JP2018134073A - 未分化細胞吸着剤、および細胞の分離方法 - Google Patents

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丸山 高廣
Takahiro Maruyama
高廣 丸山
政浩 林
Masahiro Hayashi
政浩 林
伊藤 博之
Hiroyuki Ito
博之 伊藤
恵 穂谷
Megumi Hotani
恵 穂谷
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Abstract

【課題】未分化マーカーが存在する細胞を吸着することが可能な吸着剤、当該吸着剤を用いて未分化マーカーが存在する細胞を高効率に分離する方法を提供すること。【解決手段】未分化マーカーに結合性を有するフコース結合性レクチンを水に不溶性の担体に固定化して得られる未分化細胞吸着剤、および当該吸着剤を未分化マーカーが存在する細胞を含む細胞混合物と接触させ、吸着剤に結合した細胞と結合しなかった細胞を分離する方法により、前記課題を解決する。【選択図】なし

Description

本発明は、特定の構造を有する糖鎖に結合性を有するタンパク質を水に不溶性の担体に固定化した、特定の糖鎖構造を未分化マーカーとして有する細胞の吸着剤、および未分化マーカーが存在する細胞の分離方法に関する。
近年、再生医療分野に関する研究が著しく進展しており、再生医療支援事業の市場規模は2030年に世界で51兆円、国内でも5500億円に達すると予測されている。ヒトiPS細胞やES細胞などの多能性幹細胞から分化誘導される細胞は、造血幹細胞などの血球系細胞、心筋細胞などの筋肉系細胞、神経幹細胞などの神経系細胞、網膜色素上皮細胞などの上皮系細胞など多岐に渡り、多能性幹細胞より誘導した医療用細胞を利用した再生医療の実現に対する期待が急速に高まりつつある。特に山中らにより樹立された人工多能性幹細胞であるiPS細胞は、受精胚を使用するES細胞に比べて倫理的障壁が低く、自家組織から樹立できるという極めて大きなメリットがあり、ドナーに負担を与えることなく比較的容易に樹立可能であることが知られている。
しかしながら、iPS細胞より作製された再生医療用細胞については、安全性評価、品質管理および安定大量供給システムが十分に整備されていないのが現状であり、特に、iPS細胞の安全性評価は今後の大きな課題となっている。さらに、iPS細胞のような多能性幹細胞は、多様な体細胞に分化出来る能力を有している反面、分化させた細胞集団のなかに未分化状態の幹細胞(以下、未分化細胞)が残存する性質があることがわかっており、実用化にあたっては、目的とする細胞を純化精製すると同時に、腫瘍形成の可能性が高い未分化細胞を除去する方法の開発が必要不可欠である。
未分化細胞を除去する方法としては、例えば、非特許文献1に開示されている方法では、iPS細胞から心筋細胞を誘導する際に、通常は培養液に必要不可欠とされるグルコースおよびグルタミンを除去し、心筋細胞にとってエネルギー源となる乳酸を添加することにより、未分化iPS細胞のみを選択的に除去し、心筋細胞のみを選別できるということが報告されている。また、特許文献1に開示されている方法では、iPS細胞表面に存在する未分化マーカーに結合するレクチンであるBC2LCNレクチンのC末端へ緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa exotoxin A)由来外毒素の触媒ドメイン(PE23)を結合した融合タンパクを調製し、体細胞の分化誘導中に添加することで、未分化iPS細胞の除去が可能であることが報告されている。
しかしながら、いずれの方法も未分化iPS細胞から分化細胞への誘導培養時に未分化iPS細胞の除去を同時に行うため、長期の処理時間が必要であることや、培養中ではiPS細胞や分化細胞の好適な培養細胞密度が限られていることから、大量細胞の処理には適さず、処理効率が低いといった問題点があった。また、後者の方法で未分化細胞除去を行った体細胞などを生体移植する場合、BC2LCNレクチンに融合タンパクとして付与した毒素ユニットの遊離が引き起こす生理的影響や免疫応答反応については不明な部分が多く、臨床展開を図る上での懸念材料となっていた。
このような状況下、iPS細胞やES細胞などの多能性幹細胞から分化誘導した細胞を大量に調製して臨床展開を図る上で、調製した大量の細胞に含まれる未分化細胞を短時間で効率良く除去し、目的の分化細胞を確実に純化できる技術の開発が求められている。
特開2014−126146号公報
Cell Metab.,23(4),663−674,2016
本発明の課題は、未分化細胞の表面に存在する未分化マーカーを利用し、特定の糖鎖構造を未分化マーカーとして有する細胞を吸着分離することが可能な吸着剤、および当該吸着剤を用いて特定の糖鎖構造を未分化マーカーとして有する細胞を高効率に吸着分離する方法を提供することである。
本発明者等は上記の課題を解決すべく鋭意検討した結果、特定の構造を有する糖鎖に結合性を有するタンパク質を水に不溶性の担体に固定化して得られる細胞吸着剤を作製し、作製した該吸着剤を特定の糖鎖構造を未分化マーカーとして有する細胞を含む細胞混合物と接触させたのち、吸着剤に結合した細胞と結合しなかった細胞を分離することで、未分化マーカーが存在する細胞を高効率に除去できることを見いだし、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明は、以下の(1)から(7)に記載した発明を提供するものである。
(1)以下の(a)または(b)のタンパク質が、水に不溶性の担体に固定化されていることを特徴とする、細胞の吸着剤。
(a)配列番号1で示されるアミノ酸配列を含み、かつ、Fucα1−2Galβ1−3GlcNAcおよび/またはFucα1−2Galβ1−3GalNAcからなる構造を含む糖鎖に結合性を有するタンパク質。
(b)配列番号1で示されるアミノ酸配列において、1若しくは複数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入、もしくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、Fucα1−2Galβ1−3GlcNAcおよび/またはFucα1−2Galβ1−3GalNAcからなる構造を含む糖鎖に結合性を有するタンパク質。
(2)水に不溶性の担体に、親水性高分子が共有結合で固定されていることを特徴とする、(1)に記載の吸着剤。
(3)水に不溶性の担体の、水に膨潤させた状態での粒径が100μm以上1000μm以下であることを特徴とする、(1)に記載の吸着剤。
(4)以下の(A)から(C)の工程を含む工程からなることを特徴とする、(1)から(3)に記載の吸着剤の製造方法:
(A)水に不溶性の担体に親水性高分子を共有結合で固定する工程、
(B)工程(A)で得られた親水性高分子を共有結合で固定した担体に、(1)の(a)または(b)に記載のタンパク質を固定化するための官能基を導入する工程、
(C)工程(B)で得られた官能基を導入した担体に、(1)の(a)または(b)に記載のタンパク質を固定化する工程。
(5)(1)から(3)に記載の吸着剤と、
「Fucα1−2Galβ1−3GlcNAcおよび/またはFucα1−2Galβ1−3GalNAcからなる構造を含む糖鎖」を有する細胞を含む細胞混合物とを接触させる工程と、
吸着剤に結合した「Fucα1−2Galβ1−3GlcNAcおよび/またはFucα1−2Galβ1−3GalNAcからなる構造を含む糖鎖」を有する細胞混合物中の細胞と、吸着剤に結合しない細胞混合物中の細胞とを分離する工程を含む工程からなることを特徴とする、細胞の分離方法。
(6)(5)に記載の方法において、吸着剤を充填してなるカラムを用いることを特徴とする、細胞の分離方法。
(7)(5)または(6)に記載の方法により、「Fucα1−2Galβ1−3GlcNAcおよび/またはFucα1−2Galβ1−3GalNAcからなる構造を含む糖鎖」を有する未分化細胞と分化細胞を含む細胞混合物から、未分化細胞を分離して分化細胞を精製する方法。
(8)(1)から(3)に記載の吸着材を充填してなるカラム。
以下に本発明をさらに詳細に説明する。
本発明の吸着剤は、Fucα1−2Galβ1−3GlcNAcおよび/またはFucα1−2Galβ1−3GalNAcからなる構造を含む糖鎖に結合性を有するタンパク質が水に不溶性の担体に固定化されていることを特徴とする。本発明の吸着剤に使用するタンパク質は、グラム陰性細菌(Burkholderia cenocepacia)が産生するBC2L−Cタンパク質のN末端ドメイン(YP_002232818)に由来するレクチンであり、より詳しくは、このレクチンを形質転換大腸菌で発現させたものである。本発明の吸着剤に使用するタンパク質は前記レクチンと同様に、Fucα1−2Galβ1−3GlcNAcからなる構造を持つHタイプ1型糖鎖、Fucα1−2Galβ1−3GalNAcからなる構造を持つHタイプ3型糖鎖、Fucα1−2Galβ1−4(Fucα1−3)GlcNAcからなる構造を持つルイスY型糖鎖など、フコースを含む複数種の糖鎖に高い結合性を有する。本発明の吸着剤に使用するタンパク質は、Fucα1−2Galβ1−3GlcNAcおよび/またはFucα1−2Galβ1−3GalNAcの構造を含む糖鎖への結合性を有している限り、配列番号1で示されるアミノ酸配列において、1もしくは複数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入もしくは付加してもよく、例えば20個以下、好ましくは10個以下、より好ましくは5個以下のアミノ酸が欠失、置換、挿入もしくは付加してもよい。
また、本発明の吸着剤に使用するタンパク質は、そのN末端側またはC末端側に、夾雑物質存在下の溶液から分離する際に有用なタンパク質タグや、本発明の吸着剤を作製する際に有用な担体固定化用タグを付加してもよい。前記タンパク質タグとしては、ポリヒスチジン、グルタチオン S−トランスフェラーゼや、マルトース結合タンパク質(MBP)、セルロース結合性ドメイン(CBD)、mycタグ、FLAGタグを、また、前記担体固定化用タグとしては、例えば配列番号2で示されるシステインを含むオリゴペプチドや、リジンを含むオリゴペプチドからなる担体固定化用タグを例示することができる。これらタンパク質タグや担体固定化用タグの長さは、本発明の吸着剤に使用するタンパク質がFucα1−2Galβ1−3GlcNAcおよび/またはFucα1−2Galβ1−3GalNAcの構造を含む糖鎖への結合性を有している限り、特に制限はない。さらに本発明の吸着剤に使用するタンパク質のN末端側には、宿主での効率的な発現を促すためのシグナルペプチドを付加してもよい。宿主が大腸菌の場合における前記シグナルペプチドの例としては、PelB、DsbA、MalE、TorTなどといったペリプラズムにタンパク質を分泌させるシグナルペプチドを例示することができる。
本発明の吸着剤は、Fucα1−2Galβ1−3GlcNAcおよび/またはFucα1−2Galβ1−3GalNAcからなる構造を含む糖鎖に結合性を有するタンパク質が水に不溶性の担体に固定化されていることから、前記糖鎖構造を有する細胞を吸着することができる。一方、Fucα1−2Galβ1−3GlcNAcからなるHタイプ1型糖鎖やFucα1−2Galβ1−3GalNAcからなるHタイプ3型糖鎖は、ヒトiPS細胞やES細胞などの未分化細胞に特異的に存在する未分化マーカーとして知られている糖鎖である(例えば、J Biol Chem. 2011, 286(23):20345−53.)。従って、本発明の吸着剤を用いることにより、Hタイプ1型糖鎖やHタイプ3型糖鎖を有する未分化細胞を吸着分離することができる。また、本発明の吸着剤を用いることにより、ヒトiPS細胞やES細胞などの未分化細胞以外に、未分化マーカーとして知られている糖鎖が存在する細胞、例えば、2102Ep細胞やNT2/D1細胞などのヒト胎児性がん細胞を選択的に吸着剤に吸着させて、これらのがん細胞を分離することができる。
本発明の吸着剤に使用する水に不溶性の担体の原料に特に制限はなく、シリカゲルや金薄膜を蒸着させたガラスなどの無機系担体、アガロース、セルロース、キチン、キトサンなどの多糖類を原料とした水に不溶性の多糖系担体およびそれらを架橋剤で架橋した架橋多糖系担体、デキストラン、プルラン、デンプン、アルギン酸塩、カラギーナンなどの水溶性多糖類を架橋剤で架橋した架橋多糖系担体、ポリ(メタ)アクリレート、ポリビニルアルコール、ポリウレタン、ポリスチレンなどの合成高分子系担体およびそれらを架橋剤で架橋した架橋合成高分子系担体を例示することができる。これらの担体の中では、水酸基を有し、後述する親水性高分子による修飾が容易に行える点で、アガロース、セルロース、デキストラン、プルランなどの電荷をもたない多糖系担体および架橋多糖系担体や、ポリ(メタ)アクリレートやポリウレタンなどの親水性合成高分子系担体および架橋親水性合成高分子系担体が好ましい。
また、本発明の吸着剤に使用する水に不溶性の担体は、細胞の非特異吸着を抑制する点で、前記担体表面を親水性高分子で修飾することが好ましく、親水性高分子が担体に共有結合で固定されていることがより好ましい。担体の表面を修飾する親水性高分子としては、アガロース、セルロース、デキストラン、プルラン、デンプンなどの中性多糖類や、ポリ(2−ヒドロキシエチルメタクリレート)やポリビニルアルコールなどの水酸基を有する合成高分子を例示することができる。これら親水性高分子の中では、親水性が高く、担体表面への共有結合による固定が容易に行える点で、デキストラン、プルランおよびデンプンなどの中性多糖類が好ましく、デキストランおよびプルランがより好ましい。デキストランおよびプルランの分子量に特に制限はないが、担体表面の親水性修飾が十分に行える点で、数平均分子量が10,000から1,000,000のものが好ましい。担体に親水性高分子を共有結合で固定する方法は、一般的な共有結合形成反応であれば特に制限はされず、例えば、担体表面の水酸基とエピクロロヒドリン、エチレングリコールジグリシジルエーテル、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテルなどのエポキシ基含有化合物を塩基性条件下で反応させることで担体にエポキシ基を導入したのち、エポキシ基と親水性高分子の水酸基を塩基性条件下で反応させる方法を例示することができる。
本発明の吸着剤に使用する水に不溶性の担体の形状に特に制限はなく、粒子状、スポンジ状、平膜状、平板状、中空状、繊維状のいずれであってもよいが、吸着剤への細胞吸着を効率的に行える点で粒子状の担体であることが好ましく、真球状の粒子状担体であることがより好ましい。
本発明の吸着剤に使用する水に不溶性の担体の、水に膨潤させた状態での粒径は、担体から作製される吸着剤をカラムに充填した場合に分離対象の細胞が吸着剤表面と十分接触し、かつ吸着剤に結合しない細胞が吸着剤間の隙間を淀みなく通過できる点で、好ましくは100μm以上1000μm以下であり、より好ましくは100μm以上500μm以下であり、さらに好ましくは150μm以上300μm以下である。粒径が100μm以下の場合には、吸着剤に結合しない細胞が吸着剤間の隙間を通過しづらくなり、細胞の回収率が低下する。また、粒径が1000μm以上の場合には、吸着剤に結合する細胞と吸着剤表面の接触が不十分となり、吸着剤に結合する細胞と結合しない細胞の分離効率が低下する。水に不溶性の担体の粒径は、例えば、ベックマンコールター(株)製の精密粒度分布測定装置(製品名「Multisizer 3」)などを用いて測定することができる。或いは、光学顕微鏡を用いて目盛り付きスライドグラスの画像を撮影したのち、同じ倍率で測定対象の複数個の粒子の画像を撮影し、物差しを用いて撮影した複数個の担体の粒径を測定し、その平均値を算出することで求めることができる。
本発明の吸着剤に使用する水に不溶性の担体の細孔の有無に特に制限はなく、多孔性または無孔性のいずれであってもよい。また、本発明の吸着剤に使用する水に不溶性の担体は、本発明の吸着剤に使用するタンパク質を担体に固定化するための活性官能基導入が容易に行える点で、水酸基を有する粒子状担体であることが好ましい。さらに、本発明の吸着剤に使用する水に不溶性の担体は市販品を使用してもよく、例えば、ポリ(メタ)アクリレートを原料としたトヨパール(東ソー製)や、アガロースを原料としたSepharose(GEヘルスケア製)、セルロースを原料としたセルフィア(旭化成製)を使用することができる。
本発明の吸着剤の製造方法は、以下の(A)から(C)の工程を含む工程からなることを特徴とする。
(A)水に不溶性の担体に親水性高分子を共有結合で固定する工程、
(B)工程(A)で得られた親水性高分子を共有結合で固定した担体に、前記(1)の(a)または(b)に記載のタンパク質を固定化するための官能基を導入する工程、
(C)工程(B)で得られた官能基を導入した担体に、前記(1)の(a)または(b)に記載のタンパク質を固定化する工程。
以下に工程(A)から工程(C)の詳細を説明する。
工程(A)は、担体表面の水酸基とエポキシ基含有化合物を塩基性条件下で反応させることにより担体にエポキシ基を導入する工程(A−I)と、エポキシ基と親水性高分子の水酸基を塩基性条件下で反応させる工程(A−II)の2つからなる工程である。
