以下、本発明の実施形態について、添付図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の第1実施形態に係るスクロール型圧縮機の概略断面図である。
本実施形態によるスクロール型圧縮機100は、例えば車両用空調装置の冷媒回路に組み込まれ、冷媒回路の低圧側から吸入した冷媒(流体)を圧縮して吐出するものであり、スクロールユニット1と、上記冷媒の吸入室H1及び吐出室H2を有するハウジング10と、スクロールユニット1を駆動させる駆動部としての電動モータ20と、電動モータ20の駆動制御用のインバータ30と、を備えている。尚、本実施形態においては、上記車両用空調装置の冷媒回路は、車室内の冷房だけでなく暖房についても冷媒との熱交換により実行可能に構成されたヒートポンプ式冷媒回路である。また、スクロール型圧縮機100は、いわゆるインバータ一体型の場合を一例に挙げて説明する。
スクロールユニット1は、互いに噛み合わされる固定スクロール2及び可動スクロール3を有する。固定スクロール2は、底板2a上に渦巻きラップ2bが一体形成されてなる。可動スクロール3は、同様に、底板3a上に渦巻きラップ3bが一体形成されてなる。
両スクロール2,3は、その両渦巻きラップ2b,3bを噛み合わせるように配置される。詳しくは、両スクロール2,3は、固定スクロール2の渦巻きラップ2bの突出側の端縁が可動スクロール3の底板3aに接触し、可動スクロール3の渦巻きラップ3bの突出側の端縁が固定スクロール2の底板2aに接触するように配設される。尚、両渦巻きラップ2b,3bの突出側の端縁にはチップシールが設けられている。
また、両スクロール2,3は、両渦巻きラップ2b,3bの周方向の角度が互いにずれた状態で、両渦巻きラップ2b,3bの側壁が互いに部分的に接触するように配設される。これにより、両渦巻きラップ2b,3b間に三日月状の密閉空間が形成される。
可動スクロール3は、その自転が阻止された状態で、後述するクランク機構を介して、固定スクロール2の軸心周りに公転旋回運動可能に構成されている。これにより、スクロールユニット1は、両渦巻きラップ2b,3b間に形成される上記密閉空間を中央部に移動させ、その容積を徐々に減少させる。その結果、スクロールユニット1は、渦巻きラップ2b,3bの外端部側から密閉空間内に流入される冷媒を密閉空間内で圧縮する。
ハウジング10は、図1に示すように、電動モータ20及びインバータ30をその内側に収容するフロントハウジング11と、スクロールユニット1をその内側に収容するセンターハウジング12と、リアハウジング13と、インバータカバー14と、を有する。そして、これら(11,12,13,14)がボルトなどの締結手段(図示省略)によって一体的に締結されてスクロール型圧縮機100のハウジング10が構成される。
フロントハウジング11は、概略環状の周壁部11aと仕切壁部11bとを有する。フロントハウジング11は、その内部空間が、仕切壁部11bにより電動モータ20を収容するための空間とインバータ30を収容するための空間とに仕切られる。周壁部11aの一端側(図1では、左側)の開口はインバータカバー14によって閉止される。また、周壁部11aの他端側(図1では、右側)の開口はセンターハウジング12によって閉止される。仕切壁部11bには、その径方向中央部に後述する駆動軸23の一端部を支持するための筒状の支持部11b1が、周壁部11aの他端側に向って突設されている。
また、フロントハウジング11の周壁部11a及び仕切壁部11bと、センターハウジング12とにより、冷媒の吸入室H1が区画される。吸入室H1内には、周壁部11aに形成される冷媒の吸入ポートPinを介して冷媒回路の低圧側からの冷媒が吸入される。尚、吸入室H1内で、冷媒が電動モータ20の周囲等を流通して電動モータ20を冷却可能に構成されており、電動モータ20の上側の空間と電動モータ20の下側の空間は連通して、一つの吸入室H1が構成されている。また、吸入室H1内には、回転駆動される駆動軸23等の摺動部位の潤滑のため、適量の潤滑オイルが貯留されている。そのため、吸入室H1において、冷媒は潤滑オイルとの混合流体として流れている。
センターハウジング12は、フロントハウジング11との締結側とは反対側が開口された一端開口の筒状に形成されており、その内部にスクロールユニット1を収容可能に形成されている。センターハウジング12は、円筒部12aとその一端側の底壁部12bとを有する。この円筒部12aと底壁部12bとによって区画される空間内にスクロールユニット1が収容される。円筒部12aの他端側には、固定スクロール2が嵌合される嵌合部12a1が形成される。したがって、センターハウジング12の開口は、固定スクロール2によって閉止される。また、底壁部12bは、その径方向中央部が電動モータ20側に向って膨出するように形成される。底壁部12bのこの膨出部12b1の径方向中央部には、駆動軸23の他端部を挿通させるための貫通孔が開口されている。そして、膨出部12b1のスクロールユニット1側には、この駆動軸23の他端側を支持するベアリング15を嵌合させる嵌合部が形成される。
センターハウジング12の底壁部12bと可動スクロール3の底板3aとの間には、環状のスラストプレート16が配置される。底壁部12bは、その外周部に、スラストプレート16を介して可動スクロール3からのスラスト力を受ける。底壁部12b及び底板3aのスラストプレート16と当接する部位には、それぞれシール部材が埋設される。
また、底板3aの電動モータ20側端面と底壁部12bとの間(つまり、可動スクロール3の固定スクロール2とは反対側の端面とセンターハウジング12との間)には背圧室H3が形成されている。センターハウジング12には、吸入室H1からスクロールユニット1の両渦巻きラップ2b,3bの外端部付近の連通空間H4へ冷媒(詳しくは冷媒と潤滑オイルとの混合流体)を導入するための冷媒導入通路L1が形成される。冷媒導入通路L1は、連通空間H4と吸入室H1との間を連通するため、連通空間H4内の圧力は吸入室H1内の圧力(吸入室内圧力Ps)と等しい。
リアハウジング13は、円筒部12aの嵌合部12a1側端部にボルト等により締結される。これにより、固定スクロール2は、その底板2aが嵌合部12a1とリアハウジング13との間に挟持されて固定されている。また、リアハウジング13は、センターハウジング12との締結側が開口した一端開口の筒状に形成されており、円筒部13aとその一端側の底壁部13bとを有する。
