JP2018164445A - 蛾類忌避装置、船舶、及び蛾類忌避方法 - Google Patents
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Abstract
Description
本発明は、蛾類を忌避できる蛾類忌避装置、船舶、及び蛾類忌避方法を提供することを目的とする。
「バースト信号の幅」とは、バースト信号が放射される継続時間(ミリ秒)を意味し、「バースト信号の周期」とは、一つのバースト信号の放射開始時から、次のバースト信号の放射開始時までの時間(秒)を意味する。
バースト信号の幅が162ミリ秒、バースト信号の周期が1秒の2つのバースト信号から構成されるバースト信号の波形を図1に示す。
また、「音波」とは、弾性によって起こる波動のことを意味する。
蛾類忌避装置10について、図2の制御系全体のブロック線図に基づいて説明する。
本発明の一実施の形態に係る蛾類忌避装置10は、例えば船舶20(図4参照)に搭載され、音波放射部15から音波を放射することによって、蛾類を忌避できる。
なお、蛾類忌避装置10において忌避できる蛾類としては、ドクガ科、ヤガ科、メイガ科、シャクガ科の蛾を挙げることができ、ドクガ科を好適に挙げることができ、ドクガ科マイマイガ(Asian Gypsy Moth(AGM);Lymantria dispar)をより好適に挙げることができる。
蛾類忌避装置10は、条件設定部12、信号生成器14、及び音波放射部15を備えている。
第1バースト信号及び第2バースト信号の幅の設定範囲は、蛾類が忌避する効果が高い範囲であり、例えば、50ミリ秒以上200ミリ秒以下である。
ただし、第1条件で設定される第1バースト信号の幅は、好ましくは50ミリ秒以上80ミリ秒以下であり、更に好ましくは55ミリ秒以上65ミリ秒以下である。第2条件で設定される第2バースト信号の幅は、好ましくは100ミリ秒以上200ミリ秒以下であり、更に好ましくは155ミリ秒以上170ミリ秒以下である。
なお、より振動放射体18から広範囲で蛾類を忌避する観点から、第1条件及び第2条件で設定された第1バースト信号及び第2バースト信号の幅の差の絶対値は、例えば40ミリ秒以上150ミリ秒以下であり、好ましくは70ミリ秒以上120ミリ秒以下であり、より好ましくは90ミリ秒以上110ミリ秒以下である。
一方、第1バースト信号及び第2バースト信号の周期の設定範囲は、それぞれ例えば、0.6〜2.4秒であり、0.9秒以上2.1秒以下とすることが好ましい。
ユーザが特定のバースト信号の幅及び周期を条件設定部12に設定することができるが、あらかじめ特定のバースト信号の幅及び周期が条件設定部12に設定されていてもよい。
また、信号生成器14は、図3に示すように第1バースト信号と第2バースト信号とを順次生成することもできる。
更に、信号生成器14は、第1バースト信号、第1バースト信号、及び第2バースト信号を順次生成し、これらを一つのサイクルとして繰り返すバースト信号を生成することや、第1バースト信号、第2バースト信号、及び第1バースト信号を順次生成し、これらを一つのサイクルとして繰り返すバースト信号を生成することや、第2バースト信号、第1バースト信号、及び第1バースト信号を順次生成し、これらを一つのサイクルとして繰り返すバースト信号を生成することもできる。
加えて、飛来する蛾類を忌避するという効果を高めるためには、所定の間隔で蛾類忌避効果を有する音波を放射する必要がある。そのため、信号生成器14は、5秒間に第1バースト信号として幅が50ミリ秒以上80ミリ秒以下、かつ周期が0.6秒以上2.4秒以下のバースト信号、及び第2バースト信号として幅が100ミリ秒以上200ミリ秒以下、かつ周期が0.6秒以上2.4秒以下のバースト信号をそれぞれ少なくとも1回ほど生成することが好ましい。例えば、5秒間に、1)バースト信号の幅62ミリ秒、かつバースト信号の周期1秒、2)バースト信号の幅62ミリ秒、かつバースト信号の周期1秒、3)バースト信号の幅165ミリ秒、かつバースト信号の周期2秒、及び4)バースト信号の幅165ミリ秒、かつバースト信号の周期1秒の1)〜4)のバースト信号から構成されるバースト信号を順次生成することが好ましい。
振動子16は、ラジュバン型振動子であり、一端が接続ケーブル19を介して信号生成器14と接続され、他端がブースタ17と接続されている。ただし、振動子16は、ラジュバン型振動子に限定されるものではない。振動子16は、例えば、磁歪フェライト型振動子、セラミック型振動子でもよい。
