以下、本発明のバイオガス発生装置を適用した実施の形態について説明する。
<実施の形態>
図1は、バイオガス発生装置100を示す断面図である。図2は、図1に示すバイオガス発生装置100のA1−A2矢視断面を示す図である。なお、図1は、図2におけるB1−B2矢視断面に相当する位置における、バイオガス発生装置100の全体の断面を示す。
図1及び図2では、図示するように直交座標系であるXYZ座標系を定義する。ここでは一例として、XY平面が水平面であり、Z軸正方向が鉛直上方である。平面視とは、Z軸正方向からXY平面を見ることをいう。
バイオガス発生装置100は、主な構成要素として、処理槽110を含む。バイオガス発生装置100は、処理槽110以外に、処理層110で生成されるバイオガスを処理する装置や処理層110の排水を処理する装置等を含むが、図1では省略する。
処理槽110は、底板111α、111β、側壁112、天板113α、113β、隔壁115、116、117、U字管118、邪魔板119A、仕切板119B、仕切ボード119C、ポンプ140、及びパイプ141を有する。
ここでは、処理槽110のうち、仕切板114αよりもX軸負方向側を前処理槽120と称し、仕切板114βよりもX軸正方向側を発酵槽130と称す。前処理槽120と発酵槽130は、パイプ141を介して接続されており、パイプ141にはポンプ140が設けられている。
前処理槽120は、Z軸方向においては、底板111αと天板113αとによって挟まれており、発酵槽130は、Z軸方向においては、底板111βと天板113βとの間に挟まれている。また、前処理槽120と発酵槽130は、Z軸方向においては、底板111α、111βと天板113α、113βとの間にそれぞれ延在している。
底板111α、111βは、図2に示すように、それぞれ、平面視で矩形状の板状部材であり、処理槽110の底部に位置する。底板111α、111βは、処理槽110の底である。
側壁112は、側壁112A、112Bα、112Bβ、112C、112Dα、112Dβ、及び112Gα、112Gβを有する(図2参照)。側壁112A、112Bα、112Dα、及び112Gαは、底板111αの四辺に沿ってこの順に平面視で矩形環状に配置されている。側壁112Bβ、112C、112Dβ、及び112Gβは、底板111α、111βの四辺に沿ってこの順に平面視で矩形環状に配置されている。
側壁112A、112Bα、112Bβ、112C、112Dα、112Dβ、及び112Gα、112Gβは、それぞれ、矩形状の板状部材であり、処理槽110の側面を囲んでいる。側壁112Aには、バイオマス原料を含むスラリーを処理槽110に流入させる流入口112Eが設けられている。流入口112Eは、Z軸方向において、天板113αに近い位置に設けられている。
また、側壁112Cには、液体を排出する排出口112Fが設けられている。排出口112Fは、Z軸方向において、天板113βに近い位置に設けられている。また、側壁112Gα、112Gβの底部には、それぞれ、開口部112Hα、112Hβが設けられており、開口部112Hα、112Hβの間は、パイプ141によって接続されている。すなわち、前処理槽120と発酵槽130は、パイプ141によって連通されている。
なお、以下では、側壁112A、112Bα、112Bβ、112C、112Dα、112Dβ、及び112Gα、112Gβを特に区別しない場合には、単に側壁112と称す。
天板113α、113βは、平面視で矩形状の板状部材であり、処理槽110の上面に設けられる。ここでは、一例として、天板113α、113βの平面視での大きさは、それぞれ、底板111α、111βと等しいこととする。天板113βには、バイオガスを排出する排出口113Aが設けられている。
底板111α、111β、側壁112、及び天板113α、113βが金属製の場合は、溶接又はねじ止め等によって固定すればよい。底板111α、111β、側壁112、及び天板113α、113βが樹脂製の場合は、接着又はねじ止め等によって固定すればよい。また、底板111α、111β、側壁112、及び天板113α、113βの表面には、必要に応じて塗装又は防腐処理を施せばよい。
隔壁115、116、117、U字管118、邪魔板119A、仕切板119B、及び仕切ボード119Cは、底板111α、111β、側壁112、及び天板113α、113βによって構築される内部空間に配設される。隔壁115、116、117、U字管118、邪魔板119A、仕切板119B、及び仕切ボード119Cは、例えば、金属製又は樹脂製である。
