JP2018099031A - c−Met陽性癌の判定方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】c-Met陽性乳癌の診断及び治療方法、並びにそれを利用したHGF製剤によるリンパ浮腫の治療方法等を提供する。
【解決手段】miR-29a、miR-221、miR-222、miR-191及びmiR-196aからなる群から選択される少なくとも1つのmiRNAの発現レベルを測定することにより、c-Met陽性乳癌を診断し、その結果に基づき、HGF製剤を投与してリンパ浮腫を治療する。また、miR-29a、miR-221、miR-222、miR-191及びmiR-196aからなる群から選択される少なくとも1つのmiRNAの発現レベルを調節する薬剤を投与することにより、乳癌を治療する。
【選択図】なし

Description

本発明は、c-Met陽性癌の判定方法に関する。本願はまた、リンパ浮腫患者のうち、HGF製剤による治療対象者を選定する方法に関する。本発明はさらに、c-Met陽性癌治療用の組成物に関する。
女性が生涯で乳癌へ罹患する率は、日本では約20人に1人、アメリカでは約8人に1人である。患者数は年々増加傾向にあり、近年日本では、1年間に新たに乳癌と診断された患者数は5万人を超えている。
乳癌の治療において、手術治療は主要な選択肢の一つである。しかしながら、乳癌の外科的手術には多くの場合リンパ節切除を伴い、術後に二次性リンパ浮腫を発症する場合がある。リンパ浮腫は、リンパ循環障害によって高度の浮腫をきたす難治性疾患であり、根治可能な治療法は存在しない。
肝細胞増殖因子(HGF)は、肝細胞の増殖促進のほかに種々の生理作用を発揮する。その一つにリンパ管新生促進作用があり、二次性リンパ浮腫にHGFの投与が有効であることが報告されている(特許文献1)。しかしながら、一部の癌にはHGFの受容体であるc-Metが発現し、癌の増殖促進に係わると考えられている。従って、二次性リンパ浮腫患者にHGFを投与する前に、当該患者がc-Met陽性腫瘍を有しているか否かを適切に判定することができれば、HGFによる理論的副作用、すなわち乳癌の再発や転移等の治療リスクを大幅に減らすことができると期待される。
WO2007/013603号公報
本発明者らは、乳癌細胞が産生するmiRNAを網羅的に解析することにより、乳癌細胞におけるc-Metの発現と関連性のあるmiRNAを見いだし、本発明を完成させた。
本発明は、一つの側面において、被験者におけるc-Met陽性癌を判定する方法であって、被験者由来の試料における、miR-29a、miR-221、miR-222、miR-191及びmiR-196aからなる群から選択される少なくとも1つのmiRNAの発現レベルを測定することを含む方法を提供する。
本発明は、一つの側面において、リンパ浮腫の治療方法であって、患者がc-Met陽性癌を有している可能性、あるいはc-Met発現の程度を判定し、当該可能性が一定以下の場合にHGF製剤を投与する工程を含む方法を提供する。
本発明は、一つの側面において、miR-29a、miR-221、miR-222、miR-191及びmiR-196aからなる群から選択される少なくとも1つのmiRNAを特異的に検出できるポリヌクレオチドを含む、c-Met陽性癌の判定用キットを提供する。
本発明は、一つの側面において、miR-29a、miR-221、miR-222、miR-191及びmiR-196aからなる群から選択される少なくとも1つのmiRNAを特異的に検出できるポリヌクレオチド、及びHGF製剤を含む、リンパ浮腫の治療用キットを提供する。
本発明は、一つの側面において、miR-29a、miR-221及びmiR-222からなる群から選択される少なくとも1つのmiRNAの発現及び/又は機能を増強する物質を含む癌治療用組成物を提供する。
各種乳癌細胞株におけるc-Metの発現を示す。各種乳癌細胞株を培養し、界面活性剤を含む緩衝液で細胞を溶解した細胞抽出液を調製した。ELISAにて調製した細胞抽出液のc-Metタンパク質量を測定した。ELISAは、抗ヒトc-Met抗体で構成されたキット(CSTジャパン株式会社)にて行った。細胞抽出液を調製する際に用いた界面活性剤を含む緩衝液をELISAにて試験した時の測定値をblankとした。各細胞抽出液の測定値は、blankの測定値を100として表した。 各種乳癌細胞株におけるリン酸化c-Metの発現を示す。各種乳癌細胞株を培養し、界面活性剤を含む緩衝液で細胞を溶解した細胞抽出液を調製した。ELISAにて調製した細胞抽出液のリン酸化c-Metタンパク質量を測定した。ELISAは、抗ヒトリン酸化c-Met抗体で構成されたキット(CSTジャパン株式会社)を用いて行った。細胞抽出液を調製する際に用いた界面活性剤を含む緩衝液をELISAにて試験した時の測定値をblankとした。各細胞抽出液の測定値は、blankの測定値を100として表した。 各種乳癌細胞株におけるmiR-29aの発現を、3D-Gene(登録商標)miRNAチップにより測定した結果を示す。黒カラムは、ELISAにてc-Metタンパク質の発現が高発現であると判断された細胞株、斜線カラムは、ELISAにてc-Metタンパク質の発現が低発現であると判断された細胞株、白カラムは、ELISAにてc-Metタンパク質の発現が検出限界以下であった細胞を示す。 各種乳癌細胞株におけるmiR-221の発現を、3D-Gene(登録商標)miRNAチップにより測定した結果を示す。