JP2018145274A - 含窒素芳香族カルボン酸金属塩からなる蓄熱材 - Google Patents

含窒素芳香族カルボン酸金属塩からなる蓄熱材 Download PDF

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Abstract

【課題】蓄熱材、特に低温で水蒸気(水)の吸着・解離が進行する、すなわち低温で利用可能であり、かつ蓄熱量が大きい化学蓄熱材を提供すること。
【解決手段】式[1]で表される含窒素芳香族カルボン酸の金属塩であって、前記金属が、リチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、アルミニウム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、亜鉛、銀、及びスズからなる群から選ばれる少なくとも一種である前記金属塩からなる、水蒸気(水)の吸着又は解離により発熱又は吸熱を示す化学蓄熱材。
【化1】
Figure 2018145274

(式中、A乃至Aはそれぞれ独立して、CH、C−COOH、又はNを表し、A乃至Aのうち少なくとも1つはC−COOHを表す。)
【選択図】なし

Description

本発明は、蓄熱材、特に、化学蓄熱材に関するものであり、詳細には、低温で水蒸気(水)の吸着・解離が進行し、かつ蓄熱量が大きい化学蓄熱材に関する。
蓄熱材とは、熱エネルギーを貯蔵する材料の総称であるが、熱の吸収、放出を行うことができる蓄熱材も知られている。このような蓄熱材としては、材料の熱容量によって温度差を与えることで熱エネルギーを蓄える顕熱蓄熱材、材料の相変化する際の熱エネルギーの出入りを用いて蓄熱する潜熱蓄熱材、反応媒体と蓄熱材が接触する際に起こる化学反応熱を利用して蓄熱を行う化学蓄熱材が知られている。その中でも化学蓄熱材は蓄熱容量が大きく、一定温度で熱を取り出すことが可能であり、更に反応物質を分離しておけば、常温で貯蔵できるという長所がある。
上記の化学蓄熱材の代表例としては、酸化カルシウムが挙げられ、水和・脱水反応に伴って熱の放出と吸収を行うことが知られている。
また、別の化学蓄熱材として、金属元素と、有機配位子とで構成される配位高分子を含む蓄熱材が提案されている(特許文献1)。特許文献1には、硝酸銅(II)三水和物、イソニコチン酸及び水からなる混合物を反応させることで得られる化合物が、示差走査熱量測定装置による測定により、水の解離温度63.5℃、吸熱量(蓄熱量)309J/gを示すことが開示されている。
特開2005−097530号公報
前述の酸化カルシウムを化学蓄熱材として使用した場合、水和反応による発熱は30℃以下の低温でも進行し熱の放出は良好であるものの、水和反応により生成した水酸化カルシウムの脱水反応を進行させる(蓄熱する)ためには400℃以上の高温が必要であり、実用的ではないという問題があった。
また、特許文献1に記載の、金属元素と、有機配位子とで構成される配位高分子を化学蓄熱材として使用した場合、利用可能な温度を100℃以下にすることができるものの、前記酸化カルシウムの系に比べて蓄熱量が小さく、蓄熱材としての性能が不十分であるという問題があった。
そのため、本発明は、上記の問題を解決する、即ち、低温で水蒸気(水)の吸着・解離が進行する、つまり、低温で利用可能で、かつ蓄熱量が大きい化学蓄熱材の提供を課題とする。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、特定の含窒素芳香族カルボン酸金属塩を用いると、低温で水蒸気(水)の吸着・解離が進行し、かつ蓄熱量が大きく、それにより、良好な性能を示し得る化学蓄熱材となり得ることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち本発明は、第1観点として、式[1]で表される含窒素芳香族カルボン酸の金