隔壁115、116、117、U字管118、邪魔板119A、仕切板119B、及び仕切ボード119Cが金属製の場合は、溶接又はねじ止め等によって固定すればよい。隔壁115、116、117、U字管118、邪魔板119A、仕切板119B、及び仕切ボード119Cが樹脂製の場合は、接着又はねじ止め等によって固定すればよい。また、隔壁115、116、117、U字管118、邪魔板119A、仕切板119B、及び仕切ボード119Cの表面には、必要に応じて塗装又は防腐処理を施せばよい。
ポンプ140は、開口部112Hα、112Hβの間を接続するパイプ141に設けられている。ポンプ140は、例えば、空気圧式のポンプである。ポンプ140を駆動すると、パイプ141を介して、前処理槽120から発酵槽130に基質10が供給される。ポンプ140を駆動するのは、発酵槽130にバイオマス原料を含むスラリーを送出するときだけであり、例えば、10分毎に、30秒駆動する。なお、開口部112Hβは、発酵槽130の下部に設けられる原料投入口の一例である。
なお、前処理槽120は、調整槽又は固液分離槽として捉えてもよい。また、発酵槽130は、嫌気発酵槽として捉えてもよい。
前処理槽120は、バイオマス原料を含むスラリーを貯容し、バイオマス原料を沈殿させる前処理を行う槽である。前処理槽120の内部には微生物は存在しないため、バイオガスの生成は行われない。
バイオマス原料を含むスラリーは、バイオマス原料を水に混合した液体であり、基質と称す。図1には基質10として濃いドット模様で示す。基質10に含まれるバイオマス原料は、前処理槽120の下部に沈殿する。図1には沈殿物11として濃いグレーで示す。ポンプ140を駆動すると、基質10は、前処理槽120の開口部112Hαからパイプ141及び開口部112Hβを介して発酵槽130に供給され、発酵槽130の内部では発酵液20になる。図1には発酵液20を薄いドット模様で示す。発酵液20には、バイオマス原料を分解する微生物が混合される。
ここで、バイオマス原料とは、例えば、食品廃棄物、下水汚泥、畜産系廃棄物等の有機物であり、嫌気性の条件下で微生物と接触させて微生物が分解処理を行うことにより、バイオガスを発生する原料である。
また、バイオガスとは、発酵槽130の内部でバイオマス原料が分解されることによって発生するガスである。ここでは、食品廃棄物を含むバイオマス原料からメタンガスを生成する形態について説明するが、発酵槽130で生成されるバイオガスの約55%〜約65%がメタンガスであり、残りは二酸化炭素等である。
発酵槽130は、嫌気性の条件下で微生物が供給され、開口部112Hα、パイプ141、及び開口部112Hβを介して前処理槽120から供給される基質10を利用して、バイオガスを生成する槽である。発酵槽130は、サイフォン式の構成を有する。
また、図1には主な構成要素のみを示すため、図示を省略しているが、発酵槽130には、温水循環ポンプが接続されている。発酵液20は、温水循環ポンプによって発酵に適した温度(例えば、30℃〜60℃の範囲のある温度、一例として、35度あるいは55度)に保持される。
発酵槽130の内部において、隔壁115、116、及び117は、X軸負方向側からX軸正方向側にかけて、この順に設けられている。
ここでは、発酵槽130の内部空間は、3つの隔壁115、116、及び117によって、4つのチャンバー131、132、133、及び134に区分けされていることとして説明を行う。4つのチャンバー131、132、133、及び134は、互いに連通している。
また、チャンバー131の内部の発酵液20の液面を液面20Aとして示す。また、チャンバー132〜134の内部の発酵液20の液面は、互いに等しくなるため、液面20Bとして示す。ここでは、一例として、チャンバー131の発酵液20の液面20Aは、前処理槽120の基質10の液面10Aと等しく、また、発酵液20の液面20Aと液面20Bも等しい場合を示す。
隔壁115は、処理槽110の内部において、YZ平面と平行に配設される板状部材である。隔壁115は、第1隔壁の一例である。
隔壁115は、Z軸方向においては、底板111βから高さh2の位置から、天板113βまで延在している。また、隔壁115は、Y軸方向においては、側壁112Bβから側壁112Dβまでの間に延在している。隔壁115の下端115Aは、側壁112Bβから側壁112Dβまでの間でY軸方向にわたって底板111βから高さh2の位置にある。高さh2は、第1高さの一例であり、底板111βから下端115Aまでの距離は、第1所定距離の一例である。
隔壁115の下端115A以外の3辺は、側壁112Bβ及び112Dβと、天板113βとに固定されている。
また、隔壁115には、貫通孔115Bが設けられている。貫通孔115Bは、板状の隔壁115をX軸方向(隔壁115の厚さ方向)に貫通する開口部である。貫通孔115BのY軸方向における位置は、一例として、隔壁115のY軸方向における長さの中央である。貫通孔115Bには、U字管118が挿通されている。
