JP2018161780A - 構造体の製造方法および液体吐出ヘッドの製造方法 - Google Patents

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石倉 宏恵
Hiroe Ishikura
宏恵 石倉
鈴木 工
Takumi Suzuki
工 鈴木
康亮 富永
Yasusuke Tominaga
康亮 富永
秀明 圷
Hideaki Akutsu
秀明 圷
岡野 明彦
Akihiko Okano
明彦 岡野
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Abstract

【課題】高精度かつ安定して微細な構造体を製造でき、安定した液体吐出量を有し印字特性の良好な液体吐出ヘッドを安定して製造できる方法の提供。
【解決手段】基板上に第一の樹脂材料を含む第一の樹脂組成物を用いてパターンを形成する工程と、該パターン上に該第二の樹脂材料を含む第二の樹脂組成物を被覆し樹脂層を形成する工程と、得られた基板を下記Tg(B)以上に加熱した状態でプレスし該樹脂層の表面を平坦化する工程と、得られた基板を冷却する工程とを有し、該第一の樹脂材料の基板に対する膜応力がゼロになる温度T(A)より該第二の樹脂材料のガラス転移温度Tg(B)の方が高く、得られた基板が冷却される際に、該樹脂層を構成する樹脂の粘度が50秒以内で1.0×10倍以上増加する構造体の製造方法。並びに液体吐出ヘッドの製造方法。
【選択図】図1

Description

本発明は、構造体の製造方法、および、液体吐出ヘッドの製造方法に関する。
近年、科学技術の発展に伴い、様々な分野で微細な構造体の形成技術に対する要求が高まっている。マイクロアクチュエータ、電子デバイス、及び、光学デバイス等の分野で研究が盛んに行われており、例えば、各種小型センサー、マイクロプローブ、薄膜磁気ヘッド、及び、液体吐出ヘッドなどでは研究が進んでいる。微細な構造体の製造方法には、スタンパー、ドライエッチング、及び、フォトリソグラフィーなどの種々の方法が適用されている。これらの方法の中でも、感光性樹脂材料を用いたフォトリソグラフィーによるパターン形成は、高アスペクト比を有する良好な形状を高精度かつ簡便に形成することができる。
液体吐出ヘッドを例に挙げると、その代表的な製造方法として、例えば、以下の方法を挙げることができる。
まず、エネルギー発生素子を有する基板上に、除去可能な樹脂材料を用いて液体流路パターンをフォトリソグラフィーの手法で形成する。次に、前記液体流路パターン上に、被覆樹脂層を形成し、エネルギー発生素子の上方の被覆樹脂層部分に、吐出口をフォトリソグラフィーにより形成する。続いて、前記液体流路パターンを溶出し、前記吐出口に連通する液体流路を形成し、ノズル構成部材となる被覆樹脂層を硬化させる。これにより、エネルギー発生素子を有する基板と、吐出口及び液体流路を有するノズル構成部材とを含む液体吐出ヘッドを得ることができる。
しかしながら、上述の方法では、液体流路パターン及び被覆樹脂層が樹脂材料で形成されており、通常、液体流路パターン上に被覆樹脂層を形成する際には、スピンコート法、ソルベントコート法、及び、スリットコート法等を用いる。このため、液体流路パターンの凹凸による影響で、被覆樹脂層の厚みにばらつきが発生することがあり、エネルギー発生素子から吐出口までの高さに、ばらつきが発生することがあった。その結果、作製した液体吐出ヘッドにおいて、液体吐出量にばらつきが生じる場合があった。
これらのばらつきを解決する方法として、特許文献1では、2層に積層された材料(樹脂材料)を、突起形状を有する成型用金型でプレス成型することにより、安価かつ高精度に微細孔を加工する方法が記載されている。
また、特許文献2においては、パターンが形成された透明基板上に、感光性樹脂層を形成し、加熱・加圧処理を行い、前記感光性樹脂層を平坦化する方法が記載されている。
特開2007−176076号公報 特開平10−48412号公報
しかしながら、特許文献1に記載の方法では、プレス成型により微細孔等の構造を形成するため、くびれ構造や最表面の開口パターンが小さくなるような変則的な構造は形成することが困難な場合があり、得られる構造体に制約がかかる場合があった。
また、特許文献2に記載の方法では、使用する基板やパターンの作製に用いる樹脂に特定のものを用いる制約があり、樹脂層の膜応力によって使用する基板が変形してしまうような場合には、十分な平坦化の効果が得られない場合があった。
本発明は、これらの課題を解決すべく提案されたものであり、以下のことを目的とする。即ち、本発明は、高精度かつ安定して微細な構造体を製造でき、安定した液体吐出量を有し、かつ、印字特性の良好な液体吐出ヘッドを安定して製造できる方法を提供することを目的とする。
即ち、本発明の第一の態様は、
基板と、該基板上に配される、パターンおよび樹脂層とを有する構造体の製造方法であって、
基板上に、第一の樹脂材料を含む第一の樹脂組成物を用いて、該第一の樹脂材料を含むパターンを形成する工程と、
該基板および該パターンを、第二の樹脂材料を含む第二の樹脂組成物で被覆し、該第二の樹脂材料を含む樹脂層を形成する工程と、
該パターンおよび該樹脂層が配された基板を、該第二の樹脂材料のガラス転移温度以上に加熱した状態でプレスし、該樹脂層の表面を平坦化する工程と、
プレスされた該パターンおよび該樹脂層が配された基板を冷却する冷却工程と、
を有し、
該第一の樹脂材料の基板に対する膜応力がゼロになる温度(T(A))と、該第二の樹脂材料のガラス転移温度(Tg(B))とが、
T(A) < Tg(B)
の関係を満たし、
プレスされた該パターンおよび該樹脂層が配された基板が冷却される際に、該樹脂層を構成する樹脂の粘度が50秒以内で1.0×10倍以上増加する、
ことを特徴とする構造体(第一の構造体)の製造方法である。
また、本発明の第二の態様は、
基板と、該基板上に配される、第二の樹脂材料を含む構造と、を有する構造体であって、
第一の態様より得られる構造体における、表面が平坦化された前記樹脂層をパターニングする工程と、
前記第一の樹脂材料を含むパターンを除去する工程と、
を有する、ことを特徴とする構造体(第二の構造体)の製造方法である。
さらに、本発明の第三の態様は、
液体を吐出するための吐出口および該吐出口に連通する液体流路を有するノズル構成部材と、該吐出口から液体を吐出するためのエネルギー発生素子を有する基板とを有する液体吐出ヘッドの製造方法であって、
エネルギー発生素子を有する基板上に、第一の樹脂材料を含む第一の樹脂組成物を用いて、該第一の樹脂材料を含む液体流路パターンを形成する工程と、
該基板および該液体流路パターンを、第二の樹脂材料を含む第二の樹脂組成物で被覆し、該第二の樹脂材料を含む樹脂層を形成する工程と、
該液体流路パターンおよび該樹脂層が配された基板を、該第二の樹脂材料のガラス転移温度以上に加熱した状態でプレスし、該樹脂層の表面を平坦化する工程と、
プレスされた該液体流路パターンおよび該樹脂層が配された基板を冷却する冷却工程と、
該樹脂層に吐出口を形成する工程と、
該液体流路パターンを除去して、該吐出口に連通する液体流路を形成する工程と、
を有し、
該第一の樹脂材料の基板に対する膜応力がゼロになる温度(T(A))と、第二の樹脂材料のガラス転移温度(Tg(B))とが、
T(A) < Tg(B)
の関係を満たし、
プレスされた該液体流路パターンおよび該樹脂層が配された基板が冷却される際に、該樹脂層を構成する樹脂の粘度が50秒以内で1.0×10倍以上増加する、
ことを特徴とする液体吐出ヘッドの製造方法である。
本発明によれば、高精度かつ安定して微細な構造体を製造でき、安定した液体吐出量を有し、かつ、印字特性の良好な液体吐出ヘッドを安定して製造できる方法を提供することができる。
本発明に係る構造体の製造方法における各工程を時系列に説明するための模式的断面図である。 本発明より得られる液体吐出ヘッドを一部切断した状態の模式的斜視図である。 本発明に係る液体吐出ヘッドの製造方法における各工程を時系列に説明するための模式的断面図である。 冷却時間と、樹脂層を構成する樹脂の温度との関係を説明するためのグラフである。 樹脂層を構成する樹脂における、樹脂粘度と樹脂温度との関係を説明するためのグラフである。
上述したように、樹脂材料で形成されたパターン上に、被覆樹脂層を形成する工程を有する構造体(例えば、液体吐出ヘッド)の製造方法では、作製したパターンの凹凸による被覆樹脂層の厚みのばらつきが生じることがあった。その結果、作製した構造体の寸法にばらつきが生じることがあり、高精度かつ安定して微細な構造体を製造できる方法の開発が求められていた。
