JP2018126220A - 電気刺激装置、電気刺激方法およびプログラム - Google Patents

電気刺激装置、電気刺激方法およびプログラム Download PDF

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スクサコン ブンヨン
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Abstract

【課題】生体表面から任意の深さにある特定の筋肉に対して筋収縮を容易に誘発することができる電気刺激装置を提供する。
【解決手段】電気刺激装置100は、各チャンネルの正電極部およびグラウンド電極部のそれぞれの基準位置を決定する位置決定部112と、正電極部とグラウンド電極部との面積比を決定する電極面積比決定部115と、各チャンネルで、決定された面積比にしたがって、(a)正電極部の基準位置を起点にして配列されている少なくとも1つの電極からなる電極群を、正電極部として電極アレイ120から選択し、(b)グラウンド電極部の基準位置を起点にして配列されている少なくとも1つの電極からなる電極群を、グラウンド電極部として電極アレイ120から選択する電極選択部116と、第1の電極部対および第2の電極部対のそれぞれに互いに異なる周波数の電流を同時に印加する生成する電流出力部120とを備える。
【選択図】図16

Description

本開示は、電気によって筋肉を刺激する装置、方法およびプログラムに関する。
誘発的に筋肉を収縮させる方法として、外部装置による電気刺激を筋肉に与える方法(Electrical Mascular Stimulation:EMS)が知られている。例えば、この方法では、生体表面の電極から電気刺激を印加すると、興奮閾値の低い運動神経が刺激され、その興奮が筋肉に伝わることで結果として筋肉が収縮する。電気刺激の強度を上げると、一定レベルまでは筋収縮の強度も上がるという特性がある。ただし、電気刺激により、運動神経の近傍にある感覚神経も同時に刺激されるために、刺激強度が強いとユーザが痛みを感じる。そこで、ユーザが耐えられる最大の刺激強度を求めて、その80%程度以下の強度の電気刺激が用いられることが多い。
筋電気刺激の目的の1つは、ユーザに少ない負担で運動をさせることである。特許文献1では、大腿部に対して4−20Hzのパルス状の電気刺激を印加することで、筋収縮を誘発し、筋肥大をさせる技術を開示している。心肺や関節に負担をかけずに運動ができるため、特に整形外科的疾患、糖尿病性合併症または心血管系合併症などの臓器障害のあるユーザに対して効果的であるとされている。
国際公開第2009/072437号
しかしながら、上記特許文献1の技術では、生体表面から任意の深さにある特定の筋肉に対して筋収縮を誘発することが困難であるという課題がある。
そこで、本開示は、かかる課題に鑑みてなされたものであって、生体表面から任意の深さにある特定の筋肉に対して筋収縮を容易に誘発することができる電気刺激装置などを提供する。
本開示の一態様に係る電気刺激装置は、ユーザの刺激対象筋を決定する刺激筋決定部と、前記ユーザに取り付けられる複数の電極と、前記刺激対象筋および前記複数の電極のそれぞれの位置を示すデータベースに基づいて、前記刺激対象筋に筋収縮を誘発させる干渉電流を生成するための第1の電極部対および第2の電極部対のそれぞれに含まれる正電極部およびグラウンド電極部のそれぞれの基準位置を決定する位置決定部と、前記正電極部と前記グラウンド電極部との面積比を決定する電極面積比決定部と、前記第1の電極部対および前記第2の電極部対のそれぞれで、決定された前記面積比にしたがって、(a)前記正電極部の前記基準位置を起点にして前記刺激対象筋の長手方向に沿って配列されている少なくとも1つの電極からなる電極群を、前記正電極部として前記複数の電極から選択し、(b)前記グラウンド電極部の前記基準位置を起点にして前記刺激対象筋の長手方向に沿って配列されている少なくとも1つの電極からなる電極群を、前記グラウンド電極部として前記複数の電極から選択する電極選択部と、前記第1の電極部対および前記第2の電極部対のそれぞれに互いに異なる周波数の電流を同時に印加して干渉させることによって前記干渉電流を生成する電流出力部とを備える。
なお、これらの包括的または具体的な態様は、システム、方法、集積回路、コンピュータプログラムまたはコンピュータ読み取り可能なCD−ROMなどの記録媒体で実現されてもよく、システム、方法、集積回路、コンピュータプログラムおよび記録媒体の任意な組み合わせで実現されてもよい。
本開示の電気刺激装置は、生体表面から任意の深さにある特定の筋肉に対して筋収縮を容易に誘発することができる。
図1は、電極の大きさと電流密度の関係を模式的に示す図である。 図2は、大腿部の生体モデルを示す図である。 図3は、大腿部の生体モデルにおける構成と各パラメータとを示す図である。 図4は、想定される電流の伝導経路を示す図である。 図5は、シミュレーション結果を示す図である。 図6は、実験のために大腿部に配置された電極の位置を示す図である。 図7は、電極に接続されるケーブルの分配の一例を示す図である。 図8は、電気刺激の実験結果を示す図である。 図9は、実施の形態における電気刺激装置の構成および利用環境の例を示す図である。 図10は、実施の形態における電子制御部110のハードウェアの構成の一例を示す図である。 図11は、実施の形態における電気刺激装置の機能構成の一例を示すブロック図である。 図12は、実施の形態におけるデータベースの一例を示す図である。 図13は、実施の形態における他のデータベースの一例を示す図である。 図14は、実施の形態におけるパンツをユーザが装着したときの、左大腿部の横断面を示す図である。 図15は、実施の形態における電気刺激装置の処理動作を示すフローチャートである。 図16は、本開示の一態様に係る電気刺激装置の機能構成を示すブロック図である。 図17は、本開示の一態様に係る電気刺激装置の処理動作を示すフローチャートである。
(本開示の基礎となった知見)
筋収縮を誘発するための電気刺激方法には、低周波刺激法と干渉電流刺激法とがある。低周波刺激法では、運動神経が反応する周波数帯である約1kHz以下の周波数の電流を印加する。この周波数は感覚神経も反応する周波数帯に含まれることから、その周波数の電流による刺激は、痛みを感じやすい。また、その周波数の電流は、電流伝播経路にある全ての神経を興奮させるため、深層筋のみを収縮させることはできない。一方、干渉電流刺激法では、運動神経が反応しにくい周波数帯(たとえば2kHz以上)の2つ以上の周波数の電流を同時に印加し、生体内で生成した干渉電流(干渉波ともいう)によって神経を興奮させる。搬送波の周波数の電流では、感覚神経が反応しにくいことから痛みを感じにくい。そこで、本開示の発明者らは、干渉電流が生成される領域である干渉波生成領域の深さ方向を制御できれば、深層筋のみの収縮を誘発できると考えた。以下で、干渉波生成領域の深さ方向の制御方法について述べる。
ここで、電気刺激のための電流を印加する電極の大きさによって電流密度が変化することが知られている。
図1に、電極の大きさと電流密度の関係を模式的に示す。図1の(a)に示す例の場合、正電極と負電極(すなわちグラウンド電極)が同じ大きさであるため、両電極のそれぞれの周辺の電流密度は同じである。図1の(b)に示す例の場合、正電極が負電極より大きいため、正電極の周辺における電流密度が軽減される。また、図1の(c)に示す例の場合、それぞれ負電極と同じサイズの2つ正電極を使用するため、2つの正電極の周辺では電流密度が分配され、一つの正電極の周辺における電流密度が軽減される。
また、電極面積が大きい場合には、電流密度と、皮膚のインピーダンスとが小さく、生体に電流を与えても不快感が少ない。逆に、電極面積が小さい場合には、電流密度と、皮膚のインピーダンスとが大きいため、生体に電流を与えると不快感が大きい。さらに、生体に電流を与える場合に、電極面積が変わると電流の伝導経路が変わると考えられる。
以上の理由で、発明者らは、電極面積を変えると、電流密度および電流の伝導経路が変わることに着目し、その電極面積を干渉波生成領域の制御に利用できないかと考えた。
<実験等の説明>
発明者らは、前記の仮説を確認するために、2つのアプローチで干渉波生成領域を推定した。1つ目は、生体モデルを用いたシミュレーション(具体的には電磁界シミュレーション)による推定である。皮膚、脂肪、筋肉および骨からなる4層構造において各組織の導電率を反映させた生体モデルを構築し、有限要素法を用いて干渉波の電流密度を調べた。2つ目は、干渉電流を印加した場合に誘発される運動のパターンと、運動神経の解剖学的位置とに基づく推定である。つまり、電流の印加に用いられる電極の位置をずらしながら干渉波を生成し、それぞれの電極配置パターンと、その電極配置パターンにおける誘発運動と対応付けた。なお、電極配置パターンは、正極および負極のそれぞれで、複数の電極のうちの、電流の印加に用いられる少なくとも1つの電極のそれぞれの配置のパターンである。
<シミュレーション>
上肢および下肢のそれぞれは、大まかに皮膚、脂肪、筋肉および骨のそれぞれの層からなる4層構造になっており、組織ごとに導電率が異なる。導電率は、干渉波生成領域に影響する。そこで、発明者らは、上述の4層のそれぞれの導電率を考慮した大腿部の生体モデルを構築した。
