JP2018110712A - 参照用弾性体、アタッチメントユニット及び超音波診断装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】本体と鍔状部とからなる参照用弾性体を利用してエラストグラフィーを実施する場合において、本体における非生体側部分の弾性変形が鍔状部により過度に阻害されないようにする。
【解決手段】アタッチメントユニット12は参照用弾性体14とホルダ16とで構成される。参照用弾性体14はブロック状の本体22と水平方向に広がった鍔状部24とで構成される。本体22は生体側部分としての前側部分26と非生体側部分としての後側部分28とで構成される。鍔状部24は、後側部分28の2つの長手側面に沿って形成された2つのスリット30,32を有する。このような隙間構造により、本体22の押圧時に、前側部分26と同様に、後側部分28も自然に潰れる。
【選択図】図1
【解決手段】アタッチメントユニット12は参照用弾性体14とホルダ16とで構成される。参照用弾性体14はブロック状の本体22と水平方向に広がった鍔状部24とで構成される。本体22は生体側部分としての前側部分26と非生体側部分としての後側部分28とで構成される。鍔状部24は、後側部分28の2つの長手側面に沿って形成された2つのスリット30,32を有する。このような隙間構造により、本体22の押圧時に、前側部分26と同様に、後側部分28も自然に潰れる。
【選択図】図1
Description
本発明は参照用弾性体に関し、特に、生体組織の弾性情報を計測する場合に用いられる参照用弾性体及びそれを備えたアタッチメントユニットに関する。
超音波診断法の一種としてエラストグラフィー(Elastography)が知られている。このエラストグラフィーは、生体組織に対する超音波の送受波により得られた受信信号に基づいて、生体組織の弾性情報を画像化又は計測するものである。このエラストグラフィーによれば、例えば、硬い病変組織をその周囲の柔らかい組織から識別し得るカラー画像を形成することが可能であり、あるいは、病変組織の硬さを示す数値情報を得ることが可能である。特許文献1には、そのような数値情報として歪み比(Strain Ratio)を演算する超音波診断装置が開示されている。
エラストグラフィーを実行する場合、生体組織中の各観測点で微小変位を生じさせる必要がある。そのための手法として幾つかの方法が提案されているが、もっとも簡便な方法は、検査者の手によって、つまりプローブによって、生体組織へ周期的に押圧力を加える方法である。そのような手技の下、時間的に隣接する受信フレーム間において、観測点ごとに、ビーム方向(深さ方向)の微小変位が演算され、その微小変位から弾性情報として歪み(Strain)等が演算される。
生体組織に対して過度の押圧力を加えると、弾性情報を正確に計測できなくなる。そこで、上記手技の開始時において、押圧力が適正か否かを判断する指標として、生体内に存在する脂肪層について観測される歪み(通常、歪みを表現したカラー)が参照される。その歪みが適正になるように、周期的に加えられる押圧力が調整される。その上で、実際に弾性情報の計測が実施される。
生体内に適当な脂肪層が存在しない場合やより客観的な指標を得たい場合においては、参照用弾性体(変形参照体等とも称される)が利用される。上記の歪み比を計測する場合において、病変組織で生じる歪みに対して比較される歪み(基準となる歪み)を取得する際にも、参照用弾性体が利用される(特許文献1、特許文献2及び特許文献3を参照)。
一般に、参照用弾性体は、生体組織を模擬する物質で構成され、プローブの送受波面と生体表面との間に配置される。断層画像上において、参照用弾性体の断面が断層画像の上部に現れる。その断面上に現れるカラーから押圧力が適正か否かが判断される。あるいは、その断面内に関心領域が設定されて、基準となる歪みが演算される。参照用弾性体は上記以外の用途でも用いられ得るものである。
特許文献2及び特許文献3に開示された参照用弾性体は、直方体状の本体と、本体における非生体側部分から水平方向に広がった鍔状部と、からなる。本体は超音波伝搬領域を包摂するものである。断層画像の上部に現れる断面は本体の断面である。鍔状部は、本体の非生体側部分から水平方向に広がるフランジ状部分又は張出部分であり、それは、本体をプローブに装着する際において、ホルダによって保持される部分である。本体と鍔状部は一体化されている。
プローブの送受波面と生体表面との間に上記参照用弾性体を配置する場合、断層画像上における上部(参照用弾性体の画像化部分)の内で、その上層(非生体側部分に相当する領域)に、見かけ上の硬い部分が生じるという問題が指摘されている。参照用弾性体は一様性を有しているので、それを画像化した場合、それ全体が同じ硬さとして(同じ色で)表現される筈である。それにもかかわらず、見かけ上、硬い部分(例えば青い部分)が現れてしまうのは、以下のような原因によるものと推察される。
