JP2018102173A - 天敵を定着させた作物の苗、並びにその作成方法、及び当該苗を用いた害虫防除方法 - Google Patents

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光敏 桃下
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Abstract

【課題】天敵を利用して作物の害虫による被害を抑制する方法において、効果的に害虫の増殖及び発病を抑制すること。【解決手段】作物の苗に当該作物に対する害虫の天敵を定着しておく。【選択図】 なし

Description

本発明は、生物農薬の技術分野に属し、具体的には、害虫の天敵を利用して作物の害虫による被害を効果的に抑制する方法、そのための苗及びその作成方法に関する。
植物の病害虫からの防除では、化学物質を用いた防除法が浸透し、現在、化学物質を有効成分とする殺虫剤及び殺菌剤による防除がその主流を占めている。しかしながら、化学物質を用いた殺虫剤等は、その効果が優れている反面、人畜に対して毒性を有しているものや、自然環境に残留して、他の生態系に影響を及ぼすものがある。また、長期間の使用によって抵抗性を持った病害虫が出現するものや、天敵まで殺して逆に病害虫を発生する環境を創出してしまうものがあり、いくつかの問題点を抱えている。
このような化学物質を用いた殺虫剤等に対して、他の生態系への影響を極力抑え、防除の目的とする害虫のみを特異的に駆除する手段として、当該害虫の天敵を栽培圃場内に放すという方法が採用されている(特許文献1)。また、圃場内に天敵の餌となる害虫がいない場合に、放した天敵が死亡してしまう問題を解決する手段として、害虫と同じ種類で作物を加害しない餌となる昆虫を増加させた環境に天敵を放すという方法が提案されている(特許文献2)。
これらの方法は、圃場を中心としたいわゆる定植後の防除技術であるが、作物の定植後速やかに害虫が圃場に侵入してくると、天敵による捕食活動が追いつかなくなることがあった。特に、ハダニ類は、増殖速度が速く、一旦発生すると短時間で被害が大きくなることがある。また、害虫がウィルス媒介性の場合(例えばアザミウマ類、コナジラミ類)には、害虫の密度が低下する前に作物にウィルスが感染し、作物がウィルスにより枯死するなどの被害を受ける場合もあった。
特開2003−79271号公報 特開2003−92962号公報 特許第6016995号
意匠第1562632号公報
本発明は、上記の従来技術の問題を解決して、作物の苗の定植直後において、害虫による被害を効果的に抑制することを目的とする。
本発明者は、上記課題を解決するために検討したところ、目的の作物に対する害虫の天敵を当該作物の苗に定着させておき、その苗を定植したところ、定植直後の害虫の増殖を迅速且つ効果的に抑制し、害虫による被害を顕著に抑制できることを見出し、本発明を完成するに到った。
すなわち、本発明は、以下の作物の苗、当該苗の作成方法、及び当該苗を使用する害虫の防除方法を提供する。
[1]害虫の天敵が定着している作物の苗。
[2]前記害虫が、ハダニ類又はウィルス媒介性の害虫である、[1]に記載の作物の苗。
[3]前記ウィルス媒介性害虫が、アザミウマ類又はコナジラミ類の害虫である[2]に記載の作物の苗。
[4]前記天敵が、捕食性カブリダニである、[3]に記載の作物の苗。
[5]前記捕食性カブリダニが、スワルスキーカブリダニ、ミヤコカブリダニ、ククメリスカブリダニ、又はディジェネランスカブリダニである、[4]に記載の作物の苗。
[6]前記作物が、果菜類である、[1]から[5]の何れかに記載の作物苗。
[7]前記果菜類が、キュウリ、ナス、ピーマン、イチゴ、トウガラシ、メロン又はスイカである、[6]に記載の作物の苗。
[8]前記苗の少なくとも一部、或いは根元の辺りの土の表面に、前記天敵を含む製剤が配置されている、[1]から[7]の何れかに記載の作物の苗。
