JP2018106204A - 偏光能を示さない領域を有する偏光性積層フィルムの製造方法及び偏光板 - Google Patents

偏光能を示さない領域を有する偏光性積層フィルムの製造方法及び偏光板 Download PDF

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Abstract

【課題】意匠性に優れた液晶表示装置を提供するための、二色性色素で染色されていない領域を有する偏光板とするのに有用な、偏光性積層フィルムを製造する。【解決手段】基材フィルム1及びその上に形成された偏光子層31を備える偏光性積層フィルム38の製造方法であって、基材フィルム1の表面にポリビニルアルコール系樹脂層11を形成して積層フィルム16又は17を得る樹脂層形成工程と、得られる積層フィルムを延伸して積層延伸フィルム26を得る延伸工程と、得られる積層延伸フィルム26のポリビニルアルコール系樹脂層21表面の一部に防染層35を形成する防染工程と、二色性色素を含有する染色溶液に防染層35が形成された積層延伸フィルム26を接触させて樹脂層21を二色性色素で染色し、偏光子層31を形成する染色工程とを備える、偏光能を示さない領域36を有する偏光性積層フィルムの製造方法が提供される。【選択図】図2

Description

本発明は、ポリビニルアルコール系樹脂層に防染層を形成してから染色することによって、偏光能を示さず、高い透過率の領域を有する偏光性積層フィルムを製造する方法に関するものである。本発明はまた、この方法によって得られる偏光性積層フィルムから製造され、偏光能を示さない領域を有する偏光板にも関係している。
偏光板は、液晶表示装置などの表示装置における偏光の供給素子として、また偏光の検出素子として、広く用いられている。かかる偏光板として従来から、ポリビニルアルコール系樹脂からなる偏光フィルム(偏光子層)にトリアセチルセルロースからなる保護フィルムを接着したものが使用されている。
これに対して近年では、液晶表示装置のノート型パーソナルコンピュータや携帯電話の如きモバイル機器への展開などに伴い、表示目的の多様化、表示区分の明確化、装飾化などの要求から、透過率の異なる領域を有する偏光板の提供が求められている。特にスマートフォンやタブレット型端末に代表される中小型の携帯端末においては、装飾性の観点から全面にわたって境目のないデザインとするため、全面に偏光板を貼り合わせることがある。その場合、カメラレンズの領域、また画面下のアイコンやロゴ印刷の領域にも偏光板が重なるため、カメラの感度が悪くなったり、意匠性に劣ったりするという問題があり、通常は偏光板の穴あけ加工による対応がなされている。
また従来は、ポリビニルアルコール系樹脂からなるフィルムを単独で延伸してから、あるいは延伸しながら、染色処理や架橋処理を施して偏光フィルムを作製し、これを保護フィルム等に積層することで偏光板を製造していたが、偏光フィルム単独での限界の厚さまでしか薄型化することができなかった。このため、基材フィルムの表面にポリビニルアルコール系樹脂層を設けた後、基材フィルムごとポリビニルアルコール系樹脂層を延伸し、染色・架橋工程及びその後の乾燥工程を経てポリビニルアルコール系樹脂層を偏光子層とすることで、基材フィルムと偏光子層との合計の厚さを限界まで薄くすることができ、偏光子層(偏光フィルム)としての厚さを従来よりも薄くできる方法が提案されている。このような、基材フィルムごとポリビニルアルコール系樹脂層を延伸してから染色して、ポリビニルアルコール系樹脂層を偏光子層とする方法は、例えば、特開 2000-338329号公報(特許文献1)、特開 2012-159778号公報(特許文献2)などに開示されている。
1枚の偏光板に透過率の異なる領域、すなわち偏光能の異なる領域を設けることも知られており、例えば特開昭 62-50802 号公報(特許文献3)には、染色性を変性処理した親水性高分子フィルムの染色延伸物からなる透光率の異なる領域を有する偏光フィルムが開示されている。ここでいう親水性高分子フィルムは、典型的にはポリビニルアルコールフィルムである。そして、ポリビニルアルコールフィルムを加熱処理により変質させることで、透光率の異なる領域を有する偏光フィルムが得られるとされている。しかし、ポリビニルアルコールフィルムを延伸後に加熱処理すると、ポリビニルアルコールフィルムが熱により収縮してしまう問題がある。一方、加熱処理後に延伸する方法や、加熱処理と同時に延伸する方法では、加熱により変性された領域の形状が延伸後に変形してしまうという問題がある。
また、特開昭 62-96905 号公報(特許文献4)には、ポリビニルアルコールフィルムをホウ酸水溶液中で一軸延伸してから、片面に保護フィルムを貼合し、保護フィルムが貼合されていないポリビニルアルコール面をフォトレジストによりパターニングした後、染色する方法が開示されている。しかし、架橋後のポリビニルアルコールは染色しづらいことから、この方法では高い偏光能を有する偏光板が生産できない。
さらに、偏光板の穴あけ加工による対応もなされている。穴あき偏光板の一例を、図5に断面模式図で示す。穴あき偏光板70は、偏光子層31に接着剤層61を介して保護フィルム41が貼合され、偏光子層31の保護フィルム41とは反対側の面に、液晶セルなどへ貼り合わせるための粘着剤層62が設けられた構成になっている。そして、保護フィルム41から粘着剤層62まで貫通する穴72が設けられ、この穴72が、透明領域、すなわち偏光能を示さない領域となっている。
このような偏光板の穴あけ加工においては、生産効率が悪いという問題に加え、偏光板に段差が視認されたり、穴あけ加工時及び耐久試験時の局部的なストレスにより、偏光子にクラックが発生したりするなどの問題もあるため、意匠性の面からも実用性の面からも満足できるものでなかった。
特開2000−338329号公報 特開2012−159778号公報 特開昭62−50802号公報 特開昭62−96905号公報
本発明者は、ある方法を採用すれば、二色性色素で染色されずに透過率の高い領域を有する偏光板が効率よく生産できることを知見した。すなわち本発明は、意匠性に優れた液晶表示装置を提供するための、二色性色素によって染色されていない領域を有する偏光板とするのに有用な、偏光性積層フィルムを製造することを目的とする。本発明のもう一つの目的は、こうして得られる偏光性積層フィルムに保護フィルムを貼合して、透過率の高い領域を有し、偏光子層の厚みが小さい偏光板を提供することにある。
本発明によれば、基材フィルム及びその基材フィルム上に形成された偏光子層を備える偏光性積層フィルムの製造方法であって、上記基材フィルムの表面にポリビニルアルコール系樹脂層を形成して積層フィルムを得る樹脂層形成工程と、得られる積層フィルムを延伸して積層延伸フィルムを得る延伸工程と、得られる積層延伸フィルムのポリビニルアルコール系樹脂層表面の一部に防染層を形成する防染工程と、二色性色素を含有する染色溶液に上記の防染層が形成された積層延伸フィルムを接触させて、ポリビニルアルコール系樹脂層を二色性色素で染色し、偏光子層を形成する染色工程とを備える、偏光能を示さない領域を有する偏光性積層フィルムの製造方法が提供される。
また、上記の製造方法によって得られる偏光性積層フィルムから上記の基材フィルムが除去され、偏光子層の少なくとも一方の面に保護フィルムが貼合されており、上記の防染層が形成された領域のポリビニルアルコール系樹脂層は偏光能を示さず、かつ、上記二色性色素で染色されたポリビニルアルコール系樹脂からなる偏光子層は10μm 以下の厚みを有する偏光板も提供される。
本発明の方法により製造される偏光性積層フィルムは、偏光能を示さない領域を有し、しかもその偏光能を示さない領域は、防染層が形成された部分がそのままの大きさで残るので、その偏光能を示さない領域のサイズが容易にコントロールできる。この偏光性積層フィルムの偏光子層に保護フィルムを貼合して得られる偏光板は、偏光能を示さない領域のサイズがコントロールされたものとなる。
本発明に係る偏光性積層フィルムの製造方法の概要を示すフローチャートである。 本発明に従って、偏光能を示さない領域を有する偏光板を得るまでの好ましい工程の一例を模式的な断面図で示すフローチャートである。 後述する実施例1で得られた偏光板に粘着剤層を形成した状態を模式的に示す断面図である。 後述する実施例2で得られた偏光板に粘着剤層を形成した状態を模式的に示す断面図である。 従来の穴あき偏光板の一例を模式的に示す断面図である。
本明細書では、偏光性積層フィルム及び偏光板の製造方法、偏光性積層フィルム、偏光板、その他が開示される。本明細書においては、基材フィルムの面にポリビニルアルコール系樹脂層を備えた積層体を「積層フィルム」という。「積層フィルム」については、基材フィルムの一方の面にポリビニルアルコール系樹脂層を備えた積層体を「片面塗工フィルム」とし、基材フィルムの両方の面にポリビニルアルコール系樹脂層を備えた積層体を「両面塗工フィルム」として、両者を区別することがある。
また、偏光子としての機能を有するポリビニルアルコール系樹脂層を「偏光子層」といい、基材フィルムと偏光子層との積層体を「偏光性積層フィルム」という。「偏光性積層フィルム」については、基材フィルムの一方の面に偏光子層を備えた積層体を「片面偏光性積層フィルム」とし、基材フィルムの両方の面に偏光子層を備えた積層体を「両面偏光性積層フィルム」として、両者を区別することがある。また、偏光子層の少なくとも一方の面に保護フィルムを備えた積層体を「偏光板」という。まず、偏光性積層フィルム及び偏光板の各構成要素について詳細に説明する。
[基材フィルム]