属塩であって、前記金属が、リチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、アルミニウム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、亜鉛、銀、及びスズからなる群から選ばれる少なくとも一種である前記金属塩からなる、水蒸気(水)の吸着又は解離により発熱又は吸熱を示す化学蓄熱材に関する。
Figure 2018145274
(式中、A乃至Aはそれぞれ独立して、CH、C−COOH、又はNを表し、A乃至Aのうち少なくとも1つはC−COOHを表す。)
第2観点として、前記含窒素芳香族カルボン酸が1乃至4のカルボキシ基を有するカルボン酸である、第1観点に記載の化学蓄熱材に関する。
第3観点として、前記含窒素芳香族カルボン酸がモノカルボン酸である、第2観点に記載の化学蓄熱材に関する。
第4観点として、前記A乃至Aがそれぞれ独立して、CH又はC−COOHを表す、第1観点乃至第3観点のうち何れか一項に記載の化学蓄熱材に関する。
第5観点として、前記含窒素芳香族カルボン酸が、ピコリン酸、ニコチン酸、イソニコチン酸、2,4−ピリジンジカルボン酸、3,5−ピリジンジカルボン酸、及び2−ピラジンカルボン酸からなる群から選ばれる少なくとも一種である、第1観点に記載の化学蓄熱材に関する。
第6観点として、前記含窒素芳香族カルボン酸が、ピコリン酸、ニコチン酸、及びイソニコチン酸からなる群から選ばれる少なくとも一種である、第5観点に記載の化学蓄熱材に関する。
第7観点として、前記金属がアルカリ土類金属である、第1観点乃至第6観点のうち何れか一項に記載の化学蓄熱材に関する。
第8観点として、前記金属が、マグネシウム、及びカルシウムからなる群から選ばれる少なくとも一種である、第7観点に記載の化学蓄熱材に関する。
第9観点として、前記金属がカルシウムである、第8観点に記載の化学蓄熱材に関する。
第10観点として、水蒸気(水)の吸着による発熱量、又は水蒸気(水)の解離による吸熱量が、0.5MJ/kg以上である、第1観点乃至第9観点のうち何れか一項に記載の化学蓄熱材に関する。
第11観点として、水蒸気(水)の解離温度が100℃以下である、第1観点乃至第10観点のうち何れか一項に記載の化学蓄熱材に関する。
本発明の蓄熱材は、例えば100℃以下の低温で水蒸気(水)の吸着・解離が可能であり、蓄熱量も大きいことから、例えば、携帯型保温用具(カイロ)、食品乾燥材、弁当の加熱装置中の発熱材、酒の加熱装置中の発熱材、吸着ヒートポンプ用吸着剤、デシカント空調装置用吸着剤、自動車用除湿乾燥材、住宅用除湿乾燥材等の種々の製品に応用することができる。
また、本発明の蓄熱材は、吸収した熱を必要な時に利用することが可能な、効率のよい蓄熱材となり得、例えば、車載用廃熱回収再利用システム等の蓄熱材として好適に使用できる。
図1は、試験前のTGA−DSC曲線を示すグラフである。 図2は、脱水工程後のTGA−DSC曲線を示すグラフである。 図3は、試験前のXRDパターンを示すチャートである。 図4は、脱水工程後のXRDパターンを示すチャートである。
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の化学蓄熱材は、含窒素芳香族カルボン酸の特定の金属塩からなること、そして、水蒸気(水)の吸着又は解離により発熱又は吸熱を示すことを特徴とする。
<化学蓄熱材>
本発明において、化学蓄熱とは、物質の化学変化に伴う発熱・吸熱などの可逆的な化学反応を利用した蓄熱技術を意図し、すなわち、化学蓄熱材とは、反応媒体と接触する際に起こる化学反応熱を利用して、熱の吸収(貯蔵)と放出を行う材料を指す。
特に本発明では、化合物中に存在する水の脱水による吸熱反応(蓄熱操作)と水和による発熱反応(放熱操作)を示す材料、水蒸気の吸着又は解離(放出)による発熱又は吸熱を示す材料を対象とする。
上記で意図される化学蓄熱材における発熱又は吸熱の機構を、従来の代表的な蓄熱材である酸化カルシウムを例に挙げて説明する。