このような構成の隔壁115は、底板111βから高さh2よりも高い位置において、発酵槽130の内部空間をX軸負方向側と、X軸正方向側とに仕切っている。また、隔壁115は、発酵槽130の内部空間の底部に、高さh2のスリット115Cを構築している。スリット115Cは、高さがh2であり、側壁112Bβと側壁112Dβとの間にわたって設けられている。
ここでは、発酵槽130のうち、隔壁115よりもX軸負方向側をチャンバー131と称し、隔壁115よりもX軸正方向側で隔壁116よりもX軸負方向側をチャンバー132と称す。チャンバー131とチャンバー132は、Z軸方向においては、底板111βと天板113βとの間に延在しており、チャンバー131とチャンバー132とは、隔壁115の下に位置するスリット115Cによって連通されている。チャンバー131は、第1槽の一例であり、チャンバー132は、第2槽の一例である。
また、チャンバー131のうちの隔壁115の下端115Aよりも上側では、U字管118によってチャンバー132に連通していること以外は、側壁112Gβと、天板113βと、隔壁115と、発酵液20の液面20Aとによって密封される空間が生じるように構成されている。
チャンバー131は、パイプ141によって前処理槽120と連通しており、前処理槽120から基質10が供給される。発酵槽130の内部では、チャンバー131からチャンバー132を経て発酵槽130の全体に基質10が供給され、バイオガスが生成される。
チャンバー131で発生するバイオガスは、チャンバー131の上側の側壁112Gβと、天板113βと、隔壁115と、発酵液20の液面20Aとによって密封される空間に貯まる。
また、チャンバー132は、チャンバー131から基質10が供給されて、バイオガスを生成する。チャンバー132で生成されるバイオガスは、チャンバー132〜134の発酵液20の液面20Bより上の空間を経て、排出口113Aから排出される。
隔壁116は、処理槽110の内部において、YZ平面と平行に配設される板状部材である。隔壁116は、第2隔壁の一例である。
隔壁116は、Z軸方向においては、底板111βから高さh3の位置まで延在している。また、隔壁116は、Y軸方向においては、側壁112Bβから側壁112Dβまでの間に延在している。隔壁116の上端116Aは、側壁112Bβから側壁112Dβまでの間でY軸方向にわたって底板111βから高さh3の位置にある。
隔壁116の上端116A以外の3辺は、側壁112Bβ及び112Dβと、底板111βとに固定されている。
このような構成の隔壁116は、底板111βから高さh3よりも低い位置において、発酵槽130の内部空間をX軸負方向側と、X軸正方向側とに仕切っている。
ここでは、発酵槽130のうち、隔壁116よりもX軸負方向側で隔壁115よりもX軸正方向側をチャンバー132と称し、隔壁116よりもX軸正方向側で隔壁117よりもX軸負方向側をチャンバー133と称す。チャンバー132とチャンバー133は、Z軸方向においては、底板111βと天板113βとの間に延在しており、チャンバー132とチャンバー133とは、隔壁116の上の空間によって連通されている。
チャンバー133は、チャンバー132を介して基質10が供給されて、バイオガスを生成する。チャンバー133で生成されるバイオガスは、チャンバー132〜134の発酵液20の液面Bより上の空間を経て、排出口113Aから排出される。
隔壁117は、処理槽110の内部において、YZ平面と平行に配設される板状部材である。隔壁117は、第2隔壁の一例である。隔壁117は、Z軸方向においては、底板111βから高さh2の位置から、天板113βから高さh4だけ下がった位置まで延在している。
また、隔壁117は、Y軸方向においては、側壁112Bβから側壁112Dβまでの間に延在している。隔壁117の下端117Aは、側壁112Bβから側壁112Dβまでの間でY軸方向にわたって底板111βから高さh2の位置にある。隔壁117の上端117Bは、側壁112Bβから側壁112Dβまでの間でY軸方向にわたって天板113βから高さh4だけ下の位置にある。
隔壁117の下端117A及び上端117B以外の2辺は、側壁112Bβ及び112Dβとに固定されている。
このような構成の隔壁117は、底板111βから高さh2よりも高く、かつ、天板113βよりも高さh4だけ低い位置において、発酵槽130の内部空間をX軸負方向側と、X軸正方向側とに仕切っている。
また、隔壁117は、発酵槽130の内部空間の底部に、高さh2のスリット117Cを構築している。スリット117Cは、高さがh2であり、側壁112Bβと側壁112Dβとの間にわたって設けられている。また、隔壁117は、発酵槽130の内部空間の上部に、高さh4のスリット117Dを構築している。スリット117Dは、高さがh4であり、側壁112Bβと側壁112Dβとの間にわたって設けられている。