基材フィルムを構成する樹脂としては、透明性、機械的強度、熱安定性、延伸性などに優れる熱可塑性樹脂が好適に用いられ、そのガラス転移温度(Tg)又は融点(Tm)に応じて、適切な樹脂を選択できる。熱可塑性樹脂の具体例としては、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、環状ポリオレフィン系樹脂(ノルボルネン系樹脂)、(メタ)アクリル系樹脂、セルロースエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、ポリアリレート系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、これらの混合物、共重合物などが挙げられる。
基材フィルムは、上述の樹脂1種類のみを用いた単層であっても構わないし、2種類以上の樹脂をブレンドしたものであっても構わない。もちろん、単層でなく多層膜を形成していても構わない。
ポリオレフィン系樹脂は、エチレンやプロピレンの如き鎖状オレフィンを主要なモノマーとする重合体である。また、プロピレンにエチレンを共重合することで得られるプロピレン−エチレン共重合体なども用いることができる。共重合は、他の種類のモノマーでも可能であり、プロピレンに共重合可能な他種のモノマーとして、エチレンのほか、α−オレフィンを挙げることができる。プロピレンに共重合されるα−オレフィンは、炭素数4以上のものであり、好ましくは炭素数4〜10のα−オレフィンである。炭素数4〜10のα−オレフィンの具体例を挙げると、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、及び1−デセンの如き直鎖状モノオレフィン類;3−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ペンテン、及び4−メチル−1−ペンテンの如き分岐状モノオレフィン類;ビニルシクロヘキサンなどがある。プロピレンとこれに共重合可能な他のモノマーとの共重合体は、ランダム共重合体であってもよいし、ブロック共重合体であってもよい。共重合体中の当該他のモノマー由来の構成単位の含有量は、「高分子分析ハンドブック」(1995年、紀伊国屋書店発行)の第616頁に記載されている方法に従い、赤外線(IR)スペクトルの測定により求めることができる。ポリオレフィン系樹脂は、安定的に高倍率に延伸しやすいことから、本発明における基材フィルムとして好ましく用いられる。
ポリオレフィン系樹脂の中でもプロピレン系樹脂が好ましく、その例として、プロピレンの単独重合体、プロピレン−エチレンランダム共重合体、プロピレン−1−ブテンランダム共重合体、プロピレン−エチレン−1−ブテンランダム共重合体などが挙げられる。
プロピレン系樹脂の立体規則性は、実質的にアイソタクチック又はシンジオタクチックであることが好ましい。実質的にアイソタクチック又はシンジオタクチックの立体規則性を有するプロピレン系樹脂からなるフィルムは、その取扱い性が比較的良好であるとともに、高温環境下における機械的強度に優れている。
ポリエステル系樹脂は、エステル結合を有する重合体であり、具体的には多価カルボン酸と多価アルコールの重縮合体で構成されることが多い。用いられる多価カルボン酸は、主に2価のジカルボン酸又はそのエステルであり、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、ジメチルテレフタレート、ナフタレンジカルボン酸ジメチルなどが挙げられる。また、用いられる多価アルコールも、主に2価のジオールであり、例えば、プロパンジオール、ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサンジメタノールなどが挙げられる。
ポリエステル系樹脂の代表例として、テレフタル酸とエチレングリコールの重縮合体であるポリエチレンテレフタレートが挙げられる。ポリエチレンテレフタレートは結晶性の樹脂であるが、結晶化処理する前の状態のものの方が、延伸などの処理を施しやすい。必要であれば、延伸時、又は延伸後の熱処理などによって結晶化処理することができる。また、ポリエチレンテレフタレートの骨格にさらに他種のモノマーを共重合することで、結晶性を下げた(若しくは、非晶性とした)共重合ポリエステルも好適に用いられる。このような樹脂の例として、例えば、シクロヘキサンジメタノールやイソフタル酸を共重合させたものなどが挙げられる。これらの樹脂も、延伸性に優れるので、好適に用いることができる。
ポリエチレンテレフタレート及びその共重合体以外の具体的なポリエステル系樹脂としては、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリトリメチレンナフタレート、ポリシクロへキサンジメチルテレフタレート、ポリシクロヘキサンジメチルナフタレートなどが挙げられる。これらのブレンド樹脂や共重合体も、用いることができる。
環状ポリオレフィン系樹脂は、環状オレフィンを主な構成モノマーとする重合体の総称であり、例えば、特開平 1-240517 号公報、特開平 3-14882号公報、特開平 3-122137 号公報などに記載されている樹脂がある。具体例を挙げると、環状オレフィンの開環(共)重合体、環状オレフィンの付加重合体、環状オレフィンとエチレン又はプロピレンの如きα−オレフィンとの共重合体(代表的にはランダム共重合体)、これらを不飽和カルボン酸やその誘導体で変性したグラフト重合体、それらの水素化物などがある。環状オレフィンの具体例としては、ノルボルネン系モノマーが挙げられる。環状ポリオレフィン系樹脂として、特にノルボルネン系樹脂が好ましく用いられる。
環状ポリオレフィン系樹脂としては種々の製品が市販されている。具体例を挙げると、TOPAS ADVANCED POLYMERS 社製で日本ではポリプラスチックス(株)から販売されている“TOPAS”、JSR(株)から販売されている“アートン”、日本ゼオン(株)から販売されている“ゼオノア”(ZEONOR)及び“ゼオネックス”(ZEONEX)、三井化学(株)から販売されている“アペル”など(いずれも商品名)がある。
(メタ)アクリル系樹脂は、(メタ)アクリロイル基を有する化合物を主な構成モノマーとする重合体である。例えば、ポリメタクリル酸メチルの如きポリ(メタ)アクリル酸エステル、メタクリル酸メチル−(メタ)アクリル酸共重合体、メタクリル酸メチル−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、メタクリル酸メチル−アクリル酸エステル−(メタ)アクリル酸共重合体、(メタ)アクリル酸メチル−スチレン共重合体(MS樹脂と呼ばれるものなど)、メタクリル酸メチルと脂環式炭化水素基を有する化合物との共重合体(例えば、メタクリル酸メチル−メタクリル酸シクロヘキシル共重合体、メタクリル酸メチル−(メタ)アクリル酸ノルボルニル共重合体など)が挙げられる。好ましくは、ポリ(メタ)アクリル酸メチルの如き、(メタ)アクリル酸のC1-6 アルキルエステルを主成分とする重合体が挙げられる。(メタ)アクリル系樹脂のより好ましい例として、メタクリル酸メチルを主成分(50〜100重量%、好ましくは70〜100重量%)とするメタクリル酸メチル系樹脂を挙げることができる。
セルロースエステル系樹脂は、セルロースと脂肪酸のエステルである。このようセルロースエステル系樹脂の具体例としては、セルローストリアセテート、セルロースジアセテート、セルローストリプロピオネート、セルロースジプロピオネートなどが挙げられる。
また、これらの共重合物や、水酸基の一部が他の置換基で修飾されたものなども挙げられる。これらの中でも、セルローストリアセテートが特に好ましい。セルローストリアセテートフィルムは多くの製品が市販されており、入手容易性やコストの点でも有利である。
セルローストリアセテートフィルムの市販品の例を挙げると、富士フイルム(株)から販売されている“フジタックTD80”、“フジタックTD80UF”、“フジタックTD80UZ”及び“フジタックTD40UZ”、コニカミノルタアドバンストレイヤー(株)から販売されている“KC8UX2M”、“KC4UY”及び“KC2UA”など(いずれも商品名)がある。
ポリカーボネート系樹脂は、主鎖にカーボネート結合(−O−CO−O−)を有する重合体である。エンジニアリングプラスチックの一種であって、高い耐衝撃性、耐熱性、難燃性を有する樹脂である。また、高い透明性を有することから、光学用途でも好適に用いられる。光学用途では、光弾性係数を下げるためにポリマー骨格を修飾したような変性ポリカーボネートと呼ばれる樹脂や、波長依存性を改良した共重合ポリカーボネートなども市販されており、好適に用いることができる。このようなポリカーボネート樹脂は、広く市販されており、例えば、帝人化成(株)から販売されている“パンライト”、三菱エンジニアリングプラスチック(株)から販売されている“ユーピロン”、住友ダウ(株)から販売されている“SDポリカ”、ダウケミカル社から販売されている“カリバー”など(いずれも商品名)がある。
基材フィルムは、上の熱可塑性樹脂に任意の適切な添加剤が添加されたもので構成してもよい。このような添加剤として、例えば、紫外線吸収剤、酸化防止剤、滑剤、可塑剤、離型剤、着色防止剤、難燃剤、核剤、帯電防止剤、顔料、着色剤などが挙げられる。基材フィルム中で、熱可塑性樹脂自体の占める割合は、好ましくは50〜100重量%、より好ましくは50〜99重量%、さらに好ましくは60〜98重量%、とりわけ好ましくは70〜97重量%である。基材フィルム中の熱可塑性樹脂の割合が50重量%未満になると、熱可塑性樹脂が本来有する高透明性等が十分に発現されないおそれがある。
基材フィルムの厚さは、適宜に決定しうるが、一般には強度や取扱い性など、作業性の観点から、1〜500μm であるのが好ましく、さらには1〜300μm 、とりわけ5〜200μm であるのがより好ましい。さらに、5〜150μm の範囲の厚さを有する基材フィルムがより一層好ましい。
基材フィルムは、樹脂層との密着性を向上させるために、少なくとも樹脂層が形成される側の表面に、コロナ処理、プラズマ処理、火炎処理などが施されていてもよい。また密着性を向上させるために、基材フィルムの樹脂層が形成される側の表面に、プライマー層や接着剤層の如き薄層を形成してもよい。なお、接着剤層やコロナ処理層などが設けられている場合、基材フィルムは、それらを含まない状態のものを意味する。
