以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態について説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る歩行車1の斜視図である。図2は歩行車1の平面図であり、図3は図2のIII−III線断面図である。以下の説明では、前、後、左、右、上、下とは、歩行車1を利用して歩行する利用者(図示せず)から見た前、後、左、右、上、下をそれぞれ意味するものとする。図中の符号F、Rr、L、R、U、Dがそれぞれ前、後、左、右、上、下を表すものとする。
図1に示すように、歩行車1は、左右の前輪2および左右の後輪4と、これら前輪2および後輪4を支持するベースフレーム6と、ベースフレーム6に取り付けられた左右の縦フレーム8と、縦フレーム8に支持されたハンドル10と、左右のグリップ12(図3参照)とを備えている。また、歩行車1は、後輪4を制動するブレーキ機構3を備えている。歩行車1は、後輪4を制動するブレーキ5と、ブレーキ5に連結されたブレーキワイヤ7と、ブレーキワイヤ7を操作するブレーキバー14と、ブレーキワイヤ7を操作する左右のブレーキレバー16と、を備えている。
図1および図3に示すように、歩行車1は、ブレーキワイヤ7がブレーキレバー16から下方に延びる形態を備えている。また、後述するように、歩行車1は、ハンドル10の高さ調整が可能に構成されている。
ベースフレーム6は、左右の後フレーム18と左右の前フレーム20とを有している。後フレーム18の下部は後方に向けて湾曲している。後輪4は、それぞれ左右の後フレーム18の下端部に回転可能に支持されている。後フレーム18の上端部にはブラケット22が固定されている。ブラケット22には、前フレーム20の上端部が回転可能に支持されている。前フレーム20はブラケット22から前斜め下向きに延びてから、下向きに延びている。前輪2は、前フレーム20の下端部に回転可能に支持されている。左の前フレーム20と右の前フレーム20とには、左右に延びる横バー21が接続されている。左の後フレーム18と右の後フレーム18とには、左右に延びる横バー25が接続されている。
図3に示すように、左右のブラケット22には、横バー27が架け渡されている。後フレーム18にはブラケット29Aが接続されている。左右のブラケット29Aには、横バー29が架け渡されている。これら横バー27および29には、収容かご32が支持されている。収容かご32は後フレーム18よりも前方に配置されている。収容かご32の上には、トレイ34が支持されている。
前フレーム20と後フレーム18とは、リンク機構24によって連結されている。リンク機構24は、バー24Aと、バー24Bと、バー24Aとバー24Bとを回転可能に連結する軸24Cとを有している。歩行車1は、利用しないときには折り畳むことができる。折り畳み時には、前フレーム20がその上端部を中心として後方に回転すると共に、軸24Cが上方に移動するようにリンク機構24が折り畳まれる。その結果、前輪2が後輪4に接近し、歩行車1の前後の寸法が小さくなる。
図1に示すように、左右のリンク機構24には、横バー31が架け渡されている。横バー31は左右のリンク機構24に接続されている。ここでは、横バー31は左右のバー24Aに架け渡されている。ただし、横バー31は左右のバー24Bに架け渡されていてもよい。
本実施形態では、歩行車1は左右対称の構造を有している。そこで、以下の説明では、主に歩行車1の右側の構造を説明し、左側の構造の説明は省略することとする。
