本発明の空気入りタイヤ(以下、空気入りタイヤを単にタイヤとも記載する)は、樹脂を溶融させた複数の線条が不規則に絡み合い、その絡合部が溶着されることにより形成される立体網目構造体を吸音材として有する吸音層をタイヤ内腔に備えた空気入りタイヤである。すなわち、従来から、吸音材として使用されてきたポリウレタンなどのスポンジと同様に、吸音材として使用可能であることを本発明者が見出した特定の立体網目構造体をタイヤ内腔に備えているため、良好なロードノイズ低減性が得られる。
立体網目構造体は、絡合した線条の間に空洞が存在するため、この空洞により、ロードノイズ低減性が発揮されるものと推測される。
また、従来から、パンク防止機能を備えた空気入りタイヤとして、タイヤの内周面にシーラント材が塗布されたシーラント層を有するシーラントタイヤが知られている。シーラントタイヤでは、パンク時に形成される穴がシーラント材によって自動的に塞がれる。
シーラントタイヤの製造方法としては、シーラント材に有機溶剤を添加し、粘度を低下させ取扱いしやすくした希釈シーラント材をタイヤ内面に貼り付け、貼り付け後に希釈シーラント材から有機溶剤を除去する方法やバッチ式混練装置で調製した主剤と硬化剤とを静的ミキサー又は動的ミキサーを用いて混合してシーラント材を調製した後にタイヤの内周面に貼り付ける方法等が知られている。
特許文献1には、タイヤのインナーライナー内側に、特定のシーラント材を用いてスポンジを貼り付けることにより、騒音を低減できることが開示されているが、本発明者の検討の結果、吸音材として貼り付けているスポンジが、シール性に悪影響を及ぼすことがあることが判明した。すなわち、吸音材としてスポンジが貼り付けられていると、パンクにより生じた穴にシーラント材が流入して穴を塞ぐ際に、シーラント材と共に千切れたスポンジも流入することがあり、約1割強の確率でエアシールを失敗してしまうことが判明した。これに対して、本発明者は鋭意検討した結果、上記特定の立体網目構造体を吸音材として使用した場合、立体網目構造体が損傷を受けにくいため、シール性に悪影響を及ぼさないことが分かった。このように、立体網目構造体を吸音材として有する吸音層をタイヤ内腔に備え、更に、インナーライナーのタイヤ半径方向内側にシーラント層を有する空気入りタイヤ(シーラントタイヤ)は、シール性、ロードノイズ低減性に優れる。
本発明の空気入りタイヤは、樹脂を溶融させた複数の線条が不規則に絡み合い、その絡合部が溶着されることにより形成される立体網目構造体を吸音材として有する吸音層をタイヤ内腔に備えた空気入りタイヤである。
本発明の空気入りタイヤは、上記吸音層をタイヤ内腔に備えていればよく、これにより、良好なロードノイズ低減性が得られる。上記吸音層は、タイヤに固定されていてもよく、固定されていなくてもよい。上記吸音層が、タイヤに固定されていない場合、走行中に吸音層がタイヤ内面やホイールと接触し、吸音層の破損につながるおそれがある。吸音層が破損しても走行に影響はないが、ノイズ低減効果が低下するため、上記吸音層は、タイヤに固定されていることが好ましい。
上記吸音層のタイヤへの固定方法は、特に限定されず、例えば、接着剤等によりタイヤ内面に接着すればよいが、上記シーラント層を構成するシーラント材により固定されることが好ましい。すなわち、立体網目構造体を吸音材として有する吸音層をタイヤ内腔に備え、更に、インナーライナーのタイヤ半径方向内側にシーラント層を有し、上記シーラント層のタイヤ半径方向内側に上記吸音層を有し、上記シーラント層が、シーラント材によって構成されており、上記吸音層が、上記シーラント材により固定されたものである空気入りタイヤ(シーラントタイヤ)は、シール性、ロードノイズ低減性により優れる。
また、上記シーラント層は、タイヤの内周面に沿って連続的にらせん状に配置された略紐状形状のシーラント材によって構成されていることが好ましい。すなわち、略紐状形状のシーラント材を連続的にらせん状にタイヤの内周面に塗布することによりシーラント層を形成することにより、シーラント材が均一なシーラント層(タイヤの内周面に沿って連続的にらせん状に配置された略紐状形状のシーラント材によって構成されたシーラント層)をタイヤの内周面に形成でき、よりシール性に優れたシーラントタイヤを安定的に生産性良く製造できる。該製法により得られたシーラントタイヤは、タイヤ周方向及びタイヤ幅方向(特に、タイヤ周方向)においてシーラント材が均一なシーラント層を有するため、よりシール性に優れる。また、シーラント材に起因してタイヤのバランスが崩れにくく、タイヤのユニフォミティーの悪化を低減できる。
更には、シーラント材が均一なシーラント層に、吸音層をシーラント材の粘着性を利用して貼り付けることにより、シール性の悪化を招くことなく、良好なロードノイズ低減性を付与することができる。また、シーラント材が均一なシーラント層に吸音層を貼り付けることにより、より良好なロードノイズ低減性が得られる。このように、上記シーラント層が、タイヤの内周面に沿って連続的にらせん状に配置された略紐状形状のシーラント材によって構成され、上記吸音層が、上記シーラント材により固定されたもの(上記吸音層が、タイヤの内周面に塗布された上記シーラント材により貼り付けられたもの)であることにより、シーラント層、吸音層を設けることにより得られる各改善効果を最大限に発揮でき、シール性、ロードノイズ低減性により優れたシーラントタイヤを安定的に生産性良く製造できる。また、吸音層を設けることにより、シーラント層への異物の付着を抑制できる。
また、特に、シーラント材として、後述する組成のシーラント材を使用することにより、効果がより好適に得られる。更には、後述する組成のシーラント材は、低温の環境下であってもパンク時に形成される穴がシーラント材によって自動的に塞がれる。
また、後述する組成のシーラント材は、高温でも流動性が低いため、吸音層へのシーラント材の含浸を抑制できる。そのため、シーラント材の含浸を防止する目的で膜や層を吸音層に設ける必要はなく、立体網目構造体のみにより構成された吸音層を使用することができ、より高いロードノイズ低減性が得られる。この場合、立体網目構造体とシーラント層との間に膜や層が存在せずに、立体網目構造体とシーラント層とが接することとなる。
また、吸音層にシーラント材が含浸することによりロードノイズ低減性が悪化するが、後述する組成のシーラント材を使用すると、吸音層にシーラント材が含浸していないため、吸音層を設けることによるロードノイズ低減性の改善効果が充分に得られる。
後述する組成のシーラント材として、具体的には、架橋剤として有機過酸化物を用いることや、ブチル系ゴムを含むゴム成分に液状ポリブテン等の液状ポリマーを配合したものを用いること、特に液状ポリマーとして、異なる粘度の2種以上の材料を併用することで、シーラント材の粘着性、シール性、流動性、加工性がバランス良く改善され、効果がより好適に得られる。これは、ゴム成分としてブチルゴムを用いた有機過酸化物架橋系に、液状ポリマー成分を導入して粘着性が付与されるとともに、特に異なる粘度の液状ポリマーにより高速走行時(高温時)のシーラント材の流動が抑制されることで、シーラント材の前記性能がバランス良く改善されるためと推測される。更に、ゴム成分100質量部に対して無機充填剤を1〜30質量部配合することにより、シーラント材の粘着性、シール性、流動性、加工性がよりバランス良く改善され、効果がより好適に得られる。
また、シーラント材が、有機過酸化物を含むことにより、シーラント材を塗布した後であっても、シーラント材が良好な粘着性を有することとなり、より好適に吸音層を貼り付けることができる。なお、シーラント材を塗布した後、吸音層を貼り付ける前に、後述の架橋工程を行っても行わなくてもよいが、いずれの場合であっても、シーラント材が、有機過酸化物を含むことにより、より好適に吸音層を貼り付けることができる。
本発明の空気入りタイヤを製造する方法としては、上記吸音層をタイヤ内腔に備えることができる限り特に限定されないが、以下、本発明のシーラントタイヤの製造方法の好適例について説明する。
シーラントタイヤは、例えば、シーラント材を構成する各成分を混合してシーラント材を調製し、次いで、得られたシーラント材を塗布等によりタイヤ内周面に貼り付け、シーラント層を形成するなど、従来公知の方法により製造できる。該シーラントタイヤは、インナーライナーのタイヤ半径方向内側にシーラント層を有する。
シーラント材はゴム成分と架橋の量により、硬さ(粘度)をコントロールして、使用温度に応じた粘度にコントロールする必要がある。そこでゴム成分のコントロールとして、液状ゴム、可塑剤、カーボンブラックの種類や量を調整する。一方、架橋の量のコントロールのために、架橋剤と架橋助剤の種類や量を調整する。
シーラント材としては、粘着性を有するものであれば特に限定されず、タイヤのパンクシールに用いられる通常のゴム組成物を使用することができる。ゴム組成物の主成分を構成するゴム成分として、ブチル系ゴムが用いられる。ブチル系ゴムとしては、ブチルゴム(IIR)の他、臭素化ブチルゴム(Br−IIR)、塩素化ブチルゴム(Cl−IIR)などのハロゲン化ブチルゴム(X−IIR)等も挙げられる。なかでも、流動性等の観点から、ブチルゴム、若しくはハロゲン化ブチルゴムのどちらか一方、又は両方を好適に使用できる。また、ブチル系ゴムは、ペレット化されたものを使用することが好ましい。これにより、連続混練機にブチル系ゴムを精度良く好適に供給でき、シーラント材を生産性よく製造できる。
ブチル系ゴムとして、シーラント材の流動性の低下抑制の観点から、125℃のムーニー粘度ML1+8が20以上40未満のブチル系ゴムA及び/又は125℃のムーニー粘度ML1+8が40以上80以下のブチル系ゴムBの使用が好ましく、なかでも、少なくともブチル系ゴムAを用いることが好適である。なお、ブチル系ゴムA及びBを併用する場合、配合比は適宜設定すれば良い。
ブチル系ゴムAの125℃のムーニー粘度ML1+8は、より好ましくは25以上、更に好ましくは28以上であり、また、より好ましくは38以下、更に好ましくは35以下である。20未満であると、流動性が低下するおそれがあり、40以上であると、併用する場合、その効果が得られないおそれがある。
ブチル系ゴムBの125℃のムーニー粘度ML1+8は、より好ましくは45以上、更に好ましくは48以上であり、また、より好ましくは70以下、更に好ましくは60以下である。40未満であると、併用する場合、その効果が得られないおそれがある。80を超えると、シール性が低下するおそれがある。
なお、125℃のムーニー粘度ML1+8は、JIS K−6300−1:2001に準拠し、試験温度125℃で、L形の形状を有するロータを余熱時間1分間とし、ロータの回転時間を8分間として測定されるものである。
ゴム成分として、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、スチレンイソプレンブタジエンゴム(SIBR)、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)、クロロプレンゴム(CR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、ブチルゴム(IIR)等のジエン系ゴム等、他の成分を併用しても良いが、流動性等の観点から、ゴム成分100質量%中のブチル系ゴムの含有量は、90質量%以上が好ましく、95質量%以上がより好ましく、100質量%が特に好ましい。
シーラント材中の液状ポリマーとして、液状ポリブテン、液状ポリイソブテン、液状ポリイソプレン、液状ポリブタジエン、液状ポリα−オレフィン、液状イソブチレン、液状エチレンα−オレフィン共重合体、液状エチレンプロピレン共重合体、液状エチレンブチレン共重合体等が挙げられる。なかでも、粘着性付与等の観点から、液状ポリブテンが好ましい。液状ポリブテンとしては、イソブテンを主体とし、更にノルマルブテンを反応させて得られる長鎖状炭化水素の分子構造を持った共重合体等が挙げられ、水素添加型液状ポリブテンも使用可能である。
液状ポリブテン等の液状ポリマーとして、高速走行時のシーラント材の流動を防止する観点から、100℃の動粘度が550〜625mm2/sの液状ポリマーA及び/又は100℃の動粘度が3540〜4010mm2/sの液状ポリマーBの使用が好ましく、該液状ポリマーA及びBの併用がより好ましい。
液状ポリブテン等の液状ポリマーAの100℃における動粘度は、好ましくは550mm2/s以上、より好ましくは570mm2/s以上である。550mm2/s未満であると、シーラント材の流動が生じるおそれがある。該100℃における動粘度は、好ましくは625mm2/s以下、より好ましくは610mm2/s以下である。625mm2/sを超えると、シーラント材の粘度が高くなり、押し出し性が悪化するおそれがある。