対外から与えられた押圧力は本体に与えられ、本体が弾性変形しようとする。つまり、本体が垂直方向に潰れて水平方向に膨らもうとする。その際、本体における生体側部分は外界に解放されており、その生体側部分は自然に潰れる。これに対して、本体における非生体側部分は鍔状部により取り囲まれており、その非生体側部分は容易には潰れない状態にある。その結果、非生体側部分の内部において生じる変位が小さくなり、当該部分が硬い部分として観測及び表現されてしまっているものと推認される。
鍔状部を除去して本体のみにしてしまうことも考えられるが、その場合には、プローブに対して本体を固定することが困難になる。あるいは、参照用弾性体を固定するために複雑な構造又は器具を採用しなければならなくなる。本体に設けられた鍔状部を維持しつつも、鍔状部によって本体における弾性変形が過度に阻害されないようにする仕組みが求められる。
なお、特許文献4に開示された参照用弾性体は、ブロック状の形態を有し、アタッチメントの内部に収容される。参照用弾性体とアタッチメントとの間には、参照用弾性体の変形を許容する隙間が設けられている。しかし、その隙間は鍔状部に起因して生じる問題に対処するためのものではない。特許文献4には鍔状部を有する参照用弾性体は開示されていない。
本発明の目的は、本体と鍔状部とからなる参照用弾性体において、本体の弾性変形に際して生じる、鍔状部による阻害作用を軽減又は解消することにある。あるいは、本体における非生体側部分を自然に潰れ易く構造を実現することにある。
本発明に係る参照用弾性体は、生体組織の弾性情報を計測する場合において、生体表面とプローブの送受波面との間に設けられ、弾性変形する材料により構成された参照用弾性体であって、超音波伝搬方向である垂直方向に連なった生体側部分及び非生体側部分からなるブロック状の本体と、前記非生体側部分に連結され、前記非生体側部分から水平方向へ広がった鍔状部と、を含み、前記鍔状部は、前記垂直方向に前記本体が押圧された場合おいて前記非生体側部分において生じる水平方向の膨らみを受け入れる隙間構造を有する、ことを特徴とするものである。
鍔状部に設けられた隙間構造は、本体の押圧時において、非生体側部分の水平方向の膨らみを受け入れる機能を発揮する。これにより、非生体側部分が潰れる際に生じる、鍔状部による反作用つまり阻害作用が緩和される。すなわち、非生体側部分が、生体側部分と同様に、垂直方向に自然に潰れるようになる。これにより、非生体側部分が見かけ上、硬い部分として観測及び表示されてしまう問題を回避又は軽減できる。鍔状部を利用して参照用弾性体を保持可能であるので、鍔状部が有する本来的機能が損なわれることもない。
参照用弾性体は生体組織と同様の柔らかい部材で構成されるので、本体と鍔状部との連結あるいは参照用弾性体の剛性が過度に弱くなると、プローブの操作時に、本体の捻じれ、本体の湾曲等が生じ、場合によっては、ホルダからの参照用弾性体の脱落といった事態が生じる。そこで、本体を適正に保持できる、あるいは、参照用弾性体の剛性を一定程度維持できるような隙間構造を採用するのが望ましい。実施形態において、本体と鍔状部は一体化されており、つまり参照用弾性体の全体が同じ材料で構成される。もっとも、本体と鍔状部とを異なる材料で構成することも可能である。
実施形態において、前記隙間構造は、前記非生体側部分の周囲において前記非生体側部分に隣接して形成された複数の隙間を含む。そのような複数の隙間は、非生体側部分の水平方向の膨らみを受け入れるものであり、あるいは、その膨らみを許容するものである。潰れを生じさせたい部位に隙間を設けるのが望ましい。隙間の大小、長短又は個数によって非生体側部分の潰れ量をコントロール可能である。
実施形態において、前記各隙間は前記鍔状部を前記垂直方向に貫通している。この構成によれば、送受波面側から生体表面側へ音響ゼリーや空気を抜く経路を確保できる。特に、ホルダとプローブとの密着度が高いような場合に、上記構成を採用する意義が大きい。
実施形態において、前記複数の隙間は、前記非生体側部分における一対の長手側面に沿って形成された少なくとも2つのスリットを含む。あるいは、前記複数の隙間は、前記非生体側部分における一対の長手側面の全部又は一部を露出させる少なくとも2つの切欠きを含む。一般に、スリット方式によれば、鍔状部の作用又は機能を十分に維持しつつ、非生体側部分の潰れを促進でき、切欠き方式によれば、鍔状部の作用及び機能をある程度維持しつつ、非生体側部分の潰れをより促進できる。もっとも、隙間構造の具体的な形態によってその作用は変わり得る。非生体側部分における一対の長手側面に隣接して複数の隙間を設ければ、非生体側部分における一対の短手側面に隣接して複数の隙間を設ける場合に比べて、非生体側部分の膨らみをより許容し易い。
