JP2018159396A - スラストころ軸受の保持器およびスラストころ軸受 - Google Patents

スラストころ軸受の保持器およびスラストころ軸受 Download PDF

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Abstract

【課題】スラストころ軸受において回転トルクの低減と保持器ところとの接触による摩耗量の低減を両立させる。
【解決手段】スラストころ軸受用保持器(70)は、環状の円板であり互いに径の異なる一対の環状部(72,79)と、当該一対の環状部を連結して周方向に間隔をあけて設けられる複数の柱部(74)と、隣接する複数の柱部の間に設けられてスラストころ軸受のころを収容するポケット(73)と、ポケットよりも外径側に連続する領域を内径側に折り曲げて形成される外径領域折り曲げ部(75)と、ポケットに整列する位置で外径領域折り曲げ部に設けられてポケットの外径側の端縁(73g)よりも内径側に突出する突出部(76)と、突出部に設けられてポケットに収容されるころ(13)の外径側部分(16)に0.07[mm]以上0.13[mm]以下の範囲に含まれる接触面積で接触する平坦面(76f)とを備える。
【選択図】図2

Description

本発明は、スラストころ軸受の保持器(以下、単に「保持器」という場合がある)およびスラストころ軸受に関するものである。
例えば、自動車用の自動変速機、カーエアコン用コンプレッサ等においてアキシアル荷重が負荷される箇所には、アキシアル荷重を受けるスラストころ軸受が配置される場合がある。スラストころ軸受は、回転軸方向に配置される軌道輪と、軌道輪の軌道面上を転動する複数の針状ころと、複数の針状ころを保持する保持器とを備える。
このようなスラストころ軸受は、低燃費化、および省力化の観点から、スラストころ軸受の回転抵抗(以下、回転トルクともいう)の低減が望まれている。例えば特開2016―98841号公報(特許文献1)には、スラストころ軸受に設けられる保持器に対し、ポケットよりも外径側に位置する領域を内径側に45°未満の傾斜角度で折り曲げて外径領域折り曲げ部を形成する。そして、ポケットのそれぞれに整列した位置で外径領域折り曲げ部の先端(折り曲げ箇所から最も遠い箇所)が、ポケットに収容されたころの端面に接触するように、ポケットの外径側の端縁から内径側に突出する突出部を備えるというものである。
特許文献1記載のスラストころ軸受の保持器によれば、軸受回転時にころに作用する遠心力によりころが軸中心から外径側に向けて付勢されたときに、ころの端面と外径領域折り曲げ部の突出部が接触する面積は小さい。このように小面積であることから、ころの回転抵抗を低減でき、スラストころ軸受の回転トルクを低減できるというものである。かかる突出部を保持器に設けない旧来のスラストころ軸受の場合、ころ端面がポケットの外径側端縁に当接して両者の接触面積が大きくなり、ころの回転抵抗が大きく、スラストころ軸受の回転トルクが大きいという問題があった。
特開2016―98841号公報
しかし、上記従来のようなスラストころ軸受の保持器にあっては、さらに改善すべき点があることを本発明者は見いだした。つまり突出部の接触面積を小さくし、点接触に近づけると、ころから突出部に作用する遠心力が同じであれば接触面積における面圧が大きくなる。その結果、突出部の摩耗量が大きくなるため、摩耗粉の発生によるスラストころ軸受の回転異常やスラストころ軸受の低寿命化に注意が必要であることがわかった。
本発明は、上述の実情に鑑み、スラストころ軸受において、ころと保持器突出部との接触による摩耗量を低減させつつ、回転トルクの低減も図ることができる技術を提供することを目的とする。
この目的のため本発明によるスラストころ軸受の保持器は、環状の円板であり、互いに径の異なる一対の環状部と、一対の環状部を連結して、周方向に間隔をあけて設けられる複数の柱部と、隣接する複数の柱部の間に設けられて、スラストころ軸受のころを収容する複数のポケットと、ポケットよりも外径側に連続する領域を内径側に折り曲げて形成される外径領域折り曲げ部と、ポケットに整列する位置で外径領域折り曲げ部に設けられてポケットの外径側の端縁よりも内径側に突出する突出部とを備える。そして突出部は、ころの外径側部分に0.07[mm]以上0.13[mm]以下の範囲に含まれる接触面積で接触する平坦面を有する。
かかる本発明によれば、突出部に0.07[mm]以上の平坦面が設けられてこの平坦面がころ端面と点接触ではなく、面接触する。これによりスラストころ軸受の回転によってころが遠心力で平坦面に押しつけられても、面接触における面圧が大きくならないよう抑制することができる。したがって突出部の早期の摩耗を防止して、耐久性を向上させることができる。もし平坦面の面積が0.07[mm]未満の場合、ころ端面と平坦面との接触面積が小さくなってしまい、点接触に近づく。そうするとスラストころ軸受の回転によってころが遠心力で平坦面に押しつけられる間、点接触における面圧が大きくなり、突出部が早期に摩耗してしまう。
また本発明によれば、突出部の平坦面が0.13[mm]以下であることから、ころ端面と平坦面がすべり接触する際の摩擦抵抗を小さくすることができる。したがってスラストころ軸受の回転トルクを小さくすることができる。もし平坦面の面積が0.13[mm]を超える場合、回転トルクが大きくなってしまうため、好ましくない。スラストころ軸受の保持器は例えば、環状部と、環状部から内径方向に延びる複数の柱部とを備え、周方向で隣り合う柱部同士間にポケットを区画する。そして環状部は、ポケットの外径側の端縁を区画する平面部と、平面部から外径側に連続する領域を内径側に折り返して形成される外径領域折り曲げ部と、ポケットに整列する位置で外径領域折り曲げ部に形成されてポケットの外径側の端縁よりも内径側に突出する突出部と、突出部に設けられてポケットに収容されるころの外径側部分に0.07[mm]以上0.13[mm]以下の範囲に含まれる接触面積で接触する平坦面とを有する。
ポケットの外径側の端縁よりも内径側に突出する突出部の突出長は特に限定されないが、本発明の一実施形態として突出部のポケットの外径側の端縁からの突出長は0.10[mm]以上0.20[mm]以下の範囲に含まれる所定値である。かかる実施形態によれば突出長が十分に確保されることから、スラストころ軸受を所定の使用条件で長期間運転しても、ころがポケットの外径側の端縁に接触することを回避できる。そして保持器70の耐久性が確保され、スラストころ軸受20の軸受寿命が向上する。なお突出長とは保持器の半径方向に計測される寸法をいう。