液状ポリブテン等の液状ポリマーBの100℃における動粘度は、好ましくは3600mm2/s以上、より好ましくは3650mm2/s以上である。3540mm2/s未満であると、シーラント材の粘度が下がり過ぎて、タイヤ使用中に流動しやすくなり、シール性、ユニフォミティーが悪化するおそれがある。
該100℃における動粘度は、好ましくは3900mm2/s以下、より好ましくは3800mm2/s以下である。4010mm2/sを超えると、シール性が悪化するおそれがある。
液状ポリブテン等の液状ポリマーAの40℃における動粘度は、好ましくは20000mm2/s以上、より好ましくは23000mm2/s以上である。20000mm2/s未満であると、シーラント材が柔らかく、流動が生じるおそれがある。該40℃における動粘度は、好ましくは30000mm2/s以下、より好ましくは28000mm2/s以下である。30000mm2/sを超えると、シーラント材の粘度が高くなり過ぎて、シール性が悪化するおそれがある。
液状ポリブテン等の液状ポリマーBの40℃における動粘度は、好ましくは120000mm2/s以上、より好ましくは150000mm2/s以上である。120000mm2/s未満であると、シーラント材の粘度が下がり過ぎて、タイヤ使用中に流動しやすくなり、シール性、ユニフォミティーが悪化するおそれがある。
該40℃における動粘度は、好ましくは200000mm2/s以下、より好ましくは170000mm2/s以下である。200000mm2/sを超えると、シーラント材の粘度が高くなり過ぎて、シール性が悪化するおそれがある。
なお、動粘度は、JIS K2283−2000に準拠し、100℃、40℃の条件で測定される値である。
液状ポリマーの含有量(液状ポリマーA、B等の合計量)は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは50質量部以上、より好ましくは100質量部以上、更に好ましくは150質量部以上である。50質量部未満では、粘着性が低下するおそれがある。該含有量は、好ましくは400質量部以下、より好ましくは300質量部以下、更に好ましくは250質量部以下である。400質量部を超えると、シーラント材の流動が生じるおそれがある。
液状ポリマーA、Bを併用する場合、これらの配合比(液状ポリマーAの含有量/液状ポリマーBの含有量)は、好ましくは10/90〜90/10、より好ましくは30/70〜70/30、更に好ましくは40/60〜60/40である。上記範囲内であると、良好な粘着性が付与される。
有機過酸化物(架橋剤)としては特に限定されず、従来公知の化合物を使用できる。有機過酸化物架橋系において、ブチル系ゴムや液状ポリマーを用いることで、粘着性、シール性、流動性、加工性が改善される。
有機過酸化物としては、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、ジベンゾイルパーオキサイド、p−クロロベンゾイルパーオキサイド等のアシルパーオキサイド類、1−ブチルパーオキシアセテート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、t−ブチルパーオキシフタレートなどのパーオキシエステル類、メチルエチルケトンパーオキサイドなどのケトンパーオキサイド類、ジ−t−ブチルパーオキシベンゾエート、1,3−ビス(1−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼンなどのアルキルパーオキサイド類、t−ブチルハイドロパーオキサイドなどのハイドロパーオキサイド類、ジクミルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド等が挙げられる。なかでも、粘着性、流動性の観点から、アシルパーオキサイド類が好ましく、ジベンゾイルパーオキサイドが特に好ましい。また、有機過酸化物(架橋剤)は、粉体状態のものを使用することが好ましい。これにより、連続混練機に有機過酸化物(架橋剤)を精度良く好適に供給でき、シーラント材を生産性よく製造できる。
有機過酸化物(架橋剤)の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは1質量部以上、更に好ましくは5質量部以上である。0.5質量部未満では、架橋密度が低くなり、シーラント材の流動が生じるおそれがある。該含有量は、好ましくは40質量部以下、より好ましくは20質量部以下、更に好ましくは15質量部以下である。40質量部を超えると、架橋密度が高くなり、シーラント材が硬くなり、シール性が低下するおそれがある。
架橋助剤(加硫促進剤)としては、スルフェンアミド系、チアゾール系、チウラム系、チオ尿素系、グアニジン系、ジチオカルバミン系、アルデヒド−アミン系、アルデヒド−アンモニア系、イミダゾリン系、キサントゲン酸系、及びキノンジオキシム化合物(キノイド化合物)からなる群より選択される少なくとも1種を使用することができるが、例えば、キノンジオキシム化合物(キノイド化合物)を好適に使用可能である。有機過酸化物に更に架橋助剤を添加した架橋系において、ブチル系ゴムや液状ポリマーを用いることで、粘着性、シール性、流動性、加工性が改善される。
キノンジオキシム化合物としては、p−ベンゾキノンジオキシム、p−キノンジオキシム、p−キノンジオキシムジアセテート、p−キノンジオキシムジカプロエート、p−キノンジオキシムジラウレート、p−キノンジオキシムジステアレート、p−キノンジオキシムジクロトネート、p−キノンジオキシムジナフテネート、p−キノンジオキシムスクシネート、p−キノンジオキシムアジペート、p−キノンジオキシムジフロエート(difuroate)、p−キノンジオキシムジベンゾエート、p−キノンジオキシムジ(o−クロロベンゾエート)、p−キノンジオキシムジ(p−クロロベンゾエート)、p−キノンジオキシムジ(p−ビトロベンゾエート)、p−キノンジオキシムジ(m−ビトロベンゾエート)、p−キノンジオキシムジ(3,5−ジニトロベンゾエート)、p−キノンジオキシムジ(p−メトキシベンゾエート)、p−キノンジオキシムジ(n−アミルオキシベンゾエート)、p−キノンジオキシムジ(m−ブロモベンゾエート等が挙げられる。なかでも、粘着性、シール性、流動性の観点から、p−ベンゾキノンジオキシムが好ましい。また、架橋助剤(加硫促進剤)は、粉体状態のものを使用することが好ましい。これにより、連続混練機に架橋助剤(加硫促進剤)を精度良く好適に供給でき、シーラント材を生産性よく製造できる。
キノンジオキシム化合物等の架橋助剤の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは1質量部以上、更に好ましくは3質量部以上である。0.5質量部未満では、シーラント材の流動が生じるおそれがある。該含有量は、好ましくは40質量部以下、より好ましくは20質量部以下、更に好ましくは15質量部以下である。40質量部を超えると、シール性が低下するおそれがある。
シーラント材には、カーボンブラック、シリカ、炭酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、硫酸バリウム、タルク、マイカ等の無機充填剤、芳香族系プロセスオイル、ナフテン系プロセスオイル、パラフィン系プロセスオイル等の可塑剤を添加しても良い。
無機充填剤の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは10質量部以上である。1質量部未満では、紫外線による劣化により、シール性が低下するおそれがある。該含有量は、好ましくは50質量部以下、より好ましくは40質量部以下、更に好ましくは30質量部以下である。50質量部を超えると、シーラント材の粘度が高くなり過ぎて、シール性が悪化するおそれがある。
紫外線による劣化を防止する観点から、無機充填剤としてカーボンブラックが好ましい。この場合、カーボンブラックの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは10質量部以上である。1質量部未満では、紫外線による劣化により、シール性が低下するおそれがある。該含有量は、好ましくは50質量部以下、より好ましくは40質量部以下、更に好ましくは25質量部以下である。50質量部を超えると、シーラント材の粘度が高くなり過ぎて、シール性が悪化するおそれがある。
可塑剤の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは5質量部以上である。1質量部未満では、タイヤへの粘着性が低下し、充分なシール性が得られないおそれがある。該含有量は、好ましくは40質量部以下、より好ましくは20質量部以下である。40質量部を超えると、混練機内ですべりが生じ、シーラント材を混練することが困難となるおそれがある。
シーラント材としては、ペレット化したブチル系ゴム、粉体の架橋剤、及び粉体の架橋助剤を混合することにより調製されたものであることが好ましく、ペレット化したブチル系ゴム、液状のポリブテン、可塑剤、粉体のカーボンブラック、粉体の架橋剤、及び粉体の架橋助剤を混合することにより調製されたものであることがより好ましい。これにより、連続混練機に各原料を好適に供給でき、シーラント材を生産性よく製造できる。
シーラント材としては、ブチルゴムを含むゴム成分に対して、所定量の液状ポリマー、有機過酸化物、架橋助剤を配合したものが好ましい。
シーラント材に、ブチルゴムに液状ポリブテン等の液状ポリマーを配合したものを用いること、特にブチルゴム、液状ポリマーとして、それぞれ異なる粘度の2種以上の材料を併用することで、粘着性、シール性、流動性、加工性がバランス良く改善される。これは、ゴム成分としてブチルゴムを用いた有機過酸化物架橋系に、液状ポリマー成分を導入して粘着性が付与されるとともに、特に異なる粘度の液状ポリマーや固形ブチルゴムにより高速走行時のシーラント材の流動が抑制されることで、粘着性、シール性、流動性、加工性がバランス良く改善される。
シーラント材の粘度(90℃)は特に限定されないが、粘着性、流動性、及びシーラント材がタイヤの内周面に塗布された時点で、シーラント材が略紐状形状を好適に保持する等の観点から、好ましくは0.5kPa・s以上、より好ましくは1.0kPa・s以上、更に好ましくは3.0kPa・s以上であり、また、好ましくは30.0kPa・s以下、より好ましくは20.0kPa・s以下、更に好ましくは7.0kPa・s以下である。0.5kPa・s未満であると、シーラント材の塗布後にタイヤを停止したときにシーラント材が流動し、膜厚を維持できないおそれがある。また、30.0kPa・sを超えると、ノズルからシーラント材を吐出させることが困難となる。
なお、本明細書において、シーラント材の粘度は、JIS K 6833に準拠し、90℃の条件で、回転式粘度計により測定される値である。
前述の各材料を混合してシーラント材を調製し、作製されたシーラント材をタイヤ内周面(好ましくはインナーライナーのタイヤ半径方向内側部分)に適用することにより、インナーライナーのタイヤ半径方向内側にシーラント層を有するシーラントタイヤを製造できるが、シーラント材を構成する各材料の混合は、例えば、公知の連続混練機を用いて実施できる。なかでも、同方向回転又は異方向回転の多軸混練押出機、特に二軸混練押出機を用いて混合することが好ましい。
連続混練機(特に、二軸混練押出機)は、原料を供給する供給口を複数有することが好ましく、少なくとも3つの供給口を有することがより好ましく、少なくとも上流側、中流側、下流側の3つの供給口を有することが更に好ましい。連続混練機(特に、二軸混練押出機)に上記各種原料を順次供給することにより、上記各種原料が混合され、順次連続的にシーラント材が調製される。
連続混練機(特に、二軸混練押出機)への原料の供給は、粘度の高い材料から順に行うことが好ましい。これにより、各材料が充分に混合され、品質が一定のシーラント材を調製できる。また、粉体材料を投入すると混練性が良くなる為なるべく上流で投入する事が望ましい。
連続混練機(特に、二軸混練押出機)への有機過酸化物の供給は、下流側の供給口から行うことが好ましい。これにより、有機過酸化物を供給してからシーラント材をタイヤに塗布するまでの時間を短くできるので、シーラント材の硬化が進む前にタイヤに塗布でき、より安定的にシーラントタイヤを製造できる。
液状ポリマーを一度に多量に連続混練機(特に、二軸混練押出機)へ投入すると混練がうまくいかないため、連続混練機(特に、二軸混練押出機)への液状ポリマーの供給は、複数の供給口から行うことが好ましい。これにより、シーラント材の混練をより好適に行うことができる。
