以下、添付の図面を参照して本発明の一態様を説明する。以下に説明する実施形態は本発明の実施例であり、本発明は、以下の実施形態に制限されるものではない。なお、本明細書及び図面において符号が同じ構成要素は、相互に同一のものを示すものとする。本発明の効果を奏する限り、種々の形態変更をしてもよい。
図1は、本実施形態に係る車室内の熱管理システムの一例を示すシステム図である。本実施形態に係る車室内の熱管理システム1は、図1に示すように、少なくともポンプ11及びヒーターコア12を配管で接続して液状熱媒体を循環させる第1ループ10と、少なくとも圧縮機21、室外熱交換器22及び蒸発器23を配管で接続して冷媒を循環させるループであり、圧縮機21の吐出側と蒸発器23との間に膨張装置24,25を有する第2ループ20と、第2ループ20の圧縮機21の吐出側と膨張装置24,25との間に配置され、第2ループ20を流れる冷媒と第1ループ10を流れる液状熱媒体との間で熱交換を行う冷媒凝縮器30と、第1ループ10の液状熱媒体を流す第1のバイパス流路(不図示)、第2ループ20の蒸発器23と圧縮機21の吸入側との間の冷媒を流す第2のバイパス流路(不図示)、第1のバイパス流路の液状熱媒体の熱を蓄熱して該熱を第2のバイパス流路の冷媒に移動させる蓄熱部(不図示)、第1のバイパス流路を開閉する第1の開閉装置41及び第2のバイパス流路を開閉する第2の開閉装置42を有する蓄熱装置40と、を備える。
熱管理システム1は、車室内の冷房と暖房とが可能で、蓄熱機能を有するヒートポンプサイクルである。
第1ループ10は、例えば、ポンプ11、ヒーターコア12、冷媒凝縮器30の順に液状熱媒体を循環させる主流路を有する。ポンプ11は、例えば、電動ポンプであり、第1ループ10に液状熱媒体を循環させる。ポンプ11は、ウォーターポンプと呼ばれることもある。図1では、ポンプ11を冷媒凝縮器30とヒーターコア12との間に設けた形態を示したが、本発明では、第1ループ10内におけるポンプ11の位置は限定されない。
ヒーターコア12は、車室内を暖房する温風を発生する加熱用熱交換器である。ヒーターコア12は、車両用空調装置50のハウジング51に形成された空気流路に配置される。ハウジング51の上流には空気吸込口54が形成され、送風機52により取り込まれた送風空気は、ヒーターコア12よりも上流側に配置されたエアミックスドア53によって、ヒーターコア12に向かう空気とヒーターコア12を迂回する空気とに適宜分配される。ヒーターコア12に向かう送風空気は、液状熱媒体との間で熱交換が行われる。ヒーターコア12によって温められた送風空気(温風)は、ヒーターコア12を迂回した送風空気(図示せず)と適宜混合されることで調和空気となり、図示しない吹出口制御装置によって、ハウジング51の下流に形成された吹出口55、56から車室内へ適宜、吹き出される。
本実施形態に係る車室内の熱管理システム1では、第1ループ10は、冷媒凝縮器30の下流側とヒーターコア12との間に補助ヒータ(不図示)を更に有することが好ましい。補助ヒータは、例えば、PTCヒータなどの電気加熱式ヒータである。冷媒凝縮器30で液状熱媒体が受け取る熱エネルギーが小さいとき、補助ヒータによって液状熱媒体を補助的に加熱することで、より安定して暖房することができる。
第2ループ20は、例えば、圧縮機21、冷媒凝縮器30、膨張装置24、室外熱交換器22、膨張装置25、蒸発器23の順に冷媒を循環させる主流路を有する。主流路は、冷凍サイクルを構成する。冷媒は、例えば、フロンや二酸化炭素である。
圧縮機21は、電力によって駆動するモータ(図示せず)の駆動力を受けて、又はエンジン(図示せず)からの駆動力を受けて、低温低圧の気体状の冷媒を圧縮して、高温高圧の気体状の冷媒にする。
室外熱交換器22は、一般的に車両の前方のエンジンルーム内に配置され、高温高圧の気体状の冷媒を外気流によって冷却し、高温高圧の液体状の冷媒にする。外気流は、冷却ファン61の稼動若しくは車両の走行のいずれか一方又は両方によって生成される。
蒸発器23は、液体状の冷媒を気化させ、そのときの蒸発熱によって蒸発器23を通過する送風空気を冷却除湿する冷却用熱交換器である。蒸発器23は、車両用空調装置50のハウジング51に形成された空気流路に配置される。蒸発器23は、ヒーターコア12よりも空気流路の上流側に配置されることが好ましい。冷却した空気を再加熱することができ、送風空気の除湿を行うことができる。蒸発器23を通過した送風空気(冷風)を、エアミックスドア53によってすべてヒーターコア12を迂回し(図示せず)、あるいはヒーターコア12を迂回する比率を多くし、吹出口55、56から車室内へ吹出すことで、車室内を冷却することができる。
