JP2018119044A - 重合体、有機電界発光素子用組成物、有機電界発光素子、有機el表示装置及び有機el照明 - Google Patents

重合体、有機電界発光素子用組成物、有機電界発光素子、有機el表示装置及び有機el照明 Download PDF

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Abstract

【課題】一重項励起準位及び三重項励起準位が高く、電気化学的安定性に優れ、三層以上の積層化が可能であり、通電によって分解などが起こりにくい、均質な膜質を提供し得る重合体及び前記重合体を含有する有機電界発光素子の提供。
【解決手段】式(1)で表される繰り返し単位を有する重合体。
Figure 2018119044

(Ar〜Arは各々独立に置換/非置換の芳香族炭化水素基又は置換/非置換の芳香族複素環基;Rは置換/非置換のアルキル基、置換/非置換の芳香族炭化水素基又は置換/非置換の芳香族複素環基)
【選択図】なし

Description

本発明は重合体に関し、さらに詳しくは、有機電界発光素子の電荷輸送性材料として有用な重合体、該重合体を含有する有機電界発光素子用組成物、該組成物を用いて形成された層を含む有機電界発光素子、並びに、該有機電界発光素子を有する有機EL表示装置及び有機EL照明に関する。
有機電界発光素子における有機層の形成方法としては、真空蒸着法と湿式成膜法が挙げられる。真空蒸着法は積層化が容易であるため、陽極及び/又は陰極からの電荷注入の改善、励起子の発光層封じ込めが容易であるという利点を有する。一方で、湿式成膜法は真空プロセスが要らず、大面積化が容易で、様々な機能をもった複数の材料を混合した塗布液を用いることにより、容易に、様々な機能をもった複数の材料を含有する層を形成できる等の利点がある。
しかしながら、湿式成膜法は積層化が困難であるため、真空蒸着法による素子に比べて駆動安定性に劣り、一部を除いて実用レベルに至っていないのが現状である。
そこで、湿式成膜法による積層化を行うために、架橋性基を有する電荷輸送性ポリマーが所望され、またその開発が行われている。例えば、特許文献1〜3には、特定の繰り返し単位を有する重合体を含有し、湿式成膜法によって、積層化された有機電界発光素子が開示されている。
国際公開第2009/123269号 特開2013−045986号公報 国際公開第2013/191088号
しかしながら、特許文献1〜3に記載のこれらの重合体の主鎖構造のπ共役系同士が、凝集、J会合することにより、新たな著しく低い一重項励起準位及び三重項励起準位が生成することにより一重項励起状態及び三重項励起状態を失活させ、蛍光発光素子及び燐光発光素子の発光効率の低下をもたらおそれがあった。そのような重合体から構成される有機電界発光素子の駆動電圧は高く、発光効率は低く、駆動寿命は短いという課題が残されていた。
そこで、本発明は、一重項励起準位及び三重項励起準位が高く、電気化学的安定性に優れ、三層以上の積層化が可能であり、通電によって分解などが起こりにくく、均質な膜質を提供し得る重合体の提供と、該重合体を含有する有機電界発光素子材料及び有機電界発光素子用組成物を提供することを目的とする。
また本発明は、発光効率が高く、駆動安定性が高い、有機電界発光素子及びそれを有する表示装置及び照明装置を提供することを目的とする。
本発明者らは、鋭意検討した結果、特定の繰り返し単位を有する重合体を用いることで、上記課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明の要旨は、次の[1]〜[11]のとおりである。
[1]下記式(1)で表される繰り返し単位を有する重合体。
Figure 2018119044
(式中、Ar、Ar、Arは、各々独立に、置換基を有していても良い、芳香族炭化水素基又は芳香族複素環基を表し、Rは、置換基を有していてもよい、アルキル基、芳香族炭化水素基又は芳香族複素環基を表す。)
[2]架橋性基を有する請求項1に記載の重合体。
[3]Arが、置換基を有していても良い2−フルオレニル基である[1]又[2]に記載の重合体。
[4]架橋性基が、芳香族環に縮環したシクロブテン環を含む基である[2]又は[3]に記載の重合体。
[5]重量平均分子量(Mw)が5,000以上であり、分散度(Mw/Mn)が3.5以下である[1]〜[4]のいずれか一項に記載の重合体。
[6][1]〜[5]のいずれか一項に記載の重合体を含有することを特徴とする有機電界発光素子用組成物。
[7]基板上に、陽極、陰極、及び該陽極と該陰極の間に有機層を有する有機電界発光素子であって、該有機層が、[6]に記載の有機電界発光素子用組成物を用いて、湿式成膜法で形成された層を含むことを特徴とする有機電界発光素子。
[8]前記湿式成膜法で形成された層が、正孔注入層及び正孔輸送層のうちの少なくとも一つである、[7]に記載の有機電界発光素子。
[9]陽極と陰極の間に正孔注入層、正孔輸送層及び発光層を含み、前記正孔注入層、正孔輸送層及び発光層は、全て湿式成膜法により形成されたものである、[7]又は[8]に記載の有機電界発光素子。
[10][7]〜[9]のいずれか一項に記載の有機電界発光素子を有することを特徴とする有機EL表示装置。
[11][7]〜[9]のいずれか一項に記載の有機電界発光素子を有することを特徴とする有機EL照明。
本発明の重合体は、一重項励起準位及び三重項励起準位を高く維持でき、本発明の重合体を含む層は、比較的低い電圧でも電流を流すことが可能となり、また励起子を失活させ難いため、本発明によれば、電流効率が高く、駆動電圧が低く、駆動寿命の長い有機電界発光素子が得られる。
本発明の有機電界発光素子の構造例を示す断面の模式図である。
以下に本発明の実施の形態を詳細に説明するが、以下に記載する構成要件の説明は、本発明の実施態様の一例(代表例)であり、本発明はその要旨を超えない限り、これらの内容に特定されない。
<本発明の重合体>
本発明の重合体は、下記式(1)で表される繰り返し単位を有することに特徴をもつものである。
Figure 2018119044
式中、Ar、Ar、Arは、各々独立に、置換基を有していても良い、芳香族炭化水素基又は芳香族複素環基を表し、Rは、置換基を有していてもよい、アルキル基、芳香族炭化水素基又は芳香族複素環基を表す。
[Ar、Ar、Ar及びR
上記式(1)で表される繰り返し単位中のAr、Ar、Arにおいて、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基としては、例えば、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、ペリレン環、テトラセン環、ピレン環、ベンズピレン環、クリセン環、トリフェニレン環、アセナフテン環、フルオランテン環、フルオレン環等の、6員環の単環又は2〜5縮合環の1価の基が挙げられる。
上記式(1)で表される繰り返し単位中のAr、Ar、Arにおいて、置換基を有していてもよい芳香族複素環基としては、例えば、フラン環、ベンゾフラン環、チオフェン環、ベンゾチオフェン環、ピロール環、ピラゾール環、イミダゾール環、オキサジアゾール環、インドール環、カルバゾール環、ピロロイミダゾール環、ピロロピラゾール環、ピロロピロール環、チエノピロール環、チエノチオフェン環、フロピロール環、フロフラン環、チエノフラン環、ベンゾイソオキサゾール環、ベンゾイソチアゾール環、ベンゾイミダゾール環、ピリジン環、ピラジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、トリアジン環、キノリン環、イソキノリン環、シンノリン環、キノキサリン環、フェナントリジン環、ベンゾイミダゾール環、ペリミジン環、キナゾリン環、キナゾリノン環、アズレン環等の、5又は6員環の単環又は2〜4縮合環の1価の基が挙げられる。
Ar、Arは、電荷輸送性およびπ共役系の広がりが阻害される効果がより高いことから、上記の中でも芳香族炭化水素基が好ましく、中でもベンゼン環、ナフタレン環、フェナントレン環、フルオレン環がより好ましく、ベンゼン環が特に好ましい。
Ar、Arの有していても良い置換基としては、電荷輸送性が優れる点から芳香族炭化水素基が好ましい。例えば、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、ペリレン環、テトラセン環、ピレン環、ベンズピレン環、クリセン環、トリフェニレン環、アセナフテン環、フルオランテン環、フルオレン環等の、6員環の単環又は2〜5縮合環の1価の基が挙げられる。
また、Ar、Arの有していても良い置換基としては、分子の溶解性が優れる点からアルキル基が好ましい。例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基、シクロヘキシル基、ドデシル基等の、炭素数が通常1以上であり、通常24以下である、直鎖、分岐、又は環状のアルキル基が挙げられる。中でも、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基が特に好ましい。
Arは、電荷輸送性が優れる点、耐久性に優れる点から、芳香族炭化水素基が好ましく、中でもベンゼン環、フルオレン環の1価の基、すなわち、フェニル基、フルオレニル基がより好ましく、フルオレニル基が更に好ましく、2−フルオレニル基が特に好ましい。溶解性が優れる点から、2−フルオレニル基の9位に置換基を有することが好ましく、該置換基としては、n−ブチル基、i−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、n−オクチル基、ドデシル基等の、炭素数が4以上、12以下である直鎖、分岐、又は環状のアルキル基が好ましく、炭素数が4以上、12以下の直鎖のアルキル基又はn−ヘキシル基が更に好ましく、n−ヘキシル基を二置換されるのが特に好ましい。
上記式(1)で表される繰り返し単位中のRにおいて、置換基を有していても良い芳香族炭化水素基および芳香族複素環基の例としては、上記のAr、Ar、Arと同様であり、置換基を有していてもよいアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基、シクロヘキシル基、ドデシル基等の、炭素数が通常1以上であり、通常24以下である、直鎖、分岐、又は環状のアルキル基が挙げられる。
において、アルキル基、芳香族炭化水素基又は芳香族複素環基が有しても良い置換基としては、本重合体の特性を著しく低減させないものであれば、特に制限はないが、例えば、下記置換基群Zから選ばれる基が挙げられ、アルキル基、アルコキシ基、芳香族炭化水素基、芳香族複素環基が好ましい。
[置換基群Z]
例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、ドデシル基等の、炭素数が通常1以上であり、通常24以下、好ましくは12以下である、直鎖、分岐、又は環状のアルキル基;
例えばビニル基等の、炭素数が通常2以上であり、通常24以下、好ましくは12以下であるアルケニル基;
例えばエチニル基等の、炭素数が通常2以上であり、通常24以下、好ましくは12以下であるアルキニル基;
例えばトリフルオロメチル基等の、炭素数が通常1以上であり、通常12以下、好ましくは6以下のハロアルキル基;
例えばフェニル基、ナフチル基等の、炭素数が通常6以上であり、通常36以下、好ましくは24以下である芳香族炭化水素基;
例えばチエニル基、ピリジル基等の、炭素数が通常3以上、好ましくは4以上であり、通常36以下、好ましくは24以下である芳香族複素環基。
また、上記各置換基はさらに置換基を有していてもよく、それら置換基の例としては、上記置換基(置換基群Z)と同じものが挙げられる。
本発明の重合体は、式(1)に示されるように、カルバゾールの3,6−位に、パラフェニレンではなくメタフェニレンを置換することによって、π共役系の広がりが阻害され
、分子のエネルギーギャップが広くなり、一重項励起準位及び三重項励起準位を高く維持できるものと推定している。また、本発明の重合体は、2つのアリールアミン窒素原子の間に、芳香族環に加えて9−フェニルカルバゾールを有するため、カルバゾールの電荷注入性向上効果により、効果的に発光層へ電荷が注入されると考えられる。従って、本発明の重合体を含む層は、比較的低い電圧でも電流を流すことが可能となり、また励起子を失活させ難いため、得られる有機電界発光素子の発光効率が高くなる。
また、本発明の重合体は、その側鎖に存在するフルオレン環及びその両側の2つのベンゼン環にHOMOが広げるため、電子や励起子に弱い窒素原子周辺には相対的にHOMOが分布するために耐久性に優れる。
