本実施形態における回転電機は、例えば、ハイブリッド自動車、電気自動車等に搭載されるモータジェネレータ1である。図1に示すように、モータジェネレータ1は、円環状のステータ10と、ステータ10の内側に配置されるロータ50とを備えている。ステータ10の内周面とロータ50の外周面との間には、所定間隔のエアギャップGが形成されている。
ステータ10は、図1、2に示すように、円環状のステータヨーク11、ステータヨーク11から内周側に突出する複数のティース12及びティース12の間に形成された複数のスロット13を有するステータコア15と、ステータコア15の軸方向の両端面にそれぞれ装着された円環状のカフサ20,30と、ティース12及びカフサ20,30の周囲に巻装されたコイル40とを備えている。
ステータコア15は、それぞれ略円環状に打ち抜き加工された多数枚の電磁鋼板を軸方向に積層して一体に連結して構成されている。
カフサ20は樹脂成形部品であり、ステータコア15の軸方向一端面に装着されている。 カフサ20は、外側環状部21と、内側環状部22と、外側環状部21と内側環状部22を連結する複数の連結部23と、隣接する連結部23の間に設けられる複数の開口部24とを備えている。カフサ20の複数の開口部24は、ステータコア15のスロット13に対応している。
また、内側環状部22の内周縁には、エアギャップGにATF(冷媒)を導く冷媒案内部25が形成されている。冷媒案内部25は、図1に示すように、内側環状部22の内周縁からエアギャップGを覆うように延出しており、エアギャップGに対向する面が先端に向かって薄くなる斜面25aとなっている。なお、冷媒案内部25によりATFをエアギャップGに導く動作については後述する。
カフサ30は、カフサ20と同様に樹脂成形部品であり、ステータコア15の軸方向他端面に装着されている。カフサ30は、冷媒案内部25を備えていない点を除いて、カフサ20と同様の構成である。
図2に示すように、カフサ20の開口部24とステータコア15のスロット13には、コイル40を構成するU字形の導体セグメント40aが挿入されている。ステータコア15の軸方向の端面から突出した導体セグメント40aの隣接する開放端が順次互いに溶接されてコイル40が形成される。この溶接された部分及びU字形の先端部分はコイルエンド40b,40cをそれぞれ構成する。
図1に示すように、ロータ50は、中空の回転軸51と、この回転軸51の外周に固定されたロータコア52と、ロータコア52に埋め込まれた永久磁石53とを備えている。ロータコア52は、ステータコア15と同様に、それぞれ略円環状に打ち抜き加工された多数枚の電磁鋼板を軸方向に積層して一体に連結して構成されている。また、ロータコア52は、ステータコア15と略同じ軸方向長さを有しており、軸方向の端面同士が略面一となっている。永久磁石53は、ロータコア52の軸方向と略同じ長さの板状部材である。永久磁石53は、回転軸51を中心としてロータコア52の周方向の外周近傍に複数設けられている。
回転軸51の内部には、図示しないオイルポンプからATF(冷媒)が供給される冷媒流路51aが設けられている。冷媒流路51aは回転軸51の中空部分を利用して形成されている。回転軸51の周面には、径方向に開口する冷媒流路51bが設けられている。
ロータコア52の内部には、冷媒流路51bに連通する冷媒流路52aが設けられている。冷媒流路52aは、ロータコア52の周方向に複数設けられており、それぞれロータコア52の径方向に延在している。冷媒流路52aのロータコア52の内側端部には、ロータコア52の軸方向の一端面に開口する冷媒流路52bが接続している。冷媒流路52bのロータコア52の一端面の開口が冷媒吐出口52cを形成している。すなわち、冷媒吐出口52cは、カフサ20に対応するロータコア52の一端面に開口している。
また、冷媒流路51b、冷媒流路52a及び冷媒流路52bは、ロータ50の周方向において複数設けられている。そして、図示しないオイルポンプから圧送されるATFは、図中、矢印F1,F2,F3で示すように、冷媒流路51a,51b,52a,52bを介して冷媒吐出口52cから吐出される。
続いて、ATFによるモータジェネレータ1の冷却について説明する。冷媒吐出口52cから吐出されたATFは、ロータ50の回転遠心力によって、図中矢印F4で示すように、カフサ20の冷媒案内部25に向かって飛散する。すなわち、ロータコア52とステータコア15とは、軸方向の端面同士が略面一となっているので、冷媒吐出口52cから吐出されたATFは、カフサ20の冷媒案内部25の斜面25aに衝突する。斜面25aに衝突したATFは、図中矢印F5で示すように、エアギャップGの内部に導かれる。
また、ATFは回転遠心力によってロータ50の全周に亘って飛散する。カフサ20の冷媒案内部25はステータコア15の全周に亘って形成されているので、斜面25aに衝突したATFは、カフサ20の全周から略均一にエアギャップGの内部に導かれる。なお、冷媒案内部25の先端をエアギャップGから離れる方向に反らすことによって、より多くのATFをエアギャップGに導くことができる。
また、冷媒吐出口52cから吐出されたATFの一部は、カフサ20の冷媒案内部25を超えてコイルエンド40bに飛散するので、コイルエンド40bにも供給される。このため、コイルエンド40bの冷却も行うことができる。
このように、熱がこもりやすいエアギャップGにATFが供給されるので、ステータ10及びロータ50を効率よく同時に冷却することができ、ステータ10及びロータ50の冷却性能を向上することができる。特に、エアギャップGにATFが供給されることによって、ロータ50の外周面が冷却されるので、ロータ50の外周近傍に配置された永久磁石53を効率的に冷却することができ、永久磁石53が高温になったときの減磁を抑制できる。このため、モータジェネレータ1の出力特性を向上することができる。
また、ATFがエアギャップGの全周に亘って略均一にエアギャップG内に供給されるので、ステータ10及びロータ50を全周に亘って略均一に冷却することができる。また、冷媒案内部25をカフサ20と一体成形しているので、他の部品を必要とせず、組立工程の増加を抑制しつつ、ステータ10及びロータ50の冷却性能を向上することができる。
次に、案内面の変形例について図3、4を参照して説明する。図3において、図1に示される構成と同様の構成には同符号を付してその説明を省略し、異なる構成について説明する。図3に示す変形例では、冷媒案内部60の形状が異なっている。
図3に示すように、冷媒案内部60のエアギャップGに対向する部分に、凹形状の湾曲面60aが形成されている。このように湾曲面60aを形成することによって、冷媒吐出口52cから飛散したATFをエアギャップGの内部に導くことができる。特に、湾曲面60aのエアギャップG側の縁を、エアギャップGの縁に一致させることにより、湾曲面60aに衝突したATFを滑らかにエアギャップGの内部に導くことができる。
また、図4に示すように、冷媒案内部61のエアギャップGに対向する部分に、階段形状の段部61aが形成されている。このように段部61aを形成することによって、冷媒吐出口52cから飛散したATFをエアギャップGの内部に導くことができる。