膨張装置24,25は、高圧の冷媒を減圧・膨張させて、低圧の冷媒とするとともに、冷媒の流量の調整を行う。図1では、2つの膨張装置24,25を有する形態を示したが、本発明はこれに限定されず、膨張装置として、圧縮機21の吐出側と室外熱交換器22との間に配置される第1の膨張装置24だけを有する形態(不図示)としてもよい。
本実施形態に係る車室内の熱管理システム1では、膨張装置24,25は、圧縮機21の吐出側と室外熱交換器22との間に配置される第1の膨張装置24と、室外熱交換器22と蒸発器23との間に配置される第2の膨張装置25とを含むことが好ましい。第1の膨張装置24は、冷媒凝縮器30と室外熱交換器22との間に配置されることがより好ましい。第1の膨張装置24は、必要に応じて、後述する冷媒凝縮器30から流出された高圧の液体状の冷媒を低圧の霧状(気体と液体との混合状)の冷媒とする。第2の膨張装置25は、必要に応じて、室外熱交換器22から流出された高圧の液体状の冷媒を低圧の霧状(気体と液体との混合状)の冷媒とする。第1の膨張装置24による冷媒の減圧・膨張が十分であって、第2の膨張装置25による冷媒の減圧・膨張が不要であるとき、第2の膨張装置25は、開度を広くして、冷媒を減圧・膨張せずに冷媒をそのまま流すことが好ましい。第1の膨張装置24及び第2の膨張装置25を有することで冷媒を適宜断熱膨張して、室外熱交換器22及び蒸発器23のそれぞれに、より適切な温度の冷媒を送ることができ、冷凍サイクル1による暖房運転と冷房運転とを行うことができる。
冷媒凝縮器30は、水コンデンサ(water cooled condenser、WCDS)とも呼ばれ、第1ループ10を流れる液状熱媒体と第2ループ20を流れる冷媒との間で熱交換を行う熱交換器である。冷媒凝縮器30では、液状熱媒体が冷媒の熱を吸熱して加熱される。
蓄熱装置40は、暖房運転中に暖められた第1ループ10の液状熱媒体の熱を蓄熱し、当該蓄熱した熱を第2ループ20の冷媒に移動させる装置である。蓄熱装置40は、第1のバイパス流路(不図示)と、第2のバイパス流路(不図示)と、蓄熱部(不図示)と、第1のバイパス流路を開閉する第1の開閉装置41と、第2のバイパス流路を開閉する第2の開閉装置42とを有する。
第1のバイパス流路は、第1ループ10の主流路をバイパスする副流路である。第1のバイパス流路の入口は、第1ループ10のヒーターコア12と冷媒凝縮器30との間の主流路から分岐する配管71に接続される。第1のバイパス流路の出口は、第1ループ10のヒーターコア12と冷媒凝縮器30との間の主流路に合流する配管72に接続される。
第2のバイパス流路は、第2ループ20の主流路をバイパスする副流路である。第2のバイパス流路の入口は、第2ループ20の蒸発器23と圧縮機21との間の主流路から分岐する配管73に接続される。第2のバイパス流路の出口は、第2ループ20の第2ループ20の蒸発器23と圧縮機21との間の主流路に合流する配管74に接続される。
蓄熱部には、蓄熱材が充填されていることが好ましい。蓄熱材は、接触する物質の温度を所定の温度に保持する物質である。蓄熱材は、保持温度が常温以下である場合に蓄冷材と呼ばれたり、包括的に蓄熱・蓄冷材と呼ばれたりすることもある。本発明でいう蓄熱材は、蓄冷材、又は蓄熱・蓄冷材を含む。蓄熱材は、例えば、比熱を利用した顕熱蓄熱材、融解・凝固などの相変化を利用した潜熱蓄熱材、化学反応による吸熱・発熱を利用した化学蓄熱材である。このうち、単位質量あたりの熱量が顕熱蓄熱材よりも大きい点及び化学的な安定性が化学蓄熱材よりも高い点で、潜熱蓄熱材であることが好ましい。潜熱蓄熱材は、例えば、パラフィンである。パラフィンは、一般式がCnH2n+2である鎖状の炭化水素化合物又は一般式がCnH2n(ただしn≧3)である環式の炭化水素化合物を含む物質である。本実施形態では、パラフィンは、化学的安定性がより高い点で、鎖状の炭化水素化合物を主成分とすることがより好ましい。パラフィンは、炭素数(一般式中nの数)の大小又は炭素鎖の構造が直鎖状、分枝状若しくは環状であるかによって融点(凝固点)が異なる。このため、目的とする保持温度に応じた相変化温度を有するパラフィンを任意に選択できる。蓄熱材の融点(凝固点)は、特に限定されないが、例えば、30〜40℃であることが好ましい。