実施形態において、前記各隙間の生体側開口が前記生体側部分の一対の長手側面の近傍に位置し、前記送受波面と前記参照用弾性体との間に存在する音響ゼリーが前記複数の隙間を介して前記生体側部分における一対の長手側面上へ流出し得る。非生体側部分における各長手側面の全部又は一部により1又は複数の隙間の内面が構成されてもよい。各スリットの内面が生体側部分の長手側面に連なるように(面一になるように)構成してもよい。
本発明に係るアタッチメントユニットは、生体組織の弾性情報を計測する場合において、生体表面とプローブの送受波面との間に設けられ、弾性変形する材料により構成された参照用弾性体と、前記参照弾性体を前記プローブに着脱可能に装着するためのホルダと、を含み、前記参照用弾性体は、超音波伝搬方向である垂直方向に連なる生体側部分及び非生体側部分からなるブロック状の本体と、前記非生体側部分に連結され、前記非生体側部分から水平方向へ広がった鍔状部と、を含み、前記ホルダは、前記鍔状部を保持し、前記生体側部分を突出させる開口を有し、前記鍔状部は、前記垂直方向に前記本体が押圧された場合おいて前記非生体側部分において生じる水平方向の膨らみを受け入れる隙間構造を有し、前記隙間構造は、前記開口の縁と前記生体側部分の側面との間に生じる空隙に連通している。
上記空隙を設けることにより、本体における生体側部分が水平方向に膨らむ際において、開口の縁による膨らみ阻害作用が消失し又は緩和される。また、音響ゼリーが送受波面側から隙間構造を介して生体側部分の付け根に流出し、更にそれが生体側部分と開口との間の空隙を介して外部へ排出されやすくなる。なお、参照用弾性体の水平方向の位置決めは、ホルダによる鍔状部の保持によって行うことが可能である。生体側部分における各側面に沿って空隙が生じるようにしてもよいし、一対の長手側面に沿って空隙が生じるようにしてもよい。
本発明に係る超音波診断装置は、上記参照用弾性体又は上記アタッチメントユニットと、弾性情報に基づいて弾性情報画像を形成する画像形成部と、前記弾性情報画像を表示する表示部と、を有する。弾性情報画像は、望ましくは断層画像である。弾性情報画像は生体組織を表す画像部分と参照用弾性体を表す画像部分とを含むものである。後者の画像部分は弾性情報の計測の客観性を示す指標になり得るものである。
本発明によれば、本体と鍔状部とからなる参照用弾性体において、本体の弾性変形に際して生じる、鍔状部による阻害作用が軽減又は解消される。あるいは、本体における非生体側部分が水平方向に自然に潰れ易くなる。これにより、隙間構造を有しない場合に比べて、本体内における歪みを均一化できる。
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1及び図2には、本発明に係る参照用弾性体及びそれを備えたアタッチメントユニットの第1実施形態が示されている。アタッチメントユニットは、参照用弾性体を備え、エラストグラフィーの実施時においてプローブに装着されるものである。図1は正面図であり、図2は側面図である。
図1において、プローブ10は、エラストグラフィー機能を有する超音波診断装置本体に対して接続される可搬型の送受波器である。プローブ10はユーザー(医師、検査技師等)によって保持される。プローブ10における先端部10A内には超音波振動子18が設けられている。超音波振動子18は本実施形態において1Dアレイ振動子である。それは直線的に配列された複数の振動素子により構成される。円弧状に配列された複数の振動素子により1Dアレイ振動子が構成されてもよい。1Dアレイ振動子に代えて2Dアレイ振動子が設けられてもよい。
超音波振動子18により超音波ビームが形成される。超音波ビームは素子配列方向(つまり電子走査方向)に電子的に走査される。これにより画像化対象となるビーム走査面が形成される。本実施形態では電子走査方式として電子リニア走査方式が採用されている。この他に電子セクタ走査方式その他の方式が知られている。例えば、乳房の超音波診断において、プローブ10は乳房表面に当接される。その状態で超音波が送受波される。なお、超音波振動子18の生体側には、1又は複数の整合層、音響レンズ等が設けられている。音響レンズの表面が送受波面23を構成する。
エラストグラフィー実施時において、必要に応じて、アタッチメントユニット12がプローブ10に装着される。生体組織に微小変位を生じさせるために、プローブ10から生体へ押圧力が周期的に与えられる。そのような周期的な押圧力を機械的に生じさせることも可能である。
