JP2018107224A - 静止誘導電器 - Google Patents

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Abstract

【課題】
静止誘導電器において,巻線の上下の開口部からは漏洩磁界が生じるが、この漏洩磁界が当板に鎖交することとなる。これにより、巻線から漏れる磁束により鉄心と巻線の間に配置される当板にうず電流が誘起されて漂遊損失が発生することとなり、静止誘導機器の効率が低減する場合がある。
【解決手段】
鉄心と、鉄心に巻き回された巻線と、鉄心の上下に設けられた上締金具と下締金具と、上締金具と下締金具とを連結し鉄心と巻線との間に配置される当板とを有する変圧器であって、当板の側面部に、当板が有する透磁率よりも高い透磁率、または、当板が有する電気抵抗率よりも高い電気抵抗率を有する保護部材が配置されたことを特徴とする静止誘導電器。
【選択図】 図1

Description

本発明は静止誘導電器の漂遊損失の低減技術に関する。
極薄電磁鋼板,アモルファス,ナノ結晶合金等の低損失磁性材料は厚さがおおむね0.5mm以下の薄帯状であり,容量がおおむね5MVA以下の受配電用変圧器等の静止誘導電器用鉄心に適用する際は,該材料を複数枚積層,巻回した「巻鉄心」を構成し,その外周を金属製固定部材で覆って鉄心を固定する構造が一般的である。
例えば、特許文献1(特開平11−288822号公報)には「変圧器鉄心外面に絶縁物を介して当て板を配置するものにおいて、前記絶縁物と当て板が接する面で絶縁物の垂直方向に冷却流路を形成したことを特徴とする静止誘導電器鉄心。」が開示されている(請求項1参照)。
また,特許文献2(特開2002−75752号公報)には,「鉄心と、該鉄心に巻き回された巻線と、前記鉄心を両面側から挟持して締め付ける鉄心締付金具と、該鉄心締付金具の表面に設けられ、前記巻線からの漏れ磁束の鉄心締付金具への侵入を阻止する高透磁率の磁気シールドと、を備えた静止誘導電器。」する技術が開示されている(請求項1参照)。
特開平11−288822号公報 特開2002−75752号公報
特許文献1には、変圧器の鉄心は板厚の薄い珪素鋼板をそれぞれ所定幅に切断したものを複数枚積層した鉄心を均一に締付ける締圧の確保と吊上げ及び短絡機械力が分担できるように鉄心脚には当て板が用いられていることが記載されている。
また、変圧器の大容量化に伴い、必然的に巻線間に生ずる漏れ磁束の量も多くなり、これら漏れ磁束により生ずるうず電流損が大きくなることが記載されている。
すなわち、巻線から漏れる磁束により鉄心と巻線の間に配置される当板にうず電流が誘起されて漂遊損失が発生することとなり、静止誘導機器の効率が低減する場合がある。
特許文献1には、当板に流れるうず電流によって発生する損失を両面から冷却することが可能とするために当板の局部過熱を防止する構造が開示されているが、当板に流れるうず電流を低減させることについては考慮していない。
本発明は、当板に誘起される漂遊損失を低減させた静止誘導機器を提供することにある。
上記課題を解決するため,例えば特許請求の範囲に記載された構成を採用する。本願は上記課題を解決する複数の手段を含んでいるが,その一例を挙げるならば,鉄心と、鉄心に巻き回された巻線と、鉄心の上下に設けられた上締金具と下締金具と、上締金具と下締金具とを連結し鉄心と巻線との間に配置される当板とを有する変圧器であって、当板の側面部に、当板が有する透磁率よりも高い透磁率、または、当板が有する電気抵抗率よりも高い電気抵抗率を有する保護部材が配置されたことを特徴とする。
本発明の構成により,静止誘導機器の漂遊損失を低減し、静止誘導機器の効率を向上させることが可能になる。