図2に、構築した大腿部の生体モデルを示す。生体モデルは円柱型であって、その生体モデルの縦方向の長さは300mmであり、全体の横断面の直径は160mmである。また、生体モデルでは、直径32mmの大腿骨が図2に示すように大腿部の内側に通っている。また、一番外側の皮膚層の厚みは1mmであり、その下にある脂肪層の厚みは4mmである。また、簡易化のため、生体モデルでは、大腿部における複数の筋肉を一つにまとめ、神経および血管等は考慮されていない。
図3に、生体モデルの構成と各パラメータとを示す。
生体モデルでは、皮膚層の導電率および要素数は、0.05S/mおよび37,076であり、脂肪層の導電率および要素数は、0.02S/mおよび38,364である。また、筋肉層の導電率および要素数は、0.38S/mおよび179,799であり、骨の導電率および要素数は、0.05S/mおよび16,096である。
干渉波を生成するために、干渉型電気刺激装置を用いて、2チャンネルのうちの一方のチャンネルの電極対(正電極と負電極からなる電極対)に300Hzの電流を印加し、他方のチャンネルの電極対に301Hzの電流を印加した。これにより、1Hzの干渉波を生成した。図2に示すように、2チャンネルのそれぞれの正電極を大腿直筋に近い皮膚表面に貼付し、2チャンネルのそれぞれの負電極をハムストリングスに近い皮膚表面に貼付した。また、電極の面積の違いによって生成される干渉波がどのように変化するかを調べるために、2つの電極面積比でシミュレーションした。まずは、1つ目の電極面積比では、正電極と負電極の面積を同じにし(電極面積比1:1)、次に2つ目の電極面積比では、正電極の面積を負電極の3倍(電極面積比3:1)にした。つまり、2つ目の電極面積比では、正電極を図2に示すように大腿直筋の長手方向(円柱形の大腿部の高さ方向)と同じ方向に拡大した。この方向への拡大は、他の筋肉に影響を与えないようにするためである。
図4に、想定される電流の伝導経路を示す。電気刺激の対象部位は、右の大腿部の大腿四頭筋とハムストリングスである。図4に示すように、大腿四頭筋側の皮膚表面には2つの正電極を貼付し、ハムストリングス側の皮膚表面にはグラウンド電極(すなわち負電極)を貼付し、図4に示す伝導経路を想定した。
<シミュレーション結果>
図5に、シミュレーション結果を示す。図5の(a1)および(b1)は、電極面積比1:1の場合における大腿部の横方向および縦方向の断面図を示し、図5の(a2)および(b2)は、電極面積比3:1の場合における大腿部の横方向および縦方向の断面図を示す。グレースケールは、干渉波の強さを表しているため、シミュレーション結果からは、生成された干渉波の場所及び強度が視覚的に確認できる。図5の(a1)および(b1)に示す電極面積比1:1のシミュレーション結果では、正電極側と負電極側のそれぞれで、筋肉の表面から深さ約16mmまでの範囲に最も強い干渉波が両チャンネル間に生成され、深くなるにつれて干渉波の強度が弱くなることが確認できる。しかしながら、骨の周りには強い干渉波が生成されていることが確認できる。また、図5の(a2)および(b2)に示す電極面積比3:1のシミュレーション結果では、負電極側において、電極面積比1:1の場合と同様に強い干渉波が生成されている。一方、正電極側における干渉波は、正電極の拡大方向に沿って広い範囲で生成されている。しかし、正電極から深さ方向に離れるほど、その位置における干渉波は、電極面積比1:1と比べると大きく減少し、さらに、その正電極から離れた位置付近および骨周りには干渉波の強さが減少したことを確認できる。これは電極面積の拡大に伴い、電流密度が減少し、干渉波が弱くなると考えられる。
図5の(a3)および(b3)に、電極面積比1:1と電極面積比3:1との電気刺激の効果の比較結果を示す。つまり、図5の(a3)および(b3)は、電極面積比3:1の干渉波の強度から、電極面積比1:1の干渉波の強度を減算することによって求められた、大腿部の横方向および縦方向のそれぞれの断面における差分強度分布である。グレースケールは、生成された干渉波の差分強度を表し、色が濃いほどその色の位置では電極面積比3:1の方が干渉波が強く、色が薄いほどその色の位置では電極面積比1:1の方が干渉波が強いことを表す。
この差分強度分布からは、正電極の面積を3倍に増やすと、正電極の直下から骨までの範囲における干渉波の強度が減少することが分かった。なお、筋繊維方向(円柱型の大腿部の高さ方向)には干渉波生成領域が拡大した。つまり、正電極の面積を拡大することによって、正電極の反対側にあるより小さい負電極側に強い干渉波が生成されることが分かった。このことは、干渉波生成領域を制御するために、電極の面積が大事なパラメータであり、電極を適切な面積にすることによって選択的に筋肉を刺激できる可能性を示した。
<実験>
上述のシミュレーションでは、電極面積比1:1に比べて電極面積比3:1では、拡大された電極側の電流密度が低下し、面積が変わらなかった電極側の電流密度が増大することを示した。このシミュレーションの結果を検証するために、本発明者らは、被験者の大腿部に実際に電流を印加する被験者実験を実施した。
実験には、本発明者らが試作した、複数の周波数の電流を同時に印加可能な干渉型電気刺激装置を用いた。この干渉型電気刺激装置は、電流源であり、2kHzから15kHzまでの周波数であって、0mAから50mAまでの正弦波の電流を4チャンネル生成できる。今回の実験では、2チャンネル用いて干渉波を生成した。1Hzの干渉電流を生体内で生成するために、2チャンネルのそれぞれの搬送波の周波数を3000Hzと3001Hzに設定した。
被験者は、健常な男性2名(平均年齢34歳)であった。被験者Aは、身長170cm、体重60kg、大腿部の周囲が48cmであり、被験者Bは、身長172cm、体重85kg、大腿部の周囲が56cmであった。
図6に、実験のために大腿部に配置された電極の位置を示す。
刺激対象部位は大腿部であり、立位の状態において電流を印加した。図6に示すように、大腿四頭筋に、1列あたり6枚の電極を2列配置し、ハムストリングスに、1列あたり4枚の電極を2列配置した。このように電極を配置することによって、電極の面積比だけでなく、電極の貼付け位置の影響を調べることが可能となる。なお、図6に示すように、各チャンネルの正極側における3番目の電極[3]は、被験者の大腿部の長手方向の中心位置である。長手方向の電極間の間隔を1mmとし、チャンネルCH1とチャンネルCH2との間の電極間隔が、被験者の大腿部の中心から約26度となるように、各電極を配置した。各電極には、Ag/AgClの電極端のゲルシートを用いた(サイズ18×36mm,日本光電製)。
被験者ごとに筋収縮が誘発される電流値が異なるため、電流値は被験者ごとに一定とした。被験者Aには12mAの電流値を設定し、被験者Bに対しては17mAの電流値を設定した。
上述のシミュレーションと同様に、電極面積比1:1と電極面積比3:1にしたがって電流を印加して、筋肉の誘発運動を比較した。
図7に、電極に接続されるケーブルの分配の一例を示す。
電極面積比3:1を再現するために、図7に示すように正電極側のケーブルを3本に分配した。電気刺激をする際には、少なくとも1つの正電極からなる正電極部と、少なくとも1つの負電極からなる負電極部との中心が同じ高さになるように、各電極を選択する。具体的には、電極面積比1:1では、電流の印加に用いられる正電極部と負電極部からなる電極部対として、{電極[2],電極[1]}、{電極[3],電極[2]}、{電極[4],電極[3]}、または{電極[5],電極[4]}を選択した。ここで、{電極[n],電極[m]}は、チャンネルCH1およびCH2のそれぞれの正電極部に含まれるn番目の正電極と、チャンネルCH1およびCH2のそれぞれの負電極部に含まれるm番目の負電極とを示す。同様に、電極面積比3:1では、正電極部と負電極部との中心が同じ高さになるように、電流の印加に用いられる正電極部と負電極部からなる電極部対として、{(電極[1],電極[2],電極[3]),電極[1]}、{(電極[2],電極[3],電極[4]),電極[2]}、{(電極[3],電極[4],電極[5]),電極[3]}、または{(電極[4],電極[5],電極[6]),電極[4]}を選択した。
このように、実験では、電流の印加に用いられる正電極部に含まれる正電極の数を3つまたは1つに切り替えることによって、正電極部の面積を拡大または縮小し、電極面積比を1:1と3:1とに切り替えた。
また、大腿部の表面から筋収縮を目視することによって、筋収縮の強度を判定した。収縮しなかった場合における筋収縮の強度を0と判定し、わずかに収縮した場合における筋収縮の強度を1と判定し、明らかに収縮した場合における筋収縮の強度を2と判定した。
<実験結果>
図8に、実験結果を示す。図8に示す実験結果の表では、電極番号として、正電極の番号のみが表示されている。例えば、電極番号の[2]は、電極面積比1:1においては、電極[2]からなる正電極部と、電極[1]からなる負電極部とが選択されていることを示し、電極面積比3:1においては、(電極[1],電極[2],電極[3])からなる正電極部と、電極[1]からなる負電極部とが選択されていることを示す。
電極面積比1:1では、どの電極に電流を印加しても全被験者の大腿四頭筋(図8に示す「Quads」)が収縮したことを確認できる。ハムストリングス(図8に示す「Ham」)については、被験者Aでは、[4]の電極番号に対応する電極部対が選択されたときに弱い筋収縮が見られ、被験者Bでは、[3]の電極番号に対応する電極部対が選択されたときに、弱い筋収縮が見られた。
電極面積比3:1では、どの電極に電流を印加しても全被験者の大腿四頭筋は全く収縮せず、逆にハムストリングスは収縮した。