第1の開閉装置41は、第1のバイパス流路の入口に接続される配管71又は第1のバイパス流路の出口に接続される配管72への液状熱媒体の流通を開閉する弁であることが好ましく、例えば、三方弁(図1に図示)又はストップバルブ(不図示)である。図1では、第1の開閉装置41が第1のバイパス流路の入口に設けられた形態を示したが、本発明はこれに限定されず、第1の開閉装置41が第1のバイパス流路の出口に設けられてもよい。なお、第1のバイパス流路の入口から第1のバイパス流路を経由せずに配管72と接続する配管81は、第1ループ10の主流路の一部である。
第2の開閉装置42は、第2のバイパス流路の入口に接続される配管73又は第2のバイパス流路の出口に接続される配管74への冷媒の流通を開閉する弁であることが好ましく、例えば、三方弁(図1に図示)又はストップバルブ(不図示)である。図1では、第2の開閉装置42が第2のバイパス流路の入口に設けられた形態を示したが、本発明はこれに限定されず、第2の開閉装置42が第2のバイパス流路の出口に設けられてもよい。なお、第2のバイパス流路の入口から第2のバイパス流路を経由せずに配管74と接続する配管82は、第2ループ20の主流路の一部である。
図2は、蓄熱装置の一例を示す斜視図である。図3は、図2の蓄熱装置の積層体の一部を示す正面図である。蓄熱装置40は、内部に第1のバイパス流路を有する第1チューブ43と、内部に第2のバイパス流路を有する第2チューブ44と、内部に蓄熱部を有する第3チューブ45とを積層した積層体46を有することが好ましい。積層体46は、図2及び図3に示すように、第3チューブ45を、第1チューブ43と第2チューブ44とで挟んだ部分構造を有し、該部分構造では、図3に示すように、第3チューブ45の一方の表面45a側に第1チューブ43が配置され、かつ、第3チューブ45の他方の表面45b側に第2チューブ44が配置されることが好ましい。蓄熱装置40が積層体46を有することで、第1チューブ43内の第1のバイパス流路を流れる液状熱媒体の熱を、第1チューブ43に隣接する第3チューブ45内の蓄熱部に充填された蓄熱材により効率的に伝達させることができるとともに、蓄熱部に蓄熱された熱を、第3チューブ45に隣接する第2チューブ44内の第2のバイパス流路を流れる冷媒により効率的に伝達させることができる。図2に示す積層体46は例示であって、本発明は積層体46における各チューブ43,44,45の配置及びチューブ43,44,45の数に限定されない。
次に積層体46の各チューブ43,44,45を形成するプレートの一例について説明する。
図4は、第1のバイパス流路のチューブ(第1チューブ)を形成するプレートの一例を示す平面図である。第1チューブ43(図2に図示)を形成するプレート(以降、第1プレートという。)100は、アルミニウム合金又は銅合金などの金属製であり、例えば、略方形の外形を有する。第1プレート100は、例えば、内側となる面(図4に図示した面)100aに、周壁108と、周壁108の表面よりも第1プレート100の板厚方向の外側に膨出させて形成された凹部103と、凹部103に連通する貫通孔101,102と、凹部103に連通しない貫通孔104,105,106,107と、を有する。周壁108は、少なくとも第1プレート100の周縁に設けられる。凹部103は、第1のバイパス流路を形成する。凹部103は、図4に示すように、返し部103aを有することが好ましい。第1のバイパス流路の全長を長くすることができ、より効率的に熱を伝達させることができる。また、第1のバイパス流路の流路断面積を小さくすることができ、液状熱媒体の流速を速くして、より効率的に熱を伝達することができる。凹部103に連通する貫通孔101は、凹部103によって形成される第1のバイパス流路に液状熱媒体を流入させる流入口または流出口となる。凹部103に連通する貫通孔102は、凹部103によって形成される第1のバイパス流路から液状熱媒体を流出させる流出口または流入口となる。凹部103に連通しない貫通孔104,105は、第2チューブ44に送られる冷媒の流路を形成する。凹部103に連通しない貫通孔106,107は、第3チューブ45に送られる蓄熱材の流路を形成する。
第1チューブ43は、2枚の第1プレート100の内側となる面100a同士を向かい合わせにし、各第1プレート100の周壁108の頂部同士を相互に当接して、各第1プレート100同士をろう付けなどで接合することによって形成される。そうすると、2枚の第1プレート100の間に凹部103からなる空間が形成され、当該空間が、第1のバイパス流路となる。