工程(A−I)で使用することができるエポキシ基含有化合物は、担体にエポキシ基が導入することができれば特に制限はなく、エピクロロヒドリンやエピブロモヒドリンなどのハロヒドリン類、エチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセロールジグリシジルエーテル、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、テトラエチレングリコールジグリシジルエーテル、レゾルシノールジグリシジルエーテルなどのジグリシジルエーテル類、グリセロールトリグリシジルエーテル、エリスリトールトリグリシジルエーテル、ジグリセロールトリグリシジルエーテルなどのトリグリシジルエーテル類、エリスリトールテトラグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテルなどのテトラグリシジルエーテル類を例示することができる。これらの中では、短時間でエポキシ基が導入できる点で、エピクロロヒドリンなどのハロヒドリン類が好ましい。これらのエポキシ基含有化合物は単独で使用することもできるが、数種の混合物を使用することもできる。
工程(A−I)で使用することができる溶媒に特に制限はなく、水、有機溶媒、及びこれらの混合物を利用することができる。有機溶媒としてはアセトン、メチルエチルケトン、メチルプロピルケトンなどのケトン類、1,4−ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテルなどのエーテル類、ジメチルホルムアミドなどの含窒素溶媒、ジメチルスルホキシドなどの含硫黄溶媒などを例示することができる。これらの溶媒の中ではエポキシ基含有化合物の溶解性が高い点で、水と1,4−ジオキサン、水とジメチルホルムアミド、水とジメチルスルホキシドの混合溶媒が好ましい。溶媒の使用量に特に制限はないが、担体の分散性を高める点で、担体の含水重量に対して0.5から5倍量の溶媒を使用することが好ましい。また、前述の有機溶媒と水の混合比率にも特に制限はないが、反応液全体に対する前述の有機溶媒の比率が20から80重量%であることが好ましい。エポキシ基含有化合物の使用量は、使用量が少ない場合にはエポキシ基の導入量が低下し、工程(A−II)における親水性高分子との反応が十分に起こらない可能性が高くなることから、担体の重量に対して0.1から10倍量を使用することが好ましい。工程(A−I)の反応温度は10から70℃が好ましく、より好ましくは20から50℃である。反応液の撹拌方法は担体の破壊を抑制する点で、撹拌翼を使用する方法あるいは反応容器全体を攪拌することが好ましい。また、撹拌速度については担体が懸濁液中で良好に分散できれば特に制限はない。
工程(A−I)の反応は、反応容器に担体、溶媒およびエポキシ基含有化合物を添加し、攪拌条件下、前述の温度で30から60分加熱したのち、反応を促進させる目的で反応液に塩基を添加することが好ましい。具体的には、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどの無機塩基類やトリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミンなどの有機塩基類を例示することができる。これらの中では水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどの無機塩基類が好ましく、水酸化ナトリウムがより好ましい。塩基の添加量に特に制限はないが、反応溶液中の塩基濃度が0.01Mから3.0Mであることが好ましい。塩基を添加後、反応温度を20から50℃に維持したまま、さらに2から24時間撹拌を継続することが好ましい。反応後、グラスフィルターなどを使用して水で洗浄することにより、目的のエポキシ基を導入した担体を得ることができる。
工程(A−II)で使用することができる親水性高分子は、前述のとおりである。工程(A−II)で使用することができる溶媒に特に制限はなく、水、有機溶媒、及びこれらの混合物を利用することができる。これらの溶媒の中では親水性高分子の溶解性が高い点で水が好ましい。溶媒の使用量に特に制限はないが、担体の分散性を高める点で、担体の含水重量に対して0.5から5倍量の溶媒を使用することが好ましい。また、親水性高分子の溶液を工程(A−II)の溶媒として使用してもよい。親水性高分子の使用量は、使用量が少ない場合には担体表面に導入したエポキシ基との反応が十分に起こらない可能性が高くなることから、担体の重量に対して0.1から20倍量を使用することが好ましい。また、親水性高分子の溶液を溶媒として使用する場合の親水性高分子の濃度に特に制限はなく、親水性高分子の溶媒への溶解度および溶解時の粘度を考慮して適宜設定すればよい。工程(A−II)の反応温度は10から70℃が好ましく、より好ましくは20から50℃である。反応液の撹拌方法は担体の破壊を抑制する点で、撹拌翼を使用する方法あるいは反応容器全体を攪拌することが好ましい。また、撹拌速度については担体が懸濁液中で良好に分散できれば特に制限はない。
工程(A−II)の反応は、反応容器にエポキシ基を導入した担体、溶媒および親水性高分子、あるいは親水性高分子溶液を添加し、攪拌条件下、前述の温度で30から60分加熱したのち、反応を促進させる目的で反応液に塩基を添加することが好ましい。具体的には、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどの無機塩基類やトリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミンなどの有機塩基類を例示することができる。これらの中では水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどの無機塩基類が好ましく、水酸化ナトリウムがより好ましい。塩基の添加量に特に制限はないが、反応溶液中の塩基濃度が0.01Mから1.0Mであることが好ましい。塩基を添加後、反応温度を20から50℃に維持したまま、さらに2から24時間撹拌を継続することが好ましい。反応後、グラスフィルターなどを使用して水で洗浄することにより、目的の親水性高分子を共有結合で固定した担体を得ることができる。
工程(B)は、親水性高分子を共有結合で固定した担体に前記(1)の(a)または(b)に記載のタンパク質を固定化するための官能基を導入する工程である。
親水性高分子を共有結合で固定した水に不溶性の担体に、前記(1)の(a)または(b)に記載のタンパク質(以下、前記タンパク質)を固定化するため官能基は、一般的なタンパク質固定化用の官能基であれば特に制限されず、エポキシ基、ホルミル基、カルボキシル基および活性エステル基、アミノ基、マレイミド基、ハロアセチル基などを例示することができる。また、担体に前記官能基を導入する方法は、一般的な官能基導入方法であれば特に制限はされず、例えば、担体にエポキシ基を導入する方法としては、担体の水酸基と前述の工程(A−I)で使用することができるエポキシ基含有化合物を塩基性条件下で反応させる方法を例示することができる。その他の例として、担体にホルミル基を導入する方法としては、担体の水酸基をグルタルアルデヒドなどの2官能性アルデヒド類を反応させる方法や、担体を過ヨウ素酸ナトリウムなどの酸化剤と反応させる方法を例示することができる。また、前述の方法によりエポキシ基を導入した担体と、D−グルカミン、N−メチル−D−グルカミン、α−チオグリセロールなどの化合物を反応させることで隣接する水酸基を導入した担体を、過ヨウ素酸ナトリウムなどの酸化剤と反応させる方法を例示することができる。他の例として、担体にカルボキシル基を導入する方法としては、担体の水酸基とモノクロロ酢酸、モノブロモ酢酸などのハロ酢酸と塩基性条件下で反応させる方法の他に、前述の方法によりエポキシ基を導入した担体を、グリシン、アラニン、アスパラギン酸、グルタミン酸などのアミノ酸類、β−アラニン、4−アミノ酪酸、6−アミノヘキサン酸などのアミノ基含有カルボン酸類、チオグリコール酸やチオリンゴ酸などの含硫黄カルボン酸類と塩基性条件下で反応させる方法を例示することができる。さらに、担体に導入したカルボキシル基を1−(3−ジメチルアミノプロピル)−3−エチルカルボジイミド塩酸塩(EDC)などの縮合剤存在下でN−ヒドロキシスクシンイミドと反応させることにより、活性エステル基であるN−ヒドロキシスクシンイミドエステルへ誘導する方法を例示することができる。他の例として、担体にアミノ基を導入する方法としては、前述の方法によりエポキシ基を導入した多孔性架橋セルロースゲルを、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリス(2−アミノエチル)アミンなどの少なくとも2つ以上のアミノ基を有する化合物と反応させる方法を例示することができる。他の例として、担体にマレイミド基を導入する方法としては、水酸基および/またはアミノ基を有する担体と、3−マレイミドプロピオン酸、4−マレイミド酪酸、6−マレイミドヘキサン酸、4−(N−マレイミドメチル)シクロヘキサンカルボン酸などのマレイミド基を有するカルボン酸類をEDCなどの縮合剤存在下で反応させる方法を例示することができる。さらに、前述のマレイミド基を有するカルボン酸類のN−ヒドロキシスクシンイミドエステルやN−ヒドロキシスルホスクシンイミドエステルを反応させる方法を例示することができる。他の例として、担体にハロアセチル基を導入する方法としては、例えば、水酸基を有する担体や、前述の方法によりアミノ基を導入した担体と、クロロ酢酸クロリド、ブロモ酢酸クロリド、ブロモ酢酸ブロミドなどの酸ハロゲン化物を反応させる方法や、クロロ酢酸、ブロモ酢酸、ヨード酢酸などのハロゲン化酢酸をEDCなどの縮合剤存在下で反応させる方法をあげることができる。さらに、前述のハロゲン化酢酸のN−ヒドロキシスクシンイミドエステルやN−ヒドロキシスルホスクシンイミドエステルを反応させる方法をあげることができる。
工程(C)は、工程(B)で得られた官能基を導入した担体に、前記タンパク質を固定化する工程である。工程(B)で得られた官能基を導入した担体に前記タンパク質を固定化する方法は、一般的なタンパク質の固定化方法であれば特に制限はされず、例えば、配位結合やアフィニティー結合などを利用し、共有結合を形成せずにタンパク質を担体に固定化する方法、タンパク質に固定化用活性官能基を導入したのち、固定化用活性官能基と担体を反応させて担体に固定化する方法、担体に導入した固定化用活性官能基とタンパク質を反応させ、共有結合を形成させて担体に固定化する方法をあげることができる。
共有結合を形成せずにタンパク質を担体に固定化する方法としては、アビジン−ビオチンのアフィニティー結合を利用し、ビオチンを導入したタンパク質をストレプトアビジンセファロースハイパフォーマンス(GEヘルスケア製)などのアビジンが固定化された担体に固定化する方法を例示することができる。タンパク質へのビオチンの導入方法としては、例えば、9−(ビオチンアミド)−4,7−ジオキサノナン酸−N−スクシンイミジルなどの活性エステル基を有するビオチン化試薬とタンパク質のアミノ基を反応させる方法や、N−ビオチニル−N’−[2−(N−マレイミド)エチル]ピペラジン塩酸塩などのマレイミド基を有するビオチン化試薬とタンパク質のメルカプト基を反応させる方法を例示することができる。
また、タンパク質に導入した固定化用活性官能基と担体を反応させ、共有結合を形成させて固定化する方法としては、4−(N−マレイミドメチル)シクロヘキサン−1−カルボン酸 3−スルホ−N−ヒドロキシスクシンイミドエステルナトリウム塩などのマレイミド基と活性エステル基の双方を有する化合物の活性エステル基とタンパク質のアミノ基を反応させてタンパク質にマレイミド基を導入したのち、メルカプト基が導入された担体と反応させる方法を例示することができる。さらに、担体に導入した固定化用活性官能基とタンパク質を反応させて担体に固定化する方法としては、担体に導入したエポキシ基、ホルミル基、カルボキシル基、N−ヒドロキシスクシンイミドエステルなどの活性エステル基とタンパク質のアミノ基を反応させる方法、担体に導入したアミノ基とタンパク質のカルボキシル基を反応させる方法、担体に導入したエポキシ基、マレイミド基、ハロアセチル基、ハロアルキル基とタンパク質のメルカプト基を反応させる方法を例示することができる。これらの固定化方法の中では、短時間に高収率で担体へのタンパク質固定化が行える点で、担体に導入したホルミル基、活性エステル基とタンパク質のアミノ基を反応させる方法、および、担体に導入したマレイミド基、ハロアセチル基とタンパク質のメルカプト基を反応させる方法が好ましく、固定化反応をpHが中性付近で行うことが可能でありタンパク質の変性を抑制できることが可能である点で、担体に導入したマレイミド基、ハロアセチル基とタンパク質のメルカプト基を反応させる方法がより好ましく、官能基の安定性が高い点で、担体に導入したマレイミド基とタンパク質のメルカプト基を反応させる方法が、ことさらに好ましい。
前記固定化用官能基を導入した担体と、緩衝液に溶解した前記タンパク質を反応させることで、本発明の吸着剤を作製することができる。前記タンパク質を溶解する緩衝液に特に制限はなく、酢酸緩衝液、リン酸緩衝液、2−モルホリノエタンスルホン酸(MES)緩衝液、4−(2−ヒドロキシエチル)−1−ピペラジンエタンスルホン酸(HEPES)緩衝液、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン(Tris)緩衝液や、D−PBS(−)(和光純薬製)などの市販の緩衝液を例示することができる。また、固定化反応の効率を高めることを目的として、緩衝液に塩化ナトリウムなどの無機塩類やポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート(Tween20)などの界面活性剤を添加してもよい。前記タンパク質を担体に固定化する際の反応温度およびpHは、活性官能基の反応性や本発明のタンパク質の安定性を考慮した上で反応温度については0℃以上50℃以下、pHについてはpH4以上pH10以下の範囲の中から適宜設定すればよく、前記タンパク質の失活を抑制する点で、反応温度については15℃以上40℃以下、pHについてはpH5以上pH9以下の範囲が好ましい。
水に不溶性の担体への前記タンパク質の固定化量は、分離対象となる細胞と前記タンパク質の結合性を考慮したうえで適宜設定すればよく、1mLの担体あたり0.01mg以上30mg以下が好ましく、0.050g以上10mg以下がより好ましい。また、水に不溶性の担体への前記タンパク質の固定化量は、固定化反応時の前記タンパク質の使用量や担体への活性官能基導入量を調節することにより調整することができる。前記タンパク質の担体への固定化量は、固定化反応液および反応後の洗浄液を回収して未反応の前記タンパク質を求めたのち、固定化反応に使用した前記タンパク質量から未反応の前記タンパク質を差し引くことで算出することができる。
本発明の細胞分離方法は、本発明の吸着剤と「Fucα1−2Galβ1−3GlcNAcおよび/またはFucα1−2Galβ1−3GalNAcからなる構造を含む糖鎖」を有する細胞を含む細胞混合物とを接触させる工程と、吸着剤に結合した「Fucα1−2Galβ1−3GlcNAcおよび/またはFucα1−2Galβ1−3GalNAcからなる構造を含む糖鎖」を有する細胞と吸着剤に結合しない細胞とを分離する工程、の2工程を含む工程からなることを特徴とする。
本発明の細胞分離方法では、前記タンパク質、すなわち、「Fucα1−2Galβ1−3GlcNAcおよび/またはFucα1−2Galβ1−3GalNAcからなる構造を含む糖鎖」に結合性を有するタンパク質と、前記糖鎖構造を有する細胞を溶液中で接触させる代わりに、前記タンパク質を粒子状担体に固定化した吸着剤を用いることにより、前記糖鎖構造を有する細胞が吸着剤に結合するため、溶液中で分離を行う場合に比べて、効率的に細胞分離を行うことができる。
本発明の吸着剤と細胞の接触方法は特に制限されず、分離対象となる細胞を含む細胞混合物中に吸着剤を添加し、一定時間振盪する方法を例示することができるが、吸着剤に結合した細胞の再遊離や、吸着剤との過剰な接触による細胞へのダメージを避けることができる点で、吸着剤をカラムに充填して細胞と接触させることが好ましい。この場合、吸着剤をカラムに充填した後、上部より分離対象細胞を含む細胞混合物を通液するだけで、吸着剤に分離対象となる前記糖鎖構造を有する細胞のみを結合させ、吸着剤に結合しなかった細胞をカラム下部より回収することが可能となる。
本発明の分離方法で用いる細胞混合物を調製するための溶離液としては、細胞死と細胞凝集を防ぐために有効な成分を添加したものであることが好ましい。本発明の吸着剤を充填したカラムに通液する細胞混合物を調製するための溶離液の組成としては、市販のMACSバッファ(PBSに0.5%BSAと2mM EDTAを添加したもの)を例示することができる。この場合、BSAによる細胞分離時における細胞へのダメージの軽減と吸着剤への非特異吸着を抑制する効果、EDTAによる細胞の凝集防止効果を期待することができる。
