JP2018153027A - 同期電動機の回転位置推定装置,空調機及び洗濯機 - Google Patents

同期電動機の回転位置推定装置,空調機及び洗濯機 Download PDF

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Abstract

【課題】駆動騒音を抑制しつつ高精度で回転位置を推定する。【解決手段】インバータ回路3,電流検出部7,3相PWM信号パターンを生成するPWM生成部5,PWM信号の搬送波に基づき検出タイミング信号を生成する検出タイミング信号生成部9,検出タイミング信号に応じて電流検出部7により検出される相電流の変化量を求める電流変化量検出部8,相電流の変化量に基づき同期電動機の回転位置を推定する回転位置演算部10を備え、PWM生成部5は搬送波の周波数を2種類以上に切り替え設定し、電流検出部7は周波数が最低の搬送波が設定されている期間に相電流を検出する。PWM生成部5は、搬送波の1周期内で検出タイミング信号生成部により生成される固定された少なくとも4点の検出タイミング信号に応じて電流変化量検出部8が少なくとも2種類の電圧ベクトル期間に対応する相電流変化量を検出できるよう3相PWM信号パターンを生成する。【選択図】図1

Description

本発明の実施形態は、同期電動機の回転位置を推定する装置,及びその装置を備えた空調機並びに洗濯機に関する。
従来、同期電動機の回転位置を推定する方法として、例えば同期電動機の速度に比例する誘起電圧を同期電動機への入力電圧と電流より演算し、その誘起電圧に基づいて推定する方法が広く用いられている。しかしながら、この方法は、同期電動機が高速で運転される領域では十分な精度が得られるが、誘起電圧情報が少なくなる極低速で運転される領域では、正確な推定ができないという問題がある。
また、駆動周波数に関係しないセンシングのための交流信号を同期電動機に印加し、電圧電流の関係から回転位置を推定する方法も提案されている。しかし、交流信号の周波数がキャリア周波数以下となる数100Hz〜数kHz程度の場合、モータの電流リップル周波数が人の可聴域に入るため、モータの駆動騒音が悪化することになる。これに対して、特許文献1では、キャリア周期の半周期毎に各相PWM信号のパルス幅を制御することでキャリア周波数と同周波数の高周波電流を発生させ、騒音を抑制しながら回転位置を推定する手法が提案されている。
また、特許文献2では、キャリアの1周期を基準にして位相を120度ずつずらした3種類の三角波キャリアを用いて3相のPWM信号を生成することで、等価的に特許文献1と同様のキャリア周波数と同周波数の高周波電流を発生させ、その電流微分により回転位置を推定する手法が提案されている。
特許第3454212号公報 特許第4670045号公報
インバータ出力に含まれる高周波成分やキャリア周波数成分の高周波電流を利用して回転位置を推定する方法では、高周波電圧に応じて流れる高周波電流がインバータ出力の基本波成分の電圧に対して外乱となる。しかし、キャリア周波数は同期電動機の回転速度に対して十分に高いので、トルクに対する外乱とはならない。またこの方法は、回転位置推定においては電流帰還値にローパスフィルタを付加する等の必要がなく、制御システムとしての応答性が良好となる利点がある。
しかしながら、実用化の観点から見ると、キャリア周波数に対応する高周波電流の大きさは同期電動機のパラメータに依存して決まるため、その影響は使用する同期電動機に応じて異なり、様々なシステムに対して汎用的に適用できない。具体的には、突極性が小さい、或いはインダクタンスが大きい電動機では、キャリア周波数の電流リップル成分が小さく、回転位置推定のSN比が低下する問題がある。また、高精度な回転位置推定を行う目的で、キャリア周波数の電流リップル成分を大きくためするには、周波数を低く設定する必要がある。その場合、モータの駆動騒音が増加してしまう。
そこで、駆動騒音を抑制しつつ高精度で回転位置を推定できる同期電動機の回転位置推定装置,及びその装置を備えた空調機並びに洗濯機を提供する。
実施形態の同期電動機の回転位置推定装置は、同期電動機の相電流を検出する電流検出部と、前記同期電動機の回転位置に追従するように3相のPWM信号パターンを生成するPWM生成部と、前記PWM信号の搬送波に基づいて、検出タイミング信号を生成する検出タイミング信号生成部と、前記検出タイミング信号に応じて、前記電流検出部により検出される相電流の変化量を求める電流変化量検出部と、前記相電流の変化量に基づいて、前記同期電動機の回転位置を推定する回転位置推定部とを備える。