リアハウジング13の円筒部13a及び底壁部13bと、固定スクロール2の底板2aとにより、冷媒の吐出室H2が区画される。底板2aの中心部には、圧縮冷媒の吐出通路(吐出孔)L2が形成され、吐出通路L2には一方向弁(吐出室H2からスクロールユニット1側への流れを規制する逆止弁)17が付設される。吐出室H2内には、両渦巻きラップ2b,3b間に形成される密閉空間で圧縮された冷媒が吐出通路L2及び一方向弁17を介して吐出される。吐出室H2内の圧縮冷媒は、底壁部13bに形成される吐出ポートPoutを介して冷媒回路の高圧側に吐出される。
尚、図示を省略するが、リアハウジング13には、吐出室H2内の圧縮冷媒から潤滑オイルを分離するための適宜の分離手段が設けられる。この分離手段により潤滑オイルが分離された冷媒(微量の潤滑オイルが残存する冷媒を含む)が吐出ポートPoutを介して冷媒回路の高圧側に吐出される。一方、分離手段により分離された潤滑オイルは、後述する圧力供給通路L3へ導かれる。図1では、潤滑オイル混合前又は潤滑オイル分離後の冷媒の流れは斜線付き矢印で示され、潤滑オイルと混合された冷媒(混合流体)の流れは太線矢印で示され、冷媒から分離された潤滑オイルの流れは白抜き矢印で示されている。
電動モータ20は、ロータ21と、ロータ21の径方向外側に配置されるステータコアユニット22とを含んで構成され、例えば、三相交流モータが適用される。例えば車両のバッテリー(図示省略)からの直流電流が、インバータ30により交流電流に変換され、電動モータ20へ給電される。
ロータ21は、その径方向中心に形成された軸孔に嵌合(焼嵌め)される駆動軸23を介して、ステータコアユニット22の径方向内側で回転可能に支持される。駆動軸23の一端部は、支持部11b1に回転可能に支持される。駆動軸23の他端部は、センターハウジング12に形成された貫通孔を挿通して、ベアリング15によって回転可能に支持される。インバータ30からの給電によりステータコアユニット22に磁界が発生すると、ロータ21に回転力が作用して駆動軸23が回転駆動される。駆動軸23の他端部は、クランク機構を介して可動スクロール3に連結されている。
本実施形態では、上記クランク機構は、このクランク機構を含む要部拡大図である図2に示すように、底板3aの背圧室H3側端面に突出形成された円筒状のボス部24と、駆動軸23の他端部に設けたクランク25に偏心状態で取付けられた偏心ブッシュ26と、を含んで構成される。偏心ブッシュ26はボス部24内に回転可能に支持される。尚、駆動軸23の他端部(クランク25側端部)には、可動スクロール3の動作時の遠心力に対向するバランサウエイト27が取付けられる。また、図示を省略したが、可動スクロール3の自転を阻止する自転阻止機構が適宜に備えられる。これにより、可動スクロール3は、その自転が阻止された状態で、上記クランク機構を介して固定スクロール2の軸心周りに公転旋回運動可能に構成される。
図3は、スクロール型圧縮機100における冷媒流れを説明するためのブロック図である。
図1及び図3に示すように、冷媒回路の低圧側からの冷媒は、吸入ポートPinを介して吸入室H1に導入され、その後、冷媒導入通路L1を介してスクロールユニット1の外端部付近の連通空間H4に導かれる。そして、連通空間H4内の冷媒は、両渦巻きラップ2b,3b間の密閉空間内に取り込まれ、この密閉空間内で圧縮される。圧縮された冷媒は、吐出通路L2及び一方向弁17を経由して吐出室H2に吐出され、その後、吐出室H2から吐出ポートPoutを介して冷媒回路の高圧側に吐出される。このようにして、吸入室H1を介して流入される冷媒を密閉空間内で圧縮し、この圧縮冷媒を、吐出室H2を介して吐出するスクロールユニット1が構成される。
ここで、図1に戻って、本実施形態におけるスクロール型圧縮機100は、背圧室H3内の圧力調整用の背圧調整弁50を更に備えている。
この背圧調整弁50は、基準圧力P0、吸入室内圧力Ps及び吐出室内圧力Pdを感知すると共に各感知圧力の変動に連動して作動し、背圧室内圧力Pmが吸入室内圧力Ps及び吐出室内圧力Pdに基づいて定まる適正圧力範囲に収まるように、弁開度を自律的に調整するものである。本実施形態では、背圧調整弁50は、図1に示すように、底壁部13bに駆動軸23の中心軸と直交する方向に延びるように形成される収容室13c内に収容される。この背圧調整弁50の構造及び背圧調整動作については後に詳述する。なお、吸入室内圧力Ps、吐出室内圧力Pd及び背圧室内圧力Pmは、Pd>Pm>Ps(>0)の関係を満たすものとする。
本実施形態において、スクロール型圧縮機100は、図1及び図3に示すように、冷媒導入通路L1及び吐出通路L2に加えて、圧力供給通路L3を備えると共に、背圧調整弁50による圧力調整用に放圧通路L4及びPd感知用通路L5を備える。
圧力供給通路L3は、吐出室H2と背圧室H3との間を連通するための通路である。上記分離手段(図示省略)により吐出室H2内の圧縮冷媒から分離された潤滑オイルは、圧力供給通路L3を介して背圧室H3内へ導かれて、各摺動部位の潤滑に供される。圧力供給通路L3を介して吐出室H2と背圧室H3が連通されて潤滑オイルが背圧室H3内に導入されることにより、背圧室内圧力Pmが上昇する。
本実施形態では、圧力供給通路L3は、図1に具体的に示すように、一端が吐出室H2に開口すると共に他端が円筒部13aのセンターハウジング12と当接する端面部分に開口する通路と、この通路に接続されると共に円筒部12a及び底壁部12bを貫通して背圧室H3に開口する通路と、を含んで構成される。また、圧力供給通路L3の途上には、背圧室入口側オリフィスOL2が設けられる。背圧室入口側オリフィスOL2は、例えば、圧力供給通路L3の吐出室H2側の端部に設けられる。吐出室H2内の吐出冷媒から分離された潤滑オイルは、背圧室入口側オリフィスOL2により適宜減圧されて圧力供給通路L3を介して背圧室H3内に供給される。
放圧通路L4は、背圧室H3と吸入室H1との間を連通するための通路であり、背圧室H3と吸入室H1(=H4)との間に、並列して2つ設けられている。2つの放圧通路L4のうちの一方の通路である第1放圧通路L41において、背圧調整弁50は、第1放圧通路L41の一部を構成するように、第1放圧通路L41の途上に設けられる。つまり、背圧室H3の出口側(下流側)に接続される第1放圧通路L41の開度を背圧調整弁50で調整することにより、背圧室H3から第1放圧通路L41を介して流出する潤滑オイル流出量を調整し、その結果、背圧室内圧力Pmを調整する。
第1放圧通路L41は、図1において点線で示すように、一端が背圧室H3に開口し他端が収容室13cに開口するようにセンターハウジング12及びリアハウジング13内に延びる通路と、一端が収容室13cに開口し他端が円筒部13aの固定スクロール2と当接する端面部分に開口する通路と、この通路と接続されると共に固定スクロール2の底板2aの外周部を貫通して連通空間H4に開口する通路とからなる。なお、第1放圧通路L41は、連通空間H4に開口する場合を一例に挙げて説明するが、吸入室H1に直接的に開口させてもよい。