本発明の第1の実施例を示す,静止誘導電器の縦断面図および側面図である。 本発明の第1の実施例を示す,当板とシールド材の拡大断面図である。 本発明の第1の実施例を示す,三相静止誘導電器の断面斜視図である。 本発明の第1の実施例の効果を示す,電磁界解析による漂遊損密度の分布図である。 本発明の第1の実施例の効果を示す,電磁界解析による漂遊損失の計算値の従来例との比較を示す図である。 本発明の第2の実施例を示す,静止誘導電器の縦断面図および側面図である。 本発明の第2の実施例を示す,矩形形状の巻線の上面図である。 本発明の第3の実施例を示す,静止誘導電器の縦断面図である。 本発明の第4の実施例を示す,静止誘導電器の縦断面図である。 本発明の第5の実施例を示す,静止誘導電器の縦断面図および当板とシールド材の横断面図である。 本発明の第6の実施例を示す,静止誘導電器の縦断面図および当板とシールド材の横断面図である。 本発明のシールド材を備えていない静止誘導電器の縦断面図および側面図である。 本発明の静止誘導電器の縦断面図の一例である。
以下,本発明の複数の実施例を,図面を用いて詳細に説明する。
図1から図3を用いて,本発明の第1の実施例について説明する。図1は静止誘導電器の左端部の縦断面図と側面図を,図2は当板とシールド材の拡大断面図を,図3は三相誘導電器の全体の構造を断面斜視図で示したものである。静止誘導機器とは、鉄心と当該鉄心に巻き回されたコイル(巻線)を有する変圧器やリアクトルを含む概念である。
本明細書においてシールド材は、当板を覆うように配置することから保護部材または当板の面に沿うように配置されることから板状部材とも呼ぶ。後述の実施例で当板にペーストまたは塗料として塗布したものも保護部材または板状部材の概念に含まれる。
図1に示した静止誘導電器の左端部の縦断面図では,鉄心1の周囲に低圧巻線2aと高圧巻線2bが巻回されている。鉄心1の側面部に金属製の板状構造部材である「当板」3が近接して備えられる。当板3は図3に示されるU相磁脚1aとU相磁脚1aに巻き回された低圧巻線2aとの間に配置される。
また、鉄心1は、U相磁脚1aを有する外鉄心と、U相磁客1aの内側に設けられたV相磁脚1bを有する鉄心とW相磁脚を有する鉄心は内鉄心と呼ばれる。また、低圧巻線2aと高圧巻線2bはU相磁脚1aを有する外鉄心とV相磁脚1bを有する内鉄心に巻き回されている。
つまり、当板3は外鉄心の外周側の平面と低圧巻線2aの内周の平面との間に挟み込まれるように配置されている。言い換えると、外鉄心の外周側と低圧巻線2aの内周側とが構成する空間に配置されている。
また、当板3の上下の端部はスタッドボルト6,およびボルトとナット7等の接続手段により,上部固定部材5a,下部固定部材5bによって固定される。また、これらの上部固定部材5aと下部固定部材5bによって鉄心1を締め付けることでその形状を保持している。このように当板3を配置することで、静止誘導電器の筺体体積を小さくすることができる。
ここで,本実施例のシールド材4は、当板3の低圧巻線2aと対向する側が,低圧巻線2a,高圧巻線2bの上面の高さよりも長い。また、シールド材4の幅は当板3以上の幅である。シールド材4の上下方向の長さは低圧巻線2aの下端から上端までの長さよりも大きい。
シールド材4の部材として、当板3の部材よりも高い透磁率を有する板状の部材用い、これを複数枚積層して構成される。
当板3の部材よりも高い透磁率を有する板状の部材は、方向性電磁鋼板等を用いることができ、一枚であっても実施することができる。よりシールド効果を向上させるため、複数枚を用いて積層することが望ましい。