そして、前記PWM生成部は、前記搬送波の周波数を2種類以上に切り替え設定し、前記電流検出部は、前記周波数が最低の搬送波が設定されている期間に前記相電流を検出する。また、前記PWM生成部は、前記搬送波の1周期内において前記検出タイミング信号生成部により生成される固定された少なくとも4点の検出タイミング信号に応じて、前記電流変化量検出部が少なくとも2種類の電圧ベクトル期間に対応する相電流変化量を検出できるように3相のPWM信号パターンを生成する。
第1実施形態であり、モータ駆動制御装置の構成を示す機能ブロック図 インバータ回路を構成するスイッチング素子のオン状態を空間ベクトルで表した図 各相の電流変化量と回転位置との関係を示す図 回転位置推定部の構成を示す機能ブロック図 各相のPWMキャリア及びパルス信号と、電流検出タイミングとを示す図 キャリア生成部の構成を示す機能ブロック図 キャリア周波数を切替える状態を説明する図 モータ回転数と電流変化量検出キャリア周波数を挿入する上限周波数との関係を説明する図 基準キャリア周波数16kHzに電流変化量検出用キャリア周波数8kHzを1回挿入した場合の3相のPWM信号波形を示す図 第2実施形態であり、各相のPWMキャリア及びパルス信号と、電流検出タイミングとを示す図 第3実施形態であり、モータ駆動制御装置の構成を示す機能ブロック図 各相の電流変化量と回転位置との関係を示す図 各相のPWMキャリア及びパルス信号と、電流検出タイミングとを示す図 第4実施形態であり、モータ駆動制御装置を空気調和機の圧縮機モータに適用した場合を示す図 第5実施形態であり、モータ駆動制御装置を洗濯乾燥機のドラムモータ及び/又は圧縮機モータに適用した場合を示す図 洗濯乾燥機に使用されるヒートポンプの構成を示す図
(第1実施形態)
以下、第1実施形態について図1から図9を参照して説明する。図1は、モータ駆動制御装置の構成を示す機能ブロック図である。直流電源1は、回転子に永久磁石を備える永久磁石同期モータ(以下、単にモータと称す)2を駆動する電力源である。直流電源1は、交流電源を直流に変換したものでも良い。インバータ回路3は、6個のスイッチング素子,例えばNチャネルMOSFET4U+,4Y+,4W+,4U−,4Y−,4W−を3相ブリッジ接続して構成されており、後述するPWM生成部5で生成される3相分6つのスイッチング信号に基づいて、モータ2を駆動する電圧を生成する。
電圧検出部6は、直流電源1の電圧Vdcを検出する。電流検出部7は、インバータ回路3の負側電源線と直流電源1の負側端子との間に接続されている。電流検出部7は、一般にシャント抵抗やホールCTなどを用いた電流センサ及び信号処理回路で構成され、モータ2に流れる直流電流Idcを検出する。
電流変化量検出部8は、後述する検出タイミング信号生成部9より入力される検出タイミング信号t1〜t6に基づいて直流電流Idcを6回検出し、2回毎の検出値の差分値を変化量dIu_V1,dIv_V3,dIw_V5として算出する。回転位置演算部10は、上記変化量dIu_V1,dIv_V3,dIw_V5からモータ2の回転位置検出値θcを算出する。3相電圧指令値生成部11は、指令値である電圧振幅指令値Vampと電圧位相指令値φvとから、3相の電圧指令値Vu,Vv,Vwを生成する。
デューティ生成部12は、3相電圧指令値Vu,Vv,Vwを直流電圧Vdcで除すことで各相の変調指令Du,Dv,Dwを演算する。PWM生成部5は、3相変調指令Du,Dv,Dwと、キャリア生成部13より入力される各相のPWMキャリア,搬送波とを比較して各相のPWM信号パルスを生成する。1相当たりのパルスにはデッドタイムが付加され、それぞれ3相上下のNチャネルMOSFET4に出力するスイッチング信号U+,U−,V+,V−,W+,W−を生成する。
尚、キャリア生成部13は、後述するようにキャリア周波数を変更設定する。そのキャリア周波数の情報は、検出タイミング信号生成部9に入力されている。
以上の構成において、モータ2及びインバータ回路3を除いたもの、回転位置検出装置14を構成している。そして、回転位置検出装置14にインバータ回路3を加えたものがモータ駆動制御装置15を構成している。
ここで、本実施形態における回転位置検出方法の原理を説明する。(1)式は、突極性を有する同期電動機の3相インダクタンスを示している。
Figure 2018153027
(1)式に示すように、各相のインダクタンスLu,Lv,Lwは回転位置θに応じて変化する。このインダクタンスの回転位置に対する依存性を利用することで、モータの速度がゼロ近傍となる条件下でも転位置を推定することができる。