黒カラムは、ELISAにてc-Metタンパク質の発現が高発現であると判断された細胞株、斜線カラムは、ELISAにてc-Metタンパク質の発現が低発現であると判断された細胞株、白カラムは、ELISAにてc-Metタンパク質の発現が検出限界以下であった細胞を示す。 各種乳癌細胞株におけるmiR-222の発現を、3D-Gene(登録商標)miRNAチップにより測定した結果を示す。黒カラムは、ELISAにてc-Metタンパク質の発現が高発現であると判断された細胞株、斜線カラムは、ELISAにてc-Metタンパク質の発現が低発現であると判断された細胞株、白カラムは、ELISAにてc-Metタンパク質の発現が検出限界以下であった細胞を示す。 各種乳癌細胞株におけるmiR-191の発現を、3D-Gene(登録商標)miRNAチップにより測定した結果を示す。黒カラムは、ELISAにてc-Metタンパク質の発現が高発現であると判断された細胞株、斜線カラムは、ELISAにてc-Metタンパク質の発現が低発現であると判断された細胞株、白カラムは、ELISAにてc-Metタンパク質の発現が検出限界以下であった細胞を示す。 各種乳癌細胞株におけるmiR-196aの発現を、3D-Gene(登録商標)miRNAチップにより測定した結果を示す。黒カラムは、ELISAにてc-Metタンパク質の発現が高発現であると判断された細胞株、斜線カラムは、ELISAにてc-Metタンパク質の発現が低発現であると判断された細胞株、白カラムは、ELISAにてc-Metタンパク質の発現が検出限界以下であった細胞を示す。 各種乳癌細胞株におけるmiR-29aの発現を、Q-PCR法により測定した結果を示す。HCC1954細胞の測定値を1とした時の相対値で示す。黒カラムは、ELISAにてc-Metタンパク質の発現が高発現であると判断された細胞株、斜線カラムは、ELISAにてc-Metタンパク質の発現が低発現であると判断された細胞株、白カラムは、ELISAにてc-Metタンパク質の発現が検出限界以下であった細胞を示す。 各種乳癌細胞株におけるmiR-221の発現を、Q-PCR法により測定した結果を示す。HCC1954細胞の測定値を1とした時の相対値で示す。黒カラムは、ELISAにてc-Metタンパク質の発現が高発現であると判断された細胞株、斜線カラムは、ELISAにてc-Metタンパク質の発現が低発現であると判断された細胞株、白カラムは、ELISAにてc-Metタンパク質の発現が検出限界以下であった細胞を示す。 各種乳癌細胞株におけるmiR-222の発現を、Q-PCR法により測定した結果を示す。HCC1954細胞の測定値を1とした時の相対値で示す。黒カラムは、ELISAにてc-Metタンパク質の発現が高発現であると判断された細胞株、斜線カラムは、ELISAにてc-Metタンパク質の発現が低発現であると判断された細胞株、白カラムは、ELISAにてc-Metタンパク質の発現が検出限界以下であった細胞を示す。 各種乳癌細胞株におけるmiR-196aの発現を、Q-PCR法により測定した結果を示す。HCC1954細胞の測定値を1とした時の相対値で示す。黒カラムは、ELISAにてc-Metタンパク質の発現が高発現であると判断された細胞株、斜線カラムは、ELISAにてc-Metタンパク質の発現が低発現であると判断された細胞株、白カラムは、ELISAにてc-Metタンパク質の発現が検出限界以下であった細胞を示す。 各種乳癌細胞株におけるmiR-191の発現を、Q-PCR法により測定した結果を示す。HCC1954細胞の測定値を1とした時の相対値で示す。黒カラムは、ELISAにてc-Metタンパク質の発現が高発現であると判断された細胞株、斜線カラムは、ELISAにてc-Metタンパク質の発現が低発現であると判断された細胞株、白カラムは、ELISAにてc-Metタンパク質の発現が検出限界以下であった細胞を示す。 c-Met高発現乳癌細胞株HC1954の増殖に対するmiR-221 mimicおよびmiR-222 mimicの作用を示す。数値はコントロールの増殖に対する%である。 c-Metを発現しない乳癌細胞株ZR-75-1の増殖に対するmiR-221 mimicおよびmiR-222 mimicの作用を示す。数値はコントロールの増殖に対する%である。 c-Met高発現乳癌細胞株HCC1806またはHCC1954を移植したヌードマウスの血中miR-29レベルを示す。各値は癌を移植していないコントロールマウスのレベルを1とした相対値である。 c-Met高発現乳癌細胞株HCC1806またはHCC1954を移植したヌードマウスの血中miR-221レベルを示す。各値は癌を移植していないコントロールマウスのレベルを1とした相対値である。 c-Met高発現乳癌細胞株HCC1806またはHCC1954を移植したヌードマウスの血中miR-222レベルを示す。各値は癌を移植していないコントロールマウスのレベルを1とした相対値である。
本発明は、一つの側面において、被験者におけるc-Met陽性癌を判定する方法であって、被験者由来の試料における、miR-29a、miR-221、miR-222、miR-191及びmiR-196aからなる群から選択される少なくとも1つのmiRNAの発現レベルを測定することを含む方法を提供する。発明者らは、哺乳動物において癌細胞に発現するmiRNAが血中に移行し、血中のmiRNA発現レベルを測定することによって癌細胞miRNAを知ることができることを確認した。