本発明は、このような樹脂材料(例えば感光性樹脂)を用いた、高精度かつ高密度な構造体の製造に適用することができる。更に、本発明は、種々の分野に適用が可能であり、特に、高精度かつ高密度な吐出口及び液体流路を有する液体吐出ヘッドの製造に好適に適用することができる。
以下、本発明について詳しく説明する。なお、以下の説明では、構造体として主に液体吐出ヘッドに着目した説明を行うが、本発明は、例えば半導体分野で用いられるような他の一般的な構造体に対しても同様に適用することができる。
<構造体の製造方法>
本発明の構造体の製造方法は、以下の工程を有することができる。
基板上に、第一の樹脂材料を含む第一の樹脂組成物を用いて、前記第一の樹脂材料を含むパターンを形成する工程(パターン形成工程)。
前記基板及び前記パターンを、第二の樹脂材料を含む第二の樹脂組成物で被覆し、該第二の樹脂材料を含む樹脂層(第二の樹脂層)を形成する工程(第二の樹脂層形成工程)。
前記パターン及び前記樹脂層が配された基板を、前記第二の樹脂材料のガラス転移温度(Tg(B))以上に加熱した状態で(例えば、第二の基板により)プレスし、前記樹脂層の表面を平坦化する工程(平坦化工程)。
プレスされた前記パターンおよび前記樹脂層が配された基板を(例えば、25℃以下に)冷却する工程(冷却工程)。
このような本発明に係る構造体の製造方法により得られる構造体は、図1(e)に示すように、基板(第一の基板)1と、第一の基板上に配される、パターン3、及び、表面が平坦化された樹脂層4aとを有する。
本発明の構造体の製造方法は、第一の基板を準備する工程(第一の基板準備工程)や第一の基板上に第一の樹脂材料を含む樹脂層(第一の樹脂層)を形成する工程(第一の樹脂層形成工程)や第二の基板を準備する工程(第二の基板準備工程)を有することができる。さらに、冷却工程後、パターン及び第二の樹脂層が配された第一の基板と、第二の基板とを引き離す工程(剥離工程)を有することもできる。
また、第一の基板上にパターンと第二の樹脂層とを有する構造体(第一の構造体)に対して、前記パターンを除去する工程(パターン除去工程)や前記第二の樹脂層をパターニングする工程(パターニング工程)等を行うこともできる。これらの工程を行うことにより、第一の基板と、第一の基板上に配される、第二の樹脂材料を含む(微細な)構造とを有する構造体(第二の構造体)を製造することができる。
なお、これらの工程の順序は適宜設定することができ、複数の工程を並行して行うこともできる。
以下に、図1を用いて、上記構造体の製造方法における各工程について詳しく説明する。なお、図1は、本発明に係る構造体の製造方法の実施形態の一例を説明するための模式的断面図である。
(第一の基板準備工程)
まず、第一の基板(図1(a)の符号1)を準備する。第一の基板は、基板上に形成されるパターンや第二の樹脂層等の支持体として機能し得るものであれば、その形状、材質等に特に限定されることなく使用することができる。この第一の基板としては、例えば、シリコン基板を用いることができる。
(第一の樹脂層形成工程)
次に、図1(a)に示すように、第一の基板1上に、第一の樹脂材料を含む第一の樹脂組成物を用いて、第一の樹脂層2を形成する。
第一の樹脂組成物は、固形分中の主成分として、第一の樹脂材料を含むことができる。そして、この第一の樹脂組成物を第一の基板1上に、塗布、及び、必要に応じて加熱処理等による乾燥(固化)を行うことにより、第一の樹脂層2を形成することができる。即ち、第一の樹脂層は、第一の樹脂組成物の固化物であることができ、第一の樹脂層も第一の樹脂材料を主成分として含むことができる。
ここで、第一の樹脂組成物は、上記第一の樹脂材料の他に、溶剤等の他の添加剤を含むことができる。
なお、「主成分」とは、ある物質等(ここでは、上記第一の樹脂組成物(固形分)や第一の樹脂層)を構成する成分のうち、最も多く含まれている成分を意味する。また、本明細書における「樹脂材料」とは、硬化前(固化前)及び硬化後(固化後)のいずれの形態の樹脂材料をも含むものである。
ここで、第一の樹脂組成物(固形分)中の第一の樹脂材料の含有割合は、固形分比率として、安定的な膜厚を確保する点から、30質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましい。このように、第一の樹脂組成物は、第一の樹脂材料をベース樹脂(最も多く含まれる樹脂成分)として、固形分比率で30質量%以上含むことが好ましく、70質量%以上含むことがより好ましい。
なお、第一の基板に対する第一の樹脂組成物の塗布方法は特に限定されず、例えば、スピンコート法、スリットコート法及びスプレーコート法等の塗布方法を用いることができる。また、第一の樹脂組成物の乾燥方法も特に限定されず、適宜、加熱条件(加熱温度や加熱時間等)や加熱方法等を設定することができる。
第一の樹脂材料は、作製する構造体の用途に応じて、適宜選択することができ、例えば、構造体として液体吐出ヘッドを作製する場合には、最終的に光照射等により除去(溶解)可能な樹脂材料を用いることが好ましい。
第一の樹脂材料としては、例えば、フォトリソグラフィーが適用できる感光性樹脂を用いることが好ましい。この感光性樹脂としては、特に限定されるものではないが、後で除去することを考慮すると、ポジ型感光性樹脂であることが好ましい。
ポジ型感光性樹脂としては、例えば、ポリメチルイソプロペニルケトンや、メタクリル酸エステルを主成分とする高分子化合物で構成される主鎖分解型の感光性樹脂を用いることができる。
上記メタクリル酸エステルを主成分とする高分子化合物で構成される主鎖分解型のポジ型感光性樹脂としては、例えば、以下のものを挙げることができる。
即ち、ポリメチルメタクリレート、ポリエチルメタクリレート等のホモポリマー;メタクリル酸メチルと、メタクリル酸、アクリル酸、グリシジルメタクリレート及びフェニルメタクリレート等の他のモノマーとの共重合体を挙げることができる。これらのメタクリル酸エステルを主成分とする高分子化合物で構成される主鎖分解型のポジ型感光性樹脂の感光波長は、一般的に200〜240nm付近に存在する。また、ポリメチルイソプロペニルケトンは、260〜320nm付近に感光波長を有している。
これらのポジ型感光性樹脂は、各樹脂に対して最適な露光波長によって露光することで、所望のパターンを容易に形成することができる。
なお、第一の樹脂材料は、(エネルギー発生素子等の他の部材が配されていない状態の)第一の基板に対する膜応力がゼロになる温度(T(A))を有する。そして、第一の樹脂材料として、ポジ型感光性樹脂を用いる場合、塗布性の観点から、第一の樹脂材料は、少なくとも25℃より高いT(A)を有するものを用いることが好ましく、第一の樹脂材料は、25℃で固体の状態であることが好ましい。また、同様に、後述する第一の樹脂材料を含むパターンを構成する樹脂も、塗布性の観点から、25℃で固体の状態であることが好ましい。
第一の樹脂材料の第一の基板に対する膜応力およびT(A)は、以下の方法により特定することができる。
即ち、第一の基板上に第一の樹脂材料で構成される薄膜(樹脂層)を成膜すると、第一の基板と第一の樹脂材料の物理定数が異なるため、第一の基板に変形(反り)が生じる。この反りの変化量を測定することにより、第一の基板にかかる応力(膜応力)を測定する。また、第一の基板の上記薄膜による変形は昇温しながら測定し、第一の基板の反りの変化量がゼロになった温度を、その薄膜を構成する第一の樹脂材料のT(A)とする。
なお、第一の樹脂材料として、1種の樹脂を単独で用いてもよいし、2種以上の樹脂を併用してもよい。複数の樹脂を第一の樹脂材料として用いる場合は、その複数の樹脂全体を第一の樹脂材料として取り扱う。即ち、上述した第一の樹脂材料におけるT(A)は、この複数の樹脂全体に対する温度となる。
第一の樹脂組成物に用いる溶剤等の添加剤は、液体吐出ヘッドの分野等で従来用いられてきたものから、適宜選択して用いることができ、その使用量も適宜設定することができる。
(パターン形成工程)
続いて、図1(b)に示すように、フォトリソグラフィー等の方法で、第一の樹脂材料を含むパターン3を形成する。例えば、第一の樹脂層2を、作製するパターンに応じたフォトマスク(不図示)を介して、(最適な露光波長にて)露光及び現像することにより、パターン3を形成することができる。なお、第一の樹脂材料が感光性を有していない場合は、例えば、別途、第一の樹脂層上にレジスト(感光性樹脂)を塗布し、露光、現像、及び、反応性イオンエッチング(RIE)等によりエッチングを行うことにより、パターンを形成することができる。