本発明の吸着剤は、前記タンパク質の固定化量が吸着剤1mLあたり0.05mg以上30mg以下であれば、前記糖鎖構造を有する細胞を少なくとも100万個以上結合することが可能である。例えば、ヒトiPS細胞やES細胞から誘導した心筋細胞を用いた再生医療においては、一人あたり10億個の臨床グレードの心筋細胞が必要であり、0.1%の未分化細胞が混入していると仮定した場合では100万個、1%の未分化細胞が混入していると仮定した場合では1000万個の未分化幹細胞を完全に除去する技術が必要となる。これらのような大量の細胞中に混在する未分化細胞を分離除去する場合でも、本発明の吸着剤を少量(それぞれ1mLまたは10mL)用いることにより、短時間で効率良く未分化細胞を除去することができる。また、例えば患者一人あたり100億〜1000億個の膨大な医療用細胞が必要とされる赤血球や血小板を未分化幹細胞から誘導する場合、1%の未分化幹細胞が混入していると仮定した場合であっても、本発明の吸着剤を100mLから1000mL用いることにより赤血球や血小板などの血球系細胞に残存する未分化細胞を分離することができる。
さらに本発明の細胞分離方法は、既存の細胞分離技術であるフローサイトメトリーや磁気ビーズ法、背景技術に記載した未分化細胞除去技術と比べても、上記大量細胞からの未分化iPS細胞除去処理を5から30分程度の極めて短時間行うことができ、目的の分化細胞を大量に処理、精製する場合にも極めて有効な未分化細胞の分離方法である。
本発明の吸着剤は、Fucα1−2Galβ1−3GlcNAcおよび/またはFucα1−2Galβ1−3GalNAcからなる構造を含む糖鎖に結合性を有するタンパク質を水に不溶性の担体に固定化したものであり、当該吸着剤を用いることにより、前記糖鎖構造を未分化マーカーとして有する未分化細胞を含む細胞混合物から、未分化細胞だけを選択的に吸着分離することができる。また、本発明の吸着剤を充填したカラムに未分化細胞を含む細胞混合物を通液することにより、未分化マーカーが存在する細胞を高効率に分離することができる。
実施例13および比較例1における、吸着剤G1に結合したNT2/D1細胞および2102Ep細胞と、NT2/D1細胞および2102Ep細胞が結合しなかった吸着剤G0の蛍光顕微鏡画像である。 参考例1における、コールターカウンターZ2シリーズで測定したSP2/0細胞の細胞直径と頻度のグラフである。 実施例14における、吸着剤A2にRamos細胞と2102Ep細胞の混合物を通液した場合の、流出細胞のクロマトグラムである。 実施例14における、吸着剤B2にSP2/0細胞と2102Ep細胞の混合物を通液した場合の、流出細胞のクロマトグラムである。 比較例2における、吸着剤A0にRamos細胞と2102Ep細胞の混合物を通液した場合の、流出細胞のクロマトグラムである。 比較例2における、吸着剤B0にSP2/0細胞と2102Ep細胞の混合物を通液した場合の、流出細胞のクロマトグラムである。 実施例15および比較例3における、吸着剤A1、A2、D1、E1、A0に、Ramos細胞を通液した場合の、各細胞の流出率を示したグラフである。 実施例15および比較例3における、吸着剤A1、A2、D1、E1、A0に、K562細胞を通液した場合の、各細胞の流出率を示したグラフである。 実施例15および比較例3における、吸着剤A1、A2、D1、E1、A0に、2102Ep細胞を通液した場合の、各細胞の流出率を示したグラフである。 実施例16および比較例4における、吸着剤D1、D2、E1、E2、F1、A0、B0、D0に、Ramos細胞を通液した場合の、各細胞の流出率を示したグラフである。 実施例16および比較例4における、吸着剤D1、D2、E1、E2、F1、A0、B0、D0に、K562細胞を通液した場合の、各細胞の流出率を示したグラフである。 実施例16および比較例4における、吸着剤D1、D2、E1、E2、F1、A0、B0、D0に、2102Ep細胞を通液した場合の、各細胞の流出率を示したグラフである。 実施例17および比較例5における、吸着剤A2、D1、E1、A0に、2102Ep細胞を通液した場合の、細胞流出率を示したグラフである。 実施例17および比較例5における、吸着剤A2、D1、E1、A0に、2102Ep細胞を通液した場合の、吸着剤1mLあたりの吸着細胞数を示したグラフである。 実施例18および比較例6における、吸着剤D1、D0に、培養日数の異なる2102Ep細胞を通液した場合の、細胞流出率を示したグラフである。 実施例18および比較例6における、吸着剤D1、D0に培養日数の異なる2102Ep細胞を通液した場合の、アプライ細胞と流出細胞をFACSで解析したドットプロットを示したものである。 実施例18および比較例6における、吸着剤D1、D0に培養日数の異なる2102Ep細胞を通液した場合の、アプライ細胞と流出細胞のTRA−1−60陽性率を示したグラフである。 実施例18および比較例6における、吸着剤D1、D0に培養日数の異なる2102Ep細胞を通液した場合の、アプライ細胞と流出細胞のBC2LCNレクチン陽性率を示したグラフである。 実施例19および比較例7における、吸着剤D1、E1、D0に、2102Ep細胞あるいは2102Ep細胞とK562細胞の混合物を通液した場合の、2102Ep細胞の細胞流出率を示したグラフである。 実施例19および比較例7における、吸着剤D1、E1、D0に2102Ep細胞とK562細胞の混合物を通液した場合の、流出細胞をFACSで解析したドットプロットを示したものである。 実施例19および比較例7における、吸着剤D1、E1、D0から流出した2102Ep細胞のBC2LCNレクチン陽性率を示したグラフである。 実施例19および比較例7における、2102Ep細胞の流出率と、流出細胞中の2102Ep細胞のBC2LCNレクチン陽性率との相関を示したグラフである。 実施例20および比較例8における、吸着剤E1、D0に201B7細胞あるいは201B7細胞とK562細胞の混合物を通液した場合の、201B7細胞の細胞流出率を示したグラフである。 実施例20および比較例8における、吸着剤E1、D0に201B7細胞とK562細胞の混合物を通液した場合の、流出細胞をFACSで解析したドットプロットを示したものである。 実施例20および比較例8における、吸着剤E1、D0から流出した201B7細胞のBC2LCNレクチン陽性率を示したグラフである。 実施例20および比較例8における、201B7細胞の流出率と流出細胞中の201B7細胞のBC2LCNレクチン陽性率との相関を示したグラフである。 実施例21および比較例9における、吸着剤E1、A0にNHDF細胞と2102Ep細胞の混合物を通液した場合の、NHDF細胞と2102Ep細胞の細胞流出率を示したグラフである。
以下、実施例、比較例、調製例および参考例をあげて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
実施例1 システインタグを有するレクチンの作製
実施例1では、大腸菌を用いて、システインを含むオリゴペプチドからなる担体固定化用タグ(以下、システインタグ)を付加したレクチンを作製した。
(1)プラスミドpET−BC2LCNcysの作製
以下(a)から(e)記載の方法により、配列番号3に示したレクチンのアミノ酸配列をコードした配列番号4のポリヌクレオチドを作製した。
(a)以下の試薬組成および反応条件にて、1段階目のPCR反応を行った。
(試薬組成、総反応液量:50μL)
・0.025unit/μL PrimeSTAR HS DNA Polymerase(タカラバイオ製)
・各30nM 配列番号5から28に示したプライマー
・酵素に付属する緩衝液
(反応条件)
・サーマルサイクラーを用い、98℃・10秒間、55℃・5秒間、72℃・60秒間のPCR反応を5サイクル実施した。
(b)次に、(a)の反応液を用いて、以下の試薬組成および反応条件にて、2段階目のPCR反応を行った。
(試薬組成、総反応液量:50μL)
・0.025unit/μL PrimeSTAR HS DNA Polymerase(タカラバイオ製)
・各500nM 配列番号29と30に示したプライマー
・1μL 1段階目のPCR反応液
・酵素に付属する緩衝液
(反応条件)
・サーマルサイクラーを用い、98℃・10秒間、55℃・5秒間、72℃・60秒間のPCR反応を30サイクル実施した。
(c)2段階目のPCR反応後の(b)の反応液をアガロースゲル電気泳動で泳動後、目的物に相当する0.5kbpのバンドを切り出し、そこからゲル抽出キットを用いてPCR産物を精製した。
(d)前記(c)で得られたPCR産物を、制限酵素NcoIとXhoIで二重消化し、消化後のDNAをプラスミドpET−28(+)の制限酵素NcoI−XhoIサイトに、DNA Ligation Kit ver.2.1(タカラバイオ製)を用いてライゲーションしてプラスミドを調製後、大腸菌BL21(DE3)へ形質転換し、組換え大腸菌BL21(DE3)/pET−BC2LCNcysを得た。
(e)前記(d)で得られた組換え大腸菌BL21(DE3)/pET−BC2LCNcysを培養し、集菌したのち、QIAprep Spin Miniprep Kit(キアゲン製)を用いてプラスミドpET−BC2LCNcys(5.6kbp)を得た。当該方法で得られたプラスミドpET−BC2LCNcysに挿入されているレクチンをコードする塩基配列を分析した結果、塩基配列は設計どおりであることを確認した。
(2)大腸菌を用いたレクチンの作製
前記(1)で得られた組換え大腸菌BL21(DE3)/pET−BC2LCNcysより、以下(f)から(j)記載の方法で、システインタグを付加したレクチンを作製した。
(f)組換え大腸菌BL21(DE3)/pET−BC2LCNcysを、30μg/mLのカナマイシンを添加したLB/Km液体培地に接種し、37℃で一晩振盪することで前培養を行った。培養液の濁度(O.D.600)が0.6になるように植菌後、37℃で培養した。
(g)前培養液を30μg/mLのカナマイシンを添加したTB/Km液体培地1Lに接種し、37℃で振盪培養した。培養液の濁度(O.D.600)が凡そ0.6になったところで、培養温度を20℃に切り替え、一晩培養した。
(h)培養終了後、培養液を氷冷したのち、遠心分離により集菌した。集めた菌体を20mM Tris−HCl緩衝液(pH8.0)および1mMフェニルメチルスルホニルフルオリド(PMSF)を添加したBugBuster Protein Extraction Reagent(メルク製)を用いて処理し、可溶性画分を150mL得た。
(i)前記(h)で得られた可溶性画分の溶液を、150mMの塩化ナトリウムと20mMイミダゾールを含む20mM Tris−HCl緩衝液(pH8.0)で平衡化した担体(His・Bind Resin、メルク製、担体容積15mL)を充填したカラムに通液し、可溶性画分に含まれるシステインタグを付加したレクチンを吸着させた。担体に吸着したシステインタグを付加したレクチンを150mMの塩化ナトリウムと250mMイミダゾールを含む20mM Tris−HCl緩衝液(pH8.0)で溶出させることにより、目的のシステインタグを付加したレクチンを含む溶出液を50mL得た。
(j)前記(i)で得られたシステインタグを付加したフコース結合性レクチンを含む溶出液を、D−PBS(−)(和光純薬製)に対して透析することにより、目的のシステインタグを付加したレクチンのD−PBS(−)溶液を75mL得た。
得られたD−PBS(−)溶液中のシステインタグを付加したレクチン濃度を紫外線吸収法により測定し、280nmにおける吸光度が1.0の場合のシステインタグを付加したレクチン濃度を1.0mg/mLとして濃度を算出した結果、濃度は1.2mg/mLであった。
(3)システインタグを付加したレクチンの糖鎖への親和性評価
前記(2)で得られたシステインタグを付加したレクチンの糖鎖に対する結合性評価は、表面プラズモン共鳴法により行った。具体的には、Biacore T100機器(GEヘルスケア製)を用い、アナライトとしてシステインタグを付加したレクチン、固相としてHタイプ1型糖鎖(Fucα1−2Galβ1−3GlcNAc)、Hタイプ3型糖鎖(Fucα1−2Galβ1−3GalNAc)またはルイスY型糖鎖(Fucα1−2Galβ1−4(Fucα1−3)GlcNAc)を用い、各糖鎖に対する結合性を測定した。センサーチップはデキストランがコートされたSensor Chip CM5(GEヘルスケア製)を使用し、デキストランにストレプトアビジン(和光純薬)をアミンカップリング法により固定した後、ビオチン標識された各糖鎖(Glycotech製)を添加し、ビオチンとストレプトアビジンの反応により糖鎖をセンサーチップ上に固定して作製した。
糖鎖親和性の測定はカイネティクス解析により行った。緩衝液はHBS−EP+を用い、結合反応は流速30μL/分、結合時間は6分間、解離時間は3分間とした。センサーチップの再生は25mMの水酸化ナトリウムを用い、流速30μL/分、再生時間15秒で行った。アナライトタンパク質の濃度は1〜100nMで行った。解析は解析ソフト(Biacore T100 Evaluation Software、version 1.1.1)を用いて行い、1:1 Bindingのフィッティングにより解離定数を算出した。システインタグを付加したレクチンの各糖鎖に対する結合性評価(解離定数)の結果を表1に示した。
Figure 2018134073
調製例1 無孔ポリウレタン粒子の作製
窒素置換した1リットルの円筒状ガラスフラスコ中に、ポリカーボネートジオール(東ソー製、N−980、1,6−ヘキサンジオール系、数平均分子量=1,000、水酸基価=112.2mgKOH/g)450.0gと、分散媒としてのイソオクタン(東京化成製)600g、分散安定剤(東ソー製、N−5741)15.0gを秤量した。
次に、撹拌を開始して、ポリカーボネートジオールをイソオクタン中に懸濁・分散させた状態で、ヘキサメチレンジイソシアネート(東ソー製、HDI、数平均分子量=168.2、イソシアネート含量=49.96%)151.4gを加えて、90℃で3時間反応させた。
反応液を逐次分析し、末端イソシアネート基の濃度が3.2%に達した時点で、架橋剤としてフレーク状のトリメチロールプロパン(三菱化学製)40.3g(ポリカーボネートジオールのモル数に対して1.00倍のモル量に相当)を加え、90℃で、さらに3時間反応させた。その後、固形分を濾別し、ウェットケーキを500gのイソオクタンで3回洗浄・濾別した後に乾燥し、ポリウレタン樹脂の粒子600gを調製した。
この粒子を超音波リング付きの振動ふるいを用いて分級し、500μm〜710μmの範囲の粒子を320g回収した。レーザー回折式粒度分布計(マイクロトラック・ベル製、MT−3200II型、水分散で計測)で計測した、ポリウレタン樹脂粒子の平均粒径は580μm、粒度範囲は498〜704μmであった。以下、調製例1で作製したポリウレタン樹脂粒子を細胞吸着剤として評価する場合は、吸着剤B0とする。
調製例2 多孔性架橋セルロース粒子の作製
160.7gの5M NaOH水溶液と74.6gの尿素と103.7gの水を混合することで8重量%NaOH−22重量%尿素混合水溶液を調製した。調製した300mLのNaOH−尿素混合水溶液に24.0gの濾紙粉末(ADVANTEC製、Cタイプ)を添加したのち、15℃に冷却した振盪機内で2時間撹拌することにより透明な8%セルロース溶液を調製した。
次に室温にて、1L容ステンレスビーカーに0.85%のエチルセルロース(cP45グレード、関東化学製)を含む400mLのトルエン(関東化学製)からなる連続相を添加し、室温にて連続相を撹拌した状態でセルロース溶液を滴下し、セルロース溶液が連続相に分散したセルロース分散液を得た。
撹拌を30分間継続後、目的の粒径を持つセルロース液滴が生成したことを光学顕微鏡にて確認したのち、容器を氷冷し、溶液中の温度が4℃になってからさらに60分間、撹拌を継続した。次に分散液に200mLのメタノール(関東化学製)を20分間かけて滴下し、メタノール滴下終了後、さらに10分間撹拌を継続することでセルロースゲルを得た。得られたセルロースゲルをエタノール(関東化学製)と水で洗浄することにより未架橋8%セルロース粒子を約280mL得た。次に、得られた未架橋8%セルロース粒子をグラスフィルター上で吸引ろ過し、サクションドライしたセルロース粒子(177.1g)を得た。グラスフィルター上のセルロース粒子全量を1L容のガラス製フラスコに添加したのち、487.5gの25重量%硫酸ナトリウム水溶液を添加し、反応溶液を50℃に設定したオイルバス中、撹拌羽根を用いて30分間撹拌振盪したのち、585mgの水素化ホウ素ナトリウム(関東化学製)及び3.25mLの48%NaOH水溶液(関東化学製)及び4.10mLのエピクロロヒドリン(東京化成製)を添加した。その後、30分間隔で、初回添加量を含めて合計8回、3.25mLの48%NaOH水溶液及び4.10mLのエピクロロヒドリンを添加する操作を繰り返したのち、さらに17.5時間、反応を継続させることで未架橋8%セルロース粒子のエピクロロヒドリンによる架橋反応を進行させた。架橋反応終了後、溶液をグラスフィルター上で吸引ろ過し、ろ液が中性になるまで水で洗浄することにより目的の架橋7%セルロース粒子を得た。得られた架橋7%セルロース粒子をステンレス製標準ふるいにより湿式分級し、架橋8%セルロース粒子を150mL得た。前述のレーザー回折式粒度分布計で計測した、このセルロース粒子の水に湿潤した状態での平均粒径は220μm、粒度範囲は150〜250μmであった。以下、調製例2で作製したセルロース粒子を細胞吸着剤として評価する場合は、吸着剤C0とする。
実施例2 吸着剤A1の作製
実施例2では、担体として市販多孔性合成高分子系担体(トヨパールHW−40EC、東ソー製)を用い、実施例1で作製した担体固定化用システインタグを付加したレクチンを固定化するための官能基(マレイミド基)の導入およびレクチン固定化を行うことにより、細胞の吸着剤A1を製造した。