上記したシールド材4は、巻線2aの上面よりも上部側に突き出ているため、巻線2aから放出される漏れ磁束が当板3に鎖交する量を低減し、漂遊損失を減少させることができる。同様にシールド材4は、巻線2aの上面よりも下部側に突き出ているため、下部側の漂遊損失を減少させることができる。
これにより、静止誘導機器全体の効率を向上させることができる。なお、シールド材4は、巻線2aの上下両方に必須ではなく、上部または下部のいずれか一方だけに配置しても、漂遊損失を低減させることが可能である。望ましくは上下両方に配置するとよい。
次に具体的な当板3の寸法について説明する。図1右側に示した静止誘導電器の側面図において,シールド材4の高さをH1,幅をW1,当板3の高さをH2,幅をW2,巻線2a,2bの高さをH3とした場合,H3≦H1<H2,W1≧W2,なる関係とすることが好適である。
すなわち、シールド材4の高さは、巻線2a,2bの高さ以上であって、当板3の高さよりも小さいとよい。また、シールド材4の幅は当板の幅以上であるとよい。
なお,この寸法の関係は漂遊損失の低減効果を十分に得るために望ましい条件を示したものである。
図2は,図1左側の縦断面図に示したA部の拡大図である。シールド材4を,無方向性珪素鋼板(無方向性電磁鋼板),方向性珪素鋼板等(方向性電磁鋼板)の薄板状高透磁率材料4aを複数枚重ねて構成され,当板3に密着固定する構成が好適である例を示す。このように密着固定することで、静止誘導機器の幅方向の大きさが増さないようにできる。
本明細書において、無方向性電磁鋼板と方向性電磁鋼板を総称して単に電磁鋼板と呼ぶ。
また、シールド材に方向性電磁鋼板を用いる場合には、磁化容易軸が水平方向であるとよい。また、水平方向に限らず鉛直方向と異なる角度であってもよい。水平方向に近い磁化容易軸とすることで、低圧巻線2aと高圧巻線2bから漏れる磁束が放射される方向と異なる角度の磁化容易軸であるため、より当板3へ漏れ磁束が鎖交するのを防ぐことができる。
個々の薄板状高透磁率材料4aの表面には一定の厚さの絶縁層が形成され,隣接する他の4a,および当板3とは電気的に絶縁することができる。
シールド材4を固定する方法は,巻線2aとシールド材4の間隙に,絶縁性材料を充填して圧力をかける方法,絶縁性のバインド材で,シールド材4と当板3を巻回,締結する方法,接着剤等でシールド材4を当板3と一体固定する方法,等を用いて実施できる。
図3は,本実施例を適用した三相誘導電器の全体の構造の断面斜視図である。薄帯状磁性材料を巻回して構成した複数の巻鉄心を組み合わせて三相三脚型の鉄心が構成されて。左から順に,U相磁脚1a,V相磁脚1b,W相磁脚1cが並んでおり,各磁脚には透視図で示した低圧巻線2aが内側に,高圧巻線2bが外側にそれぞれ巻回されている。薄帯状磁性材料は珪素鋼板やアモルファス薄帯を用いることができる。
U相磁脚1aとW相磁脚1cの側面部に当板3が備えられ,上部固定部材5aおよび下部固定部材5bと締結されている。そして、当板3が有する面のうち巻線2aと対向する側にシールド材4が当板3に沿って備えられている。
次に,本実施例の効果を図4および図5を使って説明する。
図4は,容量500kVAの三相三脚型巻鉄心を持つ変圧器に対して3次元電磁界解析で求めた,当板3の表面で発生する漂遊損密度の分布を当該変圧器の外鉄心外周側に巻き回された巻線側から見た図である。つまり、図3におけるa−a’断面における漂遊損失の密度分布である。
鉄心の材料は,(株)日立金属製のアモルファス材料2605HB1Mを巻回した製造された巻鉄心のパラメータを用いている。
また,巻線2a,2b,当板3,シールド材4の物性値と寸法は,表1に示した条件で計算した。図4の左側に示した従来例は,シールド材4が存在しない状態,右側に示した実施例1は,図1に示した如く,シールド材4を当板3と低圧巻線2aが対向する面に備えた状態である。