突出部の平坦面は、その表面粗さを特に限定されないが、本発明の好ましい実施形態として平坦面は、突出部における他の表面部分よりも平滑である。かかる実施形態によれば、ころとのすべり接触において摩擦抵抗を益々低減することができる。なお表面粗さは小さい方が好ましい。具体的には例えば、算術平均粗さRa(JIS B 0601)2μm以下に平滑化されるとよい。
スラストころ軸受の保持器は例えば板状であり、軸受ないし保持器の軸線に直角な平面部を含む。かかる平面部は例えば、保持器のうちポケットよりも外径側に連続する領域に含まれる。具体的には平面部は、外径領域折り曲げ部から内径方向に連続する。そして平面部と外径領域折り曲げ部は折り曲げ箇所で接続する。かかる平面部および外径領域折り曲げ部を、保持器の軸線を含む平坦な切断面で切断すると、その断面形状は、折り曲げ箇所を頂点とするV字状になる。V字の折り曲げ角度は特に限定されないが本発明の好ましい実施形態として、保持器のうちポケットよりも外径側に連続する領域は、外径領域折り曲げ部と、保持器の軸線に対して直角な板部分であってポケットの外径側の端縁を区画する平面部を含み、ポケットの外径側の端縁を区画する平面部と外径領域折り曲げ部との間の折り曲げ角度が、0°以上45°未満の範囲に含まれる。かかる実施形態によれば、突出部がころに向かって突出することから、突出部の平坦面の面積が大きくならないようにできる。他の実施形態として、ポケットの外径側の端縁を区画する平面部と外径領域折り曲げ部との間の折り曲げ角度が、45°以上90°未満の範囲に含まれることが考えられる。この場合は、突出部がころに沿って配置されるか、あるいはころの表面と略平行になり、突出部の平坦面の面積が大きくなってしまうため、突出部の形状に工夫を要する。より好ましい実施形態として折り曲げ角度が25°以上35°以下の範囲に含まれる。
また本発明のスラストころ軸受は、上述した保持器と、ポケットに収容されるころと、転動体が転動する軌道面を有する軌動輪と、を備える。また軌道輪は、転動体を挟むようにしてスラストころ軸受の軸線方向両側に配置される。
このように本発明によれば、スラストころ軸受に関し、ころと保持器突出部との接触による摩耗量を低減させ、さらには回転トルクも低減することができる。
本発明の一実施形態になるスラストころ軸受の保持器を示す概略図である。 同実施形態を含むスラストころ軸受を示す断面図である。 同実施形態のポケットを示す拡大図である。 同実施形態のポケットの外径側の端縁を示す拡大断面図である。 同実施形態を含むスラストころ軸受に関する試験結果を示す。 同実施形態を含むスラストころ軸受に関する試験結果を示す。 本発明の一実施形態になるスラストころ軸受の保持器の製造方法の代表的な工程を示すフローチャートである。 溝形成工程を行った後の保持器素材を示す概略図である。 溝形成工程を行った後の保持器素材を示す拡大断面図である。 外径領域折り曲げ工程を行う状態を示す拡大断面図である。 外径領域折り曲げ工程を行う状態を示す拡大断面図である。 外径領域折り曲げ工程を実施する状態を示す拡大断面図である。 面押し加工工程を行う状態を示す拡大断面図である。 面押し加工工程を行った後の外径領域折り曲げ部の突出部を拡大して示す拡大断面図である。 本発明のスラストころ軸受を具備する可変容量片斜板タイプの斜板式コンプレッサを模式的に示す縦断面図である。
以下、本発明の実施の形態を、図面に基づき詳細に説明する。図1は、本発明の一実施形態になるスラストころ軸受の保持器を示す概略図であり、スラストころ軸受の回転中心である軸線O方向からみた状態を表す。なお図1では繰り返しを避けるため、保持器の一部および複数のポケットを図略する。図2は、同実施形態の保持器を含むスラストころ軸受を示す断面図であり、図1中にII―IIで示す平面で保持器を切断し、当該切断面を矢の方向からみた状態と、保持器のポケットに収容されるころと、保持器を介して対面する一対の軌道輪を表す。なお図2では繰り返しを避けるため、スラストころ軸受の軸線Oよりも紙面右側のみを表す。図3は、同実施形態のポケットを示す拡大図であり、図1に対応する。図4は、同実施形態のポケットの外径側の端縁を示す拡大断面図であり、図2に対応する。
本発明の一実施形態に係るスラストころ軸受20は、対向する一対の軌動輪14,15と、軌動輪14,15の間で放射状に配置された転動体(以下、単に「ころ」とも呼ぶ)13と、転動体13を保持する保持器70とを備えている。以下では、図1〜図4を参照して、まず、保持器70の構成について説明する。保持器70は、環状の円板であって、その中央領域に板厚方向に真直ぐに貫通する円形の中心開口70hが設けられている。中心開口70hには、図示しない回転軸が配置される。なお、以下の説明では、スラストころ軸受の中心軸に沿った方向を「軸方向」、中心軸に直交する方向を「径方向」、中心軸を中心とする円弧に沿った方向を「周方向」と呼ぶ。また、図1において、紙面手前側を軸方向上側、紙面奥側を軸方向下側と呼ぶ場合がある。
保持器70は、互いに異なる径を有する一対の環状部72、79と、一対の環状部72、79を連結する複数の柱部74とを備えている。一対の環状部72,79は環状の円板であって、中心開口70hが形成された第1環状部72と、当該第1環状部72よりも径方向と外側に設けられた第2環状部79とで構成されている。第2環状部79は、第1環状部72よりも大径である。柱部74は、第1環状部72から径方向外側に向かって延びている。柱部74は、ころ(円筒ころ)13を収容するポケット72を形成するように周方向に間隔をあけて設けられている。すなわち、隣接する複数の柱部74の間に、ポケット72が設けられている。円形の中心開口70hおよび環状部72、79の各中心は保持器70の中心に一致する。また保持器70は、スラストころ軸受の軸線Oに位置するよう配置されている。
保持器70には、3個のパイロット孔71が設けられている。図1は3個のうち2個のパイロット孔71を表す。3個のパイロット孔71は、保持器70を位置決めするための係合部となる。3個のパイロット孔71は、周方向に間隔を開けて、保持器70の板厚方向に真直ぐに貫通するように設けられている。各パイロット孔71は丸孔状に開口されている。また3個のパイロット孔71は、略等配に設けられており、この場合、保持器70の軸線Oを中心として120°間隔で設けられている。複数のパイロット孔71は、具体的には、最も内径側に位置する第1の平面部61において、径方向の中央に設けられている。なお、パイロット孔71の直径としては、例えば、φ2.5[mm]や、φ3.0[mm]が選択される。