また、本発明の重合体を含有する有機電界発光素子用組成物を用いて湿式成膜することにより得られる層は、クラック等が生じることがなく、平坦である。本発明における有機電界発光素子によれば、輝度が高く、発光効率が高い。
また、本発明の重合体は、電気化学的安定性に優れる為、該重合体を用いて形成された層を含む素子は、フラットパネル・ディスプレイ(例えばOAコンピュータ用や壁掛けテレビ)、車載表示素子、携帯電話表示や面発光体としての特徴を生かした光源(例えば、複写機の光源、液晶ディスプレイや計器類のバックライト光源)、表示板、標識灯への応用が考えられ、その技術的価値は大きいものである。
[別の繰り返し単位]
本発明の重合体は、式(1)で表される繰り返し単位とは別の繰り返し単位を含んでいてもよい。
別の繰り返し単位としては、電荷輸送性、耐久性の点で、式(2)で表される繰り返し単位が好ましい。
Figure 2018119044
式(2)中、ArおよびArは、各々独立して、置換基を有していても良い、芳香族炭化水素基又は芳香族複素環基を表す。前記芳香族炭化水素基及び芳香族複素環基は、直接又は連結基を介して、複数個連結したものでも良い。
ArおよびArにおける芳香族炭化水素基、芳香族炭化水素基の具体例としては、例えば、前記Ar、Ar、Arの場合と同じものが挙げられるが、特に、電荷輸送性、耐久性の他、陽極側からの正孔注入に優れる点で、式(2)中のArが、下記式(3)で表される基であることが好ましい。
Figure 2018119044
式(3)中、mは1〜3の整数を表す。
また、三重項励起準位を高く維持でき、励起子の閉じ込め効果が高いため、得られる有機電界発光素子の発光効率が高くなる点で、式(2)中のArが、下記式(4)で表される連結基を介して複数個連結された芳香族炭化水素基または芳香族複素環基であることが好ましい。
Figure 2018119044
式(4)中、pは1〜10の整数を表す。R及びRは、各々独立して、水素原子又は置換基を有していてもよい、アルキル基、芳香族炭化水素基、又は芳香族複素環基を表す。R、Rが複数個存在する場合、同じであっても異なっていても良い。
、Rにおけるアルキル基、芳香族炭化水素基、芳香族複素環基、これらの基が有していてもよい置換基の具体例としては、例えば、前記Ar、Ar、Arの場合と同じものが挙げられる。
[繰り返し単位の含有量]
本発明の重合体において、式(1)で表される繰り返し単位の含有量は特に制限されないが、重合体中に30モル%以上含まれることが好ましく、50モル%以上含まれることがさらに好ましく、70モル%以上含まれることが特に好ましい。
[架橋性基]
本発明の重合体は、架橋性基を有することが好ましい。架橋性基とは、熱及び/又は活性エネルギー線の照射により、該架橋性基の近傍に位置する他の分子を構成している基と反応して、新規な化学結合を生成する基のことをいう。この場合、反応する基は架橋性基と同一の基でも異なった基でもよい。
本発明の重合体における架橋性基は、式(1)で表される繰り返し単位とは別の繰り返し単位中に存在していても良く、式(1)中のAr、Ar、Ar、Rの置換基として存在していても良い。正孔注入輸送能及び耐久性を高めるためには、式(1)で表される繰り返し単位とは別の繰り返し単位中に架橋性基が存在することが好ましく、側鎖であるAr、Rに架橋性基を有することが、架橋反応が進行しやすいためより好ましい。
架橋性基を有することで、熱及び/又は活性エネルギー線の照射により起こる反応(難溶化反応)の前後で、有機溶媒に対する溶解性に大きな差を生じさせることができる。
[架橋性基群T]
具体的な架橋性基としては、例えば、以下の架橋性基群Tに示す基が挙げられる。
Figure 2018119044
(式中、R〜R10は、水素原子、アルキル基、アルコキシ基又は置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基又は置換基を有していてもよい芳香族複素環基を表す。)
〜R10のアルキル基としては、通常、炭素数が6以下である直鎖又は分岐の鎖状アルキル基が好ましく、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、2−プロピル基、n−ブチル基、イソブチル基等である。より好ましくはメチル基又はエチル基である。炭素数が6以下であれば、架橋反応を立体的に阻害することもなく、膜の不溶化が起こりやすい傾向にある。
〜R10のアルコキシ基としては、通常、炭素数が6以下である直鎖又は分岐の鎖状アルコキシ基が好ましく、例えばメトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、2−プロポキシ基、n−ブトキシ基等である。より好ましくはメトキシ基、エトキシ基である。炭素数が6以下であれば、架橋反応を立体的に阻害することもなく、膜の不溶化が起こりやすい傾向にある。
また、R〜R10の置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基としては、例えば、1個の遊離原子価を有する、ベンゼン環、ナフタレン環等の6員環の単環又は2〜5縮合環が挙げられる。特に1個の遊離原子価を有するベンゼン環が好ましい。
これらの内、1価の遊離原子価を有するベンゾシクロブテン環、シクロブテンナフタレン環等の環化付加反応する基が、素子の電気化学的安定性をさらに向上させる点で好ましい。
また、架橋性基の中でも、架橋後の構造が特に安定な点で、1価の遊離原子価を有する芳香族環に縮環したシクロブテン環を含む基が好ましく、中でもシクロブテンナフタレン環が特に好ましい。
本発明の重合体において、架橋性基は、芳香族炭化水素基、芳香族複素環基、及び/又は、連結基に直接結合していてもよいし、芳香族炭化水素基及び/又は芳香族複素環基以外の基に直接結合していてもよいし、これらの基に任意の2価の基を介して結合してもよい。任意の2価の基としては、−O−基、−C(=O)−基及び(置換基を有していてもよい)−CH−基から選ばれる基を任意の順番で1〜30個連結してなる基が好ましい。
[架橋性基の数]
本発明の重合体が有する架橋性基は、架橋することにより十分に不溶化し、その上に湿式成膜法で他の層を形成しやすくなる点では、多い方が好ましい。一方で、形成された層にクラックが生じ難く、未反応架橋性基が残りにくく、有機電界発光素子が長寿命になりやすい点では、架橋性基は少ないことが好ましい。
本発明の重合体における、1つのポリマー鎖の中に存在する架橋性基は、好ましくは平均1以上、より好ましくは平均2以上であり、また好ましくは200以下、より好ましくは100以下である。
また、本発明の重合体が有する架橋性基の数は、重合体の分子量1000あたりの数で表すことができる。
本発明の重合体が有する架橋性基の数を、重合体の分子量1000あたりの数で表した場合、分子量1000あたり、通常3.0個以下、好ましくは2.0個以下、さらに好ましくは1.0以下であり、また通常0.01以上、好ましくは0.05以上である。
架橋性基の数が上記範囲内であると、クラック等が起き難く、平坦な膜が得られ易い。また、架橋密度が適度であるため、架橋反応後の層内に残る未反応の架橋性基が少なく、得られる素子の寿命に影響し難い。
さらに、架橋反応後の、有機溶媒に対する難溶性が十分であるため、湿式成膜法での多層積層構造が形成し易い。
ここで、重合体の分子量1000あたりの架橋性基の数は、重合体からその末端基を除いて、合成時の仕込みモノマーのモル比と、構造式から算出することができる。例えば、後述の実施例1で合成した下記式で表される重合体1の場合で説明すると、重合体1において、末端基を除いた繰り返し単位の分子量は平均895.01であり、また架橋性基は、1繰り返し単位当たり平均0.118個である。これを単純比例により計算すると、分子量1000あたりの架橋性基の数は、0.132個と算出される。
Figure 2018119044
[重合体の分子量]
本発明の重合体の重量平均分子量(Mw)は、通常3,000,000以下、好ましくは1,000,000以下、より好ましくは500,000以下、さらに好ましくは200,000以下であり、また通常2,500以上、好ましくは5,000以上、より好ましくは10,000以上、さらに好ましくは30,000以上である。
重合体の重量平均分子量が上記上限値以下であれば、溶媒に対する溶解性が良好となり成膜性の点で好ましい。また、重合体の重量平均分子量が上記下限値以上であれば、重合体のガラス転移温度、融点及び気化温度を高く維持できるため、耐熱性の点で好ましい。
また、本発明の重合体における数平均分子量(Mn)は、通常2,500,000以下、好ましくは750,000以下、より好ましくは400,000以下であり、また通常2,000以上、好ましくは4,000以上、より好ましくは8,000以上、さらに好ましくは20,000以上である。
さらに、本発明の重合体における分散度(Mw/Mn)は、通常5.0以下、好ましくは3.5以下、さらに好ましくは2.5以下、特に好ましくは2.0以下である。尚、分散度は値が小さい程よいため、下限値は理想的には1である。該重合体の分散度が、上記上限値以下であると、精製が容易で、また溶媒に対する溶解性や電荷輸送能が良好である。
[具体例]
本発明の重合体の具体例を以下に示すが、本発明の重合体はこれらに限定されるものではない。なお、化学式中の数字は繰返し単位のモル比を表す。
これらの重合体は、ランダム共重合体、交互共重合体、ブロック共重合体、又はグラフト共重合体等のいずれでもよく、単量体の配列順序には限定されない。
Figure 2018119044
Figure 2018119044
Figure 2018119044
Figure 2018119044
Figure 2018119044
[重合体の製造方法]
本発明の重合体の製造方法は特には制限されず、本発明の重合体が得られる限り任意である。例えば、Suzuki反応による重合方法、Grignard反応による重合方法、Yamamoto反応による重合方法、Ullmann反応による重合方法、Buchwald−Hartwig反応による重合方法等などによって製造できる。
Ullmann反応による重合方法及びBuchwald−Hartwig反応による重合方法の場合、例えば、式(1a)で表される1級アミノアリールと式(2a)で表されるジハロゲン化アリール(XはI、Br、Cl、F等のハロゲン原子を示す)とを反応
させることにより、本発明の重合体が合成される。
Figure 2018119044
(式中、Xはハロゲン原子を示し、Ar、Ar、Ar、Rは前記と同義である。)
尚、前記の重合方法において、通常、ハロゲン化物との反応工程は、例えば炭酸カリウム、tert−ブトキシナトリウム、トリエチルアミン等の塩基存在下で行う。また、必要に応じて、例えば銅やパラジウム錯体等の遷移金属触媒存在下で行うこともできる。さらにホウ素誘導体との反応工程では、例えば4級アンモニウム塩、炭酸カリウム、tert−ブトキシナトリウム、トリエチルアミン等の塩基、及び、銅やパラジウム錯体等の遷移金属触媒の存在下で行うことができる。
<有機電界発光素子材料>
本発明の重合体は、有機電界発光素子材料として特に好適に用いることができる。つまり、本発明の重合体は有機電界発光素子材料であることが好ましい。
本発明の重合体が有機電界発光素子材料として用いられる場合は、有機電界発素子における正孔注入層及び正孔輸送層の少なくとも一方を形成する材料、つまり電荷輸送性材料として用いることが好ましい。
電荷輸送性材料として用いる場合、本発明の重合体を1種類含有するものであってもよく、2種類以上を任意の組み合わせ及び任意の比率で含有するものであってもよい。
本発明の重合体を用いて有機電界発光素子の正孔注入層及び正孔輸送層の少なくとも一方を形成する場合、正孔注入層及び/又は正孔輸送層中の本発明の重合体の含有量は、通常1〜100重量%、好ましくは5〜100重量%、さらに好ましくは10〜100重量%である。上記の範囲であると、正孔注入層及び/又は正孔輸送層の電荷輸送性が向上し、駆動電圧が低減し、駆動安定性が向上するため好ましい。
本発明の重合体が、前記正孔注入層及び/又は正孔輸送層中で100重量%でない場合に、正孔注入層及び/又は正孔輸送層を構成する成分としては後述する正孔輸送性化合物等が挙げられる。
また、有機電界発光素子を簡便に製造することができることから、本発明の重合体は、湿式成膜法で形成される有機層に用いることが好ましい。
<有機電界発光素子用組成物>
本発明の有機電界発光素子用組成物は、本発明の重合体を含有するものである。なお、本発明の有機電界発光素子用組成物は、本発明の重合体を1種類含有するものであってもよく、2種類以上を任意の組み合わせ及び任意の比率で含有するものであってもよい。
[重合体の含有量]
