JP2018113790A - 太陽電池モジュール - Google Patents

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川井  正一
高木 知己
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高木  知己
長谷川 順
Jun Hasegawa
順 長谷川
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Susumu Sofue
進 祖父江
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Dae-Kwi Kim
大貴 金
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Abstract

【課題】コアシェル構造の半導体ナノ粒子の発光効率を高めることで、太陽電池の発電効率を高めることができる太陽電池モジュールを提供する。【解決手段】太陽電池モジュール1は、太陽電池20の受光側に配置され、特定の波長域の光を吸収して太陽電池20に受光される波長の光に変換する波長変換ナノ粒子61を含んだ波長変換部60を備えている。この波長変換ナノ粒子61は、特定の波長域の光を励起光として吸収することによって励起状態を発生させるコア部62を有する。また、波長変換ナノ粒子61は、コア部62を覆うと共に、励起状態のコア部62からのエネルギー移動に伴ってバンドギャップエネルギーに対応した波長の光を太陽電池20に受光される波長の光として発生させる発光源としてのイオンを含んでおり、さらに最表面66に水溶性配位子が配置されたシェル部63を有している。【選択図】図2

Description

本発明は、太陽電池モジュールに関する。
従来、太陽等の光によって発電を行う太陽電池は、光の全波長域に対して同一の発電効果を持つのではなく、材料自体の特性によって最大効率の波長域がある程度限定されている。このため、太陽電池の発電効率を追求する場合、発電に利用できる波長域が狭くなる傾向がある。
そこで、発電効率を改善するために、波長変換材料を含む波長変換膜を基材に設けることにより、発電効率の低い紫外光領域の波長から、発電効率の高い可視光領域の波長に変換する構成が、例えば特許文献1で提案されている。
特開2016−27065号公報
ところで、バンドギャップエネルギーがより大きい化合物でコアが被覆されたコアシェル構造の半導体ナノ粒子では、半導体ナノ粒子表面のエネルギー状態が安定するため、半導体ナノ粒子の発光効率が向上することが知られている。そこで、発光効率の高い半導体ナノ粒子を波長変換材料として用いることで、発電効率の高い太陽電池モジュールを実現することができると考えられる。
しかしながら、コアとシェルとの間の格子不整合に起因して、多数の結晶欠陥が発生したり、コアやシェルの表面に凹凸が発生する。このため、コア及びその上のシェルの結晶性が著しく低下し、表面に結晶欠陥が出来易くなるので、バンド端発光以外にも結晶欠陥による弱い発光が起き、ひいては発光効率が低下するという問題がある。
本発明は上記点に鑑み、コアシェル構造の半導体ナノ粒子の発光効率を高めることで、太陽電池の発電効率を高めることができる太陽電池モジュールを提供することを目的とする。
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、太陽電池モジュールは、光を受光して発電する板状の太陽電池(20)と、太陽電池の受光側に配置され、特定の波長域の光を吸収して太陽電池に受光される波長の光に変換する波長変換ナノ粒子(61)を含んだ波長変換部(60)と、を備えている。
波長変換ナノ粒子は、特定の波長域の光を励起光として吸収することによって励起状態を発生させるコア部(62)と、コア部を覆うと共に、励起状態のコア部からのエネルギー移動に伴ってバンドギャップエネルギーに対応した波長の光を太陽電池に受光される波長の光として発生させる発光源としてのイオンを含んでおり、さらに最表面(66)に水溶性配位子が配置されたシェル部(63)と、を有して構成されている。
これによると、コア部の製造時に長時間の加熱を行っても白濁が起こらないので、コア部の結晶性が向上する。これに伴い、シェル部の結晶性も向上する。このため、波長変換ナノ粒子の全体で結晶欠陥が少ない構造を得ることができる。また、波長変換ナノ粒子における結晶欠陥による発光を抑制することができ、ひいては波長変換ナノ粒子の発光強度を向上させることができる。したがって、太陽電池の発電効率を高めることができる。
なお、この欄及び特許請求の範囲で記載した各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