ポケット73は、図1に示すように軸線O方向から見た場合に、略矩形状である。ポケット73は、軸線Oを中心に放射状に配置されている。図2に示すようにポケット73の側壁面には、ポケット73に収容されたころ13の軸線O方向上側(紙面手前側)への脱落を防止する第1ころ止め部26と、ポケット73に収容されたころ13の軸線O方向下側(紙面奥側)への脱落を防止する第2ころ止め部27、28とが設けられている。第1ころ止め部26は、ポケット73の径方向中央に設けられている。また、第2ころ止め部27は、ポケット73のうち第1ころ止め部26に対して内径側に設けられ、第2ころ止め部28は、ポケット73のうち第1ころ止め部26に対して外径側に設けられている。第1ころ止め部26、第2ころ止め部27、および第2ころ止め部28はそれぞれ、ポケット73の周方向の両側の側壁面において、ポケット73側に突出するようにして設けられている。
図1及び2に示すように、ポケット73内には、転動体としてのころ13がかち込むようにして収容されている。転動体としてのころ13は、例えば針状ころであり、その軸寸法が径寸法の2倍以上とされる。すなわち、本実施形態のスラストころ軸受20は、スラスト針状ころ軸受である。ころ13の両端面、具体的には軸受外径側に位置する端面16および軸受内径側に位置する端面17の形状は、平坦である。ころ13は、軌道輪14の軌道面18、軌道輪15の軌道面19上を転動する。軌道輪14は軸線O方向一方(図2中、紙面上側)に配置される。軌道輪15は軸線O方向他方(図2中、紙面下側)に配置される。軌道面18と軌道面19は、軸線O方向に隙間を空けて対面する。
保持器70には、板材を板厚方向に数回折り曲げて屈曲させた凹凸形状が形成されている。具体的には、保持器70は、軸線Oを中心として円弧を描くように断続あるいは連続する4つの平面部61,62,63,64と、軸線Oを中心とする円筒面の一部になる2つの曲面部66、67と、軸線Oを中心とする円錐面の一部になる2つの曲面部68、69とを含んでいる。4つの平面部61〜64は、軸受内径側から、第1の平面部61、第2の平面部62、第3の平面部63、第4の平面部64の順に、その内径が大きくなるように構成され、同軸に配置される。
第1の平面部61は保持器70の全周に亘って延びる。第2の平面部62は保持器70の周方向に断続的に延び、周方向で隣り合う平面部67,67間にポケット73が介在する。第3の平面部63は第2の平面部62と同様である。第4の平面部64のうち内径側部分は、保持器70の周方向に断続的に延び、周方向で隣り合う内径側部分同士の間にポケット73が介在する。第4の平面部64のうち外径側部分は、保持器70の全周に亘って延びる。
4つの曲面部66〜69は、軸受内径側から第1の曲面部66、第2の曲面部67、第3の曲面部68、および第4の曲面部69の順に同軸に配置される。第1の曲面部66および第2の曲面部67は保持器70の全周に亘って延びる。第3の曲面部68は保持器70の周方向に断続的に延び、周方向で隣り合う曲面部68,68間にポケット73が介在する。第4の曲面部69は第3の曲面部68と同様である。
これらの平面部および曲面部は、保持器70の半径方向に関し、第1の曲面部66、第1の平面部61、第2の曲面部67、第2の平面部62、第3の曲面部68、第3の平面部63、第4の曲面部69、および第4の平面部64の順に連続する。
第1の曲面部66、および第2の曲面部67は、軸線O方向に真直ぐに延びるように構成されている。これに対し第3の曲面部68は、第3の平面部63と連続する軸線O方向一方が大径となり、第2の平面部62と連続する軸線O方向他方が小径となるようにやや傾斜するテーパを構成する。また最も外径側に位置する第4の曲面部69は、第3の平面部63と連続する軸線O方向一方が小径となり、第4の平面部64と連続する軸線O方向他方が大径となるようにやや傾斜するテーパを構成する。
第1ころ止め部26は、第3の平面部63に設けられている。第2ころ止め部27は、第2の平面部62に設けられている。第2ころ止め部28は、第4の平面部64に設けられている。軸受内径側の環状部72は、第1の曲面部66、第1の平面部61、および第2の曲面部67を含む構成である。軸受外径側の環状部79は、第4の平面部64の外径側領域、後述する外径領域折り曲げ部75、および後述する突出部76を含む構成である。柱部74は、第2の平面部62、第3の曲面部68、第3の平面部63、第4の曲面部69、および第4の平面部64の外径側領域を含む構成である。
保持器70は、保持器70の外径側の領域を内径側に折り曲げ形成された外径領域折り曲げ部75を含んでいる。すなわち、保持器70には、ポケット73よりも外径側に位置する領域を内径側に斜めに折り曲げて形成された外径領域折り曲げ部75が設けられている。外径領域折り曲げ部75は、軸線O方向に立上った立壁部であり、保持器70の全周に亘って延びている。外径領域折り曲げ部75は、具体的には、第4の平面部64の外径側に連続する領域(具体的には、第2のころ止め部28よりも外径側に位置する領域)を、軸線O方向一方(軸方向のうち軌動輪14側)に向けて所定の角度に折り曲げて形成される。
外径領域折り曲げ部75の角度、すなわち、外径領域折り曲げ部75の内径側に位置する面77と第4の平面部64の軸線O方向一方側の面78との間の角度は、図2中の角度Bで示される。角度Bは、0°を超えて45°未満の範囲に含まれる所定値であり、好ましくは25°以上35°以下の範囲に含まれる所定値である。
図1に示すように軸線O方向にみて、保持器70の外径側から内径側へ折り返された外径領域折り曲げ部75の端縁75fは、ポケット73の外径側の端縁73gに近い位置にされる。外径領域折り曲げ部75の内径側の端縁75fは保持器70の軸線Oを中心として円弧状に延びる。端縁75fには、ポケット73のそれぞれに整列した周方向位置で突出部76が設けられている。つまり、突出部76は、ポケット73と同じ周方向位置となるよう(ポケット73と周方向に重なるよう)、周方向等間隔に配置される。突出部76は、外径領域折り曲げ部75の端縁75fのうち各ポケット73に整列する位置に一体形成されて、径方向内側に向いている。