図5は、第2のバイパス流路のチューブ(第2チューブ)を形成するプレートの一例を示す平面図である。第2チューブ44(図2に図示)を形成するプレート(以降、第2プレートという。)200は、アルミニウム合金又は銅合金などの金属製であり、例えば、略方形の外形を有する。第2プレート200は、例えば、内側となる面(図4に図示した面)200aに、周壁208と、周壁208の表面よりも第2プレート200の板厚方向の外側に膨出させて形成された凹部203と、凹部203に連通する貫通孔204,205と、凹部203に連通しない貫通孔201,202,206,207と、を有する。周壁208は、少なくとも第2プレート200の周縁に設けられる。凹部203は、第2のバイパス流路を形成する。凹部203は、図5に示すように、返し部203aを有することが好ましい。第2のバイパス流路の全長を長くすることができ、より効率的に熱を伝達させることができる。また、第2のバイパス流路の流路断面積を小さくすることができ、冷媒の流速を速くして、より効率的に熱を伝達することができる。凹部203に連通する貫通孔204は、凹部203によって形成される第2のバイパス流路に冷媒を流入させる流入口または流出口となる。凹部203に連通する貫通孔205は、凹部203によって形成される第2のバイパス流路から冷媒を流出させる流出口または流入口となる。凹部203に連通しない貫通孔201,202は、第1チューブ43に送られる液状熱媒体の流路を形成する。凹部203に連通しない貫通孔206,207は、第3チューブ45に送られる蓄熱材の流路を形成する。
第2チューブ44は、2枚の第2プレート200の内側となる面200a同士を向かい合わせにし、各第2プレート200の周壁208の頂部同士を相互に当接して、各第2プレート200同士をろう付けなどで接合することによって形成される。そうすると、2枚の第2プレート200の間に凹部203からなる空間が形成され、当該空間が、第2のバイパス流路となる。
図6は、蓄熱部のチューブ(第3チューブ)を形成するプレートの一例を示す平面図である。第3チューブ45(図2に図示)を形成するプレート(以降、第3プレートという。)300は、アルミニウム合金又は銅合金などの金属製であり、例えば、略方形の外形を有する。第3プレート300は、例えば、内側となる面(図4に図示した面)300aに、周壁308と、周壁308の表面よりも第3プレート300の板厚方向の外側に膨出させて形成された凹部303と、凹部303に連通する貫通孔306,307と、凹部303に連通しない貫通孔301,302,304,305と、を有する。周壁308は、少なくとも第3プレート300の周縁に設けられる。凹部303は、蓄熱部を形成する。凹部303に連通する貫通孔306,307は、凹部303によって形成される蓄熱部に蓄熱材を充填する充填口となる。凹部303に連通しない貫通孔301,302は、第1チューブ43に送られる液状熱媒体の流路を形成する。凹部303に連通しない貫通孔304,305は、第2チューブ44に送られる冷媒の流路を形成する。
第3チューブ45は、2枚の第3プレート300の内側となる面300a同士を向かい合わせにし、各第2プレート300の周壁308の頂部同士を相互に当接して、各第3プレート300同士をろう付けなどで接合することによって形成される。そうすると、2枚の第3プレート300の間に凹部303からなる空間が形成され、当該空間が、蓄熱部となる。
図2に示すように各チューブ43,44,45を積層させると、図4に示す第1プレート100の貫通孔101と、図6に示す第3プレート300の貫通孔301と、図5に示す第2プレート200の貫通孔201とが重ねられるとともに、図4に示す第1プレート100の貫通孔102と、図6に示す第3プレート300の貫通孔302と、図5に示す第2プレート200の貫通孔202とが重ねられる。これによって、液状熱媒体を積層体46の各第1チューブ43に分配して収集する液状熱媒体用タンク(不図示)が形成され、各第1チューブ43の第1のバイパス流路に液状熱媒体を流通させることができる。
図2に示すように各チューブ43,44,45を積層させると、図4に示す第1プレート100の貫通孔104と、図6に示す第3プレート300の貫通孔304と、図5に示す第2プレート200の貫通孔204とが重ねられるとともに、図4に示す第1プレート100の貫通孔105と、図6に示す第3プレート300の貫通孔305と、図5に示す第2プレート200の貫通孔205とが重ねられる。これによって、冷媒を積層体46の各第2チューブ44に分配して収集する冷媒用タンク(不図示)が形成され、各第2チューブ44の第2のバイパス流路に冷媒を流通させることができる。