本発明の第1実施形態に係る太陽電池モジュールの断面図である。 波長変換ナノ粒子の断面図である。 波長変換ナノ粒子の波長変換機能を説明するための図である。 波長変換ナノ粒子の製造工程を示した図である。 波長変換ナノ粒子と比較品の発光スペクトルを示した図である。 波長変換ナノ粒子にMnをドープしたものとドープしないものの発光スペクトルを示した図である。 コア部のシェル化の回数を変化させたときの波長変換ナノ粒子の発光スペクトルを示した図である。 図7に示された波長変換ナノ粒子の発光スペクトルに対する比較例として、コアにMnイオンがドープされたものについての発光スペクトルを示した図である。 S/Se比と内部量子効率との関係を示した図である。 S/Se比を変化させたときの波長変換ナノ粒子の発光スペクトルを示した図である。 保護板の側面に傾斜が設けられていない構成を示した断面図である。 図11に示された構成に波長変換部が設けられていない従来のモジュール構成、図11に示されたモジュール構成、図1に示されたモジュール構成の各構成の平均の発電量を示した図である。 本発明の第2実施形態に係る太陽電池モジュールの断面図である。 図13の変形例を示した太陽電池モジュールの断面図である。 本発明の第3実施形態に係る太陽電池モジュールの断面図である。 図15の変形例を示した太陽電池モジュールの断面図である。 本発明の第4実施形態に係る太陽電池モジュールの断面図である。 図17の変形例を示した太陽電池モジュールの断面図である。 本発明の第5実施形態に係る太陽電池モジュールの断面図である。 図19の変形例を示した太陽電池モジュールの断面図である。 本発明の第6実施形態に係る太陽電池モジュールの断面図である。 図21の変形例を示した太陽電池モジュールの断面図である。 本発明の第7実施形態に係る太陽電池モジュールの断面図である。 図23の変形例を示した太陽電池モジュールの断面図である。 本発明の第8実施形態に係る太陽電池モジュールの断面図である。 図25の変形例を示した太陽電池モジュールの断面図である。
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、図中、同一符号を付してある。
(第1実施形態)
以下、本発明の第1実施形態について図を参照して説明する。図1に示されるように、太陽電池モジュール1は、バックシート10、太陽電池20、充填材30、保護板40、反射膜50、波長変換部60、及びフレーム70を備えている。
バックシート10は、太陽電池モジュール1の底部を構成する板状の部品である。バックシート10は、例えばポリエチレンテレフタレート樹脂によって形成されている。
太陽電池20は、受光面21で受光した光を吸収して起電力を発生させることにより発電する発電手段である。太陽電池20は、例えばシリコン系の半導体材料によって構成されている。また、太陽電池20は板状に構成されており、複数個が並べられている。
充填材30は、透光性を有すると共に、太陽電池20を封止する封止材である。充填材30は、太陽電池20を封止したことにより板状になっている。また、充填材30は、太陽電池20を封止した状態でバックシート10の上に配置されている。充填材30は、例えば、エチレン−酢酸ビニル重合体やシリコーン樹脂等によって形成されている。
保護板40は、バックシート10と共に太陽電池20及び充填材30を保護する板状の部品である。保護板40は、透光性を有する板材であり、外部から光が入射する一面41と、一面41よりも太陽電池20側に位置する他面42と、一面41及び他面42に接する側面43と、を有している。そして、保護板40は、他面42が充填材30に接触するように、充填材30に積層されている。保護板40は、例えば板ガラスである。
また、保護板40の側面43は、他面42側から一面41側に向かって当該一面41のサイズが小さくなるように、側面43の全体がテーパ状に傾斜している。これにより、保護板40の内部において当該傾斜面に至る光を太陽電池20側に反射させることができる。なお、保護板40の側面43は、一面41側の一部が傾斜するように構成されていても良い。保護板40の側面43は、当該側面43あるいは側面43の延長線と他面42とのなす角度が90度から150度であることが好ましい。
反射膜50は、バックシート10、太陽電池20を含む充填材30、及び保護板40によって構成された積層体の側面部を覆う部品である。反射膜50は、保護板40の内部において当該反射膜50に至る光を太陽電池20側に反射させる役割を果たす。反射膜50は、例えばアルミニウム等の光を反射するテープである。
波長変換部60は、特定の波長域の光を吸収して太陽電池20に受光される波長の光に変換する波長変換ナノ粒子61を含んだ波長変換手段である。特定の波長域の光とは、紫外光である。したがって、波長変換部60は、可視光領域の光を透過する一方、紫外光領域の光を可視光領域の光に変換する。波長変換ナノ粒子61は水熱合成で製作されたZnSeS:Mn材料である。波長変換ナノ粒子61については後述する。
