JP2018108980A - ヒドロゲル組成物およびこれを含む薬物送達システム - Google Patents

ヒドロゲル組成物およびこれを含む薬物送達システム Download PDF

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Abstract

【課題】高濃度の薬物を担持できると共に、薬物放出期間中に、搭載された(loaded)薬物の分子構造ならびに生物活性の完全性及び安定性を維持できるようなキャリアの提供。【解決手段】ヒドロゲル組成物であって、マレイミド基を含有するポリグルタミン酸(PGA)と、末端チオール基を含有するポリエチレングリコール(PEG)とを含み、pH値が4.0〜6.5である、ヒドロゲル組成物。前記マレイミド基を含有するPGAの分子量が10kDa〜1000kDaであり、グラフト率が5%〜40%であるヒドロゲル組成物。【選択図】なし

Description

関連出願の相互参照
本出願は、2016年10月21日に出願された米国仮特許出願第62/411065号の利益および2017年10月18日に出願された台湾特許出願第106135658号の優先権を主張し、それらの全体が参照することにより本明細書に援用される。
技術分野
本技術分野は、新規なヒドロゲル組成物およびこれを含む薬物送達システムに関する。
現在よく用いられている薬物送達キャリアは高濃度薬物を担持することができない。しかし、多くの抗体医薬品の使用には、有効とするために比較的高い用量が必要とされる。故に、抗体医薬品の放出制御技術は困難な問題に直面している。一般的なキャリアの作製では、有機溶媒の使用が必要とされる。
米国特許第8519086号明細書 台湾特許出願第201300131号明細書 台湾特許出願第200626626号明細書 中国特許第104684546A号明細書
有機溶媒は多くの場合タンパク質の不活性化を招く。さらに、薬物放出期間中に、薬物の分子構造ならびに生物活性の完全性および安定性を維持することは難しい。
故に、高濃度の薬物を担持できると共に、薬物放出期間中に、搭載された(loaded)薬物の分子構造ならびに生物活性の完全性および安定性を維持できるようなキャリアの開発が求められている。
本開示の1実施形態によれば、ヒドロゲル組成物が提供される。ヒドロゲル組成物は、マレイミド基を含有するポリグルタミン酸(PGA)と、末端チオール基を含有するポリエチレングリコール(PEG)とを含む。特に、ヒドロゲル組成物のpH値は約4.0〜約6.5である。
本開示の別の実施形態によれば、薬物送達システムが提供される。薬物送達システムは、上記ヒドロゲル組成物と、ヒドロゲル組成物内に封入された医薬活性成分とを含む。
より具体的には、本発明は以下を提供する:
[1]
ヒドロゲル組成物であって、
マレイミド基を含有するポリグルタミン酸(PGA)と、
末端チオール基を含有するポリエチレングリコール(PEG)と
を含み、前記ヒドロゲル組成物のpH値が4.0〜6.5である、ヒドロゲル組成物;
[2]
前記マレイミド基を含有するポリグルタミン酸(PGA)の分子量が10kDa〜1000kDaである、[1]に記載のヒドロゲル組成物。
[3]
前記マレイミド基を含有するポリグルタミン酸(PGA)のグラフト率が5%〜40%である、[1]および[2]のうちの1つに記載のヒドロゲル組成物;
[4]
前記ヒドロゲル組成物中の、前記マレイミド基を含有するポリグルタミン酸(PGA)の濃度が0.75wt%〜10wt%である、[1]、[2]および[3]のうちの1つに記載のヒドロゲル組成物;
[5]
前記マレイミド基を含有するポリグルタミン酸(PGA)がチオール基を含まない、[1]、[2]、[3]および[4]のうちの1つに記載のヒドロゲル組成物;
[6]
前記末端チオール基を含有するポリエチレングリコール(PEG)の分子量が2kDa〜20kDaである、[1]、[2]、[3]、[4]および[5]のうちの1つに記載のヒドロゲル組成物;
[7]
前記ヒドロゲル組成物中の、前記末端チオール基を含有するポリエチレングリコール(PEG)の濃度が0.75wt%〜10wt%である、[1]、[2]、[3]、[4]、[5]および[6]のうちの1つに記載のヒドロゲル組成物;
[8]
前記末端チオール基を含有するポリエチレングリコール(PEG)が4アームタイプ、8アームタイプまたはY形である、[1]、[2]、[3]、[4]、[5]、[6]および[7]のうちの1つに記載のヒドロゲル組成物;
[9]
前記末端チオール基を含有するポリエチレングリコール(PEG)がマレイミド基を含まない、[1]、[2]、[3]、[4]、[5]、[6]、[7]および[8]のうちの1つに記載のヒドロゲル組成物;
[10]
前記末端チオール基を含有するポリエチレングリコール(PEG)と前記マレイミド基を含有するポリグルタミン酸(PGA)の、前記マレイミド基に対する前記チオール基のモル比が0.2〜5.0である、[1]、[2]、[3]、[4]、[5]、[6]、[7]、[8]および[9]のうちの1つに記載のヒドロゲル組成物;
[11]
前記末端チオール基を含有するポリエチレングリコール(PEG)と前記マレイミド基を含有するポリグルタミン酸(PGA)の、前記マレイミド基に対する前記チオール基のモル比が1.0〜1.5である、[1]、[2]、[3]、[4]、[5]、[6]、[7]、[8]、[9]および[10]のうちの1つに記載のヒドロゲル組成物;
[12]
[1]、[2]、[3]、[4]、[5]、[6]、[7]、[8]、[9]、[10]および[11]のうちの1つに記載のヒドロゲル組成物と、
前記ヒドロゲル組成物中に封入された医薬活性成分と
を含む薬物送達システム;
[13]
前記医薬活性成分が、成長因子、ホルモン、ペプチド、タンパク質、抗体、親水性小分子および疎水性小分子からなる群より選ばれたものである、[12]に記載の薬物送達システム;
[14]
前記医薬活性成分が、完全(intact)抗体および抗体フラグメントからなる群より選ばれたものである、[12]および[13]のうちの1つに記載の薬物送達システム;
[15]
前記医薬活性成分が、マウス抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、およびヒト抗体からなる群より選ばれたものである、[12]、[13]および[14]のうちの1つに記載の薬物送達システム;
[16]
前記医薬活性成分が、抗腫瘍薬、抗精神病薬、鎮痛薬および抗生物質からなる群より選ばれたものである、[12]および[13]のうちの1つに記載の薬物送達システム;
[17]
前記医薬活性成分が、ポリマー、金属、荷電化合物または荷電粒子とさらに会合して、その複合体を形成する、[12]、[13]、[14]、[15]および[16]のうちの1つに記載の薬物送達システム;
[18]
前記ポリマーにはポリグルタミン酸(PGA)、ヒアルロン酸、キトサン、またはデキストランが含まれる、[17]に記載の薬物送達システム;
[19]
前記金属には、亜鉛、カルシウム、マグネシウムまたは鉄が含まれる、[17]に記載の薬物送達システム;
[20]
前記複合体のサイズが10nm〜100μmである、[17]に記載の薬物送達システム;ならびに
[21]
前記医薬活性成分または前記複合体の濃度が1mg/mL〜300mg/mLである、[12]、[17]および[20]のうちの1つに記載の薬物送達システム。
ポリ(γ−グルタミン酸)(γ−PGA)は、γ結合したグルタミン酸ユニットとα−カルボキシレート側鎖とから構成される高分子量ポリペプチドである。γ−PGAは、例えば無毒性、親水性、生物分解性、および抗原性または免疫原性を回避するといった多くの長所を有するため、機能化ヒドロゲル系を作製するのに適用できる理想的なバイオマテリアルである。加えて、γ−PGA鎖上の豊富なカルボキシル基は化学修飾することができ、かつ静電的相互作用により可溶性抗体分子と結合することができる。
無荷電親水性セグメントとしてのポリ(エチレングリコール)(PEG)は、その生体適合性のために、化学的または物理的に架橋されるヒドロゲル系を構築するものとして広く用いられている。PEGベースのヒドロゲルは、細胞足場、医療用途の接着剤、および送達ビヒクルとして利用されている。特に、架橋密度を調節する能力は、PEGベースのヒドロゲルに柔軟性および適応性を与え、細胞カプセル化および組織成長に用いることができるようにする。
本開示では、高い薬物搭載量(150mg/mLを超える)および長期間の徐放(21日を上回る)を実現するために、γ−PGAおよび4アームPEGから構成される、皮下注射可能かつin situ形成のヒドロゲル系を開発する。γ−PGAを、アミノライゼーション(aminolization)により、N−(2−アミノエチル)マレイミドで部分的に修飾する。得られるマレイミド含有γ−PGA(γ−PGA−MA)と4アームPEG−SHとを水溶液中で混合する。マレイミド基とチオール基との間の、pHに敏感な(pH-sensitive)マイケル付加反応を通して、化学的に架橋されたヒドロゲルが形成される。
添付の図面を参照にしながら、以下の実施形態において詳細な説明を行う。
添付の図面を参照にしながら、以下の詳細な説明および実施例を読むことにより、本開示をより十分に理解することができる。
本開示の実施形態による血清濃度−時間プロファイルを示す図である。 本開示の実施形態による腫瘍体積変化曲線を示す図である。
詳細な説明
以下の詳細な記載においては、説明の目的で、開示される実施形態が十分に理解されるよう多数の特定の詳細が記載される。しかし、これらの特定の詳細がなくとも、1つまたは複数の実施形態が実施可能であることは明らかであろう。また、図を簡略とするために、既知の構造および装置は概略的に示されている。
本開示の1実施形態によれば、ヒドロゲル組成物が提供される。ヒドロゲル組成物は、マレイミド基を含有するポリグルタミン酸(PGA)と、末端チオール基を含有するポリエチレングリコール(PEG)とを含む。特に、ヒドロゲル組成物のpH値は約4.0〜約6.5である。
いくつかの実施形態において、マレイミド基を含有するポリグルタミン酸(PGA)は、例えば下記に示されるものであり、分子量は約10kDa〜約1000kDaである。