突出部76は、外径領域折り曲げ部75の端縁75fからさらに内径側に突出している。そして図1に示すように軸線Oを中心とする径方向位置に関し、突出部76はポケット73の外径側の端縁73gと径方向に重なるように配置されている。図3を参照して、スラストころ軸受20の周方向に計測される突出部76の幅寸法は、外径側(根元側)で大きく、内径側(突端側)で小さくなるような先細状に形成されている。
突出部76は、ポケット73に収容されるころ13の端面16に接触している。つまり、各突出部76は、各ポケット73に収容されたころ13の端面16に当接してころ13の径方向外側への移動を規制している。図1に示すように軸線Oを中心とする径方向位置に関し、本実施形態の保持器70では、外径領域折り曲げ部75の端縁75fおよび突出部76の根元部が、ポケット73の外径側の端縁73gよりも僅かに外径側に配置されている。これに対し突出部76の突端部は、ポケット73の外径側の端縁73gよりも僅かに内径側に配置される。
保持器70の半径方向に関し、突出部76のポケット73の外径側の端縁73gからの突出長Lpは0.10[mm]以上0.20[mm]以下の範囲に含まれる。
軸線Oに向かって突出する突出部76のうち最も内径側の部位、つまり最も軸線Oに近い部位、には平坦面76fが形成されている。平坦面76fは、径方向に視て、略円形あるいは略楕円形である。平坦面76fが楕円形の場合、保持器70の周方向に計測される平坦面76fの寸法Lcおよび保持器70の軸線O方向に計測される平坦面76fの寸法Ldのいずれか一方が、楕円長径の2倍であり、残る他方が楕円短径の2倍である。
平坦面76fの面積Sfは式1で表される。
[式1]
Sf=π*Lc*Ld/4
本実施形態では、平坦面76fの面積Sfが以下の条件を満たす。
[式2]
0.07[mm]≦Sf
好ましくは面積Sfが以下の範囲に収まるよう規定される。この理由については後述する。
[式3]
0.07[mm]≦Sf≦0.13[mm
突出部76は、軸線Oを中心とする周方向位置において、ポケット73の周方向の中央に、突出部76の中心が位置するように形成されている。具体的には、突出部76のうちの最も内径側に位置する部分である平坦面76fが、ポケット73の収容されたころ13の端面16の転動中心部に接触するよう設けられる。図2中、ころ13の転動中心は、紙面左右方向に真っ直ぐに延びる一点鎖線Xで表される。平坦面76fは一点鎖線Xの近傍にあるか、あるいは交差することが好ましい。
ここで、保持器70は、軸線Oを中心に自転運動を行う。また、各ポケット73に収容された各ころ13はそれぞれ、自転運動を行いながら公転運動を行う。ころ13には、軸線Oから離れるよう外径方向に遠心力が働く。そして、ころ13の端面16の回転中心部は、保持器70に設けられた突出部76、具体的には、保持器70に設けられた突出部76の最も内径側に位置する平坦面76fとすべり接触する。すなわち、突出部76のうちの平坦面76fが、ころ13の端面16と接触する領域となる。
突出部76の平坦面76fは、面押し加工されており、突出部76における他の表面部分や保持器70表面の他の部分と比較して摩擦係数が小さくなるよう平滑にされる。このためころ13の端面16が回転しながら平坦面76fにすべり接触する際、両者の間の摩擦抵抗が低減される。
面押し加工とは、外径領域折り曲げ部を形成する工程の際に、倒れ込み量を規制するためのストッパー的な役割を果たす金型の外径面を利用して、突出部を拡径方向に加圧することで、加工前後の表面の粗さ形状を平滑化する加工を意味する。具体的には、保持器の外径領域を形成する工程時に形成された、プレスせん断面または破断面が、面押し加工によって、算術平均粗さRa(JIS B 0601)2μm以下程度にまで平滑化される。端的にいえば、突出部76の平坦面76fは、突出部76の他の表面部分や、保持器70の他の表面部分よりも平滑にされる。
本実施形態の平坦面76fは、0.07[mm]以上であることから、平坦面76fは端面16と点接触ではなく、面接触する。これによりスラストころ軸受20の回転によって、ころ13が遠心力で平坦面76fに押しつけられても、面圧が大きくならないよう抑制することができる。したがって突出部76の早期の摩耗を防止して、保持器70の耐久性を向上させることができる。
もし平坦面76fの面積Sfが0.07[mm]未満の場合、端面16と平坦面76fとの接触面積が小さくなってしまい、点接触に近づく。これによりスラストころ軸受20の回転によってころ13が遠心力で平坦面76fに押しつけられる間、面圧が大きくなり、突出部76が早期に摩耗してしまう。
また本実施形態の平坦面76fは、0.13[mm]以下であることから、端面16と平坦面76fがすべり接触する際の摩擦抵抗を小さくすることができる。したがってスラストころ軸受20の回転トルクを小さくすることができる。
また本実施形態の保持器70によれば、図3に示すように突出部76のポケット73の外径側の端縁73gからの突出長Lpは0.10[mm]以上0.20[mm]以下の範囲に含まれる。これにより突出長Lpが十分に確保されて、スラストころ軸受20を所定の使用条件で長期間運転しても、ころ13の端面16がポケット73の外径側の端縁73gに接触することを回避できる。そしてスラストころ軸受用保持器70の耐久性が確保され、軸受寿命が向上する。
また本実施形態によれば、突出部76の平坦面76fが突出部76の他の表面部分よりも平滑であるから、平坦面76fところ13の端面16とのすべり接触において摩擦抵抗を益々低減することができる。
また本実施形態によれば、第4の平面部64の外径側部分がポケット73の外径側の端縁73gを区画するところ、かかる平面部64の外径側部分は保持器70の軸線Oに対して直角であり、平面部64の外径側部分と外径領域折り曲げ部75との間の角度Bが、0°以上45°未満の範囲に含まれる。これにより突出部76がころ13に向かって突出することから、突出部の平坦面の面積が大きくならないようにでき、ころ13の端面16と突出部76との接触面積を、小さすぎず大きすぎず適切な範囲である0.07[mm]以上0.13[mm]以下の範囲に設定することができる。もし角度Bが、45°以上90°未満の範囲に含まれる場合、外径領域折り曲げ部75および突出部76が端面16に沿って配置されるか、あるいは端面16と略平行になり、端面16と突出部76との接触面積が大きくなり過ぎてしまう。
本実施形態に対して性能確認のための試験を行った。