一方で、本実施例の比較対象としてシールド材4を設けない構成について図11を用いて説明する。図11は受配電用静止誘導電器の一例である変圧器内部の鉄心と巻線の左端部の縦断面図と側面図を例示したものである。
基本構造は実施例1とほぼ同様であり、異なる点は、外鉄心と低圧巻線2aとの間に設けられる当板3にシールド材4が配置されていない点である。
当板3は鉄心1と内側の低圧巻線2aの間隙部に備えられており、巻線2a、2bの上下の開口部からは漏洩磁界が発生する。この漏洩磁界が当板3に鎖交することで漂遊損失が生じる。
図11の構成の計算結果から,図4の従来例に示すように巻線2a,2bの上下の開口部近傍の当板3の表面が黒く示される。つまり、巻線2aの開口部近傍に漂遊損失が多く発生することを示す。また、巻線2aの開口部のうち上面の内周側近傍と下面の内周側近傍の損失密度が大きいことがわかる。
それに対して実施例1の計算結果は,漂遊損失が集中して発生する箇所が消失する特徴が見られる。本発明を実施することで漂遊損失を低減することができることが示されている。
Figure 2018107224
図5は,図4に示した従来例と実施例1における漂遊損失密度分布の計算結果から,当板3とシールド材4で発生する漂遊損失の合計値を求めて比較したものである。
縦軸の漂遊損失は,従来例の計算値を100%とした場合の相対値で示している。シールド材4を備えることにより,当板3で発生する漂遊損失は約1/4に減少し,シールド材4で発生する損失を含めても,漂遊損失の合計値はほぼ半減する効果が得られる。これにより、静止誘導機器全体の効率を向上させることができる。
図6aは,本発明の第2の実施例を示す。静止誘導電器の左端部の縦断面図と側面図である。実施例1で記述した構成部材の説明は省略する。本実施例では,当板3と巻線2aが対向する面に,巻線2aおよび2bの上下の開口部近傍を覆う高さを持つ薄板状高透磁率材料を複数枚積層して構成された上部シールド材4bと下部シールド材4cを備える。
図6bの低圧巻線2aの上面図であり、図6aと図6bを用いて低圧巻線2aの上部の開口部について説明する。開口部とは、図6aに示す低圧巻線2aの上端である破線が開口部100aである。また、図6bに示す矩形の低圧巻線6bの内周側の領域が開口部である。
つまり、低圧巻線2aの開口部とは、低圧巻線2aの上部端面のうち中央の巻線が巻き回されていない面である。また、図6aでは低圧巻線2aと高圧巻線2bが同じ高さであるため、高圧巻線2bの開口部は低圧巻線2aと同様の開口部100aとなる。
一方、低圧巻線2aの下端である破線が開口部100bである。同様に高圧巻線2bの開口部も100bである。したがって、下部端面のうち中央の巻線が巻き回されていない面が下部の開口部100bとなる。
図6a右側に示した静止誘導電器の側面図において,シールド材4b、4cの高さをH1,幅をW1,上下のシールド材4bと4cとの間の間隔をg,当板3の高さをH2,幅をW2,巻線2a,2bの高さをH3とした場合,H3≦2×H1+g<H2,W1≧W2,なる関係とすることが好適である。
また、上部シールド材4bのH1/2の高さに低圧巻線2bの開口部100aとするとよい。この場合は、開口部100aの上下部分の漂遊損失を低減させつつ、実施例1よりもシールド材を軽量化することができる。下部シールド材4cも同様である。なお、いずれか一方のみを配置しても実施可能である。
なお,この寸法の関係は漂遊損失の低減効果を十分に得るために望ましい条件を示したものである。
静止誘導電器の金属製構造部材で発生する漂遊損失は,主に巻線の上下開口部から漏洩する磁界が鎖交することで生じる。