Figure 2018108980
いくつかの実施形態において、マレイミド基を含有するポリグルタミン酸(PGA)のグラフト率は約5%〜約40%である。
いくつかの実施形態において、ヒドロゲル組成物中の、マレイミド基を含有するポリグルタミン酸(PGA)の濃度は約0.75wt%〜約10wt%である。
いくつかの実施形態において、マレイミド基を含有するポリグルタミン酸(PGA)はチオール基を含まない。
いくつかの実施形態において、末端チオール基を含有するポリエチレングリコール(PEG)の分子量は約2kDa〜約20kDaである。
いくつかの実施形態において、ヒドロゲル組成物中の、末端チオール基を含有するポリエチレングリコール(PEG)の濃度は約0.75wt%〜約10wt%である。
いくつかの実施形態において、末端チオール基を含有するポリエチレングリコール(PEG)は、例えば下記に示されるような4−アームタイプ、8−アームタイプ、またはY形であり得る。
Figure 2018108980
いくつかの実施形態において、末端チオール基を含有するポリエチレングリコール(PEG)は、マレイミド基を含まない。
いくつかの実施形態において、末端チオール基を含有するポリエチレングリコール(PEG)とマレイミド基を含有するポリグルタミン酸(PGA)の、マレイミド基に対するチオール基のモル比は、約0.2〜約5.0である。
いくつかの実施形態において、末端チオール基を含有するポリエチレングリコール(PEG)とマレイミド基を含有するポリグルタミン酸(PGA)の、マレイミド基に対するチオール基のモル比は、約1.0〜約1.5である。
本開示の別の実施形態によれば、薬物送達システムが提供される。薬物送達システムは、ヒドロゲル組成物と、ヒドロゲル組成物内に封入された医薬活性成分とを含む。
いくつかの実施形態において、ヒドロゲル組成物は、マレイミド基を含有するポリグルタミン酸(PGA)と、末端チオール基を含有するポリエチレングリコール(PEG)とを含み得る。ヒドロゲル組成物のpH値は約4.0〜約6.5である。
いくつかの実施形態において、マレイミド基を含有するポリグルタミン酸(PGA)の分子量は約10kDa〜約1000kDaである。
いくつかの実施形態において、マレイミド基を含有するポリグルタミン酸(PGA)のグラフト率は約5%〜約40%である。
いくつかの実施形態において、ヒドロゲル組成物中の、マレイミド基を含有するポリグルタミン酸(PGA)の濃度は約0.75wt%〜約10wt%である。
いくつかの実施形態において、マレイミド基を含有するポリグルタミン酸(PGA)は、チオール基を含まない。
いくつかの実施形態において、末端チオール基を含有するポリエチレングリコール(PEG)の分子量は約2kDa〜約20kDaである。
いくつかの実施形態において、ヒドロゲル組成物中の、末端チオール基を含有するポリエチレングリコール(PEG)の濃度は約0.75wt%〜約10wt%である。
いくつかの実施形態において、末端チオール基を含有するポリエチレングリコール(PEG)は4アームタイプ、8アームタイプまたはY形であり得る。
いくつかの実施形態において、末端チオール基を含有するポリエチレングリコール(PEG)は、マレイミド基を含まない。
いくつかの実施形態において、末端チオール基を含有するポリエチレングリコール(PEG)とマレイミド基を含有するポリグルタミン酸(PGA)の、マレイミド基に対するチオール基のモル比は約0.2〜約5.0である。
いくつかの実施形態において、末端チオール基を含有するポリエチレングリコール(PEG)とマレイミド基を含有するポリグルタミン酸(PGA)の、マレイミド基に対するチオール基のモル比は約1.0〜約1.5である。
いくつかの実施形態において、医薬活性成分は、ペプチド、タンパク質、成長因子、ホルモン、抗体、および親水性または疎水性小分子からなる群より選ばれたものであり得る。
いくつかの実施形態において、医薬活性成分は、完全(intact)抗体および抗体フラグメントからなる群より選ばれたものであり得る。
いくつかの実施形態において、医薬活性成分は、マウス抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、およびヒト抗体からなる群より選ばれたものであり得る。
いくつかの実施形態において、医薬活性成分は、抗腫瘍薬、抗精神病薬、鎮痛薬および抗生物質からなる群より選ばれたものであり得る。
いくつかの実施形態において、医薬活性成分は、ポリマー、金属、荷電化合物または荷電粒子とさらに会合して、その複合体を形成することができる。
いくつかの実施形態において、ポリマーには、ポリグルタミン酸(PGA)、またはヒアルロン酸、キトサン、アルジネートもしくはデキストランのようなその他の適したポリマーが含まれ得る。
いくつかの実施形態において、金属には、亜鉛、またはカルシウム、マグネシウムもしくは鉄のようなその他の適した金属が含まれ得る。
いくつかの実施形態において、複合体のサイズは約10nm〜約100μmである。
いくつかの実施形態において、医薬活性成分または複合体の濃度は約1mg/mL〜約300mg/mLである。
ポリ(γ−グルタミン酸)(γ−PGA)は、γ結合したグルタミン酸ユニットとα−カルボキシレート側鎖とから構成される高分子量ポリペプチドである。γ−PGAは、例えば無毒性、親水性、生物分解性、および抗原性または免疫原性を回避するといった多くの長所を備えるため、機能化ヒドロゲル系を作製するのに適用できる理想的なバイオマテリアルである。加えて、γ−PGA鎖上の豊富なカルボキシル基は化学修飾することができ、かつ静電的相互作用により可溶性抗体分子と結合することができる。
無荷電親水性セグメントとしてのポリ(エチレングリコール)(PEG)は、その生体適合性のために、化学的または物理的に架橋されたヒドロゲル系を構築するものとして広く用いられている。PEGベースのヒドロゲルは、細胞足場、医療用途の接着剤、および送達ビヒクルとして利用されている。特に、架橋密度を調節する能力は、PEGベースのヒドロゲルに柔軟性および適応性を与え、細胞カプセル化および組織成長に用いることができるようにする。
本開示では、高い薬物搭載量(150mg/mLを超える)および長期間の徐放(21日を上回る)を実現するために、γ−PGAおよび4アームPEGから構成される、皮下注射可能かつin situ形成のヒドロゲル系を開発する。γ−PGAを、アミノライゼーション(aminolization)により、N−(2−アミノエチル)マレイミドで部分的に修飾する。得られるマレイミド含有γ−PGA(γ−PGA−MA)と4アームPEG−SHとを水溶液中で混合する。マレイミド基とチオール基との間の、pHに敏感な(pH-sensitive)マイケル付加反応を通して、化学的に架橋されたヒドロゲルが形成される。
実施例/比較例
実施例1
ヒドロゲル組成物(1)の作製
先ず、マレイミド基を含有するポリグルタミン酸(PGA)(Mw:1000kDa、DS(グラフト率):31.6%)0.002gをPBS 50μL中に溶解して、第1の溶液を作った(濃度:4.0wt%)。次に、チオール基を含有するポリエチレングリコール(PEG)(Mw:5kDa、4アームタイプ)0.002gをPBS 50μL中に溶解して、第2の溶液を作った(濃度:4.0wt%)。次いで、第1の溶液と第2の溶液を等容量(50μL)で混合し、ヒドロゲルを作製した。この作製において、マレイミド基に対するチオール基のモル比は0.4であり、混合溶液のpHは5.5であった。目視の確認によると、ゲル化は成功していた。
実施例2
ヒドロゲル組成物(2)の作製
先ず、マレイミド基を含有するポリグルタミン酸(PGA)(Mw:1000kDa、DS(グラフト率):31.6%)0.002gをPBS 50μL中に溶解して、第1の溶液を作った(濃度:4.0wt%)。次に、チオール基を含有するポリエチレングリコール(PEG)(Mw:5kDa、4アームタイプ)0.004gをPBS 50μL中に溶解して、第2の溶液を作った(濃度:8.0wt%)。次いで、第1の溶液と第2の溶液を等容量(50μL)で混合し、ヒドロゲルを作製した。この作製において、マレイミド基に対するチオール基のモル比は0.8であり、混合溶液のpHは5.5であった。目視の確認によると、ゲル化は成功していた。
実施例3
ヒドロゲル組成物(3)の作製
先ず、マレイミド基を含有するポリグルタミン酸(PGA)(Mw:1000kDa、DS(グラフト率):31.6%)0.002gをPBS 50μL中に溶解して、第1の溶液を作った(濃度:4.0wt%)。次に、チオール基を含有するポリエチレングリコール(PEG)(Mw:5kDa、4アームタイプ)0.005gをPBS 50μL中に溶解して、第2の溶液を作った(濃度:10wt%)。次いで、第1の溶液と第2の溶液を等容量(50μL)で混合し、ヒドロゲルを作製した。この作製において、マレイミド基に対するチオール基のモル比は1.0であり、混合溶液のpHは5.5であった。目視の確認によると、ゲル化は成功していた。
実施例4
ヒドロゲル組成物(4)の作製
先ず、マレイミド基を含有するポリグルタミン酸(PGA)(Mw:1000kDa、DS(グラフト率):31.6%)0.001gをPBS 50μL中に溶解して、第1の溶液を作った(濃度:2.0wt%、pH:4.0)。次に、チオール基を含有するポリエチレングリコール(PEG)(Mw:5kDa、4アームタイプ)0.002gをPBS 50μL中に溶解して、第2の溶液を作った(濃度:4.0wt%、pH:7.2)。次いで、第1の溶液と第2の溶液を等容量(50μL)で混合し、ヒドロゲルを作製した。この作製において、マレイミド基に対するチオール基のモル比は0.8であり、混合溶液のpHは5.6であった。目視の確認によると、ゲル化は成功しており、ゲル化には12分かかった。
実施例5
ヒドロゲル組成物(5)の作製