図2は、インバータ回路を構成するスイッチング素子のオン状態を空間ベクトルと呼ばれる手法で表したものである。例えば(1,0,0)は,U相上側のスイッチング素子がオン、V相及びW相の上側スイッチング素子がオフの状態を示しており、電圧ベクトルはV0〜V7の8つのパターンが存在する。
ここで,電圧ベクトルV1(1,0,0)を印加している再のモータの相間電圧方程式を(2)式に示す。上からUV線間電圧,VW線間電圧,WU線間電圧を示している。
Figure 2018153027
但し、Vdcは直流電圧,Eu,Ev,Ewは各相の誘起電圧,Rは巻線抵抗,Iu_V1,Iv_V1,Iw_V1は、電圧ベクトルV1を印加した際の3相電流値である。ここでモータ回転数が極低速であり,巻線抵抗による電圧降下と誘起電圧が直流電圧Vdcに比べ非常に小さい場合、(2)式中の各相の電流微分値は(3)式を用いて(4)式に近似できる。
Figure 2018153027
ここで、インダクタンス値L0,L1と直流電圧Vdcとを(5)式のようにAと置くと、(4)式は(6)式に変形できる。
Figure 2018153027
同様に、電圧ベクトルV3印加中のV相電流微分値dIv_V3/dt,電圧ベクトルV5印加中のW相電流微分値dIw_V5/dtは(7)式で示される。電圧ベクトルV1,V3,V5印加中のU,V,W相の電流微分値に微分時間dtを乗じて電流変化量とし、まとめたものが(8)式である。
Figure 2018153027
これら3つの電流変化量は、図3に示すように直流オフセット量2dt/Aを持ち,振幅L1dt/(AL0)で回転位置2θに応じて、それぞれの位相差2d/3で変化する交流信号である。これらは交流信号であるが、そのオフセット量2dt/Aや振幅L1dt/(AL0)にはモータのパラメータが含まれている。そこで、パラメータを用いない簡易な回転位置演算を行うため、3つの信号の差分値のゼロクロス信号を生成し、それに基づき推定回転位置θcを求める。(8)式で示す3相の電流変化量がそれぞれ交差する回転位置は(9)式のようになる。
Figure 2018153027
それぞれの交差位置がそれぞれ2種類の回転位置θを表すのは、(8)式の電流変化量が2θで変化するからである。
また、これらの交差位置に基づくと、各相の大小関係によって6つのセクタに分けることができる。
Figure 2018153027
ここで、回転位置の分解能を「12」とすれば、上記セクタ内における回転位置は、各相電流変化量の交差角度を平均した角度として()内のように表すことができる。
次に、セクタ毎に2種類の回転位置のどちらを選択するかを決定するアルゴリズムについて説明する。モータが回転すると、電気角1周期中に上記セクタは1から6まで変化した後、再度1から6まで変化する。そこで、最初のセクタ1〜6までをセクタの第1周期とし、続く第2周期は別セクタとして考える。つまり、下記に示すように、セクタ数を「12」としてそれぞれに回転位置を割り当てる。これは、セクタが1→6まで変化した後にカウントアップするカウンタを用いることで容易に実現できる。
Figure 2018153027
また、別の実現方法として、(9)式で示した各相電流変化量の交差角度を用いて、電流変化量が交差した場合に回転位置を交差角度に更新する方法でも良い。
これらの方法を用いる場合、モータが回転する前、すなわち初期回転位置においては、上記のカウンタがカウントを開始する前であるため、各相の電流変化量からどちらの位置が正しいか判定する必要がある。例えば、検出した電流変化量の大小関係が
dIv_V3>dIu_V1>dIw_V5であるとき、該当するセクタは1又は7であり、回転位置は75°又は−105°となる。
モータ駆動前の停止状態において上記のどちらかを判定するためには、初期位置の同定アルゴリズムが必要となる。これについては、従来の公知技術である磁気飽和の特性を用いた方式にて判定を行う。本公知技術については、例えば下記の文献などの手法がある。
電気学会論文誌D(産業応用部門誌)Vol.125(2005),No.3「パルス電圧を用いた表面磁石同期モータの初期回転位置推定法」,山本修,荒隆裕
以上のアルゴリズムによって、検出した電流変化量から同期電動機の回転位置を推定できる。