[9]前記製剤は、天敵と担体とを含む散布剤、天敵と担体と餌昆虫とを天敵が通過可能なパック中に含むパック製剤、或いは該パック製剤の少なくとも一部を覆うカバーを更に含むカバー付きパック製剤である、[8]に記載の作物の苗。
[10]作物の育苗領域に、該作物の害虫に対する天敵を放飼して、該天敵を該作物の苗に定着させることを含む、作物の苗の作成方法。
[11]前記害虫が、ハダニ類又はウィルス媒介性の害虫である、[10]に記載の方法。
[12]前記ウィルス媒介性害虫がアザミウマ類又はコナジラミ類である、[11]に記載の方法。
[13]前記天敵が、捕食性カブリダニである、[12]に記載の方法。
[14]前記捕食性カブリダニが、スワルスキーカブリダニ、ミヤコカブリダニ、ククメリスカブリダニ、又はディジェネランスカブリダニである、[13]に記載の方法。
[15]前記作物が果菜類である、[10]から[14]の何れかに記載の方法。
[16]前記果菜類が、キュウリ、ナス、ピーマン、イチゴ、トウガラシ、メロン又はスイカである、[15]に記載の方法。
[17]前記天敵を含む製剤を、育苗領域に配置する、[10]から「16」の何れかに記載の方法。
[18]前記製剤は、天敵と担体とを含む散布剤、天敵と担体と餌昆虫とを当該天敵が通過可能なパック中に含むパック製剤、或いは該パック製剤の少なくとも一部を覆うカバーを更に含むカバー付きパック製剤である、[17]に記載の方法。
[19]前記捕食性カブリダニを放飼する前、中又は後に、前記作物の苗に花粉を散布する、[13]から[18]の何れかに記載の方法。
[20][1]から[9]の何れかに記載の作物の苗を定植する、作物を害虫から防除する方法。
[21][1]から[9]の何れかに記載の作物の苗を定植する、作物の育成方法。
[22]定植後、追加の天敵を放飼する、[20]又は[21]も記載の方法。
[23]作物の苗に当該作物の害虫に対する天敵を定着させるためのパック製剤であって、当該天敵と担体と餌昆虫とを当該天敵が通過可能なパック中に含むパック製剤。
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。但し、本発明は、当業者の有する技術常識により改変が加えられる態様も本発明の本質的特徴を損なわない限り包含するものであり、以下の実施形態に限定されるものではない。
本発明は、その一の実施形態において、害虫の天敵が定着している作物の苗を提供する。本発明はまた、他の一の実施形態において、作物の育苗領域に、当該作物の害虫に対する天敵を放飼して、天敵を作物の苗に定着させることを含む、作物の苗の作成方法を提供する。本発明は、さらに他の一の実施形態において、害虫の天敵が定着している作物の苗を定植する、作物を害虫から防除する方法又は作物を育成する方法を提供する。
本発明は、広く様々な植物の害虫防除に適用可能であるが、通常、作物に適用され、例えば、トマト、ピーマン、なす、トウガラシなどのナス科果菜類;きゅうり、メロン、スイカなどのうり科果菜類;キャベツ、アブラナ等のアブラナ科野菜類;えんどうまめ、そらまめ、大豆、小豆などのマメ科野菜類;イチゴなどのバラ科果菜類;並びにバラ、カーネーショ、ガーベラ、シクラメン等の花卉類に適用することができるが、これらに限定されるものではない。本発明は、後述する通り、ハダニ類又はウィルス媒介性の害虫による被害を抑制するのに有効であり、好ましくは、このような害虫により被害が問題になるキュウリ、ナス、ピーマン、イチゴ、トウガラシ、メロンまたはスイカに適用される。
本発明はまた、広く様々な害虫に適用可能である。適用可能な害虫の例としては、非制限的に、例えば、ミナミキイロアザミウマ(Thrips palmi)、ネギアザミウマ(Thrips tabaci)、ミカンキイロアザミウマ(Frankliniella occidentalis)、チャノキイロアザミウマ(Scirtothrips dorsalis)、ヒラズハナアザミウマ(Frankliniella intonsa)、ダイズウスイロアザミウマ(Thrips setosus)等のアザミウマ類;ナミハダニ(Tetranychus urticae)、ニセナミハダニ(Tetranychus cinnabarinus)、カンザワハダニ(Tetranychus kanzawai)等のハダニ類;オンシツコナジラミ(Trialeurodes vaporariorum)、シルバーリーフコナジラミ(Bemisia argentifolii)、タバココナジラミ(Bemisia tabacii)等のコナジラミ類を挙げることができる。