2つの放圧通路L4のうちの他方の通路である第2放圧通路L42は、図1に具体的に示すように、駆動軸23を貫通して形成され、駆動軸23の中心軸に沿うように延びている。第2放圧通路L42の途上には、背圧室出口側オリフィスOL1が設けられる。背圧室出口側オリフィスOL1は、例えば、駆動軸23の吸入室H1側(図1では、支持部11b1側)端部に設けられる。背圧室H3内の潤滑オイルは、背圧室出口側オリフィスOL1により適宜に減圧されて吸入室H1に戻される。
Pd感知用通路L5は、背圧調整弁50にて吐出室内圧力Pdを感知するための通路である。本実施形態では、Pd感知用通路L5は、図1に具体的に示すように、底壁部13bのうちの収容室13cと吐出室H2の間の隔壁部分を貫通して形成される。
ここで、背圧室内圧力Pmは、可動スクロール3を固定スクロール2側に向けて押圧する押圧力として作用する。スクロールユニット1による圧縮動作中において、底板3aの背圧室H3側端面に作用する背圧室内圧力Pmによる押圧力が、吸入室内圧力Ps及び吐出室内圧力Pdの大きさに応じて底板3aの密閉空間側端面に作用する圧縮反力より小さくなる(つまり、背圧不足状態になる)と、渦巻きラップ3bの突出側の端縁と底板2aとの間に隙間が生じると共に、底板3aと渦巻きラップ2bの突出側の端縁との間に隙間が生じて、圧縮機の体積効率が低下するおそれがある。一方、背圧室内圧力Pmによる上記押圧力が上記圧縮反力よりも高くなる(つまり、背圧過剰状態になる)と、両スクロール2,3間の摩擦力が大きくなるため圧縮機の機械効率が低下する。したがって、背圧調整弁50により調整される背圧室内圧力Pmは、スクロール型圧縮機100の運転で想定される吸入室内圧力Ps及び吐出室内圧力Pdの各値において、背圧不足状態とならない下限値Pm0から背圧過剰状態とならない上限値Pm1の間の適正圧力範囲に設定する必要がある(Pm0≦Pm≦Pm1)。
図4は、背圧室内圧力Pmと吸入室内圧力Psとの差圧(Pm−Ps)において、吸入室内圧力Ps及び吐出室内圧力Pdの変化に対して背圧不足状態とならない下限差圧である下限適正差圧(Pm0−Ps)を示している。図4から明らかなように、下限適正差圧(Pm0−Ps)は吐出室内圧力Pdが高くなるに従って大きくする必要があり、また、下限適正差圧(Pm0−Ps)は吸入室内圧力Psが高くなるに従って大きくする必要がある。
一方、差圧(Pm−Ps)において、背圧過剰状態とならない上限差圧は上限適正差圧(Pm1−Ps)となる。したがって、吸入室内圧力Ps及び吐出室内圧力Pdの各値において、差圧(Pm−Ps)の適正範囲は、下記の式(1)で表される。
本実施形態において、上限適正差圧(Pm1−Ps)は、下限適正差圧(Pm0−Ps)に対して、吸入室内圧力Ps及び吐出室内圧力Pdの少なくとも一方に応じて変化する変化量ΔPを加えた値として設定するものとする。変化量ΔPは、例えば、吸入室内圧力Ps及び吐出室内圧力Pdの少なくとも一方が増加するに従って減少させてもよい。したがって、下限適正差圧(Pm0−Ps)が求まれば、上限適正差圧(Pm1−Ps)も求めることができる。
なお、上限適正差圧(Pm1−Ps)は、上記のものに限らず、下限適正差圧(Pm0−Ps)に対して一定量を加えた値として設定するか、あるいは、吸入室内圧力Ps及び吐出室内圧力Pdの少なくとも一方に応じて変化する変動値または固定値として設定してもよい。
次に、本実施形態における背圧調整弁50の構造を図1及び図5を参照して詳述する。図5は、背圧調整弁50の概念図(概略断面図)である。
背圧調整弁50は、概略、一端開口の有底筒状に形成されたバルブハウジング51と、バルブハウジング51の底板51a(図5では上側)に締結されるエンドハウジング52と、バルブハウジング51の一端開口51bを閉止するエンドカバー53と、弁ユニット60と、を備えている。この背圧調整弁50は、そのエンドハウジング52側が収容室13cの底部(図1及び図5では上側)に対向するように、収容室13c内に収容される。
また、背圧調整弁50の外周部には、3つのOリング54a〜54cが配設される。これらOリング54a〜54cによって、収容室13cは、その底部から順に、基準圧力P0を感知するための領域、吐出室内圧力Pdを感知するための領域、背圧室内圧力Pmが導入される領域、吸入室内圧力Psを感知するための領域に区画される。
バルブハウジング51には、吐出室内圧力Pdを感知するための領域として、Pd感知用通路L5により吐出室H2と連通する第1感圧室H5が形成され、背圧室内圧力Pmが導入される領域として、背圧室H3側の第1放圧通路L41により背圧室H3と連通するPm導入室(弁室)H6が形成され、吸入室内圧力Psを感知するための領域として、吸入室H1側(詳しくは、連通空間H4側)の第1放圧通路L41により吸入室H1(詳しくは連通空間H4)と連通する第2感圧室H7が形成される。
具体的には、Pd感知用通路L5と第1感圧室H5との間は、バルブハウジング51の外周部のうちのOリング54aとOリング54bとの間の部分において、周方向に適宜間隔を空けた複数の箇所で径方向中心側に向ってそれぞれ延びる連通孔51cによって連通する。背圧室H3側の第1放圧通路L41とPm導入室H6との間は、外周部のうちのOリング54bとOリング54cとの間の部分において、上記周方向に適宜間隔を空けた複数の箇所で上記径方向中心側に向ってそれぞれ延びる連通孔51dによって連通する。吸入室H1側の第1放圧通路L41と第2感圧室H7との間は、エンドカバー53を貫通する連通孔53aによって連通する。
また、バルブハウジング51には、第1感圧室H5とPm導入室H6とを連通する連通孔51e、Pm導入室H6と第2感圧室H7とを連通する連通孔51f、及びバルブハウジング51の底板51aを貫通して第1感圧室H5とバルブハウジング51の外方とを連通する連通孔51gが、エンドハウジング52からエンドカバー53へ向かう方向で重畳して形成される。なお、連通孔51e、連通孔51f及び連通孔51gは、説明の便宜上、円形状の開口を有するものとするが、本発明の適用において円形に限定するものではない。
エンドハウジング52は、一端開口の有底筒状に形成され、開口端面をバルブハウジング51の底板51aの外側に当接させた状態でボルト等によりバルブハウジング51へ締結される。エンドハウジング52とバルブハウジング51の底板51aとの間に、基準圧力P0を感知するための領域として、基準圧力室H0が形成される。基準圧力室H0は、エンドハウジング52の底板52aに基準圧力室H0とエンドハウジング52の外方とを連通して形成された連通孔52bを介して、背圧調整弁50の外部から、例えば真空又は大気圧等の基準圧力P0に保持される。基準圧力P0は、図4の吸入室内圧力Ps及び吐出室内圧力Pdが、絶対圧力であるか、あるいは、ゲージ圧であるか、によって設定される。絶対圧力である場合には、基準圧力室H0が連通孔52bを介して真空引きされることで、基準圧力P0を真空圧力またはその近傍値に設定する一方、ゲージ圧である場合には、基準圧力室H0が連通孔52bを介して大気開放されることで、基準圧力P0を大気圧に設定する。