図3に示すように、縦フレーム8はベースフレーム6から上方に延びている。縦フレーム8の形状は特に限定されないが、本実施形態では、真っ直ぐに延びる中空のパイプ状に形成されている。後フレーム18は中空のパイプ状に形成されており、「中空フレーム」の一例である。縦フレーム8は後フレーム18にスライド可能に挿入されている。縦フレーム8は、ねじ9(図1参照)によりブラケット22に固定されている。縦フレーム8には、上下に並ぶ複数のねじ孔8aが形成されている。これら複数のねじ孔8aからねじ9を嵌めるねじ孔8aを選択することにより、縦フレーム8の後フレーム18からの突出長さを調整することができる。これにより、ハンドル10およびグリップ12等の高さを調整することができる。すなわち、下側のねじ孔8aを選択すると、縦フレーム8の突出長さが長くなり、ハンドル10等の位置は高くなる。逆に、上側のねじ孔8aを選択すると、縦フレーム8の突出長さが短くなり、ハンドル10等の位置は低くなる。
図4は、最も上側のねじ孔8aにねじ9を嵌めたときの歩行車1の斜視図である。すなわち、ハンドル10の高さが最も低いときの歩行車1の斜視図である。図5は、ハンドル10の高さが最も低いときの図3相当図である。
ハンドル10は、左右の縦フレーム8に支持されている。図2に示すように、ハンドル10は平面視において後方に開いたU字状に形成されている。図3に示すように、ハンドル10は、縦フレーム8の上方に位置する左右の水平部10aと、水平部10aの前方において、前斜め上向きに傾斜した左右の傾斜部10bと、左右の傾斜部10bに架け渡された把持部10cとを含んでいる。
図1に示すように、左右の縦フレーム8の上には、肘置き23が設けられている。肘置き23はハンドル10の後方に配置されている。利用者は、肘置き23の上に肘を置きながらハンドル10を握ることができる。
グリップ12は、ハンドル10の左右の後端部に設けられている。図3に示すように、グリップ12は、ハンドル10の水平部10aよりも後方に配置されている。また、グリップ12は、縦フレーム8よりも後方に配置されている。本実施形態では、グリップ12は水平に配置されている。ただし、グリップ12は水平方向から傾いていてもよい。
ブレーキバー14は、ハンドル10の下方に配置されている。ブレーキバー14は、バー把持部13と、バー把持部13よりも後方にて後方に延びるバー連結体15とを有している。バー把持部13とバー連結体15とは一体物であってもよいが、本実施形態では別体である。バー把持部13はバー連結体15に組み立てられている。
バー把持部13は利用者によって掴まれる部分である。図1に示すように、バー把持部13はハンドル10と同様の形状を有している。すなわち、バー把持部13は、平面視において後方に開いたU字状に形成されている。また、バー把持部13は、側面視において、前斜め上向きに傾斜している。バー把持部13の前端は、ハンドル10の前端よりも前方に位置している。バー把持部13の一部は、ハンドル10の前方および下方に配置されている。
図6(a)は右側のバー連結体15の平面図であり、図6(b)は右側のバー連結体15の側面図である。バー連結体15は板状に形成されており、バー内側面15Aと、バー内側面15Aと反対側に位置するバー外側面15Bとを有している。図6(a)に示すように、バー連結体15は、バー内側面15Aから突出する突出部15rを有している。図6(b)に示すように本実施形態では、突出部15rは上下方向に延びるリブによって形成されている。しかし、突出部15rの形状は何ら限定されない。突出部15rは、例えば半球状に形成されていてもよい。突出部15rの数も限定されず、1つでもよく、2つ以上であってもよい。
図6(b)に示すように、バー連結体15には孔15aが形成されている。また、バー連結体15における孔15aよりも後方には、第1の溝15dが形成されている。後述するように、バー連結体15は所定の支点部を支点として回転可能である。バー連結体15における孔15aよりも前方には凹部が形成され、この凹部はバー前方支点部15cとなっている。バー連結体15における第1の溝15dの上方の部分は、バー後方支点部15bとなっている。第1の溝15dは、バー後方支点部15bから下方に延び、円弧状に形成されている。第1の溝15dの中途部には段部15eが形成されている。
