JP2018128079A - クラッチ装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】クラッチ装置を簡素化する。【解決手段】クラッチ装置7は、軸体10と、回転体20と、コイルばね30とを備えている。コイルばね30の第一端部31は、回転体20に設けられている第一座部19に固定されており、コイルばね30の第二端部32は、軸体10の外周側に設けられている第二座部12の外周面15に締まり嵌めの状態でかつ拡径方向に弾性変形可能として取り付けられている。軸体10に対して回転体20が一方向に回転すると、コイルばね30が捻られて弾性的に縮径し第二端部32と第二座部12との間の締め代が大きくなる。軸体10に対して回転体20が他方向に回転すると、コイルばね30が捻られて弾性的に拡径し第二端部32と第二座部12との間の締め代が小さくなって第二端部32と第二座部12との間の滑りを許容する。【選択図】 図1

Description

本発明は、クラッチ装置に関する。
例えば、自動車のエンジンの補機として用いられるオルタネータは、エンジンのクランクシャフトから回転力が伝達され駆動する構成となっている。つまり、オルタネータの回転軸にはプーリが取り付けられており、このプーリとクランクシャフト側のプーリとの間にベルトが架け渡されており、クランクシャフトの回転力がベルトを通じてオルタネータに伝達される構成となっている。
クランクシャフトの回転力は、エンジンのシリンダにおける爆発力が基となっているため、クランクシャフトの回転速度は変動する(以下、この変動を「回転変動」ともいう)。これに対して、オルタネータ側は、クランクシャフトの急激な回転変動に追従できず、クランクシャフトとオルタネータとの間で一時的に回転速度差が発生する。このような回転速度差は、ベルトをスリップさせたり、ベルトへ過大な負荷をかけたりし、異音の発生や寿命低下の原因となる。そこで、オルタネータ用のプーリ装置には、ベルトが掛けられるプーリ部を有する回転体と、軸体との間で回転力(トルク)を伝達したり遮断したりするための一方向クラッチと、コイルばねとが設けられている(例えば、特許文献1参照)。
図5において、プーリ部91を有する回転体90が加速するような回転変動が生じると(つまり、回転体90が軸体94に対して一方向に回転すると)一方向クラッチ92はロック状態となりコイルばね93が前記回転変動を吸収する。これに対して、プーリ部91を有する回転体90が減速するような回転変動が生じると(つまり、回転体90が軸体94に対して他方向に回転すると)一方向クラッチ92によって回転体90と軸体94との間におけるトルク伝達を遮断し(ロック解除状態)、軸体94に対して回転体90を空転させる。
特開2015−25483号公報
従来のクラッチ装置は、図5に示すように、プーリ部91を有する筒状の回転体90の径方向内側に一方向クラッチ92が設けられており、その径方向内側にコイルばね93が設けられ、このコイルばね93の径方向内側に軸体94が設けられている。そして、この軸体94に、オルタネータの回転軸(図示せず)が取り付けられている。
一方向クラッチ92は、内輪95、外輪96、これら内輪95と外輪96との間に複数形成されている楔状空間に設けられた係合子(円筒ころ)97、係合子97を保持する保持器98、及び係合子97を付勢する図外のばね等を有しており、さらに、この一方向クラッチ92の軸方向隣りには、内輪95と外輪96とを同心状に維持するための転がり軸受99が設けられている。
このように、従来のクラッチ装置の回転体90と軸体94との間には、コイルばね93の他に、前記のような一方向クラッチ92を備えており、この一方向クラッチ92は部品数が多い。この結果、従来のクラッチ装置は全体としての部品数が多く、組み立てが複雑となる。
そこで、本発明はクラッチ装置を簡素化することを目的とする。
本発明のクラッチ装置は、軸体と、当該軸体と同心状に設けられている回転体と、前記軸体と前記回転体との間に同心状に設けられているコイルばねと、を備え、前記コイルばねの第一端部は、前記回転体に設けられている第一座部に固定されており、前記コイルばねの第二端部は、前記軸体の外周側に設けられている第二座部の外周面に締まり嵌めの状態でかつ拡径方向に弾性変形可能として取り付けられており、前記軸体に対して前記回転体が一方向に回転すると前記コイルばねが捻られて弾性的に縮径し前記第二端部と前記第二座部との間の締め代が大きくなり、前記軸体に対して前記回転体が他方向に回転すると前記コイルばねが捻られて弾性的に拡径し前記第二端部と前記第二座部との間の締め代が小さくなって当該第二端部と当該第二座部との間の滑りを許容する。
