい。補正処理部165は、プロセッサ140は、石灰化又はステントの領域の周辺ボクセルの範囲は、先述した骨の領域の周辺ボクセルの範囲より、狭い範囲でよい。また、補正処理部165は、非造影ボリュームデータにおいて石灰化又はステントの領域が存在する場合、造影ボリュームデータにおいて対応する石灰化又はステントの輪郭部分のCT値を、石灰化又はステントの領域の周辺ボクセルのCT値に変換してよい。この変換は、後述する侵食処理(Erosion処理)の一例である。
これにより、医用画像処理装置100は、石灰化又はステントの近傍に存在する血流の領域のCT値が高輝度値に変換され、サブトラクションボリュームデータにおいて血流の領域のCT値の一部が欠落することを抑制できる。
図3は、造影ボリュームデータに対応する、造影ボリュームデータの3次元画像を示す造影画像G1の一例を示す図である。図4は、非造影ボリュームデータに対応する、非造影ボリュームデータの3次元画像を示す非造影画像G2の一例を示す図である。図5は、サブトラクションボリュームデータに対応する、サブトラクションボリュームデータの3次元画像を示すサブトラクション画像G3の一例を示す図である。図3〜図5では、各図の下方が眼底部を示している。図3〜図5では、3次元画像としてレイキャスト画像が示されている。
図3の造影画像G1では、骨や石灰化等のカルシウムを示す領域31とともに、造影剤が被検体に投与されることで、造影剤の成分に含まれるヨウ素を示す領域32が可視化される。被検体では、ヨウ素を示す領域32として、血流(血管)を示す領域が可視化される。カルシウム及びヨウ素は、X線吸収量が比較的高いので、CT値が大きくなる。
図4の非造影画像G2では、X線吸収量の比較的高い骨や石灰化などのカルシウムを示す領域31が可視化される。一方、造影剤が無いことにより、X線吸収量の比較的低い血流を示す領域はほぼ可視化されない。
図5のサブトラクション画像G3では、サブトラクション画像G3では、造影画像G1のカルシウムを示す領域31が除去されて、ヨウ素を示す領域32としての血流を示す領域が明確に可視化される。
次に、CT装置200によるCT撮像時の撮像条件及び造影条件について説明する。
CT装置200がCT画像を撮像する際の撮像条件は、X線管電圧、X線管電流、画像SD(Standard Deviation)値、回転速度、及びCTDI(Computed tomography dose index)値が含まれてよい。
X線管電圧、画像SD値、回転速度、及びCTDI値は、CT装置200が撮像するための指令値として、CT装置200の操作部を介して入力されてよい。X線管電圧、X線管電流、画像SD値、回転速度、ファン角、及びCTDI値は、CT装置200が実際に撮像した際の実測値として、ガントリ又はコンソールが各種センサ(不図示)又は演算処理により取得されてよい。
X線管電圧は、X線管に印加される電圧である。X線管電圧が変化すると、X線の波長が変化する。X線管電圧の調整により、X線の透過力が調整される。X線管電圧が高い程、X線の透過力が大きく、X線管電圧が低い程、X線の透過力が小さい。よって、X線管電圧が低く設定されると、被検体の皮膚によって吸収散乱されるX線が増え、被検体内で吸収されるX線が減り、CT画像の画質が低下する。
例えば、X線管電圧が80kV(低電圧の一例)とされ、低電圧モードとされてCT画像が撮像されてよい。X線管電圧が100kV(低電圧又は通常電圧の一例)とされ、観察対象を心臓の領域としてCT画像が撮像されてよい。X線管電圧が120V(通常電圧の一例)とされ、通常モードとされてCT画像が撮像されてよい。X線管電圧が140kVとされ、比較的大柄の被検体のCT画像が撮像されてよい。
被検体(患者)毎に、被爆効率が良好なX線管電圧は異なる。患者の体のサイズにより、被爆効率が良好なX線管電圧が決定されてよい。例えば、被検体が太い程、X線管電圧を高くした方が、結果的に被爆量を低減できる。被検体が細い程、X線管電圧を低くした方が、結果的に被爆量を低減できる。
X線管電流は、X線管が消費する電流である。X線管電流が変化すると、X線量が変化する。X線管電流が大きい程、X線検出器により検出されるX線が増え、画質が向上する。X線管電流が小さい程、X線検出器により検出されるX線が減り、画質が低下する。X線管電流は、指令値として設定された画像SD値又はCTDI値を基に、CT装置200により調整されてよい。なお、適切にキャリブレーションされたCT値は、水や空気により補正された値である。そのため、CT値は、X線管電流に影響されない。
X線管電流を変えずにX線管電圧が低くされると、被ばく量が低減される。被ばく量は、管電圧の2乗に比例するためである。一方、X線管電圧電流が小さく(所定の通常電流よりも小さく、小電流で、以下同様)されると、被ばく量が低減される。被ばく量は、管電圧に比例するためである。
画像SD値は、CT装置200により撮像された複数のCT画像のCT値の標準偏差値である。画像SD値は、CT画像に重畳されたノイズの指標となる。画像SD値が指令値として設定されると、コンソールが備えるプロセッサ(不図示)が、この画像SD値が得られる画質が得られる最低限の電流となるように、X線管電流を制御してよい。また、コンソールのプロセッサは、被検体の部位によって異なる画像SD値に応じて、X線管電流を動的に制御してよい。通常、X線管電流は、撮像断面における被検体断面積などに応じて、適宜調整される。
回転速度は、ガントリの回転速度である。回転速度は、ガントリ内でX線管とX線検出器とが一体となって回転する回転速度でよい。回転速度が速い程、CT画像を得るための撮像時間が短くなり、被爆量が減るが、CT画像の画質が低下する。回転速度が遅い程、撮像時間が長くなり、被爆量が増えるが、CT画像の画質が向上する。CT装置200は、CT画像の逐次近似再構成を考慮すると、同一の画像SD値では回転速度が過度に高速でない方が、同一部位におけるX線量を確保でき、画質の低下を抑制できる。この場合、CT装置200は、画像SD値で指定された目標画質を維持するためにX線管電流を増大することを抑制でき、結果的に被ばく量を低減できる。
CTDI値は、CT撮像による被検体の被爆量の指標を示す。CTDI値が小さい程、被爆量が少ないので、好ましい。指令値として画像SD値が設定される代わりに、CTDI値が設定されてもよい。