アタッチメントユニット12は、参照用弾性体14とホルダ16とにより構成される組立体である。プローブ10とホルダ16とを一体化してもよい。ホルダ16は、参照用弾性体14をプローブ10の先端部10Aに着脱可能に装着するための器具である。それは例えば硬質の樹脂によって構成される。図1においては、ホルダ16が抽象的に描かれている。図示された例において、ホルダ16は、先端部10Aを取り囲むフレーム16Aと、フレーム16Aの下端から内側へ屈曲した台座部16Bと、フレーム16Aの上端に設けられた係合部16Cと、を有する。プローブ10のケースには係合用の構造が設けられており、係合部16Cがその係合構造に引っ掛かる。係合方式としては各種の方式を利用可能である。バンドや金具等を利用した装着機構を利用することも可能である。台座部16B及びフレーム16Aの下側部分が保持構造として機能としており、その保持構造は、参照用弾性体14の一部を収容し且つその一部を保持する。ホルダ16の下面には矩形の開口16Dが形成されており、その開口16Dから生体側へ参照用弾性体14の他の一部が突出している。
図1において、x方向が第1水平方向であり、z方向が垂直方向である。図2において、y方向が第2水平方向である。なお、いわゆるコンベックスプローブにおいては、湾曲した素子配列方向(電子走査方向、長手方向)が第1水平方向であり、それに直交するスライス方向(短手方向)が第2水平方向となる。
参照用弾性体14は、エラストグラフィーにおいて、押圧力の調整又は確認のために、あるいは、基準となる歪みを観測又は取得するために、用いられる。他の用途において、参照用弾性体14が利用されてもよい。参照用弾性体14は、通常、生体を模擬した柔軟な材料、特に弾性変形する材料で構成され、具体的には、例えば、エラストマー樹脂により構成される。参照用弾性体14は、生体組織の音響インピーダンスと同様の音響インピーダンスを有する材料で構成されるのが望ましく、また、生体組織(例えば脂肪組織)と同様の硬さを有する材料で構成されるのが望ましい。もちろん、目的や用途に応じて、参照用弾性体14を構成する材料の組成を定めればよい。複数種類の参照用弾性体を用意しておき、状況に応じて、いずれかの参照用弾性体を選択利用してもよい。あるいは、劣化や感染防止のために参照用弾性体が交換されてもよい。
参照用弾性体14は、図示された構成例において、大別して、本体22と鍔状部24とにより構成される。本体22と鍔状部24は一体化されており、参照用弾性体14それ全体として同じ材料により構成されている。本体22は、ブロック状、具体的には直方体状の形態を有している。本体22を基準として見た場合、x方向が長手方向であり、y方向が短手方向であり、z方向が厚み方向である。本体22は、超音波振動子18からの超音波伝搬経路(平面状又は板状の形態として観念される)の全体を包摂している。本体22においては、z方向に連なる二つの部分を観念でき、具体的には、生体側部分としての前側部分26と、非生体側部分としての後側部分28と、を観念できる。前側部分26は、生体側へ突出した部分であり、開口16Dを通過しつつそこから生体側へ突出している。後側部分28は、鍔状部24と同じ厚み(z方向の幅)を有し、鍔状部24と一体的に連結されている部分である。後側部分28の上面28Aが送受波面23に密着した状態で、プローブ10に対して参照用弾性体14が取り付けられる。実際には、上面28Aと送受波面23との間に音響ゼリーが導入される。音響ゼリーは、空気層を排除し、音響的な整合を図るためのものである。エラストグラフィーの実施に際しては、プローブ10付近で無用な弾性作用が生じないようにするため、音響ゼリー層が薄くなるように、上面28Aと送受波面23とを密着させるのが望ましい。
鍔状部24は、後側部分28に連なる部分であって、後側部分28から水平方向に広がるフランジ状部分又は張出部分である。鍔状部24は中空の枠体として観念される。但し、後に詳述するように、後側部分28の周囲の全体にわたって鍔状部24を設けなくてもよい。
前側部分26は、平板状の部分であり、それは一対の長手側面(一対のxz面)及び一対の短手側面(一対のyz面)を有する。それらは外界へ露出している。前側部分26の下面22Bは生体表面に接触する面である。その下面22Bと生体表面との間にも通常、音響ゼリーが導入される。後側部分28も平板状の部分であり、それについても、一対の長手側面(一対のxz面)及び一対の短手側面(一対のyz面)を観念できる。すなわち、前側部分26の一対の長手側面を延長した面として、後側部分28の一対の長手側面を観念でき、前側部分26の一対の短手側面を延長した面として、後側部分28の一対の短手側面を観念できる。