[プライマー層]
基材フィルムの表面にプライマー層が形成されてもよい。プライマー層は、基材フィルムとポリビニルアルコール系樹脂層との両方にある程度強い密着力を発揮する材料で形成すればよい。例えば、透明性、熱安定性、延伸性などに優れる熱可塑樹脂が用いられる。
具体的には、アクリル系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
プライマー層を形成する樹脂は、溶媒に溶解した状態で用いてもよい。樹脂の溶解性により、ベンゼン、トルエン、キシレンの如き芳香族炭化水素類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンの如きケトン類、酢酸エチル、酢酸イソブチルの如きエステル類、塩化メチレン、トリクロロエチレン、クロロホルムの如き塩素化炭化水素類、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノールの如きアルコール類など、一般的な有機溶媒を用いることができる。ただ、有機溶媒を含む溶液からプライマー層を形成すると、基材フィルムを溶解させてしまうこともあるので、基材フィルムの溶解性も考慮して、適当な溶媒を選択するのが好ましい。環境への影響を考慮すると、水を溶媒とする塗工液からプライマー層を形成するのが好ましい。中でも、密着性に優れるポリビニルアルコール系樹脂が、好ましく用いられる。
プライマー層に使用されるポリビニルアルコール系樹脂は、具体的には、ポリビニルアルコール及びその誘導体である。ポリビニルアルコールの誘導体としては、ポリビニルホルマール、ポリビニルアセタールなどの他、ポリビニルアルコールを、エチレンやプロピレンの如きオレフィン類、アクリル酸やメタクリル酸、クロトン酸の如き不飽和カルボン酸類、不飽和カルボン酸のアルキルエステル、アクリルアミドなどで変性したものが挙げられる。上述のポリビニルアルコール系樹脂の中でも、ポリビニルアルコールを用いるのが好ましい。
プライマー層の強度を上げるために、上記の熱可塑性樹脂に架橋剤を添加してもよい。
熱可塑性樹脂に添加する架橋剤は、有機系、無機系など公知のものを使用することができる。使用する熱可塑性樹脂に対して、より適切なものを適宜選択すればよい。例えば、エポキシ系架橋剤、イソシアネート系架橋剤、ジアルデヒド系架橋剤、金属系架橋剤などから、適宜選択すればよい。
エポキシ系架橋剤としては、一液硬化型のものや二液硬化型のもののいずれも用いることができる。例えば、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリンジ−又はトリ−グリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ジグリシジルアニリン、ジグリシジルアミンなどが挙げられる
イソシアネート系架橋剤としては、例えば、トリレンジイソシアネート、水素化トリレンジイソシアネート、トリメチロールプロパン−トリレンジイソシアネートアダクト、トリフェニルメタントリイソシアネート、メチレンビス(4−フェニルメタン)トリイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、及びこれらのケトオキシムブロック物又はフェノールブロック物などが挙げられる。
ジアルデヒド系の架橋剤としては、例えば、グリオキザール、マロンジアルデヒド、スクシンジアルデヒド、グルタルジアルデヒド、マレインジアルデヒド、フタルジアルデヒドなどが挙げられる
金属系の架橋剤としては、例えば、金属塩、金属酸化物、金属水酸化物、有機金属化合物などが挙げられ、ここで金属の種類は特に限定されず、適宜選択すればよい。
金属塩、金属酸化物及び金属水酸化物として、例えば、マグネシウム、カルシウム、アルミニウム、鉄、ニッケル、ジルコニウム、チタン、珪素、ホウ素、亜鉛、銅、バナジウム、クロム、スズの如き、二価以上の原子価を有する金属の塩、その酸化物及びその水酸化物が挙げられる。
有機金属化合物とは、金属原子に直接有機基が結合しているか、又は酸素原子や窒素原子などを介して有機基が結合している構造を、分子内に少なくとも1個有する化合物である。ここで有機基とは、少なくとも炭素元素を含む一価又は多価の基を意味し、例えば、アルキル基、アルコキシ基、アシル基などであることができる。また結合とは、共有結合だけを意味するものではなく、キレート状化合物などの配位による配位結合であってもよい。
架橋剤となる金属有機化合物の好適な例として、有機チタン化合物、有機ジルコニウム化合物、有機アルミニウム化合物、及び有機ケイ素化合物が挙げられる。これらの有機金属化合物は、1種類のみを用いてもよいし、2種類以上を適宜混合して用いてもよい。
有機チタン化合物の具体例を挙げると、テトラノルマルブチルチタネート、テトライソプロピルチタネート、ブチルチタネートダイマー、テトラ(2−エチルヘキシル)チタネート、及びテトラメチルチタネートの如きチタンオルソエステル類;チタンアセチルアセトナート、チタンテトラアセチルアセトナート、ポリチタンアセチルアセトナート、チタンオクチレングリコレート、チタンラクテート、チタントリエタノールアミネート、及びチタンエチルアセトアセテートの如きチタンキレート類;ポリヒドロキシチタンステアレートの如きチタンアシレート類などがある。
有機ジルコニウム化合物の具体例を挙げると、ジルコニウムノルマルプロピオネート、ジルコニウムノルマルブチレート、ジルコニウムテトラアセチルアセトナート、ジルコニウムモノアセチルアセトナート、ジルコニウムビスアセチルアセトナート、ジルコニウムアセチルアセトナートビスエチルアセトアセテートなどがある。
有機アルミニウム化合物の具体例を挙げると、アルミニウムアセチルアセトナート、アルミニウム有機酸キレートなどがある。
有機ケイ素化合物の具体例を挙げると、先に有機チタン化合物及び有機ジルコニウム化合物において例示した配位子がケイ素に結合した化合物がある。
これまでに説明した低分子の架橋剤の他にも、メチロール化メラミン樹脂やポリアミドエポキシ樹脂の如き高分子系の架橋剤も用いることができる。ポリアミドエポキシ樹脂の市販品として、田岡化学工業(株)から販売されている“スミレーズレジン 650(30)”や“スミレーズレジン 675”(いずれも商品名)などがある。
プライマー層を形成する熱可塑性樹脂としてポリビニルアルコール系樹脂を使用する場合は、ポリアミドエポキシ樹脂、メチロール化メラミン、ジアルデヒド、金属キレート架橋剤などが、架橋剤として好適に用いられる。
プライマー層を形成するために用いる熱可塑性樹脂と架橋剤の割合は、樹脂100重量部に対して、架橋剤 0.1〜100重量部程度の範囲から、樹脂の種類や架橋剤の種類などに応じて適宜決定すればよく、とりわけ 0.1〜50重量部程度の範囲から選択するのが好ましい。また、プライマー層用塗工液は、その固形分濃度が1〜25重量%程度となるようにするのが好ましい。
プライマー層の厚みは、0.05〜1μm程度の範囲にあるのが好ましい。さらに好ましくは0.1〜0.4μm である。プライマー層があまり薄くなると、基材フィルムとポリビニルアルコール樹脂層との密着力が低下してしまい、一方であまり厚くなると、偏光板自体も厚くなるため、好ましくない。
プライマー層の形成にあたり、使用する塗工方式は特に制限されるものでなく、ワイヤーバーコーティング法、リバースコーティングやグラビアコーティングの如きロールコーティング法、ダイコート法、カンマコート法、リップコート法、スピンコーティング法、スクリーンコーティング法、ファウンテンコーティング法、ディッピング法、スプレー法など、公知の方法から適宜選択すればよい。
[偏光子]
偏光子層は、具体的には、一軸延伸されたポリビニルアルコール系樹脂層を二色性色素で染色し、その二色性色素を吸着配向させたものである。ポリビニルアルコール系樹脂としては、ポリ酢酸ビニル系樹脂をケン化したものを用いることができる。ポリ酢酸ビニル系樹脂としては、酢酸ビニルの単独重合体であるポリ酢酸ビニルのほか、酢酸ビニルと共重合可能な他の単量体との共重合体などが例示される。酢酸ビニルに共重合可能な他の単量体としては、例えば、不飽和カルボン酸類、オレフィン類、ビニルエーテル類、不飽和スルホン酸類、アンモニウム基を有するアクリルアミド類などが挙げられる。
このようなポリビニルアルコール系樹脂を製膜したものが、本発明に係る偏光子層を構成する。ポリビニルアルコール系樹脂を製膜する方法は、特に限定されるものでなく、公知の方法で製膜することができるが、所望の厚さの偏光子層を得やすいという点から、ポリビニルアルコール系樹脂の溶液を上述した基材フィルム上に塗布して製膜する方法が好ましい。
偏光子層は、延伸されて配向していることが必要であり、好ましくは5倍超、さらに好ましくは5倍超でかつ17倍以下の延伸倍率で延伸されたもので構成される。
偏光子層は、上述のような延伸配向されたポリビニルアルコール系樹脂に二色性色素が吸着配向されている。偏光子層の厚さは10μm 以下であり、好ましくは7μm 以下である。偏光子層の厚さを10μm 以下とすることにより、薄型の偏光性積層フィルムを構成することができる。
偏光子層に用いるポリビニルアルコール系樹脂は、そのケン化度が、80モル%以上、さらには90モル%以上、とりわけ94モル%以上であることが好ましい。ケン化度が低すぎると、偏光板にした後の耐水性や耐湿熱性が十分でなくなる可能性がある。また完全ケン化品(ケン化度が100モル%のもの)であってもよいが、ケン化度が高すぎると、染色速度が遅くなって、十分な偏光性能を与えるためには製造時間が長くなったり、場合によっては十分な偏光性能を有する偏光子が得られなかったりすることがある。そこで、そのケン化度は99.5モル%以下、さらに99モル%以下又は99.0モル%以下であるのが好ましい。