CT装置200が造影ボリュームデータを撮像する際の造影条件には、造影剤量及び造影剤濃度が含まれてよい。
造影剤量は、造影ボリュームデータの撮像時に投与される造影剤の量を示す。造影剤は、その成分にヨウ素を含んでよい。ヨウ素(ヨード)のk吸収端は、33.4eVである。そのため、造影剤は、X線の波長が短い程、つまりX線管電圧が低い程、相対的にX線を多く吸収する。CT装置200は、ヨウ素のX線吸収力(X線遮蔽力)がX線の波長によって異なるので、X線管電圧を調整することで、造影力を維持しながら造影剤量を低減できる。例えば、X線管電圧が80kVの場合、X線管電圧が120kVの場合と比較すると、CT値がHU値換算で1.7倍大きくなり、造影剤量が0.6倍程度(つまり2/3程度)となる。つまり、CT装置200は、X線管電圧を低くすることで、CT値を増大でき、造影力を維持するための造影剤量を低減できる。
なお、低電圧の状態で造影ボリュームデータが撮像されることで、カルシウムの領域(骨等の領域)とヨウ素の領域(血流の領域)との双方が明るくなるが、ヨウ素の領域の方が顕著に明るくなる。
造影剤濃度は、ヨウ素濃度で識別される。造影剤濃度は、造影剤の注入速度との関係で定められる。
次に、造影ボリュームデータ及び非造影ボリュームデータの撮像時の撮像条件及び造影条件について説明する。
本実施形態では、CT装置200は、造影ボリュームデータを撮像する場合、X線管電圧を低電圧(例えば80kV,100kV)に設定し、指令値としての画像SD値を通常値(例えば、体幹部において値10)に設定する。X線管電圧が低電圧にされることで、CT装置200は、造影ボリュームデータを撮像するために被検体に注入される造影剤の量を低減できる。また、X線管電圧が低下するとCT画像の画質が低下するが、画像SD値が通常値に設定されているため、CT装置200は、CT画像の画質を維持しようとして、X線管電流を増大する。
したがって、CT装置200は、X線管電圧を低く設定することで、造影ボリュームデータを撮像するための造影剤量を低減できる。また、X線管電圧を低く設定しても、X線管電流が通常値より大きくなることで、造影剤による造影力を維持できる。また、造影画像には、骨や石灰化を示す領域が表現されるとともに、血流成分が造影剤により造影されて画像に映り込む。そのため、造影画像は、診断の際に主画像として使用され得る。よって、CT装置200は、造影剤量を低減しつつ、主画像としての造影画像の画質を維持でき、診断精度の劣化を抑制できる。
本実施形態では、CT装置200は、非造影ボリュームデータを撮像する場合、X線管電圧を通常電圧(例えば120kV)に設定し、指令値としての画像SD値を大きく(所定の通常画像SD値よりも大きく、以下同様)設定する。画像SD値が大きく設定されることで、CT画像が低画質化され、X線管電流が低くなる。
したがって、CT装置200は、X線管電流が通常値よりも小さくなることで、X線量を低減でき、被検体の被爆量を低減できる。非造影画像には、骨や石灰化を示す領域が表現され得る一方、血流成分が画像に反映されない。そのため、非造影画像は、診断の際に副画像として使用され得る。よって、CT装置200は、X線による被爆量を低減しつつ、副画像としての非造影画像の画質を低下させて導出できる。非造影画像の画質が低減されても、診断への影響は小さい。
このように、CT装置200は、造影剤量の低減やX線量の低減という目的を持って、撮像条件や造影条件を設定できる。よって、医用画像処理装置100は、造影ボリュームデータ及び非造影ボリュームデータの役割(主画像、副画像)を加味してCT装置200により撮像条件及び造影条件が調整されて撮像された造影ボリュームデータ及び非造影ボリュームデータを取得できる。
次に、補正処理及びサブトラクション処理の詳細について説明する。
造影ボリュームデータと非造影ボリュームデータとでは、撮像条件及び造影条件が異なる。そのため、骨や石灰化を示す領域の描出具合が異なる。例えば、X線管電圧が低く設定されると、骨や石灰化を示す領域のCT値が大きくなる。そのため、X線管電圧が通常値に設定されている場合と比較すると、骨や石灰化を示す領域が大きく描出される。更に、X線管電圧が低く設定されると、ブルーミングアーチファクトの影響により、高輝度領域周辺のCT値が大きくなり、つまり骨や石灰化を示す領域の周辺領域のCT値も大きくなる。したがって、造影ボリュームデータ及び非造影ボリュームデータの撮像時の撮像条件及び造影条件が一致している場合と、この撮像条件及び造影条件が不一致である場合とでは、サブトラクション結果が異なる。例えば、サブトラクション結果を示すサブトラクション画像において、ブルーミングアーチファクトに起因して骨や石灰化の領域が残存し、造影剤により造影された血流以外の情報が描画されることになる。
図6は、比較例における血管に発生した石灰化部周辺のサブトラクション処理を説明するための図である。非造影画像G11は、非造影ボリュームデータV11(不図示)の3次元画像である。造影画像G12は、造影ボリュームデータV12(不図示)の3次元画像である。サブトラクション画像G13は、サブトラクションボリュームデータV13(不図示)の3次元画像である。
非造影画像G11では、石灰化された領域である石灰化部61が表示されている。石灰化部61は、血管62内に位置する。非造影ボリュームデータV11の撮像時には、X線管電圧が通常電圧であるので、従来の表示と同様の状態で、石灰化部61が描出される。なお、造影剤が用いられていないので、ほとんど血流の様子は描出されない。
造影画像G12では、被検体が造影剤により造影されることで、血管62内の血流が可視化される。また、血流近傍に位置する石灰化部61は、造影ボリュームデータV12の撮像時には、X線管電圧が低電圧であるので、ブルーミングアーチファクトの影響が大きくなり、実際の石灰化部の領域とともにその周辺の高輝度化された領域も含む。つまり、石灰化部61は、実際の大きさよりも拡大されて描画される。