図4に回転位置演算部10の構成を示す。コンパレータ21uは、入力される電流変化量dIu_V1とdIv_V3とを比較する。コンパレータ21vは、入力される電流変化量dIv_V3とdIw_V5とを比較する。コンパレータ21wは、入力される電流変化量dIw_V5とdIu_V1とを比較する。コンパレータ21u〜21wの出力信号は、2θc演算部22に入力される。2θc演算部22は、コンパレータ21により入力される各信号の二値レベルの組み合わせから6つのセクタに基づく回転位置2θcを演算し、カウンタ演算部23に出力する。カウンタ演算部23は、上述のようにセクタ数セクタが1→6まで変化した後にカウントアップするカウンタであり「12」のセクタに応じた回転位置θcを出力する。
次に、(8)式で示した3種類の電圧ベクトル印加中の電流変化量の検出方法について説明する。それぞれ、電圧ベクトルV1印加中のU相電流、V3印加中のV相電流、V5印加中のW相電流を検出する必要がある。ここで、本実施形態では、図5に示すように各相のPWM信号を生成するためのキャリアを、それぞれ波形が異なる3種類用いる。例えばU相は三角波キャリア、V相は逆鋸波キャリア、W相は鋸波キャリアである。これらのようなキャリアを用いてPWM信号を生成すると、U相の三角波キャリアを基準とした場合、
U相PWMパルス:三角波の谷を基準に両側へ発生
V相PWMパルス:三角波の山を基準に左側へ発生
W相PWMパルス:三角波の山を基準に右側へ発生
となる。そして、6回の電流の検出タイミング信号t1〜t6を、図5に示すように与える。
・直流電流IdcからU相の電流変化量dIu_V1を検出するための信号t1,t2は、三角波の谷を基準にその前後にΔT/2ずれた時刻
・直流電流IdcからV相の電流変化量dIv_V3を検出するための信号t3,t4は、三角波の山よりもΔT前の時刻及び三角波の山の時刻
・直流電流IdcからW相の電流変化量dIw_V5を検出するための信号t5,t6は、三角波の山の時刻及び三角波の山よりもΔT遅れた時刻
上記を基準とする。
また、実際にはパルスが発生した直後はノイズによる電流検出値への影響が大きい場合もあるので、検出タイミングを上記の基準値から数μs程度ずらすこともある。そして、これらt1〜t6の検出タイミングは、インバータ回路に入力されるPWM信号によらず常に一定,すなわち固定された6点のタイミングとなる。
これらの固定タイミングで検出する電流値が、それぞれベクトルV1印加中のU相電流、ベクトルV3印加中のV相電流、ベクトルV5印加中のW相電流となるためには、各相のパルス幅に以下のような一定の制限を設ける必要がある。
<dIu_V1の検出可能条件>
・U相デューティDu>ΔT
・V相デューティDv<50%−ΔT/2
・W相デューティDw<50%−ΔT/2
<dIv_V3の検出可能条件>
・U相デューティDu<100%−2ΔT
・V相デューティDv>ΔT
・W相デューティDw<100%−ΔT
<dIw_V5の検出可能条件>
・U相デューティDu<100%−2ΔT
・V相デューティDv<100%−ΔT
・W相デューティDw>ΔT
このため、本実施形態のように回転位置を推定する場合、インバータ回路3が出力可能な変調率が制限されるが、一般にモータの停止・低速時には変調率が低いため、問題にはなり難い。
次に、本実施形態の特徴である、キャリア周波数を変更することで回転位置の検出精度向上と騒音低減する手法について説明する。(8)式で示した特定の電圧ベクトルを印加した期間中の電流変化量は、右辺に示す電流変化量を測定する微小時間dtが増加すれば増えることになる。ここで、微小時間dtを増加させるには2つの方法が考えられる。第1の方法は、ある周波数,例えば16kHzのキャリアでPWM信号を出力中の電圧ベクトルにおける微小時間dtの割合を増やすことである。つまり、キャリア周波数16kHzの周期は62.5μsであるが、このうち何%を電流変化量測定時間に割り当てるかである。5%とすれば3.1μs程度になるし、10%とすれば6.25μSとなる。便宜上、この割合を電流変化量測定変調率と呼ぶ。
第2の方法は、前述の電流変化量測定変調率は変えずに、キャリア周波数を低下させる方法である。例えば、電流変化量測定変調率を5%とすると、キャリア周波数16kHzの場合、電流変化量測定時間は3.1μSであるが、キャリア周波数を8kHzにすれば、6.25μSとなる。
第1の方法は、モータに印加する電圧の大きさ次第では、割り当てる変調率を増やすことができないという制約がある。第2の方法は変調率の制約は無いが、キャリア周波数を低下させることにより駆動騒音が増加する。そこで、本実施形態では、キャリア周波数を低下させる方法をベースとして、騒音の増加を抑制させるようキャリア周波数を選択する。
図6に各相のキャリアを生成するキャリア生成部13の構成を示す。キャリア生成部13は、3相のキャリアの周波数を決定するキャリア周波数生成部13aと、決定されたキャリア周波数に基づき3相のキャリアを生成する各相キャリア生成部13bとを備えている。キャリア周波数生成部13aには、基準となるキャリア周波数と、電流変化量検出用のキャリア周波数との2種の周波数が入力される。ここで、