波長変換部60は、太陽電池20の受光側に配置されている。つまり、波長変換部60と太陽電池20との間に保護板40が配置されている。これにより、太陽電池20には、波長変換部60を透過した光、波長変換部60によって波長変換された光、及び保護板40を透過した光が入射する。本実施形態では、波長変換部60は、保護板40のうち太陽電池20とは反対側に位置する一面41に膜状に配置されている。
具体的には、波長変換部60は、いわゆる有機アルコキシシランまたはアルコキシドガラス前駆体を使用するゾル−ゲル法によって波長変換ナノ粒子61が分散した溶液がガラス状に固化されて構成されている。すなわち、波長変換部60は、波長変換ナノ粒子61が混合された溶液の状態で用意され、スクリーン印刷や塗布の方法によって保護板40の一面41に膜状に形成されている。
フレーム70は、バックシート10、太陽電池20を含む充填材30、保護板40、及び反射膜50によって構成された積層体を保持する中空筒状の枠部品である。フレーム70は、例えばアルミニウムの金属体によって構成されている。
フレーム70は、内側が凹状に形成されている。フレーム70の内面は、保護板40の側面43の形状に合うように傾斜している。これにより、フレーム70は、積層体及び反射膜50を中空部分に嵌め込むと共に保持する。以上が、太陽電池モジュール1の概略である。
次に、波長変換部60に含まれている波長変換ナノ粒子61について詳しく説明する。図2に示されるように、波長変換ナノ粒子61は、コア部62及びシェル部63を備えて構成されている。このうちのコア部62は、特定の波長域の光を励起光として吸収することによって励起状態を発生させる結晶部分である。コア部62は、半導体材料であるZnSeを主成分として構成されている。
図3に示されるように、波長変換ナノ粒子61に紫外線(UV)を含んだ励起光が入射すると、コア部62の電子がZnSeのエネルギー準位に従って励起されて励起状態となる。なお、励起された電子が元のエネルギー準位に戻る際にする発光がバンド端発光である。
図2に示されたシェル部63は、コア部62を覆う結晶部分である。シェル部63は、半導体材料であるZnSを主成分として構成されている。このように、コア部62及びシェル部63はコアシェル構造を構成し、それぞれZn原子を含んで構成されている。
また、シェル部63は、発光源としてのイオンを含んでいる。発光源としてのイオンは、Mnイオン(Mn2+)である。図3に示されるように、Mnイオンは、励起状態のコア部62からのエネルギー移動に伴ってバンドギャップエネルギーに対応した波長の光を太陽電池20に受光される波長の光として発生させる役割を果たす。このように、シェル部63にはドーパントがドープされており、ドーパントがコア部62からのエネルギー移動によって発光する。
ここで、シェル部63は、第1シェル部64及び第2シェル部65を有している。第1シェル部64はコア部62を覆うと共に、Mnイオンを含んだ部分である。第2シェル部65は、第1シェル部64を覆うと共に、Mnイオンを含んでいない部分である。これら各シェル部64、65は、図2では図示していないが、それぞれ薄い層が複数積層されて構成されている。
さらに、シェル部63は、最表面66に水溶性配位子であるN−アセチル−L−システインが配置されている。これにより、波長変換ナノ粒子61が水に分散すなわち溶けやすくなっている。つまり、波長変換ナノ粒子61を水溶液中で保存することができる。以下では、N−アセチル−L−システインをNACという。
次に、波長変換ナノ粒子61の製造方法について説明する。まず、コア部62を形成する。具体的には、図4(a)に示す第1混合工程では、コア部62の原料となるイオン源67a、67bを、水溶性配位子としてN−アセチル−L−システインを含んだ水溶液中で混合する。これにより、第1混合液67cを作る。
イオン源67aはZnイオンを含んだZn源であり、例えばZn(ClO・6HO(過塩素酸亜鉛)である。また、イオン源67aは、ZnとNACとを1:4.8のモル比で含む水溶液である。イオン源67aをこの条件とすることで結晶性の良いコア部62を形成することができる。一方、イオン源67bはSeイオンを含んだSeイオン源であり、例えばNaHSeである。
続いて、図4(b)に示す調整工程では、第1混合工程で得られた第1混合液67cのpHが6.0となるように第1混合液67cに水酸化ナトリウム(NaOH)を添加する。
そして、図4(c)に示す第1加熱工程では、pH調整された第1混合液67cを加熱することで第1混合液67c中にコア部62の結晶(ZnSe)を形成する。加熱は、ユラボ社のオートクレーブやオイルバスを用いることができる。加熱時間は60分であり、加熱温度は150℃〜200℃である。長時間で高温の加熱を行うことでコア部62の結晶性を良くすることができる。