図5は、本実施形態に係るスラストころ軸受として、ころ端面と突出部の接触面積が異なる2種類の保持器を準備し、各保持器に関する試験結果を示す。第1実施例の保持器70における平坦面76fは0.07[mm]とされ、第1実施例の平坦面76fところ端面16との接触面積も0.07[mm]とされる。第2実施例の保持器70における平坦面76fは0.13[mm]とされ、第2実施例の平坦面76fところ端面16との接触面積も0.13[mm]とされる。
図5中、○で示すように第1実施例および第2実施例の保持器を備えるスラストころ軸受をアキシアル荷重3000[N]、毎分1000回転で運転した。このときの回転トルクは、第1実施例で23[N・cm]、第2実施例で25[N・cm]であった(小数点以下四捨五入)。
図5中、□で示すように第1実施例および第2実施例の保持器を備えるスラストころ軸受をアキシアル荷重3000[N]、毎分5000回転で運転した。このときの回転トルクは、第1実施例および第2実施例で28[N・cm]であった(小数点以下四捨五入)。
図5中、△で示すように第1実施例および第2実施例の保持器を備えるスラストころ軸受をアキシアル荷重3000[N]、毎分10000回転で運転した。このときの回転トルクは、第1実施例で32[N・cm]、第2実施例で33[N・cm]であった(小数点以下四捨五入)。
図5に示すように、第1実施例および第2実施例によれば、毎分1000回転以上10000回転以下の範囲の回転速度で、スラストころ軸受の回転トルクを23[N・cm]以上33[N・cm]以下の範囲に低減することができる。
なお、ころ端面16と突出部76の接触面積が第2実施例よりも大きい、つまり0.13[mm]を超える場合、回転トルクが図5に示す数値を超えてしまうため、好ましくない。またころ端面16と突出部76の接触面積が第1実施例よりも小さい、つまり0.07[mm]未満の場合、突出部76の摩耗が早くなるため、好ましくない。
図6は、本実施形態に係るスラストころ軸受として、ころ端面と突出部の接触面積が異なる3種類の保持器を準備し、各保持器に関する試験結果を示す。第1実施例の保持器70における平坦面76fは0.07[mm]とされ、第1実施例の平坦面76fところ端面16との接触面積も0.07[mm]とされる。第2実施例の保持器70における平坦面76fは0.13[mm]とされ、第2実施例の平坦面76fところ端面16との接触面積も0.13[mm]とされる。第3実施例の保持器70における平坦面76fは0.09[mm]とされ、第3実施例の平坦面76fところ端面16との接触面積も0.09[mm]とされる。
第1実施例〜第3実施例の保持器を備えるスラストころ軸受をアキシアル荷重1700[N]、毎分6500回転で300時間運転した。このときの突出部76の摩耗量は、図6中、3個の○で示すように第1実施例で0.043[mm]、第2実施例で0.020[mm]、第3実施例で0.033[mm]であった。
図6に示すように、第1実施例〜第3実施例によれば、所定の回転条件で、突出部76の摩耗量を0.020[mm]以上0.043[mm]以下の範囲に低減することができる。突出部76の突出長Lp(図3)は未使用品において0.10[mm]以上0.20[mm]以下の範囲に含まれる所定値であるから、平坦面76fの面積Sfが0.07[mm]以上あれば、摩耗量を突出長Lpの半分未満に抑えることができる。
ここで附言すると、ころ端面16と突出部76の接触面積が第2実施例よりも大きい場合、つまり接触面積が0.13[mm]を超える場合、回転トルクが図5に示す数値を超えてしまうため、好ましくない。また、ころ端面16と突出部76の接触面積が第1実施例よりも小さい場合、つまり接触面積が0.07[mm]未満の場合、突出部76の摩耗が著しくなり、耐久性および寿命の観点から好ましくない。
上述した本実施形態になるスラストころ軸受の保持器の他、対比例の保持器についても同様の試験を行った。
対比例1の保持器は、図1〜図4に示す本実施形態と略同じであるが、保持器における平坦面76fは0.03[mm]とされ、対比例1の平坦面76fところ端面16との接触面積も0.03[mm]とされる。
対比例2の保持器は、図1〜図4に示す本実施形態と略同じであるが、保持器における平坦面76fは0.18[mm]とされ、対比例2の平坦面76fところ端面16との接触面積も0.18[mm]とされる。
上述した第1〜第3実施例、対比例1、および対比例2に対し、所定条件で運転し、回転トルクを測定した。また所定条件で長時間運転し、摩耗量を測定した。試験結果を表1に示す。
Figure 2018159396
表1に示すように、対比例1のように平坦面76fが0.03[mm]の場合、回転トルクは低減したが、長時間運転後の突出部76の摩耗量が大きかった。この理由として突出部76ところ端面16が点接触に近く、面圧が大きいためと考えられる。また対比例2のように平坦面76fが0.18[mm]の場合、長時間運転後の突出部76の摩耗量は低減したが、回転トルクが大きかった。この理由として突出部76ところ端面16の接触面積が大きいからと考えられる。
上述した試験により本発明者は、平坦面76fを0.07[mm]以上0.13[mm]以下の範囲に含まれる所定値とすることにより、スラストころ軸受20の回転トルクの低減と保持器70の突出部76の摩耗量の低減を両立させることができるという知見を得た。
本実施形態のスラストころ軸受20は、例えば、自動車のトランスミッション又はカーエアコン用コンプレッサ等の自動車用部品の回転部分を支持する軸受として用いると好適である。具体的には、スラストころ軸受20は、トランスミッション又はカーエアコン用コンプレッサ等の自動車用部品のうちアキシアル荷重が負荷される部分に用いられると好適である。
近年、自動車の低燃費化の観点から、このような自動車用部品の回転部分を支持する軸受に対して回転トルクの低減が求められている。本実施形態のスラストころ軸受20は、保持器70の突出部76の摩耗を抑えつつ、当該スラストころ軸受20の回転トルクの低減を実現することができるため、スラストころ軸受20(特に保持器70)の寿命を向上させつつ、自動車の低燃費化に寄与することができる。なお、本実施形態のスラストころ軸受20は、自動車用部品に限らず、工作機械、各種機械装置の回転部分を支持してもよい。