よって、当板3で発生する漂遊損失は巻線開口部の近傍で多く発生する。本実施例では,この部分に上部シールド材4bと下部シールド材4cを備え,当板3の中央部の領域にgの長さ分のシールド材を設けないこととなるため、実施例1よりも少量の部材で漂遊損失を効果的に低減することが可能になる。
図7は,本発明の第3の実施例を示す,静止誘導電器の左端部の縦断面図である。実施例1で記述した構成部材の説明は省略する。
本実施例では,当板3の低圧巻線2aと対向する側に実施例1と同様の寸法を持つ薄板状高透磁率材料を複数枚積層して構成された第1のシールド材4を備える。さらに、当板3の鉄心と対向する側に,第1のシールド材4と同様の寸法を持つ第2のシールド材4dを備える。
すなわち、当板3のうち低圧巻線2aと対向する面に第1のシールド材4を有し、低圧巻線2aと対向する面と異なる面である外鉄心と対向する面に第2のシールド材4dを有する。よって、当板3の両面にシールド材を備えることにより,実施例1よりも漂遊損失を低減することが可能になり,静止誘導電器の効率が向上する。
図8は,本発明の第4の実施例を示す,静止誘導電器の左端部の縦断面図である。実施例1で記述した構成部材の説明は省略する。本実施例では,当板3の低圧巻線2aと対向する側に実施例2と同様の寸法を持つ薄板状高透磁率材料を複数枚積層して構成された第1のシールド材4bを備える。さらに、当板3の鉄心と対向する側のうち,第1のシールド材と同一の高さに第1のシールド材4bと同様の寸法を持つ第3のシールド材4eを備える。なお、第1のシールド材4b等は積層されていない部材であってもよい。
また、当板3の下部、すなわち、開口部100bの高さに低圧巻線2a側の面に第2のシールド材4cが配置される。また、対向する面である外鉄心側の面に第4のシールド材4fが配置される。
よって、当板3の両面に巻線の上下の開口部のみを覆う高さを持つシールド材4b、4c、4d、4eを備えることにより,必要最小限の部材で実施例2よりも漂遊損失を低減することが可能になり,静止誘導電器の効率が向上する。
さらに,本実施例では第2のシールド材4bが鉄心1の上端部と下端部のみに接触し,圧力をかける構成となり,中央の磁脚部には圧力がかからない。よって,磁脚部に作用する応力が低減され,薄帯状磁性材料を巻回して構成される巻鉄心で発生する励磁騒音が低減されるという効果が得られる。
また、磁脚部に歪が生じにくくなるため、損失を低減させることができる。したがって、本実施例の構成は、特に、アモルファス薄帯を部材とする巻鉄心構造に有効である。
図9は,本発明の第5の実施例を示す, 静止誘導電器の左端部の縦断面図と,縦断面図中にA−A’で示した面の横断面図である。実施例1で記述した構成部材の説明は省略する。
本実施例では,当板3の巻線2a,2bの上下の開口部近傍を覆う高さを持つ薄板状高透磁率材料を複数枚積層して構成された第1のシールド材4gと第2のシールド材4hを,該当板3の外周に巻回させ,端部には一定の間隙を設けつつ備える。これにより、シールド材4gに循環電流を流れるのを防ぎ、損失の低減が図られるようになる。
すなわち、第1のシールド材4gは、当板3を覆うようにシールド材で包み、開放端を設ける構成である。つまり、第1のシールド材4gは、当板3の幅方向の外周を覆うように構成されており、鉄心側を接続しないようにしている。
本構成により,実施例1に比べて少量の部材で実施例4と同等の漂遊損失低減効果が得られ,静止誘導電器の効率が向上する。また、漏れ磁束が生じやすい開放部100aと100bの高さ周辺をシールド材が当板3の両面を覆うことにより、漂遊損失を低減させることができる。