図3に示すように、ブレーキレバー16はグリップ12よりも下方に配置されている。図7(a)は右側のブレーキレバー16の平面図であり、図7(b)は右側のブレーキレバー16の側面図である。ブレーキレバー16は、レバー把持部17と、レバー把持部17の前方に位置するレバー連結体19とを有している。図7(a)に示すように、ブレーキレバー16は屈曲した板状に形成されている。本実施形態では、レバー把持部17は周囲が閉じた孔を有している。しかし、レバー把持部17は利用者が把持できるものであればよく、その具体的形状は何ら限定されない。例えば、レバー把持部17は棒状に形成されていてもよい。
図7(a)に示すように、レバー連結体19は、レバー内側面19Aと、レバー内側面19Aと反対側に位置するレバー外側面19Bとを有している。レバー連結体19には、レバー内側面19Aから突出する突出部19rを有している。図7(b)に示すように本実施形態では、突出部19rは上下方向に延びるリブによって形成されている。しかし、突出部19rの形状は何ら限定されない。突出部19rは、例えば半球状に形成されていてもよい。突出部19rの数も限定されず、1でもよく、2つ以上であってもよい。
図7(b)に示すように、レバー連結体19には孔19aが形成されている。また、レバー連結体19における孔19aよりも前方には、第2の溝19dが形成されている。後述するように、レバー連結体19は所定の支点部を支点として回転可能である。レバー連結体19における孔19aよりも後方には凹部が形成され、この凹部はレバー後方支点部19cとなっている。レバー連結体19における第2の溝19dの上方の部分は、レバー前方支点部19bとなっている。第2の溝19dは、レバー前方支点部19bから下方に延び、円弧状に形成されている。第2の溝19dの中途部には、段部19eが形成されている。
図3に示すように、縦フレーム8の上端部にはケース26が配置されている。ケース26の内部には、バー連結体15の少なくとも一部およびレバー連結体19の少なくとも一部が収容されている。バー連結体15およびレバー連結体19は、ケース26に支持されている。バー連結体15およびレバー連結体19は、ケース26の内部において互いに連結されている。また、バー連結体15およびレバー連結体19は、ケース26の内部においてブレーキワイヤ7に連結されている。
図3に示すように、側方から見て、ブレーキワイヤ7のうちベースフレーム6よりも上方の部分は、縦フレーム8と重なっている。また、ブレーキワイヤ7のうちベースフレーム6よりも上方の部分は、縦フレーム8よりも車両中央側に配置されている。すなわち、左側のブレーキワイヤ7のうちベースフレーム6よりも上方の部分は、左側の縦フレーム8よりも右側に配置されている。右側のブレーキワイヤ7のうちベースフレーム6よりも上方の部分は、右側の縦フレーム8よりも左側に配置されている。
図8、図9、図10は、それぞれ右側のブレーキレバー16、ブレーキバー14の右側のバー連結体15、および右側のケース26の平面図、背面図(図8のIX方向から見た図)、右側面図(図8のX方向から見た図)である。図11は図10のXI−XI線断面図であり、図12は図10のXII−XII線断面図である。ケース26は、第1ケース部品26Aと第2ケース部品26Bとがねじ26C(図10参照)により固定されることによって組み立てられている。
図11に示すように、バー連結体15およびレバー連結体19は、バー内側面15Aとレバー内側面19Aとが対向するように配置されている。図12に示すように、バー連結体15の突出部15rは、レバー内側面19Aに接触している。レバー連結体19の突出部19rは、バー内側面15Aに接触している。
第1ケース部品26Aは、バー外側面15Bに対向するバー対向壁26Vと、バー対向壁26Vから突出する突起26aとを備えている。バー対向壁26Vはバー外側面15Bから離間している。バー対向壁26Vとバー外側面15Bとの間には隙間が設けられている。突起26aはバー外側面15Bと接触している。第2ケース部品26Bは、レバー外側面19Bに対向するレバー対向壁26Wと、レバー対向壁26Wから突出する突起26bとを備えている。レバー対向壁26Wはレバー外側面19Bから離間している。レバー対向壁26Wとレバー外側面19Bとの間には隙間が設けられている。突起26bはレバー外側面19Bと接触している。