先ず、マレイミド基を含有するポリグルタミン酸(PGA)(Mw:1000kDa、DS(グラフト率):31.6%)0.001gをPBS 50μL中に溶解して、第1の溶液を作った(濃度:2.0wt%、pH:4.0)。次に、チオール基を含有するポリエチレングリコール(PEG)(Mw:5kDa、4アームタイプ)0.002gを脱イオン水50μL中に溶解して、第2の溶液を作った(濃度:4.0wt%、pH:4.4)。次いで、第1の溶液と第2の溶液を等容量(50μL)で混合し、ヒドロゲルを作製した。この作製において、マレイミド基に対するチオール基のモル比は0.8であり、混合溶液のpHは4.3であった。目視の確認によると、ゲル化は成功しており、ゲル化には20分かかった。
実施例6
ヒドロゲル組成物(6)の作製
先ず、マレイミド基を含有するポリグルタミン酸(PGA)(Mw:1000kDa、DS(グラフト率):31.6%)0.001gを脱イオン水50μL中に溶解して、第1の溶液を作った(濃度:2.0wt%、pH:3.9)。次に、チオール基を含有するポリエチレングリコール(PEG)(Mw:5kDa、4アームタイプ)0.002gを脱イオン水50μL中に溶解して、第2の溶液を作った(濃度:4.0wt%、pH:4.4)。次いで、第1の溶液と第2の溶液を等容量(50μL)で混合し、ヒドロゲルを作製した。この作製において、マレイミド基に対するチオール基のモル比は0.8であり、混合溶液のpHは4.1であった。目視の確認によると、ゲル化は成功しており、ゲル化には6時間以上かかった。
実施例7
ヒドロゲル組成物(7)の作製
先ず、マレイミド基を含有するポリグルタミン酸(PGA)(Mw:1000kDa、DS(グラフト率):31.6%)0.002gをPBS 50μL中に溶解して、第1の溶液を作った(濃度:4.0wt%、pH:3.9)。次に、チオール基を含有するポリエチレングリコール(PEG)(Mw:5kDa、4アームタイプ)0.002gを脱イオン水50μL中に溶解して、第2の溶液を作った(濃度:4.0wt%、pH:4.4)。次いで、第1の溶液と第2の溶液を等容量(50μL)で混合し、ヒドロゲルを作製した。この作製において、マレイミド基に対するチオール基のモル比は0.4であり、混合溶液のpHは4.2であった。目視の確認によると、ゲル化は成功しており、ゲル化には10分かかった。
実施例8
ヒドロゲル組成物(8)の作製
先ず、マレイミド基を含有するポリグルタミン酸(PGA)(Mw:1000kDa、DS(グラフト率):31.6%)0.001gをPBS 50μL中に溶解して、第1の溶液を作った(濃度:2.0wt%、pH:4.0)。次に、チオール基を含有するポリエチレングリコール(PEG)(Mw:10kDa、4アームタイプ)0.002gをPBS 50μL中に溶解して、第2の溶液を作った(濃度:4.0wt%、pH:7.2)。次いで、第1の溶液と第2の溶液を等容量(50μL)で混合し、ヒドロゲルを作製した。この作製において、マレイミド基に対するチオール基のモル比は0.4であり、混合溶液のpHは5.6であった。目視の確認によると、ゲル化は成功しており、ゲル化には2〜3分かかった。
実施例9
ヒドロゲル組成物(9)の作製
先ず、マレイミド基を含有するポリグルタミン酸(PGA)(Mw:1000kDa、DS(グラフト率):31.6%)0.001gをPBS 50μL中に溶解して、第1の溶液を作った(濃度:2.0wt%、pH:4.0)。次に、チオール基を含有するポリエチレングリコール(PEG)(Mw:10kDa、4アームタイプ)0.0015gをPBS 50μL中に溶解して、第2の溶液を作った(濃度:3wt%、pH:7.2)。次いで、第1の溶液と第2の溶液を等容量(50μL)で混合し、ヒドロゲルを作製した。この作製において、マレイミド基に対するチオール基のモル比は0.3であり、混合溶液のpHは5.6であった。目視の確認によると、ゲル化は成功しており、ゲル化には6〜8分かかった。
実施例10
ヒドロゲル組成物(10)の作製
先ず、マレイミド基を含有するポリグルタミン酸(PGA)(Mw:200〜400kDa、DS(グラフト率):11.5%)0.002gを0.9% NaCl溶液50μL中に溶解して、第1の溶液を作った(濃度:4.0wt%、pH:4.2)。次に、チオール基を含有するポリエチレングリコール(PEG)(Mw:5kDa、4アームタイプ)0.004gを0.9% NaCl溶液50μL中に溶解して、第2の溶液を作った(濃度:8.0wt%、pH:5.5)。次いで、第1の溶液と第2の溶液を等容量(50μL)で混合し、ヒドロゲルを作製した。この作製において、マレイミド基に対するチオール基のモル比は2.0であり、混合溶液のpHは4.9であった。目視の確認によると、ゲル化は成功しており、ゲル化にかかった時間は5分未満であった。
実施例11
ヒドロゲル組成物(11)の作製
先ず、マレイミド基を含有するポリグルタミン酸(PGA)(Mw:200〜400kDa、DS(グラフト率):11.5%)0.002gを0.9% NaCl溶液50μL中に溶解して、第1の溶液を作った(濃度:4.0wt%、pH:4.2)。次に、チオール基を含有するポリエチレングリコール(PEG)(Mw:5kDa、4アームタイプ)0.006gを0.9% NaCl溶液50μL中に溶解して、第2の溶液を作った(濃度:12.0wt%、pH:5.5)。次いで、第1の溶液と第2の溶液を等容量(50μL)で混合し、ヒドロゲルを作製した。この作製において、マレイミド基に対するチオール基のモル比は3.0であり、混合溶液のpHは4.9であった。目視の確認によると、ゲル化は成功しており、ゲル化にかかった時間は5分未満であった。
実施例12
ヒドロゲル組成物(12)の作製
先ず、マレイミド基を含有するポリグルタミン酸(PGA)(Mw:200〜400kDa、DS(グラフト率):11.5%)0.002gを0.9% NaCl溶液50μL中に溶解して、第1の溶液を作った(濃度:4.0wt%、pH:4.2)。次に、チオール基を含有するポリエチレングリコール(PEG)(Mw:5kDa、4アームタイプ)0.01gを0.9% NaCl溶液50μL中に溶解して、第2の溶液を作った(濃度:20wt%、pH:5.5)。次いで、第1の溶液と第2の溶液を等容量(50μL)で混合し、ヒドロゲルを作製した。この作製において、マレイミド基に対するチオール基のモル比は5.0であり、混合溶液のpHは4.9であった。目視の確認によると、ゲル化は成功しており、ゲル化には1日以上かかった。
実施例13
ヒドロゲル組成物(13)の作製
先ず、マレイミド基を含有するポリグルタミン酸(PGA)(Mw:200〜400kDa、DS(グラフト率):5.4%)0.01gを0.9% NaCl溶液50μL中に溶解して、第1の溶液を作った(濃度:20wt%、pH:4.2)。次に、チオール基を含有するポリエチレングリコール(PEG)(Mw:5kDa、4アームタイプ)0.005gを0.9% NaCl溶液50μL中に溶解して、第2の溶液を作った(濃度:10wt%、pH:5.5)。次いで、第1の溶液と第2の溶液を等容量(50μL)で混合し、ヒドロゲルを作製した。この作製において、マレイミド基に対するチオール基のモル比は1.0であり、混合溶液のpHは4.9であった。目視の確認によると、ゲル化は成功しており、ゲル化には2〜3分かかった。
実施例14
ヒドロゲル組成物(14)の作製
先ず、マレイミド基を含有するポリグルタミン酸(PGA)(Mw:200〜400kDa、DS(グラフト率):11.5%)0.01gをPBS 50μL中に溶解して、第1の溶液を作った(濃度:20wt%、pH:4.2)。次に、チオール基を含有するポリエチレングリコール(PEG)(Mw:5kDa、4アームタイプ)0.01gを0.9% NaCl溶液50μL中に溶解して、第2の溶液を作った(濃度:20wt%、pH:5.5)。次いで、第1の溶液と第2の溶液を等容量(50μL)で混合し、ヒドロゲルを作製した。この作製において、マレイミド基に対するチオール基のモル比は1.0であり、混合溶液のpHは4.9であった。目視の確認によると、ゲル化は成功しており、ゲル化には1〜2分かかった。
実施例15
薬物送達システム(1)の作製
ハーセプチン(Herceptin)粉末0.00106gを0.9% NaCl溶液中に溶解し、薬物溶液(濃度:10.6mg/mL)を形成した。次いで、マレイミド基を含有するポリグルタミン酸(PGA)(Mw:1000kDa、DS(グラフト率):12.5%)0.001gを薬物溶液50μL中に溶解し、第1の溶液を作った(濃度:2.0wt%)。次いで、チオール基を含有するポリエチレングリコール(PEG)(Mw:5kDa、4アームタイプ)0.001gを薬物溶液50μL中に溶解し、第2の溶液を作った(濃度:2.0wt%)。次いで、第1の溶液と第2の溶液を等容量(50μL)で混合し、ヒドロゲルを作製した。この作製において、マレイミド基に対するチオール基のモル比は0.89であり、混合溶液のpHは6.0であった。目視の確認によると、ゲル化は成功しており、ゲル化には4分かかった。
実施例16
薬物送達システム(2)の作製
ハーセプチン粉末0.00106gを0.9% NaCl溶液中に溶解し、薬物溶液(濃度:10.6mg/mL)を形成した。次いで、マレイミド基を含有するポリグルタミン酸(PGA)(Mw:1000kDa、DS(グラフト率):12.5%)0.001gを薬物溶液50μL中に溶解し、第1の溶液を作った(濃度:2.0wt%)。次いで、チオール基を含有するポリエチレングリコール(PEG)(Mw:5kDa、4アームタイプ)0.00075gを薬物溶液50μL中に溶解し、第2の溶液を作った(濃度:1.5wt%)。次いで、第1の溶液と第2の溶液を等容量(50μL)で混合し、ヒドロゲルを作製した。この作製において、マレイミド基に対するチオール基のモル比は0.67であり、混合溶液のpHは6.0であった。目視の確認によると、ゲル化は成功しており、ゲル化には5分かかった。
実施例17
薬物送達システム(3)の作製