また、第1加熱工程では、pH調整された第1混合液67cの加熱時のpHを6〜8としている。これは、pHが6より低いと波長変換ナノ粒子61が壊れてイオン化してしまい、pHが8より高いと波長変換ナノ粒子61の発光効率が悪くなってしまうからである。本工程では、pHを6.0とした。
次に、シェル部63を形成する。まず、図4(d)に示す第2混合工程では、第1加熱工程で得られた第1混合液67cにシェル部63の原料となるイオン源67d及び発光源としてのイオンを含んだイオン源67eを混合する。これにより、第2混合液67fを作る。
イオン源67dは、Znイオン及びSイオンを含んだZn源及びS源であり、例えばZn(ClO・6HO及びNaSである。イオン源67dは水溶液である。一方、イオン源67eは、Mnイオンを含んだMn源であり、例えばMn(ClO・6HOである。また、イオン源67eは、MnとNACとを1:1のモル比で含む水溶液である。イオン源67eをこの条件とすることで結晶性の良いシェル部63を形成することができる。
ここで、Mnのモル比がZnに対して10%となるように、イオン源67eのモル比を調整する。これは、この後の工程でイオン源67d、67eを第2混合液67fに何度も追加していくためである。
続いて、図4(e)に示す第2加熱工程では、第2混合液67fをマイクロ波加熱する。マイクロ波加熱は、CEM社のDiscover SPを用いることができる。加熱時間は5分であり、加熱温度は80℃〜140℃である。この温度範囲とすることで良好な結晶が得られる。これにより、コア部62の表面にMnイオンを含んだZnSの層を一層形成する。第2加熱工程においても、加熱時の第2混合液67fのpHは6〜8になっている。
Mnイオンを含んでいない第1混合液67cに対して、Mnイオンを含んだ第2混合液67fに対する加熱時間を短くしているのは、第2混合液67fの白濁を抑制するためである。すなわち、シェル部63のNACの配位が無くなって複数の粒子が凝集して結晶欠陥が発生してしまうことを抑制するためである。
そして、SとSeとのモル比がS/Se=2.0になるまで、図4(d)の第2混合工程と図4(e)の第2加熱工程とを繰り返す。例えば、第2混合液67fに対して0.25モルのSを含んだイオン源67dを混合して加熱することを6回繰り返す。これにより、シェル部63の一部であるMnイオンを含んだ複数のZnSの層、すなわち第1シェル部64を形成する。
この後、図4(f)に示す第3混合工程では、第2混合液67fにシェル部63の原料となるイオン源67dを混合する。これにより、第3混合液67gを作る。そして、図4(g)に示す第3加熱工程では、第3混合液67gをマイクロ波加熱する。加熱時間は2分であり、加熱温度は100℃〜140℃である。この温度範囲とすることで良好な結晶が得られる。これにより、シェル部63の一部であるZnSの層を形成する。第3加熱工程においても、加熱時の第3混合液67gのpHは6〜8になっている。
そして、上記と同様に、SとSeとのモル比がS/Se=15になるまで、図4(f)の第3混合工程と図4(g)の第3加熱工程とを繰り返す。これにより、複数のZnSの層、すなわち第2シェル部65を形成する。こうして、コア部62がシェル部63で被覆された波長変換ナノ粒子61(ZnSe/Mn/ZnS)が完成する。ここで、シェル部63の最表面66にはNACが配位しており、波長変換ナノ粒子61が水溶液中に分散した状態になっている。このようにして、波長変換ナノ粒子61が完成する。
続いて、波長変換ナノ粒子61を含んだ溶液を保護板40の一面41に塗布し、保護板40の一面41に波長変換部60を膜状に形成する。波長変換部60が剥がれたり、傷が付いたとしても、再度、保護板40の一面41に波長変換部60を塗布することができる。
例えば、次のように波長変換部60を形成することができる。まず、メタノールと(ガラス前駆体である)APSとを混合し、その混合溶液を撹拌しながら、クエン酸水溶液を加え、APSの加水分解を促進させる。さらに、遮光下で撹拌を続け、その溶液の粘度が所定値以上になった場合には、ZnイオンとNACとを溶解させた水溶液と波長変換ナノ粒子61の分散水溶液とを加えて、良く分散するまで撹拌する。その後、撹拌を停止し、遮光して静置し、ガラス化を促進させて固化させることで波長変換部60を形成することができる。
発明者らは、上記のように製造した波長変換ナノ粒子61に対して325nmの励起光を照射して発光スペクトルを測定した。比較例として、コアであるZnSeSにMnイオンをドープしたナノ粒子(ZnSeS:Mn)の発光スペクトルも測定した。比較品はシェル部63が無い構成である。測定には日本分光株式会社の分光蛍光光度計FP8600を用いた。その結果を図5に示す。