本発明の有機電界発光素子用組成物中の本発明の重合体の含有量は、通常0.01〜70重量%、好ましくは0.1〜60重量%、さらに好ましくは0.5〜50重量%である。
上記範囲内であると、形成した有機層に欠陥が生じ難く、また膜厚ムラが生じ難いため好ましい。
本発明の有機電界発光素子用組成物は、本発明の重合体以外に溶媒等を含むことができる。
[溶媒]
本発明の有機電界発光素子用組成物は、通常、溶媒を含有する。この溶媒は、本発明の重合体を溶解するものが好ましい。具体的には、本発明の重合体を、室温で通常0.05重量%以上、好ましくは0.5重量%以上、さらに好ましくは1重量%以上溶解する溶媒が好適である。
溶媒の具体例としては、トルエン、キシレン、メシチレン、シクロヘキシルベンゼン等の芳香族系溶媒;1,2−ジクロロエタン、クロロベンゼン、o−ジクロロベンゼン等の含ハロゲン溶媒;エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコール−1−モノメチルエーテルアセタート(PGMEA)等の脂肪族エーテル、1,2−ジメトキシベンゼン、1,3−ジメトキシベンゼン、アニソール、フェネトール、2−メトキシトルエン、3−メトキシトルエン、4−メトキシトルエン、2,3−ジメチルアニソール、2,4−ジメチルアニソール等の芳香族エーテル等のエーテル系溶媒;酢酸エチル、酢酸n−ブチル、乳酸エチル、乳酸n−ブチル等の脂肪族エステル系溶媒;酢酸フェニル、プロピオン酸フェニル、安息香酸メチル、安息香酸エチル、安息香酸イソプロピル、安息香酸プロピル、安息香酸n−ブチル等の芳香族エステル等のエステル系溶媒;等の有機溶媒、その他、後述の正孔注入層形成用組成物や正孔輸送層形成用組成物に用いられる有機溶媒が挙げられる。
なお、溶媒は、1種類を用いてもよく、2種類以上を任意の組み合わせ及び任意の比率で併用してもよい。
中でも、本発明の有機電界発光素子用組成物に含有される溶媒としては、20℃における表面張力が、通常40dyn/cm未満、好ましくは36dyn/cm以下、より好ましくは33dyn/cm以下である溶媒が好ましい。
本発明の有機電界発光素子用組成物を用いて湿式成膜法により塗膜を形成し、本発明の重合体を架橋させて有機層を形成する場合、溶媒と下地の親和性が高いことが好ましい。これは、膜質の均一性が有機電界発光素子の発光の均一性及び安定性に大きく影響するためである。従って、湿式成膜法に用いる有機電界発光素子用組成物には、よりレベリング性が高く均一な塗膜を形成しうるように表面張力が低いことが求められる。そこで前記のような低い表面張力を有する溶媒を使用することにより、本発明の重合体を含有する均一な層を形成することができ、ひいては均一な架橋層を形成することができることから、好ましい。
低表面張力の溶媒の具体例としては、前述したトルエン、キシレン、メシチレン、シクロヘキシルベンゼン等の芳香族系溶媒、安息香酸エチル等のエステル系溶媒、アニソール
等のエーテル系溶媒、トリフルオロメトキシアニソール、ペンタフルオロメトキシベンゼン、3−(トリフルオロメチル)アニソール、エチル(ペンタフルオロベンゾエート)等が挙げられる。
また一方で、本発明の有機電界発光素子用組成物に含有される溶媒としては、25℃における蒸気圧が、通常10mmHg以下、好ましくは5mmHg以下であり、通常0.1mmHg以上であるものが好ましい。このような溶媒を使用することにより、有機電界発光素子を湿式成膜法により製造するプロセスに好適で、本発明の重合体の性質に適した有機電界発光素子用組成物を調製することができる。
このような溶媒の具体例としては、前述したトルエン、キシレン、メシチレン等の芳香族系溶媒、エーテル系溶媒及びエステル系溶媒が挙げられる。
ところで、水分は有機電界発光素子の性能劣化を引き起こす可能性があり、中でも特に連続駆動時の輝度低下を促進する可能性がある。そこで、湿式成膜中に残留する水分をできる限り低減するために、前記の溶媒の中でも、25℃における水の溶解度が1重量%以下であるものが好ましく、0.1重量%以下である溶媒がより好ましい。
本発明の有機電界発光素子用組成物に含有される溶媒の含有量は、通常10重量%以上、好ましくは30重量%以上、より好ましくは50重量%以上、特に好ましくは80重量%以上である。溶媒の含有量が上記下限以上であることにより、形成される層の平坦さ及び均一さを良好にすることができる。
[電子受容性化合物]
本発明の有機電界発光素子用組成物は、正孔注入層を形成するために用いる場合、低抵抗化する点で、さらに電子受容性化合物を含有することが好ましい。
電子受容性化合物としては、酸化力を有し、本発明の重合体から一電子受容する能力を有する化合物が好ましい。具体的には、電子親和力が4eV以上である化合物が好ましく、5eV以上の化合物である化合物がさらに好ましい。
このような電子受容性化合物としては、例えば、トリアリールホウ素化合物、ハロゲン化金属、ルイス酸、有機酸、オニウム塩、アリールアミンとハロゲン化金属との塩、及び、アリールアミンとルイス酸との塩よりなる群から選ばれる1種又は2種以上の化合物等が挙げられる。
具体的には、4−イソプロピル−4’−メチルジフェニルヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボラート、トリフェニルスルホニウムテトラフルオロボラート等の有機基の置換したオニウム塩(国際公開第2005/089024号);塩化鉄(III)(特開平11−251067号公報)、ペルオキソ二硫酸アンモニウム等の高原子価の無機化合物;テトラシアノエチレン等のシアノ化合物;トリス(ペンタフルオロフェニル)ボラン(特開2003−31365号公報)等の芳香族ホウ素化合物;フラーレン誘導体及びヨウ素等が挙げられる。
このような化合物として、長周期型周期表(以下、特に断り書きの無い限り「周期表」という場合には、長周期型周期表を指すものとする。)の第15〜17族に属する元素に、少なくとも一つの有機基が炭素原子で結合した構造を有するイオン化合物であることが好ましく、特に、下記式(5)で表される化合物であることが好ましい。
Figure 2018119044
(式中、R11は、Aと炭素原子で結合する有機基を表し、R12は、任意の置換基を表す。R11及びR12は、互いに結合して環を形成していてもよい。)
11としては、Aとの結合部分に炭素原子を有する有機基であれば、本発明の趣旨に反しない限り、その種類は特に制限されない。R11の分子量は、置換基を含めた値で、通常1000以下、好ましくは500以下の範囲である。
11の好ましい例としては、正電荷を非局在化させる点から、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、芳香族炭化水素基、芳香族複素環基が挙げられる。中でも、正電荷を非局在化させるとともに熱的に安定であることから、芳香族炭化水素基又は芳香族複素環基が好ましい。
アルキル基としては、直鎖状、分岐鎖状又は環状のアルキル基であって、その炭素数が通常1以上、また、通常12以下、好ましくは6以下のものが挙げられる。具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、2−プロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。
アルケニル基としては、炭素数が通常2以上、通常12以下、好ましくは6以下のものが挙げられる。具体例としては、ビニル基、アリール基、1−ブテニル基等が挙げられる。
アルキニル基としては、炭素数が通常2以上、通常12以下、好ましくは6以下のものが挙げられる。具体例としては、エチニル基、プロパルギル基等が挙げられる。
芳香族炭化水素基としては、1個の遊離原子価を有する、5員環若しくは6員環の単環又は2〜5縮合環であり、正電荷を当該基上により非局在化させられる基が挙げられる。その具体例としては、1個の遊離原子価を有する、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、ペリレン環、テトラセン環、ピレン環、ベンズピレン環、クリセン環、トリフェニレン環、アセナフテン環、フルオレン環等が挙げられる。
芳香族複素環基としては、1個の遊離原子価を有する、5員環若しくは6員環の単環又は2〜4縮合環であり、正電荷を当該基上により非局在化させられる基が挙げられる。その具体例としては、1個の遊離原子価を有する、フラン環、ベンゾフラン環、チオフェン環、ベンゾチオフェン環、ピロール環、ピラゾール環、トリアゾール環、イミダゾール環、オキサジアゾール環、インドール環、カルバゾール環、ピロロイミダゾール環、ピロロピラゾール環、ピロロピロール環、チエノピロール環、チエノチオフェン環、フロピロール環、フロフラン環、チエノフラン環、ベンゾイソオキサゾール環、ベンゾイソチアゾール環、ベンゾイミダゾール環、ピリジン環、ピラジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、トリアジン環、キノリン環、イソキノリン環、シノリン環、キノキサリン環、フェナントリジン環、ベンゾイミダゾール環、ペリミジン環、キナゾリン環、キナゾリノン環、アズレン環等が挙げられる。
12は、本発明の趣旨に反しない限り特に制限されない。R12の分子量は、置換基を含めた値で、通常1000以下、好ましくは500以下の範囲である。
12の例としては、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、芳香族炭化水素基、芳香族複素環基、アミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アルキルカルボニルオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、スルホニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、スルホニルオキシ基、シアノ基、水酸基、チオール基、シリル基等が挙げられる。
中でも、R11と同様、電子受容性が大きい点から、Aとの結合部分に炭素原子を有する有機基が好ましく、例としては、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、芳香族
炭化水素基、芳香族複素環基が好ましい。特に、電子受容性が大きいとともに熱的に安定であることから、芳香族炭化水素基又は芳香族複素環基が好ましい。
12のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、芳香族炭化水素基、芳香族複素環基としては、R11について先に説明したものと同様のものが挙げられる。
アミノ基としては、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、アシルアミノ基等が挙げられる。
アルキルアミノ基としては、炭素数が通常1以上、また、通常12以下、好ましくは6以下のアルキル基を1つ以上有するアルキルアミノ基が挙げられる。具体例としては、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジベンジルアミノ基等が挙げられる。
アリールアミノ基としては、炭素数が通常3以上、好ましくは4以上、また、通常25以下、好ましくは15以下の芳香族炭化水素基又は芳香族複素環基を1つ以上有するアリールアミノ基が挙げられる。具体例としては、フェニルアミノ基、ジフェニルアミノ基、トリルアミノ基、ピリジルアミノ基、チエニルアミノ基等が挙げられる。
アシルアミノ基としては、炭素数が通常2以上、また、通常25以下、好ましくは15以下のアシル基を1つ以上有するアシルアミノ基が挙げられる。具体例としては、アセチルアミノ基、ベンゾイルアミノ基等が挙げられる。
アルコキシ基としては、炭素数が通常1以上、また、通常12以下、好ましくは6以下のアルコキシ基が挙げられる。具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基等が挙げられる。
アリールオキシ基としては、炭素数が通常3以上、好ましくは4以上、また、通常25以下、好ましくは15以下の芳香族炭化水素基又は芳香族複素環基を有するアリールオキシ基が挙げられる。具体例としては、フェニルオキシ基、ナフチルオキシ基、ピリジルオキシ基、チエニルオキシ基等が挙げられる。
アシル基としては、炭素数が通常1以上、また、通常25以下、好ましくは15以下のアシル基が挙げられる。具体例としては、ホルミル基、アセチル基、ベンゾイル基等が挙げられる。
アルコキシカルボニル基としては、炭素数が通常2以上、また、通常10以下、好ましくは7以下のアルコキシカルボニル基が挙げられる。具体例としては、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基等が挙げられる。
