JP2018104763A - 溶鋼の精錬方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】真空脱ガス処理の復圧時、非定常時に生じる溶鋼のスラグ巻き込みを抑制して、鋼中の粗大なCaO含有介在物の量と大きさを低減する。【解決手段】C、Si、Mn、P、及び、Sを含有する溶鋼に真空槽と浸漬管を備える脱ガス装置で真空脱ガス処理を施して、高清浄鋼を製造する製造方法において、真空脱ガス処理の終了後、真空槽内に復圧用ガスを供給して、真空槽内の減圧状態を大気圧へ復圧する際、真空槽及び浸漬管内を通過して取鍋内へ降下する溶鋼の下降流速U[m/秒]を0.15m/秒以下に制御して復圧することを特徴とする溶鋼の精錬方法。【選択図】図1

Description

本発明は、溶鋼の精錬方法、特に、真空精錬を終了する時の精錬方法に関するものである。
近年、機械装置の高性能化や機械部品の小型化を図るため、機械特性に優れる鋼が求められている。鋼は、一般に、転炉で、溶鋼を脱珪処理、脱燐処理、さらに、脱炭処理を行った後、二次精錬工程にて、溶鋼の成分組成を調整し、溶鋼中の介在物を低減し、次いで、連続鋳造して製造されるが、機械特性を高めるためには、溶鋼中の介在物をできるだけ低減する必要がある。
例えば、軸受鋼においては、鋼中の介在物の量や大きさが、転動疲労寿命を決定するので、二次精錬工程にて、溶鋼に、取鍋スラグ精錬処理(以下「LF処理」ということがある。)や、真空脱ガス処理(以下「RH処理」ということがある。)を施し、溶鋼中の介在物の低減を図っている。
RH処理は、取鍋中の溶鋼に、二本の浸漬管を浸漬し、浸漬管に繋がる真空槽を減圧して、大気圧との差圧で溶鋼を真空槽内に吸い上げ、溶鋼還流ガスを、浸漬管から溶鋼内に供給し、溶鋼を真空槽内と取鍋の間で環流させて、脱ガスや、介在物の低減を図る処理である。
RH処理では、溶鋼を強撹拌することになるので、介在物の除去は促進されるが、一方で、溶鋼中へのスラグの巻込みが発生するので、溶鋼の環流制御が重要で、これまで、環流制御に関する技術が数多く提案されている。
例えば、特許文献1には、塩基度3以上のスラグで還元精錬を実施した後、環流式脱ガス装置によって、処理時間の2/3を高環流、1/3を弱環流にして真空脱ガス精錬を行うことを特徴とする軸受鋼の製造方法が提案されている。
特許文献2には、アーク溶解炉又は転炉で製造した溶鋼を取鍋に移注して精錬する際、取鍋における精錬を60分以下とし、環流式脱ガス装置による溶鋼の環流量を全溶鋼の8倍以上として脱ガスを25分以上行うことを特徴とする高清浄鋼の製造方法が提案されている。
特許文献3には、転炉又は電気炉から出鋼した溶鋼を取鍋精錬装置で精錬した後、還流式真空脱ガス装置で精錬して高清浄度鋼を製造する際、還流式真空脱ガス装置で行う精錬処理でのスラグ塩基度を6.5以上13.5以下とし、還流式真空脱ガス装置の全処理時間の1/3〜1/2の前半処理では、溶鋼環流量180ton/min以上、210ton/min以下の高還流状態とし、後半処理では、溶鋼環流量110ton/min以上、140ton/min以下の弱還流状態とすることを特徴とする高清浄度鋼の製造方法が提案されている。
特許文献4には、溶鋼の真空精錬処理終了時に真空槽内に窒素ガスを導入して、真空から常圧に復圧する真空精錬装置の復圧方法において、溶鋼浴表面にはアルゴンガス等の不活性ガスを導入して、溶鋼の吸窒を防止することが提案されている。
特許文献5には、真空槽内にスラグを持ち込まない状態で、真空槽内の真空度に応じて攪拌用ガスを供給することを特徴とする高清浄度極低炭素鋼の製造方法が提案されている。
特開昭62−063650号公報 特開2001−342516号公報 特開2008−133505号公報 特開平05−331526号公報 特開平08−199225号公報
前述したように、鋼の機械特性に、鋼中に存在する介在物、主に、酸化物系介在物の量と大きさが大きく影響する。鋼中の酸化物系介在物のうち、特に、数10μm程の粗大な介在物は、CaO含有の低融点介在物(CaO含有介在物)である。
粗大なCaO含有介在物は、精錬で使用する取鍋スラグが、溶鋼に巻き込まれて発生するスラグ系介在物、スラグ中のCaOが還元されて溶鋼に混入し、溶鋼中のAl23やMgO−Al23と反応して生成する介在物、さらに、これらの介在物が溶鋼中の介在物を取り込んで粗大化した介在物である。
粗大なCaO含有介在物は、品質管理指標の極値統計値や、製品特性の疲労寿命を悪化させるので、その量と大きさを低減する必要があるが、そのためには、介在物の凝集合の起点となる低融点介在物の量と大きさを低減するとともに、低融点介在物に取り込まれる溶鋼中の介在物の量と大きさを低減することが有効である。