害虫とそれによって被害を受ける植物との関係の一部を、下記表1に示す
Figure 2018102173
本発明によれば、定植直後の害虫の増殖を効果的に抑制できるために、増殖速度が速く、短時間で被害が大きくなりやすいハダニ類、並びにウィルスを媒介してウィルス感染による病気を引き起こす害虫に対して有効である。そのようなウィルス媒介性の害虫としては、アザミウマ類、コナジラミ類などの害虫が挙げられる。また、このような害虫が媒介するウィルス病としては、キュウリ黄化えそ病、メロン黄化えそ病、キュウリ退緑黄化病、キュウリ黄化病、ピーマンモザイク病などが挙げられる。
本発明で用いる天敵は、防除する害虫に対し適切な天敵を選択すればよい。例えば、ミナミキイロアザミウマ(Thrips palmi)、ネギアザミウマ(Thrips tabaci)、ミカンキイロアザミウマ(Frankliniella occidentalis)、及びヒラズハナアザミウマ(Frankliniella intonsa)等のアザミウマ類には、タイリクヒメハナカメムシ、クロヒョウタンカスミカメムシ等のカメムシ類、並びにスワルスキーカブリダニ、ミヤコカブリダニ、ククメリスカブリダニ、及びディジェネランスカブリダニ等の捕食性カブリダニ類を天敵とすることが有効である。
また、ナミハダニ(Tetranychus urticae)、ニセナミハダニ(Tetranychus cinnabarinus)、及びカンザワハダニ(Tetranychus kanzawai)等のハダニ類には、上述のカブリダニ類を天敵昆虫として利用することができる。
本発明による天敵定着苗は、上述の通り、ウィルスを媒介してウィルス病を発生させるアザミウマ類、ハダニ類等の害虫に特に有効であり、これらの害虫に対する天敵としては、花粉などを餌にして増殖することができ、苗への定着性が高い捕食性カブリダニ類が特に好ましい。捕食性カブリダニ類は市販されているものもあり、例えば、スパイカルEX(登録商標、アリスタライフサイエンス(株))、スパイカルプラス(登録商標、アリスタライフサイエンス(株))、スワルスキー(登録商標、アリスタライフサイエンス(株))、スワルスキープラス(登録商標、アリスタライフサイエンス(株))、ククメリス(登録商標、アリスタライフサイエンス(株))、システムミヤコくん(登録商標、石原産業(株))、システムスワルくん(登録商標、石原産業(株))等を利用することができる。
2.苗への定着方法
苗への天敵の定着は、作物の育苗領域に、当該作物の害虫に対する天敵を放飼して行なう。ただし、圃場に定植する前の育苗段階では、基本的に育苗領域に害虫が少ないために、天敵を苗に定着させるための工夫を講じることが好ましい。このような工夫としては、以下のものが挙げられる。
1)苗への定着性が高い天敵を選択する。捕食性カブリダニ類は害虫が存在しない環境でも増殖できるために、育苗段階で使用する天敵として優れた特性を有する。
2)天敵の生活環境を改善する。
フスマやバーミキュライト等の担体、並びに水を含ませたスポンジや吸水性ポリマーなど水分補給手段等で天敵の生活環境を改善したり、対象植物に害を及ぼさず、且つ天敵によって寄生又は捕食される餌昆虫又はその卵、及び場合によってはそれが食するバンカー植物を育苗環境に補充したり、花粉等の虫以外の餌を育苗環境に補充することにより、天敵が定着しやすい環境を整えることが考えられる。
3)天敵が出入り可能なパックなどの容器を用いて、外部環境から隔離された天敵の生活環境を創設して、隔離された天敵の生活環境を、上記2)のようにして整える。
4)降雨、灌水、農薬散布等による天敵の死滅、流亡を防ぐための覆いを設けて、上記2)及び3)の生活環境を保持する。