また、自動車用部品のうちカーエアコン用コンプレッサに用いられる潤滑油は低粘度であるうえ、当該コンプレッサ内部に組み込まれたスラストころ軸受は、冷媒と潤滑油が露状に混合された潤滑環境にある。特に、近年のカーエアコン用コンプレッサでは、環境問題の対応から環境負荷が小さい冷媒、具体的には、従来の代替フロンに替わる新冷媒(例えば、HFO-1234rf(ハイドロフルオロオレフィン)等)、自然冷媒であるCO2が使用される傾向にあり、スラスト針状ころ軸受の潤滑環境はさらに低粘度化、希薄化している。また、カーエアコン用コンプレッサ内部における潤滑油量自体も少なっている。このように、コンプレッサ内部の過酷な潤滑環境下において、スラストころ軸受が使用される傾向にあるため、当該軸受の長寿命化が重要視されている。本実施形態のスラストころ軸受20では、保持器70ところ13の端面との摩耗を防ぐことができるので、過酷な潤滑環境下に置かれても、当該軸受20の寿命を確保することができる。
図15は、本発明のスラストころ軸受を具備する可変容量片斜板タイプの斜板式コンプレッサを模式的に示す縦断面図である。図15を参照して、本発明のスラストころ軸受20を具備する可変容量片斜板タイプの斜板式コンプレッサ80につき説明する。斜板式コンプレッサ80は、サイズの異なる2個のスラストころ軸受20,20と、主軸87と、傾斜板88と、ピストン89を具備し、主軸87に角度可変に取り付けられた傾斜板88でピストン89を往復運動させる。一方のスラストころ軸受20は、傾斜板88の端面に取り付けられ、相対的に大径に形成される。他方のスラストころ軸受20は、主軸87に取り付けられ、相対的に小径に形成される。
スラストころ軸受20は、図15に示す可変容量片斜板タイプの斜板式コンプレッサ80の他、図示しない変形例として容量一定片斜板タイプの斜板式コンプレッサ、あるいは両斜板タイプの斜板式コンプレッサにも適用可能である。
次に本発明の保持器の製造方法を説明する。
スラストころ軸受20の保持器70の製造については、トランスファープレスを用いて行う。トランスファープレスは、装置構成がさほど複雑ではなく、比較的安価なプレス装置である。図7は、この発明の一実施形態に係るスラストころ軸受の保持器70の製造方法の代表的な工程を示すフローチャートである。図8は、図7に示す製造方法の途中状態で保持器素材56を軸線O方向一方からみた状態を示す概略図であり、図面の煩雑さを回避するため保持器の一部および幾つかのポケットを図略する。図8は、図1に対応する。図9は、溝形成工程を行った後の保持器素材を、軸線Oを含む平面で切断し、切断面を拡大して示す拡大断面図である。図9は、図2に対応し、図8中のIX−IXで示す断面で切断した場合である。なお図8および図9は、図7中のステップS1〜S6の工程を経た状態を表す。
図7を参照して、まず、後に保持器70となる保持器素材を準備する(保持器素材準備工程:ステップS1)。この保持器素材としては、例えば、薄い平板状の鋼板が用いられる。ここで、保持器素材としては、後の外径領域形成工程(ステップS4)において、保持器素材の輪郭を形成するため、この段階においては、略矩形状に切断された板材であってもよいし、円形の板材であってもよい。
次に、このような保持器素材に対し、板厚方向に凹凸形状を形成する(凹凸形状形成工程:ステップS2)。これにより、薄板状の保持器70であっても、保持器70の回転軸方向(軸線O方向)の長さ寸法を大きく確保することができ、ころを適切に保持することができる。
ステップS2の工程では、具体的には、保持器素材に対して、絞り加工を施すことにより行う。この場合、凹凸形状をより効率的に形成することができる。具体的には、図8を参照して、平板状の保持器素材56に対し、絞り加工を行って、第1〜第4の平面部61〜64、および第1〜第4の曲面部66〜69を同心円状に形成する。そして、保持器素材56の中心に対し保持器素材56の板厚方向に貫通する丸孔状の中心開口70hを設ける。すなわち、この場合、保持器素材56は、図9に断面で示すように保持器の軸線方向に複数回屈曲させたいわゆる山谷形状を有することとなる。
次に、係合部としてのパイロット孔を形成する(パイロット孔形成工程:ステップS3)。パイロット孔71は、第1の平面部61の径方向の中央において、平面部61の板厚方向に真直ぐに貫通するように設けられる。パイロット孔71は、周方向に120度の間隔を開けて略等配に合計三つ設けられる。
次に、保持器素材56の外径領域を形成する(外径領域形成工程:ステップS4)。具体的には、後で実施する外径領域折り曲げ工程(ステップS7)等によって保持器70の形状となるように、保持器素材56を板厚方向に真直ぐに打ち抜くようにして形成する。この場合、保持器素材56の輪郭を比較的容易に、かつ、精度よく形成することができる。このようにして、保持器70の外径側の領域、具体的には、未だ折り返えされていない外径領域折り曲げ部75よび突出部76が形成される。すなわち、外径領域形成工程は、突出部76を形成する突出部形成工程でもある。
突出部76を形成するよう打ち抜く際には、複数のパイロット孔71を利用して、周方向の位置決めを行う。具体的には、先端が尖っており、テーパ状に徐々にその径を大きくしていくいわゆる鉛筆形状の位置決め治具となるガイドピン(図示せず)を複数準備し、複数のパイロット孔71に板厚方向の一方側から、それぞれ徐々に挿入する。そして、複数のガイドピンにより位置決めを行って、突出部76の位置、形状等を考慮して、保持器の輪郭を打ち抜く打ち抜き装置(図示せず)により打ち抜く。こうすることにより、多少、打ち抜き装置と保持器素材56との位置が正確に突出部76を設ける位置からずれていたとしても、先端が尖った鉛筆形状のガイドピンがパイロット孔71に徐々に挿入されていく過程において、打ち抜き装置との位置関係について、突出部76を設けるべき正しい位置に保持器素材56を戻して、打ち抜きを行うことができる。この場合、三つのパイロット孔71が設けられているため、位置決めを行う際に保持器素材56の回転等を防止して、より確実な位置決めを行うことができる。
次に、ポケットを形成する(ポケット形成工程:ステップS5)。ポケット73は、第2の平面部62の外径側の一部から、第3の平面部63を半径方向に横断して、第4の平面部64の内径側の一部までに亘り、かつ、第3の曲面部68を半径方向に横断し、さらに第4の曲面部69を半径方向に横断し、保持器素材56を板厚方向に真直ぐに貫通するようにポケット抜きして形成される。図9中に図示はしないが、ポケット73の周方向の内側に突出する形状の上側ころ止め部、下側ころ止め部も同時に形成される。すなわち、上側ころ止め部および下側ころ止め部の形状を考慮した上で、ポケット73に収容されるころ13の輪郭に対応して、ポケット抜きを行う。ポケット抜きによって複数のポケット73を同時に形成することにしてもよいし、ポケット73を一つずつ形成することにしてもよい。