これら介在物の量と大きさを低減するためには、製造の各工程(取鍋精錬−RH処理−連続鋳造)において、溶鋼中への介在物の混入を抑制する、又は、溶鋼中の介在物を除去する等の介在物低減対策が必要である。
溶鋼中への取鍋スラグの巻き込みは、溶鋼流速が大きい場合や、スラグ/メタル界面の擾乱が激しい場合に、その頻度が大きくなり、混入するスラグ系介在物の量と大きさが、ともに増大する。
RH処理の終了後は、真空槽内の溶鋼を取鍋に戻すため、真空槽内の減圧状態を大気圧へ戻す「復圧」を実施するが、復圧時には、真空槽内に吸い上げられていた溶鋼、及び、浸漬管内に貯留していた溶鋼が、急激に降下して取鍋内に戻るので、急激に降下する溶鋼が誘起する溶鋼の下降流速は非常に大きく、スラグが溶鋼に巻き込まれたり、介在物が取鍋の深部まで引き込まれたりする。
特許文献1の方法では、環流式脱ガス処理の前半2/3を高環流とし、後半1/3を弱環流としているが、特許文献1に、復圧時の環流条件は記載されていない。また、還流式脱ガス処理の後半を弱環流にすると、溶鋼中の全酸素量T.Oを十分に低減できない可能性がある。
特許文献2の方法では、取鍋における精錬を60分以下とし、環流式脱ガス装置による溶鋼の環流量を、全溶鋼の8倍以上として脱ガスを25分以上行うが、特許文献2に、復圧時の環流条件は記載されておらず、また、溶鋼のスラグ巻き込みに影響する環流速度条件も不明瞭である。
特許文献3の方法では、還流式真空脱ガス装置の全処理時間の1/3〜1/2の前半を高還流状態とし、後半を弱還流状態としているが、特許文献1の方法と同様に、復圧時の還流条件は記載されておらず、また、後半を弱撹拌とするので、溶鋼中の全酸素量T.Oを十分に下げることができない恐れがある。
特許文献4の方法では、復圧時のガス種等が規定されているが、特許文献4に、真空槽内及び取鍋内において、溶鋼のスラグ巻込みを抑制する復圧条件は記載されていない。特許文献5の方法では、真空槽内の圧力に応じた適切な攪拌ガス流速が規定されているが、特許文献5に、真空槽内及び取鍋内において、溶鋼のスラグ巻込みを抑制する復圧条件は記載されていない。
本発明は、従来技術の現状に鑑み、溶鋼の真空脱ガス処理の復圧時において、非定常時に生じる溶鋼のスラグ巻き込みを抑制して、鋼中の粗大なCaO含有介在物の量と大きさを低減することを課題とし、該課題を解決する溶鋼の精錬方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決する手法について鋭意検討した。その結果、真空脱ガス処理の復圧時、溶鋼の下降流速を最適化すれば、溶鋼中へのスラグ巻込みを抑制することができ、スラグに起因して生成する粗大なCaO含有介在物の量と大きさを低減することができ、鋼の機械特性を高めることができることを見いだした。
本発明は上記の知見に基づいてなされたもので、その要旨は次の通りである。
(1)C、Si、Mn、P、及び、Sを含有する溶鋼に真空槽と浸漬管を備える脱ガス装置で真空脱ガス処理を施して、溶鋼を精錬する精錬方法において、
真空脱ガス処理の終了後、真空槽内に復圧用ガスを供給して、真空槽内の減圧状態を大気圧へ復圧する際、真空槽及び浸漬管内を通過して取鍋内へ降下する溶鋼の下降流速U[m/秒]を0.15m/秒以下に制御して復圧する
ことを特徴とする溶鋼の精錬方法。
(2)前記溶鋼の下降流速U[m/秒]を下記式(1)に従って算出することを特徴とする前記(1)に記載の溶鋼の精錬方法。
Figure 2018104763
0[Pa]:大気圧
1[Pa]:復圧開始前の真空槽内圧力
1[Nm3/時間]:溶鋼環流用ガスを吹き込む部位から供給する復圧用ガスの流量
2[Nm3/時間]:真空槽内に直接供給する部位から供給する復圧用ガスの流量
V[Nm3]:復圧対象領域の体積
ρ[kg/m3]:溶鋼密度
g[m/秒2]:重力加速度
(3)前記復圧の際、復圧用ガスを、溶鋼環流ガスを吹き込む部位、及び、真空槽内に直接供給する部位の一方又は両方から供給することを特徴とする前記(1)又は(2)に記載の溶鋼の精錬方法。
(4)前記復圧の際、溶鋼環流ガスを吹き込む部位から供給する復圧用ガスの流量を、真空脱ガス処理時の溶鋼還流ガスの流量より少なくすることを特徴とする前記(1)〜(3)のいずれかに記載の溶鋼の精錬方法。
(5)前記復圧用ガスが不活性ガスであることを特徴とする前記(1)〜(4)のいずれかに記載の溶鋼の精錬方法。
(6)前記溶鋼が、質量%で、C:1.20%以下、Si:3.00%以下、Mn:1.60%以下、P:0.05%以下、S:0.05%以下を含有し、残部がFe及び不可避的不純物からなることを特徴とする前記(1)〜(5)のいずれかに記載の溶鋼の精錬方法。