ここでは、発酵槽130のうち、隔壁117よりもX軸負方向側で隔壁116よりもX軸正方向側をチャンバー133と称し、隔壁117よりもX軸正方向側をチャンバー134と称す。チャンバー133とチャンバー134は、Z軸方向においては、底板111βと天板113βとの間に延在しており、チャンバー133とチャンバー134とは、隔壁117の上下にそれぞれ位置するスリット117C及び117Dによって連通されている。
また、チャンバー134の側壁112Cの上部には、発酵液20を排出するための排出口112Fが設けられており、チャンバー134の内部には、仕切板119Bと仕切ボード119Cが設けられている。仕切板119Bと仕切ボード119Cは、発酵液20を排出口112Fに誘導するために設けられている。
仕切板119Bは、プレート119B1と119B2を有する。プレート119B1は、上端が天板113βに固定されており、チャンバー134のX軸方向における幅の中心において、Y軸方向に側壁112Bβから側壁112Dβまで伸延するとともに、Z軸負方向に伸延している。
プレート119B2は、プレート119B1の下端に取り付けられている。プレート119B1は、プレート119B1と同様にY軸方向において側壁112Bβから側壁112Dβまで伸延しており、XZ平面内において、Y軸負方向側からY軸正方向側を見て、Z軸正方向に対して時計回りの方向に135度をなすように角度が付けられている。
このようなプレート119B1と119B2によって構築される仕切板119Bは、下端が発酵液20に浸かるようにサイズが設定されている。
仕切ボード119Cは、XZ断面の形状が一例として二等辺直角三角形であり、側壁112Cに取り付けられている。仕切ボード119Cが側壁112Cに取り付けられるZ軸方向の位置は、発酵液20に浸かる位置(液面20Bよりも下側)である。
仕切ボード119Cは、Y軸方向において側壁112Bβから側壁112Dβまで伸延している。仕切ボード119Cの先端119C1は、XZ断面の二等辺直角三角形の形状の直角な頂点に相当する部分であり、プレート119B2の下端との間に、発酵液20Aを排出口112Fに誘導するスリットを形成している。
チャンバー134の内部空間のうち、上述のような仕切板119Bと仕切ボード119Cによって囲まれる空間内の発酵液20の液面は、チャンバー134の内部空間のうちの仕切板119Bと仕切ボード119Cによって囲まれる空間以外における液面20Bとは異なる場合がある。
チャンバー134は、チャンバー132、133を介して基質10が供給されて、バイオガスを生成する。チャンバー134で生成されるバイオガスは、チャンバー132〜134の発酵液20の液面20Bより上の空間を経て、排出口113Aから排出される。
また、チャンバー134では、前処理槽120から発酵槽130に供給される基質10と同じ量の発酵液20が排出口112Fから排出される。
図1に示す状態は、液面20Aと液面20Bとのつり合いが取れており、液面20Aと液面20Bの高さが等しい状態である。このようにつり合いが取れた状態は、後述するサイフォン効果が生じた後にも生じる。
発酵槽130には、液面20Aと液面20Bとのつり合いが取れた状態で、隔壁116と、後述するU字管118の中間部118Cとよりも液面20A及び20Bが高くなるように、発酵液20が貯容される。
液面20Aと液面20Bとのつり合いが取れた状態から、後述するサイフォン効果が得られる状態になるまでには、液面20Aは下がり、液面20Bは上昇する。すなわち、発酵液20は、隔壁116の上端116Aよりも常に高い位置まで発酵槽130に入れられているため、チャンバー131〜134のうち、チャンバー132〜134の発酵液20の液面20Bは、互いに等しくなる。
また、チャンバー131の内部は、発酵液20の液面20Aよりも上側の空間は密封されており、チャンバー131で発生するバイオガスは、発酵液20の液面20Aよりも上側の密封された空間に貯まる。このため、バイオガスの量が増えてチャンバー131の発酵液20の液面20Aが押し下げられると、チャンバー131からスリット115Cを介してチャンバー132〜134に発酵液20が移動する。
これにより、チャンバー131の発酵液20の液面20Aと、チャンバー132〜134の発酵液20の液面20Bとの差が大きくなる。
U字管118は、端部118A及び118Bと、中間部118Cとを有するU字型の管状部材である。U字管118は、端部118Aから端部118Bまで、内部で連通しているパイプ状の部材である。