以上の結果より、電流の強度と周波数が同様な条件において、電極面積比1:1では、筋収縮の強度は、電流の印加に用いられる電極の場所によって異なったものの、全チャンネルで大腿四頭筋が収縮した。一方、電極面積比3:1では、全ての電極部対において大腿四頭筋は収縮せず、ハムストリングスが収縮した。また、電流の印加に用いられる電極の場所によってハムストリングスの筋収縮の強度が異なった。
<得られた知見>
電極面積の違いが干渉波生成領域に及ぼす影響を調べるために、シミュレーションと被験者実験とを実施した。シミュレーションの結果、電極面積比1:1に比べて電極面積比3:1において、面積が拡大された電極側の電流密度が低減し、面積が変えられていない電極側の電流密度が部分的に増大した。被験者実験の結果、電極面積比1:1では大腿四頭筋に筋収縮が確認され、電極面積比3:1ではハムストリングスに筋収縮が確認された。シミュレーションと被験者実験で同様の結果が得られたことから、電極面積比の変更により干渉波生成領域が変化すると考えられる。
上記実験等では、電極面積比を1:1と3:1の間でのみで切り換え、電極面積比3:1では、電極部を筋繊維と平行な方向にのみ拡大した。しかし、上記実験のような電極分配方式であれば、電極面積を拡大するための電極配置パターンは無数に考えられる。よって、電極分配方式を用いることで、任意の領域に干渉電流を生成できる可能性があると考えられる。
被験者実験において、被験者Aと被験者Bとでは、筋収縮に必要な電流値が異なった。また、電流の印加に用いられる電極を同じ位置に配置したにも関わらず、被験者Aと被験者Bで反応特性が異なっていた。これは、運動神経の配置または脂肪層の厚みなどの個人差の影響であると考えられる。そのため、ユーザの運動をアシストするための筋収縮を誘発するアプリケーションを実現するには、被験者ごとに刺激強度または電極配置パターンの調整が必要になる。
このように得られた知見に基づく、本開示の一態様に係る電気刺激装置は、ユーザの刺激対象筋を決定する刺激筋決定部と、前記ユーザに取り付けられる複数の電極と、前記刺激対象筋および前記複数の電極のそれぞれの位置を示すデータベースに基づいて、前記刺激対象筋に筋収縮を誘発させる干渉電流を生成するための第1の電極部対および第2の電極部対のそれぞれに含まれる正電極部およびグラウンド電極部のそれぞれの基準位置を決定する位置決定部と、前記正電極部と前記グラウンド電極部との面積比を決定する電極面積比決定部と、前記第1の電極部対および前記第2の電極部対のそれぞれで、決定された前記面積比にしたがって、(a)前記正電極部の前記基準位置を起点にして前記刺激対象筋の長手方向に沿って配列されている少なくとも1つの電極からなる電極群を、前記正電極部として前記複数の電極から選択し、(b)前記グラウンド電極部の前記基準位置を起点にして前記刺激対象筋の長手方向に沿って配列されている少なくとも1つの電極からなる電極群を、前記グラウンド電極部として前記複数の電極から選択する電極選択部と、前記第1の電極部対および前記第2の電極部対のそれぞれに互いに異なる周波数の電流を同時に印加して干渉させることによって前記干渉電流を生成する電流出力部とを備える。
これにより、面積比に応じて、生体表面からの深さ方向に干渉波生成領域の位置を制御することができるため、生体表面から任意の深さにある特定の筋肉に対して筋収縮を容易に誘発することができる。つまり、本開示の一態様に係る電気刺激装置では、筋肉の誘発運動を深さ方向で制御することが可能になるため、電気刺激による筋肉トレーニング、または電気刺激による動作アシストが実現できる。
また、前記電気刺激装置は、さらに、前記刺激対象筋の配置を示すデータベースを参照することによって、前記刺激対象筋の長手方向を判定する方向判定部を備えてもよい。
これにより、刺激対象筋以外の筋肉に対して干渉波による筋収縮が誘発されてしまうことを適切に抑えることができる。
また、前記電極選択部は、前記第1の電極部対および前記第2の電極部対のそれぞれで、前記正電極部および前記グラウンド電極部を選択するときには、前記複数の電極から、予め定められたn個(nは1以上の整数)の電極からなる電極群を、前記正電極部および前記グラウンド電極部のうちの一方の電極部として選択し、前記正電極部および前記グラウンド電極部のうちの他方の電極部であって、前記一方の電極部の面積と、決定された前記面積比とに応じた面積を有する電極部を選択してもよい。
これにより、一方の電極部に含まれる電極の数がn個に予め定められ、他方の電極部に含まれる電極の数だけを調整すればよいため、正電極部およびグラウンド電極部の選択にかかる処理負担を低減することができる。
また、前記電気刺激装置は、さらに、前記刺激対象筋の動きを検知する検知部を備え、前記電極面積比決定部は、前記電流出力部による電流の印加が行われている場合に、前記検知部によって前記刺激対象筋の動きが検知されていないときには、決定されている前記面積比を変更してもよい。例えば、前記検知部は、前記ユーザに取り付けられ、前記刺激対象筋の動きに伴う前記ユーザの表面の歪みを検知する少なくとも1つの圧力センサであってもよい。または、前記検知部は、前記刺激対象筋の動きに伴う前記ユーザの外形の変化を撮像によって検知するカメラであってもよい。または、前記検知部は、超音波の送受信によって超音波画像を取得し、前記刺激対象筋の動きに伴う前記超音波画像の変化を検知する超音波センサであってもよい。
これにより、刺激対象筋の動きに基づいて面積比が変更されるため、より適切に刺激対象筋を筋収縮させることができる。
また、前記電極選択部は、前記ユーザに不快感があることを示す情報を取得したときには、決定されている前記面積比を維持して、前記正電極部および前記グラウンド電極部のそれぞれに含まれる新たな電極を、前記複数の電極からさらに選択してもよい。
これにより、正電極部およびグラウンド電極部のそれぞれの面積が大きくなるため、ユーザの不快感、すなわち痛みを軽減することができる。
また、前記電極選択部は、前記第1の電極部対および前記第2の電極部対のそれぞれで、前記正電極部と前記グラウンド電極部との間に流れる電流の電流密度が閾値以下になる条件を満たす、前記正電極部および前記グラウンド電極部を選択してもよい。具体的には、前記電極選択部は、前記正電極部および前記グラウンド電極部のそれぞれの面積と、前記電流出力部によって印加される電流の電流値とに基づいて、前記電流密度を算出してもよい。
これにより、第1の電極部対および第2の電極部対のそれぞれに互いに異なる周波数の電流が同時に印加されても、正電極部とグラウンド電極部との間に流れる電流の電流密度は閾値以下になるため、ユーザの不快感の発生を抑えることができる。
また、本開示の他の態様に係る電気刺激装置は、ユーザの刺激対象筋を決定する刺激筋決定部と、前記ユーザに取り付けられる複数の電極と、前記刺激対象筋および前記複数の電極のそれぞれの位置を示すデータベースに基づいて、前記刺激対象筋に筋収縮を誘発させる干渉電流を生成するための第1の電極部対および第2の電極部対のそれぞれに含まれる正電極部およびグラウンド電極部のそれぞれの基準位置を決定する位置決定部と、前記第1の電極部対および前記第2の電極部対のそれぞれで、(a)前記正電極部の前記基準位置を起点にして前記刺激対象筋の長手方向に沿って配列されている少なくとも1つの電極からなる電極群を、前記正電極部として前記複数の電極から選択し、(b)前記グラウンド電極部の前記基準位置を起点にして前記刺激対象筋の長手方向に沿って配列されている少なくとも1つの電極からなる電極群を、前記グラウンド電極部として前記複数の電極から選択する電極選択部と、前記第1の電極部対および前記第2の電極部対のそれぞれに互いに異なる周波数の電流を同時に印加して干渉させることによって前記干渉電流を生成する電流出力部とを備え、前記電極選択部によって選択される前記正電極部および前記グラウンド電極部のうちの一方は、前記ユーザの大腿部の正面に正面電極部として配置され、他方は、前記大腿部の背面に背面電極部として配置され、(c)前記刺激対象筋が大腿四頭筋である場合には、前記正面電極部と前記背面電極部とはそれぞれ同じ面積であり、(d)前記刺激対象筋がハムストリングスである場合には、前記正面電極部の方が前記背面電極部よりも面積が大きい。
これにより、刺激対象筋を、生体表面からの深さが互いに異なる大腿四頭筋とハムストリングスとに切り替えて、その刺激対象筋を適切に筋収縮させることができる。
また本開示のさらに他の態様に係る電気刺激装置は、ユーザの刺激対象筋を決定する刺激筋決定部と、前記ユーザに取り付けられる複数の電極と、前記刺激対象筋および前記複数の電極のそれぞれの位置を示すデータベースに基づいて、前記刺激対象筋に筋収縮を誘発させる干渉電流を生成するための第1の電極部対および第2の電極部対のそれぞれに含まれる正電極部およびグラウンド電極部のそれぞれの基準位置を決定する位置決定部と、前記第1の電極部対および前記第2の電極部対のそれぞれで、(a)前記正電極部の前記基準位置を起点にして前記刺激対象筋の長手方向に沿って配列されている少なくとも1つの電極からなる電極群を、前記正電極部として前記複数の電極から選択し、(b)前記グラウンド電極部の前記基準位置を起点にして前記刺激対象筋の長手方向に沿って配列されている少なくとも1つの電極からなる電極群を、前記グラウンド電極部として前記複数の電極から選択する電極選択部と、前記第1の電極部対および前記第2の電極部対のそれぞれに互いに異なる周波数の電流を同時に印加して干渉させることによって前記干渉電流を生成する電流出力部とを備え、前記電極選択部によって選択される前記正電極部および前記グラウンド電極部のうちの一方は、前記ユーザの大腿部の正面に正面電極部として配置され、他方は、前記大腿部の背面に背面電極部として配置され、(c)前記刺激対象筋が大腿四頭筋である場合には、前記正面電極部と前記背面電極部との面積比は、1:1であり、(d)前記刺激対象筋がハムストリングスである場合には、前記正面電極部と前記背面電極部との面積比は、3:1である。