(基準キャリア周波数)>(電流変化量検出用キャリア周波数)
となるように設定する。上述と同様,例えば前者を16kHz,後者を8kHzとする。
これら2つのキャリア周波数を、図7に示すように切り替えながら推移させる。すなわち、基準キャリア周波数の継続期間中に、電流変化量検出用キャリア周波数に切り換える期間を間欠的に挿入する。このとき、挿入される電流変化量検出用キャリア周波数を、1セットあたり何回継続させるかを電流変化量検出用キャリア継続回数で設定し、基準キャリア周波数の継続回数は擬似乱数を用いて設定する。この際。擬似ランダム的に決定される回数の上限と下限とを、それぞれ基準キャリア周波数継続上限回数,下限回数で制限する。
ここで、擬似乱数を用いる方式であるが、例えば簡易な方法では線形合同法などがある。これは(12)式のように定数A,B,M及び初期値X0を定義して求める方法である。
Figure 2018153027
例えば,A=19,B=11,M=222,X0=10とすると、
Xn+1=201,56,187,12,17,112,141,26,61,60,
41,124,147,140,7,144,83,34,213…
といったように擬似ランダム的な数列が続いて行く。これは周期性を持つため、周期中の最大値Xmaxがこの例では213であるが、これを基に周期を決定する。
Figure 2018153027
例えば,基準キャリア周波数継続上限回数100で乱数により201が選ばれた場合,Xmax=213を代入し、基準キャリア継続回数NbasePWM=94となる。下限回数を決めている場合に下限回数未満の値が選ばれれば、リミット処理をする。
また、上限回数,下限回数の制限であるが,上限回数はモータ回転数との関係で規定される。例えば図8は、
モータの電気角周波数:10Hz,周期100ms
基準キャリア周波数 :16kHz,周期62.5μS
電流変化量検出用キャリア周波数:8kHz,周期125μS
下限回数:1,上限回数:100
とした場合を示す。このとき,最大100周期,6.25msの期間は基準キャリア周波数により通電するが、その間に電流変化量は検出できないためモータの回転位置も検出できない。この場合、モータの回転位置検出分解能は、
100ms/6.25ms=16(22.5deg)
となる。この分解能を向上させたい場合は、上限回数「100」を減らすことで実現できる。
そして、各相キャリア生成部13bは、キャリア周波数生成部13aにおいて選択された周波数に基づき、前述したように各相毎に異なるキャリアを生成する。また、検出タイミング生成部9は、キャリア周波数が8kHzとなった際に、前述のように検出タイミング信号t1〜t6を生成し、出力する。
図9は、基準キャリア周波数16kHzに電流変化量検出用キャリア周波数8kHzを1回挿入した場合の3相のPWM信号波形である。周波数8kHzを挿入した際にモータ電流の変化の周波数が低下するため、電流変化量の周期も長くなっていることが分かる。このように、測定時間dtを長くすることができる。
以上のように本実施形態によれば、検出タイミング信号生成部9は、PWM信号の搬送波に基づいて検出タイミング信号t1〜t6を生成し、電流変化量検出部8は、検出タイミング信号t1〜t6に応じて電流検出部7により検出される相電流の変化量を求める。回転位置演算部10は、相電流の変化量に基づいてモータ2の回転位置を推定する。
そして、PWM生成部5は、PWMキャリアの1周期内において、固定された6点の検出タイミング信号t1〜t6に応じて、電流変化量検出部8が3種類の電圧ベクトル期間V1,V3,V5に対応する相電流変化量dIu_V1,dIv_V3,dIw_V5を検出できるように3相のPWM信号パターンを生成する。
具体的には、PWM生成部5は、3相のPWM信号のうちU相は、PWMキャリア周期の任意の位相を基準として遅れ側,進み側の双方向にデューティDuを増減させ、V相は前記任意の位相を基準として遅れ側,進み側の一方向にデューティDvを増減させ、W相は、前記任意の位相を基準として前記方向とは逆方向にデューティDwを増減させるようにした。これにより、高価な演算能力を持つ演算器を用いることなく、検出した電流変化量の大小関係のみに基づく簡易なアルゴリズムによる安価な演算器を用いて、モータ2の停止又は低速領域におけるセンサレス駆動が可能となる。