(7)前記溶鋼が、さらに、質量%で、Al:0.20%以下、Cr:3.50%以下、Mo:0.85%以下、Ni:4.50%以下、Nb:0.20%以下、V:0.45%以下、W:0.30%以下、B:0.006%以下、N:0.060%以下、Ti:0.25%以下、Cu:0.50%以下、Pb:0.45%以下、Bi:0.20%以下、Te:0.010%以下、Sb:0.20%以下、Mg:0.010%以下、Ca:0.010%以下、REM:0.010%以下、O:0.003%以下の1種又は2種以上を含有することを特徴とする前記(6)に記載の溶鋼の精錬方法。
本発明によれば、真空脱ガス処理の復圧時、真空槽内及び浸漬管内を降下する溶鋼の下降流速を最適化して、CaO含有介在物の溶鋼への混入を抑制できるので、鋼中の介在物の量及び大きさを低減することができ、機械特性に優れた鋼を提供することができる。
従来の復圧と本発明の復圧を対比して示す図である。(a)は、従来の復圧における制御因子の時間推移を模式的に示し、(b)は、本発明の復圧における制御因子の時間推移を模式的に示す。 溶鋼の下降流速が0.15m/秒を超える場合(従来)のCaO含有介在物の最大粒径及び平均粒径(比較例)と、溶鋼の下降流速が0.15m/秒以下の場合のCaO含有介在物の最大粒径及び平均粒径(発明例)の、それぞれの比の一例を示す図である。 溶鋼の下降流速が0.15m/秒を超える場合(従来)のCaO含有介在物の極値統計最大予測粒径(比較例)と、溶鋼の下降流速が0.15m/秒以下の場合のCaO含有介在物の極値統計最大予測粒径(発明例)の対比の一例を示す図である。
本発明の溶鋼の精錬方法(以下「本発明精錬方法」ということがある。)は、
C、Si、Mn、P、及び、Sを含有する溶鋼に真空槽と浸漬管を備える脱ガス装置で真空脱ガス処理を施して、溶鋼を精錬する精錬方法において、
真空脱ガス処理の終了後、真空槽内に復圧用ガスを供給して、真空槽内の減圧状態を大気圧へ復圧する際、真空槽及び浸漬管内を通過して取鍋内へ降下する溶鋼の下降流速U[m/秒]を0.15m/秒以下に制御して復圧する
ことを特徴とする。
また、本発明精錬方法は、溶鋼の下降流速U[m/秒]を下記式(1)に従って算出することを特徴とする。
Figure 2018104763
0[Pa]:大気圧
1[Pa]:復圧開始前の真空槽内圧力
1[Nm3/時間]:溶鋼環流用ガスを吹き込む部位から供給する復圧用ガスの流量
2[Nm3/時間]:真空槽内に直接供給する部位から供給する復圧用ガスの流量
V[Nm3]:復圧対象領域の体積
ρ[kg/m3]:溶鋼密度
g[m/秒2]:重力加速度
前述したように、鋼中の介在物のうち、特に、粗大なCaO含有介在物の個数及び径の増大は、機械特性、特に、延性、靱性、衝撃特性、疲労特性等を阻害する要因である。本発明者らは、粗大なCaO含有介在物の個数及び粒径の増大を抑制する、又は、該個数及び粒径を低減する手法について鋭意検討した。
その結果、真空脱ガス処理の終了後、真空槽内に復圧用ガスを供給して、真空槽内の減圧状態を大気圧へ復圧する際、真空槽から浸漬管を通過して取鍋内へ降下する溶鋼の下降流速U[m/秒]を0.15m/秒以下に制御すれば、有害なCaO含有介在物の生成を抑制して、鋼中の介在物の少量化及び小径化を実現でき、機械特性の向上を図ることができることを見いだした。
ここで、図1に、従来の復圧と本発明の復圧を対比して示す。図1(a)に、従来の復圧における制御因子の時間推移を模式的に示し、図1(b)に、本発明の復圧における制御因子の時間推移を模式的に示す。
従来の復圧においては、復圧開始時点で、浸漬管内に吹き込む溶鋼還流ガス量は変えずに、真空槽内の復圧を開始し、減圧状態を短時間で大気圧まで復圧する際、復圧の開始と同時に、真空槽内の溶鋼は、浸漬管を経て取鍋内に降下し始める。
溶鋼の真空脱ガス処理においては、溶鋼が、スラグ/溶鋼界面でスラグを巻き込む限界溶鋼流速(図1中「巻込み限界溶鋼流速」)が存在する。例えば、浅井の式(浅井:第100・101回西山記念技術講座資料(1984)、p.67、p90)等による計算によれば、上記限界溶鋼流速は0.7m/秒程度であるが、復圧の開始と同時に、浸漬管を経て取鍋内に降下し始める溶鋼の下降流速は、従来の復圧においては、図1(a)に示すように、一挙に、所定の流速まで上昇する。
溶鋼の下降流速が、一挙に上昇して上記限界溶鋼流速を超え、超えた状態で復圧が完了すると、復圧完了までの間に、脱ガス真空処理で清浄化した溶鋼が、真空槽内及び取鍋内でスラグ巻込みが生じるため、該溶鋼を鋳造した鋼は、粗大な介在物を含むことになる。