酸化カルシウムにおける発熱は、下記の(式1)に示されるように、酸化カルシウムの水和反応(水蒸気(水)の吸着)により水酸化カルシウムに変換される際に生じ、また、酸化カルシウムにおける吸熱は、下記の(式2)に示されるように、水酸化カルシウムの脱水反応により、酸化カルシウムに変換される際に生じる。
(式1) CaO + HO → Ca(OH) + 1.46MJ/kg
(式2) Ca(OH) + 1.46MJ/kg → CaO + H
上記の(式1)及び(式2)から、1.46MJ/kgの熱量が、水和反応又は脱水反応の際に、発熱又は吸熱されることが分かるが、この発熱及び吸熱の量が化学蓄熱材(酸化カルシウム)に蓄熱されているとみなすことができる。
<含窒素芳香族カルボン酸金属塩>
[含窒素芳香族カルボン酸]
本発明の含窒素芳香族カルボン酸金属塩を構成するための含窒素芳香族カルボン酸としては、下記式[1]で表される化合物が挙げられる。
Figure 2018145274
上記式中、A乃至Aはそれぞれ独立して、CH、C−COOH、又はNを表し、A乃至Aのうち少なくとも1つはC−COOHを表す。
上記式[1]で表される化合物において、含窒素芳香族複素環が構成する化合物としては、例えば、ピリジン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、1,2,3−トリアジン、1,2,4−トリアジン、1,3,5−トリアジン、1,2,3,4−テトラジン、1,2,3,5−テトラジン、及び1,2,4,5−テトラジン等が挙げられる。これら化合物の中でも、好ましくは、ピリジン、ピリミジン、ピラジン、又は1,3,5−トリアジンが挙げられ、より好ましくはピリジン、又はピラジンが挙げられ、さらに好ましくはピリジンが挙げられる。
上記式[1]で表される化合物は、好適な態様において、前記A乃至Aがそれぞれ独立して、CH又はC−COOHを表す。
中でも上記式[1]で表される化合物は、好ましくは、モノ乃至テトラカルボン酸(カルボキシ基数1乃至4)であることが好ましく、より好ましくは、モノ乃至ジカルボン酸(カルボキシ基数1又は2)であることが好ましく、特にモノカルボン酸(カルボキシ基数1)であることが好ましい。
上記式[1]で表される含窒素芳香族カルボン酸の具体例としては、ただしこれらに限定されないが、例えば、ピコリン酸、ニコチン酸、イソニコチン酸、2,3−ピリジンジカルボン酸、2,4−ピリジンジカルボン酸、2,5−ピリジンジカルボン酸、2,6−ピリジンジカルボン酸、3,4−ピリジンジカルボン酸、3,5−ピリジンジカルボン酸、2,4,6−ピリジントリカルボン酸、2,3,4,5−ピリジンテトラカルボン酸、2,3,4,6−ピリジンテトラカルボン酸、2,3,4,5,6−ピリジンペンタカルボン酸、3−ピリダジンカルボン酸、4−ピリダジンカルボン酸、3,4−ピリダジンジカルボン酸、3,5−ピリダジンジカルボン酸、3,6−ピリダジンカルボン酸、4,5−ピリダジンジカルボン酸、2−ピリミジンカルボン酸、4−ピリミジンカルボン酸、5−ピリミジンカルボン酸、2,4−ピリミジンジカルボン酸、2,5−ピリミジンジカルボン酸、4,5−ピリミジンジカルボン酸、4,6−ピリミジンジカルボン酸、2−ピラジンカルボン酸、1,2,3−トリアジン−4−カルボン酸、1,2,3−トリアジン−5−カルボン酸、1,2,4−トリアジン−3−カルボン酸、1,2,4−トリアジン−5−カルボン酸、1,2,4−トリアジン−6−カルボン酸、1,3,5−トリアジン−2−カルボン酸、1,3,5−トリアジン−2,4−ジカルボン酸、1,3,5−トリアジン−2,4,6−トリカルボン酸、1,2,3,4−テトラジン−5−カルボン酸、1,2,3,5−テトラジン−4−カルボン酸、及び1,2,4,5−テトラジン−3−カルボン酸等が挙げられる。