このクラッチ装置によれば、例えば回転体が加速することで、軸体に対して回転体が一方向に回転するとコイルばねが一方向に捻られ、このコイルばねの第二端部が軸体の第二座部を更に巻き締める。このようにコイルばねが捻られることで軸体と回転体との間に生じる回転変動を吸収することができる。これに対して、例えば回転体が減速することで、軸体に対して回転体が他方向に回転するとコイルばねが逆に(他方向に)捻られて拡径し、このコイルばねの第二端部が軸体の第二座部を巻き締める力が弱くなり、第二端部と第二座部との間で滑りが生じ得る。以上のように、軸体に対して回転体が一方向に回転するとこれら軸体と回転体とを一体回転させることができ、軸体に対して回転体が他方向に回転すると前記滑りにより軸体に対して回転体を空転させることができ、従来のような係合子を有する一方向クラッチが無くても、このクラッチ装置はその機能を備えることができる。このため、クラッチ装置の簡素化が可能となる。
また、前記コイルばねの前記第一端部は前記第一座部に縮径不能かつ拡径不能として取り付けられているのが好ましく、この場合、コイルばねの第一端部を回転体の第一座部に嵌合により固定することが可能となり、第一端部の固定構造を簡素化することができる。
また、コイルばねの第二端部が締まり嵌めの状態で取り付けられている軸体の第二座部が、軸体の内の軸方向に長い軸本体部から径方向外側に突出している場合、軸体の製造(鍛造や切削)に多少手間を要する。そこで、前記軸体は、軸方向に長い軸本体部と、当該軸本体部と別体であり当該軸本体部と一体回転可能に設けられている前記第二座部と、を有しているのが好ましい。この構成によれば、第二座部を軸本体部と別に加工(製造)し、第二座部を軸本体部と組み合わせて軸体を得ることが可能となり、軸体の製造が容易となる。
また、軸体の第二座部の外周面は、コイルばねの第二端部との間の滑りによって摩耗することが考えられる。そこで、前記第二座部の少なくとも外周面には耐摩耗処理が施されているのが好ましい。前記耐摩耗処理として、コーティング等の表面処理や、焼入れ等の熱処理を採用することができる。
本発明によれば、従来のような係合子を有する一方向クラッチが不要となり、クラッチ装置を簡素化することが可能となる。
本発明のクラッチ装置の実施の一形態を示す断面図である。 クラッチ装置の軸方向一方側(図1において左側)を示す断面図である。 クラッチ装置の軸方向他方側(図1において右側)を示す断面図である。 別の形態のクラッチ装置を示す断面図である。 従来のクラッチ装置の断面図である。
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明のクラッチ装置の実施の一形態を示す断面図である。図1に示すクラッチ装置7は、図外のオルタネータの回転軸に取り付けられるものである。クラッチ装置7は、軸体10と、回転体20と、コイルばね30とを備えている。
軸体10は筒状の部材であり、その内周側において図外のオルタネータが有する回転軸と連結される。回転体20は、筒状の部材であり、軸体10の径方向外側に設けられている。軸体10と回転体20とは同心状に配置されており、この配置とするために、クラッチ装置7は更に転がり軸受40と滑り軸受50とを備えている。
コイルばね30は、軸体10と回転体20との間に設けられており、これら軸体10及び回転体20と同心状に設けられている。後にも説明するが、コイルばね30の軸方向一方側(図1では左側)の端部(この端部を「第一端部31」という。)が、回転体20の一部(第一座部19)に取り付けられており、コイルばね30の軸方向他方側(図1では右側)の端部(この端部を「第二端部32」という。)が、軸体10の一部(第二座部12)に取り付けられている。本実施形態のコイルばね30は、クラッチ装置7に取り付けられる前の自然状態で、内径及び外径共に軸方向に沿って一定である。クラッチ装置7への取り付け完了状態では、コイルばね30は、軸体10と回転体20との間において、軸方向に圧縮された状態となっている。コイルばね30の巻き方向は、回転体20の回転方向と一致している。