これにより、刺激対象筋を、生体表面からの深さが互いに異なる大腿四頭筋とハムストリングスとに切り替えて、その刺激対象筋をより適切に筋収縮させることができる。
なお、これらの包括的または具体的な態様は、システム、方法、集積回路、コンピュータプログラムまたはコンピュータ読み取り可能なCD−ROMなどの記録媒体で実現されてもよく、システム、方法、集積回路、コンピュータプログラムまたは記録媒体の任意な組み合わせで実現されてもよい。
以下、実施の形態について、図面を参照しながら具体的に説明する。
なお、以下で説明する実施の形態は、いずれも包括的または具体的な例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態、ステップ、ステップの順序などは、一例であり、本開示を限定する主旨ではない。また、以下の実施の形態における構成要素のうち、最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。また、各図は、模式図であり、必ずしも厳密に図示されたものではない。また、各図において、同じ構成部材については同じ符号を付している。
(実施の形態)
以下では、まず、本実施の形態における電気刺激装置の概要を説明する。
本実施の形態における電気刺激装置では、刺激対象の筋肉(以下、刺激対象筋ともいう)の周囲に複数の電極が配置され、刺激対象筋の皮膚表面からの深さに基づいて、電流の印加に用いられる電極部(すなわち上述の電極配置パターン)が自動的に選択される。また、本実施の形態における電気刺激装置は、自動的に電極面積比を決定し、その電極面積比が得られるように、電極部を拡大または縮小することによって、皮膚表面からの深さ方向における干渉波生成領域の位置を制御する。なお、電極部は、少なくとも1つの電極からなり、少なくとも1つの正電極からなる電極部を正電極部といい、少なくとも1つのグラウンド電極(すなわち負電極)からなる電極部をグラウンド電極部という。また、正電極部およびグラウンド電極の組を電極部対という。
図9に、本実施の形態における電気刺激装置の構成および利用環境の例を示す。
電気刺激装置100は、例えば、パンツ型の電気刺激装置であって、ユーザ4の大腿部に含まれる刺激対象筋を刺激する。このような電気刺激装置100は、電子制御部110と、複数の電極からなる電極アレイ120と、操作パネル190とを備えている。
電子制御部110は、例えばパンツ180に取着され、電極アレイ120を介してユーザ4に電流を印加することによって、ユーザ4に電気刺激を与える。また、電子制御部110は、少なくとも同時に2チャンネルの周波数の電流を制御可能である。また、電子制御部110は、電極アレイ120と各筋肉との位置関係を予め記憶している。また、電子制御部110は、各チャンネルに用いられる電極部を自動的に決定する。すなわち、電子制御部110は、刺激対象筋の深さに基づいて、その刺激対象筋に対して電流を印加するための正電極部およびグラウンド電極部のそれぞれに含まれる電極を、電極アレイ120から自動的に選択する。つまり、電子制御部110は、前述の実験等の結果から得られた知見に基づいて、刺激対象筋の近くにある正電極部の面積(すなわち、少なくとも1つの正電極の合計面積)と、その反対側にあるグラウンド電極部の面積(すなわち、少なくとも1つのグラウンド電極の合計面積)との比を調整する。この比は、面積比または電極面積比ともいう。
電子制御部110は、このような電極面積比を調整しながら、刺激対象筋が刺激されたときに、そのときに選択されている電極部を、刺激対象筋用の最終的な電極部として決定する。なお、電気刺激装置100は、刺激対象筋が刺激されたか否かを判定する手段として、後述する圧力センサなどの検知部を備えている。
電極アレイ120は、ユーザ4に取り付けられる複数の電極からなる。なお、この電極アレイ120は、電子制御部110と同様にパンツ180に取着され、ユーザ4がそのパンツ180を装着することによって、ユーザ4に取り付けられる。例えば、図9に示すように、電極アレイ120は、刺激対象筋を含む大腿部の周囲全体をカバーできる形状となっている。また、電極アレイ120は、ユーザ4の皮膚を介してそのユーザ4の大腿部内に電流を印加できる。
操作パネル190は、ユーザ4による操作に応じて、刺激対象筋と刺激強度とを受け付け、その刺激対象筋と刺激強度と示す情報を電子制御部110に送信する。また、操作パネル190は、ユーザ4による操作に応じて、電気刺激の開始および終了と、電気刺激の継続時間とを受け付けて、それらを示す情報を電子制御部110に送信してもよい。さらに、操作パネル190は、ユーザ4から受け付けた刺激対象筋、刺激強度、または継続時間などを表示してもよい。具体的には、操作パネル190は、例えばスマートフォンなどの携帯端末によって実現される。
図10に、本実施の形態における電子制御部110のハードウェア構成の一例を示す。
電子制御部110は、CPU(Central Processing Unit)110aと、メモリ110cおよび110dと、シグナルジェネレータ110bとを備えている。CPU110aと、メモリ110cおよび110dと、シグナルジェネレータ110bとは、互いにバス110eを介して接続されており、相互にデータの授受が可能である。
メモリ110dは、CPU110aの処理に必要とされるデータベースDB1およびDB2を格納している。
CPU110aは、メモリ110cに格納されているコンピュータプログラムPrgを実行する。コンピュータプログラムPrgには、後述するフローチャートに示される各ステップの処理が記述されている。CPU110aは、このコンピュータプログラムPrgにしたがって、干渉波の生成、電極面積拡大方向の判定、電極面積比の決定、電極部の決定、およびシグナルジェネレータ110bの制御などの各処理を行う。また、CPU110aは、それらの処理を行うときには、メモリ110dに格納されているデータベースDB1およびDB2を参照する。
シグナルジェネレータ110bは、CPU110aによる制御に応じて、電極アレイ120に含まれる複数の電極から、電流の印加に用いられる電極部を選択し、その選択された電極部を用いて電流を大腿部に印加する。
<構成>
図11に、本実施の形態における電気刺激装置100の機能構成の一例を示す。
電気刺激装置100は、操作パネル190と、刺激筋決定部111と、位置決定部113と、メモリ110dと、方向判定部114と、電極面積比決定部115と、電極選択部116と、シグナルジェネレータ110bと、電極アレイ120と、圧力センサアレイ130とを備えている。
なお、刺激筋決定部111と、位置決定部113と、方向判定部114と、電極面積比決定部115とは、CPU110aがコンピュータプログラムPrgを実行することによって実現される。
刺激筋決定部111は、ユーザ4の刺激対象筋を決定する。具体的には、刺激筋決定部111は、操作パネル190から送信される情報を取得し、その情報に示される刺激対象筋を、ユーザ4の刺激対象筋として決定する。
位置決定部113は、刺激対象筋および複数の電極のそれぞれの位置を示すデータベースDB1およびDB2に基づいて、刺激対象筋に筋収縮を誘発させる干渉電流を生成するための第1の電極部対および第2の電極部対のそれぞれに含まれる正電極部およびグラウンド電極部のそれぞれの基準位置を決定する。なお、第1の電極部対および第2の電極部対のうちの一方の電極部対は、例えば3000Hzの周波数の電流(チャンネルCH1)を印加するための電極部対であり、他方の電極部対は、例えば3001Hzの周波数の電流(チャンネルCH2)を印加するための電極部対である。正電極部は、電極アレイ120に含まれ、正極に用いられる少なくとも1つの電極(正電極)からなる。グラウンド電極部は、電極アレイ120に含まれ、グラウンドに用いられる少なくとも1つの電極(グラウンド電極)からなる。なお、本実施の形態では、位置決定部113は、2つの電極部対のそれぞれについて電極部の基準位置を決定するが、3つ以上の電極部対、すなわち3つ以上のチャンネルのそれぞれの電極部の基準位置を決定してもよい。
図12に、データベースDB1の一例を示す。
データベースDB1は、上述のようにメモリ110dに格納され、刺激対象筋の配置を示すデータベースである。具体的には、データベースDB1は、例えば左大腿部に含まれる複数の筋肉のそれぞれについて、筋腹の中心座標、筋頭(起始部)の座標および筋尾(停止部)の座標のそれぞれを、3次元空間座標系における座標(X,Y、Z)によって示す。なお、筋腹の中心座標は、筋肉の中心または筋腹の位置ともいい、筋頭および筋尾は、それぞれ始点および終点ともいう。例えば、3次元座標系における原点は、大腿骨の長手方向の中心にある。X軸は、ユーザ4の左右方向に沿い、X軸のプラス方向はユーザ4の左側を指す。Y軸は、ユーザ4の前後方向に沿い、Y軸のプラス方向はユーザ4の正面を指す。Z軸は、ユーザ4の上下方向に沿い、Z軸のプラス方向は、ユーザ4がまっすぐ立っている時にユーザ4の頭に向かう方向を指す。なお、データベースDB1は、さらに、筋肉の形状、脂肪層および皮膚層の厚みを示していてもよい。また、各筋肉の配置には個人差があるため、予め超音波診断装置などでユーザ4の各筋肉の配置を確認し、その確認された各筋肉の配置を示すデータベースDB1をメモリ110dに保存しておく必要がある。