このように背圧調整弁50は、基準圧力室H0、第1感圧室H5、Pm導入室H6及び第2感圧室H7の4室をこの順番で直列に配置して有しているが、Pm導入室H6が第2感圧室H7に隣接すると共に第2感圧室H7よりも基準圧力室H0に近い側に位置している。弁ユニット60は、連通孔51e、連通孔51f及び連通孔51gを介して、基準圧力室H0、第1感圧室H5、Pm導入室H6及び第2感圧室H7の4室にわたって延在する。そして、弁ユニット60は、基準圧力P0、吸入室内圧力Ps及び吐出室内圧力Pdをそれぞれ感知し、各感知圧力の変動に連動して延在方向へ弾性移動可能に構成される。
弁ユニット60は、ダイアフラム61、シャフト62及び弁63を備える。
ダイアフラム61は、弾性変形可能な薄板状の部材で形成され、連通孔51gを閉塞して基準圧力室H0と第1感圧室H5とを気密かつ液密に区画するものである。具体的には、ダイアフラム61は、第1感圧室H5側から連通孔51gを閉塞し、ダイアフラム61の周縁部を全周でバルブハウジング51に形成された凹部に嵌合させている。ダイアフラム61の周縁部とバルブハウジング51の凹部との間には、適宜、シール材を介在させて基準圧力室H0と第1感圧室H5との間の気密性及び液密性を確実にするようにしてもよい。ダイアフラム61にはシャフト62が連通孔51gを通って貫通固定される。
シャフト62は、円柱状に形成され、エンドハウジング52側から順に、アジャストネジ62a、小径部62b、及び小径部62bよりも半径が大きい大径部62cを有している。アジャストネジ62aは、ダイアフラム61の表面に固定された基端部から連通孔51gを通って基準圧力室H0へ向って延び、先端部が軸方向に移動できるように基端部に螺合している。小径部62bは、アジャストネジ62aの基端部からダイアフラム61を貫通し、連通孔51eを通ってPm導入室H6まで延びる。大径部62cは、小径部62bから連通孔51fまで延びて、第2感圧室H7側に配置される後述の弁63のボール弁体と、後述する第1〜3ばねの弾性付勢力によって常時当接している。
小径部62bの外周面と連通孔51eの内周面との間にはOリング54dが介在し、第1感圧室H5とPm導入室H6との間における潤滑オイルの流通を阻害している。したがって、連通孔51d、Pm導入室H6、連通孔51fと大径部62cとの隙間、第2感圧室H7、連通孔53aを経由してなる通路によって、第1放圧通路L41の一部が構成される(図5中の白抜き矢印参照)。
弁63は、第1放圧通路L41を開閉するためのものであり、連通孔51fのうち第2感圧室H7側に配置されるボール弁体63aと、ボール弁体63aが着座する弁座であって、連通孔51fのうち第2感圧室H7側の開口から徐々に拡径しつつ延びるテーパ状弁座63bと、を備えてなる。弁ユニット60(シャフト62)がその延在方向に移動すると、後述するばねの弾性付勢力によってシャフト62の大径部62cと常時当接するボール弁体63aの表面がテーパ状弁座63bに接離して連通孔51fが開閉し、これにより、第1放圧通路L41の開度(弁開度)を調整することができる。ボール弁体63aは、上記のように、シャフト62の大径部62cと常時当接しているが、連結されず、シャフト62とは別体をなしている。
仮に、弁63に代えて、図6(c)に模式的に示すように、平面状の弁座VSに対してシャフト62の先端に一体的に形成された平板状の弁体VEが平行に接離する弁Vを採用した場合、弁体VEが弁座VSに着座した状態から離れる方向へ移動したときの移動距離をDとすると、図6(d)に模式的に示すように、移動距離Dが微小距離Daとなるまでに、弁Vにおける第1放圧通路L41の流路面積Yの値は急激に増加してYbとなる。これに対して、弁63では、図6(a)に示すように、ボール弁体63aがテーパ状弁座63bに着座した状態から離れる方向へ移動したときの移動距離をDとすると、図6(b)に模式的に示すように、移動距離Dが同じく微小距離Daとなるまでに、弁63における第1放圧通路L41の流路面積Yの値は緩やかに増加して、Ybよりも小さいYaになる。
また、弁Vでは、平面状の弁座VSに対して、シャフト62の先端に一体的に形成された平板状の弁体VEが平行に接離する構成であるので、弁体VE及び弁座VSの接触面における平面度や、弁体VEと一体的に形成されるシャフト62の傾きによって、流路面積Yの値がばらつきやすい。これに対して、弁63では、テーパ状弁座63bの円錐面に対して球面状のボール弁体63aが接離する構成であるので、ボール弁体63a及びテーパ状弁座63bの接触面の面精度が第1放圧通路L41の流路面積Yの値に与える影響は、弁Vと比較して少ない。また、弁63では、ボール弁体63aはシャフト62と別体であるので、シャフト62の傾きが第1放圧通路L41の流路面積Yの値に与える影響は、弁Vと比較して少ない。したがって、ボール弁体63a及びテーパ状弁座63bを備えた弁63を採用することで、弁Vと比較して、第1放圧通路L41における流量制御ひいては背圧室内圧力Pmの調整についての精度を向上させることができる。
弁ユニット60は、第2感圧室H7において、ボール弁体63aとエンドカバー53との間に、ボール弁体63aがテーパ状弁座63bと接触する方向すなわち閉弁方向にボール弁体63aを弾性付勢する第1ばね64を有している。また、弁ユニット60は、Pm導入室H6において、Pm導入室H6を第1感圧室H5と隔てる隔壁51hと小径部62b−大径部62c間の段差との間に、ボール弁体63aがテーパ状弁座63bから離れる方向すなわち開弁方向に、シャフト62を介してボール弁体63aを弾性付勢する第2ばね65を有している。さらに、弁ユニット60は、基準圧力室H0において、アジャストネジ62aの先端部とエンドハウジング52の底板52aとの間に、シャフト62を介してボール弁体63aを開弁方向へ弾性付勢する第3ばね66を有している。アジャストネジ62aの先端部を軸方向に移動させることで、第3ばね66の初期たわみ量を調節してシャフト62に作用する弾性付勢力を変化させることができる。
次に、第1実施形態のスクロール型圧縮機100における背圧調整弁50の諸定数の設定について概略説明する。
背圧調整弁50において、スクロールユニット1の圧縮動作中にボール弁体63aに作用する力の釣り合い式は、開弁方向(図5において下向き)の力を正の値とし、閉弁方向(図5において上向き)の力を負の値とすると、下記の式(2)で表される。