サブトラクションボリュームデータV13は、造影ボリュームデータV12の各画素のCT値から、非造影ボリュームデータV11の各画素のCT値を差し引いたボリュームデータである。造影ボリュームデータV12と非造影ボリュームデータV11とでは同じ石灰化部61周辺を撮像対象としているが、造影ボリュームデータV12の撮像時にはX線管電圧が低く設定されている。そのため、造影ボリュームデータV12における石灰化部61に対応する領域は、非造影ボリュームデータV11における石灰化部61に対応する領域よりもサイズが大きい。したがって、サブトラクションボリュームデータV13では、石灰化部61に対応する周端部の枠が残存する。また、造影ボリュームデータV12と非造影ボリュームデータV11とでは、撮像時のX線管電圧の高さに起因して、得られるCT値が異なることもある。この場合、サブトラクションボリュームデータV13における石灰化部61に対応する領域の周端部以外でも、周端部に囲まれた内部のCT値の差分値が値0とならず、石灰化部61の周端部以外も残存することもある。
図7は、本実施形態におけるブルーミングアーチファクトを考慮したサブトラクション処理を説明するための図である。造影画像G21は、造影ボリュームデータV21(不図示)の3次元画像である。非造影画像G22は、非造影ボリュームデータV22(不図示)の3次元画像である。補正画像G23は、補正ボリュームデータV23(不図示)の3次元画像である。サブトラクション画像G24は、サブトラクションボリュームデータV24(不図示)の3次元画像である。ここでは、ブルーミングアーチファクトによる影響を低減すべく、補正処理部165が、第1補正処理を実施する。
造影画像G21では、被検体が造影剤により造影されることで、血管72内の血流が可視化される。また、血流近傍に位置する石灰化部71は、ブルーミングアーチファクトの影響により、実際の大きさよりも拡大されて描画される。更に、造影ボリュームデータV21の撮像の際にはX線管電圧が通常電圧より低く設定されるので、石灰化部71に対応するボリュームデータの領域では、CT値が高くなる。
非造影画像G22では、石灰化された領域である石灰化部71が表示されている。石灰化部71は、その一部が血管72内に位置する。非造影ボリュームデータV22の撮像時にはX線管電圧が通常電圧であるので、従来の表示と同様の状態で、石灰化部71が描出される。なお、造影剤が用いられていないので、血流の様子はほとんど描出されない。
補正画像G23は、造影画像G21が補正された画像である。つまり、造影ボリュームデータV21が補正されて補正ボリュームデータV23が生成される。補正処理部165は、造影ボリュームデータV21における高輝度領域、つまり所定値以上のCT値を有する画素の領域に限定して縮小し、補正ボリュームデータV23を生成する。縮小する処理は、侵食処理(Erosion処理)でよい。具体的な侵食処理の手法は、公知の手法でよい。
補正処理部165は、造影ボリュームデータV21の撮像時のX線管電圧と非造影ボリュームデータV22の撮像時のX線管電圧とに基づいて、非造影ボリュームデータV22における石灰化部71に対応する領域の大きさと、補正ボリュームデータV23における石灰化部71に対応する領域の大きさとが、一致するように侵食処理する。この場合、補正処理部165は、メモリ150に保持された補正テーブル(不図示)を参照し、造影ボリュームデータV21の撮像時のX線管電圧と非造影ボリュームデータV22の撮像時のX線管電圧とに対応する侵食率(縮小率)や侵食量(縮小量)の情報を取得する。侵食率の情報は、浸食処理のパラメータとして用いられる。これにより、少なくとも石灰化部71のサイズは、補正画像G23と非造影画像G22とで略同一となる。また、侵食率の情報は、X線管電圧とともに、CT装置の特性(例えば、再構成カーネル:reconstruction kernel)に基づいて定められてもよい。なお、補正テーブルの代わりに、X線管電圧と侵食率等との関係性を示す係数や式を用いて、浸食処理されてよい。また、補正処理部165は、撮像条件に合わせて、ファントムを用いてキャリブレーションしてもよい。
補正処理部165は、造影ボリュームデータV21における石灰化部71に対応する領域の各画素のCT値を、非造影ボリュームデータV22における石灰化部71に対応する領域の各画素のCT値に一致するように調整して、補正ボリュームデータV23を導出してよい。この場合、補正ボリュームデータV23における石灰化部に対応する領域と、非造影ボリュームデータV22における石灰化部71に対応する領域とは、サイズが略同一とされ、各画素の位置が対応づけられている。
サブトラクションボリュームデータV24は、補正ボリュームデータV23の各画素のCT値から非造影ボリュームデータV22の各画素のCT値を差し引いた画像である。補正ボリュームデータV23における石灰化部71に対応する領域の位置及びCT値は、補正の結果、非造影ボリュームデータV22における石灰化部71に対応する領域の位置及びCT値とほぼ同一となっている。したがって、サブトラクション画像G24では、石灰化部71の周端部の枠が残存せず、削除される。また、石灰化部71の周端部の内側の領域も残存せず、削除される。
本実施形態のブルーミングアーチファクトを考慮したサブトラクション処理によれば、医用画像処理装置100は、ブルーミングアーチファクトにより実際よりも拡大された高輝度領域(例えば石灰化部71等のカルシウムを示す領域)を除去できる。よって、医用画像処理装置100は、ブルーミングアーチファクトの影響を低減して、サブトラクションボリュームデータを導出できる。したがって、医用画像処理装置100は、ブルーミングアーチファクトの影響を低減したサブトラクション画像を生成できる。これによって、医用画像処理装置100は、石灰化によって生じた血管の狭窄の程度を、本実施形態の撮像手法において適切に評価できる。
なお、図7では、血管における石灰化部71の領域を例に説明したが、高輝度領域となる骨の緻密質を示す領域においても、同様の処理が有用である。
なお、補正画像G23及び補正ボリュームデータV23の代わりに、補正画像G23A(不図示)及び補正ボリュームデータV23Aが生成されてもよい。補正画像G23Aは、非造影画像G22が補正された画像である。補正ボリュームデータV23Aは、非造影ボリュームデータV22が補正された画像である。補正処理部165は、非造影ボリュームデータV22における高輝度領域に限定して拡大し、補正ボリュームデータV23Aを生成してよい。拡大する処理は、膨張処理(Dilation処理)でよい。具体的な膨張処理の手法は、公知の手法でよい。