回転体20は、軸方向に長い筒状部21と、この筒状部21の軸方向一方側の端部21aから径方向内側に向かって延びて設けられている円環部22と、この円環部22の径方向内側の端部22aから軸方向他方側に向かって延びて設けられている内筒部23とを有している。筒状部21の外周側の一部に、図外のベルトを掛けるプーリ部24が設けられている。
筒状部21の内周側形状について説明する。図2は、クラッチ装置7の軸方向一方側(図1において左側)を示す断面図である。図2において、筒状部21の軸方向一方側の一部(以下、この一部を「取り付け筒部21b」という)の内径D1は、この取り付け筒部21b以外の部分(以下、この部分を「本体筒部21c)という。)の内径D2よりも小さくなっている(D1<D2)。取り付け筒部21bの内周面、本体筒部21cの内周面、及び内筒部23の外周面は、それぞれクラッチ装置7の中心軸を中心とする円筒面により構成されている。
取り付け筒部21bと、円環部22と、内筒部23とによって囲まれた領域に、コイルばね30の第一端部31が取り付けられている。コイルばね30が自然状態で、第一端部31における外径D3は、取り付け筒部21bの内径D1よりも僅かに大きくなっており(D3>D1)、また、第一端部31における内径D4は、内筒部23の外径D5よりも僅かに小さくなっている(D4<D5)。これにより、第一端部31は、外周側の取り付け筒部21b及び内周側の内筒部23それぞれに対して締まり嵌めの状態となっており、第一端部31は径方向に圧縮された状態となっている。このため、第一端部31は、第一座部19との間で相対回転が不能となっており、更に、第一端部31は、縮径不能かつ拡径不能となって回転体20に固定された状態となる。また、第一端部31は、円環部22に軸方向から接触しており、前記のとおりコイルばね30は軸方向に圧縮した状態で取り付けられていることから、コイルばね30の軸方向の弾性力を円環部22が受けている。以上より、取り付け筒部21b、円環部22、及び内筒部23が、コイルばね30の第一端部31を回転体20に取り付けるための第一座部19となっている。
図1において、軸体10は、軸方向に長い軸本体部11と、この軸本体部11の途中部に設けられている第二座部12とを有している。図1に示す形態では、軸本体部11と第二座部12とは一体であり、第二座部12は軸本体部11から径方向外側に突出している。第二座部12は、外径が小さい小径部13と、この小径部13よりも外径が大きい大径部14とを有しており、第二座部12は段付き形状を有している。小径部13の外周面15は、クラッチ装置7の中心軸を中心とする円筒面により構成されている。
図3は、クラッチ装置7の軸方向他方側(図1において右側)を示す断面図である。第二座部12が有する小径部13の外径D6は、コイルばね30の第二端部32の内径D7よりも僅かに大きくなっている(D6>D7)。これにより、第二端部32は、内周側の第二座部12(小径部13)に対して締まり嵌めの状態となっている。第二端部32の外径D8は、回転体20の本体筒部21cの内径D2よりも充分に小さく、第二端部32と本体筒部21cとの間には筒状の空間が設けられており、コイルばね30の第二端部32側は拡径方向に弾性変形することが可能となっており、また、このように弾性変形しても本体筒部21cには非接触である。なお、コイルばね30において(図1参照)、回転体20の取り付け筒部21bの径方向内側の部分(第一端部31を含む部分)を除く他の部分では、弾性変形して拡径しても、本体筒部21cに対して非接触となっている。
コイルばね30の第二端部32は、第二座部12の大径部14に軸方向から接触しており、前記のとおりコイルばね30は軸方向に圧縮した状態で取り付けられていることから、コイルばね30の軸方向の弾性力を大径部14が受けている。
以上のように、コイルばね30の第一端部31は、回転体20の内周側に設けられている第一座部19に固定されており、また、コイルばね30の第二端部32は、軸体10の外周側に設けられている第二座部12の外周面15に締まり嵌めの状態で(つまり、密着して嵌合して)かつ拡径方向に弾性変形可能として取り付けられている。
転がり軸受40は、回転体20と軸体10との間に設けられており、回転体20と軸体10との相対回転を自在としている。転がり軸受40は、回転体20に固定されている外輪41、軸体10に固定されている内輪42、これら外輪41と内輪42との間に介在している複数の転動体、これら転動体を保持している環状の保持器44、及びシール45を備えている。前記転動体は玉43であり、本実施形態の転がり軸受40は深溝玉軸受である。転がり軸受40は、回転体20と軸体10との間に作用する径方向の荷重を支持可能であると共に、回転体20と軸体10との間に作用する軸方向の荷重も支持可能である。