図13(a)に示すように、ブレーキワイヤ7は、アウタワイヤ7bと、アウタワイヤ7bの内部に配置されたインナワイヤ7aとを有している。インナワイヤ7aの一端部には、慣用的にタイコと呼ばれる円柱部材7cが設けられている。図13(b)に示すように、円柱部材7cにはスリーブ30が取り付けられる。円柱部材7cはスリーブ30の内部に配置される。スリーブ30には、軸線方向に延びるスリット30sが形成されている。インナワイヤ7aは、円柱部材7cからスリット30sを通じて下方に延びている。図11に示すように、ブレーキワイヤ7はケース26から下方に延びている。図3に示すように、ブレーキワイヤ7は、円柱部材7cから下向きに延びる下方延伸部7eを有している。下方延伸部7eはケース26から真っ直ぐ下方に延びている。ブレーキワイヤ7の他端部7dは、ブレーキ5に接続されている。以下、ブレーキワイヤ7の他端部7dのことを「ブレーキ接続端部」と称する。
図11に示すように、スリーブ30は、バー連結体15の孔15aとレバー連結体19の孔19aとに嵌め込まれている。バー連結体15およびレバー連結体19は、スリーブ30に回転可能に支持されている。本実施形態では、バー連結体15とレバー連結体19とはスリーブ30によって連結されている。スリーブ30は、バー連結体15とレバー連結体19とを連結する連結軸を構成している。バー連結体15とブレーキワイヤ7とは、スリーブ30を介して連結されている。同様に、レバー連結体19とブレーキワイヤ7とは、スリーブ30を介して連結されている。ただし、スリーブ30は必ずしも必要ではなく、省略することが可能である。その場合、バー連結体15とレバー連結体19とは円柱部材7cによって連結され、円柱部材7cが連結軸を構成する。
図11に示すように、バー連結体15の孔15aには、バー摺動部材15Dが嵌め込まれている。バー摺動部材15Dは、スリーブ30とバー対向壁26Vとの間に配置されている。バー摺動部材15Dはバー外側面15Bから突出しており、バー対向壁26Vと接触している。バー摺動部材15Dは、孔15aに挿入された小径部と、この小径部よりも直径が大きい大径部とを有している。ここでは、大径部の先端面がバー対向壁26Vと接触している。ただし、バー摺動部材15Dの上記形状は一例に過ぎず、何ら限定されるものではない。
レバー連結体19の孔19aには、レバー摺動部材19Dが嵌め込まれている。レバー摺動部材19Dは、スリーブ30とレバー対向壁26Wとの間に配置されている。レバー摺動部材19Dはレバー外側面19Bから突出しており、レバー対向壁26Wと接触している。レバー摺動部材19Dは、孔19aに挿入された小径部と、この小径部よりも直径が大きい大径部とを有している。ここでは、大径部の先端面がレバー対向壁26Wと接触している。ただし、レバー摺動部材19Dの上記形状も一例に過ぎず、何ら限定されるものではない。
図14(a)は、図9のXIV−XIV線断面図である。バー連結体15のバー前方支点部15cはスリーブ30よりも前方に位置し、バー後方支点部15bはスリーブ30よりも後方に位置している。第1ケース部品26Aには、バー後方支点部15bを支持する支持軸26Dと、バー前方支点部15cを支持する支持軸26Eとを有している。支持軸26Dは第1の溝15dに挿入されている。
図15(a)は、図9のXV−XV線断面図である。レバー連結体19のレバー前方支点部19bはスリーブ30よりも前方に位置し、レバー後方支点部19cはスリーブ30よりも後方に位置している。第2ケース部品26Bには、レバー前方支点部19bを支持する支持軸26Fと、レバー後方支点部19cを支持する支持軸26Gとを有している。支持軸26Fは第2の溝19dに挿入されている。