U字管118の中間部118Cは、隔壁115の貫通孔115Bに挿通されている。中間部118Cの外周面と、貫通孔115Bとの間は封止されている。ここで、中間部118Cの外周面と、貫通孔115Bとの間を封止するとは、貫通孔115Bと中間部118Cとの間を発酵液20が通ることができないように密封することをいう。
例えば、U字管118が樹脂製の場合は、中間部118Cの外周面を貫通孔115Bに接着することによって、中間部118Cの外周面と貫通孔115Bを封止すればよい。また、例えば、U字管118が金属製の場合は、中間部118Cの外周面を貫通孔115Bに溶接又は接着することによって、中間部118Cの外周面と貫通孔115Bを封止すればよい。
U字管118の端部118A及び118Bは、中間部118Cの両側でZ軸上方に折り曲げられ、所定の高さの位置まで伸延している。ここでは、一例として、端部118A及び118Bの高さは等しい。
U字管118は、チャンバー131とチャンバー132との間でサイフォン効果を生じさせるために設けられている。チャンバー131の発酵液20の液面20Aと、チャンバー132の発酵液20の液面20Bとの差がバイオガスの生成に伴ってある程度大きくなると、U字管118を利用したサイフォン効果が得られる。
サイフォン効果が生じると、チャンバー132〜134からチャンバー131に発酵液20が移動する。このような発酵液20の移動を利用して、発酵槽130の発酵液20を撹拌するとともに、パイプ141を介して前処理槽120から発酵槽130に基質10をポンプ140の駆動力で供給する。なお、具体的な動作については、図3及び図4を用いて後述する。
U字管118の中間部118Cの高さは、発酵槽130のサイズ(容量)、チャンバー131〜134のそれぞれのサイズ(容量)、スリット115C及び117Cのサイズ、及び、隔壁116の高さ等を考慮して、サイフォン効果を生じさせる際に最適と考えられるチャンバー131の発酵液20の液面20Aに合わせておけばよい。
中間部118Cの高さは、隔壁115の貫通孔115Bの高さによって決まるため、隔壁115の貫通孔115Bの高さは、サイフォン効果を生じさせる際に最適と考えられるチャンバー131の発酵液20の液面20Aに合わせればよい。
邪魔板119Aは、チャンバー132の下側から上側に向かって流れる発酵液20をX軸正方向に誘導するとともに、隔壁116の上側を通ってチャンバー133からチャンバー132に流入する発酵液20をZ軸負方向側に誘導するために設けられている。
次に、図3及び図4を用いて、バイオガス発生装置100においてバイオガスが生成される工程について説明する。
図3及び図4は、バイオガス発生装置100がバイオガスを生成する工程を段階的に示す図である。
バイオガスの生成工程が始まる直前の段階では、図3(A)に示すように、チャンバー131の発酵液20の液面20Aは、U字管118の端部118Aの高さと略等しい。図3(A)に示す状態は、図1に示す状態と同一であり、一例として、液面20Bと液面20Aの高さは等しく、この状態で、チャンバー131の内部の発酵液20と、チャンバー132〜134の内部の発酵液20とのつり合い(バランス)が取れていることとする。
図3(A)に示す状態において、チャンバー131〜134の発酵液20がバイオガスを生成し始め、チャンバー131の上部にバイオガスが貯留し始める。これにより、チャンバー131の発酵液20の液面20Aよりも上の密封される空間に貯留するバイオガスの量は徐々に増加する。また、バイオガスの生成に伴い、チャンバー132〜134の液面20Bよりも上の空間は、酸素が存在しない嫌気状態となる。チャンバー132〜134で生成されるバイオガスは、排出口113Aから排出される。
チャンバー131の上部においてバイオガスの量が増加すると、図3(B)に示すように、チャンバー131の発酵液20の液面20Aが徐々に押し下げられるとともに、チャンバー131の発酵液20がスリット115Cを介して、矢印B1で示すようにチャンバー132に移動する。
また、チャンバー132と133は、隔壁116の上部で連通しており、チャンバー133と134は、スリット117Cを介して底部で連通しているため、発酵液20は、矢印B2及びB3で示すように、チャンバー132からチャンバー133及び134に流れ込む。
この結果、図3(B)に示すように、チャンバー132、133、及び134の発酵液20の液面20Bが押し上げられる。
以上のようにして、発酵槽130の発酵液20がバイオガスを生成して、チャンバー131の発酵液20の液面20Aが押し下げられると、チャンバー131から134に向かって発酵液20が移動する。
発酵槽130の内部でバイオガスがさらに生成され、図4(A)に示すように、チャンバー131の発酵液20の液面20AがU字管118の中間部118Cの底部まで押し下げられると、U字管118を通じてサイフォン効果が生じる。