ハーセプチン粉末0.00106gを0.9% NaCl溶液中に溶解し、薬物溶液(濃度:10.6mg/mL)を形成した。次いで、マレイミド基を含有するポリグルタミン酸(PGA)(Mw:1000kDa、DS(グラフト率):5.3%)0.0015gを薬物溶液50μL中に溶解し、第1の溶液を作った(濃度:3.0wt%)。次いで、チオール基を含有するポリエチレングリコール(PEG)(Mw:5kDa、4アームタイプ)0.001gを薬物溶液50μL中に溶解し、第2の溶液を作った(濃度:2.0wt%)。次いで、第1の溶液と第2の溶液を等容量(50μL)で混合し、ヒドロゲルを作製した。この作製において、マレイミド基に対するチオール基のモル比は1.33であり、混合溶液のpHは6.0であった。目視の確認によると、ゲル化は成功しており、ゲル化には5分かかった。
実施例18
薬物送達システム(4)の作製
ハーセプチン粉末0.00106gを0.9% NaCl溶液中に溶解し、薬物溶液(濃度:10.6mg/mL)を形成した。次いで、マレイミド基を含有するポリグルタミン酸(PGA)(Mw:1000kDa、DS(グラフト率):5.3%)0.0015gを薬物溶液50μL中に溶解し、第1の溶液を作った(濃度:3.0wt%)。次いで、チオール基を含有するポリエチレングリコール(PEG)(Mw:5kDa、4アームタイプ)0.00075gを薬物溶液50μL中に溶解し、第2の溶液を作った(濃度:1.5wt%)。次いで、第1の溶液と第2の溶液を等容量(50μL)で混合し、ヒドロゲルを作製した。この作製において、マレイミド基に対するチオール基のモル比は1.0であり、混合溶液のpHは6.0であった。目視の確認によると、ゲル化は成功しており、ゲル化には6分かかった。
実施例19
薬物送達システム(5)の作製
ハーセプチン粉末0.1gを脱イオン水中に溶解してから、塩化ナトリウム水溶液(0.9%)を用いて4℃で24時間透析して(MWCO:10000)、薬物溶液を形成した。次いで、薬物溶液を遠心分離し(4000g、4℃)、145.5mg/mLになるまで濃縮した。次いで、マレイミド基を含有するポリグルタミン酸(PGA)(Mw:1000kDa、DS(グラフト率):5.3%)0.0015gを薬物溶液50μL中に溶解し、第1の溶液を作った(濃度:3.0wt%)。次いで、チオール基を含有するポリエチレングリコール(PEG)(Mw:5kDa、4アームタイプ)0.001gを薬物溶液50μL中に溶解し、第2の溶液を作った(濃度:2.0wt%)。次いで、第1の溶液と第2の溶液を等容量(50μL)で混合し、ヒドロゲルを作製した。この作製において、マレイミド基に対するチオール基のモル比は1.33であり、混合溶液のpHは6.0であった。目視の確認によると、ゲル化は成功しており、ゲル化には1分かかった。
実施例20
薬物送達システム(6)の作製
ハーセプチン粉末0.1gを脱イオン水中に溶解してから、塩化ナトリウム水溶液(0.9%)を用いて4℃で24時間透析して(MWCO:10000)、薬物溶液を形成した。次いで、薬物溶液を遠心分離し(4000g、4℃)、145.5mg/mLになるまで濃縮した。次いで、マレイミド基を含有するポリグルタミン酸(PGA)(Mw:1000kDa、DS(グラフト率):5.3%)0.0015gを薬物溶液50μL中に溶解し、第1の溶液を作った(濃度:3.0wt%)。次いで、チオール基を含有するポリエチレングリコール(PEG)(Mw:5kDa、4アームタイプ)0.00075gを薬物溶液50μL中に溶解し、第2の溶液を作った(濃度:1.5wt%)。次いで、第1の溶液と第2の溶液を等容量(50μL)で混合し、ヒドロゲルを作製した。この作製において、マレイミド基に対するチオール基のモル比は1.0であり、混合溶液のpHは6.0であった。目視の確認によると、ゲル化は成功しており、ゲル化には1分かかった。
実施例21
薬物送達システム(7)の作製
ハーセプチン粉末0.1gを脱イオン水中に溶解してから、塩化ナトリウム水溶液(0.9%)を用いて4℃で24時間透析して(MWCO:10000)、薬物溶液を形成した。次いで、薬物溶液を遠心分離し(4000g、4℃)、145.5mg/mLになるまで濃縮した。次いで、マレイミド基を含有するポリグルタミン酸(PGA)(Mw:1000kDa、DS(グラフト率):12.5%)0.00075gを薬物溶液50μL中に溶解し、第1の溶液を作った(濃度:1.5wt%)。次いで、チオール基を含有するポリエチレングリコール(PEG)(Mw:5kDa、4アームタイプ)0.0006gを薬物溶液50μL中に溶解し、第2の溶液を作った(濃度:1.2wt%)。次いで、第1の溶液と第2の溶液を等容量(50μL)で混合し、ヒドロゲルを作製した。この作製において、マレイミド基に対するチオール基のモル比は0.71であり、混合溶液のpHは6.0であった。目視の確認によると、ゲル化は成功しており、ゲル化には1分かかった。
実施例22
薬物送達システム(8)の作製
ハーセプチン粉末0.1gを脱イオン水中に溶解してから、塩化ナトリウム水溶液(0.9%)を用いて4℃で24時間透析して(MWCO:10000)、薬物溶液を形成した。次いで、薬物溶液を遠心分離し(4000g、4℃)、128.6mg/mLになるまで濃縮した。次いで、マレイミド基を含有するポリグルタミン酸(PGA)(Mw:200〜400kDa、DS(グラフト率):11.3%)0.00075gを薬物溶液50μL中に溶解し、第1の溶液を作った(濃度:1.5wt%)。次いで、チオール基を含有するポリエチレングリコール(PEG)(Mw:5kDa、4アームタイプ)0.00075gを薬物溶液50μL中に溶解し、第2の溶液を作った(濃度:1.5wt%)。次いで、第1の溶液と第2の溶液を等容量(50μL)で混合し、ヒドロゲルを作製した。この作製において、マレイミド基に対するチオール基のモル比は1.0であり、混合溶液のpHは6.0であった。目視の確認によると、ゲル化は成功しており、ゲル化には20分かかった。
実施例23
薬物送達システム(9)の作製
ハーセプチン粉末0.1gを脱イオン水中に溶解してから、塩化ナトリウム水溶液(0.9%)を用いて4℃で24時間透析して(MWCO:10000)、薬物溶液を形成した。次いで、薬物溶液を遠心分離し(4000g、4℃)、128.6mg/mLになるまで濃縮した。次いで、マレイミド基を含有するポリグルタミン酸(PGA)(Mw:200〜400kDa、DS(グラフト率):11.3%)0.001gを薬物溶液50μL中に溶解し、第1の溶液を作った(濃度:2.0wt%)。次いで、チオール基を含有するポリエチレングリコール(PEG)(Mw:5kDa、4アームタイプ)0.001gを薬物溶液50μL中に溶解し、第2の溶液を作った(濃度:2.0wt%)。次いで、第1の溶液と第2の溶液を等容量(50μL)で混合し、ヒドロゲルを作製した。この作製において、マレイミド基に対するチオール基のモル比は1.0であり、混合溶液のpHは6.0であった。目視の確認によると、ゲル化は成功しており、ゲル化には10分かかった。
実施例24
薬物送達システム(10)の作製
ハーセプチン粉末0.1gを脱イオン水中に溶解してから、塩化ナトリウム水溶液(0.9%)を用いて4℃で24時間透析して(MWCO:10000)、薬物溶液を形成した。次いで、薬物溶液を遠心分離し(4000g、4℃)、128.6mg/mLになるまで濃縮した。次いで、マレイミド基を含有するポリグルタミン酸(PGA)(Mw:200〜400kDa、DS(グラフト率):11.3%)0.0015gを薬物溶液50μL中に溶解し、第1の溶液を作った(濃度:3.0wt%)。次いで、チオール基を含有するポリエチレングリコール(PEG)(Mw:5kDa、4アームタイプ)0.0015gを薬物溶液50μL中に溶解し、第2の溶液を作った(濃度:3.0wt%)。次いで、第1の溶液と第2の溶液を等容量(50μL)で混合し、ヒドロゲルを作製した。この作製において、マレイミド基に対するチオール基のモル比は1.0であり、混合溶液のpHは6.0であった。目視の確認によると、ゲル化は成功しており、ゲル化には4分かかった。
実施例25
薬物送達システム(11)の作製
ハーセプチン粉末0.1gを脱イオン水中に溶解してから、塩化ナトリウム水溶液(0.9%)を用いて4℃で24時間透析して(MWCO:10000)、薬物溶液を形成した。次いで、薬物溶液を遠心分離し(4000g、4℃)、205mg/mLになるまで濃縮した。次いで、マレイミド基を含有するポリグルタミン酸(PGA)(Mw:200〜400kDa、DS(グラフト率):11.3%)0.00075gを薬物溶液50μL中に溶解し、第1の溶液を作った(濃度:1.5wt%)。次いで、チオール基を含有するポリエチレングリコール(PEG)(Mw:5kDa、4アームタイプ)0.00075gを薬物溶液50μL中に溶解し、第2の溶液を作った(濃度:1.5wt%)。次いで、第1の溶液と第2の溶液を等容量(50μL)で混合し、ヒドロゲルを作製した。この作製において、マレイミド基に対するチオール基のモル比は1.0であり、混合溶液のpHは6.0であった。目視の確認によると、ゲル化は成功しており、ゲル化には15〜17分かかった。
実施例26
薬物送達システム(12)の作製
ハーセプチン粉末0.1gを脱イオン水中に溶解してから、塩化ナトリウム水溶液(0.9%)を用いて4℃で24時間透析して(MWCO:10000)、薬物溶液を形成した。次いで、薬物溶液を遠心分離し(4000g、4℃)、205mg/mLになるまで濃縮した。次いで、マレイミド基を含有するポリグルタミン酸(PGA)(Mw:200〜400kDa、DS(グラフト率):11.3%)0.001gを薬物溶液50μL中に溶解し、第1の溶液を作った(濃度:2.0wt%)。次いで、チオール基を含有するポリエチレングリコール(PEG)(Mw:5kDa、4アームタイプ)0.001gを薬物溶液50μL中に溶解し、第2の溶液を作った(濃度:2.0wt%)。次いで、第1の溶液と第2の溶液を等容量(50μL)で混合し、ヒドロゲルを作製した。この作製において、マレイミド基に対するチオール基のモル比は1.0であり、混合溶液のpHは6.0であった。目視の確認によると、ゲル化は成功しており、ゲル化には5〜6分かかった。
実施例27
薬物送達システム(13)の作製