また、PWM生成部5は、各相のPWMパルスを発生させる基準を、キャリアの振幅が最大又は最小となる位相に基づいて設定するので、基準の設定が簡単になる。更に、PWM生成部5は、U相については三角波を、V相については前記三角波の振幅が最大又は最小を示す位相に振幅が最大を示す位相が一致する鋸歯状波を、W相については前記鋸歯状波に対して逆相となる鋸歯状波をそれぞれキャリアとして使用する。その際に、各相の基準を、各キャリア振幅の最大値又は最小値が全て一致する位相に基づいて設定する。これにより、各相のPWMパルスの伸長方向を簡単に設定できる。
そして、キャリア生成部13がキャリア周波数を手化させた際に電流変化量を検出することで、騒音発生レベルは、大部分を占める基準キャリア周波数によって規定される。基準キャリア周波数を例えば16kHz程度に高く設定することで、キャリア周波数の騒音を低減できる。更に、電流変化量の測定をより低く設定したキャリア周波数,例えば8kHzに設定した期間の電圧ベクトル発生中に検出することで、測定時間dtを大きくでき高精度な回転位置検出ができる。加えて、電流変化量検出用キャリア周波数の挿入間隔及び継続時間を擬似ランダム的に決定することで、電流変化量検出用キャリア周波数の挿入による低周波の特徴的な騒音のピークを低減し、低騒音を実現しながら、停止時及び低速領域でのモータ2のセンサレス駆動が可能になる。
(第2実施形態)
以下、第1実施形態と同一部分には同一符号を付して説明を省略し、異なる部分について説明する。第2実施形態では、各相に使用するPWMキャリアを図10に示すように設定する。各相について使用するキャリアの波形は同じであるが、第2実施形態では、U相の三角波の谷とV,W相の鋸歯状波のゼロ点とを一致させている。
また、第2実施形態では、回転位置を推定するために必要な電流変化量についても、電圧ベクトルのパターンが以下のように異なる。
・電圧ベクトルV2印加時のW相電流変化量:dIw_V2
・電圧ベクトルV4印加時のU相電流変化量:dIu_V4
・電圧ベクトルV6印加時のV相電流変化量:dIv_V6
となる。
以上のような第2実施形態によれば、第1実施形態と同様の効果が得られる。
(第3実施形態)
図11に示す第3実施形態の回転位置検出装置24は、第1実施形態と以下の点が異なっている。
・電流検出部7に替えて、インバータ回路3の各相出力端子とモータ2の各相巻線との間に電流検出部25U,25,25Wが挿入されている。
・電流変化量検出部8→電流変化量検出部26
・検出タイミング生成部9→検出タイミング生成部27
・回転位置演算部10→回転位置演算部28
・モータ駆動制御装置14→モータ駆動制御装置29
第3実施形態では、電流検出部25U,25,25Wにより各相電流Iu,Iv,Iwを検出することで、(8)式に示した電流変化量が、異なる電圧ベクトルの出力期間に得られる、以下の(14)式に示す電流変化量dIw_V6,dIu_V2,dIu_V6を使用する。
Figure 2018153027
図12は、回転位置θと、電流変化量dIw_V6,dIu_V2,dIu_V6との関係を示す。検出タイミング生成部27は、上記各電流変化量を検出するために、図13に示すように、固定された4点の検出タイミング信号t1〜t4を生成し、電流変化量検出部26に入力する。
そして、これらの電流変化量を用いて、回転位置演算部28は、基本的には第1実施形態で説明した原理と同様であるが、(15)式により3相/2相変換を行い、(16)式により逆正接演算を行うことで回転位置θを得る。
Figure 2018153027
尚、(15)式で得られる回転位置θについても第1実施形態と同様に、初期位置の同定アルゴリズムが必要となる。
以上のように第3実施形態によれば、インバータ回路3の各相出力端子とモータ2の各相巻線との間に電流検出部25U,25,25Wを挿入した構成においても、第1実施形態と同様の効果が得られる。そして、第3実施形態では、固定された4点の検出タイミング信号t1〜t4に応じて、電流変化量検出部26が2種類の電圧ベクトルV2,V6を印加する期間に対応する相電流変化量dIw,dIuを検出し、回転位置θを得る。したがって、より少ない処理負担で回転位置θが得られる。
(第4実施形態)
図14は第4実施形態であり、第1〜第3実施形態のモータ駆動制御装置を空気調和機の圧縮機モータに適用した場合を示す。ヒートポンプシステム31を構成する圧縮機32は、圧縮部33とモータ34を同一の鉄製密閉容器35内に収容して構成され、モータ34のロータシャフトが圧縮部33に連結されている。そして、圧縮機32、四方弁36、室内側熱交換器37、減圧装置38、室外側熱交換器39は、熱伝達媒体流路たるパイプにより閉ループを構成するように接続されている。尚、圧縮機32は、例えばロータリ型の圧縮機であり、モータ34は、例えば3相IPM(Interior Permanent Magnet)モータである。また、モータ34はブラシレスDCモータである。空気調和機30は、上記のヒートポンプシステム31を有して構成されている。