本発明者らは、溶鋼の下降流速が限界溶鋼流速を下回れば、スラグ/溶鋼界面でのスラグ巻き込みは発生しない(溶鋼中に粗大な介在物が生成しない)と考え、図1(b)に示す復圧制御を発想した。
即ち、図1(b)に示すように、浸漬管内に吹き込む溶鋼還流ガス量は変えずに、真空槽内の復圧を開始し、復圧開始時以降、真空槽内の低圧状態を徐々に大気圧に近づけていき、溶鋼の下降流速を低減して、限界溶鋼流速以下に維持し、真空槽内及び取鍋内での溶鋼のスラグ巻込みを抑制する。
図1(b)に示す復圧制御においては、図1(a)に示す従来の復圧制御に比べ、復圧完了まで長時間を要するが、溶鋼の下降流速を限界溶鋼流速以下に維持して復圧を完了するので、有害なCaO含有介在物の生成を抑制して、高清浄の溶鋼を得ることができる。このことが、本発明製造方法の基本思想である。
次に、本発明精錬方法について説明する。
真空脱ガス処理に供する、C、Si、Mn、P、及び、Sを含有する溶鋼は、通常の精錬工程(一次精錬)で精錬した、通常の成分組成の溶鋼でよい。なお、溶鋼の好ましい成分組成については後述する。
一次精錬に続いて行う真空脱ガス処理(二次精錬)は、例えば、RH式精錬装置を用いて行い、真空脱ガス処理の終了後の復圧時、上記式(1)に従って復圧し、復圧後、溶鋼を鋳造する。鋳造は、通常の鋳造でよいが、連続鋳造が好ましい。
一次精錬に続いて行う真空脱ガス処理(二次精錬)は、復圧時、溶鋼の下降流速Uを0.15m/秒以下に制御できる精錬装置を用いて行えばよい。溶鋼の下降流速Uを容易に制御できる点で、RH式精錬装置が好ましい。
RH式精錬装置を用いる場合、復圧用ガスを、溶鋼環流ガスを吹き込む部位、及び、真空槽内に直接供給する部位の一方又は両方から供給して、溶鋼の下降流速Uを0.15m/秒以下に制御する。復圧用ガスは不活性ガスが好ましい。復圧後は、溶鋼を鋳造する。鋳造は、通常の鋳造でよいが、連続鋳造が好ましい。
真空槽及び浸漬管内を通過して取鍋内へ降下する溶鋼の下降流速U[m/秒]を0.15m/秒以下に制御することについて説明する。
真空脱ガス処理は数torr程度の真空下で行われるので、溶鋼ヘッド(取鍋内の溶鋼表面から真空槽内の溶鋼表面まで)の高さは1.4m程度となる。復圧時、真空槽内が急激に大気圧になると(図1(a)参照)、溶鋼の位置エネルギー(ρ・g・h)が全て運動エネルギー(1/2ρ・v2)に変換されたとすると、溶鋼の下降流速は、例えば、V=√(2・g・h)=5.3m/秒と、非常に大きな流速になる(ただし、復圧時間は1〜2秒程度なので0.7m/秒)。
この大きな流速で溶鋼が降下すると、取鍋内及び真空槽内に存在するスラグが、溶鋼中に巻き込まれ易くなるとともに、溶鋼中に存在する介在物が、取鍋内深部まで浸入して、以降の工程で浮上除去されることなく鋼中に残留して、欠陥の発生起点となる。
そこで、本発明者らは、復圧時、脱ガス真空処理で清浄化されて、浸漬管を降下する溶鋼がスラグを巻き込まない条件について鋭意検討した。
その結果、図1(b)に示すように、真空槽内の減圧状態を徐々に大気圧に近づけ、溶鋼の下降流速を、巻込み限界溶鋼流速未満の0.15m/秒以下に維持すれば、溶鋼のスラグ巻き込みが顕著に改善されることを見いだした。溶鋼の下降流速を0.15m/秒に設定すると、復圧終了までの時間は9.53秒であり、現実的に実施可能な時間である。
そして、本発明者らは、溶鋼の下降流速を0.15m/秒以下に制御すれば、真空槽及び取鍋における溶鋼のスラグの巻き込みが顕著に抑制され、鋼中に残留するCaO含有介在物の個数と最大粒径が減少し、極値統計最大粒径dmaxも減少することを確認した。
図2に、溶鋼の下降流速が0.15m/秒を超える場合(従来)のCaO含有介在物の最大粒径及び平均粒径(比較例)と、溶鋼の下降流速が0.15m/秒以下の場合のCaO含有介在物の最大粒径及び平均粒径(発明例)の、それぞれの比の一例を示す。
図3に、溶鋼の下降流速が0.15m/秒を超える場合(従来)のCaO含有介在物の極値統計最大予測粒径(比較例)と、溶鋼の下降流速が0.15m/秒以下の場合のCaO含有介在物の極値統計最大予測粒径(発明例)の対比の一例を示す。
図2及び図3に示すように、復圧時、溶鋼の下降流速を0.15m/秒以下に維持すると、CaO含有介在物の最大粒径、平均粒径、及び、極値統計最大予測粒径は、いずれも減少する。
即ち、真空脱ガス処理の復圧時、溶鋼の下降流速を0.15m/秒以下に制御すれば、溶鋼のスラグ巻込みを顕著に抑制することができ、スラグに起因して生成するCaO含有介在物の量と大きさを低減することができ、鋼の機械特性を高めることができる。このことが、本発明者らが見いだし、本発明製造方法の基礎をなす知見である。