トヨパールHW−40EC(東ソー製)は水で懸濁したものをステンレス製標準ふるいにより150−250μmの粒度範囲に湿式分級したのち、グラスフィルターでろ過したものを使用した。なお、150−250μmに分級したトヨパールHW−40ECを細胞吸着剤として評価する場合は、吸着剤A0とする。水に湿潤した状態での吸着剤A0の平均粒径は180μm、粒度範囲は150〜250μmであった。
100mL容のテフロン(登録商標)製容器に5.0gのトヨパールHW−40ECと、予め調製した10.0mLのテトラエチレングリコールジグリシジルエーテル水溶液(ナガセケムテックス製デナコールEX−821から調製、濃度100mg/mL)を添加したのち、30℃の振盪機内で30分間振盪したのち、反応容器に104μL(156mg、1.87mmol)の48%(約18.1M)NaOH水溶液を添加し、30℃の振盪機内で8時間振盪することによりトヨパールHW−40ECのエポキシ化を行なった。反応終了後、反応液をグラスフィルター上でろ液が中性になるまで水で洗浄した。次に、濾別したエポキシ化トヨパールHW−40ECウェットケーキの全量を100mL容のテフロン(登録商標)製容器に添加し、10.0mLの0.5M エチレンジアミン水溶液(東京化成製エチレンジアミンから調製)を添加したのち、50℃の振盪機内で3時間振盪することによりエポキシ化トヨパールHW−40ECのアミノ化を行なった。反応終了後、反応液をグラスフィルター上でろ液が中性になるまで水で洗浄した。次に、濾別したアミノ化トヨパールHW−40ECウェットケーキの全量を100mL容のテフロン(登録商標)製容器に添加し、10.0mLの3−マレイミドプロピオン酸 N−スクシンイミジル/DMSO溶液(和光純薬製3−マレイミドプロピオン酸 N−スクシンイミジルから調製、濃度10mg/mL)を添加したのち、35℃の振盪機内で4時間振盪することによりアミノ化トヨパールHW−40ECのマレイミド化を行なった。反応終了後、反応液をグラスフィルター上で20mLのDMSOで3回、30mLの水で5回洗浄することにより、目的のマレイミド化トヨパールHW−40ECを調製した。
次にマレイミド化トヨパールHW−40ECへのレクチン固定化を行なった。レクチン固定化には、実施例1で作製したレクチンのD−PBS(−)溶液を濃縮したものを使用した。また、マレイミド化トヨパールHW−40ECは水で懸濁したものをグラスフィルターでろ過したものを使用した。
920μLのレクチン溶液(濃度9.75mg/mL)に、5.02mLのD−PBS(−)と60μLの0.1Mトリス(2−カルボキシエチル)ホスフィン塩酸塩(TCEP、和光純薬製)水溶液を添加して、担体固定化用レクチン溶液を調製した。
100mL容のテフロン(登録商標)製容器に4.5gのマレイミド化トヨパールHW−40ECウェットケーキ(スラリー状態では6.0mLに相当)を添加したのち、6.0mLの固定化用緩衝液(0.2Mリン酸ナトリウム、0.5M塩化ナトリウム、20mM EDTA、pH7.4)を添加した。次に、6.0mLの担体固定化用レクチン溶液(レクチン仕込み濃度:1.5mg/mL−担体)を添加し、35℃で15時間振盪することによりマレイミド化トヨパールHW−40ECへのレクチン固定化を行い、吸着剤A1を作製した。レクチン固定化終了後、吸着剤A1をD−PBS(−)で洗浄し、Micro BCA Protein Assay Kit(サーモフィッシャーサイエンティフィック製)を用いて洗浄液中のレクチン量を測定し、固定化反応前のレクチン仕込み量から回収レクチン量を差し引くことにより、1mL当りの吸着剤A1のレクチン固定化量を算出した結果、固定化量は0.23mg/mL−吸着剤であった。なお、水に湿潤した状態での吸着剤A1の平均粒径は177μm、粒度範囲は150〜260μmであった。
実施例3 吸着剤A2の作製
実施例3では、担体として市販多孔性合成高分子系担体(トヨパールHW−40EC、東ソー製)を用い、実施例2とは異なる方法により担体へのマレイミド基の導入を行ったのち、レクチン固定化を行うことにより、細胞の吸着剤A2を製造した。
トヨパールHW−40EC(東ソー製)は水で懸濁したものをステンレス製標準ふるいにより150−250μmの粒度範囲に湿式分級したのち、グラスフィルターでろ過したものを使用した。次に、サクションドライしたトヨパールHW−40ECを100mL容のテフロン(登録商標)製容器に8.0g秤量し、予め調製した50mMのターシャリーブトキシカリウム(東京化成製、t−BuOK)水溶液を50.0mL追加し、25℃の振盪機内で1.0時間撹拌することで担体表面へ水酸基を導入した。このスラリーをグラスフィルターで水洗・濾別した。
さらに、濾別した担体を100mL容のテフロン(登録商標)製容器に全量秤量し、予め調製した360mMのグルタルアルデヒド水溶液(東京化成製から調製)を50.0mL追加し、25℃の振盪機内で1.0時間撹拌して反応させた。このスラリーをグラスフィルターで水洗・濾別した。
続いて、濾別した担体を100mL容のテフロン(登録商標)製容器に全量秤量し、予め調製した360mMのトリス(2−アミノエチル)アミン水溶液(東京化成製から調製)を50.0mL追加し、25℃の振盪機内で1.0時間撹拌して官能基をアミノ化した。このスラリーをグラスフィルターで水洗・濾別した。
引き続き、濾別した担体を100mL容のテフロン(登録商標)製容器に全量秤量し、予め調製した26.4mMのNaBH4水溶液(シグマアルドリッチ製から調製)を50.0mL追加し、25℃の振盪機内で12.0時間撹拌して還元反応させた。このスラリーをグラスフィルターで水洗・濾別した。
濾別した担体を100mL容のテフロン(登録商標)製容器に全量秤量し、予め18.8mMの濃度で調製したN−スクシンイミジル−3−マレイミドプロピオネート(和光純薬製)のDMSO溶液を50.0mL追加し、35℃の振盪機内で4.0時間撹拌し、担体にマレイミド基を導入した。このスラリーをグラスフィルターで水洗・濾別した。
次に実施例2と同様の方法でレクチン固定化を行うことにより、吸着剤A2を作製した。なお、レクチン固定化反応の前後における上清を採取し、Pierce 660nm Protein Assay Kit(サーモフィッシャーサイエンティフィック製)を用いて上清に含まれるレクチン量を測定し、反応前後の差から、1mLの吸着剤A2あたりのレクチン固定化量を計算した結果、固定化量は0.20mg/mL−吸着剤であった。なお、水に湿潤した状態での吸着剤A2の平均粒径は185μm、粒度範囲は150〜240μmであった。
実施例4 吸着剤B1の作製
担体として調製例1で作製した無孔ポリウレタン粒子(粒径:500〜710μm)を用いた以外は、実施例2と同様の方法で担体へのマレイミド基の導入およびレクチン固定化を行うことにより、吸着剤B1を作製した。1mL当りの吸着剤B1のレクチン固定化量を算出した結果、固定化量は0.15mg/mL−吸着剤であった。また、水に湿潤した状態での吸着剤B1の平均粒径は580μm、粒度範囲は498〜704μmであった。
実施例5 吸着剤B2の作製
担体として調製例1で作製した無孔ポリウレタン粒子(粒径:500〜710μm)を用いた以外は、実施例3と同様の方法で担体へのレクチン固定化用官能基の導入およびレクチン固定化を行うことにより、吸着剤B2を作製した。1mL当りの吸着剤B2のレクチン固定化量を算出した結果、固定化量は0.17mg/mL−吸着剤であった。また、水に湿潤した状態での吸着剤B2の平均粒径は580μm、粒度範囲は498〜704μmであった。
実施例6 吸着剤C1の作製
担体として調製例2で作製した架橋8%セルロース粒子(粒径:150〜250μm)を用いた以外は、実施例2と同様の方法で担体へのマレイミド基の導入およびレクチン固定化を行うことにより、吸着剤C1を作製した。1mL当りの吸着剤C1の1mL当りのレクチン固定化量を算出した結果、固定化量は1.13mg/mL−吸着剤であった。また、水に湿潤した状態での吸着剤C1の平均粒径は210μm、粒度範囲は150〜250μmであった。
調製例3 親水性高分子が固定されたトヨパールHW−40ECの作製−1
トヨパールHW−40EC(東ソー製)はステンレス製標準ふるいにより150−250μmの粒度範囲に湿式分級したのち、グラスフィルターでろ過したものを使用した。250mL容のテフロン(登録商標)製容器に10.0gのトヨパールHW−40EC、10.8mL(54mmol)の5M NaOH水溶液(関東化学製)、5.0mLの水を添加したのち、5.0g(54mmol)のエピクロロヒドリン(東京化成製)と5.0mLのジメチルスルホキシド(DMSO、関東化学製)の混合溶液を添加し、30℃の振盪機内で3時間振盪することによりトヨパールHW−40ECのエポキシ化を行なった。反応終了後、溶液をグラスフィルター上でろ液が中性になるまで水で洗浄した。エポキシ化したトヨパールHW−40EC全量を250mL容のテフロン(登録商標)製容器に添加し、15.0gの40重量%デキストラン水溶液(分子量40,000、東京化成製)を添加したのち、30℃の振盪機内で30分間振盪した。次に、反応容器に1.05mL(1.58g、19mmol)の48%NaOH水溶液を添加し、30℃の振盪機内でさらに18時間振盪することにより、エポキシ化トヨパールにHW−40ECにデキストランを固定した。反応終了後、溶液をグラスフィルター上でろ液が中性になるまで水で洗浄することにより、目的のデキストラン修飾トヨパールHW−40EC(DEX40トヨパールHW−40EC)を調製した。以下、調製例3で作製したDEX40トヨパールHW−40ECを細胞吸着剤として評価する場合は、吸着剤D0とする。なお、水に湿潤した状態での吸着剤D0の平均粒径は180μm、粒度範囲は150〜250μmであった。
実施例7 親水性高分子が固定された吸着剤D1の作製
調製例3で作製したDEX40トヨパールHW−40ECを用い、実施例2と同様の方法で担体へのマレイミド基の導入およびレクチン固定化を行うことにより、吸着剤D1を作製した。1mL当りの吸着剤D1のレクチン固定化量を算出した結果、固定化量は0.25mg/mL−吸着剤であった。また、水に湿潤した状態での吸着剤D1の平均粒径は180μm、粒度範囲は150〜250μmであった。
実施例8 吸着剤D2の作製
担体として調製例3で作製したDEX40トヨパールHW−40ECを用いた以外は、実施例3と同様の方法で担体へのレクチン固定化用官能基の導入およびレクチン固定化を行うことにより、吸着剤D2を作製した。1mL当りの吸着剤D2のレクチン固定化量を算出した結果、固定化量は0.12mg/mL−吸着剤であった。また、水に湿潤した状態での吸着剤D1の平均粒径は180μm、粒度範囲は100〜250μmであった。
調製例4 親水性高分子が固定されたトヨパールHW−40ECの作製−2
調製例3において、40重量%デキストラン水溶液(分子量40,000、東京化成製)の代わりに、30重量%デキストラン水溶液(分子量450,000〜650,000、シグマアルドリッチ製)を用いた以外は調製例3と同様の方法でデキストランを固定することにより、目的のデキストラン修飾トヨパールHW−40EC(DEX550トヨパールHW−40EC)を調製した。以下、調製例4で作製したDEX550トヨパールHW−40ECを細胞吸着剤として評価する場合は、吸着剤E0とする。
実施例9 親水性高分子が固定された吸着剤E1の作製
調製例4で作製したDEX550トヨパールHW−40ECを用い、実施例2と同様の方法で担体へのマレイミド基の導入およびレクチン固定化を行うことにより、吸着剤E1を作製した。1mL当りの吸着剤E1のレクチン固定化量を算出した結果、固定化量は0.41mg/mL−吸着剤であった。なお、水に湿潤した状態での吸着剤E1の平均粒径は180μm、粒度範囲は150〜250μmであった。
実施例10 親水性高分子が固定された吸着剤E2の作製
担体として調製例4で作製したDEX550トヨパールHW−40ECを用いた以外は、実施例3と同様の方法で担体へのレクチン固定化用官能基の導入およびレクチン固定化を行うことにより、吸着剤E2を作製した。1mL当りの吸着剤E2のレクチン固定化量を算出した結果、固定化量は0.35mg/mL−吸着剤であった。なお、水に湿潤した状態での吸着剤E2の平均粒径は180μm、粒度範囲は150〜250μmであった。
調製例5 親水性高分子が固定されたポリウレタン粒子の作製
担体として調製例1で作製した無孔ポリウレタン粒子(粒径:500〜710μm)を用いた以外は、調製例3と同様の方法でデキストラン(分子量40,000、東京化成製)を固定することにより、目的のデキストラン修飾ポリウレタン粒子(DEX40ポリウレタン粒子)を調製した。以下、調製例5で作製したDEX40ポリウレタン粒子を細胞吸着剤として評価する場合は、吸着剤F0とする。なお、水に湿潤した状態での吸着剤F0の平均粒径は580μm、粒度範囲は498〜704μmであった。
実施例11 親水性高分子が固定された吸着剤F1の作製
調製例5で作製したDEX40ポリウレタン粒子を用い、実施例2と同様の方法で担体へのマレイミド基の導入およびレクチン固定化を行うことにより、吸着剤F1を作製した。1mL当りの吸着剤F1のレクチン固定化量を算出した結果、固定化量は0.12mg/mL−吸着剤であった。また、水に湿潤した状態での吸着剤F1の平均粒径は580μm、粒度範囲は498〜704μmであった。
調製例6 親水性高分子が固定されたセルロース粒子の作製
担体として調製例2で作製した架橋8%セルロース粒子(粒径:150〜250μm)を用いた以外は、調製例4と同様の方法でデキストラン(分子量450,000−650,000、シグマアルドリッチ製)を固定することにより、目的のデキストラン修飾セルロース粒子(DEX550セルロース粒子)を調製した。以下、調製例6で作製したDEX550セルロース粒子を細胞吸着剤として評価する場合は、吸着剤G0とする。なお、水に湿潤した状態での吸着剤G0の平均粒径は220μm、粒度範囲は150〜250μmであった。
実施例12 親水性高分子が固定された吸着剤G1の作製
調製例6で作製したDEX550セルロース粒子を用い、実施例2と同様の方法で担体へのマレイミド基の導入およびレクチン固定化を行うことにより、吸着剤G1を作製した。1mL当りの吸着剤G1のレクチン固定化量を算出した結果、固定化量は0.76mg/mL−吸着剤であった。
調製例1から6および実施例2から12で作製した吸着剤を表2にまとめた。
Figure 2018134073
実施例13 吸着剤C1および吸着剤G1への細胞の吸着実験
「Fucα1−2Galβ1−3GlcNAcおよび/またはFucα1−2Galβ1−3GalNAcからなる構造を含む糖鎖」を有するヒト胎児性がん細胞であるNT2/D1細胞(ATCC−CRL−1973)およびEmbryonal Carcinoma Cells Cl.4/D3細胞(コスモバイオ製、以下2102Ep細胞と記載)の培養は、10%FBS(Biological Industries製)と抗生物質溶液(ペニシリン−ストレプトマイシン溶液、和光純薬製)を添加したD−MEM培地(High Glucose、和光純薬製)を用い、直径6cmのシャーレ(コーニング製)または直径10cmのシャーレ(コーニング製)に細胞を播種し、5%CO2雰囲気下、37℃で培養した。「Fucα1−2Galβ1−3GlcNAcおよび/またはFucα1−2Galβ1−3GalNAcからなる構造を含む糖鎖」を有さないヒトバーキットリンパ腫細胞であるRamos細胞(JCRB9119)は、10%FBS(Biological Industries製)と抗生物質溶液(ペニシリン−ストレプトマイシン溶液、和光純薬製)を添加したRPMI 1640培地(和光純薬製)を用い、浮遊培養用シャーレ(住友ベークライト製)に細胞を播種し、5%CO2雰囲気下、37℃で培養した。
2.5mL容シリンジ(テルモ製)と注射針(テルモ製、22G)の間に目開き100μmのポリエステルメッシュフィルター(BioLab製)を装着したカラムを作製した。実施例6で作製した吸着剤C1および実施例12で作製した吸着剤G1を前述のMACSバッファで置換したのち、50%懸濁液を調製し、作製したカラムに1.0mLの50%懸濁液を添加し、吸着剤をカラムに充填した(吸着剤容量:500μL)。
接着系細胞であるNT2/D1細胞および2102Ep細胞は、培養終了後にトリプシン−EDTA溶液(SIGMA製)で処理して剥離したのち、遠心分離により細胞を回収した。浮遊細胞であるRamos細胞は、培養終了後に遠心分離により細胞を回収した。回収した細胞をMACSバッファで懸濁したのち、35μmのセルストレーナー(コーニング製)で処理することによりシングルセル化し、その細胞密度をコールターカウンター(ベックマンコールター製)で測定した。吸着剤を充填したカラムに、細胞添加数が0.4〜0.5×10^6個(0.8〜1.0×10^6個/mL−吸着剤)となるように調製した細胞懸濁液を50μL添加したのち、カラムに1.0mLのMACSバッファを通液して吸着剤を洗浄し、針部からの流出液を別容器に回収した(以下、この細胞液を流出細胞液と記載する)。回収した流出細胞液中の細胞濃度をコールターカウンターで測定し、それぞれのカラムについて細胞の流出率(%)を「流出率(%)=シリンジカラムあたりの流出細胞数/導入細胞数」として算出した。