図2に示すように各チューブ43,44,45を積層させると、図4に示す第1プレート100の貫通孔106と、図6に示す第3プレート300の貫通孔306と、図5に示す第2プレート200の貫通孔206とが重ねられるとともに、図4に示す第1プレート100の貫通孔107と、図6に示す第3プレート300の貫通孔307と、図5に示す第2プレート200の貫通孔207とが重ねられる。これによって、蓄熱材を積層体46の各第3チューブ44に充填する蓄熱材充填部(不図示)が形成され、各第3チューブ45の蓄熱部に蓄熱材を充填することができる。
以上、説明したように、第1チューブ43によって形成される第1のバイパス流路と、第2チューブ44によって形成される第2のバイパス流路とは隔離されており、第1ループ10を流れる液状熱媒体と第2ループ20を流れる冷媒とは混合することはない。一方で、第1のバイパス流路と第2のバイパス流路とは、それぞれ、蓄熱材との熱の交換ができる位置に設けられる。
本実施形態に係る車室内の熱管理システム1では、蓄熱装置40は、第1のバイパス流路の出口を開閉する第1の流出防止装置(不図示)を更に有することが好ましい。第1の流出防止装置は、例えば、三方弁又はストップバルブである。車両停止時において、蓄熱装置40の第1のバイパス流路内で温度が上昇した液状熱媒体が第1ループ10内の液状熱媒体と接触し、蓄熱装置40に蓄えられた熱が失われることを防止することができる。また、第1の開閉装置41が第1のバイパス流路の出口に設けられるとき、第1の開閉装置41が第1の流出防止装置を兼ねていてもよい。
本実施形態に係る車室内の熱管理システム1では、蓄熱装置40は、第2のバイパス流路の出口を開閉する第2の流出防止装置(不図示)を更に有することが好ましい。第2の流出防止装置は、例えば、三方弁又はストップバルブである。後述する蓄熱モード(第1の蓄熱モード及び第2の蓄熱モード)あるいは車両停止時において、蓄熱装置40の第2のバイパス流路内で温度が上昇し膨張した冷媒が第2ループ20内の冷媒と接触し、蓄熱装置40に蓄えられた熱が失われることを防止することができる。また、第2の開閉装置42が第2のバイパス流路の出口に設けられるとき、第2の開閉装置42が第2の流出防止装置を兼ねていてもよい。
次に、熱管理システム1による熱管理を説明する。
図7は、図1のA部分の拡大図であり、第1の暖房モードを説明するための図である。図7〜10には、それぞれ、配管71に設けられた蓄熱前の液状熱媒体の温度を検出する温度検出部71t、配管72に設けられた蓄熱後の液状熱媒体の温度を検出する温度検出部72t、配管73に設けられた熱回収前の冷媒の温度を検出する温度検出部73t、配管74に設けられた熱回収後の冷媒の温度を検出する温度検出部74t、が図示されている。温度検出部71t、72t、73t、74tは特に限定はなく、例えば熱電対が用いられることでよい。
図7〜図11では、第1の開閉装置41及び第2の開閉装置42が3つの三角形の組合せで簡略的に図示されているが、塗りつぶされていない三角形は、当該三角形の底辺がある方向への冷媒又は液状熱媒体の流路が開いていることを意味し、塗りつぶされた三角形は、当該三角形の底辺がある方向への冷媒又は液状熱媒体の流路が閉じていることを意味する。本実施形態に係る車室内の熱管理システムは、暖房運転が起動開始した時から第2のバイパス流路での吸熱量が所定値を下回るまでの間に実行される第1の暖房モードを有し、第1の暖房モードでは、図7に示すように、第1のバイパス流路を閉鎖し、かつ、第2のバイパス流路を開放することが好ましい。第1の開閉装置41では、図7に示すように、第1のバイパス流路の入口に接続される配管71への流路が閉じており、ヒーターコア12から配管81を経由して冷媒凝縮器30へ向かう流路が開いている。また、第2の開閉装置42では、第2のバイパス流路の入口に接続される配管73への流路が開いており、蒸発器23から配管82を経由して圧縮機21へ向かう流路が閉じている。これによって、第1の暖房モードでは、図7に示すように、第1ループ10の液状熱媒体は、ヒーターコア12から流出した後、蓄熱装置40を通らず、冷媒凝縮器30に流入し、かつ、第2ループ20の冷媒は、蒸発器23から流出した後、蓄熱装置40を通り、圧縮機21を経て、冷媒凝縮器30(図1に図示)に流入する。