暖房時には、四方弁36は実線で示す状態にあり、圧縮機32の圧縮部33で圧縮された高温冷媒は、四方弁36から室内側熱交換器37に供給されて凝縮し、その後、減圧装置38で減圧され、低温となって室外側熱交換器39に流れ、ここで蒸発して圧縮機32へと戻る。一方、冷房時には、四方弁36は破線で示す状態に切り替えられる。このため、圧縮機32の圧縮部33で圧縮された高温冷媒は、四方弁6から室外側熱交換器39に供給されて凝縮し、その後、減圧装置8で減圧され、低温となって室内側熱交換器37に流れ、ここで蒸発して圧縮機32へと戻る。そして、室内側、室外側の各熱交換器37,39には、それぞれファン40,41により送風が行われ、その送風によって各熱交換器37,39と室内空気、室外空気の熱交換が効率良く行われるように構成されている。そして、モータ34を第1〜第3実施形態のモータ駆動制御装置によって駆動制御する。
以上のように構成される第4実施形態によれば、空気調和機30におけるヒートポンプシステム31を構成する圧縮機32のモータ34を、実施形態のモータ駆動制御装置により駆動制御することで、空気調和機30の運転効率を向上させることができる。
(第5実施形態)
図15及び図16に示す第5実施形態は、モータ駆動制御装置を洗濯乾燥機のドラムモータ及び/又は圧縮機モータに適用した場合を示す。図15は、ドラム式洗濯乾燥機51の内部構成を概略的に示す縦断側面図である。ドラム式洗濯乾燥機51の外殻を形成する外箱52は、前面に円形状に開口する洗濯物出入口53を有しており、この洗濯物出入口53は、ドア54により開閉される。外箱52の内部には、背面が閉鎖された有底円筒状の水槽55が配置されており、この水槽45の背面中央部にはモータ50のステータがねじ止めにより固着されている。モータ50の回転軸56は、後端部,図15では右側の端部がモータ50のロータの軸取付部に固定されており、前端部,図15では左側の端部が水槽55内に突出している。
回転軸56の前端部には、背面が閉鎖された有底円筒状のドラム57が水槽55に対して同軸状となるように固定されており、このドラム57は、モータ50の駆動によりロータ及び回転軸56と一体的に回転する。なお、ドラム57には、空気および水を流通可能な複数の流通孔58と、ドラム57内の洗濯物の掻き上げやほぐしを行うための複数のバッフル59が設けられている。水槽55には給水弁60が接続されており、当該給水弁60が開放されると、水槽55内に給水される。また、水槽55には排水弁61を有する排水ホース62が接続されており、当該排水弁61が開放されると、水槽55内の水が排出される。
水槽55の下方には、前後方向へ延びる通風ダクト63が設けられている。この通風ダクト63の前端部は前部ダクト64を介して水槽55内に接続されており、後端部は後部ダクト65を介して水槽55内に接続されている。通風ダクト63の後端部には、送風ファン66が設けられており、この送風ファン66の送風作用により、水槽55内の空気が、矢印で示すように、前部ダクト64から通風ダクト63内に送られ、後部ダクト65を通して水槽55内に戻されるようになっている。
通風ダクト63内部の前端側には蒸発器67が配置されており、後端側には凝縮器68が配置されている。これら蒸発器67及び凝縮器68は、図16に示すように圧縮機69および絞り弁70と共にヒートポンプ71を構成しており、通風ダクト63内を流れる空気は、蒸発器67により除湿され凝縮器68により加熱されて、水槽55内に循環される。絞り弁70は膨張弁から成り、開度調整機能を有している。
外箱52の前面にはドア54の上方に位置して操作パネル72が設けられており、この操作パネル72には運転コースなどを設定するための図示しない複数の操作スイッチが設けられている。操作パネル72は、マイクロコンピュータを主体として構成されドラム式洗濯乾燥機51の運転全般を制御する制御回路部(図示せず)に接続されており、当該制御回路部は、操作パネル72を介して設定された内容に従って、モータ50、給水弁60、排水弁61、圧縮機69、絞り弁70などの駆動を制御しながら各種の運転コースを実行する。そして、モータ50及び/又は圧縮機69を構成する圧縮機モータを第1又は第2実施形態のモータ駆動制御装置によって駆動制御する。