信号生成器14によって生成されたバースト信号に基づいて振動子16を振動させることより、振動子16においてバースト波形で伝わる音波が生成される。
なお、ここに言う「全方向」とは、厳密な意味での全方向ではない。すなわち「全方向」とは、設計上、製造上の都合により音波が放射されない方向以外のすべての方向や振動放射体18を支持する部位以外のすべての方向となる「実質的な全方向」という意味であり、例えば、振動放射体18がブースタ17よって支持されている場合には、ブースタ17と接続している部位以外のすべての方向を意味する(以下同様)。
全方向に音波を放射する球状の振動放射体としては、例えば上記特許文献2に記載の球状の超音波振動子が挙げられる。振動子16として、全方向に音波を放射する球状の振動放射体を用いることで、振動子16の外面全方向にバースト波形で伝わる音波が放射される。
蛾類忌避装置10を船舶20に設置するには、蛾類忌避装置10の音波放射部15を、ワイヤースプリング等の弾性体を介して固定する。船舶20の上に音波放射部15を上記のように弾性体を介して設置することにより、たとえ設置した船舶20が航行により振動した場合にも、振動放射体18から放射する音波が、振動放射体18自体の振動により影響を受けることを防ぐことができる。さらに、設置する船舶20の振動により、音波放射部15を船舶20に取り付けるための取り付け具が緩むことや、音波放射部15そのものが故障したりすることを防ぐことができる。特に、振動子16の上方に球状の振動放射体18が位置するように音波放射部15を船舶20の上に設置する場合には、音波放射部15の重心が振動放射体18に近い位置となって不安定であることから、上記のように弾性体を用いることが有効である。なお、条件設定部12及び信号生成器14は、音波放射部15の近傍に設置しても、船舶内スペース等の音波放射部15から離れた位置に設置してもよい。
船舶20には、合計4個の蛾類忌避装置10が設置され、蛾類忌避装置10が有する各振動放射体18a〜18dが船舶20の前方及び後方の両側面に配置されている。振動放射体18aと振動放射体18cの距離、及び振動放射体18bと振動放射体18dの距離は、それぞれ20mである。振動放射体18aと振動放射体18bの距離、及び振動放射体18cと振動放射体18dの距離は、それぞれ60mである。船舶20の船首22から振動放射体18a、振動放射体18cまでの距離、又は船尾24から振動放射体18b、振動放射体18dまでの距離は30mである。船舶20のデッキからの振動放射体18の高さは3mである。また、貨物26は、振動放射体18a〜18dのいずれか1つから90m以内に配置されており、振動放射体18a〜18dのいずれか1つからの音波が到達する。なお、船舶が貨物室を備えている場合には、音波が貨物室へ至る通路の入口に到達する位置に振動放射体18a〜18dが配置されていることが好ましい。
振動放射体18a〜18dは、4つのワイヤースプリングを備えた振動放射体支持具(不図示)を介して船舶20のデッキ上に固定されている。振動放射体18a〜18dからは、例えばバースト信号の幅が62ミリ秒、かつバースト信号の周期が1秒の第1バースト信号と、バースト信号の幅が162ミリ秒、かつバースト信号の周期が1秒の第2バースト信号と、に基づくバースト波形で伝わる音波が繰り返し放射されている。
4−1.バースト信号を構成するバースト波形の周波数の違いによる反応解析
蛾類は、その天敵であるコウモリが発する超音波を認識して逃避行動を起こすことが知られている。そこで、本発明者らは、まずは蛾類における逃避行動において、バースト信号を構成するバースト波形の周波数とマイマイガの逃避行動との関係を調べた。
雄蛾の場合もバースト信号による刺激については雌蛾の場合と同様の方法で行った。一方、反応閾値については、雄蛾と雌蛾との羽ばたき方の特性の違いによる影響を低減させるため、音源方向を避けるように回転したことにより反応がみられたと判断し、そのときの音量を反応閾値とした。
反応がみられた場合、アンプ36の音量を保ち、その音量を騒音計38(STMS-864B:電子測定株式会社製)とオシロスコープ40(WH3219:ブリュエル・ケアー社製)につないだマイクロフォン42(4138−L-006:ブリュエル・ケアー社製)で測定し記録した。測定器は蛾の真横に設置し、スピーカー30に対して垂直にして測定した。騒音計で音量を測定する際、騒音計では8kHzまでしか計測できないため、超音波音の計測は、同じパターンで周波数を4kHzに変更した音に対する音量を計測した。蛾の観察は、モニター44を通して行った。