(第二の樹脂層形成工程)
次に、図1(c)に示すように、パターン3が形成された第一の基板1上に、第二の樹脂材料を含む第二の樹脂組成物を用いて、第二の樹脂層(樹脂層)4を積層する。ここで、第二の樹脂層4は、パターン3が有する凹凸の影響で、その表面に凹凸を有している。
第二の樹脂組成物は、固形分中の主成分として、第二の樹脂材料を含むことができる。そして、この第二の樹脂組成物を、第一の基板1及びパターン3を被覆するように、塗布、及び、必要に応じて加熱処理等による乾燥(固化)を行うことにより、第二の樹脂層4を形成することができる。即ち、第二の樹脂層は、第二の樹脂組成物の固化物であることができ、第二の樹脂層も第二の樹脂材料を主成分として含むことができる。
なお、第一の基板及びパターンに対する第二の樹脂組成物の塗布(被覆)方法は特に限定されず、例えば、スピンコート法、スリットコート法及びスプレーコート法等の塗布方法を好適に用いることができる。また、第二の樹脂組成物の乾燥方法も特に限定されず、適宜、加熱条件(加熱温度や加熱時間等)や加熱方法等を設定することができる。
ここで、第二の樹脂組成物は、主成分として含まれる第二の樹脂材料の他に、溶剤、重合開始剤及びシランカップリング剤等の添加剤を含むことができる。
第二の樹脂組成物(固形分)中の第二の樹脂材料の含有割合は、固形分比率として、成膜性の観点から、50質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましい。このように、第二の樹脂組成物は、第二の樹脂材料をベース樹脂として、固形分比率で50質量%以上含むことが好ましく、70質量%以上含むことがより好ましい。
第二の樹脂材料は、作製する構造体の用途に応じて、適宜選択することができるが、パターニング性の観点から、ネガ型感光性樹脂であることが好ましい。
構造体として、例えば液体吐出ヘッドを作製する場合、第二の樹脂材料として、以下の条件を満たすネガ型感光性樹脂を用いることが好ましい。即ち、光照射によって高分子化する際に、エッチング材料又は構造材料としての、高い機械的強度、下地(第一の基板1やパターン3)との密着性、耐液体性、液体吐出口等の微細なパターンをパターニングするための解像性、及び、後の工程での耐溶剤性等を有するネガ型感光性樹脂を用いることが好ましい。
これらの特性を満足する第二の樹脂材料としては、例えば、カチオン重合型の、言い換えると、カチオン重合可能な基を有する、エポキシ樹脂化合物を好適に用いることができる。
このエポキシ樹脂化合物としては、例えば、ビスフェノールAとエピクロルヒドリンとの反応物(共重合体)のうち重量平均分子量がおよそ900以上の反応物、含ブロモビスフェノールAとエピクロルヒドリンとの反応物、フェノールノボラック又はo−クレゾールノボラックとエピクロルヒドリンとの反応物、特開昭64−9216号公報に記載のオキシノルボルネン骨格を有する多官能エポキシ樹脂、並びに、特開昭60−161973号明細書、特開昭63−221121号明細書及び特開平2−140219号公報にそれぞれ記載のオキシシクロヘキサン骨格を有する多官能エポキシ樹脂等が挙げられるが、これら化合物に限定されるものではない。
なお、上記エポキシ樹脂化合物におけるエポキシ当量は、2000以下が好ましく、1000以下がより好ましい。エポキシ樹脂化合物のエポキシ当量が2000以下であれば、硬化反応の際に架橋密度が一層低下し難くなり、良好な密着性及び良好な耐液体性が容易に得られる。このエポキシ樹脂化合物におけるエポキシ当量は、JISK7236:2001に従い測定することができる。
なお、第二の樹脂材料は、ガラス転移温度(Tg(B))を有する。そして、成膜性の観点から、第二の樹脂材料は、少なくとも25℃より高いTg(B)を有するものを用いることが好ましく、第二の樹脂材料は、25℃で固体の状態であることが好ましい。また、同様に、後述する第二の樹脂材料を含む樹脂層(第二の樹脂層)を構成する樹脂も、塗布性の観点から、25℃で固体の状態であることが好ましい。
上記第二の樹脂材料のTg(B)は、例えば、示差走査熱量測定(DSC)により特定することができる。
本発明では、第一の樹脂材料のT(A)よりも第二の樹脂材料のTg(B)を高くし、T(A) < Tg(B)の関係を満たす樹脂材料を第一及び第二の樹脂材料としてそれぞれ用いる。この関係を満たすことにより、特定の冷却条件(第二の樹脂層を構成する樹脂の粘度が50秒以内で1.0×10倍以上増加する条件)に従い冷却を行うことにより、膜応力による基板の変形を抑制することが可能となる。
なお、第二の樹脂材料として、1種の樹脂を単独で用いてもよいし、2種以上の樹脂を併用してもよい。複数の樹脂を第二の樹脂材料として用いる場合は、その複数の樹脂全体を第二の樹脂材料として取り扱う。即ち、上述した第二の樹脂材料におけるTg(B)は、この複数の樹脂全体に対する温度となる。
第二の樹脂組成物は、重合開始剤として、光重合開始剤(光カチオン重合開始剤)を含むことが好ましい。
この光重合開始剤としては、例えば、光照射により酸を発生する化合物を用いることができる。この光重合開始剤としては、特に制限はないが、例えば、芳香族ヨードニウム塩、及び、芳香族スルホニウム塩等を挙げることができる。
芳香族ヨードニウム塩の市販品としては、例えば、以下のものを挙げることができる。
DPI−105;MPI−103、及び105;BBI−101、102、103及び105(いずれも商品名、みどり化学株式会社製)。
Rhodorsil Photoinitiator 2074(商品名、Rhodia社製)。
IBPF、及びIBCF(いずれも商品名、株式会社三和ケミカル製)。
芳香族スルホニウム塩の市販品としては、例えば、以下のもの挙げることができる。
TPS−102、103、及び105;MDS−103、105、205、及び305;DTS−102、及び103(いずれも商品名、みどり化学株式会社製)。
アデカオプトマーSP−150、170、及び172(いずれも商品名、ADEKA社製)。
TS−01、及び「TS−91」(いずれも商品名、株式会社三和ケミカル製)。
これらの光重合開始剤は、第二の樹脂材料として、カチオン重合型のエポキシ樹脂化合物を用いる場合に特に好適に用いることができる。
光重合開始剤の添加量は、目標とする感度となるように、適宜その添加量を調整することができる。第二の樹脂材料として、上述したようなエポキシ樹脂化合物を用いる場合には、光重合開始剤は、第二の樹脂組成物(固形分)中、例えば、0.5質量%以上5質量%以下含むことができる。
さらに、第二の樹脂組成物は、必要に応じて、波長増感剤を含むことができ、この波長増感剤としては、例えば、アデカオプトマーSP−100(商品名、ADEKA社製)を用いることができる。
第二の樹脂組成物は、溶剤を含むことができ、第二の樹脂材料が例えば25℃で固体の状態で存在する場合は、この第二の樹脂材料を溶剤(例えば有機溶剤)に溶解させた液体の形態で使用することが好ましい。
第二の樹脂組成物に用いる溶剤(有機溶剤)としては、例えば、メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、及び、トリエチレングリコールジメチルエーテルなどの極性溶媒を好適に用いることができるが、これらに限定されるものではない。
第二の樹脂組成物は、上述した添加剤の他に、エポキシ樹脂の弾性率を下げる目的で、可撓性付与剤を含むことができ、さらに、下地との更なる密着力を得る目的で、シランカップリング剤を含むこともできる。これらの添加剤の使用量は適宜設定することができる。
(第二の基板準備工程)
次に、後述する平坦化工程では、様々な平坦化方法(プレス方法)により、第二の樹脂層表面を平坦化することができるが、以下では、第二の基板を用いた平坦化方法に着目した説明を行う。従って、本発明の構造体の製造方法では、平坦化工程を行う前に、第二の基板を準備する工程を行うことができる。
具体的には、図1(d)に示す、第二の基板5を準備する。第二の基板は、特に限定されないが、第二の基板の表面に離型処理が施せることと、第一の基板をプレスする機能を鑑みて、第二の基板の表面が算術平均粗さRaで、10.0nm以下と平坦であることが好ましい。