図13に、データベースDB2の一例を示す。
データベースDB2は、上述のようにメモリ110dに格納され、例えば電極アレイ120に含まれる全ての電極のそれぞれの中心位置を示す。この中心位置は、パンツ180がユーザ4に装着されたときの位置であって、上述の3次元座標系における座標(X,Y,Z)によって示される。なお、電極アレイ120では、上述の3次元座標系のXY平面において大腿部を囲むように16個の電極が配列され、その16個の電極からなる電極列がZ軸方向に沿って例えば4つ以上並んでいる。つまり、データベースDB2は、これらの16×4個以上の電極のそれぞれの中心位置を示す。
図14に、ユーザ4がパンツ180を装着したときの、左大腿部の横断面を示す。なお、図14に示す横断面は、大腿骨の長手方向の中心における断面であって、上記3次元座標系におけるXY平面の断面である。図14に示す断面における一番外側には、パンツ180に埋め込まれた電極アレイ120の横断面がある。この例では、電極アレイ120は、4行16列の電極の配列で構成されている。この横断面に配置されている各電極には、[1]から[16]までの電極番号が振られている。
位置決定部113は、上述のように、ユーザ4の大腿部に電気刺激を与えるために4つの基準位置を決定する。この4つの基準位置のうちの2つは、チャンネルCH1の正電極部およびグラウンド電極部のそれぞれの基準位置であり、残りの2つは、チャンネルCH2の正電極部およびグラウンド電極部のそれぞれの基準位置である。例えば、基準位置は、正電極部の中心位置またはグラウンド電極部の中心位置である。
つまり、位置決定部113は、刺激筋決定部111によって決定された刺激対象筋の中心位置を、データベースDB1を参照して特定する。そして、位置決定部113は、データベースDB2を参照し、刺激対象筋の中心位置に最も近い電極を最近電極として特定し、XY平面においてその最近電極の両側にある2つの電極のそれぞれの中心位置を上述の基準位置として決定する。最近電極の両側にある2つの電極のうちの一方の中心位置は、例えば、チャンネルCH1の正電極部の基準位置であり、他方の中心位置は、チャンネルCH2の正電極部の基準位置である。位置決定部113は、さらに、チャンネルCH1およびCH2のそれぞれについて、原点(X,Y,Z)=(0,0,0)に対してその正電極部の基準位置と反対側にある電極の中心位置を、グラウンド電極部の基準位置として決定する。
具体的には、刺激対象筋が大腿直筋である場合、位置決定部113は、その大腿直筋の中心位置(X,Y,Z)=(0.00,8.00,0.00)を、データベースDB1を参照して特定する。そして、位置決定部113は、データベースDB2を参照し、大腿直筋の中心位置に最も近い電極[4]を最近電極として特定し、その最近電極[4]の両側にある2つの電極[3]および電極[5]のそれぞれの中心位置を上述の基準位置として決定する。例えば、電極[3]の中心位置は、チャンネルCH1の正電極部の基準位置であり、電極[5]の中心位置は、チャンネルCH2の正電極部の基準位置である。さらに、位置決定部113は、原点(X,Y,Z)=(0,0,0)に対してその電極[3]の中心位置と反対側にある電極[11]の中心位置を、チャンネルCH1のグラウンド電極部の基準位置として決定する。位置決定部113は、原点(X,Y,Z)=(0,0,0)に対してその電極[5]の中心位置と反対側にある電極[13]の中心位置を、チャンネルCH2のグラウンド電極部の基準位置として決定する。
方向判定部114は、刺激対象筋の配置を示すデータベースDB1を参照することによって、刺激対象筋の長手方向を判定する。すなわち、方向判定部114は、その長手方向を、電極部(すなわち電極面積)を拡大する方向(以下、拡大方向という)として判定する。具体的には、方向判定部114は、データベースDB1に示されている刺激対象筋の中心、始点および終点のうちの少なくとも2つの位置に基づいて、刺激対象筋の長手方向を拡大方向として判定する。例えば、刺激対象筋が大腿直筋である場合には、方向判定部114は、Z軸方向を拡大方向として判定する。なお、刺激対象筋の長手方向の代わりに、刺激対象筋の筋線維方向を拡大方向として判定してもよい。
圧力センサアレイ130は、刺激対象筋の動きを検知する検知部の一例である。具体的には、圧力センサアレイ130は、ユーザ4に取り付けられ、刺激対象筋の動きに伴うユーザ4の表面の歪みを検知する少なくとも1つの圧力センサからなる。少なくとも1つの圧力センサのそれぞれは、例えば、パンツ180における電極が配置されている部位に埋め込まれている。したがって、圧力センサアレイ130からの出力によって、ユーザ4の大腿部に含まれる各筋肉の動きを特定することができる。なお、圧力センサは、歪みセンサであってもよい。
電極面積比決定部115は、チャンネルCH1およびCH2のそれぞれについて、正電極部とグラウンド電極部との面積比を電極面積比として決定する。具体的には、電極面積比決定部115は、シグナルジェネレータ110bによる電流の印加が行われているときに、圧力センサアレイ130からの出力に基づいて、刺激対象筋が刺激されているか否かを判定する。そして、電極面積比決定部115は、刺激対象筋が刺激されていないと判定すると、現在決定されている電極面積比を変更することによって、変更後の電極面積比を新たに決定する。例えば、電極面積比決定部115は、電極アレイ120に含まれる1つの電極の面積が現在の正電極部の面積に追加されたときの電極面積比を、変更後の電極面積比として決定する。また、電極面積比決定部115は、刺激対象筋が刺激されていると判定すると、刺激対象筋が刺激されていることを示す筋刺激情報を電極選択部116に出力する。このように、電極面積比決定部115は、シグナルジェネレータ110bによる電流の印加が行われている場合に、圧力センサアレイ130によって刺激対象筋の動きが検知されていないときには、決定されている面積比を変更する。
電極選択部116は、チャンネルCH1およびCH2のそれぞれについて、決定された電極面積比にしたがって、電極アレイ120に含まれる複数の電極から、少なくとも1つの電極からなる電極群を電極部として選択する。つまり、電極選択部116は、第1の電極部対および第2の電極部対のそれぞれで、決定された電極面積比にしたがって、(a)正電極部の基準位置を起点にして刺激対象筋の長手方向に沿って配列されている少なくとも1つの電極からなる電極群を、正電極部として複数の電極から選択し、(b)グラウンド電極部の基準位置を起点にして刺激対象筋の長手方向に沿って配列されている少なくとも1つの電極からなる電極群を、グラウンド電極部として複数の電極から選択する。なお、正電極部の基準位置は、例えば上述のように、正電極部の中心位置であり、グラウンド電極部の基準位置は、例えば上述のように、グラウンド電極部の中心位置である。
また、電極選択部116は、第1の電極部対および第2の電極部対のそれぞれで、正電極部およびグラウンド電極部を選択するときには、複数の電極から、予め定められたn個(nは1以上の整数)の電極からなる電極群を、正電極部およびグラウンド電極部のうちの一方の電極部として選択する。そして、電極選択部116は、その正電極部およびグラウンド電極部のうちの他方の電極部であって、上述の一方の電極部の面積と、決定された電極面積比とに応じた面積を有する電極部を選択する。上述のnは1である。
具体的には、電極選択部116は、刺激対象筋に対して最初に電流を印加するときには、チャンネルCH1およびCH2のそれぞれで、正電極部の中心位置にある1つの電極のみを正電極部として選択し、グラウンド電極部の中心位置にある1つの電極のみをグラウンド電極部として選択する。このとき、電極面積比は1:1である。なお、このときに選択される電極を中心電極という。次に、電極面積比決定部115によって電極面積比2:1が決定されると、正電極部の中心電極の隣にある電極、具体的には、中心電極から拡大方向の一方の向きにある電極を、正電極部に含まれる新たな電極として選択する。さらに、電極面積比決定部115によって電極面積比3:1が決定されると、電極選択部116は、正電極部の中心電極の逆隣にある電極、具体的には、中心電極から拡大方向の他方の向きにある電極を、正電極部に含まれる新たな電極として選択する。
つまり、電極選択部116は、第1の電極部対および第2の電極部対のそれぞれで、正電極部およびグラウンド電極部を選択するときには、複数の電極から、予め定められた1個の電極からなる電極群を、グラウンド電極部として選択する。そして、電極選択部116は、正電極部の面積が、例えばグラウンド電極部の面積「1」と、決定された電極面積比「3:1」とに応じた面積「3」になるように、正電極部を選択する。このような電極の選択によって、正電極部またはその面積が拡大方向に沿って拡大される。
電極選択部116は、電極面積比決定部115から上述の筋刺激情報を取得すると、刺激対象筋用の最終的な電極部を決定する。つまり、電極選択部116は、チャンネルCH1およびCH2のそれぞれについて、現在選択されている正電極部およびグラウンド電極部のそれぞれを、刺激対象筋用の最終的な電極部として選択する。
言い換えれば、電極選択部116は、調整期間において、選択される電極部または電極を逐次変更し、調整期間終了時に、そのときに選択されている電極部を、刺激対象筋用の最終的な電極部として決定する。なお、調整期間は、電極面積比決定部115によって電極面積比が変更される期間であって、刺激筋決定部111によって刺激対象筋が決定されてから、電極面積比決定部115から筋刺激情報が出力されるまでの期間である。