図5に示されるように、本実施形態に係る波長変換ナノ粒子61では400nm付近と600nm付近に発光強度のピークが現れた。一方、比較品では600nm付近に発光強度のピークが現れた。400nm付近のピークはZnSeのバンド端発光によるピークである。また、600nm付近のピークはMnの発光によるピークであり、可視光の発光である。波長変換ナノ粒子61は、可視光について、比較品に対して約4倍高い発光強度が得られた。なお、480nm付近のピークは結晶欠陥によるピークであると考えられる。
また、発明者らは、図5に示された蛍光波長の範囲で波長変換ナノ粒子61が吸収した光に対してどれだけ発光したかを示す全内部量子効率を調べた。その結果、波長変換ナノ粒子61の全内部量子効率は58.7%であった。これは、吸収した光の6割程度を発光に変換したことを意味する。Mnの発光ピーク付近である500nm〜700nmの範囲では、波長変換ナノ粒子61の全内部量子効率は51.9%であった。
これに対し、比較品の全内部量子効率は31.0%であった。また、500nm〜700nmの範囲では、比較品の全内部量子効率は28.3%であった。すなわち、波長変換ナノ粒子61は比較品に対して約2倍の発光効率を持った素子であると言える。
さらに、発明者らは、本実施形態に係る波長変換ナノ粒子61と、当該波長変換ナノ粒子61のシェル部63にMnイオンをドープしないものと、の発光スペクトルをそれぞれ測定した。その結果を図6に示す。
図6に示されるように、Mnイオンをドープした波長変換ナノ粒子61は図5に示された発光スペクトルと同じになる。一方、Mnイオンをドープしていない波長変換ナノ粒子61の発光スペクトルは、400nm付近のバンド端発光のピークが大きく現れるが、600nm付近ではほとんど発光のピークが現れない。なお、Mnイオンをドープしていない波長変換ナノ粒子61の全内部量子効率は52.8%であった。このように、シェル部63にドーパントをドープすることによって、入射光から所望の波長の光を選択的に取り出すことができる。
また、発明者らは、波長変換ナノ粒子61のシェル部63の被覆層数を変化させたときの波長変換ナノ粒子61(ZnSe/ZnS:Mn)の発光スペクトルを測定した。その結果を図7に示す。なお、測定装置及び測定条件は上記と同じである。また、横軸は光子エネルギーを示し、縦軸は発光強度を示している。
図7に示されるように、ZnSeで構成されたコア部62のみでは、3.0eV〜3.5eVにピークが現れた。そして、コア部62にシェル化を1回行ったものは、コア部62のピークだけではなく、2.09eVにもピークが現れた。この2.09eVのピークはシェル部63にドープされたMnイオンによるものである。
そして、コア部62に対するシェル化を4回行ったものは1回行ったものよりも発光強度のピーク値が大きくなった。なお、シェル化とは、図4(f)の第3混合工程と図4(g)の第3加熱工程とを繰り返すことである。
さらに、コア部62のシェル化を5回行ったものは4回のものよりも発光強度のピーク値が大きくなった。このように、コア部62に対してシェル部63の層を厚くすることでMnイオンによる発光のピークが大きくなることがわかった。これは、シェル部63に含まれるMnイオンの量が増加したことに対応していると考えられる。
これに対する比較例として、発明者らは、コアであるZnSeにMnイオンをドープしたものをZnSeでシェル化したナノ粒子(ZnSe:Mn/ZnS)の発光スペクトルも測定した。その結果を図8に示す。
図8に示されるように、Mnイオンを含むZnSeのコアのみでは、2.13eVにピークが現れた。そして、コアがZnSでシェル化された場合、1回のシェル化によって3.0eV付近にZnSのピークが現れた。Mnイオンはコアに含まれるだけであるので、シェル化の回数が4回や5回に増加しても2.13eVのピーク値の増加は僅かだった。また、ピーク値の最大値は、波長変換ナノ粒子61よりも低い値であり、図7に示されたシェル化1回目と同程度であった。
上記の結果によると、シェル部63に発光源であるMnイオンが含まれる波長変換ナノ粒子61の場合、Mnイオンの発光スペクトルのピークが2.12eVよりも低エネルギー側に現れている。さらに詳細には、ピークが2.10eVよりも低エネルギー側に現れている。また、Mnイオンの発光スペクトルのピークは2.06eVよりも高エネルギー側に現れている。
したがって、2.06eV〜2.12eVの範囲、より詳細には2.06eV〜2.10eVの範囲に発光スペクトルのピークが現れた場合、そのピークはコア部62にMnイオンがドープされた波長変換ナノ粒子61のピークであると言える。
ここで、波長と発光エネルギーとの関係は一義的に決まる。したがって、2.12eVを波長変換(=1240/2.12)すると、585nmとなる。したがって、波長の観点では、波長変換ナノ粒子61のMnイオンの発光スペクトルのピークは585nmよりも長波長側に現れる。