ここでいうケン化度とは、ポリビニルアルコール系樹脂の原料であるポリ酢酸ビニル系樹脂に含まれる酢酸基(アセトキシ基:−OCOCH3) がケン化処理により水酸基に変化した割合をユニット比(モル%)で表したものであり、次式で定義される;
ケン化度(モル%)=〔(水酸基の数)÷(水酸基の数+酢酸基の数)〕×100。
ケン化度が高いほど、水酸基の割合が多いことを意味し、したがって結晶化を阻害する酢酸基の割合が少ないことを意味する。ケン化度は、JIS K6726-1994「ポリビニルアルコール試験方法」に規定される方法によって求めることができる。
また、本発明に用いるポリビニルアルコール系樹脂は、一部が変性されている変性ポリビニルアルコールでもよい。例えば、ポリビニルアルコール系樹脂を、エチレンやプロピレンの如きオレフィン類で変性したもの、アクリル酸やメタクリル酸、クロトン酸の如き不飽和カルボン酸類で変性したもの、不飽和カルボン酸のアルキルエステルで変性したもの、アクリルアミドで変性したものなどが挙げられる。変性の割合は30モル%未満であることが好ましく、10モル%未満であることがより好ましい。30モル%を超える変性を行った場合には、二色性色素を吸着しにくくなり、偏光性能が低くなってしまう不具合を生じる。
ポリビニルアルコール系樹脂の平均重合度は、通常100〜10000程度の範囲にあるが、好ましくは1500〜8000、さらに好ましくは2000〜5000の範囲である。ここでいう平均重合度も、JIS K6726-1994「ポリビニルアルコール試験方法」に規定される方法によって求めることができる。
このような特性を有するポリビニルアルコール系樹脂として、(株)クラレから販売されている“PVA124”(ケン化度98.0〜99.0モル%)、“PVA117”(ケン化度98.0〜99.0モル%)、“PVA624”(ケン化度95.0〜96.0モル%)及び“PVA617”(ケン化度94.5〜95.5モル%);日本合成化学工業(株)から販売されている“AH−26”(ケン化度97.0〜98.8モル%)、“AH−22”(ケン化度97.5〜98.5モル%)、“NH−18”(ケン化度98.0〜99.0モル%)及び“N−300”(ケン化度98.0〜99.0モル%);日本酢ビ・ポバール(株)から販売されている“JC−33”(ケン化度99.0モル%以上)、“JM−33”(ケン化度93.5〜95.5モル%)、“JM−26”(ケン化度95.5〜97.5モル%)、“JP−45”(ケン化度86.5〜89.5モル%)、“JF−17”(ケン化度98.0〜99.0モル%)、“JF−17L”(ケン化度98.0〜99.0モル%)及び“JF−20”(ケン化度98.0〜99.0モル%)など(いずれも商品名)が挙げられ、本発明においてはこれらを好適に用いることができる。
ポリビニルアルコール系樹脂層の染色に用いられる二色性色素として、具体的にはヨウ素や二色性有機染料がある。二色性有機染料としては、例えば、レッドBR、レッドLR、レッドR、ピンクLB、ルビンBL、ボルドーGS、スカイブルーLG、レモンイエロー、ブルーBR、ブルー2R、ネイビーRY、グリーンLG、バイオレットLB、バイオレットB、ブラックH、ブラックB、ブラックGSP、イエロー3G、イエローR、オレンジLR、オレンジ3R、スカーレットGL、スカーレットKGL、コンゴーレッド、ブリリアントバイオレットBK、スプラブルーG、スプラブルーGL、スプラオレンジGL、ダイレクトスカイブルー、ダイレクトファーストオレンジS、ファーストブラックなどがある。これらの染料は、市場から入手できる。二色性色素は、1種類だけを用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。
[保護フィルム]
保護フィルムは、光学機能を有さない単なる保護フィルムであってもよいし、位相差フィルムや輝度向上フィルムの如き光学機能を併せ持つ保護フィルムであってもよい。保護フィルムを構成する材料は特に限定されないが、例えば、環状ポリオレフィン系樹脂、トリアセチルセルロースやジアセチルセルロースの如き酢酸セルロース系樹脂、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレートの如きポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、アクリル系樹脂、ポリプロピレン系樹脂など、当分野において従来から広く用いられてきている材料を用いることができる。
環状ポリオレフィン系樹脂としては適宜の市販品、例えば、TOPAS ADVANCED POLYMERS 社製で日本ではポリプラスチックス(株)から販売されている“TOPAS”、JSR(株)から販売されている“アートン”、日本ゼオン(株)から販売されている“ゼオノア”(ZEONOR)及び“ゼオネックス”(ZEONEX)、三井化学(株)から販売されている“アペル”など(いずれも商品名)を好適に用いることができる。このような環状ポリオレフィン系樹脂を製膜してフィルムとするには、溶剤キャスト法、溶融押出法などの公知の方法が適宜用いられる。また、積水化学工業(株)から販売されている“エスシーナ位相差フィルム”、日本ゼオン(株)から販売されている“ゼオノアフィルム”など(いずれも商品名)の、予め製膜され、場合によってはさらに位相差が付与された環状ポリオレフィン系樹脂フィルムの市販品を用いてもよい。
環状ポリオレフィン系樹脂フィルムは、一軸延伸又は二軸延伸されたものであってもよい。延伸することで、環状ポリオレフィン系樹脂フィルムに任意の位相差値を付与することができる。延伸は、通常、フィルムロールを巻き出しながら連続的に行われ、加熱炉にて、ロールの進行方向、その進行方向と直交する方向、又はその両方へ延伸される。加熱炉の温度は通常、環状ポリオレフィン系樹脂のガラス転移温度近傍からガラス転移温度+100℃までの範囲である。延伸の倍率は、一つの方向につき通常 1.1〜6倍、好ましくは1.1〜3.5倍である。
環状ポリオレフィン系樹脂フィルムは、一般に表面活性が劣るため、偏光子層と接着させる表面には、プラズマ処理、コロナ処理、紫外線照射処理、フレーム(火炎)処理、ケン化処理の如き表面処理を行うのが好ましい。中でも、比較的容易に実施可能なプラズマ処理やコロナ処理が好適である。
酢酸セルロース系樹脂フィルムとしては、適宜の市販品、例えば、富士フイルム(株)から販売されている“フジタックTD80”、“フジタックTD80UF”、“フジタックTD80UZ”及び“フジタックTD40UZ”、コニカミノルタアドバンストレイヤー(株)から販売されている“KC8UX2M”、“KC4UY”及び“KC2UA”など(いずれも商品名)を好適に用いることができる。
酢酸セルロース系樹脂フィルムの表面には、視野角特性を改良するために液晶層などを形成してもよい。また位相差を付与するため、延伸された酢酸セルロース系樹脂フィルムを用いることもできる。酢酸セルロース系樹脂フィルムは、偏光子層との接着性を高めるため、通常はケン化処理が施される。ケン化処理は、水酸化ナトリウムや水酸化カリウムの如きアルカリの水溶液にフィルムを浸漬することによって行われる。
上述したような保護フィルムの表面には、ハードコート層、防眩層、反射防止層の如き光学層を形成することもできる。保護フィルム表面にこれらの光学層を形成する方法は特に限定されず、公知の方法を用いることができる。
保護フィルムの厚みは、薄型化の観点からできるだけ薄いものが好ましく、90μm 以下、さらには50μm 以下であることが好ましい。逆に薄すぎると、強度が低下して加工性が阻害される可能性があるので、5μm 以上であることが好ましい。
[偏光性積層フィルムの製造方法]
次に、本発明に係る偏光性積層フィルムの製造方法について説明する。図1は、この方法の概要を示すフローチャートであり、図2は、本発明に従って、偏光能を示さない領域を有する偏光板を得るまでの好ましい工程の一例を模式的な断面図で示すフローチャートである。本発明の偏光性積層フィルムの製造方法は、このうち、上記基材フィルムにポリビニルアルコール系樹脂層を形成して積層フィルムを得る樹脂層形成工程(S10)、得られる積層フィルムを延伸して積層延伸フィルムを得る延伸工程(S20)、得られる積層延伸フィルムにおけるポリビニルアルコール系樹脂層の表面の一部に防染層を形成する防染工程(S30)、及び、二色性色素を含有する染色溶液に上記の防染層が形成された積層延伸フィルムを接触させて、そのポリビニルアルコール系樹脂層を二色性色素で染色する染色工程(S40)を備える。染色工程(S40)の後、必要に応じて上の防染層を除去する防染層除去工程(S45)が行われる。さらに通常は、架橋処理を施す架橋工程(S50)を経て、偏光子層が形成される。
さらに、偏光板等を作製するためには、両面塗工フィルムを洗浄し、乾燥する洗浄工程(S60)、両面塗工フィルムの両面又は片面に保護フィルムを貼合して、両面貼合フィルム又は片面貼合フィルムを得る保護フィルム貼合工程(S70)、両面貼合フィルム又は片面貼合フィルムを乾燥する乾燥工程(S60)、及び、両面貼合フィルム又は片面貼合フィルムから、基材フィルムを剥離して偏光板を得る剥離工程(S80)がこの順に実施される。
本発明の偏光性積層フィルムの製造方法は、偏光子層となるポリビニルアルコール系樹脂が、基材フィルムと反対面のからのみ染色されるため、防染処理が効果的となる。かかる製造方法により、部分的に偏光能を示さない偏光板を製造することができる。
以下、図1及び図2に基づいて、S10〜S80の各工程を詳しく説明する。なお図2には、基材フィルム1の両面にポリビニルアルコール系樹脂層11,12を形成する場合の例を示しているが、基材フィルム1の片面にのみポリビニルアルコール系樹脂層を形成し、それを本発明に従って偏光子層とすることも、もちろん可能である。後者の場合は、図2における片面塗工フィルム16の状態に対して、図1に示される延伸工程(S20)以降の工程を順次実施すればよい。