補正処理部165は、造影ボリュームデータV21の撮像時のX線管電圧と非造影ボリュームデータV22の撮像時のX線管電圧とに基づいて、造影ボリュームデータV21における石灰化部71に対応する領域の大きさと補正ボリュームデータV23Aにおける石灰化部71に対応する領域の大きさとが一致するように、膨張処理してよい。この場合、補正処理部165は、メモリ150に保持された補正テーブル(不図示)を参照し、得られた造影ボリュームデータV21の撮像時のX線管電圧と非造影ボリュームデータV22の撮像時のX線管電圧とに対応する膨張率(拡大率)や膨張量(拡大量)の情報を取得してよい。膨張率の情報は、膨張処理のパラメータとして用いられてよい。これにより、少なくとも石灰化部71のサイズは、補正画像G23と造影画像G21とで略同一となる。また、膨張率の情報は、X線管電圧とともに、CT装置200の特性(例えば、再構成カーネル)に基づいて定められてもよい。なお、補正テーブルの代わりに、X線管電圧と膨張率等との関係性を示す係数や式を用いて、膨張処理されてよい。
補正処理部165は、非造影ボリュームデータV22における石灰化部71に対応する領域の各画素のCT値を、造影ボリュームデータV21における石灰化部71を示す領域の各画素のCT値に一致するように調整して、補正ボリュームデータV23を導出してよい。この場合、補正ボリュームデータV23Aにおける石灰化部71と造影ボリュームデータV21における石灰化部71とは、サイズが略同一とされ、各画素の位置が対応づけられる。
また、第1補正処理は、上述の手法に限られず、他の手法により実施されてもよい。
図8は、比較例における骨の領域のサブトラクション処理を説明するための図である。造影画像G31は、造影ボリュームデータV31(不図示)の3次元画像である。非造影画像G32は、非造影ボリュームデータV32(不図示)の3次元画像である。サブトラクション画像G33は、サブトラクションボリュームデータV33(不図示)の3次元画像である。
造影画像G31では、脊椎としての骨81が表示されている。骨81の領域は、海綿質82の領域と緻密質83の領域とを含む。緻密質83は、海綿質82よりもCT値が高い。造影ボリュームデータV31では、撮像時にX線管電圧が低く設定されるので、比較的CT値が高い(高輝度領域の)緻密質83の領域から比較的CT値の低い海綿質82の領域に向かって、アーチファクト84が重畳し易い。また、X線管電圧が低く設定されることで、X線管電圧が通常電圧の場合と比較すると、骨81の領域全体のCT値が高くなる。
非造影画像G32では、造影画像G31と同様に、脊椎としての骨81が表示されている。非造影画像G32と造影画像G31とでは、同じ脊椎としての骨81の箇所が表示されている。非造影ボリュームデータV32では、撮像時にX線管電圧が通常電圧に設定されるので、海綿質82の領域にアーチファクトがあまり重畳せず、CT値が高くならず、従来の表示と同様となる。
サブトラクションボリュームデータV33は、造影ボリュームデータV31の各画素のCT値から非造影ボリュームデータV32の各画素のCT値を差し引いたボリュームデータである。造影ボリュームデータV31では、海綿質82の領域において、アーチファクト84が重畳され、CT値が高くなるので、サブトラクションボリュームデータV33においてアーチファクト84を含む海綿質82を示す領域の少なくとも一部が残存する。
図9は、本実施形態における海綿質のアーチファクトを考慮したサブトラクション処理を説明するための図である。非造影画像G41は、非造影ボリュームデータV41(不図示)の3次元画像である。造影画像G42は、造影ボリュームデータV42(不図示)の3次元画像である。補正画像G43は、補正ボリュームデータV43(不図示)の3次元画像である。サブトラクション画像G44は、サブトラクションボリュームデータV44(不図示)の3次元画像である。ここでは、骨91の領域の海綿質92へのアーチファクトによる影響を低減すべく、補正処理部165が、第2補正処理を実施する。
非造影画像G41及び非造影ボリュームデータV41は、図8に示した非造影画像G32及び非造影ボリュームデータV32と同様である。造影画像G42及び造影ボリュームデータV42は、図8に示した造影画像G31及び造影ボリュームデータV31と同様である。
補正画像G43は、非造影画像G41が補正された画像である。つまり、補正ボリュームデータV43は、非造影ボリュームデータV41が補正されたボリュームデータである。領域抽出部161は、非造影ボリュームデータV41における輪郭を示す輪郭領域A41を抽出する。輪郭領域A41は、骨91の緻密質93の領域と一致してよい。輪郭領域A41は、高輝度領域となっているので、公知の方法により抽出可能である。補正処理部165は、輪郭領域A41で包囲された内側の領域である内側領域A42における各画素のCT値を増大し、高輝度領域とする。内側領域A42は、骨91の海綿質92の領域と一致してよい。つまり、補正処理部165は、内側領域A42を高輝度領域のCT値で塗りつぶす処理を行う。塗りつぶすためのCT値は、高輝度領域となる所定値以上のCT値に設定されれば任意であってもよいし、輪郭領域A41の値と同じ値に設定されてもよい。内側領域A42を高輝度領域に変換する処理は、FloodFill関数を用いた変換処理により行われてよい。よって、補正画像G43では、輪郭領域A41及び内側領域A42がともに高輝度領域となる。
サブトラクションボリュームデータV44は、造影ボリュームデータV42の各画素のCT値から補正ボリュームデータV43の各画素のCT値を差し引いたボリュームデータである。補正ボリュームデータV43では、骨91の領域が全体的に高輝度領域(例えばCT値が値500)である。造影ボリュームデータV42では、骨91の領域における緻密質93及びアーチファクト94の領域が高輝度領域(例えばCT値が値500)である。よって、サブトラクションボリュームデータV44では、補正ボリュームデータV43の高輝度領域と造影ボリュームデータV42の高輝度領域とが相殺された結果、アーチファクト94が除外された海綿質92が残存する。したがって、医用画像処理装置100は、第2補正処理により、海綿質92に入り込んだアーチファクト94の影響を低減できる。