シグナルジェネレータ110bは、チャンネルCH1およびCH2のそれぞれについて、電極選択部116によって選択された正電極部およびグラウンド電極部を用いて、刺激対象筋に対して電流を印加する。つまり、このシグナルジェネレータ110bは、電流出力部であって、第1の電極部対および第2の電極部対のそれぞれに互いに異なる周波数の電流を同時に印加して干渉させることによって干渉電流を生成する。なお、シグナルジェネレータ110bは、電極面積比決定部115によって決定された電極部に基づいて、電流値または周波数を決定してもよい。
ここで、電極のサイズが小さいほど皮膚インピーダンスが高くなるため、ユーザ4に不快感を与えてしまう場合がある。さらに、痛みを感じやすい場所に電流を印加するときにも、ユーザ4に不快感を与えてしまう場合がある。そこで、電極選択部116は、ユーザ4に不快感があることを示す情報を取得したときには、決定されている面積比を維持して、正電極部およびグラウンド電極部のそれぞれに含まれる新たな電極を、複数の電極からさらに選択してもよい。言い換えると、電極選択部116は、不快感を示す情報を操作パネル190から取得すると、電極面積比決定部115によって決定された電極面積比を保ちながら、正電極部およびグラウンド電極部のそれぞれに含まれる新たな電極を選択してもよい。つまり、電極選択部116は、正電極部およびグラウンド電極部のそれぞれを上述の判定方向に沿って拡大することによって、ユーザ4の不快感を軽減することができる。なお、上述の不快感を示す情報は、操作パネル190に対するユーザ4の入力操作によって、その操作パネル190から送信される。
<フローチャート>
図15に、本実施の形態における電気刺激装置100の処理動作を示す。
[ステップS101]刺激筋決定部111は、操作パネル190に対するユーザ4の入力操作に応じて、刺激対象筋を決定する。つまり、ユーザ4が、操作パネル190に表示される刺激可能な筋肉を選択すると、刺激筋決定部111は、その選択された筋肉を刺激対象筋として決定する。
[ステップS102]位置決定部113は、チャンネルCH1およびCH2のそれぞれについて、刺激筋決定部111によって決定された刺激対象筋に電流を印加するための正電極部およびグラウンド電極部のそれぞれの中心位置を決定する。つまり、位置決定部113は、データベースDB1およびDB2を参照することによって、各電極部の中心位置を決定する。具体的には、位置決定部113は、まず、刺激対象筋の筋腹と最も近い電極の両側にある2つの電極を、チャンネルCH1およびCH2の正電極部の中心電極に決定する。なお、上述の例では、正電極部の中心電極に決定したが、グラウンド電極部(負電極部)の中心電極に決定してもよい。さらに、位置決定部113は、チャンネルCH1およびCH2のそれぞれについて、原点に対してその正電極部の中心電極と反対側にある電極を、グラウンド電極部の中心電極として決定する。例えば、図14に示す例では、刺激対象筋が大腿直筋である場合、位置決定部113は、電極[3]をチャンネルCH1の正電極部の中心電極に決定し、電極[5]をチャンネルCH2の正電極部の中心電極に決定する。さらに、位置決定部113は、電極[13]をチャンネルCH1のグラウンド電極部の中心電極に決定し、電極[11]をチャンネルCH2のグラウンド電極部の中心電極に決定する。
[ステップS103]方向判定部114は、データベースDB1を参照することによって、刺激対象筋の長手方向を特定し、その長手方向を拡大方向として判定する。
[ステップS104]電極面積比決定部115は、電極面積比を決定する。つまり、電極面積比決定部115は、圧力センサアレイ130からの出力に基づいて、刺激対象筋が刺激されるまで、電極面積比を逐次決定することによって、その電極面積比を調整する。電極選択部116は、チャンネルCH1およびCH2のそれぞれについて、電極面積比が決定されるたびに、決定された電極面積比となるように、電極アレイ120から、正電極部に含まれる電極と、グラウンド電極部に含まれる電極とを選択する。このとき、電極選択部116は、正電極部の中心電極を起点にして刺激対象筋の長手方向に沿って配列されている少なくとも1つの電極からなる電極群を、正電極部として選択する。これにより、正電極部がその長手方向に拡大または縮小される。または、電極選択部116は、グラウンド電極部の中心電極を起点にして刺激対象筋の長手方向に沿って配列されている少なくとも1つの電極からなる電極群を、グラウンド電極部として選択する。これにより、グラウンド電極部がその長手方向に拡大または縮小される。このように、チャンネルCH1およびCH2のそれぞれで、正電極部およびグラウンド電極部が選択されると、シグナルジェネレータ110bは、その選択された電極部およびグラウンド電極部を用いて電流を刺激対象筋に印加する。
[ステップS105]電極面積比決定部115は、圧力センサアレイ130からの出力に基づいて、決定された電極面積比によって刺激対象筋が刺激されたか否かを判定する。ここで、電極面積比決定部115は、刺激対象筋が刺激されていないと判定すると(ステップS105のNo)、ステップS104の処理に戻り、現在の電極面積比を変更することによって、変更後の電極面積比を決定する。一方、刺激対象筋が刺激されていると判定すると(ステップS105のYes)、電極面積比決定部115は、現在の電極面積比が適切な電極面積比であることを電極選択部116に通知する。つまり、電極面積比決定部115は、上述の筋刺激情報を電極選択部116に出力する。
[ステップS106]電極選択部116は、電極面積比決定部115から筋刺激情報を受けると、操作パネル190から送信される情報に基づいて、ユーザ4に不快感がないか否かを判定する。
[ステップS107]電極選択部116は、ステップS106で不快感があると判定すると(ステップS106のNo)、現在の電極面積比を変えることなく、正電極部およびグラウンド電極部を拡大する。
[ステップS108]電極選択部116は、チャンネルCH1およびCH2のそれぞれで、現在選択されている正電極部およびグラウンド電極部を、刺激対象筋用の最終的な電極部として決定する。
[ステップS109]シグナルジェネレータ110bは、電極選択部116によって決定された電極部を用いて、刺激対象筋に電流を印加する。これにより、干渉波生成領域の位置を深さ方向に制御して、刺激対象筋を刺激することができる。
(まとめ)
以上のように、本実施の形態における電気刺激装置100では、電極面積比に応じて、生体表面からの深さ方向に干渉波生成領域の位置を制御することができるため、生体表面から任意の深さにある特定の筋肉に対して筋収縮を容易に誘発することができる。つまり、本実施の形態における電気刺激装置100では、筋肉の誘発運動を深さ方向で制御することが可能になるため、電気刺激による筋肉トレーニング、または電気刺激による動作アシストが実現できる。
ここで、本実施の形態における電気刺激装置100は、操作パネル190、方向判定部114、圧力センサアレイ130、およびメモリ110cなどを備えているが、これらの構成要素を備えていなくてもよい。
図16に、本開示の第1の態様に係る電気刺激装置100の機能構成を示す。
本開示の一態様に係る電気刺激装置100は、刺激筋決定部111と、電極アレイ120である複数の電極と、位置決定部113と、電極面積比決定部115と、電極選択部116と、シグナルジェネレータ110bとを備える。
図17に、本開示の第1の態様に係る電気刺激装置100の処理動作を示す。
[ステップS11]まず、刺激筋決定部111は、ユーザ4の刺激対象筋を決定する。
[ステップS12]次に、位置決定部113は、刺激対象筋および電極アレイ120の複数の電極のそれぞれの位置を示すデータベースDB1およびDB2に基づいて、刺激対象筋に筋収縮を誘発させる干渉電流を生成するための第1の電極部対および第2の電極部対のそれぞれに含まれる正電極部およびグラウンド電極部のそれぞれの基準位置を決定する。
[ステップS13]次に、電極面積比決定部115は、正電極部とグラウンド電極部との面積比を電極面積比として決定する。
[ステップS14]次に、電極選択部116は、第1の電極部対および第2の電極部対のそれぞれで、決定された電極面積比となるように、(a)正電極部の基準位置を起点にして刺激対象筋の長手方向に沿って配列されている少なくとも1つの電極からなる電極群を、その正電極部として複数の電極から選択し、(b)グラウンド電極部の基準位置を起点にして刺激対象筋の長手方向に沿って配列されている少なくとも1つの電極からなる電極群を、そのグラウンド電極部として複数の電極から選択する。
[ステップS15]次に、シグナルジェネレータ110bは、第1の電極部対および第2の電極部対のそれぞれに互いに異なる周波数の電流を同時に印加して干渉させることによって干渉電流を生成する。
図16に示す構成の電気刺激装置100、および図17に示す処理動作の電気刺激方法であっても、実施の形態と同様に、電極面積比に応じて、生体表面からの深さ方向に干渉波生成領域の位置を制御することができる。その結果、生体表面から任意の深さにある特定の筋肉に対して筋収縮を容易に誘発することができる。