図3に示すように、ベースフレーム6の後フレーム18には、半管状のワイヤ係止部材35が固定されている。なお、ワイヤ係止部材35の輪郭形状は特に限定されず、半円状であってもよく、半楕円状であってもよい。また、ワイヤ係止部材35は、断面コ字状に形成されていてもよい。ワイヤ係止部材35は半リング状に形成されていてもよい。ここでは、ワイヤ係止部材35は、後フレーム18の車幅方向の中央側の側面に設けられている。詳しくは、左側の後フレーム18の右側面に、左側のワイヤ係止部材35が設けられている。右側の後フレーム18の左側面に、右側のワイヤ係止部材35が設けられている。ワイヤ係止部材35には上下に開いた孔が形成されており、その孔にブレーキワイヤ7の下方延伸部7eが挿通されている。ワイヤ係止部材35は、ブレーキワイヤ7の下方延伸部7eの一部を後フレーム18にスライド可能に係止している。
図1に示すように、横バー31には、半リング状のワイヤ係止部材33が設けられている。ここでは、左右に並んだ2つのワイヤ係止部材33が設けられている。ただし、ワイヤ係止部材33の個数は何ら限定されない。ワイヤ係止部材33には左右に開いた孔が形成されている。ブレーキワイヤ7のうち下方延伸部7eとブレーキ接続端部7dとの間の一部は、ワイヤ係止部材33の孔に挿通されている。ワイヤ係止部材33は、ブレーキワイヤ7の上記一部を横バー31にスライド可能に係止している。図3に示すように、ワイヤ係止部材33は、ブレーキワイヤ7の上記一部の上方に位置する部分と、上記一部の前方に位置する部分と、上記一部の下方に位置する部分とを有している。ブレーキワイヤ7の上記一部の上方、前方、下方に位置する部分は、ハンドル10の高さを変えたときにブレーキワイヤ7の上記一部が接触することにより、ブレーキワイヤ7が上方、前方、下方に飛び出さないように規制する役割を果たす。ブレーキワイヤ7の上記一部の上方、前方、下方に位置する部分は、それぞれワイヤ係止部材33の上方規制部、前方規制部、下方規制部を構成している。なお、ここではワイヤ係止部材33は半リング状に形成されているが、ワイヤ係止部材33の形状は特に限定されず、例えば半管状であってもよい。ワイヤ係止部材33は、フック状に形成されていてもよい。ワイヤ係止部材33は、上方規制部および前方規制部を備えるが、下方規制部を備えていなくてもよい。
ブレーキワイヤ7は、ワイヤ係止部材33および35に係止されることにより、以下のように配置される。図16は、ハンドル10の高さが最も低いときの歩行車1の正面図である。図17は、ハンドル10の高さが最も高いときの歩行車1の正面図である。図16に示すように、ハンドル10の高さが最も低くなるように縦フレーム8がベースフレーム6に固定されたときに、ブレーキワイヤ7は正面から見て少なくとも一回りするように配置されている。
詳しくは、右側のブレーキワイヤ7は、右側のケース26から下方に延び、右側のワイヤ係止部材35を通った後、更に下方に延びている。右側のブレーキワイヤ7は、ワイヤ係止部材35から下方に行くほど左方に向かうように湾曲した第1湾曲部71Rと、第1湾曲部71Rから左方に向かうと共に上方に向かうように湾曲した第2湾曲部72Rと、第2湾曲部72Rから右方に向かうと共に上方に向かうように湾曲した第3湾曲部73Rと、右方に向かうと共に下方に向かうように湾曲した第4湾曲部74Rとを有している。第3湾曲部73Rと第4湾曲部74Rとの間の部分はワイヤ係止部材33を挿通しており、ワイヤ係止部材33によって係止されている。
左側のブレーキワイヤ7は、右側のブレーキワイヤ7と左右対称に配置されている。すなわち、左側のブレーキワイヤ7は、左側のケース26から下方に延び、左側のワイヤ係止部材35を通った後、更に下方に延びている。左側のブレーキワイヤ7は、ワイヤ係止部材35から下方に行くほど右方に向かうように湾曲した第1湾曲部71Lと、第1湾曲部71Lから右方に向かうと共に上方に向かうように湾曲した第2湾曲部72Lと、第2湾曲部72Lから左方に向かうと共に上方に向かうように湾曲した第3湾曲部73Lと、左方に向かうと共に下方に向かうように湾曲した第4湾曲部74Lとを有している。第3湾曲部73Lと第4湾曲部74Lとの間の部分はワイヤ係止部材33を挿通しており、ワイヤ係止部材33によって係止されている。