なお、造影ボリュームデータV42の撮像時のX線管電圧が低電圧に設定され、非造影ボリュームデータV41の撮像時のX線管電圧が通常電圧に設定されるので、造影ボリュームデータV42の脊椎のサイズは、非造影ボリュームデータV41の脊椎としての骨91のサイズよりも大きくなる。そのため、補正処理部165は、造影ボリュームデータV42の撮像時のX線管電圧と非造影ボリュームデータV41の撮像時のX線管電圧とに基づいて、非造影ボリュームデータV41における骨91の大きさと補正ボリュームデータV43における骨91の大きさとが一致するように、非造影ボリュームデータV41の骨91に対して膨張処理し、サイズを合わせてよい。この処理は、第1補正処理において行われてよい。
補正ボリュームデータV43における骨91の位置及びCT値は、第1補正処理の結果、非造影ボリュームデータV41に対する骨91の位置及びCT値とほぼ同一となっている。したがって、サブトラクションボリュームデータV44では、サイズ合わせの効果により、骨91の輪郭領域A41が残存せず、削除される。
本実施形態の海綿質82のアーチファクトを考慮したサブトラクション処理によれば、医用画像処理装置100は、画像再構成時に海綿質92に出現した高輝度領域であるアーチファクト94を除去できる。よって、医用画像処理装置100は、海綿質92のアーチファクト94の影響を低減して、サブトラクションボリュームデータを導出できる。したがって、医用画像処理装置100は、海綿質92のアーチファクト94の影響を低減したサブトラクション画像を生成できる。
また、第2補正処理は、上述の手法に限られず、他の手法により実施されてもよい。
第2補正処理は、以下のように行われてもよい。まず、補正処理部165は、非造影ボリュームデータV41において、骨91の外周部としての輪郭領域A41を取得してよい。サブトラクション処理部166は、非造影ボリュームデータV41における骨91の外周部に包囲された領域(内側領域A42)、又は、非造影ボリュームデータV41における骨91の外周部に対応する造影ボリュームデータV42における領域に包囲された領域(内側領域A42に対応する領域)を、マスクに用いる領域とする。画像生成部162は、造影ボリュームデータV42について、マスクに用いる領域に対応する領域を除いた箇所を対象として3次元画像を生成する。この場合、造影ボリュームデータV42から骨91の海綿質92の領域は、マスクされることで、生成される3次元画像において描画されない。これにより、医用画像処理装置100は、骨91の領域をサブトラクション画像から削除でき、そのためにアーチファクト94の影響を除去できる。
次に、医用画像処理装置100の動作例について説明する。
図10は、医用画像処理装置100の動作例を示すフローチャートである。
まず、CT装置200は、被検体に造影剤が注入されていない状態で撮像し、非造影ボリュームデータV0を得る。非造影ボリュームデータV0の撮像により、非造影ボリュームデータV0の撮像に係る撮像情報が得られ、DICOMデータに格納される。
ポート110は、CT装置200から非造影ボリュームデータV0を取得する(S11)。ポート110は、CT装置200からDICOMデータを取得し、メモリ150等に保持させる。処理部160は、DICOMデータに含まれる、非造影ボリュームデータV0の撮像時のX線管電圧kv0の情報を取得する(S12)。
続いて、CT装置200は、被検体に造影剤が注入された状態で撮像し、造影ボリュームデータV1を得る。造影ボリュームデータV1の撮像により、造影ボリュームデータV1の撮像に係る撮像情報が得られ、DICOMデータに格納される。
ポート110は、CT装置200から造影ボリュームデータV1を取得する(S13)。ポート110は、CT装置200からDICOMデータを取得し、メモリ150等に保持させる。処理部160は、DICOMデータに含まれる、造影ボリュームデータV1の撮像時のX線管電圧kv1の情報を取得する(S14)。
処理部160は、X線管電圧kv1がX線管電圧kv0よりも小さいか否か、つまりkv1<kv0を満たすか否かを判定する(S15)。
kv1<kv0を満たさない場合、S19に進む。つまり、kv1≧kv0の場合には、非造影ボリュームデータV0と造影ボリュームデータV1とに基づくサブトラクションボリュームデータV3において骨や石灰化等の除去が不十分となることが少ない。そのため、医用画像処理装置100は、サブトラクション処理の前段階となるS16〜S18の処理を省略しても、サブトラクションボリュームデータV3の生成精度を維持できる。S16〜S18の処理のいずれの処理を省略するかは、UI120を介して指定されてよい。
kv1<kv0を満たす場合、レジストレーション処理部164は、同一の撮像対象を撮像した非造影ボリュームデータV0と造影ボリュームデータV1との位置合わせ処理(レジストレーション処理)を行う(S16)。位置合わせにより、撮像対象において同一視される位置が対応付けられる。これにより、例えば撮像範囲の端部においても、サブトラクション処理が行われる一対の造影ボリュームデータV1及び非造影ボリュームデータV0において対応するボクセルが存在する可能性が高くなる。よって、医用画像処理装置100は、サブトラクション処理の処理精度を向上できる。
補正処理部165は、非造影ボリュームデータv0に対して骨の海綿質を高輝度領域に変換する第2補正処理を行い、補正ボリュームデータV0−2を得る(S17)。補正ボリュームデータV0−2は、例えば補正ボリュームデータV43である。
補正処理部165は、造影ボリュームデータv1に対してブルーミングアーチファクトを低減するための第1補正処理を行い、補正ボリュームデータV1−2を得る(S18)。補正ボリュームデータV1−2は、例えば補正ボリュームデータV23である。
サブトラクション処理部166は、補正ボリュームデータV1−2から補正ボリュームデータV0−2を差し引いて、サブトラクションボリュームデータV3を生成する(S19)。サブトラクションボリュームデータV3は、例えばサブトラクションボリュームデータV24,V44である。
画像生成部は、サブトラクションボリュームデータV3に基づいて、サブトラクションボリュームデータの3次元画像であるサブトラクション画像を生成する。処理部160は、ディスプレイ130に指示し、サブトラクション画像を表示させる。