以上のように構成される第4実施形態によれば、洗濯乾燥機51におけるドラム回転用のモータ50及び/又はヒートポンプシステム71を構成する圧縮機69のモータを、実施形態のモータ駆動制御装置により駆動制御することで、洗濯乾燥機51の運転効率を向上させることができる。
(その他の実施形態)
キャリア周波数については、個別の設計に応じて適宣設定すれば良い。また、キャリア周波数は3種類以上に切り換えても良く、電流変化量の検出は最低の周波数が設定される期間に行えば良い。
3相のPWM信号を各実施形態のように発生させるためには、3種類のキャリアを用いることに限らず、位相シフト機能等を利用しても良いし、1種のキャリアのデューティ設定タイミングや、パルス発生の比較極性等を変更するなどの方法を利用しても良い。
電流変化量検出部8が、キャリア周期内で3相の電流を検出するタイミングは、必ずしもキャリアのレベルが最小又は最大を示す位相を基準とする必要はなく、3相の電流を検出可能な範囲でキャリアの任意の位相に基づいて設定すれば良い。
また、電流を検出するタイミングは、PWMキャリアの周期に一致させる必要はなく、例えばキャリア周期の2倍や4倍の周期で検出を行っても良い。したがって、電流変化量検出部8に入力する電流検出タイミング信号は、キャリアから得られた信号そのものである必要はなく、別個のタイマで生成した信号であっても良い。
電流検出部はシャント抵抗でもCTでも良い。
スイッチング素子はMOSFET,IGBT,パワートランジスタ、SiC,GaN等のワイドギャップ半導体等を使用しても良い。
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
図面中、1は直流電源、2は永久磁石同期モータ、3はインバータ回路、4はNチャネルMOSFET、5はPWM生成部、7は電流検出部、8は電流変化量検出部、9は検出タイミング信号生成部、10は回転位置演算部を示す。

Claims (5)

  1. 同期電動機の相電流を検出する電流検出部と、
    前記同期電動機の回転位置に追従するように3相のPWM信号パターンを生成するPWM生成部と、
    前記PWM信号の搬送波に基づいて、検出タイミング信号を生成する検出タイミング信号生成部と、
    前記検出タイミング信号に応じて、前記電流検出部により検出される相電流の変化量を求める電流変化量検出部と、
    前記相電流の変化量に基づいて、前記同期電動機の回転位置を推定する回転位置推定部とを備え、
    前記PWM生成部は、前記搬送波の周波数を2種類以上に切り替え設定し、
    前記電流検出部は、前記周波数が最低の搬送波が設定されている期間に前記相電流を検出し、
    前記PWM生成部は、前記搬送波の1周期内において前記検出タイミング信号生成部により生成される固定された少なくとも4点の検出タイミング信号に応じて、前記電流変化量検出部が少なくとも2種類の電圧ベクトル期間に対応する相電流変化量を検出できるように3相のPWM信号パターンを生成する同期電動機の回転位置推定装置。
  2. 前記PWM生成部は、3相のPWM信号のうち1相については、前記搬送波周期の任意の位相を基準として遅れ側,進み側の双方向にデューティを増減させ、
    他の1相については、前記搬送波周期の任意の位相を基準として遅れ側,進み側の一方向にデューティを増減させ、
    残りの1相については、前記搬送波周期の任意の位相を基準として前記方向とは逆方向にデューティを増減させる請求項1記載の同期電動機の回転位置推定装置。
  3. 前記PWM生成部は、前記搬送波の周期を擬似乱数に基づいて設定されるタイミングで切り替える請求項1又は2記載の同期電動機の回転位置推定装置。
  4. 同期電動機と、
    3相ブリッジ接続された複数のスイッチング素子を所定のPWM信号パターンに従いオンオフ制御することで、直流を3相交流に変換して前記同期電動機を駆動するインバータ回路と、
    請求項1から3の何れか一項に記載の回転位置推定装置とを備え、前記同期電動機が発生する回転駆動力により空調運転を行う空調機。
  5. 同期電動機と、
    3相ブリッジ接続された複数のスイッチング素子を所定のPWM信号パターンに従いオンオフ制御することで、直流を3相交流に変換して前記同期電動機を駆動するインバータ回路と、
    請求項1から3の何れか一項に記載の回転位置推定装置とを備え、前記同期電動機が発生する回転駆動力により洗濯運転を行う洗濯機。
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