このようにブレーキワイヤ7がワイヤ係止部材33および35に係止されることにより、ハンドル10の高さが最も低いときであっても、ブレーキワイヤ7はベースフレーム6から左右に飛び出すことがない。また、図5に示すように、ブレーキワイヤ7はベースフレーム6から前後に飛び出すこともない。ブレーキワイヤ7は、ベースフレーム6の内側において良好に収納される。よって、ブレーキワイヤ7は邪魔になりにくい。
図17に示すように、ハンドル10の高さを最も高くしたときには、右側のブレーキワイヤ7は、右側のワイヤ係止部材35から左斜め下方に延びる部分75Rと、左方から右方に向けてワイヤ係止部材33の孔を通る部分76Rと、右斜め下方に延びる部分77Rとを有する。左側のブレーキワイヤ7は、左側のワイヤ係止部材35から右斜め下方に延びる部分75Lと、右方から左方に向けてワイヤ係止部材33の孔を通る部分76Lと、左斜め下方に延びる部分77Lとを有する。勿論、この場合にもブレーキワイヤ7はベースフレーム6から左右に飛び出すことがない。また、図3に示すように、ブレーキワイヤ7はベースフレーム6から前後に飛び出すこともない。よって、ブレーキワイヤ7が邪魔になることはない。また、ブレーキワイヤ7は十分な長さを有しているので、ハンドル10の高さを十分高くすることができる。
次に、歩行車1におけるブレーキ動作について説明する。歩行車1では、ブレーキワイヤ7は円柱部材7cから下向きに延びている。ブレーキバー14またはブレーキレバー16を操作することによって円柱部材7cが上方に移動すると、インナワイヤ7aが引っ張られ、ブレーキ5が作動する。
図3に示すように、ブレーキバー14はハンドル10の下方に配置されている。利用者がハンドル10と共にブレーキバー14のバー把持部13を握ると、図14(c)に示すように、バー把持部13は上方に移動する。すると、バー連結体15はバー後方支点部15bを支点として回転する。これにより、円柱部材7cは上方に移動し、インナワイヤ7aが引っ張られる。その結果、ブレーキ5が作動し、後輪4は制動される。利用者がバー把持部13を離すと、バー連結体15はインナワイヤ7aにより下方に引っ張られる。その結果、円柱部材7cは下方に移動し、ブレーキ5は解除される。
利用者がグリップ12と共にブレーキレバー16を握ると、図15(c)に示すように、ブレーキレバー16のレバー把持部17は上方に移動する。すると、レバー連結体19はレバー前方支点部19bを支点として回転する。これにより、円柱部材7cは上方に移動し、インナワイヤ7aが引っ張られる。その結果、ブレーキ5が作動し、後輪4は制動される。利用者がブレーキレバー16を離すと、レバー連結体19はインナワイヤ7aにより下方に引っ張られる。その結果、円柱部材7cは下方に移動し、ブレーキ5は解除される。
歩行車1では、歩行時だけでなく駐車時にもブレーキをかけることができる。図14(b)に示すように、利用者がブレーキバー14のバー把持部13を下げると、バー連結体15はバー前方支点部15cを支点として回転する。この場合にも、円柱部材7cは上方に移動し、インナワイヤ7aが引っ張られる。その結果、ブレーキ5が作動する。バー連結体15がバー前方支点部15cを支点として回転すると、バー連結体15の後方部分は上方に移動する。その結果、支持軸26Dは相対的に第1の溝15d内を移動することになる。第1の溝15dには段部15eが形成されており、支持軸26Dがいったん段部15eを乗り越えると、バー把持部13に上向きの力を加えない限り、支持軸26Dは段部15eを逆向きに乗り越えることができない。そのため、バー連結体15はバー前方支点部15cを支点として回転した状態を保持し、利用者がブレーキバー14を離したとしても、ブレーキ5は作動したままの状態にロックされる。よって、駐車時にブレーキをかけることができる。