なお、図10では、S15の処理が省略されてもよい。この場合でも、医用画像処理装置100は、造影ボリュームデータ及び非造影ボリュームデータの撮像時の撮像条件及び造影条件が好適に設定されて撮像されたボリュームデータを取得でき、サブトラクションボリュームデータを好適に導出できる。
なお、S16〜S18の少なくとも1つの処理が省略されてもよい。つまり、レジストレーション処理、第1補正処理、第2補正処理の実施は必須ではない。また、処理部160は、CT装置200に撮像される観察対象の種別や観察対象のX線吸収率に応じて、レジストレーション処理、第1補正処理、第2補正処理の実施の要否を決定してよい。
このように、医用画像処理装置100によれば、骨や血管内に存在する石灰化と血流とを識別可能である。石灰化は、血液中のカルシウムが組織に沈着することで発生し、カルシウムを主成分とする。そのため、石灰化の領域は、カルシウムを示す領域として検出される。血流の領域は、造影剤が使用されることで、造影剤の成分に含まれるヨウ素を示す領域として検出される。カルシウムとヨウ素とは、X線の吸収率が高い。そのため、カルシウムを示す領域とヨウ素を示す領域とは造影画像内で分離が難しいことがある。また、造影ボリュームデータに対するセグメンテーション処理では、カルシウムを示す領域とヨウ素を示す領域とを区別して抽出することが困難な場合がある。これに対し、医用画像処理装置100は、造影ボリュームデータと非造影ボリュームデータを用いて高精度にサブトラクションボリュームデータを生成することで、サブトラクションボリュームデータから、カルシウムを示す領域を高精度に除去可能である。また、これにより、医用画像処理装置100は、ソフトプラークによる血管の狭窄が正しく評価できる。ソフトプラークが発展すると石灰化に至ると言われている。また、ソフトプラークは、遊離することによって梗塞の原因ともなり得る。
首から眼底部にかけての領域や骨盤の領域では、骨で包囲された内側に血管が走行する。この場合、首の領域の造影ボリュームデータでは、どの位置が血管でどの位置が骨であるかを識別し難いことがある。医用画像処理装置100によれば、サブトラクション処理により血流の領域を高精度に抽出できるので、どの位置が血管でどの位置が骨であるかを識別し易くなる。これにより、医用画像処理装置100は、首から眼底部にかけての領域や骨盤の領域において血管に石灰化が生じたとき、血管の狭窄を正しく評価できる。
頭部の領域では、脳動脈の狭窄や石灰化が発生することがある。医用画像処理装置100によれば、サブトラクション処理により、脳動脈の血流の領域と石灰化の領域を識別し易くなる。これにより、医用画像処理装置100は、頭部の領域において血管に石灰化が生じたとき、血管の狭窄を正しく評価できる。
また、医用画像処理装置100が造影剤量を少なくして造影ボリュームデータを取得することで、得られる造影ボリュームデータに表現される血流の領域のサイズやCT値が変化する。これに対し、医用画像処理装置100は、造影ボリュームデータの変化を各種の画像処理(例えば第1補正処理、第2補正処理)によって補正する。これにより、被検体における同じ範囲が撮像された造影ボリュームデータと非造影ボリュームデータとにおいて、対応する部位については、造影による差分を除いて、同様のサイズで同様のCT値とされる。これにより、医用画像処理装置100は、造影ボリュームデータと非造影ボリュームデータとで対応する部位(骨、石灰化の領域、等)を高精度に除去可能である。よって、医用画像処理装置100は、造影剤量を少なくして肝臓や腎臓の負担を軽減して、サブトラクションボリュームデータの生成精度を向上でき、サブトラクション画像の生成精度を向上できる。
また、サブトラクションボリュームデータを得るためには、造影ボリュームデータの撮像と非造影ボリュームデータの撮像という2回の撮像が必要となる。そのため、1回あたりの造影剤量及びX線量を低減して、少しでも被検体の負担を低減することが好ましい。診断の際には、造影ボリュームデータに基づく造影画像の方が、非造影ボリュームデータに基づく非造影画像よりも、画像で表現される情報量が多く、診断に有用な主画像とされ得る。一方、非造影画像は、診断の際には副画像とされ得る。
医用画像処理装置100によれば、主画像の元となる造影ボリュームデータの撮像時に、X線管電圧を低下させ、X線管電流を増大することで、造影剤が強調されて、少ない造影剤であっても造影画像の画質が維持された造影ボリュームデータを取得できる。また、医用画像処理装置100によれば、副画像の元となる非造影ボリュームデータの撮像時に、X線管電圧を通常電圧とし、X線管電流を小電流とすることで、画質が低下され、X線量が低減して被検体の被爆量が低減された非造影ボリュームデータを取得できる。
なお、一回の撮像で、X線管電圧が異なる2つのボリュームデータを生成するデュアルエナジーCT装置が知られている。しかし、デュアルエナジーCT装置は、一回の撮像で2つのボリュームデータを生成するので、造影ボリュームデータと非造影ボリュームデータとを一回の撮像で得ることはできない。よって、デュアルエナジーCT装置は、造影ボリュームデータと非造影ボリュームデータとを用いたサブトラクションボリュームを生成できない。また、デュアルエナジーCT装置では、被爆量の低減や造影剤の低減も考慮されていない。
また、デュアルエナジーCT装置は、撮像された2つの造影ボリュームデータを用いて、組織によるX線吸収の相違を利用して、物質を同定できる。物質としてカルシウムを同定し、造影ボリュームデータから骨の領域を抽出し、造影ボリュームデータから骨の領域を除去する、いわゆるデュアルエナジーサブトラクションがある。しかし、デュアルエナジーサブトラクションでは、骨の領域と造影剤により造影された血流の領域との識別が良好でない場合がある。また、デュアルエナジーサブトラクションでは、被爆量の低減や造影剤の低減も考慮されていない。