上記1)乃至4)の工夫は2つ以上組合せることができる。
本発明の特に好ましい実施形態では、キュウリ、ナス、ピーマン、イチゴ、トウガラシ、メロンまたはスイカといった作物を、アザミウマ類、コナジラミ類、又はハダニ類の害虫から防護するために、これらの作物の苗に定着させる天敵として、スワルスキーカブリダニ、ミヤコカブリダニ、ククメリスカブリダニ、又はディジェネランスカブリダニ等の捕食性カブリダニが選択される。この捕食性カブリダニは、定着性が高く、ボトル中からそのまま放飼しても有効な数のダニが苗に定着することができる。この場合、ダニの入ったボトルの口を空けて、育苗領域(例えば、根元、ポットの脇など)に放置しても良いし、苗にダニを振り掛けてもよい。この実施形態では、より好ましくは、捕食性カブリダニを、フスマやバーミキュライト等の担体と、サトウダニやサヤアシニクダニ等の餌昆虫と供に天敵が通過可能なパック等の容器中に含む製剤を、育苗領域に配置する(例えば、苗の一部に掛ける、根元、ポットの脇などに置く)ことが好ましい。また、このようなパック等に天敵を含む製剤を覆うカバーが付設されていると、長期間天敵の生活環境を維持できるため更に好ましい。
天敵を放飼する時期、放飼する天敵の密度などは、作物の種類、生育時期、天敵の種類などに応じて適宜好適な条件を選択することが好ましい。例えば、捕食性カブリダニを上述した作物の苗に定着させる場合、作物の種類、生育時期にもよるが発芽後7〜14日頃の鉢あげの時期にダニを1株当り10頭程度の割合で放飼されるようにすればよい。捕食性カブリダニを含むパック製剤を覆う防水カバーとしては、例えば特許文献3及び意匠文献1に記載のカバーを挙げることができる。
3.防除方法
本発明は、他の実施形態において、上述の天敵を定着させた苗を定植することを含む害虫の防除方法又は食物の育成方法を提供する。
後述する実施例で実証する通り、天敵が定着している苗を圃場等で定植すると、定植直後から害虫が作物に加害する前に天敵に捕食される割合が増大し、害虫に対する防除効果が顕著に高くなる。また、害虫がウィルス媒介性である場合には、ウィルスが害虫を介して作物に感染する前に害虫が捕食され、ウィルス病の発症を顕著に抑制することができる。
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明の技術的範囲はこれらの例示に限定されるものではない。
(実施例1)天敵の定着した苗を作成する方法
捕食性カブリダニを、各種作物の育苗時に放飼して、カブリダニが安定して定着できるかを試験した。
(実施例1−1)ピーマンの苗へのスワルスキーカブリダニの定着
ピーマンをセルトレイに播種し、播種15日後の苗を鉢あげし、その後、1つの試験区(鉢数:50鉢x3反復)で、スワルスキーカブリダニ(アリスタライフサイエンス株式会社製、商品名:スワルスキー、以下、ボトル製剤ということがある)を1株当り約10頭の割合で放飼した。また、他の試験区では、パック製剤(アリスタライフサイエンス株式会社製、商品名:スワルスキープラス、1パック当り250頭含有)を、25鉢(株)あたり1パックの間隔で鉢の隣接部に設置して放飼した。更に、パック製剤を天敵製剤用防水カバーで覆って設置した試験区も設けた。
苗は定植に適したステージになる約3週間の育苗期間、灌水を行いながら栽培した。表2は天敵放飼後の一定期間中の1苗当りの定着数を示す。
Figure 2018102173
(実施例1−2)キュウリの苗へのスワルスキーカブリダニの定着
キュウリをセルトレイに播種し、播種7日後の苗を鉢あげし、その後、1つの試験区(鉢数:50鉢x3反復)で、スワルスキーカブリダニ(アリスタライフサイエンス株式会社製、商品名:スワルスキー)を1株当り約10頭の割合で放飼した。また、他の試験区では、パック製剤(アリスタライフサイエンス株式会社製、商品名:スワルスキープラス、1パック当り250頭含有)を、25鉢(株)あたり1パックの間隔で鉢の隣接部に設置して放飼した。更に、パック製剤を天敵製剤用防水カバーで覆って設置した試験区も設けた。