アリールオキシカルボニル基としては、炭素数が通常3以上、好ましくは4以上、また、通常25以下、好ましくは15以下の芳香族炭化水素基又は芳香族複素環基を有するものが挙げられる。具体例としては、フェノキシカルボニル基、ピリジルオキシカルボニル基等が挙げられる。
アルキルカルボニルオキシ基としては、炭素数が通常2以上、また、通常10以下、好ましくは7以下のアルキルカルボニルオキシ基が挙げられる。具体例としては、アセトキシ基、トリフルオロアセトキシ基等が挙げられる。
アルキルチオ基としては、炭素数が通常1以上、また、通常12以下、好ましくは6以下のアルキルチオ基が挙げられる。具体例としては、メチルチオ基、エチルチオ基等が挙げられる。
アリールチオ基としては、炭素数が通常3以上、好ましくは4以上、また、通常25以下、好ましくは14以下のアリールチオ基が挙げられる。具体例としては、フェニルチオ基、ナフチルチオ基、ピリジルチオ基等が挙げられる。
アルキルスルホニル基及びアリールスルホニル基の具体例としては、メシル基、トシル基等が挙げられる。
スルホニルオキシ基の具体例としては、メシルオキシ基、トシルオキシ基等が挙げられる。
シリル基の具体例としては、トリメチルシリル基、トリフェニルシリル基等が挙げられる。
以上、R11及びR12として例示した基は、本発明の趣旨に反しない限りにおいて、更に他の置換基によって置換されていてもよい。置換基の種類は特に制限されないが、例としては、上記R11及びR12、としてそれぞれ例示した基の他、ハロゲン原子、シアノ基、チオシアノ基、ニトロ基等が挙げられる。中でも、イオン化合物(電子受容性化合物)の耐熱性及び電子受容性の妨げにならない観点から、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、芳香族炭化水素基、芳香族複素環基が好ましい。
式(5)中、Aは、周期表の第17族に属する元素であることが好ましく、電子受容性及び入手容易性の観点から、周期表の第5周期以前(第3〜第5周期)の元素が好ましい。即ち、Aとしてはヨウ素原子、臭素原子、塩素原子のうち何れかが好ましい。
特に、電子受容性、化合物の安定性の面から、式(5)におけるAが臭素原子又はヨウ素原子であるイオン化合物が好ましく、ヨウ素原子であるイオン化合物が最も好ましい。
式(5)中、Z−は、対アニオンを表す。対アニオンの種類は特に制限されず、単原子イオンであっても錯イオンであってもよい。但し、対アニオンのサイズが大きいほど負電荷が非局在化し、それに伴い正電荷も非局在化して電子受容能が大きくなるため、単原子イオンよりも錯イオンの方が好ましい。
は、対アニオンZ−のイオン価に相当する任意の正の整数である。nの値は特に制限されないが、1又は2であることが好ましく、1であることが最も好ましい。
−の具体例としては、水酸化物イオン、フッ化物イオン、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン、シアン化物イオン、硝酸イオン、亜硝酸イオン、硫酸イオン、亜硫酸イオン、過塩素酸イオン、過臭素酸イオン、過ヨウ素酸イオン、塩素酸イオン、亜塩素酸イオン、次亜塩素酸イオン、リン酸イオン、亜リン酸イオン、次亜リン酸イオン、ホウ酸イオン、イソシアン酸イオン、硫化水素イオン、テトラフルオロホウ酸イオン、ヘキサフルオロリン酸イオン、ヘキサクロロアンチモン酸イオン;酢酸イオン、トリフルオロ酢酸イオン、安息香酸イオン等のカルボン酸イオン;メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸イオン等のスルホン酸イオン;メトキシイオン、t−ブトキシイオン等のアルコキシイオン等が挙げられる。中でも、テトラフルオロホウ素酸イオン及びヘキサフルオロホウ素酸イオンが好ましい。
また、対アニオンZ−としては、化合物の安定性、溶媒への溶解性の点及び、サイズが大きいという点で、負電荷が非局在化し、それに伴い正電荷も非局在化して電子受容能が大きくなるため、下記式(6)で表される錯イオンが特に好ましい。
Figure 2018119044
(式中、Eは、各々独立に、長周期型周期表の第13族に属する元素を表し、Ar〜Arは、各々独立に、1〜3芳香族炭化水素基又は1〜3芳香族複素環基を表す。)
としては、ホウ素原子、アルミニウム原子、ガリウム原子が好ましく、化合物の安定性、合成及び精製のし易さの点から、ホウ素原子がより好ましい。
Ar〜Arの芳香族炭化水素基、芳香族複素環基としては、例えば、R11について先に例示したものと同様の、1個の遊離原子価を有する、5員環若しくは6員環の単環又は2〜4縮合環が挙げられる。中でも、化合物の安定性、耐熱性の点から、1個の遊離原子価を有する、ベンゼン環、ナフタレン環、ピリジン環、ピラジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、トリアジン環、キノリン環、イソキノリン環が好ましい。
Ar〜Arとして例示した芳香族炭化水素基、芳香族複素環基は、本発明の趣旨に反しない限りにおいて、更に別の置換基によって置換されていてもよい。置換基の種類は特に制限されず、任意の置換基が適用可能であるが、電子吸引性の基であることが好ましい。
Ar〜Arが有してもよい置換基として好ましい電子吸引性の基を例示するならば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子;シアノ基;チオシアノ基;ニトロ基;メシル基等のアルキルスルホニル基;トシル基等のアリールスルホニル基;ホルミル基、アセチル基、ベンゾイル基等の、炭素数が通常1以上、通常12以下、好ましくは6以下のアシル基;メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基等の、炭素数が通常2以上、通常10以下、好ましくは7以下のアルコキシカルボニル基;フェノキシカルボニル基、ピリジルオキシカルボニル基等の、炭素数が通常3以上、好ましくは4以上、通常25以下、好ましくは15以下の芳香族炭化水素基又は芳香族複素環基を有するアリールオキシカルボニル基;アミノカルボニル基;アミノスルホニル基;トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基等の、炭素数が通常1以上、通常10以下、好ましくは6以下の直鎖状、分岐鎖状又は環状のアルキル基にフッ素原子、塩素原子等のハロゲン原子が置換したハロアルキル基等が挙げられる。
中でも、Ar〜Arのうち少なくとも1つの基が、フッ素原子又は塩素原子を置換基として1つ又は2つ以上有することがより好ましい。特に、負電荷を効率よく非局在化する点、及び、適度な昇華性を有する点から、Ar〜Arの水素原子がすべてフッ素原子で置換されたパーフルオロアリール基であることが最も好ましい。パーフルオロアリール基の具体例としては、ペンタフルオロフェニル基、ヘプタフルオロ−2−ナフチル基、テトラフルオロ−4−ピリジル基等が挙げられる。
本発明における電子受容性化合物の分子量は、通常100〜5000、好ましくは300〜3000である。
上記範囲内であると、正電荷及び負電荷が十分に非局在化し、電子受容能が良好で、また電荷輸送の妨げになり難い点で好ましい。
以下に、本発明に好適な前記式(5)に記載の電子受容性化合物の具体例を下記表1に示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
Figure 2018119044
Figure 2018119044
Figure 2018119044
Figure 2018119044
Figure 2018119044
Figure 2018119044
Figure 2018119044
本発明の有機電界発光素子用組成物は、上記のような電子受容性化合物の1種を単独で含んでいてもよく、また2種以上を任意の組み合わせ、及び比率で含んでいてもよい。
本発明の有機電界発光素子用組成物が電子受容性化合物を含む場合、本発明の有機電界発光素子用組成物の電子受容性化合物の含有量は、通常0.0005重量%以上、好ましくは0.001重量%以上であり、通常20重量%以下、好ましくは10重量%以下である。また、有機電界発光素子用組成物中の本発明の重合体に対する電子受容性化合物の割合は、通常0.5重量%以上、好ましくは1重量%以上、より好ましくは3重量%以上であり、通常80重量%以下、好ましくは60重量%以下、さらに好ましくは40重量%以下である。
有機電界発光素子用組成物中の電子受容性化合物の含有量が上記下限以上であると重合体から電子受容体が電子を受容し、形成した有機層が低抵抗化するため好ましく、上記上限以下であると形成した有機層に欠陥が生じ難く、また膜厚ムラが生じ難いため好ましい。
[カチオンラジカル化合物]
本発明の有機電界発光素子用組成物は、更にカチオンラジカル化合物を含有していてもよい。
カチオンラジカル化合物としては、正孔輸送性化合物から一電子取り除いた化学種であるカチオンラジカルと、対アニオンとからなるイオン化合物が好ましい。但し、カチオンラジカルが正孔輸送性の高分子化合物由来である場合、カチオンラジカルは高分子化合物の繰り返し単位から一電子取り除いた構造となる。
また、カチオンラジカルとしては、後述の正孔輸送性化合物から一電子取り除いた化学種であることが好ましい。正孔輸送性化合物として好ましい化合物から一電子取り除いた化学種であることが、非晶質性、可視光の透過率、耐熱性、及び溶解性等の点から好適である。
ここで、カチオンラジカル化合物は、後述の正孔輸送性化合物と前述の電子受容性化合物を混合することにより生成させることができる。即ち、正孔輸送性化合物と電子受容性化合物とを混合することにより、正孔輸送性化合物から電子受容性化合物へと電子移動が起こり、正孔輸送性化合物のカチオンラジカルと対アニオンとからなるカチオンイオン化合物が生成する。
本発明の有機電界発光素子用組成物がカチオンラジカル化合物を含む場合、本発明の有機電界発光素子用組成物のカチオンラジカル化合物の含有量は、通常0.0005重量%以上、好ましくは0.001重量%以上であり、通常40重量%以下、好ましくは20重量%以下である。カチオンラジカル化合物の含有量が下限以上であると形成した有機層が低抵抗化するため好ましく、上限以下であると形成した有機層に欠陥が生じ難く、また膜厚ムラが生じ難いため好ましい。
なお、本発明の有機電界発光素子用組成物には、上記の成分以外に、後述の正孔注入層形成用組成物や正孔輸送層形成用組成物に含まれる成分を、後述の含有量で含有していてもよい。
<有機電界発光素子>
本発明の有機電界発光素子は、基板上に、陽極及び陰極と、該陽極と該陰極の間に有機層を有する有機電界発光素子において、該有機層が、本発明の重合体を含む本発明の有機電界発光素子用組成物を用いて湿式成膜法により形成された層を含むことを特徴とする。
本発明の有機電界発光素子において、湿式成膜法により形成された層は、正孔注入層及び正孔輸送層の少なくとも一方であることが好ましく、特に、この有機層が正孔注入層、正孔輸送層及び発光層を備え、これら正孔注入層、正孔輸送層及び発光層の全てが湿式成膜法により形成された層であることが好ましい。
本発明において湿式成膜法とは、成膜方法、即ち、塗布方法として、例えば、スピンコート法、ディップコート法、ダイコート法、バーコート法、ブレードコート法、ロールコート法、スプレーコート法、キャピラリーコート法、インクジェット法、ノズルプリンティング法、スクリーン印刷法、グラビア印刷法、フレキソ印刷法等の湿式で成膜させる方法を採用し、この塗布膜を乾燥させて膜形成を行う方法をいう。これらの成膜方法の中でも、スピンコート法、スプレーコート法、インクジェット法、ノズルプリンティング法等が好ましい。
本発明の有機電界発光素子の構造の一例として、図1に有機電界発光素子10の構造例の模式図(断面)を示す。図1において、1は基板、2は陽極、3は正孔注入層、4は正孔輸送層、5は発光層、6は正孔阻止層、7は電子輸送層、8は電子注入層、9は陰極を各々表す。
以下、本発明の有機電界発光素子の層構成及びその一般的形成方法等の実施の形態の一例を、図1を参照して説明する。
[基板]
基板1は、有機電界発光素子の支持体となるものであり、通常、石英やガラスの板、金属板や金属箔、プラスチックフィルムやシート等が用いられる。これらのうち、ガラス板や、ポリエステル、ポリメタクリレート、ポリカーボネート、ポリスルホン等の透明な合成樹脂の板が好ましい。基板は、外気による有機電界発光素子の劣化が起こり難いことからガスバリア性の高い材質とするのが好ましい。このため、特に合成樹脂製の基板等のようにガスバリア性の低い材質を用いる場合は、基板の少なくとも片面に緻密なシリコン酸化膜等を設けてガスバリア性を上げるのが好ましい。