本発明が提供するする方法では、被験者由来の試料中のmiRNAの発現レベルが測定される。測定されるmiRNAは、miR-29a、miR-221、miR-222、miR-191、miR-196a及びそれらの組み合わせが挙げられる。その他のmiRNAの発現レベルの測定を組み合わせてもよい。測定されるmiRNAは、成熟型miRNA、pri-miRNA、pre-miRNA又はそれらの組み合わせであってもよい。miRNAは、一本鎖RNAでも二本鎖RNAであってもよい。miR-29a、miR-221、miR-222、miR-191、miR-196aの成熟型miRNA、pri-miRNA、pre-miRNAの情報は公知であり、例えば、サンガー研究所が作成しているmiRBaseデータベース:http://microrna.sanger.ac.uk/に開示されている。
本発明が提供する方法の一つの実施態様では、被験者由来の試料中の成熟型miR-29a、成熟型miR-221、成熟型miR-222、成熟型miR-191及び成熟型miR-196aからなる群から選択される少なくとも1つの成熟型miRNAの発現レベルを測定する。例えば、以下の配列を有する成熟型miR-29a、miR-221、miR-222、miR-191及びmiR-196aからなる群から選択される少なくとも1つのmiRNAを測定する。
hsa-miR-29a:uagcaccaucugaaaucgguua (配列番号1)
hsa-miR-221:agcuacauugucugcuggguuuc (配列番号2)
hsa-miR-222:agcuacaucuggcuacugggu (配列番号3)
hsa-miR-191:caacggaaucccaaaagcagcug (配列番号4)
hsa-miR-196a:uagguaguuucauguuguuggg (配列番号5)
また、本発明の方法では、上記配列と90%以上又は95%以上の同一性を有する配列からなるmiRNAから選択される少なくとも1つのmiRNA、上記配列から1、2、又は3個の塩基が付加、置換又は削除されている配列からなるmiRNAから選択される少なくとも1つのmiRNA、又は上記配列を含むmiRNAから選択される少なくとも1つのmiRNAを測定してもよい。
本明細書において、c-Met陽性癌とは、c-Metタンパク質を発現している癌である。c-MetはHGFの受容体である。
被験者はヒトである。被験者由来の試料としては、限定はされないが、被験者から採取された細胞(例えば、乳腺細胞)、血液、唾液、尿及び組織(例えば、乳腺)が挙げられる。好ましくは被験者の血液が用いられる。
生体試料中に含まれるmiRNAの発現レベルの測定は、公知の方法により行えばよい。例えば、定量的PCR(例えば、定量的RT-PCR)、ハイブリダイゼーションアッセイ(例えば、核酸アレイ、ノーザンブロット法、in situハイブリダイゼーション)等が挙げられる。例えば、TaqMan(登録商標)MicroRNA Cells-to-CTTM Kitなどの、市販のキットを用いてもよい。
miRNA発現レベルを測定する定量的PCRとしては、例えば、リアルタイムPCR法を採用することができる。この場合、各miRNAを含む遺伝子断片を増幅することができるオリゴヌクレオチドであるフォワードプライマーとリバースプライマー、そして、該フォワードプライマーと該リバースプライマーで増幅される遺伝子断片に結合するオリゴヌクレオチドであってレポーター蛍光色素とクエンチャー蛍光色素が結合したプローブが使用され得る。各miRNAに特異的なプライマーおよびプローブは市販されており、目的とする配列にあわせて適宜選択すればよい。レポーター蛍光色素としては、例えば、FAM(6−カルボキシ−フルオレセイン)のようなフルオレセイン系蛍光色素が使用でき、クエンチャー蛍光色素としては、TAMRA(6−カルボキシ−テトラメチル−ローダミン)のようなローダミン系蛍光色素が使用できる。リアルタイムPCR法としては、TaqMan(登録商標)プローブを用いた方法を使用でき、アプライドバイオシステムズ社から必要な試薬を入手することができる。また、上記プローブに変えて、二本鎖DNAに結合することで蛍光を発する試薬:インターカレーター(例えばSYBR(登録商標) Green I)を使用することができる。SYBR(登録商標) Greenを用いる場合は、キアゲン社が提供するQuantiTect SYBR(登録商標) Green PCR Kitを使用することができる。
一つの実施態様に置いて、リアルタイムPCR法は、逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(reverse transcription PCR; RT-PCR)法を利用した方法であり得る。RT-PCR法は、試料よりtotal RNAを調製し、逆転写酵素により逆転写反応を行った後で上記TaqMan(登録商標)プローブまたはSYBR(登録商標) Greenを用いたPCR等のPCRを行うことにより実施できる。このようなRT-PCR法であるリアルタイムPCR法は、市販のキットを用いて実施してもよく、例えば、Applied Biosystems社製のTaqMan(登録商標)MicroRNA Reverse Transcription kitやTaqMan(登録商標)MicroRNA Assays等、およびキアゲン社製のmiScript II RT KitやmiScript SYBR(登録商標) Green PCR Kit等のキットを用いてもよい。
例えば、hsa-miR-29a、hsa-miR-221、hsa-miR-222、hsa-miR-191及びhsa-miR-196aの発現レベルを測定する定量的PCRに用いることができるプライマーセットとして、キアゲン社が提供する下記のものを使用することができる。
miR-29a: MS00003262
miR-221: MS00003857
miR-222: MS00007609