連続混練機(特に、二軸混練押出機)を用いる場合、シーラント材は、少なくとも3つの供給口を有する連続混練機(特に、二軸混練押出機)を用い、当該連続混練機(特に、二軸混練押出機)の上流側の供給口から、ブチル系ゴム等のゴム成分、無機充填剤、及び架橋助剤を供給し、中流側の供給口から、液状ポリマーBを供給し、下流側の供給口から、液状ポリマーA、有機過酸化物、及び可塑剤を供給し、混練押出することにより調製されることが好ましい。なお、各供給口からは、液状ポリマー等の各材料の全量又は一部を供給してもよいが、各材料の全量中の95質量%以上を供給することが好ましい。
連続混練機に投入される全ての原料が、定量供給制御可能な供給装置により制御されて、連続混練機に投入されることが好ましい。これにより、連続的かつ自動化された状態でシーラント材を調製することが可能となる。
供給装置は、定量供給制御可能であれば特に限定されず、公知の供給装置を使用でき、例えば、スクリュー式フィーダー、プランジャーポンプ、ギアポンプ、モーノポンプ等を使用できる。
ペレット化されたブチル系ゴム、粉体のカーボンブラック、粉体の架橋剤、及び粉体の架橋助剤等の固形原料(特に、ペレットや粉体)は、スクリュー式フィーダーを用いて定量供給することが好ましい。これにより、固形原料を精度良く定量供給することが可能となり、より品質の高いシーラント材、ひいてはより品質の高いシーラントタイヤを製造できる。
また、各固形原料は、それぞれ別個の供給装置で供給することが好ましい。これにより、事前に各原料をブレンドする必要が無いため、量産時の材料の供給が容易になる。
可塑剤は、プランジャーポンプを用いて定量供給することが好ましい。これにより、可塑剤を精度良く定量供給することが可能となり、より品質の高いシーラント材、ひいてはより品質の高いシーラントタイヤを製造できる。
液状ポリマーは、ギアポンプを用いて定量供給することが好ましい。これにより、液状ポリマーを精度良く定量供給することが可能となり、より品質の高いシーラント材、ひいてはより品質の高いシーラントタイヤを製造できる。
供給される液状ポリマーは、定温管理されていることが好ましい。定温管理することにより、より精度良く液状ポリマーを定量供給することが可能となる。供給される液状ポリマーの温度は、好ましくは20〜90℃、より好ましくは40〜70℃である。
連続混練機(特に、二軸混練押出機)の混合は、混合の容易性、押し出し性、分散性、架橋反応の観点から、バレル温度30(好ましくは50)〜150℃で実施することが好ましい。
充分な混合性の観点から、上流側で供給する材料の混合時間は、1〜3分、中流側で供給する材料の混合時間は、1〜3分であることが好ましい。一方、架橋を防止する観点から、下流側で供給する材料の混合時間は、0.5〜2分であることが好ましい。なお、各混合時間は、連続混練機(特に、二軸混練押出機)に供給されてから排出されるまでの滞留時間をいい、例えば、下流側で供給された材料の混合時間は、下流側の供給口への供給時から排出されるまでの滞留時間である。
連続混練機(特に、二軸混練押出機)のスクリューの回転数や、温調機の設定で、排出口から吐出されるシーラント材の温度を調整でき、ひいてはシーラント材の硬化促進速度をコントロールできる。連続混練機(特に、二軸混練押出機)は、スクリューの回転数を上げると混練性と材料温度が上がる。なお、スクリューの回転数は吐出量には影響しない。スクリューの回転数は、充分な混合性、及び硬化促進速度のコントロールの観点から、50〜700(好ましくは550)rpmであることが好ましい。
連続混練機(特に、二軸混練押出機)の排出口から吐出されるシーラント材の温度は、充分な混合性、及び硬化促進速度のコントロールの観点から、70〜150℃であることが好ましく、90〜130℃であることがより好ましい。シーラント材の温度が上記範囲内であると、塗布時から架橋反応が始まり、タイヤ内周面への良好な粘着性を有すると共に、架橋反応がより好適に進行し、シール性の高いシーラントタイヤを製造できる。また、後述の架橋工程を必要としない。
連続混練機(特に、二軸混練押出機)の排出口から吐出されるシーラント材の量は、供給口への原料の供給量に基づいて決定される。供給口への原料の供給量は、特に限定されず、当業者であれば適宜設定可能である。
ユニフォミティー及びシール性により優れたシーラントタイヤが好適に得られるという理由から、排出口から吐出されるシーラント材の量(吐出量)が実質的に一定であることが好ましい。
ここで、本明細書において、吐出量が実質的に一定とは、吐出量の変動が93〜107%(好ましくは97〜103%、より好ましくは98〜102%、更に好ましくは99〜101%)に収まることを意味する。
連続混練機(特に、二軸混練押出機)の排出口にはノズルを接続することが好ましい。連続混練機(特に、二軸混練押出機)は材料を高圧で吐出できるので、ノズル(好ましくは抵抗の大きい小径ノズル)を排出口に取付けることにより、調製したシーラント材を細い略紐状形状(ビード状)にしてタイヤに貼り付けることができる。すなわち、シーラント材を連続混練機(特に、二軸混練押出機)の排出口に接続されたノズルから吐出して順次タイヤの内周面に塗布することで、シーラント材の厚さが実質的に一定となり、タイヤのユニフォミティーの悪化を防止でき、重量バランスに優れたシーラントタイヤを製造できる。
次いで、混合したシーラント材を連続混練機(特に、二軸混練押出機)等押出機の排出口に接続されたノズルから吐出することで、加硫成形済みのタイヤの内周面に直接フィードし、内周面に適用すること等により、シーラントタイヤが製造される。これにより、二軸混練押出機等で混合され、かつ押出機内での架橋反応の進行が抑制されたシーラント材を、そのままタイヤ内周面に塗布できるため、塗布時から架橋反応が始まり、タイヤ内周面への良好な粘着性を有すると共に、好適に架橋反応が進行する。これにより、タイヤの内周面に塗布されたシーラント材は、好適に略紐状形状を保持したままシーラント層を形成する。従って、一連の工程でシーラント塗布加工が可能になり、生産性もより向上する。また、加硫成形済みのタイヤの内周面にシーラント材を塗布することにより、より生産性良くシーラントタイヤを製造できる。更に、連続混練機(特に、二軸混練押出機)の排出口に接続されたノズルから吐出されるシーラント材を順次タイヤの内周面に直接塗布することが好ましい。これにより、連続混練機(特に、二軸混練押出機)内での架橋反応の進行が抑制されたシーラント材を、そのままタイヤ内周面に連続的に塗布できるため、塗布時から架橋反応が始まり、タイヤ内周面への良好な粘着性を有すると共に、好適に架橋反応が進行し、より生産性良く重量バランスに優れたシーラントタイヤを製造できる。
タイヤの内周面へのシーラント材の塗布は、少なくともトレッド部に対応するタイヤの内周面、より好ましくは、少なくともブレーカーに対応するタイヤの内周面に行えばよい。シーラント材の塗布が不要な部分への塗布を省略することにより、より生産性良くシーラントタイヤを製造できる。
ここで、トレッド部に対応するタイヤの内周面とは、路面に接するトレッド部のタイヤ半径方向内側に位置するタイヤの内周面を意味し、ブレーカーに対応するタイヤの内周面とは、ブレーカーのタイヤ半径方向内側に位置するタイヤの内周面を意味する。なお、ブレーカーとは、トレッドの内部で、かつカーカスの半径方向外側に配される部材であり、具体的には、図9のブレーカー16などに示される部材である。
通常、未加硫タイヤは、ブラダーを使用して加硫する。このブラダーは、加硫時に膨張し、タイヤの内周面(インナーライナー)に密着することとなる。そこで、加硫が終了した際に、ブラダーとタイヤの内周面(インナーライナー)とが癒着しないように、通常、タイヤの内周面(インナーライナー)には離型剤が塗布されている。
離型剤としては、通常、水溶性ペイントや離型用ゴムが使用される。しかしながら、タイヤの内周面に離型剤が存在すると、シーラント材とタイヤの内周面との粘着性が低下するおそれがある。そのため、タイヤの内周面から予め離型剤を除去しておくことが好ましい。特に、タイヤの内周面のうち、少なくともシーラント材の塗布を開始する部分において、予め離型剤を除去しておくことがより好ましい。なお、タイヤの内周面のうち、シーラント材を塗布する全ての部分から予め離型剤を除去しておくことが更に好ましい。これにより、シーラント材のタイヤの内周面への付着性がより向上し、よりシール性の高いシーラントタイヤを製造できる。
タイヤの内周面から離型剤を除去する方法としては、特に限定されず、バフ処理、レーザー処理、高圧水洗浄、洗剤(好ましくは中性洗剤)による除去等の公知の方法が挙げられる。
ここで、図7を使用して、シーラントタイヤの製造方法に用いる製造設備の一例を簡単に説明する。
製造設備は、二軸混練押出機60、二軸混練押出機60に原料を供給する材料フィーダー62、タイヤ10を固定して回転させるとともに、タイヤの幅方向及び半径方向に移動させる回転駆動装置50を有する。二軸混練押出機60は、供給口61を5個有している。具体的には、上流側の供給口61aを3個、中流側の供給口61bを1個、下流側の供給口61cを1個有している。更に、二軸混練押出機60の排出口にはノズル30が接続されている。
原料が材料フィーダー62から、二軸混練押出機60が有する供給口61を介して二軸混練押出機60に順次供給され、各原料が二軸混練押出機60により混練され、シーラント材が順次調製される。調製されたシーラント材は、二軸混練押出機60の排出口に接続されたノズル30から連続的に吐出される。タイヤ駆動装置でタイヤを回転させながらトラバース及び/又は昇降させ(タイヤの幅方向及び/又は半径方向に移動させ)、ノズル30から吐出されるシーラント材を順次タイヤの内周面に直接塗布することにより、タイヤの内周面にシーラント材を連続的にらせん状に貼り付けることが可能となる。すなわち、タイヤを回転させながらタイヤの幅方向及び/又は半径方向に移動させつつ、連続混練機(特に、二軸混練押出機)から連続的に吐出されるシーラント材を順次タイヤの内周面に直接塗布することにより、タイヤの内周面にシーラント材を連続的にらせん状に貼り付けることが可能となる。
タイヤの内周面にシーラント材を連続的にらせん状に貼り付けることにより、タイヤのユニフォミティーの悪化を防止でき、重量バランスに優れたシーラントタイヤを製造できる。また、タイヤの内周面にシーラント材を連続的にらせん状に貼り付けることにより、タイヤ周方向及びタイヤ幅方向(特に、タイヤ周方向)においてシーラント材が均一なシーラント層を形成できるため、シール性に優れたシーラントタイヤを安定的に生産性良く製造できる。なお、シーラント材は、幅方向に重ならないように貼り付けられていることが好ましく、隙間なく貼り付けられていることがより好ましい。これにより、タイヤのユニフォミティーの悪化をより防止できると共に、より均一なシーラント層を形成できる。
また、原料を連続混練機(特に、二軸混練押出機)に順次供給し、連続混練機(特に、二軸混練押出機)によりシーラント材が順次調製され、調製されたシーラント材が、連続混練機(特に、二軸混練押出機)の排出口に接続されたノズルから連続的に吐出され、シーラント材が順次タイヤの内周面に直接塗布される。これにより、生産性良くシーラントタイヤを製造できる。
シーラント層は、略紐状形状のシーラント材を、連続的にらせん状にタイヤの内周面に塗布することにより形成されることが好ましい。これにより、タイヤの内周面に沿って連続的にらせん状に配置された略紐状形状のシーラント材によって構成されたシーラント層をタイヤの内周面に形成することが可能となる。シーラント層は、シーラント材が積層されて形成されてもよいが、シーラント材1層からなることが好ましい。
シーラント材が、略紐状形状であると、シーラント材を連続的にらせん状にタイヤの内周面に塗布することにより、シーラント材1層からなるシーラント層を形成できる。シーラント材が、略紐状形状であると、塗布されるシーラント材にある程度の厚さがあるため、シーラント材1層からなるシーラント層であっても、タイヤのユニフォミティーの悪化を防止でき、重量バランスに優れると共に、良好なシール性を有するシーラントタイヤを製造できる。また、シーラント材を何層も積層することなく、1層塗布するだけでよいため、より生産性よくシーラントタイヤを製造できる。
シーラント材をタイヤの内周面に巻き付ける回数は、タイヤのユニフォミティーの悪化を防止でき、重量バランスに優れると共に、良好なシール性を有するシーラントタイヤをより生産性よく製造できるという理由から、好ましくは20〜70回、より好ましくは20〜60回、更に好ましくは35〜50回である。ここで、巻き付ける回数が2回とは、タイヤ内周面を2周するようにシーラント材が塗布されていることを意味し、図4において、シーラント材を巻き付ける回数は、6回である。