[陽極]
陽極2は、発光層5側の層に正孔を注入する機能を担う。
陽極2は、通常、アルミニウム、金、銀、ニッケル、パラジウム、白金等の金属;インジウム及び/又はスズの酸化物等の金属酸化物;ヨウ化銅等のハロゲン化金属;カーボンブラック及びポリ(3−メチルチオフェン)、ポリピロール、ポリアニリン等の導電性高分子等により構成される。
陽極2の形成は、通常、スパッタリング法、真空蒸着法等の乾式法により行われることが多い。また、銀等の金属微粒子、ヨウ化銅等の微粒子、カーボンブラック、導電性の金属酸化物微粒子、導電性高分子微粉末等を用いて陽極を形成する場合には、適当なバインダー樹脂溶液に分散させて、基板上に塗布することにより形成することもできる。また、導電性高分子の場合は、電解重合により直接基板上に薄膜を形成したり、基板上に導電性高分子を塗布して陽極を形成することもできる(Appl.Phys.Lett.,60巻,2711頁,1992年)。
陽極2は、通常、単層構造であるが、適宜、積層構造としてもよい。陽極2が積層構造である場合、1層目の陽極上に異なる導電材料を積層してもよい。
陽極2の厚みは、必要とされる透明性と材質等に応じて決めればよい。特に高い透明性が必要とされる場合は、可視光の透過率が60%以上となる厚みが好ましく、80%以上となる厚みが更に好ましい。陽極2の厚みは、通常5nm以上、好ましくは10nm以上であり、また、通常1000nm以下、好ましくは500nm以下とするのが好ましい。一方、透明性が不要な場合は、陽極2の厚みは必要な強度等に応じて任意に厚みとすればよく、この場合、陽極2は基板と同一の厚みでもよい。
陽極2の表面に他の層を成膜する場合は、成膜前に、紫外線/オゾン、酸素プラズマ、アルゴンプラズマ等の処理を施すことにより、陽極2上の不純物を除去すると共に、そのイオン化ポテンシャルを調整して正孔注入性を向上させておくことが好ましい。
[正孔注入層]
陽極2側から発光層5側に正孔を輸送する機能を担う層は、通常、正孔注入輸送層又は正孔輸送層と呼ばれる。そして、陽極2側から発光層5側に正孔を輸送する機能を担う層が2層以上ある場合に、より陽極側に近い方の層を正孔注入層3と呼ぶことがある。正孔注入層3は、陽極2から発光層5側に正孔を輸送する機能を強化する点で、形成することが好ましい。正孔注入層3を形成する場合、通常、正孔注入層3は、陽極2上に形成される。
正孔注入層3の膜厚は、通常1nm以上、好ましくは5nm以上、また、通常1000nm以下、好ましくは500nm以下である。
正孔注入層の形成方法は、真空蒸着法でも、湿式成膜法でもよい。成膜性が優れる点では、湿式成膜法により形成することが好ましい。
正孔注入層3は、正孔輸送性化合物を含むことが好ましく、正孔輸送性化合物と電子受
容性化合物とを含むことがより好ましい。更には、正孔注入層中にカチオンラジカル化合物を含むことが好ましく、カチオンラジカル化合物と正孔輸送性化合物とを含むことが特に好ましい。
以下に、一般的な正孔注入層の形成方法について説明するが、本発明の有機電界発光素子において、正孔注入層は、本発明の有機電界発光素子用組成物を用いて湿式成膜法により形成されることが好ましい。
[正孔輸送性化合物]
正孔注入層形成用組成物は、通常、正孔注入層3となる正孔輸送性化合物を含有する。また、湿式成膜法の場合は、通常、更に溶媒も含有する。正孔注入層形成用組成物は、正孔輸送性が高く、注入された正孔を効率よく輸送できるのが好ましい。このため、正孔移動度が大きく、トラップとなる不純物が製造時や使用時等に発生し難いことが好ましい。また、安定性に優れ、イオン化ポテンシャルが小さく、可視光に対する透明性が高いことが好ましい。特に、正孔注入層が発光層と接する場合は、発光層からの発光を消光しないものや発光層とエキサイプレックスを形成して、発光効率を低下させないものが好ましい。
正孔輸送性化合物としては、陽極から正孔注入層への電荷注入障壁の観点から、4.5eV〜6.0eVのイオン化ポテンシャルを有する化合物が好ましい。正孔輸送性化合物の例としては、芳香族アミン系化合物、フタロシアニン系化合物、ポルフィリン系化合物、オリゴチオフェン系化合物、ポリチオフェン系化合物、ベンジルフェニル系化合物、フルオレン基で3級アミンを連結した化合物、ヒドラゾン系化合物、シラザン系化合物、キナクリドン系化合物等が挙げられる。
上述の例示化合物のうち、非晶質性及び可視光透過性の点から、芳香族アミン化合物が好ましく、芳香族三級アミン化合物が特に好ましい。ここで、芳香族三級アミン化合物とは、芳香族三級アミン構造を有する化合物であって、芳香族三級アミン由来の基を有する化合物も含む。
芳香族三級アミン化合物の種類は、特に制限されないが、表面平滑化効果により均一な発光を得やすい点から、重量平均分子量が1000以上、1000000以下の高分子化合物(繰り返し単位が連なる重合型化合物)を用いることが好ましい。芳香族三級アミン高分子化合物の好ましい例としては、本発明の重合体の他に、下記式(7)で表される繰り返し単位を有する高分子化合物等が挙げられる。
Figure 2018119044
(上記式(7)中、Arb1及びArb2は、各々独立して、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基、又は置換基を有していてもよい芳香族複素環基を表わす。Arb3〜A
b5は、各々独立して、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基、又は置換基を有
していてもよい芳香族複素環基を表わす。Zbは、下記の連結基群の中から選ばれる連結
基を表わす。また、Arb1〜Arb5のうち、同一のN原子に結合する二つの基は互いに結合して環を形成してもよい。)
Figure 2018119044
(上記各式中、Arb6〜Arb16は、各々独立して、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素、又は置換基を有していてもよい芳香族複素環由来の1価又は2価の基を表わす。Rb1及びRb2は、各々独立して、水素原子又は任意の置換基を表わす。)
Arb1〜Arb16としては、任意の芳香族炭化水素又は芳香族複素環由来の1価又は2価の基が適用可能である。これらの基は各々同一であっても、互いに異なって いても
よい。また、これらの基は、更に任意の置換基を有していてもよい。
一般式(7)で表される繰り返し単位を有する芳香族三級アミン高分子化合物の具体例としては、国際公開第2005/089024号パンフレットに記載の化合物が挙げられる。
正孔注入層3には、正孔輸送性化合物の酸化により、正孔注入層の導電率を向上させることができるため、前述の電子受容性化合物や、前述のカチオンラジカル化合物を含有していることが好ましい。
PEDOT/PSS(Adv.Mater.,2000年,12巻,481頁)やエメラルジン塩酸塩(J.Phys.Chem.,1990年,94巻,7716頁)等の高分子化合物由来のカチオンラジカル化合物は、酸化重合(脱水素重合)することによっても生成する。
ここでいう酸化重合は、モノマーを酸性溶液中で、ペルオキソ二硫酸塩等を用いて化学的に、又は、電気化学的に酸化するものである。この酸化重合(脱水素重合)の場合、モノマーが酸化されることにより高分子化されるとともに、酸性溶液由来のアニオンを対アニオンとする、高分子の繰り返し単位から一電子取り除かれたカチオンラジカルが生成する。
[湿式成膜法による正孔注入層の形成]
湿式成膜法により正孔注入層3を形成する場合、通常、正孔注入層となる材料を可溶な溶媒(正孔注入層用溶媒)と混合して成膜用の組成物(正孔注入層形成用組成物)を調製し、この正孔注入層形成用組成物を正孔注入層の下層に該当する層(通常は、陽極)上に塗布して成膜し、乾燥させることにより形成する。
正孔注入層の膜厚は、通常5nm以上、好ましくは10nm以上、また、通常1000nm以下、好ましくは500nm以下の範囲である。
なお、正孔注入層における電子受容性化合物の正孔輸送性化合物に対する含有量は、通常0.1モル%以上、好ましくは1モル%以上である。但し、通常100モル%以下、好ましくは40モル%以下である。
[その他の構成材料]
正孔注入層の材料としては、本発明の効果を著しく損なわない限り、上述の正孔輸送性化合物や電子受容性化合物に加えて、さらに、その他の成分を含有させてもよい。その他の成分の例としては、各種の発光材料、電子輸送性化合物、バインダー樹脂、塗布性改良剤などが挙げられる。なお、その他の成分は、1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
[溶剤]
湿式成膜法に用いる正孔注入層形成用組成物の溶剤のうち少なくとも1種は、上述の正孔注入層の構成材料を溶解しうる化合物であることが好ましい。また、この溶剤の沸点は通常110℃以上、好ましくは140℃以上、中でも200℃以上、通常400℃以下、中でも300℃以下であることが好ましい。溶剤の沸点が低すぎると、乾燥速度が速すぎ、膜質が悪化する可能性がある。また、溶剤の沸点が高すぎると乾燥工程の温度を高くする必要があり、他の層や基板に悪影響を与える可能性がある。
溶剤として例えば、エーテル系溶剤、エステル系溶剤、芳香族炭化水素系溶剤、アミド系溶剤などが挙げられる。
エーテル系溶剤としては、例えば、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコール−1−モノメチルエーテルアセタート(PGMEA)等の脂肪族エーテル;1,2−ジメトキシベンゼン、1,3−ジメトキシベンゼン、アニソール、フェネトール、2−メトキシトルエン、3−メトキシトルエン、4−メトキシトルエン、2,3−ジメチルアニソール、2,4−ジメチルアニソール等の芳香族エーテル、等が挙げられる。
エステル系溶剤としては、例えば、酢酸フェニル、プロピオン酸フェニル、安息香酸メチル、安息香酸エチル、安息香酸プロピル、安息香酸n−ブチル等の芳香族エステル、等が挙げられる。
芳香族炭化水素系溶剤としては、例えば、トルエン、キシレン、シクロヘキシルベンゼン、3−イロプロピルビフェニル、1,2,3,4−テトラメチルベンゼン、1,4−ジイソプロピルベンゼン、シクロヘキシルベンゼン、メチルナフタレン等が挙げられる。
アミド系溶剤としては、例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、等が挙げられる。
その他、ジメチルスルホキシド、等も用いることができる。
これらの溶剤は1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で用いてもよい。
[成膜方法]
正孔注入層形成用組成物を調製後、この組成物を湿式成膜により、正孔注入層の下層に該当する層(通常は、陽極)上に塗布し、乾燥することにより正孔注入層を形成する。
成膜工程における温度は、組成物中に結晶が生じることによる膜の欠損を防ぐため、10℃以上が好ましく、50℃以下が好ましい。
成膜工程における相対湿度は、本発明の効果を著しく損なわない限り限定されないが、通常0.01ppm以上、通常80%以下である。
塗布後、通常加熱等により正孔注入層形成用組成物の膜を乾燥させる。乾燥させる方法としては、通常、加熱工程が行なわれる。加熱工程において使用する加熱手段の例を挙げると、クリーンオーブン、ホットプレート、赤外線、ハロゲンヒーター、マイクロ波照射などが挙げられる。中でも、膜全体に均等に熱を与えるためには、クリーンオーブン及び
ホットプレートが好ましい。
加熱工程における加熱温度は、本発明の効果を著しく損なわない限り、正孔注入層形成用組成物に用いた溶剤の沸点以上の温度で加熱することが好ましい。また、正孔注入層形成用組成物に用いた溶剤が2種類以上含まれている混合溶剤の場合、少なくとも1種類がその溶剤の沸点以上の温度で加熱されるのが好ましい。溶剤の沸点上昇を考慮すると、加熱工程においては、好ましくは120℃以上、好ましくは410℃以下で加熱することが好ましい。
加熱工程において、加熱温度が正孔注入層形成用組成物の溶剤の沸点以上が好ましい。また、加熱時間は、塗布膜の十分な架橋が起こらなければ限定されないが、好ましくは10秒以上、通常180分以下である。加熱時間が長すぎると他の層の成分が拡散する傾向があり、短すぎると正孔注入層が不均質になる傾向がある。加熱は2回にわけて行ってもよい。
<真空蒸着法による正孔注入層の形成>
真空蒸着により正孔注入層を形成する場合には、正孔注入層の構成材料(前述の正孔輸送性化合物、電子受容性化合物等)の1種又は2種以上を真空容器内に設置されたるつぼに入れ(2種以上の材料を用いる場合は各々のるつぼに入れ)、真空容器内を適当な真空ポンプで10−4Pa程度まで排気した後、るつぼを加熱して(2種以上の材料を用いる場合は各々のるつぼを加熱して)、蒸発量を制御して蒸発させ(2種以上の材料を用いる場合は各々独立に蒸発量を制御して蒸発させ)、るつぼと向き合って置かれた基板の陽極上に正孔注入層を形成させる。なお、2種以上の材料を用いる場合は、それらの混合物をるつぼに入れ、加熱、蒸発させて正孔注入層を形成することもできる。