復圧中、溶鋼の下降流速を、巻込み限界溶鋼流速未満に維持する必要があるが、溶鋼の下降流速U[m/秒]は、真空槽内の圧力状態に依るので、溶鋼の下降流速を、溶鋼環流用ガスを吹き込む部位から供給する復圧用ガスの流量:G1[Nm3/時間]と真空槽内に直接供給する部位から供給する復圧用ガスの流量G2:[Nm3/時間]を制御因子として用いて、上記式(1)で定義した。
上記式(1)は、所定の溶鋼の下降流速を実現するための条件であり、溶鋼ヘッド(復圧開始前の圧力に依存)を、復圧対象領域(体積:V)を復圧要ガスで満たすのに必要な時間で除して求めることができる。
復圧時、真空槽内に供給する復圧用ガスは、溶鋼環流用ガスを吹き込む部位及び真空槽内に直接供給する部位の一方又は両方から真空槽内に供給する。復圧用ガスを両方の部位から供給する場合、溶鋼環流用ガスを吹き込む部位から供給する復圧用ガスの流量を、真空脱ガス処理時の溶鋼環流ガスの流量より少なくすることが好ましい。
復圧時、溶鋼環流用ガスを吹き込む部位から供給する復圧用ガスの流量を、真空脱ガス処理時の溶鋼環流ガスの流量より少なくすることにより、真空槽内における溶鋼のスラグ巻込みを、より抑制することができる。復圧用ガスは、溶鋼の汚染を防止する観点から、アルゴンや窒素などの、溶鋼と反応し難い不活性ガスが好ましい。
真空脱ガス処理を施す溶鋼は、通常の成分組成の溶鋼、即ち、鋼の基本元素のC、Si、Mn、P、及び、Sを含有する溶鋼であれば、溶鋼の下降流速制御による介在物低減効果が発現するので、特定の成分組成の溶鋼に限定されないが、上記介在物低減効果が顕著に発現する溶鋼の成分組成について説明する。以下、%は質量%を意味する。
C:1.20%以下
Cは、焼入れ後の鋼の強度や硬さを確保するのに有効な元素である。1.20%を超えると、焼入れ時に割れが発生し、また、硬くなりすぎて、切削工具の寿命が低下したりするので、Cは1.20%以下が好ましい。より好ましくは1.00%以下である。
強度又は硬さをそれほど必要としない鋼種では、Cを必ずしも必要としないので、下限は特に限定しないが、Cは、鋼の基本元素であり、0%にすることは困難であるので、下限は0%を含まない。所要の強度や硬さを確保する点で、Cは0.001%以上が好ましい。
Si:3.00%以下
Siは、焼入れ性を高めて、強度や硬さの確保に有効な元素である。3.00%を超えると、硬くなりすぎて、切削工具の寿命が低下するので、Siは3.00%以下が好ましい。より好ましくは2.50%以下である。
強度又は硬さをそれほど必要としない鋼種では、Siを必要としないので、下限は特に定めないが、Siは、鋼の基本元素であり、0%にすることは困難であるので、下限は0%を含まない。所要の強度や硬さを確保する点で、Siは0.001%以上が好ましい。
Mn:1.60%以下
Mnは、焼入れ性を高めて、強度や硬さの確保に有効な元素である。1.60%を超えると、焼入れ時に割れが発生し、また、硬くなりすぎて、切削工具の寿命が低下するので、Mnは1.60%以下が好ましい。より好ましくは1.20%以下である。
強度又は硬さをそれほど必要としない鋼種は、Mnを必要としないので、下限は特に定めないが、Mnは、鋼の基本元素であるので、下限は0%を含まない。所要の強度や硬さを確保する点で、Mnは0.01%以上が好ましい。
P:0.05%以下
Pは、不純物元素であり、靱性を阻害する元素である。Pが0.05%を超えると、靭性が著しく低下するので、Pは0.05%以下が好ましい。より好ましくは0.03%以下である。下限は0%を含むが、Pを0.0001%以下に低減すると、精錬コストが大幅に上昇するので、実用鋼上、0.0001%が実質的な下限である。
S:0.05%以下
Sは、Pと同様に、不純物元素であり、靱性を阻害する元素である。Sが0.05%を超えると、靭性が著しく低下するので、Sは0.05%以下が好ましい。より好ましくは0.03%以下である。下限は0%を含むが、Sを0.0001%以下に低減すると、精錬コストが大幅に上昇するので、実用鋼上、0.0001%が実質的な下限である。
好ましい成分組成の溶鋼は、鋼の機械特性及び/又は化学特性を阻害しない範囲で、上記基本元素以外に、Al:0.20%以下、Cr:3.50%以下、Mo:0.85%以下、Ni:4.50%以下、Nb:0.20%以下、V:0.45%以下、W:0.30%以下、B:0.006%以下、N:0.060%以下、Ti:0.25%以下、Cu:0.50%以下、Pb:0.45%以下、Bi:0.20%以下、Te:0.01%以下、Sb:0.20%以下、Mg:0.010%以下、Ca:0.010%以下、REM:0.010%以下、O:0.003%以下の1種又は2種以上を含有してもよい。