連続混練機(特に、二軸混練押出機)を使用する事により、シーラント材の調製(混練)とシーラント材の吐出(塗布)を同時に連続的に行うことができ、高粘度で粘着性が高く取り扱いが難しいシーラント材をハンドリングすることなく直接タイヤの内周面に塗布でき、生産性良くシーラントタイヤを製造できる。また、バッチ式混練装置で硬化剤も含めて混練し、シーラント材を調製した場合、シーラント材の調製からタイヤに貼り付けるまでの時間が一定とならないが、有機過酸化物を含む原料を連続混練機(特に、二軸混練押出機)により混合することにより順次調製されるシーラント材を順次タイヤの内周面に塗布することにより、シーラント材の調製からタイヤに貼り付けるまでの時間が一定となるため、ノズルを使用してシーラント材を塗布する場合には、ノズルからのシーラント材の吐出量が安定し、更には、シーラント材のタイヤへの粘着性の低下を抑制しつつ一定の粘着性となり、高粘度で粘着性が高く取り扱いが難しいシーラント材を使用しても精度良くタイヤの内周面に塗布でき、安定的に一定の品質のシーラントタイヤを製造できる。
次に、以下において、タイヤの内周面にシーラント材を塗布する方法について説明する。
<第1実施形態>
第1実施形態では、シーラントタイヤは、タイヤを回転させ、かつ、上記タイヤ及びノズルの少なくとも一方をタイヤの幅方向に移動させながら、粘着性のシーラント材を上記ノズルによって上記タイヤの内周面に塗布する際、非接触式変位センサによって上記タイヤの内周面と上記ノズルの先端との距離を測定する工程(1)と、測定結果に基づき、上記タイヤ及びノズルの少なくとも一方をタイヤの半径方向に移動させることで、上記タイヤの内周面と上記ノズルの先端との間隔を所定の距離に調整する工程(2)と、上記間隔が調整されたタイヤの内周面に上記シーラント材を塗布する工程(3)とを行うこと等により、製造できる。
非接触式変位センサを用いてタイヤの内周面とノズルの先端との距離を測定し、その測定結果をフィードバックすることで、タイヤの内周面とノズルの先端との間隔を一定の距離に保つことができる。そして、上記間隔を一定の距離に保ちながらタイヤの内周面にシーラント材を塗布していくため、タイヤ形状のばらつきやジョイント部等の凹凸による影響を受けることなく、シーラント材の厚さを均一にすることができる。さらに、従来のようにタイヤサイズごとに座標値を入力する必要がないため、効率良くシーラント材を塗布することができる。
図1は、シーラントタイヤの製造方法で用いる塗布装置の一例を模式的に示す説明図である。また、図2は、図1に示す塗布装置を構成するノズルの先端付近の拡大図である。
図1は、タイヤ10の一部を子午線方向に切った断面(タイヤの幅方向及び半径方向を含む平面で切った断面)を示しており、図2は、タイヤ10の一部をタイヤの周方向及び半径方向を含む平面で切った断面を示している。図1及び図2においては、X方向がタイヤの幅方向(軸方向)、Y方向がタイヤの周方向、Z方向がタイヤの半径方向である。
タイヤ10は、タイヤを固定して回転させるとともに、タイヤの幅方向及び半径方向に移動させる回転駆動装置(図示せず)にセットされている。この回転駆動装置により、タイヤの軸周りの回転、タイヤの幅方向の移動及びタイヤの半径方向の移動が独立して可能になっている。
また、回転駆動装置は、タイヤの半径方向の移動量を制御可能な制御機構(図示せず)を備えている。制御機構は、タイヤの幅方向の移動量及び/又はタイヤの回転速度を制御可能であってもよい。
ノズル30は、押出機(図示せず)の先端に取り付けられており、タイヤ10の内側に挿入することが可能である。そして、押出機から押し出された粘着性のシーラント材20が、ノズル30の先端31から吐出される。
非接触式変位センサ40は、ノズル30に取り付けられており、タイヤ10の内周面11とノズル30の先端31との間の距離dを測定する。
このように、非接触式変位センサが測定する距離dとは、タイヤの内周面とノズルの先端とのタイヤの半径方向の距離である。
本実施形態のシーラントタイヤの製造方法では、まず、加硫工程で成形されたタイヤ10を回転駆動装置にセットし、ノズル30をタイヤ10の内側に挿入する。そして、図1及び図2に示すように、タイヤ10を回転させ、かつ、タイヤ10を幅方向に移動させながら、シーラント材20をノズル30から吐出することによってタイヤ10の内周面11に連続的に塗布する。タイヤ10の幅方向の移動は、予め入力しておいたタイヤ10の内周面11のプロファイル形状に沿って行う。
後述するように、シーラント材20は略紐状形状であることが好ましく、より具体的には、シーラント材がタイヤの内周面に塗布された時点で、シーラント材が略紐状形状を保持することが好ましく、この場合、略紐状形状のシーラント材20は、連続的にタイヤ10の内周面11にらせん状に貼り付けられることになる。
なお、本明細書において、略紐状形状とは、幅よりも長さの方が長く、ある程度の幅及び厚さを有する形状を意味する。略紐状形状のシーラント材が連続的にタイヤの内周面にらせん状に貼り付けられた状態の一例を図4に模式的に示す。また、図4のシーラント材をシーラント材の塗布方向(長さ方向)と直交する直線AAで切断した際のシーラント材の断面の一例を図8に模式的に示す。このように、略紐状形状のシーラント材は、ある程度の幅(図8中、Wで示される長さ)とある程度の厚さ(図8中、Dで示される長さ)を有する。なお、ここで、シーラント材の幅とは、塗布後のシーラント材の幅を意味し、シーラント材の厚さとは、塗布後のシーラント材の厚さ、より具体的には、シーラント層の厚さを意味する。
略紐状形状のシーラント材は、具体的には、後述する、シーラント材の厚さ(塗布後のシーラント材の厚さ、シーラント層の厚さ、図8中、Dで示される長さ)の好ましい数値範囲、及びシーラント材の幅(塗布後のシーラント材の幅、図4中、Wで示される長さ、図6中、W0で示される長さ)の好ましい数値範囲を満たすシーラント材、より好ましくは、後述する、シーラント材の厚さと、シーラント材の幅の比率(シーラント材の厚さ/シーラント材の幅)の好ましい数値範囲を満たすシーラント材である。また、後述する、シーラント材の断面積の好ましい数値範囲を満たすシーラント材でもある。
本実施形態のシーラントタイヤの製造方法では、以下の工程(1)〜(3)により、シーラント材をタイヤの内周面に塗布する。
<工程(1)>
図2に示すように、非接触式変位センサ40により、シーラント材20を塗布する前のタイヤ10の内周面11とノズル30の先端31との距離dを測定する。距離dの測定は、シーラント材20を各タイヤ10の内周面11に塗布する度に行い、シーラント材20の塗布開始から塗布終了まで行う。
<工程(2)>
距離dの測定データを回転駆動装置の制御機構に転送する。制御機構では、測定データに基づき、タイヤ10の内周面11とノズル30の先端31との間隔が所定の距離になるように、タイヤの半径方向の移動量を調整する。
<工程(3)>
シーラント材20は、ノズル30の先端31から連続的に吐出されているので、上記間隔が調整されたタイヤ10の内周面11に塗布されることになる。以上の工程(1)〜(3)により、タイヤ10の内周面11に均一な厚さのシーラント材20を塗布することができる。
図3は、タイヤに対するノズルの位置関係を模式的に示す説明図である。
図3に示すように、ノズル30がタイヤ10に対して(a)〜(d)で示す位置に移動する間、タイヤ10の内周面11とノズル30の先端31との間隔を所定の距離d0に保ちながらシーラント材を塗布することができる。
効果がより好適に得られるという理由から、調整後の間隔d0は、好ましくは0.3mm以上、より好ましくは1.0mm以上である。0.3mm未満であると、ノズルの先端がタイヤの内周面に近すぎるため、所定の厚さを有するシーラント材を塗布することが困難となる。また、調整後の間隔d0は、好ましくは3.0mm以下、より好ましくは2.0mm以下である。3.0mmを超えると、シーラント材をタイヤにうまく貼り付けられず、製造効率が低下するおそれがある。
ここで、調整後の間隔d0とは、上記工程(2)により調整された後のタイヤの内周面とノズルの先端とのタイヤの半径方向の距離である。
また、効果がより好適に得られるという理由から、調整後の間隔d0は、塗布後のシーラント材の厚さの30%以下が好ましく、20%以下がより好ましく、また、塗布後のシーラント材の厚さの5%以上が好ましく、10%以上がより好ましい。
シーラント材の厚さ(塗布後のシーラント材の厚さ、シーラント層の厚さ、図8中、Dで示される長さ)は特に限定されないが、効果がより好適に得られるという理由から、好ましくは1.0mm以上、より好ましくは1.5mm以上、更に好ましくは2.0mm以上、特に好ましくは2.5mm以上であり、また、好ましくは10.0mm以下、より好ましくは8.0mm以下、更に好ましくは5.0mm以下である。1.0mm未満であると、タイヤがパンクした際にパンク穴を確実に塞ぐことが困難となる。また、10.0mmを超えても、パンク穴を塞ぐ効果はあまり変わらず、タイヤの重量が増加してしまうため好ましくない。なお、シーラント材の厚さは、タイヤの回転速度、タイヤの幅方向の移動速度、ノズルの先端とタイヤの内周面との距離等を調整することにより調整することができる。
シーラント材の厚さ(塗布後のシーラント材の厚さ、シーラント層の厚さ)は、実質的に一定であることが好ましい。これにより、タイヤのユニフォミティーの悪化をより防止でき、より重量バランスに優れたシーラントタイヤを製造できる。
ここで、本明細書において、厚さが実質的に一定とは、厚さの変動が90〜110%(好ましくは95〜105%、より好ましくは98〜102%、更に好ましくは99〜101%)に収まることを意味する。
ノズルも目詰まりが少なく、操業安定性に優れるという理由、及び、効果がより好適に得られるという理由から、略紐状形状のシーラント材を使用することが好ましく、略紐状形状のシーラント材をタイヤの内周面にらせん状に貼り付けることがより好ましい。しかし、略紐状形状ではないシーラント材を使用し、タイヤの内周面にスプレーすることでシーラント材を塗布してもよい。
略紐状形状のシーラント材を使用する際、シーラント材の幅(塗布後のシーラント材の幅、図4中、Wで示される長さ)は特に限定されないが、効果がより好適に得られるという理由から、好ましくは0.8mm以上、より好ましくは1.3mm以上、更に好ましくは1.5mm以上である。0.8mm未満であると、シーラント材をタイヤの内周面に巻き付ける回数が多くなり、製造効率が低下するおそれがある。また、シーラント材の幅は、好ましくは18mm以下、より好ましくは13mm以下、更に好ましくは9.0mm以下、特に好ましくは7.0mm以下、最も好ましくは6.0mm以下、より最も好ましくは5.0mm以下である。18mmを超えると、重量アンバランスが発生しやすくなるおそれがある。
シーラント材の厚さ(塗布後のシーラント材の厚さ、シーラント層の厚さ、図8中、Dで示される長さ)と、シーラント材の幅(塗布後のシーラント材の幅、図4中、Wで示される長さ)の比率(シーラント材の厚さ/シーラント材の幅)は、好ましくは0.6〜1.4、より好ましくは0.7〜1.3、更に好ましくは0.8〜1.2、特に好ましくは0.9〜1.1である。該比率が1.0に近いほど、シーラント材の形状が理想的な紐状形状となり、シール性の高いシーラントタイヤをより生産性良く製造できる。
シーラント材の断面積(塗布後のシーラント材の断面積、図8では、D×Wで算出される面積)は、効果がより好適に得られるという理由から、好ましくは0.8mm2以上、より好ましくは1.95mm2以上、更に好ましくは3.0mm2以上、特に好ましくは3.75mm2以上であり、好ましくは180mm2以下、より好ましくは104mm2以下、更に好ましくは45mm2以下、特に好ましくは35mm2以下、最も好ましくは25mm2以下である。
シーラント材が貼り付けられている領域の幅(以下、貼り付け領域の幅、シーラント層の幅ともいい、図4では6×Wで表される長さ、図6ではW1+6×W0で表される長さ)は特に限定されないが、効果がより好適に得られるという理由から、トレッド接地幅の80%以上が好ましく、90%以上がより好ましく、100%以上が更に好ましく、また、120%以下が好ましく、110%以下がより好ましい。
シーラント層の幅は、効果がより好適に得られるという理由から、タイヤのブレーカー幅(ブレーカーのタイヤ幅方向の長さ)の85〜115%であることが好ましく、95〜105%であることがより好ましい。
なお、本明細書において、タイヤに複数のブレーカーが設けられている場合、ブレーカーのタイヤ幅方向の長さは、複数のブレーカーのうち、最もタイヤ幅方向の長さが長いブレーカーのタイヤ幅方向の長さを意味する。
本明細書において、トレッド接地幅は、以下のように定められる。まず、正規リムにリム組みされかつ正規内圧が充填された無負荷の正規状態のタイヤに、正規荷重を負荷してキャンバー角0度で平面に接地させたときの最もタイヤ軸方向外側の接地位置を「接地端」Teと定める。そして、この接地端Te、Te間のタイヤ軸方向の距離をトレッド接地幅TWと定める。特に断りがない場合、タイヤ各部の寸法等は、この正規状態で測定された値である。