図4(A)には、サイフォン効果が生じる直前の状態を示す。矢印C1、C2、C3で示すように、チャンバー131から134に向かって、発酵液20が流れ込んでいる。
サイフォン効果は、チャンバー131の発酵液20の液面20AがU字管118の中間部118Cの底部まで押し下げられたときに生じる。
サイフォン効果が生じると、図4(B)に示すように、チャンバー131の上部に貯留されているバイオガスは、U字管118を通じてチャンバー132に抜けて行く。また、このとき、チャンバー132〜134の発酵液20は、矢印D2及びD3で示すようにチャンバー131に向かう方向に流れ、矢印D1で示すようにチャンバー132からスリット115Cを介してチャンバー131に戻ってくる。図4(A)の状態から図4(B)の状態への変化は、数秒程度で完了する。
このとき、スリット115Cを介してチャンバー132からチャンバー131に急激に戻ってくる発酵液20の水流(矢印D1)が、開口部112Hβの前(X軸正方向側)を通り、チャンバー131の内部を上昇する。
このため、開口部112Hβの前(X軸正方向側の前)の空間の水圧は、他の部分の水圧よりも低くなる。すなわち、負圧が生じたような状態になる。
従って、前処理槽120の底部に沈殿するバイオマス原料を多く含む基質10が、開口部112Hβを介してチャンバー131の内部に流出する。
また、図4(A)の状態から図4(B)の状態への変化は数秒程度で完了するため、矢印D1〜D3で表される水流は、急激に生じる水流であり、図3(B)と図4(A)の矢印B1〜B3と矢印C1〜C3で表される水流よりも強い。
また、チャンバー132、133、134の内部では、破線の矢印E1、E2、E3で示すように、急激な水流によって渦を巻くような水流も生じる。
このため、矢印D1〜D3で表される水流や、破線の矢印E1、E2、E3で示す渦を巻くような水流によって、チャンバー131〜134の発酵液20は、全体的に撹拌される。これにより、チャンバー131〜134の発酵液20の濃度(バイオマス原料の濃度)が均等化される。
図4(B)に示す状態から、チャンバー131の発酵液20の液面20Aと、チャンバー132〜134の発酵液20の液面20Bとがつり合うまで、スリット115Cを介してチャンバー132からチャンバー131に発酵液20が移動し、基質10がチャンバー131の内部に補給されつつ、チャンバー131の内部の発酵液20の液面20Aは、上昇する。また、チャンバー131〜134の発酵液20は、全体的に撹拌されて、発酵液20の濃度(バイオマス原料の濃度)が均等化される。
そして、チャンバー131の発酵液20の液面20Aと、チャンバー132〜134の発酵液20の液面20Bとがつり合うと、図3(A)に示す状態に戻る。
そして、図3(A)に示す状態において、チャンバー131〜134の発酵液20がバイオガスを生成し、その後、上述したような図3(B)、図4(A)、及び図4(B)に示す状態が繰り返される。
このようにして、バイオガス発生装置100は、バイオガスを生成し続ける。バイオガスは、排出口113Aからバイオガス発生装置100の外部に排出される。また、前処理槽120の底部に沈殿するバイオマス原料を多く含む基質10が、開口部112Hβを介してチャンバー131の内部に流出すると、前処理槽120から発酵槽130に供給される基質10と同じ量の発酵液20が排出口112Fから排出され、さらに、図示しない排水設備等に排水される。
以上のように、バイオガス発生装置100によれば、サイフォン式の発酵槽130のチャンバー131の上部に貯まるバイオガスを利用して、ポンプ140の駆動力で発酵槽130の発酵液20を撹拌できるとともに、ポンプ140の駆動力で前処理槽120から基質10を発酵槽に供給することができる。
図5は、実施の形態の変形例を示す図である。図5(A)に示すバイオガス発生装置100は、前処理槽(貯留槽)120、発酵槽130、及びポンプ140に加えて後処理装置150を含む。例えば、前処理槽(貯留槽)120が固液分離機能を有する場合に、前処理槽(貯留槽)120の上澄水を自然流下でパイプ151を通じて後処理装置150に供給してもよい。自然流下とは、ポンプ等の動力を利用せずに、重力によって生じる流れによって高いところから低いところへ液体を送出することである。
また、発酵槽130は、中温発酵(例えば、35℃)、又は、高温発酵(例えば、55℃)を行うものであってもよい。
また、図5(B)に示すように、バイオガス発生装置100は、前処理槽(貯留槽)120、発酵槽130、及びポンプ140に加えて後処理装置150Aを含み、後処理装置150Aは、好気性処理を行う好気性処理槽であってもよい。そして、後処理装置150Aに貯まった残渣21をポンプで前処理槽(貯留槽)120に戻すような構成にしてもよい。