前記のとおり、コイルばね30は軸方向に圧縮された状態となって回転体20(第一座部19)と軸体10(第二座部12)との間に設けられていることから、このコイルばね30によって軸体10と回転体20との間に軸方向の荷重が作用している。そこで、この軸方向の荷重は転がり軸受40によって支持されている。この構成により、軸体10と回転体20とがガタつくのを防ぐことができる。コイルばね30は、第一座部19と第二座部12との間において、軸方向長さが一定となるように拘束されていることから、回転体20と軸体10との間に生じるトルクによって、コイルばね30は巻き方向に捻られると縮径方向に弾性変形し、また、巻き方向と反対方向に捻られると拡径方向に弾性変形する。
滑り軸受50は、回転体20と軸体10との間に設けられており、回転体20と軸体10との相対回転を自在としている。本実施形態の滑り軸受50は、回転体20の内筒部23の径方向内側に設けられている環状のブッシュにより構成されている。滑り軸受50は、回転体20と軸体10との間の径方向の荷重を支持可能である。
以上の構成を備えているクラッチ装置7の機能について説明する。回転体20が一定速度で一方向に回転している場合、この回転体20のトルクはコイルばね30を介して軸体10に伝えられ、軸体10も回転体20と同じ速度で同じ方向に回転する(この状態を「定常回転状態」という。)。この定常回転状態では、コイルばね30は前記トルクに応じた捻り量で捻られており、非回転状態と比較して僅かに弾性変形し縮径している。この際、コイルばね30の第二端部32と軸体10の第二座部12とは締め代を有して嵌合しており、第二端部32が第二座部12を締め付ける力によってこれら第二端部32と第二座部12との間には周方向の滑りが生じず、これらは一体回転する。
定常回転状態から、回転体20が加速された場合、回転体20は軸体10に対して一方向(回転方向)に更に回転しようとする。このような加速側に回転変動が生じると(これを「加速回転状態」という。)、加速により増加したトルクに応じた捻り量でコイルばね30は更に捻られ、定常回転状態と比較して僅かに弾性変形し更に縮径する。このため、第二端部32が第二座部12を締め付ける力によってこれら第二端部32と第二座部12との間には周方向の滑りが生じず、これらは一体回転を継続する。このようにコイルばね30が縮径すると締め付け力の増大によって第二端部32と第二座部12との間の摩擦力(面圧)が大きくなり第二端部32と第二座部12とが相対回転不能な状態(つまり、ロック状態)となる。そして、回転体20が加速されることによる回転変動は、コイルばね30が弾性変形することによって吸収されており、プーリ部24に掛けられている図外のベルトをスリップさせたり、このベルトへ過大な負荷をかけたりするのを防ぐことが可能となる。以上のようにして、加速側の回転変動がコイルばね30によって吸収される。
定常回転状態(又は加速回転状態)から、回転体20が減速された場合、回転体20は軸体10に対して他方向に回転しようとする。このような減速側に回転変動が生じると(これを「減速回転状態」という。)、コイルばね30は加速回転状態の場合と反対方向(つまり、巻き方向と反対の方向)に捻られ、定常回転状態と比較して弾性変形し拡径する。すると、第二端部32においても拡径することから、第二座部12との間における締め代が小さくなり、第二端部32による第二座部12への締め付け力が(定常回転状態よりも)小さくなって、第二端部32と第二座部12との間において周方向の滑りが生じる。このようにコイルばね30が拡径すると前記締め付け力の減少によって第二端部32と第二座部12との間の摩擦力(面圧)が小さくなると、コイルばね30と一体である回転体20と軸体10とは相対回転可能な状態(つまり、ロック解除状態)となる。つまり、回転体20は軸体10に対して空転する。このように、回転体20は、減速すると軸体10に対して空転することができるので、減速に起因する回転変動によってプーリ部24に掛けられている図外のベルトがスリップしたり、このベルトへ過大な負荷が作用したりするのを防ぐことが可能となる。以上のようにして、減速側の回転変動についてもコイルばね30によって解消される。