また、図15(b)に示すように、利用者がレバー把持部17を下げると、レバー連結体19はレバー後方支点部19cを支点として回転する。これにより、円柱部材7cは上方に移動し、インナワイヤ7aが引っ張られる。その結果、ブレーキ5が作動する。レバー連結体19がレバー後方支点部19cを支点として回転すると、レバー連結体19の前方部分は上方に移動する。その結果、支持軸26Fは相対的に第2の溝19d内を移動することになる。第2の溝19dには段部19eが形成されており、支持軸26Fがいったん段部19eを乗り越えると、レバー把持部17に上向きの力を加えない限り、支持軸26Fは段部19eを逆向きに乗り越えることができない。そのため、レバー連結体19はレバー後方支点部19cを支点として回転した状態を保持し、利用者がブレーキレバー16を離したとしても、ブレーキ5は作動したままの状態にロックされる。よって、この場合にも、駐車時にブレーキをかけることができる。
なお、バー連結体15とレバー連結体19とは連結されているので、バー連結体15およびレバー連結体19のいずれか一方が回転すると、他方も回転または移動することになる。
以上のように、本実施形態に係る歩行車1によれば、縦フレーム8のベースフレーム6に対する固定位置を調整することにより、ハンドル10の高さを調整することができる。ところで、ハンドル10の高さ調整を可能とするためには、ブレーキワイヤ7の長さに余裕を持たせておく必要がある。本実施形態では、ブレーキワイヤ7は、ブレーキバー14およびブレーキレバー16に接続された一端部(円柱部材7c)から下方に延びる下方延伸部7eを有しているが、ブレーキ5に接続された他端部7dと下方延伸部7eとの間の一部は、ワイヤ係止部材33によりベースフレーム6の横バー31に係止されている。ここで、横バー31は縦フレーム8よりも前方に配置されている。そのため、ハンドル10の高さを変えてもブレーキワイヤ7が後方に飛び出すことがなく(図5参照)、ブレーキワイヤ7は利用者の邪魔になりにくい。本実施形態に係る歩行車1によれば、ハンドル10の高さ調整を行った際に、ブレーキワイヤ7が不用意に撓んで歩行の妨げになることを防止することができる。
本実施形態では、ワイヤ係止部材33は少なくとも、ブレーキワイヤ7の上方に位置する上方規制部と、ブレーキワイヤ7の前方に位置する前方規制部とを有している。ハンドル10の高さを変えたときに、ワイヤ係止部材33の上方規制部により、ブレーキワイヤ7の一部が上方に飛び出すことを規制することができる。また、ワイヤ係止部材33の前方規制部により、ブレーキワイヤ7の一部が前方に飛び出すことを規制することができる。そのため、ハンドル10の高さを変えたときにブレーキワイヤ7が利用者の邪魔になりにくい。
ワイヤ係止部材33の構成は特に限定されないが、本実施形態ではワイヤ係止部材33は、横バー31に固定されかつ孔が形成された部材である。そのため、ワイヤ係止部材33の孔にブレーキワイヤ7を通すことにより、ブレーキワイヤ7を横バー31に容易に係止することができる。
また、歩行車1によれば、ブレーキワイヤ7の下方延伸部7eをベースフレーム6の後フレーム18に係止するワイヤ係止部材35を備えている。このワイヤ係止部材35により、ブレーキワイヤ7の下方延伸部7eが側方に飛び出すことが防止される。よって、ハンドル10の高さを変えても、ブレーキワイヤ7は利用者の邪魔になりにくい(図16参照)。
ワイヤ係止部材35の構成も特に限定されないが、本実施形態ではワイヤ係止部材35は、後フレーム18に固定されかつ孔が形成された部材である。そのため、ワイヤ係止部材35の孔にブレーキワイヤ7の下方延伸部7eを通すことにより、ブレーキワイヤ7の下方延伸部7eを後フレーム18に容易に係止することができる。