上記の式(2)において、A1はダイアフラム61の有効受圧面積、A2は小径部62bの軸方向断面積、A3は連通孔51fの開口面積(延在方向におけるボール弁体63aの有効感圧面積に相当)であり、いずれも、弁ユニット60に圧力が作用して弁ユニット60を延在方向に移動させるのに有効な感圧面の面積である。また、上記の式(2)において、Xはボール弁体63aがテーパ状弁座63bに着座した閉弁状態から開弁方向へ移動した移動量(すなわち、第1ばね64、第2ばね65及び第3ばね66の変位量)、Fsp1,Fsp2,Fsp3は、それぞれ第1ばね64,第2ばね65,第3ばね66の各ばねの初期たわみによる弾性付勢力(X=0における荷重)、k1,k2,k3は、それぞれ第1ばね64,第2ばね65,第3ばね66のばね定数である。
上記の式(2)において、Pm(A3−A2)の項は、Pm導入室H6における背圧室内圧力Pmのうちボール弁体63aに対して開弁方向に作用する圧力による荷重を示し、P0×A1の項は、基準圧力室H0における基準圧力P0のうちボール弁体63aに対して開弁方向に作用する圧力による荷重を示し、−Pd(A1−A2)の項は、第1感圧室H5おける吐出室内圧力Pdのうちボール弁体63aに対して閉弁方向に作用する圧力による荷重を示し、−Ps×A3の項は、第2感圧室H7における吸入室内圧力Psのうちボール弁体63aに対して閉弁方向に作用する圧力による荷重を示し、k1×X,k2×X,k3×Xの各項は、それぞれ、ボール弁体63aの移動量X(≧0)における第1ばね64,第2ばね65,第3ばね66のばね荷重の変化量であり、ボール弁体63aに対して閉弁方向に作用する荷重を示している。
上記の式(2)を差圧(Pm−Ps)について求めると、下記の式(3)のように変形できる。
但し、弁ユニット60の延在方向における感圧面の面積、すなわち、ダイアフラム61の有効受圧面積A1、小径部62bの軸方向断面積A2及び連通孔51fの開口面積A3は、背圧室内圧力Pmと吸入室内圧力Psとの差圧(Pm−Ps)による荷重が作用する方向と、吐出室内圧力Pdと吸入室内圧力Psとの差圧(Ps−Ps)による荷重及び吸入室内圧力Psと基準圧力P0との差圧(Ps−P0)による荷重が作用する方向とが、反対方向となるように設定される。つまり、A1,A2,A3は、(A1−A2)/(A3−A2)>0かつA1/(A3−A2)>0の関係を満足するように設定される。
また、弁ユニット60の延在方向における感圧面の面積、すなわち、ダイアフラム61の有効受圧面積A1、小径部62bの軸方向断面積A2及び連通孔51fの開口面積A3は、吸入室内圧力Psが上昇したときの変化が、吐出室内圧力Pdと吸入室内圧力Psとの差圧(Pd−Ps)よりも吸入室内圧力Psと基準圧力P0との差圧(Ps−P0)の方で大きくなるように設定される。つまり、A1,A2,A3は、(A1−A2)/(A3−A2)<A1/(A3−A2)の関係を満足するように設定される。
したがって、A1,A2,A3は、A3>A2(>0)かつA1>A2の関係を満足するように設定される。
さらに、第1ばね64,第2ばね65,第3ばね66の各ばねの初期たわみによる弾性付勢力Fsp1,Fsp2,Fsp3は、Fsp3−Fsp1−Fsp2>0となるように設定される。そして、上記の式(3)を下記の式(5)で置き換えると、下記の式(4)となる。
上記の式(5)における定数β,γ,δ,εは、上記のようにA3>A2、A1>A2、Fsp3−Fsp1−Fsp2>0であることから、γ>β>0,δ>0,ε>0となる。そして、上記の式(1)に上記の式(4)を代入すると、下記の式(6)のように変形できる。
したがって、スクロール型圧縮機100の運転において想定される吸入室内圧力Ps及び吐出室内圧力Pdの複数の組み合わせ{(Ps,Pd)=(Ps1,Pd1),…,(Psn,Pdn),…}(n:自然数)で、上記の式(6)が成立するように、定数β,γ,δ,εが設定される。
図7は、圧力供給通路L3の背圧室出口側オリフィスOL1における流量と第2放圧通路L42の背圧室入口側オリフィスOL2における流量とがつりあうときの差圧(Pm−Ps)と、第1放圧通路L41の背圧調整弁50におけるボール弁体63aの移動量Xとの関係を示している。背圧調整弁50において、連通孔51fの開口面積A3、弁63の形状・寸法及び大径部62cの直径は既定のものとする。差圧(Pm−Ps)と移動量Xとの関係は吸入室内圧力Ps及び吐出室内圧力Pdの組み合わせ毎に変化するが、上記組み合わせの1つ(Psn,Pdn)となる状態では、差圧(Pm−Ps)と移動量Xとの関係は図中の平衡曲線D1で特定される。そうすると、図4において吸入室内圧力Ps及び吐出室内圧力Pdの組み合わせが(Psn,Pdn)となるときの下限適正差圧(Pm0n−Psn)を求めるとともに、下限適正差圧(Pm0n−Psn)に変化量ΔPを加えて上限適正差圧(Pm1n−Psn)を求めて、図7の平衡曲線D1から、下限適正差圧(Pm0−Ps)となるときの移動量X0と、上限適正差圧(Pm1−Ps)となるときの移動量X1とを求めることができる。したがって、Ps=Psn,Pd=Pdn,Pm0−Ps=Pm0n−Psn,Pm1−Ps=Pm1n−Psn,X1≦X≦X0となる条件の下で、上記の式(6)が成立するような定数β,γ,δ,εの各範囲を特定できる。そして、吸入室内圧力Ps及び吐出室内圧力Pdの他の組み合せについても上記と同様にして定数β,γ,δ,εの各範囲を特定し、すべての組み合わせにおいて特定された定数β,γ,δ,εの各範囲を満足するように、定数β,γ,δ,εを一意的に設定することができる。
図7において、上記のように一意的に設定された定数β,γ,δ,εによって特定される上記の式(4)の力の釣り合い式は、吸入室内圧力Ps及び吐出室内圧力Pdの組み合わせが上記のように(Psn,Pdn)となる場合に、背圧調整弁50の動作特性線D2として示され、平衡曲線D1と動作特性線D2との交点である動作点Qにおいて、差圧(Pm−Ps)は上記の式(1)で表される適正範囲内に収まる(すなわち、(Pm0n−Psn)≦Pm−Ps≦(Pm1n−Psn))。動作点Qは、吸入室内圧力Ps及び吐出室内圧力Pdの大きさに応じて平衡曲線D1及び動作特性線D2が変化することで変わり得る。
動作点Qでは、上記の式(4)において、Pd>Pm>Ps(>0),X≧0,β>0,γ>0,δ>0,ε>0であることから、図5の網掛け矢印で示すように、ボール弁体63aには、左辺の差圧(Pm−Ps)による荷重(以下「Pm−Ps差圧荷重」という)が開弁方向に加わるのに対して、右辺第1項の差圧(Pd−Ps)による荷重(以下、「Pd−Ps差圧荷重」という)、右辺第2項の差圧(Ps−P0)による荷重(以下、「Ps−P0差圧荷重」という)、並びに、右辺第3項及び第4項の第1〜第3ばね64,65,66による荷重(以下、「ばね荷重」という)が閉弁方向に加わり、開弁方向の荷重と閉弁方向の荷重とがつり合った状態となっている。