また、図5(C)に示すように、バイオガス発生装置100は、グラニュール化したメタン生成菌でメタン発酵を行うUASB槽150Bと、UASB(Upflow Anaerobic Sludge Blanket;上向流式嫌気性汚泥床)槽の流出水を好気性処理する好気性処理槽150Aとを備える構成であってもよい。UASB槽は、高濃度有機性排水処理におけるメタン発酵法(嫌気性処理法)を用いた槽である。なお、後処理装置150Aに用いるバブリング用ブロワは、ポンプ140と兼用であってもよい。
また、残渣21を前処理槽(貯留槽)120に戻すポンプは、図5(D)に示すポンプ140Aのように、バブリング用ブロワ141Aと、エアリフトポンプ142Aとを組み合わせたものであってもよい。
次に、図6及び図7を用いて、バイオガス発生装置100のメリットについて説明する。
図6は、一般的なメタン発酵システム500を示す図である。ここでは、まず、一般的なメタン発酵システム500について説明し、その次に、一般的なメタン発酵システム500にバイオガス発生装置100を適用した場合のメリットについて説明する。
メタン発酵システム500は、一例として、プラントのような施設に設けられ、バイオマス原料を用いて、バイオガスを生成する。
メタン発酵システム500は、破砕機501、原料投入ポンプ502、前処理槽503、前処理槽撹拌ポンプ504、基質投入ポンプ505、発酵槽506、発酵槽撹拌ポンプ507、温水循環ポンプ508、撹拌ブロワ509、ガス貯留槽510、加圧ファン511、及び排水ポンプ512を含む。
破砕機501で破砕された食品残渣等のバイオマス原料は、原料投入ポンプ502によって前処理槽503に供給され、水によって希釈され、バイオマス原料を含むスラリー(基質)が生成される。前処理槽503の中のスラリーは、前処理槽撹拌ポンプ504によって撹拌される。
前処理槽503の中で沈殿したバイオマス原料は、基質投入ポンプ505によって発酵槽506に供給される。発酵槽506に貯容される発酵液は、発酵槽撹拌ポンプ507によって撹拌されるとともに、温水循環ポンプ508によって発酵に適した温度(例えば、30℃〜60℃の範囲のある温度、一例として、35度あるいは55度)に保持され、さらに、撹拌ブロワ509によっても撹拌される。
発酵槽506で生成されるバイオガスは、ガス貯留槽510に貯められ、加圧ファン511によって、一例としてガスエンジンに供給される。また、発酵槽506で不要になった発酵液は、排水ポンプ512によって排水設備に排出される。
ガスエンジンによって発生される電力は、回収電力として取り出され、一部はメタン発酵システム500に必要な電力(消費電力)として消費され、余剰の電力(余剰電力)は、メタン発酵システム500が設置されるプラント等で利用することができる。
なお、消費電力は、例えば、メタン発酵システム500の破砕機501、原料投入ポンプ502、前処理槽撹拌ポンプ504、基質投入ポンプ505、発酵槽撹拌ポンプ507、温水循環ポンプ508、撹拌ブロワ509、加圧ファン511、及び排水ポンプ512の駆動に用いられる電力である。
また、ガスエンジンによって発生される熱は、回収排熱として取り出され、一部はメタン発酵システム500に必要な熱(消費熱)として利用され、余剰の熱(余剰熱)は、メタン発酵システム500が設置されるプラント等で利用することができる。
なお、消費熱は、例えば、メタン発酵システム500の温水循環ポンプ508で発酵液を温める際に利用される熱である。
ここで、図6に示すメタン発酵システム500に、実施の形態のバイオガス発生装置100を適用すると、次のように消費電力を低減することができる。
まず、バイオガス発生装置100は、前処理槽120と発酵槽130とを一体化するとともにパイプ141で連通させて、サイフォン効果によって生じる水流を利用して、パイプ141を介して前処理槽120から発酵槽130に基質10を供給している。
これは、図6に示すメタン発酵システム500では、前処理槽503と発酵槽506とを一体化させることになる。
このため、図6に示すメタン発酵システム500に、実施の形態のバイオガス発生装置100を適用すれば、基質投入ポンプ505が不要になる。
また、バイオガス発生装置100は、発酵槽130の内部で生じる水流を利用して発酵液20を撹拌している。これは、図6に示すメタン発酵システム500では、発酵槽506に接続されている発酵槽撹拌ポンプ507と撹拌ブロワ509の役割に相当する。
このため、図6に示すメタン発酵システム500に、実施の形態のバイオガス発生装置100を適用すれば、発酵槽撹拌ポンプ507と撹拌ブロワ509が不要になる。