同様に、2.10eVを波長変換すると590nmであるので、Mnイオンの発光スペクトルのピークは590nmよりも長波長側に現れる。波長の上限値についても同様に、2.06eVを波長変換すると601nmであるので、Mnイオンの発光スペクトルのピークは601nmよりも低波長側に現れる。
したがって、585nm〜601nmの範囲、より詳細には590nm〜601nmの範囲に発光スペクトルのピークが現れた場合、そのピークはコア部62にMnイオンがドープされた波長変換ナノ粒子61のピークであると言える。
また、発明者らは、コア部62を構成するSeに対してシェル部63を構成するSの比を変化させたときの内部量子効率及び発光スペクトルについて調べた。発光スペクトルの測定装置及び測定条件は上記と同じである。
ここでは、2個の試料を用意し、各試料に対してS/Se比を大きくしていくと共に、S/Se比が16、46、69、92の場合の4点で測定を行った。測定値の平均値±3σを算出した。その結果を図9に示す。図9の横軸はS/Se比を示しており、S/Se比が大きいほどシェル部63の層が何層も重ねられて厚くなっていることを意味する。
図9に示されるように、S/Se比と内部量子効率との関係は、比16の場合は59.5±1.3%になり、比46の場合は64.2±5.2%になり、比69の場合は66.9±7.0%になり、比92の場合のは57.9±9.9%になった。
そして、上記の4点から、S/Se比が16以上86以下の場合、内部量子効率が確実に60%以上になった。したがって、S/Se比が16以上86以下の範囲となるように波長変換ナノ粒子61を構成することで、高い波長変換効率が得られる。また、S/Se比を46以上76以下の範囲に限定することで、さらに高波長変換効率を持つ波長変換ナノ粒子61が得られる。
図10に示されるように、S/Se比が16、46、69、92の場合の発光スペクトルのピークは、2.07eVに現れた。もちろん、上述の2.06eV〜2.10eVの範囲に含まれている。さらに、S/Se比が小さくなるほど、発光強度が高くなる結果となった。なお、図10では、横軸を蛍光波長で示している。2.07eVを波長変換すると599nmに対応する。
以上のように、波長変換ナノ粒子61では、コア部62にドーパントがドープされているのではなく、コア部62を覆うシェル部63にドープされた構成が特徴となっている。これにより、コア部62の製造時に長時間の加熱が可能になり、コア部62の結晶性が向上するので、コア部62の上に形成されるシェル部63の結晶性も向上する。このため、波長変換ナノ粒子61の全体で結晶欠陥が少なくなり、ひいては結晶欠陥による発光を抑制することができる。すなわち、入射光を効率的に所望の波長の光に変換することができる。したがって、波長変換ナノ粒子61のエネルギー利用効率を向上させることができ、波長変換ナノ粒子61の発光強度を向上させることができる。
太陽電池モジュール1では、Si系の太陽電池20が採用されているので、紫外から青色(300nm〜500nm)の光は分光感度が低い。このため、この領域の波長の光が波長変換部60の波長変換ナノ粒子61によって分光感度の高い500nm以上の波長の光に変換される。また、波長変換部60を介して保護板40に入射した青色(500nm)以上の波長の光は保護板40にほとんど吸収されずに透過し、太陽電池20に入射する。さらに、太陽電池20の受光面21で反射した光が保護板40の内部で反射したり、側面43の傾斜面で反射することで太陽電池20に集光される。これらの効果が合成されると共に、発光強度が向上した波長変換ナノ粒子61が採用されているので、太陽電池20の発電効率を高めることができる。もちろん、太陽電池20を遮るものはなく、波長変換効率の低下は起こらない。
上記構成に対し、変形例として、図11に示されるように、保護板40の側面43が傾斜しない構成でも良い。この場合、反射膜50も不要となる。フレーム70の内面の凹部は保護板40の側面43の形状に合わせて形成されている。
発明者らは、図11に示された構成に波長変換部60が設けられていない従来のモジュール構成、図11に示されたモジュール構成、図1に示されたモジュール構成の各構成の発電量を測定した。各構成については1cm角の4個の試料を用意し、各々の平均の発電量を測定した。その結果を図12に示す。
図12に示されるように、従来のモジュール構成の平均の発電量は20.0±1.1mW/cm、図11に示されたモジュール構成の平均の発電量は20.7±1.2mW/cm、図1に示されたモジュール構成の平均の発電量は21.5±1.3mW/cmとなった。なお、平均値は3σで算出した。
すなわち、従来のモジュール構成に波長変換部60を設けたことにより、従来のモジュール構成に対して平均の発電量が3.5%向上した。さらに、保護板40の側面43に傾斜を設けたことにより、従来のモジュール構成に対して平均の発電量が7.5%向上した。この結果からも、波長変換ナノ粒子61を含んだ波長変換部60を設けたことにより、太陽電池20の発電効率を向上させることができることがわかる。