第二の基板としては、例えば、石英基板、及び、金属基板などを好適に用いることができる。また、第二の基板は、パターン3や樹脂層4をプレスするための平坦性が確保できていれば、表面形状やその他物性については特に限定されることなく、適宜使用することができる。ここで、平坦化工程において、第二の基板が弾性変形することを抑制する観点から、第二の基板の厚みは5mm以上であることが好ましい。
(平坦化工程)
次に、図1(d)に示すように、パターン3及び第二の樹脂層4が形成された第一の基板1を、第二の樹脂材料のガラス転移温度(Tg(B))以上に加熱した状態で、(例えば、第二の基板5により)プレスし、第二の樹脂層4の表面を平坦化する。この平坦化の際、第二の樹脂層4表面の平坦性を向上させる目的で、プレス(加圧)を行う。このように第二の樹脂材料をそのガラス転移温度以上でプレスすることにより、図1(e)に示すように、平坦面6を有する、表面が平坦化された第二の樹脂層4aが形成される。
Tg(B)以上に加熱した状態で平坦化を行うことにより、樹脂の流動性を高め、基板に過剰な圧力を加えることなく平坦化することが可能となる。加熱温度は、第二の樹脂材料のTg(B)以上であれば特に限定はないが、樹脂の耐熱性の観点から、Tg(B)+20℃以下とすることが好ましい。
(冷却工程)
次に、プレスされたパターン3及び第二の樹脂層4aが配された第一の基板1を(例えば、25℃以下)に冷却する。この時、上記第一の基板の冷却条件は、第二の樹脂層を構成する樹脂における粘度の変化量等から適宜設定することができるが、本発明では、少なくとも以下を満たす冷却条件により冷却を行う。
即ち、上記パターン等が配された第一の基板を冷却する際に、第二の樹脂層4aを構成する樹脂の粘度を50秒以内で1.0×10倍以上増加させる条件で冷却を行う。これは、第一の樹脂材料を含むパターン3の膜応力によって、第一の基板1が変形する現象を、第二の樹脂層を構成する樹脂の粘度を急激に上昇させることで、抑制することを目的とする。
また、上記パターン等が配された第一の基板を冷却する際に、第二の樹脂層4aを構成する樹脂の粘度を40秒以内で1.0×10倍以上増加させる条件で冷却を行うことが好ましい。これにより、パターンの膜応力による第一の基板の変形を更に容易に抑制することができる。
なお、平坦化工程において、上記パターン等が配された第一の基板は、少なくともTg(B)以上に加熱されているため、プレス後、この第一の基板はそのTg(B)以上の温度から冷却されることになる。ここで、上記パターン等が配された第一の基板は、冷却速度を上げ、製造効率を高める観点から、25℃以下に冷却することが好ましく、例えば、25℃まで冷却を行うことができる。
従って、この冷却の際に、Tg(B)〜25℃(25℃以上Tg(B)以下)の冷却温度域において、第二の樹脂層を構成する樹脂の粘度を50秒以内で1.0×10倍以上増加させることが好ましい。これにより、パターンの膜応力による第一の基板の変形を容易に抑制することができる。
また、上述したように、第一の樹脂材料のT(A)よりも第二の樹脂材料のTg(B)の方が高い温度である。このため、上記パターン等が配された第一の基板を25℃以下に冷却する場合は、冷却過程において、必ずT(A)〜25℃(25℃以上T(A)以下)の冷却温度域が存在する。従って、この冷却温度域において、第二の樹脂層を構成する樹脂の粘度を40秒以内で1.0×10倍以上増加させることが好ましい。これにより、パターンの膜応力による第一の基板の変形を一層容易に抑制することができる。
なお、平坦化工程後、冷却工程における冷却操作に移る際に、上記パターン等が配された第一の基板が冷却され、冷却開始時にはこの第一の基板の温度(より具体的には第二の樹脂層を構成する樹脂の温度)が、Tg(B)未満やT(A)未満になることもあり得る。従って、上述した各冷却温度域は、冷却工程における(上記パターン等が配された第一の基板の)温度域に限定されず、平坦化工程や、平坦化工程と冷却工程との間などにおける温度域を含んでいてもよい。結果的に、上記パターン等が配された第一の基板がTg(B)(又はT(A))〜25℃に冷却される際に、第二の樹脂層を構成する樹脂に対して、上記時間内に上記粘度増加が生じればよい。また、言い換えると、Tg(B)(又はT(A))〜25℃までの冷却温度域の間に、上記時間内で上記粘度増加が起こる冷却温度域が含まれていれば良い。
ここで、工程管理の観点から、冷却の際の冷却速度は、略一定であることが好ましく、特に、Tg(B)から25℃までの冷却温度域において、冷却速度を略一定にすることが好ましい。しかしながら、実際の冷却操作では、冷却開始時や樹脂温度が特定の温度(例えば、25℃付近)で冷却速度が鈍化することがある。このため、実際の冷却操作では、Tg(B)−5℃ 〜 30℃(25℃+5℃)の冷却温度域において、冷却速度が略一定であればよい。従って、具体的には、冷却時間(sec)をx軸、第二の樹脂層を構成する樹脂における樹脂温度(℃)をy軸にとった際のグラフ(例えば、図4に示すグラフ)の傾きがTg(B)−5(℃)から、30(℃)までの間で略一定になるように冷却されていることが好ましい。
なお、ここで、冷却速度における略一定とは、1秒当たりの冷却速度(℃/sec)が、全体(例えば、Tg(B)−5℃から、30℃までの冷却温度域)において、±1℃以内となるような冷却速度である。尚、この冷却速度における略一定は、例えば、冷却工程で用いるクーリングプレートの設定温度を一定とすることで達成できる。
なお、冷却速度は、Tg(B)−5℃ 〜 30℃の冷却温度域において、第一の基板の変形を抑制する観点から、1.5℃/sec以上(上記グラフの傾きが−1.5(℃/sec)以下)が好ましく、5.0℃/sec以下(上記グラフの傾きが−5.0(℃/sec)以上)が好ましい。
上記パターン等が配された第一の基板を冷却する際の冷却下限温度は、特に限定はないが、上述したように、25℃以下とすることが好ましく、冷却速度の観点から0℃以下とすることがより好ましい。
ここで、第二の樹脂層を構成する樹脂の25℃における粘度は、塗布性及び成膜性の観点から、1.0×10Pa・s以上であることが好ましい。
第二の樹脂層を構成する樹脂の粘度は、例えば回転式レオメーター法で測定することができる。
パターン等を有する第一の基板の冷却方法は、特に限定されないが、例えば、以下の方法で行うことができる。即ち、プレス後、第一の基板と第二の基板とが接した状態で、第一の基板面(第一の基板の対向する二つの面のうち、第二の基板側の面とは反対側の面)を下にして、例えば15℃以下に冷却したクーリングプレートに接触させて冷却する。ここで、第一の基板面をクーリングプレートに接触させて冷却することが困難な場合には、クーリングプレートの温度を極端(例えば-50℃)に低下させて、第二の基板面(第二の基板の対向する二つの面のうち、第一の基板側の面とは反対側の面)をクーリングプレートに接触させて冷却する。そして、この第二の基板越しに第一の基板を冷却する。なお、これ以外の冷却方法であっても、上述した冷却条件を満たすことのできる冷却方法であれば、どのような方法を用いてもよい。
(剥離工程)
次に、冷却工程により冷却された第一の基板1と、第二の基板5とを引き離(剥離)し、図1(e)に示す基板を得ることができる。
(パターニング工程)
次に、図1(f)に示すように、フォトリソグラフィー等の方法で、表面が平坦化された第二の樹脂層4aのパターニングを行い、所望のパターン(第二の樹脂材料を含む微細な構造)7を形成する。例えば、第二の樹脂材料が感光性を有する場合(例えば、ネガ型感光性樹脂の場合)は、作製するパターンに応じたフォトマスク(不図示)を介して、表面が平坦化された第二の樹脂層4aを露光及び現像することにより、パターン7を形成することができる。なお、第二の樹脂材料が感光性を有していない場合は、例えば、他のレジスト(感光性樹脂)をフォトマスクに用いて、ドライエッチング等により、パターニングを行うこともできる。
(パターン除去工程)
次に、図1(g)に示すように、第一の樹脂材料(例えば、ポジ型感光性樹脂)を含むパターン3を除去(現像除去)する。
現像除去に用いる現像液は、パターン3を溶解できるものであれば、特に限定されることなく用いることができる。例えば、第一の樹脂材料として感光性樹脂を用いた場合には、現像液として、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、メチルイソブチルケトン等を用いることができる。ただし、これらに限定されるものではない。