苗は定植に適したステージになる約2週間の育苗期間、灌水を行いながら栽培した。表3は天敵放飼後の一定期間中の1苗当りの定着数を示す。
Figure 2018102173
(実施例1−3)イチゴの苗へのミヤコカブリダニの定着
イチゴの親株からランナーを誘導し、子株を育苗したのち、ランナーから切り離した時期から、1つの試験区(株数:100鉢x3反復)で、ミヤコカブリダニ(アリスタライフサイエンス株式会社製、商品名:スパイカルEX)を1株当り約10頭の割合で放飼した。また、他の試験区では、ミヤコカブリダニを含むパック製剤(アリスタライフサイエンス株式会社製、商品名:スパイカルプラス、1パック当り50頭含有)を、ランナーに誘導された子株5株あたり1パックの割合でポットの隣接部に設置して放飼した。更に、パック製剤を天敵製剤用防水カバーで覆って設置した試験区も設けた。
放飼は本圃定植1ヶ月前から開始し、1ヶ月の定着期間を設けて灌水を行いながら管理した。表4は天敵放飼後の一定期間中の1苗当りの定着数を示す。
Figure 2018102173
(実施例1−4)ナスの苗へのスワルスキーカブリダニの定着
ナスをセルトレイに播種し、播種15日後の苗を鉢あげし、1つの試験区(鉢数:50鉢x3反復)で、スワルスキーカブリダニ(アリスタライフサイエンス株式会社製、商品名:スワルスキー)を1株当り約10頭の割合で放飼した。また、他の試験区では、パック製剤(アリスタライフサイエンス株式会社製、商品名:スワルスキープラス、1パック当り250頭含有)を、25鉢(株)あたり1パックの間隔で鉢の隣接部に設置して放飼した。更に、パック製剤を天敵製剤用防水カバーで覆って設置した試験区も設けた。また、これら3種類の方法で放飼した後、スワルスキーカブリダニの餌として、定期的に花粉を散布した試験区も設けた。花粉散布は、天敵放飼後1日、5日、8日、12日、14日、18日後の6回行い、花粉量は1m当り50mgとした。花粉は漢方薬として販売されている蒲黄を用いた。
苗は定植に適したステージになる約3週間の育苗期間、灌水を行いながら栽培した。表5は天敵放飼後の一定期間中の1苗当りの定着数を示した。
Figure 2018102173
(実施例1−5及び1−6)メロン、及びスイカの苗へのスワルスキーカブリダニの定着
実施例1−2に記載するキュウリの苗へのスワルスキーカブリダニの定着と基本的に同様にして、防水カバーで覆ったパック製剤を用いてメロンの苗、及びスイカの苗へのスワルスキーカブリダニの定着についても試験した。何れの苗についても、スワルスキーカブリダニの定着を確認した。
(実施例2)天敵が定着した苗を定植した圃場における害虫防除効果
実施例1において天敵が定着した苗を定植した場合に害虫による作物の被害がどの程度抑制されるかを、定着していない苗を定植した場合に比べて試験した。
実施例1−2、1−5及び1−6に記載するようにしてスワルスキーカブリダニを定着させたキュウリ、メロン及びスイカの苗を、圃場にて定植し、ミナミキイロアザミウマが媒介するキュウリ黄化えそ病の抑制効果を検証した。
実施例1−3に記載するようにしてミヤコカブリダニを定着させたイチゴの苗を、圃場にて定植し、ハダニによる被害株率を検証した。
(実施例2−1)
実施場所:愛媛県大洲市
作物:キュウリ
作型:抑制栽培
実施例1−2に記載したとおり、育苗ハウスでスワルスキーカブリダニを定着させたキュウリ苗をハウス(6mx25m)圃場に150株定植した。一方、対照としてスワルスキーカブリダニを定着させていないキュウリ苗を同様の規模の別のハウスに定植した。両方のハウスともにサイドネットとして0.6mmの目合いのネットを展張した。
キュウリ定植後、所定の防除プログラムとして、定植後7日目に、スワルスキーカブリダニ(アリスタライフサイエンス株式会社製、商品名:スワルスキー)を約50頭/mになるように放飼するとともに天敵に影響のない殺虫剤、殺菌剤を定期的に散布した。