ハーセプチン粉末0.1gを脱イオン水中に溶解してから、塩化ナトリウム水溶液(0.9%)を用いて4℃で24時間透析して(MWCO:10000)、薬物溶液を形成した。次いで、薬物溶液を遠心分離し(4000g、4℃)、205mg/mLになるまで濃縮した。次いで、マレイミド基を含有するポリグルタミン酸(PGA)(Mw:200〜400kDa、DS(グラフト率):11.3%)0.0015gを薬物溶液50μL中に溶解し、第1の溶液を作った(濃度:3.0wt%)。次いで、チオール基を含有するポリエチレングリコール(PEG)(Mw:5kDa、4アームタイプ)0.0015gを薬物溶液50μL中に溶解し、第2の溶液を作った(濃度:3.0wt%)。次いで、第1の溶液と第2の溶液を等容量(50μL)で混合し、ヒドロゲルを作製した。この作製において、マレイミド基に対するチオール基のモル比は1.0であり、混合溶液のpHは6.0であった。目視の確認によると、ゲル化は成功しており、ゲル化には2〜3分かかった。
実施例28
薬物送達システム(14)の作製
ハーセプチン粉末0.1gを脱イオン水中に溶解して、薬物溶液を形成した(濃度:190mg/mL)。次いで、マレイミド基を含有するポリグルタミン酸(PGA)(Mw:200〜400kDa、DS(グラフト率):11.3%)0.001gを薬物溶液50μL中に溶解し、第1の溶液を作った(濃度:2.0wt%)。次いで、チオール基を含有するポリエチレングリコール(PEG)(Mw:5kDa、4アームタイプ)0.001gを薬物溶液50μL中に溶解し、第2の溶液を作った(濃度:2.0wt%)。次いで、第1の溶液と第2の溶液を等容量(50μL)で混合し、ヒドロゲルを作製した。この作製において、マレイミド基に対するチオール基のモル比は1.0であり、混合溶液のpHは6.0であった。目視の確認によると、ゲル化は成功しており、ゲル化には3〜5分かかった。
実施例29
薬物送達システム(15)の作製
ハーセプチン粉末0.1gを脱イオン水中に溶解して、薬物溶液を形成した(濃度:160mg/mL)。次いで、マレイミド基を含有するポリグルタミン酸(PGA)(Mw:200〜400kDa、DS(グラフト率):19.8%)0.00075gを薬物溶液50μL中に溶解し、第1の溶液を作った(濃度:1.5wt%)。次いで、チオール基を含有するポリエチレングリコール(PEG)(Mw:5kDa、4アームタイプ)0.0015gを薬物溶液50μL中に溶解し、第2の溶液を作った(濃度:3.0wt%)。次いで、第1の溶液と第2の溶液を等容量(50μL)で混合し、ヒドロゲルを作製した。この作製において、マレイミド基に対するチオール基のモル比は1.0であり、混合溶液のpHは6.0であった。目視の確認によると、ゲル化は成功しており、ゲル化にかかった時間は2分未満であった。
実施例30
薬物送達システム(16)の作製
MOPSバッファー50μL中のハーセプチン粉末0.01848gと、MOPSバッファー50μL中のマレイミド基を含有するポリグルタミン酸(PGA)(Mw:200〜400kDa,DS(グラフト率):11.3%)0.001gとを混合して複合体溶液を形成し、遠心分離して上澄み30μLを除去した。次いで、チオール基を含有するポリエチレングリコール(PEG)(Mw:5kDa、4アームタイプ)0.001gを0.9%NaCl溶液30μL中に溶解し、複合体溶液と混合して、ヒドロゲルを作製した(最終薬物濃度:184.8mg/mL)。この作製において、マレイミド基に対するチオール基のモル比は1.0であり、混合溶液のpHは6.0であった。目視の確認によると、ゲル化は成功しており、ゲル化には5分かかった。
実施例31
薬物送達システム(17)の作製
0.9% NaCl溶液をバッファー溶液として用い、濃度128.0mg/mLのハーセプチン/Zn複合体溶液を作った。pH値5.0の酸性条件下、適量のマレイミド基を含有するポリグルタミン酸(PGA)(Mw:1000kDa、DS(グラフト率):12.5%)、およびチオール基を含有するポリエチレングリコール(PEG)(Mw:5kDa、4アームタイプ)をハーセプチン/Zn複合体溶液中に溶解して、PGA濃度1.0wt%、PEG濃度0.75wt%のハーセプチンヒドロゲルを作製した(マレイミド基に対するチオール基のモル比は0.7)。ゲル化時間は30分を超えた。
実施例32
薬物送達システム(18)の作製
0.5Mヒスチジン溶液をバッファー溶液として用い、濃度208.0mg/mLのハーセプチン/Zn複合体溶液を作った。pH値4.3の酸性条件下、適量のマレイミド基を含有するポリグルタミン酸(PGA)(Mw:1000kDa、DS(グラフト率):12.5%)、およびチオール基を含有するポリエチレングリコール(PEG)(Mw:5kDa、4アームタイプ)をハーセプチン/Zn複合体溶液中に溶解して、PGA濃度1.3wt%、PEG濃度0.8wt%のハーセプチンヒドロゲルを作製した(マレイミド基に対するチオール基のモル比は0.6)。ゲル化時間は5〜10分であった。
実施例33
薬物送達システム(19)の作製
ドキソルビシン粉末0.004gを脱イオン水中に溶解して、薬物溶液を形成した(濃度:4.0mg/mL)。次いで、マレイミド基を含有するポリグルタミン酸(PGA)(Mw:200〜400kDa、DS(グラフト率):11.5%)0.0015gを薬物溶液50μL中に溶解し、第1の溶液を作った(濃度:3.0wt%)。次いで、チオール基を含有するポリエチレングリコール(PEG)(Mw:5kDa、4アームタイプ)0.0015gを薬物溶液50μL中に溶解し、第2の溶液を作った(濃度:3.0wt%)。次いで、第1の溶液と第2の溶液を等容量(50μL)で混合し、ヒドロゲルを作製した。この作製において、マレイミド基に対するチオール基のモル比は1.0であり、混合溶液のpHは4.5であった。目視の確認によると、ゲル化は成功しており、ゲル化には20〜30分かかった。
比較例1
薬物送達システムの作製
ドキソルビシン粉末0.002gを脱イオン水中に溶解して、薬物溶液を形成した(濃度:2.0mg/mL)。次いで、マレイミド基を含有するポリグルタミン酸(PGA)(Mw:200〜400kDa、DS(グラフト率):11.5%)0.001gを薬物溶液50μL中に溶解し、第1の溶液を作った(濃度:2.0wt%)。次いで、チオール基を含有するポリエチレングリコール(PEG)(Mw:5kDa、4アームタイプ)0.006gを薬物溶液50μL中に溶解し、第2の溶液を作った(濃度:12wt%)。次いで、第1の溶液と第2の溶液を等容量(50μL)で混合し、ヒドロゲルを作製した。この作製において、マレイミド基に対するチオール基のモル比は6.0であり、混合溶液のpHは5.0であった。目視の確認によると、ゲル化は失敗した。
実施例34
ヒドロゲル作製に対するpHの影響
各種バッファー溶液を用い、濃度1.5wt%のマレイミド基を含有するポリグルタミン酸(PGA)(Mw:200〜400kDa、DS(グラフト率):11.5%)の各種溶液を作製した。各種バッファー溶液を用い、濃度1.5wt%のチオール基を含有するポリエチレングリコール(PEG)(Mw:5kDa、4アームタイプ)の各種溶液を作製した。マレイミド基を含有するポリグルタミン酸(PGA)の溶液とチオール基を含有するポリエチレングリコール(PEG)の溶液とを各種pH環境下で混合してヒドロゲルを作製し、ゲル化のプロセスを観察した。表1に、ゲル化時間、均一性およびヒドロゲルの剛性などの結果が示されている。
Figure 2018108980
この例では、酸性pH環境(つまり、pH=4.2、4.5、5.0、および6.5)下、作製時において、適度な混合物のゲル化時間および均一性が得られた。さらに、かかる条件で形成されたヒドロゲルは好ましい剛性を備える。
比較例2
薬物搭載ヒドロゲルのカプセル化および溶解に対するアルカリ性pHの影響
濃度50.0mg/mL、pH値7.8のハーセプチン溶液を作製した。適量のマレイミド基を含有するポリグルタミン酸(PGA)(Mw:1000kDa、DS(グラフト率):31.6%)をハーセプチン溶液中に溶解して、濃度2.0wt%の第1の溶液を作製した。適量のチオール基を含有するポリエチレングリコール(PEG)(Mw:5kDa、4アームタイプ)をハーセプチン溶液中に溶解して、濃度4.0wt%の第2の溶液を作製した。第1の溶液と第2の溶液とをpH値7.8(アルカリ性条件)下で混合し(マレイミド基に対するチオール基のモル比は0.72)、ヒドロゲル(GAEG01)を作製した。ゲル化時間は2分未満であった。
次に、適量のマレイミド基を含有するポリグルタミン酸(PGA)(Mw:1000kDa、DS(グラフト率):31.6%)をハーセプチン溶液中に溶解して、濃度2.0wt%の第1の溶液を作製した。適量のチオール基を含有するポリエチレングリコール(PEG)(Mw:10kDa、4アームタイプ)をハーセプチン溶液中に溶解して、濃度4.0wt%の第2の溶液を作製した。第1の溶液と第2の溶液とをpH値7.8(アルカリ性条件)下で混合し(マレイミド基に対するチオール基のモル比は0.36)、ヒドロゲル(GAEG02)を作製した。ゲル化時間は同様に2分未満であった。
この比較例では、ゲル化が急速である(2分未満)ために、作製の過程で第1の溶液と第2の溶液との混合物が不均一となった。薬物放出挙動の試験において、ヒドロゲルからのハーセプチンの放出は不完全なものであった。ヒドロゲル(GAEG01およびGAEG02)はハーセプチンを約28日しか放出しなかった。加えて、薬物構造および活性の試験では、ハーセプチンの分子構造の完全性は多大なダメージを受け(多数のハーセプチン断片の形成)、かつその活性は失われた(抗原への結合能力が大幅に低下)。
実施例35
薬物搭載ヒドロゲルのカプセル化および溶解に対する酸性pHの影響
ヒドロゲルGAEG13を実施例25により作製した。ヒドロゲルGAEG14を実施例26により作製した。ヒドロゲルGAEG15を実施例27により作製した。薬物搭載ヒドロゲル(GAEG13、GAEG14およびGAEG15)のカプセル化および溶解に対する酸性pHの影響について試験を行った。