第1の暖房モードは、暖房運転の初期段階に実行される制御の態様である。暖房運転の初期段階では、液状熱媒体の温度が暖房に必要な温度よりも低くて所望の暖房温度が得られない場合ある。本実施形態では、暖房運転の初期段階において、蓄熱装置の熱を利用することで、暖房運転の初期段階における暖房能力を向上することができる。「暖房運転が起動開始した時」は、例えば、図1に示すポンプ11が起動した時である。「第2のバイパス流路での吸熱量が所定値を下回る」とは、「熱回収後の冷媒の温度である温度検出部74tで検出された温度T4と、熱回収前の冷媒の温度である温度検出部73tで検出された温度T3との冷媒温度差が、所定値を下回る」ことをいう。「暖房運転が起動開始した時」は、第2のバイパス流路を通過する冷媒が蓄熱材から多くの熱を回収するため、冷媒の温度差は最大となる。その後、蓄熱材から回収する熱量が徐々に減少し、冷媒の温度差は徐々に縮小する。そして、冷媒の温度差が所定値(例えば、5℃)を下回ると、蓄熱材に蓄えられた熱量が僅かであるとして、第1の暖房モードを終了する。
図8は、図1のA部分の拡大図であり、第2の暖房モードを説明するための図である。本実施形態に係る車室内の熱管理システムは、暖房運転が起動開始した時から第2のバイパス流路での吸熱量が所定値を下回った後に実行される第2の暖房モードを有し、第2の暖房モードでは、図8に示すように、第1のバイパス流路を閉鎖し、かつ、第2のバイパス流路を閉鎖することが好ましい。第1の開閉装置41では、図8に示すように、第1のバイパス流路の入口に接続される配管71への流路が閉じており、ヒーターコア12から配管81を経由して冷媒凝縮器30へ向かう流路が開いている。また、第2の開閉装置42では、第2のバイパス流路の入口に接続される配管73への流路が閉じており、蒸発器23から配管82を経由して圧縮機21へ向かう流路が開いている。これによって、第1の暖房モードでは、図8に示すように、第1ループ10の液状熱媒体は、ヒーターコア12から流出した後、蓄熱装置40を通らず、冷媒凝縮器30に流入し、かつ、第2ループ20の冷媒は、蒸発器23から流出した後、蓄熱装置40を通らず、圧縮機21を経て、冷媒凝縮器30(図1に図示)に流入する。
第2の暖房モードは、暖房運転の安定段階に実行される制御の態様である。暖房運転の安定段階では、液状熱媒体の温度が暖房に必要な温度に達しており、蓄熱装置の熱を利用しなくても、所望の暖房温度を得ることができる。このとき、本実施形態では、蓄熱装置40を迂回させることで、蓄熱装置40での通路抵抗を低減することができる。その結果、第2ループにおいて、圧縮機21による吸入圧力をより小さくすることができ、圧縮機21の動力をより低下させることができる。
図9は、図1のA部分の拡大図であり、第1の蓄熱モードを説明するための図である。本実施形態に係る車室内の熱管理システムは、エンジンの停止時に実行される第1の蓄熱モードを有し、第1の蓄熱モードでは、図9に示すように、第1のバイパス流路を開放し、かつ、第2のバイパス流路を閉鎖することが好ましい。第1の蓄熱モードでは、エンジンが停止後、ポンプ11(図1に図示)は起動状態とする。第1の開閉装置41では、図9に示すように、第1のバイパス流路の入口に接続される配管71への流路が開いており、ヒーターコア12から配管81を経由して冷媒凝縮器30へ向かう流路が閉じている。また、第2の開閉装置42では、第2のバイパス流路の入口に接続される配管73への流路が閉じており、蒸発器23から配管82を経由して圧縮機21へ向かう流路が開いている。これによって、第1ループ10の液状熱媒体が、図9に示すように、ヒーターコア12から流出した後、蓄熱装置40を通り、冷媒凝縮器30に流入する。
第1の蓄熱モードは、エンジン停止時に実行される制御の態様である。第1の蓄熱モードは、エンジンが停止した時から第1のバイパス流路での蓄熱量が所定値を下回るまでの間に実行されることが好ましい。「第1のバイパス流路での蓄熱量が所定値を下回る」とは、「蓄熱前の液状熱媒体の温度である温度検出部71tで検出された温度T1と、蓄熱後の液状熱媒体の温度である温度検出部72tで検出された温度T2との液状熱媒体の温度差が、所定値を下回る」ことをいう。「エンジンが停止した時」は、第1のバイパス流路を通過する液状熱媒体から蓄熱材へ多くの熱が移動するため、液状熱媒体の温度は最大となる。その後、蓄熱材へ異動する熱量が徐々に減少し、液状熱媒体の温度差は徐々に縮小する。そして、液状熱媒体の温度差が所定値(例えば、3℃)を下回ると、蓄熱材に多くの熱が蓄えられたとして、第1の蓄熱モードを終了する。