上記式[1]で表される含窒素芳香族カルボン酸は、好ましくは、ピコリン酸、ニコチン酸、イソニコチン酸、2,3−ピリジンジカルボン酸、2,4−ピリジンジカルボン酸、2,5−ピリジンジカルボン酸、2,6−ピリジンジカルボン酸、3,4−ピリジンジカルボン酸、3,5−ピリジンジカルボン酸、又は2−ピラジンカルボン酸が挙げられ、より好ましくは、ピコリン酸、ニコチン酸、又はイソニコチン酸、さらに好ましくは、イソニコチン酸が挙げられる。
これら含窒素芳香族カルボン酸は、単独で使用してもよいし、二種以上を混合して用いてもよい。
[金属種]
本発明に使用し得る含窒素芳香族カルボン酸の金属塩を構成するための金属は、リチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、アルミニウム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、亜鉛、銀、及びスズからなる群から選ばれる少なくとも一種が挙げられる。
中でも、本発明の含窒素芳香族カルボン酸の金属塩としては、アルカリ土類金属(マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム)の塩であることが好ましく、さらに好ましい塩としてマグネシウム、及びカルシウムからなる群から選ばれる少なくとも一種の金属の塩が挙げられる。特に上記金属がカルシウムである、含窒素芳香族カルボン酸のカルシウム塩であることが好適である。
これら金属塩を構成するための金属は、単独で使用してもよいし、二種以上を混合して用いてもよい。
[含窒素芳香族カルボン酸金属塩の製造]
含窒素芳香族カルボン酸金属塩の製造方法は特に限定されないが、前記含窒素芳香族カルボン酸と、前記金属の塩化物、硫酸塩、又は硝酸塩と、水酸化ナトリウムなどの塩基と
を、水中で混合して反応させることにより、含窒素芳香族カルボン酸の金属塩を析出させ、ろ過、乾燥することで結晶性粉末として得ることができる。また、前記含窒素芳香族カルボン酸と、前記金属の酸化物、水酸化物又は炭酸塩を、水中で混合して反応させることにより、含窒素芳香族カルボン酸の金属塩を析出させ、ろ過、乾燥させることにより、得ることもできる。
得られる粉末の形態は、通常は粒状結晶、板状結晶、短冊状(ストリップ状)結晶、棒状結晶、針状結晶等となり、さらにこれらの結晶が積層した形態になることもある。これらの化合物(結晶性粉末)は、市販されている場合には、市販品を使用することができる。
蓄熱量の評価は、示差走査熱量測定による熱収支(吸熱又は放熱量)により行うことができ、本発明の化学蓄熱材の蓄熱量として、好ましくは0.5MJ/kg以上であり、より好ましくは0.6MJ/kg以上、特に好ましいのは0.7MJ/kg以上である。従って、本発明の化学蓄熱材は、このような熱収支を有することが好ましい。この熱収支の上限は特に限定はなく、高い程好ましいが、通常10MJ/kg以下である。
本発明の化学蓄熱材において、水蒸気(水)の吸着・解離を生じ得る温度は、好ましくは200℃以下、例えば、−30〜200℃、より好ましくは30〜180℃、特に好ましくは50〜100℃である。この温度領域に熱収支があるものであれば、吸熱、発熱の両方が化学蓄熱材として利用できる。例えば、吸熱の場合は排熱回収、ヒートアイランド現象の緩和等に使用することができ、また、発熱の場合は暖房や自動車エンジンの暖房機等に使用できる。従って、本発明の化学蓄熱材は、示差走査熱量測定において、好ましくは−30〜200℃、特に30〜180℃、とりわけ50〜100℃の温度領域で熱収支があることが好ましい。
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
なお、実施例において、試料の調製及び物性の分析に用いた装置及び条件は、以下のとおりである。
(1)熱重量/示差走査熱量測定(TGA−DSC)
装置:Mettler−Toledo社製 TGA/DSC 1
測定温度(実施例1〜11、比較例2〜4):40〜300℃
測定温度(比較例1):40〜500℃