また、本開示の第2の態様に係る電気刺激装置100は、刺激筋決定部111と、電極アレイ120である複数の電極と、位置決定部113と、電極選択部116と、シグナルジェネレータ110bとを備える。つまり、この第2の態様に係る電気刺激装置100は、電極面積比決定部115を備えていない。この場合には、刺激筋決定部111は、ユーザの刺激対象筋を決定する。位置決定部113は、刺激対象筋および複数の電極のそれぞれの位置を示すデータベースDB1およびDB2に基づいて、刺激対象筋に筋収縮を誘発させる干渉電流を生成するための第1の電極部対および第2の電極部対のそれぞれに含まれる正電極部およびグラウンド電極部のそれぞれの基準位置を決定する。電極選択部116は、第1の電極部対および第2の電極部対のそれぞれで、(a)正電極部の基準位置を起点にして刺激対象筋の長手方向に沿って配列されている少なくとも1つの電極からなる電極群を、正電極部として複数の電極から選択し、(b)グラウンド電極部の基準位置を起点にして刺激対象筋の長手方向に沿って配列されている少なくとも1つの電極からなる電極群を、グラウンド電極部として複数の電極から選択する。シグナルジェネレータ110bは、第1の電極部対および第2の電極部対のそれぞれに互いに異なる周波数の電流を同時に印加して干渉させることによって干渉電流を生成する。ここで、電極選択部116によって選択される正電極部およびグラウンド電極部のうちの一方は、ユーザの大腿部の正面に正面電極部として配置され、他方は、大腿部の背面に背面電極部として配置される。そして、刺激対象筋が大腿四頭筋である場合には、正面電極部と背面電極部とはそれぞれ同じ面積である。また、刺激対象筋がハムストリングスである場合には、正面電極部の方が背面電極部よりも面積が大きい。
このような第2の態様に係る電気刺激装置100では、刺激対象筋を、生体表面からの深さが互いに異なる大腿四頭筋とハムストリングスとに切り替えて、その刺激対象筋を適切に筋収縮させることができる。
また、本開示の第3の態様に係る電気刺激装置100は、第2の態様に係る電気刺激装置100と同様の構成を有し、刺激筋決定部111と、電極アレイ120である複数の電極と、位置決定部113と、電極選択部116と、シグナルジェネレータ110bとを備える。この第3の態様に係る電気刺激装置100では、刺激対象筋が大腿四頭筋である場合には、正面電極部と背面電極部との面積比は、1:1である。また、刺激対象筋がハムストリングスである場合には、正面電極部と背面電極部との面積比は、3:1である。
このような第3の態様に係る電気刺激装置100では、刺激対象筋を、生体表面からの深さが互いに異なる大腿四頭筋とハムストリングスとに切り替えて、その刺激対象筋をより適切に筋収縮させることができる。
(変形例)
上記実施の形態では、刺激対象筋の動きを検知する検知部の一例として、圧力センサアレイ130を用いたが、その圧力センサアレイ130の代わりにカメラを用いてもよい。つまり、検知部は、刺激対象筋の動きに伴うユーザの外形の変化を撮像によって検知するカメラである。または、圧力センサアレイ130の代わりに超音波センサを用いてもよい。つまり、検知部は、超音波の送受信によって超音波画像を取得し、刺激対象筋の動きに伴う超音波画像の変化を検知する超音波センサである。
このように、検知部がカメラまたは超音波センサであっても、刺激対象筋の動きが検知されるため、その刺激対象筋の動きに基づいて面積比を変更することができ、刺激対象筋を適切に筋収縮させることができる。
また、上記実施の形態では、ユーザに不快感があることを示す情報が取得されたときに、正電極部およびグラウンド電極部を拡大したが、予めユーザに不快感が生じないように、電極選択部116が正電極部およびグラウンド電極部を選択してもよい。つまり、電極選択部は、第1の電極部対および第2の電極部対のそれぞれで、正電極部とグラウンド電極部との間に流れる電流の電流密度が閾値以下になる条件を満たす、正電極部およびグラウンド電極部を選択する。例えば、電極選択部116は、正電極部およびグラウンド電極部のそれぞれの面積と、シグナルジェネレータ110bによって印加される電流の電流値とに基づいて、上述の電流密度を算出する。これにより、第1の電極部対および第2の電極部対のそれぞれに互いに異なる周波数の電流が同時に印加されても、正電極部とグラウンド電極部との間に流れる電流の電流密度は閾値以下になるため、ユーザの不快感の発生を抑えることができる。
以上、一つまたは複数の態様に係る電気刺激装置について、実施の形態および変形例に基づいて説明したが、本開示は、この実施の形態および変形例に限定されるものではない。本開示の趣旨を逸脱しない限り、当業者が思いつく各種変形を本実施の形態に施したものや、実施の形態および変形例のそれぞれにおける構成要素を組み合わせて構築される形態も、本開示の範囲内に含まれてもよい。
例えば、上記実施の形態では、チャンネルCH1に3000Hzの電流を用い、チャンネルCH2に3001Hzの電流を用いたが、逆に、チャンネルCH1に3001Hzの電流を用い、チャンネルCH2に3000Hzの電流を用いてもよい。また、これらの周波数は一例であって、他の周波数であってもよい。さらに、干渉電流の周波数は、1Hzに限定されることなく、他の周波数であってもよい。
また、上記実施の形態では、ユーザの正面側に正電極部が配置され、背面側にグラウンド電極部が配置されたが、それらの電極部の極性は逆であってもよい。
また、上記実施の形態では、電極の中心位置を基準位置としたが、電極の中心位置以外の位置を基準位置にしてもよい。
また、上記実施の形態では、電極面積比決定部115によって決定される電極面積比において、正電極部の比率が増加したときには、正電極部を拡大したが、グラウンド電極部を縮小してもよい。この場合には、刺激対象筋の長手方向がグラウンド電極部の縮小方向として用いられる。
また、上記実施の形態における図15に示す例では、電気刺激装置100は、ステップS106およびS107の処理を行うが、これらの処理を行わなくてもよい。
また、上記実施の形態の電極アレイ120に含まれる各電極は、その電極アレイ120によって取り囲まれる各筋肉のうち、最も小さい筋肉よりも小さい方がよい。例えば、図14に示す例の場合、電極は、XY平面において内側広筋よりも小さい方がよい。このように、電極のサイズが小さければ、干渉電流によって刺激対象筋以外の筋肉に与える影響を抑えることができる。
ここで、本開示において、ユニット、デバイスの全部又は一部、又は図10、図11および図16に示されるブロック図の機能ブロックの全部又は一部は、半導体装置、半導体集積回路(IC)、又はLSI(large scale integration)を含む一つ又は一つ以上の電子回路によって実行されてもよい。LSI又はICは、一つのチップに集積されてもよいし、複数のチップを組み合わせて構成されてもよい。例えば、記憶素子以外の機能ブロックは、一つのチップに集積されてもよい。ここでは、LSIやICと呼んでいるが、集積の度合いによって呼び方が変わり、システムLSI、VLSI(very large scale integration)、若しくはULSI(ultra large scale integration) と呼ばれるかもしれない。 LSIの製造後にプログラムされる、Field Programmable Gate Array (FPGA)、又はLSI内部の接合関係の再構成又はLSI内部の回路区画のセットアップができるreconfigurable logic deviceも同じ目的で使うことができる。
さらに、ユニット、装置、又は装置の一部の、全部又は一部の機能又は操作は、ソフトウエア処理によって実行することが可能である。この場合、ソフトウエアは一つ又は一つ以上のROM、光学ディスク、ハードディスクドライブ、などの非一時的記録媒体に記録され、ソフトウエアが、処理装置(processor)によって実行された場合に、ソフトウエアは、ソフトウエア内の特定の機能を、処理装置(processor)と周辺のデバイスに実行させる。システム又は装置は、ソフトウエアが記録されている一つ又は一つ以上の非一時的記録媒体、処理装置(processor)、及び必要とされるハードウエアデバイス、例えばインターフェース、を備えていても良い。
また、上記実施の形態において、各構成要素は、専用のハードウェアで構成されるか、各構成要素に適したソフトウェアプログラムを実行することによって実現されてもよい。各構成要素は、CPUまたはプロセッサなどのプログラム実行部が、ハードディスクまたは半導体メモリなどの記録媒体に記録されたソフトウェアプログラムを読み出して実行することによって実現されてもよい。ここで、上記実施の形態の電気刺激装置を実現するソフトウェアは、例えば図15および図17に示すフローチャートに含まれる各ステップをコンピュータに実行させるプログラムである。
本開示にかかる電気刺激装置は、ユーザが深層筋を含む各筋肉の電気刺激を自由自在にコントロールすることが可能となるため、例えば、筋肉のトレーニングを行う装置、または、スポーツのアシストもしくは運動のアシストなどを行う装置に適用することができる。また、筋肉の制御が詳細に制御できるため、例えば、歩行時にリアルタイムで転倒を防止する装置にも適用可能である。
100 電気刺激装置
110 電子制御部
110a CPU
110b シグナルジェネレータ(電流出力部)
110c,110d メモリ
111 刺激筋決定部
113 位置決定部
114 方向判定部
115 電極面積比決定部
116 電極選択部
120 電極アレイ(複数の電極)
130 圧力センサアレイ
180 パンツ
190 操作パネル
DB1,DB2 データベース

Claims (14)

  1. ユーザの刺激対象筋を決定する刺激筋決定部と、
    前記ユーザに取り付けられる複数の電極と、