蒸着時の真空度は、本発明の効果を著しく損なわない限り限定されないが、通常0.1×10−6Torr(0.13×10−4Pa)以上、通常9.0×10−6Torr(12.0×10−4Pa)以下である。蒸着速度は、本発明の効果を著しく損なわない限り限定されないが、通常0.1Å/秒以上、通常5.0Å/秒以下である。蒸着時の成膜温度は、本発明の効果を著しく損なわない限り限定されないが、好ましくは10℃以上で、好ましくは50℃以下で行われる。
正孔注入層の膜厚は、通常5nm以上、好ましくは10nm以上、また、通常1000nm以下、好ましくは500nm以下の範囲である。
[正孔輸送層]
正孔輸送層は、正孔注入層がある場合には正孔注入層の上に、正孔注入層が無い場合には陽極の上に形成することができる。また、本発明の有機電界発光素子は、正孔輸送層を省いた構成であってもよい。
正孔輸送層を形成する材料としては、正孔輸送能が高く、かつ、注入された正孔を効率よく輸送することができる材料であることが好ましい。そのために、イオン化ポテンシャルが小さく、可視光の光に対して透明性が高く、正孔移動度が大きく、安定性に優れ、トラップとなる不純物が製造時や使用時に発生しにくいことが好ましい。また、多くの場合、発光層に接するため、発光層からの発光を消光したり、発光層との間でエキサイプレックスを形成して効率を低下させたりしないことが好ましい。
正孔輸送性化合物としては、上記の点から、特に、本発明のアリールアミンポリマーであることが好ましい。本発明のアリールアミンポリマー以外の化合物を正孔輸送性化合物として用いる場合、従来、正孔輸送層の構成材料として用いられている材料を用いることができる。従来用いられている材料としては、例えば、前述の正孔注入層に使用される正孔輸送性化合物として例示したものが挙げられる。また、4,4'−ビス[N−(1−ナ
フチル)−N−フェニルアミノ]ビフェニルで代表わされる2個以上の3級アミンを含み2個以上の縮合芳香族環が窒素原子に置換した芳香族ジアミン(特開平5−234681号公報)、4,4’,4’’−トリス(1−ナフチルフェニルアミノ)トリフェニルアミン等のスターバースト構造を有する芳香族アミン化合物(J.Lumin.,72−74巻、985頁、1997年)、トリフェニルアミンの四量体から成る芳香族アミン化合物(Chem.Commun.,2175頁、1996年)、2,2',7,7'−テトラキス−(ジフェニルアミノ)−9,9'−スピロビフルオレン等のスピロ化合物(Synt
h.Metals,91巻、209頁、1997年)、4,4'−N,N'−ジカルバゾールビフェニルなどのカルバゾール誘導体などが挙げられる。また、例えばポリビニルカルバゾール、ポリビニルトリフェニルアミン(特開平7−53953号公報)、テトラフェニルベンジジンを含有するポリアリーレンエーテルサルホン(Polym.Adv.Tech.,7巻、33頁、1996年)等が挙げられる。
湿式成膜で正孔輸送層を形成する場合は、上記正孔注入層の形成と同様にして、正孔輸送層形成用組成物を調製した後、塗布後、加熱乾燥させる。
正孔輸送層形成用組成物には、上述の正孔輸送性化合物の他、溶剤を含有する。用いる溶剤は上記正孔注入層形成用組成物に用いたものと同様である。また、塗布条件、加熱乾燥条件等も正孔注入層の形成の場合と同様である。
真空蒸着により正孔輸送層を形成する場合もまた、その成膜条件等は上記正孔注入層の形成の場合と同様である。
正孔輸送層は、上記正孔輸送性化合物の他、各種の発光材料、電子輸送性化合物、バインダー樹脂、塗布性改良剤などを含有していてもよい。
正孔輸送層はまた、架橋性化合物を架橋して形成される層であってもよい。架橋性化合物は、架橋性基を有する化合物であって、架橋することにより網目状高分子化合物を形成する。
この架橋性基の例を挙げると、オキセタン基、エポキシ基などの環状エーテル基;ビニル基、トリフルオロビニル基、スチリル基、アクリル基、メタクリロイル基、シンナモイル基等の不飽和二重結合を含む基;ベンゾシクロブテン環由来の基などが挙げられる。
架橋性化合物は、モノマー、オリゴマー、ポリマーのいずれであってもよい。架橋性化合物は1種のみを有していてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で有していてもよい。
架橋性化合物としては、架橋性基を有する正孔輸送性化合物を用いることが好ましい。正孔輸送性化合物の例を挙げると、ピリジン誘導体、ピラジン誘導体、ピリミジン誘導体、トリアジン誘導体、キノリン誘導体、フェナントロリン誘導体、カルバゾール誘導体、フタロシアニン誘導体、ポルフィリン誘導体等の含窒素芳香族化合物誘導体;トリフェニルアミン誘導体;シロール誘導体;オリゴチオフェン誘導体、縮合多環芳香族誘導体、金属錯体などが挙げられる。その中でも、ピリジン誘導体、ピラジン誘導体、ピリミジン誘導体、トリアジン誘導体、キノリン誘導体、フェナントロリン誘導体、カルバゾール誘導体等の含窒素芳香族誘導体;トリフェニルアミン誘導体、シロール誘導体、縮合多環芳香族誘導体、金属錯体などが好ましく、特に、トリフェニルアミン誘導体がより好ましい。
架橋性化合物を架橋して正孔輸送層を形成するには、通常、架橋性化合物を溶剤に溶解又は分散した正孔輸送層形成用組成物を調製して、湿式成膜により塗布して架橋させる。
正孔輸送層形成用組成物には、架橋性化合物の他、架橋反応を促進する添加物を含んでいてもよい。架橋反応を促進する添加物の例を挙げると、アルキルフェノン化合物、アシルホスフィンオキサイド化合物、メタロセン化合物、オキシムエステル化合物、アゾ化合物、オニウム塩等の重合開始剤及び重合促進剤;縮合多環炭化水素、ポルフィリン化合物
、ジアリールケトン化合物等の光増感剤;などが挙げられる。
また、さらに、レベリング剤、消泡剤等の塗布性改良剤;電子受容性化合物;バインダー樹脂;などを含有していてもよい。
正孔輸送層形成用組成物は、架橋性化合物を通常0.01重量%以上、好ましくは0.05重量%以上、さらに好ましくは0.1重量%以上、通常50重量%以下、好ましくは20重量%以下、さらに好ましくは10重量%以下含有する。
このような濃度で架橋性化合物を含む正孔輸送層形成用組成物を下層(通常は正孔注入層)上に成膜後、加熱及び/又は光などの活性エネルギー照射により、架橋性化合物を架橋させて網目状高分子化合物にする。
塗布時の温度、湿度などの条件、並びに塗布後の加熱条件は、前記<有機電界発光素子>、[成膜方法]の項に記載の方法と同様である。また、好ましい態様も同様である。
正孔輸送層の膜厚は、通常5nm以上、好ましくは10nm以上、また、通常1000nm以下、好ましくは500nm以下の範囲である。
[発光層]
発光層は、正孔輸送層が有る場合には正孔輸送層の上に、正孔輸送層が無くて正孔注入層が有る場合には正孔注入層の上に、正孔輸送層と正孔注入層が無い場合には陽極の上に形成される。
発光層は前述の正孔注入層や正孔輸送層、及び後述する正孔阻止層や電子輸送層等とは独立した層であってもよいが、独立した発光層を形成せず、正孔輸送層や電子輸送層など他の有機層が発光層の役割を担ってもよい。
発光層は、電界を与えられた電極間において、陽極から直接に、又は正孔注入層や正孔輸送層等を通じて注入された正孔と、陰極から直接に、又は陰極バッファ層や電子輸送層や正孔阻止層等を通じて注入された電子との再結合により励起されて、主たる発光源となる層である。
発光層は、本発明の効果を著しく損なわない限り、任意の方法で形成することができるが、例えば、湿式成膜法又は真空蒸着法により陽極上に形成される。ただし、大面積の発光素子を製造する場合には、湿式成膜法の方が好ましい。湿式成膜法、及び真空蒸着法の方法は、正孔注入層と同様の方法を用いて行なうことができる。
発光層は、少なくとも、発光の性質を有する材料(発光材料)を含有するとともに、好ましくは、正孔輸送の性質を有する材料(正孔輸送材料)、或いは、電子輸送の性質を有する材料(電子輸送材料)とを含有する。更に、発光層は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、その他の成分を含有していてもよい。これらの材料としては、後述のように湿式成膜法で発光層を形成する観点から、何れも低分子系の材料を使用することが好ましい。
発光材料としては、任意の公知の材料を適用可能である。例えば、蛍光発光材料であってもよく、燐光発光材料であってもよいが、内部量子効率の観点から、好ましくは燐光発光材料である。
なお、溶剤への溶解性を向上させる目的で、発光材料の分子の対称性や剛性を低下させたり、或いはアルキル基などの親油性置換基を導入したりすることも、重要である。
以下、発光材料のうち蛍光色素の例を挙げるが、蛍光色素は以下の例示物に限定されるものではない。
青色発光を与える蛍光発光材料(青色蛍光色素)としては、例えば、ナフタレン、クリセン、ペリレン、ピレン、アントラセン、クマリン、p−ビス(2−フェニルエテニル)ベンゼン及びそれらの誘導体等が挙げられる。
緑色発光を与える蛍光色素(緑色蛍光色素)としては、例えば、キナクリドン誘導体、クマリン誘導体、Al(CNO)などのアルミニウム錯体等が挙げられる。
黄色発光を与える蛍光発光材料(黄色蛍光色素)としては、例えば、ルブレン、ペリミドン誘導体等が挙げられる。
赤色発光を与える蛍光発光材料(赤色蛍光色素)としては、例えば、DCM(4−(dicyanomethylene)−2−methyl−6−(p−dimethylaminostyryl)−4H−pyran)系化合物、ベンゾピラン誘導体、ローダミン誘導体、ベンゾチオキサンテン誘導体、アザベンゾチオキサンテン等が挙げられる。
燐光発光材料として、具体的には、トリス(2−フェニルピリジン)イリジウム、トリス(2−フェニルピリジン)ルテニウム、トリス(2−フェニルピリジン)パラジウム、ビス(2−フェニルピリジン)白金、トリス(2−フェニルピリジン)オスミウム、トリス(2−フェニルピリジン)レニウム、オクタエチル白金ポルフィリン、オクタフェニル白金ポルフィリン、オクタエチルパラジウムポルフィリン、オクタフェニルパラジウムポルフィリン等が挙げられる。
高分子系の発光材料としては、ポリ(9,9−ジオクチルフルオレン−2,7−ジイル)、ポリ[(9,9−ジオクチルフルオレン−2,7−ジイル)-co-(4,4’−(N
−(4−sec−ブチルフェニル))ジフェニルアミン)]、ポリ[(9,9−ジオクチルフルオレン−2,7−ジイル)-co-(1,4−ベンゾ−2{2,1’−3}−トリアゾール)]などのポリフルオレン系材料、ポリ[2−メトキシ−5−(2−ヘチルヘキシル
オキシ)−1,4−フェニレンビニレン]などのポリフェニレンビニレン系材料が挙げられる。
また、本発明のアリールアミンポリマーを発光材料として用いることもできる。
発光材料として用いる化合物の分子量は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常10000以下、好ましくは5000以下、より好ましくは4000以下、更に好ましくは3000以下、また、通常100以上、好ましくは200以上、より好ましくは300以上、更に好ましくは400以上の範囲である。発光材料の分子量が小さ過ぎると、耐熱性が著しく低下したり、ガス発生の原因となったり、膜を形成した際の膜質の低下を招いたり、あるいはマイグレーションなどによる有機電界発光素子のモルフォロジー変化を来したりする場合がある。一方、発光材料の分子量が大き過ぎると、有機化合物の精製が困難となってしまったり、溶剤に溶解させる際に時間を要したりする傾向がある。
なお、上述した発光材料は、いずれか1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
発光層における発光材料の割合は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、好ましくは0.05重量%以上、好ましくは35重量%以下である。発光材料が少なすぎると発光ムラを生じる可能性があり、多すぎると電流効率が低下する可能性がある。なお、2種以上の発光材料を併用する場合には、これらの合計の含有量が上記範囲に含まれるようにする。
低分子系の正孔輸送材料の例としては、前述の正孔輸送層の正孔輸送材料として例示した各種の化合物の他、4,4’−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ]ビフェニルに代表される、2個以上の3級アミンを含み2個以上の縮合芳香族環が窒素原子に置換した芳香族ジアミン(特開平5−234681号公報)、4,4’,4” −トリ