加熱速度:10℃/分
窒素フロー:50mL/分
サンプルパン:アルミニウムパン
(2)粉末X線解析(XRD)
装置:(株)リガク製 デスクトップX線回折装置 MiniFlex(登録商標)600
測定角度(2θ):3〜40度
走査速度:15度/分
[製造例1]イソニコチン酸マグネシウム(InA−Mg)の製造
イソニコチン酸[東京化成工業(株)製]4.01g(32.6mmol)、水酸化マグネシウム[純正化学(株)製]0.95g(16.3mmol)、及び水10gを混合し、100℃で1.3時間撹拌した。反応混合物を室温(およそ23℃)まで冷却し、析出している固体をろ過した。この固体を、減圧下、50℃で1時間乾燥し、イソニコチン
酸マグネシウム(水和物)2.85gを得た。
[製造例2]イソニコチン酸カルシウム(InA−Ca)の製造
イソニコチン酸1.11g(9.0mmol)、塩化カルシウム[純正化学(株)製]0.50g(4.5mmol)、7質量%水酸化ナトリウム水溶液5.37g(水酸化ナトリウムとして9.4mmol)、及び水2.5gを混合し、室温(およそ23℃)で1時間撹拌した。反応混合物から析出している固体をろ過した。この固体を、減圧下、50℃で1時間乾燥し、イソニコチン酸カルシウム(水和物)0.39gを得た。
[製造例3]イソニコチン酸マンガン(InA−Mn)の製造
イソニコチン酸0.62g(5.0mmol)、塩化マンガン四水和物[純正化学(株)製]0.50g(2.5mmol)、4.1質量%水酸化ナトリウム水溶液5.23g(水酸化ナトリウムとして5.4mmol)、及び水2.5gを混合し、室温(およそ23℃)で1時間撹拌した。反応混合物から析出している固体をろ過した。この固体を、減圧下、50℃で1時間乾燥し、イソニコチン酸マンガン(水和物)0.78gを得た。
[製造例4]イソニコチン酸鉄(InA−Fe)の製造
イソニコチン酸0.62g(5.0mmol)、塩化鉄(II)四水和物[関東化学(株)製]0.50g(2.5mmol)、4質量%水酸化ナトリウム水溶液5.22g(水酸化ナトリウムとして5.2mmol)、及び水2.5gを混合し、室温(およそ23℃)で1時間撹拌した。反応混合物から析出している固体をろ過した。この固体を、減圧下、50℃で1時間乾燥し、イソニコチン酸鉄(水和物)0.83gを得た。
[製造例5]イソニコチン酸コバルト(InA−Co)の製造
イソニコチン酸0.52g(4.2mmol)、塩化コバルト六水和物[純正化学(株)製]0.50g(2.1mmol)、3.4質量%水酸化ナトリウム水溶液5.19g(水酸化ナトリウムとして4.4mmol)、及び水2.5gを混合し、室温(およそ23℃)で1時間撹拌した。反応混合物から析出している固体をろ過した。この固体を、減圧下、50℃で1時間乾燥し、イソニコチン酸コバルト(水和物)0.66gを得た。
[製造例6]イソニコチン酸亜鉛(InA−Zn)の製造
イソニコチン酸0.90g(7.3mmol)、塩化亜鉛[純正化学(株)製]0.50g(3.7mmol)、5.8質量%水酸化ナトリウム水溶液5.36g(水酸化ナトリウムとして7.8mmol)、及び水2.5gを混合し、室温(およそ23℃)で1時間撹拌した。反応混合物から析出している固体をろ過した。この固体を、減圧下、50℃で1時間乾燥し、イソニコチン酸亜鉛(水和物)1.28gを得た。
[製造例7]ニコチン酸コバルト(NA−Co)の製造
ニコチン酸[東京化成工業(株)製]0.52g(4.2mmol)、塩化コバルト六水和物0.50g(2.1mmol)、3.4質量%水酸化ナトリウム水溶液5.19g(水酸化ナトリウムとして4.4mmol)、及び水2.5gを混合し、室温(およそ23℃)で1時間撹拌した。反応混合物から析出している固体をろ過した。この固体を、減圧下、50℃で1時間乾燥し、ニコチン酸コバルト(水和物)0.65gを得た。
[製造例8]ピコリン酸鉄(PA−Fe)の製造