上記「正規リム」とは、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めているリムであり、JATMAであれば“標準リム”、TRAであれば“Design Rim”、ETRTOであれば“Measuring Rim”となる。また、上記「正規内圧」とは、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている空気圧であり、JATMAであれば“最高空気圧”、TRAであれば表“TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES”に記載の最大値、ETRTOであれば“INFLATION PRESSURE”とするが、タイヤが乗用車用である場合には180kPaとする。
また、上記「正規荷重」とは、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている荷重であり、JATMAであれば“最大負荷能力”、TRAであれば表“TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES”に記載の最大値、ETRTOであれば“LOAD CAPACITY”であるが、タイヤが乗用車用の場合には上記荷重の88%に相当する荷重とする。
シーラント材を塗布する際におけるタイヤの回転速度は特に限定されないが、効果がより好適に得られるという理由から、好ましくは5m/min以上、より好ましくは10m/min以上であり、また、好ましくは30m/min以下、より好ましくは20m/min以下である。5m/min未満である場合及び30m/minを超える場合には、均一な厚さのシーラント材を塗布することが困難となる。
非接触式変位センサを用いることにより、シーラント材がセンサに付着することによる故障のリスクを低減させることができる。使用する非接触式変位センサとしては、タイヤの内周面とノズルの先端との距離を測定できるものであれば特に限定されないが、例えば、レーザセンサ、光センサ、静電容量センサ等が挙げられる。これらのセンサは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、ゴムを測定するという観点から、レーザセンサ、光センサが好ましく、レーザセンサがより好ましい。レーザセンサを使用する場合、タイヤの内周面にレーザを照射し、レーザの反射からタイヤの内周面とレーザセンサの先端との距離を測定し、その値からレーザセンサの先端とノズルの先端との距離を差し引くことにより、タイヤの内周面とノズルの先端との距離を求めることができる。
非接触式変位センサの位置は、シーラント材を塗布する前のタイヤの内周面とノズルの先端との距離を測定できる位置であれば特に限定されないが、ノズルに取り付けることが好ましく、シーラント材が付着しない位置に設置することがより好ましい。
その他、非接触式変位センサの個数、大きさなどについても、特に限定されない。
非接触式変位センサは、熱に弱いため、ノズルから吐出される高温のシーラント材からの熱影響を防止するために、断熱材等を用いた保護及び/又はエアー等を用いた冷却を行うことが好ましい。これにより、センサの耐久性を向上させることができる。
第1実施形態の説明では、タイヤの幅方向及び半径方向の移動として、ノズルは移動せずタイヤが移動する例を説明したが、タイヤが移動せずノズルが移動してもよいし、タイヤ及びノズルの両方が移動してもよい。
また、回転駆動装置は、タイヤのビード部の幅を広げる手段を有することが好ましい。シーラント材をタイヤに塗布する際に、タイヤのビード部の幅を広げることにより、シーラント材をタイヤに容易に塗布することができる。特に、タイヤを回転駆動装置にセットした後に、タイヤの内周面近傍にノズルを導入する際に、ノズルを平行移動するだけでノズルを導入でき、制御が容易となり、生産性が向上する。
タイヤのビード部の幅を広げる手段としては、タイヤのビード部の幅を広げることが可能であれば特に限定されないが、互いに位置の変わらない複数(好ましくは2個)のロールを有する装置2組を用い、それぞれがタイヤ幅方向に動く機構等が挙げられる。該装置をタイヤ開口部両側からタイヤ内に入れてタイヤのビード部の幅を広げればよい。
上記製造方法では、二軸混練押出機等で混合され、かつ押出機内での架橋反応の進行が抑制されたシーラント材を、そのままタイヤ内周面に塗布するため、塗布時から架橋反応が始まり、タイヤ内周面への良好な粘着性を有すると共に、架橋反応がより好適に進行し、シール性の高いシーラントタイヤを製造できる。そのため、シーラント材を塗布したシーラントタイヤを更に架橋する必要がなく、良好な生産性が得られる。
なお、必要に応じて、シーラント材を塗布したシーラントタイヤを更に架橋する架橋工程を行なってもよい。
架橋工程では、シーラントタイヤを加熱することが好ましい。これにより、シーラント材の架橋速度を向上でき、架橋反応をより好適に進行でき、より生産性良くシーラントタイヤを製造できる。加熱方法としては、特に限定されず、公知の方法を採用できるが、オーブンを使用する方法が好適である。架橋工程は、例えば、シーラントタイヤを70℃〜190℃(好ましくは150℃〜190℃)のオーブン内に2〜15分間入れればよい。
なお、塗布直後の流動しやすいシーラント材でも流動を防ぎユニフォミティーを悪化させずに架橋反応を行うことができるという理由から、架橋する際に、タイヤをタイヤ周方向に回転させることが好ましい。回転速度は、好ましくは300〜1000rpmである。具体的には、例えば、オーブンとして回転機構付きオーブンを使用すれば良い。
また、架橋工程を別途行わない場合であっても、シーラント材の架橋反応が終了するまでタイヤをタイヤ周方向に回転させることが好ましい。これにより、塗布直後の流動しやすいシーラント材でも流動を防ぎユニフォミティーを悪化させずに架橋反応を行うことができる。回転速度は、架橋工程の場合と同様である。
シーラント材の架橋速度を向上させるために、シーラント材を塗布する前に予めタイヤを温めておくことが好ましい。これにより、より生産性良くシーラントタイヤを製造できる。タイヤの予熱温度は、好ましくは40〜100℃、より好ましくは50〜70℃である。タイヤの予熱温度を上記範囲内とすることにより、塗布時から架橋反応が好適に始まり、架橋反応がより好適に進行し、シール性の高いシーラントタイヤを製造できる。また、タイヤの予熱温度を上記範囲内とすることにより、架橋工程を行う必要がなくなるため、生産性良くシーラントタイヤを製造できる。
連続混練機(特に、二軸混練押出機)は一般に連続運転を行う。一方、シーラントタイヤを製造する際には、1のタイヤへの塗布が終了するとタイヤを取り替える必要がある。この際に、生産性の低下を抑制しつつ、より品質の高いシーラントタイヤを製造するために、以下の(1)、(2)の方法を採用すればよい。(1)の方法では、品質の低下、(2)の方法では、コストの増大というデメリットがあるため、状況に応じて適宜使い分ければ良い。
(1)連続混練機、全ての供給装置を同時に稼働、停止させることにより、シーラント材のタイヤの内周面への供給を制御する
すなわち、1のタイヤへの塗布が終了すると、連続混練機、全ての供給装置を同時に停止させ、タイヤを交換し(1分以内に交換することが好ましい)、連続混練機、全ての供給装置を同時に稼働させ、タイヤへの塗布を再開すればよい。タイヤの交換を速やかに(好ましくは1分以内に)行うことにより、品質の低下を抑制できる。
(2)連続混練機、全ての供給装置を稼働させたまま、流路を切り替えることにより、シーラント材のタイヤの内周面への供給を制御する
すなわち、連続混練機に、タイヤの内周面に直接フィードするノズルとは別の流路を設けておき、1のタイヤへの塗布が終了すると、タイヤの交換が終了するまで、調製されたシーラント材を別の流路から排出すれば良い。この方法では、連続混練機、全ての供給装置を稼働させたままシーラントタイヤを製造できるため、より品質の高いシーラントタイヤを製造できる。
なお、上記シーラントタイヤのカーカスに使用されるカーカスコードとしては、特に限定されず、繊維コード、スチールコード等が挙げられる。なかでも、スチールコードが好ましい。とりわけ、JISG3506に規定される硬鋼線材からなるスチールコードが望ましい。シーラントタイヤにおいて、カーカスコードとして、一般的に使用される繊維コードではなく、強度の高いスチールコードを使用することにより、大幅に耐サイドカット性能(縁石への乗り上げ等で生じるタイヤサイド部のカットに対する耐性)を改善することができ、サイド部も含めたタイヤ全体の耐パンク性をより改善することができる。
スチールコードの構造としては、特に限定されず、例えば、1×n構成の単撚りスチールコード、k+m構成の層撚りスチールコード、1×n構成の束撚りスチールコード、m×n構成の複撚りスチールコード等があげられる。ここで、1×n構成の単撚りスチールコードとは、n本のフィラメントを撚りあわせて得られる1層の撚りスチールコードのことである。また、k+m構成の層撚りスチールコードとは、撚り方向、撚りピッチの異なる2層構造を持ち、内層にk本のフィラメント、外層にm本のフィラメントを有するスチールコードのことである。また、1×n構成の束撚りスチールコードとは、n本のフィラメントを束ねて撚りあわせて得られる束撚りスチールコードのことである。また、m×n構成の複撚りスチールコードとは、n本のフィラメントを下撚りして得られるストランドのm本を撚りあわせて得られる複撚りスチールコードのことである。nは1〜27の整数、kは1〜10の整数、mは1〜3の整数である。
スチールコードの撚りピッチは、好ましくは13mm以下、より好ましくは11mm以下であり、また、好ましくは5mm以上、より好ましくは7mm以上である。
スチールコードには、螺旋状に型付けされた型付フィラメントが少なくとも1本含まれることが好ましい。このような型付フィラメントは、スチールコードに比較的大きな隙間を設けてゴム浸透性を向上しうるとともに、低荷重時の伸びを維持でき、加硫成形時の成形不良の発生を防ぎうる。
スチールコードの表面は、ゴム組成物に対する初期接着性を向上させるため、黄銅(真鍮)、Zn等でメッキすることが好ましい。
スチールコードは、50N負荷時の伸びが、0.5〜1.5%であるのが好ましい。なお、前記50N負荷時の伸びが1.5%を超えると、高荷重時において補強コードの伸びが小さくなり、外乱吸収性を維持できなくなるおそれがある。逆に、前記50N負荷時の伸びが0.5%未満であると、加硫成形時において十分に伸びることができず、成形不良が生じるおそれがある。このような観点より、前記50N負荷時の伸びは、より好ましくは0.7%以上、また、より好ましくは1.3%以下である。
スチールコードのエンズは20〜50(本/5cm)が好ましい。
<第2実施形態>
第1実施形態の方法のみでは、シーラント材が略紐状形状の場合に、タイヤの内周面へのシーラント材の貼り付けが難しい場合があり、特に、貼り付け開始部分のシーラント材が剥離しやすいという問題があることが本発明者の検討の結果明らかとなってきた。第2実施形態では、上記シーラントタイヤの製造方法において、タイヤの内周面とノズルの先端との間隔を距離d1にしてシーラント材を貼り付けた後、上記間隔を距離d1より大きい距離d2にしてシーラント材を貼り付けることを特徴としている。これにより、貼り付け開始時においてタイヤの内周面とノズルの先端との間隔を近づけることで、貼り付け開始部分に対応するシーラント材の幅を広くすることができ、少なくともトレッド部に対応するタイヤの内周面に、粘着性を有し、かつ略紐状形状のシーラント材が連続的にらせん状に貼り付けられており、シーラント材の長さ方向における端部の少なくとも一方が、長さ方向に隣接する部分よりも幅が広い幅広部であることを特徴とするシーラントタイヤを容易に製造することができる。該シーラントタイヤでは、貼り付け開始部分に対応するシーラント材の幅を広くすることにより、当該部分の接着力を改善し、当該部分におけるシーラント材の剥離を防止することができる。
なお、第2実施形態の説明では、主に第1実施形態と異なる点のみを説明し、第1実施形態と重複する内容については記載を省略する。
図5は、図1に示す塗布装置を構成するノズルの先端付近の拡大図であり、(a)がシーラント材の貼り付け開始直後の状態、(b)が所定時間経過後の状態を示している。
図5は、タイヤ10の一部をタイヤの周方向及び半径方向を含む平面で切った断面を示している。図5においては、X方向がタイヤの幅方向(軸方向)、Y方向がタイヤの周方向、Z方向がタイヤの半径方向である。
第2実施形態では、まず、加硫工程で成形されたタイヤ10を回転駆動装置にセットし、ノズル30をタイヤ10の内側に挿入する。そして、図1及び図5に示すように、タイヤ10を回転させ、かつ、タイヤ10を幅方向に移動させながら、シーラント材20をノズル30から吐出することによってタイヤ10の内周面11に連続的に塗布する。タイヤ10の幅方向の移動は、例えば、予め入力しておいたタイヤ10の内周面11のプロファイル形状に沿って行う。