表3に吸着剤への各細胞の吸着実験の結果を示した。また、図1に、カラムから取り出した吸着剤G1に結合したNT2/D1細胞および2102Ep細胞と、NT2/D1細胞および2102Ep細胞が結合しなかった吸着剤G0の蛍光顕微鏡画像を示した。なお、蛍光顕微鏡画像の撮影は、上記操作で回収したNT2/D1細胞および2102Ep細胞を、血清を含まないD−MEM培地に懸濁したのち、蛍光染色試薬であるBCECF−AM(同仁化学研究所製)を添加し、5%CO2雰囲気下、37℃で静置することにより蛍光染色試薬を各細胞内に取り込ませた後、各細胞をMACSバッファで洗浄後、シャーレ上で各吸着剤と接触させ、吸着剤に結合しなかった各細胞をMACSバッファ洗浄したのち、シャーレを蛍光顕微鏡で観察することで行った。
表3の結果から、「Fucα1−2Galβ1−3GlcNAcおよび/またはFucα1−2Galβ1−3GalNAcからなる構造を含む糖鎖」を有するNT2/D1細胞および2102Ep細胞は吸着剤C1および吸着剤G1に強く結合するため流出率が低く、前記糖鎖を有さないRamos細胞は吸着剤C1および吸着剤G1に結合しないため流出率が高くなることが明らかとなった。
比較例1 吸着剤C0および吸着剤G0への細胞の吸着実験
調製例2で作製した吸着剤C0および調製例6で作製した吸着剤G0を用いた以外は、実施例13と同様の方法で、細胞の吸着実験を行った。表3の結果から、前記糖鎖を有さないRamos細胞および前記糖鎖を有するNT2/D1細胞と2102Ep細胞は、いずれもレクチンを固定化してない吸着剤C0および吸着剤G0には結合しないため、流出率が高くなることが明らかとなった。
Figure 2018134073
参考例1 粒径の異なる担体への細胞の通液実験
「Fucα1−2Galβ1−3GlcNAcおよび/またはFucα1−2Galβ1−3GalNAcからなる構造を含む糖鎖」を有さないマウス骨髄腫細胞であるSP2/0−Ag14細胞(DSファーマバイオメディカル製、以下、SP2/0細胞と記載)を浮遊培養用シャーレ(住友ベークライト製)にてGIT培地(日本製薬製)で5%CO2雰囲気下、37℃で培養を行った。細胞を50mLチューブに回収後、1500rpm、5分間遠心分離し、上清を廃棄した。次に、細胞ペレットを前述のMACSバッファにて懸濁し、再度遠心分離して上清を廃棄することで細胞を洗浄した。細胞洗浄操作を2回繰り返した後、MACSバッファで懸濁を行い、セルストレーナーで濾過することで凝集塊を除去してシングルセル化し、均一な1.0x10^7個/mLのSP2/0細胞懸濁液を調製した。
次に、5.0mL容シリンジ(テルモ製)と注射針(テルモ製、22G)の間に目開き40μmのメッシュフィルター(日本BD製 セルストレーナチューブ蓋のメンブレンを取り出して使用)を装着したカラムを作製した。粒径が100〜300μmのトヨパールHW−40EC(東ソー製)と、粒径が50〜150μmのトヨパールHW−40C(東ソー製)を前述のMACSバッファで置換したのち、50%懸濁液を調製し、作製したカラムに4.0mLの50%懸濁液を添加し、吸着剤をカラムに充填した(吸着剤容量:2mL)。また、コントロールとして、担体を充填しないカラムを用意した。
次に、それぞれのカラムを垂直に立てた状態で、上記の方法で調製した1.0x10^7/mLのSP2/0細胞懸濁液をシリンジカラム上部より200μLずつ、すなわち、1.0x10^6個/mL−吸着剤の条件でアプライした。次に、シリンジカラム上部よりMACSバッファを4mLアプライし、針部からの流出液を別容器に回収した(以下、この細胞液を流出細胞液と記載する)。回収した流出細胞液中の細胞濃度をコールターカウンターZ2シリーズ(ベックマンコールター製)で測定し、それぞれのカラムについて細胞の流出率(%)を「流出率(%)=シリンジカラムあたりの流出細胞数/導入細胞数」として算出した。細胞流出率を表4に示す。また、SP2/0細胞の細胞直径をコールターカウンターZ2シリーズ(ベックマンコールター製)で測定した結果を図2に示す。SP2/0細胞の平均細胞直径は11.0μM、分散度は11.9%であり、通常の動物細胞と同等の大きさであった。
表4の結果から、粒径が100〜300μmのトヨパールHW−40ECを充填したカラムに細胞を通液した場合、細胞流出率は約70%と高いことが明らかとなった。このことから、粒径が100〜300μmの担体および担体から作製される吸着剤は、一般的な大きさを持つ動物細胞が十分接触し、且つ、細胞が吸着剤の隙間を淀みなく通過するのに適した粒径であることが明らかとなった。また、理論上、粒径100〜300μmの真球状粒子を最密充填した場合、粒子間の隙間を通過可能な細胞の大きさは15.5〜46.5μmと見積もられ、本実施例の結果を裏付けるものであった。
一方、表4の結果から、粒径が50〜150μmのトヨパールHW−40Cを充填したカラムに細胞を通液した場合、細胞流出率は約30%となり、粒径が100〜300μmであるトヨパールHW−40ECに比べて低いことが明らかとなった。この結果の原因として、理論上、粒径が50〜150μmの真球状粒子を最密充填した場合、粒子間の隙間を通過可能な細胞の大きさは7.8〜23.3μmと見積もられることから、粒径が50〜150μmの粒子状担体および担体から作製される吸着剤では、担体および吸着剤間の隙間が狭いために、細胞の目詰まりが生じていることが考えられた。
Figure 2018134073
実施例14 吸着剤A2および吸着剤B2への細胞の吸着実験
前述のSP2/0細胞およびRamos細胞を浮遊培養用シャーレ(住友ベークライト製)にてGIT培地(日本製薬製)で5%CO2雰囲気下、37℃で培養を行った。また、接着細胞培養用フラスコ(コーニング製、Falcon)にて、2102Ep細胞を実施例13と同様の手法で10%FBSと抗生物質溶液を添加したD−MEM培地を用い、5%CO2雰囲気下、37℃で培養を行った。
次に、以下の手順によりSP2/0細胞をCell Tracker Orange(Invitrogen製)、Ramos細胞をCell Tracker Green(同)、2102Ep細胞をCell Tracker GreenまたはCell Tracker Orangeで、それぞれ蛍光染色した。
まず、SP2/0細胞については、細胞を50mLチューブに回収後、1500rpm、5分間遠心分離し、上清を廃棄した。次に、細胞ペレットをD−PBSに懸濁し、再び、1500rpm、5分間遠心分離し、上清を廃棄することで細胞を洗浄した。細胞ペレットを、Cell Tracker Orangeを無血清RPMI培地に終濃度10μMで溶解した液に懸濁し、培養シャーレに移し替え、5%CO2雰囲気下、37℃で1時間培養した。次に細胞を50mLチューブに回収し、1500rpm、5分間遠心分離し、上清を廃棄した後、GIT培地に懸濁し、5%CO2雰囲気下、37℃で一晩培養を行った。
また、Ramos細胞については、細胞を50mLチューブに回収後、1500rpm、5分間遠心分離し、上清を廃棄した。次に、細胞ペレットをD−PBSに懸濁し、再び、1500rpm、5分間遠心分離し、上清を廃棄することで細胞を洗浄した。細胞ペレットを、Cell Tracker Greenを無血清RPMI培地に終濃度10μMで溶解した液に懸濁し、培養シャーレに移し替え、5%CO2雰囲気下、37℃で1時間培養した。次に細胞を50mLチューブに回収し、1500rpm、5分間遠心分離し、上清を廃棄した後、GIT培地に懸濁し、5%CO2雰囲気下、37℃で一晩培養を行った。
また、2102Ep細胞については、まずフラスコ中の培地を廃棄後、D−PBSを導入して細胞をリンス後、D−PBSを廃棄した。次にCell Tracker GreenまたはCell Tracker Orangeを無血清RPMI培地に終濃度10μMで溶解した液を導入し、5%CO2雰囲気下、37℃で1時間培養した。蛍光試薬液を廃棄後、10%FBS(Biological Industries製)と抗生物質溶液(ペニシリン−ストレプトマイシン溶液、和光純薬製)を添加したD−MEM培地(High Glucose、和光純薬製)を導入し、5%CO2雰囲気下、37℃で1時間培養した。次にD−MEM培地を廃棄した後、再び新しいD−MEM培地を導入し、5%CO2雰囲気下、37℃で一晩培養を行った。
次に細胞の回収と調製を以下の方法で行った。SP2/0細胞とRamos細胞については、まず細胞を50mLチューブに回収後、1500rpm、5分間遠心分離し、上清を廃棄した。次に、細胞ペレットを前述のMACSバッファにて懸濁し、再度遠心分離して上清を廃棄することで細胞を洗浄した。細胞洗浄操作を2回繰り返した後、MACSバッファで懸濁を行い、セルストレーナーで濾過することで凝集塊を除去して、均一なSP2/0細胞懸濁液とRamos細胞懸濁液を調製した。2102Ep細胞については、培養フラスコ中のD−MEM培地を廃棄してD−PBSを導入した後、細胞をリンスしてD−PBS液を廃棄した。次に、適当量のAccutase(イノベーティブセルテクノロジー製)を導入し、数分間放置することで2102Ep細胞を剥離させ、50mLチューブへと回収した。細胞を遠心分離して沈降後、細胞ペレットを前述のMACSバッファにて懸濁し、再度遠心分離して上清を廃棄することで細胞を洗浄した。細胞洗浄操作を2回繰り返した後、MACSバッファで懸濁を行い、セルストレーナーで濾過することで凝集塊を除去して均一な2102Ep細胞懸濁液を調製した。以上により、Cell Tracker Orangeで染色した2.0x10^7個/mLのSP2/0細胞、Cell Tracker Greenで染色した3.7x10^6個/mLのRamos細胞、Cell Tracker Greenで染色した2.0x10^7個/mLの2102Ep細胞、Cell Tracker Orangeで染色した3.7x10^6個/mLの2102Ep細胞の細胞懸濁液をそれぞれ得た。
次に、5.0mL容ファルコンピペット(コーニング製、Falcon)と注射針(テルモ製、22G)の間に目開き40μmのメッシュフィルター(日本BD製セルストレーナチューブ蓋のメンブレンを取り出して使用)を装着したカラムを作製した。実施例3で作製した吸着剤A2および実施例5で作製した吸着剤B2を前述のMACSバッファで置換したのち、50%懸濁液を調製し、作製したカラムに8.0mLの50%懸濁液を添加し、吸着剤をカラムに充填した(吸着剤容量:4mL)。
次に異なる蛍光色素で染色した細胞の混合液である、細胞混合液Xと細胞混合液Yを調製した。
・細胞混合液X:Cell Tracker Orangeで染色した2.0x10^7/mLのSP2/0細胞とCell Tracker Greenで染色した2.0x10^7/mLの2102Ep細胞を1:1で混合した細胞混合液。
・細胞混合液Y:Cell Tracker Greenで染色した3.7x10^6/mLのRamos細胞とCell Tracker Orangeで染色した3.7x10^6/mLの2102Ep細胞を1:1で混合した細胞混合液。
次に以下の手順で、各吸着剤を充填したカラムに細胞混合液およびキャリア液をアプライした。
・吸着剤A2を充填したカラム:
細胞混合液Yをピペット上部より400μL、すなわち、カラムあたりCell Tracker Greenで染色したRamos細胞7.4x10^5個とCell Tracker Orangeで染色した2102Ep細胞7.4x10^5個をアプライした。細胞液が浸透した後、MACSバッファを8mLをアプライした。
・吸着剤B2を充填したカラム:
細胞混合液Xをピペット上部より400μL、すなわち、カラムあたりCell Tracker Orangeで染色したSP2/0細胞4.0x10^6個とCell Tracker Greenで染色した2102Ep細胞4.0x10^6個をアプライし、細胞液が浸透した後、MACSバッファを8mLアプライした。
各カラム下部の針部より流出した細胞液は、それぞれ1mLずつのフラクションとして、合計で8mLの流出液をディープウェルプレート(サンプラテック製)に回収した。回収した流出細胞液はフルオロヌンク96穴蛍光検出用プレート(サーモフィッシャーサイエンティフィック製)に100μLずつ分注し、プレートリーダーで励起波長492nmおよび励起波長541nmでの蛍光スキャンを行うことで、検出波長530nmおよび検出波長580nmでの蛍光強度をそれぞれ測定した。
また、Cell Tracker Greenで染色した3.7x10^6/mLのRamos細胞とCell Tracker Greenで染色した2.0x10^7/mLの2102Ep細胞の希釈系列をそれぞれ作製し、フルオロヌンク96穴蛍光検出用プレートに100μLずつ分注してプレートリーダーで励起波長492nm、検出波長530nmでの蛍光スキャンを行うことで、Cell Traker Greenで染色した細胞の細胞濃度と蛍光強度の検量線を作成した。同様に、Cell Tracker Orangeで染色した2.0x10^7/mLのSP2/0細胞、Cell Tracker Orangeで染色した3.7x10^6/mLの2102Ep細胞の希釈系列をそれぞれ作製し、フルオロヌンク96穴蛍光検出用プレートに100μLずつ分注してプレートリーダーで励起波長541nm、検出波長580nmでの蛍光スキャンを行うことで、Cell Tracker Orangeで染色した細胞の細胞濃度と蛍光強度の検量線を作成した。
このようにして得られた各フラクションの蛍光強度と検量線から、分取した各1mLずつのフラクション中に含まれる細胞数を算出した。
横軸をフラクション数、縦軸を細胞数とした場合の細胞分離クロマトグラムを図3(吸着剤A2)および図4(吸着剤B2)に示す。また、5mL流出分までの初期フラクションでのそれぞれの細胞の流出率(%)を「流出率(%)=カラムあたりの流出細胞数(5mL流出分まで)/導入細胞数」として算出したものを表5に示す。
図3および表5の結果から、吸着剤A2(BC2LCNレクチンを固定化したHW−40EC)にRamos細胞と2102Ep細胞の細胞混合物を通液した場合、Ramos細胞のみが流出しやすい傾向が認められ、5mL流出分までの初期フラクションでの細胞流出率はRamos細胞が61%、2102Ep細胞が8%となった。
また、図4および表5の結果から、吸着剤B2(BC2LCNレクチンを固定化したポリウレタン粒子)にSP2/0細胞と2102Ep細胞の細胞混合物を通液した場合、SP2/0細胞のみが流出しやすい傾向が認められ、5mL流出分までの初期フラクションでの細胞流出率はSP2/0細胞が51%、2102Ep細胞が12%となった。
これらの結果から、トヨパールHW−40ECまたはポリウレタン粒子いずれの吸着剤を用いた場合も、BC2LCNレクチンを固定化することで、複数の細胞の混合物から2102Ep細胞のみを選択的に吸着できることが明らかとなった。
比較例2 吸着剤A0および吸着剤B0への細胞の吸着実験
実施例2に記載の吸着剤A0および調製例1で作製した吸着剤B0を用い、以下の手順で各吸着剤を充填したカラムに細胞混合液およびキャリア液のアプライを行った。その他の方法については実施例14と同様の方法で細胞の吸着実験を行った。
・吸着剤A0を充填したカラム:
まず細胞混合液Yをピペット上部より400μL、すなわち、カラムあたりCell TrackerGreenで染色したRamos細胞7.4x10^5個とCell Tracker Orangeで染色した2102Ep細胞7.4x10^5個をアプライした。細胞液が浸透した後、MACSバッファを8mLアプライした。
・吸着剤B0を充填したカラム:
まず細胞混合液Xをピペット上部より400μL、すなわち、カラムあたりCell TrackerOrangeで染色したSP2/0細胞4.0x10^6個とCell Tracker Greenで染色した2102Ep細胞4.0x10^6個をアプライし、細胞液が浸透した後、MACSバッファを8mLアプライした。
横軸をフラクション数、縦軸を細胞数とした場合の細胞分離クロマトグラムを図5(吸着剤A0)と図6(吸着剤B0)に示す。また、5mL流出分までの初期フラクションでのそれぞれの細胞の流出率(%)を「流出率(%)=カラムあたりの流出細胞数(5mL流出分まで)/導入細胞数」として算出しものを表5に示す。
図5および表5の結果から、吸着剤A0(BC2LCNレクチンを固定化していないHW−40EC)にRamos細胞と2102Ep細胞の細胞混合物を通液した場合、両細胞とも流出しやすい傾向が認められ、5mL流出分までの初期フラクションでの細胞流出率はRamos細胞が66%、2102Ep細胞が61%となった。
また、図6および表5の結果から、吸着剤B0(BC2LCNレクチンを固定化していないポリウレタン粒子)にSP2/0細胞と2102Ep細胞の細胞混合物を通液した場合、両細胞とも流出しやすい傾向が認められ、5mL流出分までの初期フラクションでの細胞流出率はSP2/0細胞が69%、2102Ep細胞が82%となった。
これらの結果から、トヨパールHW−40ECまたはポリウレタン粒子のいずれの吸着剤を用いた場合も、BC2LCNレクチンを固定化しない場合は、複数の細胞の混合物から2102Ep細胞のみを選択的に吸着できないことが明らかとなった。
Figure 2018134073
実施例15 吸着剤A1、A2、D1、E1への細胞の吸着実験
前述のRamos細胞と、「Fucα1−2Galβ1−3GlcNAcおよび/またはFucα1−2Galβ1−3GalNAcからなる構造を含む糖鎖」を有さないヒト慢性骨髄性白血病細胞であるK562細胞(JCRB0019)を浮遊培養用シャーレ(住友ベークライト製)にてGIT培地(日本製薬製)で5%CO2雰囲気下、37℃で培養を行った。