定植後6週間後まで1週間毎に、キュウリ株のアザミウマ成幼虫数、及びスワルスキーカブリダニ数を、60株について3葉/株ごとに調査するとともに、全株について黄化えそ病発病の有無を調査して発症株率を算出した。
結果を表6、表7及び表8に示す。
Figure 2018102173
Figure 2018102173
Figure 2018102173
[考察]
育苗ハウスでスワルスキーカブリダニを定着させたキュウリ苗を利用したIPM防除プログラムを実施した圃場では、カブリダニの定着が良好で、それに伴ってミナミキイロアザミウマの密度も低く抑えられ、黄化えそ病も発症しなかった。一方、定植時はスワルスキーカブリダニを定着させていない苗を定植した圃場では、定植時にアザミウマが加害している苗も確認され、その後スワルスキーカブリダニを放飼したもののアザミウマの密度は増加するとともに黄化えそ病の発症も認められた。
(実施例2−2)
実施場所:高知県香南市夜須町
作物:メロン
作型:抑制栽培
実施例1−5に記載したとおり、パック製剤・防水カバー放飼により育苗ハウスでスワルスキーカブリダニを定着させたメロン苗をハウス(7mx20m)圃場に100株定植した。一方、対照としてスワルスキーカブリダニを定着させていないメロン苗を同様の規模の別のハウスに定植した。両方のハウスともにサイドネットとして0.4mmの目合いの赤色ネットを展張した。
メロン定植後7日目に、所定の防除プログラムとして、スワルスキーカブリダニ(アリスタライフサイエンス株式会社製、商品名:スワルスキー)を約50頭/mになるように放飼するとともに天敵に影響のない殺虫剤、殺菌剤を定期的に散布した。
定植後6週間後まで1週間毎にメロン株のアザミウマ成幼虫数及びスワルスキーカブリダニ数を45株(15株x3ヶ所)について5葉/株ごとに調査するとともに、全株について黄化えそ病発病の有無を調査して発症株率を算出した。
結果を表9、表10及び表11に示す。
Figure 2018102173
Figure 2018102173
Figure 2018102173
[考察]
育苗ハウスでスワルスキーカブリダニを定着させた苗を用いた場合、キュウリと同様にカブリダニの定着が良好で、それに伴ってミナミキイロアザミウマの密度も低く抑えられ、黄化えそ病も発症しなかった。一方、対照区では、定植後2週間目に黄化えそ病発症株が確認され、その後増加した。
(実施例2−3)
実施場所:熊本県熊本市植木
作物:スイカ
作型:2作植え替え栽培
実施例1−6に記載したとおり、パック製剤・防水カバー放飼により育苗ハウスでスワルスキーカブリダニを定着させたスイカ苗をハウス(7mx35m)圃場に100株定植した。一方、対照としてスワルスキーカブリダニを定着させていないスイカ苗を同様の規模の別のハウスに定植した。両方のハウスともにサイドネットとして0.8mmの目合いのネットを展張した。
スイカ定植後7日目に、所定の防除プログラムとして、スワルスキーカブリダニ(アリスタライフサイエンス株式会社製、商品名:スワルスキー)を約50頭/mになるように放飼するとともに天敵に影響のない殺虫剤、殺菌剤を定期的に散布した。
定植後6週間後までスイカ株のコナジラミ幼虫数、スワルスキーカブリダニ数を60株について3複葉/株ごとに調査するとともに、全株について退緑黄化病発病の有無を調査して発症株率を算出した。
結果を表12、表13及び表14に示す。
Figure 2018102173
Figure 2018102173
Figure 2018102173
[考察]
育苗ハウスでスワルスキーカブリダニを定着させた苗を用いた場合、スイカでもスワルスキーカブリダニの定着が良くコナジラミの密度も低く抑えられ、コナジラミの媒介する退緑黄化病が発症しなかった。一方、対照区では、定植後5週間目に退緑黄化病が確認され、その後増加した。
(実施例2−4)
実施場所:栃木県真岡市
作物:イチゴ
作型:冬春栽培
実施例1−3において、育苗ハウスでミヤコカブリダニを、防水カバーで覆ったパック製剤を利用して定着させたイチゴ苗を、ハウス(7mx50m)圃場に2000株定植した。一方、対照として定植時にミヤコカブリダニを定着させていないイチゴ苗を同様の規模の別のハウスに定植した。