シーラント材20は、粘着性を有し、かつ略紐状形状であるため、トレッド部に対応するタイヤ10の内周面11に、連続的にらせん状に貼り付けられることになる。
この際、貼り付け開始から所定時間の間は、図5(a)に示すように、タイヤ10の内周面11とノズル30の先端31との間隔を距離d1にしてシーラント材20を貼り付ける。そして、所定時間経過後、図5(b)に示すように、タイヤ10を半径方向に移動させることで上記間隔を距離d1より大きい距離d2に変更してシーラント材20を貼り付ける。
なお、シーラント材の貼り付けを終了する前に、上記間隔を距離d2から距離d1に戻してもよいが、製造効率、タイヤの重量バランスの観点からは、シーラント材の貼り付けを終了するまで距離d2であることが好ましい。
また、貼り付け開始から所定時間の間は上記距離d1の値を一定に保ち、所定時間経過後は上記距離d2の値を一定に保つことが好ましいが、d1<d2の関係を満たす限り、距離d1及びd2の値は必ずしも一定でなくてもよい。
上記距離d1の値は特に限定されないが、効果がより好適に得られるという理由から、好ましくは0.3mm以上、より好ましくは0.5mm以上である。0.3mm未満であると、ノズルの先端がタイヤの内周面に近すぎるため、シーラント材がノズルに付着しやすくなり、ノズルを掃除する頻度が高くなるおそれがある。また、上記距離d1の値は、好ましくは2mm以下、より好ましくは1mm以下である。2mmを超えると、幅広部を設ける効果が充分に得られないおそれがある。
上記距離d2の値も特に限定されないが、効果がより好適に得られるという理由から、好ましくは0.3mm以上、より好ましくは1mm以上であり、また、好ましくは3mm以下、より好ましくは2mm以下である。距離d2は、上述の調整後の間隔d0と同一であることが好ましい。
なお、本明細書において、タイヤの内周面とノズルの先端との距離d1、d2とは、タイヤの内周面とノズルの先端とのタイヤの半径方向の距離である。
シーラント材を貼り付ける際におけるタイヤの回転速度は特に限定されないが、効果がより好適に得られるという理由から、好ましくは5m/min以上、より好ましくは10m/min以上であり、また、好ましくは30m/min以下、より好ましくは20m/min以下である。5m/min未満である場合及び30m/minを超える場合には、均一な厚さのシーラント材を貼り付けることが困難となる。
以上の工程により、第2実施形態のシーラントタイヤを製造することができる。
図6は、第2実施形態のシーラントタイヤに貼り付けられているシーラント材の一例を模式的に示す説明図である。
略紐状形状のシーラント材20は、タイヤの周方向に巻き付けられており、連続的にらせん状に貼り付けられている。そして、シーラント材20の長さ方向における一方の端部が、長さ方向に隣接する部分よりも幅が広い幅広部21となっている。この幅広部21が、シーラント材の貼り付け開始部分に対応している。
シーラント材の幅広部の幅(塗布後のシーラント材の幅広部の幅、図6中、W1で示される長さ)は特に限定されないが、効果がより好適に得られるという理由から、幅広部以外の幅(図6中、W0で示される長さ)の103%以上が好ましく、110%以上がより好ましく、120%以上が更に好ましい。103%未満では、幅広部を設ける効果が充分に得られないおそれがある。また、シーラント材の幅広部の幅は、幅広部以外の幅の210%以下が好ましく、180%以下がより好ましく、160%以下が更に好ましい。210%を超えると、幅広部を形成するためにノズルの先端をタイヤの内周面に過度に近づける必要があるため、シーラント材がノズルに付着しやすくなり、ノズルを掃除する頻度が高くなるおそれがある。また、タイヤの重量バランスが崩れるおそれがある。
なお、シーラント材の幅広部の幅は、長さ方向において実質的に一定であることが好ましいが、実質的に一定でない箇所があってもよい。例えば、幅広部は、貼り付け開始部分の幅が最も広く、長さ方向につれて幅が狭くなっていく形状であってもよい。ここで、本明細書において、幅が実質的に一定とは、幅の変動が90〜110%(好ましくは97〜103%、より好ましくは98〜102%、更に好ましくは99〜101%)に収まることを意味する。
シーラント材の幅広部の長さ(塗布後のシーラント材の幅広部の長さ、図6中、L1で示される長さ)は特に限定されないが、効果がより好適に得られるという理由から、好ましくは650mm未満、より好ましくは500mm未満、更に好ましくは350mm未満、特に好ましくは200mm未満である。650mm以上であると、タイヤの内周面にノズルの先端を近づけている時間が長くなるため、シーラント材がノズルに付着しやすくなり、ノズルを掃除する頻度が高くなるおそれがある。また、タイヤの重量バランスが崩れるおそれがある。なお、シーラント材の幅広部の長さは短いほど好ましいが、タイヤの内周面とノズルの先端との距離を制御することを考慮すると、10mm程度が限界である。
シーラント材の幅広部以外の幅(塗布後のシーラント材の幅広部以外の幅、図6中、W0で示される長さ)は特に限定されないが、効果がより好適に得られるという理由から、好ましくは0.8mm以上、より好ましくは1.3mm以上、更に好ましくは1.5mm以上である。0.8mm未満であると、シーラント材をタイヤの内周面に巻き付ける回数が多くなり、製造効率が低下するおそれがある。また、シーラント材の幅広部以外の幅は、好ましくは18mm以下、より好ましくは13mm以下、更に好ましくは9.0mm以下、特に好ましくは7.0mm以下、最も好ましくは6.0mm以下、より最も好ましくは5.0mm以下である。18mmを超えると、重量アンバランスが発生しやすくなるおそれがある。W0は、上述のWと同一であることが好ましい。
なお、シーラント材の幅広部以外の幅は、長さ方向において実質的に一定であることが好ましいが、実質的に一定でない箇所があってもよい。
シーラント材が貼り付けられている領域の幅(以下、貼り付け領域の幅、シーラント層の幅ともいい、図6ではW1+6×W0で表される長さ)は特に限定されないが、効果がより好適に得られるという理由から、トレッド接地幅の80%以上が好ましく、90%以上がより好ましく、100%以上が更に好ましく、また、120%以下が好ましく、110%以下がより好ましい。
シーラント層の幅は、効果がより好適に得られるという理由から、タイヤのブレーカー幅(ブレーカーのタイヤ幅方向の長さ)の85〜115%であることが好ましく、95〜105%であることがより好ましい。
第2実施形態のシーラントタイヤでは、シーラント材は、幅方向に重ならないように貼り付けられていることが好ましく、隙間なく貼り付けられていることがより好ましい。
また、第2実施形態のシーラントタイヤでは、シーラント材の長さ方向におけるもう一方の端部(貼り付け終了部分に対応する端部)も、長さ方向に隣接する部分よりも幅が広い幅広部となっていてもよい。
シーラント材の厚さ(塗布後のシーラント材の厚さ、シーラント層の厚さ、図8中、Dで示される長さ)は特に限定されないが、効果がより好適に得られるという理由から、好ましくは1.0mm以上、より好ましくは1.5mm以上、更に好ましくは2.0mm以上、特に好ましくは2.5mm以上であり、また、好ましくは10mm以下、より好ましくは8.0mm以下、更に好ましくは5.0mm以下である。1.0mm未満であると、タイヤがパンクした際にパンク穴を確実に塞ぐことが困難となる。また、10mmを超えても、パンク穴を塞ぐ効果はあまり変わらず、タイヤの重量が増加してしまうため好ましくない。
シーラント材の厚さ(塗布後のシーラント材の厚さ、シーラント層の厚さ)は、実質的に一定であることが好ましい。これにより、タイヤのユニフォミティーの悪化をより防止でき、より重量バランスに優れたシーラントタイヤを製造できる。
シーラント材の厚さ(塗布後のシーラント材の厚さ、シーラント層の厚さ、図8中、Dで示される長さ)と、シーラント材の幅広部以外の幅(塗布後のシーラント材の幅広部以外の幅、図6中、W0で示される長さ)の比率(シーラント材の厚さ/シーラント材の幅広部以外の幅)は、好ましくは0.6〜1.4、より好ましくは0.7〜1.3、更に好ましくは0.8〜1.2、特に好ましくは0.9〜1.1である。該比率が1.0に近いほど、シーラント材の形状が理想的な紐状形状となり、シール性の高いシーラントタイヤをより生産性良く製造できる。
シーラント材の断面積(塗布後のシーラント材の断面積、図8では、D×Wで算出される面積)は、効果がより好適に得られるという理由から、好ましくは0.8mm2以上、より好ましくは1.95mm2以上、更に好ましくは3.0mm2以上、特に好ましくは3.75mm2以上であり、好ましくは180mm2以下、より好ましくは104mm2以下、更に好ましくは45mm2以下、特に好ましくは35mm2以下、最も好ましくは25mm2以下である。
第2実施形態では、シーラント材の粘度が上記範囲内であっても、特に、粘度が比較的高くても、貼り付け開始部分に対応するシーラント材の幅を広くすることにより、当該部分の接着力を改善し、当該部分におけるシーラント材の剥離を防止することができる。
第2実施形態のシーラントタイヤは、上記の製造方法で製造することが好ましいが、シーラント材の少なくとも一方の端部を幅広部とすることができる限り、他の任意適当な製造方法で製造してもよい。
上述の説明、特に、第1実施形態の説明では、タイヤの内周面にシーラント材を塗布する際に、非接触式変位センサを用いる場合について説明したが、非接触式変位センサによる測定を行わずに、予め入力しておいた座標値に基づいて、ノズル及び/又はタイヤの移動を制御してタイヤの内周面にシーラント材を塗布してもよい。
上述の製法等により、インナーライナーのタイヤ半径方向内側にシーラント層を有するシーラントタイヤを製造できる。なかでも、シーラント材の流動等による問題が生じにくく、タイヤサイズが変わってもプログラミングで対応できる等のメリットもあるため、シーラント層は、加硫成形済みのタイヤの内周面にシーラント材を塗布する製法により形成されたものであることが好ましい。また、シーラント材のハンドリングが容易で生産性が高いという理由により、架橋剤を含む原料を連続混練機により混合することにより順次調製されるシーラント材を順次タイヤの内周面に塗布する製法により形成されたものであることが好ましい。
上述の製法等により、インナーライナーのタイヤ半径方向内側にシーラント層を有するシーラントタイヤを製造した後、すなわち、略紐状形状のシーラント材を連続的にらせん状に、加硫成形済みのタイヤの内周面に塗布する工程により、インナーライナーのタイヤ半径方向内側にシーラント層を形成した後、更に、シーラント材を塗布した後に吸音層を貼り付ける工程を行う。
<吸音層を貼り付ける工程>
吸音層を貼り付ける工程では、インナーライナーのタイヤ半径方向内側に形成されたシーラント層のタイヤ半径方向内側に吸音層を設ける。シーラント層を構成するシーラント材は、粘着力を有するため、吸音層をシーラント層に接触させることにより容易にシーラント層のタイヤ半径方向内側に吸音層を設けることが可能である。このように、吸音層を貼り付ける工程では、吸音層が、タイヤの内周面に塗布されたシーラント材により貼り付けられる。
吸音層を貼り付ける工程において、必要寸法の吸音層をホルダーに装着して、タイヤに貼り付けることが好ましい。これにより、より生産性よく吸音層が貼り付けられたシーラントタイヤを製造できる。
生産効率の点で、吸音層を貼り付ける工程において、吸音層をタイヤ開口部からタイヤ内部に連続して導入して貼り付け、1本の吸音層を連続してタイヤに貼り付けることが好ましい。
シーラント層のタイヤ半径方向内側に吸音層が設けられたシーラントタイヤの断面の一例を図10に模式的に示す。図10では、シーラント層22のタイヤ半径方向内側に吸音層25が設けられている。
シーラント層の幅(シーラント層のタイヤ幅方向の長さ、図6ではW1+6×W0で表される長さ、図10ではWsで示される長さ)は特に限定されないが、効果がより好適に得られるという理由から、タイヤのブレーカー幅(ブレーカーのタイヤ幅方向の長さ、図10ではWbで示される長さ)の85〜115%であることが好ましく、95〜105%であることがより好ましい。
吸音層の幅(吸音層のタイヤ幅方向の長さ、図10中、Waで示される長さ)は、特に限定されないが、効果がより好適に得られるという理由から、シーラント層の幅(シーラント層のタイヤ幅方向の長さ、図6ではW1+6×W0で表される長さ、図10ではWsで示される長さ)の50〜95%であることが好ましく、60〜90%であることがより好ましい。
吸音層のタイヤ幅方向の長さが、実質的に一定であることが好ましい。これにより、吸音層を設ける工程(吸音層の作成や貼り付け)を自動化しやすく、コストダウンに有効である。