ピコリン酸[東京化成工業(株)製]0.62g(5.0mmol)、塩化鉄(II)四水和物0.50g(2.5mmol)、4質量%水酸化ナトリウム水溶液5.25g(水酸化ナトリウムとして5.3mmol)、及び水2.5gを混合し、室温(およそ23℃)で1時間撹拌した。反応混合物から析出している固体をろ過した。この固体を、減圧下、50℃で1時間乾燥し、ピコリン酸鉄(水和物)0.75gを得た。
[製造例9]2−ピラジンカルボン酸カルシウム(2PrCA−Ca)の製造
2−ピラジンカルボン酸[東京化成工業(株)製]1.12g(9.0mmol)、塩化カルシウム0.50g(4.5mmol)、10質量%水酸化ナトリウム水溶液3.78g(水酸化ナトリウムとして9.5mmol)、及び水1.6gを混合し、室温(およそ23℃)で1時間撹拌した。反応混合物から析出している固体をろ過した。この固体を、減圧下、50℃で1時間乾燥し、2−ピラジンジカルボン酸カルシウム(水和物)1.32gを得た。
[製造例10]2,4−ピリジンジカルボン酸コバルト(24PyDA−Co)の製造
2,4−ピリジンジカルボン酸[東京化成工業(株)製]0.35g(2.1mmol)、塩化コバルト六水和物0.50g(2.1mmol)、3.4質量%水酸化ナトリウム水溶液5.22g(水酸化ナトリウムとして4.4mmol)、及び水3gを混合し、室温(およそ23℃)で1時間撹拌した。反応混合物から析出している固体をろ過した。この固体を、減圧下、50℃で1時間乾燥し、2,4−ピリジンジカルボン酸コバルト(水和物)0.60gを得た。
[製造例11]3,5−ピリジンジカルボン酸コバルト(35PyDA−Co)の製造
3,5−ピリジンジカルボン酸[東京化成工業(株)製]0.35g(2.1mmol)、塩化コバルト六水和物0.50g(2.1mmol)、10質量%水酸化ナトリウム水溶液1.81g(水酸化ナトリウムとして4.5mmol)、及び水6.5gを混合し、室温(およそ23℃)で1時間撹拌した。反応混合物から析出している固体をろ過した。この固体を、減圧下、50℃で1時間乾燥し、3,5−ピリジンジカルボン酸コバルト(水和物)0.43gを得た。
[比較製造例1]InAm−Coの製造
イソニコチンアミド[東京化成工業(株)製]0.53g(4.3mmol)、塩化コバルト六水和物0.50g(2.1mmol)、10質量%水酸化ナトリウム水溶液1.78g(水酸化ナトリウムとして4.5mmol)、及び水8.4gを混合し、室温(およそ23℃)で1.5時間撹拌した。反応混合物から析出している固体をろ過した。この固体を、減圧下、50℃で1時間乾燥し、InAm−Co(水和物)0.11gを得た。
[比較製造例2]NAm−Coの製造
ニコチンアミド[東京化成工業(株)製]0.51g(4.2mmol)、塩化コバルト六水和物0.51g(2.1mmol)、10質量%水酸化ナトリウム水溶液1.74g(水酸化ナトリウムとして4.4mmol)、及び水8.4gを混合し、室温(およそ23℃)で1時間撹拌した。反応混合物から析出している固体をろ過した。この固体を、減圧下、50℃で1時間乾燥し、NAm−Co(水和物)0.13gを得た。
[比較製造例3]PAm−Mnの製造
ピコリンアミド[東京化成工業(株)製]0.65g(5.3mmol)、塩化マンガン四水和物0.50g(2.5mmol)、10質量%水酸化ナトリウム水溶液2.18g(水酸化ナトリウムとして5.5mmol)、及び水7.7gを混合し、室温(およそ23℃)で1時間撹拌した。反応混合物から析出している固体をろ過した。この固体を、減圧下、50℃で1時間乾燥し、PAm−Mn(水和物)0.20gを得た。
[実施例1〜11、比較例1〜4]
製造例1〜11で得られた含窒素芳香族カルボン酸金属塩、比較製造例1〜3で得られた反応物、及び水酸化カルシウム[純正化学(株)製]について、熱重量/示差走査熱量測定を行い、水の解離による吸熱量(蓄熱量)、及び吸熱開始温度(水の解離温度)を評
価した。結果を表1に併せて示す。
Figure 2018145274