miR-191: MS00003682
miR-196a: MS00031563
核酸アレイを用いたmiRNA発現レベルの測定は、公知の方法を使用して達成できる(例えば、WO2008/054828、Ye et al., Nat. Med. 9(4):416-423, 2003、Calin et al., N. Engl. J. Med. 353(17):1793-1801, 2005を参照)。miRNA発現レベル測定用の核酸アレイは、例えば、目的のmiRNAを検出するアンチセンス鎖オリゴヌクレオチドをプラスチックやガラス等の基板上に固定させることにより作成できる。アンチセンス鎖オリゴヌクレオチドは標識及び/又は修飾されていてもよい。例えば、蛍光物質や発光物質で標識されていてもよく、2'-O-メチル修飾またはLNA修飾(locked nucleic acid修飾)されていてもよい。また、市販のmiRNA検出用アレイを用いてもよい。このようなアレイには、3D-gene(登録商標)miRNA Oligo chip(東レ株式会社)が挙げられる。
具体的な核酸アレイを用いたmiRNA発現レベルの測定方法の例としては、被験者由来の試料から抽出したtotal RNAを、T4 RNAリガーゼ等を用いて蛍光標識し、アレイ上の捕捉プローブにハイブリダイズさせ、ハイブリダイゼーション反応後、洗浄したチップをスキャナー等で読み取って蛍光シグナルを検出する方法が挙げられる。また、被験者由来の試料から抽出したtotal RNAを、アレイ上の捕捉プローブにハイブリダイズさせ、捕捉されたmiRNAに特異的な検出用の蛍光標識オリゴヌクレオチドプローブを更にハイブリダイズさせ、ハイブリダイゼーション反応後、洗浄したチップをスキャナー等で読み取って蛍光シグナルを検出してもよい。捕捉プローブ及び/又は検出プローブは標識及び/又は修飾されていてもよい。
核酸アレイを用いてhsa-miR-29a、hsa-miR-221、hsa-miR-222、hsa-miR-191及びhsa-miR-196aの発現レベルを測定するために使用できるプローブとしては、例えば、以下の配列を有するもの、以下の配列と90%以上又は95%以上の同一性を有するもの、又は1、2又は3個の塩基を置換、付加又は削除されている配列を有するものが挙げられる。
hsa-miR-29a:
プローブ: atggtgcta(配列番号6)及び/又はaaccgatttcag(配列番号7)
hsa-miR-221:
プローブ: caatgtagc(配列番号8)及び/又はgaaacccagcag(配列番号9)
hsa-miR-222:
プローブ: agatgtagc(配列番号10)及び/又はgagacccagtag(配列番号11)
hsa-miR-191:
プローブ: gattccgtt(配列番号12)及び/又はagctgcttttgg(配列番号13)
hsa-miR-196a:
プローブ: aaactacct(配列番号14)及び/又はccaacaacatga(配列番号15)
ノーザンブロット法、in situハイブリダイゼーション法は、公知の方法により実施できる。使用できるプローブの例としては、上記核酸アレイに使用できるプローブが挙げられる。
一つの実施態様において、被験者由来の試料におけるmiR-29a、miR-221、miR-222、miR-191及びmiR-196aからなる群から選択される少なくとも1つのmiRNAの発現レベルを、予め作成したc-Met発現量と当該miRNAの発現レベルとの相関に当て嵌め、被験者におけるc-Met発現の有無ならびに発現量を判定する。
c-Met発現量と当該miRNAの発現レベルとの相関は、癌患者、例えば乳癌患者と健常人由来の試料より作成することができる。癌患者の癌におけるc-Met発現の有無並びに発現の程度は、例えば乳癌患者より切除された癌組織片を用いて、常套の方法、例えばELISAにより測定することができる。c-Metタンパク質を測定するためのELISAキットは市販されており、例えば本願実施例にて用いたキットを利用可能である。また、健常人はc-Metを発現する癌を有していないと考えられる。
c-Metを発現する癌を有する対象においては、当該対象由来のmiR-29a、miR-221及びmiR-222からなる群から選択される少なくとも1つのmiRNAの発現レベルは比較的高く、一方、miR-191及びmiR-196aからなる群から選択される少なくとも1つのmiRNAの発現レベルは比較的低い。十分な数の検体より得られたc-Met発現量と、同一対象由来の試料におけるmiR-29a、miR-221、miR-222、miR-191及びmiR-196aからなる群から選択される1または複数のmiRNAの発現プロファイルとの相関式を予め得ておく。被験者由来の試料のmiRNAの発現プロファイルを測定し、予め得た相関式に当て嵌めて、被験者におけるc-Met陽性癌の発現の有無ならびにc-Met発現の程度を判定する。「十分な数の検体」としては、例えば100例以上、150例以上、200例以上が例示される。
本発明が提供するc-Met陽性癌の判定方法の一つの実施態様では、miRNAの発現レベルの測定の前に試料(例えば、被験者由来の試料、及び/又は対照試料)からmiRNAを抽出する工程を更に含んでもよい。当業者は、miRNAを含む核酸を、公知の方法に基づいて抽出できる。例えば、当業者はフェノールに基づく抽出法にしたがって、RNAを回収することができる。この際、細胞及び組織を破壊する為の変成剤及び/又はRNase阻害剤を使用してRNAを抽出してもよい。