また、前記現像液で現像した後に、イソプロピルアルコール(IPA)等でリンス処理を行ってもよい。
以上の工程により、微細な構造体を、高精度かつ安定して製造することができる。
<液体吐出ヘッド>
本発明に係る液体吐出ヘッドの製造方法により製造される液体吐出ヘッドは、プリンタ、複写機、通信システムを有するファクシミリ、プリンタ部を有するワードプロセッサ等の装置、更には、各種処理装置と複合的に組み合わせた産業記録装置に搭載可能である。
図2に、本発明に係る液体吐出ヘッドの製造方法により製造される液体吐出ヘッドの一例を一部切断した状態の模式的斜視図を示す。図2に示す液体吐出ヘッドは、液体を吐出するための吐出口(液体吐出口)13及び該吐出口に連通する液体流路14を有するノズル構成部材12と、該吐出口から液体を吐出するためのエネルギー発生素子11を有する第一の基板10とを有する。また、この液体吐出ヘッドでは、このヘッドの長手方向に沿って吐出口を略等間隔に配置することにより形成した吐出口列を2列配置しており、この吐出口列の間に、液体流路14に液体を供給する液体供給口15が設けられている。なお、この液体供給口15は、第一の基板10を基板面に対して垂直な方向に貫通しており、第一の基板のおもて面及び裏面において開口している。また、この液体供給口は、第一の基板のおもて面から裏面に向かう厚み方向において、開口形状が徐々に広がっており、その基板面に垂直な断面形状は台形である。ここで、第一の基板のおもて面とは、基板の対向する2つの面のうちの、パターン等が形成される側の面を意味し、このおもて面に対向する面が裏面(第一の基板面)となる。
吐出口13は、エネルギー発生素子11の上方のノズル構成部材部分に形成することができ、通常、1つの液体吐出ヘッドに複数形成される。吐出口の形状(開口部形状やノズル構成部材の厚み方向における形状等)は、特に限定されない。図2では、開口部の形状が円形の吐出口が形成されているが、その他にも、四角形や中央がくびれた形状、多角形等、様々な形状のものを用いることができる。
液体流路14は、吐出口13と液体供給口15とに連通しており、エネルギー発生素子上に設けられている。
本発明より得られる液体吐出ヘッドを用いて、紙等の記録媒体に記録を行う場合、このヘッドの吐出口が形成された面(吐出口面)を記録媒体の記録面に対面するように配置する。そして、液体供給口15から液体流路14に供給及び保持された液体(例えばインク)が、エネルギー発生素子から発生するエネルギーによって、液体吐出口13から吐出され、記録媒体にこの液体が着弾することにより印字(記録)を行うことができる。
<液体吐出ヘッドの製造方法>
以下に、図3を用いて、本発明に係る液体吐出ヘッドの製造方法の各工程を詳しく説明する。なお、図3は、本発明に係る液体吐出ヘッドの製造方法の実施形態の一例を説明するための模式的断面図であり、これらの断面図は、図2に示すA−A’線で切断した際の断面図に相当する。なお、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではない。
(第一の基板準備工程)
まず、図3(a)に示すように、第一の基板21を準備する。第一の基板は、液体吐出ヘッドの一部として機能し、液体流路及び液体吐出口を有するノズル構成部材の支持体として機能し得るものであれば、その形状、材質等に特に限定されることなく使用することができる。第一の基板21としては、例えば、シリコン基板を用いることができる。通常、後述するエネルギー発生素子22を制御するドライバーやロジック回路等の部材(不図示)は、汎用的な半導体製法にて製造される為、第一の基板として、シリコン基板を用いることが好ましい。
第一の基板21上に配されるエネルギー発生素子22は、液体吐出ヘッドの吐出口から液体(例えば、インク等の記録液)を吐出するためのエネルギーを発生できるものであればよい。エネルギー発生素子22としては、例えば、液体を沸騰させる電気熱変換素子(発熱抵抗体素子、ヒータ素子)や、体積変化や振動により液体に圧力を与える素子(ピエゾ素子、圧電素子)などを用いることができる。なお、エネルギー発生素子22の数や配置は、作製する液体吐出ヘッドの構造に応じて適宜選択することができ、例えば、この素子を複数、所定のピッチで2列に並べて、第一の基板のおもて面に設けることができる。
このようなエネルギー発生素子22によって、液体(液滴)を吐出させるための吐出エネルギーが液体に与えられ、記録が行われる。例えば、エネルギー発生素子22として電気熱変換素子が用いられる場合には、この素子が近傍の液体を加熱することにより、液体に状態変化を生起させ吐出エネルギーを発生させる。具体的には、電気熱変換素子に記録信号に応じた電気が通電されることにより電気熱変換素子によって変換された熱エネルギーにより、充填されていた液体中に気泡を瞬間的に発生させる。この気泡の成長によって液滴を液体吐出口から吐出させ、記録媒体に記録する。
また、例えば、エネルギー発生素子22として液体に圧力を与える素子が用いられる場合には、この素子の機械的振動等によって、吐出エネルギーを発生させる。
なお、第一の基板21上には、これらのエネルギー発生素子22を動作させるための制御信号入力用電極(不図示)を有することができる。さらに、この第一の基板は、エネルギー発生素子22上に、この素子をインク等の液体から保護することを目的とした保護層(不図示)や、ノズル構成部材と第一の基板との密着性の向上を目的とした密着向上層(不図示)等の各種機能層を設けることもできる。
(第一の樹脂層形成工程)
図3(b)に示すように、エネルギー発生素子22を有する第一の基板21上に、第一の樹脂材料を(例えば固形分中の主成分として)含む第一の樹脂組成物を、塗布及び必要に応じて加熱処理等による乾燥(固化)を行うことにより、第一の樹脂層23を形成する。
上述したように、第一の樹脂層は、第一の樹脂組成物の固化物であることができ、第一の樹脂層も第一の樹脂材料(液体流路パターン形成用樹脂材料)を主成分として含むことができる。ここで、第一の樹脂組成物は、上記第一の樹脂材料の他に、溶剤等の他の添加剤を含むことができる。
なお、第一の樹脂材料の種類及びT(A)、並びに、第一の樹脂組成物の塗布方法、乾燥方法、及び第一の樹脂組成物中の含有割合等は、上述した構造体の製造方法におけるそれらと同様にすることができる。液体吐出ヘッドを作製する場合には、第一の樹脂材料としては、上述したポジ型感光性樹脂(例えば、ポリメチルイソプロペニルケトン等)を用いることが好ましい。
(液体流路パターン形成工程)
続いて、図3(c)に示すように、フォトリソグラフィー等の方法で、第一の樹脂層23を作製するパターンに応じたフォトマスク(不図示)を介して、露光及び現像することにより、第一の樹脂層23のパターニングを行い、液体流路パターン24を形成する。第一の樹脂材料が感光性を有していない場合は、上記構造体の製造方法において説明した方法を同様に用いることができる。
(第二の樹脂層形成工程)
次いで、図3(d)に示すように、液体流路パターンが形成された第一の基板を、第二の樹脂材料を(例えば固形分中の主成分として)含む第二の樹脂組成物で被覆し、第二の樹脂層25を形成する。ここで、第二の樹脂層25は、液体流路パターン24が有する凹凸の影響で、その表面に凹凸を有している。
なお、第二の樹脂組成物の被覆(塗布)方法、乾燥方法、第二の樹脂組成物中の含有割合、第二の樹脂組成物に含むことができる添加剤、並びに、第二の樹脂材料の種類、及び、Tg(B)等は、上述した構造体の製造方法におけるそれらと同様にすることができる。
なお、第二の樹脂層25は、後の工程において、ノズル構成部材として機能するものであることから、構造材料としての高い機械的強度、下地との密着性、耐液体性、並びに、吐出口の微細なパターンをパターニングするための解像性等が要求される。これらの特性を満足する第二の樹脂材料としては、例えば、上述したカチオン重合型のエポキシ樹脂化合物(ネガ型感光性樹脂)を用いることができる。
(第二の基板準備工程)
次に、以下では、第二の基板を用いた平坦化工程に着目した説明を行う。このため、本発明の液体吐出ヘッドの製造方法では、第二の基板を準備する工程を有することができる。
具体的には、図3(e)に示す、第二の基板26を準備する。第二の基板26の種類や厚み等は、構造体の製造方法において上述した第二の基板におけるそれらと同様にすることができる。
(平坦化工程)