〈樹脂層形成工程(S10)〉
樹脂層形成工程(S10)では、基材フィルム1の両面にポリビニルアルコール系樹脂層(第一ポリビニルアルコール系樹脂層11と第二ポリビニルアルコール系樹脂層12)を形成することで、基材フィルム1及びポリビニルアルコール系樹脂層11,12からなる両面塗工フィルム17が得られる。
基材フィルム1に適した材料は、上述の偏光性積層フィルムの構成の説明で述べたとおりである。なお、基材フィルム1は、ポリビニルアルコール系樹脂の延伸に適した温度範囲で延伸できるようなものを用いることが好ましい。基材フィルム1の両面に形成される2つのポリビニルアルコール系樹脂層11,12を構成する材料は、同じ材料であることが好ましい。同じ材料を用いることにより、それから形成される偏光子層の偏光性能を調整しやすくなる。
また、延伸後の両面塗工フィルムの両面におけるポリビニルアルコール系樹脂層11,12が同程度の厚みであることが好ましい。樹脂層形成工程(S10)で形成されるポリビニルアルコール系樹脂層11,12の具体的な厚みは、3μm超かつ30μm以下であることが好ましく、さらには5〜20μm であることがより好ましい。当初の樹脂層の厚みが3μm 以下であると、延伸後に薄くなりすぎて染色性が著しく悪化してしまい、好ましくない。一方、その厚みが30μm を超えると、最終的に得られる偏光子層の厚みが10μm を超えてしまうことがあるので、やはり好ましくない。
ポリビニルアルコール系樹脂層11,12は、好ましくは、ポリビニルアルコール系樹脂の粉末を良溶媒に溶解させて得たポリビニルアルコール系樹脂溶液を基材フィルム1の一方の表面上に塗工し、溶剤を蒸発させて乾燥することにより形成される。ポリビニルアルコール系樹脂層11,12をこのようにして形成することにより、ポリビニルアルコール系樹脂層を薄くすることが可能となる。ポリビニルアルコール系樹脂溶液を基材フィルム上に塗工するには、ワイヤーバーコーティング法、リバースコーティングやグラビアコーティングの如きロールコーティング法、ダイコート法、カンマコート法、リップコート法、スピンコーティング法、スクリーンコーティング法、ファウンテンコーティング法、ディッピング法、スプレー法など、公知の方法を適宜選択して適用できる。乾燥温度は、例えば50〜200℃であり、好ましくは60〜150℃である。乾燥時間は、例えば2〜20分である。
基材フィルム1の両面へのポリビニルアルコール系樹脂層の塗布は、上述の方法を用いて片面ずつ順番に行うこともできるし、ディッピング法やスプレーコート法やその他の特殊な装置などを用いて、基材フィルムの両面に同時にポリビニルアルコール系樹脂溶液を塗布することもできる。
また、基材フィルム1とポリビニルアルコール系樹脂層11,12の密着性を向上させるために、基材フィルム1とポリビニルアルコール系樹脂層11,12との間にプライマー層を設けてもよい。プライマー層は、ポリビニルアルコール系樹脂及び架橋剤などを含有する組成物で形成されることが、密着性の観点から好ましい。プライマー層に適した材料等は、上述の偏光板の構成の説明で述べたとおりである。
プライマー層を設ける場合、基材フィルム1への塗布の順番は特に制約されるものでなく、基材フィルム1の両面にプライマー層を形成した後、さらにその両面にポリビニルアルコール系樹脂層11,12を形成してもよいし、基材フィルム1の一方の面にプライマー層、ポリビニルアルコール系樹脂層11を順に形成して片面塗工フィルム16を形成した後、基材フィルムの他方の面にプライマー層、ポリビニルアルコール系樹脂層12を順に形成してもよい。
〈延伸工程(S20)〉
延伸工程(S20)では、樹脂層形成工程(S10)で得られる両面塗工フィルム17を延伸し、両面塗工フィルム17における第一ポリビニルアルコール系樹脂層11及び第二ポリビニルアルコール系樹脂層12をそれぞれ、第一延伸ポリビニルアルコール系樹脂層21及び第二遠心ポリビニルアルコール系樹脂層22とする。好ましくは、5倍超かつ17倍以下の延伸倍率となるように一軸延伸する。さらに好ましい一軸延伸倍率は、5倍超かつ8倍以下である。延伸倍率が5倍以下だと、ポリビニルアルコール系樹脂層が十分に配向しないため、結果として、偏光子層の偏光度が十分に高くならない不具合を生じることがある。一方、延伸倍率が17倍を超える場合、延伸時の積層フィルムの破断が生じやすくなるとともに、延伸後の積層フィルムの厚みが必要以上に薄くなり、後工程での加工性やハンドリング性を低下させるおそれがある。
延伸工程(S20)における延伸処理は、一段で行ってもよいし多段で行ってもよい。
多段で延伸を行う場合、二段目以降の延伸処理は、延伸工程(S20)の中で行ってもよいが、染色工程(S40)や架橋工程(S50)と同時に行ってもよい。このように多段で延伸する場合は、延伸処理の全段を合わせて5倍超の延伸倍率となるように延伸処理を行う。
〈防染工程(S30)〉
防染工程(S30)では、延伸工程(S20)で得られる積層延伸フィルム26の延伸ポリビニルアルコール系樹脂層21の表面の一部に、防染層35を形成する。防染層35を形成するための防染剤は、二色性色素に染まらないものであればよいので、先に記載した二色性色素が吸着しにくい変性率の高いポリビニルアルコール系樹脂、ウレタン樹脂やアクリル樹脂、紫外線硬化樹脂、パラフィン、フォトレジストなどが使用できる。印刷用インクを用いて柄や文字の印刷により防染層35を形成してもよい。防染層35の形成には、既知のオフセット印刷、グラビア印刷、インクジェット印刷などが適用可能であり、形状に応じて適宜選択すればよい。
〈染色工程(S40)〉
染色工程(S40)では、積層延伸フィルム26の両面にある延伸ポリビニルアルコール系樹脂層21,22を、二色性色素で染色する。二色性色素は、先に説明したとおりである。
染色工程(S40)は、例えば、上記二色性色素を含有する溶液(染色溶液)に、積層延伸フィルム26全体を浸漬することにより行われる。染色溶液としては、二色性色素を溶媒に溶解した溶液が使用できる。染色溶液の溶媒としては、一般に水が使用されるが、水と相溶性のある有機溶媒がさらに添加されていてもよい。染色溶液における二色性色素の濃度は、0.01〜10重量%であることが好ましく、さらには0.02〜7重量%、とりわけ0.025〜5重量%であることが一層好ましい。
二色性色素としてヨウ素を使用する場合、染色効率をより一層向上できることから、染色溶液にヨウ化物を添加することが好ましい。このヨウ化物としては、例えば、ヨウ化カリウム、ヨウ化リチウム、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化亜鉛、ヨウ化アルミニウム、ヨウ化鉛、ヨウ化銅、ヨウ化バリウム、ヨウ化カルシウム、ヨウ化錫、ヨウ化チタンなどが挙げられる。これらヨウ化物の添加割合は、染色溶液において、 0.01〜20重量%であることが好ましい。ヨウ化物の中でも、ヨウ化カリウムが好ましく用いられる。ヨウ化カリウムを添加する場合、ヨウ素とヨウ化カリウムの割合は、重量比で1:5〜1:100の範囲にあることが好ましく、さらには1:6〜1:80、とりわけ1:7〜1:70の範囲にあることが一層好ましい。
染色溶液への積層延伸フィルム26の浸漬時間は、特に限定されないが、通常は15秒〜15分間の範囲であることが好ましく、1分〜3分間であることがより好ましい。また染色溶液の温度は、10〜60℃の範囲にあることが好ましく、20〜40℃の範囲にあることがより好ましい。
なお、染色処理を延伸工程の前又は延伸工程と同時に行うことも可能であるが、ポリビニルアルコール系樹脂に吸着させた二色性色素を良好に配向させることができるよう、未延伸フィルムに延伸処理を施した後で染色処理を行うことが好ましい。この際、予め目標の倍率で延伸されたものを単に染色するのみでもよいし、予め低倍率で延伸されたものを染色中に再度延伸して、トータルで目的の倍率に達するようにしてもよい。また、さらにその後の架橋処理中にも延伸する場合は、染色処理が終わった段階でのトータル延伸倍率を、目的の最終倍率よりも低めに設定しておくことができる。この場合は、架橋処理後に目的の倍率に達するよう、適宜調整すればよい。ただし、本発明においては、偏光能を示さない領域36の形状とサイズが重要なので、延伸ポリビニルアルコール系樹脂層21中で防染層35が形成されていた部分がそのまま、偏光子層31中で偏光能を示さない領域36となるようにすることが好ましい。そのためには、染色工程(S40)以降では延伸ポリビニルアルコール系樹脂層21の形状が事実上変化しないようにすること、具体的には、延伸処理が事実上延伸工程(S40)でのみ行われ、染色工程(S40)では実質的に延伸されないようにすること、あるいは染色工程(S40)での延伸は最小限となるようにすることが好ましい。
〈防染層除去工程(S45)〉
必要に応じて防染層除去工程(S45)を設け、防染層35は、そこで洗浄除去することができる。防染層除去工程(S45)は、後述する架橋工程(S50)の前でも後でもよいが、架橋工程(S50)の前に防染層35を除去すれば、染色されていない領域36のポリビニルアルコールも架橋できるため、耐久性の面で好ましい。
〈架橋工程(S50)〉
染色工程(S40)の後、通常は架橋処理を行う架橋工程(S50)が設けられる。架橋処理は、例えば、架橋剤を含む溶液(架橋溶液)中に、染色後の積層延伸フィルム26を浸漬することにより行われる。架橋剤としては、従来公知の物質を使用することができる。例えば、ホウ酸やホウ砂の如きホウ素化合物、グリオキザール、グルタルアルデヒドなどが挙げられる。これらは、1種類のみを使用してもよいし、2種類以上を併用してもよい。
架橋溶液として、架橋剤を溶媒に溶解した溶液が使用できる。溶媒としては、例えば水が使用できるが、さらに、水と相溶性のある有機溶媒を含んでもよい。架橋溶液における架橋剤の濃度は、特に限定されないが、1〜20重量%の範囲にあることが好ましく、さらには6〜15重量%であることがより好ましい。