さらに実施例4と同様に,シールド材4gが鉄心1の上端部と下端部のみに接触し中央部には接触しない構成であるため,鉄心1の上端部と下端部に圧力をかける構成となり,中央の磁脚部には圧力がかからない。よって,磁脚部に作用する応力が低減され,薄帯状磁性材料を巻回して構成される巻鉄心で発生する励磁騒音が低減されるという効果も得られる。
図10は,本発明の第6の実施例を示す,静止誘導電器の左端部の縦断面図と,縦断面図中にA−A’で示した面の横断面図である。実施例1で記述した構成部材の説明は省略する。
本実施例では,当板3の低圧巻線2aと対向する側に,実施例1と同様の寸法を持つ薄板状高透磁率材料を複数枚積層して構成された第1のシールド材4iを低圧巻線2aの上部開口部の位置に備える。また、低圧巻線2aの下部開口部の位置であって、低圧巻線2a側に第2のシールド材4jを備える。
さらに,実施例5同様に、当板3の巻線2aの上部の開口部近傍を覆う高さを持つ薄板状高透磁率材料を複数枚積層して構成された第3のシールド材4gを,当板3とシールド材4を含む外周に巻回させ,端部に一定の間隙を設けつつ備える。また、下部開口部の位置には、第2のシールド材4jと当板3を覆い包むように第4のシールド材4jを設け、外鉄心側に開放端を設ける。
本構成により,実施例1と同等の漂遊損失の低減効果に加えて,漂遊損失が多く発生する当板3のうち低圧巻線2a側の面のうち巻線2a,2bの上下の開口部に備えた第1,第2のシールド材4i、jによる漂遊損失の低減効果が得られ,静止誘導電器の効率が向上する。
さらに実施例4および実施例5と同様に,第3のシールド材4gと第4のシールド材4hが鉄心1の上端部と下端部のみに接触し,圧力をかける構成となり,中央の磁脚部には圧力がかからない。
よって,磁脚部に作用する応力が低減され,薄帯状磁性材料を巻回して構成される巻鉄心で発生する励磁騒音が低減されるという効果も得られる。
上記した実施例のシールド材4等の部材は、当板3が有する透磁率より高い透磁率であるとよい。また、他の例として、シールド材4等の部材は、当板3が有する電気抵抗率よりも高い電気抵抗率を有するものであるとよい。さらに、他の例として、シールド材4等の部材は、当板3が有する導電率よりも低い導電率を有するとよい。これらの部材の特性すべてを備える必要はなく、いずれか一つ以上を有していれば、低圧巻線2aの漏れ磁束が当板3への鎖交を低減させることができるため、本発明のシールド材として実施可能である。
また、上記したシールド材4等の高さの一例について、図12を用いて説明する。図12は、低圧巻線2aと高圧巻線2bより低い位置の構成を省略した図である、上述の他の実施例で説明した符号については説明を省略する。
低圧巻線2aの内周角部から45度の角度の延長線200aと当板3が交差する交点Bが示される。また、高圧巻線2bの内周角部から45度の角度の延長線200bと当板3が交差する交点Cが示される。
シールド材4kの高さの一例として低圧巻線2aの上部開放部から交点Bまで突き出ているとよい。低圧巻線2a内周の角部から45度の位置までシールド材4kを延ばすことで開放端から当板3の方に漏れる磁束を十分にシールド材4kが受けることが可能となる。
また、シールド材4kの高さの一例として高圧巻線2bの上部開放部から交点Cまで突き出ているとよい。高圧巻線2bの内周角部から45度の位置までシールド材4kを延ばすことで開放端から当板3の方に漏れる磁束をシールド材4kが受けることが可能となる。
以上説明した複数の実施例は本発明の構成を限定するものではなく,異なる実施例に記載した構成物の形状,構造を任意に組み合わせても,本発明の効果は同様に得られる。
また、本発明は、タンク内に配置されたコイル及び鉄心を覆うように絶縁油が投入される油入変圧器や巻線を樹脂モールドで覆うモールド変圧器にも実施可能である。また、鉄心、巻線と当板を有する機器であれば実施可能である。