また、蛾類の忌避においては卵を産む雌蛾を特に忌避することが重要であるが、マイマイガの逃避行動に関して雄蛾と雌蛾による違いはみられなかった。
本解析には、蛾類忌避装置10を用いた。振動放射体18及び振動子16である超音波振動子は多賀電気社製であり、バースト信号を構成するバースト波形の周波数は40kHzとした。
次に、上記球状の振動放射体から、直線状に10m〜100mまで10mごとに道路面にチョークで印をつけ、それぞれの場所で金網かごに入れたマイマイガの雄蛾にバースト信号の幅が62ミリ秒、かつバースト信号の周期が1秒のバースト信号と、バースト信号の幅が162ミリ秒、かつバースト信号の周期が1秒のバースト信号が順次生成されたバースト信号に基づくバースト波形で伝わる音波を放射し、マイマイガの反応を目視で観察した。金網かごには、羽化後5日以内の雄蛾を5頭以上入れた。調査場所の移動中には、金網かごに入れたマイマイガの雄蛾に上記バースト波形で伝わる音波が届かないように、金網かごの一面は透明アクリル板で覆い、透明アクリル板で覆った面が、振動放射体の方を向くようにして移動した。
− :羽ばたきが見られない
± :バースト波形で伝わる音波によって羽ばたいているか疑問
+ :羽ばたきはしたが、振動放射体から遠ざかるなどの反応がみられない
++:羽ばたき方が激しくなり、振動放射体から遠ざかるなどの反応を示した
(1) [バースト信号ON:62msec、OFF:938msec、バースト信号の周期1sec、
デューティ比(1sec当たりのバースト信号ON継続時間(sec)×100(%))6.2%]
(2) [バースト信号ON:112msec、OFF:888msec、バースト信号の周期1sec、
デューティ比11.2%]
(3) [バースト信号ON:162msec、OFF:838msec、バースト信号の周期1sec、
デューティ比16.2%]
(4) [バースト信号ON:250msec、OFF:750msec、バースト信号の周期1sec、
デューティ比25.0%]
(5) [バースト信号ON:112msec、OFF:1888msec、バースト信号の周期2sec、
デューティ比5.6%]
(6) [バースト信号ON:250msec、OFF:1750msec、バースト信号の周期2sec、
デューティ比12.5%]
(7) (1)と(3)を順次(交互)に放射
この結果から、40m未満の距離で蛾類を忌避する場合には(1)の条件で、40〜90mの距離で蛾類を忌避する場合には(2)、(3)、(4)又は(7)の条件で、10〜90mの距離で蛾類を忌避する場合には(7)の条件となるようにバースト信号の幅を設定すれば蛾類忌避効果が高いことが明らかとなった。一方、バースト信号の周期については、1〜2秒の範囲で蛾類忌避効果があることが明らかとなった。
上記「屋外におけるマイマイガ忌避行動解析」で用いたものと同じ蛾類忌避装置10を設置し、振動放射体からの距離と蛾類忌避行動を調べた。振動放射体から25m,50m,75m,100m離れた場所に、それぞれ投光器(水銀灯パラストレス型、135・300W、日幸電子工業社製)を設置して蛾類を誘引した。投光器は、三脚の脚に、地上0.9mの高さで、上方(約45度)に向けて固定した。投光器の下には幅1.8m、長さ2.7mのホワイトシートを敷き、後方には幅約1m、長さ約2メートルの白布をのぼり旗用の注水式スタンド・竿を使用して垂直に立てた。
上記「屋外におけるマイマイガ忌避行動解析」の結果を踏まえ、[バースト信号の幅62ミリ秒、バースト信号の周期1秒]、[バースト信号の幅62ミリ秒、バースト信号の周期1秒]、[バースト信号の幅165ミリ秒、バースト信号の周期2秒]、[バースト信号の幅165ミリ秒、バースト信号の周期1秒]、[バースト信号の幅62ミリ秒、バースト信号の周期1秒]を一つのサイクルとなるようにバースト信号の幅及び周期を設定して生成し、音波を放射した。投光器への蛾類の飛来数は、振動放射体から25m、50m、75m、100m離れた地点で、調査開始(音波の放射、及び投光器の点灯)から30分後に計測した。なお、計測地点によって、その周辺の環境(地形や樹木の有無等)が異なるため、蛾類の飛来数に違いがあった。そこで飛来した蛾類の個体数を、超音波に対する受容器を持たないカメムシの個体数との相対値で表すことで、振動放射体からの距離と蛾類の飛来数を比較した。結果を図7に示す。