架橋溶液中には、ヨウ化物を添加してもよい。ヨウ化物の添加により、樹脂層の面内における偏光特性をより均一化させることができる。ヨウ化物としては、例えば、ヨウ化カリウム、ヨウ化リチウム、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化亜鉛、ヨウ化アルミニウム、ヨウ化鉛、ヨウ化銅、ヨウ化バリウム、ヨウ化カルシウム、ヨウ化錫、ヨウ化チタンなどが挙げられる。架橋溶液におけるヨウ化物の含有量は、好ましくは 0.05〜15重量%、より好ましくは0.5〜8重量%である。
架橋溶液への積層延伸フィルムの浸漬時間は、通常、15秒〜20分間であることが好ましく、30秒〜15分間であることがより好ましい。
なお、架橋処理は、架橋剤を染色溶液中に配合することにより、染色処理と同時に行うこともできる。また、予め目標の倍率で延伸されたものを、単に架橋溶液に浸漬して架橋させるだけでもよいし、架橋処理と延伸処理を同時に行ってもよい。延伸工程において予め低倍率で延伸された積層延伸フィルムを、架橋処理中に再度延伸することにより、トータルで目的の倍率に達するようにしてもよい。ただし、本発明においては、先の染色工程(S40)の項でも述べたとおり、偏光能を示さない領域36の形状とサイズが重要なので、延伸処理が事実上延伸工程(S40)でのみ行われ、架橋工程(S50)でも実質的に延伸されないようにすること、あるいは架橋工程(S50)での延伸は最小限となるようにすることが好ましい。
以上の染色工程(S40)及び架橋工程(S50)を減ることにより、延伸ポリビニルアルコール系樹脂層21,22が偏光子層31,32としての機能を有することになる。
この際、防染工程(S30)において形成された防染層35に覆われた部分の延伸ポリビニルアルコール系樹脂層21は、二色性色素によって染色されないので、透過率が高く、偏光能を示さない領域36となり、かかる領域36を有する両面偏光性積層フィルム38が得られる。
〈洗浄工程(S60)〉
染色工程(S40)の後、あるいは架橋工程(S50)を行った場合はその後、両面偏光性積層フィルム38を洗浄する洗浄工程(S60)を設けることが好ましい。洗浄工程(S60)においては、水による洗浄処理を採用することができる。水洗浄処理は、例えば、イオン交換水や蒸留水などの純水を洗浄液として、これに延伸フィルムを浸漬する方法により行うことができる。水洗浄の温度は、通常3〜50℃、好ましくは4〜20℃の範囲である。
洗浄工程(S60)は、ヨウ化物溶液による洗浄処理と水による洗浄処理を組み合わせてもよく、適宜にメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、又はプロパノールの如き液体アルコールを配合した溶液を洗浄液として用いることもできる。
また、洗浄工程の後に、ニップロールやエアナイフなどを用いた水切りの工程を設けてもよい。
洗浄工程(S60)において、両面偏光性積層フィルム38の洗浄液への浸漬時間は、通常2〜300秒間、好ましくは3〜240秒間である。
洗浄工程(S60)の後に、両面偏光性積層フィルム38を乾燥することが好ましい。
乾燥には、任意の適切な方法(例えば、自然乾燥、送風乾燥、加熱乾燥など)が採用できる。例えば、加熱乾燥の場合の乾燥温度は、通常20〜95℃であり、乾燥時間は、通常1〜15分間程度である。
〈保護フィルム貼合工程(S70)〉
保護フィルム貼合工程(S70)では、上の各工程を経て得られる両面偏光性積層フィルム38の一方の面又は両面、すなわち一方の偏光子層の表面又は両方の偏光子層の表面に保護フィルムを貼合する。図2においては、両方の偏光子層31,32の表面に保護フィルム41,42を貼合する方法が模式的に示されている。偏光子層と保護フィルムとの貼合には、粘着剤層や接着剤層を介して両者を貼合する方法が採用できる。保護フィルムとして適した材料は、上述の偏光板の構成において説明したとおりである。
(粘着剤層)
粘着剤層を構成する粘着剤は、通常、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、シリコーン系樹脂などをベースポリマーとし、そこに、イソシアネート化合物、エポキシ化合物、アジリジン化合物などの架橋剤を加えた組成物からなる。さらに、粘着剤中に微粒子を配合して、光散乱性を示す粘着剤層を形成することもできる。
粘着剤層の厚さは、1〜40μm であることが好ましいが、加工性や耐久性などの特性を損なわない範囲で、薄く塗るのが好ましく、より好ましくは3〜25μm である。粘着剤層の厚さが3〜25μm の範囲にあれば、良好な加工性を示し、かつ偏光子層の寸法変化を抑えるうえでも好適である。粘着剤層の厚さが1μm 未満になると粘着性が低下し、その厚さが40μm を超えると粘着剤がはみ出すなどの不具合を生じやすくなる。
保護フィルムや偏光子層上に粘着剤層を形成する方法は特に限定されるものでなく、保護フィルム面、又は偏光子層面に、上記したベースポリマーをはじめとする各成分を含む粘着剤溶液を塗布し、乾燥して粘着剤層を形成した後、その粘着剤層にセパレータや他種のフィルムを貼り合わせてもよいし、セパレータ上に粘着剤層を形成した後、保護フィルム面又は偏光子層面にその粘着剤層を貼り付けて積層してもよい。また、粘着剤層を保護フィルム若しくは偏光子層面に形成する際には、必要に応じて保護フィルム若しくは偏光子層面、又は粘着剤層の片方若しくは両方に、密着力を向上させる処理、例えば、コロナ処理などを施してもよい。
(接着剤層)
接着剤層を構成する接着剤としては、例えば、ポリビニルアルコール系樹脂水溶液、水系二液型ウレタン系エマルジョン接着剤などを用いた水系接着剤が挙げられる。中でもポリビニルアルコール系樹脂水溶液が好適に用いられる。接着剤として用いるポリビニルアルコール系樹脂には、酢酸ビニルの単独重合体であるポリ酢酸ビニルをケン化処理して得られるビニルアルコールホモポリマーのほか、酢酸ビニルとこれに共重合可能な他の単量体との共重合体をケン化処理して得られるビニルアルコール系共重合体、さらにはそれらの水酸基を部分的に変性した変性ポリビニルアルコール系重合体などがある。水系接着剤には、多価アルデヒド、水溶性エポキシ化合物、メラミン系化合物、ジルコニア化合物、亜鉛化合物などが添加剤として添加されてもよい。このような水系接着剤を用いた場合、それから得られる接着剤層は、通常1μm よりもはるかに薄く、通常の光学顕微鏡で断面を観察しても、その接着剤層は事実上観察されない。そのため、防染層35の厚み段差を水系接着剤層で埋めることは難しいので、水系接着剤を採用する場合は、防染層除去工程(S45)で防染層35を除去することが望ましい。
水系接着剤を用いたフィルムの貼合方法は特に限定されないが、貼合される2枚のフィルムのうち一方の表面に接着剤を均一に塗布し、その塗布面にもう一方のフィルムを重ねるか、又は、貼合される2枚のフィルムの間に接着剤を流し込み、ロールなどで2枚のフィルムを挟むことにより貼合し、乾燥する方法などが採用できる。接着剤は通常、その調製後、15〜40℃の温度下で塗布され、貼合温度は、通常15〜30℃の範囲である。
水系接着剤を使用する場合は、フィルムを貼合した後、水系接着剤中に含まれる水を除去するため、乾燥処理が行われる。乾燥の温度は、30〜90℃の範囲が好ましい。乾燥温度が30℃を下回ると、接着面が剥離しやすくなる傾向にある。一方、乾燥温度が90℃を超えると、熱によって偏光子層などの光学性能が劣化するおそれがある。乾燥の時間は、10〜1,000秒程度とすることができる。
乾燥後はさらに、室温又はそれよりやや高い温度、例えば、20〜45℃程度の温度で12〜600時間程度養生してもよい。養生のときの温度は、乾燥時に採用した温度よりも低く設定されるのが一般的である。
また、非水系の接着剤として、光硬化性接着剤を用いることもできる。光硬化性接着剤としては、例えば、光硬化性エポキシ樹脂と光カチオン重合開始剤との混合物などを挙げることができる。
光硬化性接着剤によるフィルムの貼合には、従来公知の方法を採用することができ、例えば、流延法、マイヤーバーコート法、グラビアコート法、カンマコーター法、ドクタープレート法、ダイコート法、ディップコート法、噴霧法などにより、フィルムの接着面に接着剤を塗布し、2枚のフィルムを重ね合わせる方法が挙げられる。流延法とは、被塗布物である2枚のフィルムを、概ね垂直方向、概ね水平方向、又は両者の間の斜め方向に移動させながら、その表面に接着剤を流下して拡布させる方法である。
フィルムの表面に接着剤を塗布した後、ニップロールなどで挟んで2枚のフィルムを貼り合わせることにより接着される。また、この積層体をロールなどで加圧して均一に押し広げる方法も好適に使用することができる。この場合、ロールの材質は、金属やゴムなどであることができる。さらに、この積層体をロールとロールとの間に通し、加圧して押し広げる方法も好ましく採用される。この場合、2本のロールは同じ材質であってもよく、異なる材質であってもよい。ニップロールなどにより貼り合わされた後の接着剤層は、乾燥又は硬化前の厚さが、0.01μm以上5μm 以下となるようにすることが好ましい。
フィルムの接着表面には、接着性を向上させるために、プラズマ処理、コロナ処理、紫外線照射処理、フレーム(火炎)処理、ケン化処理などの表面処理を適宜施してもよい。
ケン化処理は、水酸化ナトリウムや水酸化カリウムのようなアルカリの水溶液にフィルムを浸漬することによって行われる。
光硬化性接着剤を用いて接着する場合は、フィルムを積層した後、活性エネルギー線を照射することによって光硬化性接着剤を硬化させる。活性エネルギー線の光源は特に限定されないが、波長400nm以下に発光分布を有する活性エネルギー線が好ましく、具体的には、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、ケミカルランプ、ブラックライトランプ、マイクロウェーブ励起水銀灯、メタルハライドランプなどが好ましく用いられる。