1:鉄心
1a:U相磁脚
1b:V相磁脚
1c:W相磁脚
2a:低圧巻線
2b:高圧巻線
3:当板
4:シールド材
4a:薄板状高透磁率材料
5a:上部固定部材
5b:下部固定部材
6:スタッドボルト
7:ボルトおよびナット

Claims (12)

  1. 鉄心と、前記鉄心に巻き回された巻線と、前記鉄心の上下に設けられた上締金具と下締金具と、前記上締金具と前記下締金具とを連結し前記鉄心と前記巻線との間に配置される当板とを有する変圧器であって、
    前記当板の側面部に、前記当板が有する透磁率よりも高い透磁率、または、前記当板が有する電気抵抗率よりも高い電気抵抗率を有する保護部材が配置されたこと
    を特徴とする静止誘導電器。
  2. 請求項1に記載の静止誘導機器において、
    前記保護部材は前記当板の幅以上の幅を有しており、
    前記保護部材は、前記巻線の下端よりも前記鉄心の底面側に突き出ている、または、前記巻線の上端よりも前記鉄心の上面側に突き出ていること
    を特徴とする静止誘導機器。
  3. 請求項1に記載の静止誘導機器において、
    前記保護部材は前記当板の幅以上の幅を有しており、
    前記保護部材の長さは、前記巻線の下端から上端までの長さよりも高く、前記保護部材の幅は前記当板の幅よりも大きいこと
    を特徴とする静止誘導機器。
  4. 請求項1に記載の静止誘導機器において、
    前記保護部材は前記当板の幅以上の幅を有しており、
    前記保護部材は、前記巻線の上端の開口部と前記鉄心上面との延長線が前記当板と交わる点よりも突き出ている、または前記巻線の下端の開口部と前記鉄心下面の延長線が前記当板と交わる点よりも突き出ていること
    を特徴とする静止誘導機器。
  5. 請求項1に記載の静止誘導機器において、
    前記保護部材は、金属部材であって、
    前記保護部材の表面が絶縁部材により覆われたこと
    を特徴とする静止誘導機器。
  6. 請求項1乃至5に記載の静止誘導機器において、
    前記保護部材は、前記当板のうち前記鉄心側の面または前記巻線側の面に設けられたこと
    を特徴とする静止誘導機器。
  7. 請求項6に記載の静止誘導機器において、
    前記保護部材は、前記当板の幅方向の外周を覆うように配置されたこと
    を特徴とする静止誘導電器。
  8. 請求項6に記載の静止誘導機器において、
    前記保護部材は、前記当板の幅方向の外周を覆うように配置されており、前記外周の一部に開放部が設けられたこと
    を特徴とする静止誘導電器。
  9. 請求項6に記載の静止誘導機器において、
    前記保護部材のうち第1の保護部材と第2の保護部材を有しており、
    前記第1の保護部材は、前記当板の幅方向の外周を覆うように配置されており、
    前記第1の保護部材と前記当板との間に、前記第2の保護部材が設けられたこと
    を特徴とする静止誘導機器。
  10. 請求項9に記載の静止誘導機器において、
    前記第2の保護部材は前記巻線側に設けられたこと
    を特徴とする静止誘導機器。
  11. 請求項6に記載の静止誘導機器において、
    前記保護部材は、無方向性電磁鋼板、または、方向性電磁鋼板であること
    を特徴とする静止誘導機器。
  12. 請求項6に記載の静止誘導機器において、
    前記保護部材は方向性電磁鋼板であって、磁化容易軸が略水平方向であること
    を特徴とする静止誘導機器。
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