この例では、ヒドロゲル(GAEG13、GAEG14およびGAEG15)の最大薬物搭載濃度が205mg/mLに達した。第1の溶液と第2の溶液との混合物(ヒドロゲル/薬物)は、ゲル化時間が十分であったため(2〜17分)、作製の過程で均一であった。薬物放出挙動の試験において、ヒドロゲルからのハーセプチンの放出は完全であった。ヒドロゲル(GAEG13、GAEG14およびGAEG15)はハーセプチンを約50日も放出した(つまり、ヒドロゲルは徐放能力を備えている)。加えて、薬物構造および活性の試験では、ハーセプチンの分子構造の完全性は維持され、例えば35日目にハーセプチン断片の形成は依然としてなかった。故に、その生物活性は維持されていた(抗原への結合能力が依然高かった)。
実施例36
薬物複合体搭載ヒドロゲル(1)の溶解効果
MOPSバッファー50μL中のハーセプチン粉末0.01848gと、MOPSバッファー50μL中のマレイミド基を含有するポリグルタミン酸(PGA)(Mw:200〜400kDa、DS(グラフト率):11.3%)0.001gとを混合して複合体溶液を形成し、遠心分離して上澄み30μLを除去した。次いで、チオール基を含有するポリエチレングリコール(PEG)(Mw:5kDa、4アームタイプ)0.001gを0.9% NaCl溶液30μL中に溶解し、複合体溶液と混合して、ヒドロゲル(PGA01)を作製した(最終薬物濃度184.8mg/mL)。この作製において、マレイミド基に対するチオール基のモル比は1.0であり、混合溶液のpHは6.0であった。目視の確認によると、ゲル化は成功しており、ゲル化には5分かかった。
この例では、薬物放出挙動の試験において、ヒドロゲルからのハーセプチンの放出は完全であった。ヒドロゲル(PGA01)はハーセプチンを約42日も放出した(つまり、ヒドロゲルは徐放能力を備えている)。加えて、薬物構造および活性の試験では、ハーセプチンの分子構造の完全性は維持され、例えば28日目にハーセプチン断片/凝集体の形成は依然としてなかった。故に、その生物活性は維持されていた(抗原への結合能力が依然高かった)。
実施例37
薬物複合体搭載ヒドロゲル(2)の溶解効果
0.9% NaCl溶液をバッファー溶液として用い、濃度128.0mg/mLのハーセプチン/Zn複合体溶液を作製した。pH値5.0(酸性条件)下、適量のマレイミド基を含有するポリグルタミン酸(PGA)(Mw:1000kDa、DS(グラフト率):12.5%)およびチオール基を含有するポリエチレングリコール(PEG)(Mw:5kDa、4アームタイプ)をハーセプチン/Zn複合体溶液中に溶解し、PGA濃度1.0wt%、PEG濃度0.75wt%(マレイミド基に対するチオール基のモル比は0.7)のハーセプチンヒドロゲルを作り、ヒドロゲル(GAEGZ001)を作製した。ゲル化時間は30分を超えた。
0.5Mヒスチジン溶液をバッファー溶液として用い、濃度208.0mg/mLのハーセプチン/Zn複合体溶液を作製した。pH値4.3(酸性条件)の下、適量のマレイミド基を含有するポリグルタミン酸(PGA)(Mw:1000kDa、DS(グラフト率):12.5%)およびチオール基を含有するポリエチレングリコール(PEG)(Mw:5kDa、4アームタイプ)をハーセプチン/Zn複合体溶液中に溶解し、PGA濃度1.3wt%、PEG濃度0.8wt%(マレイミド基に対するチオール基のモル比は0.6)のハーセプチンヒドロゲルを作って、ヒドロゲル(GAEGZ002)を作製した。ゲル化時間は5〜10分であった。
この例では、ヒドロゲル(GAEGZ002)の薬物搭載濃度)は208mg/mLにもなった。ヒドロゲル(GAEGZ001)はハーセプチンを約42日も放出し、ヒドロゲル(GAEGZ002)はハーセプチンを最大約70日も放出した(つまり、ヒドロゲルは強い徐放能力を備えている)。これは、ハーセプチンとZnとが相互作用してキレートを形成し、結果として徐放効果を高めることになるためである。加えて、薬物構造および活性の試験では、ハーセプチンの分子構造の完全性および安定性は維持され、例えば、放出されたハーセプチンのモノマーが90%を超えていた。故に、その生物活性は維持されていた(抗原への結合能力は依然高かった)。
実施例38
薬物搭載ヒドロゲルの放出挙動
0.9% NaCl溶液をバッファー溶液として用い、濃度10.6mg/mLのハーセプチン溶液を作製した。次いで、適量のマレイミド基を含有するポリグルタミン酸(PGA)(Mw:200〜400kDa、DS(グラフト率):11.3%)をハーセプチン溶液中に溶解して、濃度3.0wt%の第1の溶液を作った。次いで、適量のチオール基を含有するポリエチレングリコール(PEG)(Mw:5kDa、4アームタイプ)をハーセプチン溶液中に溶解して、濃度3.0wt%の第2の溶液を作った。次いで、pH値6.0(酸性条件)下で第1の溶液と第2の溶液とを混合し(マレイミド基に対するチオール基のモル比は1.0)、ヒドロゲルを作製した。ゲル化時間は10〜15分であった。
0.9% NaCl溶液をバッファー溶液として用い、濃度128.6mg/mLのハーセプチン溶液を作った。次いで、適量のマレイミド基を含有するポリグルタミン酸(PGA)(Mw:200〜400kDa、DS(グラフト率):11.3%)をハーセプチン溶液中に溶解して、濃度3.0wt%の第1の溶液を作った。次いで、適量のチオール基を含有するポリエチレングリコール(PEG)(Mw:5kDa、4アームタイプ)をハーセプチン溶液中に溶解して、濃度3.0wt%の第2の溶液を作った。次いで、pH値6.0(酸性条件)下で第1の溶液と第2の溶液とを混合し(マレイミド基に対するチオール基のモル比は1.0)、ヒドロゲルを作製した(GAEG11)。ゲル化時間は4分であった。
0.9% NaCl溶液をバッファー溶液として用い、濃度205.0mg/mLのハーセプチン溶液を作った。次いで、適量のマレイミド基を含有するポリグルタミン酸(PGA)(Mw:200〜400kDa、DS(グラフト率):11.3%)をハーセプチン溶液中に溶解して、濃度3.0wt%の第1の溶液を作った。次いで、チオール基を含有するポリエチレングリコール(PEG)(Mw:5kDa、4アームタイプ)をハーセプチン溶液中に溶解して、濃度3.0wt%の第2の溶液を作った。次いで、pH値6.0(酸性条件)下で第1の溶液と第2の溶液とを混合し(マレイミド基に対するチオール基のモル比は1.0)、ヒドロゲルを作製した(GAEG15)。ゲル化時間は4分であった。
この例では、薬物放出挙動の試験において、その結果から、薬物搭載濃度が高いほど、薬物放出期間が長くなるということが示されている。薬物搭載濃度が128.6mg/mLまたは205.0mg/mLのときに、薬物放出期間は約42日にもなった。
実施例39
薬物複合体搭載ヒドロゲルの放出挙動
0.5Mヒスチジン溶液をバッファー溶液として用い、濃度9.3mg/mLのハーセプチン/Zn複合体溶液を作った。pH値4.1(酸性条件)下、適量のマレイミド基を含有するポリグルタミン酸(PGA)(Mw:200〜400kDa、DS(グラフト率:9.0%)およびチオール基を含有するポリエチレングリコール(PEG)(Mw:5kDa、4アームタイプ)ハーセプチン/Zn複合体溶液中に溶解して、PGA濃度1.5wt%、PEG濃度1.5wt%のハーセプチンヒドロゲルを作り(マレイミド基に対するチオール基のモル比は1.0)、ヒドロゲル(GAEGZ007)を作製した。ゲル化時間は50〜60分であった。
0.5Mヒスチジン溶液をバッファー溶液として用い、濃度93.0mg/mLのハーセプチン/Zn複合体溶液を作った。pH値4.2(酸性条件)下、適量のマレイミド基を含有するポリグルタミン酸(PGA)(Mw:200〜400kDa、DS(グラフト率:9.0%)およびチオール基を含有するポリエチレングリコール(PEG)(Mw:5kDa、4アームタイプ)をハーセプチン/Zn複合体溶液中に溶解して、PGA濃度1.5wt%、PEG濃度1.5wt%のハーセプチンヒドロゲルを作り(マレイミド基に対するチオール基のモル比は1.0)、ヒドロゲル(GAEGZ008)を作製した。ゲル化時間は35〜40分であった。
0.5Mヒスチジン溶液をバッファー溶液として用い、濃度171.7mg/mLのハーセプチン/Zn複合体溶液を作った。pH値4.3(酸性条件)下、適量のマレイミド基を含有するポリグルタミン酸(PGA)(Mw:200〜400kDa、DS(グラフト率:9.0%)およびチオール基を含有するポリエチレングリコール(PEG)(Mw:5kDa、4アームタイプ)をハーセプチン/Zn複合体溶液中に溶解して、PGA濃度1.5wt%、PEG濃度1.5wt%のハーセプチンヒドロゲルを作り(マレイミド基に対するチオール基のモル比は1.0)、ヒドロゲル(GAEGZ009)を作製した。ゲル化時間は25〜30分であった。この例では、薬物放出挙動の試験において、その結果から、薬物搭載濃度が高いほど、薬物放出期間が長くなるということが示されている。薬物搭載濃度が93.0mg/mLまたは171.7mg/mLのときに、薬物放出期間は約35日にもなった。
実施例40
薬物搭載ヒドロゲルのカプセル化および溶解に対する酸性pHの影響
濃度141.3mg/mLのエタネルセプト(Etanercept)溶液を作った。適量のマレイミド基を含有するポリグルタミン酸(PGA)(Mw:200〜400kDa、DS(グラフト率):5.0%)をエタネルセプト溶液中に溶解し、濃度4.1wt%の第1の溶液を作った。適量のチオール基を含有するポリエチレングリコール(PEG)(Mw:5kDa、4アームタイプ)をエタネルセプト溶液中に溶解し、濃度1.5wt%の第2の溶液を作った。pH値6.3(酸性条件)下で第1の溶液と第2の溶液とを混合し(マレイミド基に対するチオール基のモル比は0.8)、ヒドロゲルを作製した。ゲル化時間は90〜120分であった。
次いで、適量のマレイミド基を含有するポリグルタミン酸(PGA)(Mw:200〜400kDa、DS(グラフト率):5.0%)をエタネルセプト溶液中に溶解し、濃度4.9wt%の第1の溶液を作った。適量のチオール基を含有するポリエチレングリコール(PEG)(Mw:5kDa、4アームタイプ)をエタネルセプト溶液中に溶解し、濃度1.5 wt%の第2の溶液を作った。pH値6.3(酸性条件)下で第1の溶液と第2の溶液とを混合し(マレイミド基に対するチオール基のモル比は0.67)、ヒドロゲルを作製した。ゲル化時間は45〜90分であった。