以上、説明したように、本実施形態のクラッチ装置7によれば、回転体20が軸体10に対して一方向(コイルばね30の巻き方向)に回転するとコイルばね30が捻られて弾性的に縮径し、第二端部32と第二座部12との間の締め代が大きくなり、第二端部32が第二座部12を巻き締める。これに対して、回転体20が軸体10に対して他方向に回転するとコイルばね30が捻られて弾性的に拡径し、第二端部32と第二座部12との間の締め代が小さくなって、第二端部32と第二座部12との間の滑りが許容される構成となる。
この構成を備えている本実施形態のクラッチ装置7によれば、回転体20が加速することでコイルばね30が一方向に捻られ、このコイルばね30の第二端部32が軸体10の第二座部12を更に巻き締める。そして、コイルばね30が捻られることで軸体10と回転体20との間に生じる回転変動を吸収することができる。これに対して、回転体20が減速すると、コイルばね30が逆に(他方向に)捻られて拡径し、このコイルばね30の第二端部32が軸体10の第二座部12を巻き締める力が弱くなり、第二端部32と第二座部12との間で滑りが生じ得る。
すなわち、回転体20が軸体10に対して一方向に回転するとこれら回転体20と軸体10とをばね性を持たせて一体回転させることができ、そして、回転体20が軸体10に対して他方向に回転すると前記滑りにより軸体10に対して回転体20を空転させることができる。この結果、図5に示すような従来の係合子(円筒ころ97)を有する一方向クラッチ92が無くても、本実施形態のクラッチ装置7は同様の機能を備えることができる。よって、クラッチ装置7の構成を簡素化することが可能となり、部品数が少なく、組み立ても容易であり、コストダウンに貢献することができる。
図4は、別の形態のクラッチ装置7を示す断面図である。軸体10は、軸方向に長い軸本体部11と、第二座部12とを有している点で図1に示すクラッチ装置7と同じであるが、図4に示すクラッチ装置7では、軸本体部11の外周面は略直線状であり、第二座部12は軸本体部11と別体である。第二座部12は、軸本体部11と別体に製造されているが、軸本体部11と一体回転可能として設けられている。第二座部12は環状の部材であり、図4に示す形態では、この第二座部12を軸本体部11の外周側に締め代を有して外嵌させており、これにより、軸本体部11と第二座部12とは相互間で滑りが無い状態で一体回転可能となっている。なお、軸本体部11と第二座部12との結合は、機械要素を用いる等の他の手段とすることも可能である。軸体10が軸本体部11と第二座部12とに分割されている点以外は、図4に示すクラッチ装置7と図1に示すクラッチ装置7とは同じであり、同じ点については説明を省略する。
図4に示すクラッチ装置7によれば、第二座部12を軸本体部11と別に加工(製造)し、第二座部12を軸本体部11と組み合わせて軸体10を得ることが可能となる。なお、図1に示す軸体10の場合、環状である第二座部12が軸本体部11と連続しており径方向外側に突出した形状であるため、この軸体10を製造するために鍛造及び切削において多少手間(工数)を要する。これに対して、図4に示す軸体10では、加工量が少なくて済み、軸体10の製造が容易となる。
ここで、コイルばね30の第二端部32と第二座部12との締め代の大小は、前記滑りを開始させるトルク(空転トルク)に影響を与える。つまり、前記締め代が小さい場合、コイルばね30と軸体10との間に作用するトルクが小さくても前記滑りが生じ、前記締め代が大きい場合、コイルばね30と軸体10との間に作用するトルクを大きくしないと、前記滑りが生じない。そこで、図1及び図4に示す各形態において、第二座部12(小径部13)の外径D6(図3参照)を変更することによって、前記のような滑り開始のトルク(空転トルク)の調整を行うことができる。特に図4に示す形態の場合、外径D6が様々である第二座部12を複数製造し、これら複数の第二座部12の内の一つを軸本体部11に組み合わせることで、前記トルクの調整が容易となる。また、滑り開始のトルク(空転トルク)の調整を、コイルばね30の第二端部32の内径D7(図3参照)を変更することにより行ってもよい。
図1及び図4に示す各形態において、前記のとおり空転トルクが作用するまでは、コイルばね30が弾性的に拡径しても、回転体20と軸体10との間の空転は生じない。このため、図1及び図4の各形態のクラッチ装置7は、本実施形態のように回転体20側からトルクの入力がある機器のみならず、軸体10側からもトルクの入力がある機器にも適用可能となる。例えば、このような機器としてはスタータ機能を備えるオルタネータである。