以上のように、医用画像処理装置100は、医用画像撮像装置(例えばCT装置200)により撮像された医用画像(例えばボリュームデータ)を処理し、取得部と処理部160を備える。取得部は、CT装置200のX線管に第1の電圧(例えば低電圧)が印加された状態で、且つ、被検体が造影状態で撮像された第1の医用画像(例えば造影ボリュームデータ)と、X線管に第1の電圧と異なる第2の電圧(例えば通常電圧)が印加された状態で、且つ、被検体が非造影状態で撮像された第2の医用画像(例えば非造影ボリュームデータ)と、を取得する。処理部160は、第1の電圧、第1の医用画像、第2の電圧、及び第2の医用画像に基づいて、第1の医用画像に含まれる被検体の領域に含まれるカルシウムを抑制して、第3の医用画像(例えばサブトラクション画像)を生成する。
これにより、医用画像処理装置100は、第1の電圧と第2の電圧とが異なることで、高輝度領域の画像再構成時において描出される複数の画像は、被検体における対応する領域であっても描出具合が異なる。カルシウムを示す画素や領域は、X線を透過しにくく吸収し易いとため、高輝度領域となる。そのために、カルシウムの領域は、第1の電圧と第2の電圧とで低い電圧の方が、ブルーミングアーチファクト等の影響により、実際の高輝度領域とともに、その周辺の領域を含めて高輝度領域となる。医用画像処理装置100は、第1の電圧、第2の電圧を利用して拡大される傾向にあるカルシウムを示す画素や領域を抑制することで、カルシウムに起因する高輝度領域の影響を抑制できる。よって、医用画像処理装置100は、造影された被検体の高輝度領域以外の領域(例えば血流の領域)を含めた状態を視認性良く確認できる。また、第1の電圧と第2の電圧とが異なることで、造影剤の量が低減され得る。したがって、医用画像処理装置100は、造影ボリュームデータ及び非造影ボリュームデータから得られるサブトラクションボリュームデータの生成精度を維持して、CT撮像時の造影剤量を低減できる。
なお、第3の医用画像は、サブトラクション画像以外であってもよく、サーフィスデータ、マスク情報、ボリュームデータ、サブトラクションボリュームデータでもよい。
処理部160は、第1の医用画像及び第2の医用画像の少なくとも一方に含まれる被検体の領域に含まれるカルシウムを示す画素の画素値を小さくすることによって、サブトラクションボリュームデータを作成し、サブトラクションボリュームデータを用いて第3の医用画像を生成してよい。
これにより、医用画像処理装置100は、第1の電圧、第2の電圧を利用して拡大される傾向にあるカルシウムを示す画素や領域のサイズや画素値を小さくすることで、カルシウムに起因する高輝度領域の影響を抑制できる。よって、医用画像処理装置100は、被検体の造影された組織(例えば血流)を視認性良く確認できる。
処理部160は、第1の医用画像及び第2の医用画像に含まれる被検体の領域に含まれるカルシウムを示す領域をマスクしてレンダリングすることによって、第3の医用画像を生成してよい。
これにより、医用画像処理装置100は、第1の電圧、第2の電圧を利用して拡大される傾向にあるカルシウムを示す領域をマスク(削除)することで、カルシウムに起因する高輝度領域の影響を抑制できる。よって、医用画像処理装置100は、被検体の造影された組織(例えば血流)を視認性良く確認できる。
第1の電圧は、第2の電圧より低くてよい。
これにより、造影ボリュームデータの撮像時の電圧が低電圧となり、X線の波長が短くなり、造影剤がX線を吸収し易くなる。そのため、造影剤が存在する領域のCT値が大きくなり、造影剤が注入される血管等の領域の視認性を向上できる。よって、CT撮像時の造影剤量を低減しても、造影ボリュームデータに基づいて得られるサブトラクションボリュームデータの生成精度を維持できる。
処理部160は、第1の医用画像に含まれる所定値以上の画素値を有する領域(例えば高輝度領域)の縮小と、又は第2の医用画像に含まれる所定値以上の画素値を有する領域の拡大と、の少なくとも一方を行い、第1の医用画像の各画素の画素値から第2の医用画像の各画素の画素値を減算して、第3の医用画像を生成してよい。
これにより、医用画像処理装置100は、ブルーミングアーチファクトの影響により実際よりも拡大したカルシウムの領域としての高輝度領域を小さくできる。したがって、医用画像処理装置100は、ブルーミングアーチファクトの影響を抑制して、サブトラクションボリュームデータの生成精度を向上できる。
処理部160は、第2の医用画像における所定値以上の画素値により示される骨の外周部(例えば輪郭領域A41)を抽出してよい。処理部160は、第2の医用画像における外周部に対応する、第1の医用画像における外周部により包囲された領域を抑制することによって、第3の医用画像を生成してよい。例えば、処理部160は、第2の医用画像における外周部により包囲された領域(例えば内側領域A42)の画素値を、外周部と同じ画素値に変換してよい。処理部160は、第1の医用画像の各画素の画素値から第2の医用画像の各画素の画素値を減算して、第3の医用画像を生成してよい。
これにより、医用画像処理装置100は、非造影ボリュームデータ全体を高輝度領域に補正して、造影ボリュームデータと非造影ボリュームデータとの差分を導出できる。又は、医用画像処理装置100は、造影ボリュームデータの一部(外周部の内側)をマスクして、第3の医用画像を生成できる。したがって、医用画像処理装置100は、造影ボリュームデータにおける内側領域A42に相当する領域に入り込んだ高輝度領域としてのアーチファクトを除去できる。よって、医用画像処理装置100は、内側領域A42(例えば骨の海綿質)におけるアーチファクトの影響を抑制して、サブトラクションボリュームデータの生成精度を向上できる。
処理部160は、第1の医用画像及び第2の医用画像に基づいて、第1の医用画像及び第2の医用画像に含まれる被検体の領域に含まれる金属を示す領域の画素値を小さくして、第3の医用画像を生成してよい。
金属を示す領域は、X線を透過しにくく吸収し易いため、高輝度領域となる。そのために、金属の領域は、第1の電圧と第2の電圧とで低い電圧の方が、ブルーミングアーチファクト等の影響により、実際の高輝度領域とともに、その周辺の領域を含めて高輝度領域となる。医用画像処理装置100は、拡大される傾向にある金属を示す領域のサイズや画素値を小さくして、金属に起因する高輝度領域の影響を抑制して、造影された被検体の状態を視認性良く確認できる。金属を示す領域は、例えば、体内に埋め込まれた体内人工物であり、ステントであってよい。
前記第1の医用画像及び前記第2の医用画像に含まれるカルシウムは、被検体における石灰化と被検体における骨とを含んでよい。