図10は、図1のA部分の拡大図であり、第2の蓄熱モードを説明するための図である。本実施形態に係る車室内の熱管理システムは、エンジンが作動している時に実行される第2の蓄熱モードを有し、第2の蓄熱モードでは、図10に示すように、第1のバイパス流路を開放し、かつ、第2のバイパス流路を閉鎖することが好ましい。第1の開閉装置41では、図10に示すように、第1のバイパス流路の入口に接続される配管71への流路が開いており、ヒーターコア12から配管81を経由して冷媒凝縮器30へ向かう流路が閉じている。また、第2の開閉装置42では、第2のバイパス流路の入口に接続される配管73への流路が閉じており、蒸発器23から配管82を経由して圧縮機21へ向かう流路が開いている。これによって、第2の蓄熱モードでは、図10に示すように、第1ループ10の液状熱媒体は、ヒーターコア12から流出した後、蓄熱装置40を通り、冷媒凝縮器30に流入し、かつ、第2ループ20の冷媒は、蒸発器23から流出した後、蓄熱装置40を通らず、圧縮機21を経て、冷媒凝縮器30に流入する。
第2の蓄熱モードは、エンジン作動中に実行される制御の態様である。第2の蓄熱モードは、液状熱媒体の温度が暖房に必要な温度に達した暖房運転の安定段階に実行されることが好ましい。第2の蓄熱モードでは、エンジン作動中に蓄熱装置に液状熱媒体の熱を蓄熱しておくことで、より多くの熱を蓄熱装置に蓄えることができる。
本実施形態に係る車室内の熱管理システムでは、エンジンの作動が停止した後、第1のバイパス流路を閉鎖し、かつ、第2のバイパス流路を閉鎖する第2の暖房モードを実行することが好ましい。エンジンの作動が停止した後、蓄熱装置を第1ループおよび第2ループから隔離することで、蓄熱装置の第1のバイパス流路内で温度が上昇した液状熱媒体が第1ループ内の液状熱媒体と接触すること、および、蓄熱装置の第2のバイパス流路内で温度が上昇し膨張した冷媒が第2ループ内の冷媒と接触し、蓄熱装置に蓄えられた熱が失われることを防止することができる。
図11は、本実施形態に係る車室内の熱管理システムの変形例を示すシステム図である。図11に示す変形例の熱管理システム2は、短流路26を有する以外は、基本的な構成及びその作用効果を図1に示す熱管理システム1と同じくする。図11に示すように、本実施形態に係る車室内の熱管理システム2では、膨張装置24,25が、圧縮機21の吐出側と室外熱交換器22との間に配置される第1の膨張装置24と、室外熱交換器22と蒸発器23との間に配置される第2の膨張装置25とを含み、第2ループ20が、冷媒凝縮器30及び第1の膨張装置24を迂回して、圧縮機21から吐出された冷媒を室外熱交換器22に流す短流路26を有することが好ましい。冷房運転時に、圧縮機21から吐出された冷媒を短流路26に流して冷媒凝縮器30を迂回させることで、冷媒凝縮器30での通路抵抗を低減することができる。その結果、圧縮機21による吸入圧力をより小さくすることができ、圧縮機21の動力をより低下させることができる。また、冷房運転時に圧縮機21から吐出された冷媒を短流路26に流すとき、第2の膨張装置25で、室外熱交換器22から流出された高圧の液体状の冷媒を低圧の霧状(気体と液体との混合状)の冷媒とする。一方、暖房運転時には、図1の熱管理システム1と同様に、圧縮機21から吐出された冷媒を冷媒凝縮器30に流す。このとき、第1の膨張装置24では、圧縮機21から吐出された高圧の気体状の冷媒を低圧の霧状の冷媒とし、第2の膨張装置25では、室外熱交換器22から流出された低圧の気体状の冷媒に対して減圧・膨張をせずに流すことが好ましい。
図12は、第1の暖房モード時のモリエル線図である。図12に示すモリエル線図と図1に示す各構成部品との関係を説明すると、点Aから点B間は圧縮機21での冷媒の状態変化、点Bから点C間は冷媒凝縮器30での冷媒の状態変化、点Cから点D間は膨張装置24での冷媒の状態変化、点Dから点A間は、室外熱交換器22、蒸発器23及び蓄熱装置40での冷媒の状態変化を、それぞれ示す。第1の暖房モードでは、図7に示すように、冷媒が蓄熱装置40を通ることで、冷媒のエンタルピは、室外熱交換器22での吸熱によるエンタルピの増加h1及び蒸発器23での吸熱によるエンタルピの増加h2に、蓄熱装置40での吸熱によるエンタルピの増加h3は加えられた量となる。このため、点Aにおけるエンタルピ、すなわち、圧縮機21に吸入される冷媒のエンタルピをより高めることができる。さらに、圧縮機21において、冷媒の圧縮によるエネルギー増加によるエンタルピの増加h4によって、点Bにおけるエンタルピ、すなわち、冷媒凝縮器30に流入される冷媒のエンタルピが更に高められる。その結果、冷媒凝縮器30を流れる冷媒の温度が高くなり、冷媒凝縮器30での冷媒と液状熱媒体との熱交換によって液状熱媒体の温度をより高くすることができ、暖房運転の初期段階において、暖房能力を向上することができる。