Al:0.20%以下
Alは、脱酸元素であり、また、結晶粒を微細化する元素である。0.20%を超えると、粗大な酸化物系介在物が生成し、靭性及び延性が低下するので、Alは0.20%以下が好ましい。結晶粒の微細化効果を確保する点で、0.005%以上が好ましく、0.010%がより好ましい。
Cr:3.50%以下
Crは、焼入れ性を高めて、強度や硬さの確保に有効な元素である。3.50%を超えると、靱性及び延性が低下するので、3.50%以下が好ましい。より好ましくは2.50%以下である。Crの添加効果を確保する点で、0.01%以上が好ましく、0.05%以上がより好ましい。
Mo:0.85%以下
Moは、焼入れ性を高めて強度や硬さの確保に有効な元素である。また、Moは、炭化物を形成して、焼戻し軟化抵抗の向上に寄与する元素である。0.85%を超えると、過冷組織が生じ、靱性及び延性が低下するので、Moは0.85%以下が好ましい。より好ましくは0.65%以下である。Moの添加効果を確保する点で、0.005%以上が好ましく、0.010%以上がより好ましい。
Ni:4.50%以下
Niは、焼入れ性を高めて、強度や硬さの確保に有効な元素である。4.50%を超えると、靱性及び延性が低下するので、Niは4.50%以下が好ましい。より好ましくは3.50%以下である。Niの添加効果を確保する点で、0.005%以上が好ましく、0.010%以上がより好ましい。
Nb:0.20%以下
Nbは、炭化物、窒化物、及び/又は、炭窒化物を形成し、結晶粒の粗大化抑制や焼戻し軟化抵抗の向上に寄与する元素である。0.20%を超えると、靱性及び延性が低下するので、Nbは0.20%以下が好ましい。より好ましくは0.10%以下である。Nbの添加効果を確保する点で、0.005%以上が好ましく、0.010%以上がより好ましい。
V:0.45%以下
Vは、炭化物、窒化物、及び/又は、炭窒化物を形成し、結晶粒の粗大化抑制や焼戻し軟化抵抗の向上に寄与する元素である。0.45%を超えると、靱性及び延性が低下するので、Vは0.45%以下が好ましい。より好ましくは0.35%以下である。Vの添加効果を確保する点で、0.005%以上が好ましく、0.010%以上がより好ましい。
W:0.30%以下
Wは、焼入れ性を高めて、強度や硬さの確保に有効な元素である。また、Wは、炭化物を形成して、焼戻し軟化抵抗の向上に寄与する元素である。0.30%を超えると、過冷組織が生じ、靱性及び延性が低下するので、Wは0.30%以下が好ましい。より好ましくは0.25%以下である。Wの添加効果を確保する点で、0.005%以上が好ましく、0.010%以上がより好ましい。
B:0.006%以下
Bは、焼入れ性を高め、強度の向上に寄与する元素である。また、Bは、オーステナイト粒界に偏析して、Pの粒界偏析を抑制し、疲労強度の向上に寄与する元素である。0.006%を超えると、靱性が低下するので、Bは0.006%以下とする。好ましくは0.004%以下である。Bの添加効果を確保する点で、0.0005%以上が好ましく、0.001%以上がより好ましい。
N:0.060%以下
Nは、微細な窒化物を形成して結晶粒を微細化し、強度及び靭性の向上に寄与する元素である。0.060%を超えると、窒化物が過剰に生成して、靱性が低下するので、Nは0.060%以下が好ましい。より好ましくは0.040%以下である。Nの添加効果を確保する点で、0.001%以上が好ましく、0.005%以上がより好ましい。
Ti:0.25%以下
Tiは、微細なTi窒化物を形成して結晶粒を微細化し、強度及び靭性の向上に寄与する元素である。0.25%を超えると、Ti窒化物が過剰に生成し、靱性が低下するので、Tiは0.25%以下が好ましい。より好ましくは0.15%以下である。Tiの添加効果を確保する点で、0.005%以上が好ましく、0.010%以上がより好ましい。
Cu:0.50%以下
Cuは、耐食性の向上に寄与する元素である。0.50%を超えると、熱間延性が低下し、割れや疵が発生するので、Cuは0.50%以下が好ましい。より好ましくは0.30%以下である。Cuの添加効果を確保する点で、0.01%以上が好ましく、0.05%以上がより好ましい。
Pb:0.45%以下
Pbは、快削性の向上に寄与する元素である。0.45%を超えると、靱性が低下するので、Pbは0.45%以下が好ましい。より好ましくは0.30%以下である。Pbの添加効果を確保する点で、0.005%以上が好ましく、0.010%以上がより好ましい。