表1に示すように、本発明の蓄熱材は、0.5MJ/kg以上と蓄熱量が大きく、また、蓄熱開始温度(水の解離温度)が100℃以下であることが確認された。
一方、公知の蓄熱材である水酸化カルシウムは、蓄熱量は大きいものの、蓄熱開始温度が400℃以上と極めて高く、実用的ではないことが確認された(比較例1)。また、含窒素芳香族カルボン酸に替えてカルボン酸アミドを用いた反応物は、蓄熱量が小さいうえ、蓄熱開始温度も高く、実用的ではないことが確認された(比較例2〜4)。
[実施例12]繰返し特性評価
InA−Ca5.01gをシャーレに入れ、
(1)脱水工程:大気圧下、100℃で3時間静置
(2)水蒸気吸着工程:40℃、相対湿度90%下で2時間静置
を3回繰り返した。各工程後のサンプルについて、熱重量/示差走査熱量測定、及び粉末X線解析を行い、水の解離による吸熱量(蓄熱量)、吸熱開始温度(水の解離温度)、熱重量減少、及びXRDパターンを評価した。結果を表2に示す。また、試験前のTGA−DSC曲線を図1に、最初の脱水工程後のTGA−DSC曲線を図2に、試験前のXRDパターンを図3に、最初の脱水工程後のXRDパターンを図4に、それぞれ示す。
Figure 2018145274
表2に示すように、本発明の蓄熱材は、水の解離(脱水)/吸着を繰り返しても、蓄熱量、解離温度といった蓄熱性能がほとんど変化せず、優れた繰返し特性を有することが確認された。
以上、含窒素芳香族カルボン酸金属塩からなる本発明の蓄熱材は、低温条件下にて多くの熱を蓄えることが可能であり、しかも繰り返し特性にも優れ、未利用廃熱の効率的利用の実現を期待できる。

Claims (11)

  1. 式[1]で表される含窒素芳香族カルボン酸の金属塩であって、前記金属が、リチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、アルミニウム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、亜鉛、銀、及びスズからなる群から選ばれる少なくとも一種である前記金属塩からなる、水蒸気(水)の吸着又は解離により発熱又は吸熱を示す化学蓄熱材。
    Figure 2018145274
    (式中、A乃至Aはそれぞれ独立して、CH、C−COOH、又はNを表し、A乃至Aのうち少なくとも1つはC−COOHを表す。)
  2. 前記含窒素芳香族カルボン酸が1乃至4のカルボキシ基を有するカルボン酸である、請求項1に記載の化学蓄熱材。
  3. 前記含窒素芳香族カルボン酸がモノカルボン酸である、請求項2に記載の化学蓄熱材。
  4. 前記A乃至Aがそれぞれ独立して、CH又はC−COOHを表す、請求項1乃至請求項3のうち何れか一項に記載の化学蓄熱材。
  5. 前記含窒素芳香族カルボン酸が、ピコリン酸、ニコチン酸、イソニコチン酸、2,4−ピリジンジカルボン酸、3,5−ピリジンジカルボン酸、及び2−ピラジンカルボン酸からなる群から選ばれる少なくとも一種である、請求項1に記載の化学蓄熱材。
  6. 前記含窒素芳香族カルボン酸が、ピコリン酸、ニコチン酸、及びイソニコチン酸からなる群から選ばれる少なくとも一種である、請求項5に記載の化学蓄熱材。
  7. 前記金属がアルカリ土類金属である、請求項1乃至請求項6のうち何れか一項に記載の化学蓄熱材。
  8. 前記金属が、マグネシウム、及びカルシウムからなる群から選ばれる少なくとも一種である、請求項7に記載の化学蓄熱材。
  9. 前記金属がカルシウムである、請求項8に記載の化学蓄熱材。
  10. 水蒸気(水)の吸着による発熱量、又は水蒸気(水)の解離による吸熱量が、0.5MJ/kg以上である、請求項1乃至請求項9のうち何れか一項に記載の化学蓄熱材。
  11. 水蒸気(水)の解離温度が100℃以下である、請求項1乃至請求項10のうち何れか一項に記載の化学蓄熱材。
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