図3(e)に示すように、液体流路パターン24及び第二の樹脂層25が形成された第一の基板21を、第二の樹脂材料のTg(B)以上に加熱した状態で、第二の基板26によりプレスし、第二の樹脂層の表面を平坦化し、表面が平坦化された第二の樹脂層25aを形成する。平坦化工程における加熱方法や加熱温度、平坦化方法等は、上述した構造体の製造方法におけるそれらと同様にすることができる。
(冷却工程)
次に、プレスされた液体流路パターン24及び第二の樹脂層25aが配された第一の基板を(例えば25℃以下に)冷却する。この際の冷却条件(冷却温度や冷却速度)や冷却方法等は、上述した構造体の製造方法におけるそれらと同様にすることができる。
(剥離工程)
次に、冷却工程により冷却された第一の基板21と、第二の基板26とを引き離し、図3(f)に示す基板を得ることができる。
(パターニング工程(吐出口形成工程))
次に、図3(g)に示すように、フォトリソグラフィー等の方法で、表面が平坦化された第二の樹脂層25aのパターニングを行い、エネルギー発生素子上の第二の樹脂層部分に吐出口27を形成する。例えば、第二の樹脂材料が感光性を有する場合は、所望のフォトマスク(不図示)を介して、例えばi線ステッパーを用いて露光、及び現像することにより、吐出口27を形成する。第二の樹脂材料が感光性を有しない場合は、上記構造体の製造方法において説明した方法を同様に用いることができる。
(液体供給口形成工程)
次いで、図3(h)に示すように、第一の基板21を貫通する液体供給口28を形成する。液体供給口28は、例えば、サンドブラスト、ドライエッチング、及び、ウエットエッチング等の手法、あるいは、これらの手法を適宜組み合わせることにより形成することができる。具体的には、第一の基板として、例えば<100>、<110>の結晶方位を持つシリコン基板を用いて、アルカリ系のエッチング液に対して耐性を持つ適当な樹脂材料をマスクとして、ウエットエッチング(異方性エッチング)を行う。これにより、第一の基板21を貫通する液体供給口28を形成することができる。
ここで、上述した結晶方位を持つシリコン基板は、アルカリ系のエッチング液を用いた化学エッチングを行うことにより、エッチングの進行方向に関して、深さ方向と幅方向の選択性ができ、これによりエッチングの異方性を得ることができる。特に、<100>の結晶方位を持つシリコン基板は、エッチングを行う幅によって、エッチングされる深さが幾何学的に決定されるため、エッチング深さを制御することができる。例えば、エッチングの開始面から深さ方向(図3では、紙面下から上の方向)に、傾斜(例えば、54.7°の傾斜)を持って狭くなる孔(液体供給口)を形成することができる。
アルカリ系のエッチング液としては、例えば、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム及びテトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド等の水溶液を用いることができる。
(液体流路パターン除去工程(液体流路形成工程))
次いで、図3(i)に示すように、必要に応じて、第二の樹脂層の上面から(用いた第二の樹脂材料に最適な感光波長の)光を露光装置(不図示)より照射し、液体流路パターン24を溶解除去することで、液体流路29を形成する。
また、必要に応じて加熱処理を施し、第二の樹脂層を十分に硬化させることができる。さらに、液体供給のための部材(不図示)の接合や、エネルギー発生素子22を駆動するための電気的接合を行うことができる。また、複数の液体吐出ヘッドを同時に作製する場合には、これらのヘッドを切断し分離させる工程(切断分離工程)を行うこともできる。
以上より、液体吐出ヘッドを製造することができる。
以下に、実施例を用いて、本発明の製造方法をより詳しく説明する。なお、以下の例では、構造体として、液体吐出ヘッドを作製した。
[実施例1]
まず、図3(a)に示すように、エネルギー発生素子22を有する第一の基板21を用意した。具体的には、第一の基板21として、8インチのシリコン基板を用い、エネルギー発生素子22として、電気熱変換素子(材質:TaSiNからなるヒーター素子)を用いた。そして、ヒーター素子と、液体流路及び吐出口を形成する部分に配されるSiN及びTaを含む(SiN+Ta)積層膜(不図示)とが配されたシリコン基板を用意した(第一の基板準備工程)。
次いで、図3(b)に示すように、ヒーター素子を有するシリコン基板上に、第一の樹脂組成物をスピンコートし、120℃で6分間のベークを行い、第一の樹脂層23を形成した(第一の樹脂層形成工程)。ここで、上記第一の樹脂組成物は、第一の樹脂材料:ポジ型感光性樹脂であるポリメチルイソプロペニルケトン20質量部と、溶剤:シクロヘキサノン80質量部とから構成される。なお、塗膜前後の基板の反りの変化量測定により、上記ポリメチルイソプロペニルケトンのシリコン基板に対する膜応力がゼロになる温度(T(A))を計測したところ、60℃であった。
次いで、図3(c)に示すように、第一の樹脂層(ポジ型感光性樹脂層)23を、フォトマスク(不図示)を介して、Deep−UV露光装置(ウシオ電機製、商品名:UX−3000)を用いて、14J/cmの露光量で全面露光した。その後、現像液:メチルイソブチルケトンにより第一の樹脂層の現像を行い、第一の樹脂材料(ポリメチルイソプロペニルケトン)を含む液体流路パターン24を形成した(液体流路パターン形成工程)。
続いて、液体流路パターン24が形成されたシリコン基板上に、以下の組成からなる第二の樹脂組成物を、(第一の基板表面からの厚みで最も厚い部分の)膜厚を15μmとして、スピンコートした。その後、得られた基板を、ホットプレートを用いて、90℃で2分間のプリベークを行い、第二の樹脂層(ネガ型感光性樹脂層)25を形成した(第二の樹脂層形成工程)。なお、下記第二の樹脂材料及び第二の樹脂層は、25℃において固体の状態で存在する。
(第二の樹脂組成物の組成)
・第二の樹脂材料(カチオン重合型エポキシ樹脂化合物):
EHPE(商品名、ダイセル化学工業製、ガラス転移温度Tg(B):78℃)
100質量部
・光重合開始剤:
アデカオプトマーSP−172(商品名、ADEKA社製) 5質量部
・シランカップリング剤:
A−187(商品名、東レ・ダウコーニング製) 5質量部
・溶剤:メチルイソブチルケトン 100質量部。
次いで、液体流路パターン24及び第二の樹脂層25が配されたシリコン基板を、Tg(B)以上の温度、即ち、80℃に加熱し、第二の基板26として石英基板を用いて、第二の樹脂層表面を平坦化するためのプレスを行った(平坦化工程)。平坦化処理後、プレスされた液体流路パターン及び第二の樹脂層が配されたシリコン基板を15℃まで冷却した(冷却工程)。具体的には、第二の樹脂層を構成する樹脂の粘度が50秒以内で1.0×10倍以上増加するように、クーリングプレートの温度を15℃に設定し、シリコン基板面(石英基板側の面とは反対側の面)をクーリングプレートに接するように置き、冷却を行った。なお、シリコン基板面をクーリングプレートに載置した時間を、冷却開始時間(0s)とした。冷却開始時点での第二の樹脂層を構成する樹脂の温度は、78℃であった。
図4に示すように、この冷却の際、温度:73℃(Tg(B):78℃−5℃))〜30℃(25℃+5℃ )の冷却温度域において、冷却速度は、略2.1℃/sec(グラフの傾き:−2.1℃/sec)で略一定であった。
なお、図5に示すように、第二の樹脂層を構成する樹脂(被覆樹脂)の粘度は、プレス後(冷却開始時)の78℃の状態で、2.93×10Pa・sであったものが、冷却開始から31秒後に25℃の状態で4.11×10Pa・sとなった。また、第二の樹脂層を構成する樹脂のT(A):60℃における粘度は、3.93×10Pa・sであった。
従って、Tg(B)から25℃まで冷却される際に、第二の樹脂層を構成する樹脂の粘度は、31秒で1.40×10倍増加した。さらに、T(A)から25℃まで冷却される際に、第二の樹脂層を構成する樹脂の粘度は、20秒で1.05×10倍増加した。
続いて、冷却した上記シリコン基板を石英基板から剥離し、図3(f)に示す表面が平坦化された第二の樹脂層25aを有するシリコン基板を得た(剥離工程)。次に、フォトマスク(不図示)を介して、i線ステッパー(キヤノン製、商品名:i5)を用いて、4000J/mの露光量にて、第二の樹脂層を露光し、ホットプレートにて90℃で240秒のPEB(Post Exposure Bake)を行った。その後、メチルイソブチルケトンにて現像、イソプロピルアルコールにてリンス処理を行い、140℃で60分間の熱処理を行って、図3(g)に示す、吐出口27を形成した(吐出口形成工程)。なお、本実施例では、第二の樹脂層に、上記フォトマスク(不図示)を用いて、φ(直径)8μmの吐出口パターンを形成した。