Bi:0.20%以下
Biは、快削性の向上に寄与する元素である。0.20%を超えると、靱性が低下するので、Biは0.20%以下が好ましい。より好ましくは0.16%以下である。Biの添加効果を確保する点で、0.005%以上が好ましく、0.010%以上がより好ましい。
Te:0.010%以下
Teは、快削性の向上に寄与する元素である。0.010%を超えると、靱性が低下するので、Teは0.010%以下が好ましい。より好ましくは0.006%以下である。Teの添加効果を確保する点で、0.005%以上が好ましく、0.010%以上がより好ましい。
Sb:0.20%以下
Sbは、耐硫酸性及び耐塩酸性を主体とする耐食性の向上、及び、快削性の向上に寄与する元素である。0.20%を超えると、靱性が低下するので、Sbは0.20%以下が好ましい。より好ましくは0.15%以下である。Sbの添加効果を確保する点で、0.01%以上が好ましく、0.03%以上がより好ましい。
Mg:0.010%以下
Mgは、快削性の向上に寄与する元素である。0.010%を超えると、靱性が低下するので、Mgは0.010%以下が好ましい。より好ましくは0.006%以下である。Mgの添加効果を確保する点で、0.0005%以上が好ましく、0.0010%以上がより好ましい。
Ca:0.010%以下
Caは、脱酸元素であり、脱酸反応で、凝集合し易い低融点のCaO−Al23系介在物を形成する元素である。0.010%を超えると、Al23系介在物が、低融点のCaO−Al23系介在物に複合化して粗大化する。粗大化したCaO−Al23系介在物は、圧延温度で液相化せず、粗大なまま鋼中に残存するので、Caは0.010%以下が好ましい。より好ましくは0.006%以下である。
Caは、少ないほど好ましいので、下限は限定しないが、不可避的に0.0001%程度は残存するので、実用鋼上、0.0001%が実質的な下限である。
REM:0.010%以下
REM(希土類元素、La、Ce、Pr、及び、Ndの1種又は2種以上)は、Al又はAl−Siで十分に脱酸した溶鋼において、溶鋼中のCaOや、介在物中のCaOを還元して、CaO−Al23系介在物を改質する作用をなす元素である。0.010%を超えると、介在物中に、REM濃度の高い低融点の化合物相が出現し、介在物の凝集合が助長されて、粗大な介在物が生成するので、REMは0.010%以下が好ましい。より好ましくは0.007%以下である。
Al又はAl−Siで十分に脱酸した溶鋼において、REMの添加効果を確保する点で、0.0005%以上が好ましく、0.0010%以下がより好ましい。
O:0.003%以下
Oは、酸化物を形成する元素である。0.003%を超えると、粗大な酸化物が生成し、転動疲労寿命が低下するので、Oは0.003%以下が好ましい。より好ましくは0.002%以下である。下限は0%を含むが、Oを0.0001%以下に低減すると、精錬コストが大幅に上昇するので、実用鋼上、0.0001%が実質的な下限である。
溶鋼の成分組成において、残部はFe及び不可避的不純物である。不可避的不純物は、鋼原料から及び/又は製鋼過程で不可避的に混入する元素であり、溶鋼の特性、さらに、溶鋼を鋳造した鋼の特性を阻害しない範囲で許容される元素である。
次に、本発明の実施例について説明する。ただし、実施例での条件は、本発明の実施可能性及び効果を確認するために採用した一条件例である。そのため、本発明は、この一条件例に限定されるものではない。本発明は、本発明の要旨を逸脱せず、本発明の目的を達成する限りにおいて、種々の条件を採用し得るものである。
(実施例)
表1に示す成分組成の溶鋼に、転炉による一次精錬、LF処理及びRH処理による二次精錬を施し、連続鋳造して鋼を製造した。
具体的には、270t転炉で一次精錬を施した溶鋼を出鋼する際、溶鋼を、Si、Mn、Alの1種又は2種以上にて脱酸した。脱酸した溶鋼に、所定のスラグ組成を用いてLF処理の二次精錬を施し、次いで、RH処理で成分組成を調整し、清浄化処理を施した後、連続鋳造して鋳片とした。この鋳片を、加熱炉にて加熱保持した後、分塊圧延に供し鋼片とした。
上記鋼片において、極値統計法により、予測面積30000mm2における非金属介在物の極値統計最大予測径[μm]を推定した。極値統計による介在物の最大予測径(√area(max)の推定は、例えば、「金属疲労 微小欠陥と介在物の影響」(村上敬宜著、養賢堂、1993年発行、p.223−239)に記載の方法により行うことができる。用いた方法は、二次元的検査により、一定面積内で観察される最大介在物径を推定するという二次元的手法である。