(第2実施形態)
本実施形態では、第1実施形態と異なる部分について説明する。図13に示されるように、波長変換部60は、充填材30のうち太陽電池20の受光側に膜状に配置されている。つまり、波長変換部60と太陽電池20とに充填材30の一部が挟まれている。また、保護板40は、膜状の波長変換部60に積層されている。
以上のように、波長変換部60は保護板40と充填材30との間に配置されていても良い。波長変換部60が保護板40によって覆われるので、波長変換部60に傷が付くことはなく、剥がれることもない。上記構成に対し、変形例として、図14に示されるように、保護板40の側面43が傾斜しない構成でも良い。
(第3実施形態)
本実施形態では、第1、第2実施形態と異なる部分について説明する。図15に示されるように、波長変換部60は、太陽電池20のうち受光側に膜状に配置されている。充填材30は、太陽電池20及び波長変換部60を封止している。そして、保護板40は、充填材30のうち波長変換部60を覆う部分に積層されている。
以上のように、波長変換部60は太陽電池20の直上に配置されていても良い。上記構成に対し、変形例として、図16に示されるように、保護板40の側面43が傾斜しない構成でも良い。
(第4実施形態)
本実施形態では、第1〜第3実施形態と異なる部分について説明する。図17に示されるように、波長変換部60は、波長変換ナノ粒子61が含まれた充填材31として構成されている。太陽電池20は、受光面が露出するように充填材30に覆われている。そして、波長変換部60は、太陽電池20のうち受光側に層状に配置されている。これにより、太陽電池20は、充填材30、31によって封止されている。また、保護板40は、波長変換部60のうち太陽電池20側とは反対側に積層されている。
以上のように、波長変換部60が主に充填材31として構成されていると共に、充填材31に波長変換ナノ粒子61が混合された構成でも良い。上記構成に対し、変形例として、図18に示されるように、保護板40の側面43が傾斜しない構成でも良い。
(第5実施形態)
本実施形態では、第1実施形態と異なる部分について説明する。本実施形態では、太陽電池20は、銅、インジウム、ガリウム、セレンを含んだ化合物半導体材料、または、銅、インジウム、ガリウム、セレン、硫黄を含んだ化合物半導体材料によって構成されている。つまり、太陽電池20は、CIGS系の薄膜太陽電池である。
このため、図19に示されるように、太陽電池モジュール1は、ソーダガラス80、太陽電池20、充填材30、保護板40、反射膜50、波長変換部60、及びフレーム70を備えて構成されている。太陽電池20は、板状のソーダガラス80に半導体プロセスによって形成されている。例えば、太陽電池20はソーダガラス80の表面全体に形成されている。
充填材30は、太陽電池20の受光面21に配置されていると共に、太陽電池20を封止している。保護板40は、充填材30の上に配置されている。充填材30は太陽電池20を保護するだけでなく、保護板40を固定するための接着剤としても機能する。
以上のように、CIGS系の太陽電池20を用いて太陽電池モジュール1を構成することもできる。上記構成に対し、変形例として、図20に示されるように、保護板40の側面43が傾斜しない構成でも良い。
(第6実施形態)
本実施形態では、第5実施形態と異なる部分について説明する。図21に示されるように、第2実施形態と同様に、波長変換部60は、充填材30のうち太陽電池20の受光側に膜状に配置されていても良い。また、変形例として、図22に示されるように、保護板40の側面43が傾斜しない構成でも良い。なお、太陽電池20はソーダガラス80の表面の一部に形成されていても良い。
(第7実施形態)
本実施形態では、第5、第6実施形態と異なる部分について説明する。図23に示されるように、第3実施形態と同様に、波長変換部60は、太陽電池20のうち受光側に膜状に配置されていても良い。また、変形例として、図24に示されるように、保護板40の側面43が傾斜しない構成でも良い。
(第8実施形態)
本実施形態では、第5〜第7実施形態と異なる部分について説明する。図25に示されるように、第4実施形態と同様に、波長変換部60は、波長変換ナノ粒子61が含まれた充填材31として構成されていても良い。太陽電池20は、ソーダガラス80、充填材30、31によって封止されている。また、変形例として、図26に示されるように、保護板40の側面43が傾斜しない構成でも良い。
(他の実施形態)
上記各実施形態で示された太陽電池モジュール1の構成は一例であり、上記で示した構成に限定されることなく、本発明を実現できる他の構成とすることもできる。例えば、上記で示した波長変換ナノ粒子61の製造条件は一例であり、他の条件で製造しても構わない。