    前記刺激対象筋および前記複数の電極のそれぞれの位置を示すデータベースに基づいて、前記刺激対象筋に筋収縮を誘発させる干渉電流を生成するための第1の電極部対および第2の電極部対のそれぞれに含まれる正電極部およびグラウンド電極部のそれぞれの基準位置を決定する位置決定部と、
    前記正電極部と前記グラウンド電極部との面積比を決定する電極面積比決定部と、
    前記第1の電極部対および前記第2の電極部対のそれぞれで、決定された前記面積比にしたがって、(a)前記正電極部の前記基準位置を起点にして前記刺激対象筋の長手方向に沿って配列されている少なくとも1つの電極からなる電極群を、前記正電極部として前記複数の電極から選択し、(b)前記グラウンド電極部の前記基準位置を起点にして前記刺激対象筋の長手方向に沿って配列されている少なくとも1つの電極からなる電極群を、前記グラウンド電極部として前記複数の電極から選択する電極選択部と、
    前記第1の電極部対および前記第2の電極部対のそれぞれに互いに異なる周波数の電流を同時に印加して干渉させることによって前記干渉電流を生成する電流出力部とを備える
    電気刺激装置。
  2. 前記電気刺激装置は、さらに、
    前記刺激対象筋の配置を示すデータベースを参照することによって、前記刺激対象筋の長手方向を判定する方向判定部を備える
    請求項1に記載の電気刺激装置。
  3. 前記電極選択部は、
    前記第1の電極部対および前記第2の電極部対のそれぞれで、前記正電極部および前記グラウンド電極部を選択するときには、
    前記複数の電極から、予め定められたn個(nは1以上の整数)の電極からなる電極群を、前記正電極部および前記グラウンド電極部のうちの一方の電極部として選択し、
    前記正電極部および前記グラウンド電極部のうちの他方の電極部であって、前記一方の電極部の面積と、決定された前記面積比とに応じた面積を有する電極部を選択する
    請求項1または2に記載の電気刺激装置。
  4. 前記電気刺激装置は、さらに、
    前記刺激対象筋の動きを検知する検知部を備え、
    前記電極面積比決定部は、
    前記電流出力部による電流の印加が行われている場合に、
    前記検知部によって前記刺激対象筋の動きが検知されていないときには、決定されている前記面積比を変更する
    請求項1〜3の何れか1項に記載の電気刺激装置。
  5. 前記検知部は、前記ユーザに取り付けられ、前記刺激対象筋の動きに伴う前記ユーザの表面の歪みを検知する少なくとも1つの圧力センサである
    請求項4に記載の電気刺激装置。
  6. 前記検知部は、前記刺激対象筋の動きに伴う前記ユーザの外形の変化を撮像によって検知するカメラである
    請求項4に記載の電気刺激装置。
  7. 前記検知部は、超音波の送受信によって超音波画像を取得し、前記刺激対象筋の動きに伴う前記超音波画像の変化を検知する超音波センサである
    請求項4に記載の電気刺激装置。
  8. 前記電極選択部は、前記ユーザに不快感があることを示す情報を取得したときには、
    決定されている前記面積比を維持して、前記正電極部および前記グラウンド電極部のそれぞれに含まれる新たな電極を、前記複数の電極からさらに選択する
    請求項1〜7の何れか1項に記載の電気刺激装置。
  9. 前記電極選択部は、
    前記第1の電極部対および前記第2の電極部対のそれぞれで、前記正電極部と前記グラウンド電極部との間に流れる電流の電流密度が閾値以下になる条件を満たす、前記正電極部および前記グラウンド電極部を選択する
    請求項1〜7の何れか1項に記載の電気刺激装置。
  10. 前記電極選択部は、
    前記正電極部および前記グラウンド電極部のそれぞれの面積と、前記電流出力部によって印加される電流の電流値とに基づいて、前記電流密度を算出する
    請求項9に記載の電気刺激装置。
  11. ユーザの刺激対象筋を決定する刺激筋決定部と、
    前記ユーザに取り付けられる複数の電極と、
    前記刺激対象筋および前記複数の電極のそれぞれの位置を示すデータベースに基づいて、前記刺激対象筋に筋収縮を誘発させる干渉電流を生成するための第1の電極部対および第2の電極部対のそれぞれに含まれる正電極部およびグラウンド電極部のそれぞれの基準位置を決定する位置決定部と、
    前記第1の電極部対および前記第2の電極部対のそれぞれで、(a)前記正電極部の前記基準位置を起点にして前記刺激対象筋の長手方向に沿って配列されている少なくとも1つの電極からなる電極群を、前記正電極部として前記複数の電極から選択し、(b)前記グラウンド電極部の前記基準位置を起点にして前記刺激対象筋の長手方向に沿って配列されている少なくとも1つの電極からなる電極群を、前記グラウンド電極部として前記複数の電極から選択する電極選択部と、
    前記第1の電極部対および前記第2の電極部対のそれぞれに互いに異なる周波数の電流を同時に印加して干渉させることによって前記干渉電流を生成する電流出力部とを備え、
    前記電極選択部によって選択される前記正電極部および前記グラウンド電極部のうちの一方は、前記ユーザの大腿部の正面に正面電極部として配置され、他方は、前記大腿部の背面に背面電極部として配置され、
    (c)前記刺激対象筋が大腿四頭筋である場合には、
    前記正面電極部と前記背面電極部とはそれぞれ同じ面積であり、
    (d)前記刺激対象筋がハムストリングスである場合には、
    前記正面電極部の方が前記背面電極部よりも面積が大きい
    電気刺激装置。
  12. ユーザの刺激対象筋を決定する刺激筋決定部と、
    前記ユーザに取り付けられる複数の電極と、
    前記刺激対象筋および前記複数の電極のそれぞれの位置を示すデータベースに基づいて、前記刺激対象筋に筋収縮を誘発させる干渉電流を生成するための第1の電極部対および第2の電極部対のそれぞれに含まれる正電極部およびグラウンド電極部のそれぞれの基準位置を決定する位置決定部と、
    前記第1の電極部対および前記第2の電極部対のそれぞれで、(a)前記正電極部の前記基準位置を起点にして前記刺激対象筋の長手方向に沿って配列されている少なくとも1つの電極からなる電極群を、前記正電極部として前記複数の電極から選択し、(b)前記グラウンド電極部の前記基準位置を起点にして前記刺激対象筋の長手方向に沿って配列されている少なくとも1つの電極からなる電極群を、前記グラウンド電極部として前記複数の電極から選択する電極選択部と、
    前記第1の電極部対および前記第2の電極部対のそれぞれに互いに異なる周波数の電流を同時に印加して干渉させることによって前記干渉電流を生成する電流出力部とを備え、
    前記電極選択部によって選択される前記正電極部および前記グラウンド電極部のうちの一方は、前記ユーザの大腿部の正面に正面電極部として配置され、他方は、前記大腿部の背面に背面電極部として配置され、
    (c)前記刺激対象筋が大腿四頭筋である場合には、
    前記正面電極部と前記背面電極部との面積比は、1:1であり、
    (d)前記刺激対象筋がハムストリングスである場合には、
    前記正面電極部と前記背面電極部との面積比は、3:1である
    電気刺激装置。
  13. ユーザの刺激対象筋を決定し、
    前記刺激対象筋および複数の電極のそれぞれの位置を示すデータベースに基づいて、前記刺激対象筋に筋収縮を誘発させる干渉電流を生成するための第1の電極部対および第2の電極部対のそれぞれに含まれる正電極部およびグラウンド電極部のそれぞれの基準位置を決定し、
    前記正電極部と前記グラウンド電極部との面積比を決定し、
    前記第1の電極部対および前記第2の電極部対のそれぞれで、決定された前記面積比にしたがって、(a)前記正電極部の前記基準位置を起点にして前記刺激対象筋の長手方向に沿って配列されている少なくとも1つの電極からなる電極群を、前記正電極部として前記複数の電極から選択し、(b)前記グラウンド電極部の前記基準位置を起点にして前記刺激対象筋の長手方向に沿って配列されている少なくとも1つの電極からなる電極群を、前記グラウンド電極部として前記複数の電極から選択し、
    前記第1の電極部対および前記第2の電極部対のそれぞれに互いに異なる周波数の電流を同時に印加して干渉させることによって前記干渉電流を生成する
    電気刺激方法。
  14. ユーザの刺激対象筋を決定し、
    前記刺激対象筋および複数の電極のそれぞれの位置を示すデータベースに基づいて、前記刺激対象筋に筋収縮を誘発させる干渉電流を生成するための第1の電極部対および第2の電極部対のそれぞれに含まれる正電極部およびグラウンド電極部のそれぞれの基準位置を決定し、
    前記正電極部と前記グラウンド電極部との面積比を決定し、
    前記第1の電極部対および前記第2の電極部対のそれぞれで、決定された前記面積比にしたがって、(a)前記正電極部の前記基準位置を起点にして前記刺激対象筋の長手方向に沿って配列されている少なくとも1つの電極からなる電極群を、前記正電極部として前記複数の電極から選択し、(b)前記グラウンド電極部の前記基準位置を起点にして前記刺激対象筋の長手方向に沿って配列されている少なくとも1つの電極からなる電極群を、前記グラウンド電極部として前記複数の電極から選択し、
    前記第1の電極部対および前記第2の電極部対のそれぞれに互いに異なる周波数の電流を同時に印加して干渉させることによって前記干渉電流を生成する、
    ことをコンピュータに実行させるプログラム。
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