図1及び図4に示す各形態において、コイルばね30の材質をばね鋼とし、軸体10の材質を炭素鋼とすることができ、この場合、第二座部12(小径部13)の外周面15が、コイルばね30の第二端部32との間の滑りによって摩耗することが考えられる。そこで、各形態において、第二座部12の少なくとも外周面15には、耐摩耗処理が施されている。耐摩耗処理として、コーティング等の表面処理や、焼入れ等の熱処理を採用することができる。なお、図4に示す形態において、前記熱処理を施す場合、第二座部12が軸本体部11と別体であるため、この第二座部12のみを熱処理すればよく、効率的である。
以上のように、図1及び図4それぞれに示すクラッチ装置7によれば、回転体20と軸体10との間に作用するトルクの大きさに応じたコイルばね30の径の変化を利用して、従来(図5参照)のような係合子97を有する一方向クラッチ92の機能を、コイルばね30に持たせることができ、この結果、クラッチ装置7の構成を簡素化することが可能となる。
特に、本実施形態では、回転体20の第一座部19を構成する各部(取り付け筒部21b、円環部22、及び内筒部23)によって囲まれて形成された凹部に、コイルばね30の第一端部31は嵌め入れられており、これにより、この第一端部31は第一座部19に縮径不能かつ拡径不能となっている。このような構成を採用していることで、第一端部31の回転体20への固定構造は簡素化される。
なお、この固定構造は、他の手段とすることも可能である。例えば、図示しないが、ピンやボルト等によって固定してもよく、また、コイルばね30の素線を曲げて、これを回転体20に設けた凹部(第一座部19)に挿入する等とすることができる。
以上のとおり開示した実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではない。つまり、本発明のクラッチ装置は、図示する形態に限らず本発明の範囲内において他の形態のものであってもよい。
例えば、前記実施形態では、転がり軸受40を玉軸受として説明したが、転動体をころとしたころ軸受としてもよい。
また、軸体10と回転体20とを相対回転可能として支持している軸受に関して、前記実施形態では、転がり軸受40と滑り軸受50との組み合わせとしたが、これ以外であってもよく、図1に示す軸方向一方側(左側)の軸受を転がり軸受としたり、図1に示す軸方向他方側(右側)の軸受を滑り軸受としたりすることができる。
本発明のクラッチ装置をオルタネータに設けた場合を説明したが、その他の機器に適用することもできる。
7:クラッチ装置 10:軸体 11:軸本体部
12:第二座部 15:外周面 19:第一座部
20:回転体 30:コイルばね 31:第一端部
32:第二端部

Claims (4)

  1. 軸体と、当該軸体と同心状に設けられている回転体と、前記軸体と前記回転体との間に同心状に設けられているコイルばねと、を備え、
    前記コイルばねの第一端部は、前記回転体に設けられている第一座部に固定されており、
    前記コイルばねの第二端部は、前記軸体の外周側に設けられている第二座部の外周面に締まり嵌めの状態でかつ拡径方向に弾性変形可能として取り付けられており、
    前記軸体に対して前記回転体が一方向に回転すると前記コイルばねが捻られて弾性的に縮径し前記第二端部と前記第二座部との間の締め代が大きくなり、
    前記軸体に対して前記回転体が他方向に回転すると前記コイルばねが捻られて弾性的に拡径し前記第二端部と前記第二座部との間の締め代が小さくなって当該第二端部と当該第二座部との間の滑りを許容する、クラッチ装置。
  2. 前記コイルばねの前記第一端部は前記第一座部に縮径不能かつ拡径不能として取り付けられている、請求項1に記載のクラッチ装置。
  3. 前記軸体は、軸方向に長い軸本体部と、当該軸本体部と別体であり当該軸本体部と一体回転可能に設けられている前記第二座部と、を有している請求項1又は2に記載のクラッチ装置。
  4. 前記第二座部の少なくとも外周面には耐摩耗処理が施されている、請求項1〜3のいずれか一項に記載のクラッチ装置。
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