これにより、医用画像処理装置100は、第1の医用画像又は第2の医用画像内に石灰化や骨の領域が存在し、造影剤量を低減しても、石灰化や骨を抑制(例えば石灰化や骨に起因して発生するCT値を補正)して、サブトラクションボリュームデータを生成できる。よって、造影剤量を低減しながら、石灰化や骨の領域を含むサブトラクションボリュームデータの生成精度を維持できる。
以上、図面を参照しながら各種の実施形態について説明したが、本開示はかかる例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本開示の技術的範囲に属するものと了解される。
第1の実施形態では、造影ボリュームデータ及び非造影ボリュームデータに対して補正処理を行うことを示した。この場合、補正処理が可能な領域の全てに対して補正処理を行わなくてもよい。例えば、複数の高輝度領域のうちの任意の一部の高輝度領域に対して、補正処理が行われてもよい。また、処理部160が、非造影ボリュームデータにおける高輝度領域がどの組織(例えば骨、石灰化部、その他の組織)であるかを判別し、特定の組織である場合に、補正処理を行ってもよい。補正処理部165は、非造影ボリュームデータにおける高輝度領域が石灰化部である場合に、この石灰化部に対応する部位の非造影ボリュームデータ又は造影ボリュームデータに対して、第1補正処理を行ってよい。補正処理部165は、非造影ボリュームデータにおける高輝度領域が骨の領域である場合に、この骨の領域に対応する部位の非造影ボリュームデータ又は造影ボリュームデータに対して、第1補正処理を行ってよい。補正処理部165は、造影ボリュームデータにおける海綿質の領域内に出現したアーチファクトが所定サイズ以上である場合に、第2補正処理を行ってよい。補正処理部165は、造影ボリュームデータにおける海綿質の領域が所定サイズ以上である場合に、第2補正処理を行ってよい。
第1の実施形態では、造影ボリュームデータの撮像時にX線管電圧を低電圧とし、非造影ボリュームデータの撮像時にX線管電圧を通常電圧とすることを例示したが、逆でもよい。つまり、CT装置200は、造影ボリュームデータの撮像時にX線管電圧を通常電圧に設定し、非造影ボリュームデータの撮像時にX線管電圧を低電圧に設定してもよい。これにより、CT装置200は、非造影ボリュームデータにおいてブルーミングアーチファクトを比較的多くのせた画像を取得できる。これによって、医用画像処理装置100は、位置合わせ精度の低い状態でも、良好なサブトラクションボリュームデータを作成できる。また、これにより、CT装置200は、被曝量を低減できる。
第1の実施形態では、ボリュームデータの一部の領域が抽出され、この領域においてサブトラクション処理される場合、サブトラクション処理部166は、この領域の周端部付近(境界付近)においてCT値を段階的に変化させるグラデーションを施してよい。例えサブトラクション処理部166は、サブトラクションボリュームデータの端部の領域が高輝度領域であり、その外側の領域が低輝度領域である場合、サブトラクションボリュームデータの端部の領域から外側に向けて、徐々にCT値が小さくなるよう、CT値を補正してよい。これにより、医用画像処理装置100は、サブトラクション処理後においても、滑らかなCT値の変化を有するサブトラクション画像とすることができる。
第1の実施形態では、CT装置200により画像を撮像し、生体内部の情報を含むボリュームデータを生成することを例示したが、他の装置により画像を撮像し、ボリュームデータを生成してもよい。他の装置は、3次元の血管造影装置(3D Angiography装置)を含んでよい。つまり、CT装置200は、ファンビーム型のCT装置に限られず、コーンビーム型のCT装置(CBCT:Cone-Beam CT)やエリアディテクタCT装置(ADCT:Area Detector CT)を含んでよい。また、いわゆるコーンビーム機として3次元の血管造影装置(3D Angiography装置)を含んでよい。
第1の実施形態では、補正処理後にサブトラクション処理が実施されることを例示したが、これに限られない。処理部160は、サブトラクション処理後に、補正処理を実施してよい。処理部160は、サブトラクション処理の一貫として補正処理を実施してよい。この場合、処理部160は、造影ボリュームデータと非造影ボリュームデータからカルシウムの箇所を示す領域のデータや、補正対象の領域と補正の程度を表現する補正データを作成し、サブトラクションボリュームデータに適用することで、サブトラクション処理の一貫として、サイズ調整処理や海綿質補正処理を実施可能である。
第1の実施形態では、サブトラクション処理として造影ボリュームデータの画素値を修正することによってカルシウムを抑制する場合を例示したが、これに限られない。処理部160は、いわゆるマスク処理を造影ボリュームデータに適用しても良い。この場合は、マスクを適用された造影ボリュームデータがサブトラクションボリュームデータと言える。
第1の実施形態では、撮像されたCT画像としてのボリュームデータは、CT装置200から医用画像処理装置100へ送信されることを例示した。この代わりに、ボリュームデータが一旦蓄積されるように、ネットワーク上のサーバ等へ送信され、サーバ等に保管されてもよい。この場合、必要時に医用画像処理装置100のポート110が、ボリュームデータを、有線回線又は無線回線を介してサーバ等から取得してもよいし、任意の記憶媒体(不図示)を介して取得してもよい。
第1の実施形態では、撮像されたCT画像としてのボリュームデータは、CT装置200から医用画像処理装置100へポート110を経由して送信されることを例示した。これは、実質的にCT装置200と医用画像処理装置100とを併せて一製品として成立している場合も含まれるものとする。また、医用画像処理装置100がCT装置200のコンソールとして扱われている場合も含む。
また、上記実施形態では、生体として人体を例示したが、動物の体でもよい。
また、本開示は、医用画像処理装置の動作を規定した医用画像処理方法として表現することも可能である。さらに、本開示は、上記実施形態の医用画像処理装置の機能を実現するプログラムを、ネットワークあるいは各種記憶媒体を介して医用画像処理装置に供給し、この医用画像処理装置内のコンピュータが読み出して実行するプログラムも適用範囲である。