イチゴ定植後、所定の防除プログラムとしてミヤコカブリダニ(アリスタライフサイエンス株式会社製、商品名:スパイカルEX)を定植後2ヵ月後に5頭/mになるように放飼した。
カブリダニ放飼した定植後2ヶ月目(60日後)のハダニ類の発生状況、及びその後の2週間後とのハダニ発生状況を100複葉x3ヶ所について調査するとともにこの間の殺ダニ剤の使用回数について調査した。なお、ハダニ類の発生が顕著な場合には、殺ダニ剤を使用した。
結果を表15、及び表16に示す。
Figure 2018102173
Figure 2018102173
[考察]
育苗ハウスでミヤコカブリダニを定着させた苗を用いた場合、イチゴ苗定植後のハダニ類(ナミハダニ)の密度も低く抑えられ、定植84日後までの殺ダニ剤の散布は必要なかった。一方、対照区では、定植後からミヤコカブリダニを圃場に放飼する2ヶ月目までにハダニが発生し、殺ダニ剤を3回、その後も殺ダニ剤を1回の合計4回の散布が必要だった。

Claims (19)

  1. 害虫の天敵が定着している作物の苗。
  2. 前記害虫が、ハダニ類又はウィルス媒介性の害虫である、請求項1に記載の作物の苗。
  3. 前記ウィルス媒介性害虫が、アザミウマ類又はコナジラミ類の害虫である、である請求項2に記載の作物の苗。
  4. 前記天敵が、捕食性カブリダニである、請求項3に記載の作物の苗。
  5. 前記捕食性カブリダニが、スワルスキーカブリダニ、ミヤコカブリダニ、ククメリスカブリダニ、又はディジェネランスカブリダニである、請求項4に記載の作物の苗。
  6. 前記作物が、果菜類である、請求項1から5の何れか1項に記載の作物苗。
  7. 前記果菜類が、キュウリ、ナス、ピーマン、イチゴ、トウガラシ、メロンまたはスイカである、請求項6に記載の作物の苗。
  8. 作物の育苗領域に、該作物の害虫に対する天敵を放飼して、該天敵を該作物の苗に定着させることを含む、作物の苗の作成方法。
  9. 前記害虫が、ハダニ類又ウィルス媒介性の害虫である、請求項8に記載の方法。
  10. 前記ウィルス媒介性害虫が、アザミウマ類又はコナジラミ類の害虫である請求項9に記載の方法。
  11. 前記天敵が、捕食性カブリダニである、請求項10に記載の方法。
  12. 前記捕食性カブリダニが、スワルスキーカブリダニ、ミヤコカブリダニ、ククメリスカブリダニ又はディジェネランスカブリダニである、請求項11に記載の方法。
  13. 前記作物が果菜類である、請求項8から12の何れか1項に記載の方法。
  14. 前記果菜類が、キュウリ、ナス、ピーマン、イチゴ、トウガラシ、メロンまたはスイカである、請求項13に記載の方法。
  15. 前記育苗領域に、前記天敵を含む製剤を配置する、請求項8から14の何れか1項に記載の方法。
  16. 前記製剤は、天敵と担体とを含む散布剤、天敵と担体と餌昆虫とを該天敵が通過可能なパック中に含むパック製剤、或いは該パック製剤の少なくとも一部を覆うカバーを更に含むカバー付きパック製剤である、請求項15に記載の方法。
  17. 前記捕食性カブリダニを放飼する前、中又は後に、前記作物の苗に花粉を散布する、請求項11から16の何れか1項に記載の方法。
  18. 請求項1から7の何れか1項に記載の作物の苗を定植する、作物を害虫から防除する方法。
  19. 請求項1から7の何れか1項に記載の作物の苗を定植する、作物の育成方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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WO2021075283A1 (ja) * 2019-10-18 2021-04-22 神奈川県 害虫の天敵生物を作物に定着させる薬剤及び害虫の天敵生物を作物に定着させる方法

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