また、接着細胞培養用フラスコ(コーニング製、Falcon)にて、2102Ep細胞を前述と同様の10%FBSと抗生物質溶液を添加したD−MEM培地で5%CO2雰囲気下、37℃で培養を行った。
次に、Ramos細胞とK562細胞を実施例14と同様の手法でCell Tracker Greenで蛍光染色し、回収、洗浄、シングルセル化した後に細胞懸濁液を調製した。また、2102Ep細胞についても同様の手順により、Cell Tracker Orangeで蛍光染色した後に回収、洗浄、シングルセル化し、細胞懸濁液を調製した。それぞれ6.7x10^6個/mLのRamos細胞、7.0x10^6個/mLのK562細胞、6.0x10^6個/mLの2102Ep細胞の細胞懸濁液を得た。
次に、2.5mL容シリンジ(テルモ製)と注射針(テルモ製、22G)の間に目開き40μmのメッシュフィルター(日本BD製 セルストレーナチューブ蓋のメンブレンを取り出して使用)を装着したカラムを作製した。実施例2で作製した吸着剤A1、実施例3で作製した吸着剤A2、実施例7で作製した吸着剤D1および実施例9で作製した吸着剤E1を前述のMACSバッファで置換したのち、50%懸濁液を調製し、作製したカラムに1.0mLの50%懸濁液を添加し、吸着剤をカラムに充填した(吸着剤容量:500μL)。
次にそれぞれのカラムを垂直に立てた状態で、上記の方法で調製したRamos細胞、K562細胞、2102Ep細胞の細胞懸濁液をカラム上部より100μLずつ、すなわち、Ramos細胞は1.3x10^6個/mL−吸着剤、K562細胞は1.4x10^6個/mL−吸着剤、2102Ep細胞は1.2x10^6個/mL−吸着剤の条件でアプライした。
次に、カラム上部よりMACSバッファを1mL導入し、針部からの流出液を別容器に回収した。(以下、この細胞液を流出細胞液と記載する)。実施例14と同様の手法での蛍光強度測定結果から、それぞれの流出細胞液中のRamos細胞、K562細胞、2102Ep細胞の流出率(%)を「流出率(%)=カラムあたりの流出細胞数/導入細胞数」として算出した。
各細胞の流出率を表6、Ramos細胞の細胞流出率のグラフを図7、K562細胞の細胞流出率のグラフを図8、2102Ep細胞の細胞流出率グラフを図9に示す。Ramos細胞を吸着剤A1、A2、D1、E1にアプライした場合の流出率はそれぞれ43%、52%、83%と96%であった。また、K562細胞を吸着剤A1、A2、D1、E1にアプライした場合の流出率はそれぞれ9%、7%、86%と99%であった。また、2102Ep細胞を吸着剤A1、A2、D1、E1にアプライした場合の流出率はそれぞれ12%、7%、9%と8%であった。
以上の結果から、親水性高分子であるデキストランを固定していない担体にBC2LCNレクチンを固定化した吸着剤A1、A2には、「Fucα1−2Galβ1−3GlcNAcおよび/またはFucα1−2Galβ1−3GalNAcからなる構造を含む糖鎖」を有さない細胞であるRamos細胞が約50〜60%結合し、前記糖鎖を有さない細胞であるK562細胞および前記糖鎖を有する2102Ep細胞が約90%結合することが明らかとなった。
一方、デキストランを固定した担体にBC2LCNレクチンを固定化した吸着剤D1、E1には、前記糖鎖を有さない細胞であるRamos細胞およびK562細胞は結合しないため、流出率は約80〜100%と高いが、前記糖鎖を有する細胞である2102Ep細胞は吸着剤D1および吸着剤E1に強く結合するため、流出率は10%以下と低くなることが明らかとなった。
比較例3 吸着剤A0への細胞の吸着実験
実施例2に記載の吸着剤A0を用いた以外は、実施15と同様の方法で、細胞の吸着実験を行った。各細胞の流出率を表6、Ramos細胞の細胞流出率のグラフを図7、K562細胞の細胞流出率のグラフを図8、2102Ep細胞の細胞流出率グラフを図9に示す。吸着剤A0に「Fucα1−2Galβ1−3GlcNAcおよび/またはFucα1−2Galβ1−3GalNAcからなる構造を含む糖鎖」を有する細胞である2102Ep細胞をアプライした場合の細胞流出率は69%であり、2102Ep細胞は吸着剤A0には結合しないため流出率が高くなることが明らかとなった。また、前記糖鎖を有さない細胞であるRamos細胞、K562細胞を吸着剤A0にアプライした場合の細胞流出率は、それぞれ85%、79%であり、2102Ep細胞の場合と同様に、Ramos細胞およびK562細胞も吸着剤A0には結合しないため、流出率が高くなることが明らかとなった。
Figure 2018134073
実施例16 吸着剤D1、D2、E1、E2、F1への細胞の吸着実験
実施例14と同様の手法にて、Ramos細胞、K562細胞、2102Ep細胞のそれぞれを、Cell Tracker Greenでで蛍光染色し、回収、洗浄、シングルセル化して細胞懸濁液を調製した。これにより、1.1x10^7個/mLのRamos細胞、1.4x10^7個/mLのK562細胞、3.5x10^6個/mLの2102Ep細胞の細胞懸濁液を得た。
次に、2.5mL容シリンジ(テルモ製)と注射針(テルモ製、22G)の間に目開き40μmのメッシュフィルター(日本BD製 セルストレーナチューブ蓋のメンブレンを取り出して使用)を装着したカラムを作製した。実施例7で作製した吸着剤D1、実施例8で作製したD2、実施例9で作製した吸着剤E1、実施例10で作製したE2および実施例11で作製したF1を前述のMACSバッファで置換したのち、50%懸濁液を調製し、作製したカラムに1.0mLの50%懸濁液を添加し、吸着剤をカラムに充填した(吸着剤容量:500μL)。
それぞれのカラムを垂直に立てた状態で、上記の方法で調製したRamos細胞、K562細胞、2102Ep細胞の細胞懸濁液をカラム上部より100μLずつ、すなわち、Ramos細胞は2.2x10^6個/mL−吸着剤、K562細胞は2.8x10^6個/mL−吸着剤、2102Ep細胞は7.0x10^5個/mL−吸着剤の条件でアプライした。
次に、カラム上部よりMACSバッファを1mL導入し、針部からの流出液を別容器に回収した。実施例14と同様の手法での蛍光強度測定結果からそれぞれの流出細胞液中のRamos細胞、K562細胞、2102Ep細胞の流出率(%)を「流出率(%)=カラムあたりの流出細胞数/導入細胞数」として算出した。
各細胞の流出率を表7、Ramos細胞の細胞流出率のグラフを図10、K562細胞の細胞流出率のグラフを図11、2102Ep細胞の細胞流出率グラフを図12に示す。Ramos細胞を吸着剤D1、D2、E1、E2、F1にアプライした場合の流出率はそれぞれ92%、104%、78%、102%、59%であった。K562細胞を吸着剤D1、D2、E1、E2、F1にアプライした場合の流出率はそれぞれ91%、98%、58%、86%、70%であった。2102Ep細胞を吸着剤D1、D2、E1、E2、F1にアプライした場合の流出率はそれぞれ1%、19%、2%、10%、34%であった。
以上の結果から、親水性高分子であるデキストランを固定した担体にBC2LCNレクチンを固定化した吸着剤D1、D2、E1、E2、F1には、「Fucα1−2Galβ1−3GlcNAcおよび/またはFucα1−2Galβ1−3GalNAcからなる構造を含む糖鎖」を有さない細胞であるRamos細胞およびK562細胞は結合しないため、流出率は約60〜100%と高いが、前記糖鎖を有する細胞である2102Ep細胞は吸着剤D1、D2、E1、E2、F1に強く結合するため、流出率は1〜35%以下と低くなることが明らかとなった。
また、BC2LCNレクチン固定化方法の異なる吸着剤を比較すると、2102Ep細胞の吸着について、吸着剤D1とE1は吸着剤D2とE2よりも流出率が低かったことから、レクチンを固定化する方法として、実施例3に記載の方法よりも実施例2に記載の方法で行うことにより、前記糖鎖を有する細胞の吸着能力が優れた吸着剤が作製できることが明らかとなった。
比較例4 吸着剤A0、B0、D0への細胞の吸着実験
実施例2に記載の吸着剤A0、調製例1で作製した吸着剤B0、調製例3で作製した吸着剤D0を用いた以外は、実施16と同様の方法で、細胞の吸着実験を行った。
各細胞の流出率を表7、Ramos細胞の細胞流出率のグラフを図10、K562細胞の細胞流出率のグラフを図11、2102Ep細胞の細胞流出率グラフを図12に示す。Ramos細胞を吸着剤A0、B0、D0にアプライした場合の流出率はそれぞれ93%、86%、104%であった。K562細胞を吸着剤A0、B0、D0にアプライした場合の流出率はそれぞれ91%、72%、86%であった。2102Ep細胞を吸着剤A0、B0、D0にアプライした場合の流出率はそれぞれ60%、63%、88%であった。以上の結果から、「Fucα1−2Galβ1−3GlcNAcおよび/またはFucα1−2Galβ1−3GalNAcからなる構造を含む糖鎖」を有する細胞である2102Ep細胞、前記糖鎖を有さない細胞であるRamos細胞およびK562細胞は、吸着剤A0、B0、D0に結合しないため、流出率が高くなることが明らかになった。
Figure 2018134073
実施例17 吸着剤A2、D1、E1への細胞の吸着実験
実施例14と同様の手法にて2102Ep細胞をCell Tracker Greenで蛍光染色し、回収、洗浄、シングルセル化して、6.0x10^7個/mLの細胞濃度の2102Ep細胞懸濁液を調製した。
次に、2.5mL容シリンジ(テルモ製)と注射針(テルモ製、22G)の間に目開き40μmのメッシュフィルター(日本BD製 セルストレーナチューブ蓋のメンブレンを取り出して使用)を装着したカラムを作製した。実施例3で作製した吸着剤A2、実施例7で作製した吸着剤D1、実施例9で作製した吸着剤E1を前述のMACSバッファで置換したのち、50%懸濁液を調製し、作製したカラムに1.0mLの50%懸濁液を添加し、吸着剤をカラムに充填した(吸着剤容量:500μL)。
次にそれぞれのカラムを垂直に立てた状態で、上記の方法で調製した2102Ep細胞をアプライ細胞量(A)=80μL、(B)=400μL、(C)=800μLの条件でアプライした。すなわち、アプライ細胞量(A)は9.6x10^6個/mL−吸着剤、アプライ細胞量(B)4.8x10^7個/mL−吸着剤、アプライ細胞量(C)は9.6x10^7個/mL−吸着剤の条件で2102Ep細胞をカラム上部にアプライした。
次に、カラム上部よりMACSバッファを、アプライ細胞量(A)のものについては3mL、アプライ細胞量(B)のものについては2.6mL、アプライ細胞量(C)のものについては2.2mL導入し、細胞液アプライ時の流出液とMACSバッファアプライ時の流出液を混合し、合計約3mLの細胞液としたのち、別容器に回収した。実施例14と同様の手法での蛍光強度測定結果から、2102Ep細胞の流出率(%)を「流出率(%)=カラムあたりの流出細胞数/導入細胞数」として算出した。
2102Ep細胞の細胞流出率を表8、グラフを図13に示す。HW−40ECにレクチンを固定化した吸着剤である吸着剤A2、D1、E1に細胞を通液した場合、アプライ細胞量が(A)と(B)の場合について流出率が約2割以下と良好な細胞吸着性を示したが、(C)の場合は6割以上の流出率となり、吸着剤あたりの吸着可能細胞数を超えたために細胞がオーバーフローした結果であると考えられた。また、この結果から算出した吸着剤1mLあたりの吸着細胞数の数値を表8、グラフを図14に示す。HW−40ECにレクチンを固定化した吸着剤である吸着剤A2、D1、E1の場合は、最大でそれぞれ3.9x10^7個/mL−吸着剤(吸着剤A2、アプライ細胞量(B))、3.9x10^7個/mL−吸着剤(吸着剤D1、アプライ細胞量(B))、3.7x10^7個/mL−吸着剤(吸着剤E1、アプライ細胞量(B))と、1mLの吸着剤あたり10^7個オーダーの細胞数が吸着可能であることが明らかとなった。
比較例5 吸着剤A0への細胞の吸着実験
吸着剤A0を用いた以外は、実施例17と同様の方法で細胞吸着実験を行った。2102Ep細胞の細胞流出率を表8、グラフを図13に示す。HW−40ECにレクチンを固定化していない吸着剤である吸着剤A0に細胞を通液した場合、いずれのアプライ細胞量でも流出率が8割以上となり、殆どの細胞が吸着されずに流出していることが示された。また、この結果をもとに算出した吸着剤1mLあたりの吸着細胞数の数値を表8、グラフを図14に示す。吸着剤A0の場合、1mLの吸着剤あたりの吸着細胞数は、アプライ細胞量が(A)の場合は1.6x10^6個/mL−吸着剤、アプライ細胞量が(B)の場合は3.3x10^6個/mL−吸着剤、アプライ細胞量が(C)の場合は6.2x10^6個/mL−吸着剤であり、10^6個オーダーの細胞数しか吸着できないことが明らかとなった。
Figure 2018134073
実施例18 吸着剤D1への2102Ep細胞の吸着実験とFACS解析
接着細胞培養用フラスコ(コーニング製)にて、2102Ep細胞を前述の10%FBSと抗生物質溶液添加D−MEM培地で5%CO2雰囲気下、37℃で培養を行った。カラム通液試験実施日より1日前、2日前、3日前、4日前にそれぞれ継代した2102Ep細胞を準備しておき、カラム通液試験当日、それぞれの細胞をAccutaseで剥離回収することで、培養期間がそれぞれ1日目、2日目、3日目、4日目となるような2102Ep細胞を用意した。
次に、それぞれの培養日数で準備した2102Ep細胞の回収と調製を以下の方法で行った。まず培養フラスコにD−PBSを導入した後、細胞をリンスしてD−PBS液を廃棄した。次に、適当量のAccutase製を導入し、数分間放置することで2102Ep細胞を剥離させ、50mLチューブへと回収した。それぞれの細胞を1500rpm、5分間遠心分離して沈降後、細胞ペレットを前述のMACSバッファに懸濁し、再び遠心後上清を廃棄することで細胞洗浄を行った。MACSバッファに懸濁した2102Ep細胞をセルストレーナーで濾過することで、凝集塊の無い均一な2102Ep細胞懸濁液を得た。それぞれの細胞懸濁液は血球計算盤で細胞数をカウントした後、MACSバッファで希釈することで、各細胞懸濁液濃度を3.0x10^7/mLに調整した。
次に、2.5mL容シリンジ(テルモ製)と注射針(テルモ製、22G)の間に目開き40μmのメッシュフィルター(日本BD製 セルストレーナチューブ蓋のメンブレンを取り出して使用)を装着したカラムを作製した。実施例7で作製した吸着剤D1を前述のMACSバッファで置換したのち、50%懸濁液を調製し、作製したカラムに1.0mLの50%懸濁液を添加し、吸着剤をカラムに充填した(吸着剤容量:500μL)。
次にそれぞれのカラムを垂直に立てた状態で、上記の方法で調製した3.0x10^7/mLの2102Ep細胞懸濁液をそれぞれ100μL、すなわち6.0x10^6個/mL−吸着剤の条件で2102Ep細胞をカラム上部にアプライした。
次に、カラム上部よりMACSバッファを1mL導入し、針部から流出した約1mLの細胞液を別容器に回収した。回収した流出細胞液は血球計算盤で細胞数をカウントし、「流出率(%)=カラムあたりの流出細胞数/導入細胞数」として、アプライした細胞数に対する比率である流出率をそれぞれ算出した。細胞流出率を表9、グラフを図15に示す。
吸着剤D1を充填したカラムでは2102Ep細胞の流出率は7%(培養日数1日の細胞)、12%(培養日数2日の細胞)、10%(培養日数3日の細胞)、17%(培養日数4日の細胞)と低く、吸着剤に2102Ep細胞が強く吸着されるために流出率が低いことが明らかとなった。
次に、以下の方法でフローサイトメトリー(日本BD製 BD FACSAria IIu、以下FACSと記載)により、各アプライ細胞と流出細胞のTRA−1−60陽性率、およびBC2LCNレクチン陽性率を測定した。まず各細胞液を遠心分離して細胞を沈降後、上清を廃棄して細胞ペレットをMACSバッファにて懸濁することで細胞の洗浄を行った。再び遠心分離して細胞を沈降した後、上清を廃棄して、細胞ペレットをMACSバッファ1mLに再懸濁した。Anti−TRA−1−60 PE(ノバスバイオロジカル製)を5μLおよびrBC2LCN−FITC(和光純薬製)を5μL添加し、室温で1時間反応した。蛍光試薬反応後、遠心分離して細胞を沈降した後、上清を廃棄して、細胞ペレットをMACSバッファ1mLに懸濁した。再び遠心分離して細胞を沈降した後、上清を廃棄して、細胞ペレットをMACSバッファ1mLに再懸濁することで、FACS測定用細胞サンプルとした。
各アプライ細胞と流出細胞をFACSで解析したドットプロットを図16に示す。横軸をFITCの蛍光強度、縦軸をPEの蛍光強度として解析を行った。図16中のQ1とQ2をTRA−1−60陽性の細胞集団、Q2とQ4をBC2LCNレクチン陽性の細胞集団とし、TRA−1−60陽性率(%)=(Q1+Q2)/(Q1+Q2+Q3+Q4)、BC2LCNレクチン陽性率(%)=(Q2+Q4)/(Q1+Q2+Q3+Q4)として陽性率の算出を行った。