次いで、図3(h)に示すように、得られたシリコン基板に対して反応性イオンエッチングを行い、シリコン基板に液体供給口28を形成した。
次いで、図3(i)に示すように、Deep−UV露光装置(ウシオ電機製、商品名:UX−3000)を用い、第二の樹脂層25a越しに250000mJ/cmの露光量で、液体流路パターン24を全面露光し、液体流路パターン24を可溶化した。引き続き、乳酸メチル中に超音波を付与しつつ、得られた基板を浸漬して液体流路パターン24を溶解除去することで、吐出口27に連通する液体流路29を形成した(液体流路形成工程)。
作製した液体吐出ヘッドにおいて、エネルギー発生素子22から吐出口の(素子側の)開口面までの高さのばらつきを6つのサンプル(吐出口)に対して電子顕微鏡で測定した。その結果、これらのサンプルでは、平均で0.45%のばらつきしかなく、極めて平坦性の高い、液体吐出ヘッドが得られた。また、この液体吐出ヘッドを用いて、液体の吐出実験を行い、形成した画像を目視及び電子顕微鏡で確認した。その結果、液体量のばらつきがほとんどなく、安定した吐出によりムラの少ない画像が確認された。
[実施例2]
実施例1において、平坦化処理後のシリコン基板を冷却する際に、クーリングプレートの温度を−20℃に設定し、シリコン基板面ではなく、石英基板面(石英基板の対向する2つの面のうち、シリコン基板側の面とは反対側の面)をクーリングプレートに接するように置き、15℃まで冷却を行った。それら以外は、実施例1と同じ方法で液体吐出ヘッドを作製した。なお、実施例2では、冷却開始時点(石英基板面をクーリングプレートに載置した時点)での第二の樹脂層を構成する樹脂の温度は、77℃であった。
図4に示すように、上記冷却の際、温度:73℃〜30℃の冷却温度域において、冷却速度は、略1.7℃/sec(グラフの傾き:−1.7℃/sec)で略一定であった。また、図5に示すように、第二の樹脂層を構成する樹脂の粘度は、冷却開始時の77℃の状態で、3.49×10Pa・sであったものが、冷却開始から35秒後に25℃の状態で4.11×10Pa・sとなった。また、第二の樹脂層を構成する樹脂のT(A):60℃における粘度は、3.93×10Pa・sであった。
従って、冷却開始時の77℃から25℃まで冷却される際に、第二の樹脂層を構成する樹脂の粘度は、35秒で1.18×10倍増加した。即ち、実施例2の冷却操作では、Tg(B)〜25℃の冷却温度域の間に、50秒以内で樹脂粘度を1.0×10倍以上増加させる冷却温度域(77℃〜25℃)を有していた。
さらに、T(A)から25℃まで冷却される際に、第二の樹脂層を構成する樹脂の粘度は、20秒で1.05×10倍増加した。
作製した液体吐出ヘッドにおいて、エネルギー発生素子22から吐出口の(素子側の)開口面までの高さのばらつきを6つのサンプル(吐出口)に対して電子顕微鏡で測定した。その結果、これらのサンプルの平均で0.46%のばらつきしかなく、極めて平坦性の高い、液体吐出ヘッドが得られた。この液体吐出ヘッドを用いて、液体の吐出実験を行い、形成した画像を目視及び電子顕微鏡で確認した。その結果、液体量のばらつきがほとんどなく、安定した吐出によりムラの少ない画像が確認された。
[実施例3]
実施例1で用いた第二の樹脂組成物に対して、パターニング後の硬化性を向上させる目的で、添加剤を添加した。ここで、実施例3で用いた第二の樹脂組成物の組成を以下に示す。
(実施例3で用いた第二の樹脂組成物の組成)
・第二の樹脂材料(カチオン重合型エポキシ樹脂化合物):
EHPE(商品名、ダイセル化学工業製、ガラス転移温度Tg(B):78℃)
100質量部
・光重合開始剤:
アデカオプトマーSP−172(商品名、ADEKA社製) 5質量部
・シランカップリング剤:
A−187(商品名、東レ・ダウコーニング製) 5質量部
・添加剤(熱硬化触媒)
銅(II)トリフラート: 2質量部
・溶剤:メチルイソブチルケトン 100質量部。
また、実施例1において、平坦化処理後のシリコン基板を冷却する際に、クーリングプレートの温度を25℃に設定し、シリコン基板面をクーリングプレートに接するように置き、25℃まで冷却を行う冷却方法へと変更した。それら以外は、実施例1と同じ方法で液体吐出ヘッドを作製した。なお、実施例3では、冷却開始時点(シリコン基板面をクーリングプレートに載置した時点)での第二の樹脂層を構成する樹脂の温度は、77℃であった。
なお、図4に示すように、73℃から30℃までの冷却速度としては、略1.2℃/sec(グラフの傾き:−1.2℃/sec)で略一定であった。また、図5に示すように、第二の樹脂層を構成する樹脂の粘度は、冷却開始時の77℃の状態で、1.75×10Pa・sであったものが、冷却開始から50秒後に25℃の状態で2.05×10Pa・sとなった。また、第二の樹脂層を構成する樹脂のT(A):60℃における粘度は、1.97×10Pa・sであった。
従って、冷却開始時の77℃から25℃まで冷却される際に、第二の樹脂層を構成する樹脂の粘度は、50秒で1.17×10倍増加した。即ち、実施例3の冷却操作では、Tg(B)〜25℃の冷却温度域の間に、50秒以内で樹脂粘度を1.0×10倍以上増加させる冷却温度域(77℃〜25℃)を有していた。
さらに、T(A)から25℃まで冷却される際に、第二の樹脂層を構成する樹脂の粘度は、33秒で1.04×10倍増加した。
作製した液体吐出ヘッドにおいて、エネルギー発生素子22から吐出口の(素子側の)開口面までの高さのばらつきを6つのサンプル(吐出口)に対して電子顕微鏡で測定した。その結果、これらのサンプルの平均で0.55%の高さばらつきがあり、実施例1や2と比較すると高さばらつきが少し多かったが、極めて平坦性の高い、液体吐出ヘッドが得られた。この液体吐出ヘッドを用いて、液体の吐出実験を行い、形成した画像を目視及び電子顕微鏡で確認した。その結果、液体量のばらつきがほとんどなく、安定した吐出によりムラの少ない画像が確認された。
[比較例1及び2]
実施例1において、冷却工程におけるクーリングプレートの温度とクーリングプレートに接する面を、下記表1に記載の内容に変更し、平坦化処理後のシリコン基板を比較例1では15℃まで冷却し、比較例2では25℃まで冷却した。それら以外は、実施例1と同じ方法で、液体吐出ヘッドを作製した。その結果、液体流路パターン等を有するシリコン基板をTg(B)から25℃まで冷却する際に、第二の樹脂層を構成する樹脂の粘度を、1.0×10倍以上増加させる為には、比較例1では62秒かかり、比較例2では80秒かかった。また、これらの比較例では、液体流路パターン等を有するシリコン基板を冷却する際の全ての温度領域において、第二の樹脂層を構成する樹脂の粘度を50秒以内に1.0×10倍以上増加させることはできなかった。さらに、これらの比較例では、T(A)〜25℃の冷却温度域で、第二の樹脂層を構成する樹脂の粘度を40秒以内に1.0×10倍以上増加させることはできなかった。
これらの比較例より得られた液体吐出ヘッドでは、エネルギー発生素子から吐出口の開口面までの高さのばらつきが大きかった(比較例1:サンプル平均0.91%、比較例2:サンプル平均0.95%)。これらの液体吐出ヘッドを用いて、液体の吐出実験を行い、形成した画像を目視及び電子顕微鏡でそれぞれ確認した。その結果、いずれの液体吐出ヘッドについても液体量のばらつきがあり、ムラの目立つ画像が確認された。
Figure 2018161780
なお、図4には、上記表1中の実施例1〜3及び比較例1における、冷却時間と、第二の樹脂層を構成する樹脂の温度との関係を示し、図5に、実施例1〜3における、第二の樹脂層を構成する樹脂の温度と、粘度との関係を示す。
1、10、21:基板(第一の基板)
2、23:第一の樹脂層
3:パターン(第一の樹脂材料を含むパターン)
4、25:第二の樹脂層(樹脂層)
4a、25a:表面が平坦化された第二の樹脂層(樹脂層)
5、26:第二の基板
6:平坦面
7:パターン(第二の樹脂材料を含む微細な構造)
11、22:エネルギー発生素子
12:ノズル構成部材
13、27:吐出口(液体吐出口)
14、29:液体流路
15、28:液体供給口
24:液体流路パターン

Claims (23)