図示の構成例において、開口16Dと前側部分26との間に空隙33が生じている。その空隙33は、前側部分26の一対の短手側面に沿って生じており(図1参照)、また、前側部分26の一対の長手側面に沿って生じている(図2参照)。そのような空隙33は、音響ゼリーの流出路として機能し、また、前側部分26の水平方向への膨らみを許容するゆとり空間として機能する。そのような機能を十分に発揮させる観点から空隙33のサイズを定めればよい。
参考までに各部分の寸法について説明しておく。図1において、参照用弾性体14のx方向幅102は例えば60mmであり、本体22のx方向幅100は例えば50mmであり、鍔状部24のx方向張出量104は例えば10mmである。参照用弾性体14のz方向幅(高さ)106は例えば6mmであり、前側部分26のz方向幅108は例えば4mmであり、後側部分のz方向幅110は例えば2mmである。開口16Dの開口縁と前側部分26の4つの側面との間の距離、つまり空隙のサイズは例えば0.5〜1.0mm程度である。図2において、本体22のy方向幅112は例えば12mmであり、参照用弾性体14のy方向幅(鍔状部24のy方向の幅)は例えば24mmであり、鍔状部24のy方向張出量104は例えば12mmである。以上あげた各数値は単なる例示に過ぎないものである。状況に応じて各寸法を適宜定めればよい。
本実施形態に係る参照用弾性体14においては、鍔状部24に隙間構造が設けられている。第1実施形態において、隙間構造は、後側部分28の一対の長手側面に沿って設けられた一対のスリット30,32により構成される。図1においては、一対のスリット30,32が破線表現されている。図2においては、各スリット30,32が貫通溝のように表現されている。図1において、本実施形態では、各スリット30,32のx方向幅は、本体22のx方向幅100よりも若干短く、超音波振動子18における超音波ビームの走査範囲にほぼ合致している。各スリット30,32のx方向幅を走査範囲よりも小さくすることも可能である。例えば、基準となる歪みを演算する際に定められる関心領域のx方向幅が走査範囲よりも小さい場合、そのx方向幅と同じにしてもよい。各スリット30,32がある程度のサイズを有していれば、後側部分28をそれ全体として水平方向に自然に変形させることが可能である。一対のスリット30,32のx方向幅を本体22のx方向幅100よりも小さくすれば、本体22を構造的に強化でき、あるいは、本体22の剛性を高めて、その位置や姿勢の安定化を図れる。特に、参照用弾性体14それ全体が構造的に弱くならないように、隙間構造の形態を適宜定めるのが望ましい。
図2において、各スリット30,32のy方向幅は例えば0.5〜1.0mmである。それ以上又はそれ以下にしてもよい。後側部分28におけるy方向への自然な膨らみを許容し、かつ、エアや音響ゼリーの排出が可能となるように、各スリット30,32のy方向幅を定めるのが望ましい。各スリット30,32は、上側開口及び下側開口を有している。各スリット30,32の下側開口が空隙33に連通している。後側部分28における一対の長手側面の一部が各スリット30,32の内部空間に望んでおり、同時に、各スリット30,32の内側内面を構成している。ここで、内側内面は本体22側の内面であり、それに対向する内面が外側内面である。各スリット30,32の内側内面は前側部分26における各長手側面と面一状態で連なっている。送受波面23と後側部分28の上面28Aとの間に存在していた音響ゼリーの一部が、スリット30,32を介して、続いて空隙33を介して、前側部分26における一対の長手側面上に流出する。そのような音響ゼリーは定形性を有しないものであり、本体22の水平方向の膨らみ変形を妨げるものではない。
図3は参照用弾性体14の斜視図である。但し、本体22を観察し易いように、図3においては反転状態にある参照用弾性体14が示されている。参照用弾性体14は上記のように本体22と鍔状部24とからなる。鍔状部24には隙間構造として2つのスリット30,32が形成されている。各スリット30,32は貫通路である。もっとも、本体22の水平方向の変形を許容できる限りにおいて、2つのスリット30,32を非貫通路として構成することも可能である。
図4には比較例としての参照用弾性体が示されている。(A)は変形前を示しており、(B)は変形後を示している(但し、誇張表現されている)。符号36は本体を示しており、それは前側部分40と後側部分42とからなる。符号38は鍔状部を示している。(B)に示すように、押圧力が加わった場合、もっぱら前側部分40が垂直方向に潰れてそれが水平方向に膨らむ。一方、後側部分42はその周囲に鍔状部38が存在しているために、後側部分42の水平方向の膨らみが制限されており、つまり膨らみを阻害する作用が生じており、その結果、後側部分42の潰れは小さなものとなる。これを原因として、参照用弾性体について弾性情報を画像化した場合、参照用弾性体が均一な材料で構成されているのにもかかわらず、参照用弾性体の一部分(後側部分42に相当する上層)が見かけ上、堅い部分として表現されてしまう。