なお、設定された定数β,γ,δ,εを下記の式(7)に代入することで、A1,A2,A3の比を算出し、上記のようにA3が既定のものであれば、このA3からA1及びA2を算出することができる。また、設定された定数β,γ,δ,εと既定のA3を下記の式(8)及び(9)に適宜代入することで、上記の式(3)等における(Fsp3−Fsp1−Fsp2)及び(k1+k2+k3)を算出することができる。
次に、第1実施形態のスクロール型圧縮機100において、背圧調整弁50により行われる背圧室内圧力Pmの調整動作について概略説明する。
図8、図9及び図10において、吸入室内圧力Ps及び吐出室内圧力Pdの組み合わせが上記のように(Psn,Pdn)となる場合に、平衡曲線D1及び動作特性線D2の交点である動作点Qでは、差圧(Pm−Ps)は、式(1)を満足するΔPmsn(すなわち(Pm0n−Psn)≦ΔPmsn≦(Pm1n−Psn))となり、ボール弁体63aの移動量XはXnとなる。したがって、第1ばね64、第2ばね65及び第3ばね66の変位量もXnとなる。
図8に示すように、平衡曲線D1は、吸入室内圧力Psnが一定のまま吐出室内圧力Pdnが上昇した場合には、差圧(Pm−Ps)が増大する方向(図8の右方向)に移動して平衡曲線D1aとなる。一方、式(4)を参照すると、正の値であるβPdnの値が増大することになるため、背圧調整弁50の動作特性線D2は、差圧(Pm−Ps)が増大する方向(図8の右方向)に平行移動して動作特性線D2aとなる。そうすると、動作点Qは、平衡曲線D1a及び動作特性線D2aの交点である動作点Qaへ移動する。したがって、差圧(Pm−Ps)はΔPmsnから上昇してΔPmsnaとなる。なお、動作点Qが動作点Qaへ移動したとき、移動量XはXnからXnaへと変化するが、平衡曲線D1及び動作特性線D2が同じ方向へ移動するため、移動量Xの変化は差圧(Pm−Ps)の変化率に比べると比較的小さい。
図9に示すように、平衡曲線D1は、吐出室内圧力Pdnが一定のまま吸入室内圧力Psnが上昇した場合には、差圧(Pm−Ps)が減少する方向(図9の左方向)に移動して平衡曲線D1bとなる。しかし、式(4)を参照すると、正の値である(−βPsn+γPsn)の値が増大することになるため、背圧調整弁50の動作特性線D2は、平衡曲線D1とは逆に、差圧(Pm−Ps)が増大する方向(図9の右方向)に平行移動して動作特性線D2bとなる。そうすると、動作点Qは、平衡曲線D1b及び動作特性線D2bの交点である動作点Qbへ移動する。したがって、移動量XはXnからXnbに減少してボール弁体63aは閉弁方向に移動し、差圧(Pm−Ps)はΔPmsnから上昇してΔPmsnbとなる。
図10に示すように、平衡曲線D1は、差圧(Pd−Ps)が一定で吸入室内圧力Ps及び吐出室内圧力Pdが上昇した場合には変化しない。一方、式(4)を参照すると、正の値であるγPsの値が増大することになるため、背圧調整弁50の動作特性線D2は、差圧(Pm−Ps)が増大する方向(図10の右方向)に平行移動して動作特性線D2cとなる。そうすると、動作点Qは、平衡曲線D1及び動作特性線D2cの交点である動作点Qcへ移動する。したがって、移動量XはXnからXncに減少してボール弁体63aは閉弁方向に移動し、差圧(Pm−Ps)はΔPmsnから増大してΔPmsncとなる。
吸入室内圧力Ps及び吐出室内圧力Pdが、定数β,γ,δ,εの設定に用いた上記の複数の組み合わせ{(Ps,Pd)=(Ps1,Pd1),…,(Psn,Pdn),…}(n:自然数)となるときには、差圧(Pm−Ps)は、背圧調整弁50の動作によって、上記の式(1)の適正範囲に収まる。しかし、図8、図9及び図10において説明したように、吸入室内圧力Ps及び吐出室内圧力Pdが上記の複数の組み合せのときに、吸入室内圧力Ps又は吐出室内圧力Pdが上昇すれば、これに伴って差圧(Pm−Ps)も上昇する。このため、差圧(Pm−Ps)は、吸入室内圧力Ps又は吐出室内圧力Pdの上昇と共に上昇する図4の下限適正差圧(Pm0−Ps)を満足する方向に変化する。したがって、吸入室内圧力Ps及び吐出室内圧力Pdが上記の複数の組み合わせ以外になっても、差圧(Pm−Ps)を上記の式(1)の適正範囲に収めるようにすることができる。
第1実施形態のスクロール型圧縮機100によれば、背圧調整弁50は、基準圧力室H0、第1感圧室H5、Pm導入室H6及び第2感圧室H7の4室をこの順番で直列に配置して有すると共に、上記4室にわたって延在して、基準圧力P0、吸入室内圧力Ps及び吐出室内圧力Pdを感知すると共に各感知圧力P0,Pd,Psの変動に連動して延在方向へ弾性移動を行う弁ユニット60を有し、弁ユニット60が、弾性移動を行うことで、Pm導入室H6と第2感圧室H7との間に形成された連通孔51fを第2感圧室H7側から開閉する弁63を有している。
このように構成された背圧調整弁50では、Pm導入室H6が第2感圧室H7に隣接すると共に第2感圧室H7よりも基準圧力室H0に近い側に位置するので、図5の網掛け矢印で示すように、弁63のボール弁体63aに対して、Pm−Ps差圧荷重が開弁方向に作用する一方、Ps−P0差圧荷重、Pd−Ps差圧荷重及びばね荷重が閉弁方向に作用した状態で力が釣り合い、吸入室内圧力Psが上昇したときにボール弁体63aが閉弁方向に移動して差圧(Pm−Ps)が上昇するように弁ユニット60の感圧面の面積を設定することで、差圧(Pm−Ps)は、図4に示される下限適正差圧(Pm0−Ps)を満足する方向に変化する。
したがって、第1実施形態のスクロール型圧縮機100に備えられた背圧調整弁50では、差圧(Pm−Ps)が吸入室内圧力Ps及び吐出室内圧力Pdに基づいて定まる下限適正差圧(Pm0−Ps)とこれに対する上限適正差圧(Pm1−Ps)との間の適正範囲に収まるように、すなわち、背圧室内圧力Pmが吸入室内圧力Ps及び吐出室内圧力Pdに基づいて定まる適正圧力範囲(Pm0≦Pm≦Pm1)に収まるように弁開度を自律的に調整することができる。よって、圧力感知用の圧力センサ、モータ等の外部動力、集積回路及びこれらを電気的に接続する複雑な電気配線を備えることなく、背圧室内圧力Pmを調整できるので、簡素な構造で且つ低コストで背圧室内圧力Pmの調整が可能なスクロール型圧縮機100を提供することが可能となる。
仮に、第1実施形態の配置順に対して、Pm導入室H6と第2感圧室H7との順番を入れ替えたとする。そうすると、第1放圧通路L41を開閉する弁63は、ボール弁体63aが開弁できるように、Pm導入室H6の背圧室内圧力Pmに比べて低い吸入室内圧力Psの第2感圧室H7側に配置せざるを得ないため、スクロールユニット1の圧縮動作中にボール弁体63aに作用する力の釣り合い式は、下記の式(10)のようになる。すなわち、ボール弁体63aには、Pm−Ps差圧荷重及びPs−P0差圧荷重が開弁方向に作用する一方、Pd−Ps差圧荷重及びばね荷重が閉弁方向に作用した状態で力が釣り合う。