光硬化性接着剤への光照射強度は、光硬化性接着剤の組成により適宜決定され、特に限定されないが、重合開始剤の活性化に有効な波長領域の照射強度が0.1〜6,000mW/cm2 となるようにすることが好ましい。照射強度をこの範囲で適宜選択することにより、反応時間が長くなりすぎず、また光源から輻射される熱及び光硬化性接着剤の硬化時の発熱による接着剤の黄変や偏光板の劣化を生じる可能性を抑えることができる。光硬化性接着剤への光照射時間は、用いる光硬化性接着剤に応じて決定されるものであって、やはり特に限定されないが、上記の照射強度と照射時間との積として表される積算光量が10〜10,000mJ/cm2となるように設定されることが好ましい。光硬化性接着剤への積算光量をこの範囲で適宜選択することにより、重合開始剤由来の活性種を十分量発生させて硬化反応をより確実に進行させることができ、また照射時間が長くなりすぎず、良好な生産性を維持できる。硬化後の接着剤層の厚みは、通常0.001〜5μm程度となるが、好ましくは0.01μm以上、また好ましくは2μm 以下である。防染層除去工程(S45)で防染層35を除去しない場合は、接着剤層を防染層35の厚みよりも厚くすることで、その防染層35の厚み段差を埋めることができる。
活性エネルギー線の照射によって、偏光子層と保護フィルム等との間にある光硬化性接着剤を硬化させる場合、偏光子層の偏光度、透過率及び色相、並びに保護フィルムの透明性など、偏光板の諸機能が低下しない条件で硬化を行うことが好ましい。
〈乾燥工程(S75)〉
保護フィルム貼合工程(S70)で、接着剤層又は粘着剤層を形成するために溶剤を含む溶液を用いた場合には、両面貼合フィルム又は片面貼合フィルムの乾燥を行うために乾燥工程(S75)が設けられる。この乾燥工程(S75)は主に、接着剤層又は粘着剤層を乾燥させる目的で行われ、乾燥条件等は、上記の洗浄工程(S60)で説明した乾燥処理と同じである。特に接着剤層を形成するために、ポリビニルアルコール系樹脂水溶液などの水系接着剤を用いた場合には、60℃以上の温度で乾燥することが好ましい。
〈剥離工程(S80)〉
乾燥工程(S75)の後は、両面貼合フィルム又は片面貼合フィルムのうち、偏光子層31と保護フィルム41との積層体又は偏光子層32と保護フィルム42との積層体を基材フィルム1から剥離して、偏光板51,52を得る剥離工程(S80)が行われる。積層体の剥離方法は特に限定されるものでなく、通常の粘着剤付偏光板において行われている剥離フィルム剥離工程と同様の方法が採用できる。乾燥工程(S75)の後、そのまますぐに剥離してもよいし、一度ロール状に巻き取った後、別に剥離工程を設けて剥離してもよい。偏光板51,52は、例えば液晶表示装置における液晶セルの両側に配置して用いられる偏光板のセットとして提供することもできる。片面に保護フィルム41,42が貼合された偏光板51,52は、そのまま用いることもできるし、偏光板51の保護フィルム41が設けられた面と反対側になる偏光子層31の面、また偏光板52の保護フィルム42が設けられた面と反対側になる偏光子層32の面に、それぞれ保護フィルム又は後述する他の光学層を積層して用いることもできる。偏光子層31に、偏光能を示さない領域36が形成されている偏光板51が、本発明で規定する偏光板となる。この偏光板51において、偏光子層31の厚みは10μm 以下となる。またこの偏光板51は、偏光子層31の両面に保護フィルムが設けられた構成とすることもできる。
[他の光学層]
本発明の方法によって製造される偏光板は、実用に際して他の光学層を積層した偏光板として用いることができる。また、上記保護フィルムがこれらの光学層の機能を有していてもよい。
他の光学層の例としては、ある種の偏光光を透過し、それと逆の性質を示す偏光光を反射する反射型偏光フィルム、表面に凹凸形状を有する防眩機能付きフィルム、表面反射防止機能付きフィルム、表面に反射機能を有する反射フィルム、反射機能と透過機能とを併せ持つ半透過反射フィルム、視野角補償フィルムなどが挙げられる。
ある種の偏光光を透過し、それと逆の性質を示す偏光光を反射する反射型偏光フィルムに相当する市販品として、例えば、3M社〔日本では住友スリーエム(株)〕から販売されている“DBEF”及び“APF”など(いずれも商品名)が挙げられる。視野角補償フィルムとしては、基材表面に液晶性化合物が塗布され、配向・固定されている光学補償フィルム、ポリカーボネート系樹脂からなる位相差フィルム、環状ポリオレフィン系樹脂からなる位相差フィルムなどが挙げられる。基材表面に液晶性化合物が塗布され、配向・固定されている光学補償フィルムに相当する市販品としては、富士フイルム(株)から販売されている“WVフィルム”、JX日鉱日石エネルギー(株)から販売されている“NHフィルム”及び“NVフィルム”など(いずれも商品名)が挙げられる。また、環状ポリオレフィン系樹脂からなる位相差フィルムに相当する市販品としては、JSR(株)から販売されている“アートンフィルム”、積水化学工業(株)から販売されている“エスシーナ位相差フィルム”、日本ゼオン(株)から販売されている“ゼオノアフィルム”など(いずれも商品名)が挙げられる。
位相差フィルムは、一軸延伸又は二軸延伸により、面内位相差値Re、厚み方向位相差値Rth、Nz係数などが適宜に制御されたフィルムである。ここで、面内位相差値Re、厚み方向位相差値Rth及びNz係数は、フィルムの面内遅相軸方向の屈折率をnx 、面内進相軸方向(面内で遅相軸と直交する方向)の屈折率をny、厚み方向の屈折率をnz、厚みをdとしたときに、それぞれ以下の式で定義される。
Re=(nx−ny)×d
Rth=〔(nx+ny)/2−nz〕×d
Nz=(nx−nz)/(nx−ny
[視感度補正単体透過率]
偏光性積層フィルム38又は偏光板51において、防染層35の存在により偏光能を示さないこととなった領域36は、その視感度補正単体透過率が80%を超えることが好ましく、さらには90%以上であることがより好ましく、無色であることが理想である。ただし、デザイン印刷する場合は、当然にある程度の吸収を示すことになる。
単体透過率は、下式で定義される数値である;
単体透過率(λ)=0.5×(Tp(λ)+Tc(λ))。
ここで、Tp(λ)は、入射する波長λnmの直線偏光とパラレルニコルの関係で測定した偏光子層の透過率(%)であり、Tc(λ)は、入射する波長λnmの直線偏光とクロスニコルの関係で測定した偏光子層の透過率(%)であり、ともに分光光度計による偏光紫外可視吸収スペクトル測定により求めることができる。また、波長毎に求めた単体透過率(λ)に、視感度補正といわれる感度補正をかけた値を視感度補正単体透過率(Ty)という。視感度補正単体透過率(Ty)は、例えば、日本分光(株)製の分光光度計(型番“V7100”)などを用いて簡便に測定できる。
視感度補正単体透過率の測定において、保護フィルムの有無や保護フィルムの種類によって界面反射率の差から視感度補正単体透過率の絶対値は多少前後する。
以下に実施例を示して、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。例中、含有量ないし使用量を表す%及び部は、特記ない限り重量基準である。
[実施例1]
図2に示すフローチャートのようにして、両面偏光性積層フィルム38から、偏光能を示さない透過率の高い領域を有する偏光板51を作製した。
(a)基材フィルム
エチレンユニットを約5%含むプロピレン/エチレンのランダム共重合体〔住友化学
(株)から入手した商品名“住友ノーブレン W151”、融点138℃〕 からなる樹脂層の両面に、プロピレンの単独重合体〔住友化学(株)から入手した商品名“住友ノーブレン FLX80E4”、融点163℃〕からなる樹脂層が配置された3層構造の基材フィルム1を、多層押出成形機を用いた共押出成形により作製した。得られた基材フィルム1の合計厚さは90μm であり、各層の厚み比(FLX80E4/W151/FLX80E4)は3/4/3であった。
(b)プライマー層形成工程
平均重合度1,100、平均ケン化度99.5モル%のポリビニルアルコール粉末〔日本合成化学工業(株)から入手した商品名“Z-200”〕 を95℃の熱水に溶解し、濃度3%の水溶液を調製した。得られた3%ポリビニルアルコール水溶液に、水溶性エポキシ樹脂の30%水溶液からなる架橋剤〔田岡化学工業(株)から入手した商品名“スミレーズレジン 650”〕を、ポリビニルアルコールの固形分6部に対して5部の割合で混合し、プライマー溶液を調製した。先に示した基材フィルム1の一方の面にコロナ処理を施し、そのコロナ処理面に小径グラビアコーターを用いて、上で調製したプライマー溶液を塗工し、80℃で10分間乾燥して、厚さ0.2μm のプライマー層を形成した。
さらに、基材フィルム1の他方の面にもコロナ処理を施し、同様にプライマー溶液の塗工及び乾燥処理を施すことで、基材フィルム1の両面にプライマー層が形成されたフィルムを作製した。
(c)樹脂層形成工程
平均重合度 2,400、平均ケン化度98.0〜99.0モル%のポリビニルアルコール粉末〔(株)クラレから入手した商品名“PVA124”〕を95℃の熱水に溶解し、濃度8%のポリビニルアルコール水溶液を調製した。得られた水溶液を、上記基材フィルム1の一方の面に形成されたプライマー層の表面にリップコーターを用いて塗工し、その後連続して、80℃で2分、70℃で2分、及び60℃で4分の乾燥処理を行い、基材フィルム1及び第一ポリビニルアルコール系樹脂層11の2層からなる片面塗工フィルム16を作製した。
次に、この片面塗工フィルム16における基材フィルム1の他方の面に形成されたプライマー層の表面に、同様の塗工及び乾燥処理を行い、第一ポリビニルアルコール系樹脂層11、基材フィルム1及び第二ポリビニルアルコール系樹脂層12からなる両面塗工フィルム17を作製した。このとき(延伸前)のポリビニルアルコール系樹脂層11及び12の厚さは、それぞれ10.5μm及び10.2μmであった。