図5には第1実施形態に係る参照用弾性体14が示されている。(A)は変形前を示しており、(B)は変形後を示している(但し、誇張表現されている)。上記のように参照用弾性体14は本体22と鍔状部24とで構成される。本体22は前側部分26と後側部分28とからなる。(B)に示すように、プローブ側から押圧力が加わった場合、前側部分26が潰れて水平方向に自然に膨らみ、それと同時に、スリット30,32の存在により、後側部分28も潰れて水平方向に自然に膨らむ。つまり、本体22がそれ全体として自然に潰れる。この結果、本体22内部における応力が分散され、本体22における各位置での変位が図4に示した比較例に比べてかなり均一化される。
図6には2つの弾性情報画像が示されている。(A)には空隙構造を有しない比較例に係る弾性情報画像44が示されている。(B)には空隙構造を有する第1実施形態に係る弾性情報画像54が示されている。各弾性情報画像44,54は断層画像上において硬さ(歪み)の大小を色相の変化で表現した画像である。符号48,56は生体組織に相当する領域を示しており、符号50,58は参照用弾性体に相当する領域を示している。また、符号52,60は後側部分に相当する領域(上層)を示している。(A)に示す比較例においては、上層52において見かけ上の硬い部分(縞模様表現部分)が生じている。一方、第1実施形態によれば、隙間構造としての2つのスリットが効果的に機能するので、(B)に示すように、上層60内において、見かけ上の硬い部分は生じていない。第1実施形態によれば、エラストグラフィーに際して、適正な押圧力を決める際に正確な情報を提供でき、また、歪み比等を計測する場合においてその計測精度を高められる。なお、図6において、符号53,62は、基準となる歪みを計算する際に設定される関心領域の一例を示している。この他、病変部位についての歪みを演算するために、病変部位の中に(又はそれを覆うように)、他の関心領域が定められる。
実施形態に係る超音波診断装置は、弾性情報に基づいて弾性情報画像54を形成する画像形成部と、弾性情報画像54を表示する表示部と、を有する。画像形成部はプロセッサ等により構成される。表示部は例えばLCDにより構成される。弾性情報画像54は、生体組織を表す画像部分である領域56と、参照用弾性体を表す画像部分である領域58と、からなる。領域58は領域56の上側に表示され、それは弾性情報の計測時においてその客観性を示す指標になり得るものである。つまり、当該領域の表示態様が適正であることを視覚的に確認することによって、適度な押圧操作を行えている状況、つまり信頼性の高い計測を行えている状況を検査者において認識することが可能である。
次に、図7〜図9を用いて他の実施形態について説明する。各実施形態とも、参照用弾性体が本体と鍔状部とで構成される。それぞれの実施形態においては、互いに異なる隙間構造が採用され、これに伴い、それぞれの実施形態においては、互いに異なる鍔状部の形態が採用されている。
図7には第2実施形態の底面が示されている。参照用弾性体64はブロック状の本体とその後側部分から水平方向に広がった鍔状部68とからなる。鍔状部68は隙間構造を有し、その隙間構造は本体66の一対の長手側面に隣接して形成された一対のスリット列70,72を有する。各スリット列70,72は図示の例において長手方向に並んだ3つのスリット74により構成されている。換言すれば、本体66の一対の長手側面における中間部分が2か所において部分的に鍔状部68に連絡している。このような構成によれば、本体66における後側部分の水平方向の膨らみを許容しつつも、本体66と鍔状部68との結合度を高めて参照用弾性体64の剛性を高めることが可能である。特に、本体66の無用な捻じれや位置変化が生じ難くなるので、操作性を高められる。個々のスリット列70,72を構成するスリット数を任意に定めることが可能である。個々のスリット74は望ましくは空隙として構成されるが、個々のスリット内に変形性に富む部材を充填してもよい。変形性に富む部材としては、例えばゼリー状の部材又はゲル状の部材があげられ、その部材は、少なくとも参照用弾性体64よりも柔らかいものである。