以上のように、図6に示すメタン発酵システム500に、実施の形態のバイオガス発生装置100を適用すると、基質投入ポンプ505、発酵槽撹拌ポンプ507、及び撹拌ブロワ509が不要になる。
従って、図6に示すようなメタン発酵システム500にバイオガス発生装置100を適用すると、消費電力の低減を図ることにより、エネルギーの回収効率を向上させることができる。
図7は、電力収支を示す図である。横軸は、食品残渣量(t/日)を示す。食品残渣量(t/日)は、図6に示す破砕機501に投入される食品残渣の量を一日あたりのトン数で表す。縦軸は、消費電力を回収電力量で除算して得る電力比を百分率(%)で表す。
また、A(○のマーカー)は、図6に示すメタン発酵システム500による電力比を示す。図6に示すメタン発酵システム500は、上述のように、破砕機501、原料投入ポンプ502、前処理槽撹拌ポンプ504、基質投入ポンプ505、発酵槽撹拌ポンプ507、温水循環ポンプ508、撹拌ブロワ509、加圧ファン511、及び排水ポンプ512の稼働に、電力が必要である。
B(△のマーカー)は、図6に示すメタン発酵システム500において、前処理槽503と発酵槽506を一体化して、前処理槽撹拌ポンプ504を省いたシステムによる電力比を示す。すなわち、Bのシステムの消費電力は、Aのシステムの消費電力よりも、前処理槽撹拌ポンプ504を省いた分だけ低減されている。
C(□のマーカー)は、図6に示すメタン発酵システム500において、発酵槽506をサイフォン式のものにして、発酵槽撹拌ポンプ507と撹拌ブロワ509を省いたシステムによる電力比を示す。なお、前処理槽503と発酵槽506は一体化されていない。
すなわち、Cのシステムの消費電力は、Aのシステムの消費電力よりも、発酵槽撹拌ポンプ507と撹拌ブロワ509を省いた分だけ低減されている。
D(◇のマーカー)は、図6に示すメタン発酵システム500に、実施の形態のバイオガス発生装置100を適用することにより、基質投入ポンプ505、発酵槽撹拌ポンプ507、及び撹拌ブロワ509を省いたシステムによる電力比を示す。
すなわち、Dのシステムの消費電力は、Aのシステムの消費電力よりも、基質投入ポンプ505、発酵槽撹拌ポンプ507、及び撹拌ブロワ509を省いた分だけ低減されている。
図7に示すように、A〜Dのいずれのシステムにおいても、食品残渣量が増大するに連れて、電力比が低下する傾向があることが分かる。これは、食品残渣量が増大することにより、エネルギーの回収効率が改善されるからである。
しかしながら、AとBのシステムでは、食品残渣量を1(t/日)まで増大させても、電力比は、それぞれ、130%と126%であり、消費電力が回収電力量を上回っていることが分かる。これでは、バイオマス原料から再生可能エネルギーを得るために、回収可能な再生可能エネルギーよりも多い電力を消費していることになり、電力収支はマイナスである。
また、CとDのシステムでは、食品残渣量が約0.25(t/日)以上になると、電力比が約100%以下になる。
より具体的には、CとDのシステムでは、食品残渣量が0.3(t/日)の場合に、それぞれ、電力比は75%と70%である。また、食品残渣量が0.6(t/日)の場合に、それぞれ、電力比は57%と53%である。また、食品残渣量が1(t/日)の場合に、それぞれ、電力比は48%と44%である。
以上より、Dのシステムの電力比は、Cのシステムよりも約5%程度改善されていることが分かる。
従って、実施の形態のバイオガス発生装置100は、サイフォン式の発酵槽130のチャンバー131の上部に貯まるバイオガスを利用して、ポンプ140の駆動力で発酵槽130の発酵液20を撹拌するとともに、ポンプ140の駆動力で前処理槽120から基質10を発酵槽に供給することにより、エネルギーの回収効率(再生効率)を改善することができる。
従って、実施の形態によれば、エネルギーの回収効率の高いバイオガス発生装置100を提供することができる。
また、以上では、発酵槽130が4つのチャンバー131〜134を有する形態について説明したが、発酵槽130は、チャンバー134を有していなくてもよい。この場合は、チャンバー133に排出口112Fを設ければよい。また、発酵槽130は、チャンバー133及び134を有していなくてもよい。この場合は、チャンバー132に排出口112Fを設ければよい。また、発酵槽130は、5つ以上のチャンバーを有していてもよい。
また、バイオガスを排出するための排出口113Aは、X軸方向において、隔壁115と仕切板119Bとの間であれば、どこに取り付けられていてもよい。
以上、本発明の例示的な実施の形態のバイオガス発生装置について説明したが、本発明は、具体的に開示された実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲から逸脱することなく、種々の変形や変更が可能である。