ス(1−ナフチルフェニルアミノ)トリフェニルアミン等のスターバースト構造を有する芳香族アミン化合物(Journal of Luminescence,1997年,Vol.72-74,pp.985)、トリフェニルアミンの四量体から成る芳香族アミン化合物(Chemical Communications,1996
年,pp.2175)、2,2’,7,7’−テトラキス−(ジフェニルアミノ)−9, 9’−スピロビフルオレン等のスピロ化合物(Synthetic Metals,1997年,Vol.91,pp.209)
等が挙げられる。
低分子系の電子輸送材料の例としては、2,5−ビス(1−ナフチル)−1,3,4−オキサジアゾール(BND)や、2,5−ビス(6’−(2’,2”−ビピリジル))−1,1−ジメチル−3,4−ジフェニルシロール(PyPySPyPy)や、バソフェナントロリン(BPhen)や、2,9−ジメチル−4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン(BCP、バソクプロイン)、2−(4−ビフェニリル)−5−(p−ターシャルブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール(tBu−PBD)や、4,4’−ビス(9−カルバゾール)−ビフェニル(CBP)、9,10-ジ-(2-ナフチル)アントラセン(ADN)等がある。
これら正孔輸送材料や電子輸送材料は発光層においてホスト材料として使用されることが好ましい。ホスト材料の具体例としては、特開2007−067383号公報、特開2007−88433号公報、特開2007−110093号公報に記載のものが挙げられ、その好適例も同様である。
発光層の形成法としては、湿式成膜法、真空蒸着法が挙げられるが、上述したように、均質で欠陥がない薄膜を容易に得られる点や、形成のための時間が短くて済む点、更には、本発明の有機化合物による正孔輸送層の架橋の効果を享受できる点から、湿式成膜法が好ましい。湿式成膜法により発光層を形成する場合、上述の材料を適切な溶剤に溶解させて塗布溶液を調製し、それを上述の形成後の正孔輸送層の上に塗布・成膜し、乾燥して溶剤を除去することにより形成する。その形成方法としては、前記正孔輸送層の形成方法と同様である。
発光層の膜厚は、通常3nm以上、好ましくは5nm以上、また、通常300nm以下、好ましくは100nm以下の範囲である。
[正孔阻止層]
発光層5と後述の電子注入層8との間に、正孔阻止層6を設けてもよい。正孔阻止層6は、発光層5の上に、発光層5の陰極9側の界面に接するように積層される層である。
この正孔阻止層6は、陽極2から移動してくる正孔を陰極9に到達するのを阻止する役割と、陰極9から注入された電子を効率よく発光層5の方向に輸送する役割とを有する。
正孔阻止層6を構成する材料に求められる物性としては、電子移動度が高く正孔移動度が低いこと、エネルギーギャップ(HOMO、LUMOの差)が大きいこと、励起三重項準位(T1)が高いことが挙げられる。このような条件を満たす正孔阻止層の材料としては、例えば、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)(フェノラト)アルミニウム、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)(トリフェニルシラノラト)アルミニウム等の混合配位子錯体、ビス(2−メチル−8−キノラト)アルミニウム−μ−オキソ−ビス−(2−メチル−8−キノリラト)アルミニウム二核金属錯体等の金属錯体、ジスチリルビフェニル誘導体等のスチリル化合物(特開平11−242996号公報)、3−(4−ビフェニルイル)−4−フェニル−5(4−tert−ブチルフェニル)−1,2,4−トリアゾール等のトリアゾール誘導体(特開平7−41759号公報)、バソクプロイン等のフェナントロリン誘導体(特開平10−79297号公報)などが挙げられる。更に、国際公開第2005−022962号パンフレットに記載の2,4,6位が置換されたピリジン環を少なくとも1個有する化合物も、正孔阻止層6の材料として好ましい。
なお、正孔阻止層6の材料は、1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
正孔阻止層6の形成方法に制限はない。従って、湿式成膜法、蒸着法や、その他の方法で形成できる。
正孔阻止層6の膜厚は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常0.3nm以上、好ましくは0.5nm以上、また、通常100nm以下、好ましくは50nm以下である。
[電子輸送層]
電子輸送層は素子の電流効率をさらに向上させることを目的として、発光層と電子注入層との間に設けられる。
電子輸送層は、電界を与えられた電極間において陰極から注入された電子を効率よく発光層の方向に輸送することができる化合物より形成される。電子輸送層に用いられる電子輸送性化合物としては、陰極又は電子注入層からの電子注入効率が高く、かつ、高い電子移動度を有し注入された電子を効率よく輸送することができる化合物であることが必要である。
このような条件を満たす材料としては、8−ヒドロキシキノリンのアルミニウム錯体などの金属錯体(特開昭59−194393号公報)、10−ヒドロキシベンゾ[h]キノリンの金属錯体、オキサジアゾール誘導体、ジスチリルビフェニル誘導体、シロール誘導体、3−又は5−ヒドロキシフラボン金属錯体、ベンズオキサゾール金属錯体、ベンゾチアゾール金属錯体、トリスベンズイミダゾリルベンゼン(米国特許第5,645,948号明細書)、キノキサリン化合物(特開平6−207169号公報)、フェナントロリン誘導体(特開平5−331459号公報)、2−t−ブチル−9,10−N,N’−ジシアノアントラキノンジイミン、n型水素化非晶質炭化シリコン、n型硫化亜鉛、n型セレン化亜鉛などが挙げられる。
電子輸送層の膜厚は、通常下限は1nm、好ましくは5nm程度であり、上限は通常300nm、好ましくは100nm程度である。
電子輸送層は、前記と同様にして湿式成膜法、或いは真空蒸着法により正孔阻止層上に積層することにより形成される。通常は、真空蒸着法が用いられる。
[電子注入層]
電子注入層は、陰極から注入された電子を効率よく、電子輸送層又は発光層へ注入する役割を果たす。
電子注入を効率よく行うには、電子注入層を形成する材料は、仕事関数の低い金属が好ましい。例としては、ナトリウムやセシウム等のアルカリ金属、バリウムやカルシウムなどのアルカリ土類金属等が用いられる。その膜厚は通常0.1nm以上、5nm以下が好ましい。
更に、後述するバソフェナントロリン等の含窒素複素環化合物や8−ヒドロキシキノリンのアルミニウム錯体などの金属錯体に代表される有機電子輸送材料に、ナトリウム、カリウム、セシウム、リチウム、ルビジウム等のアルカリ金属をドープする(特開平10−270171号公報、特開2002−100478号公報、特開2002−100482号公報などに記載)ことにより、電子注入・輸送性が向上し優れた膜質を両立させることが可能となるため好ましい。この場合の膜厚は通常、5nm以上、好ましくは10nm以上、また、通常200nm以下、好ましくは100nm以下の範囲である。
電子注入層は、湿式成膜法或いは真空蒸着法により、発光層又はその上の正孔阻止層上に積層することにより形成される。
湿式成膜法の場合の詳細は、正孔注入層及び発光層の場合と同様である。
一方、真空蒸着法の場合には、真空容器内に設置されたるつぼ又は金属ボートに蒸着源を入れ、真空容器内を適当な真空ポンプで10−4Pa程度にまで排気した後、るつぼ又は金属ボートを加熱して蒸発させ、るつぼ又は金属ボートと向き合って置かれた基板上の発光層、正孔阻止層又は電子輸送層上に電子注入層を形成する。
電子注入層としてのアルカリ金属の蒸着は、クロム酸アルカリ金属と還元剤をニクロムに充填したアルカリ金属ディスペンサーを用いて行う。このディスペンサーを真空容器内で加熱することにより、クロム酸アルカリ金属が還元されてアルカリ金属が蒸発される。有機電子輸送材料とアルカリ金属とを共蒸着する場合は、有機電子輸送材料を真空容器内に設置されたるつぼに入れ、真空容器内を適当な真空ポンプで10−4Pa程度にまで排気した後、各々のるつぼ及びディスペンサーを同時に加熱して蒸発させ、るつぼ及びディスペンサーと向き合って置かれた基板上に電子注入層を形成する。
このとき、電子注入層の膜厚方向において均一に共蒸着されるが、膜厚方向において濃度分布があっても構わない。
[陰極]
陰極は、発光層側の層(電子注入層又は発光層など)に電子を注入する役割を果たす。陰極の材料としては、前記の陽極に使用される材料を用いることが可能であるが、効率よく電子注入を行うには、仕事関数の低い金属が好ましく、スズ、マグネシウム、インジウム、カルシウム、アルミニウム、銀等の適当な金属又はそれらの合金が用いられる。具体例としては、マグネシウム−銀合金、マグネシウム−インジウム合金、アルミニウム−リチウム合金等の低仕事関数合金電極が挙げられる。
陰極の膜厚は通常、陽極と同様である。
低仕事関数金属から成る陰極を保護する目的で、この上に更に、仕事関数が高く大気に対して安定な金属層を積層すると、素子の安定性が増すので好ましい。この目的のために、アルミニウム、銀、銅、ニッケル、クロム、金、白金等の金属が使われる。
[その他]
以上、図1に示す層構成の有機電界発光素子を例に説明してきたが、本発明の有機電界発光素子は、その趣旨を逸脱しない範囲において、別の構成を有していてもよい。例えば、その性能を損なわない限り、陽極と陰極との間に、上記説明にある層の他に任意の層を有していてもよく、また、任意の層が省略されていてもよい。
なお、本発明においては、正孔輸送層に本発明のアリールアミンポリマーを使用することにより、正孔注入層、正孔輸送層及び発光層を全て湿式成膜法により積層形成することができる。これにより、大面積のディスプレイを製造することが可能となる。
なお、図1とは逆の構造、即ち、基板上に陰極、電子注入層、発光層、正孔注入層、陽極の順に積層することも可能であり、既述したように少なくとも一方が透明性の高い2枚の基板の間に本発明の有機電界発光素子を設けることも可能である。
さらには、図1に示す層構成を複数段重ねた構造(発光ユニットを複数積層させた構造)とすることも可能である。その際には段間(発光ユニット間)の界面層(陽極がITO、陰極がAlの場合はその2層)の代わりに、例えばV25等を電荷発生層(CGL)として用いると段間の障壁が少なくなり、電流効率・駆動電圧の観点からより好ましい。
本発明は、有機電界発光素子が、単一の素子、アレイ状に配置された構造からなる素子、陽極と陰極がX−Yマトリックス状に配置された構造のいずれにおいても適用することができる。
<有機EL表示装置>
本発明の有機EL表示装置は、上述の本発明の有機電界発光素子を用いたものである。本発明の有機EL表示装置の型式や構造については特に制限はなく、本発明の有機電界発光素子を用いて常法に従って組み立てることができる。
例えば、「有機ELディスプレイ」(オーム社、平成16年8月20日発行、時任静士、安達千波矢、村田英幸著)に記載されているような方法で、本発明の有機EL表示装置
を形成することができる。
<有機EL照明>
本発明の有機EL照明は、上述の本発明の有機電界発光素子を用いたものである。本発明の有機EL照明の型式や構造については特に制限はなく、本発明の有機電界発光素子を用いて常法に従って組み立てることができる。
(モノマーの合成)
Figure 2018119044
3,6−ジヨード−9−フェニルカルバゾール(21.4g、43.22mmol)、3−ブロモフェニルボロン酸(17.53g、87.31mmol)、リン酸カリウム(36.7g、172.88mmol)、及びトルエン(200ml)、エタノール(100ml)、水(86ml)をフラスコに仕込み、系内を十分に窒素置換して65℃まで加温した。ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)ジクロリド(0.31g、0.437mmol)を加え、70℃で5時間攪拌した。反応液に水を加え、トルエンで抽出を行った。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥して活性白土より粗精製した。粗精製品をカラムクロマトグラフィー(展開液:ヘキサン/塩化メチレン=9/1)により精製し、化合物1(14.3g、収率59.0%)を得た。
Figure 2018119044