上記実施形態ではドーパントとしてMnイオンが用いられたが、これは一例である。例えば、ドーパントとしてCu2+、Eu3+、Yb3+等の他のイオンを採用しても良い。これにより、ドーパントに対応した波長を取り出すことが可能となる。
また、コア部62及びシェル部63を他の半導体材料で構成しても良い。さらに、水溶性配位子としては、NACの他、メルカプト酢酸、メルカプトプロピオン酸、メルカプトこはく酸等を採用しても良い。
また、太陽電池モジュール1は反射膜50を備えていなくても良い。例えば、フレーム70の内面が鏡面仕上げされることで反射膜50と同等の効果を得ることも可能である。
20 太陽電池
60 波長変換部
61 波長変換ナノ粒子
62 コア部
63 シェル部
66 最表面

Claims (11)

  1. 光を受光して発電する板状の太陽電池(20)と、
    前記太陽電池の受光側に配置され、特定の波長域の光を吸収して前記太陽電池に受光される波長の光に変換する波長変換ナノ粒子(61)を含んだ波長変換部(60)と、
    を備え、
    前記波長変換ナノ粒子は、
    前記特定の波長域の光を励起光として吸収することによって励起状態を発生させるコア部(62)と、
    前記コア部を覆うと共に、前記励起状態のコア部からのエネルギー移動に伴ってバンドギャップエネルギーに対応した波長の光を前記太陽電池に受光される波長の光として発生させる発光源としてのイオンを含んでおり、さらに最表面(66)に水溶性配位子が配置されたシェル部(63)と、
    を有して構成されている太陽電池モジュール。
  2. 前記コア部及び前記シェル部は、Zn原子を含んで構成されていることを特徴とする請求項1に記載の太陽電池モジュール。
  3. 前記コア部はZnSeを主成分として構成され、前記シェル部はZnSを主成分として構成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の太陽電池モジュール。
  4. 前記発光源としてのイオンは、Mnイオンであることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1つに記載の太陽電池モジュール。
  5. 前記太陽電池と前記波長変換部との間に配置されていると共に、透光性を有する保護板(40)を備え、
    前記太陽電池は、透光性を有する充填材(30)で封止されており、前記充填材に前記保護板が積層されており、
    前記波長変換部は、前記保護板のうち前記太陽電池とは反対側に膜状に配置されている請求項1ないし4のいずれか1つに記載の太陽電池モジュール。
  6. 透光性を有する保護板(40)を備え、
    前記太陽電池は、透光性を有する充填材(30)で封止されており、
    前記波長変換部は、前記充填材のうち前記太陽電池の受光側に膜状に配置されており、
    前記保護板は、前記膜状の波長変換部に積層されている請求項1ないし4のいずれか1つに記載の太陽電池モジュール。
  7. 透光性を有する保護板(40)を備え、
    前記波長変換部は、前記太陽電池のうち受光側に膜状に配置されており、
    前記太陽電池及び前記波長変換部は、透光性を有する充填材(30)で封止されており、
    前記保護板は、前記充填材のうち前記波長変換部を覆う部分に積層されている請求項1ないし4のいずれか1つに記載の太陽電池モジュール。
  8. 透光性を有する保護板(40)を備え、
    前記波長変換部は、前記波長変換ナノ粒子が含まれた充填材(31)として構成されていると共に、前記太陽電池のうち受光側に層状に配置されており、
    前記保護板は、前記波長変換部のうち前記太陽電池側とは反対側に積層されている請求項1ないし4のいずれか1つに記載の太陽電池モジュール。
  9. 前記保護板は、前記光が入射する一面(41)と、前記一面よりも前記太陽電池側に位置する他面(42)と、前記一面及び前記他面に接する側面(43)と、を有し、
    前記側面は、前記他面側から前記一面側に向かって当該一面のサイズが小さくなるように、前記一面側の一部あるいは当該側面の全体がテーパ状に傾斜しており、前記保護板の内部において当該傾斜面に至る光を前記太陽電池側に反射させる請求項5ないし8のいずれか1つに記載の太陽電池モジュール。
  10. 前記太陽電池は、シリコン系の半導体材料によって構成されている請求項1ないし9のいずれか1つに記載の太陽電池モジュール。
  11. 前記太陽電池は、銅、インジウム、ガリウム、セレンを含んだ化合物半導体材料、または、銅、インジウム、ガリウム、セレン、硫黄を含んだ化合物半導体材料によって構成されている請求項1ないし9のいずれか1つに記載の太陽電池モジュール。
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