吸入室内圧力Ps及び吐出室内圧力Pdの組み合わせが上記のように(Psn,Pdn)となるときの平衡曲線D1は、図12に示すように、吸入室内圧力Psnが一定のまま吐出室内圧力Pdnが上昇すると、上記のように、差圧(Pm−Ps)が減少する方向(図12の左方向)に移動して平衡曲線D1bとなる。これに対し、式(10)を参照すると、負の値である(−βPsn−γPsn)の値がさらに減少することになるため、背圧調整弁50の動作特性線D2は差圧(Pm−Ps)が減少する方向に平行移動して動作特性線D2xとなる。そうすると、動作点Qは、平衡曲線D1b及び動作特性線D2xの交点である動作点Qxへ移動して、差圧(Pm−Ps)がΔPmsnからΔPmsnxへ減少してしまうため、ΔPmsnxが、吸入室内圧力Psの上昇と共に上昇する図4の下限適正差圧(Pm0−Ps)を満足することは困難となる。このため、渦巻きラップ3bの突出側の端縁と底板2aとの間に隙間が生じると共に、底板3aと渦巻きラップ2bの突出側の端縁との間に隙間が生じて、圧縮機の体積効率が低下するおそれが生じる。したがって、第1実施形態では、Pm導入室H6が第2感圧室H7に隣接すると共に第2感圧室H7よりも基準圧力室H0に近い側に位置している。
なお、第1実施形態では、背圧室H3と吸入室H1(連通空間H4を含む)との間に、第1放圧通路L41と第2放圧通路L42を並列に2つ設ける構成としたうえ、背圧調整弁50は第1放圧通路L41に設けられ、背圧室H3の出口側の通路の開度を調整(制御)する構成とした。これにより、背圧室H3の入口側は常時開となるため、背圧室H3には吐出室H2から潤滑オイルが常時供給され、また、背圧室H3の出口側も第2放圧通路L42を介して常時開となるため、背圧室H3に供給された潤滑オイルは、第2放圧通路L42を介して吸入室H1へ常時供給される。したがって、スクロール型圧縮機100の摺動部位における潤滑の確実性を向上させることができる。
次に、本発明の第2実施形態に係るスクロール型圧縮機100について図11を参照して説明する。なお、以下では、第1実施形態と同じ構成要素については同一の符号を付して説明を極力省略または簡略化する。
図11は、第2実施形態に係るスクロール型圧縮機100が備える背圧調整弁50の概念図(概略断面図)を示す。
背圧調整弁50は、第1実施形態と同様に、収容室13c内に収容され、基準圧力P0、吸入室内圧力Ps及び吐出室内圧力Pdを感知すると共に各感知圧力の変動に連動して作動し、背圧室内圧力Pmが吸入室内圧力Ps及び吐出室内圧力Pdに基づいて定まる適正圧力範囲に収まるように、弁開度を自律的に調整するものであり、バルブハウジング51と、エンドハウジング52と、エンドカバー53と、弁ユニット70と、を備えている。
背圧調整弁50の外周部には、3つのOリング54a〜54cが配設される。これらOリング54a〜54cによって、収容室13cは、その底部から順に、基準圧力P0を感知するための領域、背圧室内圧力Pmが導入される領域、吸入室内圧力Psを感知するための領域、吐出室内圧力Pdを感知するための領域に区画される。
バルブハウジング51には、背圧室内圧力Pmが導入される領域として、背圧室H3側の第1放圧通路L41により連通孔51cを介して背圧室H3と連通するPm導入室(弁室)H6が形成され、吸入室内圧力Psを感知するための領域として、吸入室H1側(詳しくは、連通空間H4)の第1放圧通路L41により吸入室H1(詳しくは連通空間H4)と連通孔51dを介して連通する第2感圧室H7が形成され、吐出室内圧力Pdを感知するための領域として、Pd感知用通路L5により吐出室H2と連通孔53aを介して連通する第1感圧室H5が形成される。また、バルブハウジング51とエンドハウジング52との間には、基準圧力P0を感知するための領域として、基準圧力室H0が形成される。
このように背圧調整弁50は、基準圧力室H0、Pm導入室H6、第2感圧室H7及び第1感圧室H5の4室をこの順番で直列に配置して有しているが、第1実施形態と同様に、Pm導入室H6が第2感圧室H7に隣接すると共に第2感圧室H7よりも基準圧力室H0に近い側に位置している。
また、バルブハウジング51には、連通孔51g、連通孔51f及び第1感圧室H5と第2感圧室H7とを連通する連通孔51iが形成され、弁ユニット70は、連通孔51f、連通孔51g及び連通孔51iを介して、基準圧力室H0、Pm導入室H6、第2感圧室H7及び第1感圧室H5、の4室にわたって延在する。そして、弁ユニット70は、基準圧力P0、吸入室内圧力Ps及び吐出室内圧力Pdをそれぞれ感知し、各感知圧力の変動に連動して延在方向へ弾性移動可能に構成される。
弁ユニット70は、ダイアフラム71、アジャストネジ72、第1シャフト73、第2シャフト74及び弁75を備えて構成される。
ダイアフラム71は、弾性変形可能な薄板状の部材で形成され、Pm導入室H6側から連通孔51gを閉塞し、ダイアフラム71の周縁部を全周でバルブハウジング51に形成された凹部に嵌合させて、基準圧力室H0とPm導入室H6とを気密かつ液密に区画するものである。アジャストネジ72は、ダイアフラム71の表面に固定された基端部から連通孔51gを通って基準圧力室H0へ向って延び、先端部が軸方向に移動できるように基端部に螺合している。第1シャフト73は、円柱状に形成され、一端がPm導入室H6内においてダイアフラム71から離れて位置し、他端が連通孔51fまで延びて、第2感圧室H7側に配置される後述の第1〜3ばねの弾性付勢力によって常時当接している。第2シャフト74は、円柱状に形成されて連通孔51iに挿通され、一端が第2感圧室H7内に位置し、他端が第1感圧室H5内に位置する。
第2シャフト74の外周面と連通孔51iの内周面との間にはOリング54dが介在し、第1感圧室H5と第2感圧室H7との間における潤滑オイルの流通を阻害している。したがって、連通孔51c、Pm導入室H6、連通孔51fと第1シャフト73との隙間、第2感圧室H7、連通孔51dを経由してなる通路によって、第1放圧通路L41の一部が構成される(図11中の白抜き矢印)。
弁75は、第1放圧通路L41を開閉するためのものであり、連通孔51fのうち第2感圧室H7側に配置されるボール弁体75aと、ボール弁体75aが着座する弁座であって、連通孔51fのうち第2感圧室H7側の開口から徐々に拡径しつつ延びるテーパ状弁座75bと、を備えてなる。ボール弁体75aは、Pm導入室H6内から連通孔51fまで延びる第1シャフト73の上記他端と第2感圧室H7内に位置する第2シャフト74の上記一端との間で、後述の第1〜3ばねの弾性付勢力によって常時挟持されるが、第1シャフト73及び第2シャフト74とは連結されず、それぞれと別体をなしている。弁ユニット70(第1シャフト73及び第2シャフト74)がその延在方向に移動すると、ボール弁体75aの表面がテーパ状弁座75bに接離して連通孔51fが開閉し、これにより、第1放圧通路L41の開度(弁開度)を調整することができる。