図13は、蓄熱装置での蓄熱の効果を説明するための図である。蓄熱装置がない場合、図13の線901のように、前回の暖房運転の停止時T1から時間が経つにつれて第1ループ10の液状熱媒体の熱が放熱されて液状熱媒体の温度が低くなり、外気温度W1に近づく。そして、次回の暖房運転の開始時T2にポンプ11及び圧縮機21が起動しても、図13の線901のように、液状熱媒体の温度が暖房に必要な温度W3に達するには時間がかかり、暖房運転の初期段階における暖房能力が不足する問題があった。
一方、本実施形態に係る熱管理システムでは、蓄熱装置40(図9に図示)を設け、第1の蓄熱モードを実行することで、前回の暖房運転の停止時T1の直後に、図13の線902のように、液状熱媒体の熱が蓄熱装置40の蓄熱部に蓄えられて、液状熱媒体の温度は温度W2まで急激に下げられる。その後、暖房運転が停止して時間が経つにつれて、第1ループ10の液状熱媒体の熱は放熱されて液状熱媒体の温度が低くなり、外気温度W1に近づく。しかし、次回の暖房運転の開始時T2にポンプ11及び圧縮機21が起動し、第1の暖房モードが実行されると、図7に示すように、第2ループ20の冷媒が蓄熱装置40を通る時に蓄熱部に蓄熱された熱を吸熱する。それによって、圧縮機21に吸入される冷媒の温度がより高くなり、更には冷媒凝縮器30(図1に図示)に流れる冷媒の温度がより高くなる。その結果、冷媒凝縮器30における冷媒と液状熱媒体との熱交換によって、図13の線902のように、次回の暖房起動時に、液状熱媒体の温度を暖房に必要な温度W3まで急速に高めることができる。このように、本実施形態に係る熱管理システムは、前回の暖房運転時に蓄熱装置に蓄熱されていた第1ループの液状熱媒体の熱を、次回の暖房起動時に冷媒凝縮器において第1ループの液状熱媒体に確実に戻すことができる。
次に、図14〜図16に、本実施形態に係る熱管理システムを、バッテリが搭載された車両に適用した例を示す。図14は、空調冷房運転及びバッテリ冷却運転の一例を示すシステム図である。図15は、空調暖房運転及びバッテリ加熱運転の一例を示すシステム図である。図16は、暖房起動運転及びバッテリ加熱運転の一例を示すシステム図である。図14〜図16では、各開閉装置が2つ又は3つの三角形の組合せで簡略的に図示されているが、塗りつぶされていない三角形は、当該三角形の底辺がある方向への冷媒又は液状熱媒体の流路が開いていることを意味し、塗りつぶされた三角形は、当該三角形の底辺がある方向への冷媒又は液状熱媒体の流路が閉じていることを意味する。また、実線は、冷媒又は液状熱媒体が流通していることを示し、点線は、冷媒又は液状熱媒体が流通していないことを示す。図14〜図16において、H/Cはヒーターコア12(図1に図示)、Compは圧縮機21(図1に図示)、Evapは蒸発器23(図1に図示)、WCDSは冷媒凝縮器30(図1に図示)蓄熱手段は蓄熱装置40(図1に図示)、Exp.Vは膨張装置、WPはウォーターポンプ、Water Heaterは補助ヒータ、Batteryは車両のエンジン始動又は電装品への電力供給などを行うバッテリ、Heat Exchangerはバッテリを冷却又は加熱する熱交換器、Chillerはバッテリの冷却水と冷凍サイクルの冷媒との間で熱交換を行う装置である。図14、図15に示すように、本実施形態に係る熱管理システムが適用された車両では、暖房及び冷房を含む空調運転に加えて、バッテリの冷却及び加熱を行うことができる。また、図16に示すように、本実施形態に係る熱管理システムが適用された車両では、暖房起動直後に、バッテリを加熱するとともに、暖房能力を向上することができる。なお、図16では、冷媒が室外熱交換器を流出したのちエバポレータを経由しないで蓄熱手段に流入する形態を示したがこれに限らず、冷媒が室外熱交換器を流出したのちエバポレータを経由して蓄熱手段に流入する形態(図示せず)であってもよい。蓄熱手段に流入する冷媒が室外熱交換器を流出したのちエバポレータを経由するか否かは、車室内の湿度又は温度に応じて適宜選択される。