ここで、保持器素材56にポケット73を形成するに際しても、ポケット抜きを行う打ち抜き装置(図示せず)と打ち抜かれる保持器素材56との位置合わせは、パイロット孔71を用いて行う。すなわち、パイロット孔71が設けられた位置を基準として、ポケット73を形成する。この場合も、上記した外径領域形成工程と同様に、複数のパイロット孔71を利用して、周方向の位置決めを行う。具体的には、上記と同様に、尖った鉛筆形状の位置決め治具としてのガイドピンを複数準備し、複数のパイロット孔71に板厚方向の一方側から先端を徐々に挿入させる。そして、複数のガイドピンにより位置決めを行って、ポケット73の位置、形状等を考慮して、打ち抜き装置によりポケット73を打ち抜く。こうすることにより、設けられるポケット73と突出部76との周方向の位相を揃えて、形成されるポケット73と形成される突出部76との位置関係を適切にすることができる。このため、形成される突出部76と形成されるポケット73との位置関係において、突出部76を精度よく効率的に形成することができるとともに、適切な箇所に精度よく突出部76が形成されているため、軸受稼働時においてころ13の端面16と突出部76とを適切に接触させることができる。
次に、図8および図9に示すように、保持器素材56に対して、ポケット73の外径側に環状の溝81を形成する(溝形成工程:ステップS6)。この工程(ステップS6)では、後述する外径領域折り曲げ工程(ステップS7)において、外径領域折り曲げ部75を形成するために折り曲げ起点となる位置に、溝81を形成する。溝形成工程(ステップS6)を実施することにより、後述する外径領域折り曲げ工程(ステップS7)において、保持器素材56の外径側の領域を容易に内側に折り曲げることができるが、溝形成工程(ステップS6)は省略されてもよい。また、ステップS4〜S6の順序は特に限定されない。
次に、保持器素材56においてポケット73よりも外径側に位置する領域を内径側に45°の傾斜角度で折り曲げて、外径領域折り曲げ部を形成する(外径領域折り曲げ工程)(ステップS7)。先に溝形成工程(ステップS6)を実施している場合には、溝81を折り曲げ起点として、保持器素材56の外径側の領域を折り曲げて、外径領域折り曲げ部を形成する。
図10は、外径領域折り曲げ工程(ステップS7)の準備段階の保持器素材の一部を拡大して示す拡大断面図である。図11および図12は、外径領域折り曲げ工程を実施する状態を示す拡大断面図である。図10〜図12に示す断面は、図2および図9に対応する。
外径領域折り曲げ工程(ステップS7)では、図11に示すように、環状に延びる保持器素材56の外径側の端部82を全域に亘って一旦、板厚方向に真直ぐとなるよう直角に折り曲げる。すなわち、外径領域折り曲げ部75の内径側に位置する面78と第4の平面部64の上側の面77との間の角度Bは、おおよそ直角である。直角に折り曲げる方法は特に限定されないが、例えば図10に示すように、保持器素材56において第4の平面部64のうち外径側の領域(端部82)を除く内径側の領域を保持部材101、102で上下方向に挟み込んで保持し、第4の平面部64の外径側の領域(端部82)の軸線O方向他方(紙面下側)に押圧部材103を配置する。次いで、図11に示すように、押圧部材103を軸線O方向一方(紙面上側)に押し上げることにより、外径側領域折り曲げ部75が第4の平面部64に対して直角になるように折り曲げることができる。
次に図12の状態から図13の状態に移行するように、外径側領域折り曲げ部75を内径側に向かってさらに折り曲げ、平面部64に対し45°未満の傾斜角度で内径側に斜めに折り曲げられた外径領域折り曲げ部75を形成する。
具体的には図12に示すように外径側領域折り曲げ部75が第4の平面部64に対して直角になるように折り曲げられた保持器素材56において、外径側領域折り曲げ部75よりも内径側の領域を金型104、105で軸線O方向(紙面上下方向)に挟み込んで保持する。このとき、軸線O方向一方の金型104の外径側端面104aは、軸線O方向他方の金型105の外径側端面105aよりも内径側に位置している。さらに、外径領域折り曲げ部75を軸線O方向一方(紙面上側)から軸線O方向他方(紙面下側)に向けて加圧する金型106を、外径領域折り曲げ部75のうち保持器素材56の外径側に指向する外径面83に接するように配置する。金型106は、軸線O方向一方(紙面上側)の金型104と保持器素材56の半径方向に突き合わされ、かつ鉛直方向に延びる内径側端面106aと、この内径側端面106aと連なり、かつ外径側に広がる水平面106bと、外径領域折り曲げ部75の外径面83と突き合わせられ、かつ鉛直方向に広がる内径側面106cとを備える。水平面106bと内径側面106cとの交差する隅部分106dは、丸(R)形状にされて、水平面106bと内径側面106cは滑らかに接続する。
図12に示す状態で内径側端面106aが金型104の外径側端面104aに沿ったまま金型106を軸線O方向他方(紙面下側)に移動させると、図12中の端部82が丸形状である隅部分106dに案内されて、外径領域折り曲げ部75を内径側に向かって斜めになるように折り曲げることができる。端部82は、突出部76を含んでいてもよいし、外径領域折り曲げ部75のうち突出部76を除いた外縁75fであってもよい。
図13に示す外径領域折り曲げ部75の角度(傾斜角度)、すなわち、外径領域折り曲げ部75の内径側に位置する面78と第4の平面部64の上側の面77との間の角度は、角度Bで示される。角度Bは、図2に沿って前述した通りである。すなわち、角度Bは、0°を超えて45°未満であり、25°以上35°以下の範囲に含まれる所定値であることが好ましい。
図8に示すように本実施形態では、周方向の位置関係において、突出部76がポケット73の周方向の中央に設けられているため、適切な箇所に突出部76が形成されることになる。具体的には、突出部76のうち、第4の平面部64側に位置する平坦面76fで、ころ13の端面16の中心部と当接することになる。