(d)延伸工程
両面塗工フィルム17に対し、ロール間縦延伸機を用いて160℃で 5.8倍の自由端縦一軸延伸を行った。延伸後の両面塗工フィルムに存在する二つのポリビニルアルコール系樹脂層の厚さは、それぞれ5μm±0.1μm であった。
(e)防染工程
得られた積層延伸フィルム26の第一延伸ポリビニルアルコール系樹脂層21上に、熱で溶かしたパラフィンを塗布し、直径5mmの円形に硬化させて防染層35を形成した。
(f)染色工程及び架橋工程
延伸し、防染層35を設けた積層延伸フィルム26を、以下に示す組成を有する30℃の染色溶液に140秒間浸漬して染色処理を行った。引き続き、10℃の純水で余分なヨウ素液を洗い流した後、以下に示す組成を有する76℃の架橋溶液に600秒間浸漬して架橋処理を行った。
〈染色溶液〉
水 100部
ヨウ素 0.35部
ヨウ化カリウム 10部
〈架橋溶液〉
水 100部
ホウ酸 9.5部
ヨウ化カリウム 5部
(g)洗浄工程
架橋処理後のフィルムを10℃の純水で4秒間洗浄し、パラフィンを除去した。最後に80℃で300秒間乾燥した。以上の工程により、基材フィルム1の両面に形成されたポリビニルアルコール系樹脂層11,12が偏光子層31,32となった両面偏光性積層フィルム38を得た。
(h)保護フィルム貼合工程
平均重合度 1,800のポリビニルアルコール粉末〔(株)クラレから入手した商品名“KL-318”〕を95℃の熱水に溶解し、濃度3%の水溶液を調製した。得られた3%ポリビニルアルコール水溶液に、先のプライマー層形成工程で用いたのと同じ架橋剤“スミレーズレジン 650”を、ポリビニルアルコールの固形分2部に対して1部の割合で混合し、接着剤溶液とした。先の工程で得られた両面偏光性積層フィルム38の両面に、ここで調製したポリビニルアルコール系接着剤溶液を塗布した後、それぞれの接着剤塗布面に保護フィルム41,42として、トリアセチルセルロースフィルム〔コニカミノルタアドバンストレイヤー(株)から入手した商品名“KC4UY”〕を貼合し、80℃で5分間乾燥することで、保護フィルム41、偏光子層31、基材フィルム1、偏光子層32及び保護フィルム42の5層からなる両面貼合フィルム46を得た。
(i)剥離工程
両面貼合フィルム46から、偏光子層31及び保護フィルム41の積層体である第一偏光板51を剥離した。残りのフィルム(基材フィルム1、偏光子層32及び保護フィルム42の積層体)から、基材フィルム1を剥離して、偏光子層32及び保護フィルム42の積層体である第二偏光板52を得た。第一偏光板51は、直径5mmの無色透明な円形で偏光能を示さない領域36を有していた。
[実施例2]
この例では、光硬化性樹脂組成物の硬化物で防染層35を形成し、その他は実施例1に準じて、偏光能を示さない透過率の高い領域を有する偏光板51を作製した。
(A)光硬化性樹脂組成物の調製
以下の各成分を混合し、脱泡して、光硬化性樹脂組成物を液体状態で調製した。
3,4−エポキシシクロヘキシルメチル 3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート 75部
1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル 20部
2−エチルヘキシルグリシジルエーテル 5部
トリアリールスルホニウム ヘキサフルオロホスフェート系の光カチオン重合開始剤
2.25部
なお、光カチオン重合開始剤は、50%プロピレンカーボネート溶液の形で入手したものを使用した。上に示した配合量(2.25部)は、固形分量である。
(B)防染工程
実施例1の(d)で延伸が施された後の積層延伸フィルム26の第一延伸ポリビニルアルコール系樹脂層21上に、直径5mmの円形の穴があいたマスクを載置し、そのマスクを介して、先に調製した光硬化性樹脂組成物を1μm 厚みとなるようにバーコーターを用いて塗工した。その後、マスクをその上に塗工された光硬化性樹脂組成物ごと取り除き、第一延伸ポリビニルアルコール系樹脂層21上に、マスクの穴に対応する直径5mmの光硬化性樹脂組成物塗工層のみが存在する状態で、その塗工層を上にして、フュージョンUVシステムズ社製の紫外線ランプ“Dバルブ”が取り付けられたベルトコンベア付き紫外線照射装置に乗せ、積算光量が250mJ/cm2 となるように紫外線を照射し、光硬化性樹脂組成物を硬化させた。こうして、積層延伸フィルム26の第一延伸ポリビニルアルコール系樹脂層21上に、光硬化性樹脂組成物の硬化物からなる直径5mmの円形の防染層35を形成させた。
(C)染色工程、架橋工程及び洗浄工程
その後、実施例1の(f)で用いたのと同じ染色溶液に145秒間浸漬し、続いて実施例1の(f)及び(g)と同じ条件で架橋及び水洗を行った。水洗時には、円形の防染層35は除去されない。
(D)保護フィルム貼合工程
環状オレフィン系樹脂からなる厚さ20μm の位相差フィルム〔JSR(株)から入手した商品名“アートンフィルム”、長尺ロール状フィルムの幅方向(TD)に遅相軸があり、Re=115nm、Nz係数=1.4) の片面にコロナ処理を施し、そのコロナ処理面に、先に調製した光硬化性樹脂組成物を硬化後の膜厚が約3μm となるようにバーコーターを用いて塗工した。次にその塗工層側を、上の第一延伸ポリビニルアルコール系樹脂層21上に防染層35が形成された両面偏光性積層フィルム38の両面に貼り合わせた。この状態で上と同じベルトコンベア付き紫外線照射装置に乗せ、紫外線を照射して光硬化性樹脂組成物を硬化させて、保護フィルム41、偏光子層31、基材フィルム1、偏光子層32及び保護フィルム42の5層からなる両面貼合フィルム46を得た。偏光子層31中の防染層35に対応する部分は染色されておらず、偏光能を示さない領域36となっている。
(E)剥離工程
上で得られた両面貼合フィルム46から、偏光子層31及び保護フィルム41の積層体である第一偏光板51を剥離した。残りのフィルム(基材フィルム1、偏光子層32及び保護フィルム42の積層体)から、基材フィルム1を剥離して、偏光子層32及び保護フィルム42の積層体である第二偏光板52を得た。第一偏光板51は、直径5mmの無色透明な円形で偏光能を示さない領域36を有していた。
[偏光板の透過率の測定]
日本分光(株)製の分光光度計“V7100”を用いて、各実施例で得られた偏光板の偏光性能を測定した。測定にあたり、光は偏光子層側から入射させた。第一偏光板51の防染層35に対応して形成された偏光能を示さない領域36、及びそれ以外の偏光性能を示す領域の視感度補正単体透過率を表1にまとめた。
Figure 2018106204
以上のようにして得られる、偏光子層の片面に保護フィルムが貼合され、偏光能を示さない透明領域を有する偏光板は、例えばその偏光子層上に粘着剤層を形成し、液晶セルに貼ることができる。図3は、実施例1で得られた偏光板の偏光子層上に粘着剤層を形成した状態を模式的に示す断面図であり、図4は、実施例2で得られた偏光板の偏光子層上に粘着剤層を形成した状態を模式的に示す断面図である。
図3に示される偏光板51は、透明で偏光能を示さない領域36を有する偏光子層31の片面に接着剤層61を介して保護フィルム41が貼合され、偏光子層31の他面には粘着剤層62が設けられた構成になっている。
一方、図4に示される偏光板51は、偏光子層31の片面の一部に防染層35が形成され、偏光子層31の当該防染層35で覆われた部分が透明で偏光能を示さない領域36となっており、その防染層35側に接着剤層61を介して保護フィルム41が貼合され、偏光子層31の他面には粘着剤層62が設けられた構成になっている。図4において、防染層35は形成されたときの状態でそのまま残っているが、実施例2ではこの防染層35とその上の接着剤層61を同じ光硬化性樹脂組成物から形成しているので、例えば断面を光学顕微鏡で観察しても、防染層35と接着剤層61の界面は見分けられない。
1……基材フィルム、
11……第一ポリビニルアルコール系樹脂層、
12……第二ポリビニルアルコール系樹脂層、
16……片面塗工フィルム、
17……両面塗工フィルム、
21……第一延伸ポリビニルアルコール系樹脂層、
22……第二延伸ポリビニルアルコール系樹脂層、
26……積層延伸フィルム、
31,32……偏光子層、
35……防染層、
36……偏光能を示さない領域、
38……両面偏光性積層フィルム、
41,42……保護フィルム、
46……両面貼合フィルム、
51,52……偏光板、
61……接着剤層、
62……粘着剤層、
70……穴あき偏光板、
72……偏光板に設けられた穴。

Claims (2)

  1. 基材フィルム及びその基材フィルム上に形成された偏光子層を備える偏光性積層フィルムの製造方法であって、
    前記基材フィルムの表面にポリビニルアルコール系樹脂層を形成して積層フィルムを得る樹脂層形成工程と、
    得られる積層フィルムを延伸して積層延伸フィルムを得る延伸工程と、
    得られる積層延伸フィルムの前記ポリビニルアルコール系樹脂層表面の一部に防染層を形成する防染工程と、
    二色性色素を含有する染色溶液に前記防染層が形成された積層延伸フィルムを接触させて、前記ポリビニルアルコール系樹脂層を前記二色性色素で染色し、偏光子層を形成する染色工程と
    を備えることを特徴とする、偏光能を示さない領域を有する偏光性積層フィルムの製造方法。
  2. 請求項1に記載の製造方法によって得られる偏光性積層フィルムから前記基材フィルムが除去され、前記偏光子層の少なくとも一方の面に保護フィルムが貼合されており、前記防染層が形成された領域のポリビニルアルコール系樹脂層は偏光能を示さず、かつ、前記二色性色素で染色されたポリビニルアルコール系樹脂からなる偏光子層は10μm 以下の厚みを有することを特徴とする偏光板。
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