本実施形態に係る歩行車1によれば、ブレーキワイヤ7は、ハンドル10の高さが最も低いときに、正面から見て少なくとも一回りするように配置されている(図16参照)。そのため、ブレーキワイヤ7の長さに十分な余裕を持たせることができる。よって、ハンドル10を十分高い位置に配置することができ(図17参照)、ハンドル10の高さの調整幅を大きくすることができる。また、ハンドル10の高さが最も低いときであっても、ブレーキワイヤ7が外側に飛び出ることを防止することができる(図16参照)。
また、歩行車1によれば、側方から見て、ブレーキワイヤ7の下方延伸部7eは縦フレーム8と重なっている(図3および図5参照)。ブレーキワイヤ7の下方延伸部7eが縦フレーム8の前方または後方に飛び出すことがない。よって、ブレーキワイヤ7が邪魔になりにくい。
また、歩行車1によれば、ブレーキワイヤ7の下方延伸部7eは、縦フレーム8よりも車幅方向の中央側に配置されている(図16および図17参照)。ブレーキワイヤ7が車幅方向の外側に飛び出ることがない。よって、ブレーキワイヤ7が邪魔になりにくい。
また、歩行車1によれば、ワイヤ係止部材33は、前輪2の後方かつ後輪4の前方に配置されている(図5参照)。ワイヤ係止部材33により、ブレーキワイヤ7の一部を前輪2と後輪4との間において係止することができる。ブレーキワイヤ7を好適な位置で係止することができ、ブレーキワイヤ7が邪魔になることを防止することができる。
以上、本発明に係る歩行車の実施の一形態について説明したが、本発明が前記実施形態に限定されないことは勿論であり、本発明は他にも種々の形態にて実施することができる。次に、他の実施形態の例について簡単に説明する。
前記実施形態に係る歩行車1は、左右方向の中央を境として左右対称の形状を有していたが、それに限定されない。歩行車1は、左右非対称の形状を有していてもよい。
前記実施形態に係るブレーキ機構3は、ブレーキワイヤ7がブレーキレバー16から下方に延びるブレーキ機構の一例に過ぎない。歩行車1が備えるブレーキ機構は、他の構成を備えていてもよい。
前記実施形態では、ワイヤ係止部材33が設けられた横バー31は、ベースフレーム6のうちのリンク機構24に設けられている。しかし、横バー31はリンク機構24以外の部分に設けられていてもよい。
ワイヤ係止部材33および35は、管状またはリング状でなくてもよい。ワイヤ係止部材33および35として、ブレーキワイヤ7を係止できる任意の部材を用いることができる。例えば、ワイヤ係止部材33および35として、結束バンドを用いてもよい。ワイヤ係止部材33および35として、フック状の部材を用いてもよい。ワイヤ係止部材33は、ブレーキワイヤ7を係止する前から横バー31に固定されていてもよく、結束バンド等のように、ブレーキワイヤ7を係止するときに横バー31に取り付けられるものであってもよい。同様に、ワイヤ係止部材35は、ブレーキワイヤ7を係止する前から後フレーム18に固定されていてもよく、ブレーキワイヤ7を係止するときに後フレーム18に取り付けられるものであってもよい。
前記実施形態では、ワイヤ係止部材33には左右に開いた孔が形成されているが、ワイヤ係止部材33の孔は左右以外の方向に開いていてもよい。ワイヤ係止部材35には上下に開いた孔が形成されているが、ワイヤ係止部材35の孔は上下以外の方向に開いていてもよい。
前記実施形態では、縦フレーム8に複数のねじ孔8aが形成されており、縦フレーム8をベースフレーム6に対して固定位置が変更可能なように固定する固定具は、ねじ9である。しかし、固定具はねじ9に限定されない。例えば、縦フレーム8にねじ孔8aが形成されておらず、固定具は、縦フレーム8および後フレーム18を締め付けることにより互いに固定するものであってもよい。縦フレーム8をベースフレーム6に対して固定位置が変更可能なように固定する任意の固定具を利用することができる。
前記実施形態に係る歩行車1は折り畳み可能に構成されているが、歩行車1は折り畳むことができないものであってもよい。