また、miRNAの抽出は市販のキットを用いてもよく、例えば、RNeasy mini kit(キアゲン社)、mirVana RNA Isolation kit(Life Technologies社)を使用してもよい。
本発明が提供する方法により、c-Met陽性癌の有無並びにc-Met発現の程度を判定することができる。かかる方法を用いて、癌手術後に発症したリンパ浮腫患者のうち、HGF製剤、例えば、HGFタンパク製剤またはHGF遺伝子治療剤(例えば、コラテジェン(登録商標))による理論的副作用である、乳癌の再発や転移の発症リスクの高い患者を事前に特定でき、リンパ浮腫治療にHGF製剤を用いるか否かを判断することができる。
よって本発明は一つの実施態様として、リンパ浮腫患者においてHGF製剤による治療対象となる患者を選定する方法を提供する。
本発明は、一つの側面において、リンパ浮腫の治療方法であって、患者がc-Met陽性癌を有しているか否かを判定する工程、及びHGF製剤を投与する工程を含む方法を提供する。
患者がc-Met陽性癌を有しているか否かの判定は、上記で説明したc-Met陽性癌の判定方法を用いることができる。十分な数のデータから予め閾値を定めておき、患者由来の試料におけるmiRNAの発現レベルから計算されるc-Met発現量がその閾値を超えるか否かでHGF製剤の投与対象とするか否かを判定すればよい。c-Met発現量が閾値を超えない場合に、c-Met陽性癌を有していないと判定され、HGF製剤を投与することによりリンパ浮腫を治療することができる。
HGF製剤は、HGFタンパク質、HGF遺伝子、またはそれらの改変体を含む製剤であり得、例えば、HGF遺伝子治療剤であるコラテジェン(登録商標)である。改変体は、HGFのリンパ管新生促進作用を発揮するHGFタンパク質、またはそれをコードする遺伝子であり得る。
リンパ浮腫の例には、原発性(一次性)リンパ浮腫及び続発性(二次性)リンパ浮腫が挙げられる。続発性リンパ浮腫には、例えば癌の外科手術後に発症するリンパ浮腫が挙げられ、例えば、乳癌摘出後に発症するリンパ浮腫が挙げられる。
本発明が提供するc-Met陽性癌の判定方法、及びリンパ浮腫の治療方法であって、c-Met陽性癌を有しているかを判定する工程及び、c-Met陽性癌を有していないと判定された場合にHGF製剤を投与する工程を含む方法に使用するキットもまた、本発明により提供される。
一つの側面において、miR-29a、miR-221、miR-222、miR-191及びmiR-196aからなる群から選択される少なくとも1つのmiRNAを特異的に検出できるポリヌクレオチドを含む、c-Met陽性癌の判定キットを提供する。
一つの側面において、miR-29a、miR-221、miR-222、miR-191及びmiR-196aからなる群から選択される少なくとも1つのmiRNAを特異的に検出できるポリヌクレオチド、及びHGF製剤を含む、リンパ浮腫の治療用キットを提供する。
miR-29a、miR-221、miR-222、miR-191及びmiR-196aからなる群から選択される少なくとも1つのmiRNAを特異的に検出できるポリヌクレオチドは、これらmiRNAの公知の配列情報(例えば、配列番号1−5に記載の配列情報)に基づいて、当業者が適宜作成することができる。例えば、検出法としSYBR(登録商標) Greenを利用したRT-PCR法を使用する場合、hsa-miR-29a、hsa-miR-221、hsa-miR-222、hsa-miR-191及びhsa-miR-196aの発現レベルを測定する定量的PCRに用いることができるプライマーセットとして、キアゲン社が提供する上記のものを使用することができる。
また、検出法として核酸アレイを使用する場合は、hsa-miR-29a、hsa-miR-221、hsa-miR-222、hsa-miR-191及びhsa-miR-196aの発現レベルを測定する核酸アレイに用いることができるプローブとしては、以下の配列を有するもの、以下の配列と90%以上又は95%以上の同一性を有するもの、又は1、2又は3個の塩基を置換、付加又は削除されている配列を有するものが挙げられる。これらプローブは、標識(例えば、蛍光物質や発光物質で標識)されていてもよく、修飾(例えば、2'-O-メチル修飾またはLNA修飾(locked nucleic acid修飾))されていてもよく、修飾については、各オリゴヌクレオチドのうち、1〜6個のいずれかの塩基が修飾されていてもよい。
hsa-miR-29a:
プローブ: atggtgcta(配列番号6)及び/又はaaccgatttcag(配列番号7)
hsa-miR-221:
プローブ: caatgtagc(配列番号8)及び/又はgaaacccagcag(配列番号9)
hsa-miR-222:
プローブ: agatgtagc(配列番号10)及び/又はgagacccagtag(配列番号11)
hsa-miR-191:
プローブ: gattccgtt(配列番号12)及び/又はagctgcttttgg(配列番号13)
hsa-miR-196a:
プローブ: aaactacct(配列番号14)及び/又はccaacaacatga(配列番号15)
一つの実施態様としては、配列番号7、9、11、13、15のオリゴヌクレオチドは、その構成する塩基のうち1〜6塩基がLNA修飾されて、マイクロアレイの支持体に結合して、各miRNAを捕捉する為に使用されてもよく、配列番号7、9、11、13、15のオリゴヌクレオチドは、蛍光物質で標識されて、各miRNAを検出する為に使用されてもよい。
核酸アレイに使用するプローブは、DNAでもRNAでもよく、当業者は公知の方法に従って、製造することができる。