上記「屋外におけるマイマイガ忌避行動解析」で用いた蛾類忌避装置10を用いて蛾類を忌避する方法の一例を説明する。
まず、ユーザが、条件設定部12において、例えば、第1条件にはバースト信号の幅を62ミリ秒、かつバースト信号の周期を1秒と設定し、第2条件にはバースト信号の幅を162ミリ秒、かつバースト信号の周期を1秒と設定する。
次に、信号生成器14において、上記第1条件及び第2条件によってそれぞれ規定される第1バースト信号及び第2バースト信号が順次生成される。信号生成器14によって生成された第1バースト信号及び第2バースト信号に基づいて、振動子16を振動させることより、バースト波形で伝わる音波が生成される。生成された音波は、ブースタ17を介して振動放射体18に伝わり、生成された音波が振動放射体18から放射される。
船舶の上等の広い範囲で蛾類を忌避する場合には、蛾類忌避装置10の振動放射体18は、例えば10〜90m間隔で設置される。上記第1バースト信号及び第2バースト信号に基づくバースト波形で伝わる音波の放射によって、振動放射体18を起点とする0〜90mまでの広範囲にわたって蛾類の飛来を抑制することができる。
12 条件設定部
14 信号生成器
15 音波放射部
16 振動子
17 ブースタ
18、18a〜18d 振動放射体
19 接続ケーブル
20 船舶
22 船首
24 船尾
26 貨物
30 スピーカー
32 パーソナルコンピューター
34 D/Aコンバーター
36 アンプ
38 騒音計
40 オシロスコープ
42 マイクロフォン
44 モニター
Claims (8)
- 第1バースト信号の幅及び周期が第1条件として設定され、第2バースト信号の幅及び周期が第2条件として設定される条件設定部と、
前記第1条件及び前記第2条件によってそれぞれ規定される前記第1バースト信号及び前記第2バースト信号を順次生成する信号生成器と、
前記信号生成器によって生成された前記第1バースト信号及び前記第2バースト信号に基づいて音波を放射する音波放射部と、を備えた蛾類忌避装置。 - 請求項1記載の蛾類忌避装置において、
前記第1バースト信号の幅が50ミリ秒以上80ミリ秒以下であり、
前記第2バースト信号の幅が100ミリ秒以上200ミリ秒以下である蛾類忌避装置。 - 請求項2記載の蛾類忌避装置において、
前記第1バースト信号及び前記第2バースト信号の周期が、それぞれ0.6秒以上2.4秒以下である蛾類忌避装置。 - 請求項1〜3のいずれか1項に記載の蛾類忌避装置において、
前記第1バースト信号の幅が55ミリ秒以上65ミリ秒以下、かつ前記第1バースト信号の周期が0.9秒以上2.1秒以下であり、
前記第2バースト信号の幅が155ミリ秒以上170ミリ秒以下、かつ前記第2バースト信号の周期が0.9秒以上2.1秒以下である蛾類忌避装置。 - 請求項1〜4のいずれか1項に記載の蛾類忌避装置において、
前記音波放射部は、振動体及び実質的に全方向に音波を放射する球状の振動放射体を備え、前記振動放射体の直径が前記振動体の長手方向の長さの略2倍である蛾類忌避装置。 - 請求項1〜5のいずれか1項に記載の蛾類忌避装置を備え、
前記音波が貨物又は貨物室へ至る通路の入口に到達する位置に前記振動放射体が配置されている船舶。 - 請求項1〜5のいずれか1項に記載の蛾類忌避装置を用いた蛾類忌避方法であって、
第1バースト信号の幅及び周期を第1条件として設定し、第2バースト信号の幅及び周期を第2条件として設定する条件設定工程と、
前記第1条件及び前記第2条件によってそれぞれ規定される前記第1バースト信号及び前記第2バースト信号を順次生成する信号生成工程と、
前記信号生成工程によって生成された前記第1バースト信号及び前記第2バースト信号に基づいて音波を放射する音波放射工程と、を含む蛾類忌避方法。 - 請求項7に記載の蛾類忌避方法において、
前記第1バースト信号の幅が55ミリ秒以上65ミリ秒以下、かつ前記第1バースト信号の周期が0.9秒以上2.1秒以下であり、
前記第2バースト信号の幅が155ミリ秒以上170ミリ秒以下、かつ前記第2バースト信号の周期が0.9秒以上2.1秒以下である蛾類忌避方法。
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