図8には第3実施形態に係る参照用弾性体76が示されている。(A)には底面が示されており、(B)は側面が示されている(但し、参照用弾性体76は反転状態にある)。参照用弾性体76は、ブロック状の本体78と、その後側部分から水平方向に張り出した鍔状部80と、からなる。鍔状部80は、本体78における長手方向の右端部及び左端部に連結された一対の部分80A,80Bからなる。本体78の両側であって一対の部分80A,80Bの間に、隙間構造を構成する一対の切欠き82,84が生じている。切欠き82,84は、板状の空間であり、底面側から見て矩形の形態を有している。切欠き82は、本体78における後側部分の一方の長手側面に隣接しており、切欠き84は、本体78における後側部分の他方の長手側面に隣接している。曲げに対する本体22の剛性を一定程度確保できる限りにおいて、図8に示すような参照用弾性体64を採用することが可能である。なお、一般に、切欠きは、注目空間の周囲を構成する6面中、3面が開放された(3面が壁面である)空間として観念され、貫通型のスリットは、注目空間の周囲を構成する6面中、2面が開放された(4面が壁面である)空間として観念される。
図9には第4実施形態に係る参照用弾性体86が示されている。(A)は底面を示しており、(B)は側面を示している(但し、参照用弾性体86は反転状態にある)。参照用弾性体86は、ブロック状の本体88と、その後側部分から水平方向に張り出した鍔状部90と、からなる。鍔状部90は、本体88における長手方向の右端部及び左端部に連結された2つの部分90A,90Bと、本体88に対してその長手方向の中間に連結された部分90Cと、からなる。部分90Aと部分90Cとの間であって本体88の両側には2つの切欠き96が形成されており、部分90Bと部分90Cとの間であって本体88の両側には2つの切欠き96が形成されている。後側部分の周囲に合計4つの切欠き96が存在している。第4実施形態によれば、本体88の水平方向の広がりを許容しつつも、第3実施形態に比べて、参照用弾性体86又はその本体88の剛性を高められる。
なお、参照用弾性体の位置決め及び保持を行える限りにおいて、ホルダ内に鍔部の変形を一定程度許容する隙間又は構造を設けるようにしてもよい。例えば、ホルダに対して上記の複数の切欠きに部分的に進入する複数の凸部を設けてもよい。
いずれの実施形態においても、鍔状部に隙間構造が設けられているので、本体における後側部分が垂直方向に潰れて水平方向に膨らもうとした際に生じる抵抗力又は反作用を軽減でき、本体それ全体を自然に変形させることが可能となる。つまり、本体内部において歪みを均一化することが可能である。よって、参照用弾性体を画像化した場合に生じていた見かけ上の硬い部分を解消又は緩和できる。これにより、エラストグラフィーの実施に際して、押圧力を正しく定めることが可能となり、また、歪み比等を演算する場合にその演算精度を高められる。
参照用弾性体の機能を発揮、維持できる限りにおいて、参照用弾性体に対して他の部材を付加するようにしてもよい。上記実施形態では、後側部分における一対の長手側面に沿って複数のスリット又は複数の切欠きを設けたが、それに代えて、又は、それに加えて、後側部分における一対の短手側面に沿って複数のスリット又は複数の切欠きを設けてもよい。隙間構造における隙間の個数、形態、位置等については、参照用弾性体を構成する材料やそれを使用する目的等に応じて適宜定めればよい。
10 プローブ、12 アタッチメントユニット、14 参照用弾性体、16 ホルダ、18 超音波振動子、22 本体、24 鍔状部、26 前側部分、28 後側部分、30,32 スリット(隙間構造)。
Claims (8)
- 生体組織の弾性情報を計測する場合において、生体表面とプローブの送受波面との間に設けられ、弾性変形する材料により構成された参照用弾性体であって、
超音波伝搬方向である垂直方向に並んだ生体側部分及び非生体側部分からなるブロック状の本体と、
前記非生体側部分に連結され、前記非生体側部分から水平方向へ広がった鍔状部と、
を含み、
前記鍔状部は、前記垂直方向に前記本体が押圧された場合おいて前記非生体側部分において生じる水平方向の膨らみを受け入れる隙間構造を有する、
ことを特徴とする参照用弾性体。 - 請求項1記載の参照用弾性体において、
前記隙間構造は、前記非生体側部分の周囲において前記非生体側部分に隣接して形成された複数の隙間を含む、
ことを特徴とする参照用弾性体。 - 請求項2記載の参照用弾性体において、
前記各隙間は前記鍔状部を前記垂直方向に貫通している、
ことを特徴とする参照用弾性体。 - 請求項3記載の参照用弾性体において、
前記複数の隙間は、前記非生体側部分における一対の長手側面に沿って形成された少なくとも2つのスリットを含む、
ことを特徴とする参照用弾性体。 - 請求項3記載の参照用弾性体において、