  1. 基板と、該基板上に配される、パターンおよび樹脂層とを有する構造体の製造方法であって、
    基板上に、第一の樹脂材料を含む第一の樹脂組成物を用いて、該第一の樹脂材料を含むパターンを形成する工程と、
    該基板および該パターンを、第二の樹脂材料を含む第二の樹脂組成物で被覆し、該第二の樹脂材料を含む樹脂層を形成する工程と、
    該パターンおよび該樹脂層が配された基板を、該第二の樹脂材料のガラス転移温度以上に加熱した状態でプレスし、該樹脂層の表面を平坦化する工程と、
    プレスされた該パターンおよび該樹脂層が配された基板を冷却する冷却工程と、
    を有し、
    該第一の樹脂材料の基板に対する膜応力がゼロになる温度(T(A))と、該第二の樹脂材料のガラス転移温度(Tg(B))とが、
    T(A) < Tg(B)
    の関係を満たし、
    プレスされた該パターンおよび該樹脂層が配された基板が冷却される際に、該樹脂層を構成する樹脂の粘度が50秒以内で1.0×10倍以上増加する、
    ことを特徴とする構造体の製造方法。
  2. 前記冷却工程が、プレスされた前記パターンおよび前記樹脂層が配された基板を25℃以下に冷却する工程であり、
    プレスされた該パターンおよび該樹脂層が配された基板がTg(B)から25℃まで冷却される際に、該樹脂層を構成する樹脂の粘度が50秒以内で1.0×10倍以上増加する、請求項1に記載の構造体の製造方法。
  3. プレスされた前記パターンおよび前記樹脂層が配された基板が冷却される際に、該樹脂層を構成する樹脂の粘度が40秒以内で1.0×10倍以上増加する、請求項1または2に記載の構造体の製造方法。
  4. 前記冷却工程が、プレスされた前記パターンおよび前記樹脂層が配された基板を25℃以下に冷却する工程であり、
    プレスされた該パターンおよび該樹脂層が配された基板がT(A)から25℃まで冷却される際に、該樹脂層を構成する樹脂の粘度が40秒以内で1.0×10倍以上増加する、請求項1〜3のいずれか一項に記載の構造体の製造方法。
  5. 前記冷却工程が、プレスされた前記パターンおよび前記樹脂層が配された基板を25℃以下に冷却する工程であり、
    プレスされた該パターンおよび該樹脂層が配された基板を冷却する冷却速度が、1.5℃/sec以上である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の構造体の製造方法。
  6. 前記冷却工程が、プレスされた前記パターンおよび前記樹脂層が配された基板を25℃以下に冷却する工程であり、
    プレスされた該パターンおよび該樹脂層が配された基板を冷却する冷却速度が、略一定の速度である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の構造体の製造方法。
  7. 前記樹脂層を構成する樹脂が、25℃で固体の状態である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の構造体の製造方法。
  8. 前記樹脂層を構成する樹脂の25℃における粘度が、1.0×10Pa・s以上である、請求項1〜7のいずれか一項に記載の構造体の製造方法。
  9. 前記第一の樹脂材料が、ポジ型感光性樹脂であり、前記第二の樹脂材料が、ネガ型感光性樹脂である、請求項1〜8のいずれか一項に記載の構造体の製造方法。
  10. 前記ポジ型感光性樹脂が、ポリメチルイソプロペニルケトンと、メタクリル酸エステルを主成分とする高分子化合物で構成される主鎖分解型の感光性樹脂とからなる群から選択される樹脂である、請求項9に記載の構造体の製造方法。
  11. 前記ネガ型感光性樹脂が、カチオン重合型のエポキシ樹脂化合物である、請求項9または10に記載の構造体の製造方法。
  12. 基板と、該基板上に配される、第二の樹脂材料を含む構造と、を有する構造体であって、
    請求項1〜11のいずれか一項に記載の製造方法より得られる構造体における、表面が平坦化された前記樹脂層をパターニングする工程と、
    前記第一の樹脂材料を含むパターンを除去する工程と、
    を有する、ことを特徴とする構造体の製造方法。
  13. 液体を吐出するための吐出口および該吐出口に連通する液体流路を有するノズル構成部材と、該吐出口から液体を吐出するためのエネルギー発生素子を有する基板とを有する液体吐出ヘッドの製造方法であって、
    エネルギー発生素子を有する基板上に、第一の樹脂材料を含む第一の樹脂組成物を用いて、該第一の樹脂材料を含む液体流路パターンを形成する工程と、
    該基板および該液体流路パターンを、第二の樹脂材料を含む第二の樹脂組成物で被覆し、該第二の樹脂材料を含む樹脂層を形成する工程と、
    該液体流路パターンおよび該樹脂層が配された基板を、該第二の樹脂材料のガラス転移温度以上に加熱した状態でプレスし、該樹脂層の表面を平坦化する工程と、
    プレスされた該液体流路パターンおよび該樹脂層が配された基板を冷却する冷却工程と、
    該樹脂層に吐出口を形成する工程と、
    該液体流路パターンを除去して、該吐出口に連通する液体流路を形成する工程と、
    を有し、
    該第一の樹脂材料の基板に対する膜応力がゼロになる温度(T(A))と、該第二の樹脂材料のガラス転移温度(Tg(B))とが、
    T(A) < Tg(B)
    の関係を満たし、
    プレスされた該液体流路パターンおよび該樹脂層が配された基板が冷却される際に、該樹脂層を構成する樹脂の粘度が50秒以内で1.0×10倍以上増加する、
    ことを特徴とする液体吐出ヘッドの製造方法。
  14. 前記冷却工程が、プレスされた前記液体流路パターンおよび前記樹脂層が配された基板を25℃以下に冷却する工程であり、
    プレスされた該液体流路パターンおよび該樹脂層が配された基板がTg(B)から25℃まで冷却される際に、該樹脂層を構成する樹脂の粘度が50秒以内で1.0×10倍以上増加する、請求項13に記載の液体吐出ヘッドの製造方法。
  15. プレスされた前記液体流路パターンおよび前記樹脂層が配された基板が冷却される際に、該樹脂層を構成する樹脂の粘度が40秒以内で1.0×10倍以上増加する、請求項13または14に記載の液体吐出ヘッドの製造方法。
  16. 前記冷却工程が、プレスされた前記液体流路パターンおよび前記樹脂層が配された基板を25℃以下に冷却する工程であり、
    プレスされた該液体流路パターンおよび該樹脂層が配された基板がT(A)から25℃まで冷却される際に、該樹脂層を構成する樹脂の粘度が40秒以内で1.0×10倍以上増加する、請求項13〜15のいずれか一項に記載の液体吐出ヘッドの製造方法。
  17. 前記冷却工程が、プレスされた前記液体流路パターンおよび前記樹脂層が配された基板を25℃以下に冷却する工程であり、
    プレスされた該液体流路パターンおよび該樹脂層が配された基板を冷却する冷却速度が、1.5℃/sec以上である、請求項13〜16のいずれか一項に記載の液体吐出ヘッドの製造方法。
  18. 前記冷却工程が、プレスされた前記液体流路パターンおよび前記樹脂層が配された基板を25℃以下に冷却する工程であり、
    プレスされた該液体流路パターンおよび該樹脂層が配された基板を冷却する冷却速度が、略一定の速度である、請求項13〜17のいずれか一項に記載の液体吐出ヘッドの製造方法。
  19. 前記樹脂層を構成する樹脂が、25℃で固体の状態である、請求項13〜18のいずれか一項に記載の液体吐出ヘッドの製造方法。
  20. 前記樹脂層を構成する樹脂の25℃における粘度が、1.0×10Pa・s以上である、請求項13〜19のいずれか一項に記載の液体吐出ヘッドの製造方法。
  21. 前記第一の樹脂材料が、ポジ型感光性樹脂であり、前記第二の樹脂材料が、ネガ型感光性樹脂である、請求項13〜20のいずれか一項に記載の液体吐出ヘッドの製造方法。
  22. 前記ポジ型感光性樹脂が、ポリメチルイソプロペニルケトンと、メタクリル酸エステルを主成分とする高分子化合物で構成される主鎖分解型の感光性樹脂とからなる群から選択される樹脂である、請求項21に記載の液体吐出ヘッドの製造方法。
  23. 前記ネガ型感光性樹脂が、カチオン重合型のエポキシ樹脂化合物である、請求項21または22に記載の液体吐出ヘッドの製造方法。
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