ここで、本明細書において、長さが実質的に一定とは、長さの変動が95〜105%(好ましくは97〜103%、より好ましくは98〜102%、更に好ましくは99〜101%)に収まることを意味する。
吸音層の厚さは、特に限定されないが、好ましくは1.0〜150mm、より好ましくは30〜120mmである。
吸音層は、タイヤのユニフォミティー、立体網目構造体の成形性、素材寸法加工、輸送、生産作業性、コスト面から有利であることから、周上で重量が一定である略一定幅及び略一定断面形状であることが好ましい。
ここで、略一定幅とは、吸音層のタイヤ幅方向の長さの変動が95〜105%(好ましくは97〜103%、より好ましくは98〜102%、更に好ましくは99〜101%)に収まることを意味する。
また、略一定断面形状とは、吸音層の断面形状が実質的に一定であることを意味するが、その指標として、吸音層の断面積(タイヤの一部を子午線方向に切った断面(タイヤの幅方向及び半径方向を含む平面で切った断面)の断面積、図10中に示す吸音層の断面の断面積)の変動が95〜105%(好ましくは97〜103%、より好ましくは98〜102%、更に好ましくは99〜101%)に収まることを意味する。
吸音層が継ぎ目を持たないことがタイヤ周方向に重量が一定となる観点から好ましいが、継ぎ目のない環状の吸音層の製造コストは非常に高くなる。そこで、略矩形上の吸音層を継ぎ目が小さくなるように貼り付けることでコストと性能のバランスを取ることができる。継ぎ目(吸音層の周方向端面)においては、吸音層がオーバーラップしていても、隙間があってもよい。
継ぎ目の数は特に限定されないが、1または2が好ましく、1がより好ましい。継ぎ目の数が1とは、1本の吸音層により吸音層が構成されていることを意味する。
継ぎ目のギャップ長さ(吸音層の隙間又はオーバーラップ部分)は、80mm以下が好ましく、20mm以下がより好ましく、10mm以下が更に好ましい。80mmを超えると、タイヤのユニフォミティーが悪化する傾向がある。また、継ぎ目のギャップ長さは、製造コストの点から、1mm以上が好ましい。継ぎ目を2つ有する場合、吸音層の周方向の長さの比は、短いものが長いものの3%以下であることが好ましく、1%以下がより好ましい。3%以下というのは、ギャップを埋めるために小さな小片を設置することに対応する。
吸音層の周方向端面は、加工が容易であるという点で、タイヤトレッド内面に対して略垂直であることが好ましい。
ここで、略垂直とは、角度が70〜100%(好ましくは89〜91%)であることを意味する。
吸音層の継ぎ目が、タイヤトレッド内面に対してテーパー角を1または2有することが好ましい。テーパーを設けることによって、吸音層の隙間を見掛け上狭くすることができ、異物が粘着することを防止できる。また、吸音層の継ぎ目部分が一番応力のかかる部分であるが、テーパーを設けることによって、吸音層の剥離を抑制できる。
吸音層の周方向端面(テーパー角)は、タイヤトレッド内面に対して10〜80°であることが好ましく、15〜45°であることがより好ましい。10°未満では、加工が困難であり、80°を超えると、長期間の走行による吸音層の剥離が生じやすくなる傾向があり、また、吸音層をオーバーラップさせる場合は吸音層の乗り上げが困難になる傾向がある。
吸音層は、シーラント層と接する面、すなわち、接着面が略平らであることが望ましい。これにより、接着面積を稼ぎ良好な接着性を得ることができる。
ここで、略平らとは、吸音層のシーラント層と接する面の変動が±2mm(好ましくは±0.5mm)に収まることを意味する。
吸音層は、シーラント層と接する面と反対側の面、すなわち、露出することとなる上面は平らであっても吸音効果が得られるが、吸音層の厚さはタイヤ空洞の中心に近いほど吸音効果が高いので、同じ幅、体積であれば厚い部分を持つことが好ましい。すなわち、良好なロードノイズ低減性が得られるという理由から、吸音層は、タイヤの幅方向端部の厚さが、タイヤの幅方向中央部の厚さよりも小さいことが好ましい。
吸音層の厚さが大きい部分においては、テーパーがあっても吸音層が剥がれる場合があるが、厚さが小さい部分においては吸音層を剥がす力が小さいため剥がれにくく、剥がれを堰き止める効果があることがわかった。そのため、吸音層の剥離を防止する観点からも、吸音層は、タイヤの幅方向端部の厚さが、タイヤの幅方向中央部の厚さよりも小さいことが好ましい。
吸音層の上面において厚さに違いを持たせる場合、厚さが大きい部分と厚さが小さい部分の形状がお互いを補完できる形状であると、1枚の吸音層の真ん中を加工することで2組の吸音層を作ることができて、廃棄部分を少なくすることができる。
上記吸音層としては、吸音材として立体網目構造体を含むものであれば特に限定されない。なかでも、上述のように、より良好なロードノイズ低減性が得られるという理由から、上記吸音層は、立体網目構造体のみにより構成されていることが好ましい。
立体網目構造体のタイヤ内腔に対する断面積比、すなわち、立体網目構造体の断面積/タイヤ内腔の断面積×100は、低いと吸音性能が低く、また、高くてもノイズ吸音性能が頭打ちになり、無駄に重く、コストがかかるため、2〜90%が好ましく、5〜70%がより好ましく、20〜70%が更に好ましい。ここで、断面積比を変化させるためには、例えば、立体網目構造体の幅、厚さを変化すればよい。
なお、本明細書において、立体網目構造体の断面積とは、立体網目構造体の見かけの断面積であって、内部の空洞を含めた立体網目構造体の外形から定められる断面積を言う。立体網目構造体の断面積は、立体網目構造体の体積を立体網目構造体の平均厚さ(タイヤ半径方向の厚さ)で除することにより算出される。ここで、立体網目構造体の体積とは、立体網目構造体の見かけの全体積であって、内部の空洞を含めた立体網目構造体の外形から定められる体積を言う。また、立体網目構造体の平均厚さも、内部の空洞を含めた立体網目構造体の外形から定められる平均厚さを言う。
また、本明細書において、タイヤ内腔の断面積は、以下のようにして算出されるタイヤ内腔の全体積を、タイヤ内腔のタイヤ半径方向の高さで除することにより算出される。
タイヤ内腔の全体積(V1)は、組立体に正規内圧を充填した無負荷の状態において下記式で近似的に求めるものとする。
V1=A×{(Di−Dr)/2+Dr}×π
式中、Aは前記正規状態のタイヤをCTスキャニングして得られる1つのタイヤ子午線断面における内腔の面積、ここで、内腔とは、タイヤ赤道を挟んで両側にある、タイヤ回転軸に最も近い点同士を結んだ直線と、タイヤ内周面(内壁面)とで形成される仮想空間(閉領域)、Diは正規状態でのタイヤ内腔の最大外径、Drはリム径、πは円周率である。
立体網目構造体の見かけ密度は、低いと吸音性能が低く、また、高くてもノイズ吸音性能が頭打ちになり、無駄に重く、コストがかかり、更には、タイヤに釘等が刺さった際に、損傷を受けやすくなるおそれがあるため、10〜250kg/m3が好ましく、20〜200kg/m3がより好ましく、30〜100kg/m3が更に好ましい。
なお、本明細書において、見かけ密度とは、立体網目構造体の内部に存在する空洞も立体網目構造体の体積とみなして計算される密度であり、立体網目構造体の質量を、立体網目構造体の見かけの全体積(内部の空洞を含めた立体網目構造体の外形から定められる体積)で除することにより算出される。具体的には、立体網目構造体を用いて、概形1m×1m×1mの立方体状の測定試料を作成し、作成した測定試料の質量を測定することにより算出できる。
立体網目構造体の25%圧縮硬度は、好ましくは20〜250N、より好ましくは60〜220Nである。25%圧縮硬度が上記範囲内であると、シール性に悪影響を及ぼさずに、良好なロードノイズ低減性が得られ、また、タイヤに釘等が刺さった際に、損傷を受けにくくなる。
なお、本明細書において、立体網目構造体の25%圧縮硬度は、直径200mmの真円状の加圧板を使用し、JIS K6400−2に準拠して測定される。
上記線条が、中空繊維であることが好ましい。これにより、より良好なロードノイズ低減性が得られる。
上記線条の中空率は、シール性、ロードノイズ低減性により優れるという理由から、10〜90%が好ましく、20〜80%がより好ましい。
なお、本明細書において、上記線条の中空率とは、上記線条の線条軸(繊維軸)に対して垂直方向の断面(横断面)を撮影し、断面の全面積(Sa)と中空部の面積(Sb)を測定し、下記の式を用いて算出した値をいう。ただし、Sbは、複数の中空部を有する場合には、それぞれの中空部の面積の総和を意味する。
中空率(%)=(Sb/Sa)×100
上記線条の平均径(平均繊維径)は、特に限定されないが、好ましくは0.1〜5.0mm、より好ましくは0.3〜2.0mmである。上記線条の平均径を上記範囲内にすることで、ノイズの低減効果が十分に得られ、かつ、タイヤに釘等が刺さった際に損傷を受けにくくすることができる。
線条の平均径は、走査型原子間力顕微鏡写真の画像解析、走査型電子顕微鏡写真の画像解析、透過型顕微鏡写真の画像解析、X線散乱データの解析、細孔電気抵抗法(コールター原理法)等によって測定できる。
なお、上記線条の径とは、上記線条の線条軸(繊維軸)に対して垂直方向の断面の見かけの径(空洞を含めた径)を意味する。
以下において、立体網目構造体の製造方法について説明する。
立体網目構造体は、
複数個の押出孔が略丸形状の領域に配列された口金から、溶融した樹脂を複数の線条からなる線条集合体として下方に押し出して降下させる降下工程と、
前記線条集合体の外周部を、前記口金の下方において該外周部を取り囲み前記線条集合体の内部に向かって下方に傾斜し下端に略環形状の外周成形部を有する外周シュートの傾斜面上に接触させることにより、撓ませて略ループ状に成形し、隣接する該線条同士を不規則に絡ませて溶着する溶着工程と、
絡合した前記外周部を前記外周シュートの傾斜面上に供給される冷却水により冷却する冷却工程と、
絡合した前記外周部を前記外周シュートにより斜め下方に誘導しつつ、前記外周成形部により前記外周部を成形する外周部成形工程と、
前記線条集合体の前記内部を着水させることにより、撓ませて略ループ状に成形し、水面付近において隣接する該線条同士を不規則に絡ませて溶着する内部成形工程と、
前記外周シュートの下方において、引取機により前記線条集合体の降下より遅い速度で引き取りつつ、前記線条集合体を水没させ冷却固化する冷却固化工程と、
前記線条集合体を所望の長さに切断し両端部を有する長尺部材の立体網目構造体となす切断工程とを含む製造方法により製造される。
立体網目構造体は、樹脂を溶融させた複数の線条が不規則に絡み合い、その絡合部が溶着(熱溶着)されることにより形成されたものである。立体網目構造体の製造装置600は、図11に示すように、口金610と、口金610の下方に配置される外周シュート631と、外周シュート631の上方に配置される水供給部の末端である水供給口620と、外周シュート631の下方に配置される引取機650と、を備える。以下、各部について説明する。
口金610は、略長四辺形内に複数個が配列された押出孔611を有し、溶融した樹脂に圧力を加えて一時的に貯留するダイス612の下部に一体的に設けられる。それぞれの押出孔611から線条660が吐出されることにより、口金610における押出孔611の配列形状を降下方向の断面形状として有する線条集合体661が吐出され、降下することとなる。押出孔611は、図12に示す通り、略円形領域に配列されるので、線条集合体661は、全体として略円柱状として降下することとなる。
外周シュート631は、図11、図13(a)(b)に示す通り、口金610の下方において配置され、降下する線条集合体661の外周部662の周囲を取り囲んで配置される。外周シュート631は、線条集合体661の内部663に向かって下方に傾斜する傾斜面632と、下端に形成される略環形状の外周成形部633とを有する。ここで、外周成形部633により囲まれた空間を成形開口部634とすると、成形開口部634は口金610における押出孔611の配列の略円形領域と相似形に近く、これよりも少し小さなものとなる。これらの略円形領域は真円のほか、楕円、小判型等を含むものである。
水供給口620は、外周シュート631の上方において、周方向のほぼ全幅に亘る供給パイプ621に設けられ、傾斜面632に冷却水を供給する(図11参照)。供給パイプ621は上流において水供給源(図示略)に接続される。