本発明が提供するc-Met陽性癌の判定用キットには、使用するmiRNAの検出法に応じて、RT-PCRに必要な試薬(例えば、reverse transcriptase、hsa-miR-29a、hsa-miR-221、hsa-miR-222、hsa-miR-191及びhsa-miR-196aの少なくとも1つのmiRNAを増幅する為のプライマー、プローブ、dNTPs、DNAポリメラーゼ)または核酸アレイに必要な試薬(例えば、hsa-miR-29a、hsa-miR-221、hsa-miR-222、hsa-miR-191及びhsa-miR-196aの少なくとも1つのmiRNAを捕捉する為のプローブを結合したマイクロアレイ、ブロッティング緩衝液)が含まれてもよい。
本発明が提供するc-Met陽性癌の判定用キットを使用することにより、対象におけるc-Metの発現の程度を判定することができる。
本発明が提供するc-Met陽性癌の診断用キットに、さらにHGF製剤(例えば、HGFタンパク質製剤またはHGF遺伝子治療剤(例えば、コラテジェン(登録商標))を含めて、リンパ浮腫の治療用キットとして提供できる。
リンパ浮腫の例には、原発性(一次性)リンパ浮腫及び続発性(二次性)リンパ浮腫が挙げられる。続発性リンパ浮腫には、例えば癌の外科手術後に発症するリンパ浮腫が挙げられ、例えば、乳癌摘出後に発症するリンパ浮腫が挙げられる。
本発明は、一つの側面において、miR-29a、miR-221及びmiR-222からなる群から少なくとも1つ選択されるmiRNAの発現及び/又は機能を増強する物質を含む、癌治療用組成物を提供する。治療対象の癌は、c-Metを発現する癌であり、例えば乳癌が例示される。
miRNAの発現及び/又は機能を増強する発現及び/又は機能を増強する物質としてはmiRNA mimicが挙げられるが、これに限定されない。
miRNA mimicとして、miRNAを修飾してその活性を高めたものが種々市販されている。例えば標的miRNAのヌクレオチド配列と70%以上、80%以上、90%以上、95%以上または100%の配列同一性を有し、リボヌクレアーゼ等の各種分解酵素への抵抗性を付与するために2'-O-メチル化やLNA修飾された1本鎖又は2本鎖RNA、リボヌクレアーゼ等の各種分解酵素への抵抗性を付与するために2'-O-メチル化やLNA修飾されたpre-miRNA又はリボヌクレアーゼ等の各種分解酵素への抵抗性を付与するために2'-O-メチル化やLNA修飾されたpri-miRNAであり得る。
本発明のmiRNAの発現及び/又は機能を増強する物質として、好ましくはmiR-29a、miR-221及びmiR-222からなる群から選択される1または複数のmiRNAのmimicである。
核酸である上記miRNAの発現及び/又は機能を増強する物質は、プロモーターと作動可能な形で連結した当該核酸を含む、発現ベクターであってもよい。使用できるベクターの例としては、レトロウイルスベクターが挙げられ、プロモーターの例としては、RNA polymerase III (pol III) 系のプロモーター(human H1、human U6、またはmouse U6)が挙げられる。
本発明が提供するmiRNAの発現及び/又は機能を増強する物質は、上記核酸(例えば、miRNA mimicまたはmiRNA mimicを発現するベクター)に加え、医薬上許容される担体を含んで調製することができる。医薬上許容される担体としては、例えば、ショ糖、デンプン等の賦形剤、界面活性剤等の分散剤、安息香酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム等の保存剤、クエン酸、クエン酸ナトリウム等の安定剤、水、生理食塩水等の希釈剤等が挙げられるが、これらに限定されない。本発明が提供するmiRNAの発現及び/又は機能を増強する物質は、上記核酸(例えば、miRNA mimicまたはmiRNA mimicを発現するベクター)を0.001〜50mg、例えば、1〜10mg含んでもよい。
本発明が提供するmiRNAの発現及び/又は機能を増強する物質は、上記核酸(例えば、miRNA mimicまたはmiRNA mimicを発現するベクター)に加え、上記核酸の腫瘍細胞内への導入を促進するために使用できる、アテロコラーゲンやリポフェクトアミンを含むキットであってもよい。
本発明が提供するmiRNAの発現及び/又は機能を増強する物質は、任意の方法により投与することができ、例えば、静脈内投与、筋肉内投与、皮下投与により局所投与され得る。本発明が提供するmiRNAの発現及び/又は機能を増強する物質を投与することにより、癌、例えば、c-Met陽性乳癌を治療することができる。
以下、実施例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
実施例1:各種乳癌細胞株におけるc-Met発現の検討
(1)
下表に記載する19種類の乳癌細胞株を培養し、cell lysis buffer(20 mM Tris-HCl (pH 7.5), 150 mM NaCl, 1 mM Na2EDTA, 1 mM EGTA, 1% Triton, 2.5 mM sodium pyrophosphate, 1 mM beta-glycerophosphate, 1 mM Na3VO4, 1 μg/ml leupeptin,
使用直前に1 mM PMSFを添加。)を用いcell lysateを調製し、ELISAにてc-Metタンパク質量を測定した。なお、cell lysateの代わりにcell lysis bufferを用い測定した測定値をblankとした。
Figure 2018099031