前記複数の隙間は、前記非生体側部分における一対の長手側面の全部又は一部を露出させる少なくとも2つの切欠きを含む、
ことを特徴とする参照用弾性体。 - 請求項3記載の参照用弾性体において、
前記各隙間の生体側開口が前記生体側部分の一対の長手側面の近傍に位置し、
前記送受波面と前記参照用弾性体との間に存在する音響ゼリーが前記複数の隙間を介して前記生体側部分における一対の長手側面上へ流出し得る、
ことを特徴とする参照用弾性体。 - 生体組織の弾性情報を計測する場合において、生体表面とプローブの送受波面との間に設けられ、弾性変形する材料により構成された参照用弾性体と、
前記参照弾性体を前記プローブに着脱可能に装着するためのホルダと、
含み、
前記参照用弾性体は、
超音波伝搬方向である垂直方向に連なる生体側部分及び非生体側部分からなるブロック状の本体と、
前記非生体側部分に連結され、前記非生体側部分から水平方向へ広がった鍔状部と、
を含み、
前記ホルダは、前記鍔状部を保持し、前記生体側部分を突出させる開口を有し、
前記鍔状部は、前記垂直方向に前記本体が押圧された場合おいて前記非生体側部分において生じる水平方向の膨らみを受け入れる隙間構造を有し、
前記隙間構造は、前記開口の縁と前記生体側部分の側面との間に生じる空隙に連通している、
ことを特徴とするアタッチメントユニット。 - 請求項1から請求項6のいずれか1項に記載された参照用弾性体、又は、請求項7に記載されたアタッチメントユニットと、
前記生体組織の弾性情報及び前記参照用弾性体の弾性情報に基づいて弾性情報画像を形成する画像形成部と、
前記弾性画像情報を表示する表示部と、
を含み、
前記弾性情報画像は、前記生体組織の弾性情報を表す画像部分と、前記参照用弾性体の弾性情報を表す画像部分と、を有し、
前記参照用弾性体の弾性情報を表す画像部分が弾性情報計測の客観性を表す情報として表示される、
ことを特徴とする超音波診断装置。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2017003056A JP2018110712A (ja) | 2017-01-12 | 2017-01-12 | 参照用弾性体、アタッチメントユニット及び超音波診断装置 |
Applications Claiming Priority (1)
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JP2017003056A JP2018110712A (ja) | 2017-01-12 | 2017-01-12 | 参照用弾性体、アタッチメントユニット及び超音波診断装置 |
Publications (1)
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ID=62910515
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
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JP2017003056A Pending JP2018110712A (ja) | 2017-01-12 | 2017-01-12 | 参照用弾性体、アタッチメントユニット及び超音波診断装置 |
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Country | Link |
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JP (1) | JP2018110712A (ja) |
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
WO2022163850A1 (ja) * | 2021-02-01 | 2022-08-04 | 株式会社 東芝 | 検出装置、検出システム、伝搬部材、固定具、プログラム、及び記憶媒体 |
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2017
- 2017-01-12 JP JP2017003056A patent/JP2018110712A/ja active Pending
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WO2022163850A1 (ja) * | 2021-02-01 | 2022-08-04 | 株式会社 東芝 | 検出装置、検出システム、伝搬部材、固定具、プログラム、及び記憶媒体 |
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