弁ユニット70は、第1感圧室H5において、第2シャフト74の上記他端とエンドカバー53との間に、ボール弁体75aがテーパ状弁座75bと接触する方向すなわち閉弁方向にボール弁体75aを弾性付勢する第1ばね76を有している。また、弁ユニット70は、Pm導入室H6において、第1シャフト73の上記一端とダイアフラム71との間に、ボール弁体75aがテーパ状弁座75bから離れる方向すなわち開弁方向へ第1シャフト73を介してボール弁体75aを弾性付勢する第2ばね77を有している。さらに、弁ユニット70は、基準圧力室H0において、アジャストネジ62aの先端部とエンドハウジング52の底板52aとの間に、ダイアフラム71、第2ばね77及び第1シャフト73を介してボール弁体75aを開弁方向へ弾性付勢する第3ばね78を有している。アジャストネジ72の先端部を軸方向に移動させることで、第3ばね78の初期たわみ量を調節してダイアフラム71(ひいては第1シャフト73)に作用する弾性付勢力を変化させることができる。
次に、第2実施形態のスクロール型圧縮機100における背圧調整弁50の諸定数の設定について概略説明する。
まず、背圧調整弁50において、スクロールユニット1の圧縮動作中にボール弁体75aに作用する力の釣り合い式は、差圧(Pm−Ps)について整理すると、下記の式(11)で表される。
上記の式(11)において、A1はダイアフラム71の有効受圧面積、A2は第2シャフト74の軸方向断面積、A3は連通孔51fの開口面積(延在方向におけるボール弁体75aの有効感圧面積に相当)であり、いずれも、弁ユニット70に圧力が作用して弁ユニット70を延在方向に移動させるのに有効な感圧面の面積である。また、上記の式(11)において、Xはボール弁体75aがテーパ状弁座75bに着座した閉弁状態から開弁方向へ移動した移動量(すなわち、第1ばね76、第2ばね77及び第3ばね78の変位量)、Fsp1,Fsp2,Fsp3は、それぞれ第1ばね76,第2ばね77,第3ばね78の各ばねの初期たわみによる弾性付勢力(X=0における荷重)、k1,k2,k3は、それぞれ第1ばね76,第2ばね77,第3ばね78のばね定数である。
但し、弁ユニット70の延在方向における感圧面の面積、すなわち、ダイアフラム71の有効受圧面積A1、第2シャフト74の軸方向断面積A2及び連通孔51fの開口面積A3は、背圧室内圧力Pmと吸入室内圧力Psとの差圧(Pm−Ps)による荷重が作用する方向と、吐出室内圧力Pdと吸入室内圧力Psとの差圧(Ps−Ps)による荷重及び吸入室内圧力Psと基準圧力P0との差圧(Ps−P0)による荷重が作用する方向とが、反対方向となるように設定される。つまり、A1,A2,A3は、A2/(A3−A1)>0かつA1/(A3−A1)>0の関係を満足するように設定される。
また、弁ユニット70の延在方向における感圧面の面積、すなわち、ダイアフラム71の有効受圧面積A1、第2シャフト74の軸方向断面積A2及び連通孔51fの開口面積A3は、吸入室内圧力Psが上昇したときの変化が、吐出室内圧力Pdと吸入室内圧力Psとの差圧(Pd−Ps)よりも吸入室内圧力Psと基準圧力P0との差圧(Ps−P0)の方で大きくなるように設定される。つまり、A1,A2,A3は、A2/(A3−A1)<A1/(A3−A1)の関係を満足するように設定される。
したがって、A1,A2,A3は、A3>A1かつA1>A2(>0)の関係を満足するように設定される。
さらに、第1ばね76,第2ばね77,第3ばね78の各ばねの初期たわみによる弾性付勢力Fsp1,Fsp2,Fsp3は、Fsp3−Fsp1−Fsp2>0となるように設定される。そして、上記の式(11)を下記の式(12)で置き換えると、第1実施形態と同様に、上記の式(4)となる。
したがって、第1実施形態と同様に、スクロール型圧縮機100の運転において想定される吸入室内圧力Ps及び吐出室内圧力Pdの複数の組み合わせ{(Ps,Pd)=(Ps1,Pd1),…,(Psn,Pdn),…}(n:自然数)で、上記の式(1)に上記の式(4)を代入した上記の式(6)が成立するように、定数β,γ,δ,εを設定する。定数β,γ,δ,εを一意的に設定する方法及び背圧調整弁50により行われる背圧室内圧力Pmの調整動作については第1実施形態と同様であるので省略する。
第2実施形態のスクロール型圧縮機100によれば、背圧調整弁50は、基準圧力室H0、Pm導入室H6、第2感圧室H7及び第1感圧室H5の4室をこの順番で直列に配置して有すると共に、上記4室にわたって延在して、基準圧力P0、吸入室内圧力Ps及び吐出室内圧力Pdを感知すると共に各感知圧力P0,Pd,Psの変動に連動して延在方向へ弾性移動可能な弁ユニット70を有し、弁ユニット70がPm導入室H6と第2感圧室H7との間に形成された連通孔51fを第2感圧室H7側から開閉する弁75を有している。
このように構成された背圧調整弁50では、第1実施形態と同様に、Pm導入室H6が第2感圧室H7に隣接すると共に第2感圧室H7よりも基準圧力室H0に近い側に位置するので、図11の網掛け矢印で示すように、ボール弁体75aに対して、Pm−Ps差圧荷重が開弁方向に作用する一方、Ps−P0差圧荷重、Pd−Ps差圧荷重及びばね荷重が閉弁方向に作用した状態で力が釣り合い、吸入室内圧力Psが上昇したときにボール弁体75aが閉弁方向に移動するように弁ユニット70の感圧面の面積を設定することで、差圧(Pm−Ps)は、図4に示される下限適正差圧(Pm0−Ps)を満足する方向に変化する。
したがって、第2実施形態のスクロール型圧縮機100に備えられた背圧調整弁50では、第1実施形態と同様に、差圧(Pm−Ps)が吸入室内圧力Ps及び吐出室内圧力Pdに基づいて定まる下限適正差圧(Pm0−Ps)とこれに対する上限適正差圧(Pm1−Ps)との間の適正範囲に収まるように、すなわち、背圧室内圧力Pmが吸入室内圧力Ps及び吐出室内圧力Pdに基づいて定まる適正圧力範囲(Pm0≦Pm≦Pm1)に収まるように弁開度を自律的に調整することができるので、簡素な構造で且つ低コストで背圧室内圧力Pmの調整が可能なスクロール型圧縮機100を提供することが可能となる。
以上、本発明者にとってなされた発明を上記の実施形態に基づき具体的に説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更が可能であることはいうまでもない。