次いで、窒素気流下、500mlのフラスコに250mlのジメチルスルホンキシド、化合物1(14.1g、25.48mmol)、ビス(ピナコラト)ジボロン(16.2g、63.71mmol)、酢酸カリウム(15.0g、152.88mmol)を入れ、60℃で30分間攪拌した。その後1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン-
パラジウム(II)ジクロリド-ジクロロメタン〔PdCl(dppf)CHCl〕(
2.1g、2.55mmol)を加え、85℃で6時間反応した。反応液を減圧濾過し、濾液がトルエンで抽出し、無水硫酸マグネシウムで乾燥して活性白土により粗精製した。更に粗精製品をカラムクロマトグラフィー(展開液:ヘキサン/塩化メチレン=4/1)により精製し、化合物2(10.2g、収率61.8%)を得た。
Figure 2018119044
次いで、化合物2(10.15g、15.68mmol)、1−ブロモ−4−ヨードベンゼン(9.3g、32.92mmol)、リン酸カリウム(17.5g、82.3mmol)、及びトルエン(160ml)、エタノール(80ml)、水(42ml)をフラスコに仕込み、系内を十分に窒素置換して65℃まで加温した。テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0.51g、0.441mmol)を加え、80℃で8時間攪拌した。反応液に水を加え、トルエンで抽出を行った。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥して活性白土より粗精製した。粗精製品をカラムクロマトグラフィー(展開液:ヘキサン/塩化メチレン=4/1)により精製し、化合物3(9.5g、収率85.9%)を得た。
(重合体1の合成)
Figure 2018119044
Figure 2018119044
化合物3(3.00g、4.25mmol)、化合物4(2.97g、8.50mmol)、及びtert-ブトキシナトリウム(3.15g、32.78mmol)、トルエン(
43ml)を仕込み、系内を十分に窒素置換して、60℃まで加温した(溶液A)。トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム錯体(0.08g、0.09mmol)のトルエン5ml溶液に、[4-(N,N-ジメチルアミノ)フェニル]ジ-tert-ブチルホスフィン(
Amphos)(0.18g、0.70mmol)を加え、60℃まで加温した(溶液B)。窒素気流中、溶液Aに溶液Bを添加し、1.0時間、加熱還流反応した。化合物3、4が消失したことを確認し、化合物3(1.86g、2.64mmol)を添加した。1時間加熱還流後、化合物5(0.651g、0.90mmol)を追添加した。1時間加熱還流後、化合物3(0.27g、0.38mmol)を添加した。1時間加熱還流後、4−ブロモビフェニル(0.99g、4.25mmol)を添加し、2時間加熱還流反応した。反応液を放冷し、トルエン50ml添加してエタノール/水(500ml/90ml)溶液に滴下し、エンドキャップした粗ポリマーを得た。
このエンドキャップした粗ポリマーをトルエンに溶解し、アセトンに再沈殿し、析出したポリマーを濾別した。得られたポリマーをトルエンに溶解させ、希塩酸にて洗浄し、アンモニア含有エタノールにて再沈殿した。濾取したポリマーをカラムクロマトグラフィーにより精製し、目的物である重合体1を得た(2.4g)。得られた重合体1の分子量等は以下の通りであった。
重量平均分子量(Mw)=38700
数平均分子量(Mn)=30700
分散度(Mw/Mn)=1.26
<溶解度試験>
上記合成された重合体1について、室温(25℃)でのトルエンに対する溶解度試験を行った。その結果、重合体1の、室温(25℃)でのトルエンに対する溶解度は、5重量%以上であった。
(実施例1)
以下に説明する要領で、図1に示す構造を有する有機電界発光素子を作製した。
ガラス基板1上に、インジウム・スズ酸化物(ITO)透明導電膜を70nmの厚さに堆積したもの(三容真空社製、スパッタ成膜品)を、通常のフォトリソグラフィー技術と塩酸エッチングを用いて2mm幅のストライプにパターニングして陽極2を形成し、ITO基板を得た。
パターン形成したITO基板を、界面活性剤水溶液による超音波洗浄、超純水による水洗、超純水による超音波洗浄、超純水による水洗の順で洗浄後、圧縮空気で乾燥させ、最後に紫外線オゾン洗浄を行った。
以下の構造式(P−1)に示す高分子化合物、構造式(A1)に示す4−イソプロピル−4’−メチルジフェニルヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボラートおよび安息香酸エチルを含有する正孔注入層形成用塗布液を下記の組成で調製した。この塗布液を孔径0.2μmのPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)製メンブレンフィルターを用いて濾過し、塗布組成物を作製した。この塗布組成物を上記ITO基板上にスピンコートした。スピンコートは気温23℃、相対湿度60%の大気中で行い、加熱により架橋させることにより膜厚30nmの正孔注入層3を形成した。成膜条件を下記に示す。
Figure 2018119044
Figure 2018119044
<正孔注入層形成用塗布液>
溶剤 安息香酸エチル
塗布液濃度 P−1:2.0重量%
A1:0.4重量%
<正孔注入層の成膜条件>
スピナ回転数 2250rpm
スピナ回転時間 30秒
スピンコート雰囲気 大気中
加熱条件 大気中 230℃ 1時間
引き続き、先に示した重合体1を含有する有機電界発光素子用組成物として正孔輸送層用組成物を下記の組成で調製し、下記の成膜条件でスピンコートにより塗布して、加熱により架橋させることにより膜厚20nmの正孔輸送層4を形成した。成膜条件を下記に示す。
<有機電界発光素子用組成物>
溶剤 シクロヘキシルベンゼン
固形分濃度 1.5重量%
<正孔輸送層の成膜条件>
スピナ回転数 1250rpm
スピナ回転時間 120秒
スピンコート雰囲気 窒素中
加熱条件 窒素中、230℃、1時間
次に、発光層5を形成するにあたり、以下に示す有機化合物(GH−1、GH−2、GH−3およびGD−1)を用いて下記の組成で発光層用組成物を調製し、下記の成膜条件でスピンコートにより塗布して、加熱により乾燥させることにより正孔輸送層4上に膜厚40nmの発光層5を形成した。
Figure 2018119044
Figure 2018119044
<発光層用組成物>
溶剤 シクロヘキシルベンゼン
塗布液濃度 (GH−1):0.675重量%
(GH−2):0.675重量%
(GH−3):1.65重量%
(GD−1):0.9重量%
<発光層の成膜条件>
スピナ回転数 1850rpm
スピナ回転時間 120秒
スピンコート雰囲気 窒素中
加熱条件 120℃、20分間
ここで、発光層5までを成膜した基板を、真空蒸着装置内に移し、装置内の真空度が1.3×10−4Pa以下になるまで排気した後、膜厚5nmのGH−2を真空蒸着法によって発光層5の上に積層し、正孔阻止層6を形成した。
続いて、下記に示す構造を有する有機化合物(ET−1)を加熱して正孔阻止層6上に蒸着を行い、電子輸送層7を成膜した。蒸着時の真空度は1.3×10−4Pa、蒸着速度は1.6〜1.8Å/秒の範囲で制御し、膜厚は5nmとした。
Figure 2018119044
ここで、電子輸送層7までの蒸着を行った基板を一度取り出し、別の蒸着装置に設置し、陰極蒸着用のマスクとして2mm幅のストライプ状シャドーマスクを、陽極2のITOストライプとは直交するように基板に密着させて、装置内の真空度が2.3×10−4Pa以下になるまで排気を行った。
次に、電子注入層8として、先ずフッ化リチウム(LiF)を、モリブデンボートを用いて、蒸着速度0.1Å/秒、0.5nmの膜厚で電子輸送層7の上に成膜した。蒸着時の真空度は2.6×10−4Paであった。
次に、陰極9としてアルミニウムを同様にモリブデンボートにより加熱して、蒸着速度1.0〜4.9Å/秒の範囲で制御し、膜厚80nmのアルミニウム層を形成した。蒸着時の真空度は2.6×10−4Paであった。以上の2層の蒸着時の基板温度は室温に保持した。
引き続き、有機電界発光素子が保管中に大気中の水分等で劣化することを防ぐため、以下に記載の方法で封止処理を行った。
窒素グローブボックス中で、23mm×23mmサイズのガラス板の外周部に、約1mmの幅で光硬化性樹脂30Y−437(スリーボンド社製)を塗布し、中央部に水分ゲッターシート(ダイニック株式会社製)を設置した。この上に、陰極形成を終了した基板を、蒸着された面が乾燥剤シートと対向するように貼り合わせた。その後、光硬化性樹脂が塗布された領域のみに紫外光を照射し、樹脂を硬化させた。
以上の様にして、2mm×2mmのサイズの発光面積部分を有する有機電界発光素子を作製した。
(比較例1)
重合体1の代わりに、下記H1で示される比較重合体1を用いたこと以外は、実施例1と同様にして図1に示す有機電界発光素子を作製した。
Figure 2018119044
<有機電界発光素子の電流−電圧特性の評価>
実施例1および比較例1で得られた有機電界発光素子の電流−電圧特性の評価を行い、
駆動電圧、電流効率、および駆動寿命の評価を行った結果を表3に示す。
Figure 2018119044
駆動電圧については、実施例1および比較例1の有機電界発光素子を1000cd/mで発光させた時の駆動電圧(V)を測定し、比較例1の駆動電圧を引いた値を表3に示した。
電流効率については、実施例1および比較例1の有機電界発光素子を1000cd/mで発光させた時の電流効率(cd/A)を測定し、比較例1の電流効率を1.0とし、比較例1の電流効率に対する比(相対値)を表3に示した。
駆動寿命については、実施例1および比較例1の有機電界発光素子を15mA/cmで駆動し、輝度が初期の95%になった時の時間(h)を駆動寿命として測定し、比較例1の駆動寿命を1.0とし、比較例1の駆動寿命に対する比(相対値)を表3に示した。
表3に示すが如く、本発明の重合体を用いて形成した有機電界発光素子は、駆動電圧が低く、電流効率が高く、駆動寿命が長いことがわかる。
本発明は、有機電界発光素子が使用される各種の分野、例えば、フラットパネル・ディスプレイ(例えばOAコンピュータ用や壁掛けテレビ)や、面発光体としての特徴を生かした光源(例えば、複写機の光源、液晶ディスプレイや計器類のバックライト光源)、表示板、標識灯等の分野において、好適に使用することが出来る。
1 基板
2 陽極
3 正孔注入層
4 正孔輸送層
5 発光層
6 正孔阻止層
7 電子輸送層
8 電子注入層
9 陰極
10 有機電界発光素子

Claims (11)

  1. 下記式(1)で表される繰り返し単位を有する重合体。
    Figure 2018119044
    (式中、Ar、Ar、Arは、各々独立に、置換基を有していても良い、芳香族炭化水素基又は芳香族複素環基を表し、Rは、置換基を有していてもよい、アルキル基、芳香族炭化水素基又は芳香族複素環基を表す。)
  2. 架橋性基を有する請求項1に記載の重合体。
  3. 前記Arが、置換基を有していても良い2−フルオレニル基である請求項1又請求項2に記載の重合体。
  4. 前記架橋性基が、芳香族環に縮環したシクロブテン環を含む基である請求項2又は請求項3に記載の重合体。
  5. 重量平均分子量(Mw)が5,000以上であり、分散度(Mw/Mn)が3.5以下である請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載の重合体。
  6. 請求項1〜請求項5のいずれか一項に記載の重合体を含有することを特徴とする有機電界発光素子用組成物。
  7. 基板上に、陽極、陰極、及び該陽極と該陰極の間に有機層を有する有機電界発光素子であって、該有機層が、請求項6に記載の有機電界発光素子用組成物を用いて、湿式成膜法で形成された層を含むことを特徴とする有機電界発光素子。
  8. 前記湿式成膜法で形成された層が、正孔注入層及び正孔輸送層のうちの少なくとも一つである、請求項7に記載の有機電界発光素子。
  9. 陽極と陰極の間に正孔注入層、正孔輸送層及び発光層を含み、前記正孔注入層、正孔輸送層及び発光層は、全て湿式成膜法により形成されたものである、請求項7又は請求項8に記載の有機電界発光素子。
  10. 請求項7〜請求項9のいずれか一項に記載の有機電界発光素子を有することを特徴とする有機EL表示装置。
  11. 請求項7〜請求項9のいずれか一項に記載の有機電界発光素子を有することを特徴とする有機EL照明。
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