上記極値統計法を用いて、鋼片のL断面(ルーズ面の中心線と、この対向面の中心線、及び、鋳片の中心線を含む断面)のルーズ面側の1/4の位置から試料を採取して、光学顕微鏡で撮像した非金属介在物の画像から、検査基準面:100mm2(10mm×10mm)、検査視野:16、予測を行う面積30000mm2の介在物の最大予測径√area(max)を算出した。
具体的には、観察で得られた介在物の最大径の16個のデータ(16視野のデータ)を上記文献に記載の方法に従い、極値確率用紙にプロットして、最大介在物分布直線(最大介在物と極値統計基準化変数の一次関数)を求め、最大介在物分布直線を外挿することにより、面積:30000mm2における介在物の最大予測径√area(max)を推定した。
上記推定及び算出の結果を、表1に併せて示す。
Figure 2018104763
発明例No.3〜9、12〜18、21〜27、30〜36は、復圧時の溶鋼の下降流速が0.15m/秒以下であるので、極値統計による最大予測粒径が19〜25μmで、良好な値を示している。比較例No.1、2、10、11、19、20、28、及び、29は、復圧時の溶鋼の下降流速が0.15m/秒を超えているので、極値統計最大予測粒径に改善が見られない。
以上のとおり、発明例では、適正操業の比較例に比較し、介在物の粗大化が抑制されているので、機械特性、特に、転動疲労寿命の優れた鋼が得られることは明らかである。
前述したように、本発明によれば、真空脱ガス処理の復圧時、真空槽内及び浸漬管内を降下する溶鋼の下降流速を最適化して、CaO含有介在物の溶鋼への混入を抑制できるので、鋼中の介在物の量及び大きさを低減することができ、機械特性に優れた鋼を提供することができる。よって、本発明は、鉄鋼産業において利用可能性が高いものである。

Claims (7)

  1. C、Si、Mn、P、及び、Sを含有する溶鋼に真空槽と浸漬管を備える脱ガス装置で真空脱ガス処理を施して、溶鋼を精錬する精錬方法において、
    真空脱ガス処理の終了後、真空槽内に復圧用ガスを供給して、真空槽内の減圧状態を大気圧へ復圧する際、真空槽及び浸漬管内を通過して取鍋内へ降下する溶鋼の下降流速U[m/秒]を0.15m/秒以下に制御して復圧する
    ことを特徴とする溶鋼の精錬方法。
  2. 前記溶鋼の下降流速U[m/秒]を下記式(1)に従って算出することを特徴とする請求項1に記載の溶鋼の精錬方法。
    Figure 2018104763
    0[Pa]:大気圧
    1[Pa]:復圧開始前の真空槽内圧力
    1[Nm3/時間]:溶鋼環流用ガスを吹き込む部位から供給する復圧用ガスの流量
    2[Nm3/時間]:真空槽内に直接供給する部位から供給する復圧用ガスの流量
    V[Nm3]:復圧対象領域の体積
    ρ[kg/m3]:溶鋼密度
    g[m/秒2]:重力加速度
  3. 前記復圧の際、復圧用ガスを、溶鋼環流ガスを吹き込む部位、及び、真空槽内に直接供給する部位の一方又は両方から供給することを特徴とする請求項1又は2に記載の溶鋼の精錬方法。
  4. 前記復圧の際、溶鋼環流ガスを吹き込む部位から供給する復圧用ガスの流量を、真空脱ガス処理時の溶鋼還流ガスの流量より少なくすることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の溶鋼の精錬方法。
  5. 前記復圧用ガスが不活性ガスであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の溶鋼の精錬方法。
  6. 前記溶鋼が、質量%で、C:1.20%以下、Si:3.00%以下、Mn:1.60%以下、P:0.05%以下、S:0.05%以下を含有し、残部がFe及び不可避的不純物からなることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の溶鋼の精錬方法。
  7. 前記溶鋼が、さらに、質量%で、Al:0.20%以下、Cr:3.50%以下、Mo:0.85%以下、Ni:4.50%以下、Nb:0.20%以下、V:0.45%以下、W:0.30%以下、B:0.006%以下、N:0.060%以下、Ti:0.25%以下、Cu:0.50%以下、Pb:0.45%以下、Bi:0.20%以下、Te:0.010%以下、Sb:0.20%以下、Mg:0.010%以下、Ca:0.010%以下、REM:0.010%以下、O:0.003%以下の1種又は2種以上を含有することを特徴とする請求項6に記載の溶鋼の精錬方法。
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