次いで、適量のマレイミド基を含有するポリグルタミン酸(PGA)(Mw:200〜400kDa、DS(グラフト率):5.0%)をエタネルセプト溶液中に溶解し、濃度5.7wt%の第1の溶液を作った。適量のチオール基を含有するポリエチレングリコール(PEG)(Mw:5kDa、4アームタイプ)をエタネルセプト溶液中に溶解し、濃度1.5wt%の第2の溶液を作った。pH値6.3(酸性条件)下で第1の溶液と第2の溶液とを混合し(マレイミド基に対するチオール基のモル比は0.57)、ヒドロゲルを作製した。ゲル化時間は30〜45分であった。
次いで、適量のマレイミド基を含有するポリグルタミン酸(PGA)(Mw:200〜400kDa、DS(グラフト率):5.0%)をエタネルセプト溶液中に溶解し、濃度6.5wt%の第1の溶液を作った。適量のチオール基を含有するポリエチレングリコール(PEG)(Mw:5kDa、4アームタイプ)をエタネルセプト溶液中に溶解し、濃度1.5wt%の第2の溶液を作った。pH値6.3(酸性条件)下で第1の溶液と第2の溶液とを混合し(マレイミド基に対するチオール基のモル比は0.5)、ヒドロゲルを作製した。ゲル化時間は30〜45分であった。
この例では、ヒドロゲルの最大薬物搭載濃度が141.3mg/mLに達した。ゲル化時間が十分であったため(30〜120分)、第1の溶液と第2の溶液との混合物(ヒドロゲル/薬物)は作製の過程で均一であった。薬物放出挙動の試験において、ヒドロゲルからのハーセプチンの放出は完全であった。ヒドロゲルはエタネルセプトを約30日も放出した(つまり、ヒドロゲルは徐放能力を備えている)。加えて、薬物構造および活性の試験では、エタネルセプトの分子構造の完全性は維持された。故に、その生物活性は維持されていた(抗原への結合能力が依然高かった)。
実施例41
薬物搭載ヒドロゲルのカプセル化および溶解に対する酸性pHの影響
濃度100mg/mLのHSA(ヒト血清アルブミン)溶液を作った。適量のマレイミド基を含有するポリグルタミン酸(PGA)(Mw:200〜400kDa、DS(グラフト率): 12.1%)をHSA溶液中に溶解し、濃度2.0wt%の第1の溶液を作った。適量のチオール基を含有するポリエチレングリコール(PEG)(Mw:5kDa、4アームタイプ)をHSA溶液中に溶解し、濃度2.0wt%の第2の溶液を作った。pH値5.0〜6.15(酸性条件)下で第1の溶液と第2の溶液とを混合し(マレイミド基に対するチオール基のモル比は1.0)、ヒドロゲル(A)を作製した。ゲル化時間は8〜12分であった。
濃度200mg/mLのHSA(ヒト血清アルブミン)溶液を作った。次に、適量のマレイミド基を含有するポリグルタミン酸(PGA)(Mw:200〜400kDa、DS(グラフト率):12.1%)をHSA溶液中に溶解し、濃度2.0wt%の第1の溶液を作った。適量のチオール基を含有するポリエチレングリコール(PEG)(Mw:5kDa、4アームタイプ)をHSA溶液中に溶解し、濃度2.0wt%の第2の溶液を作った。pH値5.0〜6.15(酸性条件)下で第1の溶液と第2の溶液とを混合し(マレイミド基に対するチオール基のモル比は1.0)、ヒドロゲル(B)を作製した。ゲル化時間は2.5〜4.2分であった。
濃度300mg/mLのHSA(ヒト血清アルブミン)溶液を作った。次に、適量のマレイミド基を含有するポリグルタミン酸(PGA)(Mw:200〜400kDa、DS(グラフト率):12.1%)をHSA溶液中に溶解し、濃度2.0wt%の第1の溶液を作った。適量のチオール基を含有するポリエチレングリコール(PEG)(Mw:5kDa、4アームタイプ)をHSA溶液中に溶解し、濃度2.0wt%の第2の溶液を作った。pH値6.15(酸性条件)下で第1の溶液と第2の溶液とを混合し(マレイミド基に対するチオール基のモル比は1.0)、ヒドロゲル(C)を作製した。ゲル化時間は1分未満であった。
この例では、ヒドロゲル(A、BおよびC)の最大薬物搭載濃度が100〜300mg/mLに達した。ゲル化時間が十分であったため、第1の溶液と第2の溶液との混合物(ヒドロゲル/薬物)は作製の過程で均一であった。加えて、薬物構造の試験では、HSAの分子構造の完全性および安定性は維持されており、例えば、ヒドロゲル(A、BおよびC)から放出されたHSAのモノマーはそれぞれ94.1%、92.8%および92.6%であった。
比較例3
薬物搭載ヒドロゲルのカプセル化および溶解に対するアルカリ性pHの影響
濃度50mg/mLのHSA(ヒト血清アルブミン)溶液を作った。適量のマレイミド基を含有するポリグルタミン酸(PGA)(Mw:200〜400kDa、DS(グラフト率):12.1%)をHSA溶液中に溶解し、濃度2.0wt%の第1の溶液を作った。適量のチオール基を含有するポリエチレングリコール(PEG)(Mw:5kDa、4アームタイプ)をHSA溶液中に溶解し、濃度2.0wt%の第2の溶液を作った。pH値8.18(アルカリ性条件)下で第1の溶液と第2の溶液とを混合し(マレイミド基に対するチオール基のモル比は1.0)、ヒドロゲル(D)を作製した。しかし、ヒドロゲルは即座にゲル化してしまった。
この比較例では、ゲル化が急速である(つまり、ヒドロゲルが即座にゲル化した)ために、作製の過程で第1の溶液と第2の溶液との混合物は不均一となった。加えて、薬物構造の試験において、HSAの分子構造の完全性は多大なダメージを受けた(多数のHSA断片の形成)。ヒドロゲルから放出されたHSAのモノマーは75.8%だけだった。
実施例42
薬物搭載ヒドロゲルのカプセル化および溶解に対する酸性pHの影響
濃度20mg/mLのリラグルチド溶液を作製した。適量のマレイミド基を含有するポリグルタミン酸(PGA)(Mw:200〜400kDa、DS(グラフト率):12.1%)をリラグルチド溶液中に溶解し、濃度2.0wt%の第1の溶液を作った。適量のチオール基を含有するポリエチレングリコール(PEG)(Mw:5kDa、4アームタイプ)をリラグルチド溶液中に溶解し、濃度2.0wt%の第2の溶液を作った。pH値5.0(酸性条件)下で第1の溶液と第2の溶液とを混合し(マレイミド基に対するチオール基のモル比は1.0)、ヒドロゲル(A)を作製した。ゲル化時間は8〜12分であった。
濃度20mg/mLのリラグルチド溶液を作製した。次いで、適量のマレイミド基を含有するポリグルタミン酸(PGA)(Mw:300kDa、DS(グラフト率):12.1%)をリラグルチド溶液中に溶解し、濃度3.0wt%の第1の溶液を作った。適量のチオール基を含有するポリエチレングリコール(PEG)(Mw:5kDa、4アームタイプ)をリラグルチド溶液中に溶解し、濃度3.0wt%の第2の溶液を作った。pH値5.0(酸性条件)下で第1の溶液と第2の溶液とを混合し(マレイミド基に対するチオール基のモル比は1.0)、ヒドロゲル(B)を作製した。ゲル化時間は2.5〜4.2分であった。
この例では、ゲル化時間が十分であった(2〜12分)ため、第1の溶液と第2の溶液との混合物(ヒドロゲル/薬物)は作製の過程で均一となった。加えて、薬物構造の試験では、リラグルチドの分子構造の完全性および安定性は維持されており、例えば、ヒドロゲル(AおよびB)から放出されたリラグルチドのモノマーは100%であった。
実施例43
薬物搭載ヒドロゲルのin−vivo薬物動態(pharmacokinetics,PK)の研究
先ず、濃度20.0mg/mLの“ハーセプチン”溶液を作製し、対照群とした。
別の濃度20.0mg/mLのハーセプチン溶液を作製した。次いで、適量のマレイミド基を含有するポリグルタミン酸(PGA)(Mw:200〜400kDa、DS(グラフト率):11.4%)をハーセプチン溶液中に溶解し、濃度3.0wt%の第1の溶液を作った。次いで、適量のチオール基を含有するポリエチレングリコール(PEG)(Mw:5kDa、4アームタイプ)をハーセプチン溶液中に溶解し、濃度3.0wt%の第2の溶液を作った。次いで、pH値6.0(酸性条件)下で第1の溶液と第2の溶液とを混合し(マレイミド基に対するチオール基のモル比は1.0)、“ハーセプチン−搭載ヒドロゲル”を作製し、実験群とした。
ラットを用い、“ハーセプチン”(対照群)、“ハーセプチン搭載ヒドロゲル”(実験群)の薬物動態(PK)実験を行った。投与量は50mg/kgとした。投薬後の7日目、14日目、21日目、28日目および35日目にそれぞれ血漿中の薬物濃度を測定し、血清濃度−時間プロファイルを作成した。血清濃度−時間プロファイルのデータにより、Tmax、Cmax、T1/2、AUCD35およびBA(バイオアベイラビリティ(bioavailability))のような薬物動態パラメータを得た。それらが表2に示されている。
Figure 2018108980
結果から、ハーセプチン搭載ヒドロゲルでは、そのCmaxは元のハーセプチンの約60%であり、そのTmaxは2倍遅延し、そのT1/2は2.7倍延長したことが示された。よって、ハーセプチン搭載ヒドロゲルは徐放能力を備えている。
実施例44
薬物複合体搭載ヒドロゲルのin−vivo薬物動態(pharmacokinetics,PK)の研究
まず、濃度20.0mg/mLの“ハーセプチン”溶液を、対照群として作製した。
0.9% NaCl溶液をバッファー溶液として用い、濃度20.0mg/mLのハーセプチン/Zn複合体溶液を作製した。pH値5.8(酸性条件)下、適量のマレイミド基を含有するポリグルタミン酸(PGA)(Mw:200〜400kDa、DS(グラフト率:11.4%)およびチオール基を含有するポリエチレングリコール(PEG)(Mw:5kDa、4アームタイプ)を、PGAの濃度1.5wt%、PEGの濃度1.5wt%でハーセプチン/Zn複合体溶液中に溶解し(マレイミド基に対するチオール基のモル比は1.0)、“ハーセプチン/Zn複合体搭載ヒドロゲル(Her/Zn−ヒドロゲル)”を作製して実験群とした。ゲル化時間は40〜50分であった。
ラットを用い、“ハーセプチン”(対照群)、“ハーセプチン/Zn複合体搭載ヒドロゲル(Her/Zn−ヒドロゲル)”(実験群)の薬物動態(PK)実験を行った。投与量は50mg/kgとした。投薬後の7日目、14日目、21日目、28日目および35日目にそれぞれ血漿中の薬物濃度を測定し、血清濃度−時間プロファイルを作成した。血清濃度−時間プロファイルのデータにより、Tmax、Cmax、T1/2、AUCD35およびBA(バイオアベイラビリティ)のような薬物動態パラメータを得た。それらが表3および図1に示されている。