陽性率解析結果を表10、TRA−1−60陽性率のグラフを図17、BC2LCNレクチン陽性率のグラフを図18に示す。TRA−1−60陽性率は培養日数による違いは見られず、全ての細胞集団で99%以上の高い値を示し、元々2102Ep細胞がAnti−TRA−1−60抗体と強い結合性を有することが明らかとなった。また、カラムにアプライした2102Ep細胞のBC2LCNレクチン陽性率はそれぞれ75%(培養日数1日の細胞)、60%(培養日数2日の細胞)、68%(培養日数3日の細胞)、59%(培養日数4日の細胞)であった。一方、回収した流出細胞のTRA−1−60陽性率は全ての細胞集団で99%以上の高い値であったが、BC2LCNレクチン陽性率はそれぞれ57%(培養日数1日の細胞)、45%(培養日数2日の細胞)、47%(培養日数3日の細胞)、39%(培養日数4日の細胞)であり、それぞれアプライした細胞と比べ1〜2割の陽性率低下が認められた。これらの結果から、BC2LCNレクチンを固定化した吸着剤D1に2102Ep細胞を通液した場合、アプライした2102Ep細胞の内、BC2LCNレクチン陽性率の高い細胞集団が吸着し、BC2LCNレクチン陽性率の低い細胞集団が流出していることが明らかとなった。
比較例6 吸着剤D0への2102Ep細胞の吸着実験とFACS解析
調製例3で作製した吸着剤D0を用いた以外は、実施例18と同様の方法で細胞吸着実験とFACS解析を行った。アプライする細胞は培養3日目の2102Ep細胞を用いた。細胞流出率を表9、グラフを図15に示す。レクチンを固定化していない吸着剤D0を充填したカラムでは2102Ep細胞の流出率は59%であり、吸着剤D0には2102Ep細胞が結合しないため、多くの細胞が流出していることが明らかとなった。
また、各アプライ細胞と流出細胞をFACSで解析したドットプロットを図16、陽性率解析結果の数値を表10、TRA−1−60陽性率のグラフを図17、BC2LCNレクチン陽性率のグラフを図18に示す。TRA−1−60陽性率はアプライ細胞も流出細胞も99%と高い陽性率を示した。また、BC2LCNレクチン陽性率についてはアプライ細胞で68%、流出細胞で67%とほとんど違いが認められなかった。これらの結果から、BC2LCNレクチンを固定化していない吸着剤D0に2102Ep細胞を通液した場合、2102Ep細胞が結合せず素通りするために、アプライ細胞と同じTRA−1−60陽性率、BC2LCN陽性率を持つ細胞が流出していることが明らかとなった。
Figure 2018134073
Figure 2018134073
実施例19 吸着剤D1、E1への2102Ep細胞およびスパイク細胞の吸着実験とFACS解析
実施例14と同様の手法にて、2102Ep細胞をCell Tracker Greenで蛍光染色し、回収、洗浄、シングルセル化して、、1.26x10^7個/mLの2102Ep細胞の細胞懸濁液を得た。また、実施例15と同様の手法にてK562細胞を回収、洗浄、シングルセル化して、1.16x10^7個/mLのK562細胞の細胞懸濁液を得た。
次に、2.5mL容シリンジ(テルモ製)と注射針(テルモ製、22G)の間に目開き40μmのメッシュフィルター(日本BD製 セルストレーナチューブ蓋のメンブレンを取り出して使用)を装着したカラムを作製した。実施例7で作製した吸着剤D1および実施例9で作製した吸着剤E1を前述のMACSバッファで置換したのち、50%懸濁液を調製し、作製したカラムに1.0mLの50%懸濁液を添加し、吸着剤をカラムに充填した(吸着剤容量:500μL)。各吸着剤を充填したカラムは同じものを2本ずつ用意し、それぞれのカラムを垂直に立てた状態で、以下の方法で片方には2102Ep細胞を単独、もう片方には2102Ep細胞とK562細胞の混合細胞をアプライした。
(2102Ep細胞を単独でアプライの場合)
上記の方法で調製した2102Ep細胞を150μL、すなわち3.8x10^6個/mL−吸着剤の条件でアプライした。
(2102Ep細胞とK562細胞混合物をアプライの場合)
上記の方法で調製した2102Ep細胞500μLとK562細胞500μLの混合細胞液を調製した後、この細胞液を100μL、すなわち(1.3x10^6個の2102Ep細胞と1.2x10^6個のK562細胞)/mL−吸着剤の条件でカラム上部にアプライした(アプライ時の細胞比率は2102Ep:K562=52%:48%)。
次に、カラム上部よりMACSバッファを2mL導入し、針部から流出した約2mLの細胞液を別容器に回収した。実施例14と同様の手法での蛍光強度測定結果から、2102Ep細胞の流出率(%)を「流出率(%)=カラムあたりの流出細胞数/導入細胞数」として算出した。
細胞流出率の表11、グラフを図19に示す。2102Ep細胞を単独でアプライした場合、細胞流出率は19%(吸着剤D1)、4%(吸着剤E1)、K562細胞との混合細胞をアプライした場合、2102Ep細胞の細胞流出率は27%(吸着剤D1)、16%(吸着剤E1)であった。これらの結果から、2102Ep細胞、または2102Ep細胞とK562細胞との混合細胞を吸着剤D1および吸着剤E1を充填したカラムに通液した場合、吸着剤に2102Ep細胞が強く吸着されるために流出率が低くなることが明らかとなった。
次に、実施例18と同様の方法でFACSにて各流出細胞中の2102Ep細胞のBC2LCNレクチン陽性率、および、混合細胞の流出細胞中における2102Ep細胞の割合を解析した。
混合細胞をアプライした場合の各流出細胞をFACSで解析したドットプロットを図20に示す。図20中、Cell Tracker Orange陽性の細胞集団、すなわち2102Ep細胞をP3ゲート部分、また、Cell Tracker Orangeで染色されておらず、なおかつBC2LCNレクチン反応性を示さない細胞集団として、K562細胞をP2ゲート部分に設定した。混合細胞をアプライしたカラムにおける流出細胞中の2102Ep細胞の比率は、細胞比率(%)=P3/(P2+P3)として算出した。また、FITCの蛍光強度が低いQ1ゲートに含まれる細胞集団はBC2LCNレクチン陰性の細胞集団、FITCの蛍光強度が高いQ2ゲートに含まれる細胞集団はBC2LCNレクチン陽性の細胞集団とし、BC2LCNレクチン陽性率(%)=Q2/(Q1+Q2)として流出細胞中の2102Ep細胞のBC2LCNレクチン陽性率の算出を行った。
混合細胞をアプライしたカラムにおける流出細胞中の2102Ep細胞の比率を表11に示す。細胞アプライ時の細胞比率は2102Ep:K562=52%:48%であったが、流出細胞中の細胞比率は2102Ep:K562=13.8%:86.2%(吸着剤D1)、0.3%:99.7%(吸着剤E1)となり、流出細胞中に含まれる2102Ep細胞の割合が極度に低下していることが確認された。以上の結果から、HW−40ECにBC2LCNレクチンを固定化した吸着剤D1および吸着剤E1に混合細胞を通液した場合、「Fucα1−2Galβ1−3GlcNAcおよび/またはFucα1−2Galβ1−3GalNAcからなる構造を含む糖鎖」を有する細胞である2102Ep細胞のみが選択的に吸着分離できることが確認された。
また、流出細胞中の2102Ep細胞のBC2LCNレクチン陽性率解析結果の数値を表11、グラフを図21に示す。アプライした2102Ep細胞のBC2LCNレクチン陽性率は53%であったが、2102Ep細胞を単独でアプライした場合の流出した2102Ep細胞のBC2LCNレクチン陽性率は23%(吸着剤D1)、BC2LCNレクチン陽性細胞数が僅少のため定量不能(吸着剤E1)、K562細胞との混合細胞をアプライした場合の流出した2102Ep細胞のBC2LCNレクチン陽性率は27%(吸着剤D1)、BC2LCNレクチン陽性細胞数が僅少のため定量不能(吸着剤E1)と、BC2LCNレクチン陽性率の大きな低下が認められた。また、表11に示した2102Ep細胞の流出率と流出細胞中の2102Ep細胞のBC2LCNレクチン陽性率との相関を図22に示す。細胞流出率と流出細胞のBC2LCNレクチン陽性率には相関が認められ、細胞流出率が低いほど流出細胞中の2102Ep細胞のBC2LCNレクチン陽性率も低いことが確認され、吸着剤D1および吸着剤E1を充填したカラムに通液した場合、BC2LCNレクチン陽性率の高い細胞集団が吸着剤と強く結合し、吸着されていることが明らかとなった。
比較例7 吸着剤D0への2102Ep細胞およびスパイク細胞の吸着実験とFACS解析
調製例3で作製した吸着剤D0を用いた以外は、実施例19と同様の方法で細胞吸着実験とFACS解析を行った。細胞流出率を表11、グラフを図19に示す。2102Ep細胞を単独でアプライした場合、細胞流出率は100%、K562細胞との混合細胞をアプライした場合、2102Ep細胞の細胞流出率は82%であった。これらの結果から、2102Ep細胞、または2102Ep細胞とK562細胞との混合細胞を、吸着剤D0を充填したカラムに通液した場合、吸着剤に2102Ep細胞がほとんど吸着していないことが明らかとなった。
また、混合細胞をアプライした場合の流出細胞をFACSで解析したドットプロットを図20、流出細胞中の2102Ep細胞とK562細胞の細胞比率を表11に示す。細胞アプライ時の細胞比率は2102Ep:K562=52%:48%であったが、流出細胞中の細胞比率は2102Ep:K562=37.7%:62.3%となり、流出細胞中に含まれる2102Ep細胞の割合の顕著な減少は認められなかった。以上の結果から、吸着剤D0に混合細胞を通液した場合、2102Ep細胞のみを選択的に吸着分離できないことが確認された。また、流出細胞中の2102Ep細胞のBC2LCNレクチン陽性率解析結果の数値を表11、グラフを図21に示す。アプライした2102Ep細胞のBC2LCNレクチン陽性率は53%であったが、2102Ep細胞を単独でアプライした場合の流出した2102Ep細胞のBC2LCNレクチン陽性率は54%、K562細胞との混合細胞をアプライした場合の流出した2102Ep細胞のBC2LCNレクチン陽性率は47%と、BC2LCNレクチン陽性率の大きな低下は認められなかった。
これらの結果から、BC2LCNレクチン固定化を行っていない吸着剤である吸着剤D0を充填したカラムに通液した場合、2102Ep細胞が結合せず素通りするために、アプライ細胞と同じBC2LCNレクチン陽性率を持つ細胞が流出していることが明らかとなった。
Figure 2018134073
実施例20 吸着剤E1への201B7細胞およびスパイク細胞の吸着実験とFACS解析
接着細胞培養用シャーレ(コーニング製)にて、ヒトiPS細胞株である201B7細胞(特許実施許諾契約およびMTA契約を締結後、京都大学CiRAより分譲)のフィーダーフリー培養を行った。
まずiMatrix−511(ニッピ製)をD−PBSに3μg/mLで希釈した溶液を調製し、シャーレに導入して4℃で一晩以上放置することで、シャーレ培養面へのiMatrix−511のコーティングを行った。コーティングを行ったシャーレのiMatrix−511溶液を廃棄した後、iPS細胞培養用培地であるStemFit AK02N培地(味の素製)を導入しリンス後、凍結バイアルより解凍した201B7細胞をロックインヒビター Y−27632(和光純薬製)を10μM添加した同培地に懸濁して播種した。一晩培養後、Y−27632を含むStemFit AK02N培地を廃棄し、Y−27632を含まないStemFit AK02N培地へと培地交換を行った。その後、シャーレは毎日StemFit AK02N培地にて培地交換を行い、適当な細胞密度になったところで、細胞回収と継代を行った。細胞回収については以下のようにして行った。まず、シャーレにD−PBSを導入し細胞をリンスした後、D−PBSを廃棄する操作を2回繰り返して細胞を洗浄後、CTS TrypLE Select Enzyme(サーモフィッシャーサイエンティフィック製)とVersene Solution(サーモフィッシャーサイエンティフィック製)を1:1で混合した剥離溶液を導入して5%CO2雰囲気下、37℃で1分間放置した。細胞が丸く剥がれつつあるのを確認した後、剥離溶液を廃棄、10μM Y−27632を含むStemFit AK02N培地を導入し、セルスクレ―バーで細胞を剥離し、50mLチューブ中に回収した。回収した細胞の細胞数は血球計算盤でカウントし、Y−27632を含むStemFit AK02N培地にて、10^4〜10^5/mLの濃度で播種し、Y−27632を含まないStemFit AK02N培地にて適当な細胞密度になるまで培養を継続した。また、前述のK562細胞を浮遊培養用シャーレ(住友ベークライト製)にてGIT培地(日本製薬製)で同様に5%CO2雰囲気下、37℃で培養を行った。
次に、201B7細胞を以下の手順でCell Tracker Orangeで蛍光染色した。まず、シャーレ中の培地を廃棄後、D−PBSを導入して細胞をリンス後、D−PBSを吸引廃棄した。次にCell Tracker Orangeを無血清RPMI培地に終濃度20μMで溶解した液を導入し、5%CO2雰囲気下、37℃で1時間培養した。蛍光試薬液を廃棄後、StemFit AK02N培地を導入し、5%CO2雰囲気下、37℃で1時間培養した。培地を廃棄後、StemFit AK02N培地を導入し、5%CO2雰囲気下、37℃で一晩培養した。
次にそれぞれの細胞の回収と調製を以下の方法で行った。201B7細胞については、まず、シャーレにD−PBSを導入し細胞をリンスした後、D−PBSを廃棄する操作を2回繰り返して細胞を洗浄後、CTS TrypLE Select Enzyme(サーモフィッシャーサイエンティフィック製)とVersene Solution(サーモフィッシャーサイエンティフィック製)を1:1で混合した剥離溶液を導入して5%CO2雰囲気下、37℃で1分間放置した。細胞が丸く剥がれつつあるのを確認した後、剥離溶液を廃棄、StemFit AK02N培地を導入し、セルスクレ―バーで細胞を剥離し、50mLチューブ中に回収した。また、K562細胞についてはシャーレから直接50mLチューブへと回収を行った。それぞれの細胞を遠心分離して沈降後、細胞ペレットを前述のMACSバッファにて懸濁し、再度遠心分離して上清を廃棄することで細胞を洗浄した。細胞洗浄操作を2回繰り返した後、最終的に、数mLのMACSバッファに懸濁した201B7細胞とK562細胞をそれぞれセルストレーナーで濾過することで凝集塊を除去し、5.0x10^6個/mLの201B7細胞と6.0x10^6個/mLのK562細胞の細胞懸濁液を得た。
次に、2.5mL容シリンジ(テルモ製)と注射針(テルモ製、22G)の間に目開き40μmのメッシュフィルター(日本BD製 セルストレーナチューブ蓋のメンブレンを取り出して使用)を装着したカラムを作製した。実施例9で作製した吸着剤E1を前述のMACSバッファで置換したのち、50%懸濁液を調製し、作製したカラムに1.0mLの50%懸濁液を添加し、吸着剤をカラムに充填した(吸着剤容量:500μL)。各吸着剤を充填したカラムは同じものを5本用意し、それぞれのカラムを垂直に立てた状態で、以下の方法で1本には201B7細胞を単独、残り4本には混合比率を変えた201B7細胞とK562細胞の細胞混合物をアプライした。
(201B7細胞を単独でアプライの場合)
上記の方法で調製した5.0x10^6個/mLの201B7細胞を100μL、すなわち1.0x10^6個/mL−吸着剤の条件でアプライした。
(201B7細胞とK562細胞の細胞混合物をアプライの場合)
下記混合比率(i)〜(iv)の条件で細胞混合物を調製し、カラムへアプライした。
混合比率(i)
201B7細胞とK562細胞をそれぞれ18%:82%の細胞数比率で混合したものを調製し、(4.0x10^5個の201B7細胞と1.8x10^6個のK562細胞)/mL−吸着剤の条件でカラム上部にアプライした。
混合比率(ii)
201B7細胞とK562細胞をそれぞれ47%:53%の細胞数比率で混合したものを調製し、(1.0x10^6個の201B7細胞と1.1x10^6個のK562細胞)/mL−吸着剤の条件でカラム上部にアプライした。
混合比率(iii)
201B7細胞とK562細胞をそれぞれ78%:22%の細胞数比率で混合したものを調製し、(1.6x10^6個の201B7細胞と4.6x10^5個のK562細胞)/mL−吸着剤の条件でカラム上部にアプライした。
混合比率(iv)
201B7細胞とK562細胞をそれぞれ10%:90%の細胞数比率で混合したものを調製し、(4.4x10^5個の201B7細胞と4.1x10^6個のK562細胞)/mL−吸着剤の条件でカラム上部にアプライした。
次に、カラム上部よりMACSバッファを2mL導入し、針部から流出した細胞液約2mLを別の容器に回収した。回収した流出細胞液はフルオロヌンク96穴蛍光検出用プレート(サーモフィッシャーサイエンティフィック製)に100μLずつ分注し、プレートリーダーで励起波長541nm、検出波長580nmで蛍光スキャンを行い、検出波長580nmでの蛍光強度を測定した。また、調製した5.0x10^6個/mLの201B7細胞溶液の希釈系列を作製し、同様にフルオロヌンク96穴蛍光検出用プレートに100μLずつ分注して蛍光スキャンを行うことで、細胞濃度定量用の検量線を作成した。流出細胞液の蛍光強度と検量線よりそれぞれの流出細胞液中の201B7細胞濃度を定量し、201B7細胞の流出率(%)を「流出率(%)=カラムあたりの流出細胞数/導入細胞数」として算出した。
201B7細胞の細胞流出率を表12、グラフを図23に示す。201B7細胞を単独でアプライした場合、流出率は7.9%と、良好な201B7細胞の吸着を示した。また、201B7細胞とK562細胞との混合細胞をアプライした場合も同様に、細胞混合比率(i)でアプライしたものについては流出率4.7%、細胞混合比率(ii)でアプライしたものについては流出率9.7%、細胞混合比率(iii)でアプライしたものについては流出率11.4%、細胞混合比率(iv)でアプライしたものについては流出率13.0%と良好な201B7細胞の吸着性を示した。これらの結果から、201B7細胞、または201B7細胞とK562細胞との混合細胞を、吸着剤E1を充填したカラムに通液した場合、吸着剤に201B7細胞が強く吸着されるために流出率が低くなることが明らかとなった。