次に図13に示す状態から、突出部76のうちころ13の端面16と接触する領域に対し面押し加工(ステップS8)に移行する。具体的には図13に示すように、金型106をさらに下方に移動し、金型104の外径側端面104aを突出部76のうち最も内径側部分に押し当てて該部分を平滑化し(平坦面76f)、かつ金型106の水平面106bで突出部76のうち平面部64から最も軸線O方向に離れた部分を平滑化する(図14の平坦面76g)。これにより周方向に間隔を空けて配置される突出部76に対し、平坦面76fを形成することができる。図14は、外径領域折り曲げ部75および突出部76のうち図13中の丸囲み部XIVを取り出して示す拡大断面図である。面押し加工された平坦面76fは、図2に示すように保持器70のポケットに収容されるころの端面とすべり接触する。
このようにして、上記した図1〜図4に示す構成のスラストころ軸受の保持器70を製造する。
なお上記の実施の形態においては、パイロット孔については、板厚方向に真直ぐに貫通するよう構成することとしたが、これに限らず、例えば、パイロット孔の孔壁面がテーパ状となるように貫通していてもよい。また、丸孔状の形状に関わらず、四角形状の孔や三角形状の孔等を採用することもできる。なお、係合部としてパイロット孔を設けることとしたが、これに限らず、係合部を他の構成、例えば、切り欠きによって構成することにしてもよい。
また、上記の実施の形態においては、凹凸形状形成工程において絞り加工を行うこととしたが、これに限らず、絞り加工以外の工程、例えば折り曲げ加工によって凹凸形状を形成することにしてもよい。図示しない変形例として、前述した丸孔のパイロット孔71を設けることに替えて、複数設けられるポケットのうちの少なくとも一つを、パイロット孔としてもよい。
ところで図2に示すスラストころ軸受20に備えられ、ころ13を収容するポケットが複数設けられているスラストころ軸受20の保持器70を製造するに際し、図7に示す本発明の製造方法によれば、保持器素材56を準備する工程(ステップS1)と、保持器素材56の内径側領域にポケット73を形成する工程(ステップS5)と、保持器素材56の外周縁のうちポケット73に対応する周方向位置に突出部76を形成する工程(ステップS4)と、突出部76をポケット73の外径側の端縁73gよりも内径側に突出させるように保持器素材56の外周縁を内径側に折り曲げる工程(ステップS7)と、ポケット73に収容されるころ13の端面に0.07[mm]以上0.13[mm]以下の範囲に含まれる接触面積で接触する平坦面76fを突出部76に形成する工程(ステップS8)とを備える。これによりスラストころ軸受において回転トルクの低減と摩耗量の低減を両立させる保持器を製造することができる。
また本実施形態の製造方法によれば図7にステップS8に示すように、平坦面76fを突出部76に形成する工程を面押し加工によって行う。これにより平坦面76fを平滑にしてころ端面16と平坦面76fとの摩擦抵抗を低減し得て、ひいては回転トルクの小さなスラストころ軸受20を提供することができる。
また本実施形態の製造方法によれば図13に示すように、ステップS8の面押し加工は、保持器素材56の内径方向かつ軸線方向一方へ傾斜して突出する突出部76に対し、突出部76よりも内径側に配置される第1の金型104で突出部を支持しつつ、突出部76よりも軸線O方向一方に配置される第2の金型106で突出部76を軸線O方向に押圧することにより行う。これにより突出部76の突端に面押し加工を確実に施すことができる。特に突出部76のうち保持器素材56の最も内径側の部分に確実に面押し加工を施して、突出部76の平坦面76fを保持器素材56の軸線Oと略平行に対面させることができる。
以上、図面を参照してこの発明の実施の形態を説明したが、この発明は、図示した実施の形態のものに限定されない。図示した実施の形態に対して、この発明と同一の範囲内において、あるいは均等の範囲内において、種々の修正や変形を加えることが可能である。
13 ころ、 14,15 軌道輪、 16,17 ころ端面、
18,19 軌道面、 20 スラストころ軸受、
26,27,28 ころ止め部、 56 保持器素材、
61,62,63,64 平面部、 66,67,68,69 曲面部、
70 保持器、 70h 中心開口、 71 パイロット孔、
72,79 環状部、 73 ポケット、 73g 端縁、
74 柱部、 75 外径領域折り曲げ部、 75f 端縁、
76 突出部、 76f,76g 平坦面、 81 溝、
82 端部、 83 外径面、 101 保持部材、
104 第1の金型、 106 第2の金型。

Claims (5)

  1. 環状の円板であり、互いに径の異なる一対の環状部と、
    前記一対の環状部を連結して、周方向に間隔をあけて設けられる複数の柱部と、 隣接する前記複数の柱部の間に設けられて、スラストころ軸受のころを収容するポケットと、
    前記ポケットよりも外径側に連続する領域を内径側に折り曲げて形成される外径領域折り曲げ部と、
    前記ポケットに整列する位置で前記外径領域折り曲げ部に設けられて前記ポケットの外径側の端縁よりも内径側に突出する突出部と、を備え、
    前記突出部は、前記ころの外径側部分に0.07[mm]以上0.13[mm]以下の範囲に含まれる接触面積で接触する平坦面を有する、スラストころ軸受の保持器。
  2. 前記突出部の前記ポケットの外径側の端縁からの突出長は0.10[mm]以上0.20[mm]以下の範囲に含まれる、請求項1に記載のスラストころ軸受の保持器。
  3. 前記平坦面は、前記突出部における他の表面部分よりも平滑である、請求項1または2に記載のスラストころ軸受の保持器。
  4. 前記ポケットよりも外径側に連続する領域は、保持器の軸線に対して直角な板部分であって前記ポケットの外径側の端縁を区画する平面部を含み、
    前記ポケットの外径側の端縁を区画する平面部と前記外径領域折り曲げ部との間の折り曲げ角度が、0°以上45°未満の範囲に含まれる、請求項1〜3のいずれかに記載のスラストころ軸受の保持器。
  5. 請求項1〜4のいずれか1項に記載のスラストころ軸受の保持器と、
    前記ポケットに収容される複数のころと、
    前記複数のころが転動する軌道面を有する軌動輪とを備える、スラストころ軸受。
JP2017055648A 2017-03-22 2017-03-22 スラストころ軸受の保持器およびスラストころ軸受 Pending JP2018159396A (ja)

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