その結果、c-Metの発現レベルが高い細胞株として、HCC1954細胞、HCC1806細胞、MDA-MB-231細胞及びMDA-MB-436細胞が見いだされ、c-Metの発現レベルが低い細胞株として、AU565細胞、HCC38細胞及びHCC1143細胞が見いだされた(図1)。他の細胞株については、c-Metの発現が検出限界以下であった(図1)。c-Met発現と乳癌のタイプとの関連について検討したところ、Luminal typeの細胞株ではc-Metの発現は認められなかった一方,HER2 typeの細胞株では6種類中2種類で、Triple Negative typeの細胞株では6種類中5種類でc-Metの発現を認めた(図1)。乳癌の予後、悪性度についてはLuminal、Her2、Triple Negative typeの順で悪くなるとされており、c-Met発現と乳癌の病態との関連性が示された。
(2)
19種類の乳癌細胞株を増殖条件下で培養した時のc-Metのリン酸化状態を、c-Metリン酸化抗体を用いたELISAで測定した。なお、cell lysateの代わりにcell lysis bufferを用い測定した測定値をblankとした。
その結果、c-Metのリン酸化を認めない細胞株とc-Metが恒常的にリン酸化されている細胞株(AU565細胞及びHCC1806細胞)が存在した(図2)。
(3)
19種類の乳癌細胞株を培養し、HGF(1〜30 ng/ml)が増殖を惹起するか否かを検討した。その結果、HGFによる増殖能を示す細胞株(AU565細胞及びHCC1954細胞)と増殖能を示さない細胞株が存在し、増殖が認められる細胞株はc-Metを発現した細胞株であり、c-Metを発現しない細胞株で増殖は認められなかった(表2)。
(4)
19種類の乳癌細胞株を培養し、HGF(1〜100 ng/ml)が遊走を惹起するか否かを検討した。遊走能の評価はOris Cell Migration kit(Platypus Technologies, LLC)を用いて解析した。その結果、c-Metを発現する細胞株では、遊走能を示す細胞株と遊走能を示さない細胞株が存在し、c-Metを発現しない細胞株で遊走能は認められなかった(表2)。HGFによる細胞増殖あるいは遊走が起こるためには、細胞でのc-Met発現が必須であることが確認できた。また、c-Metが発現した乳癌細胞にHGFが作用した場合においても、必ずしも乳癌細胞を増殖あるいは遊走させるばかりではないことが示された。
(5)
19種類の乳癌細胞株を培養し、mRNAを調製し、TaqMan(登録商標) Gene Expression Assays(Assay ID:Hs01565584_m1)を用いるQ-PCR法にてc-Metの遺伝子発現レベルを解析した。
その結果、ELISAによりc-Metタンパク質を検出した細胞株は全てc-Metの遺伝子発現が確認された(表2)。SK-BR-3細胞については、ELISAによりc-Metタンパク質は検出されなかったが、c-Metの遺伝子発現が確認された(表2)。これは、ELISAよりQ-PCR法が高感度であることが理由であると考えられた。SK-BR-3では微量ながらc-Metが発現していることが示された。
Figure 2018099031
実施例2: miRNAチップを用いた乳癌細胞株でのmiRNA発現検討
c-Metの発現解析の結果から、c-Metの発現が検出限界以下の細胞株(BT-483細胞、HCC1500細胞、MDA-MB-453細胞、ZR-75-1細胞及びDU4475細胞)、c-Metの発現が低い細胞株(AU565細胞、HCC38細胞及びHCC1143細胞)、c-Metの発現が強い細胞株(HCC1954細胞及びHCC1806細胞)を選び、細胞内miRNAをチップで網羅的に解析した。
miRneasy Mini Kit(QIAGEN)を用いてmiRNAを含むtotal RNAを抽出し、3D-Gene(登録商標)miRNAチップを用いて約2500種のmiRNAの中から網羅的解析を行い、チップ画像を数値化し、発現比の算出、変動遺伝子解析、クラスター解析を実施した。また細胞株10種のうち、4種(HCC1954細胞、HCC1806細胞、AU565細胞及びHCC1143細胞)については培養上精中のmiRNAについてもチップ解析を行った。
その結果、c-Metの発現と連動して発現が変化する傾向にある3種のmiRNA(miR-29a、miR-221及びmiR-222、図3−5)及びc-Metの発現に反して連動する傾向にある2種のmiRNAを見いだした(miR-191及びmiR-196a、図6−7)。これらmiRNAのc-Metの発現と連動性は、細胞内miRNA発現と培養上清中miRNA発現で同様に認められた。5種類(miR-29a、miR-221、miR-222、miR-191及びmiR-196a)は、c-Met発現を検索するために有用であることが示された。
実施例3: Q-PCR法を用いた乳癌細胞株でのmiRNA発現検討
miRNAチップを用いた解析から見出された、c-Metの発現と連動して発現が変化する傾向にある3種のmiRNA及びc-Metの発現に反して連動する傾向にある2種のmiRNAについて、Q-PCR法により乳癌細胞株での発現を検討した。
19種類の乳癌細胞株を培養し、miRneasy Mini Kit(QIAGEN)を用いてmiRNAを含むtotal RNAを抽出し、miScript II RT Kit(QIAGEN)(miScript HiSpec Bufferを使用)を用いて取扱説明書に従って逆転写反応を行い、得られたcDNAを鋳型として、QuantiTect SYBR(登録商標) Green PCR Kitsを用いて取扱説明書に従ってQ-PCRを行った。使用したプライマーセットのカタログナンバーを以下に記載する。