また、以下の方法でFACSにて、各流出細胞中の201B7細胞のBC2LCNレクチン陽性率、および、201B7細胞とK562細胞との混合細胞をアプライした場合における流出細胞中の201B7細胞の割合を解析した。まず各細胞液を遠心分離して細胞を沈降後、上清を廃棄して細胞ペレットをMACSバッファにて懸濁することで細胞の洗浄を行った。再び遠心分離して細胞を沈降した後、上清を廃棄して、細胞ペレットをMACSバッファ1mLに再懸濁した。rBC2LCN−FITC(和光純薬製)5μLを添加し、室温で1時間反応した。蛍光試薬反応後、遠心分離して細胞を沈降した後、上清を廃棄して、細胞ペレットをMACSバッファ1mLに再懸濁した。再び遠心分離して細胞を沈降した後、上清を廃棄して、細胞ペレットをMACSバッファ1mLに再懸濁することで、FACS測定用細胞サンプルとした。
混合細胞をアプライした場合の各流出細胞をFACSで解析したドットプロットを図24に示す。図24中、Cell Tracker Orange陽性の細胞集団、すなわち201B7細胞をQ1とQ2ゲート部分、また、Cell Tracker Orangeで染色されておらず、なおかつBC2LCNレクチン反応性を示さない細胞集団として、K562細胞をQ3ゲート部分に設定した。混合細胞をアプライしたカラムにおける流出細胞中の201B7細胞の比率は、細胞比率(%)=(Q1+Q2)/(Q1+Q2+Q3)として算出した。また、FITCの蛍光強度が低いQ1ゲートに含まれる細胞集団はBC2LCNレクチン陰性の細胞集団、FITCの蛍光強度が高いQ2ゲートに含まれる細胞集団はBC2LCNレクチン陽性の細胞集団とし、201B7細胞のBC2LCNレクチン陽性率(%)=Q2/(Q1+Q2)として流出細胞中の201B7細胞のBC2LCNレクチン陽性率の算出を行った。
混合細胞をアプライしたカラムにおける流出細胞中の201B7細胞の比率を表12に示す。細胞アプライ時の細胞比率は細胞混合比率(i)でアプライしたものについては201B7:K562=18%:82%、細胞混合比率(ii)でアプライしたものについては201B7:K562=47%:53%、細胞混合比率(iii)でアプライしたものについては201B7:K562=78%:22%、細胞混合比率(iv)でアプライしたものについては201B7:K562=10%:90%であったが、流出細胞中の細胞比率は、細胞混合比率(i)でアプライしたものについては201B7:K562=0.08%:99.92%、細胞混合比率(ii)でアプライしたものについては201B7:K562=0.25%:99.75%、細胞混合比率(iii)でアプライしたものについては201B7:K562=0.71%:99.29%、細胞混合比率(iv)でアプライしたものについては201B7:K562=0.10%:99.90%であり、流出細胞中に含まれる201B7細胞の割合が極度に低下していることが確認された。以上の結果から、親水性高分子が固定されたトヨパールHW−40ECにBC2LCNレクチンを固定化した吸着剤E1に混合細胞を通液した場合、「Fucα1−2Galβ1−3GlcNAcおよび/またはFucα1−2Galβ1−3GalNAcからなる構造を含む糖鎖」を有する細胞である201B7細胞のみが選択的に吸着分離できることが確認された。
また、流出細胞中の201B7細胞のBC2LCNレクチン陽性率解析結果を表12、グラフを図25に示す。アプライした201B7細胞のBC2LCNレクチン陽性率は96%であったが、201B7細胞を単独でアプライした場合の流出した201B7細胞のBC2LCNレクチン陽性率は55%、K562細胞との混合細胞をアプライした場合の流出した201B7細胞のBC2LCNレクチン陽性率は、BC2LCNレクチン陽性細胞数が僅少のため定量不能(細胞混合比率(i)、細胞混合比率(ii)、細胞混合比率(iv))、77%(細胞混合比率(iii)と、BC2LCNレクチン陽性率の大きな低下が認められた。表12に示した201B7細胞の流出率とFACSで解析した各流出細胞中の201B7細胞のBC2LCNレクチン陽性率との相関を図26に示す。細胞流出率と流出細胞のBC2LCNレクチン陽性率には相関が認められ、細胞流出率が低いほど流出細胞中の201B7細胞のBC2LCNレクチン陽性率も低いことが確認され、吸着剤E1を充填したカラムに通液した場合、BC2LCNレクチン陽性率の高い細胞集団が吸着剤と強く結合し、吸着されていることが明らかとなった。
比較例8 吸着剤D0への201B7細胞およびスパイク細胞の吸着実験とFACS解析
吸着剤D0を用いた以外は、実施例20と同様の方法で細胞吸着実験とFACS解析を行った。
201B7細胞の細胞流出率を表12、グラフを図23に示す。201B7細胞を単独でアプライした場合、流出率は100%と、201B7細胞が吸着されずに流出していることが明らかとなった。また、201B7細胞とK562細胞との混合細胞をアプライした場合も同様に、細胞混合比率(i)でアプライしたものについては流出率89.3%、細胞混合比率(ii)でアプライしたものについては流出率78.2%、細胞混合比率(iii)でアプライしたものについては流出率100.0%、細胞混合比率(iv)でアプライしたものについては流出率84.4%と201B7細胞が吸着されずに流出していることが明らかとなった。これらの結果から、201B7細胞、または201B7細胞とK562細胞との混合細胞を、吸着剤D0を充填したカラムに通液した場合、吸着剤に201B7細胞が吸着されないことが明らかとなった。
混合細胞をアプライした場合の各流出細胞をFACSで解析したドットプロットを図24、混合細胞をアプライしたカラムにおける流出細胞中の201B7細胞の比率を表12に示す。細胞アプライ時の細胞比率は細胞混合比率(i)でアプライしたものについては201B7:K562=18%:82%、細胞混合比率(ii)でアプライしたものについては201B7:K562=47%:53%、細胞混合比率(iii)でアプライしたものについては201B7:K562=78%:22%、細胞混合比率(iv)でアプライしたものについては201B7:K562=10%:90%であったが、流出細胞中の細胞比率は、細胞混合比率(i)でアプライしたものについては201B7:K562=11%:89%、細胞混合比率(ii)でアプライしたものについては201B7:K562=33%:67%、細胞混合比率(iii)でアプライしたものについては201B7:K562=69%:31%、細胞混合比率(iv)でアプライしたものについては201B7:K562=6%:94%であり、細胞アプライ時の細胞比率と大きく変わらないことが確認された。以上吸着剤D0に混合細胞を通液した場合、201B7細胞のみを選択的に吸着分離できないことが確認された。
また、流出細胞中の201B7細胞のBC2LCNレクチン陽性率解析結果の数値を表12、グラフを図25に示した。アプライした201B7細胞のBC2LCNレクチン陽性率は96%であり、201B7細胞を単独でアプライした場合の流出した201B7細胞のBC2LCNレクチン陽性率は97%、K562細胞との混合細胞をアプライした場合の流出した201B7細胞のBC2LCNレクチン陽性率は、細胞混合比率(i)でアプライしたものについては97%、細胞混合比率(ii)でアプライしたものについては95%、細胞混合比率(iii)でアプライしたものについては93%、細胞混合比率(iv)でアプライしたものについては95%であり、BC2LCNレクチン陽性率の大きな低下は認められなかった。
これらの結果から、BC2LCNレクチンを固定化していない吸着剤である吸着剤D0を充填したカラムに通液した場合、201B7細胞が結合せず素通りするために、アプライ細胞と同じBC2LCNレクチン陽性率を持つ細胞が流出していることが明らかとなった。
Figure 2018134073
実施例21 吸着剤E1へのNHDF細胞と2102Ep細胞のスパイク細胞の吸着実験
「Fucα1−2Galβ1−3GlcNAcおよび/またはFucα1−2Galβ1−3GalNAcからなる構造を含む糖鎖」を有さない正常ヒト皮膚線維芽細胞であるNHDF細胞(PromoCell製)の培養は、線維芽細胞増殖培地2(PromoCell製)を用い、直径15cmのシャーレ(コーニング製)に細胞を播種し、5%CO2雰囲気下、37℃で培養した。また、「Fucα1−2Galβ1−3GlcNAcおよび/またはFucα1−2Galβ1−3GalNAcからなる構造を含む糖鎖」を有する細胞である2102Ep細胞を、実施例14と同様の手法で接着細胞培養用フラスコ(コーニング製、Falcon)にて、10%FBSと抗生物質溶液を添加したD−MEM培地を用い、5%CO2雰囲気下、37℃で培養を行った。
次に、以下の手順によりNHDF細胞をCell Tracker Greenで蛍光染色した。まずフラスコ中の培地を廃棄後、D−PBSを導入して細胞をリンス後、D−PBSを廃棄した。次にCell Tracker Greenを無血清RPMI培地に終濃度10μMで溶解した液を導入し、5%CO2雰囲気下、37℃で1時間培養した。蛍光試薬液を廃棄後、線維芽細胞増殖培地2を導入し、5%CO2雰囲気下、37℃で1時間培養した。次に線維芽細胞増殖培地2を廃棄した後、再び新しい線維芽細胞増殖培地2を導入し、5%CO2雰囲気下、37℃で一晩培養を行った。また、実施例14と同様の手法で2102Ep細胞をCell Tracker Orangeで蛍光染色した。
次に、以下の手順によりNHDF細胞の回収、洗浄、シングルセル化を行った。まず、培養フラスコ中の線維芽細胞増殖培地2を廃棄してD−PBSを導入した後、細胞をリンスしてD−PBS液を廃棄した。次に、適当量のAccutase(イノベーティブセルテクノロジー製)を導入し、数分間放置することでNHDF細胞を剥離させ、50mLチューブへと回収した。細胞を遠心分離して沈降後、細胞ペレットを前述のMACSバッファにて懸濁し、再度遠心分離して上清を廃棄することで細胞を洗浄した。細胞洗浄操作を2回繰り返した後、MACSバッファで懸濁を行い、セルストレーナーで濾過することで凝集塊を除去して2.7x10^6個/mLの均一なNHDF細胞懸濁液を調製した。また、実施例14と同様の手法にて、2102Ep細胞を回収、洗浄、シングルセル化して、1.7x10^7個/mLの2102Ep細胞懸濁液を得た。
次に、このようにして調製した2.7x10^6個/mLのNHDF細胞懸濁液2.0mLと1.7x10^7個/mLの2102Ep細胞懸濁液600μLを混合し、スパイクテスト用のNHDF細胞と2102Ep細胞の混合細胞液を調製した。
次に、2.5mL容シリンジ(テルモ製)と注射針(テルモ製、22G)の間に目開き40μmのメッシュフィルター(日本BD製 セルストレーナチューブ蓋のメンブレンを取り出して使用)を装着したカラムを2本作製した。実施例9で作製した吸着剤E1を前述のMACSバッファで置換したのち、50%懸濁液を調製し、作製したカラムにそれぞれ2.0mL、4.0mLの50%懸濁液を添加し、吸着剤をカラムに充填した(吸着剤容量:それぞれ1.0mL、2.0mL)。
次にそれぞれのカラムを垂直に立てた状態で、上記の方法で調製したNHDF細胞と2102Ep細胞の混合細胞液を100μL、すなわちカラムあたり2.1x10^5個のNHDF細胞と3.9x10^5個の2102Ep細胞の条件で、カラム上部にアプライした。
次にカラム上部より、吸着剤容量が1.0mLのカラムにはMACSバッファを2.0mL、吸着剤容量が2.0mLのカラムにはMACSバッファを4.0mL導入し、針部からの流出液(それぞれ2.0mlと4.0ml)を別容器に回収した。実施例14と同様の手法での蛍光強度測定結果からそれぞれの流出細胞液中のNHDF細胞、2102Ep細胞の流出率(%)を「流出率(%)=カラムあたりの流出細胞数/導入細胞数」として算出した。
NHDF細胞および2102Ep細胞の細胞流出率を表13、細胞流出率のグラフを図27に示す。NHDF細胞と2102Ep細胞の混合細胞液を吸着剤E1にアプライした場合の、NHDF細胞の流出率はそれぞれ71%(吸着剤容量:1.0mL)、82%(吸着剤容量:2.0mL)であり、一方2102Ep細胞の流出率はそれぞれ19%(吸着剤容量:1.0mL)、15%(吸着剤容量:2.0mL)であった。以上の結果から、トヨパールHW−40ECにBC2LCNレクチンを固定化した吸着剤E1にNHDF細胞および2102Ep細胞の混合細胞液を通液した場合、「Fucα1−2Galβ1−3GlcNAcおよび/またはFucα1−2Galβ1−3GalNAcからなる構造を含む糖鎖」を有する細胞である2102Ep細胞のみが選択的に吸着分離できることが確認された。

比較例9 吸着剤A0へのNHDF細胞と2102Ep細胞のスパイク細胞の吸着実験
実施例2に記載の吸着剤A0を用いた以外は、実施例21と同様の方法で細胞吸着実験を行った。NHDF細胞および2102Ep細胞の細胞流出率を表13、細胞流出率のグラフを図27に示す。NHDF細胞と2102Ep細胞の混合細胞液を吸着剤A0にアプライした場合の、NHDF細胞の流出率はそれぞれ106%(吸着剤容量:1.0mL)、101%(吸着剤容量:2.0mL)、2102Ep細胞の流出率はそれぞれ91%(吸着剤容量:1.0mL)、84%(吸着剤容量:2.0mL)であった。HW−40ECにBC2LCNレクチンを固定化していない吸着剤である吸着剤A0にNHDF細胞および2102Ep細胞の混合細胞液を通液した場合、NHDF細胞および2102Ep細胞の両者共に吸着剤に結合せず素通りするために流出率が高くなり、細胞が選択的に吸着分離できないことが確認された。
Figure 2018134073

Claims (8)

  1. 以下の(a)または(b)のタンパク質が、水に不溶性の担体に固定化されていることを特徴とする、細胞の吸着剤。
    (a)配列番号1で示されるアミノ酸配列を含み、かつ、Fucα1−2Galβ1−3GlcNAcおよび/またはFucα1−2Galβ1−3GalNAcからなる構造を含む糖鎖に結合性を有するタンパク質。
    (b)配列番号1で示されるアミノ酸配列において、1若しくは複数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入、もしくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、Fucα1−2Galβ1−3GlcNAcおよび/またはFucα1−2Galβ1−3GalNAcからなる構造を含む糖鎖に結合性を有するタンパク質。
  2. 水に不溶性の担体に、親水性高分子が共有結合で固定されていることを特徴とする、請求項1に記載の吸着剤。
  3. 水に不溶性の担体の、水に膨潤させた状態での粒径が、100μm以上1000μm以下であることを特徴とする、請求項1に記載の吸着剤。
  4. 以下の(A)から(C)の工程を含む工程からなることを特徴とする、請求項1から3に記載の吸着剤の製造方法:
    (A)水に不溶性の担体に親水性高分子を共有結合で固定する工程、
    (B)工程(A)で得られた親水性高分子を共有結合で固定した担体に、請求項1の(a)または(b)に記載のタンパク質を固定化するための官能基を導入する工程、
    (C)工程(B)で得られた官能基を導入した担体に、請求項1の(a)または(b)に記載のタンパク質を固定化する工程。
  5. 請求項1から3に記載の吸着剤と、「Fucα1−2Galβ1−3GlcNAcおよび/またはFucα1−2Galβ1−3GalNAcからなる構造を含む糖鎖」を有する細胞を含む細胞混合物とを接触させる工程と、
    吸着剤に結合した「Fucα1−2Galβ1−3GlcNAcおよび/またはFucα1−2Galβ1−3GalNAcからなる構造を含む糖鎖」を有する細胞混合物中の細胞と、吸着剤に結合しない細胞混合物中の細胞とを分離する工程を含む工程からなることを特徴とする、細胞の分離方法。
  6. 請求項5に記載の方法において、吸着剤を充填してなるカラムを用いることを特徴とする、細胞の分離方法。
  7. 請求項5または6に記載の方法により、「Fucα1−2Galβ1−3GlcNAcおよび/またはFucα1−2Galβ1−3GalNAcからなる構造を含む糖鎖」を有する未分化細胞と分化細胞を含む細胞混合物から、未分化細胞を分離して分化細胞を精製する方法。
  8. 請求項1から3に記載の吸着材を充填してなるカラム。
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WO2011043061A1 (ja) * 2009-10-05 2011-04-14 キヤノン株式会社 光音響イメージング用造影剤、及び、それを用いた光音響イメージング方法
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WO2013128914A1 (ja) * 2012-02-28 2013-09-06 独立行政法人産業技術総合研究所 細胞の分化判定、細胞の分離、並びに誘導性多能性幹細胞及び分化細胞の製造のための方法

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