Figure 2018108980
結果から、ハーセプチン/Zn複合体搭載ヒドロゲルでは、そのCmaxは元のハーセプチンの約30%であり、そのTmaxは3倍遅延し、そのT1/2は4.2倍延長したことが示された。よって、ハーセプチン/Zn複合体搭載ヒドロゲルは徐放能力を備えている。
実施例45
薬物搭載ヒドロゲルのin−vivo薬力学(pharmacodynamics,PD)の研究
“ダルベッコリン酸緩衝生理食塩水(DPBS)”溶液を準備し、対照群とした。
濃度10mg/mLの“ハーセプチン”溶液を作製し、第1の実験群とした。
別の濃度10mg/mLのハーセプチン溶液を作製した。次いで、適量のマレイミド基を含有するポリグルタミン酸(PGA)(Mw:200〜400kDa、DS(グラフト率):11.5%)をハーセプチン溶液中に溶解し、濃度3.0wt%の第1の溶液を作った。次いで、適量のチオール基を含有するポリエチレングリコール(PEG)(Mw:5kDa、4アームタイプ)をハーセプチン溶液中に溶解し、濃度3.0wt%の第2の溶液を作った。次いで、pH値6.0(酸性条件)下で第1の溶液と第2の溶液とを混合し(マレイミド基に対するチオール基のモル比は1.0)、“ハーセプチン−搭載ヒドロゲル”を作製して、第2の実験群とした。
BT474乳癌マウスを用い、“DPBS”(対照群)、“ハーセプチン”(第1の実験群)、“ハーセプチン搭載ヒドロゲル”(第2の実験群)の薬力学(PD)実験を行った。“ハーセプチン”および“ハーセプチン搭載ヒドロゲル”の投与量は50mg/kgとした。投薬後の特定の日に腫瘍体積(mm)をそれぞれ測定し、腫瘍体積変化曲線を作成した。腫瘍体積変化曲線のデータにより、腫瘍増殖抑制(TGI)を計算した。それらが表4に示されている。
Figure 2018108980
投薬後28日目における腫瘍体積変化の結果から、DPBSと比較して、皮下注射により投与されたハーセプチン(投与量:50mg/kg)は腫瘍増殖を抑制できることがわかり、そのTGIを計算すると52.7%であった。
投薬後28日目におけるハーセプチン搭載ヒドロゲルのTGIはハーセプチンと類似している。
実験中にマウスの体重(BW)に著しい変化はなかった。
実施例46
薬物複合体搭載ヒドロゲルのin−vivo薬力学(PD)の研究
“ダルベッコリン酸緩衝生理食塩水(DPBS)”溶液を準備し、対照群とした。
0.9% NaCl溶液をバッファー溶液として用い、濃度10.0mg/mLのハーセプチン/Zn複合体溶液を作製した。pH値5.9(酸性条件)下、適量のマレイミド基を含有するポリグルタミン酸(PGA)(Mw:200〜400kDa、DS(グラフト率:11.5%)およびチオール基を含有するポリエチレングリコール(PEG)(Mw:5kDa、4アームタイプ)を、PGAの濃度1.5wt%、PEGの濃度1.5wt%でハーセプチン/Zn複合体溶液中に溶解し(マレイミド基に対するチオール基のモル比は1.0)、“ハーセプチン/Zn複合体搭載ヒドロゲル(Her/Zn−ヒドロゲル)”を作製して実験群とした。ゲル化時間は約40分であった。
BT474乳癌マウスを用い、“DPBS”(対照群)、“ハーセプチン/Zn複合体搭載ヒドロゲル(Her/Znヒドロゲル)”(実験群)の薬力学(PD)実験を行った。“ハーセプチン/Znヒドロゲル”の投与量は50mg/kgとした。投薬後の特定の日に腫瘍体積(mm)をそれぞれ測定し、腫瘍体積変化曲線を作成した。腫瘍体積変化曲線のデータにより、腫瘍増殖抑制(TGI)を計算した。それらが表5におよび図2に示されている。
Figure 2018108980
投薬後28日目における腫瘍体積変化の結果から、ハーセプチン/Zn複合体搭載ヒドロゲルは腫瘍増殖を大幅に抑制できることがわかり、そのTGIを計算すると121.9%であった。
実験中にマウスの体重(BW)に著しい変化はなかった。
本開示は、マレイミド(MA)基を含有するポリグルタミン酸(PGA)と、チオール(SH)基を含有するポリエチレングリコール(PEG)とを含む新規なヒドロゲル組成物を提供する。特に、当該ヒドロゲル組成物の酸性pH値の範囲は約4.0〜約6.5である。当該ヒドロゲルは薬物送達システムに適用することができる。当該ヒドロゲルは高用量の薬物を担持する能力を持ち、最大薬物搭載濃度が約300mg/mLにも達する。当該ヒドロゲルは薬物の放出挙動を調節することができ、例えば徐放期間がin vitroで少なくとも35日に達する。特に、薬物複合体搭載ヒドロゲルでは、in vivoでそのCmaxはヒドロゲルに覆われていない薬物の約30%であり、そのTmaxは3倍遅延し、かつそのT1/2は4.2倍延長する。当該ヒドロゲルにより、薬物の分子構造および生物活性の完全性および安定性は維持される。加えて、当該ヒドロゲルは、多種類の薬物、例えば、抗体もしくはタンパク質もしくはペプチドのような高分子薬物、または親水性もしくは疎水性小分子などを封入することができる。
開示した実施形態に各種修飾および変化を加え得るということは、当業者には明らかであろう。明細書および実施例は単に例示として見なされるように意図されており、本発明の真の範囲は、以下の特許請求の範囲およびそれらの均等物によって示される。

Claims (21)

  1. ヒドロゲル組成物であって、
    マレイミド基を含有するポリグルタミン酸(PGA)と、
    末端チオール基を含有するポリエチレングリコール(PEG)と
    を含み、前記ヒドロゲル組成物のpH値が4.0〜6.5である、ヒドロゲル組成物。
  2. 前記マレイミド基を含有するポリグルタミン酸(PGA)の分子量が10kDa〜1000kDaである、請求項1に記載のヒドロゲル組成物。
  3. 前記マレイミド基を含有するポリグルタミン酸(PGA)のグラフト率が5%〜40%である、請求項1および2のうちの1項に記載のヒドロゲル組成物。
  4. 前記ヒドロゲル組成物中の、前記マレイミド基を含有するポリグルタミン酸(PGA)の濃度が0.75wt%〜10wt%である、請求項1、2および3のうちの1項に記載のヒドロゲル組成物。
  5. 前記マレイミド基を含有するポリグルタミン酸(PGA)がチオール基を含まない、請求項1、2、3および4のうちの1項に記載のヒドロゲル組成物。
  6. 前記末端チオール基を含有するポリエチレングリコール(PEG)の分子量が2kDa〜20kDaである、請求項1、2、3、4および5のうちの1項に記載のヒドロゲル組成物。
  7. 前記ヒドロゲル組成物中の、前記末端チオール基を含有するポリエチレングリコール(PEG)の濃度が0.75wt%〜10wt%である、請求項1、2、3、4、5および6のうちの1項に記載のヒドロゲル組成物。
  8. 前記末端チオール基を含有するポリエチレングリコール(PEG)が4アームタイプ、8アームタイプまたはY形である、請求項1、2、3、4、5、6および7のうちの1項に記載のヒドロゲル組成物。
  9. 前記末端チオール基を含有するポリエチレングリコール(PEG)がマレイミド基を含まない、請求項1、2、3、4、5、6、7および8のうちの1項に記載のヒドロゲル組成物。
  10. 前記末端チオール基を含有するポリエチレングリコール(PEG)と前記マレイミド基を含有するポリグルタミン酸(PGA)の、前記マレイミド基に対する前記チオール基のモル比が0.2〜5.0である、請求項1、2、3、4、5、6、7、8および9のうちの1項に記載のヒドロゲル組成物。
  11. 前記末端チオール基を含有するポリエチレングリコール(PEG)と前記マレイミド基を含有するポリグルタミン酸(PGA)の、前記マレイミド基に対する前記チオール基のモル比が1.0〜1.5である、請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9および10のうちの1項に記載のヒドロゲル組成物。
  12. 請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9、10および11のうちの1項に記載のヒドロゲル組成物と、
    前記ヒドロゲル組成物中に封入された医薬活性成分と
    を含む薬物送達システム。
  13. 前記医薬活性成分が、成長因子、ホルモン、ペプチド、タンパク質、抗体、親水性小分子および疎水性小分子からなる群より選ばれたものである、請求項12に記載の薬物送達システム。
  14. 前記医薬活性成分が、完全(intact)抗体および抗体フラグメントからなる群より選ばれたものである、請求項12および13のうちの1項に記載の薬物送達システム。
  15. 前記医薬活性成分が、マウス抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、およびヒト抗体からなる群より選ばれたものである、請求項12、13および14のうちの1項に記載の薬物送達システム。
  16. 前記医薬活性成分が、抗腫瘍薬、抗精神病薬、鎮痛薬および抗生物質からなる群より選ばれたものである、請求項12および13のうちの1項に記載の薬物送達システム。
  17. 前記医薬活性成分が、ポリマー、金属、荷電化合物または荷電粒子とさらに会合して、その複合体を形成する、請求項12、13、14、15および16のうちの1項に記載の薬物送達システム。
  18. 前記ポリマーにはポリグルタミン酸(PGA)、ヒアルロン酸、キトサン、またはデキストランが含まれる、請求項17に記載の薬物送達システム。
  19. 前記金属には、亜鉛、カルシウム、マグネシウムまたは鉄が含まれる、請求項17に記載の薬物送達システム。
  20. 前記複合体のサイズが10nm〜100μmである、請求項17に記載の薬物送達システム。
  21. 前記医薬活性成分または前記複合体の濃度が1mg/mL〜300mg/mLである、請求項12、17および20のうちの1項に記載の薬物送達システム。
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