miR-29a: MS00003262
miR-221: MS00003857
miR-222: MS00007609
miR-191: MS00003682
miR-196a: MS00031563
その結果、miR-29a、miR-221及びmiR-222については、c-Metの発現との相関性が認められ(図8−10)、miR-191及びmiR-196aについては、c-Metの発現との逆相関性が認められた(図11−12)。
実施例4:乳癌細胞株(HCC1954およびZR-75-1の増殖抑制
乳癌細胞株HCC1954およびZR-75-1を培養し、以下の配列のmiRNA mimic(5-20 nM)が乳癌細胞の増殖を抑制するか否かを検討した。実施例1において確認されたように、HCC1954はc-Met高発現乳癌細胞株であり、ZR-75-1はc-Met非検出乳癌細胞株である。
使用したmiRNA mimic は下記配列のmimicである。
miR-221 mimic:
agcuacauugucugcuggguuuc (配列番号2)
miR-222 mimic:
agcuacaucuggcuacugggu (配列番号3)
上記miRNA mimicは株式会社ジーンデザインから入手した。
miRNA mimic無添加の乳癌細胞をコントロールとし、Negative control(EXIQON社)をNegativeコントロールとして使用した。
その結果、両miRNA mimicはc-Met高発現乳癌細胞株(HCC1954)の増殖を抑制した(図13)が、c-Met非検出乳癌細胞株(ZR-75-1)の増殖に対しては何ら作用を示さなかった(図14)。
実施例5:ヒト乳癌細胞株移植試験
7週齢、体重17.1〜19.8 gのヌードマウス(♀)各群5匹の右側第二乳頭部皮下に、c-Met高発現乳癌細胞株であるHCC1806およびHCC1954を(1×108個)移植した。移植後20日にマウスより採血し、血清を分取した。得られた血清より常法に従ってtotal RNAを抽出し、実施例3と同様の方法にてQ-PCRにてmiR-29a、miR-221及びmiR-222の発現レベルを調べ、その平均値を得た。コントロールとして、癌移植を行わないヌードマウスの血清中の各miRNAを測定した。結果を図15〜17に示す。
c-Met高発現癌を移植したマウスにおいては、細胞株と同様、血中miR-29a、miR-221及びmiR-222全ての発現が亢進した。本結果より、哺乳動物において、癌細胞に発現するmiRNAが血中に移行し、血中のmiRNA発現レベルを測定することによって癌細胞のmiRNAの発現レベルを知ることができることが確認された。

Claims (16)

  1. 被験者がc-Met陽性癌を有している可能性を判定する方法であって、被験者由来の試料における、miR-29a、miR-221、miR-222、miR-191及びmiR-196aからなる群から選択される少なくとも1つのmiRNAの発現レベルを測定することを含む方法。
  2. 被験者が、乳癌の切除手術を受けた経験のある患者である、請求項1に記載の方法。
  3. 被験者が、リンパ浮腫患者である請求項1または2記載の方法。
  4. 被験者由来の試料よりmiRNAを抽出する工程を含む、請求項の1−3のいずれかに記載の方法。
  5. ハイブリダイゼーションアッセイにより試料におけるmiRNAの発現レベルを測定する、請求項1−4のいずれかに記載の方法。
  6. 定量的PCRにより試料におけるmiRNAの発現レベルを測定する、請求項1−4のいずれかに記載の方法。
  7. 請求項1−6いずれかに記載の方法により、被験者であるリンパ浮腫患者がc-Met陽性癌を有している可能性を判定すること、
    患者がc-Met陽性癌を有している可能性が予め定めた値以下の場合に、当該患者をHGF製剤による治療対象と判定する、リンパ浮腫患者のHGF製剤による治療対象の判定方法。
  8. HGF製剤が、HGF遺伝子治療薬である、請求項7に記載の方法。
  9. リンパ浮腫が、二次性リンパ浮腫である、請求項7または請求項8に記載の方法。
  10. miR-29a、miR-221、miR-222、miR-191及びmiR-196aからなる群から選択される少なくとも1つのmiRNAを特異的に検出できるポリヌクレオチドを含む、対象がc-Met陽性癌を有している可能性を判定するためのキット。
  11. miR-29a、miR-221、miR-222、miR-191及びmiR-196aからなる群から選択される少なくとも1つのmiRNAを特異的に検出できるポリヌクレオチド、及びHGF製剤を含む、リンパ浮腫の治療用キット。
  12. HGF製剤が、HGF遺伝子治療薬である、請求項11に記載のキット。
  13. リンパ浮腫が、二次性リンパ浮腫である、請求項11または請求項12に記載のキット。
  14. miR-29a、miR-221、及びmiR-222からなる群から選択される少なくとも1つのmiRNAの発現及び/又は活性を増強する物質を含む、c-Met陽性癌治療用組成物。
  15. 癌がc-Met陽性乳癌である、請求項14に記載の組成物。
  16. miR-29a mimic、miR-221 mimic、及びmiR-222 mimicからなる群から選択される少なくとも1つを含有する、請求項14または15に記載の組成物。
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