引取機650は一対の引取機650a,650bからなる。一対の引取機650a,650bは、図11に示す通り、外周シュート631の下方において対向して配置され、線条集合体661の外周部662に接するように設けられる無端ベルト651a,651bと、無端ベルト651aを駆動するプーリー653a,654aと、無端ベルト651bを駆動するプーリー653b,654bと、を有する。一対の引取機650a,650bは、それぞれが、プーリー653a,654aまたはプーリー653b,654bを駆動する駆動モータ、チェーンおよび歯車等から構成される他、無端ベルト651aまたは無端ベルト651bの回転速度を変速させる変速機、制御装置、その他計器類等から構成される駆動制御装置(図示略)を備える。一対の引取機650a,650bは水槽640の内部に設けられる。一対の無端ベルト651a,651bの間隔は自由に移動出来る構造が好ましい。なお、引取機650は無端ベルトを用いて線条集合体661を引き取ることとしているが、これに限らず、ローラー等を用いることも可能である。
水槽640は、立体網目構造体の製造装置600の所定箇所を水没させて、溶融状態にある線条集合体661を冷却固化するためのものである。水槽640の水位は、外周シュート631の下端と同じ高さを下限として適宜調節する。
以下、立体網目構造体の製造方法について図11を参照して説明する。公知の構成部分については、その詳細な説明は省略するので、日本国特許第4350286号、U.S.Patent No.7,625,629を参照されたい。
まず、樹脂を主原料とした原料を溶融する。溶融された原料は、ダイス612内部へと送られ、圧力を加えられて、下部の口金610の押出孔611から下方へ押し出されて線条660となる。ダイス内部の温度範囲は100〜400℃、押出量は20〜200Kg/時間、等に設定可能である。ダイス内部における圧力は、例えば75mmスクリューの吐出圧によるものが挙げられ、その圧力範囲は0.2〜25MPa程度である。厚みが100mmを越える立体網目構造体を製造する場合は、ギアポンプ等によりダイス圧力の均一化を図ることが好ましい。口金610から吐出されたそれぞれの線条660は、押出孔611の複数個の配列により、複数本の線条660からなる線条集合体661となる。なお、上記数値は一例であり、樹脂の原料や製品の設計等に応じてこれ以外の条件を適宜選択し得る。
線条集合体661のうち、外周部662に位置する線条660は、外周シュート631の傾斜面632の上に接地し、その接触により垂直落下軌道が乱され、隣り合う線条660とループ状に絡み合いつつ、供給パイプ621から供給される冷却水の水流に乗り、傾斜面632を滑り降りる。この際、線条660は重力の影響を直接的に受け、傾斜面632に沿って二次元的に絡合する。傾斜面632を滑り降りた線条集合体661の外周部662は、成形開口部634を通過する際に、外周成形部633により成形される。口金610における押出孔611の配列の略円形領域と比べて成形開口部634が小さいほど、外周部662は内部663に向かって深く、密に形成されることとなる。また、図14(a)のように外周成形部633´を長く設定すると、外周部662´の内部663´に向かう範囲は浅いが密に形成されることとなる。図14(b)のように外周成形部633´を角部により設けると、外周部662´の嵩密度は内部663´と比較してほとんど増大せず、柔らかな面となる。
線条集合体661のうち、傾斜面632に接触せずに落下した線条660は、成形開口部634を通過する。このとき、成形開口部634を通過する線条660のうち、外周成形部633の近くを通過するものは、傾斜面632を滑り降りてくる線条660と接触し、ループ状に絡み合い、さらにその接触絡合による落下軌道の撹乱が隣り合う中心方向の線条660に若干の範囲で伝播しつつ落下する。成形開口部634を通過する線条660のうち、成形開口部634の中央付近を通過するものは、上記のような絡合をすることなく水面に着水する。ここにおいて、引取機650による引き取り速度は線条集合体661の落下速度よりも遅いため、着水した線条660は撓み、水面付近で略ループ状に絡まり合うこととなる。
このようにして線条集合体661は立体網目(立体網状)構造に形成され、水槽640にて冷却されつつ、引取機650により引き取られ降下する。外周シュート631で冷却水に触れた外周部662はその時点ではまだ完全には固化していないが、水槽640に水没することにより冷却が進行し、形状が固定されることとなる。
上記操作を連続し、得られた立体網目構造体を所望の長さに切断すれば立体網目構造体を得ることができる。立体網目構造体は、成形開口部634と同様の形状を断面に有し、切断により生じた両端部を有する長尺部材となる。立体網目構造体は、複数本の線条660がループ状に無秩序に絡み合い、溶着されたことにより構成されたもので、適度な弾力性を有する可撓性のものである。
上記説明では、口金610における押出孔611の配列、および、成形開口部634が略円形の場合について説明したが、所望の立体網目構造体の特性、形状に合わせて、例えば、矩形状などの他の形状に適宜変更すればよい。また、線条の径、押出孔の数や押出孔の設置密度等の他の条件についても、所望の立体網目構造体の特性、形状に合わせて、適宜変更すればよい。
また、上記線条を中空繊維とするには、公知技術を採用すればよく、例えば、押出孔を、中実部を有する断面形状とすればよい。中実部を有する断面形状としては、例えば、断面の空隙部がドーナツ形状のものが挙げられる。
立体網目構造体の原料の樹脂としては、熱可塑性樹脂を好適に用いることができる。熱可塑性樹脂としては、特に限定されず、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル、ナイロン66、ケプラーなどのポリアミド、テフロン(登録商標)などのフッ素樹脂、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリアクリルニトリル、ポリビニルアルコール、ポリイミド、上記樹脂をベースとし共重合したコポリマーやエラストマー、上記樹脂をブレンドしたもの等が挙げられる。なかでも、効果がより好適に得られるという理由から、ポリエステル系樹脂(ポリエステルの構造単位を有する樹脂)が好ましく、より好適な25%圧縮硬度が得られ、シール性の阻害をより好適に抑制できるという理由から、ポリエステルと、脂肪族ポリエーテルのコポリマーがより好ましく、ポリブチレンテレフタレートと、脂肪族ポリエーテルのコポリマーが更に好ましい。
脂肪族ポリエーテルとしては、−(CH2)mO−で表される単位(m:整数)が挙げられる。mは、同一又は異なって、好ましくは1〜20、より好ましくは1〜10、更に好ましくは2〜6である。
実施例に基づいて、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらのみに限定されるものではない。
以下に、実施例で用いた各種薬品について説明する。
ブチルゴムA:レギュラーブチル065(日本ブチル(株)製、125℃におけるムーニー粘度ML1+8=32)
液状ポリマーA:日石ポリブテンHV300(JX日鉱日石エネルギー製、40℃における動粘度26,000mm2/s、100℃における動粘度590mm2/s、数平均分子量1,400)
液状ポリマーB:日石ポリブテンHV1900(JX日鉱日石エネルギー製、40℃における動粘度160,000mm2/s、100℃における動粘度3,710mm2/s、数平均分子量2,900)
可塑剤:DOP(ジオクチルフタレート、昭和化学(株)製、比重0.96、粘度81mPs・S)
カーボンブラック:N330(キャボットジャパン(株)製、HAFグレード、DBP吸油量102ml/100g)
架橋助剤:バルノックGM(大内新興化学(株)製、p−ベンゾキノンジオキシム)
架橋剤:ナイパーNS(日油(株)製、ジベンゾイルパーオキサイド(40%希釈品、ジベンゾイルパーオキサイド:40% ジブチルフタレート:48%)、表1の配合量は純ベンゾイルパーオキサイド量)
ポリウレタンスポンジ:株式会社イノアックコーポレーション製のESH2(ポリウレタン製)
ベルプレン:東洋紡(株)製のベルプレンPタイプ(ポリエステル系熱可塑性エラストマー(ポリブチレンテレフタレートと、脂肪族ポリエーテルのコポリマー、脂肪族ポリエーテル:−(CH2)4O−で表される単位))
(製造例)
<立体網目構造体の製造>
樹脂としてベルプレンを使用して、上述の製造方法に従い、立体網目構造体を製造した。なお、立体網目構造体の見かけ密度、中空率等は、押出孔の数や押出孔の設置密度等を変動させることにより調整した。得られた立体網目構造体を形成する線条の平均径(平均繊維径)は0.8mmであった。なお、線条を中空繊維とした。
得られた立体網目構造体の特性を表2に示した。
(比較例1)
タイヤ(215/55R17、94W、リム:17X7.5J、タイヤリム組時のタイヤ内腔の断面積:194cm2)を比較例1のタイヤとした。
(実施例1)
<タイヤの製造>
表2に従って、表2に記載の立体網目構造体からなる吸音層(長さ2000mm)を、タイヤ(215/55R17、94W、リム:17X7.5J、タイヤリム組時のタイヤ内腔の断面積:194cm2)のタイヤ内腔に入れ、実施例1のタイヤとした。
(比較例2)
<タイヤの製造>
表2に従って、実施例1の立体網目構造体の代わりに、表2に記載のポリウレタンスポンジを使用し、比較例2のタイヤとした。
(比較例3〜4、実施例2〜16)
<シーラントタイヤの製造>
表1の配合に従って、二軸混練押出機の上流側供給口から、ブチルゴムA、カーボンブラック及び架橋助剤を、中流供給口から、液状ポリブテンBを、下流供給口から、液状ポリブテンA、可塑剤及び架橋剤を投入し、バレル温度100℃、200rpmの条件下で、混練加工し、シーラント材を調製した。なお、液状ポリブテンについては、50℃の液状ポリブテンを供給口から投入した。
(各材料の混練時間)
ブチルゴムA、カーボンブラック及び架橋助剤の混合時間:2分
液状ポリブテンBの混合時間:2分
液状ポリブテンA、可塑剤及び架橋剤の混合時間:1.5分
表2に従って、回転駆動装置に取り付けたタイヤ(215/55R17、94W、リム:17X7.5J、タイヤリム組時のタイヤ内腔の断面積:194cm2、加硫成形済、タイヤの回転速度12m/min、予熱温度:40℃、タイヤのブレーカー幅:180mm)に、シーラント材(粘度4000Pa・s(90℃)、略紐状形状、厚さ3mm、幅4mm)を厚さ3mm、貼り付け領域の幅180mmになるように、順次調製されるシーラント材(温度100℃)を二軸混練押出機から押し出してノズルを介して、連続的にらせん状にタイヤの内周面に図1〜4に従って貼り付け(スパイラル状に塗布)、シーラント層を形成した。更に、表2に従って、比較例4、実施例2〜16では、形成されたシーラント層のタイヤ半径方向内側に、表2に記載のポリウレタンスポンジ又は表2に記載の立体網目構造体からなる吸音層(長さ2000mm)を吸音層の周方向端面の隙間が10mmになるようにシーラント材の粘着性を利用して設置した。
なお、シーラント材の幅は、長さ方向において実質的に一定となるように調整した。また、シーラント材の粘度は、JIS K 6833に準拠し、90℃の条件で、回転式粘度計により測定した。
また、実施例2においては、シーラント層表面の粘着性を消失させるために、ポリフィルムでシーラント層表面をカバーしてから、吸音層の設置を行った。
得られたタイヤについて、以下の評価を行い、結果を表2に示した。
<吸音効果(ロードノイズ低減性)>
タイヤを車両(2400cc、FF国産車)の全輪に装着し(内圧:230kPa)、ロードノイズ計測路(アスファルト粗面路)を時速60km/hで走行したときの、運転席窓側耳位置における車内音(挟帯域210Hz付近の気柱共鳴音)のピークを測定した。数値が大きい程、ロードノイズ低減性に優れることを示す。
<耐久試験(耐久性能)>
荷重5.0Knの条件下で、タイヤ(内圧:230kPa)を速度100km/hでドラム(1.7m)走行を1万km行い、吸音層の損傷を目視で確認した。
<エアシールテスト(シール性)>
タイヤの初期内圧を230kPaにし、雰囲気温度25℃において、JIS N100の丸くぎ(胴径4.0mm、長さ10cm)を使用し、釘36本をタイヤの縦溝に頭まで打ち込み、5分後に釘を除去後、丸1日タイヤを雰囲気温度25℃に放置して、石鹸水を付けてエアが漏れていない釘穴の個数を確認した。
指標が大きい程、シール性に優れることを示す。
立体網目構造体を吸音材として有する吸音層をタイヤ内腔に備えた実施例の空気入りタイヤは、ロードノイズ低減性に優れていた。また、立体網目構造体を吸音材として有する吸音層をタイヤ内腔に備え、更に、インナーライナーのタイヤ半径方向内側にシーラント層を有する実施例2〜16の空気入りタイヤ(シーラントタイヤ)は、シール性、ロードノイズ低減性に優れていた。
比較例1、2、実施例1の比較により、スポンジと同様に、立体網目構造体が吸音材として使用可能であることが分かった。
また、比較例4、実施例3の比較により、立体網目構造体を吸音材として使用した場合、シール性に悪影響を及ぼさないことが分かった。
さらに、実施例1〜3より、立体網目構造体を固定しない場合、一部の立体網目構造体が破損することも分かった。